02/11/22 第12回不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会議事録      不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第12回)議事録      1 日時   平成14年11月22日(金) 10:00〜12:00 2 場所   飯野ビル308会議室(3階) 3 出席者  (1) 委員(五十音順)   (1)岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (2)小幡純子(上智大学法学部教授)   (3)諏訪康雄(法政大学社会学部教授)   (4)村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)   (5)山川隆一(筑波大学社会科学系教授)  (2)行政    熊谷参事官、中原調査官、山嵜中労委第一課長、荒牧参事官補佐 4 議事 ○ ただいまから「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」の第12回会合を開  催する。   本日は、前回に引き続き論点項目の具体的検討を行いたい。前回は論点の1及び2  の議論を一通り終え、3の「不当労働行為の審査手続」について、若干の議論をし始  めて終了したかと思う。そこで、本日は、最初に審査手続に関することから始めて、  できるところまで各項目について議論したい。   なお、労働委員会の処理件数の現状を取りまとめた資料については、第1回の研究  会で資料として提出されたが、それについて平成13年の数値でリバイスしたものをお  手元に資料No.1としてお配りしている。また前回同様、ヒアリング結果を取りまとめ  た資料を配付しているので、適宜参考としていただきたい。   それでは、さっそく審査手続について議論を始める。 ○ 2ページで、一般論としては、司法制度改革との関係で、裁判所が審理期間を短く  すると、労働事件についても短くなる。それとの関係では、やはり労働委員会も審理  期間をどういうふうに短くするかということを検討する必要があるのは確かである。  ただ、これは審査と調整の関係をどうするかといったことに関係するが、そもそも統  計の取り方が大きく影響している。実際に都労委でやってみて思うのは、審査手続の  中で、審問に入る前、あるいは審問が終わった後などに、調査という形で実際上、和  解に向けての作業をやっている。手続としては審査であるが、実態としては調整をや  っているということがかなりある。それを審査手続よりも長く行っているケースが往  々にしてあって、今の統計では、これが全部審査手続の中に入ってきてしまう。そう  いう意味で、処理日数というのは、仮に命令に至ったケースについても、統計上は長  く出てくるということを否定できない。調整をやっていた部分を除いて、純粋に審査  だけをやっていた期間を取り出して命令までということになると、もっと短いと思う  。大型の事件で証人がたくさん立つということであれば別だが、そうでなければ短い  と思う。都労委も証人をだいぶ絞ってやっている。調査が長いというのはある。それ  は、そこでネゴシエーションをしているからであって、その辺の統計の取り方もある  とは思う。ただ、それはどうしても技術的に難しい。そこを一緒にやっている限りは  、地労委は事件処理に時間が掛かっているというふうに出てきてしまう。 ○ 調査で時間が掛かっているというのは中労委も一緒である。結審後に命令まで時間  が掛かっているという部分でも、審問を終えた後で調査を行い、かなりの時間をかけ  て和解作業を続けることも少なくない。そうして時間を掛けたあげくに、やっぱり駄  目だからということで命令になる。 ○ それは、前にも話が出た審査と調査を区分するという考え方でも持ち込まないと、  統計的に分けるというのは実態としては難しいと思うが、これは数字の上で言うと、  和解という作業をどこまで頑張ってやるかということになる。その実務運営と関係し  ているのだろう。 ○ 裁判所が数値目標を出したが、それは善し悪しだと思う。そんなに単純なものでは  ないだろうし、平均して2年というが、非常に簡単に判決が出るものもあるだろうし  、和解で終わるものもあるしという中で、あまり利益のある議論ではないと思う。ま  ったく同じことを労働委員会に持ち込むというのも、あまり合理性がないのではない  か。弁護士も、労働者が事件を労働委員会に持ち込むのは、裁判所と違う機能を期待  しているからだということは、はっきり言っている。裁判所に行くと、過去のことの  善し悪しだけが争点になるけれども、労働委員会に持ち込めば、必ずしもそうではな  い。要するに和解機能なのであるが、今後のことも含めた対応をしてくれるのではな  いかと言っている。審問というのは、はっきり言って裁判所と同じ感じになっていく  。ただ、それ以外の機能が多いことをどういうふうに見るかということだと思う。も  ちろん裁判所も、最近和解に持ち込みたがる傾向があることは事実であるが、そこで  の和解よりも、労働委員会での和解の方が、もう少し時間を掛けて言いたいことを言  った上で和解できるとユーザーが考えているとすれば、必ずしも裁判所と同列に論じ  なくてもよいと思う。それなら裁判所だけあればいいということになる。やはり労働  委員会には違うものがあるのではないか。最近、数値目標が出されたので、裁判所は  とにかく急いで判決を出す。弁護士もほとんど書面でいいだろうという感じである。  裁判官自身が非常に簡易化を狙っていて、十分に証人が証言できない。書面で出した  ことはもういいという感じである。それでは労働委員会もそうするのか。それとも裁  判所に事件を持っていくと急いでやる感じだが、労働委員会は違うというふうに持っ  ていくのか。それが大きく二つに分かれているところなのではないか。2〜3回の審問  で終わってしまう事件もけっこうあるし、審問が全部終わって命令を出すしかないだ  ろうと思っていたら和解になる事件もある。単純な数値目標を掲げるのは良くないと  思う。 ○ 今おっしゃったことは、たぶん労働紛争の特徴と関わりがあると思う。現実に審判  の対象になって現れたものと、紛争の全体像との間にかなり違いがあって、審判の対  象だけ解決しても、紛争の全体とないしは労使関係は改善しないという意味で、必然  的に時間が掛かるという面があるのではないか。裁判所でもそういう事件はあるのか  もしれないし、和解に掛けた時間は裁判所でも処理の日数にカウントされると思う。  ただ、今述べたような点での紛争の性格の違いのようなものは影響がある気がする。  もう一つ、労働委員会で制度的に出てくるのは、裁判所の処理待ちなど、外部要因で  変わってくるという点である。そういうのは統計上に出てこないという感じがしてい  る。 ○ 裁判所の処理待ちというのはたしかにある。それと、要するに、労働委員会は費用  がかからないから、組合側が裁判所と労働委員会の両方にかける。労働委員会として  も、それを実際にやられると、正直言って動けない。当事者が待ってくれというのも  あるし、労働委員会としても動きがとれない。 ○ 今のように、労働委員会が長くなっているのは、いろいろな理由が積み重なっての  ことだと思う。さっき話があったが、判定的な機能と調整的な機能についても、労働  委員会はかなりサービスしている。要するに、それを切り下げるという発想なのでは  ないか。司法制度改革で、処理を早くしなさいと言っている。そうすると、紛争の解  決は当事者の納得によるということから見たら、早い解決とは必ずしも合致しない。  それを早くしよう、それが良いのだという背景には、要するにそれだけのコストをか  けられないということがある。ある意味、労働委員会もそれをやりなさいということ  であろう。そういう背景の中で、労働委員会制度というのは特殊だから時間が掛かっ  ても良いというには、それなりの根拠を示していく必要がある。 ○ そうすると、今出ているのは、要するに裁判所だったら待ってくれと言われてもそ  んなに待つことはしないだろうが、労働委員会では待って「塩漬け」という対応をす  る問題である。それで処理期間が2,000日とか3,000日とかいった事件が起きている。  そうした場合、当事者が全くやる気がないわけで、労働委員会側としてはどうしよう  もないということがある。それから事実上、審査ではなくて和解として、いわば独立  の手続になってしまったかのように、それが事件処理の過半を占めるというパターン  もある。そういう事件は、労働委員会の持つ、裁判所と違う機能、あるいは当事者の  期待というのと対応していることがある以上、同じような統計の取り方ではなくて、  労働委員会的視点から、もう少し丁寧に、質的な区分をして統計を取ってみるという  作業も必要なのではないか。ともかくこういう現状にあるのを全体の審査手続その他  にどう反映させるかということだと思う。結局、裁判所はどんどん急げということで  、新幹線のように目的地に早く行くということになる。労働委員会は、ますますロー  カル線になっていくので、新幹線とローカル線を同じ観点で比較するのは、やはり無  理だろう。在来線としての機能をどのようにシェイプアップして満足を与えるかとい  うことになる。しかし、新幹線は速いのが当たり前で、ローカル線はいくら遅くても  いいということではない。ローカル線も速く走るべき部分は速く走らなければならな  い。ただ、ローカル線は駅に長く止まるわけで、この部分をどうするかということで  、審査手続を議論していただければと思う。 ○ その前に一点だけ。裁判所との関係で言ったときの問題点というのは、労働委員会  に来る事件が、特殊性があって、したがって裁判所とは違う類型のものが来ていると  。だから裁判所に比べるとどうしても時間が掛かるのだという説明が成り立つのであ  れば、そこは労働委員会の特殊性ということで説明がつく。ところが、一号事件の解  雇になると、全く同質になってしまう。そうすると、裁判所は早く判決が出るのに労  働委員会は2年掛かるということになると、説明がつかなくなってしまう。その点で  、裁判所との棲み分けの問題があると思う。アメリカのようにきれいに分かれていれ  ばいいが、そうではなく混合体になっているし、しかも、例えば団交について、団交  を求めうる地位の確認などがあったりするので、裁判所と労働委員会の権限関係が競  合していて、同質の事件があっちにもこっちにも係属するという状態になる。そうす  ると、労働委員会はゆっくりやるという意義を見つけにくい。それともう一点、和解  のやり方の違いなのかとも思うが、裁判所が中心になってイニシアティブをとって進  めるのに比べ、労働委員会の場合は労使交渉の場になっている。そこが大きく違う。 ○ 裁判所の場合は、裁判官がかなり強引に案を出すが、労働委員会の場合はそこまで  できない。 ○ それをやってみても、当事者がまずそっぽを向いてしまって、全く反応がないだろ  う。   和解の話には、今後とも必要に応じて戻ることにする。今、委員が提示したのは以  下のような問題だった。先ほどのたとえ話を使うと、同じローカル線であっても特急  と各駅停車があるのに、今はローカル線だからといって各駅停車しか作っていない。  だから、急いで行きたい団交事件だとか、個人に対する差別事件などの問題も、組合  全体と使用者との関係を何とかしようという形で、問題を拡大してしまう傾向がある  。その結果、特急として進むことがない。だから、様々な人がいて、労使関係の基本  ルールからなんとかしなければならないという、時間が掛かって当然の事件と、この  ようにさっさとやらなければならない事件とが、判然と区別されず、早くやらなけれ  ばならないものも、やたら時間が掛かる。その結果、事件を裁判所と労働委員会の両  方にかけると、中労委に行った頃には裁判所の方では最高裁判決が出てしまっている  ということも最近出てきている。裁判所で判決が出て確定すると、もう労働委員会は  命令が出せないということになるので、そういう形で処理をせざるを得ないという、  大変困った事態が出始めている。それをどうするか。審査手続そのものについてご意  見をいただきたい。 ○ それはたぶん、2ページのロからハにかかるところであるが、実際にやってみると  、審査委員が主導権を取って審理を進めていくというのは、少なくとも初審の段階で  はかなり難しい面がある。それは、不当労働行為の申立書だけでは、事件の全容がわ  からない。それと、これは個人的な見解であるが、今の救済申立書の様式には大きな  問題があり、しばしば読んでも不当労働行為だと主張されているものが一体何なのか  が把握できないことがしばしばある。したがって、どうしても調査を2〜3回やって、5  W1Hを書いてもらうという作業をしないといけない。その意味では委員のイニシアテ  ィブというのは必要だが、その情報を持っているのは当事者なので、当事者にそうい  うことをしてきていただかないと、審理が進められない部分がある。事前の申立書と  答弁書が出てきた段階から、一応不当労働行為だという使用者の行為を確定するとい  うまでのところで、かなり審査委員がうまく主導権を持って、そうした事実を当事者  から引き出すかというのが、一つのポイントだと言える。そういう意味では、審問ま  で行くところは、そこがポイントである。逆に言うと、申立書のスタイルを何とかし  てほしい。何が不当労働行為かが明確でない形で出てくると、審問のしようがないし  、そこで非常に時間が掛かるし、そういうのが大事だということを説得するのも時間  が掛かる。事実の主張などは、当事者がどうしても言わなければならない部分である  が、それをうまく出させるかというのは、審査委員のイニシアティブである。それを  当事者がちゃんと聞いてくれるだけの職務権限が、裏付けを伴ってあると、かなり改  善すると思う。現行法上も労働委員会規則で、ないわけではないが、やはり労使の参  与委員との関係があるので、難しいところではある。 ○ 最初の事案の聞き取りなどは、事務局でスキルアップすればできるのではないか。 ○ 我々は職業裁判官ではないので、その限界は確かにある。今のことと関連して、私  は労働法の専門ではないので、外から見て非常に奇異に映ることがある。常識的に言  うと、裁判所の方が当事者主義、弁論主義でやって、労働委員会は準司法的手続だか  ら、多少職権的であってもいいと思われるのに、まず参与委員がいるという点が特徴  的である。それで非常に当事者主義的、弁論主義的なやり方を慣行としている。ぐい  ぐい引っ張っていくというやり方は採っていないし、強制的権限を行使するには総会  の決議がいる。それをやるのは大事であるといって、できない。裁判所に比べると権  限もないし、イニシアティブで審査委員が引っ張っていくというムードになっていな  い。裁判所は両当事者とも弁護士がついて、目的設定されている裁判官が急ぐという  やり方は、非常に強引だという批判がユーザーの側から出ている。裁判所はこの頃急  ぎすぎると。逆に労働委員会は、先程の村中委員の言い方を借りれば、サービスを低  下させていないというやり方を採っている。準司法的で職権的な色彩がありそうなと  ころなのに、現実にやっていることとギャップがある。でも、参与委員がちゃんとい  るということで、何となくあっせん的な調整機能を期待しているのが制度の建て方な  のだろう。求められているものが、裁判所に直結している判定的機能と、そうでない  部分とがごっちゃになって運営されていると思う。外から見る者にとっては、そこが  非常におもしろい制度だと思う。 ○ それは、まさに紛争解決の在り方と強く関係していて、当事者主義的な部分と、委  員のイニシアティブの問題がぶつかるのは、紛争解決の在り方である。組合側は、根  っ子から解決したいと思っている。ところが、審査委員の主導という形で命令まで行  くということを考えた場合、事件の処理にとっては根っ子の部分はあまり関係ない。  そうすると、審査委員がイニシアティブを取って、事実関係を明確にさせてというこ  とになると、5W1Hになってしまう。しかし、当事者は、そんなことはどうでも良いと  思っている。そこに大きなギャップがある。 ○ そこは根本的な問題だと思う。ただ、根っ子から解決するのではなく、とりあえず  一点突破型解決をするという機能もありうるのだろうか。とりあえず、求められてい  る不当労働行為だけを解決しても、それなりに意味があるのだろうか。 ○ そこは命令の実効性の問題だと思う。根っ子を解決しない限り、際限なく不当労働  行為の申立をしなければならない。根っ子から解決しなければならないから時間が掛  かる。 ○ 時間を掛ければ解決できるのだろうか。 ○ 特に使用者側であるが、時間が掛かっている間に使用者委員が教育する。こんなこ  とをすると不当労働行為の申立をされるということを、一生懸命教育する。 ○ 長くかかると、とりわけ訴えられた側には紛争コストがかかる。長くかかるという  のは、そういう意味では圧力をかけることになるから、使用者委員としては説得しや  すくなる。労働側にも同じことが言える。つまり、参与委員が説得しやすくなる。 ○ その間に、組合の切り崩し工作があるようなことも聞くが、そういうことがもしあ  れば、それは迅速に解決したいという希望があることからすると、どう考えるべきな  のだろうか。 ○ それは早急に和解という方向になるのだろう。早急に命令手続というよりは、相手  を説得して早急に和解してほしいというニーズがある。ただ、使用者側がどうしても  崩れないときは、急いで命令を出してくれということになるが、そうでないときは、  とにかく調査の最初から和解ということになる。 ○ 最初から和解志向であるもの、和解志向かどうかはわからないがしばらく審問をし  ながら状況を見るというもの、それから審査にどんどん入ってほしいというもの、こ  れらは事件の性格によって違う。それは当事者もはっきりと分かっていない場合が多  い。始めから分かっていれば対応しやすいのだが。労働委員会側も慣れてしまってい  るので、まずは和解ということになりがちである。 ○ 命令を出しても最終的な解決にならないことが多い。本当のことを言えば、裁判所  の判決もそうだと思う。勝った方はとりあえず良いかもしれないが、それでは本当の  解決にはならない。 ○ その場合に、最近かなりの数を占めている、駆け込み訴え的なものは、労使関係が  恒常的に存在し得ないが。 ○ 駆け込み訴えは実定法を作ればいいと思っている。中労委で、駆け込み訴えの場合  は、金銭解決のガイドラインのようなものを作ってしまえばいい。この場合は、不誠  実団交などで団交命令を出しても何の意味もない。 ○ 極論かも知れないが、意味のない命令でも出すことはありうるのだろうか。 ○ 駆け込み訴えは出してもしょうがない。最終的に和解が進まなくて、もう審問をや  るしかないけどどうするかと尋ねると、組合はたいてい申立を取り下げてしまう。後  は裁判所に行く。 ○ 意向を早く出してくれないと、命令が出てしまうだろう。 ○ そこの意向がはっきり出てくれないと困る。 ○ 個別紛争のあっせんは、事実内容を最初に調べるが、事務の人がどれだけ詳しく聞  いてくれるかというので、進みやすさや後での判断の間違いのなさが、だいぶ違って  くる。   当事者主義でやるなら当事者が言わないことはやらなくていいということになるが  、職権主義でやっていくなら、判定する側がある程度材料を集めなければならないだ  ろう。 ○ そうであるが、そこはあまり意識されていないので、強引にやりすぎると反発され  る。本当はやっていいはずと思うが、慣行と乖離している。論点整理は裁判官の方が  していると思う。 ○ 反発されると和解の可能性がなくなってしまう。和解ができないと、労働委員会の  機能のかなりの部分が、何のためにあるのかということになる。 ○ 裁判官も、今は非常にイニシアティブをとってやっているが、それに対する反発は  確かにある。当事者に話を聞くと、すごく乱暴だとか、最初から心証を形成した上で  こうだと言われる。それは労働事件に限らない。まさにサービスの低下だと思う。本  当は、労働委員会はそういうふうにやっていいはずなのに、逆になっている。 ○ 職権の発動は、必要な証拠が見つからないから出せというところと、そもそも主張  がはっきりしないから明確にしろということと、二つありうると思うが、後者の主張  については、全労委総会の資料に争点整理票が出ていた。それを使えば、けっこう改  善されるのではないか。 ○ 体制のところになるが、やはり専門職がある程度必要だと思う。 ○ やはり、それなりのスキルがないとできない。 ○ 主張の整理も、言われたことだけを並べるのではなく、何が判断に必要かというこ  とが分かった上で、それに沿った主張を摘示しなければならない。 ○ 公益委員を常勤化するか、非常勤のままなら事務局体制について、もっと専門職の  人をたくさん入れないといけない。そうでないと、事件数が多いところなどはとても  追いつかない。 ○ 都労委で今、申し合わせていて、やっと少しずつやるようになっているのは、当事  者の主張の整理である。組合がこう主張しているのに対して、相手方がこのように答  弁している。主張に対してこういう書証が出ている。そういった整理はする。 ○ 先程の言葉を借りて、根っ子から解決してもらいたいということになると、ありと  あらゆることが争点になってしまう。要件事実の問題ではないということになる。組  合が始まって以来全ての問題が問題であり、それらをよく聞いた上で押さえないと事  件は解決するはずがないということになる。西洋医学で手術するのではなく、漢方で  根っ子から解決してくれないと困るということなのだろう。そういう制度だと割り切  ってしまうのもひとつあるのではないか。ここはローカル線の各駅停車で、特急も準  急も走らないと。 ○ 飛ばして裁判所に行けるというシステムもあるのではないか。言いたいことを言わ  せてもらえるのは裁判所でなく労働委員会であると。 ○ やりたければ何十回でも審問をして、膨大な記録が残る。 ○ そうなると、証拠調べという感覚ではないはずで、実質的には調整をやっているこ  とになる。 ○ 一種の立会い団交である。 ○ そこで、調整機能だけにしようとする考えも出てくるが、やはり判定の裏付けがな  いと上手くいかない。 ○ 判定機能が後ろにあるから、調整が働く。純粋な調整だけだと、成功率は高くない  。見ていると、やはりあっせんは成功率がそれほど高いわけではなく、即日打切りに  なることもある。 ○ 早めに命令を出せるような段階に持っていくというのはどうか。 ○ それも一つのやり方だと思う。しかし、それも結局当事者のニーズということにな  るだろう。 ○ 審問を終えてからの和解というのは、かなりそういうのもある。心証もできている  し、事件の推移も大体分かっているから、いろいろ水を向けるが、そのときに裁判所  がやるようにはできない。両参与委員の役割に配慮し、また期待して、共同作業をし  なければならない。そして、次に問題になるのが職員の事情で、やはり命令作成作業  が避けられればこれに越したことはないとの思いもあるので、和解の方向に傾きがち  である。和解を進めながら命令の骨子でもできていけばいいが、そういうわけでもな  い。結審後命令までに時間が掛かる理由の一端はそこにある。つまり、結審後命令ま  で2年掛かっていて、そのうち1年半は和解をやっていたりする。 ○ そのような場合、いざ命令を書こうとすると、必要な事実の証拠が不十分だったと  ということも生じかねないのではないか。 ○ 確かにそういう面がある。2ページのロのところで言うと、当事者主義的運営とい  うことで言えば、審査委員の職権行使は、一つは審問に入る前の段階での事実の調査  のところで、どれだけ当事者に必要な事実等の整理をさせるか。そのために委員がイ  ニシアティブを取っていく。しかし、それは先程も言ったように容易ではない。事実  等の整理が不十分なまま審問に入って、いざ命令を書こうとすると証拠がないという  ことになってしまう。その辺りが一つの問題で、職権の行使がどうあるべきかという  のは、そういう不当労働行為の審査にとって何が必要か、特に命令を書くことを考え  た場合にどういう作業が必要なのかということを、審査委員自身にも知っておいても  らって、当事者に積極的に働きかけてもらって事実を主張させる。職員と参与委員も  そのことをきちんと理解してほしい。もう一つは、本当はその点で職員がスキルを持  って、申立書を精査して、例えば三号事件ならどの事実が必要で、これはあるけどこ  れはないというようなことまでやってくれれば、審査委員としては、調査の場で相当  やりやすくなる。 ○ そこは初審の場合ポイントになると思う。しかし、今の職員のローテーション人事  の中では、地方自治体には非常に困難だと思う。どういうふうにすればいいだろう  か。 ○ 法務関係の、ロースクールを出た人が公務員になって、法務関係にずっと配属され  るようになるのではないか。情報公開審査会とか、土地収用委員会とか、いくつかの  委員会があるので、そこの訴訟担当ということだろう。これからは少し雇っていかな  いといけないはずである。 ○ そういう委員会を回れば、基本的に争点を整理して、要件事実を確認していくとい  うのはどこも同じであるから、どこに行ってもやれる。 ○ 法務関係の専門職というのを少し充実すれば良い。今は、一般行政職のローテーシ  ョンの人が多すぎると思う。 ○ 今、法務の専門は参事が一人いるだけである。他は労働委員会のベテランによって  今の事務を支えている。 ○ 都労委でさえもそうなのだから、まして専門性の弱い、地方の小さな県の労働委員  会が、質の高い専門職の職員を準備することは難しい。   今日は、3だけでなく、4の部分も少し議論しなければならない。3について、今ま  での議論以外に何かあるだろうか。 ○ ハの部分で、争点整理については既に議論した。審理計画について、私の場合は一  応の見通しを示した上で審理をどうするかということをお話しする。代理人はその辺  が分かっているからいいが、当事者はどういうふうに話が進むかということを知らな  いことがあって、これだけ証人を立てると、審問が終わるまでにどのくらい掛かると  いうような形をつけて、証人を絞ったりする。それを審理計画というのであれば、そ  の程度のことはやっている。それから、期日の複数指定というのは、実際組合の側か  らけっこう希望が出てくる。だから、実際には次回だけでなく次々回も決めるという  ことはけっこうある。それから、職権尋問の積極的実施は極めて困難である。こちら  が常勤で、調書等をしっかり読むことが可能であればできるが、事実を知っているの  は当事者なので、こちらから主導して尋問していくというのは難しい。今までの経験  ではむしろ、主尋問があまりにお粗末だったので、必要な証言が出てこなかったから  こちらが聞いたということがあった。書面審理については、審問中心主義が何とかな  らないかというのが私の考えである。背景立証等については、正直言って陳述書で良  いのではないかと思っている。それと、代理人の代表制について、これは都労委など  でも、徐々に全員でなくて代表の方が出てきてということが言われているが、従来の  例としてはむしろ代理人の方が折れる。都合があるけれども、そっちは調整してこっ  ちに来ようという形になっている。 ○ 争点整理の点であるが、将来的には事務局の専門職化があるとしても、とりあえず  の取り組みとしては、7条各号の主要な類型ごとに基礎的な争点の例とか、整理の仕  方などをモデルとして複数用意していくことではないか。 ○ それをやってもらえると、非常に違ってくると思う。申立書のスタイルがあると、  それだけでも職員の専門性の不足分を補うという点ではかなり有効だと思う。 ○ 私もそこは同感である。一つはそういう類型化したマニュアル本で、もう一つはエ  キスパートシステムだと思う。要所ごとにイエスかノーかを聞いていくと、相当程度  までパターンが決まってくる。データベースだけでなく、エキスパートシステムを開  発していくと、ずいぶん地方の労働委員会などの件数をこなしていない職員がやりや  すくなると思う。ただ、問題は、こうした類型化に労使の側があまり賛成しないこと  である。これまでの命令その他をまとめてそういうものを作ろうと言っても、これま  では積極的には乗ってこなかった。 ○ 審問期日の複数指定というのは、非常勤でやっているものとしては、本業があるの  で、私も3〜4回は入れたことがあるが、やはり難しいのではないか。常勤の裁判官と  違い、若干無理があるという感じがする。使用者側も駄目になったりして、せっかく  ずっと先まで決めていても無駄になったりする。やってはみるが、そこは限界がある  。裁判所とは違う。 ○ 確かに、せいぜい次回と次々回の2回分ぐらいだと思う。 ○ それでは、審査手続についてはまだあると思うが、このくらいにして、4番目の論  点の、審査体制についてご意見をいただきたい。 ○ 一つの考え方として、審査担当の公益委員と調整担当の公益委員を分けるというの  があると思う。つまり、ノンロイヤーは審査に関与しなくて良いのではないか。都労  委はそれだと人数が減ってしまって回らないので、常勤化する必要があると思う。 ○ 調整担当を常勤化する必要はないだろうか。 ○ ないと思う。しかし、審査担当については常勤化する必要がかなりあるのではない  か。全員でなくても、2人いればずいぶん違う。 ○ ロースクール出身者を入れるなどして、事務局の方を専門化すればいいのではない  か。 ○ やはりノンロイヤーが審査を担当するのは容易ではないと思う。 ○ 我々が労働経済学について、数式を使って議論できないのと一緒で、当事者、特に  弁護士を納得させることは難しいし、事務局を指揮できないと思う。 ○ 調整事件は十分やれると思う。 ○ そうすると、今度は和解志向との間で問題になる。ヒアリングをしても、裁判所の  真似をして新幹線のようになるのは駄目だという反発が労使の側から出てくる。 ○ 公益委員についてはそうだろうし、もしノンロイヤーの人を同じように公益委員に  するというのであれば、審問の前にある程度の研修をするといったことをきちんと考  える必要があるだろう。 ○ 少しぐらい研修をしたところで無理だと思う。ゴルフの達人がいきなり野球に来て  も同様に活躍できるわけではないのと一緒で、プロとしてやるのは困難だと思う。そ  れから、相当の見習い期間をおかないと駄目だろうから、そうすると2年ぐらいの現  行任期内でやるのは無理がある。とりわけ早くやらなければならない判定については  、やはりロイヤーが中心で、できたら常勤化する必要があるだろう。 ○ しかし、それは自治事務になってしまったので常勤化せよというのを、今の財政状  況の中で言うのは難しいだろう。実現ということになると、常勤で来てくれる人を探  すことはできないのではないか。 ○ ここには書いていないが、最初から審査委員が一人で担当することの問題点につい  てはどうか。 ○ 労働委員会は事件担当がみな一人だと聞いている。そうすると、当たりはずれが出  てくるのではないか。参与委員がいるからこういうシステムになっているのだと思う  が、他の行政委員会にはないと思う。 ○ 例えば、3人の委員会でやるということになると、何が問題になるかというと、審  査についてはもう少し自信を持って、審査委員同士でディスカッションできるからい  いのだが、現行の非常勤体制のまま関係委員が3人ということになると、日程がます  ます取れなくなるという問題がある。それから、忙しい労働委員会だと人手が足りな  くなる。 ○ 情報公開審査会なども、結局常勤がいて、3つか4つ部会を作って、部会自体は3〜4  人ぐらいで、でも常勤が中に1人いるからということで、わりと楽に回っている。 ○ 小法廷方式を採るというのも、採り方によると思う。今言っている小法廷方式は、  要するに公益委員全員でやる会議を分けてやろうという程度で、最高裁流の小法廷で  はない。 ○ 審査は一人でやらせておいて、命令はみんなでというのは、外から見ると不思議な  システムである。 ○ 情報公開審査会は3人でやるということなのか。 ○ 3人でやることも4人でやることもある。国の方は常勤が1人に、あと非常勤が2人だ  と思う。結局、情報公開審査会の場合は、本物の準司法手続ではないので、口頭意見  陳述に呼んで、意見を聞いて終わりということになるので、全然違う話だと思う。シ  ステムが裁判所の法廷とは全く違うので、回数的にも、口頭意見陳述を一度開いたら  、何件もまとめてできる。もう一つ、公害健康被害の審査会は合議制で、常勤と非常  勤の組み合わせで、全員そろわないと絶対に開けない。一応法廷のような形でやるこ  とが法定されていて、一人でも欠けたら大変ということで、人数を必死で確保すると  いうやり方である。いずれにしても、一人でやることはあり得ない。 ○ 逆に、もっとも典型的な例を挙げれば、判定的な処理経験の少ない委員会で、ノン  ロイヤーで同じくこの種業務の経験のない事務職員がいて、ノンロイヤーで経験のな  い委員がいたとする。この組み合わせで、しかも一人で事件を担当するということに  なれば、判定の質が期待できなくなるのも、ある意味で当然かもしれない。   合議の問題について、何ら審査に関係していない委員が合議して、その意見によっ  て事実認定も変わったりするのはおかしいのではないか。この点はどう考えるべきか  。 ○ 事実認定が変わるというよりも、こういう評価だからここが足りないのではないか  ということではないか。それが変われば、当然結論も変わってくるだろう。必ずしも  皆が専門家ではないために、こういう判断を下すときに何が必要かというものが落ち  てしまうことがあるのではないか。 ○ それなら、始めの体制として、2人体制なり3人体制にしておかないといけないので  はないか。当事者にとっては奇異だと思う。 ○ 目の前で聞いてくれた委員が得た心証と違う命令が出るということが起きてしまう  。 ○ そこでは、限られた証拠でいきなり書面審査が始まってしまう。審問をさんざん積  み重ねておきながら、残りの12人の人たちの書面審査になってしまう。だったら、最  初から何人かが案作りに関わって、アドバイスしながらやった方がよほど良いと思う  。 ○ 少なくとも、争点整理などのところで、他の人が関与すればずいぶん違うのではな  いか。チェックするのが遅すぎるとの感がある。もう交付するという状態になってい  るのに、大事な要件事実を落としているということにもなってしまいかねない。 ○ 誰かが入ってチェックするというシステムにして、仕上げなければいけないのでは  ないか。 ○ もう一つは、委員の中にいる会長などをロイヤーにして、その人を常勤化させ、必  ずチェックするというシステムにすることだと思う。 ○ それぞれの労働委員会で、慣行としてやられていることがあるとはいえ、今のシス  テムには問題があると思う。 ○ 将来的には、位置づけをもう少しきちんとすべきだと思うが、一応現行制度を位置  づけるとすれば、出された原案のレビューをやるということではないか。それもアメ  リカのような形であれば当事者の異議に基づいて行うというのが本来の姿かもしれな  いが、職権再審査のようなことがシステム的にビルトインされていると言えなくもな  いと思う。 ○ 再審査前置ならそれもできるだろうが、現状で内部にあいまいな形の再審査を設け  るのはどうだろうか。本来は一人の審査委員というのは問題があるとは思うが。 ○ ただ、現状では小法廷方式はできない。人が足りないし、組み方によっては専門家  でない人ばかりが入ってしまうこともある。 ○ それは会長が指名してやればいいのではないか。 ○ しかし、事件についてちゃんと知っている人でも、非常勤である限りいつも出てこ  られるとは限らない。 ○ 本当は常勤化とセットだと思う。常勤化で、小法廷方式にして、13人合議などかけ  ない。 ○ もう一度確認すると、判定を主として担当するロイヤーは常勤化して、情報公開審  査会のように、全体に目配りをするような中で小法廷方式にするのは良いということ  だろうか。 ○ そうすれば、命令の出し方などももう少し機動的にできると思う。今だと、合議に  かけられる数も限定されてしまっているので、もう少し柔軟な体制が取れるようにな  ると良いと思う。 ○ それでは、他の点ではいかがだろうか。 ○ 参与委員についても、常勤にするという方向もありうるのだろうか。 ○ 自分で命令を書くわけではないので、それはないと思う。 ○ もし常勤になっていたらいいことがあるだろうか。審査体制との関係ではないだろ  うか。調整の方ではどうか。 ○ 参与委員の役割が小さいというわけではないが、常勤化までする必要はないと思う  。 ○ 事案の認定に関しては、一種の専門家としての役割で、労使関係の慣行や経験則を  教えてくれるということがありうるが、あとは和解の仲立ちをお願いする役割を果た  すという感じであれば、判定とは区別できる。やはり専任まではいらないのではない  かという気がするが。 ○ 参与委員が審問に出るというのは、和解をする上でも一つの役割があって、そこで  一定の心証を得る。特に労側に関しては、彼らなりに情報収集している。それはそれ  で意味があると思う。 ○ 審問のとき、参与委員は出てこないこともある。審査委員がいれば審問はできるか  ら、別にいなくてもいいということもある。 ○ 参与委員が尋問するということはないのか。 ○ あるが多くはない。 ○ そうすると、やはり参与委員は主として和解における役割が大きいということで、  判定機能における役割は何なのであろうか。意見陳述は意味がないわけではないが、  非常に大きな比重を持っているというわけでもないと思う。 ○ 既に命令書の原案ができているところで意見陳述をしても、それだけではあまり意  味は大きくないのではないか。 ○ ただ、実際問題としては、審査委員はそれまでに参与委員と接触しているわけで、  雑談のような形で話を聞いている。 ○ 大体労使とも同じ業界の人が参与委員をやるので、話を聞くことによって、その業  界の相場というのがわかる。 ○ むしろ、審問や調査をやる前の、非公式の席で出てくるものが役に立つ。 ○ 公の書面も、合議のときに急に出てきて、審査に関わっていない人たちが見たらそ ういうものだと思うが、現実に審査委員と一緒にやっていたときにそう言っていたかど うかというのは分からない。 ○ 意見陳述に関しては、建前しか言わなくなってしまっている。 ○ 最後陳述書などのさわりの部分をさらに要約している。独自の立場でしゃべってい  ない。ただ、見ていると、使側は「これは不当労働行為だ」と言う人がかなりいる。  ただし、「労側が全て正しいというわけではないから、その辺りに関して配慮した命  令にしてくれ」と付言する。相当に説得力がある。これはおそらく取消訴訟にはなら  ないとも言う。そうしてくれれば自分が説得するという意味なのだろうと思うが、こ  ういうのは非常にありがたい。それに比べ、労側委員が「これは不当労働行為ではな  い」ということは非常に少ない。参与委員はある一定の独自性を持つべきだという考  え方からすると、おかしいといえなくもない。もう一人の補佐人・代理人のようにな  ってしまっている。 ○ むしろ、合議というほどではないが、証拠の評価のような点につき意見を聞く機会  が、短くても良いから制度化されていれば、そっちの方が有用ではないかという気が  する。もう一つ、不当労働行為が成立する場合に、救済命令の中身についてこういう  工夫があり得るとか、実際に人事がうまくいくように工夫できるかとか、そのような  点についての知恵を借りられるとよいのではないかと思う。 ○ そういうのがあれば非常にありがたいが、あまり踏み込んだ意見というのは実際に  はない。 ○ たとえば、救済命令としてここまでやるのは、通常の人事運営からみて難しいとい  う意見などがでてくれば、有益な場合があると思うのだが。 ○ 他に何かあるか。 ○ 公益委員の選任について、労側の弁護士も使側の弁護士も選ばれず、無色透明の労  働法を知らない人が選ばれている。 ○ むしろ専門性のない人が選ばれるシステムになってしまっている。前に、公益委員  のうち労働法学者が何人含まれているか、事務局に調べてもらったことがある。 ○ 全部で300名弱いて、そのうち20名ぐらいである。 ○ 1割いないというのは、やはり不自然でおかしいのではないか。 ○ 労使の弁護士と話したが、公益委員になれば、それはそれなりに公正に判断できる  と言っているし、実際にそうだと思う。特に、小法廷方式にするということであれば  、この点は問題にならないと思う。 ○ だから、同意の在り方の問題だと思う。誰かが一人でもハンコをつかないと駄目だ  というやり方は、どう見てもおかしい。 ○ 駄目だという場合は理由を言わせるのはどうか。とにかく、労使の弁護士や労働法  学者を入れるようにしていかないと、委員の専門性が高まらないと思う。 ○ もう一つは、労側と使側の弁護士集団双方が信頼関係を築けるかどうか。例えば労  側が、経営側でもあの人が出てくるのであればいいとか、逆に労側でもあの人だった  らという、弁護士集団双方でのある程度のコンセンサスが得られていれば、それは可  能なのではないか。 ○ 弁護士というのは、もともとそういうところがあるのではないか。 ○ それはそうである。委員は弁護士会の推薦であるが、今は全部無色透明な人である  。労働弁護団でも、経営法曹でもない人しか出てこない。どちらかに属していると、  労使のどちらかが納得しないというのがわかっている。それはむしろ、弁護士集団同  士の間で話がついていれば、普通はそれぞれの弁護団が、労側あるいは使側を説得す  るということになって、何とかなるという可能性はある。 ○ それは、弁護士会の主体性の問題であるのではないか。 ○ ただそこは、弁護士集団それぞれが労働委員会をどう見ているかということにもか  なり左右されると思う。たとえば、使側にしてみれば、労働委員会に委員を出しても  しょうがないと思っていると、そういう話には乗ってこないだろう。 ○ もう一つ、事務局が反対するということはないだろうか。 ○ あまり考えたことはない。しかし、具体的な事件を担当された方だと、別の事件で  議論したことがある場合、それについて思い入れのようなものがあるということはあ  るかも知れない。 ○ それでは、他にいかがだろうか。   もし、事務職員に研修を行うとしたら、どういうふうにしたらいいかというアイデ  ィアがあればお話しいただきたい。一つが初歩的な司法研修で知識をつける。二つが  実習問題のようなもので、今までの例を何本も解くゼミナールのようなことをする。  その後で、ピア・エデュケーションというか、職員がお互いにやり合う研究会的なも  のを続ける。こういう感じのものがうまく動くといいと思う。現在でも労働委員会で  は、ブロック会議などでお互いに議題を出して、議論するというふうに一応はなって  いる。 ○ 私は、労働委員会に特化した研修ということにしてしまうと、乗ってこないという  気がする。特化せざるを得ない部分ももちろんあるが、ある程度一般的な法務の仕事  の枠の中で、労働委員会に来た場合の職務の研修というのをうまく組み合わせないと  いけないと思う。労働委員会に来たんだから労働委員会のことだけやればいいと言っ  ていると、職員には内発的動機付けが生まれない。将来のスキルアップに全然つなが  らないということになる。 ○ 今度、弁護士法を改正して、新司法試験に受かった後、一定期間官公庁あるいは企  業に勤務したら弁護士資格をもらえるようにするという。だとすると、ロースクール  を出て公務員になるという人が増えるのではないか。 ○ 実務研修をもって、司法修習にかえるということであろうか。 ○ そうであろう。知識的には新司法試験を通ってくる人であるし、そういう専門職の  人が今後出てくる可能性はあるのではないか。 ○ それは、労働委員会のような行政委員会が再生するときには、重要な基礎条件であ  ると思う。   そうすると、現段階ではかなり難しいということか。 ○ 研修も、法務という枠の中で広がるというイメージを示さないと、労働委員会には  5年間しかいないのに、研修を一生懸命してもしょうがないということになる。今で  も、法学部等を出てきた人たちを事務局に置いている。しかし、それを全体としてス  キルアップさせるという視点の中で労働法を組み入れていくということを考えていか  ないといけないのではないか。 ○ それは多くの人が感じていると思う。他方、教える側は今のようなやり方で良いだ  ろうか。 ○ 今は基本的にOJTで、ベテランの職員が教えている。しかし、もうそれは限界だと  思う。Off-JTでないといけない。しかし、そうなると、2週間なり3週間なりいなくな  るので、事務作業の人数が足りなくなる。その辺りをどうするか。例えば、3週間ぐ  らい合宿所などでインテンシブな研修をやればかなり違うと思う。 ○ 地方公務員の研修では、ある程度の期間をおいていろいろなことをやる。その中に  、行政争訟のようなテーマを一般的に研修させるというものがある。あるいは、行政  訴訟に関し、訟務関係のことを、書記官研修所の教官などに来てもらってやるところ  もあるのかも知れない。そういった形で、教える人についても、Off-JTの中では工夫  していく必要があるだろう。現在のところは、公務員研修の中の科目は、民法と行政  法が主だろうが。 ○ 法律的なものはそうである。 ○ 法務省の研修は、初級・中級・上級に分けて、上級については法学部で半年間授業  を受けさせている。 ○ もう一度ぐらい年内にやらないと議論が終わらないというのは明らかであるが、今  日は5の中央労働委員会と地方労働委員会との関係について、頭出し的な議論を少し  して終了ということにしたい。 ○ 前にも言ったように、都道府県間で、事務組合を労働委員会で認めるというような  ことで、対応できるのではないか。そこは考えようだと思う。 ○ 審級に関する処理を労働委員会内部でやるかという議論で、地労委は全部がそうで  はないが、中労委を飛ばしてしまって、地労委だけにして取消訴訟で裁判所へ行くと  いう意見を支持する人が多い。この意見はどうだろうか。 ○ 私は反対である。 ○ 取消訴訟がどんなに大変なものかということを実感していないのではないかという  懸念が一つと、労働委員会システムの内部において、意見の方向をできるだけ統一し  ていくということが失われてしまう点が指摘できよう。今、地労委レベルでは、同じ  ような事件でも相当に異なった命令が出ている。 ○ 中労委の権限は残すべきだというのが私の考えである。地労委命令がすべて裁判所  に行くということになると、まさに先程の問題で、専門性のないところで出た命令が  そのまま裁判所に行くということになり、取り消される命令が続発することになる。 ○ そうすると、労働委員会は判定機能をやめろということにもなりかねない。 ○ そういう議論が出てくるのは、おそらく迅速化のためにということだと思う。迅速  化のために、中労委で要する時期について工夫するという手段もありうる。今は実行  確保の勧告があまり機能していないという現状がある。 ○ もう一つは先般の全労委総会の中でも出ていたが、中労委に判定されるのは反対だ  という気持ちがある。自分たちは現場に近い感覚でやっているのに、中労委は現場か  ら離れた感覚でやっている。ある意味で、中労委は裁判所と労働委員会の中間的なと  ころがある。裁判所には審査されてもしょうがないという気持ちがある。これに対し  ては、一つの問題は中労委の今の審査スピードを、どうやって抜本的に速くするか。  それから、中労委の命令の取消率をもう少し下げるための工夫をきちんとする。そう  いうこととワンセットで、地労委・中労委体制は残さざるを得ないということだろう  か。 ○ 確かに、二段階必要だという点はあるのかも知れないが、二段階にするにしてもも  う少し工夫する必要があるのではないか。 ○ でも、五審制の議論があるが、これは中労委前置であれば迅速化しなければ困るが  、当事者としては一応中労委に行かなくてもいい。それは当事者の選択なわけで、い  つもこの議論は奇妙だと思っている。 ○ そこは、当事者の戦略が強く働く部分である、つまり、組合を困らせたいという使  用者は、時間稼ぎのために裁判所に行かない。組合側も、すぐ裁判所に訴えるのでは  なく、まず労働委員会に持っていって相手と議論したいという、いわば当事者の戦略  によって中労委に行くのか、直接地裁に行くのかが選択される。労働者の立場からと  いうのもあるし、使用者の側からというのもある。 ○ 逆に言えば、そういう当事者の恣意的な行動を許すシステムになっているのが問題  だということになる。 ○ だから、確信犯的な使用者が中労委に来る。 ○ 中労委はわりと丁寧に審査しているようだが、再審査なのだから、簡単に書面審査  にすればいいのではないか。 ○ それも一つの考え方だと思うが、そこでまた問題になるのは、ともかく命令をいっ  たん得た後、中労委段階で和解を探りたいという要望がけっこうあることである。こ  れをどうするか。中労委での事件処理処理期間がこんなにも長いのは、こういうこじ  れた事件が来るから、和解の期間もどうしても長くなる可能性があって、これが結果  的に統計上の審査期間を長くしていると思う。 ○ 和解メニューと、審査プラス和解メニューと、審査メニューを分けるのはどうか。 ○ 和解をやってほしければ、調整の方に行ってしまう。これも一つの案だと思う。地  労委では両方混然とやっていてもいい。けれども、中労委に行ったら、最初から入り  口で分かれていて、審査コースはさっさと終わる。その先をやりたければ裁判所に行  く。調整コースはじっくり、長くやるということだろうか。 ○ 一つの考え方は、審査だけをやるのか、和解も考えているのかと尋ねる。和解を考  えているのであれば、再審査の申立と同時に調整の申立もしてもらう。調整の申立が  なければ、再審査は書面審理だから、すぐ終わるということにする。 ○ 今は、審問を3回やるものは少なく、かなりの割合で1回か2回である。時間が掛か  っているのは調査である。審問前の調査が長引くこともあるが、なぜ結審後こんなに  時間が掛かっているかというと、そこでの和解の作業がえんえんと続くということが  ある。命令をもらってもしょうがないという事件であって、双方とも最後のところま  で来ても折れない。 ○ それは手続の組み方の部分で改善できることもあると思う。ただ、再審査のスピー  ドコースというのはあまり選択されない気がする。 ○ 和解で解決できるのであれば、地労委レベルで終わっているのではないか。 ○ それは、地労委で命令が出ているから中労委で和解できるというのがある。 ○ それから、労側で追い込まれている場合は、命令をもらって武器を一つ増やした上  で、和解をした方が有利な結論になるということである。   それでは、そろそろ時間になってきたと思う。新しい意見が出てきたのは、中労委  の審査を促進するために、コースを二つ作る案というのはありうるかというのがある  。しかし、まだ十分に煮詰まっていないし、今日は欠席の委員の方もいるので、次回  は論点の5以降をもう一度議論して、一応論点に関する検討は年内に終わりたいと思  う。日程は調整次第事務局から連絡いただく。   照会先 政策統括官付労政担当参事官室 村瀬又は朝比奈   TEL  03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734(直通)