03/03/26 第5回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会議事録       第5回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会                        日時 平成15年3月26日(水)                           10:00〜                        場所 厚生労働省専用第22会議室 ○前田座長  ただいまから、第5回「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」 を開催します。各委員の皆様方にはご多忙のところお集まりいただき、本当にありがと うございます。本日は前回に引き続き、「在宅ALS患者対策の現状と課題について」 ということでご議論いただきます。さらにその後「痰の吸引の医学的整理」について、 ご議論いただこうと思っております。本日の議事の進め方ですが、資料に関して事務局 からひと通りご説明いただき、ご発表の参考人の先生にもご説明いただいた後で、一括 して質疑をさせていただきたいと思います。まずは事務局からご説明をお願いします。 ○医事課長  本日の資料の説明の前に、第2回の分科会に引き続き、財団法人日本訪問看護振興財 団常務理事の佐藤美穂子さんにお越しいただき、痰の自動吸引装置の臨床的評価研究に ついて、ご説明をいただくこととしております。 ○前田座長  それでは補佐のほうから、資料の説明をお願いします。 ○三浦補佐  第5回の資料として、まず資料の目次が付いております。資料1として、「在宅療養 オリエンテーションマニュアル」と「在宅療養技術指導マニュアル」を付けておりま す。資料2としては、「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24時間在宅 支援システムに関する研究の追加集計結果について」を付けております。併せて「人工 呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24時間在宅支援システムに関する研究− 『痰の自動吸引装置』の臨床的評価研究−」、そのパワーポイントをプリントアウトし たもの、それと1枚の手紙を付けております。資料3としては「ALS療養者の看護支 援モデルに関する検討(中間報告)」を付けております。いちばん最後に資料4とし て、「ホームヘルパーの吸引の可否に関する日本神経学会の意見」を付けております。  まず資料1です。前回、大部の資料にわたりご議論いただいたわけですが、家族に対 しての退院指導をどのように行っているかという資料を、2種類ほど付けていたかと思 います。また引き続いて、それに関する資料として、国立療養所高松病院で実際に使わ れている「在宅療養のオリエンテーションマニュアル」、あるいはその「在宅療養技術 指導マニュアル」を入手いたしましたので、それを今後のご議論の参考にしていただけ ればと思いまして、お出ししております。  「オリエンテーションマニュアル」の中身ですが、次頁が目次となっております。 「はじめに」があり、移行条件、オリエンテーションマニュアル、援助目標、クリティ カルパス、チームの結成、説明等々、細かく記述されております。また項目で言います と、1から15までの項目に分けて説明するようになっております。  まずは4頁、「ALS・HMVへの移行条件」として、本人の希望。そもそもの家 屋、あるいは生活環境の状態、安全性が保てるかどうか。経済的保証。ケアが提供され る機関との近接性。病状が安定期にあるかどうか。自己管理が一定程度できるかどうか といったことをアセスメントし、移行条件を決めていくという1つの判断基準を持って おります。  5頁の「はじめに」は、はじめ書きですので飛ばして、6頁以降が実際の中身になっ ております。「援助目標」としては、主治医による在宅の基本条件である病状安定を図 るとか、主たる介護者が必要な基本的な技術をマスターできるかどうかといったことを 目標に掲げつつ、イシューをしていくということです。また、この下に網掛けでありま すが、常に主体は患者・家族であることに留意してニーズに応じた支援をしていく、と いったことを決めております。  7頁は「訪問看護連絡ノート」の様式で、このようなものを活用しているという話で す。  8頁は「在宅人工呼吸器療養支援プログラム経過状況」ということで、どのようなこ とをどのように進めていくか、あるいはどのような状況にあるかといったことを一覧す るための資料です。これにより全体の流れが見て取れるかと思います。表の上のほうか ら申し上げますと、まずは患者・家族への説明、病状や予後に起こり得る問題の整理、 気管切開や経管栄養の必要性についての説明。以下、家族の介護協力体制を把握し、在 宅までの経過説明、購入物品の確認というように、細かくステージを分けて適任者を定 め、説明が済んでいるかどうか、途中であるか、あるいは達成しているかどうかという ように、事細かに決めております。  また、下のほうにある「技術指導プログラム」においては、バイタルサイン、気管内 吸引、経管栄養、Yガーゼ交換、気管カニューレの仕組みのマスターなどについても、 それぞれ同じように取り扱っていることが見て取れるかと思います。これ以降は個別の 中身についての説明が中心になってまいります。  9頁は、クリティカル・パスとして、3カ月間程度の期間を取り、このようなことを やっていこうというようになっておりますので、これも流れが見て取れるかと思いま す。ひとつご覧いただきたいのが、9頁の横の表です。このマニュアルでは11.〜14. で、介護体験、試験外出、試験外泊、あるいは地域関係者会議というものを、ある一定 のタイミングで組み込んでいくようになっております。  10頁は、「ALS・HMVチームの結成」となっております。構成メンバーは主治 医、婦長、副婦長、ナース、そしてサポートにOT、PT、STにも必要に応じて参加 を依頼します。そういう形でチームを組んで、療養を提供していこうという体制を組ん でおります。婦長の業務としては、外部とのコーディネートということで、保健所等と の連絡を取っていただく、調整をしていただくということも位置づけております。それ ぞれの役目が中に書いてありますが、割愛させていただきます。  12頁以降は、各項目の内容です。まず項目1は患者・家族への説明として、病状・予 後・起こり得る問題について説明をすると。内容としては、主治医より患者・家族に対 して口頭で説明をする、あるいは看護師よりどのようなことを説明していくか。そもそ も在宅療養というのは、あくまでも患者・家族が主体となるものなので、その希望に 沿った支援対策を整えていくことが重要で、家族にその意思確認を十分行おうという留 意点を書いております。また気管切開の必要性については、このように指導を行おうと いうような、危険性も含めた説明を十分行うようにしようといったことが、マニュアル 化されております。  13頁が気管切開についてで、14頁が経管栄養についての説明をしていくときの留意点 を書いたマニュアルとなっております。  15頁は項目2として、介護協力体制としてどのように把握していくか、キーパーソン は誰か、家族内のサポートは誰かといったことを分析していこうということです。  16頁は項目3として、在宅までの経過を説明していきます。まずは患者・家族に対 し、全体のオリエンテーションを行うといったことが書いてあります。  18頁は項目4として、ALS・HMVに必要な物品と経費の説明などもきちんと行い ます。  20頁は項目5として、本人や家族への意思確認を行います。  21頁は項目6として、在宅のかかりつけ医を決定しようと。その中でより身近なドク ターを決めていただきます。往復30分以内の自宅に近い主治医に、患者の病状について 理解をしつつ、すぐに往診して対応してくれる医師を決めていこうというように、体制 づくりをしているところです。  22頁は項目7として、身体障害者手帳をきちんと交付していただこうということで、 そのプロセスが書いてあります。  24頁は項目8として「保健所及び関係者への連絡」ということで、これも1つの地域 の体制づくりと評価できるかと思います。このようなことをマニュアルの中で、留意点 として書いております。  25頁は項目9として、社会資源の活用について人的援助、物的援助、経済的援助の中 で、特に人的援助について説明し、社会資源の活用方法についてもご説明申し上げると いったことが書いてあります。  27頁は項目10として「退院前訪問」ということで、在宅チームのナース2人、あるい はOTといった訪問スタッフが、調査や整備を行っていくようにしております。ここで は住宅改造も含めた屋内・屋外の措置、環境整備といったことを書いております。  29頁は項目11として、介護体験ということで、院内で家族に24時間の体験をしていた だきます。物品リストなどもここに載っております。  33頁から34頁にかけては項目12、13として、試験外出をし、試験的な外泊(2泊3日 )を行うように順次ステージを踏みながら、在宅に移行していこうという手順が決めら れているところです。また、その際に必要な物品リストも、事細かに定められておりま す。  38頁は項目14として、前回の尾道の例なども参照しながら、関係者がチームを組んで やろうとお話させていただきましたが、さらに医療職を中心に、関係者の会議を開こう ということを書いております。まずは入院中における関係者会議として、患者・家族に 関する情報交換、支援体制の調整と役割分担、緊急時の対応、支援プログラムの作成な どについて、関係者が集まって会議をしようということです。主催は住所地の保健所、 あるいは市町村によっては病院が主催することもあると書いております。メンバーは医 療、看護、行政ということで考えているようです。こちらが「在宅オリエンテーション マニュアル」です。  実際の技術指導をどのようにやるかというのは、「在宅療養技術指導マニュアル」に あります。個々の項目について、例えば2頁の所で申し上げますと、「バイタルサイン 」とはどのようなもので、どう評価するものかというのが、比較的平易な表現で書いて あり、説明をするのに適したテキストのようになっております。  気管内吸引については、「技術指導マニュアル」の中の6頁以降に書いてあります。 目的、必要物品を定めた上で、図解入りでこのような方法で行うということが、事細か く書いてあります。中身については省略したいと思いますが、家族指導については、こ のようなことをやっているというイメージをお持ちいただければと思います。  また実際の指導に加え、この中の手順、チェック項目みたいなものも事細かに定めて おりますので、ご覧いただければと思います。これは項目としても非常に多岐にわたっ ておりますので、1つ1つ掘り下げるというより、全般的な支援・サポートという視点 を持ちながら、在宅療養に向けた移行の指導マニュアルの一例と受けとめていただけれ ばと思います。全般的にここに書いてある行為、例えば「在宅療養技術指導マニュアル 」を見ておりますと、気管カニューレの交換、あるいはバッテリーなどの機械的な話な ど、たくさんのことが盛り込まれておりますが、これらをすべて患者・家族の方が主体 的に行えるかどうかを期待されているかどうかまでは、私どもでは確認できておりませ ん。資料1については以上です。  続いて資料2の説明に入らせていただきます。「人工呼吸器装着者等医療依存度の高 い長期療養者への24時間在宅支援システム」をご覧ください。前回、中間集計という形 でお示ししたものについて、次回により細かく分析を加えたものをお示ししたいと申し 上げていたものがまとまりましたので、今回資料としてお付けしております。まずこの 調査は、訪問看護ステーションを経由した調査で、回答のあったステーション数は約900 です。そのうち人工呼吸器の装着利用者がいると回答したステーションは、約3割でし た。その中で人工呼吸器装着者の利用者総数は約500名弱、1事業所当たり1.7人程度で した。  これが全体的な規模でどれぐらいかという推計をしたのが、3つ目の・印です。こち らの分析では、全国で大体2,500名程度と推定されております。第3回でしたか、推計 をお出ししたときに2,500名程度ではないかという推測をした数字等、ほかのものもお 出ししましたが、それとほぼ符合するものとなっております。  2頁の都道府県別の集計では、人工呼吸器装着利用者の分布は、全国で大体3割程度 あって、その中で関東、東北、北陸などでは割合が比較的高く、近畿、中国、四国は相 対的に低いといった結果が出ております。  前回ご説明した部分と重なる部分もありますので、少し駆け足でお願いします。4頁 をご覧ください。「24時間対応を可能にするための必要な条件」として、前回もある程 度のものを中間的な形でお示ししていましたが、やはり医療環境、ステーションについ ての部分というのが、より大きな問題として出てきております。特に地域的な偏りとし て、全体的な形では、そんなに違いはないという分析も可能だと思いますが、ステー ションの位置づけなどでは四国地方と中国地方で、多少見方が違っているという分析も できるのではないかと思います。ただ概ね形は変わっていないという評価も、別途可能 ではないかと思います。  5頁は、「侵襲的な人工呼吸器を装着している利用者に関する集計」です。この場 合、侵襲・非侵襲別に集計をしたところ、無回答が約4割と多く、実施しているケアに 関する設問自体がどのように評価できるかが難しいというコメントをいただいておりま す。このために「気管切開部・カニューレのケア」を行っている場合、侵襲的な人工呼 吸器を装着しているというように解釈した上で、分析を加えるようになっております。  基本的な情報としては、「気管切開部・カニューレのケア」の有無に関する性・年齢 ・発症年月日などの差は見られませんでした。また要介護度認定の有無にも差は見られ なかったけれど、要介護度認定については「気管切開部・カニューレのケア」を行って いる場合のほうが、そうでない場合に比べて重かったという分析がなされております。  6頁は、実際に訪問看護ステーションで提供しているサービスです。「気管切開部・ カニューレのケア」を行っている場合、回答したステーションの訪問回数は、平均的に 月15回、つまり2日に一遍程度といった評価かと思います。そのうちの1割、10.3%の 利用者が夜間訪問を行っております。夜間訪問を行っている場合の回数は0.87回/月で すから、月に1回弱といった結果が出ております。実際に提供しているサービスの内容 は、下に棒グラフの形で表現されております。排痰ケアが約8割、吸引が約9割、本人 ・家族への指導が9割弱となっております。緊急時の対応は4分の3、75%となってお ります。  7頁は、サービスのニーズですが、利用者本人・家族へのサービスのニーズについて は、「日中の長時間型訪問看護サービス」が5割弱の47.7%、「レスパイトのための入 院」が32.1%、約3分の1弱という形で挙げられております。下の・印は各分析です。 日中の長時間型訪問看護サービスを利用する場合のサービス量は、1回当たりの訪問時 間が4時間程度で、7割の希望が満たされます。あるいは訪問回数が週3〜4回で、7 割程度の希望が満たされるといったことが、調査結果として出ております。これらは順 次、図表の形で出ております。  8頁の右肩上がりのようになっている折れ線グラフが、1回当たりの時間の充足度、 何パーセントの方がご満足いただけるかを表記したものです。1回当たり2時間未満で すと2.5%、2〜3時間ですと約2割といった見方ができるかと思います。同様に1週 当たりの回数でいきますと、週に1回で3割弱、30%となっておりますが、2回、3 回、4回、5回、6回、7回という形でいきますと、もちろんきちんとニーズに応えて いくといった評価ができます。  9頁は日中の頻回型訪問看護サービスの希望ですが、1日当たりどれぐらいかという ことに関しては、もちろん1回というのは2割弱ぐらいで低いのですが、2回が半分強 といった評価になっております。3回、4回と増えるに従って、もちろんその希望は充 足していきます。あるいは日中の頻回型で1週当たりどれぐらいが利用可能になると、 希望に応えられるかという分析が、図表13で加えられております。夜間については14、 あるいは夜間の長時間については15といった形で、順次分析を加えております。これは 折れ線グラフをご覧いただくということで、説明は省かせていただければと思います。  私からのご説明は以上ですが、次の資料、「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期 療養者への24時間在宅支援システムに関する研究の臨床的評価研究」については、佐藤 先生からお話いただきたいと考えております。 ○佐藤参考人  本日は、「痰の自動吸引装置」の臨床的研究についてご報告させていただきます。な お、パワーポイントとお手元の「研究中間報告」等は、すべて研究者である大分県の大 分協和病院の山本真医師と、徳永装器研究所の徳永修一代表が作成されたものです。                (パワーポイント開始)  ただいまご紹介した山本先生がこの方です。この方が徳永代表です。基本構想として 1999年から自動吸引装置を作り始め、2000年に日本ALS基金の補助で実用化研究を始 められた当時の記録です。これが研究所の中です。ここにペットボトルがありますが、 このペットボトルを気管に見立てて、実際の動作実験をされているところです。  これは2000年12月に完成された自動吸引コントローラーです。ここの部分が電動吸引 器のオンとオフ、つまり制御装置(シーケンサー)です。この奥にあるのが圧力センサ ーです。この圧力センサーはチューブで繋がっており、圧力センサーポートから圧力検 知管という所につながっております。ここが電源です。この赤いボタンにより、手動で 吸引を開始することができます。この2つの箱は、試験吸引の間隔や試験吸引の時間を セットするためのタイマーです。2000年12月当時は、このような仕組みになっておりま した。  次に、気管カニューレの所ですが、これが吸引チューブです。吸引チューブはマウン トを通って、ここが気管切開の開口部に当たりますが、ここから先、何センチか突き出 ている状態で、吸引チューブをセットしています。  これが自動吸引装置の全体模式図です。これは2001年当時のものですが、ここに人工 呼吸器があり、気管カニューレで繋がっております。ここには電動式吸引器がありま す。電動式吸引器はこのように、気管カニューレの中に入っています。ここの部分の分 岐点から圧力検知管をこのコントローラーに繋いでいるという仕組みになっておりま す。もちろんこの中にはシーケンサーやタイマー、圧力センサーが入っており、電源で 繋がれているという状況です。試験吸引などは大体10〜20分ごとに、5秒間隔ぐらいで 吸引するということで、この中のタイマーでセットするような形を取っていました。  これは2001年2月以降、患者様のご協力をいただいて、自動吸引装置の試作機の実験 がなされたときの記録です。ここでは何をしたのか。試験の吸引間隔、吸引時間、さら に吸引動作終了のための圧の設定などについて、この実験の結果、知見が得られたとい うことです。  これは初めて12時間、終夜実験を行ったときの記録です。危険回避のために、さまざ まなモニターも付けておられます。また左下にあるのが12時間、つまり翌日までに溜 まった痰が蓄積されているものです。  では、どういう仕組みになっているのか、平成12年に日本ALS基金の補助金を受け て開発した自動吸引装置のロジックです。最初の考え方ですが、基本的な考え方は、未 然に痰の気管内の貯留を防ぐというものでした。そして先ほどご紹介しましたように、 気管カニューレより突き出した吸引カテーテルが気管内に上がってきた分泌物、痰を一 定時間ごとに調査し、分泌物があれば吸引して排除するというものでした。しかし実際 にこれを動作させたときに、突然多量の分泌物、痰が上がってきた場合には対応できな いことも判明しました。そのために気道内圧が設定圧を超えた場合も、テスト吸引を開 始する機能が追加されました。しかし、この当時は気道内圧を正確に把握する圧センサ ーが見当たらず、この部分については理論のみで、当時の研究では臨床実験に到達する ことはできなかったそうです。  では、フローチャートをご紹介します。最初に「任意の設定の時間」というのがあり ますが、ここで設定します。例えば20分に1回、5秒間の試験的に吸引をするという設 定をすると、次の段階で「試験吸引開始」となります。もちろん試験吸引開始のときに は、介護者が命令をして行うこともあります。また気道内圧が設定圧を超えると、吸引 が開始されるという状況になっていました。次の段階ですが、8秒後、吸引圧が− 20mmhg以下となるということで、以下とならない場合はNoということで試験的な吸引 は終わります。それが−20mmhg以下となった場合にはYesとなり、「本吸引」に入り ます。本吸引をやっていて、吸引圧が−18mmhg以上に復帰すると、もう吸引は終了とい うことで、機械が自動的に止めます。ただし、これがまだそのまま続く場合には、本吸 引は続くという仕組みで、吸引の制御フローチャートはなっておりました。  これは平成14年、つまり財団が委託研究を行って実際に改良した自動吸引コントロー ラーです。どこを改良したかは後でご説明しますが、より詳しく気道内圧の把握ができ るようになったということが1つです。これについては資料にも書いてありますので、 少し読み上げます。「前面のパネルにあるデジタル数値は、気道内圧をキロパスカル単 位で示すことができる圧センサーです。今回は、人工呼吸器の気道内圧測定用のライン から直接分岐したチューブをこの圧センサーに接続することにより、正確な気道内圧の 把握を行った」となっております。最初にお話したのは、吸引管の分岐点から内圧を 取っていますが、今度は人工呼吸器の気道内圧測定のラインから分岐したチューブで、 圧センサーに接続し、気道内圧がより正確に把握できるようになったということです。  「自動吸引動作は、通常の気道内圧を本装置にて読み取り、その圧に0.3kPaを加えた 数値を気道内圧が超したときに吸引開始が行われるロジックをシーケンサーに組み込む ことにより行われた」。シーケンサーというのは、吸引のオフとオンを制御する所で す。「また、以前からの時間間隔の試験吸引動作も並行して作動させた」ということ で、先ほどの10分なり20分に1回、5秒吸引をするという試験吸引と並行させて、圧の 状況によって吸引が作動できるようになったというのが、平成14年度に改良したコント ローラーです。  これが実際に気管カニューレに入っている所です。ここから吸引のチューブを入れ、 ここに入っています。  続いて実際に自動吸引器が作動しているところについて、具体的にどのようにやった かをご紹介します。これは吸引チューブが、ずっと気管カニューレに入っているところ です。これは実際に装置を着けているところです。気道内圧を常時監視しているデジタ ルモニターが、設定圧超過を感知し、吸引器を作動させているわけですが、このときに 一時的に高圧警報が鳴っているが、痰を切らないうちに一時的に気道内圧が、呼吸器の アラーム設定より上昇したことを示している。しかし、本吸引動作によって、痰は気道 内より除去され、気道内圧も再び低下していることを、このビデオは示しています。た だ、このビデオの記録はカットされていますので、この部分についてはありません。  実際の終夜実験は、被験者および家族の十分な了解を得た上で、安全のため入院をし てもらい、心拍や酸素飽和度の監視を連続的に行いながら実施しました。呼吸器の高圧 警報が鳴りやまないときや、本人が用手的吸引操作を要請する場合は、直ちに実験中 止、あるいは中断とされました。実験は通常の気道内圧を自動吸引コントローラーの圧 モニターにて観測し、通常の最高気道内圧に0.3kPaを加えた値を、自動吸引開始の設定 圧とされています。これが実際にALSの患者さんが自動吸引装置実験をされた状況 で、2003年3月のものです。ここに気管カニューレに設置した、吸引カテーテルが入っ ています。ここが自動吸引コントローラーボックスです。ここに人工呼吸器がありま す。ここに自動吸引用の吸引器があります。ここは監視用の心拍や酸素飽和度を測定す るモニターが、ここに付いています。このようにして実際の実験が行われました。                  (ビデオ開始) ☆ビデオ  これは実際に動いている映像です。ここにそのときの圧の内容が表示されています。 胸が動いている状態がおわかりかと思います。ご本人は夜間、眠っていらっしゃいま す。ここでモニターがずっと監視をしています。少しご覧ください。 ☆ビデオ  いま、朝7時55分です。プレッシャーは2.2台です。 ☆ビデオ  休まれましたか、眠れましたか。苦しくて目がさめるようなことはありませんでした か、ちゃんと眠れましたか。苦しくなかったですか。 ☆ビデオ  ハイプレッシャーに1回なっちゃったんですけれども、あのときに痰が溜まっている のはわかりましたか。わからなかったですか。そのあと痰は全部、一応引けた感じはあ りましたか。ありがとうございます。  一応、こちらの値は変動がありませんでしたし、夜中に気道内圧は上がりましたけれ ども、痰は全部、そのとき引けたような感じで、朝まで問題なく稼働できたというよう に思います。どうもありがとうございました。 ☆ビデオ  お世話になりました。                  (ビデオ終了) ○佐藤参考人  以上です。最後のところは、患者の方に朝7時過ぎ、ドクターがインタビューをし て、患者さんが満足気な表情をされているところでした。  皆様方のお手元に、「人工呼吸器装着等医療依存度の高い長期療養者への24時間在宅 支援システムに関する研究」の中間報告があります。それを簡単に説明させていただき ます。先ほどから紹介していますように主任研究者は山本先生、共同研究者が徳永さん です。  中間報告の「概要」ですが、気管内の吸引カテーテルの吸引圧、あるいは気道内圧を 検知し、吸引カテーテルを通じて痰の自動吸引を行う自動吸引装置について、在宅療養 者への適用を実施して臨床的評価研究を行い、自動吸引装置の実用化の見通しを立てる 研究です。  「研究方法」ですが、自動吸引装置の性能を改善する。2番目に、吸引カテーテルの 留置位置の安定化を検討する。最初の段階でお見せしましたように、この図にもありま すけれども、気管カニューレの先に吸引カテーテルがのぞいています。これを今回、気 管カニューレの先端面に合わせるということで実際に実施されています。3番目に、A LS患者への臨床テストですが、3名の方のうち、1名は在宅で3時間、あとの2名の 方は入院をしていただいて終夜24時間、痰の自動吸引装置の使用が行われています。実 施方法は先ほどお見せしたような状況で行われています。  今回、吸引効果の確認をするということで、その方法が下に書いてあります。1つは 「テスト吸引での動作チェック」です。吸引間隔が10分から20分で、その間に5秒間の 痰吸引を自動的に行い、痰がある場合は吸引圧が上昇します。それを吸引圧センサーが 検知して、痰吸引動作を継続することになります。痰が減少すると吸引圧が低下し、そ れを吸引圧センサーが検知し、痰吸引動作を停止するというものです。  2番目は「気道内圧センサーによる動作チェック」です。痰が発生すると、人工呼吸 器の気道内圧が上昇します。それを自動吸引器の気道内圧センサーが検知して、痰吸引 器を動作させ、痰吸引を行います。そのとき、痰がある場合は吸引圧センサーが上昇す るので、継続して痰吸引器を動作させて痰吸引を行います。吸引圧センサーが低下する と、痰が減少したと検知して痰吸引器が停止します。  気道内圧センサーは人工呼吸器のハイプレッシャーゲージより低い値とし、正常に検 知し、動作することを確認しています。今回は2.5kPa〜2.8kPaの設定とされたようで す。  3番目は「吸引圧センサーによる動作チェック」です。先ほどの(1)、(2)の動 作に関して、痰吸引動作時に痰があると吸引圧が上昇し、吸引圧センサーが検知して痰 吸引器を継続動作させ、痰が減少すると吸引圧が低下し、痰吸引器を停止します。吸引 圧センサーが正常に検知し、痰吸引動作を行うことを確認します。今回は吸引圧センサ ーを−25kPa〜−28kPaに設定して動作確認をしました。  研究結果についてはこのような状態になります。いちばん上、図−2はKS様の様子 です。生体モニター、気管カニューレがあって、そして自動吸引装置があり人工呼吸 器、痰の吸引器がこのようにセットされ、病院で行われています。  図−3の方も、やはり病院で24時間行われています。同じように呼吸モニター、自動 吸引装置、人工呼吸器、吸引カテーテル等がこのようにセットされています。図−5は 採取された痰です。左側の写真は気管カニューレ等です。  3頁の3−3はテスト吸引の動作です。いろいろな評価をされていますが、(1) 「テスト吸引の動作の評価」です。「10分〜20分おきに5秒間のテスト吸引(試験吸引 ですが)を実施したが、テスト吸引から本吸引に移行することはなかった。テスト吸引 の時間設定等をさらに研究する必要がある」としています。また、「テスト吸引で微量 ずつ痰を吸引するため、痰の溜まりを減少する効果があると言える」という評価をして います。  (2)「気道内圧センサー動作」です。「気道内圧が2.5kPaのときは頻繁に気道内圧 センサーが作動し、連続的に吸引したため、患者には負担が発生していると感じた。体 位交換等での気管カニューレのズレがおこると、気道内圧が変化するために、気道内圧 センサーの調整が必要である。気道内圧センサーの検知精度は良好で、未然に痰を吸引 する効果があり、痰が発生したときに聞こえる気道部でのゴロゴロ音と相関して気道内 圧が上昇し、気道内圧センサーが検知して吸引する動作を確実に行った」。  (3)「吸引圧センサー動作」。テスト吸引動作で吸引圧センサーが動作することは なかったが、気道内圧センサーが検知して吸引動作をした場合は痰が溜まっている場合 であり、その時は吸引圧センサーが動作して連続吸引した。吸引圧センサーにより痰を 十分に吸引する効果がある」。  (4)「吸引量」。「終夜自動吸引で、16cc〜22ccの吸引量があった。痰の粘性や発 生量に個人差があるので吸引量での判定は困難だが、試験終了後、手動で痰の吸引をし た結果、痰の残留は少なかったので、自動吸引の効果はあると考える」ということで す。  3−5「試験者の感想」です。(1)「被験者の感想が良く、機器の効果と必要性を 再確認した」。(2)「気道内圧センサーの動作が効果的で、うまく痰を吸引すること ができた」。(3)「連続吸引時間を一定時間以下にして患者の負担や危険を除く必要 がある」ということです。  最後に、皆様方のお手元に患者様が実際に瞼が動くことで書いてくださった感想文を お付けしています。これを読んで終わりにしたいと思います。「自動吸引試験データ」 は皆様方があとで読んでいただければと思います。  「山本先生、徳永さんへ。自動吸引器について」という頁をご覧ください。  「実験日にはお忙しいところ、患者さんのために遅くまで実験していただきありがと うございました。実験の日には前の日の夜、よく寝ていたので、ほとんど朝まで眠られ ずに起きていたので、夜中のことははっきりと覚えています。実験が始まってからは、 調整をする間は、こちらからはよく見えなかったが吸引する音だと思います。吸引の音 がすると息苦しさを感じ、調整が長く感じ、その後どうなるのか心配でした。調整が終 わると、あとは楽になりました。朝までに大きな痰が4回出ましたが、時間は20秒ぐら いかかりましたが、4回ともきれいに取れました。その間は、小さな音の痰でも見逃さ ないで、朝まで15回ぐらいは取ったと思います。朝まではほとんど、痰が出ても苦しさ を感じなかったことと、誰の手も借りずに、自動吸引器が全部取ってくれたことで感激 して、目頭に熱いものを感じました。  吸引器を付けた患者さんにとっては、いちばん苦しいのが痰の出ないことだと思いま す。吸引器が開発され、長く生きられ、在宅療養ができるようになった今では、一番の 問題は痰の出ないことで、ほとんどの患者さんが悩んでいるのではないでしょうか。私 は夜になると2回から3回、痰が粘っこいときには1回に5回ぐらい取らないと取れま せん。それでも取れないときは、右に大きく体交して、背中を叩いてもらいます。それ でも出ないことがあります。痰が出ないで、朝まで起きないで休むことは月に1回か2 回ぐらいしかありません。あとはほとんど家内に取ってもらいます。これから医療器具 が開発され、高齢化が進み、いま以上に高齢者の在宅が多くなるのではないでしょう か。誰もがいちばん先に考える深刻な問題は吸引器だと思います。患者さん誰もが夢に 描き続けた夢が夢でなくなり、山本先生、徳永さんの研究によって、完成に近いところ まで来ています。吸引器が患者さんに使用されるときが来れば、ほとんどの患者さんた ちが自動吸引器を使いながら、介護者と一緒に、ぐっすり朝まで眠れる日はすぐ目の前 に来ています。どうか、一日も早い完成を祈っています」。これが患者様からの手紙で す。  以上、報告を終わらせていただきます。 ○前田座長  どうもありがとうございました。事務局にお伺いします、質問は全部まとめてほしい ということですね。それでは、山崎委員から資料3についてご説明をお願いします。 ○山崎委員  本来なら、この研究をしていただいた青森県立保健大学の研究チームがここでプレゼ ンテーションしていただくところですが、中間報告を頂戴していますので、私が代わっ て読ませていただきたいと思います。いまの自動吸引器の実験研究もそうでしたが、青 森の研究チームの研究についても、ご報告を伺うと、参加された患者の方とご家族は大 変感動されたということを伺っています。次回でも是非、当事者からヒアリングをさせ ていただければと思います。  青森県立保健大学の研究者のグループと青森県看護協会、それと、私どもは全県に ナースセンターという、潜在看護師等のリクルートセンターを持っています。そこから 潜在看護師の方、それから訪問看護ステーション、そこを利用していらっしゃるALS の患者様がこの研究に加わられたところです。  1頁の「研究目的」では本検討会が開かれたということで、人工呼吸器を利用して、 在宅療養中の患者・ご家族の療養上のニーズを確認をすること、十分に訓練された呼吸 ケアを行うと吸引自体が減少するといった仮説で、看護支援として有効なモデルが何か ないか取り組まれた。看護支援モデルの開発と実施があります。  「ALS患者の呼吸管理」では、初回のこの検討会でも川村委員から、スクイージン グについてプレゼンテーションを頂戴しています。呼吸管理に関して、看護のエキスパ ートを養成するためのプログラムの開発や実施、看護師が担う役割と看護師以外の専門 職が担う役割といったことを検討するのが狙いでした。  「研究のデザイン」が次の頁にあります。これはご覧いただければよろしいと思いま すが、事前に実態調査をなさり、支援モデルというものを少し作成していった。潜在看 護師、実務についていない看護師と実務についている訪問看護師を集め、「療養者支援 看護職育成」という形で研修をしたわけですが、そのプログラムの開発、研修会の実施 を行いました。具体的に、現在闘病中の在宅療養の方のところに出向き、ここでは「介 入」としていますが、ケアを提供して評価をしたという一連の研究です。  7頁に、この研究の対象となられたA氏、B氏、C氏の一覧があります。この77歳の 女性は、24時間4年間、人工呼吸器をお使いになっていらっしゃいます。「利用サービ ス」は訪問看護、介護、入浴、福祉用具、往診(在宅診療)。それから、青森県におけ る在宅で、全身性の障害者の介護人派遣事業等のサービスをそれぞれこのお三方につい ては、お使いになっていらっしゃいます。  3頁に戻って「援助内容」では、実際に行われていた援助内容は訪問看護師によって スクイージングが行われていたわけですが、技術的な問題と時間の制約がある。週3回 程度、日中のみの訪問看護だったということから、夜間のご家族による吸引が避けられ ない状況であった。  これが新しい発見ですが、胸と肺部、背中と胸の温罨法は従来実施されておりません でした。体位変換についてもほとんどが仰臥位で、側臥位の変換も軽度ありましたが、 お一方は体位変換自体を拒否していらした方がありました。口腔・気道のケアについて は、口腔ケアはヘルパーが定期的にされていましたが、気管内吸引は看護師と家族が 行っていました。呼吸ケアの上で有効的な吸引というのは、どうやらされていなかった ようだというのが実態でした。  事前にご家族に質問しています。ご家族が大変苦労に思っていらっしゃることをここ に6点挙げています。「介護のために自分の時間が取れない」「現在の生活はストレス だと思う」「将来どうなるか不安」「介護にこれ以上の時間が割けない」「介護が負担 になっている」「療養者があなただけが頼りだと思っているように見える」。ご家族は こういうことが「よくある」、「いつも思う」というようにお答えになっていらっしゃ いました。  4頁は「呼吸管理看護支援モデル」です。まず、どういう方法で行ったかを図式化し ています。最初にトータルなアセスメント、これがバイタルサインや指の先端での酸素 分圧の測定・観察、呼吸器音を聴く。呼吸器の観察、皮膚・爪・気管切開部、口腔など の観察、そして人工呼吸器のチェックやご本人、ご家族からの情報収集、呼吸の状態、 全身状態の把握、こういうことをトータル・アセスメントとしてまず最初に行う。  2番目にスクイージングです。これは川村委員が実技でお示しくださった、手の平で 胸郭を包むように、圧迫しながら肺胞にある痰を上のほうに移動させるということを 「7部位ずつ、3分ごと」と、具体的に書いていますが行いました。  3番目に、胸と背中の温罨法を行いました。熱いタオルで温熱を与え、入浴したかの ような安楽な状態をもたらせる。4番目に身体を動かして、痰のドレナージを行う。肺 に角度をつけることで、背中に貯留している嚥下性の肺炎、沈下性の肺炎になる痰を上 のほうに上げてくる。  ここまでやったところで口腔・気道の吸引をし、全面的にクリーニングというか、 ガッと吸引をする。最後にケア効果の確認を行う。どういうことを確認するかという と、まず肺、気管の呼吸音を聴く。さらに、指の先端部での酸素分圧、SpO2におい て、95%以上を目安に置いて測定する。顔色や顔の表情、気持が良いなどの情報が得ら れれば、ケアの効果が見られたというようにここでは確認をしています。  こういった呼吸管理の支援モデルを開発し、このことが効果的だろうということで、 次に行ったのが研修会でした。先ほど申しましたように、実務についていない、いわゆ る潜在看護師と、実務についている訪問看護師による呼吸管理の研修会を行いました。 5頁にありますが、研修会では潜在看護師の発掘を狙いにして、臨床経験や訪問の有無 にかかわらず、このような大変高度な技術を要するALS患者の呼吸管理の実践ができ るようにする。ただ、看護の基礎能力を持っている者ですから、一定の部分はもう習得 しておりますが、なお基礎的な内容から実践内容まで一応網羅をしたということで、研 修会後のアンケート等も取っています。  6頁に「まとめ」があります。経験の有無に関係なく、看護の基盤能力を持つ看護職 ですから、非常に短期間で研修による実践力を養うことができたというのが1つ特徴か と思います。  研修会の講師を誰がするかということですが、これは専門家になります。特にここで は専門医、救急看護の認定看護師や看護技術の教員、キャリアのある訪問看護師、ケア マネージャー、ALS協会の役員の方などに講習にお出ましいただいたようです。最初 は大変不安そうでした未熟練の潜在看護師の方たちも、3段階の研修を踏むことで大変 実践力が培われ、具体的に訪問したときも不安な様子はなく、活き活きとした表情に変 化をしていったということがありました。  先ほどのお三方それぞれについて、看護支援モデル提供前と提供後の変化の詳細が、 最後の3枚で整理されています。  7頁の下のほうでお三方の変化について要約しています。まずAさんの場合、1回目 の訪問のとき、療養者が痰の貯留により、低酸素のような危険な状態であった。この介 入を行うことにより痰の喀出が促され、低酸素状態が回避できた。  その後持続的に、呼吸が良好な状態が続いたことで、表情が活き活きとしてよく笑う ようになった。夜間の吸引回数も減少して、ご本人、ご家族ともに良い睡眠が確保され た。介護者であるご主人は、このごろ調子が良さそうで、このような顔を見ると疲労感 がなくなる。これほど目に見える成果があるとは思わなかった。日々変化する患者を見 ている家族は不安でいっぱいですが、このようなケアが受けられるなら訪問看護を増や してもらおうというように語られたということです。患者ご自身を良好な状態に保ち、 ご家族の疲労、さらに気持の負担も軽減されたようだと研究者は評価しています。  8頁に、Bさんの記述があります。この方は体位変換を行うことも拒否をしている患 者だったようです。沈下性の肺炎の危険性が高いケースが考えられましたが、このケア を行うことで粘張度の強い痰が吸引されており、肺野のクリアランスが図られていると いうことです。夜間の痰の喀出がなくなり、介護者も夜間は1度も吸引に起こされるこ とがなく、お互いに休息が十分に取れていたようだということでした。  ケアに関しても「気持が良い」と文字盤で語られています。QOL尺度で測定したわ けですが、それについても「いまの生活に張りを感じる」とお答えになられ、安心して 身体を任せられることで、気持の幅が広がっている様子だったということでした。主た る介護者でいらっしゃる奥様は、療養者のケアが生きがいになっている様子でしたが、 このモデルを見学なさったり、また指導の状況をご覧になって療養介護上のヒントを得 られた。それにより、短期間の介入にもかかわらず、介護負担の軽減が見られたという ことです。  Cさんの場合ですが、以前よりスクイージングに期待の多い患者さんでらしたため に、ケアを受けることに対して非常に満足度が高く、安楽な表情が見られたということ です。特に就寝前(次の頁に示されている)、1回90分ぐらいかかるケアなのですが、 就寝前のケアで朝までに吸引せずにご本人、ご家族ともに眠ることができた。ご家族も 専門的な呼吸管理ケアに大変期待を寄せておられ、ご家族だけではここまでは出来ない とのことです。ご本人は大変身体が楽なようで、娘さんとゆっくり話す時間もできたと いうように満足を示されたようです。  その介入の成果を8頁で4点ほどまとめています。1点目は、療養者の呼吸状態の改 善、安楽な呼吸、肺炎や低酸素の予防につながるということがあります。2点目に、療 養者にとって安楽で、安心なケアであり、気持の安定につながる。特に、スクイージン グが気持良い。温湿布で身体が暖まり、呼吸が楽になるだけではなく、よく眠れるよう になった。それから、息が苦しくなるのではないかという不安も軽減された。ほっとで きて、任せておける安心感が出てきたということです。  3点目に、ご家族の安心感の増加、および介護負担の軽減ということでは吸引回数の 減少、特段、夜間に吸引のために起きることが少なくなり、まとまって眠れて疲労が取 れる。介護負担感が減少した。ケアに要していた時間、ご家族が吸引等を行うわけです が、そのことをトレーニングされた訪問看護師が代行することにより、休息時間が長く なった。療養者の安楽で、調子良さそうな様子がご家族の安心感につながっていった。  4点目には、モデル事業の成果を高く評価できるのではないかということで、訪問看 護などケアシステムへの期待が増加していった。この研究に参加されたご家族、本人と も、ケアの有効性を確信なされ、呼吸管理ケアの継続を望まれたということです。専門 家のケアを初めてお受けになられたわけなので、成果が目に見えてとても驚いた。ご家 族、つまり素人ではこの代行するのは無理である。訪問看護師のケアに対する期待感も 増し、当初、訪問看護師は要らないなど、限定的にお使いだった方たちですが、ケアサ ービスの受け入れが円滑になっていった。日々変化する患者ですが、見守るご家族の視 点に立って成果が見えるような、臨機応変なケアシステムの構築というものも期待され ています。  9頁に「提言」ということで、ただいま概況をお示した「呼吸管理訪問看護モデル」 というものを作られています。「支援前の状態」はとばします。「専門的支援」、つま り月曜日から日曜日まで通常の訪問看護の実践に加え、このモデルで開発された「呼吸 管理訪問看護モデル」の追加、1回90分あたりのものです。これを個々の患者のニーズ に合わせ朝・夕など、この研究会では夜1回だけでしたが、ニーズに応じて先ほど示し たようなトータル・アセスメントからスクイージング、温罨法、ドレナージを行うこと の効果が大変あるのではないかということです。  10頁に「中間報告」で2つばかりご意見が整理されています。今回の支援問題を通 し、呼吸管理に関する専門的な研修を受けた看護師がケアを提供することで、患者およ び介護者のQOL向上につながった。支援モデルの実施前と終了後については、先ほど お示したように、いくつかの効果的なご意見が現れたことと、これが大変期待できる、 効果的なものであるということで、今後は訪問看護師の研修内容の充実ということと、 専門的な呼吸管理ができるような活躍が期待されるのではないか。  2つ目に、ALSの方にとって呼吸管理というのは生命に直接かかわる問題ですの で、訪問看護師によるトータルなフィジカル・アセスメントの重要性は言うまでもあり ません。病気とともに生きながら、生活の質を高めるということが主要な方針である。 その意味で、生命の安全と安楽を確保する医療モデルが優先されるのではないか。  訪問看護師は呼吸管理にかかわっている療養者の医学的な管理を中心に、生活の上か らの視点、双方からのアセスメントが可能であるということから、療養者の状態に応じ て専門職へタイムリーな情報提供をしたり、サービスの調整ができる立場にもあるわけ です。したがってキーパーソンとなり、医師、理学療法士、保健師、ホームヘルパー、 入浴、介護人、医療機器提供会社等、関係者とマネージメントしていくことが望ましい のではないかというように、ここでは締め括られています。11頁には、そのための人材 開発プログラムが提示されています。  この研究にかかわられた方たちの声を聞いていると、やはりQOLといった点で、 「参加してよかった」という声が聞かれたようです。時間があるようでしたら、次回で も直接、また研究者からヒアリングをさせていただければと思います。長くなりました が以上です。 ○前田座長  どうもありがとうございました。最後にご説明いただく資料ですが、いちばん終わり に付いている資料4について、福永先生からご説明いただきたいと思います。 ○福永委員  日本神経学会というのは、ご存じのようにほとんど神経内科医、一部脳神経外科医が 参加して構成している学会です。ALSの患者の大半は神経内科医が診断、あるいはい ろいろかかわりが深いわけですから、当然学会としてはこのQOL問題についても、大 きな関心を抱いているところだと思います。  今回、学会として意見書が出されています。いちばん最後に1枚、頁としてはさんで あります。内容としては、前段はALS患者の現在の療養の実態、現状等、それと学会 としてのリスクの判断が書かれています。  最後に、「本学会として次の建議をしたいと考えます」というところから少し読ませ ていただきます。「(1)在宅療養者の看護に際し、適切な指導を受けたホームヘルパー は、担当する療養者に限り吸引を行うことができる。(2)吸引を行うホームヘルパーは、 変化・異常・不審点などにつき適宜看護師、主治医に報告、その指導を受ける」。ホー ムヘルパーの吸引行為が一定の条件のもとで可能となるよう要望します、ということを 日本神経学会の意見として出されていたので、報告したいと思います。私ももちろん、 神経学会の一会員であります。以上です。 ○前田座長  どうもありがとうございました。非常に盛りだくさんのご説明をいただき、ご質問も いろいろあるかと思います。今日は基本的に、ALS患者の方の在宅医療をいかに充実 するかという方向でのご報告でした。その前提として、退院時の指導の問題がありまし た。あとの議論にもつながる部分もありましたけれども、基本的にはALS患者対策と してどう進めるべきか、いま現状がどうあるかというご報告をいただきましたので、そ れについての質疑を行いたいと思います。最後に、痰の吸引についての医学的整理をど う考えるかについても議論をさせていただきたいと思います。  まず、ご質問をいただきたいと思います。非常にいろいろなものがありましたので、 順にというのが筋なのかもしれませんが、時間の関係もあります。アトランダムにとい うか、どの方の報告、どの資料についてのご質問ということでもよろしいかと思いま す。どなたからでも結構ですのでよろしくお願いいたします。 ○伊藤委員  最初、国療高松病院の件について2点ご質問申し上げます。1点目は2種類あるマ ニュアルについて、いつごろから運用されているのかということです。内容を見ると、 例えばいわゆる医療手具の問題などが書いていないなど、いろいろな材料を収集され、 工夫されている跡が見られるのですが、その運用がどのようになされたのかがちょっと 疑問に思いました。  もう1つ、同じくマニュアルを使用する場合に当然、いわゆるヴァリアンスが生ずる わけです。そのような評価をどのような形でなされているのかということについて、も し情報があれば聞かせていただきたいと思います。 ○三浦補佐  お答えします。 ○川村委員  高松病院のマニュアルについて、関連した質問をしたいと思います。 ○前田座長  併せて三浦補佐にお答えいただきます。 ○川村委員  1つには、この方々には衛生材料はどのぐらい、どのように供給されているのかとい うことです。滅菌物品を作るのに、煮沸消毒をしておられると書いてあったと思いま す。医療材料はきちんと、病院が必要な物は病院が提供することが筋だというように再 三、さる委員会でも伺っています。少なくとも国立療養所ですので、自宅で煮沸消毒を するということがないようにできないものかと思います。私は実際、昭和50年代に訪問 看護をやっておりました。そのときにはやはりやむを得ず、煮沸消毒を一部行っていた だくところがありました。それについてはご家族が非常に負担を感じておりますし、あ わや火事というような状況に遭遇したこともあります。非常にご苦労があるのではない かと思っています。  それから、いま「評価」というようにおっしゃられたのですが、このマニュアルをお 使いになって、自宅に帰られたご家族やご本人はこのマニュアルに対して、どのような 評価をしていらっしゃるのか、本当にうまく行っているのかどうかということについて 伺いたいと思います。以上の2つです。 ○前田座長  もちろん、お答えいただける範囲でとなります。お願いします。 ○三浦補佐  お答えします。まず、いつごろからかというお話です。入手したのは直近なのです が、いつから、どのように使われているかという点についてはもう少し時間をいただい て、次回ご報告したいと思います。  衛生材料については18頁から19頁のところに多少記載があるのですが、先生が懸念さ れている点は実費購入、例えば消耗品については継続して購入する必要がある、あるい は吸引セットについてはこういうように、と説明が書かれています。ただ、もう少し具 体的なお尋ねかと思いますので、調査に時間をいただけるようでしたら次回にご報告さ せていただければと思います。  併せて、個々の患者のアセスメントというところまでは突っ込んで聞いておりませ ん。すみません。資料を入手した段階でお示ししますので、そこも併せてご報告したい と思います。 ○川村委員  結局、実際にはこういう資料というか、「オリエンテーションマニュアル」や「指導 」という言葉は、サービスを提供する側がこのように伝達しましたということのチェッ クはされていますが、それがどのように実行されているか、それを受けた方が本当に満 足しているのかという点が重要なのだと思います。ですから、非常に一方的な流れを感 じます。 ○平林委員  いまの川村委員のお話に関連して発言します。一旦、習得した技術をどのようにフォ ローアップしているのか。その体制も聞いていただけるとありがたいと思います。 ○福永委員  全体の進め方で思うのですが、今日も実際のところはあと僅かしかありません。例え ば今日の大分の話など、非常に素晴らしい話だと思います。事務局としてどういう気 持、資料としてどういうことなのか。あるいは全体の見通しとして、動きが短いのです が、それほど長い時間が取れて会議ができていくのか。ある程度の見通しの中での資料 と、またどうやってこの問題について決着というか、話を進めていくかということがあ る程度ないといけないのではないでしょうか。これは学会ではありませんし、気が早い ですが、そういう気がちょっとします。いかがでしょうか。 ○前田座長  事務局にということですが、私に対しての厳しいご発言という意味もあると思います のでお答えします。基本的には、もうそれほど長い時間があるとは思ってはいないわけ です。現に患者の方々が苦労され、家族の方々が苦労されているわけです。ただ、以前 にもあったように、できる限り質の高いものを求めるにはどうしたらいいかという議論 もなるべく充実させながら進めていきたいと思います。  在宅医療の充実ということで、今日いろいろご説明いただいた、大分の例も素晴らし いと思います。それを否定する方はどなたもいらっしゃらないので、それをより実質的 に推進するにはどうしたらいいのかというのは、是非厚労省で考えていただかなければ いけない。あとから出てきたALSの訪問看護モデルも非常に素晴らしい研究で、これ が日本全体のALS患者に行き渡るように一刻も早くやっていただきたい。欠点があれ ばまだ直していただくということですが、それもおそらく異論のないところだと思いま す。ただ、その内容のやり方等をこの委員会で検討する時間は、おそらくそれほどはな い。個々のモデルのどれがいいかという議論は、必ずしもこの委員会に課された課題で はないのだと思います。  その中で、在宅医療をどう充実させるかという議論を踏まえながら、緊急避難的なも のではないでしょうが、ある程度の時間の範囲内で現実に困っている問題を解決しなけ ればいけない。具体的には学会の建議ということで、これも非常に重いと思っているの ですが、神経学会が建議されておられる。ホームヘルパーの方が一定の吸引ができる、 それを学会としては安全と考えるという文章が出ています。  それに対応する議論ももちろん、並行して進めていく所存ではあるのですが、基本は やはりALS患者の方のためを考えても、まず在宅看護の充実をいかに図っていくか。 ただ、それをどの分野まで、充実の具体的な技術論までここでやるということではおそ らくないし、方向性として、この委員会として在宅看護を充実させなければいけない、 ということをいちばん大きな柱として報告していくことは、従来の議論から異論のない ところだと思います。  そうすると、残された課題として、いま現状に関して、建議にあるようなご提言を受 け止めてヘルパーの方に吸引を認めるかどうかという話は、今回も私の不手際で議論が 十分できないかもしれません。次回はその話を中心に、どういう条件であればヘルパー の方に吸引をお任せできるかという話にどうしても入っていかざるを得ないと考えてい ます。ただ、くどいようですが、基本はやはり在宅看護をいかに充実させていくかとい うことです。その趣旨でこういう資料をお願いしたということになっています。進行が まずくて申し訳ありません。 ○医事課長  まず検討の進め方、スケジュールの関係についてご説明します。これは以前にもお話 したように、大臣からも「桜の花が咲くころ」というお話もありました。もうだいぶ、 チラホラと咲いてきています。そういう意味で、そろそろ議論のほうもある程度の方向 性をということではあるのですが、かといって必要な議論はしていただく必要があるだ ろうと思います。そういう中で、できるだけの詰めを行っていただければと、スケジュ ールに関しては思っている次第です。  大分の件についてですが、これは大変に新しい、ある意味で斬新な取組みでありま す。こういう取組みもあるということを是非ご紹介したい。それから、「痰の吸引」と いう言葉で表現する中にもいろいろな形があり得る。その有効性についても、こういっ た形で検証されつつあるということをお示しすることができればと、議論の素材として 提示させていただいたということです。事務局としてはそういう考え方です。 ○前田座長  よろしいでしょうか、質疑のほうを先にと思います。 ○川村委員  いま最後の資料について触れられましたので、その評価について「大変重みがあるも の」というようにおっしゃられたので、あえて質問させていただきます。「特別の医学 知識・技術がない非医療関係者でも安全にできると考えます」ということの根拠がここ には入っていないわけです。どのぐらい、委員の先生や学会の方々が実態をご存じなの か。まさか、日本神経学会でヘルパーの業務内容についていろいろ研究をなさっている とは思いません。また異なる職種の団体が、他の職種について、ほかの職種の業務内容 について意見を申し上げることは、このような方法が適当なのかどうか。また、文書が 学会だからということで、根拠がよくわからないものを「重みがある」と言うことにつ いては、少なくともいまの私としては短絡した関係ではないかと思っています。 ○前田座長  重みがあると申し上げたのは、学者の意見として、学会の意見というようなものを正 式に、判こをついて学会理事長名で出ているものはそれなりに重みのある、根拠のない ことを書くことはあり得ないと思って申し上げただけです。ですから、これについて、 議論をする余地が全くないということではないと思います。学会名で出ている文章だか ら重いという程度のことで申し上げたのです。この内容について私は特に知識があるわ けではなくて、どれだけの根拠を持って言っているということではないと思います。た だ、それなりの根拠があると私は思って、出されていると思っています。 ○福永委員  安全という問題についてはそれこそ、最初のこの委員会でずっと議論されてきたので すが、どこをもって安全とするか。あるいは、訪問看護師だったら安全で、ヘルパー、 訪問看護師、医師以外の人がやったら安全ではないか。もっと極端な例を言うなら、例 えば痰が詰まっていて、そこにヘルパーしかいないというとき、それを吸引しないこと のほうが安全かというと、それは非常に危険な場合になるわけです。安全という問題に 関しては、学会としては一応、「全体として安全と考える」という意見は妥当だと思い ます。  細かい点について、こういう例があったのかなかったのか、吸引していて出血して問 題になることはなかったのかということを言えば、最初の議論のとき、川村委員のお話 にもあったように出血の例もあって、救急車で運ばれたこともあった。もちろん、そう いうことがあったのも事実でしょう。ただ、トータルとしてこの問題に絞って言うなら ば、現状の中でヘルパーが吸引する安全性と、吸引しない安全性を考えたら、はるかに 吸引する安全性のほうが患者にとっては大きなメリットであるというのは、おそらく在 宅看護をずっとやられてきた川村先生とすれば、そう反対できないのではないかという 気もします。  リスクの問題をここですべて、どうかということで議論を進めていくと、実際のとこ ろは結論は出ないだろうと思います。ある程度のところでの線引きというか、ヘルパー ならこのぐらいできるだろう。あるいは、どういう一定の条件を設けたらできるだろう かという形でしなければ、安全の議論をここでやっていても果てしなく平行線をたどる のではないかと考えます。 ○前田座長  どうもありがとうございました。またこれは大問題であります。ご質問に対して、先 生のお答えはいただいたということかと思います。 ○川村委員  議論がどうもずれていってしまうのですが、「安全にできると考えます」に根拠があ るのかどうかが私としてはよくわからないのに、その重要性があるというように重きを 置かれて、医学的整理がこれで決まるということについて疑義があることを申し上げた だけなのです。やはり、少し議論がずれないようにお願いをしたいと思います。  もう1つ、「ホームヘルパーの吸引行為について学会内で議論をいたしました」とい うことですが、ヘルパーという1つ専門的な職種、法的に定められた業務というものが あるところに対して、このように介入していくことについて、やはり私としてはかなり 疑問があるということを申し上げただけなのです。安全性についての議論をいま、ここ でしていただきたいというつもりではありません。是非、話がずれないようにお願いい たします。 ○前田座長  話をずらせるつもりはありません。私がこの報告が重い、と言ってしまった言葉がひ とり歩きしている面があるかと思います。単純に、学会の正式な文章なので「重い」と 申し上げただけですので、それ以上のことではありません。ほかにございますか。 ○五阿弥委員  2点ございます。まず最初に、自動吸引装置について佐藤参考人にお聞きします。実 用化の見通しの研究を行うとあります。3人の方について一晩やったわけです。今後、 例えば具体的な実用化の見通し、導入の時期などについてはどうなっているのでしょう か。 ○佐藤参考人  私がお聞きした範囲内でお答えします。数年内に実用化できるというお話を伺いまし た。今回改良した点もあって、実は気管カニューレの開口部から何センチか出ている部 分を突き出すことをやめて、一面にしたわけです。そういうことをすることによって、 人によっていろいろ調整をしなくても済む、ということも実用化の第一歩だというお話 を伺いました。数年内だということでした。 ○五阿弥委員  ありがとうございました。第2点目ですが、いま数年内というお話でした。ただ、裏 返すと数年間は駄目かもしれないということになります。  あと、山崎委員から、非常に良い試みの発表がありました。これはいちばん最初のと き、川村委員から実技の講習があり、スクイージングについてお話がありました。要す るに専門家(この場合はエキスパートの看護師)が関与した場合は非常に良い効果が出 るのだろうと思います。そのときに星委員は、そういう場合があることもあるけれど も、そうではない、家族でもいい場合があるのではないかとおっしゃっていました。  ですから、議論はある程度明白になりつつあるのではないかと思います。訪問看護ス テーションも含め、医療看護が在宅の現場にもっと関与してもらいたい。それはもちろ んだと思います。ただ、その一方で全部カバーできないということもまた明らかであ る。  日本神経学会の意見書の中にも、要するに訪問看護師はずっと現場にいることができ ない。このままだと家族などに大幅な負担がかかってしまう。ですから、ホームヘルパ ーにということがあるわけです。そこは医療看護の関与を増やすということと、ホーム ヘルパーの吸引を一定程度の形で認めるということは両立するものであるし、宮城県の 方式もそうです。それを目指していくべきではないかと私自身は考えます。これは質問 というよりは意見です。 ○山崎委員  青森の研究はとても成果があったと思います。研究グループ自身が小踊りしそうに、 「本当にこれだけ効果が出たのよ」と伝えてくれています。ですから、ヘルパーの議論 の前に必要なケアがちゃんと提供されていれば、ヘルパーに吸引をさせなくてもいい患 者、場面が出てくるのではないかと思います。  先ほどの退院指導のマニュアルもそうですが、前回も申し上げましたが、あのような ことが全国できちんとネットワークになっていないわけです。自動吸引器も特許を取る 目の前まで来ているようだというお話を聞きました。  やるべきことをやっていくと、これだけの技術を持った者がやれば、ヘルパーによる 吸引の必要性がなくなっていくところもあるのではないか。そのようにこの研究成果を 受け止めた次第です。  追加的な意見をよろしいでしょうか。前回もそうでしたが、今回も国立病院関係の退 院指導のマニュアルのようなものがパラパラと出てきています。私はこの3つの退院時 の指導マニュアルについて、ベストなものが提示されているとは実は思えません。現場 には大変申し訳ないのですが、どうしてそういうものがパラパラと個別の事例で出てく るのか。事務方としてはどのぐらいの病院で、退院時の調整なるものがしっかり行われ ているのか、むしろ行われていないのではないかということをちゃんと示すべきではな いかという感じがしています。  前回、私どもが緊急調査をした都道府県と保健所の部分は報告をしました。国立病院 ・療養所と難病医療拠点病院にも調査をして、そちらのほうが出ましたので口頭で申し 上げたいと思います。64の難病拠点病院に配付をして、46カ所からご回答を得ていま す。実際、その中でフォローされていたALS患者の数というのは429人でした。実は 退院調整についても伺っています。大変よくおやりの医療機関がある一方、退院調整を 行う部署について、実は全体では「行う部署がない」が58.7%ありました。神経内科の ドクターや個別のナースが大変積極的に個別にやっているところが「ある」が28.3%で した。ですから、難病の拠点病院においてすら、退院時のきちんとした仕組みが普及し ているとはまず言い難いのではないか。私どもはこの数字をそのように評価したわけで す。  訪問看護の有無について、「していない」が78.3%でした。院内・院外を併せて、 69.6%が「退院調査のための何らかの会議を開催している」というように答えていまし た。  主に参加するのは病棟の看護師と医師だけです。これではやはり不十分で、国立高松 病院のマニュアル等の中で地域の資源等を家族にはオリエンテーションしていますが、 院内でしっかり退院調査のための会議、例えばよくやっているところではケアマネー ジャー、ステーションのナース、介護職、かかりつけ医、ほかの病院の看護師、地域に よってはここまで含めて会議をしているところもある。ただ、これはやはり非常にパー センテージが少ない。  療養のネットワークということを考えたとき、1つはやはり訪問看護をどのように 使っていくのか。「ない、ない」とあまりエビデンスのない言い方ではなくて、先ほど 人工呼吸器について、前回、私どもが都道府県から見た数字は800人ぐらいというもの でした。厚生労働省から示されたものも1,500人ぐらいでした。つまり、全国でこのぐ らいなのです。それから、難病の260日の訪問看護を使っているのは全国で80何人でし た。この数を当面埋める、そのマンパワーがないかどうか。これはつぶさに検証してみ なければ「ない」とは言い切れません。  退院のときの調整、本当に熱心なナースやドクターがやっていらっしゃいますが、こ れも全部ではない。まず入口、出口をどうするのか。必要であれば、難病の拠点病院に 看護師を1人配置してもいいのではないか。その人がしっかり退院調整をしたり、退院 後、1カ月ぐらいは在宅に訪問して、地域のサービスが連携できるような仕組みを作っ てもいいのではないか。  このようなことは時間がかかる話ではありません。この4月1日から、包括払いも始 まって大変ですが、国策で人を減らすことばかり考えないでいただきたい。必要な所に はやはり重点的にナース、医師を配置していただきたいという感じがします。  もう一方の柱として、青森の研究の中でもそうでしたが、患者さんご自身の適切な、 質の高いケアというのは病院の中にいても、在宅においても同じレベルが受けられる。 これはとても大事なことではないか。よしんばヘルパーに吸引を解禁して、「何か事故 が起きても何も言いません」などということになってしまえば人権にかかわることにな りますので、そうはいかないだろうと思います。  もう1つはご家族をどう支援するか。「トライアル」というように佐藤参考人はおっ しゃいましたが、自動吸引器の安全性や快適性みたいなものは実験研究の中でもかなり 評価できるのではないか。そうすると実用化ということもありますし、どこかのファン ドでモデル的に普及して、お使いになってみるということもできるのではないだろう か。そういう意味でのご家族の支援をどうするか。  家族崩壊のような状況の中で、いまご家族がケアをしていらっしゃるわけです。そこ はやはり私たちは目をつぶるわけにはいきませんので、家族支援の方策をどうするか。 前回、緊急避難的にというご議論もありましたが、やはり周りがこれだけ進歩するスピ ードが速いことを考えると、今あるものをどれだけ国がきちんとやれるのか、やってい ただけるのか。まず、そのことの提言をこの検討会はきちんと出すべきだろうと思いま す。そして緊急避難的に、ごく限定的にということがあったにせよ、それはあくまでも 本当に緊急避難ということではないだろうか。やはり、論点は外さないでいただきたい という感じがしています。 ○平林委員  違う点でよろしいですか、いまの山崎委員の議論はどうしますか。 ○前田座長  もう、質問というより議論に移ってしまっているのですが、ご質問があればそちらが 筋だと思います。 ○平林委員  1つだけ、自動吸引のところで質問させていただきたいと思います。適用の範囲とい うのはどのぐらいなのかを知りたいのです。例えばスクイージングをしなければならな いような場合にも、自動吸引器を付けておけば自動的に、きちんと吸引してくれるの か。あるいは、自動吸引というのは一定の限度においては有効だけれども、場合によっ てはやはり看護師がきちんとしなければ痰は吸引できない性格のものなのか。単純な質 問なのですが、その辺をお聞きしたいのです。 ○佐藤参考人  私がお答えできる範囲内と範囲でない部分がありますが、いま現在、実験例がまだ10 例に満たない状況です。昨夜もまた実験をされていたようです。そういう状況なので、 安全性の評価、効果、対象にはどういう状況の人がいいのかということは、今後評価が 行われた上で出てくるのではないかと思います。 ○川村委員  大分の機器の目的というのは、吸引出来るところまで出てきたものを吸い取るところ が目的であって、肺尖の部分からそこまで流し出してくるということについては効果が ないように見受けています。ですから、全く性質の違うもので、両方をうまく組み合わ せると大変効果があるのではないかと考えます。 ○星委員  議論というか、1つ申し上げておきたいことがあります。ヘルパーにさせるとか、自 動吸引器でできるという範囲の話と、先ほどあったスクイージングのようなもの、「大 掃除」という表現もありましたが、あのようなものとは質が違うものである。それぞれ がある意味、目的も違っているということを認識して考えたときに、より安易な方法、 つまり家族でもできるという、入口まで出てきていたり、出口に近くなったものの吸引 ができるということをもって、大掃除に対するアクセスを阻害することになってはいけ ないと思います。  Aさんの場合の話を読むと、やはり医療に対するアクセスに少し抵抗というか、壁を 感じて、アクセスが少し遠ざかっていた。結果とすれば、近いところの吸引は行われて いたのでしょうけれども、肺機能その他についての数値が下がってきていて危険な状態 だったと。もしこれが事実で、そういう状況があるのだとすれば、手近なことができる ようになったことがむしろ大掃除というか、QOLアップのために必要な医療へのアク セスを阻害することにならないような考え方をしていかないといけないのだろうと思い ます。  そういうことを考えた上で、やはり家族が近い部分の吸引をしなくてはいけないとい う状況があるとすれば、まず家族ができるのはやはりその範囲でしかないことを認識 し、家族が休むための代わりとして誰かできないかという話にしていかないといけない のではないか。最初、川村委員の資料を見せていただいたとき、「2種類あるのです ね」と言ったら、2種類はないという説明でしたが、その辺は私自身も理解できません でした。  今回、実際に青森でやられた例などを見るとどうも、むしろそういうもの、つまり 「大掃除」へのアクセスを阻害するような形での身近かな介入が簡単にできるというの は危険だ、ということは共通の認識で持つべきだと思います。その上で、どうするかを 考えるべきだと思っています。  1つは医療側がある意味、壁が高いというか、患者から見ると、何度も来てもらうの はいかがなものかということもあるのかもしれません。そのようなアセスメントこそが 医療側の役割となる。家族の役割というのはその必要性を認識した上で、日常的な、あ る範囲での吸引行為を行うというように、みんなの頭の中も整理する。その上で、その 延長線上にヘルパーという、何度も言いますが家族が許されるのであれば、その構成要 件のもと、たまたまそこにいて違う仕事をしているヘルパーが何かできることがあるの かと思います。その辺の整理をお願いしたいと思います。 ○前田座長  いまの点は非常に重要かと思います。時間がもうそれほど残っていないのですが、議 論に入りたいと思います。 ○平林委員  星委員がおっしゃられたことは、私も基本的に賛成です。要するに患者がどういう状 態であるかによって、対応する方法がかなり違ってくるだろうと思います。そのことを 誰が最終的に責任を持って判断するのかとなってくると、やはり医療者側の医師、看護 師、どちらかだろうと思います。その辺の責任の分担をどのようにしていくのか、とい うことが実はこの問題の背景にある、非常に重要な問題だろうと思っています。  その意味で、在宅医療や在宅療養をするについては最終的な、そこで医行為が行われ る以上は、最終的な責任は医師が負うべきだろうということは常々思っています。国立 療養所高松病院のマニュアルには医師の責任というか、医師がどういう役割を果たすの かがクリアに見えてこないところが、私にはとても不満というほどのことでもないので すが、そこはどうなっているのかという疑問を持ったわけです。そこは全く個人的な見 解です。  そういう形で医師の責任、しかし個別的な状況について、患者の状況を判断するにつ いては、医師と看護師とがどのように責任を分担して対応し、最もそれにふさわしい処 置を講じていくかを考えていかなければならない。その延長線の上で、どういう問題が あって、誰がそれをやるのかが出てくると思います。  もう1つ、いま我々が問題としている点、ホームヘルパーにそれをやってもらうかど うかという問題についても従来からこの検討会の中で議論されています。緊急避難とい う個々の議論ではなくて、先ほど福永委員がおっしゃられたように痰が詰まっている人 がいて、そこで引かなかったらそのほうが安全ではないでしょうという議論を我々はし ているのではなくて、むしろ制度論の問題として、ホームヘルパーが本来何をする人で あって、その人にどういうことをしてもらうのがいちばん適切なのか。それぞれの職種 の持っている役割をどう考えていくか、という制度の問題として考えていかなくてはな らないと思います。もちろん、座長はその辺の議論も十分了解されていると思います が、我々は共通の認識を持って議論していかないと、どうしても議論が混乱してくるだ ろうと思いますので、一言申し上げておきます。 ○伊藤委員  資料3のナーシング・インターベンションの試みについてご質問申し上げます。研究 グループがおいでいただいたら細かなご質問をするとして、私としてはこういった成果 をよりシステマティックに普遍化する場合、現行の医療制度上の問題、縛りが直接響い てくる可能性があると考えます。そういった点について、いささかこの研究会から逸脱 するかもしれませんが、例えば診療報酬上の問題など、いろいろな制限の撤廃というこ とを念頭に置いて、さまざまな医療職が職能に応じて専門性を発揮する。責任と役割を 果たしていくという意味で、訪問看護の極めてスペシャルな内容を制度に載せるにはど のように持っていったらいいとお考えでしょうか。 ○山崎委員  私どもも先週の金曜日に頂戴したばかりで、伊藤委員がおっしゃったようなことを考 えているところでございます。1つはこのことをどう普及するか。47都道府県に看護協 会がありますので、スペシャリストというか、すべての訪問看護師はこのぐらいのこと ができなくてはいけないのだろう、というところまでの研修をどう組むかがあります。 あと普及ということで、冊子にして関係者にお配りしたいということがあります。  診療報酬上の問題に関しては、前回、私どもでいままで要望してきたことをまとめて 資料としてお出ししています。中でも、ALSについては260日の撤廃ということを書 いておきました。これが事例により、朝夕90分ごとということもありますし、または夜 だけ、週3回だけでいいなど、いろいろあるわけです。  最初から技術評価のようなものを要望していくつもりはありません。むしろ特定疾患 等、「厚生労働大臣が定める」ということで、診療報酬の中でも訪問頻度が枠の外に なっている。こういった点を増やしていくことはすぐ今年15年度、次回の改定が目の前 ですので、これは即反映させていただきたいと考えます。強く要望したいと思っていま すし、この検討会からも是非要望していただけると幸いかと思います。 ○伊藤委員  追加で2点ほど、手短かに申し上げたいと思います。医師、訪問看護師等の医療職の 指導を受けて、実際に特定の条件のもと、ヘルパーが吸引等を行っている事例について は、前回宮城県の例をご提示申し上げ、25日に本分科会ホームページ上にもアップされ ているところです。  その際、私が「代表性に限界がある」という発言をしたところ、医療機関を通じたも のが多いのですが、各地からいろいろな事例が挙がってきています。もし必要があれ ば、事務局と諮ってお出ししたいと思います。  もう1つ、入退院のコーディネートに関しては「難病医療専門員」という、これまた 国の推進する専門員があります。その活動についての調査を私どもでやっていますの で、必要があれば、またこれも検討させていただく資料になるかと考えています。 ○前田座長  どうもありがとうございました。時間が押してきてしまい、申し訳ありません。先ほ どの星委員のおまとめ、それに合わせての平林委員のご指摘は1つ、大きな筋として、 かなりコンセンサスに近いものが得られると思います。在宅ALS患者の医療水準をい かに高めていくか。吸引を2つに分けるというのは正確ではないのですが、一応難易度 の高いもの、家族の方が日々やっておられるようなものとは分けて考えて、それをヘル パーにやっていただくような形になることが、本当に重要な医療へのアクセスを閉ざす ことであってはならない。これは非常に大事なポイントかと思います。それから、今日 ご紹介いただいた自動吸引の進展についても、皆さん、1日も早い実現を望んでいらっ しゃるし、家庭に早くそれが入ってくることは望ましいと思います。最後に伊藤委員か らご指摘いただいた資料もあれば、次回出していただくことは当然であります。  やはり、ご議論の中でポイントになるのは、いまある医療や看護の資源の中で、AL S患者の方々にきちんとやれば、ヘルパーの方が介入する必要はないのではないかとい うご指摘が山崎委員からあったわけです。そこは非常に重要なご指摘なので、本当にそ うなのかどうか、そこを確認する必要がそろそろ来ていると思います。もちろん、それ は数字上のことではなく、患者団体の方が納得のいく形で、いま国がこうやるからヘル パーの方に手伝ってもらわなくても大丈夫というだけのものがあるかどうか。これをも うそろそろ判断しなければいけない段階に近づいてくると思います。  あと1つは、そのときに最終的にヘルパーの方に吸引をしていただくかどうか。もち ろん限られた部分であり、難しいものはもちろん排除する。それから、医師と看護師の どちらがキーパーソンになるかというのは、まだご議論が分かれていると思います。先 ほど、山崎委員からご紹介いただいた提言では、看護師がキーパーソンになるべきであ るという点がありました。その一方、やはり医師がなるべきだというご議論もあり得る と思います。どちらが現実的かを含めて、また議論していかなければいけないと思いま す。  そのときにいちばんポイントになるのは、ヘルパーだから医療行為が一切できないか どうかという形の形式論は、私はあまり意味がないと思っています。先ほど星委員が おっしゃったように、実際に分けたものとしての吸引、最後は危険性の議論で、先ほど のような学会のペーパーをどう見るかという話になるのかもしれません。まさにそこは 議論の余地があるというか、いろいろな考え方があり得るので、議論を出していただい て、最終的にまとめていきたいと思います。  ただ、かなり時間をかけてやってきました。まさに日々進行中の、装置もそうですが 進行中のことがあるので、動いている点はあるのです。ただ、その完成を待って議論の 結論を出すわけにはまいりません。事務局に是非お願いしたいのは、厚生労働省がきち んとやればALS患者に対し、ヘルパーに吸引を頼まなくてもやれるだけのものがどの ぐらい出るのか。それは厳しい言い方過ぎますが、およそのメドを踏まえていく。それ は幅があるもので、評価を含むものであっても仕方がないと思います。それを踏まえ て、議論をもう一歩前に進めてもいいのではないか。結論を出せとは言いませんが、議 論を進めていきたいと思います。  今日は主に質問というか、ご説明いただいた時間が長くて質問中心になってしまいま した。ただ、決して拙速は良くないと思いますので、委員の方の納得のいく形で議論を 進めたいと思います。質問の機会しかなくて、発言がまだ足りないという方はいらっ しゃいますか。 ○星委員  一言だけ発言します。前田座長に前からお願いしているのですが、ご家族が医行為と 言われる行為をされる場合、なぜある意味では法律に触れないのかという整理をしてい ただきたいと思います。看護師の代わりにヘルパーがやるという話ではなくて、ご家族 の代わりにヘルパーがやるという考え方を進めていく場合に、1つのベーシックな軌道 になると思いますので、是非ともお願いしたいと思います。 ○五阿弥委員  例えば医療だけで支えられるのか、あるいは介護だけで支えられるのかという議論で はないと思います。要するに医療と介護の連携が毎回言われていたけれども、結局それ ができていない問題がある。それが問われているのであり、その谷間の問題がヘルパー の吸引問題だと私は思っています。在宅医療をトータルで支える支援のあり方はどうな のか。前から尾道市のケースなどいろいろ言いましたが、それは要するに医療と介護が どういう連携を示せば在宅医療をトータルで支えられるのかという、1つのあるべき形 のパターンとして考えていただきたかったのです。医療だけで支えられる、あるいは介 護だけに任せろという議論ではないような気がしてしょうがありません。それだけを 言っておきます。 ○前田座長  どうもありがとうございました。尻切れとんぼ的になってしまい、申し訳ありませ ん。一歩議論の整理がついたというか、前進があったと思います。次回、また何とぞよ ろしくお願いいたします。最後に事務局から、次回の日程をお願いします。 ○医事課長  次回の開催については、事務局から日程調整をさせていただいた上でご連絡したいと 考えています。場所も含め、正式なご案内については後日、連絡を取らせていただきま すのでよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。 ○前田座長  本日は以上で閉会いたします。                                     −了−                           ┌───────────┐                           │照会先        │                           │厚生労働省医政局医事課│                           │課長補佐 稼農(内2564)│                           │(代表)  03-5253-1111│                           └───────────┘