03/02/10 第2回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会議事録      第2回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会                             日時 平成15年2月10日(月)                           17:00〜                            場所 厚生労働省9階省議室 ○前田座長  ただいまから、第2回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会を開 催させていただきたいと思います。各委員の先生方には、大変ご多忙のところ分科会に お集まりいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、議事に入らせていただ きたいと思います。前回、事務局から提案がありまして、本日は患者家族の方、患者の ケアに実際に当たっておられる看護師の方、また介護に当たっておられるヘルパーの方 々から、ALS患者の方へのケアの実情についてお話をお伺いするということになって おります。本日は、10人の参考人の方にお出でいただいております。皆様からご意見を 伺い、現状の把握、認識を深めてまいりたいと思っております。まず、事務局のほうか ら、参考人として来ていただきました方々のご紹介、併せて本日の委員の出欠について 、ご報告をお願いしたいと思います。 ○医事課長  本日は皆様ご多忙のところ、遅い時間からでございますが、お集まりをいただきまし てありがとうございます。本日は、平林委員がご都合により欠席とのご連絡をいただい ております。  お集まりいただきました参考人の皆様をご紹介させていただきたいと思います。財団 法人日本訪問看護振興財団常務理事の佐藤美穂子さん、社団法人全国訪問看護事業協会 常務理事の上野桂子さん、社団法人秋田県看護協会訪問看護ステーションあきた所長の 石川セツ子さん、社団法人日本介護福祉士会会長の田中雅子さん、全国ホームヘルパー 協議会会長の村田みちるさん、日本ホームヘルパー協会会長の因利恵さん、光明荘ヘル パーステーション主任の中垣貞子さん、日本ALS協会副会長兼吸引問題解決促進委員 会委員長の橋本操さん、日本ALS協会理事の長岡明美さん、日本ALS協会吸引問題 解決促進委員会事務局長の海野幸太郎さんでございます。 ○前田座長  本日はご多忙のところ、参考人の皆様方にはご出席いただきまして、本当にありがと うございます。当分科会を代表して厚く御礼申し上げます。まず、事務局から資料の説 明をお願いいたします。 ○三浦補佐  お手元の資料のご確認だけお願いしたいと思います。今日の分科会の議事次第が書い てある資料が1綴り、それから分科会資料目次という紙が1枚入っているかと思います 。それに続きまして、資料1「ヒアリング項目(案)」、こちらは事務局のほうでお話 をいただく方に、ある程度こういう項目でという形でお願いをさせていただいたもので す。それ以降、資料2ということで、お話をいただきます佐藤先生、上野先生、石川セ ツ子先生、田中さん・村田さん・因さんは共同で資料を出されております。また、橋本 さん・長岡さん・海野さんも共同で資料を出されております。長岡参考人は、それに加 えて1枚提出されているという状況です。それから、速記が粗々でまだお出しできるも のではないのですが、前回の分科会の議事録がお手元にあるかと思います。 ○前田座長  どうもありがとうございました。本日の議事の進め方なのですが、一言申し上げさせ ていただきたいと思います。一堂に会してご議論いただいたほうが合理的だということ もあろうかと思うので、これだけ大勢の参考人の方に来ていただいたわけです。ちょっ と厳しいのですが、前半約1時間程度、参考人の方々から、それぞれのお立場のご意見 、忌憚のないところをお伺いして、そのあとに質疑応答をさせていただきたいと思いま す。参考人の方に申し上げておきたいのは、委員のほうからいろいろ質問があろうかと 思いますが、フランクに自由にお話いただければと思います。議事に関して、前回宿題 が出ていて、もちろん準備はできているのですが、今日はこのヒアリングを中心にやり たいと思いますので、いろいろご議論のある点、残っているのは十分承知しているわけ ですが、参考人のご意見を伺って質疑を行うということを中心に、今日は進めさせてい ただきたいと思います。それでは、佐藤参考人、よろしくお願いします。 ○佐藤参考人  日本訪問看護振興財団は訪問看護ステーションを3つ経営しております。それから、 訪問看護師の質を高めるために、研修等を主な事業としております。3つの訪問看護ス テーションでは、ALSの患者の皆様も、1人から5人、10人といらっしゃいますけれ ども、利用者のご意向に沿って、週1回から4、5回程度訪問を行っております。  私どものほうでまとめました資料2をご覧ください。ALSの皆様方から、吸引をホ ームヘルパーにさせてほしいというご要望が上がっていることにつきましては、現行制 度で私どもが本当に十分対応できていないと思われることに、大変心を痛めております 。特にALSの患者の吸引というのは一人ひとり個別で、その時々に状況判断が求めら れる、難易度の高い看護です。ALSの患者の方が安心して家庭で療養が続けられるよ うに、また24時間、365日付き添っていらっしゃるご家族の皆様がご負担を軽減されるた めにはどうすればいいか、ということを真剣に考えながら、訪問看護体制や制度につい て検討され、そして改善が図られるように切に望んでいます。  初めに、「訪問看護の現状」について、お話させていただきます。いま現在、訪問看 護ステーションは約5,000カ所余り、利用されている方は30万人ほどいらっしゃいます。 この10年間で伸びは著しいものがあります。しかし、在宅医療の面から言いますと、ご 家族がやむを得ず医療処置を行うことが前提としてなっており、在宅医療体制の整備が 十分されてこなかったことを本当に残念に思います。  訪問看護サービスは、訪問看護ステーションの2カ所併用が14年4月から行われるよ うに拡充されてきましたが、サービスとしてはまだ不十分だと思います。必要なだけ訪 問看護を利用できるように、サービスを早急に充実させたいと考えています。ステーシ ョンの現状から言いますと、大体1ステーション当たり4、5人程度の看護師が運営し ている、本当に小規模な事業所で、要介護の4、5のケアの必要な方が中心になってい ます。毎日訪問するALS患者の方には、24時間体制でボランティアとなることも多く 、体力的に厳しい状況にあります。そして、開設母体から「赤字になるから」と止めら れることもあると聞いています。訪問看護ステーションの規模の拡大とか、病院の訪問 看護との協働が本当に望まれます。  次に「連携」についてですが、在宅のALS患者の支援は、医療依存度が高いため、 介護保険のケアマネジャーより、むしろ保健師か看護師がケアのマネジメントを行うほ うが適しているのではないかと考えます。介護保険制度が始まってから、ケアマネジャ ーがいるために、難病にかかわる保健師の役割がどうも後退しているのではないかとい う声も聞かれます。ALS患者のケアは、介護ではなくて、むしろ医療保険がベースに なる在宅医療だと考えます。ですから、地域の支援ネットワーク作りやチームケア体制 を強化するために、もっと積極的に保健所の保健師が行政の立場からかかわり、潜在看 護師を含めて、訪問看護等看護職の活用を図る必要があると考えます。  医療ニーズがある患者でも、訪問看護がケアプランに入らないことがあります。訪問 看護と介護の協働を強化して、それぞれの専門性を発揮し、ALS患者のQOLを高め る必要があります。ホームヘルパーは、医療行為は行わないということでできた職種で あるため、より頻回に訪問するホームヘルパーと訪問看護師の情報交換を密にして、チ ームケアを充実させる必要があると考えます。  次の頁は「吸引の危険性」です。これは平成10年に厚生省から老人保健健康増進等事 業の研究費としていただいたものですが、訪問看護業務の難易度を調査しました。訪問 看護を実施している5人以上のエキスパートナース104人に対して、訪問看護のケア内容 130項目の難易度を調査した結果です。いちばん最初に在宅人工呼吸療法が挙げられてい て、次に酸素、人工呼吸器等の管理、5番目辺りに呼吸リハビリとか肺理学療法、さら に12番目は肺ガス交換・換気状態の評価、21番目は気管切開部のケア、26番は気管内吸 引というふうに、非常に難易度の高いケアとしてこの吸引が挙げられております。  2頁に戻って、「吸引の危険性」ですが、やはりさまざまな症状の変化がありますし 、ALSの患者の皆様方は一人ひとり状態が異なるという特徴があります。吸引により 引き起こされる合併症やリスクも多く、医学・看護学の知識・技術に基づいた個別の判 断力が必要です。現状で、ホームヘルパーの養成課程から考えて、命にかかわる行為を ホームヘルパー一般の業務として拡大することは難しいのではないかと考えます。患者 自身のご要望や、その方に合った吸引の仕方があるので、家族のように特別の馴染みの 関係で、長く付き添える方が必要になってきます。ホームヘルパーが誰でも、「業」と して行うケアではないと考えます。  「対応案」ですが、訪問看護師が専門的な呼吸ケアと吸引を行うことで、吸引回数が 減ったり、感染症を起こすことが少なくなったなどのデータがあります。訪問看護師が フットワークよく動けるように、活動や判断の幅をもたせてくださるとありがたいと思 います。ご家族の休める時間を確保するために、訪問看護体制の工夫も不可欠と考えま す。  さらに、人工呼吸器を装着された方に、質の高い、納得されるケアを提供できるよう に、私どもは研修等で技術を強化したいと考えています。また、唾液の自動吸引器も市 販されておりますが、そのような機器も補完的に使うことで、ご本人の精神的負担も軽 減されるのではないでしょうか。今後、機器の開発も積極的に進めていただきたいと希 望します。  最後になりましたが、訪問看護師もヘルパーも、自分の仕事にプロとしての誇りを持 っています。そして、専門性が発揮できることが利用者の利益につながると考えます。 サービスの質の向上が課題となっている現在、訪問看護サービスが足りないからと、そ の改善のために汗をかくことなく結論を出されることのないように、慎重に取り扱って いただきたいと思います。 ○前田座長  どうもありがとうございました。順に参考人のご意見を全部伺います。次に上野参考 人、お願いします。 ○上野参考人  私は全国訪問看護事業協会の常務理事と、浜松にあります聖隷福祉事業団の訪問看護 ステーションを14統括している立場からお話してみたいと思います。14ステーションの ほとんどのステーションにALSの利用者が1〜3名ぐらいおりますので、その中の1 例を報告させていただきます。Aさんは58年に発症して、5年後に人工呼吸器を着け、 平成7年から約8年間の在宅生活をしております。支援体制として家族と訪問看護ステ ーション、ホームヘルパー、入浴サービス、訪問マッサージ、ボランティア、ケアマネ ジャー等がチームを組んで支援しています。資料の7頁に1日の流れが書いてあります が、訪問看護は研究事業の260回と医療保険と複数回訪問を入れながら、1日4、5時間 、月曜日から金曜日まで、土曜日は医療保険という形で訪問を行っております。  訪問介護に関しては、午前・午後、これは訪問看護と同行訪問になります。午前・午 後、月から金まで、訪問介護が入っていまして、ボランティアの方が土・日に入ってく れています。それ以外に訪問マッサージと医師の往診、いまは行っていませんが、入浴 ケアが火曜日に入っています。その中で、訪問看護内容は午前と午後に分けて書いてあ りますが、午後はほとんどがいろいろな処置をしながら、排痰ケアに時間をかけていま す。この排痰ケアをきっちりすることで、夜間の介護、吸引等の回数が減っております 。この午後の時間帯に家族のレスパイトという目的も含まれております。  そういう状況の中で、もう1つは資料の3頁、「県単事業」です。この「難病患者介 護家族リフレッシュ事業」の活用をしております。これに関しては、県と市町村とご本 人の負担ももちろんあるわけですが、ステーションが月に1回、夜間9時半から朝の5 時までの8時間の夜間長時間ケアをしています。そのことによって、ご本人は読みたい 本やテレビを遅くまで見たりすることで喜んでいますし、母親にとってゆっくり休める ということで、非常に評価されています。このリフレッシュ事業に関しては、市町村が OKしなければなかなかできないというところもありまして、静岡県ではまだ1件だけ なのですが、この事業で利用者が在宅で過ごせるという状況になっています。  5頁のアンケートですが、これは20ステーションぐらいのアンケート調査です。AL Sの患者の実態なのですが、発症とか内容は省きまして、訪問回数なのですが、1回、 2回、3回、5回、1回と、非常にばらつきがあります。この訪問回数に関しては、ほ とんどが家族やご本人の希望が第1で、訪問看護は何回行きましょうというよりも、先 にまず家族やご本人の希望でやっているという形になっています。  いちばん下の「夜間の吸引を看護師に頼みたいか」という所では、「いいえ」と書か れている方が3名おりますが、「夜間吸引は少ない」、「いまの状態でいい」、「いつ も家族がそばにいるのでいい」という形の方が「いいえ」です。それから、夜間に来て ほしいという方は、「夜間、遅くまで起きているのが大変」、「夜間ゆっくり眠りたい 」、「ゆっくり休みたい」、「夜出かけたい」という人たちが夜間の訪問を希望してい る状況です。  2頁目に戻って、電話相談等をしていますので、事業協会に寄せられる声から拾いま した。ほとんどの所は、利用者から依頼があった場合は、できるだけ支援することで何 とかしていきたい。何とかするための方法はないかという電話がいちばん多いです。ま ずは留守宅での吸引の依頼、吸引しながら洗髪するために2名の看護師が必要である。 しかし、2名を自分の所で出せないので、2カ所のステーションから同日に訪問できな いだろうかということです。現在は同日の同時間帯の訪問はできない状況になっていま すので、そういう依頼があります。  それから、いまの制度では退院時に訪問看護はいけないとなっていますので、退院時 に吸引指導で訪問看護ができないという困難性、夜間滞在型の訪問看護の希望があるの ですが、夜間帯に入ることで実費が発生する、利用者負担があるというところ。それか ら、市町村が難病患者の介護家族リフレッシュ事業に参画していないため、宿泊ケアが できない。夜間対応はマンパワーの問題もあり、なかなか難しい。でも望まれれば週1 回ぐらいは何とかしたいけれども、当直体制や実費負担を考えるとなかなか進んででき ないという状況。それと、自分たちは支援していきたい。そのためには長時間の滞在型 をとってやりたいけれども、以前は研究事業の8,000円プラス2,500円でよかったのです が、一昨年から研究事業が入らなくなりましたので、2回目のところが2,500円で延々と いなくてはいけないというところと、研究事業が使われていないというデータもあるよ うなのですが、研究事業は2回目は比較的いっているということなのですが、3回目に なるとあまりご利用されていない状況だと思います。  1回の訪問では無理があるため、1日複数回訪問を有効に活用したい。家族が外出し たいために、長時間のケア、3時間〜4時間のケアをしていきたいが、体制的に無理。 介護保険では30分の巡回型の訪問があるのですが、ALSの方は厚生労働大臣が定める 疾患ということで医療保険になりますので、30分単位の訪問はいまのところ認められて いません。それで、吸引等の処置にはそれが必要ではないか。それから、巡回型でもし スポットで行っていますと、きちんと痰があるわけではないのだというところをどうす るかというような問題が出てきまして、体制をどう考えていくかということでした。  それで、体制に関してちょっと考えてみました。まずは、例えば30分の訪問をしても 、1回分の料金を取るという今のシステムはいかがなものかというところ。それから、 2回しか評価されずに、かつ2回目訪問2,500円ではステーションは非常にコストダウン を招くだろう。2カ所以上のステーションの同日訪問が可能になれば、巡回型が組みや すくなる。訪問看護ステーションは2.5人から始まるところですので、今は2カ所ですが 、2カ所、3カ所でネットワークが組んでいければいいのではないかということで、そ ういうシステム作りができないだろうか。それから、難病患者介護家族リフレッシュ事 業の促進をしていただくことで、夜間のレスパイトの目的での活用ができるのではない かと思います。それから、退院日の訪問が可能な算定と、マンパワーの確保です。もう 1つは、ここには書いていないのですが、自動吸引装置というようなものが開発できれ ばいいのではないかと考えています。 ○前田座長  どうもありがとうございました。続きまして、石川参考人、お願いします。 ○石川参考人  社団法人秋田県看護協会の訪問看護ステーションあきたの所長をしております石川と 申します。秋田県看護協会のほうでは、県内に3カ所設置しまして、3カ所ともALS 等の人工呼吸器装着者への看護を行っておりますが、私はあきたのほうの所長をしてお りますので、あきたを中心にしながら、実際にいま現在行っていることについてお話申 し上げたいと思います。  当ステーションにおける「ALS等在宅人工呼吸器装着者への訪問看護の現状と取り 組み」についてですが、ステーションの概要につきましては、皆様のお手元に資料をお 配りしてありますので、それを参照していただきたいと思います。                (スライド開始)                 ☆スライド  事例−1について紹介したいと思いますが、この方は68歳の女性、ALS、人工呼吸 器を装着しております。平成9年の介護負担の理由から、秋田県の全国人工呼吸器使用 特定疾患患者訪問看護治療研究事業の支援を受けて、毎日の訪問を行っております。そ の時点では対象者も少なかったこともありまして、県の対応も積極的でありました。最 近、ALS等の在宅療養者の増加に伴い、予算上、非常に厳しくなっているということ もお聞きしています。ケアが必要とされる方に必要な量だけ行き届くように私どもも努 力しておりますが、そういったところのサポート体制の確立も大切であると考えていま す。  今できることは、これは家族も含めてですが、ケアチームとの役割分担で、効果的な 連携プレーで、その人らしさを失うことなく生活ができるように支援することが、我々 医療職・福祉職の役割であると思っております。24時間生活を共にするご家族にとって は、患者のそばから一時も離れることができないということで、相当に負担があるとい うことは身をもって感じております。そのため、私どもは週5日、1日3回の訪問看護 をしております。  看護内容は、資料のほうで参照していただきたいと思います。この中で、主に排痰に 関する呼吸リハとか、その辺のケアを完全に行うことにより、吸引の間隔の時間が長引 くというような成果データがあります。ご家族の都合で留守にする場合、旅行とか研修 会の参加のときには、土・日に対応しております。ご本人とのコミュニケーションは、 コール、パソコンで対応しております。訪問看護の担当ナースのほうに、あとでメール が送られてくるというようなことがあり、コミュニケーションをとっております。本人 も、できる限り普通の生活をしたいという思いに、身近にいる専門職として、ライフサ ポーターとして、役割を果たしていきたいと努力しております。 ☆スライド  この方は60歳の男性です。人工呼吸器装着者、ALSの方です。平成12年10月から、 週3回の定期的な訪問看護を行っておりましたが、介護者の負担がありまして、現在は 毎日訪問しております。さらに翌年からは介護者のレスパイトサービスの希望があり、 1日長時間訪問の依頼を受けました。月2回でしたが、4時間の訪問看護を行っており ました。ステーションから距離的にも約片道45kmの所にあり、地域的にもステーション がないということもありまして、半日以上を費やし対応しております。看護協会訪問看 護ステーションの使命でもあると思っておりますが、ステーションの運営、冬道の運転 など非常に厳しい面もあります。  さらに、今年1月に入りまして、週5回のうち1回は介護者のリフレッシュタイムに 当てたいというような希望があり、長時間訪問看護の依頼がありました。現在の職員体 制では非常に厳しい状況にありますが、その日は介護者が週1回、ショッピングとか美 容院に外出できるので、非常に楽しみに待っております。以前サービス導入時に、この 方は訪問看護だけで、ほかのサービスは要らないというようなこともありましたが、筋 力低下の進行もありまして、その後、訪問入浴にはヘルパーと同行して行っておりまし た。最近は巡回入浴、訪問入浴サービスも受けております。このように制度化されてい るサービス利用につきましては、地域保健師やケアマネジャー等を通じて要望されてい る事も現状です。 ☆スライド  「人工呼吸器装着者への対応について」ですが、これまでの経験から、職員の資質面 に関する事例として、1つは適切なケアによって、介護にかかわる時間が短縮できたと いうことが挙げられます。2つ目として、QOLの向上面においては、たとえどんな病 気でも、我が家で自分らしく過ごしたいという気持は利用者の共通の思いでもあります 。それを実現させることが我々の役割でもあると思っております。旅行とか外出、映画 鑑賞、ALSに関する研修、セミナー、パーティー、養護学校のイベントなどへの参加 の支援、介護者へのリフレッシュ外出、介護力の軽減などの支援活動、それから、夜間 訪問についての課題ですが、現在うちのほうでは希望者はおりません。夜間に訪問して いただきたいという希望者はおりませんけれども、今後、全体的なALS患者等の実態 把握が必要と思っております。 ☆スライド  「利用者本人・ご家族の要望」としまして、これはステーションあきたの利用者から の聞き取り調査ではありますが、1つは「介護者のリフレッシュタイムがほしい」。そ のためには、長時間の訪問、頻回の吸引を要するための訪問だけではなくて、長時間の 訪問の要望があります。2つ目としては、吸引についてですが、いつも慣れている主介 護者以外に、身内とか親戚にはさせたくないというような声もあります。一部の方では ありますが、「看護職以外にはお願いしたくない」というような声も出ております。そ れから、「できる人であれば誰でもいいので、来ていただきたい」という声も出されて おります。ヘルパーには入ってもらいたいのだけれども、吸引等、そういう医療処置を 任せるのではなくて、家事的な援助のところでお願いしたいというような声も聞かれて おります。  これはALSとちょっと関係ありませんが、小児難病を持つお母さんたちは介護保険 でのサービス利用ができませんので、24時間の介護の連続です。意外とこのような実態 が知られていないということも現状ではないかなと思っています。この辺も大きな課題 ではないかと思います。 ☆スライド  「利用者に安全なケアを提供するための提案」として、医療行為はあくまでも看護職 が担うことが基本原則。そのための方策として、在宅ケアは複数のステーションが共同 でかかわる、あらゆるステーションが共同でかかわる、というようなことがまず1つ挙 げられると思います。2つ目として、ステーションの質の均等化をさらに強化して、A LS等訪問看護の積極的な取組みが必要だと思います。3つ目としては、医療職、看護 職、看護協会員等のOBへの働きかけ、ボランティア導入、これは制度化をしていただ く、というようなことを提案したいと思います。4つ目としては、訪問看護ステーショ ンの職員配置に、ALS患者専属ナース、難病経験の豊富なナース、必要な時間帯だけ 勤務できるナースの採用です。5つ目として、地域医療・保健・福祉の連携強化、在宅 医療に積極的に取り組んでいる診療所との連携、行政関係の看護職との連携、医療依存 度の高い利用者を引き受けてくれる通所介護サービス、短期入所生活介護サービス体制 の充実です。6つ目として、積極的な在宅看護教育が挙げられるのではないかと思いま す。  以上、訪問看護の現状について、私どもが実際に行っている現場の実態について、述 べさせていただきました。 ○前田座長  どうもありがとうございました。続きまして、社団法人日本介護福祉士会、全国ホー ムヘルパー協議会、日本ホームヘルパー協会を代表して村田参考人からお願いいたしま す。 ○村田参考人  私ども3団体で、「在宅のALS患者に対する『痰の吸引』の療養支援の検討に対す る意見」として、資料にまとめさせていただきました。資料に沿って申し上げます。  ホームヘルプサービスの事業の中で、近年、ALS患者の方をはじめ医療機器や訪問 看護など、医療的な支援を受けながら、在宅で暮らす利用者にサービスを提供すること が多くなっています。こうした利用者の方が在宅で暮らすうえで欠かせない「痰の吸引 」など医療的な処置は、利用者や家族の方の大きな負担となっており、こうした処置を ホームヘルパーが行うことへのご要望が大変切実なものになっていることを、私たち自 身も充分受け止めています。しかし、医療従事者ではない私たちがこうした業務ができ ないことをご説明し、訪問看護やかかりつけ医などと連携をしながら、できるだけ利用 者や家族のニーズに応えるサービス提供に努めているところです。  このたび、全国のALS患者の方々の要望に応え、国として、家族にとって介護負担 の高い「痰の吸引」の行為などへの支援について検討することに対しては、私たちとし ても大きな期待と関心を払っているところです。  私たちホームヘルパーは、こうしたALS患者の方が、住み慣れた地域の中で暮らし 続けたいという願いを受け止め、できる限りの支援を行いたいと感じていますが、一人 ひとりのホームヘルパーの経験や介護技術のレベルはさまざまであり、一律に「痰の吸 引」を担うことについては、ニーズや期待の高さを感じながらも大きな不安はぬぐえま せん。  限定的であったとしてもホームヘルパーが医療行為を行うことは、大きなリスクがあ ります。このリスクは、ホームヘルパーだけでなく、当然利用者の生命にもかかわるリ スクです。こうしたリスクを十分に念頭に置き、慎重な検討をお願いいたします。  私たちホームヘルパーは、地域の医療機関や訪問看護に携わる医療従事者と協力し、 ALS患者やご家族の方が安心してサービスを利用できる条件づくりが必要であると考 え、下記のような意見を集約いたしました。ぜひとも、良い方向性が導かれることを期 待いたします。  「記」として、1、「在宅で医療的な支援をうけながら暮らす方々に対して、訪問看 護をはじめとする地域での医療的な支援体制を確立することが大きな課題であり、早急 に充実させてください」。2、「ALS患者の方の『痰の吸引』をホームヘルパーが担 うにあたっては、利用者及びホームヘルパーのリスクを充分に踏まえ、法的整備や業務 の範囲、担当するホームヘルパーの要件を明確にし、ホームヘルプサービス事業の一環 としてサービス提供ができるよう、十分な条件整備を図ってください」。  次の頁ですが、(1)として「ALS患者の方への『痰の吸引』をホームヘルパーが業務 として行うことについて法的な整備をしてください」。  (2)「実施にあたっては訪問看護との業務の分担を明確にし、必ず訪問看護が定期的に 利用されており、常に連携可能な中で提供することを条件づけてください」。  (3)「担当するホームヘルパーは、一定の水準が必要です。介護福祉士の資格を有し、 かつ介護職としての一定の経験を有することを要件とすることが必要です。また、ホー ムヘルプ事業に従事する看護師や准看護師の有資格者を活用することも考えられます。 さらに、実際の業務にあたっては、専門的な研修及び利用者やご家族と一緒にかかりつ け医や看護師から具体的な実施方法を習得できる体制の整備を図ってください」。  (1)「医師や訪問看護、あるいは利用者や家族からホームヘルパー個人が請け負って業 務を行うような方法ではなく、ホームヘルプサービス事業所として業務を行う仕組みと してください。ホームヘルプサービス事業者と医師や訪問看護などの医療機関との連携 体制を明確にし、それぞれの責任の所在を明らかにすること。担当するヘルパーの管理 ・教育、事故対応、賠償保険への加入など事業者の責務を明確にし、ホームヘルプサー ビス事業者が必要な業務体制を整備することを義務づけること。こうした仕組みづくり に対して国、自治体等が必要な支援を行うこと」。  以上でございます。 ○前田座長  どうもありがとうございました。続きまして、中垣参考人、お願いします。 ○中垣参考人  実は先週の木曜日に私は実際にサービスに出ていまして、夕方帰ってまいりましたら この話がありました。慌てて作った資料なのですが、「ALS患者への訪問はどのよう に行われていますか」ということですが、私の所では1軒だけ、いま現在行っています 。措置のときから派遣で入っていまして、3年前に介護保険導入になり、この方は介護 保険に切り替えました。初めは光明荘のヘルパーステーションがずっと派遣で入ってい ましたが、そのうち利用者がヘルパーを選ぶようになってくるのです。合う、合わない があると思うのです。  ヘルパーが少人数で対応するとなると、とても派遣回数に入ることはできません。初 めに担当したケアマネジャーが寮母だった人でしたが、利用者が希望されて、看護師の 資格のあるケアマネジャーに代わっております。それで、ケアマネジャーがあっちこっ ちの事業所に問い合わせて、「光の園」という所と「佐藤コーポレーション」、ここは もともと有償ボランティアが始めた介護保険事業所なのです。それと「ファミリーケア 」、ここは元家政婦協会がされていた所です。現在、「光の園」と光明荘と佐藤コーポ レーションとファミリーケアという4事業所が派遣に入っています。約1日6回入って います。訪問看護は、医療のほうで入っています。  現在は、光の園が朝9時から10時まで週3回入浴介助で入っています。まず最初に排 泄介助をして、それが終わったころに訪問看護が来て、一緒に入浴をしております。あ とは短い30分です。11時は排泄介助とその他、水分摂取とか食事の準備です。13時は排 泄介助と食事の後片付け、15時は排泄介助と調理です。調理は2品ぐらい作っていると 思うのです。ご本人がしっかりしていらっしゃいまして、調理するにも全部指定されま す。野菜の切り方とか厚さとか、味付けまで指示されています。17時は調理と排泄、家 族の帰宅の遅い時は、食事を温めセッティングで複合型で入っております。20時30分か ら1時間は就寝介護で入っております。  この方はご夫婦2人暮らしです。ご主人は昼間は会社に出かけていらっしゃいますの で、昼間独居という形になっております。この方はまだ痰の吸引まではいかれていない のですが、現在、咳がよく出ています。大体、頻度と内容が以上です。  2の「養成課程」の中で、「医療面での教育をどの程度受けていますか」ということ ですが、私たちは難病患者の養成研修の中では、痰の吸引や人工呼吸器の装置が必要に なってくるということで、医療のニーズが高くなることは勉強しております。それに伴 い、本人や家族の精神的な不安や社会的な問題などが起こる、ということも習っており ます。患者の心理、家族の心理などの理解が必要である。こういう程度の勉強をさせて もらいました。  そのほかに、保健所の主催でありました「ALS患者の在宅ケアの実際」という講習 がありまして、このときには自由参加だったのですが、栄養管理とか呼吸管理、コミュ ニケーションの方法の工夫、精神的ケア、患者への援助などが重要であるということを 教えていただきました。  3の「要介護者は固定されているのか」ということですが、現在、光明荘のヘルパー ステーションでは、担当ヘルパーが7人固定されています。「光の園」のホームヘルプ サービスでは5人で担当しております。「ファミリーケア」は2人です。佐藤コーポレ ーションという所は1人なのですが、この方は家事援助のみです。佐藤コーポレーショ ンが入っている火曜日の14時から16時の間は、家事援助ですので、このときは途中で訪 問看護が入って排泄介助をしております。  「他職種との連携について」という所ですが、「医療との連携はどのように行われて いるか」ということで、現在はケアマネジャーが中心になって、連携が図られています 。ご家族から要望があれば、ケアマネジャーが中心になって、医療関係者とかホームヘ ルパーとかに連絡をいただいております。また、ホームヘルパーのほうは、実際にご本 人に毎日のように会いますので、そこから伺ったことなどを、またケアマネジャーに伝 えるという連携をとっております。いまのところ、痰の吸引はまだないですから、医療 関係者に直接連絡するということはないのですが、いままでに3、4回ぐらいは集まっ てミーティングをしております。  「在宅ALS患者の療養生活の質の向上を図るために、訪問看護師等、医療職に対し てどのようなことを期待するか」ということですが、私たちは現在1人のALS患者の 方だけで接しております。この先どういうふうになっていくのかという心配もあるので すが、やはり他のALS患者の情報を教えてほしいと、これは「光の園」からの意見で した。「医療行為だけでなく、外出の付添いなどの生活支援の援助も行われるようにな ればいいと思う」という話も出ております。休日や祝日にヘルパーはサービスに入って いるが、何か起こったときのために、連絡をすればいつでも対応できるようにしてほし いということです。それと、在宅ALS患者に対する訪問看護師など、医療職の方の訪 問制限があるということを聞いております。この枠を外していただきたいと思います。  次は、「ALS患者に対する痰の吸引について、痰の吸引に関する危険性をどのよう に考えるか」ということで、痰を吸引しないことによる生命の危険性が高いということ もわかっております。痰を吸引することで、一次的な生命の危険性は低いが、2次的な 細菌感染や粘膜を傷つける危険性があるということもわかっております。私たちは医療 行為をしてはいけないということになっておりますが、第三者が行うことで責任が問わ れるという部分も気になるところです。痰の吸引については、単に吸引方法の指導を受 けて行えるような行為ではないと思います。それをすることによって予測される危険な ど、医学的な知識も同時に習得しなければできないことです。看護師は、何年もかけて 勉強されています。私たちホームヘルパーは、生活に密着した援助が中心で、非常に難 しい部分だと思います。  「訪問介護で十分な対応ができると考えるか」ということに対してですが、これから はだんだん医療ニーズが高くなってきますので、訪問介護だけでは無理だと思います。 生活を支えるために、ヘルパーや看護師だけでなく、インフォーマルな支えも含め、で きるだけ多くの人がかかわりを持たないと、家族の負担は減らないと思います。 ○前田座長  どうもありがとうございました。続きまして、海野参考人、お願いします。 ○海野参考人  パソコンをやりながら、前で説明してもよろしいでしょうか。私たちがそもそも今回 この分科会で検討していただいている内容ですが、なぜヘルパーや介護者の方に吸引実 施を要望しているかということについて、これまでの背景や経緯をご説明させていただ きたいと思います。この分科会において、どのようなことを検討していただきたいのか 。そして、私たちがどのようなことを望んでいるのかということについて、ご説明した いと思います。  最初のこの図は、ALSの患者の症状と患者数についての簡単な概念図ですが、三角 形全体を患者の総数と見立てて、縦に行けば行くほど症状が重くなるという考え方です 。そうした場合に、ALSの場合には上肢・下肢の運動障害、手や足が動きにくくなり 、飲み込みもしにくくなり、呼吸さえも自分でしにくくなるという、大変厳しい疾患で す。そのような疾患に対して、通常私たちがこれまでも、そしてこれからもまた臨んで いこうと思っているのが、患者家族を中心に、医療と保健と福祉が本当の意味でちゃん と連携できて、なおかつ疾患に対しての十分な理解が地域で育まれたものであれば、資 料の緑の部分はある程度、患者は在宅でも療養していくことができるだろう。しかし、 お手元の資料の三角形のピラミッドの赤い部分の患者、呼吸器を着けて在宅で療養され ている、全介助を必要とする患者は、まだまだ多くの問題を抱えております。先ほど看 護の立場、そして介護職の立場からご説明があったとおりだと思っております。  療養環境上の問題点としてどのようなことがあるのかということについてですが、同 じく縦軸に医療依存度・介護度、横軸に時間の経過を見たときに、当然、進行性の病気 ですので、医療依存度・介護度は高くなると。通常、病院での入院というのが想像され ると思うのですが、ALSの場合には全国的に長期の入院が困難であるという状況です 。望むと望まざるとにかかわらず、在宅にならざるを得ない。これには医療経済上の問 題や、それに起因して看護師などのマンパワーの不足など、さまざまなものがあるとい うふうに考えられます。国の施策の中でも重症難病患者入院施設確保事業、そして特殊 疾患に対しての療養病棟の診療報酬の加算などがあると思いますが、実際の需要に対し てはまだまだ追い付いていないという状況です。  望むと望まざるとにかかわらず、在宅で療養せざるを得ない患者の実態はどのような ものなのだろうかという点についてですが、人工呼吸器を着けて療養する患者において は、吸引や体位交換が頻回に必要とされます。その際に、先ほども話がありましたが、 サービスとして40歳以上であれば介護保険が受けられると思いますが、要介護度5で身 体介護で見た場合には、平均して1日2時間から2.5時間ほどしか利用できません。  そして、全国的に見た場合に、医療保険による訪問看護、次の頁でご説明しますが、 これも1日平均約1.5時間ほどしか利用できていないという実情です。そうすると、1日 の中で、時間の換算で言えば20%ほどしか社会資源が十分埋まらないと。1日24時間ケ アが必要な中でも20%しか確保できないということは、赤い部分のほとんどが家族負担 にならざるを得ないという状況です。ただし、国の施策の中で障害者施策を使って、介 護保険、医療保険でも足りない部分は全身性障害者介護人派遣制度などの、患者に合っ た形の介護人が選べ、かつ長時間派遣できる制度というのが全国の市町村で実施されつ つある状況ですが、その実施状況はまだ数パーセントにしか満たないという状況です。 そうすると、赤い部分、家族の負担が大きいのが呼吸器を着けた在宅の患者の実情であ ると思っています。  では、吸引を必要とする患者が訪問看護を利用している状況はどのような状況かとい うことについてですが、平成12年9月にALS協会で実施した調査では、週7回以上、 ほぼ毎日入れる形の利用率が約3%しかなかった。それ以外の大きい割合を占めている のが黄色の部分ですが、週1回から3回が6割を占めている。なぜそういう状況になっ てしまうのかということですが、基本的に訪問看護については、前回の分科会でもご説 明があったとおり、医療保険で2回、研究事業でさらに追加ができるという形です。そ もそも近隣の市町村に訪問看護がない地域がある。需給バランスがまだまだとれていな い。そして、ステーションによっては、看護師のマンパワーの不足によって、どうして も頻回に利用者の所には訪問できない。  先ほども看護の立場からご説明があったと思うのですが、2回目で約6割ほど点数が 下がってしまうことから、訪問看護の経済上の立場から見れば、どうしても訪問しにく いというのが実情です。そして、今度利用者にとってみれば、長距離の離れているステ ーションと利用者の間には交通費の自己負担がありますので、利用したくても経済上な かなか交通費の負担が賄えずに、利用できないという背景があるのではないかと考えて います。  そうなると、在宅で24時間過ごしている患者の吸引というのはどうなるかというと、 先ほど言いました、平均1日約1.5時間ほどの訪問看護が入っている以外の(赤い部分) 、結局、家族にならざるを得ないだろう。家族がいる方はいいと思うのですが、家族が いない方はどうしたらいいのでしょうか。介護保険が受けられる方は、制度上では時間 はこの緑の点線の枠で埋め合わせることができると思いますが、やはりそこで吸引とい う行為ができないのであれば、家族に頼らざるを得ない。市町村によっては、ヘルパー が派遣できる所もありますが(青色の枠)、そこも吸引ができないのでは、やはり家族 の負担にならざるを得ないという現状です。  そうなってくると、この赤い部分、人工呼吸器を必要とする、全介助を必要とする患 者は1日24時間、365日の介護が続く。その状況では、やはり介護力がどうしても足りな い。それが家族への限界を超えた負担につながってしまい、あってはならない事実なの ですが、不本意ながら患者が呼吸器を装着することを断念してしまっている、という事 実があります。患者は、着けたいと思っても着けられない環境にある。その割合がAL Sの患者全体の3割ほどと想定されます。患者の生命の重みや、家族の生活権などを考 えた場合に、これをどう確保していくべきか。このままの状況では、私たちはとても我 慢ができないという状況で、昨年11月の大臣への要望につながったという状況です。  皆さんに検討していただきたい内容として、今回ALSという形で上がっていますが 、私たちは、決してALSに限定してほしいということは一切考えておりません。吸引 を必要とするすべての人を対象としてほしい。場所も、在宅がいまメインに上がってい ますが、在宅だけではなく、日常生活の場すべて、つまりは施設であれ教育の場であれ 、すべての場を含むという考え方です。時間については特定しないで、やはり24時間の 範囲で、それを検討の対象としていただきたい。  実施者に関しては、医師、看護師の指導を受け、研修を修了したヘルパーと介護者を 望んでいるということです。誤解されているかもしれませんが、誰でも彼でもヘルパー にやらせておけばいいという考え方ではありません。やはり必要な知識と技術、吸引を 安全に実施できるようにするための知識や技術を修得する教育体制が得られなければ、 利用者として、それを安全に利用することができないのではないかと考えています。そ の点を是非、この分科会の中でご検討いただければと思っています。  最後にこの写真ですが、昨年、大臣に署名を提出したときの署名用紙ですが、17万8,0 00名の方々からの幅広い声です。医療職の方、介護職の方、そして当事者の方からの、 是非現状を改善してほしいという声です。約1カ月間で17万8,000名の方から熱い署名を いただきました。これをどうとらえ、どう活かすかという部分も踏まえて、是非ご検討 いただければと思います。  引き続いて、発病から26年、人工呼吸器の在宅療養生活19年の介護経験から、長岡明 美と、患者当事者の橋本操から発言をお願いできればと思います。私からは以上です。 ○前田座長  では、参考人どうぞお願いします。 ○長岡参考人  吸引は、何分置きに行うというように決められた時間でするものではなく、患者の要 求に応えて吸引するものです。いま吸引したばかりでも、2、3分後にはまた吸引の要 求があり、予測不可能で、吸引されなければ死に直接かかわります。  在宅療養当初、気切部の刺激や精神的不安定等により、吸引は多いときで68回、平均3 0〜40回、最近は多いときで34回、平均10回あります。常に患者の傍から離れられないの が実状です。  我が家のケア体制は、医療保険で訪問看護ステーション週1回、月曜日の9時半から1 1時半の2時間。このときは洗髪、清拭、気切ガーゼの交換、バイタルチェック等があり 、30分は持ち出しになっています。介護保険でヘルパー、身体介護1名、ナースと一緒 に洗髪、清拭、消毒物品の交換等をします。そして家事援助のヘルパー1名、これは掃 除と清拭のときのタオル絞り、消毒物品の洗浄、洗濯(洗濯機に放り込んでくれるだけ )、時間がくれば途中で帰ってしまいます。  隔週水曜日にヘルパー、これは家事援助ヘルパーが1名で、掃除と買物です。金曜日 に介護保険で入浴サービスが入ります。これは身体介護ヘルパーが1名、掃除と入浴時 の手伝い、あとベッドメイキング、このときも洗濯途中で帰ります。しかも、他市のス テーションを利用しています。週1回を条件に受けてもらいました。  市内のステーションが医療保険で週3回入れない理由は、ステーションのマンパワー が不足している、常勤のナースが管理職1名で、ほかは非常勤、他市に比べると非常勤 が多い。難病末期の患者を複数抱えられない、回数が増えると赤字になる、24時間体制 をしていないから等です。制度はたくさんあっても、全部使える患者は少ないのです。 経済的に余裕がなければ1割負担でも払えません。  週休2日制の世の中なのに、介護は1日24時間休みなしです。介護は家族がするのが 当然と思われていますが、1日の休みもなく、夜間もぐっすり眠れず、疲労で体調を崩 せば、通常気づく異常にも気づかず、事故につながる危険性があります。  ナースコールが1日150〜200回近くあります。コールの音は、患者にとっては生命の 綱ではありますが、介護者にとってはストレスの元になります。ヘルパーに留守番をし てもらえれば、コールの音から離れてストレス解消ができます。留守番をするには吸引 ができることが不可欠です。夜間、多いときは10回起きます。大体1時前後に寝て7時 半ごろに起きますが、1回も起きない日は年3回ほど、食事中、トイレ、入浴中にもコ ールが鳴ります。  コールの内容として、吸引以外、枕の位置とか頭の位置とか、これは決まらないと1 日中移動があります。あと、おでこに光センサーのコールを付けていますが、これが自 分で10回鳴らして1回でも鳴らないとやり直しになり、患者の感覚でしますので、患者 が納得しなければ1時間半も続きます。足のコールの位置とか、手の位置はミリ単位で 移動、頭がかゆいとかノドがかゆいとか、目を拭いたり肩の位置、排尿、排便、布団の 調節、起床時から就寝時までテレビ、ビデオの調節など、どれも必要なものです。患者 は要求を100%聞いてほしいと望みます。療養が長期になると介護者も年をとり、疲労で 介護力がダウンするとお互いに険悪になり、介護の限度を超えれば介護放棄しかねませ ん。娘は結婚して、石垣島から介護に来てくれます。今日は留守になっていますので息 子が見ています。私は留守番がいなければ一歩も外に出られません。介護者のレスパイ トを確立させないと、患者のQOLを高めることは無理と思います。そのためにもヘル パーの吸引は大変必要です。 ○前田座長  最後に橋本参考人、よろしいですか。 ○橋本参考人  少し時間がかかりますがよろしくお願いします。昨年の署名活動の中から、1通、印 象的な手紙をボランティアが代読させていただきます。  「はじめまして。僕は、ビンセント療護園の高橋マサユキです。病名は筋ジストロフ ィで、今の状態は、昼間は電動車椅子に乗っていますが、夜寝るときは人工呼吸器を使 っています。平成11年に母が亡くなるまでは、在宅生活を続けていました。母は、僕の 介護が忙しく、毎年していた健康診断が1年抜けて、その結果、肺がんが肺全体に広が り、手遅れになってしまいました。僕は、在宅生活の大変さは人一倍分かるつもりです ので、皆様の趣旨に賛同し、署名に協力させていただきます。この署名は、ビンセント 療護園の利用者の皆さん、園長さん、職員さんの協力で集めました。それぞれの立場か らの主張は、正論だということは私にも理解できますが、患者や家族は生命がかかって いることなので、どうか生命を守る立場でご議論ください。少しニュアンスが違うので すが、以上です」 ○前田座長  引き続き、参考人の皆さんに対してのご質問をお願いしたいと思います。委員の先生 方、いかがでしょうか。 ○五阿弥委員  海野参考人にお伺いしたいのですが、今まで聞いていると介護職の方、あるいはヘル パーの方が実際には痰の吸引をなさっているケースは出てきていないわけですが、地域 によっては医師、看護師、介護職が協力し連携した体制をとって、実際にALSの患者 の痰の吸引をやっているということを私は聞いていますし、そういう事例はありますね 。調査をおまとめになったときに、実際にそういう事例の報告はいくつぐらいあったか 、あるいはそういう取組みをお聞きになっているのならご紹介いただけますでしょうか 。 ○海野参考人  具体的な、明確なデータという形で今、お手元の中には含まれていないのですが、A LS協会で平成12年9月に調査をした際にも、メインで吸引をしているのは当然家族、 1日の中で時間の割合をいちばん占めるのは家族が多い。その次が、法的にも危険性の 問題からも認められている看護師が吸引をしている。それ以外に、ホームヘルパーおよ び全身性障害者の介護人、私的に有料の介護人やボランティアの方に依頼している数字 を合わせると、ALS患者全体の中で、37%が看護師以外の方が実際に実施していると いう状況です。  ただし、それは個別のケースにより状況がいろいろに違うので、どれもがすべて一律 に同じ教育の下に、同じ地域の医療保健福祉の連携の下に行われているという状況では なく、かなりバラつきがあると思います。ただし、地域によっては今おっしゃっていた だいたように、医療を中心としながら、地域の保健福祉と連携して吸引を実施している ケースもあります。今後、皆さんの議論の中でも出てくると思うのですが、危険性とい うことについても、実際に患者が病院から呼吸器を着て退院する際の指導内容も、病院 によって指導の内容、質と量に差があるのも事実ですし、そこをどう統一して、在宅の 現場で安心、そして安全に療養していくことができるかという体制は、今後求められる 課題だと思っております。 ○前田座長  ほかに委員の先生方、ご質問はいかがでしょうか。 ○福永委員  自分の意見と多少質問なのですが、私自身はずっと在宅医療を含めて、ALSの患者 のケアを20年近く医師としてやってきたわけです。うちも神経難病を専門にしている病 院ですが、1つはやはり病院の事情で患者を外に出すというか、在宅にしてもらう。あ る意味では、患者にとっては家で生活することは、QOLの向上につながるということ もあって、非常にうまいシステムができさえすれば在宅で出来るということが言えるわ けです。  そういう意味では、加速度的に在宅で暮らすALSを含めた呼吸器を着けた患者が増 えているという現実があります。その現実の中で、参考人も言われましたように、特に 夜間の吸引で家族はもう疲労困憊している現実があるわけです。私は医師ですが、在宅 というのは、業務間のバリアというか、それをかなりなくしてくれるのです。患者のニ ーズに沿いながら、医師、看護師、介護者が、それがどこまでが業務ということで、は っきりと断り切れない事情もあったりして、かなりボーダーレスの介護になりつつある のが現実だと思います。  3点目は、やはりこの呼吸管理というのはかなりリスクが高い、圧倒的に高いのは事 実です。それは、ヘルパーがするから高いわけではなく、うちには27筋ジス病棟がある のですが、大体2,156人の中の1,000人が呼吸器を着けています。その吸引は、ほとんど 看護師がやっている、たまにドクターがやるぐらいですが、それでもかなりリスクは高 いし、私たちも悩んでいるところなのです。やはり、人間のやること、ヒューマンエラ ーというか、吸引する行為よりも、吸引して、それに熱心になるあまり、呼吸器のスイ ッチのオンを忘れたり、呼吸器が外れたり、まさに生命にかかわるようなことが頻繁に とはいわないまでも、かなり起こっている。もちろん、看護師の中にもピンキリがあり 、かなり注意深くできる人とできない人とがいます。  ですから、吸引を含めた呼吸管理は非常にリスクが高いもので、どの職種がしようと 、医師がしようと高いわけです。ただ、高いからといって、現実にそういう患者はいる 。先ほどのヘルパーの方々のまとめの意見について、ちょっと意外だったのは、現実に そういうことで困っている人がいる、ただリスクは高い。だから、積極的には手を出し たくないという雰囲気に、私には聞こえたのです。  やはり、医師の責任はあると思うのです。在宅ケアシステムというのは、いまネット ワークとケアシステムでALS患者のケアを担当していますが、非常にこれも温度差が あって、ALSにかかわりたくないという医師も現実に多い。医師、看護師、ヘルパー を含めた理想的な連携があってこそ、はじめて地域の医療というか、ケアは守られるわ けで、それがなかなかうまくできていない。それは医師の責任が非常に大きい。逆に言 うと、医師がかなり主体的にかかわって地域ケアシステムをやっていたら、うちのヘル パーの多くは吸引したいと言うのです。夜間に行って吸引をしたい、自分はしたいが、 やはりリスクがあったときに、いわゆる事業者から怒られる。役場に聞いたら、やはり 今のところ「するな」と。しかし現実にはしないといけないから、聞かないでくれ、知 らなければやっている人はいるわけで、聞かれると「それは駄目です」というのは当然 のこと、そういう話もある。ですから、これは医師の責任もかなりあるのではないかと いう気がします。  1点聞きたいのは、私はちょっと意外だったのですが、ヘルパーさんたちは、まとめ の中で、どちらかというとあまりしたくないというか、かかわりたくないという雰囲気 に私には聞こえたのですが、そうではなかったのでしょうか。 ○因参考人  決してしたくないというわけではありません。むしろ「出来ない」と言ったほうがい いのかなと思っています。全国を回ってみて、はっきり言うとヘルパーも経験年数が大 変短いヘルパーが多く、パートや登録のヘルパーが主流を占めているのです。そういう 中で、私たちは責任を持って「出来る」とは言えないというふうに思っています。 ○田中参考人  私ども日本介護福祉士会は、平成13年度から介護職の医療的行為についてアンケー ト調査をしてまいりました。昨年も1,200名近くの方々を対象に調査したのですが、その 中で訪問介護に従事している介護福祉士261名から回答を得ました。調査項目の中に、吸 引器による吸引ということについて、日常的に行っているか、あるいは緊急時かという 調査をしました。実際に、訪問介護の介護福祉士のうち、数的には大変少ないのですが 、261名のうち14名が日常的に行っているという回答を寄せています。この数を私どもと しては公開すべきかどうか、大変悩んだわけです。現状では、法的には違法とみなされ る行為なわけで、それを現実には行っている。そこに私ども介護福祉士の悩みがあるわ けです。患者の生命とか身体の安全といった観点から、大きな悩みが感じられるわけで す。  併せて、行うことの判断について、誰の指示を求めるかということを聞くと、緊急時 、日常的併せて、約23%の者が、医療職あるいは看護職の方々からの判断によって行う ということを言っています。ですから、いま福永先生がおっしゃいましたように、医師 の責任ということが現実にはあるのだろうと理解をしています。先ほど因参考人も言い ましたが、今の体制の中での大きな悩みということと、併せてきちんとした教育が整備 されていない中での、対患者との関係、あるいは対ドクター、対看護職の関係の中で行 われているということは大きな悩みです。私どもの立場の現状を、是非ご理解いただき たいと思います。 ○星委員  それぞれに聞きたいことがあります。1つは、看護協会の方、あるいは実際に看護を やられている方に聞きたいのは、制度上、つまり金銭的にペイしないから行かないとい う話と、人が足りないから行かないという、これは実は表裏の関係で、ペイすれば人も 集まってくるのかもしれませんが、そういう意見がありましたが、それについては、お 金を付けてくれれば私たちはどんどんやりますという発想でお考えなのかどうか。また 、ヘルパーさんたちの活動についてお伺いしたいのは、そういうふうに看護師たちが100 %やってくれるというのであれば、私たちは無理をしてやる必要はないとお考えなのか 、それでもなお私たちはやりたいとおっしゃるのか。家族の方にお伺いしたいのですが 、制度が充実して、もし看護師が100%してくれるということがあるならば、それは望ま しい姿なのか、あるいは身近なヘルパーさんのほうが、より自分たちは頼みやすいと考 えているのか。  また、家族が実際に行っているということに関して、それぞれの立場からどのように お考えになっているのか。法律論とか何とかではありません。家族が行っていることに ついて、どのように考え、理解をし、家族がやっていることについてはどのように、そ れぞれのお立場からお考えになられているのかお聞きしたいと思います。それぞれに1 点ずつと全体に1点、お答えいただきたい。 ○佐藤参考人  お金の問題で、私たちはお金が低いから行かないとかいうことではなく、やはり私た ち自身もそれなりに事業を運営、経営していかなければいけないという最低ラインで、 それなりの評価をしていただきたいということを言っているだけです。 ○上野参考人  例えば長時間ケアができる体制、またレスパイトの夜間体制というものをきちんとし ていただければ、私たちは支援していきたいと思っています。もう1つは、今も伺って いて感じたのですが、訪問看護ステーションの仕組みがよくお分かりでないのかなと思 いました。全体的に訪問看護ステーションがどういう動きをするのか、というところも PR不足なのかもしれませんが、そこら辺のご理解もいただければいいのではないかと 思いました。 ○石川参考人  私も同じ意見です。お金を付けないから行かないということでは決してありません。 持ち出しでも、今うちのステーションでは対応しています。ですが、診療報酬問題のと ころで、もう少し整理していただきたいというところがあります。これは、県の研究事 業費のところとも重なりますが、例えばキーステーションが協働で行っている場合の報 酬のあり方に問題があると思います。複数回の算定、1日2回までの算定は、カウント できますが、3回目の訪問に行った場合は、同じステーションが行かないとカウントで きない。秋田県ではそういうシステムになっています。ですから、複数のステーション がかかわる意味合いがないわけです。1カ所では行けないから2カ所、3カ所というこ とで、私たちは連携をとってやりたいと思っていますが、その辺のシステムにちょっと 問題があるので、その辺を考えていただきたいという意見です。  また、家族がやっていることについて、どのように理解しているのかということにつ いては、家族だから、全責任を持って対応していると思います。たとえどんなことが起 こったにしても、家族は全責任を負うことはできると思いますが、これが専門職の我々 の場合でしたら、決してそういうことは許されない。私もヘルパーと共同で、そういっ たトラブルに遭遇した経験もありますので、その辺の利用者への対応の仕方を目の当た りで見ています。ですから、この問題は非常に大きな問題だと思っています。 ○村田参考人  家族の方に関しては、いま石川参考人が言われたとおりだと私も思っています。また 、医療関係者の方がやられれば、ヘルパーはやらないのかと言われましたが、私どもは それは、医療関係者の方から整理をしていただきたいという意見を出させていただきま した。実際は、ヘルパーは24時間、365日動いていますが、訪問看護ステーションは月曜 から金曜日、土日休み、年末年始は休みで、訪問看護でやらないから訪問介護に行って くれという現実もあちこちで起こっています。この辺をまず整理していただかないと、 グレーゾーンもたくさんありますが、役割分担はしっかりしていただきたいということ です。やればやらないのかという問題ではなく、私どもはそういうところを整理してい ただいて、私どもの出番があれば私どもは参加させていただきたいと思っています。 ○田中参考人  私どもは実際に、訪問介護とか、介護をする場面の中で、さまざまな緊急時の対応を 求められるわけです。要するに、その実態を見たときに放置できないという現状があり ます。その意味で、介護福祉士の場合は緊急時の対応とか、一定の研修等も受けるわけ です。そういった現状の中で、365日の対応で介護従事者が行うということを申し上げて いるのではなく、やはり患者の方々の生命の質、あるいは生活の質というものを守るた めに、ある意味では連携が十分になされた上で、私ども介護福祉士がその役割を十分果 たせるだろうと考えています。 ○因参考人  本来は、訪問看護の使いやすい体制で行われるのが筋だろうと思っています。ただ、 私たちは介護の立場で日常生活を支援しているわけですので、常時、訪問看護師がいな い限りは、私どもが訪問しているときにもそういう必要性は出てくるかなと思っていま す。ですから、緊急時対応のできる、そういうことは目指していきたいと思っています 。 ○中垣参考人  看護師が100%看護に当たってもらえたら、私たちは安心して介護ができます。家族は 、病院から退院されるときに指導を受けると思います。家に帰って吸引なり何らかの医 療行為をしますが、何かが起こったとしても、家族には責任は問われないと思います。 しかし免許も何もない私たちが対応して何かが起これば、責任は私たちに回ってくると 思うのです。先ほど言われた役割分担ですが、私たちが吸引をすることになると、看護 師の立場はどうなるのでしょう。そういうことも考えられますので、できたら役割分担 をはっきりさせていただきたいと思います。 ○海野参考人  ご質問いただいた話の前提として、先ほど橋本からもありましたが、私たち患者・家 族の当事者として、いちばん前提に置いていただきたいのは、患者で呼吸器を着けたく ても呼吸器の装着を諦めざるを得ないという現実があるということ、自ら死を選ばなけ ればならないこの現実は、患者の尊厳を考えたときに、生存権を考えたときに、果たし てこれでいいのだろうか。家族も十分な看護と介護の質と量が確保できないために、中 には会社を辞めて介護に当たらなければならない、私もそうなのですが、そういう事実 もあります。そのような状況の中でどうあるべきかという体制を求めているのであって 、医療が100%であればどうするのかという質問に対しては、具体的に言えば、もし医療 が100%必要という状況が求められるのであれば、そもそもその状態を在宅に移行させる という判断が良いのかどうか、というまた別の議論が出てくるのではないかと思います 。  患者の家族の立場で吸引をどう思うかということについては、患者の家族である以上 、現行でき得る体制が、質と量が十分確保できていない中では、家族が担わなければな らない現実がありますので、それは望むと望まざるとにかかわらずそれを行っていると いう状況ですし、それよりも問題なのは、家族がいない方も現実にはいらっしゃいます 。家族がいれば何とかカバーできるかもしれませんが、家族がいない人はどうすればい いのか、その時点で自分で死を決めなければならないというのは、もう納得がいかない 現実であると思っています。 ○長岡参考人  24時間体制でナースが入ってくれるというのは、もちろんこれは望ましいことだとは 思いますが、どう考えても今すぐにはできるはずもなし。今うちに入っているステーシ ョンのナースも、主婦として10年ぐらいブランクがあって、そしてステーションに就職 したというナースなのですが、レベル的には非常に低く、出来ないのを、家族側が「う ちの場合にはこういうふうにしてもらいたいから、基本ではこう学校で習ったにしても 、患者サイドで物事を考えてもらって、患者の希望するようなケアをしてほしい」とい うことで、私も一生懸命にお話をして、向こうも受け入れてやってもらっているという 状態です。ナースは2人が交代できますが、ヘルパーは毎回同じヘルパーが来るわけで 、ヘルパーのほうが、いろいろなことに関して覚えが早いわけです。ちゃんと教えれば 、ヘルパーはきちんと出来ると思うのです。  うちは娘が小学校4年のときに在宅に入り、そのときから吸引をしていますが、今ま で事故はありません。かえってドクターが、カニューレ抜去のときにカフを抜かないで 大出血などということがありましたが、私たちが吸引してそういう事故というのは1回 もありませんので、そんなに吸引が難しくて大変なのだという視点から、物事を考えて ほしくないと思います。 ○星委員  私の質問の趣旨をそれぞれ理解されていないようで、大変申しわけなかったのですが 、制度上の問題があるのだというお話が、それぞれの立場からあったわけです。つまり 、訪問看護というのが、もっと本当にニーズに応える形で提供されるのであれば、それ に越したことはない、というように私には聞こえたので、そうですかということを聞き たかっただけの話です。それが現実の、今の制度上、十分な制度の理解がないというこ とも含めて、活用が十分でないことも私は百も承知の上で、しかし本来の姿とすればヘ ルパーさんたちにお願いをするのが最終手段なのか、あくまでもそれは緊急避難的な行 動なのか。そこで聞きたかったのは、家族が行っている行為に関しては、緊急避難と考 えるのか、あるいはそれは緊急避難ではなく、家族は経常的に行って差し支えない、あ るいはそれが当然だと考えるのかということを聞きたかったのです。 ○伊藤委員  ただ今の星委員のご質問にも密接に関係することですが、ことこのALS等に関して は、コミュニケーションがよくとれないと質の高いケアは出来ないということで、今ま で馴染みの関係、信頼関係と称していたことを、きっちりこの検討会で定義しなければ ならないというふうに課題を受け止めているところです。そういった立場で質問するの ですが、先ほど看護の立場からは、ある意味で専門看護師認定というようなお考えがあ ったかと思いますが、逆に利用者の立場から、指名制というか、こういった方に是非お 願いしたいというような声があった場合に、対応をどう考えるか。これは、法的あるい はシステム上の検討がなされて、馴染みの関係というのが極めてクリアになれば、指名 を受けてというのが可能かどうか。同じくヘルパーの方についても、馴染みの関係とい うものをこの会で整備して、それによって指名といったことを受けていただけるのかど うか、ということをお尋ねしたいと思います。  もう1つは、制度上の問題として、皆様のご説明を伺っていて、肺理学療法という呼 吸器リハの領域にかかわるもう1つの職種がありますが、PTの方も基本的には吸引は できないわけです。そういったリハビリテーションの扱いということについて、どうい うふうにお考えになるか。これはとても重要な問題かと考えるのですが、患者会の方も 含めてお答えいただければと存じます。 ○上野参考人  指名制というのは、非常に難しいといいますか、数少ない人員で行きますので、むし ろALSの利用者は長い在宅生活ですので、そこに看護者側が沿うという形で、余程相 性が悪い場合はその方は外しますが、そうでない方々はローテーションを組みながらい くというのが望ましいのではないか。長続きさせるためには、そのほうがいいのかなと いう感じを私自身は持っています。  例えば、専門的なというよりも、その方にマイナースみたいな形の人が、もしステー ションの中で確保できれば、それはそれでいいのかもしれませんが、ただその人だけが 知っていて、他の人が知らないというのは、ステーションとしては困りますので、ある 程度同じレベルの提供ができるようなシステムのほうが、ステーションとしては良いの ではないかと私自身は思います。  呼吸器リハは、私の所も看護師が行う呼吸療法等を、もちろんPTに指導は受けるの ですが、実際は訪問看護師が行っています。訪問看護師では不十分な場合は、必ずリハ ビリスタッフが中におりますので、リハビリから指導を受けながらやっています。きち んとした呼吸リハと、排痰療法をやっていくことによって、本当に吸引の回数が減ると いうのが実状ですので、そういうことでは非常に大事なことだろうと思っています。多 くのステーションが、PT等を活用しながら呼吸療法を学んでいくべきだと思っていま す。 ○因参考人  吸引は、現状では出来ないということですが、いずれ馴染みの関係でやってもいいか ということなのですが、仮に馴染みの関係であったとしても、利用者のリスクを回避す るという意味では、ただ単に馴染みの関係だけでいいとは考えておりません。意見書の 中に、例えば訪問看護が足りないだとか、いろいろな状況があってやるということにな れば、それは介護福祉士であって、現場経験を有する者というぐらい慎重に考えたほう が、利用者の生活の質を向上するということになる。また、それが私どもの職種として の責任であると考えています。 ○海野参考人  まず最初に指名制についてですが、特にALSなどについて言えば、進行性の疾患で すので、経時での変化を随時1人の方が十分フォローできるという意味では、こちらか らも安心できる方にお願いできるという意味では非常に価値があると思っていますし、 それは医療の看護だけではなく、福祉の介護についても同様のことが言えると思ってい ます。ですので、是非これは今後も要望を、お願いできればと思っている点が1つです 。呼吸リハについてですが、やはり呼吸筋障害が出てくる疾患ですので、非常に重要な リハビリテーションだと思っています。ただし、全国で呼吸リハをしてくださる方は非 常に少ないのが現状ですし、いかにマンパワーを充当できるか、またその質と量をどう 確保できるかということがキーになると思っています。ただし、そこでリハの先生が、 排痰ケアをやって、痰が出てきたときに吸引できなければ、そこは一体誰がどうすれば いいのかという現場での問題が出てきますので、同様に今回のヘルパーおよび介護士の 方の吸引問題につながってくる大事なテーマだと思っています。 ○星委員  いまのに関連して、海野さん、長岡さんにお伺いしたいのですが、馴染みの関係とい うお話をしました。資格を持っていても、あまり質の高くないのもいるし、資格がなく てもしっかり覚えてやってくれる人もいて、頭の痛い話ですが、今おっしゃったことの 延長線上には、つまり資格を持っているということで、法的には出来るというけれども 、家族としては資格を持っているだけでは受け入れ難い、ということが多分あるのだろ うし、同じようにヘルパーが何らかの要件を満たしたといって、「私は満たしています 」とバッジを付けて来ても、それが受け入れられるかどうかですね。つまり、看護師が やるのは、法律的にそうだけれど、ヘルパーたちが何らかの形で、例えばそれに似たよ うな制度があって「勉強してきました」と言って、「今日から私は吸引ができます」と 言って来たときに、吸引を任せることができるのか。あるいは、馴染みの関係という話 がありましたが、やはりそれは自分たちのことを理解してくれているということが前提 で、資格の有無というのは、それを支援する1つの材料でしかないと考えているのか、 受け手のほうではどういうふうにお考えなのかを教えてください。 ○長岡参考人  うちも何しろ人数が少ないものですから。ドクターが亡くなって、新しいドクターに1 996年に代わり、ボランティアで最初のころは看護師が入っていたのもなくなり、入浴サ ービスが隔週1回だったのが、ステーションが入らないために2回にしたりとか、いろ いろ経緯があり、ナースステーションのナースも、やっと慣れてきたという状態なので す。ヘルパーも半年で代わるということもあるのです。こちらとしては、やっと覚えて 、私が口を出さなくてもいいという状態になってコロッと代わってしまう。また新しい ヘルパーとかナースが来たときに1からやらなければいけないということがあり、これ は利用する側にとっては非常に負担になります。ですから、同じ方に来ていただけるの がいちばん良いと思います。患者のベッドサイドに行ったときは、こういうことを注意 してくださいということをすべて理解してやってもらえれば、やはりその場を離れるこ とができます。それがないと、ヘルパーが来てもナースが来ても、家族は同じ部屋にい なければいけないわけで、それがずっと続くのは負担です。 ○星委員  要は、個別的に、つまり、長岡さんの家の患者の世話をする、いろいろなことをする ことが出来るようになるというのは、何か資格を持っているからすなわち出来るという 理解ではない。特別な関係がそこにあって、周りにいる人が「この人なら大丈夫だ」と いうことで初めて成立する関係だ、というふうに認識すればいいということですね。 ○長岡参考人  はい、そうです。 ○前田座長  時間がだいぶ詰まってきたのですが、委員の先生方で何かご質問がございましたらど うぞ。 ○山崎委員  質問ではありませんが、先ほどの海野参考人がお示しくださいましたように、本当に 在宅医療の仕組みが、どの角度から切っても患者の自己責任、自己負担というところで まだ存在しているということを、つぶさなデータからお示しいただいて、私も実感する ところです。どんなに今の制度が頑張っても、24時間のうちの20%ぐらいしかカバーし ていない。家族負担が8割もある。具体的な行為になると、本当に24時間、365日、在宅 の仕組みがこういう重症な方たちが不本意の人工呼吸器装着を断念せざるを得ないよう な状態で病院から追われている。はっきり今日は、追われているという感じを私は持ち ましたが、本当にこれはもうヘルパーに吸引をなどという問題だけではなく、もっとマ クロにいろいろな課題をこの検討会は投げかけられているなという感じがします。  橋本さんが、それぞれの立場を超えてとおっしゃいましたが、それぞれの立場で正論 を言っているわけでは多分ないのだろう。私自身もそうですし、ご家族の立場もありま すが、やはり患者さん自身がどういうふうにご自分の状態の中で、精一杯生きていらっ しゃる、これからも前向きに生きたいという、そのことを私たちがどのように支えられ るか。単に生命を守るということだけではなく、やはり質の高い生活をどのように私た ちが、在宅でサポートできるか考えていきたいと思います。しかし、それはこの検討会 だけでは荷が重いだろうという感じもしております。これだけの署名をお集めになって 、行政をここまで動かした患者団体の皆様には、大変敬意を払うものです。  これは厚労省への請求ですが、海野さんがお示しになられたように、この検討会は残 念ながらALSに限定して始まっていますし、在宅療養支援ということに限定して始ま りましたので、とりあえずこの検討会は、そのことを任務でとしてやらなければいけな いだろう。そういう確認を前回したわけですが、1回目の終わりにも資料請求をしまし たが、例えば気管切開をして人工呼吸器を装着している他の疾患、小児の悪性腫瘍、交 通事故の後遺症、脳の変性疾患、脳梗塞、そういった同等の状態に置かれている高齢者 とか障害者・児の方たちの具体的な支援策にどういうメニューがあるのか、少し詳しい 資料をお示しいただきたい。  また、具体的に金銭の負担といったことも含めて、他のALS患者も含めて施策を比 較するとどういうことになっているのか。通学の問題も併せて、次回は是非、トータル に在宅支援策ということで、資料を請求したいと思います。この検討会は、とりあえず ALS患者の在宅療療支援ということの切り口で検討を始めるということでしたが、限 定せず、吸引を必要とする人すべて、在宅に限定せず、24時間というご要望もあります ので、そういった点も少し議論をしてみる必要があるかと思います。その意味で、AL S患者グループと、そうではないグループの支援策に、どれほどの差異があるのか、そ の辺の資料を次回お示しいただきたいと思います。  訪問看護の仕組みについては、今日3人の方がヒアリングに答えてくれたわけですが 、改めて現行制度の使い勝手の悪さみたいなところを考えてみました。先ほどマイナー スというような伊藤委員からのご質問もありましたが、やはりそこで雇用ができれば、 マイナースがいてもいいのだろうという意見を私は持っています。長岡さんのお宅のマ イナース、専属で24時間はべらせましょうと。そういうナースが必要ということであれ ば、私たちは草の根分けても、能力と言われると困ってしまうところはありますが、や はり探したいと思います。でも、それは「長岡さんが賃金を払ってくれますか」という 話ですので、どこかから何とかしなければいけない。星先生は、ボランティアでもやれ というご要望かもしれませんが、やはり皆、3食ご飯を食べますので、マイナースで24 時間、そういう仕組みは外国にもあり、それはちゃんと行政が手当てをしていますので 、医療専門職外のヘルパーに吸引をなどという議論は起きないわけです。起きたとして も、それは在宅医療を担う在宅ケアの事業所の看護職の下の職種という位置づけですの で、日本とは制度が違います。  自分の経験から言いましても、大変難しい。吸引1つではなく、先ほどコミュニケー ションという話もありましたが、頭の位置1mm動かすのに何時間もかかる、本当にそう だろうと思います。その位置が確定しないと、何回もコールされるということですので 、ケアは難しい。ですが、ケアが難しいのはALSの方だけではなく、そういう方はた くさんいらっしゃいますので、もっと相対的に、国はしっかり考えなければいけない。  秋田県からも、行政施策は予算が縮減の一途だという話があり、260日に介護人も削ら れているという話もありましたが、それでいいのかということを、こちらの事務方にお 投げしたいと思います。マンパワーを探せと言われれば、私どもは職能団体で120万おり ますので、それはニーズにお応えしたいと思っているところです。 ○川村委員  私は、昭和50年に在宅で、人工呼吸器のALSの方のサービスをしました。それは非 常に不十分でした。そのときには、このように多くの方がそれを望まれたり、またはそ の状態に置かれるということは全く予想もしておりませんでした。むしろ、その方のご 希望に沿って、現状で出来得る限り私たちはやるということでやったわけです。それ以 来、在宅医療というのは安上がりの医療ではないと思っています。病院に入院している 方と同じような基本的なサービスを受けるべきだと考えて、それについてのデータを一 生懸命に出してきたつもりです。ですから今、皆さん方がおっしゃったことは当然だと 思っています。  もう1つ、この場というのはどういうことかというと、やはりそれぞれ個人の努力、 1つの施設の努力を超えているところの話をしているのではないかと思います。少なく とも、ここは国としての設定された討論の場ですので、やはり個人的な解決、ボランテ ィアということを求めるのではなく、制度として少しでも解決を図っていけるような方 向性を是非貫いてほしいと希望しています。 ○五阿弥委員  訪問看護の関係者の方にお伺いしたいのですが、基本的には在宅における医療資源が 極めて貧弱であるというのが根本にあるわけで、この医療資源を増やしていく、訪問看 護ステーションをもっと増やしていくということは絶対に必要なのですが、しかし多分 いくら増やしても、誰が考えても24時間のケアというのは無理だと思うのです。そうす ると、やはり介護と看護と医療が三位一体で、現場で支えざるを得ない。そうした中で 、痰の吸引ということに限ると、ヘルパーにやらせては駄目だということがトーンとし てありますが、絶対にすべての場合に駄目なのか、それとも何らかの条件設定がされた らOKなのか。  例えば、ある医師会等が音頭をとって、1つのそういうスタイルを作っている所もあ りますが、どういう場合だったら、例えば訪問看護の方たちも納得でき得る介護職の痰 の吸引というのはあり得るのかどうか。それとも全面的にそれは絶対に駄目なのか、お 伺いしたいと思います。 ○佐藤参考人  私の考えですが、いま看護職全体がそう思っているかどうかは別にして、原則として 、こういう医療行為は、生命の安全を守る、危険性が伴うということを考えれば、やは り看護職がきちんと守って、患者の生命、家族の負担なども軽減していかなければいけ ないという立場を持っています。ですから、どういう条件があったらこれが出来るのか とか、そういうことに対するお答えは、いま現在は私は持っていません。これは当然、 看護職がなすべき医療行為ですから、看護職がやるべきだと思っています。 ○伊藤委員  これは事務局のほうにもご回答いただきたいのですが、「医療の特区提案」という内 容の中での厚労省の回答が出されていて、その中に「ホームヘルパー等によるALS患 者等の痰の吸引」という項目があります。これは『医事新報』の84頁、内閣府のぺージ ですと44頁以下に示されていますが、実はそこで「ALS患者に対するホームヘルパー による痰の吸引行為の可否については、看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関 する分科会(まさにこの会)において検討し、年度末までに結論を得ることとしている 」というのが、内閣府に対する厚労省の回答ですので、やはりこの委員会としての「ヘ ルパー等」という問題について、整合性を持って対応しなければならないのではないか と私は理解したのです。この委員会はそれに対する回答を求められていると思えるので すが、その点はどうなのかということを、もう一度だけ確認させていただければと思い ます。 ○医事課長  今お読みいただいたようなことで、この検討会としてその問題について、どのように 答えを出すかということについて、私どもとしてはお聞かせいただきたいと思っていま す。 ○前田座長  これで閉じたいと思うのですが、私も家族として吸引をやっていたのです。そのとき の実感として、医者はめったに来てくれませんので、やはり週2回来てくれる看護婦さ んが非常に頼りでした。偽らざるところを言えば、家族しかやれないはずの吸引をヘル パーにやっていただいていました。ただ、うちはALSではなくて脳梗塞で20年間寝て いたわけですが、そのときの気持としては、なるべく看護師さん、介護士さんにはたく さん来てほしかったですね。ただ、お金の問題とかいろいろなことがある。ヘルパーさ んにもうまい人はいるし、気心の通じている人もいるし、今日の話は全くよく分かりま す。それぞれのお立場で、どうしたら生命をいちばん大事にできるかという発言だった と思います。  ここから先は、制度としてどうしていくかという問題で、全部が全部、細かいところ まできれいにというのは難しいかもしれませんが、緊急避難として何ができるかという 問題ではなく、また未来のユートピアでどうなるではなくて、今の日本で現に困ってい る家族に何が出来るかということを、リアリティのある形で一歩前に進められたらと思 っています。医療行為は、基本は非常に危険で、だから看護師がやらなくてはいけない 、それは生命を大事にするというところから出ている発想だと思います。ただ、片一方 で、来てくれないときにどうしたらいいんだということ、私みたいな下手な者がやるよ り、慣れているヘルパーのほうが全然うまい。ただ、これは違法ですから黙っていてく ださいと、そういう世界で悩んでいることも事実です。  それをどう調和させるか。完全な調和はないと思うのですが、今日のお話でも、それ で結論的なことが出せるようなことではないのです。各お立場の意見は非常によく分か りました。もちろん質問も足りませんし、議論も足りないと思うのですが、次回以降、 さらに深めて、短い時間の中で少しでも前向きになるような議論を進めていきたいと思 います。私の不手際で時間が延びてしまいましたが、今日はこれで閉じさせていただき たいと思います。 ○医事課長  次回は2月19日、水曜日の午前10時から、経済産業省の別館944号会議室で開催をした いと思います。よろしくお願いいたします。                                    −了−                            照会先                                   厚生労働省医政局医事課                           課長補佐 三浦(内2564)                           (代表)  03-5253-1111