03/05/02 ゲフィチニブ安全性検討会平成15年5月2日議事録              ゲフィチニブ安全性問題検討会              日時 平成15年5月2日(金)              会場 厚生労働省 本館17階 専用第20会議室  事務局  定刻になりましたので、ゲフィチニブ安全性問題検討会を開催させていただきます。 本日はお忙しい中、またお休みの間であるにもかかわらずお集まりいただきまして、あ りがとうございます。本日の会議はご覧のとおり公開で行うこととしておりますけれど も、カメラ撮りはこの時点で終了とさせていただきたいと思います。ご承知おきをお願 いしたいと思います。それでは以後の進行を座長のほうにお願いしたいと思います。よ ろしくお願いいたします。  松本座長  皆さんこんにちは、松本和則と申します。先回に引き続きまして、座長を務めさせて いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず事務局から、本日の配 付資料の確認をお願いいたします。  事務局  まず、配布資料の確認をさせていただきます。お手元の資料、議事次第の下に「配布 資料一覧」という1枚紙があるかと思いますので、こちらをご覧いただきながら、配ら れております資料に不足がないかどうかご確認いただければと思います。まず資料No. 1、「イレッサ錠250の申請から市販後までの経緯」ということで、1枚紙があります。 それから資料No.2が「前回の検討結果に基づく対応について」という資料でございま す。資料No.3が少し分厚い資料でございますが「企業における「今後の対応」への取 り組み状況」という資料でございます。それから資料No.4が横長の表でございまして、 ちょっと長いタイトルでございますが報告例数と死亡例の数を示した表の資料でござい ます。4枚のペーパーになっております。それから資料No.5が「市販後に報告された 急性肺障害及び間質性肺炎の副作用症例の状況」ということで、4月22日現在のものを まとめた縦長の表でございます。それから資料No.6でございますが、「その後の安全 対策(医薬品の使用上の注意の改訂について)」という資料でございます。それから資 料No.7、これが枝分かれしておりまして資料No.7-1が「国立がんセンターにおける症 例について」という資料でございます。それから資料No.7-2が「その他の症例について 」という資料でございます。それから資料No.8に移りまして、まず資料No.8-1といた しまして「承認条件の実施状況等について」という資料でございます。それから資料 No.8-2が、前回もお配りしておりますが「第43回日本肺癌学会総会抄録」という資料で ございます。それから資料No.8-3でございますが「インタクト試験について」という資 料でございます。それから資料No.8-4といたしまして、「臨床試験における国内外の有 害事象等の状況について」というものでございます。それから資料No.9が「前回資料 (資料No.4)の訂正」という資料でございます。これは前回資料の訂正でございます ので、この配布資料の確認がなされましたあと、ただちに簡単にご説明させていただき たいと思います。それから資料No.10でございますが、厚生労働大臣宛に出されており ます「イレッサ(ゲフィチニブ)の使用中止に関する要望書」というものでございま す。それから資料No.11が「審査報告書」のコピーでございます。  配付資料は以上でございますが、不足等がございましたら、お申しつけいただければ と思います。  松本座長  資料がたくさんありますけれど、委員の先生方、そろっていますでしょうか。ここで 資料の訂正があるそうですので、説明をお願いいたします。  事務局  先ほど確認させていただいた資料のNo.9でございます。前回資料の訂正をさせてい ただきたいと思います。前回の資料No.4と申しますのは、承認までに報告された副作 用症例報告一覧というものでございます。主な訂正内容を資料No.9の表紙のところに 記載させていただきました。海外から報告された副作用症例報告数ということで、196 例となっております。これは訂正はございません。その内数になっております死亡数に 誤りがありましたので訂正させていただきます。前回、55例としておりましたが、1例 増えまして56ということで、増えた症例の累積番号、これは資料をめくっていただきま すといちばん左のところに累積とあります。その累積番号182の症例でございまして、 これは日本人の症例で肺臓炎で亡くなった患者さんということでございます。この1例 について死亡の欄にミスがございましたので、訂正させていただきます。この症例につ きましても、他の報告された症例と同様に、副作用報告に基づいて評価をしているとい うことでございますが、この表を作成する段階において副作用による死亡の欄に記載を し忘れていたということでございます。その他に肺がんのステージの記載等で修正がご ざいます。少し見にくいのですが訂正箇所は太字で編みかけをしておりますのでご覧い ただければと思います。資料作成にあたりまして不備がございましたことを、この場を お借りしてお詫び申し上げます。  松本座長  本日は参考委員として4名の先生をお呼びしておりますので、ご紹介します。席順に 沿って紹介させていただきます。杏林大学医学部教授の遠藤仁先生です。続きまして国 立がんセンター中央病院医長の大江裕一郎先生です。名古屋大学医学部教授の下方薫先 生です。医薬品・治療研究会代表の別府宏圀先生です。先生方、お忙しい中をご出席い ただきありがとうございます。それでは早速、議題に入りたいと思います。本日はたい へん議題が多く、配布資料も多いので、終了時刻を超えてしまうことがあるかもしれま せん。あらかじめご承知おきください。できるだけ効率的に会議を進めたいと思ってお りますので、ご協力をお願いいたします。それでは最初の議題である、「今後の対応」 の実行状況と最近の副作用発現状況について、まず事務局から、資料No.1〜6に基づ き、説明をよろしくお願いいたします。  事務局  それでは事務局より説明いたします。まずお手元の資料のNo.1をご覧いただきたい と思います。これは前回もお配りした資料でございますが、イレッサ錠の申請から市販 後までの経緯を示したものでございます。平成14年1月25日に承認申請がなされ、7月 に承認され、その後、この検討会を12月25日に開き、その翌日に措置を講じた、そのあ たりが1枚紙で示してあるものでございます。  続きまして資料No.2に移らせていただきます。こちらの資料は、今申し上げました 前回の検討会を開いた翌日に、この検討会でおまとめいただきました今後の対応を受け まして、われわれのほうからアストラゼネカ社に対して、4つの事項について指示した ものでございます。今後の対応として5つの指示事項がございましたが、そのうち4つ が企業向けということでございましたので、その内容について漏れなく、翌日の段階で 通知として指示をしたというものでございます。具体的には3ページ目に今後の対応が ついてございますので、また、本日のご議論の参考にしていただければと思います。  実際、これらの今後の対応につきまして、どのような取り組みをしているかというこ とで、現在の状況をご説明したいと思いますので、資料No.3をご覧いただきたいと思 います。こちらの資料に、とりあえずひととおり、今、資料2で説明いたしました指示 事項に関しまして、どのような取り組みをしているかということを整理してございま す。各指示事項の項目ごとに分けてございますので、順を追って説明いたします。  まず1番といたしまして、医療機関への情報提供の徹底という点に関してでございま すが、12月26日から現在に至るまで、断続的に、ここに掲げましたような対応をとって きております。同じ情報提供の方法をアップデートといいますか、改訂を繰り返してい る部分もございますけれども、とりあえず新しい部分といいましょうか、別添として資 料をつけさせていただいているものが直近版ということでご理解いただければと思いま すので、まずこの資料の性格づけだけについて、ここで少し触れさせていただきます。  まず1番でございますが別添1ということで、これは6ページについております。 「改訂のお知らせ」ということで、後ほどまた議論の際にご活用いただければと思いま す。それから番号が飛びますが5番ということで、別添2としてつけておりますのが 「海外臨床試験における安全性に関するご報告」ということで、ページで言いますと14 ページになります。それから8番でございますけれども、別添3ということで「イレッ サ適正使用のために」という資料でございます。これが16ページになります。それから 9番といたしまして別添4がついておりますが、これが17ページについておりまして、 専門家委員会、社内の専門家委員会ですが、その中間報告、サマリーというものを17ペ ージに示しております。それから10番といたしまして、「適正使用のお願い」文書とい うことで、別添5として18ページについております。それから11番でございますが、別 添6ということで、3月20日以降の改訂内容を示した文書が、この資料で言いますと20 ページについております。それから番号が飛びますが13番といたしまして、別添7でご ざいますが、これは30ページに示しております。「専門家会議最終報告」ということで ございますので、また後ほど、適宜活用していただければと思います。それから14番が 別添8といたしまして、「処方時チェックシート」というものでありまして、この資料 で言いますと38ページになります。それから18番以降でございますが同意文書、患者あ るいは家族向けの文書、それからイレッサ錠に関する説明という文書、さらには薬袋に 入れます指導箋といいますか、そういうものにつきまして、別添9から12までがついて おりまして、それぞれ39ページ以降に、本日の資料としてつけさせていただいておりま す。内容は時間の関係で省略させていただきますが、今お示ししたページのところにつ いておりますので、適宜ご覧いただければと思います。  それから1ページおめくりいただきまして、2ページに移らせていただきます。2番 といたしまして、服用者向けの情報提供資料というものをつくることによって、直接、 注意喚起を図るという指示でございましたが、これに関しましては、今申し上げました 関連の資料でございますが別添10、11、12といった資料におきまして、患者家族あるい は薬袋用の指導箋、そういったもので文書を用意しておりまして、これを現在、使って いるという状況でございます。  それから3ページ目に移らせていただきます。3点目の指示事項でございますが、承 認条件の件でございます。承認条件が、早期に実施するとともに、専門家による検討会 を設置するという指示でございましたが、これに関しまして、まず、承認条件に関しま してはここに示したような、1、2という承認条件がついておりまして、それぞれ簡単 にその概要が書いてございます。これは後ほど、議題3のところの承認審査についてと いう議題の中で、あらためて詳しく取り上げさせていただきますので、この資料の中で はその概略だけを示してございます。後ほど議題3のところでご議論いただければと思 います。それから2)でございますが、専門家会議を会社の中で4回開催しておりまし て、3ページ目から4ページ目にかけて書いてありますような、そういう検討をしてき ているという状況でございます。その最終報告書が、先ほども申しましたが別添7とい うことで、この資料の30ページについておりますので、ご覧いただければと思います。  それから4点目の指示事項についてでございます。情報提供の実施方法の再検討とい うことと、プロスペクティブ調査の実施という内容でございますが、これに関しまして は4ページ目に書いてありますとおり、この薬剤専用の詳細調査票等を作成することに よりまして、情報収集あるいは情報提供というものを徹底して行っているという状況で ございます。なお、4ページ目の下のところに書いてありますように、市販直後調査と いうものを6ヵ月間で終了するわけですが、その6ヵ月間たったのちも、自主的にその 内容と同じような活動を続けているという状況でもあります。  それから5ページ目です。説明と同意、あるいは前回おまとめいただきました投与開 始後4週間の取り扱いといったことの状況でございますが、これは具体的に資料をご覧 いただいたほうがわかりやすいと思いますので、別添14ということで61ページをご覧い ただきたいと思います。A4横の資料ですが円グラフが2つあります。まず、左側の円 グラフが入院の状況で、4週入院をしているというところが52%、それから4週未満、 さらに医師の判断、入院に準ずる管理によるフォローを行っているということでござい まして、入院をしていないのは3件ということで、非常に少ない状況になっておりま す。それと右側の円グラフが説明と同意の取得状況で、これに関しましても医師の判断 というものが2%ございまして、その他は文書同意あるいは口頭同意、同意取得方法を 検討中というものでございます。なお、この医師の判断というものにつきましても注に 書いてございますとおり、病院の統一見解ではなく医師の判断によって同意取得方法が ばらばらの施設ということで、個々の先生方が見て同意を取っているという状況という ことでございます。施設ごとに調べるとやり方が違うという、そういうふうな、この資 料の読み方になろうかと思います。  急ぎ足でございましたが、今後の対応に関する取り組み状況をご説明いたしました。  なお、4点目の指摘事項の2つ目ですが、プロスペクティブ調査に関する資料につき ましては、その次のページ、62ページに具体的な実施計画をつけております。調査予定 症例数3,000例ということで、間もなく、ここに示しました計画に基づいて実施される というふうにうかがっております。その実施予定時期は62ページの6番のところにあり ますように、6月からという予定になっております。  続きまして資料No.4をご覧いただきたいと思います。これまでの取り組み等を受け まして、今現在、副作用の発現状況がどうなっているかというものを調べたものでござ いまして、最初の2ページが副作用の発現日に着目して集計した結果でございます。こ の結果は4月22日現在、われわれが報告を受けている副作用の件数というものを対象に 調べておりますが、発現日別に調べてみますと、10月15日以前、いわゆる緊急安全性情 報を出す以前の状況として183例の報告があり、そのうち死亡例が95という、そういう 表の見方になろうかと思いますが、その後、暮れのこの検討会の対応を受けました措置 を行うまでの間について261例というところの、縦のカラムの部分に該当いたします。 それからそののちの部分が報告例数で言いますと106例というところになるわけです。 発現日不明のものも含めますと616例の報告があって、246例の死亡例だったという状況 でございます。  具体的にこれを絵で示しましたのがその次の2ページ目でございまして、今申し上げ たものを月別、それをさらに週単位で刻みまして、棒グラフのような形で示したもので ございます。発現日別でございますが、ちょうど10月の段階でピークを迎えておりまし て、そのあと右肩下がりという状況でございます。なお、折れ線グラフで示したものは 推定延べ患者数ということで、プロットしたそれぞれの数字がその時点における推定延 べ患者数ということになります。  3ページ目は、今度は発現日別ではなくて投与開始日別という形で整理したものでご ざいます。トータルの報告件数は616ということで、これは当然、変わらないわけです が、投与開始日別に見ますと緊急安全性情報を出す以前が344例の副作用の報告でした。 そののち、年末の措置を行うまでの間に102例の報告がございました。それから投与開 始日別に見ますと、その後、報告があったものが46例ございまして、そのうち14例が死 亡例であったということで、それぞれ時間で区切りますと、こうした状況で変化してい るということでございます。  それをグラフで示したのが4ページ目でございます。先ほどの発現日別で見ますと10 月にピークがありましたが投与開始日別に見ますと9月のところ、しかも9月の初旬の 段階で棒グラフが最も高いような状態になっておりまして、その後、それぞれ暮れの、 この検討会に基づく通知の発出等を踏まえまして、こうした形で推移しているというこ とを示した資料でございます。  次の資料No.5でございますが、今、集計いたしました616例に関しまして、個別の症 例ごとに副作用名とその転帰をリストにしたものですので、これは参考までにお配りし てございます。  それから最後の資料No.6ですが、今申し上げましたような措置の他に、この薬剤に ついて講じてきた安全対策というものを少しご紹介させていただきます。まず15年3月 19日の段階で血尿あるいは出血性膀胱炎に関する使用上の注意の改訂を行っておりま す。それから4月28日の段階で急性肺障害・間質性肺炎等に関して少し記載を変えてお りまして、具体的には5ページ目のアンダーラインのところが変更点ということでござ います。危険因子ということで記載を充実させているということでございます。この 他、慎重投与の項に関して突発性肺線維症、あるいはじん肺症といった言葉を付け加え ているということと、それからいちばん下のところですが脱水、さらに6ページに行き まして急性膵炎といったことも追記しているという状況でございます。  以上、議題1に関連してこれまで講じてきた措置、その他を含めてご紹介申し上げま した。以上でございます。  松本座長  ありがとうございました。ただ今の事務局からの説明に、ご質問、ご意見はございま せんでしょうか。  貫和委員  ざっと目を通しただけで不十分かもしれませんけれど、先ほどの資料No.5のケース ナンバー118例の患者さんの診断名が少しおかしいと思うのですが。  事務局  報告の副作用名は新生児呼吸窮迫症候群になっていますが、これはMedDRAといいまし て、報告の用語の関係上、この名前しか該当しないということで、実際の症例報告はこ の名前ではありません。  貫和委員  わかりました。ただ、これはやはり訂正するべきといいますか、どこかで直す必要が あると思います。  松本座長  検討して、必要があれば訂正してください。他にないようでしたら、次の議題に進み ます。議題2は「有効性・安全性に関する最近の知見について」ということで、これに つきましては本日ここにお見えの大江先生から、まず、国立がんセンターにおける投与 症例についてご紹介をいただき、その後、事務局から他の施設での状況について説明を してもらいます。それではまず、大江先生、よろしくお願いします。  大江参考委員  国立がんセンターの大江と申します。本日は、われわれ国立がんセンター中央病院の 臨床経験、それから東病院で同じように使われた患者さんのデータをまとめたものがご ざいますので、それを発表させていただきます。  今回のこの検討の目的は、イレッサの有効性および安全性をretrospectiveに検討し たものでございます。イレッサによる急性肺障害の危険因子ということで、どんな患者 さんに対してそういう急性肺障害を起こし得るかということを探索的に検討いたしまし た。この、2番目のほうの目的に関しては、中央病院のデータのみで解析を行っており ます。  対象とした患者さんは、昨年、2002年の7月から12月までの間、国立がんセンター中 央病院でイレッサを投与された115例中、経過観察が可能であった112例です。それ以降 も投与されている患者さんがいらっしゃるのですが、これは3月の段階で呼吸器学会で 発表したデータでありますので、経過観察が十分にできない患者さんを入れてもデータ が不正確になるということで、12月までに投与された患者さんということで区切って解 析をしております。それから3例ほど解析から抜かしてありますけれど、これは初期の 段階での特定療養費で使用した時にわれわれの病院に患者さんが来られて、1回のみ薬 を取られてあとは近くの病院に行かれたというような患者さんがいらして、経過を追え ていないため抜かしておりまして、経過観察が可能であった112例を対象にしておりま す。それから国立がんセンター東病院の症例は、去年の6月18日から今年の3月4日ま での症例149例ということで、これは全例を対象にして解析しております。合計261例と いうことになります。  患者さんの背景ですけれど、だいたい女性の比率が約3割から4割ぐらいの比率であ りまして、年齢の中央値は63歳と61歳であります。80歳を超えるような患者さんも含ま れております。東病院はPS(Performance Status)のデータがありませんけれど、 PS2/3というような比較的全身状態の悪い患者さんが入られております。本来であれば 化学療法は実施されないような患者さんも一部含まれているということであります。そ れから組織型。これは当然、全例が非小細胞肺がんでありますけれども、中央病院の症 例ではそのうち83%が腺がん、それから東病院の症例では71%が腺がんということで、 中央病院のほうが少し腺がんが多い傾向にあります。それから前治療は化学療法および 胸部放射線治療も入っている患者さんがいらっしゃるということであります。  このスライドでは奏効率というふうにさせていただきましたけれども、これは厳密に 言いますと、retrospectiveな解析でありますので、治療前と治療後に必ずしもCTがし っかり撮られているとはかぎりません。そのような患者さんに対しては普通のレントゲ ン、単純写真を使って奏効率を出しております。ただしイレッサの場合は、よく効く患 者さんというのは非常によく効きますので、CTを撮らないとわからないような微妙な判 定になる患者さんはあまりいらっしゃらないのではないかと考えております。したがい まして、厳密な、学会等で言われる奏効率とは若干異なりますけれども、それにほぼ近 い数字ではないかというふうにご理解いただければいいと思います。  評価可能症例数というのは、もとから評価が可能な病変のまったくないような患者さ んもいらっしゃいますので、評価可能だった患者さんが中央病院で98例、東病院で135 例、トータル233例です。中央病院でCRもしくはPRと考えられた症例が約33%、それか ら東病院のデータでは21%であります。トータルしますと233例中27%の患者さんにお いて腫瘍が、少なくとも半分以下には縮小するような効果が得られたということでござ います。  この奏効率を、いろんな患者さんごとに少しまとめてみました。これは以前から言わ れておりますけれども傾向としては腺がんの患者さん、および、男性に比べると女性の 患者さんが奏効率が高い。とくに腺がんで女性の患者さんの場合には約6割の患者さん で腫瘍縮小効果が得られているということであります。  それからこれは参考までに、抗腫瘍効果を画像で判定するような病変がないような患 者さんで腫瘍マーカーのみあがっているような患者さんもいらっしゃいますので、そう いう方まで含めて腫瘍マーカーがあがっている方でどれだけ腫瘍マーカーが下がったか というと、72人中27例、38%の患者さんで少なくとも腫瘍マーカーが半分以下にはなっ ているということです。それから自覚症状が劇的に改善したという方が、22%程度いら っしゃるということであります。  スライドの写真ではわかりづらいかもしれませんけれど、たとえばこれは肺全体に小 さな転移があるような方で、去年の8月にがんセンターに来られた方です。この患者さ んにイレッサを投与すると、単純写真ではまったく影が消えるというような、劇的な効 果が約2ヵ月で得られたということです。この患者さんを、このまま何もしなかったら どうなっていたかというのはわかりませんけれども、少なくともこの方は今現在、非常 にお元気で外来に来られているということであります。非常によく効く方というのは、 このような効果が得られるということであります。  次のスライドはTime to treatment failueといって、治療を開始してから治療を中止 する、もしくは病気が増悪するまでの期間であります。とくに腺がんの女性の患者さん では、そういう期間が非常に長い傾向にあるということであります。  毒性のほうですけれど、発疹、下痢、肝障害、それから悪心等が見られますけれど も、これは一部、グレード3の肝障害という方が9%おりましたが、それ以外はとくに 大きな問題ではございませんでした。やはり問題なのは肺毒性でありまして、今回検討 した112例のうち、4例が肺臓炎によって死亡されているという状況であります。  肺毒性を中央病院と東病院でまとめてみましたけれども、中央病院では112例中6例 で肺障害と思われるような陰影もしくは症状が出現しており、そのうち4例が死亡され ております。東病院の場合は149例中2例で肺障害というような副作用、毒性が認めら れて、そのうち1例が死亡されております。トータルすると3.1%、8例で肺障害が認 められて死亡率が5例、2%ということであります。  中央病院で肺障害を起こした患者さん6例を見てみましたところ、全例PS1という、 全身状態としては比較的良好な患者さんで年齢もそう高齢の方はいらっしゃいません。 とくに気になるのが合併症として、もとから肺線維症がある方に、こういう肺臓炎を起 こす方が非常に多かったということであります。放射線治療の既往は皆さんございませ んでした。投与開始からの期間も短い方では10日ぐらいまでのところで肺臓炎を起こし ていますけれども、1ヵ月を超えてから起こすような方もいらっしゃるということであ ります。  どんな患者さんに、急性肺障害を起こす危険性が高いかということで、単変量解析を いたしました。まず性別はとくに変わりなしで年齢もあまり変化がありません。全身状 態、PSが悪い方も20人ほどいらっしゃいましたけれども、そういう方が起こしていると いうことではありません。それから組織型はとくに変わりませんが、問題は肺線維症と いうことでありまして、これはあとからレントゲンをすべて放射線の先生に一度見直し ていただいて、そのときに肺臓炎を起こしたかどうかという情報を抜きに見直していた だきました。そうしたところ、今回、われわれの症例の中で12例がもとから肺線維症が あるだろうという診断になりまして、そのうち4例、33%が急性肺障害を起こしたとい うことで、率としては33%です。これに対して、もとからそういう肺線維症のような影 のないような患者さんの場合には98例中2例が肺障害を起こしているということで、こ れが明らかに危険因子ということになります。これは単変量解析の結果でありますけれ ども、多変量解析でも同様の結果が得られております。  その他、たとえば手術の既往だとか放射線治療の既往、それから化学療法の既往等に 関しては、とくに危険因子として指摘できるものはありませんでした。  最後にまとめでありますけれども、国立がんセンター中央病院および東病院でイレッ サを投与された非小細胞肺がん261例の臨床経過を解析いたしました。腫瘍縮小効果が 評価できた233例中62例、27%で著明な腫瘍縮小効果が認められております。261例中8 例、3.1%に急性肺障害が認められて、そのうち5例、2%が肺障害により死亡してお ります。胸部単純写真で認められる肺線維症は、急性肺障害発症の危険因子であり、リ スク比が16.5ということでございます。以上です。  松本座長  ありがとうございました。ご意見などにつきましては、事務局からの説明のあとにま とめてうかがいます。それでは事務局から、他の施設での状況について説明をお願いい たします。  事務局  資料No.7-2に基づきまして、ご紹介いたします。「その他の症例について」という資 料でございます。この症例につきましては、学会発表が行われた中で症例数が多い、解 析患者数が80症例以上ある報告等を取り上げております。対象施設は東京医科大学、近 畿大学、それと長崎のグループでございます。関連する学会、それから発表期日を表に 記載してございます。  まず東京医科大学ですが、84例の患者さんに投与した結果が出ております。1ページ 目の下のスライドですが84例ということで、がんの種類としては腺がんが68、それから その他が16となっております。有効性につきましては2ページ目です。Anti-tumor activityとなっておりますが、そこで奏効率15.5%というふうに出ております。  続きまして3ページ目、有害事象ということでグラフが出ております。これを見てい ただきますと上から4つ目の呼吸症状というところで2例、Grade 3+4の副作用が出て おります。発現数が多い副作用といたしましては、やはり発疹や皮膚乾燥、下痢等とな っております。  続きまして近畿大学の症例につきましてご紹介いたします。5ページ以降でございま す。6ページの上に患者背景が出ておりますが、市販後の38例を含めた計86名の患者の 解析がされています。下のスライドで、非小細胞肺がんの組織型が出ております。腺が んが71、扁平上皮がんが12、大細胞がんが3という割合になっております。  7ページ目に有害事象が出ております。間質性肺炎が3例出ているということで、パ ーセンテージですと3.5%ということになっております。下に奏効率が出ておりますが、 いちばん左に全体の数字が出ております。17.4%の奏効が得られているということでご ざいます。  9ページ目の「結果と考察」を見ていただきますと、奏効率は先ほど申し上げました ように17.4%ということで、奏効に関与している因子ということがまとめてあります。 やはり女性、非喫煙、腺がん、PSが良好であるということが奏効に関係しているという ふうに言われております。  続きまして長崎のグループについてご紹介いたします。長崎のグループでは、合計102 人の患者さんに投与された結果を出しております。11ページの下のスライドに患者背景 が出ております。組織型を見ていただきますと、腺がんが75、扁平上皮がんが20、大細 胞がんが4となっております。  治療効果は12ページでございます。男性の場合が奏功率11.7%、女性の場合が50%、 合計27.5%となっております。組織型別で見ますと、下のスライドですが腺がんが36 %、扁平上皮がんが5%となっております。  毒性につきましては14ページ目の上のスライドでございます。間質性肺炎が12という ことで、11.8%起こっているということでございます。  15ページにまとめがございます。奏効率は27.5%、4番にありますように間質性肺炎 の発現は11.8%あり、5例に死亡が認められたということでございます。  以上が主な学会報告でございます。  松本座長  ありがとうございました。ただ今、大江先生ならびに事務局から説明がありました が、これに関しましてご質問、ご意見等はございませんでしょうか。  福地委員  大江先生のところのデータで、急性肺障害というのは一定の定義がございますが、先 生がここで使われた言葉はそのコンセンサスに従って定義された症例でしょうか。  大江参考委員  必ずしもそうではないかもしれませんけれど、今回は、一般にイレッサで認められて いるような間質性肺炎とそれに伴う呼吸障害というような症例を入れております。  松本座長  他にないようでしたら、事務局には引き続き有効性および安全性に関する症例情報を 注意深く確認するようお願いいたしまして、この議題を終わりにさせていただきます。  それでは次の議題に移ります。議題3は「承認審査に関する事項について」です。ま ずは承認条件の実施状況等について説明を受け、そのあと、本日ここにお見えの別府先 生から、厚生労働省宛に提出されました「イレッサの使用中止に関する要望書」の内容 をご紹介いただき、議論をしたいと思います。それではまず、事務局から資料の説明を お願いします。  事務局  承認条件の実施状況等ということで、資料No.8-1に基づきましてご説明いたします。 まずイレッサの承認条件でございますけれども、大きく2つに分かれております。1番 のほうが市販後臨床試験を実施するということ、2番が作用機序の更なる明確化という ことで種々の試験を行うという条件となっております。  まず承認条件の1番にあたります、市販後臨床試験の検討状況について、ご報告いた します。「1または2レジメン以上の化学治療歴を有する進行または転移性または再発 性非小細胞肺がん患者を対象にゲフィチニブとドセタキセルの生存期間を比較する多施 設共同非盲検無作為化群間比較第III相試験」ということでございます。試験の概要と しては主要目的がゲフィチニブとドセタキセルとで全生存期間を比較するということ で、生存期間をエンドポイントとした試験でございます。対象および被験者数としては 1レジメン以上の化学治療歴を有する進行または転移性または再発性非小細胞肺がん患 者ということで、症例数は484例、約500例を予定しております。実施予定としては今年 の8月に開始するという予定を組んでおります。試験期間がどれぐらいになるかです が、患者の組み入れ期間、それから追跡期間をあわせますと約2年かかるのではないか ということでございます。  続いて2枚目に移りまして、承認条件の2に該当する試験の進捗状況でございます。 作用機序の解明というところです。主な試験を8つばかり例示として掲げております が、このような試験を含めて合計15の試験を開始しておりまして、他にも5試験が計画 中ということでございます。この例を見ていただきますと、1番から5番までがイレッ サの作用機序を解明していくという形で、6番以降、6〜8が主に肺線維症といいます か間質性肺炎の発症機構の解明を行うという試験でございます。これらの試験につきま しても、実施状況等を定期的にフォローアップしていきたいと考えております。  続きまして3枚目でございます。承認条件と直接には関係ないものも含まれておりま すが、わが国で承認後に実施または計画された他の臨床試験というものをご紹介してお ります。1番目、これはいわゆる術後補助療法に対する臨床試験でございます。治験の 概要としてはゲフィチニブの術後補助療法による延命効果の有無をプラセボとの比較に より検証するということで、治験の届出が平成14年の6月5日に出されております。そ して、その年の10月23日に、これは安全性情報との関係がございますが、新規の患者の 登録を中止しております。投薬された患者さんは38名でございます。アストラゼネカ社 といたしましてはこの治験自体は中止を決定しておりまして、現在、中止の手続きを行 っているものでございます。3番に間質性肺炎の発症状況をまとめておりますが、この 治験で3例の間質性肺炎が発症したということでございます。うち1例がイレッサ投与 群、2例がプラセボ投与群ということでございます。イレッサ投与群の患者さんはお亡 くなりになり、プラセボの患者さんは回復ということでございます。死亡した患者さん の主な臨床経過を簡単にまとめてございます。最終的には細菌性肺炎等を併発してお亡 くなりになったということでございます。  2番でございますが、これは化学療法歴を有する進行非小細胞肺がん患者を対象とし たゲフィチニブの有効性、副作用および薬物動態と関連する主要な生物学的因子を検討 する試験でございます。遺伝子等を使って生物学的な因子を検討するという試験でござ います。この実施状況としては、平成13年11月21日に治験の届出がありまして、承認後 に市販後臨床試験のほうに切り替わっているものでございます。先ほどの試験と同じく 平成14年の10月23日に、新規の患者の登録を中止し、その月の31日に投薬を中止してお ります。投薬された患者さんは53例でございます。この試験におきましても、間質性肺 炎が3例発症し、うち2例が死亡ということになっております。次のページに、死亡さ れた患者さんの主な臨床経過をご紹介しております。去年の8月、9月にそれぞれお亡 くなりになっているということでございます。  続きまして、塩酸イリノテカンをベースとする化学療法に抵抗性を示した進行結腸・ 直腸がんを対象としたゲフィチニブと塩酸イリノテカン併用の臨床第1/2相試験とい うことで、これは肺がんではございませんで進行結腸・直腸がんということでございま す。4番につきましては頭頸部がんということでございまして、2つとも肺がん以外の 患者さんを対象とした試験でございます。いずれも計画は出されておりますが、試験に は移っておりませんで、臨床試験で登録された患者さんはいないという状況になってお ります。  これらの4つの試験につきましては昨年10月の緊急安全性情報が出されたあとに、審 査センターのほうから安全性確保が図られるまで新規の患者の登録を中止しなさいとい うことと、また、投薬中の患者さんについては同意を再度取得するなどの指示をそれぞ れ出しているところでございます。以上でございます。  松本座長  ありがとうございました。この件につきまして、何かご質問、ご意見はございません でしょうか。  堀内委員  作用機序の解明ということで、承認条件2のために15の試験が開始されているという ことですけれども、先ほどの治療例の報告にもありましたけれども、どちらかというと 扁平上皮がんよりも腺がんのほうに有効性が高いというデータが出ていると思います が、EGFレセプターということを考えると扁平上皮がんもかなりあるのだろうと思いま す。そのへんの作用機構の基本的なところに関わるような研究というのは計画をされて いるのでしょうか。ここに、あと5試験が計画中というふうになっていますが、できれ ばそのような研究についても作用機序を明らかにするためには入れていただきたいと思 います。  事務局  事務局からお答えします。具体的な試験の詳しい内容についてはこの場ではちょっと わかりませんが、たとえば1番のゲフィチニブの抗腫瘍効果の検討ということですが、 この研究は既にスタートしておりまして、イレッサに対する反応性について、がん細胞 を使ってやっているということで、どうもレセプター結合以降の伝達機構の違いによっ て、奏効率に差が出るのではないかというような示唆を得ているような状況にもあると 聞いております。その他の、これ以外の試験につきましては、試験を実施されている先 生方のご都合で、ここにはご紹介できないということでございます。  松本座長  他にいかがでしょうか。  別府参考委員  薬物動態に関してかなり個人間とか個体内差というものが審査の過程でも議論になっ たと思うのですけれど、そういう点に関して、今行われている研究の中で、具体的に、 たとえば血中濃度とかそういうことについてのチェックはどれぐらい行われているので しょうか。  事務局  ご指摘の血中動態等に関しましては、最初の議題でご説明いたしました3,000例を対 象とした試験、それから資料No.8-1の2ページ目、「2.作用機序の解明」の中の5 番、「少なくとも1レジメン以上の……」ということで、規模としては5,000例程度を 集めて危険因子等を把握するということで、この中で血中薬物動態の傾向等を見ていき たいと考えております。  松本座長  別府先生、よろしいでしょうか。  別府参考委員  はい。  松本座長  他にないようでしたら次に移ります。参考委員の別府先生から、要望書の内容をご紹 介いただきたいと思います。  別府参考委員  まず、ゲフィチニブ安全性問題検討会に発言の機会をいただきましたことに感謝いた します。お手元に医薬ビジランスセンターの浜氏や京大大学院薬剤疫学の福島雅典教授 らと連名で、厚生労働大臣およびアストラゼネカ社にお送りした、ゲフィチニブに関す る公開質問状や要望書が配布されているかと思います。今回、このような場にお招きい ただいたのも、これらの発言に関わっていたからだろうと思います。これらの書類に書 かれた事柄を中心に、ゲフィチニブの安全性および有効性に関してわれわれが抱いてい る懸念あるいは疑問をお伝えしたいと思います。時間が限られておりますので、要点を 絞って話させていただきます。なお、これらの点につきましては、去る1月21日に厚生 労働省審査管理課の方とお会いして、直接の質疑を交わしましたし、また、アストラゼ ネカ社からは1月30日付で書面によるご回答をいただきましたが、いずれもきわめて不 満足な内容であり、私たちの疑問にはあまり答えていただいていないという感じを持ち ました。  公開質問状では、まず初めに、有害性を示す動物実験の結果が審査当局への提出もさ れず、また、正式な学会発表も行われていないこと、あるいはグレード4という重篤な 副作用例が主治医によって報告されているにもかかわらず、それが厚生労働省の記録で は低いものに変わっていたこと、あるいは日本における臨床試験では有害事象の発現頻 度や死亡例の報告が、外国での臨床試験に比してあまりに低すぎる点などを指摘し、イ レッサの審査時のデータや審査過程に関して第三者による適正な検証を行う必要がある ことを訴えました。  具体的に開示されるべき事柄としては、まず1番に動物実験のデータ、とりわけ東京 女子医大永井教授の実験結果の詳細、その後の追試の有無について。2番目として第1 相、第2相試験におけるすべての有害事象による死亡、投与中止例に関する情報、その 他の重篤な有害事象に関する情報、薬剤との関連が否定できないはずであるにもかかわ らず、副作用死のカウントからはずされてしまった症例に関する具体的なデータ。3番 目としては、これは今回、資料の中に出ているようですが、INTACT-1およびINTACT-2に おける有害事象や死亡頻度のデータ、副作用頻度のデータを各試験群ごとに明示するこ と。4番目、イレッサ使用患者数、販売量データの公表と分析を求めました。  発売されてから数ヵ月の間に副作用死亡者数が公表のたびごとに倍増していくという のは、きわめて異常なことですし、それは単にゲフィチニブという一薬剤だけの問題で はなく、この国の薬の安全性を守るためのシステムに重大な欠陥があることを示すもの と考えざるを得ません。そしてその原因を分析するうえで、われわれが要求したこれら の情報は、いずれもきわめて重要だと判断したからこそ、具体的なデータや審査のプロ セスに関する開示を求めたわけですが、しかしアストラゼネカ社からは知的所有権を理 由にほとんどの情報の開示をしていただけませんでしたし、臨床試験は現在の学問の水 準に基づいて適正に実施され、適切に診察され、緊急安全性情報を出すなど安全措置は 講じたという回答で終わっております。  また厚労省からは先ほども述べましたような、省内での1時間ほどの質疑に答えてい ただきましたが、これもまた、われわれの質問に対する回答としては不満足でございま した。未知の新薬であるからこそ、副作用の可能性が否定できない有害事象は、とりあ えずは関連ありとみなして取り扱うべきなのに、主治医の判断を理由にそれ以上踏み込 んだ検討が行われていないとか、あるいは薬物動態における個体間変動、個体内変動に ついても、用量反応と関係がなさそうだからという理由だけで、それ以上の検討を求め ていない点など、詰めの甘さを随所に見ることができました。  INTACT-1およびINTACT-2に関する評価や取り扱いにも疑問を感じました。日本での臨 床試験は従来の治療が、無効の症例に対するゲフィチニブ単剤の効果を検討するための もので、生存期間に対する化学療法剤との併用効果を見たINTACT-1ないしINTACT-2とは 異なるのだというメーカーの説明や厚労省のご説明でしたけれども、しかし生存期間に 対する併用療法でプラセボとまったく差が出なかったという薬が、果たして単剤使用で 目の覚めるような効果を示すかどうかという気がいたします。少なくとも時期尚早にも かかわらず、但し書きつきで異例の早期承認を行ってしまったことはむしろ判断として は早すぎたのではないかという感じがします。  「分子標的薬」、あるいは「画期的な新薬」との言葉に惑わされて、開発者はもちろ ん審査承認に関わった人々も、さらには臨床現場の医師までが安全性を過信しすぎて、 本来、新薬に対して当然行うべきチェックを怠ったことが、被害を生み出した理由だと 思います。2番目には、加えてメーカーの秘密主義体質および認可当局の指導や規制の 甘さがさらに被害を拡大したように思います。3番目の問題としてはゲフィチニブは上 皮細胞やがん細胞に対する効果だけではなく、正常細胞にも影響を及ぼし、ことに何ら かの障害を受けた細胞や代謝回転の早い細胞に関しては大きな影響を及ぼし得るだろう と考えられます。たとえば胃液のpHの違いによる吸収の違いなど、いわゆる薬物動態に おける個体間変動、個体内変動が大きいということに対して、薬効評価は副作用を考慮 するにあたっては十分注意すべきだと思うのですけれど、とくに連続投与した場合、そ の差は非常に大きくなるはずですが、そのあたりに対するチェックが十分なされていな いように思いました。  なお、副作用発現率に関しては、先程来のご発表にありましたように、いろいろなこ とがありますが、メーカーがおっしゃっているような、間質性肺炎が2.0%、死亡が0.74 %というのはあまりにも低すぎる数ではないかと思います。ちなみに福島教授がアンケ ート調査をされたときには、7.2%の発現率で3.4%の死亡でしたし、また、今年の1月 に発表されたランセットの日本からの論文でも、かなり高度の−−計算によっては40% とか20%という程度の、非常に高度の−−発生率を示しています。これは実際に数字を 大きなグループからまとめてデータ処理する場合には注意すべき点であり、やはり個々 の施設で非常にきめ細かく見ていただくということが大事なのです。そういう意味で、 実際の副作用発現率は、メーカーの示す数よりは明らかに高いのではないかというふう に思われます。これまでに発表された成績を見るかぎり、INTACT-1およびINTACT-2を除 けば、信頼し得る、本当のエビデンス・ベースドなデータとして十分に評価に耐えるも のは、それほど多くはなくて、そして有効性に関する神話だけが一人歩きしているとい う感じがいたします。したがって、治療効果の予測や適用症例あるいは禁忌症例の条件 づけがまだできていないということがあります。  去る3月26日にまとめられたゲフィチニブの急性肺障害、間質性肺炎に対する専門家 会議の最終報告はまだ多くの仮説や検証不足の部分が残っているように思います。この まとめをよりどころに、ただちにより大がかりな治験を開始することには危険が感じら れます。このまま承認を続けたまま、市販後臨床試験という形でその有効性・安全性デ ータを得ようとすることには、無理があるような感じがいたします。もし、ある特定条 件下でこの薬の効果や適用を確かめたいというのであれば、まず実際にそういう非常に 少ない、例外的な場面で有効であるという目途があるのであれば、そういうケースに絞 って、いったん承認を取り消したうえで慎重に計画されたプロトコールと監視体制のも とで、新たな臨床試験を開始していただくということが必要なのではないかと思いま す。  しかし、それよりも何よりも、まずこれまでの動物実験、臨床試験のデータをきちん と公表していただきたい。それを分析することがまず先決であり、それを行わないかぎ り、新たな治験に関して患者へのきちんとしたインフォームドコンセントがなされると は思えませんし、そのような条件下で行う臨床試験には、非常に倫理的な問題があるだ ろうというふうに思います。以上です。  松本座長  ありがとうございました。続きまして承認審査に関連して、事務局が資料を用意して おります。まず事務局からひととおり説明を受けたうえで意見交換に移りたいと思いま す。それでは事務局、お願いします。  事務局  それでは事務局から、承認審査の過程に係る事項についての資料を用意してございま すので、その資料に基づきましてご説明いたします。資料No.8-2でございます。この資 料につきましては、前回、当委員会で青柴委員よりご紹介いただいた試験でございま す。詳細は省略して要点を申し上げますと、ブレオマイシン肺線維症モデルマウスを用 いて、ゲフィチニブとブレオマイシンを投与した群とブレオマイシンのみの群とで肺の 線維化の程度を比較し、その結果、ゲフィチニブを併用した群で肺の線維化が高度に進 行したというものです。  この実験の結果につきまして、アストラゼネカ社は厚生労働省にイレッサの承認後に 提出をしたということが明らかになっております。審査側といたしまして、この試験 は、ゲフィチニブの副作用の発症機序を解明していく、その中で貴重な知見であり貴重 なデータであるという認識はしております。しかしながら、一方で、動物実験モデルの 段階ということで、ヒトの臨床においてどのような副作用が起こるか、それにどのよう に結びつくかということを明らかにしていくことが必要です。その中で、承認審査の段 階では、ヒト臨床での副作用のデータというのは、この実験に結びつくようなデータが 十分に蓄積されていなかったという状況でございました。  また一方、関連する副作用として間質性肺炎というものがありますが、間質性肺炎に つきましては、臨床試験の結果等からゲフィチニブの副作用であるということを審査段 階で見つけ、その対応として添付文書の重大な副作用の中に1項を設けて注意喚起を行 ったということもございます。  以上から、仮に審査中に報告があったと考えましても、結果としては承認審査に変更 を与えるものではなかったと判断しております。一方、アストラゼネカ社の報告時期が 妥当であったかという点につきましては別途、事実関係を精査していくこととしており ます。  続きまして、先ほどコメントがございましたが−−資料は用意しておりませんが−− 臨床試験の間質性肺炎の重症度の点について、ご説明いたします。具体的に申し上げま すと、ゲフィチニブの臨床試験で日本人の患者さんでございますが、間質性肺炎を発症 した患者さんでございます。その患者さんの、間質性肺炎の重症度が実際には4となっ ていたものが、申請資料では3になっていたという点でございます。資料は用意してご ざいませんので、口頭でご説明いたします。  まず事実関係をご説明いたします。この患者さんは間質性肺炎を発症したということ ですが、その初期の段階ではグレードは3ということでございました。その数日後に症 状が悪化したということでグレード4となっております。その後、間質性肺炎の症状は 軽快しているということでございます。担当医からはアストラゼネカ社のほうに適宜、 そのような状況の変化が報告されていたということでございます。その一方で、患者ご との症例報告書、CRFというものがありまして、それをまとめる作業がございますが、 その段階では、担当医がグレード3ということで記載しており、その後のグレード4の 数値については記載していなかったという状況でございました。アストラゼネカ社もそ の報告に基づいて、そのまま3として申請資料をまとめてしまったというものでござい ます。  審査側といたしましては、間質性肺炎の評価につきまして、審査段階におきまして、 申請資料とは別に患者ごとの症例経過等のデータを取り寄せて、それに基づいて審査を 行っております。また、他の患者さんの間質性肺炎、これらの症例もあわせまして、先 ほども申し上げましたとおり、間質性肺炎がゲフィチニブの副作用であるという判断を いたしまして、さらに間質性肺炎というのは処置を誤ると重大な転機を迎える、そのよ うな可能性があるということも踏まえまして、重大な副作用の項に記載して注意喚起を 行ったところでございます。こうした経緯から、当初から重症度が4とされていたとし ても、結果としては承認審査には変更はなかったというふうに考えております。  続きまして資料No.8-3でございます。インタクト試験の評価ということです。この資 料の内容につきましても、前回の当検討会で説明等をさせていただいたものでございま す。簡単に申し上げますと、インタクト1、インタクト2でございますが、両方とも標 準的な肺がん治療薬、治療レジメンにゲフィチニブを上乗せして、生存期間への効果を 検討したというものでございます。結果といたしまして、両試験とも生存期間の改善は 見られなかった、生存期間延長に対するゲフィチニブの効果は見られなかったというも のでございます。  3番目、副作用等の発現状況についてということでグラフをつけておりますが、この データにつきましても前回、貫和先生のほうからご紹介いただいた資料でございます。 1枚目の下が有害事象と副作用による死亡の出方、2枚目には発現頻度の高い副作用と いうところで発疹や下痢といったものが出ております。  (3)のところで間質性肺疾患の発現状況というものをご紹介しております。間質性 肺疾患ということで、間質性肺炎だけではなくて関連のものとして、用語集で該当する ものをまとめたというふうに聞いております。これを見ていただきますと、ゲフィチニ ブ250mg群、500mg群、プラセボ投与群とありまして、合計のところを見ていただきます と間質性肺疾患でまとめますと250mg群が8、500mg群が8、プラセボ投与群が6という ことで、あまり差が見られていないという状況でございます。また注2のところで示し ておりますが、これらがすべて副作用というわけではございませんで、担当医から因果 関係ありとされたものはこのうちの2例ということでございます。  インタクト試験の評価でございますけれども、これは前回の繰り返しになりますが、 インタクト試験というのはファーストライン、抗がん剤未使用の患者さんを対象とした 試験であり、かつ標準的な肺がん治療薬に上乗せをしたものであるということで、わが 国の承認内容は標準的な化学療法で効果がなかった患者さんに対してゲフィチニブ単剤 で投与したときの効果を評価しているということから、用法等が違いますので、インタ クト試験の結果というのは日本の承認内容を否定するものではないというふうに判断し ております。  続きまして資料No.8-4でございます。「臨床試験における国内外の有害事象等の状況 について」ということでまとめております。1番の国際共同第II相試験というところ で、いちばん上のカラム、有害事象発現数および副作用発現数というところを見ていた だきますと、有害事象発現数というのはほぼ100%ということで、日本人および日本人 以外とも、同様になっております。その下の副作用発現数を見ていただきますと、日本 人以外が83.2%、日本人が99%ということで、日本人のほうが高くなっているというこ とでございます。また、その死亡例を見ていただきますと、病勢進行による死亡例とい うのは日本人以外が26.2%、日本人が2%ということで、日本人以外が多くなっており ます。副作用のところを見ていただきますと、日本人以外と日本人とではだいたい同じ ような数字になっております。死亡例、それから重篤な有害事象等は日本人以外が多く なっているわけですが、これも前回、ご説明したところでございますが、2枚目を見て いただきますと、「3.国際共同試験に組み入れられた国内外の患者の全身状態の比較 」ということで、臨床試験に入る前の治療の治療期間を見ますと国内が8.5週、海外が 18週、それから患者さんの全身状態を表すPSの2というものの割合を見ますと、国内が 8.8、海外が16.7ということで、海外では状態の悪い患者さんが多く臨床試験に組み込 まれていたということで、それが、死亡数が多かったひとつの要因ではないかというふ うに判断しております。以上でございます。  松本座長  ありがとうございました。ただ今、事務局が説明しました資料につきまして、実際に 実験を行いました青柴委員、何かございませんでしょうか。  青柴委員  ただ今ご紹介いただきました、女子医大第1内科の青柴でございます。資料No.8-2の 実験をやった一員でございますが、ひとつコメントを求められましたので、申し上げる とすれば、私どものデータ、実験の結果にどのような意義があったかということになる かと思うのですけれど、私の考えとしては、この実験の結果はたしかに現在起きている イレッサによる肺障害の発症機序を説明するひとつのメカニズムだろう、と。それは非 常に大事な結果だろうというふうには思います。ただしこの結果をもってして、間質性 肺炎の人にイレッサを使ってはいけないという結論を導くことができるかというと、現 在でも、あるいはおそらく承認前の時点をもってしても、そう判断するのは非常に難し かったのではないかというふうに私は思います。  なぜならば、これはあくまでも動物実験であります。マウスの肺ということで、形も 違えば反応性も違うというのは周知のことであります。2番目に、ブレオマイシン肺線 維症というのはひとつの特殊な肺線維症のモデルであります。残念ながら、これはたし かに肺線維症ができるわけですけれど、ヒトの間質性肺炎あるいはヒトの肺線維症とは 似て異なるモデルであって、他にないから使っているというのが事実であります。たと えばブレオマイシン以外のモデルを使うとEGF受容体の抑制剤がむしろ肺線維症によく なるというデータも出ているわけです。したがって、そういうことを考えますと、この 実験結果だけで審査に影響を与えた可能性がどれぐらいあったかというと、なかなか難 しいところがあるだろうと考えております。もちろん追試が必要だろうと思いますけれ ど、そう考えているわけであります。  松本座長  ありがとうございました。本日、参考人としてお見えの先生方、何かご意見はござい ませんでしょうか。  遠藤参考委員  私は非臨床の毒性関係を担当させていただきましたので、別府先生の最初のご質問 の、動物実験のデータにつきまして、拝見した内容だけをかいつまんでご説明させてい ただきたいと思います。  申請時に提出された資料というのはラットの1ヵ月、6ヵ月、イヌの1ヵ月、6ヵ月 の反復投与と、単回投与のデータでございまして、資料No.11の7ページと8ページに 要約されてあります。ご覧いただけばわかると思うのですが、私どもでアストラゼネカ 社の毒性試験の内容を拝見いたしますと、ここに書いておりますのは特記すべき変化が あったものを書いております。GLPに従って評価基準を設けておりますが、その中で、 現時点で考えてみましても非常に意外なことには、呼吸器系に関するはっきりした所見 があまり認められなかったということです。従って、ここには呼吸器系の問題はほとん ど書かれてありません。  それから、毒性を担当している研究者−−これは会社もそうですし大学もそうですけ れど−−呼吸器系の評価は、心・循環器と中枢神経系と共に3つのバイタルサインとし て重要に考えられております。従いまして、呼吸器系における化学物質、とくに新薬の 毒性評価においては非常に注目して見なければいけない点でございます。そういう意味 では、この特記すべき評価ができるような所見が得られていなかったという点では、た しかにご質問にありますように、非常に摩訶不思議なところはありますけれども、こう いう毒性試験のプロトコールにしたがって行われた場合の、ここに書いてありますよう ないろいろの他の所見が得られておりますけれども、呼吸器系の所見というのはほとん ど認められなかったということについて追加させていただく次第です。  松本座長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。  大江参考委員  たしかにイレッサでかなりの患者さんが亡くなられているということは、非常に重く 受け止めなければいけないと思うのですけれど、ただ、がんの治療を考えた場合、たと えば他の手術であれ放射線治療であれ化学療法であれ、ある程度の危険性というのは伴 うわけで、それによるリスクというのはどうしても避けられない面があると思います。 今回、たしかに実際に亡くなられている患者さんが非常に多いのですけれども、使われ ている患者さんもかなり多い。そうすると実際にイレッサが、そういう他のものと比べ て本当にそれだけ危ないのかということは、もっとよく比較して、それが許容範囲を超 えているかどうかということをよく考えていただいたほうがよろしいのではないか、 と。それとあとは効果のバランス、それをよく考えていただければと思います。  松本座長  ありがとうございました。下方先生、何かございませんか。  下方参考委員  青柴先生からお話があった件に戻りますけれども、ブレオマイシンの動物モデルとい うのは、これは急性の間質性肺炎、肺線維症のモデルとしてよく使われる系だと思うの です。ただこれは通常、かなり大量のブレオマイシンを動物に与えますので、そういう ときに、他の薬剤がどのような影響を与えるかということについて考えてみますと、こ の実験ではイレッサがそういった間質性肺炎あるいは肺線維症に対して増悪があったと いう、そういう結果だったと思うのですが、実際、ヒトの場合、臨床的に非常に重篤な 肺線維症とか間質性肺炎の方に、こういった薬剤を使うということは普通は考えられま せん。  それからもうひとつは、おそらく慢性の経過をたどっているような症例に関して、今 までの多くの臨床の報告を拝見していますと、やはり肺線維症や間質性肺炎というの は、イレッサを使った場合に非常に増悪する可能性があるリスクファクターであるとい うことは定義されておりますので、ひとつの急性のモデルとしてはたしかにこの動物実 験というのは意義があると思いますけれども、これをもってヒトへの応用ということを 考えるのは少し距離があるような気はいたします。  松本座長  ありがとうございました。別府委員、何かありますか。  別府参考委員  しかし今回、専門家会議の最終報告を拝見しても、その前にそういう病変があるかな いかということが、重症化に関与する可能性があるように示唆していると思うので、そ ういう点をどうしても連ねてみたくなるわけです。たしかに動物実験というのはいろい ろな条件がありますから、それをそのままあてはめることはできないかもしれないけれ ど、無関係だと言ってしまったら今度は逆に動物実験の意味とは何なのかということに なるわけで、そこはできるだけフレキシブルに、しかしいろんな可能性をチェックしな がら検討する必要がある。  それから、先ほど大江先生のおっしゃった、がんはそういう面でたしかに問題がある ということは事実なのですが、しかし片方では、本来ならそんなに早期に亡くならなく てもいいはずの元気な方が、この治療を受けたがために非常に短い期間に亡くなられた ということもあります。助からない病気であるから逆に患者さんは必然的に吸い寄せら れるようにその治療法を求めて行くという面がある。たとえば発売の1年前からあらゆ るメディアを使って、非常に素晴らしい治療法だという宣伝が行き届いた結果、一般の 患者さんやら市民に、過度の期待を植えつけたということも否めないと思うのです。で すから、そういう意味において、薬の有効性、安全性を判断するときには、やはりもう 少し、科学的に慎重であってほしいと思うし、そういう意味で今回の事件は反省するべ き点があったと私は思います。  浜理事長  すみません、よろしいでしょうか。  松本座長  ちょっとお待ちください。あとでまた時間をとりますので。  浜理事長  一言だけですので。  松本座長  では、手短にお願いします。  浜理事長  はい。医薬ビジランスセンターの浜と申します。ゲフィチニブのことに関してはずっ とやっておりますが、先ほどの動物実験の問題ですけれど、そのデータを私どもはぜひ 見たい、と。客観的に皆さんが判断して、本当に異常がないものかどうかということを 判断するためにデータを出してくださいと、何度も申し上げているのです。そのデータ をどうして出さないのか。どうして出されないのですか。異常がないのだったら出して ください。インタクト1、2の結果についても、私どもは最初からデータをちゃんと出 してほしい、公開してほしいというふうに申しておりますが、それが昨日も黒川さん に、インタクト1、2のデータは出るのですかと言ったら、「いや、それは……」とい う曖昧なお返事で、出すか出さないかわからない、と。ところが今日、ここに来てみた ら出ているわけです。  しかもデータを見ていただきますと資料No.8-3、1ページのいちばん下に図が2つ、 左と右にあります。スケールとしては右側は15%がいちばん上で左側は100%がいちば ん上です。右のほうでは4.4%、3.2%、3.5%とあって、これはほとんど差がないよう に見えますけれども、左側を見ていただきますと、5.9%、6.6%、3.7%と、左側のほ うが何か、率が非常に小さいのかなあと思ったら、実は右側より率は多いわけです。し かもプラセボ群が3.7%に対して6.6%、5.9%とイレッサ群のほうが多い。これは数字 に直しますと、おそらくプラセボ群は13例、ゲフィチニブ群は250mg群が23例、500mg群 は21例になると思います。基礎の数字が今はちょっとはっきりしませんからわかりませ んけれども、このあたりも明らかにしていただければと思います。  正確に有意の差があるかどうかということは計算してみないとわかりませんけれど も、有意の差があるかないか非常に微妙で、あるいはないとしても有意の差、Pは0.05 近くまで行く可能性はある、そういうデータが出ております。adverse eventsがこのよ うに多いということは、おそらく、このadverse eventsによる死亡例ですから、死亡が こちらのほうが多い、と。生存期間に関しても、やはり多い傾向があった、そのことと 非常に符合するわけです。副作用死亡率に至っては、ゲフィチニブ群のほうが0.8%と 0.6%ですから、おそらく2例と3例だと思いますが、合計すると5例ということで、 プラセボ群はゼロに対してこちらのほうは、数は多くなりますが5例。これはフィッ シャーの直接確率法でいけば有意の差が出るということになると思います。計算すれば そうなると思います。  そういうことで、こうしたデータを前もって以前から、もう1ヵ月以上も前、2ヵ月 前から情報を公開してほしいというふうに申し上げているのに、今日になって初めて出 る。このようなことで検討を第三者にさせるということをきちんとしてこなかったため に、こういう結果になるのだと思いますが、今後とも、ぜひともこういうデータを出さ れるのであれば、ぜひ前もってデータを公開していただいて、きちんとした検討がされ たうえで、この検討会でまた検討していただくという、そういう手続きをぜひとってほ しいと思います。  松本座長  ご意見ありがとうございました。それでは、委員のご意見をうかがいたいと思いま す。先ほど議題1、2ではあまりご意見がありませんでしたけれど、今回のこの議題3 ともかなり関連しておりますので、もし振り返ってみて何かあればそれも含めてご意見 をいただきたいと思います。  吉田委員  今のご指摘ですけれど、インタクトの有害事象が多いのは、おそらくゲフィチニブの 有害事象における上乗せ効果というふうに考えていいだろうと思います。それが、要す るに許されないほど非常に高率なのかということがひとつと、それから先ほど大江委員 のほうからも言われましたけれども、たとえば外科の手術で亡くなる方もいるから、で は手術はやめようというようなことが実際に起こるかというと、ある許容性を持って社 会的には受け入れられているわけです。その許容する範囲を大いに超えてゲフィチニブ に存在しているかというと、今までに出ているデータそのものでは、とくに逸脱して大 きいというふうに判断するだけの根拠は乏しいと思います。ただ、その数字を信用でき ないとなると、これは感情的な問題になってしまいますので、これ以上コメントしても 意味がなくなります。今日、国立がんセンターおよび長崎大学、東京医大のデータを拝 見しましたけれども、それはほとんど再現性を持って出ていますので、突拍子もなく非 常に大きいものではないということは言えると思います。  レトロスペクティブスタディーですので、エビデンスベースは非常に低くいのです が、先ほど別府委員も言われたように、どうもこの薬には相当個体差があるらしいとい うことはわかります。女性で腺がんでというふうなことも言えますし、それから先ほど 大江委員が言われたように、肺をレントゲンの専門家が見れば、一応、危ないと思われ るような症例ではかなり高率に有害事象が出ているとか、そういうふうな、個別ごとの 条件によって、効果や有害事象の出方が違ってくる。こういった薬はたしかにわが国で 初めての経験ですし、未知の薬に対していろんな対応が必要だという別府委員の意見も わかります。また、われわれもそのような目で見ていかなければいけないと思うのです が、そういう見方で行きますと、たとえばインタクトで有害事象が多くて生存が延びな かったということも、たとえばきちっと奏効率に関係しているものはわからなかったわ けですから、ちゃんと層別して見ていたかどうかもわからない。どちらかで女性が偏れ ば、たとえば奏効率が上がってくるという可能性もありますし、そういった、今までの 情報を一応とりまとめたうえで、有害事象の報告を現場に知らせると同時に、効果の表 れた症例には、ある程度特徴があるということを、同時に流してやるということも考え てもいいのかなあというふうには思います。ただ、そうしますと将来の可能性を捨てて しまう危険性が出てくるので、あまり好ましいことではないかもしれませんけれど、そ ういった情報を−−先ほどの情報公開ということで言うと−−有効例にはどのような特 徴があって、有害事象を起こした症例にはどのような特徴があるかということは、エビ デンスがいまだはっきりしない段階であっても早めに流してやるということも必要なの かもしれません。  貫和委員  肺がんの患者さんに現場で使っている者としまして、先ほどご指摘がありましたよう に、私どものところでこの有害事象を病棟等でとくに経験したものですから、海外の論 文にも報告したような事情がございます。先ほどから議論になっています動物実験の問 題に関しましても、私どもも線維症あるいはがん、両方とも動物実験をやっておりまし て、実際に炎症等を抑えるということと、それから炎症をむしろひどくするということ は、抗腫瘍剤の裏表のところがありまして、抗腫瘍剤が炎症を悪化させるという状況は 私どもも経験したことがございます。しかしこれのみでは、なかなか動物実験からもの を言うことは難しいだろう、と。とくに肺がんは先にもご説明しましたように60代、70 代がほとんどの患者さんでございまして、そうしますとやはり、もし本当にそういう加 齢の肺に影響があるならば、それはそういう動物を使って実験をするのが本来の立場だ と思います。ただ、そこまではなかなか踏み込めないというのが研究の実際ではないか と思います。  それからインタクトのことが先ほどありましたけれど、これはインターネットに公開 されている、去年の秋のヨーロッパのがん学会のデータでありまして、私もそれを使い まして、年末のここでの検討会には使用いたしました。たしかにこの差が何かというの は、そのとき私も指摘をしましたけれども、少なくともこの治験責任者である医師は、 有意差はないというふうに申しておりました。  それから3点目は、線維症あるいは間質性肺炎が併存する症例に対して、この薬剤を どうするかという問題が残るわけであります。これは肺がんの臨床をやっている現場で はつねに悩んでいる問題であります。といいますのは、もっと頻用しております放射線 の照射の副作用の問題がまさにここにかかってくるわけであります。併存する線維症に 対する放射線照射の可否が、はっきりと記されているものは、文献上、ないのではない かと思いますけれども、現状では線維化肺の程度の問題で各医者あるいは呼吸器専門医 のグループが判断をして、この状況で放射線を当てるのは危険ではないかというところ で中止するということがございます。イレッサに関しましても、一度、肺障害が起こり ますと、そういう線維症の肺は重篤な結果を招くことになりますので、そこの判断はや はり重々に注意をしてやるべきです。先の12月の方針より踏み込んだことはなかなか難 しいのではないかと思います。  最後に、だいぶ時間がたちまして、実際の患者側の反応をお話しいたしますと、患者 さんはかなり慎重になっておられます。今日のデータにもありましたように、女性で非 喫煙者で腺がんの方はいちばん効くというような報告が多いから、いかがですかと使用 をすすめる説明を私どもがいたしましても、かなり慎重に判断される。そういう意味で は、こうした検討会が非常に役割を果たしているのではないかと思います。  松本座長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。  福地委員  今、貫和委員からお話がありましたが、臨床の現場ですと、とくに高齢者の肺がんに おいて手術が非常に難しい症例、あるいは初期治療でまったく反応がないような例につ いては次をどうするかということは、家族を含めて非常に深刻な問題であります。患者 さんの対応は、これ以後、やはり非常にいろんなメディアを使いまして、かなり詳しく 状況を把握している家族が多くなっています。そして、一般的に言いますと、やはり非 常に慎重になっておりますが、しかし進行性に病状が進んで、患者さん自身の病気の重 さの感覚が強くなった場合には、やはり非常に慎重ではありますがこの薬を使いたいと いう方が今でも結構いらっしゃるのです。  それが事実としてあるということと、それから放射線の肺炎の例はこの場合、やはり 非常に重要なアナロジーというか類似性があると思います。今後、たとえば60Gyという ような治療用に近いものをかけると、ほとんどの例、ずいぶん多くの例で放射線肺炎が 出てまいります。しかし、だからといってその治療法をまったく考えないということに はならないわけでありまして、今そこに必要なのは、適切な適用の判断と、患者さんに 対する詳細なインフォームドコンセントだということだと思います。ですからこの場合 におきましても、基本的には先ほど出た症例のように、劇的な治療効果があがっている 症例が、病型によってはかなり出てきておりますので、やはり薬の持っている効果とい うのは、少なくとも私の過去の呼吸器病学の経験ですと、この非小細胞肺がんの分野に おいては、今までにあまり見たことのないような切れ味があるというのも事実です。で すから、やはりそれだけに副作用は非常に慎重に考えなければなりませんので、問題 は、起こった副作用に対する事前の、あるいは起こった時点でのフォローアップが正し く行われたかどうか、そしてそれ以後の対策が十全であるかどうかということが問われ ているわけでありまして、そのことについて、今日はかなり、前よりは踏み込んだデー タが出ましたので、私はやはり、基本的にはこの薬はそういう慎重な配慮のもとで、な お臨床的な有用性があるというふうに考えております。  堀江委員  既に委員の方々が発言している内容と重複する部分もありますけれど、まず1点、動 物実験に関してです。女子医大の先生方から提示されているデータについて云々という よりも、動物実験でもっていろいろなことが実際に行われている、そのデータについ て、われわれは非常に重要だと思うと同時に、いつも動物実験のデータで注意しなけれ ばならないのは、たとえば投与する薬剤にしても、あるいは病態を起こすための刺激に しても、かなりの量を実際に使って行われるということが往々にして多いわけでありま す。そういうことがありますので、その、起こっている結果に対する解釈というのはか なり慎重にされる必要があるのではないかと思います。このデータ自体は非常に重要な 意味があると思いますけれども、臨床的に行われる場合の影響ということについての外 挿の問題となりますと、やはり慎重に扱う必要があるのではないかというふうには思っ ておりました。  それからもう1点、肺線維症のある患者に対する当薬の投与のあり方について、これ は前のときにもいろいろと意見があったと思います。私も、禁忌とすることに対しての 疑念を発言したわけでありますけれども、その後の経過の中で、症例検討会等も何回か 開かれておりますが、非常に皆さんの関心が高いということがありますし、また、その 薬剤の投与のあり方についても、かなり当初のあり方と、取り組み方が変わってきてい るのは事実ではないかと思います。当薬が使われるようになった当初、たしかにドクタ ー側の期待もありましたし、また患者さんのほうからもかなり積極的に要望される方が あったかと思いますけれども、そういう時期の使用のあり方ということについては、振 り返れば反省すべきところがあったかと思います。最近は患者さん側だけではなくて医 師の側においても、具体的な事例ですとか、あるいは症例検討などの結果に基づいて対 応策も変わってきている。その結果として、具体的に副作用症例等の減少にもつながっ ているのではないかと思っております。  したがって、先ほど、当初、患者さんの期待が非常に大きくて、というような発言が ありましたが、たしかにそういうところはあったのかなと思いますけれども、現在で は、経過を踏まえて、かなり慎重な取り組みが始まっているという事実もあることをお 伝えしたいと思います。  松本座長  ありがとうございました。大野委員、何か一言ございますでしょうか。  大野委員  ご指名ですので、非臨床の立場から発言させていただきます。非臨床の安全性試験の 場合は、今までも先生方がおっしゃったように、いろんな限界があって、ただちにヒト へ外挿できないというのは当然ですけれど、一応、原則として非臨床の安全性試験で出 た症状、毒性は、人間でも同じような用量あるいは同じような血中濃度で出るというこ とを前提に考えるべきだと思います。それがヒトでは出ないという、そういうメカニズ ム的な情報等があれば、当然、ヒトでは問題ないだろうという判断になると思います。 そういうことで青柴先生のデータも、それがヒトに外挿できないというような証拠があ れば、それはいいのではないかと思いますけれど、それが出るまでは十分慎重に扱わな くてはならないということで、私は先生方皆さんのお話を聞いていて同じだと思ってい ます。  ひとつ申し上げたいのは、そうは言っても非臨床試験の限界というものがありまし て、毒性実験の目的というのは毒性のプロファイルを見るということで、かなり投与量 を高くまでやっていますし、それ以上投与できないという量まではできない。また、毒 性がかなり強く出てしまうと、もうそれ以上は出ない、と。毒性的に、ヒトでは現れな いような毒性が出た場合に、それが用量のリミットになってしまって、それ以上上げら れなくなって、ヒトへの外挿ができなくなってしまうということもございます。  そして、私の感覚としましては、繰り返しになりますけれど、そういう毒性実験で出 たものはヒトでもでるということを前提に臨床試験を計画していただきたいですし、臨 床試験のデータを見ていただきたいと思います。それから、このような上皮細胞増殖因 子の作用をブロックするようなもの、そういう薬理作用といいますか、そういったもの として当然予想されるような作用があるわけです。これからは、そういったものを踏ま えてデータを判断すればよろしいのではないかと思います。  それから、ちょっとこれは私が申し上げることではないと思うのですけれど、イレッ サは非常に重要な薬だということを皆さん、発言されていますけれども、そういう副作 用の問題として肺線維症なり肺の呼吸困難なり、そういったものが出る前に、もっと早 い段階で事前に、致命的になる前にわからないのかなあ、と。僭越ですけれど、できれ ばそちらのほうの研究も進めていただけると非常にありがたいと思います。  松本座長  ありがとうございました。藤上先生、何かご発言はありますか。  藤上委員  専門的なことは先生方のお話の中でたくさん出てきましたので、私が一言申し上げた いのは、臨床試験というのは限られた範囲のデータしかないということです。市販後に 今回のような重篤な副作用が出るということが非常に多いということがあります。とく に市販後は投与される患者さんも多種多様になりますし、思わぬ結果を招くことにもな ります。とくに今回のような、世界に先駆けて認可された薬品であるとか、あるいはこ れから患者さんが使用することを強く望むような薬も出てくると思うのですけれど、こ うした薬品では必ずしも安全性が十分に確保されているわけではないというようなこと もありまして、こうした薬品に関しましては使用者側の自己規制というものが非常に大 切になるのではないかと思います。ともすれば抗がん剤というのは、対象となる患者さ んががんだということで、使われる薬剤も少ないということで、適用範囲を超えて使わ れるようなことも、今までに多々あったのではないかと思うのですけれど、少なくとも 安全性が十分に確認されるまでは、承認された適応症、承認された使用方法というもの を十分に守って使うのが筋ではないかというふうに思います。  堀内委員  抗がん剤のようなものは、先ほど別府先生がおっしゃったのですけれど、個人個人で 効き方が違うので、薬物療法の個別化ということが特に重要ではないかと思います。そ ういう面で、今日、資料No.4の副作用がどのくらい経時的に出てきているかというグラ フからも、この前の安全性検討会で通知を出してから、やはり減っていますし、死亡者 もかなり減っていると思います。ですからやはり、市販後に様々な状況の人に使われる わけですから、それをきちんとフォローするということがたいへん大事だと思います。 この問題については、かなり正しい使われ方がされ始めているのではないかと思われま す。資料にはまだ、黒く示された死亡者が出ているわけですけれども、これがなくなる ようにできれば良いと思います。個々の患者の十分な観察によって、そのようにできる のではないかと思いますので、ぜひ、その方向に持っていっていただきたいと思いま す。  松本座長  ありがとうございました。先ほどから、インタクト試験の位置づけについて疑問を持 たれているようですが、貫和先生または下方先生から、その位置づけについてご説明い ただけませんでしょうか。  貫和委員  お尋ねの件は2点あると思います。1点は先ほどご指摘があったadverse eventsの問 題であり、もう1点は大きな議論となっております、要するにわれわれが普通に使って いる抗がん剤のコンビネーションに対してのプラスの効果がないということです。この 点は専門の人間はずっと考えているところでありまして、現状ではまったく理由がわか らない。こういう抗がん剤を用いますと、細胞そのものは細胞死を起こさないような方 向に遺伝子発現が変化するわけですから、そういうことで上乗せだけの効果がないとい うようなことも考えられますし、この点は今後、追加して研究を続けていく必要が当然 あると思います。  ただ、先ほどもお話がありましたように、このインタクトの試験に組み込まれた患者 とそれから日本で認可された場合のセカンドラインでの使用というものはまったく違い ますし、現状ではほとんどの患者はセカンドラインで使われており、それも15〜30%ぐ らいの奏効率があるわけですから、そういう意味ではこの薬剤は慎重に経過を見ながら 使っていくべきではないかと考えます。  松本座長  ありがとうございました。別府委員、何かありますか。  別府参考委員  新しい、非常に有効な薬を探すということは、私自身も非常に大事なことだと思いま すし、べつにけちをつけているわけではないのですけれど、ただやはり、今回の話を振 り返ってみると、これは非常に早期に異例の承認をした、そういう中でやはり、いくつ かの踏み誤った部分があったという反省はしてもいいのではないかと思いました。  その中で、患者さんたちは必然的に、たとえばニュース等、いろいろなメディアを通 じて知識を増やしていった。ですから、ある意味では患者さん自身が非常に慎重になっ たということもひとつの学習の効果だろうと思うのです。私が気になるのは、たとえば 今回のように、新薬が短期間のうちに沢山の医療機関で一斉に使われることの危険性で す。実際に承認されると、ここにおいでのような専門家の方が慎重に使われる施設と違 って、どこの病院でも使えるわけです。ですからそういう意味でのしばりといいます か、あるいはブレーキもかける必要があったであろうし、画期的新薬と言われるもので あればあるほど、不測の事故に対する用意をすべきであったということです。  それからもうひとつ、ここで気になりましたのは61ページの図です。たとえば患者さ んの同意取得状況が、いまだにこういう状況であるということ自体が、むしろ非常に不 思議な気がいたします。これは、いくら患者さんがおわかりになっていると言ったとこ ろで、やはりちょっと、足りないのではないかと思います。医療者として、リスクの面 に関しては話しにくいかもしれませんが、やはりきちんとした情報を与えるということ が必要なので、私はこの図を見たときに、非常に驚きました。  松本座長  どうもありがとうございました。今日は先ほど、別府委員からゲフィチニブの使用中 止という要望書が出ております。今、ご意見をうかがったところでは、これまでの先生 方のご意見を総合しますと、概ね、直ちに中止するということには否定的ではないか、 と。そういう、否定的な意見が多いような気がいたします。いかがでしょうか、それで よろしいでしょうか。とくにご意見はございませんでしょうか。  別府参考委員  私も、直ちにやめろということを言っているわけではありません。ただ、承認という 形を−−法律上は完全に承認とした、それがそのまま続いているわけですが、その中 で、今おっしゃったような慎重な使い方で行くからいいのだということで、果たしてう まく行くのか。たとえば今、すでに走りはじめているいくつかの試験があるというふう にもうかがったのですけれど、それが本当にこれからあと、全部、ここにおいでの先生 方がお話しになったように、慎重な使い方がされていくのかという点で、非常に危惧を 感じます。やはり法的な体系としては、こういうケースに関して、少し考えてみる必要 があるのではないかという感じがいたします。そういう意味では、承認をいったん取り 消して、特別な病院に限定してきちんと使えるようにしていただきたいということが、 われわれの要望の趣旨でございます。  松本座長  別府委員のおっしゃったことを事務局のほうで十分検討し、よろしいように対応して いただきたいと思います。他にいかがでしょうか。  吉田委員  今、臨床試験が中断していますね。それはメーカーの自粛ということなのですか。困 るのは、今の話に少し関連するのですけれど、臨床試験が止まったままで、一般的な使 われ方だけされていて、薬の情報がきちっととらえられないというのは、むしろ具合が 悪いので、これだけかなり様子が見えてきた状況であれば、たとえば女性と組織型を層 別したうえで第3相試験をするとか、そういったことである程度、パワーが見えてくる ような試験が計画できると思います。むしろ臨床試験であれば、必ず査察に行きますの で、不都合な使われ方はまず、されないと思います。ですから、むしろそちらの再開を し、きちっと指導することで、適正な使われ方というものをさらに一般に進めていくと いう方向のほうがよろしいのではないかと思いますが。  松本座長  そのことに関して、事務局としてとくに答えることはありますか。  事務局  昨年10月に緊急安全性情報が出まして、そのときに臨床試験の実施について、安全対 策を踏まえなさいということで、アストラゼネカ社に指示いたしました。それを受けま して、アストラゼネカ社のほうが種々検討して、中止等を行ったということになってお ります。しかしながら、第III相試験、市販後臨床試験を早くやって、生存率の効果等 を見なければならないというのは重要な点でございますので、アストラゼネカ社として は第III相市販後臨床試験については8月には開始したいということで検討を進めてお りますし、また、遺伝子関係で関与しているものにはどのようなものがあるのかといっ たことを調べる試験についても検討していると聞いております。  松本座長  事務局の一層の努力をお願いいたします。他にいかがでしょうか。  藤上委員  資料No.3の先ほどのところ、61ページに「投与初期の入院、同意取得の状況」という ものが出ていますけれど、口頭同意というのが48%あるわけですが、これで同意をとっ たということになるのかなあと思うのですけれど。家族や患者さんに対する徹底したイ ンフォームドコンセントをやるということは、患者さんや家族、そして医療者側に十分 な考える時間を生み出すのではないかと思います。ぜひ、この同意というものを、文書 できちんととっていただくということを徹底していただければと思います。口頭ですと 2〜3分の説明みたいになってしまうようなことも、ままありますので、それをお願い したいと思います。  松本座長  先ほども申し上げましたが、事務局のほう、一層の指導をよろしくお願いいたしま す。  青柴委員  最後に1点だけ、確認させていただきたいのですが、別府委員のほうから出された資 料で、情報を開示されるべき項目で、私ども東京女子医大による実験結果ということで すけれども、私としてはぜひこの場で配って出したいのですが、実はご理解いただきた いのは、今、これは雑誌に投稿中でありまして、その掲載許可を待っている状況です。 そうすると雑誌社との契約関係で出すことができないということで、私はエディターに こういう形で出していいかということをお話ししたのですけれど、検討してみると言っ たきり、なしのつぶてです。おそらく運がよければアクセプトされると思いますので、 その節には全部お出しできると思います。そこをご理解ください。決して隠しているわ けではございませんので、ご理解いただきたいと思います。  松本座長  他にないようでしたら、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございま した。 照会先 厚生労働省医薬食品局安全対策課 TEL 03(3595)2435