03/05/15 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会第17回議事録       不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第17回)議事録 1 日時   平成15年5月15日(木) 14:00〜16:00 2 場所   専用第13会議室(厚生労働省5階) 3 出席者 (1)委員(五十音順、◎は座長)   (1)伊藤 眞(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (2)岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (3)小幡純子(上智大学法学部教授)   (4)菊池信男(弁護士)  ◎(5)諏訪康雄(法政大学社会学部教授)   (6)村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)   (7)山川隆一(筑波大学社会科学系教授) (2)行政    青木審議官、熊谷労政担当参事官、中原調査官、    山嵜中労委事務局審査第一課長、松本参事官補佐 4 議事 ○ ただいまから「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」の第17回会合を開 催する。本日は都合により毛塚委員が欠席である。  当研究会においては、2月28日に「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会中 間整理」を取りまとめ、これを3月7日の司法制度改革推進本部労働検討会に報告したと ころであるが、本日からは中間整理を踏まえて2巡目の検討をしていただき、7月下旬を 目途に最終報告を取りまとめたいと思う。  それでは、今後の具体的な議論の進め方について、皆様にお諮りしたいと思うので、 事務局から説明をお願いする。 (事務局から資料No.2「今後の進め方(案)」の説明。) ○ それでは、進め方について、大変駆け足になってしまって申し訳ないが、司法制度 改革の労働検討会の流れとも歩調を合わせて行かざるを得ないので、その関係もあり、 こうした日程で進めさせていただきたいと思っている。どうぞよろしくお願いする。  それでは、次に早速「審査手続の改善」についての議論に入りたいと考える。それを 始めるに当たって、議論の参考となる資料が事務局から提出されているので、ご説明を お願いする。 (事務局から資料No.3-1からNo.6の説明。) ○ それでは、資料No.3-1「事件処理を計画的に進めるための枠組み」から順番に皆様 に御議論いただければと思う。今日の予定では資料No.6の第4「審査の実施方法(運用 の改善)」まで行ければありがたいと思っているので、お含みいただきたい。  では、資料No.3-1「事件処理を計画的に進めるための枠組み」ということで、御議論 をお願いしたい。大体30分ぐらいで御議論いただきたい。その他、最終報告に新たに盛 り込んだ方が良いとか、あるいは中間報告で既に検討したけれども、やはりいらないの ではないかとか、今日のところはフリーでご発言いただいて、事務局にまとめていただ くので、よろしくお願いする。 ○ 資料No.3-1の1ページで申し上げると、一番中心になるのは2の3つ目の丸であろう という感じがする。結局、争点を整理して早く確定し、争点を絞って確定したものにつ いて、証拠も出来るだけベスト・エヴィデンスに絞って適切な審理をしていく。そのと きに、背景事情のようなものが入ってくるのであろうが、その部分については大いに陳 述書を活用するというようなことだろうという気がする。立証する事柄によって、書証 が良い場合と、証言で出していくのが良い場合と、それから口頭での供述に代えて陳述 書的に書いたものと、それを口頭で補充するのが良い場合と、事柄によって適切な証拠 方法が自ずと違ってくると思う。だから、その事柄については何が適切な証拠方法かと いうことでは、口頭で証言を得るのが原則で、他のは代替手段だということではないの だろうと思う。そういうことで言うと、元々背景事情、長い間のいきさつのようなもの は、証言で出すよりは書面の方が分かりやすい。特に証言というのは一問一答になるの で、やはり個別の事柄に適していて、長い間のいきさつを立証するのには適していな い。だから、そういう意味で早期に争点を確定して、事柄に応じて、書いたものを中心 にやるものと、審問で証言を中心にしなくてはいけないものと、それの仕分けが出来る ということがあれば、これは審理の集中、迅速化ということの骨組みは、私の感じでは ほとんどそれに尽きるという気がする。  それから、審理の長期化というのは、良かれ悪しかれそれなりの理由、事情があって 長くなっているので、計画審理と言っても、個別の事柄の内容に応じて目標の期間を積 み上げて計画を立てるというのでなく、ゴールを設定しさえすれば早くなるということ は、どうも必ずしもそうならないのではないかという感じがする。とりあえず期間を決 めておく方が良くて、それでやれる場合もあるが、一般的には、期間を決めるにはいろ いろとよく考えて決めないと、期間を決めても結局いつも守れないということになりか ねない。 ○ 私は経験が浅いので、委員の方が詳しいとは思うが、今、裁判所に傍聴に行った人 によれば、今の裁判は書面のやり取りで終わって、裁判というのはこんなものになった のだという印象を持たれている場合がとても多い。つまり、口頭ではほとんどやらな い。陳述書の活用等々でそういうことになるのだと思うが、ただただ急いで書面が確実 だということになると、確かにそうなる。確かに労働委員会は、本来は職権的にやって 良いということになっているので、それで良いのかも知れないが、実態が逆になってい る。同時に民事裁判が並行している事件の弁護士が、裁判所に行くと、この頃の裁判所 は全部陳述書でほとんど何も証言しないで進むと言っていて、こちらではやるのかとい う感じのところもある様である。だから、裁判は非常に当事者主義で、口頭で意見を聞 くというのが本来の姿だったのだと思うが、それが逆転しているのかなと。それが良い か悪いかというか、労働委員会はどうあるべきかというそもそも論になるのかも知れな いが。逆に組合等は労働委員会に行けば言えると。そっちを求めている。制度の本来の 建て方と違う様な状況で走り出しているのかなと思う。計画審理というのは、例えば具 体的に言うと、我々も調査を何回かした段階で、審問に入るという時点で、審問は両方 に立証計画を出させて、例えば4回で済むと。単純な、小さな事件だとそういう計画案 が立てられるわけであるが、結局組合が和解を望んでいるような場合に、そこに入るま での調査の期間まで計画を立てることは出来ない。ひょっとしたら審問に入らないで、 和解で終わるかも知れないというケースはすごく多くて、その場合は本当に和解が3回 か4回、5回ぐらいで終わってしまうこともある。その場合に、全ての事件に調査2回と 決めて、後は審問と。それを一番初めの段階で計画しなさいというのは、非常に非合理 的だし、ナンセンスな話で、そういう意味で計画を立てろと言われてもそれは分からな いというのが実感である。 ○ 私も大体同じような感覚を持つのであるが、一つはもちろん計画的に審理を進める ということを考えるのは良いのであるが、若干後ろの方から考えていったときに、これ を例えば法令改正という形で組み込むということまで考えるのか、そうでないのかとい うことによっても、結構スタンスが違ってくるという気がする。民事訴訟法のように、 ある程度法律に書き込む話になると、一番やっかいな問題は、今委員が言ったような、 労働事件を労働委員会でやるときに、果たしてそういった形で実際出来るのか。そうな ると、先ほど委員が言ったような、法律上は規定があるけれども誰も出来ないというよ うなことになってしまうのではないか。そこまで行かないで、もうちょっとソフトなや り方で、例えばガイドライン的なもので考えるということになると、もうちょっと柔軟 性は考え得るかも知れないと思う。いわば、いくつかのモデル事件処理例のようなもの を想定して、その中で例えば審査の段階で争点の整理というのを十分にやると。ただ、 争点の整理と言っても、それが労働委員会関係者にどこまで分かってもらえるかという のがたぶん問題なので、もう少し具体的な形で示す必要があると思う。そういうことを して、枝葉の部分はなるべく切り落としていく。それで、最終的に審問でどこに的を 絞ってやるかというような方向に持っていくということを考えるのであると、まだやり ようがあるかという気がする。いずれにせよ、とにかくどこの段階で当事者が和解と言 い出すか分からないとか、いろいろなことがあって、かなり調査の段階から審問に入る か入らないかの段階というのは、結構流動的であるということと、最後の審問が大詰め に向かってきた頃も意外と流動的であって、また和解ということを言い出す可能性が結 構ある。だから、確かに計画的に進めるというのは考え方としては良いのであるが、最 後にそれをどういう形で整理して労働委員会の皆さんにお示ししてやっていただくかと いうことについては、ちょっと工夫が必要なのではないかという気がする。 ○ 計画的にやるというのは、計画を立てる情報があって、個別事件の特徴に合った情 報をまず得て、そしてそれによって立てるのが計画だと思う。そういうやり方でない と、計画審理というのは出来ない。裁判所の手続でも、ともかく出来るだけ早い時点で 当事者に会って事件の特徴とか当事者が争いたいところだとか、どういう立証を予定し ているのか、どの程度の期間を自分の方の立証に予定しているのかといったことをいろ いろと聞き取って、それの中身に応じて裁判所が整理をして、計画を立てるということ が行われている。証言で立証するのに適しているというのは、例えば脱退勧奨で、何月 何日にビヤホールで酒を飲みながらどういうことを言ったか言わないかという部分で供 述が対立しているようなものが典型である。これは陳述書等ではやれないことで、まさ に反対尋問にさらして審問という形でやらないといけない。民事訴訟でも、契約の成立 の立証等の大事なところは証言でやっていて、それを陳述書に譲ったりしてはいないと 思う。しかし、背景事情のようなものは、基本的には陳述書をメインにして、それに弾 劾の機会を口頭で与えると言う意味で補充的に審問というやり方の方が良いのだろうと 思う。その辺の中身に応じて仕分けをし、立証していくべきだろうと思う。訴訟でも、 訴訟促進というのが、やっと実を結びだしたのは極めて近年のことで、長い間、規定も 置き、みんなで努力をしても結局駄目だった。一般民事でも、当事者側は、言いたいこ とは全部法廷で言わせてほしい、それから心ゆくまで争わせてほしい、それを全部聞い てくれと言う。それから、本人は一審で一度尋問をしていても、本人から直接聞かない で、何で控訴審でひっくり返すことが出来るのか、少なくとも本人は必ずもう一度、控 訴審で聞いてほしいというのが強い当事者側の要求で、長い間迅速審理が出来なかっ た。それがやっと出来るようになったのは、そういうだらだら審理では民事訴訟が社会 的な機能を果たせなくなってしまって、もうまともな企業の事件というのが気が付いた ら全然来なくなってしまった。怨念訴訟のようなものや、特殊なものが目立つように なって、訴訟が国民にそっぽを向かれてしまった。それに外圧もあって、これではいけ ないということで、弁護士会も含めてやっと法曹界全体が危機感を持つようになって、 やろうというのでやるようになった。  結局、計画審理と言っても、特にこの労働委員会の手続のように、労側が思う存分言 わせてくれという要求の非常に強い手続で、そんなに簡単に出来るものではないであろ う。これは争点や主張、立証の整理が大事で、事柄に応じた一番良い証拠方法というの は自ずからあるのではないかということを出来るだけ多くの人が考え、認識を共通にし て、努力を重ねていって、やっといくらか出来るものが出来ていって、うまく行けばそ れが広がっていくという、そういう良くなり方をする以外にないのだと思う。だから、 何か規定を置くとか、あるいは何かで方針を打ち出せば、それだけで出来るというもの ではなくて、これは皆がその認識を持って、それに向かって努力をしていこうという意 識改革がないと、絶対良くなりっこないことは確かだろうと思う。 ○ 今、委員が言った、情報をどうやって入手するかということであるが、たぶん事件 処理計画自体は異論というのは基本的になくて、かつ地労委もアンケート調査だとかな りやっているということであったが、それを進めるための基礎的な材料がないとなかな か難しいだろうと思う。一つはたぶん、要件事実と言うのが良いのか分からないが、不 当労働行為を構成する具体的事実は何かというのを整理した形で出してもらうというこ とが一つ。結局それはどういうふうな形で書いてもらうかということとも関わってくる のかも知れないが、書類を見ていると、どうもその辺があまりはっきりしていないとい うのがかなりあって、場合によっては命令を見てもはっきりしていないというものがあ るということで、それをきちんと出してもらうということで、争点がある程度明らかに なると思う。あと、やはりベスト・エヴィデンスということが非常に重要になってくる と思うので、立証計画も割と早期に、きちんと出してもらわないと、それの判定もしか ねるということがある。流動的な要素があるかとは思うが、結局代理人なり当事者なり に、どれだけそういった形で協力してもらうかというのをなるべく具体的に示すことだ と思った。あと、この文章に関して、質問に近いことかも知れないが、和解との関係 で、和解のために調査をやるというのは、どういうイメージになるのかということなの であるが、「和解のための調査」とは銘打ってはいないのかも知れないが、民事の代理 人の少しの経験によると、和解も何らかのきっかけがないとなかなか動きにくいという のがあって、そういう意味で証人尋問で一つの区切りがあったとか、裁判所から何かの 提案があったとかいうことだと良いのであるが、代理人から見ても、一体どのあたりで 和解に持っていこうかという様子を見ているようなところもないではなかったような記 憶がある。そうすると、お互いに様子見みたいなこともあって、ただ労働関係でおそら く違うと思うのは、労使交渉がある程度進展していればそちらの方を見るということが あると思う。あとは、当事者とも、和解というよりは、単に事件を係属させておくこと が何らかの意味があるという要素があるかも知れないが、そういうケースを除くと、和 解を促進するための調査というのはどういうものがあるのだろうかというのと、具体的 にそういう場合の調査というのはどういうふうに進行するのかと。これは経験のある方 にお聞きしたい。 ○ では、後ろの方は中労委が一番たくさんあるので先にどうぞ。 ○ 事件によっては、初めから組合が和解しか考えていないと言っているわけであるか ら、一回目から和解である。 ○ そうすると、お互いに案を出し合うという感じか。 ○ そうである。それではこっちが出してと。この間などは極端で、使用者側も初めか ら和解と言って、今日ここでいくら出せば良いのですかと言われて、ちょっと場を間違 えているのではないかと思ったのであるが、それは2回目で和解した。だから、初めか ら当事者がそう思っている事件というのがある。それならこんなところに持ってこない で当事者でやれば良いのに、なぜか知らないけれども労働委員会にやってきていると。 だから、非常に簡単に3〜4回で和解しているという場合は、初めから団交拒否とか、そ れは争い方であるが、実は組合側が初めから戻るということは考えていなくて、お金で 解決するのを初めから目的としているという場合が明らかであると。それにうまく使用 者が乗らないと、こじれて審問に入るという感じである。 ○ 和解という形で調査というのは、結局審問で和解の交渉をやるわけには行かないの で、結局調査という形を取りつつ、実際には当事者の言い分を聞いて、特に労使の参与 委員に動いていただいて、やり取りを進めていくと。場合によっては、当事者、例えば 労側の方から、あるいは使側の方から和解案が出てきて、それをまた持ち帰って検討し てもらってというようなキャッチボールを何回かやっていく。それを調査という形を取 りながら進めていくという感じなので、これは何回で和解しましょうという、そういう 計画ということはおよそ考えにくい形になる。タイミングとしては、団交事件で個別紛 争が集団紛争に転化したものは、最初から和解という話になるが、そうでないケースだ と、先ほど言ったように調査がある程度進行してきて、当事者の言い分がある程度出て きた段階で、誰がイニシアティブを取るかというのはそのときによってそれぞれで、当 事者が取るときもあるし、あるいは参与委員から出てくるときもあるし、参与委員から 出てきて委員会の方からという形を取るときもある。あとは、経験的にはそんなに見て いないけれども、何となく分かるのは、審問まで行って言いたいことを言って、それで 和解しようという形になると。そうすると、そこから先は全部調査に切り替えて。 ○ 名前の問題としては、調査期日の他に和解期日というのがあっても良いということ になるのだろうか。 ○ それはあっても良いのかも知れないが。 ○ 名前の持つイメージの問題というのがあるのかも知れない。 ○ 「和解のための調査」という言い方は、非公式にはしていると思う。 ○ 確かに、非公式にはしている。 ○ 中労委もそういう言い方をしていると思う。 ○ だから、和解期日というふうにすれば、統計的には、おそらく和解期日は審査の日 数から取ってしまうことが可能になるので良いのかも知れない。 ○ 例えば一年とか、そういう数値的な目標を設けるということについては慎重にすべ きだという意見は分かるが、ご承知の迅速化法案もあり、一方ではそういう形で制度全 体が動こうとしていると。やはり、訴訟と比較したときに、一般的に言えば手続は簡潔 であるということは間違いないわけであるから、それと比較して原則一年というのがこ こに出ているけれども、そういうことを打ち出すべき時期に来ているのではないかとは 思う。確かに複雑な事件はあるが、しかし複雑と言っても、それでは毎月一回期日を入 れて、実質15ヶ月以上なければ審理が出来ないような事件がどれだけあるかと言えば、 そこはちょっと疑問だと思うし、また和解についても、当事者が自分で責任を持って提 案し、あるいは判断するという姿勢があれば、平均的に言えば十分そのくらいの期間で 終わるはずなので、関係者の意識を変えていく上では、そろそろそういうことをはっき り出しても良い時期に来ているのではないかと思う。もちろんある程度の柔軟性を持た せるのは当然のことではあるが。 ○ 塩漬け事件と言っては何だが、この頃よく倒産してしまうので、ずっとそういう状 態になっていて、事件自体は取り下げないから、事件自身はあるけれども、全く一回も 開かないでというのが結構あると思う。統計上はそういうものも入る。ああいうのはと ても始末が悪い。 ○ 特別席に入れておいて、はずすということにすると随分違う。しかもそれがあると き出てきて、事件として生き返ってしまったりすると、2,000日とか、すさまじい日数 になってしまう。 ○ 塩漬け事件は結構ある。これから増えてくる。組合側がちょっと待ってくれと言う 形で、破産管財人が出て来るにしても、向こうも宙ぶらりんである。 ○ 私は目標を何かの形で決めることがいけないと言っているわけではない。審理を早 めるためには、皆が早くしないといけないと思わないといけない。ただ、それを法律の ようなもので一律に決めるという決め方が良いのかどうかということである。終結後発 令まではどれぐらいにすべきだということ、これはむしろ決めた方が良いのだろうと思 う。それから全体として、例えば審理期間は半分にしようというようなことをいわば目 標として、努力をしていこうということをいろいろな形で明らかにするというのは良い と思う。それがあれば、ともかく早くやらないといけないということには誰も反対でき ないので、それさえもないと歯止めがない。和解については、訴訟でも、中労委でも、 いつでもその機会を狙っていて、隙あらばいつでも和解に行くということでやってい た。いろいろな証拠調べをした後で和解が出来るということもあるし、これは、本格的 に主張立証をぶつけ合って証人尋問で相手に対して思う存分言ってしまったのでは和解 は出来ないから、まず和解をしてほしいと当事者が希望してきてやる和解もある。どち らが普通だということも言えないと思う。ただ、事件の表面の事実を見れば争いの根本 は何かということが良く分かる事件でないものもあるので、そういう事件では、事件の 本当の原因は何か、法律的な要件事実として構成すると全然くみ上げられないけれど も、当事者にとってはそれが紛争の一番の根本であるというような本音が何で、紛争の 根本は何かということをできるだけ早い時期に探って、それが分かれば、それとの関係 で、まず和解をやるか、証人を調べてからでないと和解は無理だろうとか見当をつけら れることがある。記録や、書面だけでは出てこないようなことを聞いてみて、それから やり取りをしながら審理計画を立てていくことになると思う。 ○ 実質論としては、確かに個別に努力していく以外にないと思うのだが、やはり制度 自体が変わったとか、変えないといけないというような、メッセージ性を相当出してい かないと、それぞれの地労委の人の意識も変わらないし、それから労使の意識も変わら ないというところがあると思う。それがメッセージになるのだと、そのためにはどうい う形でメッセージを出したら良いのかということを考えないといけないと。そうする と、法令の改正という形で、その中でいろいろなものを入れ込んでいくということが一 番強いメッセージになるのだろうと思う。その方法としては、委員は一年というのが良 いと言っていて、私も一年ということを入れても良いのではないかと思う。もちろん一 年で済まないものもたくさん出てきて、一年ということを入れる意味がないということ もなりかねないのかも知れないが、入れないよりは入れた方が良いだろうというふうに 私は思う。もう一つは審理の計画というものを立てよということも、何らかの形で制度 化した方が良いと思う。それと上限、一年か一年半かいろいろと選択肢はあると思う が、それがワンセットになるのだろうと思う。その中で一番難しいのは、先ほどから議 論が出ている和解との調整であろう。上限を決めた中で、しかも和解というのを法律上 どこかで定めていこうと考えているので、それと上限との調整をどう図るかということ はちょっと工夫がいるかと思うが、いずれにしても、その上限と計画審理というのはど うしてもワンセットで入れていった方が良いと思う。 ○ 時間もないので簡単に。一年ということで、例えばそれを法令上一つの目標値とし て書くということはあり得ると思うが、今ぱっと計算しただけで、今の都労委のやり方 で考えたときには、仮に当事者がそれぞれ一人ずつ証人を立てたとすると、それだけで 4ヶ月掛かる。当事者が二人ずつ立てると、もうそれだけで8ヶ月掛かってしまう。だか ら、そういうこととの関係でどうかというのが一点ある。それはまた考えれば良いこと だと思うが、もう一つは、仮に目標という形で一定の期間を置くのであれば、やはりそ の前提としていくつかの条件を整備する必要があると思う。それは必ずしも法令上のこ とではなくて、むしろ実務的な問題が大きいとは思うが、最低限私が浮かぶのは、先ほ ど委員が指摘した、要件事実というのが一体何か、それをとにかく当事者が出来るだけ 早い時期に申立書なり準備書面で摘示できるというような方向に誘導するという仕組み を作るということ。それから、労働委員会関係者が争点整理というのは一体何なのかと いうことを理解してくれるような努力というのを、何らかの形で工夫する必要があるだ ろうということ。もう一つは、自分も公益委員なので天に唾するようなことになるが、 証人の採否であるとか、あるいは証拠方法、書証等の採否に当たって、その審問の指揮 なり審査の指揮という指揮権限の発動のノウハウをきちんと考えて、労働委員会関係者 に理解してもらうと。とりわけ審査委員にそういったコツというのを修得していただく と。そのための工夫というようなことが、最低限必要なのではないか。それがないと、 いくら目標ということにせよ、あるいは計画審理ということにせよ、あまり実効性がな くなるのではないかというのが、今までの話を聞いていて、また自分の経験に照らして の感想である。 ○ ちょっと一言だけ。私は、努力目標であればよろしいと思う。行政手続法で標準処 理期間と言ってきたが、初めから言うのも何であるが、あれは事件によって全然オーバ ーして構わないわけであるから、ただ早めるというメッセージだけということであれ ば、別にこれは事件によって全然千差万別なわけで、複雑な事件だったら当然一年とい うのは無理に決まっているというのが初めから前提だと思う。それはそれで、メッセー ジ性ということであれば構わないと思う。ただ、裁判所と違うところということでちょ っと言っておきたいのは、我々公益委員は裁判官のように常勤ではなく、非常勤である ということ。期日の入れ方に限界があるということ。それは民事裁判の話とは違う。そ れから、本人訴訟が若干あって、行政訴訟なども本人訴訟はあるが、やはり組合は弁護 士を付けないという場合がとても多い。その場合に、陳述書で代替させるというふうな 話とか、弁護士であれば、この頃裁判所がそういうふうにやっているので慣れていると いうことでも、組合は弁護士でない。組合も裁判に行くときは弁護士を付ける。労働委 員会は付けない。お金も掛かるからということで、自分たちでやる。そういう機関で あって、それで審問廷があるわけであるから、なかなかその辺りは多少理解してあげな いといけない部分ではないかと思う。そこがちょっと民事裁判と大きく違うところでは ないかと思う。その上で、メッセージ性ということで一年、努力目標であればそれはあ くまで努力目標であるから、構わないかと思う。 ○ それでは、別に今日結論を出すわけではないけれども、大体のところは見えてきた と思う。然るべく迅速に進める。そのためには計画審理であるとか、あるいは委員が 言ったような、背景事情については陳述書を大いに活用するだとかいうような点、こう したような点については皆異論はないだろうと思う。問題は和解の点であり、和解との 関わりでどう考えるかという、実務上、労働委員会のいわば本質的な部分に関わる問題 点と、それから、具体的に世の中が変わったと、ちゃんと然るべく早くやろうという気 に関係各方面をさせるための仕掛け、あるいはそうした思いが一時期で終わらないで ずっと続いていくためにどうしていったら良いかということで、委員の間に少しニュア ンスの違いがあったと思う。委員の場合には、かなりかっきりと規定を置いた方が良い ということであろうし、あるいは標準目標的なものなら良いのではないか、さらには、 そうしたものを法に書いたところで、なかなかうまく行かないのではないだろうか、そ れ以外のいろいろな工夫の方が良いのではないかという意見であるとか、さらには仮に 法に書くにしても書かないにしても、バックアップするためのインフラ整備が労働委員 会制度の場合には重要であるという、こうした御意見だったと思う。さらにこれをほぐ して、どういう形で最終報告にするかということは、後にその際に皆さんと御議論した い。他の論点もあるので、とりあえずこのあたりまで煮詰まったということで先へ進ま せていただきたいと思う。  そこで、もう一つの第2の論点は、「公益委員の権限」という、資料のNo.4の論点で ある。そこで、この資料No.4について、以下御議論をお願いする。 ○ 権限というのは、証拠提出命令といった話であろうか。 ○ いろいろな審査指揮、審問の指揮であるとか、そういうことも含めてなのであろ う。例えば公益委員会議で決めるというのは、まさに集合体としての公益委員の権限と いうことになる。 ○ 証拠提出は総会付議事項だから、ほとんどされなくて困っているのであるが。私の 事件でも、だから裁判所でやった方が良いのではないかという話になっている。 ○ 総会になると、というのは、総会をなかなか開けないということであろうか。 ○ そうではなく、使用者側委員が賛成するかどうかということである。 ○ 総会に掛けたら大騒ぎになる。 ○ 現実にはまず掛けられない。 ○ まず掛けられないし、掛けたら間違いなく反対する。 ○ そしてその亀裂が後々いろいろなところに影響するだろうと思うと、皆無理は出来 ない。その結果、証拠提出命令など出せなくなる。 ○ それなら裁判所に行けば出るかという話になっている。それで裁判を別途起こした りしている。 ○ 余談に近いのかも知れないが、裏技的な方法として、取消訴訟に行ったときに労働 委員会が民事訴訟法に基づく文書提出命令を申し立てるということは不可能ではない。 良いかどうかはともかく。 ○ でも、それは先に命令を出す段階では出来ないし、そうすると、そもそもそういう 重要な書類を見ずに命令を出したということになる。 ○ 現実には、裁判所に行けば大体出す。今言った話は取消訴訟ではなくて、このまま 命令を出すには証拠が不十分であると。だから、並行的にいろいろな形で民事裁判を起 こすことによって、そこで証拠を出させてしまえばいいのではないかという、非常に労 働委員会が機能しないということを言っているような話である。 ○ 労働委員会を選択するというのではなく、一方で救済申立てをしておいて、申立人 が民事訴訟を起こすということであろうか。 ○ そういうことである。 ○ でもそれはざらにある。労働委員会は手続費用がかからないので、申し立てること 自体は何のコストもないので。 ○ 証拠提出のために訴訟を起こすというのは、やはり何となく制度の建て方としては おかしいと思う。 ○ 確かにおかしいことはおかしい。 ○ 類似制度の比較で、公正取引委員会や公害等調整委員会などというのがあるが、他 の制度ではこれは実際に使われているのであろうか。 ○ それは良い質問である。ちょっと事務局の方で。他のところで制度はきちんと使わ れているのであろうかというあたりを調べていただきたい。 ○ ちょっと調べてみる。 ○ それではよろしくお願いする。労働委員会にも、もっと早くやれという規定は、実 はある。けれども全然その通りにやっていないので、だからこんなに遅れてしまったと いう部分がある。よその委員会にもひょっとしたらそういうのがあるかも知れないとい うのは、非常に良いポイントだと思う。 ○ 法律上は強制権があるのであるから、かえって始末が悪い。それが総会付議という のが問題だということだが、そういう権限があるから、委員会としては十分にツールが あると思われるわけである。ところが現実の問題として使えないということなので、出 来れば公益委員会議で使うようになると良いと思う。 ○ ものの考え方の基本をどうするかということであるが、民事事件は、基本的に言う と、当事者は自分に有利なものは出すはずだし、あるいは不利なものは出すべきだと言 われても出さなければ、それでペナルティーを受けるということでも、文書提出命令で 提出すべきだということになっても、あくまで争う態度をとる限り、出てこないものは 出てこない。基本的に民事訴訟の実務の感覚というのは、当事者が出してこない証拠は 無理に出させないで、あるもので判断する。自分の方の言い分はこうだと言っているの であれば、それを裏付けるような証拠を出さなければ、それで不利益を受ける、不利な 認定とか裁決がされて、それで構わないのだという感覚である。刑事訴訟のように、客 観的真実を発見するのが手続の使命だということではなく、紛争の解決を、それも当事 者が出してきた主張・立証だけに基づいて図っていくという手続である。しかも、労働 委員会の手続は紛争解決のために救済命令を出すか出さないか、行政処分をするかしな いかという手続で、その前提としての事実認定であるし、疎明で良いのであるから、出 てこないものを出させるために、いろいろ手数を掛けて出させていくということまでし ないといけないものなのか。どうなのであろうか。 ○ 民事裁判の場合は、出ないかも知れない。けれども、何か理由があるからというこ とで、それは不利に扱うのかも知れないけれども、当事者はやむを得ない。ところが労 働委員会の場合は、強制権限などという規定があるから、結局それを行使もしないでお いて、委員が出していただけないかとお願いしたら、これは企業秘密だから出せない と。だからといって、それを直ちに不利益に推測できるかというと、ちょっとどうか。 かえって強制権限の規定があるのに行使しない。別に命令した上で出さないと言うので あれば構わないと思う。逆の推測を働かせやすくなって、別に出してくれなくても良い のであるが、その辺りがちょっと使いにくい。だから、多少この総会というのは… ○ 強制権限を実際に使ったことがないから良く分からないけれども、これは簡単にど んどん使いやすくする方が良いものなのであろうか。どうであろうか。 ○ おそらく、問題の核心は、今委員が言ったが、労働委員会段階では企業秘密だと か、この手の人事書類は従業員には見せないことにしているから出せないとか言ってお いて、命令が出て取消訴訟になると出してくる。そこに一番の問題がある。そうする と、命令の認定した事実の基礎の部分が崩れてしまうということになってしまって、結 局命令が取り消される。そういう結果になることがおそらく問題の核心である。そうい う意味では、もちろん労働委員会段階で強制権限を行使して、書証を出させるというの も一つのやり方ではあるが、もちろんその場合公益委員会議でやるというのも一つのや り方として考え得ると思うが、それで行くのか、もう一つ別の、もう少し直接的でな い、間接的な方法で行くのかという政策的なチョイスの問題がもう一つあるのと、それ から強制権限の行使ということになると、今日の参考資料にも出ているが、おそらく制 度的にはこれまでに使われたことがないので全然規定類の整備がされていなくて、公益 委員会議で決定してその後どうするのかとか、そういうことが何もない。だから、そう いうことも少し考えなくてはいけないということと、こういうことが出来るということ になったことによって、当事者の行動が変わる可能性があるので、それがどういうイン パクトを持つのかということをもう少し詰めて考える必要があると思う。とりわけ使用 者側の行動が変わる可能性があるし、労働委員会内部における使用者側委員の対応とい うのも変わってくる可能性がある。そうすると、どういうタイミングでいつ使うのかと いったことについて、結構考えた上でやらないといけないこともあるだろうと思う。だ から、確かにあると良いのかも知れないが、そういう方法で持ってくるのが良いのか、 別の方法で持ってくるのが良いのか、いろいろな要素をもう少し精査する必要があるか というふうには思う。 ○ 使える強制権限ならば出してくると思う。 ○ それがあれば、ということだろう。 ○ 要するに、使う前に伝家の宝刀を抜くと言えば、その前に出してしまうということ であろう。 ○ 法律にあるけれども、ほとんど全く使えないというのが皆分かっている。 ○ 委員が言うように詰めないといけない問題はあるけれども、私は不勉強で、なぜ総 会の決定事項になっているのか良く分からない。つまり、命令を出す主体というのは公 益委員会議で、審理の主体は当該担当の委員である。総会というのは、そういう意味で は審理の主体でもなければ命令の主体でもないと。政治的にそうなっているというの は、それはそれで分からなくはないけれども、理論上なぜそんなところで総会が出てく るのか、今まで勉強したことがないので分からないが、どうなのであろうか。そういう 制度というのは制度としておかしいのではないか。もしおかしいならおかしいというふ うに言って、その上で具体的にどういう手続が一番合理的かというのを考えるように、 そこはもうはっきりした方が良いのではないか。政治的に遠慮したりするのは良くない と思う。 ○ ただ、これは労働側がいろいろな制度委員会等で、いつも指摘していることであ る。使用者側はこれについては非常に固いというふうに聞いている。 ○ 両方にそれなりの理屈があるなら良いのであるが、別に労働者側の立場がどうこう というのではないが、総会がそこで出て来るというのはさっぱり分からない。 ○ おそらくもう一つの問題は、委員に聞いたことがあるが、アメリカと比較すると、 アメリカは労働組合の不当労働行為というのがある。だから双面的に働く。ところが、 日本の場合は使用者の不当労働行為しかないので、片面的にしか働かない。私の数少な い経験でも、非常に困ったのは、片面的にしか働かないので、命令がものすごく書きに くいときがあることである。そうすると、強制権限の行使と言っても、労働組合もこう いうけしからんことをやっているからという話で、組合も書類を出せということが全然 ないわけである。 ○ 今ちょっと詳しいことが思い出せないが、たぶんアメリカでは何らかの仕組みが あったと思う。やはり、ある意味での中立性というか、双方性というのが一つ。後は、 やはり労働組合法自体には根拠がなくて、労働委員会規則ということで、判定機能が重 要か調整機能が重要かというところで、実際上調整機能が重要になって、それも併有し ているということから、そういう運用が固定化してしまったのではないか。判定機能だ けであればそんなに気にしないで出来るかも知れないが、実質上調整の方が重要である となると、相互の関係を悪化させるというようなことがあるということではなかろうか と思う。 ○ おそらくそのあたりの三つではないか。まずは和解で、調整的なものをいつも考え てきたから、決定的に対立的な状況を作るとその後やりづらくなる。それから労働委員 会全体の運営も、絶えず三者構成の、しかも三者の合意でやってきているから、そこで そういうことがあるとその後やりづらくなる。それから、それとの関わりでいえば、例 えば公益委員の同意も全員のハンコがいるというやり方でやっている以上は、もめてし まうと機能が止まってしまう。誰かがやめた後、全くいつまで経っても誰も選ばれない ということになりかねない。それから、最後が委員も言ったような、日米の不当労働行 為制度の違いであって、つまりここであまり公益委員だけがやるということを言うと、 以前から使側にくすぶっている、労働側の不当労働行為制度をなぜ作らないという、こ れが出てきてしまうとにっちもさっちも行かなくなってしまうとの懸念もあったろう。 こういったものが全部絡まりながら、一旦作ったものがどうにも動かなくなったのでは ないかという気がする。 ○ 小さい枝葉のことであるが、確かにここの権限だけにらんでいると、総会付議事項 になっていなくても良いのではないかというのも良く分かる気がするが、今言ったこと とは全然別に、今は総会付議事項になっていることについて、ここの意見で公益委員会 議の権限に改めるべきだという結論を出すとすると、その理由を付けなくてはならな い。今の権限はちっとも使われないから、もっと使い勝手を良くするのだというのは、 何で使われないかというのが、総会は非常に重い手続だからというだけであれば良い が、その中身まで言うと、それはちょっと書けるかという感じがする。 ○ 機動性を高めるとか。 ○ そうである。総会というのをわざわざ開くのは、大げさすぎるからもっと機動的に やれるようにすべきだという理由であろう。 ○ あと、先ほど委員が示唆した、新証拠の提出制限をうまい形で組み込めれば、それ がある種の抑止力になるかも知れない。それは別の問題かも知れないが。 ○ それはそれでまた別の話になってしまうと思うが、強制権限という形で行くのが良 いのか、もう少しソフトな形で持っていくのが良いのか、ちょっと考えどころかという 気がする。ただ、ソフトな方がもっと難しいと言われると、それはそこで止まってしま うので、もうこちらを考えるしかないという気がする。ただ、強制権限を仮に公益委員 会議なり何なりの判断で出来るということで、今よりもやるのだという話になると、か なり当事者の行動が変わる可能性があって、それは良い方に行くのか悪い方に行くの か、ちょっとあまり見通しが立たないという気がする。 ○ 労使委員の関係みたいなものにも影響するか。 ○ 影響する。 ○ ひっくり返るという場合だけでなくて、賃金差別などというのは、出てこなかった らどうしようもない。 ○ 確かに材料がないので。 ○ 書きようがない。 ○ 懲戒処分で、懲戒理由の事実を出さないというのは、たぶん不利な心証形成が出来 ると思うが、同僚との能力の差がどうかと言われると、結構大変だと思う。 ○ 強制権限の前で、罰金とかの非常に強いものがあるというのは、逆に言えば命令を 出して、それでも証拠を出さなかったというときに、裁判所で出したら命令違反だとい うことで、つまり裁判所で初めて証拠を出すということを制約することになる、という ことにはならないのだろうか。つまり、労働委員会で出さなかったものを後出しにする ということを制約的に働かせると。罰則があって、裁判所で初めて出したら告発する と。命令違反で出さなかったのに、裁判所で出したら、ということで。 ○ それはいずれにしても、命令を出さなければならない。 ○ そうである。だから、命令を出すということにして、さらに罰則があるというの は、そういう働きがあるということになるのではないかと。 ○ ただ、裁判所がそれをそういうふうに取るか。まさに時機に後れた攻撃防御方法の 却下なり何なりで、労働委員会の段階で強制命令が出ていて… ○ あれは訴訟の中で遅れているかどうかである。 ○ そうである。 ○ ただ、後でひっくり返されるという問題はもちろんあるが、何よりも前提として強 制権限をまず行使しないといけないので、それがそもそも出来ない。 ○ 行使したって良いし、今の話で言えば、行使しても良いけれども、法人の場合は罰 金20万円なんて大したことないと。それなら罰金でも何でも払うけれども、証拠は出さ ない。命令でも何でも出してくれと。やはり裁判所に行ったらまた新証拠を出してく る。そういう行動を取られるとどうしようもない。 ○ そこの部分は、労働基準法でも何でもおよそそういう世界があるので、そこまで言 うと、せいぜい罰金の額をちょっと引き上げる程度しかやりようがない。それを越えて 言うのは、ちょっとなかなか難しいかなという感じがする。そこはあきらめるしか仕方 がないという感じがする。 ○ 日本は裁判所侮辱罪などもないし、結局そういう意味での強制権限は弱い。 ○ 委員の言われる片面性、双方性の問題はなかなか大変で、そのように片面的に出来 ているものを、使側に強めていこうというふうになれば、それは強めるのは仕方ないけ れども、双方性にしろと。片面性はおかしいではないかという理屈が出てくる可能性が ある。しかも訴訟に行ったときに、使側だけが片面的に不利な扱いを受けるというの は、とても通る理屈ではないのではないか。 ○ まさにそうである。こういうことに踏み込めば、返す刀で必ず言われる。 ○ それは実体法の問題であるから、そういう改正というのもあり得ると思うけれど も、今の制度を前提にした、例えば組合側、労働者側が自己の不利になるものを出さな ければ、それは申立てを棄却してしまえば良いだけの話であるから、そういう意味での 不利益がないわけではない。それをさらに越えて組合側、労働者側の不当労働行為とい う新しい類型を考えるかどうかと。これは非常に大きな話であるが、それを考えなけれ ばこの強制権限についての手続的合理化が出来ないということはないと思うが。 ○ 理論的には全くその通りであるが、たぶん労働委員会の手続や審査というのはいろ いろなところで片面的で、例えば資格審査もそうであるし、そういうのが全部パンドラ の箱を開けてしまった形で、出てくる可能性がある。もっとも、資格審査は結局、不当 労働行為審査と切り離されてしまっているというふうになっていたりとか、いろいろな ことがあるので、それを気にしていたら始まらないというのは確かである。だから、理 論的には委員の言う通りである。公益委員として、これが公益委員会議で決定できて使 えるという話になれば、上手くやればかなり良い面を持つというのはその通りだと思 う。 ○ それから、変な話かも知れないが、審理の促進にもなる。それが得られないから、 仕方なく延々と、隔靴掻痒の証明を聞いていないといけなくなったり、全然関係なさそ うな書証を読まないといけなくなるということがある。確かに、ベスト・エヴィデンス かベター・エヴィデンスが出てくるようになるというのが非常に良いことだろうとは思 う。 ○ そういう意味で、理論的にこういう方向もあり得るというような何らかの、形はと もかくメンションをするというのがあり得るとは思う。それにしても、現実的な実現可 能性を考えると、やはり代替的なものもあり得るかとは思う。 ○ とにかく、一つの理屈は、審査委員は公益委員であるわけだから、本当は出来て良 いはずである。 ○ 理屈はそうである。証拠の必要性は審判する主体が判断する。それは手続法の大原 則であるから、そういう意味で理屈は通る、一番どこに求めるかというのは通ると思 う。 ○ ただ、政治が通らない。 ○ ただ、他方で強制権限行使を公益委員会議で決定できるということになると、ある 意味で当事者の行動が変わるというのは、良い面で変わる可能性もあって、行使できる ようになったから、今度は行使しなくても出てくる可能性がある。結局行使しないとい うことはあり得る。 ○ だから、いろいろと政治的な反応とかで、実現まで行き着けるかどうか分からない が、出してみないとそれは分からないし、初めからそれで出さないというのではなく て、手続的には十分意味のある説明を付けられるのであれば、出しておくというのはど うであろうか。落としてしまうというのはどうだろうか。 ○ 民事訴訟で文書を提出するというのは、使用者側としても、どうせ裁判所に行けば 出さないといけないということもあるし、それに拒否しているというのも、何も自分に 不利だから出さないと言っているわけではなくて、例えばプライバシーであるとか理屈 を付けて出さないと言っている。 ○ 有利なこともあるかも知れない。 ○ 非常に難しいけれども、大体の方向は、しかしやはり避けて通るのはおかしいとい うことだろう。報告書としては、しかるべき指摘はきちんとすべきであろうということ であったし、裁判所の文書提出命令などとの関わりで、労組法等はそれ以前に作られた ものであるだけに、やはり平仄を合わせていく改正が望まれよう。類似の制度の比較と いうのを見ればお分かりのように、何か労働委員会というのはあまりにも性善説という か、無手勝流というか、随分あっちもこっちも何も対応措置を整えないままに来ている ので、他のADRであるとか、裁判所等の動きの流れと平仄を合わせるということを、今 回やるべきではないだろうかという感じがする。その上で労働委員会の特殊な性格もあ るので、それはまた別途考慮するということではないだろうか。  では、そういうことで、今日はあと二つ、粗々で結構なので御意見をいただいておか なければならないものがある。次に、審査の実施方法(審問・合議の在り方)である。 これについて、御意見をいただければと思っている。よろしくお願いする。 ○ これは、事実上意味があるのは、東京と大阪等の、大きな労働委員会だけである。 ○ 案のところから、事務局が一文ずつ読みながら、皆で検討するなどというところが あるというふうにも聞いている。 ○ 事件がめったに来ないところはそうである。 ○ 意外と、そんなに暇でもない委員会でも、千葉などは二人制的にやっている。ベテ ランとフレッシュパーソンとがくっついている。これは、フレッシュパーソンにとって はOJTで非常に良い。これは委員も以前、こうしたようなことを考えた方が良いと言っ ていた。そういうことをやっているところもあるようだ。 ○ 新米にとってはそうしてもらわないと。 ○ 何しろ極言すれば、ほとんどOFF-JTもなければOJTもないというのが労働委員会の 公益委員に対する対応である。 ○ いきなりやれと言われる。  例えば、今は合議を13人等でやっているが、それを例えば合議体半分ぐらいで二つ並 行してやるというのはどうであろうか。 ○ 同じ時間で並行してやるというのは良いかも知れない。 ○ 何も、一つの事件を13人全部でやるという必要は必ずしもないかも知れない。いか がであろうか。 ○ その通りだと思う。 ○ だから、一つは会長が司会して、もう一つは会長代理が司会して、二つ走らせると いうのはあると思う。 ○ 一応、倍出来るということになる。 ○ 小法廷式のやり方の実際上の問題点というのは、委員の経験だとか、専門性である とかが等質でないので、分けるといろいろな出身の人が同じ比率で入らないということ になる。実際上それが大きいところでしか動かないとすると、東京・大阪だけで、少な くとも半数という構成であれば、大丈夫であろうか。 ○ 半分だったら何とかなる。 ○ これは、今は小委員会方式が取れないというふうに考えられているわけであるか ら、取れというのではなくて、取れるという条文があれば良いわけである。やるかやら ないかはそれぞれの労働委員会が考えなさいと。したがって、出来るというのをやって はいけないという反対論、あるいは抵抗というのはそれほどではないのではないかとい う感じもする。 ○ 柔軟にすべきであるということであろう。 ○ これは、私は柔軟にしても良いのではないかという気がする。あとは、会議を後ろ で支える事務局員の負担の問題であるとか、それぞれの地労委の状況があるだろうか ら、それはそれぞれの地労委で適宜判断すれば良いだろうし、先ほど言った専門家の専 門度のばらつきとの関係で、出来ないところは仕方がない、出来るところはやるとい う、そういうことでも良いのではないか。あとは、それを労働委員会の命令として出す ということさえ規範上オーソライズされればそれで良いわけである。 ○ それで、必要なものはいわば大法廷的に、例えば命令の在り方を変えるとか、全く 新しい種類の事件であるといえば全体でやる。そこは柔軟にやれば良いだけで、出来る というようにしておけば良いような感じがする。 ○ 非常勤でなければいけないというのは決まっていたであろうか。 ○ 地労委はそうである。 ○ 中労委はどうであろうか。 ○ 中労委も非常勤になっている。 ○ 中労委は二人常勤が可能であるという。 ○ 中労委は二人以内は置ける。 ○ 地労委は全員非常勤というふうになっているのか。 ○ 地労委は全員である。これも常勤を置けるというふうに変える、つまり、置きたく なければ置かなくて良いが、置きたければ置けるというふうに変えることが出来るか。 ○ 事案処理のスピードを考えると、常勤がいた方が絶対に処理が早い。 ○ それはそうである。事件によっては、大型の事件だというものは常勤の人にやって もらうというふうにすると随分違う。 ○ 全然早い。情報公開審査会であっても、常勤がいるからどんどん進んでいっている わけである。 ○ あと、小法廷方式、小委員会方式にすると、たぶん公益委員一人当たりの命令作成 分担が増えることが予想される。そうなると、ちょっとなかなか難しいことになる。 ○ なぜであろうか。 ○ 回数が増えるということであろう。 ○ でも、事件が増えなければ。 ○ たくさん落ちるということにはならないだろうか。合議のときだけということであ ろうか。 ○ 合議のときだけ。事件の配点は全体で、要するに小法廷に対するバランスを考えな がらやるということである。 ○ だから、スピードアップしてくるということが負担だといえば、それは確かにそう であるけれども。 ○ 一人当たりの量は変わらないと。 ○ 事件の総量自体が変われば別であるが、変わらなければ同じである。 ○ 2倍のスピードになる。 ○ スピードだけ速まる。 ○ それで、小委員会方式でやったときに、それが同時に一種のリファランス・ボード というか、ちょっとこういうことで皆の意見を聞きたいというときに、小委員会がそう いう問題について、皆で事件の進行途中などいろいろなところで対応出来るようなこと があると、これも新人とか、あるいは必ずしもロイヤーでない人にとっては非常にあり がたい。今は、公益委員全員が集まる機会というのは、本当に公益委員会議のときだけ で、それ以外だと、個人的に相談はしているが、ある人がある人に個人的にだけ聞くと いうのが良いかどうかという問題もあるので、もう少し小委員会方式でやることによっ て、ちょうど裁判官が絶えず三人で年中議論しているような、ああいうのが労働委員会 の場合に可能になるというのも一つのメリットかという感じがする。 ○ これは案として、合議まで小法廷でやるというのと、合議は大法廷に移すというの と両方あるわけであろうか。 ○ 理論的には両方あると思うが、合議も小法廷ということではないか。 ○ 合議も小法廷で良いと思う。 ○ 小法廷で良いのではないか。 ○ 大法廷を回さないといけない事件というのがあるかどうかというだけのことであろ うか。 ○ そういうことである。 ○ そうすると、審問も一人ではなく、小法廷でということになるのか。 ○ 審問は一人でやらないと回らない。 ○ 非常勤がいて、それがそれで小委員会方式で対応したら絶対に回らない。 ○ とても回らない。 ○ しかも、小委員会は5人とか7人とか、いずれにせよ大きくなるので、それ全員がや るというのは、またいろいろな意味で事件処理の効率性からしておかしい。コスト的に もものすごく掛かる。裁判所でさえ三人でやっている。 ○ それをやると、確かに忙しくなる。他の人が主任のものでも全部立ち会わないとい けなくなるので。 ○ 新米の公益委員がちょっとくっついて、組み合わせるぐらいはあり得るかも知れな い。場合によっては公益委員が二人出ると。きちんとした小委員会全てで審問というこ とではない。 ○ そうすると、方向としては強制するということでなければ柔軟化することは結構で はないかというのが皆の意見であったと思う。他に何かあるか。 ○ 先ほどの、常勤を置くことが出来るとするのは可能なのであろうか。実際に置くか どうかはともかくとして、法律上なり何なりで書き込むということは地方公務員法の改 正になってしまうのであろうか。こちらだけの話であろうか。 ○ 労働組合法で書いているので。 ○ そこ全部、一文を取ってしまえば良いのではないか。「何人まで」とか書かないと いけないのだろうか。 ○ 実際に条文を練るときは、確かに消してしまうか、明記するか、それはいろいろ悩 むところである。 ○ それは立法の一つの問題である。 ○ もう一つ、御議論としては、中央労働委員会に入れるかどうかというのもある。地 労委ではなくて。その辺も御意見があれば、御議論いただきたい。 ○ 中労委は入れることになっているのか。 ○ 常勤は二人以内ということになっている。 ○ 「以内」ということか。 ○ そうである。 ○ だから、これも二人である必要があるかどうかというのもあるし、あるのになぜ やっていないのか。これは運用の問題になるが。 ○ 常勤というのは恒常的にどれだけ人が得られるかという問題があるだけで、人が得 られさえすれば、常勤でない方が良いということはちょっとないのではないか。 ○ 中労委の話をしたのは、小委員会方式の話で。 ○ それはその通りだと思う。中労委は大合議だけにするかどうかというのが、法令解 釈の統一ということを機能として強調すると、そういうこともあり得る。 ○ ただ、15人であるので。最高裁と同じ人数でやって、しかも一応不当労働行為制度 の統一的な行政上の方針は出すということにすると、その後裁判所に実際、かなりの事 件が行ったりしているということを全部考えるとどうか。しかも、最高裁であっても、 最終的に統一していても、大部分は小法廷で統一しているわけであるから。  というわけで、もう少し機動的に、機能的にやれるようにするには、そういうことを やれないというような規定は出来るだけ、そういうふうに読まれてきたものは出来るだ け柔軟化した方が良いのではないかということを思うのであるが。 ○ 先ほど地労委は個々の感覚でという話であったが、中労委もそういう感覚で考える のであれば、できる規定で入れるということで、後は中労委で検討されてということで 良いのではないかと思う。 ○ 縛る規定になるので。 ○ あまり縛らない方が良い。中労委の判断にお任せするという方向でどうだろうかと 思う。 ○ 少なくとも、労働委員会であるから非常勤でなければいけないという積極的理由は ないだろう。これは確認しておきたいが、きっと何かそういう理由があって立法当初は こうしたのではないかという感じがするのだが。 ○ 確か何かで、あまりはっきり記憶はないのだが、非常勤であれば、労使に中立的な 立場を、いわば地位にこだわらないことが出来るというような説明があったかも知れな いが、それがどれだけ納得性があるかというと、現在においてはどうなのか。それでは 裁判官は常勤でどうなるのかという話にもなる。実際は、当時の政治的な状況というこ とがあったのかも知れない。 ○ あまり議事録に残るような形で言ってはいけないのかも知れないが、地労委は確か に自治事務であるとかいった関係があって、なかなか縛りのかけ方というのが難しいと 思うが、中労委の場合には、むしろ自分たちで決めろというような形にしておくと運用 が出来なくなったりして、むしろこうでなければいけないというようなものを、どのぐ らい置いていくかということを考えて、そういう観点からも御議論いただけたらと思 う。 ○ おっしゃるとおり、中労委の判断で置くということは実際出来ないと思う。 ○ ただ、私たちは都労委の合議は分かるけれども、中労委の合議は分からないので、 ちょっと何とも言えない。 ○ 意見が言いにくいところはある。 ○ こちらは逆に分からないけれども、そう違ってはいないのではないかという感じが する。15人で行っている。担当の委員の意見はやはりそれなりに尊重されるけれども、 中労委の場合には相当程度、中でやり合って、場合によっては結論そのものさえも変わ って来ることもあるという、まさに合議という形で展開されている。 ○ 15人というのは、合議体としては多すぎるという気がする。 ○ 常識的に言えば5〜6人のような気がする。 ○ その5人で、例えば1対4で意見が割れたとする。この1人は、残りの10人は全部賛成 であるはずだと思って、やはり全員で話してくれというようなことはないのだろうか。 ○ そういうこともあり得ると思うが、その辺りのルールはその次のもので何らかのも のを考えておかないと、確かに場合によっては機能しなくなるということもあり得ると 思う。 ○ たぶん、小法廷にする際にどういう構成にするかとか、その小法廷は常に変わるの か、あるいは固定的なものかとか、そういう整備を考えて、その中で中労委としてはこ ういう意味で常勤が必要だという方向性が出てくるのではないか。おそらく、一つは専 門性のある人を確保するためにはというような考慮が働いて、小法廷になると、やはり その人を確実に確保するための常勤化とか、そういう意見も具体的な仕組みの中で必然 的に出てくるのではないかと思う。 ○ そういう意味では、中労委の常勤の人がいて、というような方が望ましいと思う。 ○ 都労委も最近そういうことが出てきたと思うが、中労委の場合はもう一つ、取消訴 訟対応という問題で、これは委員も前から主張しているが、訟務検事などが事務方の方 で入るのでも良いだろうし、そうでなければ常勤の委員の方で取消訴訟はかなりの程度 対応できるようにすることも考えられる。現実には弁護士資格を持っている方がいるか いないかで随分違う。取消訴訟の負担というのは想像以上に重いものがあって、人に よってはそれをたくさん抱えて、しかもここで負けると大変みっともないというような 圧力を皆から受けるので、一生懸命やるわけである。例えば委員だと何の問題もないわ けであるが、私の場合だと、所詮元々が一介の法律学者であるから、そういうことが得 意な人材ではないので、そうした実務のきちんとした訓練を受けた人に、是非やってい ただきたいという思いでいる。その上で補佐役に付くなら良いけれども、自分がそれの 責任者のような形で指定代理人になるのは、ものすごく辛いものがある。 ○ だから、中労委で小法廷という形でいくつか作ることになれば、やはりそれに対応 した数の常勤の人がいるというのが望ましいかという感じがする。 ○ それでは、何度も申し上げるが、今日は結論を出すわけではないので、「運用の改 善」という部分も連続したテーマであるから、第4、資料No.6についてもその他のこと でお気づきの点があれば御意見をいただきたい。 ○ これは前からの注文であるが、申立ての様式の工夫というのは是非やっていただき たい。先ほど委員が言ったことと密接に関連するが。 ○ 丸の三つ目であろう。上から三番目に重要なものがあるようである。 ○ 前にも申し上げたのであるが、類型化の作業と併せて、類型ごとの実務的な記載要 領のようなものも必要だが、もう一つ定型申立書様式の問題がある。定型申立様式であ まりスペースを取っていないものを作ると、簡単な申立書が普通になる。 ○ 申立書はその工夫が大事だと思う。これを出すときに、事務局の方である程度の調 査などをすると思うが、最初に聞き取りするときに、この申立書にどういうふうに書い たら良いのか、特に弁護士が付いていないときというのは、そういう相談機能のような ものを高めておくというのはどうであるか。 ○ 実際にはあまりやっていない。 ○ でも、そこで事務局の資質をだいぶ高めておけば、かなりの部分はその段階ではっ きりするのではないかと思う。 ○ ただ、事務局もかわいそうなところがあって、あまり言うと組合にだいぶおこられ るらしい。その辺りは難しいところのようで、特に初審で一番初めの段階であるから。 ○ 好きなようにやらせろという圧力が非常に強い。 ○ それで悩んでいる。 ○ でも、それで生のぐちゃぐちゃのものが出てきて、そこに非常勤の委員が来て、短 時間で整理しろと言われても出来ないのではないか。 ○ 出来ない。 ○ やはりそこに出てくるまでにある程度整理されているという状況を、何とか作る努 力をしないといけない。先ほど、時限を設けるための前提条件だと委員が言っていた が、その一つなのではないか。 ○ 組合に陳述させると長い。本人訴訟であるといっても組合であるので、背景から始 まって、過去の闘争から言わせておいたらいくらでも出てくる。 ○ 書かせたらどうか。 ○ それが、書いてくれとお願いすると結局嫌だと言うことがある。陳述書で出させ て、陳述書で出ているからなるべく簡単にしてくださいと言っても、証言は一番最初か ら始まる。 ○ 弁護士がいれば慣れている。組合の場合はいくら本人と言っても、いろいろあるの で難しい。 ○ 申立書の現状であるが、この間課長会議で調べたのであるが、うろ覚えで申し訳な いが、ほぼほとんどの県で、32条各号に沿った書式又はその説明書のようなものは作っ ているということである。ただ、具体的に例えば号別の例文を作っているような県はや はり少数である。 ○ 作っているところがあるのか。 ○ いくつかはある。一号とか二号とか、まさに申立書に○○で書いたような例文を 作っているような県があった。ただ、今後モデル様式を作るとか、争点に沿った聞き取 りをする等ということは課題だと思う。 ○ それは他の地労委にも紹介しているのか。 ○ 47地労委全部に聞き取りした。そういう会議があるので。まず事前にアンケートを 取って、当日会議資料として配布している。 ○ なぜ半世紀に渡ってこういうことをやらないで来たかという部分が、ある意味で非 常に不思議な感じがする。 ○ やはり、そういうものだと思って、そういうものだと思う中には、言いたいことを 何でも言わせろというのと、それを聞いてやるための手続だという大義名分があって、 それで違う考えは出にくいのだと思う。 ○ つまり、やはり労働委員会に世間が期待した機能の違いだと思う。したがって、そ れを制限するようなものは非常にやりづらかった。 ○ 弁護士が、労働委員会であれば弁護士を頼まないで来ると言う。その辺りの違いで ある。訴訟となるとそうは行かない。 ○ それと、丸の方で、先ほどは三番目であったが、五番目について、これも可能であ れば是非取り入れていただければというように思う。 ○ それは私も賛成である。規定を置くだけで実務が全部変わるかというと、そういう ものではないが、規定もないと変わるきっかけがないということも間違いないと思う。 ○ というわけで、まだまだ論じればきりがないのであるが、今日のところは再開第一 回目であるので、この程度に止めさせていただいて、まずは一渡り全体を検討させてい ただき、その上で事務局に鋭意整理してもらい、報告書案を今後示させていただきた い。何か今日のところで言い残した部分、あるいは今後の課題との関係で、少し宿題と して事務局に考慮してほしいというような注文はあるか。  それでは、時間となったので本日の議論はこの辺で終了させていただく。資料No.2に あったとおり、次回は5月23日(金)の同じく2時から4時を予定している。場所は、今 回と同じ専用第13会議室である。どうぞよろしくお願いする。本日はどうもありがとう ございました。                                      以上 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係 岩崎、朝比奈    TEL 03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734(直通)