03/02/03 第1回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会議事録       第1回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会                         日時 平成15年2月3日(月)                            17:00〜                         場所 厚生労働省省議室 9階 ○田村看護課長  ただいまから、「第1回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」 を開催いたします。委員の皆様には大変ご多忙のところを本分科会にお集まりいただき 、まことにありがとうございます。医事課長の中島が所用で少し遅れていますので、こ のあとしばらく進行役を務めます、看護課長の田村でございます。どうぞよろしくお願 いいたします。  議事に入る前に、篠崎医政局長よりご挨拶をいただきます。局長、よろしくお願いい たします。 ○医政局長  医政局長の篠崎でございます。委員の皆様方におかれましてはご多忙の中、またこの ような遅い時刻にお集まりいただき、まことにありがとうございました。  今回、この会議を発足するに当たり、経緯をご紹介させていただきたいと思います。 先の第155回臨時国会において、在宅のALS患者に対する痰の吸引行為について、現在 は家族の方が行っているという現状がありますが、負担が非常に重いということであり ます。いま介護保険制度がスタートし、ヘルパーの方々に認めてもらえないかというよ うな趣旨の質問が国会でありました。それに対して坂口厚生労働大臣から、関係者の皆 さんとよく話し合いをして、「そのような検討をする時期に来ているのではないかと思 う」というご答弁があったというのが1つです。  それと前後して、日本ALS協会のほうからも協会としてのご要望が来ております。 ALSなど、痰の吸引を必要とする患者に、医師の指導を受けたヘルパーなどの介護者 が日常生活の場で吸引を行うことを認めてほしいという要望書をいただきました。これ に対しても坂口大臣から、検討の場を設けるということと、時期ははっきりは申されま せんでした。「桜の花の咲くころ」という表現をされていましたけれども、そのころま でには結論を得るようにしたいというご答弁がありました。そのような背景を受けての ものであります。  現在、医療制度改革が進んでいます。医政局だけで約40ほどの検討会が既にあるわけ で、なるべく短時間でこういうものをしようということであります。既に存在していま す「新たな看護のあり方に関する検討会」の中の分科会という形にして、この会をスタ ートいたしました。特に、今回の問題については医学的、また法律的な面での整理をお 願いしたいと考えています。  時間が非常に差し迫っていますし、また大変お忙しい先生でございます。それから、 いままで長い間の考え方がありました。そこをどう乗り切るかということで、是非、忌 憚のないご意見を賜りたいと考えています。よろしくお願いいたします。 ○田村看護課長  ありがとうございました。初めに、本分科会の委員の皆様を50音順にご紹介させてい ただきたいと思います。東北大学大学院医学研究科講師、伊藤道哉委員です。東京都立 保健科学大学保健科学部看護学科教授、川村佐和子委員です。株式会社読売新聞社論説 委員、五阿弥宏安委員です。国学院大学法学部教授および学長特別補佐、平林勝政委員 です。国立療養所南九州病院長、福永秀敏委員です。社団法人日本医師会常任理事、星 北斗委員です。東京都立大学法学部教授、前田雅英委員です。社団法人日本看護協会常 任理事、山崎摩耶委員です。  次に事務局をご紹介いたします。総務課長の栄畑、医事課長の中島はいま所用で外し ています。また医政局企画官、土生ものちほど参加すると思います。医事課の三浦補佐 、看護課の勝又補佐です。  本検討会の座長の選任についてですが、事務局から推薦させていただきたいと思いま す。前田委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。                 (異議なし) ○田村看護課長  それでは前田委員には席をお移りいただき、今後の議事進行等をお願いしたいと思い ます。よろしくお願いいたします。 ○前田座長  座ったままでご挨拶させていただきます。私は法律の専門です、医療に関することも 若干勉強しています。  今回の話を伺って、私事になるのですが、身内に在宅の患者をずっと抱えており、吸 引のことを若干やっていました。20年間寝たきりの者がおりました。そのような話を医 事課でしたことがあったこともあり、法律屋であり、そういうことも少しはわかってい るのではないかということでご選任いただいた面があろうかと思います。  ただ、もちろん全くの素人とお考えいただいてよろしいかと思います。いろいろ教え ていただかないと、誤った判断をするかもしれません。是非、その点をお含みの上、ご 協力をいただきたいと思います。  非常に重要な問題だと思います。それぞれ、いろいろご議論や立場はあろうかと思い ます。忌憚のないところで議論して、一歩でも前に進んで、良い結果が得られる委員会 になればと思っています。何とぞ、よろしくご協力のほどお願いいたします。  議事に入る前に、事務局から本検討会の公開についてご説明いただきたいと思います 。 ○田村看護課長  本検討会について、審議会や検討会の公開ということが数年前から行われるようにな ってまいりました。この分科会についても、会議および議事録、さらに資料も含め公開 とさせていただきたく、ご了承をお願いしたいと思います。今日も既に、大勢の方々に ご参加いただいていますが、今後のこのような形で進めさせていただきたいと思います 。 ○前田座長  ちょっと確認させていただくと、会自体を公開するというのはもう当然前提になって いるわけです。あと、議事録その他もかなり詳しいものを公開してということでしょう か。 ○田村看護課長  はい。「新たな看護」の検討会のほうもそうですが、すべてご発言されたものをお目 通しいただいたのちに、インターネット上で公開させていただいているということです ので、同様にさせていただきたいと思います。 ○前田座長  委員の先生方、それでよろしいでしょうか。厚生労働省のほかの会でもそのようにな っていると思います。                 (了承) ○前田座長  それでは、いま看護課長からご説明のあった線で、公開の委員会として進めたいと思 います。  議事に入りたいと思います。まず、検討会の議事および資料等のご説明を事務局から お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○三浦補佐  医事課の課長補佐、三浦です。よろしくお願いいたします。  お手元にお配りしている資料、「目次」から始まるものが、これからご説明申し上げ たいと思っている資料です。大きく資料1、資料2と分かれます。お手元に届いていな いものがありましたらお教えください。それぞれホチキスで止まっていますので、順次 ご説明をしていきたいと思います。  まず今回の趣旨、ないしはこの資料の目的について簡単にご説明申し上げます。この 問題、ALSの患者の方への痰の吸引という行為について、本日の新聞などにも載って おりましたが、いろいろな意見が寄せられているところです。しかし、そもそも初心に 返りALSというのはいかなる疾患なのか、患者がどのような状況に置かれているのか 、あるいは痰の吸引というのはどのような行為なのかという点の共通認識を作りたいと 思い、作成したのがこちらの資料であります。福永先生や川村先生におかれましては、 釈迦に説法の部分もあるかと思います。むしろ、誤り等がありましたらご指摘をお願い できればと思います。  それではご説明させていただきます。まず、ALSというこの疾患についてでありま す。「筋萎縮性側索硬化症」と呼ばれる疾患ですが、「疾患の概要」というところをご 覧ください。「脳から脊髄まで信号を伝える上位運動ニューロンと、それを受けて脊髄 から信号を発し、筋肉を収縮させる下位運動ニューロンが障害をきたす原因不明の進行 性疾患である」ということであります。その結果、徐々に筋萎縮が進み、歩行困難や言 語障害、嚥下障害、呼吸障害などを引き起こす疾患であります。  この疾患についての治療方法ですが、根本的な治療方法については現時点では未確立 ということであります。進行を遅らせる薬剤、リルゾールというものですが、こちらが 保険適用になったというのが最近の動きです。  病状の進行については比較的急速であり、個々の症状に応じて、日常生活を援助する 各種の機具・補助具を用いることが必要となってきます。また、合わせてリハビリテー ションが有効であると理解しています。  患者数は「特定疾患治療研究」という、厚生労働省の行っている事業があります。A LS患者の方については公費負担医療、医療保険が使われ、残りの自己負担が通常2割 、ないしはこの4月から3割になるというものですが、その自己負担分について援助を させていただくという制度があります。こちらの適用の件数で患者数をある程度推測が できるかと思い、この数字を載せています。平成13年度末現在、ほぼ1年前の数字です が、全国で6,180名というのが件数であります。  合わせて、その内訳については細かい資料がなかったので、過去1度行われた調査研 究の中の数字を使っています。2つ目の○をご覧ください。平成9年度に「ALS患者 などの療養環境整備に関する研究」というものが行われました。その中で在宅の患者が 大体51.6%、入院患者が48.4%という統計が出ておりました。また、在宅の重症患者と いうのは、ALS患者全体の約12.7%となっています。この率だけを使い、6,180という 先ほどの数字と掛け合わせた機械的な試算ですが、いま大体800名ほどがこのような状況 にあるのではないか。在宅の重症患者、人工呼吸器を付けているか付けていないかとい う区別はしておりませんが、800名程度が療養生活を送っていらっしゃると推計できるか と思います。  分布ですが、際立った地域偏在はないという結果も出ています。また、ALS患者の うち、約6割の方が重症の認定を受けていらっしゃるという点も客観的な数字でありま す。  補足すると、重症というのは先ほど公費負担医療、保険からの残り分、自己負担分を 負担するという制度があると申し上げました。全額免除と申しましょうか、全額を公費 負担して実施する患者と一部自己負担が発生する患者、現在2つに分かれています。全 額公費負担をするという患者が6割程度というものです。以上です。  2頁では、ALSの症状が進行したときの対応例をいくつかまとめています。まず1 つ目、呼吸器障害に対する対応として気管切開をする、あるいは人工呼吸器を装着する という対応をすることとなります。  発症から気管切開までの期間と割合を下にまとめています。球麻痺初発群では24カ月 以内で約6割、上肢では大体2年から3年で半分ぐらい、下肢で2年から3年で半分ぐ らいというものです。それを折れ線グラフで表したものがこちらです。  合わせて運動障害、嚥下障害なども発生してきます。運動障害に対しては衣服、自助 具などの補助具を活用する。あるいは、関節可動域の他動運動などを行い、進行を遅ら せるといったことを対応として行うことになります。嚥下障害に対しては経管栄養、食 事内の工夫などを行う、構音障害に対してはコミュニケーションの工夫などを行うこと が一般的な対応となっています。  次頁は1つの例ですが、ALS患者がどのような病状経過をしているかを文献から拾 ったものです。上肢の筋萎縮、筋力低下で発症した37歳の方の例です。発症1年目に呂 律が回りにくくなるといった状態となり、発症3年後に食事に時間がかかる、痰の喀出 が困難になる。そして、7年後に気管切開、人工呼吸療法を開始したというものです。  下のグラフのようなものに記載しています。37歳で発症され、最初は上肢、指先に力 が入らない。あるいは下肢、走ると足がもつれるといった症状から始まり、1年たった ころにボタンをはめにくい、呂律が回りにくいといった症状が出始めます。  2年目に入り、入院をしばらくされています。その際、挙上しにくいといった上肢の 障害、歩行障害などが始まっています。だんだん重篤化が進んでいる、という経過が見 て取れるかなと思います。この資料は以上です。  今度はALS患者の1日の生活時間の例です。患者によって大きな差があることは重 々承知で、1つの例として挙げたものであります。人工呼吸器を装着歴4年、男性の患 者です。食事は経管栄養、排尿は尿器を使用していらっしゃるという例です。痰の吸引 の回数については、朝の5時から深夜24時までの間に16回となっています。これに加え て夜間のケアによる介護者の睡眠中断、すなわち夜間に吸引が必要とされるという機会 ですが、これが2回程度です。すなわち1日の間に18回程度、痰の吸引が必要となって いる方の例です。  介護者は主には奥様と申しましょうか、パートナーの方がされているようです。朝起 きて、直接的な介助ではひげそり、歯磨き、朝食などを行う。あるいは環境整備、イン シュリンの注射などを行っていくといったところから、朝吸引器の掃除、お昼前にタッ ピングをしたりといったことをする。平行して、奥様のほうの日常生活などもしている という意味で、介護の負担は非常に重いということも併せて見て取れるかなと思います 。  いくつかの工夫により、ALS患者の1日の吸引回数が多少推移をしてきている方の 例をご紹介したいと思います。いちばん下のところにレーダーチャートグラフと申しま すか、株式チャートのようなグラフがあると思います。1日の平均の吸引回数が折れ線 グラフになっています。一定の幅を持ちながら、時間の経過とともに回数が減っている 。1984年の例で、1日で大体30回弱必要だったものがだんだんと減ってきている。18年 程度経過したころには10.5回という平均値になっている方の例です。  こちらは人工呼吸器を装着されて13年間たった男性の方です。9年間の療養生活の中 で、吸引回数が28.6回から10回まで減少してきました。この方に関して、吸引回数に関 係が見られた要因がいくつかあります。ご紹介すると、まず総回数ないし夜間の回数は 減らす方向に作用したと思われるのですが、一時的には痰の吸引の回数が増加するとい った要因が2つほど考えられます。1つ目には看護ケア、清拭、洗髪、手浴、足浴、理 学的訓練などを行うと運動を行うことになりますので、看護ケアにより、残量する痰が ケア直後短時間に噴き出し、結果的には1日の吸引回数が減少していく。あるいは、気 管カニューレの交換についても同様に、短期的には吸引回数が増加し、結果的に総回数 が減っていくといった方向に作用するものであります。  また、吸引回数を減少させる方向にのみ作用すると考えられているのが呼吸器回路の 処理方法、あるいは吸引器の性能の向上などにより、吸引回数を多少減らす努力ができ るという論文がご紹介できるかと思います。下の二重線をご覧いただければと思うので すが、計画的に看護ケアや気管カニューレの交換を行い、気道浄化を効果的に行うこと や適切な環境を整備することにより、夜間の吸引回数は減少させることができる。した がって、夜間の本人、あるいは家族の睡眠の中断の多少の減少は可能になるのではない かという論文のご紹介です。  6頁と7頁は在宅の患者のサービス利用度合というか、利用状況の例です。1週間に 分けていますけれども、月曜日から日曜日までの間、どのようなサービスをご利用され ているか。これは主としてデイタイムであります。例えばサービスの例、1で申し上げ ると、月曜日に3度訪問看護を受けていらっしゃる。併せて月曜日、Iのようなところ に(1)と書いてあります。こちらは介護保険による身体介護サービスヘルパーに来ていた だいているというものです。  同じ月曜日に(2)というところがあります。介護保険による家事援助のヘルパーに来て いただき、家事援助サービスを受けていらっしゃるものです。これを見ていくと、看護 の面で申し上げると月曜日に3回、火曜日に3回、水曜日に1回、木曜日には往診が1 回に加えての訪問看護3回となっています。それから、金曜日に通常の訪問看護に加え 、専門病院による訪問看護というものが行われています。そして土曜日に看護が1回、 日曜日にはサービスをご利用されていないという例です。  もちろん病状、あるいは介護の体制なども異なってまいります。家族の方がどれぐら い介護されているかといったことも作用するので、一概に比較はできません。サービス の例(2)で申し上げると、この方は月曜日に1度訪問看護を受けていらっしゃいます。合 わせて、介護保険による身体介護サービスを朝方受け、残りの時間では「全身性障害者 介護人派遣サービス」といったものを受けていらっしゃいます。  火曜日には、これは東京都の制度ですが機器貸与事業というものをやっています。そ れに合わせて訪問看護師が訪問する、「機器貸与看護」と言っているわけですが、この 看護で実質的に訪問看護の代替をしつつ、訪問リハも併せて受けるといった形を取って いらっしゃるようです。  水曜日には訪問リハのみです。木曜日には看護のサービスを1回受け、介護保険によ る身体介護サービスと介護人派遣サービスの組み合わせをご利用されています。金曜日 には専門病院の訪問看護と一般の訪問看護、全身性障害者の介護人派遣サービスという ものを受けていらっしゃいます。土曜日には医療サービスは受けておらずに福祉サービ スのみ、日曜日にはサービスを受けていらっしゃらない。実際には、このような感じで サービスを受けていらっしゃるということかと思います。これは1つのご紹介でありま す。  とりあえず疾患、あるいは痰の吸引の頻度のようなものは多少ご紹介できたかと思う のですが、福祉にしても医療にしても、どのような施策があるかということについて多 少整理したものがこちらの資料です。在宅ALS患者という切り口で、私ども厚生労働 省で行っている事業を再整理したものがこちらです。まず、医療費の自己負担軽減に関 する事業、☆1が付いています。「難病対策要綱」という、私どもの持っています要綱 があります。これに基づいて行っている事業です。  2つほどご紹介できるかと思います。1つには特定疾患治療研究事業です。こちらは 先ほど多少申し上げた医療費、訪問看護医療費を含みます。その自己負担分の全部、あ るいは一部について公費負担をするという事業です。  2つ目は「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」です。人工呼吸 器を使用しながら在宅で療養しているALSの患者に対し、訪問看護ステーションなど の医療機関により行われる訪問看護について、診療報酬で定められた回数を超えた部分 になります。ですから、診療報酬に加えてということになります。その部分に関する費 用を訪問看護実施者、実際にはステーションなどということになるでしょうか、こちら に対して交付するという事業です。  2つ目に、「福祉関連施策」というように括れるかと思います。5つほど挙げていま す。1つ目に「ホームヘルプサービス」です。日常生活を営むのに支障がある患者の家 庭を訪問し、食事、洗濯など身の回りの世話を行う。あるいはショートステイ、短期入 所であります。介護を行う家族などが疾病などを理由に、一時的に居宅において介護が できなかった場合に障害者の施設に保護する。あるいはデイサービス、これは日帰りの 福祉サービスであります。入浴サービス、給食サービスなども行うことがあります。  「日常生活用具の給付等事業」というものがあります。先ほど申し上げたとおり、障 害に対して用具により、その機能を補っていくという対策・対応が一般的に行われます ので、そのような機械機具を給付、貸与するといった事業もしています。  加えて「難病患者等ホームヘルプ研修事業」、こちらはホームヘルパーの研修であり ます。難病に関する知識を普通のヘルパーに上乗せしてというか、加えて特別研修とい うものを実施しています。  こちらに加えて「その他の事業」として、施策を7つほどご紹介できるかと思います 。「医療施設などの整備」、「重症難病患者拠点・協力病院施設整備事業」というもの も行っています。重症難病患者に対する入院施設の確保、あるいは受入れ体制の整備を 行うために、難病医療拠点病院・協力病院といったところの医療機器設備整備を推進す るという事業です。  2つ目に「重症難病患者の入院施策確保事業」です。都道府県ごとに拠点病院を設け 、それに加えて二次医療圏ごとに協力病院の指定をするという形で入院施設の確保を実 施する事業です。加えて、拠点病院というのは協力病院相互の連絡調整、入院の要請な ども行うという事業です。  3点目に「難病患者地域支援対策推進事業」です。こちらは患者ごとの在宅療養支援 計画の策定・評価、あるいは保健所や保健師などによる訪問相談、専門医などによる医 療相談、専門医・主治医・看護師などで構成された診療班による訪問指導などを実施す るという施策も行っています。  4番目に「神経難病患者在宅医療支援事業」です。神経難病患者を診察した医師が専 門医等に連絡できる体制を整備するものです。それに加え、担当医の要請に応じて、都 道府県が専門医を中心とする「在宅療養支援チーム」というものを派遣する体制の整備 も行っています。これに加えてホームページを設け情報提供、あるいは調査研究なども 積極的にやっているというのが我が省の現状です。  先ほど訪問看護、あるいは「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業 」というものをご紹介しました。こちらをもう少し細かくご説明したいと思います。在 宅のALS患者に対する医療保険の適用ですが、通常の在宅患者の方、訪問看護といっ ても居宅に看護師が赴き看護をする場合、通常だと週に3回しか算定できないのが診療 報酬上のルールです。金額は箱に入っている金額です。これは看護師、正看が行った場 合ですが週3日までは530点です、1点10円なので5,300円ということになります。とこ ろが、ALS患者については週4日以上の算定が可能になっています。すなわち、週7 回まで算定ができるというルールになっています。上限がないということです。週4回 目はそれに加え、630点という形で、100点ですから1,000円ほど上乗せ価格を設定してい ます。通常、1回の訪問看護が1時間30分程度という目安をお示ししているところであ ります。  また、この場合には1日に2回以上の訪問看護を行う場合があります。先ほどの例で も1日に3回活用されている方がいらっしゃいましたが、そのような方については1日 に2回以上、その場合には回数にかかわらずとなっていますので1度のみなのですが、2 50点、2,500円を加算することができます。それから2カ所の訪問看護ステーションから の訪問、裏を返して患者サイドに立つと訪問看護ステーションを活用するということも 可能となっています。  合わせて、先ほどの「特定疾患治療研究」と並んで書いてあった事業、長いので読む のはやめますが、こちらの事業についてご紹介したいと思います。3回目の訪問看護に ついて、年間260回を限度として1回8,000円が訪問看護ステーションに支給されるとい う、公費負担の制度があります。ただし、この事業というのは都道府県ごとに実施する か、しないかを決めていて、現在、平成13年度の実績となりますが、25の都道府県にお いて実施されています。47分の25しか実施されていないというものです。  いま、「訪問看護」というように申し上げました。実際にどのようなサービスをして いるかをご紹介するのが次の資料です。大きく4つに分類できるかと思います。まずは 状態確認、バイタルサインの測定や呼吸状態の確認などを行います。  それから看護ケア、これは5つほどに分けています。呼吸管理、呼吸リハビリテーシ ョンを行ったり、あるいは気道の加湿や体位排痰などを行って、痰を吐き出すことを支 援することも行います。  リハビリテーション、関節可動域の訓練なども行います。食事の援助、経管栄養チュ ーブの入れ換えなども合わせて行います。それから排泄の援助、清潔の援助などといっ たことも看護ケアの一環として行っているというものです。  合わせて医療機器の点検・整備、あるいは衛生材料、これはチューブ、ピンセット、 使用タオルなどですが、こちらの衛生状態などの確保などを実施しているというのが訪 問看護サービスの内容になるかと思います。これらの一環として、痰の吸引なども訪問 看護師によって行われています。  次の頁はいま申し上げた訪問看護ステーションで実施しているのですが、各都道府県 における分布、各都道府県ごとのALS患者の数を一表にしてまとめたものです。合わ せて「病院・診療所」と書いてあるのは、病院の看護師、あるいは診療所の看護師がA LS患者を含む、在宅療養を行っている患者の居宅を訪問しているという実績です。箇 所数をこちらに挙げています。  いま縷々申し上げた行為のうち、痰の吸引というのが主なイシューであります。それ について私どもが常々、この規定に抵触するのではないか、あるいはこの概念と相反す るのではないかと説明している条項のご説明をいたします。これには「医行為」につい てという表題が付いています。医師法の中に第17条、「医師でなければ医業をなしては ならない」という規定があります。  これについては先の第31条、「この規定に違反した場合には3年以下の懲役、もしく は100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と書いてあります。「医業」とい う2つの漢字ですが通常、私どもは医行為を業としてというように解釈をしています。 「解釈」をご覧ください。「医師法第17条に規定する「医業」とは、当該行為を行うに 当たり、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、 または危害を及ぼす恐れのある行為」、こちらを「医行為」と呼んでいます。「このよ うな行為を反復継続する意思を持って行うことである」というように解釈をしています 。この規定との関係で整理が必要になっているというのがこの現状です。  合わせて、医行為と類似というか、解釈が必要になってくるのが保健師・助産師・看 護師法に関する事項です。この法律において、「看護師」とは厚生労働大臣の免許を受 けて、傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話、または診療の補助を行うことを業と する者をいう」というように書いています。こちらの規定、あるいは第31条で「看護師 でない者は第5条に規定する業」、これは上に書いてある業です、その業をしてはなら ない。「ただし、医師法または歯科医師法の規定に基づいて行う場合はこの限りでない 」、ですから医師は診療の補助、あるいは療養上の世話を行ってもかまわないというこ とであります。これについては併せて罰則が付いています。この2つの規定についての 整理も合わせてお願いをしたいと考えています。  次頁をご覧ください。先ほど篠崎からもお話を引用させていただきましたが、日本A LS協会様より私どもの大臣、坂口力宛に要望書が出されています。そちらの写しです 。最初の頁は各支部の名前、あるいは協会の名前が書いてあるものです。15という紙は 要望事項、「ALS等の吸引を必要とする患者に、医師の指導を受けたヘルパー等介護 者が日常生活の場で吸引を行うことを認めてください」という形でのご要望を賜ってい るものです。細かく読みますと時間が足りませんので、捨象させていただければと思い ます。  資料1に関しては以上です。資料2のほうはまた別途、プレゼンテーションをお願い していますので、これで私の説明は終わらせていただきたいと思います。 ○前田座長  ありがとうございました。補足は何かありますか、よろしいですか。いまの資料1、 かなり詳細なご説明をいただいたと思います。各委員の先生方、いかがでしょうか。ご 質問があればお願いします。 ○伊藤委員  この分科会のタイトルのことですが、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に 関する分科会」ということに関し、制度上の問題からいろいろかかわりを持たせていた だく機会があるかと思います。ただいまのご説明によると、これはALSという疾患を 特定しているという理解ですが、それでよろしいのかどうか。もう1つ、このALS等 は特定疾病として介護保険の対象となっている疾患ですが、訪問看護等に関しては医療 で行うということです。制度的な疑問としては医療なのか、それとも介護なのかという ことについて、どのようにこの会を進めていったらいいのかと感じています。いかがで しょうか。 ○前田座長  かなり重要というか、根本的なお話ですが、事務局のほうで何かありますか。 ○三浦補佐  まず、ALSに特定した話なのかどうかという点についてご説明いたします。実は私 どものほうに類似した話というか、一般のヘルパーが行う行為、爪切りといった話もた くさんいただいています。それ以外の行為というのもたくさんお話をいただいています 。  ただ、私どもの解釈としては患者の状態、あるいは個々の行為が患者に与える影響と いうのは、1人の患者でも体調の善し悪しはあるでしょうし、人が違えばもっとシチュ エーションは変わるでしょう。医行為に該当するかどうか、一概に決めるのは難しいと いう形でご説明をしています。  その考え方に立つと、風呂敷を広げてしまうといろいろなシチュエーションというか 、いろいろな状態を一遍に俎上に乗せた上で議論を進める必要性が出てくるのではない かと思っています。ですから、とりわけ強いご要望を賜っている、ALS患者について の議論をこの場でお願いできればと思っているところです。  2点目、医療なのか介護なのかという点であります。これは保険制度上の話、どちら でファイナンシングをしていくかというお話かと思います。少なくとも、私どもが所管 しています医事法制の観点で申し上げれば、これまで「医行為ではない」といった解釈 を示したことはありません。基本的に、先ほど申し上げた「医行為について」という資 料に記載していましたが、医師の知識あるいは技能をもってしなければ患者の生命・身 体に危害を及ぼす恐れがあるかどうかという切り口でご検討いただければと思っていま す。以上です。 ○前田座長  よろしいでしょうか。ご質問の趣旨は、「ALSに特定するのは問題だ」という強い ご意見ということではなくて、質問ということですか。 ○伊藤委員  いや、私は福永先生や川村先生とともに特定疾患のQOLの研究班に所属しています が、通常、「ALS等」という扱いをしている関係でお尋ね申し上げたという経緯もあ ります。 ○福永委員  やはり、これは非常に重要な点だと思います。議論としては、確かにALSがいちば ん問題になりますし、ALSでかまわないのかもしれません。もし、その行為がいろい ろな形で認められるということになったとしたら、例えば現場では最近ではパーキンソ ンの患者、筋ジストロフィーの患者、脊髄症の変性症の患者、いろいろな患者が気管切 開をして吸引行為をやっているわけです。  例えば、ALSだけにしかできない業務なのか、あるいは認めるとしたら、議論とし てはここでALSを対象とするにしても、実際の行為としてはほかの疾患でも可能と考 えていくのかどうかというのは非常に大事だと思います。 ○前田座長  要するに、ここでどこまで絞って議論するのがまとめやすいかという問題は別にして 、そこで出てきた原則というのはやはり一般化して動いていく面はもちろんあろうかと 思います。それに関して、医事課のほうでのご判断というか、見通し、動かし方につい て何かご意見があれば、いまの段階でお聞かせいただければと思います。 ○三浦補佐  最初からそのような方向性というよりは、むしろいま積み上げているファクトの延長 線上、それが応用可能かどうかというのは結論が出たタイミングで判断すべきことかと 思います。いまの段階でそこも含めた射程に入れた議論をしていくという形にしてしま うと、なかなか議論しづらいかなと事務局としては考えています。いかがでしょうか。 ○前田座長  いまのご説明に関してはいかがでしょうか。 ○福永委員  議論をずっと展開した段階で、またほかの疾患をどうするかということになるのでし ょうか。現実には、先ほど言ったように筋ジスなどもやっているのですが、結構在宅で 実際に気管を切開しながらやっている人もいるものですから。 ○前田座長  おそらく、そこのつながりを完全に断ち切った議論というのは不可能なのだろうと思 います。議論の運び方として、ALSを具体例として考えて、それにどこまで対応が可 能かというように持っていくこと自体は先生もよろしいわけですか。 ○福永委員  はい。 ○五阿弥委員  私は専門家ではないので、どちらかというと常識論しか言えないわけです。ただ、こ の問題の背景はいま福永先生もおっしゃったように、基本的にはなぜこれが17万人の署 名を集め得たのか。その背景にはやはりALSだけではなくて、同じような悩みを抱え た患者・家族がいることが現実にあるわけです。それ以外にもいま、医療を必要とする 高齢者が次々施設から在宅へという形で、在宅で暮らさざるを得ない。そうしたときに 実際問題、ヘルパーのさまざまな医療行為が見直されているという実態があるわけです 。これは非常に根本的な問題を抱えている、という認識をまず持つことは絶対必要だと 思います。  ALSだけだと、例えばさまざまな手厚い支援策があるから、これはこの程度でいい という話に終わったらやはりまずいのではないかと思います。この会で基本的にALS 患者の在宅療養の支援に関する話をまとめたとしても、この場、あるいは別の場かとい うのは今後の検討ですけれども、やはり介護と医療の線引きの問題はきちんと整理して いかないと、同じような悩みをずっと引きずってしまうのではないか。つまり、その狭 間の中で悩み続ける人たちの解決にはならないわけです。いま、介護保険制度が走りな がらスタートしましたが、そこはもうそろそろ議論を整理する時期に来ていると思いま す。 ○前田座長  ご指摘のとおりだと思います。看護課長、総務課長、医事課長、それに関して何かご ざいませんか。先ほど局長のお話にありましたが、「桜の花の咲くころ」という時間設 定もあります。  もちろん、時間に追われて本質を落として、魂を抜いて形だけ整える委員会というの は無意味だと思います。ただ、片一方でやはりALSの非常に逼迫したニーズもある。 それとの見合いだと思います。  先ほどご指摘のような、17万の署名を動かす力はあるわけですから、それで止まるこ とはもちろんないし、押しとどめることなどできるわけないと思うのですが、そのマグ マをどう切り分けていくのがいちばん合理的かという方向で、おそらくご準備をいただ いていると思います。もちろん、それでご不満があれば委員のご意見で動かしていけば いいと思います。ですから、これは根本問題ですが、当面はALSを糸口としてやって いくことはご了解いただいて、それについて今日も具体的にいろいろご説明をいただき ました。そこを前提としていきたいと思います。ただ、その背後にそのような大きな問 題を抱えていることは共通の認識としたいと思います。逆に言うと、それだけ大きくな ると医行為の根本的なものの見直し、看護のあり方など、大きな問題につながります。 逆にそれを動かしていくには、急なカーブは切りにくいという問題も出てこようかと思 います。そこをじっくり射程に入れてご議論いただければと思います。 ○山崎委員  タイトルでもう1つ、いまALS患者だけなのかというご質問がありました。私はそ の前、「看護師等による」の「等」のご解説をいただきたいと思います。 ○三浦補佐  通常、私どもは「看護師等」と言えば保健師・助産師・看護師という3師、プラス准 看護師を指す用語です。しかし、それだけに閉じるかどうかというのはどうなのか。印 象があまりはっきりせずに恐縮なのですが、在宅療養支援をしているという意味でいく とまごうことなく、「療養」という言葉は引っかかりはあるかもしれませんが、福祉職 の方も一緒になって在宅療養を支援していらっしゃるのかなとは理解しています。 ○前田座長  かなり根本的な問題ではあるのですが、山崎先生、いまのお答えでよろしいでしょう か。中身に入ってから、どうしてもそこに触れる議論にならざるを得ないと思います。 ○山崎委員  そうすると看護師職だけではなく、ALS患者の在宅療養支援にかかわる福祉職等も 含めたものということですか。 ○前田座長  それも視野に入れての議論という趣旨だということですね。よろしいでしょうか。 ○山崎委員  はい、一応ご説明は賜りました。 ○星委員  いまの件に関連して発言します。一般的には看護師・保健師・助産師、プラス准看護 師だと言っておきながら、ここだけ「等」の中にその他のものを読み込むというのはど うなのでしょうか。内容についてどうこう言うつもりはありません。タイトルというこ とで言葉を使うのであれば、きちんと使い分けをしていただかないといけないのではな いでしょうか。我々の認識とすれば、これは四つの資格のことを指すわけですから、そ の辺はきちんとしてほしいと思います。 ○山崎委員  その関連です。先ほど来の議論もありますが、そうすると「桜の花の咲くころ」とい うのはそう遠い時期ではありませんので、この短期間に、しかもこの「新たな看護のあ り方に関する検討会」の下の分科会という小さな会で大変大きなマターを保険医療福祉 、医療保険、介護保険、全部にまたがってくるようなことを本当に議論ができるのだろ うか。  それから、ALS患者に当初、限局でショウカというように、「検討事項」の書きぶ り、○2つでは思うわけです。ただ、当然、誰が考えても同じような在宅療養のニーズ を持っているのは、5歳の難病の小児から100歳老人まで、多様な方がいらっしゃるわけ です。そうするとALSの方だけでなく、原則が一般化して動いていくのではないかと いうご発言もいまあったように、ここでの結論がより幅広な、何らかの施策に反映され るとすると、もっと慎重なご提示をしていただかなくてはいけないのではないかと思う わけです。タイトルのお答えでも4師なのか、福祉職も含めるのか、そのような曖昧な お答えでは首をかしげてしまっているところです。その辺、まずは課長からしっかり整 理をしていただきたいと思います。 ○中島課長  タイトルについては言葉の使い方の問題はあろうかと思います。全体を読んでいただ ければわかりますように、「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会 」ということですので、ALS患者を特定して、在宅療養支援という観点からご検討い ただきたいという趣旨でご理解いただければと思います。 ○前田座長  ただ、どのような小さい問題も、大体みんな大問題につながるわけです。もちろんこ れは検討会の下の分科会ですから、この問題がどこまで中身に踏み込めるかというのは ご指摘のとおりだと思います。具体的な問題として時間の範囲内でご議論いただいて、 やはりその根本にかかわる大きな問題であるから、もう1つ上のランクであり、時間を かけた審議が必要となれば、それはそれで議論を尽くしていただく必要があろうかと思 います。  ご指摘は非常によくわかるのですが、ともかくこのような形で議論を進めていければ と思います。現にニーズがあって、ご意見があるところを何とかみんなで知恵を出そう ということで、是非ご協力をお願いしたいと思います。平林先生、お待たせして申し訳 ありません。 ○平林委員  いままで出ていたご意見、皆さん、基本的にもっともなものだと思っています。その ときにもう1つ大きな視点として、これは国が在宅医療ないし在宅ケアを推進している わけですが、その基本的なスタンスがどこにあるのかということが実はとても大きな問 題だと思います。そこを常に認識して、あるいは確認をしながら議論をしていくことが 必要だろうと思います。少し抽象的に申し上げましたのでわかりづらいかもしれません が、また追い追い議論の中で意見を述べていきたいと思います。そのことをまず1つ申 し上げておきたいと思います。  もう1点は先ほど出ました、これが分科会であることの意味です。ものすごく形式的 に申し上げると、この分科会で出た結論を「新たな看護のあり方検討会」でオーソライ ズ、ないしエンドースをしなくてはいけないのかどうかという、手続き的な問題が1つ あるだろうと思います。その点をどのように考えていくのか。これはあまり本質的な問 題ではないのかもしれませんが、分科会として持ったことがどういう意味を持っている のかをお伺いしたいことが2点目です。1点目は意見ですので返事は要らないと思いま す。  3点目は非常に小さなというか、具体的な質問です。今日お配りいただいた資料の6 頁、7頁に在宅サービスの例が2つ出ています。この例を我々素人として、どのように 評価すればいいのか。要するにどちらが平均的なのか、あるいはとても良い例なのか悪 い例なのか。平均的なALS患者への訪問看護、あるいはその他のサービスのあり方が どの辺にあるのかも少し教えていただくと、今後の議論をしていく上で参考になるかと 思い、質問させていただきました。以上です。 ○前田座長  ありがとうございました。分科会にしたことの意味と6頁と7頁のご説明、2点につ いてお願いします。 ○田村看護課長  分科会ということでの位置づけについて、私からお答えいたします。「新たな看護の あり方に関する検討会」を昨年5月からスタートさせています。21世紀初頭の時期の看 護活動のあり方について、特にまた在宅医療を推進していくという観点からさまざまな 問題を出し合いながら、その解決策を模索するということで検討していただいています 。  その検討会の中で、委員の先生方にこの分科会を設置することについてご了承をいた だいて、分科会がスタートしていることもありますので、今後本検討会の進行に合わせ 、例えば随時この検討会の状況をお知らせしたり、場合によっては合同の会議をしてい ただくこともあるやもしれません。これはまだ、進行状況等に応じて考えさせていただ こうと思っていますが、やはり本検討会のほうと連携を取っていただくという形を取り たいと思っています。 ○前田座長  もう1つのご質問はいかがでしょうか。 ○勝又補佐  もう1つのお話、6頁と7頁の資料ですが、特に患者の状況、家族の介護の態勢によ ってさまざまな在宅の介護、あるいは看護の入り方があるということです。特に6頁、 7頁が良いもの、悪いものという捉え方で出したものではなくて、介護が多く入ってい るところと看護が多く入っているところ、その代表的な例ということでお出ししていま す。 ○前田座長  まさに代表例ということで、これが理想例という意味では必ずしもないということで すね。まさに代表例ということですが、よろしいでしょうか。 ○平林委員  こだわりませんが、「代表例」という意味がよくわかりません。あるいは議論の中身 に入ってしまうのかもしれませんが、要するに必要なときに必要なだけ訪問看護師が訪 問できれば問題は解決するわけです。ところが、実際はそうはいかないために、今、我 々が議論しているような問題が出てきているのだと思います。またあとで議論をしてい く中で、「代表例」の意味は検討していかなければならないと思いますが、その辺のこ とを少し意識しながら質問させていただきました。追い追い、議論はそこに絡んでいく だろうと思っています。 ○前田座長  何か補足はありますか。 ○三浦補佐  少しだけ補足させていただきます。6頁と7頁、訪問看護の濃度がかなり違う、とい うのは一見して見て取れるかと思います。この点は実は事務局内でも議論になったので すが、なぜ6頁はこれほどたくさんあって、7頁はこれほど少ないのか。最初は看護の サービスが受けられていないのかと考えました。7頁のほうが訪問看護が活用できてい ない、ないしは利用したくてもできないような状況にあるのか推測していたのです。  ただ、むしろ、先ほど言葉足らずだったのですが、希望の度合みたいなところに応じ てお願いしているところもあるのです。訪問看護の訪問をあまり希望されていなかった ケース、というように7頁目は評価できると私どもは聞いています。だからといって、 6頁と7頁を見て、ニーズがすべて訪問看護で満たされているということを説明できる 資料ではないのですが、性格としてはそういうものであります。 ○前田座長  このような介護の実情というか、もちろん「看護」と言うか「介護」と言うかが難し かったりするのだと思います。現実のALS患者の実情については、回を追ってもっと 詳しいご説明を伺う機会がありますので、今日のところはそのぐらいにさせていただき たいと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○星委員  細かい質問で申し訳ありません、2つ教えてください。聞き漏らしたかもしれません が、6頁、7頁の「全身性障害者介護人派遣サービス」というのはどういう制度に基づ いて行われる、どのような内容のサービスなのかがピンとこなかったのが1つです。  それから10頁、訪問看護の適応のお話ですが、説明では1日につき週3日までは530点 プラス、加算というのは2回行っても3回行っても530点×3+250点ではなく、530点+ 250点ということなのだと思うのですが、それとこの下の難病対策との関係は、両方取れ るとか取れないとか何か決まっていると思うのですが、具体的にどうなっているのか教 えてもらえますか。 ○三浦補佐  2つ目の両者の関係についてですが、例えば週に3回、しかも毎日3回ずつ行った例 を考えてみます。1回目は、基本的な点数である530点が付きます。その日のうちの2 回目の例でいうと加算が付くことになります。3回目になると、診療報酬上加算は1日 につき1回しか認められませんので付きません。そうなると、訪問看護事業の8,000円 が付きます。ですから、530点、250点、8,000円という形で付け加えることになります。  これは、1日3回の例ですが、4回行っても8,000円で固定です。厳密には上限があり 、原則として週5回が一つの目安となっております。その5回というのを超えてもよい のですが、年間260回というのが絶対的なアッパーリミットである、という制度になって います。 ○障害福祉課  全身性障害者介護人派遣サービスの内容としては、資料の8頁の第2に「ホームヘル プサービス」があります。それで、いろいろな患者の家庭を訪問し、いろいろ世話をす る。そういった中で、対象者が全身性障害ということで、わりと重めの方を対象にして いるものです。東京都や大阪府など、福祉の関係に熱心な所はやっているというもので す。 ○星委員  これは、県単独の事業という認識なのですか。 ○障害福祉課  そういうことではないですけれども、ホームヘルプサービスでありますので、国庫補 助も入っております。 ○福永委員  全身性のほうは、やっている県が少ないと思います。先ほども、代表的な例を平林先 生も言われましたが、実際に看護師がこれだけ行ける東京などはいいのかもしれません けれども、地方では1日3回来てくれる所はないです。全身性のほうも調べてみればわ かると思いますが、地方ではほとんどこの制度は活用されていないのではないかと思い ます。  1頁の、平成9年のALSでの在宅と、入院困難比を書いてありまして、これだと大 体半々ですが、いまは在宅のほうが圧倒的に増えているのではないかという気がします 。平成9年では51.6%と48.4%となっていますが、現実はここ4、5年で在宅の患者の 比率は高くなっているという印象を受けます。 ○前田座長  最新の細かい数字については、まだ何回かありますのでご提供いただければと思いま す。基礎となる部分として、在宅のALSの方がどのぐらいいるか、というのは大事な ファクターだと思います。 ○山崎委員  同様にその資料については、もう少し数字が欲しいという感じがいたします。平成9 年のものしかないのかということを、福永先生と同様に感じました。  8頁から10頁に、国がやっているさまざまな事業があります。10分の10でなければ、 県がやるとかやらないとかがあります。特に、260回限度の訪問看護も、ここでは25県し かやっていないということですが、どこがやっているのか次回までに資料を整えていた だけますか。実績もあるでしょうし、全身性の介護人もそうですし、県単事業でレスパ イトなどを逆にやっている県もあったりします。ちなみに、たまたま私どもも本日から 1週間、緊急調査ということで県に調査をかけておりますが、次回は厚労省からも数字 をお出しいただければと思います。 ○前田座長  可能な範囲で、是非事務局でお願いいたします。 ○伊藤委員  訪問看護を中心とすることに関して私が申し上げるのも変なのですが、訪問看護振興 財団で既に詳細な検討に入っているやに伺っておりますので、そちらの情報も含めてお 知らせいただくということ。県単の事業として、宮城県が指名制介助人の派遣事業等要 綱をすべて整備し、実績がありますので、健康対策課に一報いただければ、いつでも資 料を出せると思います。 ○星委員  なんとなく、入口のところでウロウロしているようで気が引けるのですが、いまの話 で東京都はやっていますとか、東京都が貸出事業に伴って1週間に一遍看護師が訪問す る、といった特別な例が一般的な例として出されるのは、非常に変な感じがします。福 永委員のご発言のように、それは非常に恵まれた人なのだという話も一方にあるわけで す。そうでないとすれば、「自治体によってできる所とできない所があるのです」とい うところは、まさに国がカバーすべき話ですから、必要ならば国がそういう施策をやる 。その上で、なお必要なさまざまなものに対することを考えていかないと、いまは足り ている人もいる、足りていない人もいる、それではどこに合わせるのだ、という話が出 てきてしまうのではないか、ということを非常に危惧します。  この辺の施策がうまく折り合っているのか、あるいは地域差があるとすればその原因 はどういうことなのか。どのレベルまでは、どのぐらいの努力をすれば可能なのか、と いう議論がなくて、いきなり行為の話に飛ぶのは大変危険なような気がします。その辺 は是非とも慎重にお考えいただきたいと思います。 ○前田座長  おっしゃるとおりだと思います。実態として、訪問看護はどのぐらい可能であるか、 行われているかを踏まえて、本日はまさに入口ですので、かなりの情報をいただいたと 思っております。ご指摘いただいた補足的なものに関しても、是非次回にはお願いいた します。100%でなくてもいいのですが、できる限りお願いいたします。 ○川村委員  いま、私は新たな看護のあり方に関する検討会にも参加しておりますが、そこでの議 論は、いまある施策をきちんと行った上で、あと不足なものは何なのか、という議論の 進め方を重んじております。星先生のおっしゃったことに、進め方として私は賛同いた します。その辺をきちんとしていかないと、問題解決というより、混乱を来たすのでは ないかと思います。 ○前田座長  それは、是非お願いいたします。本日は、川村委員に、痰の吸引についてのご説明を いただく準備をしていただいております。非常に具体的な問題で、スライドと実技を含 めてご説明いただきます。 ○川村委員  「看護師等」という言葉についてというよりは、明白にしたほうがいいと思いました ので、私としては「看護師が行う一時的吸引法」に絞らせていただきました。これは、 私が大学で教えている、というふうに受け取っていただいて結構です。 ☆スライド  「一時的吸引法」の目的は、「気道の分泌物を除去して、気道を確保することによっ て呼吸を楽にする」です。一時的の反対に何があるかというと、「継続的」という言葉 になります。気道というのは、鼻腔から肺胞を取り巻く小さな気管までを含めています 。 ☆スライド  これは、気管支周辺の形態図です。これが気管で。それを取り巻くように、静脈があ って、動脈があって、この黄色線のところに、延髄に至る迷走神経がある。この先は、 心臓につながっている、といった部分になります。  ここに気管切開をして、そしてカニューレが入ります。そういうことから、迷走神経 を刺激しやすいということがあり、それによる呼吸停止や心停止の危険があります。場 合によっては、この動脈、静脈を傷付けることにより、大量出血が起こります。その場 合には圧迫することも困難になりますし、流出した血液を除去することも難しく、気管 内の操作だけではできないということが起こり、大変危険があります。  それから、感染があります。気管切開口からの感染で、肺野が感染を起こすことがあ ります。最近では気胸や無気肺が合併する、ということがよく言われています。 ☆スライド  看護師が行う場合には、これからは実技的なことになりますが、ALSの患者さんの 場合には、自発的な行動が非常に抑制されているために、痰が貯留しやすい状態にあり ます。それから、先ほどのような予測される危険をどう回避する、予防的な措置をする 、異常を早期に発見する。もし異常を発見した場合には、それをすぐにきちんと対処す ることが、全体的なアセスメントのポイントになります。 ☆スライド  いまのようなことを念頭に置いて、実際にアセスメントした上で、その次に胸部の異 常、気管切開をした部分の傷口がどのようになっているか。これは、ただれるとかポリ ープができているなどを経験しています。それから、無気肺が起こっているか、という ようなことのチェックをします。  痰の貯留がどこにあるのかを聴診器で聴いて、そこの部分から、例えば肺上葉の先端 部にあれば、そこから真ん中の気管支にまで痰を流出させてこなければいけませんので 、痰を剥離させて、流出を誘導するということを少しずつ繰り返して、どこまで痰が動 いたかを聴きながら落としてくる。それで、中央の気管支に来たところで吸引をする、 というようなことを繰り返します。このことうまくするために、ドレナージやいろいろ なやり方をいたします。  一時的な吸引が終わった後には、痰がちゃんと取れたかどうかを聴診でも聴きますけ れども、ご本人に、すっきりしたのか、まだ何かありそうなのかを確認します。 ☆スライド  これは、いまの聴診するときのポイントを出しました。肺は、左側は2つ、右側は3 つに分かれています。それをきちんと聴き分け、どの辺りにあるのかを知る。側部や背 中も、きちんと聴くことで、どこの肺野にあるかを確認する。この黄色の丸のポイント を聞きます。 ☆スライド  手技はいまのようなことですけれども、それだけではなくて吸引器や吸入器の作動が きちんとしているのか。吸引圧はこれで適切であるか、高低すぎないかを点検する。消 毒も絶えず行っています。吸引のカテーテルの滅菌や消毒もします。これは、感染予防 です。それから、無菌的にやるための消毒薬の準備をきちんとする、ということもあり ます。 ☆スライド  合理的に去痰をするのは、どういう時間がいいのか。寝ている時間は、貯留が激しく なりますので、夜、寝る前に痰を除去しておいて、比較的夜中は呼吸の吸引をしないで 、回数を減らせるようにすることが一つのポイントです。  朝、起きたときには、私たちも咳をしたりしますが、夜中に溜まった痰を、朝、きち んと全部出せるようにする、といったことを考え、去痰のサービスをするのが合理的な ことではないか。私たちは現場で大掃除と言っていますが、1日2回ポイントをおさえ て大掃除をしておくと、その間の去痰の操作は比較的楽にできる、簡単にできるという 経験を持っています。 ☆スライド  これは、いままでのことをまとめたものです。看護師としては、突然死といった危険 に対しての知識を持ち、それをちゃんと予防し、もしそれに近付いた状況があれば、す ぐ対応ができる条件の環境整備をする、技術的にも配慮していくということです。  それから、聴診器を用いた呼吸器系をはじめとする、身体アセスメントをきちんとで きる能力を付与する。効果的吸引をするための器具の操作管理、消毒などの維持管理を する、ということをいまやっております。スライドは以上ですが、実際にどのようにや るのかを見ていただきます。 ☆実技  学生の場合は、肺の位置を書いたTシャツを着てもらい、お互いにやってみるという ことです。モデルをちょっと立てていただいたらどうでしょうか。左側が2つの肺に分 かれていて、右側が3つに分かれています。先ほどのようなところを、聴診器で順次聴 いて、どこに痰があるかを確認していきます。無気肺が起こっているか、ということも 聴いていくときに判断します。後ろ側も、あのような形になりますので、それをちゃん と聴いていく、というやり方をします。 ☆実技  これは、もう一つのモデルです、これが肺の分岐点で、この辺りに動脈や静脈、迷走 神経が走っています。これが舌です、これが鼻腔です。ここに切開口があって、そこに こういうカニューレがこんなように入っています。このカニューレには、こういうカフ が付いておりまして、ここから空気を入れてこのカニューレが動かないようにして止め ています。 ☆実技  これが、吸引器です。いまのルールでは、無菌操作でやることになっていますので、 どこにも触らないで、そして無菌的なものがそのまま気管の中に入るようにしておりま す。いま病院の中では、このカテーテル1回1本でやっていることが多いです。でも、 これも1本700円ぐらいいたします。ディスポのものだともう少し安いですけれども、リ スクがないというようなことでディスポを使い回してしまうということで、アメリカの 看護婦などから、「あなたたちは、感染予防をしていない」と大変叱られておりますが 、経済的な問題は大変大きいです。 ☆実技  痰を下ろしてくる手技ですけれども、上のほうのその辺りに痰があるとした場合に、 まずタッピングをしての方法で、痰を剥離して、下のほうに下ろしてくることです。 ☆実技  それから、スクイージングです。肺を取り囲んでいる胸郭を、補助的な手段を用いて 、深呼吸を順番にやるというようにいたします。 ☆実技  これは、寝ている場合、患者がいちばん楽な姿勢で多くやりますので、その後は少し 立位といいますか、頸のほうを上げていただき、自動的に重力で下りてくるようなこと をやります。解剖の知識や、生理学的な知識をフル活動しています。  そのときに、なかなか下りてこないような場合には、痰が固まっているとか、湿潤度 が悪いということがありますので、医師と相談をした上で吸入をする、というようなこ とをいたします。それも、蒸留水などの水分だけでやることもありますし、医師との相 談によって指示が出れば、去痰剤を使うこともいたします。 ☆実技  手掌を使って、バイブレーションをやるときもあります。手技者は、1週間こればか り訓練してきた人で、しっかり出来ます。 ☆実技  肺自身がこのように複雑な形ですし、この中にある気管支も曲がっているというよう なこともありますので、ああいうふうにいろいろな角度から考えながらやります。 ☆実技  補助を受けて深呼吸をしていただく、というようなこともあります。 ☆実技  手の技を多く使うということをご理解いただけたらありがたいと思います。 ○前田座長  川村先生、どうもありがとうございました。それから、実技をやっていただいた先生 、どうもありがとうございました。いまのことに関連してご質問があれば、この場で出 していただきたいと思います。もちろん、周辺的に関連することで、もっと広がりのあ ることでも構いません。 ○五阿弥委員  いま見ていて、非常に難しいと思いました。しかし、実際問題としては家族の方がや っているケースが結構あります。そのときには、家族にどのレベルまで、どのように、 何を教えるのでしょうか。 ○川村委員  一般的には、大掃除を1日2回とか、患者さまの状態によっては1週間に3回という ような計画でやらせていただいて、あとは表層のものを取ればよい、というような計画 になるように組み合わせています。  何をどこまでといっても、そのご家族にもよります。それは、できるできないだけで はなくて、やりたくないというご家族もあります。そういう気持ももっともだと思いま すので、そういう場合にはかなり頻回に訪問看護が入ります。東京都の場合は大変条件 がいいのだという発言もありましたが、実際に機器貸与事業や、それに付随した訪問看 護をきちんと入れてほしいとか、それは随分私どもはデータを作り、東京都へはかなり の運動をし、こういう制度を作っていただきました。 ○前田座長  家族によって、かなり差があるということですね。 ○川村委員  患者の状態によって、かなり活動される方、本日おいでになっているような方とか、 その方自身が協力を得て、大きな動きをする方はまた違うと思います。ご家族のことと 、訪問看護の支援の話と、それから本人の状態といったものの組み合わせになろうかと 思います。 ○伊藤委員  いまの吸引の問題等に関しても、川村先生が中心になって、訪問看護のガイドライン であるとか、いくつかの標準化のステップが既に行われているところであります。この ノウハウも必要があれば、この検討会で、こういうガイドラインになっていますという ことを承知をしておくことも大事かと思います。 ○福永委員  川村委員が言われたことと同じなのですが、私は吸引とリスクという面から考えると 言われたように3点あると思います。私たちがALSの患者を診ていたときに、原因が わからなくて突然亡くなるケースがあります。それは、いまの迷走神経の刺激による心 停止や呼吸停止があるかもしれませんが、これは吸引したからどうこうということでは なくて、わからない原因もあります。  いちばん問題になるのは、出血と感染だと思います。出血に関しては経験することで すけれども、これは吸引の操作とはそれほど関係なく、むしろカニューレの問題だと思 います。カニューレの圧や、カニューレの場所、カフ圧といったカニューレと関係する ことのほうがより大きくて、実際吸引との関係は少ないのではないのだろうかと思いま す。  3点目の感染という点が、出血とも関係しますが、清潔操作というか、感染というこ とがいちばん問題になるだろう。技術的な問題は、習得すれば、あるいは訓練すればで きることだと思います。本質的な議論と多少かかわるかもしれませんが、川村委員が言 われたように、全体的な病状の把握やアセスメント、あるいは何か起こったときの対応 ということは理想を言ったらキリがないわけです。吸引操作自体によるリスクというの はないわけではありませんが、それよりも清潔操作、あるいは全身の状態の管理、ある いは何か起こったときの対応のことのほうが、むしろ吸引操作においての問題になるの かという気がいたします。 ○川村委員  医師としての判断は、それはそれで結構だと思います。実際には小出血があり、看護 のほうで、これは大きな出血になりそうだということをアセスメントし、そして病院に 運び、そこで大量出血で亡くなったという患者さんを私は2人知っています。  直接吸引のやり方が悪かった、ということではないかもしれませんけれども、吸引と いう操作と、大量出血との関係性についてはどのように考えるか、というのはなかなか 難しいことがあろうかと思いますが、関係性の深さではなく、そこできちんと判断をし て、しかるべき処置のできる所に連れていく、ということはとても大事だと思っていま す。 ○前田座長  その辺は難しいところだと思います。ALSになぜ限定するのかということがあった わけですが、吸引の必要性ということで、一般論で広がっていくと、緊急度や危険度と か、いろいろ議論が散漫になってしまいますので、こうやって絞ったほうがある意味で わかりやすいと思うのです。それでも、具体的にどの程度のリスクがあって、どこまで の人に広げていけるか、これはまさにこの分科会の課題だと思うのです。その原点とし て、川村先生のご説明が出発点というか、非常に勉強になったと思います。 ○伊藤委員  この会の基本的なあり方についてですが、在宅ということと入院、身体障害者療護施 設等の施設における療養といった場合に、ALSに特化した場合であっても、身体障害 者療護施設においては、ALSの病床を2床設置をし、そこにおいて療養していただく 、ということを国が進めております。  宮城県においても、現在間もなく気管切開に至るような状況のALSの方が、身体障 害者療護施設で療養され、あと数日もしくは数週間のうちには気管切開をし、人工呼吸 器に移るということもあります。仮にALSに限った場合であっても、在宅のみという ことに限定するということは、極めて療養する側の方からすれば不都合が多いのではな いかということです。  先ほど来、出ておりますが、ここでは最も困難な事例に関して検討する。それを、現 実的に応用可能なところまで持っていく、という基本的な方針かと思いますが、やはり 在宅だけというふうに最初に限ってしまうことに関しては、いろいろな環境の療養を選 択し、QOLを高めるという観点からも問題があるのではないかという気がいたします 。 ○前田座長  それは、在宅だけに限って、という趣旨では必ずしもないのです。私の申し上げ方も 悪かったのだと思うのですが、ただ一つ表に出ている問題としては、在宅の方で、吸引 をしなければいけない方がいるときに、誰が吸引をするか、というのが現実的な問題な わけです。その問題だけは避けて通れないということです。  ALSの方の、本当にベストな看護といいますか、医療といいますか、それがどうい うものであるかという問題はもちろんあるのだと思います。そのどちらが議論の中心か というと、この会で与えられているのは、どちらかというと在宅の方に、どういう医療 や、看護ないし介護をしていくことがいちばんベストであるか、ということを考えてい かなければいけない、ということではそんなにずれはないと思うのです。在宅の問題だ けで、いわゆる入院治療の問題の必要性を軽視しているという趣旨ではありません。 ○伊藤委員  そういった意味ではなく、現実問題としていろいろな療養の選択があり、入院が必要 なときには入院、在宅で療養することを希望する場合は在宅。しかし、単身の方で介護 力がないといった場合には、在宅そのものが選択できない場合だって大いにあるわけで す。議論の中心が、在宅療養の支援ということに関しては、全く異論はないわけです。 吸引が発生し、なおかつ医師や看護師以外の方にも、その必要性が出てくる場面という のは、在宅以外の施設においてもあり得るということです。 ○前田座長  わかりました、私の理解力不足でした。 ○五阿弥委員  今回は、ALSの要望書がきっかけになったのですが、こうした方の声を直接聴く機 会は何か考えられているのでしょうか。 ○三浦補佐  最後のところで、今後の進め方をご紹介する過程の中で申し上げようと思っていたの ですが、次回それをさせていただければと思っています。 ○五阿弥委員  今後の議論の前提となることで、基本的なことで恐縮なのですが、医師法第17条で、 医行為の中身については指し示していないわけです。解釈として、痰の吸引が医療行為 に当たると。それは、これまでどういう形で示されているのでしょうか、何か文章みた いなものがあるのでしょうか。 ○三浦補佐  書き物ということでいくと、国会答弁などでも何度かお示しさせていただいたことが あります。それから、患者の方などからそのお尋ねは恒常的にありますので、それに対 する回答という形で示したこともたくさんあります。 ○五阿弥委員  その場合、家族はやっていいわけですよね、これは、本人と同一視するという考え方 なのでしょうか。 ○三浦補佐  家族については、明確にそこをはっきりと、家族はこれでいい、という形で示したも のを私は見たことがありません。家族でも、手術などをしてしまうと、おそらく医師法 違反ではないかと思います。そこの整理は、私どもも多少きれいになっていないのかと いう気がしております。  物の本などでは、例えば医師法の法益に着目し、「公衆衛生上の危害を防止するとい うことが保護法益である」ということを定義した上で、「家族に限って行うことについ ては、公衆衛生上危害が拡大するおそれがないのであるからよいのだ」といったことを 書いた先生がいることは存じ上げております。 ○前田座長  その辺は、いずれまた詳しく出てくると思います。 ○平林委員  いまの問題と、その前の伊藤委員の問題の両方にかかわることです。伊藤委員がおっ しゃったことを、ここで議論しろというつもりは全くないのですが、問題としてここで の結論がさらに影響を及ぼす場面として、ALSという疾病を少し拡大していくと学校 の現場でも同じような問題が出てきているので、そこまで影響は及んでいくだろう、と いうことを念頭に置きつつ議論をすべきではないか、というのが伊藤委員のご発言に関 連した私の意見です。  2つ目は、あるいは川村先生のプレゼンテーションにもかかわるのですが、痰の吸引 をするということ一つを取ってみても、非常に危険な側面を持っているということは明 らかだろうと思います。それが、常に危険であるかどうかということは、また別の問題 であります。常に問題であるかどうか、具体的にその患者にとって危険であるのか危険 でないのか、ということの判断をうまくすれば、この問題がクリアできるのかという一 つの論点の立て方があると思うのです。  それとの関連でいうと、医師法第17条の、「人体に対して危害を及ぼすおそれのある 」というのは、むしろ前田先生から解説していただいたほうがいいと思うのですが、平 成9年の最高裁でも、「抽象的な危険でよろしい」という議論になっております。痰の 吸引もその抽象的な危険という観点から見ると、常にそういう危険性を持っている、と いうふうになるわけです。医師法第17条の立法の趣旨との関連で、「医行為」について そういう解釈がされていることが、この問題を法律的な観点からみたときの大きな問題 点のひとつだろうと思います。今後、その問題を含めて、さらに議論していかなくては ならないと思います。 ○前田座長  医師法の危険の概念とか、どこまで許されるか、違法性がどういう場合に阻却される か云々という議論は、いずれ順次議論してまいらなければいけないポイントになってく ると思うのです。本日のところは、その前提として、医師法の医行為の解釈のところは 後ろに残しておいて、この問題がなぜ投げかけられているかということ。それから、初 めのほうにご指摘がありましたように、この場での議論の射程みたいなもの。  いまご指摘がありましたように、養護学校の問題は、現場では非常に大きな問題にな っております。先生方も困られ、看護師の先生方も困られている。その問題に波及する というのはそのとおりだと思います。それは、先ほどの蒸し返しになってしまうのです が、そういうことも、どこまで強く意識しながら議論を進めていくか。そこのところは 、三浦補佐から説明がありましたように、患者の方々のご意見を聴く中で、もう少し関 連分野まで聴いていく必要があるかどうかのご判断を、いずれかはいただかなければい けないと思うのです。  本日のところは、前半の資料1のご説明も含めてでよろしいのですが、この会で今後 議論を進めていく上で、特にこういう資料が欲しい、といった議論を今日やっておいて いただけると、会が進めやすいと思います。対立点は必ずあると思いますので、きれい な形でスパッといくかどうかはわからないわけですが、できる限り見落としのない形で 、現実をきちっと踏まえた上で、建前論ではなく、現実を踏まえた上で議論をしていた だきたいと思います。こういう点はどうなのだろうか、といったご指摘をいまの段階で いただければありがたいと思います。 ○星委員  川村委員のプレゼンテーションを見ていて思ったのですが、朝と晩ですか「大掃除」 という発言をされました。あそこでは、さまざまな喀痰をかき出すといいますか、吸い 取れる位置まで出すという作業です。これは、確かにいろいろ大変なことがある、とい うのは印象として持ちました。  最後のところでチョロッとおっしゃったのですが、それをきちんとやっておけば、そ の吸引操作そのものは比較的容易にできる、というご発言もあったと思います。つまり 、そういう大掃除というものと、一般的に昼間何度かやるものとの本質的な違いはどう いうものなのか、もしあるならば教えていただきたいと思います。 ○川村委員  簡単に言えば、自然に痰が気管まで、正常な人と同じように流出してくるということ であれば、カニューレの空の中だけにカテーテルを入れて吸引すれば排出できるわけで す。あえていえば、吸引できるところまで、流出させてくる行為の有無でしょうか。 ○星委員  患者によって、非常に多様であるということ。先ほどの操作を見ていると、肋骨の骨 折を起こすのではないかと不安になったりもしました。人によって、その方の年齢だと か、非常に個別性があるのだということは、是非とも認識をしておく必要があると思い ます。一般論として、ALSの患者はあまねくこうなのだ、というようなことは言えな いのだろうし、大掃除といった表現が必要なステージと、そうではなく比較的容易に取 りやすい時期とある。それは、もしかしたら変わっていく可能性がある。  つまり、同じ人でも、いつでも同じだというのではなくて、変わり得るのだ、あるい は感染を起こしかけているときには、極端に悪くなったりすることもあるのだと。そう いうふうに本日のプレゼンテーションを捉えないと、ああいうものが必ず必要なのだ、 というふうにするのも誤解だろうし、それさえすれば非常に簡単に取れるもので、比較 的わかりやすいのだ、というのも誤解を招く可能性があると思うのです。その辺りは、 現場でご苦労されている先生方からお伺いしたほうがいいのではないかと思うのです。 ○山崎委員  私も、長年訪問看護婦をしておりましたので、ALSの方も含めてかかわってきた経 験を申し上げます。川村委員のプレゼンテーションもそうだったのですが、判断という ことが大変重要になってきます。手技ももちろんですが、看護師に吸引という行為を質 問すると、大体難易度が高い、というところにランク付けをされます。  その手技もさることながら、個別的ないまの状態、いまと明日は違うわけですし、A さんとBさんも違うわけですので、それぞれの判断が伴って、手技が実行されている。 そこのところはエキスパートといいますか、ライセンスを持ったものがやるのだろうと 、自分の経験からも吸引という行為はそのように受け止めております。そういう意味で は、家族がやっているのに、どうしてほかの職種がという議論ではなくて、そもそも吸 引という行為そのものは大変難しいものだということを、いまのプレゼンテーションを 拝見していてなお思ったところです。  冒頭から質疑応答みたいなことになってしまいましたので、まとまった意見を述べる 機会がなかったのでここで述べたいと思います。私どもは訪問看護の制度を平成4年に ステーションという制度ができました。そのときも、訪問看護師が、訪問看護の中でで きること、現行では医師の指示下ということになっているわけですが、どこまでできる のかということ。これからは、在宅で24時間ケアを受ける療養の方がどんどん増えてく るだろうということで、これまでも平成4年からずっとこの10年間、私どもは在宅医療 の推進ということでいくつかのことを、旧厚生省から現行の厚生労働省に申し上げてき ました。  この間、はっきり申しまして行政当局は非常に怠慢だったのではないか、という感じ がしています。それは、一向に在宅医療の現場が進んできていない。進んできた、とい う言い方もできますが、特段この診療報酬改定の度に、在院日数が短くなったり、高機 能の現場で救命救急で大変高い医療ニーズを持つ。本日もお見えですけれども、人工呼 吸器を付けて在宅療養をしている。そのほうが、長期入院よりはQOLが高い。そうい う人たちが、10年前と現在とでは、おびただしく数も違い、質も違う中で退院し、また 、伊藤委員からも出ましたようにいろいろな施設にもお入りになっている。  それでは、そこで本当に医療をきっちり担えるだけの整備をしてきたか、マンパワー もちゃんと確保してきたのか。私どもは、全国からやはり予算がある県は、先ほど福永 委員は、地方はなかなかこうはいかないとおっしゃいましたが、私どもが秋田から頂戴 したのは、秋田の訪問看護ステーションでは、ALSの方の所には毎日行っている。1 回に4時間も滞在することがある。その4時間の間、家族は本当に休息が取れます、と いう方もいるわけですが、これは診療報酬上支払いが充当されておりません。  本当に、いまの在宅推進というコンセプトは、私どももそれは適切だと思うのですが 、いまのあり方では、すべて患者の自己責任、自己負担というところに終わっているの ではないか。このことは、痰の吸引の問題だけではなく、在宅療養支援というふうにマ クロで見たときに、もっともっと推進していただかなければいけないのではないか、と いうことを私は行政当局の皆さんに申し上げておきたいと思います。  いまのままだと、安心してとか、安全にというところからは、大変ほど遠いです。入 院していれば24時間ライセンスがある者がケアをするわけですが、在宅に帰るとチュー ブ1本、これは自費ですよという世界です。このことも、平成8年当時から、在宅医療 推進のあり方検討会等で結論は出ている話ですが、その後に何も動いてきていない。今 日、患者側の膨大な署名で、この会が開かれたということはあるのかもしれませんが、 これはひとえに痰の吸引の問題だけではない、ということも申し述べておきたいと思い ます。  先ほど来議論が出ていますように、いろいろな疾患の方もいますし、いろいろな場も あるわけですので、入院治療だけが医療の現場ではなくなってきているときに、どのよ うに仕組みを作っていくのか、こういうことは真剣に関係者の間で考えなければいけな いところに来ているのではないのだろうか。あまり拙速な議論でということではなく、 このことはもっと幅広に慎重に議論していただきたいと思っております。特に医行為の 解釈については、前田座長もご専門家でいらっしゃいますから、いずれご意見が拝聴で きるのだと思っております。  「社会通念に照らして、医行為の概念も変わっていく」という一文も本日はご提示さ れました。日夜現場で奮闘している看護職や患者の立場から見ると、なかなかこの議論 は難しいだろうと思います。一方でどうすれば、当面の現実的な解決が可能になるのか 。それは、私たちが頭を使わなければいけない、ここの委員会の責任かもしれませんが 、その辺りで慎重な議論を私たちの会としてはお願いしたいと思っております。 ○前田座長  各委員とも、それぞれご意見をお持ちだと思うのですが、本日は全員の方から意見を 言っていただくというのは時間的に余裕がありませんが、あと何回かの場で必ず各委員 のご意見を承る機会はあろうかと思います。  いまのご指摘のとおり、非常に難しくてベストの看護師が毎日何時間も来てやってい ただける体制をつくっていければそれがベストです。初めから妥協というのはアレなの でしょうが、いまある中でどこをどう変えていくのがいちばんいいのか。究極的には患 者の側でいちばんメリットといいますか、良くなるのかということも入れて、それぞれ の立場をきちんと踏まえてご議論をしていただき、まさにあらゆる問題について、どこ からも全く文句が出ない解決というのはなかなか難しいと思うのです。ご議論いただい て、不満は残るけれども、ここはある程度我慢できるというところまでは議論をして、 整理できるように忌憚のないところを議論させていただきたいと思います。 ○福永委員  何事にも、理想と現実はありますけれども、この会が開かれたのは夜間の吸引の家族 は眠れないというか、そういうことが非常に大きな問題になっている。できることなら 、問題の本質として、いま現在現状の中でいちばん困っているのはどういうことなのか を知る意味でも、先ほど五阿弥委員が言われたように、家族の声を聴く機会を何らかの 形で持ったらどうかと思います。 ○前田座長  はい。そういうお話もありましたし、次回の予定も含めて医事課からご説明いただけ ますか。 ○三浦補佐  次回の開催については、お知らせさせていただいておりますとおり、2月10日(月) に、ここの省議室で開催する予定です。次回は、患者・家族の方や、あるいは患者のケ アに実際に当たっている看護師の方、あるいは介護に当たっているヘルパーの方々より 、ALS患者の方へのケアの実情などについてお話を伺いすることとさせていただけれ ばと思います。具体的な人選については、事務局において座長とご相談しながら決めさ せていただくこととさせていただければ幸甚かと思います。 ○前田座長  1週間後ということで切迫していますし、患者団体の方も、もちろんしかるべき方を 選んでいただけると思いますので、いまのような形でスピーカーを選ぶということでよ ろしいでしょうか。 ○星委員  その点で一つお願いをしたいのですが、一般的に議事録が送られてくるのが1カ月ぐ らい先なのです。今回は1週間後ということですから、できる限り早くに作成していた だいて、自分の発言、あるいは他人の発言をもう一回確認するというのは、こういう議 論のときには非常に重要なので、是非とも頑張っていただきたいと思います。 ○前田座長  頑張ってはいただけると思うのですが、これは正確を期さなければいけないとか、い ろいろな要請もありまして、議事録は意外に時間がかかるものなのです。ご希望はその とおりだと思うのですが、できる限りの努力ということで、10日までにきちんとした完 成の議事録がというのはなかなかきついと思います。仮のものぐらいだとアレかもしれ ないのですが、それはご相談の上、できる限りの努力はさせていただきます。  本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、熱心にご議論いただきましてあ りがとうございました。今後とも是非よろしくお願いいたします。本日はこれで閉じさ せていただきます。どうもありがとうございました。                                     −了−                             照会先                             厚生労働省医政局医事課                             課長補佐 三浦(内2564)                             (代表)  03-5253-1111