03/04/15 第6回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会議事録       第6回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会                        日時 平成15年4月15日(水)                           17:30〜                        場所 厚生労働省省議室9階 ○前田座長  ただいまから、第6回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会を開 催します。各委員の皆様にはご多忙のところ、本検討会にお集まりいただきまして本当 にありがとうございます。議事に従いまして始めさせていただきますが、本日は「在宅 ALS患者対策の現状と課題」ということで、第1に、これまでの検討会において幾度 か議論になりましたが、家族が行う「たんの吸引」に関する整理を行った上で、「たん の吸引」の種類別の危険性に関する整理を行い、それについても議論いただいた上で、 これまで計5回の検討会を行ってきたわけですが、これについての議論の整理について 事務局のほうでペーパーを用意していただきましたので、その整理を確認しつつ、今後 の方向性についてご議論いただきたいと思います。具体的な進め方としては、いつもの やり方ですけれども、資料をひととおりご説明いただいた上で一括して質疑に入りたい と思います。事務局から資料のご説明をお願いします。 ○医事課長  資料の説明の前に事務局のほうで異動がありましたので、事務局のご紹介をさせてい ただきます。看護課看護職員確保対策官の野口です。医事課課長補佐の稼農です。看護 課課長補佐の岩澤です。健康局疾病対策課課長補佐の菊岡です。以上です。よろしくお 願いします。 ○稼農補佐  資料の説明をさせていただきます。資料の目次にありますように、本日は全部で5つ の資料になっています。資料1の表紙は「家族が行う『たんの吸引』に関する整理」と いうことです。これまでの検討会での議論において特に前回、前々回、家族が行う「た んの吸引」に関する整理についてお求めがありましたので、この点について説明したい と思います。  2頁は「刑罰関連規定の適用について」ということです。1.で医師法第17条につい ての解釈を記述しています。医業を医師に独占させ、一般人に対してこれを禁止するこ とを規定したのが医師法の17条です。本条の規定に違反して無許可で医業をなした者に 対する罰則については、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。  医業という規定の解釈については、(1)で、当該行為を行うに当たり、医師の医学的 判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある 行為、(これを「医行為」と呼んでいるが)、(2)で、これを反復継続し、またはその 意思をもって行うこと(これを「業として行うこと」)であり、これが【医師法17条違 反の“構成要件”】となっています。  2.については、一般に刑法が適用される手順について図解しています。以下の3つ の要件、すなわち構成要件に該当するか、違法性があるかどうか、責任能力があるかど うかの3つに該当する場合に犯罪が成立するとされています。  (1)からは用語の説明をしています。(1)「構成要件」については、犯罪定型と して法律に規定された違法・有責な行為の定型で、これを充足する違法・有責な行為が 犯罪ということになります。  (2)「違法性阻却事由」ですが、刑法上、構成要件に該当し、上の表にもあります が違法と推定される行為について、特別な事由のために違法性の推定を破る事由のこと を違法性阻却事由と呼んでいます。刑法では、正当防衛、緊急避難、正当行為の3つが 明記されていますが、このほかにも法秩序全体の精神からみて、違法性の阻却が認めら れるとの見解があります。  (3)「責任能力」については刑事責任を負担し得る能力のことです。  3頁は「実質的違法論」ということです。前の頁にあったようなことですが、実質的 違法論ということの基本的な考え方です。ある行為が処罰に値するだけの構成要件に該 当する場合に、その行為が正当化されるだけの事情が存在するか否かの判断を実質的に 行って、正当化されるときには違法性が阻却されるという考え方です。形式的に法律に 定められている違法性阻却事由を超えて、条文の直接の根拠なしに実質的に違法性阻却 を認めるというものです。具体的には、生じる法益侵害を上回るだけの利益を、その行 為が担っているか否かを判別することとなるとしています。  その正当化されるための要件としては、2.のところですが、これまでの判例が実質 的違法性阻却事由のために用いた具体的な要件というのを整理すると、以下の5つの項 目となります。  (1)は「目的の正当性」です。これは、その行為が行われる目的が正当かどうかと いうことですが、その判断にあたっては、行為者の心情・動機そのものを問題にするの ではなく、「行為が客観的な価値を担っているかどうか」という意味で解すべきとされ ています。  (2)は「手段の相当性」ということです。これは最も重要な要件とされています。 その当該行為の手段が相当かどうかという要件です。具体的な事情をもとにして、「ど の程度の行為までが許容されるか」を検討するということであり、犯罪の類型ごとに、 事案の類型ごとに、「このような目的のためには、この程度の行為までが正当化される 」という類型的基準を設定するということです。  (3)は「法益の衡量」です。特定の行為による法益の侵害と、その行為を行うこと により達成されることになる法益とを比較衡量するということです。これは上の手段の 相当性の判断の過程で併せて行われることになります。  (4)は「法益侵害の相対的軽微性」という要件です。これは特定の行為による法益 侵害が、上のような要件に加えて相対的に軽微であることという要件です。その行為に よる法益侵害の程度が大きければ正当防衛とか緊急避難といった違法性阻却事由に該当 することが求められて、より厳格な補充性などの要件が追加されることになります。  (5)は「必要性・緊急性」の要件です。これは法益侵害の程度に応じた必要性・緊 急性が存在するか否かを検討するということです。  ここまでの2枚が刑法の一般的な学説、判例に照らした整理ですが、家族が行う医療 行為について検討会でも話題となったインシュリンの自己注射について、当時の厚生省 医務局医事課長通知において解釈を示しています。それについての考え方をまとめたペ ーパーが4頁です。これは、中ほどの右に「別紙一」とありますように、昭和五十六年 四月に厚生省医務局医事課長あてに、国立小児病院長から照会がなされたものです。 照会の中身についてはここにありますが、「記」のところを読ませていただきます。  「医師が継続的なインシュリン注射を必要と判断する糖尿病患者に対し、十分な患者 教育および家族教育を行った上で、適切な指導及び管理のもとに患者自身(又は家族) に指示して、インシュリンの自己注射をしても医師法第十七条違反とはならないと考え るがどうか」という照会です。  これに対して「別紙二」とありますように、「照会のあった標記については、貴見の とおりである」というような回答をしているところです。  2.の「この通知の考え方」は、上記の通知についての考え方を整理したものです。 「インシュリンの自己注射」という行為に対する評価はどういったものかですが、これ は医行為に該当し、これを反復継続すれば医師法違反となるという医行為であるという ことです。  これが、回答のように違法とされないという考え方については、先ほどの実質的違法 性阻却の5つの要件に照らして記述したのが下のところです。  (1)は「目的の正当性」です。患者の治療目的のために行うものであるから正当であ るということです。  (2)は「手段の相当性」です。これは医師が、継続的なインシュリン注射を必要と判 断する糖尿病患者に対して、十分な患者教育及び家族教育を行った上で、適切な指導及 び管理の下に行われるものであるから、手段の相当性が言えるということだろうと思い ます。  (3)は「法益衡量」です。これは相当な手段により行われた法益侵害と、患者が注射 のために毎日、医療機関に通院しなければならない負担の解消とを比較衡量することに なると思います。  (4)は「法益侵害の相対的軽微性」です。1つは、行為の侵襲性が比較的低い行為で あること。もう1つは、行為者が患者との間において「家族」という特別な関係、自然 的であり、所与的であり、原則として解消されない家族という特別な関係にある者に限 られていることです。言い換えると、公衆衛生の向上・増進を目的とする医師法の目的 に照らして、法益侵害は相対的に軽微であるということです。  (5)は「必要性・緊急性」です。医師が、インシュリン注射を必要とするか否かの判 断をしているということ。それと、患者が注射のために毎日、医療機関に通院しなけれ ばならない負担を軽減する必要性が認められるということではないか、と考えていま す。  次に5頁です。前回、前々回と、「たんの吸引」を家族が行う場合の考え方の整理 は、どうかというお求めがありました。このペーパーについては、家族が行う「たんの 吸引」について、その行為の違法性が阻却される場合の要件としては、下記のようなこ とが考えられるのではないかということで整理をしたものです。もちろん、家族が行う ことについて患者が同意していることが前提です。  (1)「目的の正当性」です。これについては患者の療養目的のために行うというもの であり、正当性があるということです。  (2)「手段の相当性」については以下のような条件の下で実施するということです。 医師・看護師による患者の病状の把握。医師・看護師による療養環境の管理。「たんの 吸引」に関する家族への教育。適正な「たんの吸引」の実施と医師・看護師による確 認。緊急時の連絡・支援体制の確保、といったことが手段の相当性として認められるの ではないかということで整理しています。  (3)「法益衡量」については、「たんの吸引」が家族により行われた場合の法益の侵 害と、患者が在宅療養を行うことによる、患者の日常生活上の質の向上を比較衡量する ということです。  (4)「法益侵害の相対的軽微性」ですが、ここは侵襲性が比較的低い行為であるとい うことと、「家族」ということですので、先ほどのインシュリンのところの通知の解釈 と同じように、行為者が患者との間において家族という特別な関係、(自然的、所与 的、原則として解消されない)というものに限られていることは、同様であろうと思い ます。  (5)「必要性・緊急性」です。早急に「たんの吸引」を行わなければならない状況が 不定期に訪れますが、医療資格者がすべてに対応することが困難な状況にあり、「たん の吸引」を家族が行う必要性が認められるということで整理しています。  次に6頁です。これについては5頁の「(2)手段の相当性」のところで挙げた各項目 について、具体的な方策として考えられる事項を整理してみたものです。「患者の病状 の把握」については患者の主治医等が、個々の患者について定期的な診療等を行って病 状が安定していることを確認したり、また個々の患者の病状について家族に対して的確 に伝達するといったことが、具体的な方策として考えられるのではないか。  「療養環境の管理」については患者の主治医が、患者が入院から在宅療養に移行する 前に、個々の患者について家族や訪問看護師等、ケアを行う者の状況を把握して確認を するということ。患者の主治医が患者や家族に対して事前に説明と同意を行うというこ と。これを受けて家族は、患者の在宅療養への移行に備えて必要な準備を行うというこ と。患者の主治医や訪問看護師、家族等、患者の在宅ケアを行う者が、患者が在宅療養 に移行した後も相互に密接な連携を確保するということ。在宅ケアを行う家族の負担軽 減のために適切にレスパイト・ケアを行う。このようなことが考えられるのではないか ということです。  次に「家族への教育」については「たんの吸引」に伴う危険性について、家族が事前 に十分に習得していること。家族は自らの知識・手技に自信を持って行うことができる までの訓練を行うこと。主治医等が、家族が吸引行為を適切に行うことができるかを確 認する。このようなことではないかと思います。  「適正な『たんの吸引』の実施と医師・看護師による確認」については主治医等が、 家族が行った吸引行為について医学的見地からの評価を加え、定期的に「たんの吸引」 行為を適切に行うことができているかどうかを、確認することではないかということ。  「緊急時の連絡・支援体制の確保」については主治医や専門医等と家族との間で、緊 急時の連絡体制を取るということです。主治医が空床を確保するといったことで、緊急 時連絡・支援体制の確保が図られていることが重要ではないかと考えています。資料2 については岩澤より説明します。 ○岩澤補佐  資料2の説明をします。これは気管切開をしている患者の「痰の吸引」の種類別の危 害の内容について、事務局試案としてまとめたものです。吸引カテーテルの挿入部位に よって「痰の吸引」の種類を3種類に分け、それぞれ引き起こされる恐れのある危害の 内容を右に書いています。  まず「口腔鼻腔内吸引」について、長時間の吸引が行われると低酸素血症を引き起こ す恐れがあります。また咽頭を刺激すると嘔吐し、気道を詰まらせる恐れがあります。 高い(過大な)吸引圧で吸引すると、口腔内・鼻腔内の粘膜を傷つけ出血する恐れがあ ります。  次に「カニューレ内部までの気管内吸引」の場合、清潔保持が徹底されないと感染症 に罹患する恐れがあります。長時間の吸引が行われると低酸素血症に加え、肺胞の虚 脱、無気肺を引き起こす恐れがあります。  3つ目の「カニューレ下端より肺側の気管内吸引」について、これは専門的排痰法が 行われていれば、カニューレまで痰が上がってくるため、基本的にこのような深い吸引 が不要とされています。この吸引を行った場合、繊毛を傷つけることから、口のほうに 分泌物を輸送する機構が破綻することがあります。  次に、咳そう反射が残存している場合、吸引によって刺激され、この咳そう反射がお こり、カニューレの位置の移動、あるいは抜去による出血、気管切開孔の閉塞の危険性 があります。また、清潔保持が徹底されないと感染症に罹患する恐れもあります。気管 分岐部の粘膜を傷つけ、出血をおこす恐れがあります。  長時間あるいは高い吸引圧での吸引が行われると、末梢部の空気まで吸入されて、低 酸素血症、肺胞の虚脱、無気肺を引き起こす可能性があります。また、迷走神経そうを 刺激した場合は、呼吸停止や心停止を引き起こす恐れがあります。  最後に、気管粘膜を傷つけ、粘膜のびらんや気管拡張を招いた場合は、気管食道ろう で気管と食道の間に穴が空いてしまうこととか、大血管穿破によって動脈性の大量出血 による失血死を引き起こす恐れがある。このようにまとめました。 ○稼農補佐  資料3について説明します。資料3は、これまでの検討会の議論について整理をした ものです。1.「在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置」について、さま ざまな議論をいただいています。(1)「在宅療養サービスの質の向上のための方策」 として、訪問看護サービスの充実ということが議論されています。充実を図るための施 策の展開をすべきではないかといった議論です。  (2)「医療サービスの質的向上」として、在宅療養患者を支える医師に対して、疾患 に関する専門知識等に関する情報提供が必要ではないかといった議論です。また、訪問 看護師や潜在看護師に対する研修等、訪問看護サービスを担うべき看護師の質を高める ための施策についてのご意見がありました。  (3)「医療サービスと福祉サービスの適切な連携の確保」といったことで、医療と福 祉の連携を図って在宅療養患者の支援をしていくべきではないか、というご意見です。 また、退院前指導等を活用して、連携確保を図るべきではないかということで、これは 尾道の例などでお話がありました。連携確保に当たっては患者の主治医が中心となるべ きではないか。また、保健師によるコーディネイトの機能を強化するべきではないかと いった議論がありました。  (4)は、前回、自動吸引機の話がありました。「患者のケアを支援する機器の開発」 を進めるべきではないかといった議論がありました。  (5)は「家族のレスパイトの確保」ということで、必要な休息を確保して、質の向上 を高めるためのレスパイト・ケアを充実させる必要性の議論をいただいています。  (2)「入院サービスと在宅サービスの的確な組合せ」については、患者の病状や患 者のケア体制を踏まえつつ、退院時指導を適切に実施するためのルール作り等が必要で はないか、というご意見がありました。また、緊急時については、入院サービスを確保 する必要があるのではないかというご議論です。  2.「たんの吸引」行為ですが、これについては、まず安全な実施のためにはどうし たらいいかというご意見がありました。(1)として、専門的な排たん法を普及させる必 要があるのではないか、といったご意見がありました。それと日常的なたんの吸引につ いて、行為の危険性に応じた適切な対応手順を示すことが必要ではないか、というご意 見がありました。  (2)「家族以外の非医療職による実施」については、看護等の資源の中で患者のケ アが十分提供できれば、非医療職が吸引を行わなくてもよいのではないか、というご意 見がありました。しかしながら、在宅療養の現状にかんがみて、家族以外の非医療職に よるたんの吸引についても、一定の条件の下で認めることも必要なのではないか、とい うご意見がありました。その際、医療サービスを受ける機会が閉ざされることのないよ うにすべきである、というご意見もいただいています。また、もう1つのご意見とし て、「たんの吸引」の危険性にかんがみて、非医療職による吸引の実施は、認めるべき ではないのではないか、というご意見です。2つのご意見を提起しています。  次のところですが、今日、法律的整理について先ほどペーパーでご説明しましたが、 非医療職が行う行為と、家族が行う行為との関係についての法律的な整理が必要ではな いかということ。本日は家族が行う行為との関係について先ほどご説明したところで す。また、家族以外の非医療職によるたんの吸引を認める場合であっても、訪問看護等 の専門的ケアの充実に努めるべきではないか、といったご意見があったところです。  資料4は山崎委員からご提出いただいた資料ですが、後ほどご説明をお願いしたいと 存じます。先に資料5についてご説明します。  資料5は、日本ALS協会会長、ほかの方々から4月4日に提出された、ヘルパー等 介護者による痰の吸引検討に関する意見・要望書です。本検討会の委員の皆様宛にも なっていますので、皆様方はもう既にお読みいただいていると思いますが、吸引を必要 とする患者にヘルパー等、介護者が日常生活の場で吸引を行うことが、最終的なまとめ に盛り込まれるようにということ等について、要望書が提出されています。事務局から は以上です。 ○前田座長  ありがとうございました。質疑に入る前に山崎委員からご説明いただくということ で、よろしいですか。 ○山崎委員  資料4として、若干のものを出させていただきました。4月の新年度が始まりまし て、先週の木曜日と金曜日の2日間、全国47都道府県看護協会の会長様にお集まりいた だく全国会議がございました。その場で2枚目にお付けしている一覧表がありますが、 これを基に議論しました。これは、いままでこの分科会で厚生労働省からご提示された り、私どもの緊急調査をした都道府県別の患者さんの実態、現在、把握されている訪問 看護サービス等の数、それと例の260日の治療研究事業の実績等を一覧にしています。 この資料を基に全県の協会長様たちと、患者さんとご家族がより良いサービスを受ける にはどうしたらいいか、時間を取りまして議論をさせていただいたところです。  中には、夜、訪問看護を呼んでも断られたとか、いろいろ患者さんからもクレームが 出ている。そういったことでこの分科会でもいろいろご意見を頂戴しました。具さにそ ういうこともお伝えしながら、看護職でもっと出来ることはないのだろうかということ で、全県からご意見を頂戴したわけです。大方の県が、「よし、わかった」というよう なことで、取り急ぎ実態というか、個別の具体的な患者さん一人ひとりに看護の手が届 いていないのであれば、そこをきっちり私たちの手を届かせましょうということで、全 県が総力を挙げて取り組むということで、実は確認をした会議が先週ありました。その ことを1つご報告申し上げておきたいと思います。  1枚目に3点ばかり整理させていただきましたが、既にこの分科会でも若干、発言し ておりますが、先ほど事務局から論点整理がありましたが、そこにまだ盛り込まれてい ないようなことを少し私なりに整理させていただきました。  1点目は、これまでの6回の議論でもありましたように、いまの在宅療養というもの が家族介護力を大前提にしている。このことについて、この分科会としては在宅療養の 仕組み、家族の介護力を前提としないでもすむような体制づくりといったものを、きっ ちり報告書には書くべきではないか。また、幾つかの退院指導であるとか退院調整のレ ポートも事務局から出されましたが、その退院指導などを見ても、家族にご指導して家 族が介護をすることを前提にしている、この意識も含めて、そのあたりを早急に改善し ていく必要があるのではないか。このことを1点目に重要だと考えているわけです。  2点目は、これも現行施策を十分利用するための周知・徹底ということです。何度も お話が出ましたが、診療報酬上はALS患者さんの訪問看護はリミットが実はありませ ん。それに含めて年間260日という、これも40の県で14年度、15年度は実施というデー タが出ています。このことについても、情報周知とともに活用を促進するといったこと も大事であるということ。もう1つは、利用可能な地方公共団体の事業やサービスメ ニューといったものの情報提供を進めるということ。それから、私どもの調査でもよく わかったことは、保健所、医療機関、訪問看護ステーション、かかりつけ医などの連 携、難病等の地域ネットワーク、チーム体制づくりが、まだまだ不十分であり、このこ との徹底というのは大変急がれるのではないか。こういったこともきちんと報告書には 盛り込むべきだろうと思っています。  3点目は、「看護がまず」というところでは現行の運用を緩和しながら、すぐにでも できる改善がないだろうかということで、2つほど今日は申し述べたいと思います。1 つは、24時間の巡回訪問はいまでも可能なわけですが、同一日にお1人の利用者に対し て複数回の訪問看護を、複数の訪問看護ステーションから行ける仕組みにする。これは 診療報酬の要件緩和ですので、いま複数回は行けますが、複数のステーションから行け ないので、エリアによってはそういうところがなかなかカバーしきれない。このことは すぐにでも改善できるのではないか。ご要望申し上げたいと思います。  そして訪問看護ステーションの訪問看護計画のもとに、看護師の指導というふうに書 きましたが、私どもと一緒に訪問介護が協働できるしくみを、きちんと作るということ で、看護と介護の連携強化・充実を図っていただきたい。このことは改めて、すぐにで も改善できることではないか。  先ほど、いままでの議論の整理のなかで「主治医等」ということで出てきましたが、 主治医の訪問診療というのは月の回数で言うと平均して1.7回くらいなのです。そうす ると週3回以上訪問看護を利用するとか、毎日お使いになっている患者さんもいらっ しゃるし、訪問看護は頻度高く訪問していますので、その訪問看護計画で介護が私ども と一緒に働ける仕組みができると、ご家族の負担や患者さんの安心度に、もっと私たち は貢献できるのではないか。こんなことを今日は資料としてまとめました。 ○前田座長  ありがとうございました。それでは資料1から順にご質問をいただいて、それぞれお 答えいただきながら議論したいと思います。今日は資料3のいままでの議論をまとめた ものを中心に、取りまとめの方向性を探っていきたいと思います。まず資料1です。事 務局のほうでおまとめいただきました、家族が行う「たんの吸引」が、なぜ許されるか ということの法的な整理です。それが当然、あとの議論で出てくる介護の方が行う「た んの吸引」が、どういう形で許されるかという議論と、どうつながるかということに結 び付いてくるわけです。まずご質問は、いかがですか。どんなことでも結構です。 ○伊藤委員  資料1とそれに関連した内容について、5頁の「家族が行う『たんの吸引』に関する 違法性阻却の考え方」として整理いただいたところです。宮城県においても、こういっ た解釈をもとに行っているという説明をさせていただいた際のことを思い出しながら、 2つほどご質問させていただきたいと思います。  (2)の「手段の相当性」の項目ですが、医師・看護師による患者の病状の把握、それ と医師・看護師による療養環境の管理というところの流れです。私どもが実質的にいろ いろな現場の様子を見ると、ここは「医師・看護師等」という「等」の表現で保健師の 方も当然入りますし、そういうチームを形成してアセスメントを行ったり、その管理を 行ったりするということで、幾つか「等」が入ったほうが、現実に合うという箇所があ るのではないかと感じるところです。  6頁の相当性の極めて具体的な整理の箇所ですが、入院においては「主治医等」とき ちんと「等」が入っています。その他諸々のところも「主治医等」という表現が実質的 かなと思うところです。  もう1つ、甚だ申し上げにくいことがあるのですが、6頁のいちばん最後の「主治医 は、空床を確保する」という表現は、ちょっと現実的に厳しいと思います。この8月に 急性病床、療養病床の手挙げというのもありますし、予測される事態に関して空床を空 けて待つというようなことは、実質的に言う機関側としては極めて厳しい。在院日数の 短縮の問題であるとかいろいろありますし、また多くALS等の難病を受け入れる医療 施設においては、特殊疾患療養病棟もしくは特殊疾患療養病床を申請しているところで すが、そこで看護体制の厳しいなかで、空床を確保するということは非現実的なことで はないか。むしろ緊急入院のための体制を整備するということではないかと考えるとこ ろです。  同じく連携確保の問題で、主治医が指導管理をするということは診療報酬上もそのよ うになっているところですが、先ほど申し上げたとおり保健師、訪問看護師等の皆様と ともにやっていく場合に、特に退院あるいは再入院に関するコーディネイトに関して は、確かに主治医が最終的な責任を負うという点で、そのとおりだと思いますし、主治 医の果たす役割は極めて重大であると思います。  資料3に移って関連のことですが、1.の(1)の(3)の連携確保のところです。3 つ目の○で、「連携確保に当たっては、患者の主治医が中心となるべきではないか」と あり、そのとおりだと思います。  「また、保健師によるコーディネイト機能を強化すべきではないか」ということで何 度も繰り返すようですが、これは各職種がその責任と役割をお互いに自覚し、また尊重 し合って行うべき内容であります。また国の施策として、こと難病に関しては緊急入院 の問題あるいはショートステイ先の確保の問題に関しては、かなりいろいろな工夫がな されてきてはいますが、課題は大きいわけです。そういった意味で難病医療専門医とい う方々が各県にまだ60%ぐらいでしょうか。多くは看護師の方であったりMSWの方で あったりするのですが、支援専門医の活用ということも是非入れていただく必要がある かと思います。  平成15年の秋に特定疾患の政策が大きく見直されるということもあり、各県ごとに相 談の窓口を設置する案も出ているところです。特に医療に関する依存度の高い患者様ご 家族の療養を図るためには、従来の枠組みを超えた専門医の活躍というのも期待される ところではないかと思うところです。  私が申し上げたいのは、在宅におけるALS等の患者様の療養に関しては、課題が山 積するところではありますけれども、各職種の責任と役割を尊重し合いながら進めてい くことが重要ではないか。誰が主導権を握り、誰が主たる役割を担うかについては、も ちろん患者さんの選択ということも前提となっているところであります。そういったと ころを感じたままに述べさせていただきました。 ○前田座長  医師・看護師による患者の病状の把握というところですが、ご指摘のとおり現場は保 健師やいろいろな方の連携のもとに成り立っていて、それぞれの分担が重要だというの はご指摘のとおりだと思いますが、ここの部分で「手段の相当性」と書いていただいた のは、おそらく医師法上、原則として許されない「たんの吸引」が、なぜ例外的に家族 に許されるかというと、医師法上許されない最大の基本的な構造は、危険だからという ことなのです。  ただ、医師がやれば許されるし看護師がやれば許される。要するに危険をコントロー ルできる専門職としての医師・看護師がいて、その医師・看護師が患者の病状を把握し た、その枠内で「たんの吸引」を行っているから許されると、相当性があるというご説 明を、おそらくされているのだと思います。  もちろん実際の吸引とか、いろいろなものに関して、いろいろな職種の方が係わって いるということは、全くそのとおりだと思いますが、ここでなぜ違法性が阻却されるか というと、医師法上、権限の与えられている医師・看護師が、実質的にコントロールで きる方が病状を把握しておられ、療養環境も管理されている枠内でおやりになることが 重要であるというご説明なのだと思います。 ○伊藤委員  もちろん私もそのような理解ですけれども、看護師という中に保健師も含まれるとい うことにはならないような気がするのです。 ○稼農補佐  保健師の方が地域で保健所保健師さんを中心にして、その患者の方を中心に据えて ネットワークを組む連携というのは非常に大事であり、特に難病患者さんの場合はそう いった連携がネットワーク作りとされていると思います。そこのところで、療養環境の 管理とかネットワークといったところについては、看護師と保健師というのが入り得る のだろうとも思います。 ○前田座長  ここのところは、それでは実質的には「等」を入れても私は異存があるということで はないのですが、ただ、原案を作られた方の趣旨としては、医師法上で出てくるのは医 師と主として看護師なので、医師法上の構成要件に当たる行為が、なぜ正当化されるか という議論なので、そこに結び付けて書かれたのかなと私は思ったのです。 ○伊藤委員  医師法の17条と保助看法の第5条との関係ですね。 ○前田座長  ええ。 ○伊藤委員  よく理解できます。 ○川村委員  揚げ足を取るようですが、この会で初めのときに、「看護師等による」というときの 「等」の解釈が皆様、大変に違いました。いままで一般に行政で使われてきた看護師等 といった場合には、保助看プラス准看という4師であった。それがこの検討会について は、さらにもっと拡大した解釈なのだということが示されたので、この「等」というの は非常に不明瞭なものだと私は思います。できれば、少なくともプロセスの間だけでも きちんと規定をしていただく、または定義をしていただきたいと思います。そうしない と理解がみんな違っている。突然にこの中に看護職以外が入るのだという話になったり してしまうと、また議論が収斂していかないと思いますので、よろしくお願いしたいと 思います。 ○前田座長  よろしいですか。いま「等」が入っている部分というのは看護師等ですか。いまの文 章では入ってないわけですね。 ○川村委員  いまの「『たんの吸引』の手段の相当性について」という文章の中で、「患者の病状 把握」のいちばん上の○のところです。「患者の主治医等は」となっているその「等」 について、どういう解釈になるのかというのが、いまご議論いただいているのだと思い ます。 ○前田座長  6頁の四角い枠のところですね。看護師等でなく、主治医等ですね。 ○川村委員  はい。 ○前田座長  この「患者の主治医等は」の中には、これは患者の主治医プラス看護師というふうに 考えてよろしいわけですか。 ○川村委員  ですから2つぐらいであれば、あと字数が2つ増えるだけの話です。だからきちんと 書いていただくほうがいいと思います。 ○前田座長  患者の主治医、看護師と書けばよろしいということですね。 ○川村委員  はい。 ○前田座長  それはよろしいわけですね。 ○川村委員  いろいろ定義を付けて何か丸めた表現にするというのであれば、それはそれで結構で すが、議論の途中で混同してくるというのは誠に困ると思うので、はっきり指定してい ただければありがたいと思います。 ○前田座長  そうなると、ただ、主治医、看護師と2つ並べてしまうと、伊藤先生が言われたよう に、そこに保健師が入っていないとおかしいというご議論になってくるということで す。 ○伊藤委員  並べていただけば正確だと思います。 ○前田座長  保健師まで入れて並べるべきであると、それはよろしいわけですね。 ○平林委員  1つ質問いたします。4頁の「通知」の解釈です。確認なのですが、「通知の考え方 」ということですが、これは厚労省の公式な見解であると理解してよろしいのでしょう か。 ○稼農補佐  はい。 ○平林委員  そうしますと、もう1つ厚労省にお聞きしたのですが、2.の(2)の(4)の2つ目 のところ、「行為者は、患者との間において『家族』という特別な関係」云々とあり、 それを受けて、次の5頁の「たんの吸引」に関する違法性阻却の考え方のところでも同 じような文言があります。1つ教えてほしいのですが、家族という特別な関係にある者 に限られていることによって、法益侵害の相当的な軽微性が強くなるというのでしょう か、相対的に軽微になるというのはどういう意味なのでしょうか。なぜ家族が行えば法 益侵害の相対的軽微性が生ずるのかという、その理由を教えていただきたい。 ○稼農補佐  ここで書いているのは、医師法の目的というのが、通常、医師でなければ医行為を 行ってはならないということについて書いています。それはもとから言うと、公衆衛生 全体の向上と増進を目的とするということであろうかと思います。こういった医師法の 目的に照らして、行為者と患者との間において家族という特別な関係のもとで行われる 行為ということですので、法益侵害の程度というのが、その家族という特別な関係の間 に限られるといった意味で、相対的に軽微であるというところに掲げているところで す。 ○前田座長  私が厚労省の見解を補足するのも変なことですが、本人の自傷行為は要するに法益侵 害、事実上ゼロになるわけですが、日常生活をしている者で非常に強い関係があって、 事実上の推定的な同意が働くことが多い、そういうことによって身体の侵襲という法益 侵害性が減ずるということとか、類型的に家族関係であれば、こういう行為を行うこと が愛情をもって類型的に行うので、侵害性が低いということがある程度構成できる。た だ、これはぎりぎり詰めてしまうと家族というのは非常に複雑で、家族だからなぜ違法 性が減少するかというのは実は非常に難しい問題だと思います。  ですから、家族を今度、ヘルパーさんに置き換えていくときに、では家族と同視でき る条件をどう考えるかというところが、まさにポイントです。家族に許されるだけの条 件を何をもって担保したことになるか。どういう条件を与えればヘルパーさんに家族と 同じような条件で許せるかというのは、実はかなり難しいところになるかと思います。  相対的に軽微になるかどうかということを、体系上、こういうところに位置づけるか どうかというのは、いろいろ議論の余地はあり得るとは思いますが、事実上、どこに入 れるか。この(1)、(2)、(3)、(4)の中で入れるとすれば(4)のところに入れざるを得な いのだと思いますが、家族であるということが、いま現にいろいろやっていることを踏 まえて、なぜ許す方向に働くかということを踏まえて、それと同視できるものは何なの かというのを考えていかなければいけないと思います。 ○平林委員  ちょっと議論が先に行き過ぎていると思います。私は質問しただけで、ですから厚労 省の公式見解ですねということを確認して、その上で厚労省がどうお考えですかという ことをお聞きしたわけです。その厚労省のお話は正直よく理解はできないのですが、家 族という特別な関係ということにあることが、相対的な軽微性にとって非常に重要な意 味を持っているという、そういう判断をされたと理解してよろしいかどうか、ちょっと 違う形で確認をさせていただきたいと思うのですが、それでよろしいでしょうか。 ○稼農補佐  法益侵害の相対的軽微性というところで、1つは行為の侵襲性が低いということ。 ○平林委員  行為の何ですか。 ○稼農補佐  侵襲性が比較的低いという上の部分と、それと行為者が患者との間において特別な関 係にあるということで、法益侵害の程度が相対的に軽微であろうと、その両面から法益 侵害が相対的に軽微であろうということを記述しています。 ○平林委員  それに関連して2つ質問があります。1つは、いま、侵襲性が比較的低い行為である と言われたのですが、家族が行う「たんの吸引」あるいは「たんの吸引」全般が、一概 に侵襲性が比較的低い行為であると言えるかというと、これは、この分科会でしばしば 議論されてきましたように、必ずしも全部が全部低いわけではないというわけですか ら、そこら辺のことをどうお考えになっているのかということが1つです。  もう1つは、家族が行うことによって法益の侵害の程度が低くなるということ。そし て座長から、身体の侵害性が低いからということも少し補足されましたが、考えてみる とこれは医師法違反の違法性阻却の問題であるわけです。意見は差し控えますが、例え ば4頁の通知の解釈が、こういう解釈しかできないというふうに私は思わないのです。 私自身は少し違った解釈で、この通知についての理解の仕方をしています。  それはさておくとして、少なくとも医師法違反というものと身体の侵害性が低いとい うことは、必ずしも理由にはならないのではないか。とりわけ医師法第17条について言 うと、濫りに無資格者が医行為という危険な行為を行えば、それによって国民の生命、 身体に危険を及ぼすので、それをいわば社会的な法益というか、そういう観点からこれ を制約していくというのが、そもそもの医師法第17条の基本的な考え方であろうと思い ます。  したがって、その社会的法益を侵害しているということに対して、なぜ相対的軽微に なるのかということの説明をしていかないと、これは説明にならないのではないかと 思ったのです。それが家族という特別な関係ということで説明できるとするならば、そ してそれが重要な意味を持っているとするならば、そのことの確認を、とりあえずいま はさせていただくということにとどめます。 ○稼農補佐  法益の侵害の相手方が、全般に広がらないということがあろうかと思います。家族と 患者の同意のもとで、その範囲内で行われるという意味において法益侵害が全体に広が っていかないということで、相対的に軽微性があると言えるのではないかということで す。 ○前田座長  法律の議論をするといくらでもできるのですが、実質的にご指摘いただいたことを踏 まえて前に進みたいと思います。私は17条は社会法益に対する罪だとは思えない。刑法 学者はそうは言わないのではないか。そういう議論をすると時間がいくらあっても足り ませんので、ほかに別の角度からご質問があれば、どうぞ。 ○五阿弥委員  基本的なことで恐縮ですが、この「家族」というのはどこまでの範囲を言うのでしょ うか。つまり家族の代理とか、あるいは準ずる者とか、そういう者を含まないのか含む のか。つまりインシュリンの自己注射などの場合でもそうですが、家族というのは一体 どの辺の範囲まで言うのでしょうか。 ○稼農補佐  明確な何親等までというところまで、ここの通知で言っているわけではありません が、少なくとも血縁関係にあって生計を共にしているような方であろうと思います。 ○前田座長  いまのはよろしいですか。川村先生、どうぞ。 ○川村委員  ここの「家族が行う医療行為について」という、このことは次に家族の代わりとして ヘルパーがということを前提にして、これは出されたものなのですか。私は非常に単純 に、ご家族がなさることについて、こういうふうに違法性がないのだという説明と読ん でいたのですが、その次にヘルパーさんというお話がいま出たので、いかがですか。 ○稼農補佐  このペーパーについては、これまでのご議論の過程で家族が行う「たんの吸引」につ いて、どういった整理が考えられるかというお求めがありましたので、そのお求めに応 じて整理をしたものです。今後、これを議論の1つとして進めていただければと考えて います。 ○山崎委員  単純な質問ですが、いまご議論のあった相対的軽微性の所で、侵襲性が比較的低い行 為であることということと、2つ目の○、両方が満たされていないと軽微だとは言えな いということですか。なおかつという意味において。 ○前田座長  私が答えてしまうとまた変なことになってしまうのですが、違法性を判断するときに は、それぞれ10個チェックポイントがあって、10個全部クリアーするということではな くて、こういうものを総合して許されるかどうかを判断するのが、普通の法律の考え方 ですから、侵襲性がうんと低くなればほかの要件がかなり厳しくても通るし、要するに 総合判断になるわけです。だからといってルーズに判断するということとは全く違うの ですが、同じ手術などでも非常に程度の低いものがあるし、例えば命に係わるような手 術をする場合と、非常に軽微な手術をする場合とで、35条でどこまで正当化されるかと いうときには、やはり、それぞれの要件を比較して考えると、重大なものがあれば重い 要件がいるという関係にはなってきます。比較的低いということも、その量的な概念が 入っているのだと思います。 ○山崎委員  それであれば、インシュリンについては皮下注射なので、インシュリンについては侵 襲性が比較的低い行為であると解釈をしていますが、次の頁の「たんの吸引」の所に も、(4)に全く同じ文言で2つが挙がってきているのは、私は理解に苦しむのです。資 料2で、「たんの吸引」の種類が3つに分けてありますが、どのレベルにおいても、引 き起こされる恐れのある危害の内容が、こういうふうに記述されているところを見ます と、「たんの吸引」が侵襲性が比較的低い行為であるというのは、5頁の記述について は疑問があるのです。  もう一つは、素人でよく分からないのですが、刑罰関連規定の適用で「違法性の阻却 」というペーパーが出てきているわけですが、これはある行為を行ったその行為が合法 か違法かということで、それを阻却していく結果論的なものの考え方ですが、これは家 族が行う医療行為についてペーパーを出せと言われたから出しましたということもある のかもしれませんが、今後「たんの吸引」という恒常的に行われる行為をどうしようか と、我々が議論をしている分科会のテーブルに、このペーパーが乗ってくるのは理解に 苦しむのですが、この辺りはいかがなのでしょうか、どなたか法律家の方にご意見を伺 いたいと思います。 ○前田座長  まず、第1点の「たんの吸引」が比較的侵襲性が低い行為というのは、吸引の中で資 料2の全部を指しているわけではなく、これは主として、上の1つを指しているのです か。 ○稼農補佐  そこはご議論があると思いますが、5頁については違法性阻却の考え方なので、全て の行為全般について、比較的低いかどうかということは議論のあるところだと思いま す。違法性が阻却される場合には、それは侵襲性が低い行為であるということが、相対 的軽微性の要件が満たされなければ、違法性が阻却されないこともあるだろうという理 解だろうと思います。資料として5頁で出していますが、これについては、3つに分け て危険性を書いているので、ここについては、いろいろなご議論があるのだろうと思っ ています。 ○福永委員  途中で言うのも変ですが、「家族」が行う医療行為についてインシュリンのことが出 たのは全体の流れからいうと、家族が行っていることでなぜ許されるかということで、 あくまで出されたことで、この一つひとつのことで議論をしても、ここは法的な議論の 場でもない。例えば私自身は逆に侵襲性の危険度から言うと、インシュリンの皮下注射 で細かなことで言えば、リュウマチがあったりすると致死的なことにももちろんなるわ けです。そんな議論をしていたら、いつまで経っても。私は全体の流れの中での議論で やっていかないと、ここで法的な整理はもちろん必要だけれども、それについて議論を していくと、先ほど座長が言われたように時間が足りない、全体の流れと、その中での 位置付けということで考えていかないと、議論は進まないのではないでしょうか。 ○前田座長  1つだけ山崎委員のご質問に、このペーパーを出すことを座長として同意したことに 関してコメントをして先に進みたいと思います。違法阻却というともう結果で、裁判 で、その場で、厳密に使う場合はそうなのですが、類型的にどういう場合が許されるか という判断なのです。ですから、完全な盲腸の手術だって204条の控訴要件に該当して、 刑法35条で違法阻却されるから許されるのです。それが、そもそも204条に当たらない という議論もないことはないが、あれは違法阻却なのです。  では、盲腸の手術を許すのですか、許さないのですかという議論をするのがどうなの かという議論をしても、あまり意味がない。やはり類型的にどこまで許されるかで、た だ、そこを「たん」の場合には、具体的にどういう要件があればやっていいかというこ とは詰めて考えなければいけませんが、法律家の議論というのは、しようもないこうい うゴチョゴチョした議論をするわけですが、最後は常識的に結論はそんなにずれない で、結果だけを見て形式的に議論をしているわけではなく、実質的にどういう要件が備 われば許されるかということを考えるので、参考のためにこれを出していただいたわけ です。  いまご指摘がありましたように、法律論をあまり細かくやっていますと、時間がなく なってしまいます。先ほどご指摘いただいたように、インシュリンの注射などを出しな がら、家族がやることが一定の範囲で許されていることを踏まえながら、だから、即結 論がどうこうということではないのです。星委員からご指摘がありましたように、介護 の方の吸引の問題を考える前提として、家族が許されるのはどういう理由なのかを、一 応整理しておこうということで、おまとめいただいたということで、法解釈の細かい議 論をここでやる余裕はないので、そのくらいにしたいと思います。 ○平林委員  私も細かい議論をするつもりは全くないのですが、ただ、物事の考え方として1つ問 題提起だけはしておきたいと思うのです。こういう違法性阻却の議論をすることが、全 く意味がないとは私は思わないのです。十分意味があると思うのです。しばしばこの分 科会で発言していますように、この問題は、制度論的にどう解決をしていくかというこ とで、問題を考えていくべきだと思っています。  そうしますと、例えば類型化をしていく場合に、では、誰が責任をもって類型化をし ていくのか、あるいは法益衡量をして、あるいは法益侵害が相対的に軽微であるかとい うことを、どういう基準で、誰がどうやって判断をしていくかを考えていくときには、 もう少し違った観点での議論が必要ではないかと思っています。この議論を全否定する つもりはないのですが、議論の進め方、あるいは持っていき方として、これだけではな いだろうということを申し上げておきたいと思います。 ○前田座長  それはまたその場で出していただければと思います。一つの枠としてどこまで許され るかでも医師法があるので、医療行為だから、医師と看護師以外は全くできないのかと いうと、医師・看護師以外の家族もやれる。では、なぜ家族がやれるのかということか ら、ほかに誰がやれるかという議論にまた繋がるとまずいのですが、そういう議論で す。そのほかに制度論として、いろいろな議論はあるのですが、そこはここで切らせて いただきますが、よろしいですか。 ○川村委員  6頁に「療養環境の管理」という項目があります。これにはいちばん上の○が患者の 主治医は、患者が入院から在宅療養に移行する前に、個々の患者について、家族や、訪 問看護師等ケアを行う者の状況を把握・確認する。ここに(質・量両面)ということで すが、もし、これがいま、きちんと行われているとすれば、ここで問題になっているよ うなことは生じなくてもよかったのではないかと思うのです。これを今まで行っていな かったということで、これをやるのだということであれば、ただ、確認されるだけでは 「あっ、そう、あなた足りないのね」ということだけで終わってしまうというのでは、 また元に戻ってしまうと思うので、これについて、どう責任をもってどうなさるかとい うことを書いてほしいと思います。手段が相当性ということについて、いま欠けている のではないか。 ○前田座長  いまは患者の主治医は在宅医療に移行する前に、こういう状況把握をしていないとい うご趣旨ですか。 ○川村委員  もし、きちんとなさっているのであれば、いまここで問題になっているように、家族 がこんなにご苦労をなさるということにはならないのではないかと思います。ですか ら、これは手段が相当性を。 ○前田座長  把握・確認であって、いま現実に医療もALSの患者に行われているわけで、主治医 もおられるわけですから、主治医の方がこういう形で、こういう指導の下で家庭でやっ てください、訪問看護はこういう割合でやって、介護の方はこうやってくださいという ことをやっておられるわけですね。 ○川村委員  そこで、きちんと必要量を満たしているということを確認しておられないから、こう いう問題が起こってきたのではないかと思います。 ○前田座長  それが主治医の責任であると。 ○川村委員  ここに「主治医は」と書いてありますね。 ○福永委員  それは理想と現実で、やっている主治医もいるし、やっていない主治医もいる。これ を細かに議論をしても仕方がないのではないかと私は思います。 ○川村委員  手段は正当だということを証明するものだということなので、私としてはこんなに大 きな問題にはならなかったのではないかと思うわけです。これだけ大きな問題になると いうことは、やはり正当ではなかったということになると思います。 ○福永委員  これは例えば訪問看護師が必要なケアを、吸引をできる。いろいろな意味でマンパワ ー的に、あるいは制度的にできていれば、こういう問題ができなかったわけで、同じよ うな議論で、これはこれとして理想論としては主治医は当然すべきであるし、現実は川 村先生が言われるように、していない側面はあると私も思うのです。私たちはそういう ことを目指してやるべきだということで考えていいのではないでしょうか。別にこれを どうこうと書き直す必要は私はないような気もするのです。 ○川村委員  こういう要件を満たせば、相当性があるのだというふうに読むのだということであれ ばよく分かりますが、実際はそうではない。だから相当性がない。 ○前田座長  いまの質問についてですが、状況を把握・確認して、主治医の一定の認識、コントロ ールの下にある。完全にベストの療養環境を指示して、それを担保しなければならない と言っているわけではないですね。医師、主治医が家族や訪問看護師たちが行うケアの 状況を把握・確認しているということを前提に、以下のような条件があれば家族がやっ ても「たんの吸引」は許される。どういう要件が揃っていれば家族が「たんの吸引」を やっていいかというための要件です。 ○川村委員  それが揃っていなければいけないということですね。 ○前田座長  把握・確認です。 ○平林委員  いま我々が問題としているALSの患者の「たんの吸引」という問題は、在宅医療の 枠組みの中で問題になっているわけですから、在宅医療について厚生労働省がどういう ふうに考えるかという基本的なスタンスが、この問題を考えるときには大前提になるの だということを、1回目か2回目の時に私は申し上げたつもりなのです。  いままさにそれが問題になっているわけで、手段の相当性という形で、仮に厚労省の 枠組みの中で議論をすると、この手段の相当性が満たされなければ、家族が行う「たん の吸引」も違法になるわけです。そして、いま福永先生がこういうことをやっておられ ない医者もいるということを認められたわけです。すると、仮にこのことを文言通りに 読んだとして、現在の家族が行っている「たんの吸引」も全部が全部違法でないわけで はない、違法性が阻却されるわけではなくて、違法な行為を家族もやっているのだとい うことにもなってしまうわけです。その辺の事柄をきちんと了解をした上で、問題解決 をしていかないといけないのではないかと思うのです。  私自身は在宅医療は基本的に医師の責任において行われるべきものであって、従来か らあったようにインシュリンの皮下注射の事例と、在宅医療というのは全くイコールに 議論されるべきではないだろう。医師の責任というのは、ずっと在宅医療においてのほ うが強い、重いだろうと思っているので、その辺の基本的な考え方をどう想定して議論 をするかということが、この問題を考えていく上では必要ではないか、ということだけ は申し上げておきます。 ○前田座長  先ほど福永先生が言われた、これが実施されていないという意味の「これ」という意 味がまだはっきりしないので、ここに書いてあるのは、ケアを行う者の状況を把握・確 認するということなのですね。確かに在宅医療で、どこまでのものを厚生労働省が手当 をしていかなければいけないと考えているかが前提になるというか、関係してくるのは そのとおりなのです。その国の政策の中で在宅医療をどこまで財政的にも裏打ちして やっていくかという問題を、どう決定するかということ自体が非常に政策的で難しい問 題です。それが前提できちんと決まらないと前に進めないということになってしまう と、なかなか難しい。もちろんそれを視野に入れながら、議論をしていくことにはなろ うかと思うのです。 ○福永委員  ちょっと誤解されている面があるし、これは議事録に載るから、私は、行われていな いということでやってしまうと、非常に困るのです。これは人それぞれの判断である し、50%ぐらいでもできたと思う人もいる。けれども、私が先ほど言ったのは、この文 言については当然なことで、別にこれをどうこうということではないということで言っ ただけのことなのです。いま神経内科の主治医が、この点について在宅医療を一生懸命 に頑張っている。ただ、それは100%、みんながやっていたらこういう問題は起きない わけで、問題としてはたくさんあるということを言っただけなのです。 ○前田座長  よろしいですか。ここに書いてある要件が厳密にきちんと行われているかどうかとい うことを、あまりここで議論をしても生産的ではないので、「手段の相当性」とか、ど ういう場合に許されるのかというのは、やはり相対的なものだと思います。ただ、ここ でも確認をされているのは、主治医が状況を把握し、主治医のコントロールの下に、あ るいは看護師のコントロールの下に行われている、それがないと駄目ですよと。主治医 のコントロールが外れたところで家族が、本人がよかれと思っていろいろなことをやる のは、正当なものではないということなのだと思うのです。その時に、主治医がどこま できちんとやっているかという問題は、本当は微妙な面が残るのでしょうが、ある程度 類型的に判断すると言わざるを得ないのです。  ほかになければ資料2と併せてご議論いただくことになると思うのです。資料2につ いて「たんの吸引」を類型化した問題を看護課にまとめていただいたのですが、これに ついてのご質問はいかがですか。これは大きくは3段階に分かれるということなのです ね。 ○岩澤補佐  「たんの吸引」の種類を3つに分けてということでですね。それぞれ引き起こされる 危害の程度も、もちろんそれぞれに違うわけですが、それぞれにやはり危害を起こし得 る可能性はあるという意味です。 ○前田座長  そういうことですね。何かご質問はありますか。先ほど関連して議論が出ていたと思 うのですが。 ○星委員  単純な質問ですが、「カニューレ下端より」という所だけに◎が付いているのです が、これは何なのかということと、「専門的排痰法が行われていれば、カニューレまで 痰は上がってくるため」ということは、どういうふうに理解するのですか。つまり、毎 回、専門的排痰法が行われれば、そこまですれば済むのか、たまにでもやっておけば出 てくるから、そこまでチョロチョロとすればいいのか。それはどういうことなのです か。この専門的排痰法とカニューレまで痰が上がってくるというのは、1対1の関係な のですか。 ○岩澤補佐  第1点目、◎がなぜ付いているのかということですが、通常の吸引においては1つ目 の「口腔鼻腔内吸引」と「カニューレ内部までの気管内吸引」の2種類が行われる。た だし、排痰法が行われていなければ、カニューレの所まで痰が上がってこないので、深 い吸引が必要になる場合もあるということです。専門的排痰法を毎回行うのかというこ とですが、前回、青森県の例で、効果について説明いただいたわけですが、専門的排痰 法も、いわゆる大掃除と表現されていましたが、それは患者の状態によるのだろうと思 います。 ○五阿弥委員  これを見ると、いろいろな恐れがあって怖いと思うのですが、多分コンタクトレンズ を入れる時でも、いろいろな恐れがあるわけで、現実にどれだけの危害が発生したの か。例えば患者団体の方などの話を聞いていると、危害が実際に発生している件数は、 極めて少ないのではないかと思われます。実際の危害の発生については、どういうよう なご認識をもっておられますか。 ○岩澤補佐  発生の頻度については具体的な数字は持ち合わせていません。こういうことがないよ うに危害を引き起こさないような手技はどういうものかを習得したり、あるいは起きた 場合の対応も含めて、知識と技術が必要になるものだと考えているのです。 ○五阿弥委員  具体的にそういうケースの報告はないのですか。つまり全国的なベースで収集するシ ステムがないからできないわけですが、現実に例えばこういう所ではこういうケースが あったと、そういう報告事例みたいなものもないのですか。 ○福永委員  これもまた非常に難しい議論になると思うのですが、現実に私たちはたくさん筋ジス の患者とか、ALSの患者をやっています。私たちがいちばん心配して、実際に亡くな るケースも結構報告されているのは、吸引よりもむしろ、当然ですが、やはり気管カ ニューレの交換の時なのです。実際に亡くなるケースで筋ジスの研究班などで、カニュ ーレの交換の時に出血するという例は報告されていますが、ただ、吸引でどうこうとい うことは、最初の議論の時に川村委員から出血をしたケースがあったという話を聞きま したが、それは当然あったのでしょう。  これも全体の流れの中から言えば、非常に軽微なものです。そういうケースを挙げて くれとか、そうでないケースを挙げてくれといったら、また、非常に難しいことになる のですが、この前の神経学会の意見書にもあったように、一定の条件できちんとした研 修とかをすれば、そんなに危険なことではない。大きな危険も今まで一般的な意味では ないという認識だと私は思うのです。もちろんそれに反対して、そうではないという人 もいるかもしれませんが、一般的な学会の意見としては、この前の意見だと私は思って います。 ○伊藤委員  実際の危険に関する内容については、在宅においてはあまり問題とされてこなかった というのは、そのとおりだと思います。むしろここの中で挙がってきているようなこと は、ICUといった所での議論を踏まえてのことだと思いますが、それについては救急 医学会のペーパーがあると思います。特にいろいろな肺炎の発生する原因であるとか で、ペーパーになっているものは在宅のものに関しては、あまりないと認識していま す。ペーパーがないからそれが無いということでは決してありませんが、補足的な説明 です。 ○川村委員  非常に公開されにくい部分があるのではないかと思います。それは最初に話がありま したように、医行為であるということで、医師の指示がどのように出るかについて、い ま訪問看護の指示書としては、状況として患者がこういう吸引器を使っておられるとい うことに○を付けることはありますが、その下の指示の部分に吸引についてきちんと やってくれという指示が、詳細に書かれることは少ないと思います。  ある意味では、医行為なのだから医師の指示がなければできないということで、率直 に言って、私は何回もいろいろなドクターから意見を言われて「やめろ」ということを 言われてきています。そういう状況の中で、こういう問題がどういう形で顕在化される のかということは、なかなか難しいものがあると思います。  1回目の時でしたか、ヘルパーたちの代表の方々が、きちんとものを言っておられな いのではないかというような意味の意見もありましたが、それに似た状況がついこの間 までの私たちの状況だったと思います。もし、危険がないのであれば、これは医療行為 から外したらいかがでしょうか。 ○前田座長  医行為というのは非常に幅が広くて、先ほど話が出たコンタクトレンズの着脱も医行 為です。それも実質的ないろいろな状況によっては、やはり違法で処罰されるというこ ともあり得る。それは幅が広いので難しいと思うのです。ただ、ここの中で私がいちば んお伺いしたいのは、「カニューレ下端より肺側の気管内吸引」というのは、医師・看 護師しか絶対にできないものと考えていいわけなのですか。 ○看護課長  これも今までのご議論から私どもが考えたのは、基本的に医師・看護師であっても、 きちんとした排痰法を受けていれば、その必要がないわけなので、やらないにこしたこ とはないと考えられるのではないかと思っているところです。 ○前田座長  すると、下は理想からすれば、やる必要がなくなるはずのものですか。 ○看護課長  十分な排痰ケア、1回目に川村委員が見せてくださったようなケアがきちんとされる ということであれば、3番目のレベルのことはする必要がないのではないか。 ○福永委員  あくまで教科書的な分け方であるし、患者によってはほとんど吸引のない人ももちろ んいますし、とてもとても吸引をしないといけない人もいるし、実際の医療の現場で は、こういう形で線引きというのは難しいところもある。例えば極端に言うと、カニュ ーレ下端は、ヘルパーにはできないと決められても、実際は困る面もあるのではないか と思うのです。そこまで出ているのに、ここから以上は法的に難しいから進めないとい うのも変な話になる。ただ、一定の条件は必要だと思う、そういう意味での理解でいい のではないでしょうか。 ○前田座長  分かりました。ほかに資料2に関してはよろしいですか。それらを全て総合して、山 崎委員の資料4も含めて、資料3のこれまでの議論の整理のところの議論に繋がってく ると思います。 ○伊藤委員  やはり◎の専門的排痰法のところが引っかかってしまうのですが、肺理学療法とか、 リハビリテーションの専門家たちが係わる内容を前提としてのことかなという気がする のです。やはりドレナージの問題とか、その他いろいろな医師・看護師以外の理学療法 も係わるところなので、この専門的排痰法というところが、私としてはいま一つすっき りしないのです。 ○前田座長  この場合は、ペーパーとしては、痰の吸引の種類の分析というよりは、危害がどれだ け類型的に分けられるかという報告をいただいたのですが、そこに使う文章の中でも、 専門的排痰法という言葉は使うべきではないという、伊藤先生のご趣旨ですか。 ○伊藤委員  専門的排痰法ということが、何を規定しているのかがよく分からない表現だというこ とです。 ○前田座長  川村先生、それに関して。 ○川村委員  これはお書きになった意図がどうかを私が代弁するのではなくて、私がこれを読んだ 趣旨は、理学療法の方が行うとか、看護師が行うとか、医師が行うとか、きちんとトレ ーニングを受けて行うというふうに解釈をしました。ですから、ここにもし、理学療法 士による何とか、理学的なリハビリテーションとかとなると、非常に細かくなると思い ます。ですから、総合的なものとして私は読ませていただきました。 ○前田座長  伊藤先生はそういう説明を加えた上でなら、ということでいかがですか。 ○伊藤委員  それであれば理解できます。 ○前田座長  ほかによろしいですか。資料3のこれまでの議論の整理で、全てご議論をいただいて もいいわけですが、柱は2本になっていて、第一は在宅ALS患者の療養環境の向上を 図るための措置について、ということがいちばん中心に議論されてきたことは間違いな いので、このようにまとめていただいたのだと思うのです。この部分は、皆さんのご発 言を一言一句再生したというのではなく、まるめてあるので、ニュアンスとかいろいろ あろうかと思うのですが、これに関しての議論はいかがでしょうか。これに加えて、こ れを入れていただかないと困るということも含めてご発言をいただきたいと思います。 また、これはどういう意味かというご質問でもよろしいのですが、いかがですか。 ○五阿弥委員  このまとめに対して私は極めて不満です。なぜかというと、そもそもこの検討会がで きたのは、要は介護職に吸引ができるかどうか、その条件づくりということがメインの 話としてあったわけです。それがいつの間にか訪問看護の話になってしまったわけで す。これは何度も繰り返しますが、訪問看護の充実は大事で、在宅医療をもっと推進す ることは大事です。しかし、基本的にはたんの吸引行為について、家族以外の非医療職 による実施をどうするかがメインだったのではないかと思うのです。まとめを見ます と、非常にここの記述が薄いのです。  しかも、これは「たんの吸引行為」の(2)で「家族以外の非医療職による吸引の実 施について」という部分ですが、次の項目には、認めるべきではないという意見が書い てあります。確かにこういう意見もありました。しかし、一定の条件の下に認めるべき だという意見を私などは主張してきたわけですが、そうした主張がほとんど入っていま せん。では、何のために尾道のケースとか、あるいは宮城のケースを取り上げたので しょうか。これは前のほうの訪問看護サービスの質の向上のために私は言っているわけ ではないのです。あくまで、どういう形であったら、介護職のたんの吸引が認められる のか、その条件づくりについて、私は尾道のケースにも触れたし、宮城のケースでも紹 介していただいたのではないでしょうか。  ここの部分はもっときちんと詳しく書いていただきたい。そこが医療と福祉との連携 をどうするかということにも関わるわけですし、あるいは医師が中心となって、最終的 な責任は医師が負うとか、訪問看護の役割とか、緊急対応の時の体制をどうつくるかと かいうことも議論になったと思います。だから、ここをもっときちんと書いていただき たいと私は思います。 ○前田座長  ほかにご指摘いただくことはいかがですか。 ○福永委員  五阿弥委員の言われたことに全く賛成なのですが、1については、私はこれで異論を 言う人はいないと思うのです。当然、訪問看護を充実させるべきだし、私自身も全くそ う思う、だから連携も必要です。特に大きな1、小さな1、2については、皆さん当然 の合意だと思います。  問題はこの委員会そのものは、ALS等の在宅の患者にヘルパー等の吸引が可能なの かどうかの議論が当然大きくなるべきで、そういう点では私も、論点のまとめ方として は、これだけでは困るのではないかという気がするのです。 ○前田座長  ただ、重要度が、要するに書かれた量だけではないし、もう一つ、五阿弥委員、福永 委員の議論の前提としても、在宅の患者のいろいろなメリットと言いますか、優れた医 療を受けるための土台というか基盤として、在宅看護をきちんとするということも非常 に重要な面があるわけです。これを文書で出していく時に、在宅の看護もきちんとす る、その上にALSの患者に関してヘルパーのたんの吸引も、どういう要件があればか はともかくとして、認めていく。知恵を絞って、先ほど違法阻却を議論したのも、そう いう目的に繋がっていくのだと思うのです。  どういう要件があれば例外であるそれが認められるかということは、時間と知恵は確 かに絞らなければいけないと思うのですが、骨組みの作り方としては、介護を充実す る、それに医師がどう絡むかという問題はありますが、それと切り離してのたんの吸引 問題というのはあり得ないのではないか。それを言うことがALS患者のヘルパーのた んの吸引の問題の足を引っ張ることにならないというよりも、私はむしろ看護の充実は 広い意味で、患者のメリットにとって、いちばんファンダメンタルの所だと思います。 ○五阿弥委員  だから、そこはみんな共通項だと思うのです。 ○前田座長  共通項も書いておかなければいけない。 ○五阿弥委員  そこを落とせと言っているわけではないのです。ここはもう共通項でいいのですが、 要はそれに比べて、「非医療職による実施」のところはあまりにも薄過ぎないかという ことを言っているわけです。しかも、この書き方についても、「非医療職が吸引を行わ なくてもよいのではないか。しかしながら」と書いてありますが、私が言っていたのと は少しニュアンスが違います。つまり、非医療職が医療資源で患者のケアが十分提供で きる、それは理想なのだけれども、それは現実的には無理なのでということなのです。  そして、いろいろな条件がこの中でも議論されたわけですから、そういうものも入れ てほしいということなのです。何も最初のものを飛ばせなんていうことは全く思ってい ません。順番はこれでいいですから、ここの部分をもっときちんと書いていただきたい ということです。 ○前田座長  分かりました。ほかにご意見ございませんか。 ○星委員  たぶんこれでまとめにしようという話ではないのだろうと、私は理解をしました。こ れまでの議論の整理で、実は入口の議論、議論を長々やってきて、確かにそれは異論の ないところだということになりました。そして、2.の(2)の所で、まさに、「しか しながら、家族以外の非医療職によるたんの吸引についても一定の条件の下で」と、そ の一定の条件の下でというのは何を指すのですかという議論を、これからきちんとす る。そのためにわざわざ自己注射の話とかを出してきて、どういう条件なら認められる のか。家族が認められているという前提で、では、どういう条件なら認められるのか と、その議論をしていないように私は記憶しています。  私は何度もこの整理をしてくださいと申し上げてやっと叶いましたので、この上で、 いろいろ細かな話はあるかもしれませんが、違法性が阻却される、私は使いなれない言 葉ですが、細かいことを言えばいろいろなことがあって、こういう場合はどうなのだと いろいろなことを言いたくなりますが、サラっと読めば、なるほどそういう条件ならば 家族が行ってもいいのだろうと、みんながそれを常識的に判断できるのだろうと思うわ けです。  その時にその延長線上に、もし家族でない非医療職がやる場合には、どういう条件が 同等とみなされるのかという話を、これからすればいいのだろうと思います。むしろそ ういう案をつくるのならつくって、それが駄目ならどうして駄目なのかということを、 一つひとつ議論をしていけば、おのずと答えが出るのではないかと思うのです。 ○前田座長  非常に厳しいご指摘というか、座長の力不足というか、私の責任なわけですが、筋道 も言われるとおりだと思います。ここの部分が五阿弥先生が言われるように薄くなった のも、結局は私の責任で、要するにこの家族の関係とか何かは前からご指摘いただいて いたのに、なかなか出なくてとろとろしていたところはあると思います。ただ、1.の 所をきちんとやっていくというところに、きちんとした了解ができて、そうだとする と、あとはいまの星先生のご指摘のようなことを、今日の議論を踏まえながらもう一歩 突っ込んだ文章を今日この場で出すというのは無理なのです。  今日、家族の問題などを議論したわけですから、次回、22日までに間に合えば、そこ で文章を出してまとめていく方向で考えていくということです。ただ、その前提として は、やはり若干の認識のずれというか、実は私はそんなに大きなずれではないと思うの です。看護を充実すれば、即ヘルパーの方の吸引が必要なくなるような状況が招来でき るかというと、そこについては看護の充実を図ればそういう問題が消えるという考え方 は全くないわけではない。そこで2頁の(2)の○の両論併記の上のほうが、非常に歯 切れの悪い書き方になっているのは、そこの所はいろいろなご意見があるからなのだと 思うのです。  やはり全体の流れとしては、下に「たんの吸引」の危険性にかんがみ、非医療職によ る吸引の実施は認めるべきではないという議論を1本出すのだとすれば、上のほうの所 は、もう少しスッキリした形で、やはり当面は必要なのではないかという考え方で、対 置させて書いたほうが分かりやすかったかとは思います。  その前提として「一定の条件」というのを具体的に書いていく作業で、これは今まで 全く何もやってこなかったかというとそうではない。先ほどご指摘いただいた尾道や宮 城の話なども全て、その条件とは何か、現実にどこで苦労をしているかというご議論を 披露していただいているわけです。退院の時の指導もそこに繋がっているわけです。そ れを整理する。今日の違法阻却の話も実質はそこなのです。どういう条件があれば認め られるか。それを星先生が言われるように詰める段階で、それでもやはり出すべきでは ないという議論があって、最後まで残るのは両論を書くということは、当然あると思い ます。 ○伊藤委員  限られた時間で具体的な解決の提言をまとめていくという座長のご発言は、そのとお りだと思います。その中で、家族あるいはヘルパーと介護者の扱いについて、私の理解 するところでは、家族は医師の代りとか、訪問看護師の代りをしているのではなくて、 これは患者本人の補助をしているのであるということを、ひとつ確認したいと思うので す。自己注射にしても血液製剤のほうでも、たしか似たようなことが、厚生労働省から 医師法違反にならないという指導があったという記述も聞いているのです。基本的に自 己管理の補助を家族がしているのであると。もちろんそういうことに関しては、家族の 間で同意がなされて、最善の注意を家族がはらっているのが前提であるということなの だと思うのです。家族が患者に代って、本来自らが自らに行うべき行為を代って行って いるというニュアンスが、自己注射についての解釈の所にも必要ではないか。  ALSという疾患については、第2回目でも説明しましたように、本来、自らが自ら に行う行為が、進行性の麻痺のために行えなくなっていく。そのところを家族が補助し 代行していくのであるという要素が極めて強いということを、ご指摘申し上げたかと思 います。したがって、家族が本人に代って行っている行為について、本人や家族が家族 と同等とみなすことが可能であるならば、同じように患者本人の補助をヘルパーが行う ということで、整理することも可能ではないかと考えるところです。 ○平林委員  基本的にALSの患者に対する「たんの吸引」の問題について、理想論と現実論と2 つあって、理想論を言えば、それはきりがないわけです。現実論として何とかしなくて はいけないということについては、おそらく皆さん意見は一致していると思うのです。 ただ、その方策をどう考えるかが問題になるわけです。いま伊藤委員が言われたような 形で、本当に問題の解決になるのかというと、私は必ずしもそうは思わないわけです。 何とかしなくてはいけないと思っているので、議論の立て方として、今日の議論を踏ま えていえば、しばしば議論をされているように、家族ができているからヘルパーもやっ ていいではないかと、要するにそういう議論になると思うのです。その議論が本当に成 立するかどうかを、少し詰めて議論をすることは避けては通れないだろうと思います。  私の意見を申し上げれば、先ほど確認をしましたように、なぜ家族であったらいいの かということをしつこく厚生労働省の見解に対して質問をさせていただいたのは、まさ にそのことを考えていたからです。厚生労働省の枠組みの中でとりあえず考えるとし て、家族がやるということによって法益侵害が広がっていかないのだと、特別の自然的 ・所与的、原則として解消されない家族という特別な関係であればという、極めてきつ い条件が付された上で家族がオーケーだという理解であったわけです。  それと同じような関係をヘルパーがとれるかというと、それは少し違うのだろう。ヘ ルパーはもちろん自然的でもないし、所与的でもないし、原則として解消されないわけ でもないということになると、家族ができるからという論理のアナロジーで、介護職 が、あえてヘルパーとは申しません。ヘルパーでいいのかどうかも議論をしていかなけ ればならないと思うので、一般的に介護職が「たんの吸引」ができるかどうかについて は、違った観点で、要するに私は介護職が行う場合、本人の代りとは思っていません。 基本的にそれが医行為であるとするならば、あえて法律的な枠組みでいえば、医師の指 示の下において、いわば診療の補助として行っているのだという捉え方をしたほうが、 より問題の解決には適切だろうと思っています。  そうしますと、先程来この分科会において、ずっと議論をされているように、医療・ 看護・介護との連携と役割分担を、どういうふうに作っていくのかという問題から、事 柄を解決をしていかないといけない。いま大変だから何とかしなくてはいけないという 気持は全く分からないわけではないのですが、先々その禍根を残すだろう。むしろ先ほ ど申し上げたような形でのフレームワークで、この問題は考えていくべきだろうと思っ ています。 ○伊藤委員  ただいま平林委員がご指摘になったところにつきまして、私は決して家族とヘルパー 一般が同等であるとは考えないわけです。むしろ極めて限られた使命性という特定の方 にのみ、あるサービスを行うという関係の下に限っての話でして、一般に家族ができる からそれ以外の方にもできるという拡大適用というような話ではありません。その辺の 条件をどのように考えたらよろしいのかを極めて具体的にしていく必要があるという趣 旨で発言をしたわけです。  それと、診療の補助なのか、患者本人の補助なのかについても、大いに議論をしてそ このところをはっきりさせないと、この問題は解決をしないと考えます。 ○前田座長  平林委員がご指示された問題は根本問題ですが、ただ、これをいまやると、パンドラ の箱を開けることになるといいますか、要するに看護師以外に医師の補助職員をつくる ということですね。介護師も看護師の一部の職域に入っていくということ、かなり一般 的な形でという可能性の議論になってしまう。それをごく一部に限るという形でやるの でしょうが、それも1つ検討すべき重大問題だとは思いますが、非常に時間のかかる問 題だと思います。日本の医療制度にとって、看護協会にとって、生死に係わるような大 問題だと思います。  ただ、今なすべきことは、平林委員も認められるように、当面何とかしなければいけ ないということでは認識は一致している。その範囲内でやるべきこととして、どこまで 絞り込んで問題が広がらなくてやれるか。ある意味で弥縫策だと言われればそうかもし れない。しかし、何年後かの見直しをつけながら、まず手を打たなければいけない。そ の時の1つのやり方は、家族に許されている。家族と同じ基準でということはないかも しれないのですが、医師や看護師でないのに家族で許されている領域があるわけで、そ れと同価値のというか、法的に同等の類型が作れれば、それに限って許していく。それ をどう構成するかですが、1つの考え方は、やはりもう今日のところで、ある意味で まっさらから案を書くのではなくて、今日の資料1の6頁に書いたようなこと、これに 患者の病状把握をして、療養環境を管理して、そして、「家族」という所が「看護師」 に変わるわけです。看護師にきちっとした教育をして、ここの部分は家族以上に厳しい 教育をする。そういうことも、ある意味では可能になってくる。  あと、患者の主治医等からの評価、それから、緊急時の確保、こういう要件のもとで 認める。但し、それに加えて何が必要かというと、さっき伊藤先生がおっしゃった、家 族と同等と見なし得るもので、同意なのか、信頼関係の形成でどういう関係があった介 護師に認めていいのかというのは、まだ完全には煮詰まっていない。宮城の例や尾道の 例などをお聞きしながら、初めはやはり、かなり狭めに作らないと、制度というのは非 常に危険な面があると思うのです。ここで挙げられたものに加えて、あと、家族と同等 といいますか、非常に信頼関係のおける関係みたいなものをどう入れ込んでいくかが、 1つの作業のポイントであり、残された課題としてあるのだと思うのです。だから、実 はやるべき基準、ガイドラインというか、条件というのは、私はもう大体できているん だと思っています。 ○山崎委員  6頁の資料につきましては、先ほど川村委員もご質問なさいましたが、これはあくま でも家族が行う「たんの吸引」の整理に関するペーパーですので、これをヘルパーとか に家族の所を置き換えるということではありませんね。 ○前田座長  条件の絞りが全然違ってきますけどね。 ○山崎委員  あまり座長が軽々におっしゃっていただきたくないと思います。 ○前田座長  そこは置き換えるなんて言ってませんので。 ○山崎委員  はい。それが1点です。それから、「これまでの議論の整理」という2枚紙ですけれ ども、私はやはりこういう議論をしてきたのだろうと思いますし、あくまでもこの検討 会は、「たんの吸引」という大きな、患者のご家族がいまいちばん悩まれていること を、どうしたらいい方法があるんだろうかと、そのことで私たちが大変限られた時間 で、本当に珍しいことですね。2、3カ月で結論を出さなければいけない検討会などと いうのは。しかし、何回もこれについて、私は申し上げたつもりですが、いかんせん、 こういう状況が起きることは十分わかっていたにもかかわらず、行政が何もしてこなか ったこの10年というのがやはりあるわけですので、在宅の療養環境の整備ということ と、質の向上に至る時に、まずは家族の介護力を前提としてきたいまの仕組みをどうし ていくのか。このことをこの検討会からきちんと発信してまいりませんと、やはり低き に流れて、それで終わってしまう。将来に禍根を残すのではないかという先ほどのご意 見に対し、私はそのとおりだと思うのです。ですから、まずはこの1.の(1)の前 に、家族介護力を前提としないような仕組みをきちんと勧奨していくというようなこと を、これはもうこの検討会の意見ですから、やはりきちんと書き込み、さらに現行のA LS患者さんたちへの在宅療養支援の事業が十分活用されるような対策、これも併せて やっていただき、なおかつ、財政上の手当というものもこの検討会からきちんと要望す べきだろうと思いますし、そのことについては、私どもは発言はしてきている記憶があ ります。  それから、先程来ご指摘があった「たんの吸引」の行為につきましても、先ほど座長 はいみじくも両論並記になるやもというお話をなさいましたけれども、両方の意見があ るわけですから、そこはきちんと受け止めていただきたいということです。それから、 (2)の○のポツの1つ目ですが、やはり現在の看護等の資源の中で、患者のケアが十 分提供されていれば、非医療職が吸引しなくてもいいのではないかという認識は、私は そうだと思います。しかしながら、在宅医療の現状にかんがみ、そうはいってないだろ うと、それが今回のマターなわけですから、緊急避難的に、家族以外の非医療職による たんの吸引についても、一定の条件で認めるようなことも必要なのではないか。こうい うご意見があっても、それは緊急避難的なものだろうというふうに私どもは受け止めて おります。  そして、いちばん下の○ですけれども、やはり家族以外の非医療職によるたんの吸引 を認める場合であっても、訪問看護等の専門的ケアが利用抑制をされてはいけないでは ないかというご意見もこの中でありましたので、そのこともきっちりお書きいただきな がら、その利用拡充に努めるということ。それから、これも自動吸引器等のことで議論 がありましたけれども、今後の在宅医療も止まっているわけではありませんし、進化進 展していくプロセスにまさにあるのだろうと。これは福永先生がご専門ですが、ALS の診断治療についても、まさしくまだプロセスでありますので、今後の疾病管理とか、 在宅医療の進展を予測して、あくまでも時限的に考えるようなものではないだろうか。 このように考えていますので、議論の整理の1つに是非こういうことを加えておいてい ただきたいと思いますし、これは報告書の段階で書き加えることになるかもしれません が、あくまでも緊急避難という形でこのテーブルで議論してきた記憶があります。そう でなければ、平林委員が先ほどからご指摘のように、とてもこんな新たな看護の検討会 の下の分科会といったようなところで、議論するものを超えたマターがたくさん本日も 出ましたけれども、そういうことになりますので、その辺は極めて限局的な報告書とい う形で作っていきたいというのが、私の意見です。 ○前田座長  1つだけ山崎委員に確認しておきたいのですが、そうすると、いまいちばん大事なポ イントは、2頁のいちばん下の両論並記の部分ですが、1の上のほうを直すということ は、要するにここでの議論の調和を求めるような形に書くということは、下のほうの 「『たんの吸引』の危険性にかんがみ、非医療職による吸引の実施は、認めるべきでは ない」という意見は残さないということですか。 ○山崎委員  そういう意見もありましたね。私も申しましたし。 ○前田座長  それは山崎委員の意見としていいわけですね。 ○山崎委員  はい。 ○前田座長  山崎意見は下のほうですね。たんの吸引は認めるべきでないという意見でよろしいで すね。これも引っこめられるかどうか。上のほうの意見を修正するほうに加えるのか。 ○山崎委員  これはこれまで出ました議論の整理のペーパーですから。 ○前田座長  それはそうですね。過去にこういう議論が出た。 ○山崎委員  はい。 ○前田座長  ただ、今後ここでの意見、最後のまとめるときの意見をどうするかというときには。 ○山崎委員  それはただいま現在のご議論ではありませんでしょう。 ○前田座長  そうですね。ただ、そこを確認しておきたい。そうすると、上のほうの議論も、いま までもっとはっきりと「たんの吸引を認めるべきだ」という議論もあったわけですよ ね。 ○山崎委員  隣に星先生がいらっしゃいますけれども、「緊急避難」という言葉を使われましたよ ね。 ○前田座長  ええ。 ○五阿弥委員  私は緊急避難と思ってません。これは平林委員と同じように、私も当初から言ってた のは、要するに在宅医療の中において、医療と福祉がどういう役割を担っていくのか、 その中で突きつけられている問題だということです。ただ、それをやっていくと、大き な問題になっていくのだけれども、考え方としては、私はそういうことを思っている。 問題は、限定してどういう条件づくりをしていくのかと。そういう議論を私はしている ので、必ずしも緊急避難というふうには私は思っていない。 ○前田座長  ですから、もうちょっと長く書けば、いろいろな意見をたくさん書けるということに なるのでしょうが、基本的にはほかのものも含めてまるめて全体としての方向性を書い てきたわけですが、ここだけは2つの方向性を・ポツで書いてあるわけですね。ただ、 下の「『たんの吸引』の危険性にかんがみ、非医療職による吸引の実施は認めるべきで はない」という文章と、上のと対置するのだとすると、「緊急避難的」というのを入れ る必要がどれだけあるかという問題になってくる。いずれにせよ、山崎委員がご指摘の ように、今日は、これはいままでの議論をまとめたものだけですから、おっしゃるとお りだと思いますので。ただ、最終的にまとめるときには、そこがやはり1つの大きなポ イントになりますので。 ○川村委員  もし五阿弥委員がおっしゃったように、これが緊急避難的なものでないということで あれば、やはり患者さんの補助なのか診療の補助なのかというのは、きちんと議論をし ないと、私としては結論は出せないと思います。 ○五阿弥委員  だから、それを一定の条件づくりということの中で議論していくわけでしょう。 ○川村委員  一定の条件の中に、緊急的と言うことで時間的な制限も含めていいですね。限った時 間の間にきちんと福祉と医療の役割分担についての議論をする。これは非常に大きなこ とだと思いますので、ここでやれるようなものだとは私も思っておりませんので、きち んと別枠でやっていただいて、その整理がついたところで時限をとくということについ ては、それは1つの納得する話の筋ではあると思います。それが一定の条件の1つだと 私は考えます。 ○前田座長  ちょっとそこは言葉の行き違いみたいな感じでして、五阿弥委員も、長い時間での将 来的なことの結論を、ここで、介護と看護の関係の根本問題が重要だということを、当 面のこの会議の結論で出そうとおっしゃっているわけではなくて、やはりそういうもの を見据えながら、当面の具体的な対応をどうするかと。もちろん、そこに、いま川村委 員ご指摘の問題が全く関係ないわけではないわけですが、そこについて、きちっとした 結論が出ないと、当面の対応というか、一定の条件が絞り込めないかというと、必ずし も一義的にそうなるとは限らないと思うのです。 ○川村委員  大変申し訳ないのですが、五阿弥委員のおっしゃったことはそのようには受け止めら れませんでした。ですから、それを座長が復唱してくださるときに、どうも何か違う意 見が入ってくるというふうに思いますので。 ○五阿弥委員  私は基本的には、これは医療と福祉の連携のあり方が問われているというふうに言い ました。しかし、それを言い始めると収拾がつかないので、ここはもっと限定的に絞っ てやりましょうとも言いました。そういうことです。 ○川村委員  その限定の中には、時間という1つの条件もあると私は考えると申し上げました。 ○五阿弥委員  だから、それが例えば、一種緊急避難的にやって何かというようなやり方もあるかも しれないし。それは今後の議論でしょうというふうに申し上げたのです。 ○川村委員  今後の議論だというのなら、それはそれで結構です。 ○平林委員  私も医療と看護と介護の問題をここで議論しようとは少しも思っておりません。それ は皆さん同じだと思いますが、ただ、そういう基本的な考え方を、少なくとも1回は議 論して、この問題の基本的なパースペクティブをどういうところにもっていくのかとい うことを考えた上で、仮に百歩譲って緊急避難的に措置を講ずるとしても、それがある のとないのとでは大違いだろうというふうに私は思います。とにかくパンドラの箱を開 けまいとして座長は開けられないのですが、私は1回開けてみたほうがいいと思いま す。どこでも開けてないのです。これはもう厚生労働省の責任だと私は思いますけれど も、そこをきちんと議論せずに事柄を進めてきておりますから、むしろ厚生労働省とし てどういうふうに考えているのかというところから議論を出発させてもいいと思ってい るぐらいです。  しかし、それはそうとして、1回はその議論をしておかないと、ここで結論を出すと いうことではないのですけれども、私はやっておくべきだろうと思いますし、そういう コンテクストの中で申し上げると、先ほど申し上げた介護職が行うたんの吸引行為が、 本人の代わりなのか、医師ないしは看護師の代わりなのかということは、きちんと議論 をする必要があるだろうと思います。まさにそれは全体をどうするかということのコン テクストの中で議論されてくるわけですから。そのように私は思います。 ○前田座長  議事の進行については、あと何回やって答申を出さなければいけないかということと も絡んでいると思うのですが。もちろん時間だけで動いていくというのは、それは単な る拙速となる、実質を見ない駄目な議論だと思うのですが、ただ、その根本問題を議論 することが、具体的に我々に課されている課題の結論に響いてくるかどうかなのです ね。だから、そこのところは1回、医療と看護の関係を根本的にどう考えるか。それ で、厚労省の考えを出していただく。それはここの委員が個人的にどう考えるかという ことを言ってみてもあまり意味がないので、厚労省がどう考えていらっしゃるかという ことなのでしょうが、それを1ラウンドやる。それには、やはりかなりの時間がかかる のではないでしょうかね。いずれまた、これと並行して、看護の委員会があって、それ はまさに看護と介護の関係を考えていかざるを得ない。もうそれは時間の問題なのだと 思うのです。そんな短期ではないですけれども。ただ、この会の中で、それを1ラウン ド入れるかどうかは、事務局のご判断で決めていただく。私は、時間さえあればやって もいいと思います。 ○平林委員  先週の金曜日の厚生労働大臣の閣議後の記者会見をネットで見たのですが、我々がも たもたしてると、「最後は私の所で決断させていただきたい」というような趣旨の発言 をされておりましたが、それはやはり少し待っていただきたいと思います。 ○前田座長  でも、待つか待たないかを決めるのは大臣ですから。 ○平林委員  ですから、それを坂口厚生労働大臣にしかるべきところからお願いをして、やはり拙 速は避けたいと私は思います。時間との競争だということもわかっています。 ○前田座長  そうではなくて、意味のある議論ならやってもいいと思います。 ○平林委員  私は意味があると思います。 ○前田座長  私はあまりないと思っています。 ○福永委員  私の総論的な意見は、おそらく医療、介護、看護の線引きとか、いろいろ言い出した ら、これはまた1回の議論では終わらないだろうし、それぞれ意見があると思うので す。 ○前田座長  それは1回で議論なんかできないでしょう。 ○福永委員  だから、やはり総論的な議論の必要性を認めるけれども、このテーマの、この委員会 の部会としては、私はいかがなものだろうかと思うのですけれども。 ○前田座長  私も全くそう考えているのです。 ○平林委員  ただ、この分科会、これもいちばん最初のときに申し上げたと思うのですが、これが 独立の検討会ではなくて、「新たな看護のあり方検討会」の分科会であるということの 意味は何なのかということを、私は質問したと思うのですが、それはまさにそういう問 題を含んでいるからだと思うのですね。これが単独の検討会であったら、あるいはそれ でいいのかもしれませんが、それは「新たな看護のあり方検討会」の分科会である以上 は、やはり議論をするべきではないかと。もちろんここで結論を出すなんていうことは 申しませんけれども、しかし、物事の全体的な流れを見据えた上で、仮に百歩譲って緊 急避難的なことをやるにしても、その一応の見通しだけはつけておく必要があるだろう と私は思います。 ○星委員  よくわかるのですが、その方向を見据えるだけで相当な時間を要すると私は思いま す。正直申し上げて、この検討会がそこまで議論をするべき筋合いではないと私は思い ます。むしろ、いまある限定的な条件のもとででも歩み寄りをして、どういう条件なら ば。緊急避難という言葉は、実はこれ、法律をここで読んでわかりましたが、我々が 使っている緊急避難というのと、法律家が扱っている緊急避難というのは、言葉が違う のですね。やっとわかりました。ですから、その緊急避難ではなく、当面の解決策とし て、具体的なその条件が何なのかという議論を、私はするべきだと思います。ですか ら、その平林委員のおっしゃることもよくわかるし、それはやるべきことかもしれませ んが、我々が預けられた課題ではないと、ここでは割り切るべきだと思いますし、むし ろどういう条件ならば認められるのかということを、時限がかかっても結構です、議論 をすべきではないかと思います。 ○平林委員  星委員の議論もわからないわけではないのですが、ただ、それが仮に当面であったと しても、1つの方向性はそこで出てしまうのですね。その方向性が将来を規定するとい うことは、この国の医療行政の中ではしばしばあるわけですから、そのことを私は懸念 するわけです。だから、1回きちんとやるべきだということを申し上げておきます。 ○前田座長  ですから、もう大きな流れとして現実に患者さんがいらして、それに対応しなければ いけない。そういう事実が、私は日本の方向性をつくっていくのだと考えているのです ね。ですから、学者とか偉い官僚の局長とか集まって、本来日本はこういう方向である べきであると、ゾレンはこうであると、いくら言っても、現実に動かさなければいけな い部分に対応していくその力のほうが、私は法律の世界では重いと思っているのです。 それはいろいろな法律の考え方がありますから、あってもいいと思うのですが、ただ、 いまの議論に関して言えば、私はやはり、さっき星委員がおっしゃったように、その根 本的な議論を1回2時間やったから何が出てくるかと。それによって、この問題の解決 の方向が動くかというと、変わらないと私は思います。おそらく予測としては。先ほど 大臣がそういうことを言う。もうそれだったらこっちで決めるぞというのを止めてほし いというけれども、現実の大きな動きの中で、事実上そうなっていくのがわかっていな がら、それに対応しないで、「いや、それは大臣がわるかった。勝手にやったあの大臣 は悪い大臣だ」というだけでも。 ○平林委員  そういう議論はしてませんので、ちょっと誤解を、曲げた解釈をされないでくださ い。 ○前田座長  ただ、いずれにせよ、私はもう早く具体的な策を出すべき時期にきているという判断 をしているということだけ申し上げます。 ○平林委員  そういう議論をするなら、もうこの問題は、とっくにやっていなくてはいけなかった 問題です、私に言わせれば。ですから、急ぐということについては、私も少なからず、 現場の人たちのお話を聞いております。あるいは前田先生よりも現場の方々との接触は 多いと思います。その現場の方々の悲鳴というのは、私の所にたくさん届いてきていま す。それをどうにかしなくてはいけないということは、私も非常に身にしみて感じてお ります。だから、早く結論を出さなくてはいけないということについては、全く同感で す。 ○前田座長  だから、そう思えないのですよね。 ○医事課長  まだ議論が沸騰しているところではあるのですが、定刻の時間も過ぎておりますし、 また、先ほどいろいろご指摘をいただきまして、次回の議論に向けて私どものしなけれ ばいけない作業もだんだん見えてきたというところもありますので、私どものほうで、 今日の議論を踏まえて、新たな資料を準備させていただいて、次回、またこの続きをお 願いできればと思っております。次回の日程につきましては、すでにご紹介させていた だいておりますように、4月22日に予定をさせていただいております。資料の準備の都 合もありますが、こういった予定で、大変急で恐縮ですが、次回お願いできればという ふうに思う次第であります。 ○前田座長  では、これで一応本日の会自体は閉じさせていただいて、次回は22日ということで、 よろしくお願いいたします。                                     −了−                           ┌───────────┐                           │照会先        │                           │厚生労働省医政局医事課│                           │課長補佐 稼農(内2564)│                           │(代表)  03-5253-1111│                           └───────────┘