02/11/11 第1回看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会議事録       第1回看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会議事録 日時  平成14年11月11日(月)      15:00〜 場所  厚生労働省専用第18会議室 出席メンバー  大内宏子、川原礼子、神田律子、木村光江、國井治子、世古美恵子、         竹尾恵子、辻本好子、西澤寛俊、濱田悦子、正木治恵、柳田喜美子、         渡津千代子(五十音順、敬称略) ○看護課長 ただいまから第1回「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検 討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご就任の依頼を差し上げた ところ、ご快諾をいただきまして、本当にありがとうございます。また、本日はご多用 中のところ、この検討会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。開催 に当たりまして、篠崎医政局長から、一言ご挨拶を申し上げます。 ○篠崎局長 ただいま、看護課長から申し上げましたように、本日大変お忙しい中をご 参集いただきまして、ありがとうございます。もう皆様方ご存じのように、我が国の保 健医療水準というのは、いちばん端的な数字でいって、健康寿命と普通の寿命、ともに 世界一でございまして、西暦2000年のWHOの世界報告の中では、もっと沢山の指標が ございまして、その指標いずれを取りましても、世界のトップ水準でありました。そう いう意味では、我が国の保健医療のシステムそのものが非常に効率的に機能してきたの ではないかというふうに思っていますが、ただ昨今、少子高齢化が非常に進んでまいり ました。  また医療技術も非常に進歩しています。国民の医療に対する認識というか、意識も非 常に変わってきています。そういうような中で、いままでどおりでは制度はうまく機能 していかないのではないかということで、医療制度の抜本的な改革が必要だということ になりました。昨年9月25日に「21世紀の保健医療ビジョン」というのを発表しまして 、それを受けて、今年の3月には、厚生大臣を本部長とする「医療制度改革チーム」が 発足しまして、私ども医政局が医療提供体制の見直しの対策改革チームということにな って、検討を進めてきています。既に8月30日には、中間まとめを出したわけでして、 それにいくつか肉付けをしまして、来年3月頃を目処に本報告としてまとめたいという ことであります。  坂口厚生労働大臣もこの問題に非常に意欲を持って取り組んでおられまして、つい先 月も、厚生労働大臣続投ということになったわけですから、この改革についての取組み も、より加速するのではないかと思っているわけです。今年の5月には、看護に関しま しては新たな看護に関する検討会というのが発足しました。看護の質の向上も非常に高 まってきていますし、また在宅医療での国民の期待も高まっていますので、これもまだ 検討は続いているわけですが、ついこの間、ひょっとしたら大臣が替わるかもしれない というので、その前に中間まとめをというのをやりました。特にその中で非常に大きか ったのは、静脈注射を看護師さんの業務の中に新たに取り込んだということです。  実態としては、先行しているということだったのですが、約50年ぶりぐらいに通知そ の他を書き替えたということでした。このように看護の新たなあり方の検討も進んでい るわけですが、片や医療行為、そして看護師さんが行う行為の範囲についても、最近い ろいろと言われているわけです。それには、やはり卒前の看護師の教育というものも非 常に大きな意味を占めていまして、在学中にどのぐらいまで、特に座学というのではな くて、実習の充実ができるかということも、非常に大きな要素なのです。  現在では、その学習途上にある看護学生が行う看護技術の実習範囲や機会というのが 甚だ限定されていますし、また目指すべき到達目標などにつきましても、個々の養成所 によって異っているというような実態もあるわけです。そういうことを何とか範囲とか 内容を明確に、今の時点でいえば、この程度までははっきりしたほうがいい、やるよう にしたほうがいいというようなことを明確にしていただいて、それに合わせて臨地実習 において、看護学生に許容される看護技術というようなものの、いろいな条件などにつ いてご議論いただき、お決めいただけたら、ありがたいというふうに思っているわけで す。  いま申し上げましたように、医療制度抜本改革の中のいちばん大きな柱の1つが医療 関係職種の資質の向上でありまして、それの部分が非常に大きいのですが、この検討会 のまとめも何とか今年度末の医療制度抜本改革の最終報告に載せたいというふうに思っ ていますので、それにはちょっとスタートが遅くなっていますが、なるべく議論を密に していただいて、早目に結論をいただければ、大変ありがたいと思っていますので、ど うかよろしくお願いいたします。 ○看護課長 続きまして、本検討会の委員の皆様方のご紹介をいたします。アイウエオ 順でご紹介をします。  財団法人星総合病院看護部長の大内宏子委員です。  東京都立豊島病院看護科長の神田律子委員です。  弘前大学医学部保健学科教授の川原礼子委員です。  東京都立大学教授刑事法ご担当の木村光江委員です。  社団法人日本看護協会常任理事の國井治子委員です。  東三河看護専門学校副校長の世古美恵子委員です。  国立看護大学校長の竹尾恵子委員です。  辻本委員は遅れてご出席ですので、後ほどご紹介します。  社団法人全日本病院協会副会長の西澤寛俊委員です。  日本赤十字看護大学看護学部長の濱田悦子委員です。  千葉大学看護学部教授の正木治恵委員です。  社団法人日本医師会常任理事の柳田喜美子委員です。  国立京都病院附属看護助産学校看護師科教育主事の渡津千代子委員です。  今日ご欠席は兵庫県立看護大学助教授の内布敦子委員です。  続きまして、事務局を紹介します。先ほど、ご挨拶しました医政局長の篠崎です。私 は看護課長の田村です。右隣は看護研修研究センター所長の丸山美知子です。左は医政 局企画官の土生です。続きまして、本検討会の座長について皆様にお諮りをしたいと思 います。座長につきましては長年看護教育に携わってこられまして、また看護師の資質 の向上等に貢献してこられました竹尾恵子委員をお願いしたいと存じますが、皆様いか がでございますか。                  (異議なし) ○看護課長 それでは先生、よろしくお願いします。座長席に移動していただきます。 それでは座長から一言ご挨拶をいただいて、その後議事進行をしていただければと存じ ます。よろしくお願いします。 ○竹尾座長 このたび座長をご指名いただきまして、大変非力ではございますが、皆様 方から沢山の大変活発なご意見をいただいて、実り多い会にしていきたいと思います。 どうぞ、よろしくお願いいたします。  議事に入ります前に、検討会の進め方について確認をしたいと思います。当検討会に ついては、公開で行うということで、議事録につきましても、事務局でまとめたものを 各委員の先生にお目通しをいただいて、その後で厚生労働省のホームページで公表する ということにしたいと思います。この点につきまして、ご了解をお願いしたいと存じま す。どうぞ、よろしくお願いいたします。それでは議事に入りたいと思いますが、まず 事務局より皆さんのお手元に資料がいっているかと思いますが、それについて説明をい ただいて、その後またご意見をいただきたいと思います。資料の説明を事務局、よろし くお願いします。 ○勝又補佐 まず資料の確認をさせていただきます。資料は議事次第が1枚です。それ に座席表、検討会メンバー。続きまして、資料1が1枚。資料2が5枚です。そのあと に参考資料が3枚付いています。それから、先生方からの提出資料ということで、資料 3、資料4、資料5と付いています。よろしいでしょうか。  資料1にあるこの検討会の目的ですが、先ほど医政局長からのご挨拶の中にもありま したように、卒前教育における看護技術能力の開発とか向上を最終的には図っていくと いうことを目標にしていまして、現状としては、特に侵襲性の高い行為、例えば筋肉注 射等の実施につきましては、実習中で実施できていないというような状況もいろいろ聞 いていまして、臨床現場が卒直後に期待している技術能力と、学生が就職されたときの 現実の能力との間に、非常に乖離が生じているというようなご意見もいただいています 。  その中で特に最近の臨床看護の現場ですが、医療の高度化とか、患者の高齢化、ある いは重症化、平均在院日数が短縮してきているということで、看護密度が非常に多様化 したり、複雑化してきたりしてきているという状況の中で、学生に対して臨地実習のと きにきちっとした対応がなかなかしにくい状況にあると。さらには、国民の人権意識の 高まりとか、医療安全への国民のニーズが高まっているというような中で、学生が実習 に行ったときに侵襲性のある行為に関して、患者さん側から「ちょっと差し控えていた だきたい」というようなことも出てきているというのが現状でして、看護師になるため の学習途上にある学生が行うことができる看護技術の実習の範囲とか、機会というもの が限定されてきているというような傾向が出てきているというのが現状です。  さらに看護師学校・養成所での看護技術に関する教育の内容とか、あるいは卒業時の 到達目標につきましても、個々の学校・養成所ごとに異なっているというような実状も あり、さらには看護師に必要な知識を問うという看護師の国家試験においても、ペーパ ー試験による試験という制約上の問題がありまして、様々な限界が現在のところ生じて きていると。そういった中で、今回、特に看護師学校・養成所において、到達すべき看 護技術教育の内容と範囲というものを明確にするとともに、臨地実習において、看護学 生に許容される看護技術とその実施条件等について、検討していきたいということが今 回の大きな検討会の目的になります。  検討内容としましては、2番に書いてありますように、1点目は「卒前の看護技術教 育及び臨地実習の現状と課題」ということで、先生方からいろいろご意見を出していた だきたいと思います。2点目としましては、「卒業までに学生が到達すべき看護技術教 育の範囲及びその到達目標」について議論をしていただきたいと思います。3点目が「 適切な臨地実習のための条件整備」ということで、1つは臨地実習において看護学生に 許容される基本的な看護技術を、特に診療の補助等の身体的侵襲を伴う技術の取扱いに ついてをメインとして、やっていきたいということで考えています。それから、その際 の患者さんの同意等の条件整備について、この検討会の中でご議論をいただきたい内容 ということが、ここに書いてある3点です。5、6回程度開催しまして、年度内に結論 を出していただくように考えています。それが検討会に関する資料1です。  資料2をご覧ください。看護師学校・養成所の運営に関しまして、例えば、教育内容 あるいは時間数とか、臨地実習の施設基準、教員の人数等につきましては、1つは保健 師・助産師・看護師学校・養成所の指定規則というものがあります。さらに2つ目に「 看護師等養成所の運営に関する指導要領」ということで、これは医政局長通知です。さ らには、同じく「手引」ということで、看護課長通知がありまして、その3つによって 、看護師学校・養成所の運営の規定がされています。その中の、ここに書いてあります 資料の1番目と2番目は、看護師養成所の運営に関する指導要領から抜粋したものでし て、看護師養成所の、特に3年課程を中心にして今回はご議論をいただきたいというこ とで、教育の基本的考え方ということで、別表3を取り上げてあります。   特に教育の基本的な考え方というのは、6項にありますが、そこの、例えば4番を見 ていただきますと、「人々の健康上の問題を解決するため、科学的根拠に基づいた看護 を実践できる基礎的能力を養う」ということで、6つの基本的能力というものがこの中 に基本的考え方ということで、記載されています。  こういった基本的な考え方に基づきまして、それぞれ教育内容が決められていまして 、それが下に記載されている部分で、「基礎分野」「専門基礎分野」「専門分野」とい う3つの分野に看護師の養成は分かれています。その中で、基礎分野につきましては13 単位、専門基礎分野につきましては21単位、専門分野の特に講義とか演習の部分になり ますが、それが36単位、臨地実習が23単位というようなことになっていて、総計で93単 位、2,895時間以上の講義と実習を行うということで位置づけされているものです。特に 臨地実習については2,895時間の中で23単位ですから、1,035時間を占める教育内容にな っているわけでして、特に実習は看護基礎教育において、とても大きなウエイトを占め ている内容になっています。それが教育の内容、あるいは時間数になっています。  次に3頁をご覧ください。「臨地実習体制の概要」ということで、学生がどういった 所で、どのような指導を受けて、実習をやっているかということがこの図に表わしたも のですが、1点は専任教員という方が学校にいらっしゃいます。保健師・助産師・看護 師として5年以上業務に従事した者を専任教員と呼びまして、さらには厚生労働省看護 研修研究センターの看護教員養成課程、あるいは国立保健医療科学院の専攻課程の看護 コースをお受けになったり、あるいは厚生労働省が認定した看護教員養成講習会等をお 受けになって専任教員として業務に就くということになっています。 大学は、またちょっと違う、大学の設置基準等に合致された先生ということですが、た だし保健師・助産師・看護師として免許等を持っておられる方というようなことになっ ています。そういった方々が一応1学年40人クラスであれば、120人が総定員ということ になりますが、8人以上を保健師・助産師・看護師として勤務された方を置いてくださ いよということが書かれていまして、この8人以上置いた人たちがそれぞれの専門分野 において、講義および実習の担当に当たるということになっているわけです。さらにそ の8人のうち、1人を実習調整者ということで定めまして、臨地実習全体の計画を作成 したり、あるいは実習病院との調整を行う、そういった実習調整者を置いていただきた いということで、指導要領に明記されているものです。  さらに「実習指導者」と右横に書いてありますが、これは受入れ先の実習病院に配置 をお願いしたいということで、書いてあるわけでして、実習指導者講習会というものが 厚生労働省から補助を出しまして、都道府県あるいは地方厚生局でお願いをしているの ですが、240時間以上の研修を受けていただいて、実習指導者ということでそれぞれの実 習施設に約1病棟2名以上を配置していただければということで、お願いをしていると ころです。  その下の「実習施設」の所をご覧いただきたいと思います。実習施設につきましては 、入院患者3人に対して1人以上の看護職員が配置されていること、ただし、看護師の 養成ですので、看護職員の半数以上が看護師であることという規定を設けています。さ らには、先ほど言いました学生の指導を担当できる実習指導者が2人以上配置されてい るのが望ましいということで記載しているものです。そして学生は実習病院が同時に受 け入れることのできる人数ということですので、あまり多く学生がいっても、なかなか 受入れ先も大変だということで、一応1病棟に10名以内に収めてくださいということで 、お願いをしているところです。こういった実習体制の中で、学生が現在実習を行って いるというのが概要です。  4頁ですが、「臨地実習の配置表の例」ということで、これは雑誌から抜粋させてい ただいたものですが、全体1,035時間の実習を1年次、2年次、3年次と、どういう形で 実習を学生がしているのかということを見ていただこうと思いまして、準備をした資料 です。1年次が基礎看護の実習を約2週間というようなことで行っています。2年次は 小児、基礎、成人・老年ということで、約10週間程度、3年次は在宅、あるいは成人・ 老年、小児・母性、それに精神といったもので31週。全体では43週ぐらいというような こと、これが1つの例でして、すべての学校がこれでやっているかというと、そうでは ないのですが、1,035時間以上の実習を、おおよそこういった形でやっておられます。最 近は3年次集中型ではなくて、講義と実習をできるだけつないでいこうということで、 2年次にも多くの実習を分散して入れていこうというようなことを検討されている学校 ・養成所もあるというように聞いています。  5頁ですが、これは「臨地実習における診療の補助行為の指導状況」ということで、 先ほども申しましたように特に侵襲性の高い行為に関して、いろいろ問題が出ていると いうことで、日本看護協会が2000年に調査された報告書の中から抜粋させていただいた のですが、40.1%の学校・養成所が指導者同伴で「採血」を実施させておりまして、30. 3%が「筋肉注射の刺入」を実施させているということで、逆に51.5%が「採血」は見学 実習のみ、あるいは「筋肉注射の刺入」は63.2%が見学実習のみというような結果です 。「吸引」「吸入」、あるいは「与薬・経口薬」以外の行為については「見学実習のみ 」が多いというようなデータが出ていまして、結構侵襲性の高い行為に関しては、見学 実習が多いというような状況です。これは看護協会のデータを基にしていますが、その 他の調査結果などを見ても、大体同じような傾向になってきているのが現状です。  最後に参考資料のご説明で、3枚ペーパーが付いているかと思います。これは「医学 生の臨床実習に係る医師法の適用」ということで、平成3年に医政局医事課で臨床実習 検討委員会の報告書が出されまして、その中の抜粋です。医学生の医行為が違法なのか どうなのか、実習というものがどうなのかというようなことで最終報告がなされている わけです。この2行目に「医学生の医行為も、その目的・手段・方法が社会通念から見 て相当であり、医師の医行為と同程度の安全性が確保される限度であれば、基本的に違 法性はないと解することができる」と。  そのときの条件としまして、1つは、侵襲性のそれほど高くない一定のものに限られ ること、2点目に医学部教育の一環として、一定の要件を満たす指導医によるきめ細か な指導・監督の下に行われること、3点目に臨床実習を行わせるに当たって、事前に医 学生の評価を行うこと、4点目が患者等の同意を得て実施することとすれば、社会通念 から見て相当であると。したがって、医学生が上記に掲げた条件の下に医行為を行う場 合には、医師法上の違法性はないと言えるというような報告が出されているところです 。  次の2頁、3頁は、この報告書の中に記載されているものですが、「医学生の臨床実 習において、一定条件下で許容される基本的医行為の例示」というものがありまして、 水準1から水準3に分かれています。水準1が、指導医の指導・監視のもとに実施が許 容されるもの、水準2が、状況によって指導医の指導・監視のもとに実施が許容される もの、水準3が、原則として指導医の実施の介助、又は見学にとどめるものということ で、この3つのレベルに分かれています。その中で、特に2番の「検査」で、中段から 下になるかと思いますが、「(採血)」というのがあると思います。  水準1に関しては「静脈の末梢での採血」は水準1に該当するもので、指導医の指導 ・監視のもとに実施が許容されるものということで、位置づけられています。水準2と しまして、「動脈からの採血」、水準3として「小児からの採血」というような分け方 をしています。  3頁の「注射」のところを見ていたただきますと、水準1はありませんで、水準2に 「皮内、皮下、筋肉、静脈の末梢の注射」ということになっています。水準3としまし て、「中心静脈あるいは動脈、全身麻酔、局所麻酔、輸血」というようなことが入ると いう分け方がされています。参考ということで、水準1、2、3ということでやってお られます。  今後、臨床研修が入ってきますので、基礎の段階ではどの辺りまでということが、ま た見直しをされるのかもしれませんけど、とりあえず、今のところ平成3年の報告書で はそういったような内容が報告されているということです。私の説明は以上です。 ○竹尾座長 ありがとうございました。いまご説明いただきましたことに、何かご質問 はございますでしょうか。日頃、看護の教育に携わっていますと身近な問題ですが、看 護系の先生はおそらく日頃のことかという感じですか。何かご質問ございますか。  それでは、次に「卒前の看護技術教育および臨地実習の現状と課題」ということで、 まず看護師の養成所、あるいは大学、実施を受け入れていただいている病院、それぞれ の立場から意見を発表していただくということで、3人の委員の先生に10〜15分取って 説明をお願いして、具体的にどんなことがあるかというようなことを少しイメージをつ けていただけたらと思います。まず、看護師養成所の立場から、渡津先生、お願いいた します。 ○渡津委員 私はあくまでも近畿管内国立病院・療養所附属看護学校の実態調査等から という立場で発表します。国立病院・療養所附属看護学校の臨地実習の現状につきまし て、実習指導体制についてと、附属施設による技術経験の差についてという2点からお 話します。まず1点目の実習指導体制についてですが、国立病院・療養所附属の3年課 程の看護学校は、一般的に1学年定員50名で教官5名、教育主事1名。実習調整者は併 任で配置されています。なお、教官は臨床から実習指導者、副看護師長を経験し、教員 養成講習会等を修了した者が昇任してきています。  附属の施設は病院、療養所の別はありますが、実習指導体制は国の業務基準で看護師 に看護学生・生徒の実習指導への協力という項目が定められていて、基本的に職員すべ てが後輩指導に当たるという考えの下で実習指導者が2名、兼務の形で任命されていま す。さらに指導者およびスタッフ全体を指導する副看護師長、臨地実習指導の責任者の 看護師長で構成されています。  臨床と看護学校の連携を図るため、毎月1回の実習指導者会議を教育主事が招集し、 開催しています。学校の方針を明確にし、実習指導者は病棟で実際に学生を受けて、展 開できるよう先に学校側から教育主事、実習調整者、教官、臨床側からは副看護部長、 看護師長、副看護師長、実習指導者等から成る役員会で意見交換をし、看護師長会で調 整し、次に実習指導者会議で具体的に説明しています。実習指導者は兼務ではあります が、管理者がしっかりと見守る体制が出来ています。  また誰が学生に関わっても教育内容、方法にばらつきがないよう実習指導案を臨床と 学校の双方で協力し、作成して、それを使用しています。  次に2点目の附属施設による技術経験の差についてですが、先ほど申しましたように 、看護学校は附属する施設が病院と療養所の2つに分かれます。国は政策医療を行って いますので、それぞれの施設が特徴を持っています。病院は多くの診療科を持ちますが 、療養所は主として呼吸器、重心、結核、神経、筋、難病等の専門の治療を行います。 そのため、それぞれの看護学校の学生が臨地で体験する経験項目にも特徴があることが 教育主事同士の意見交換の場から出てきています。例えば、病院附属では検査等が幅広 く見学できる機会が多くあり、療養所附属ではガウンテクニックや吸引、筋肉注射等の 体験の機会が多くあるなどです。  病院は在院日数の短縮が図られ、従来の受持ち患者さんを1人持って看護過程を展開 する方法の見直しが必要となってきています。療養所は慢性型で、比較的症状も安定し ており、学生にとっては学習しやすいとも言えます。これらは経過別の実習展開をする 中で、偏らないよう、お互いが施設を実習先として選べるよう協力し、また附属の学校 を持っていない国立の施設も連携し合って、学生指導に当たっています。  次に2番目の「臨地実習における看護技術等の許容範囲及び体験機会の減少による影 響」についてを資料3の4頁「学内における与薬、感染予防に関する技術教育実施状況 」をご参照ください。これは平成12年8月に近畿管内国立病院療養所に付設する全看護 学校16校の教育主事を対象に調査しました。与薬の感染予防について、教育実施状況を 「講義の工夫」「演習の工夫」「技術テスト」「実習前チェック」「卒業前チェック」 の5項目で聞きました。その一部を抜粋したものです。  与薬の「講義の工夫」では、事故事例を用いて、法的責任についてや、与薬技術の中 に潜む危険性について。また原則の確認や看護者の判断が医療事故につながり、生命に 影響を及ぼすことなどを教授するというのが10校ありました。「演習の工夫」では、実 際に処方箋を利用して確認方法の教授及び装着型の模型やモデル人形の活用が目立ちま した。学生には臨床で実際に行われていることを教授することの大切さを認識し合いま した。「技術テスト」「実習前テスト」「卒業前チェック」では特に筋肉注射を学生同 士で実施する所とモデル人形を使う所に分かれました。このことから、私どもは意見交 換し、せめて実習、卒業前には安全が保証された状況の中で学生同士の注射までは、実 施することが必要と共通認識しました。ただし、学生の中にどうしても恐怖心が強く、 拒否する者がある場合は、モデル人形を使うことも可能としました。  感染予防の「講義の工夫」では、針刺し事故や院内感染等の事例を活用し、対象者の 安全と医療者側の安全について、医療の現場の理解、日常生活行動から清潔の意識を育 てるなどがありました。そのため、ビデオの活用や実際、病院の中央材料室の見学等で 学生がイメージできるような関わりが見られました。「演習の工夫」では実際に中央材 料室から取り寄せた滅菌物の使用、小人数ごとの実施、VTR撮影の実施、自己評価と グループで学生同士の評価、ガウンテクニックの実際等の意見がありました。「技術テ スト」は他の単元との関係で、一連の清潔操作を見るものが多く、注射や導尿が選択さ れていました。「実習前チェック」、「卒業前チェック」では特に手指消毒、鉗子・鑷 子の取扱い、滅菌操作、導尿、膀胱洗浄、ガウンテクニックが多くありました。  次に「臨地実習における許容範囲の状況及び体験減少における影響」を資料3の3〜 4頁をご参照ください。これも教育実施状況と同じく、平成12年8月に全16校の教育主 事を対象に調査したものです。なお、許容範囲とは実習場と看護学校で制限している受 持ち患者さんおよび看護技術を除いたものとの定義をしています。3頁は総括で、4頁 は「臨地実習における受持ち患者・看護技術の許容範囲の状況」で一部を抜粋したもの です。併せてご覧ください。まず臨床との話合いで設けている制限についての受持ち患 者さんに関することでは、感染症について、患者さんの選定についてが挙がっています 。感染症については、そこにありますように「感染症は受け持たせない」が7校「MR SAは実習の時期、学生の能力等を考慮して決定する」5校、「MRSAは母性看護学 実習との関連で受け持たせない」1校、「感染症患者について制限なし」3校でした。 患者さんの選定については、「学生拒否の患者さんには受け持たせない」、「合併症の 少ない患者さんの選定」、「実習目標を達成できる患者さんの選定」、「学生1人につ き原則として受持ち患者さん1人」でした。  看護技術に関することは、「注射に関しては見学まで」が6校、「点滴静脈注射につ いて抜針をする」が2校、「小児の与薬は見学のみ」「麻薬は確認のみ」等の回答があ りました。  次に2番の「体験の減少による影響」です。5頁「与薬」、6頁「感染予防」、7頁 「その他」となっていますので、併せてご覧ください。与薬技術について「誤薬」を6 校が挙げています。内容は経口与薬に関する誤薬が多い、内服薬が患者保管になってい ることが多く、一連の流れとして学習できない。確認不足のため与薬の忘れ、量の誤り 、人の誤りがあるということでした。  「技術経験不足」は4校が挙げていて、内容は、点滴静脈内注射の針の固定、抜去が できない。輸液ポンプ、ルート、三方活栓を取り扱う機会が少ない。中心静脈栄養の患 者さんの薬液パックに他の薬液を混入できないなどです。  「知識不足」については、4校が挙げています。内容は、薬液の単位換算ができない 。ミリグラム、ミリリットルなどです。インスリン量の計算ができない。薬効、副作用 の知識が不十分なまま、与薬しているなどです。これらは意見交換をしまして、体験減 少に加え、日常生活の中で、デジタル化の影響で育ち、置き換えをする思考や訓練がさ れなくなっていることも考えられ、私ども教育側の教授法の工夫の必要性を再認識し合 いました。  次に「感染予防」技術についてですが、「技術経験不足」を9校が挙げています。内 容は鉗子操作、滅菌手袋の装着、滅菌物の取扱いができない、ガウンテクニックできる 患者さんを受け持つ機会が少ないなどです。「清潔と不潔の区別がつかない」を4校が 挙げています。内容は鉗子の持ち手が逆手である、先が上向きになる、学生が日常生活 の上で、感染予防の生活行動ができない、清潔と不潔に対して認識が薄いなどです。そ れらを先ほど言いました5、6頁で出していますので、詳しくはそこをご参照ください 。  次に7頁の「その他の看護技術」についてですが、内容は、受持ち患者さん中心の実 習による弊害、偏り。学校側の原理原則と臨床の機能性重視というギャップ。技術の習 熟が図られていないため、実施の許可が得られない、具体的には経管栄養とか、吸引、 薬液管理などです。学生自身が未熟な技術を主体的に学習しないなどが挙がっています 。以上から臨床の変化、患者さんの人権に関する問題、学習者の未熟さに関する問題、 教官の教授法の問題等が出てきました。  次に8頁の「国立病院・療養所附属看護学校における診療の補助技術に関する教育状 況等」の資料をご参照ください。これは平成13年9月に副学校長、教育主事協議会近畿 支部研究班が全国の国立病院・療養所に付設する3年課程看護学校の教育主事50名を対 象に調査したものです。調査内容は、診療の補助技術56項目の教授、講義と演習の実態 、診療の補助技術56項目の実習経験項目として設定の有無を聞いたものです。なお、演 習のデータが講義とそのまま同じものを載せてしまいましたので、演習については、こ の場は口頭説明でさせていただきます。  講義ではすべての項目が50%以上の学校で行われています。そのうち与薬だけで見ま すと、13項目中、「咽頭の塗布」を除いた12項目はすべて80%以上の学校で行われてい ます。  演習では56項目中、19項目が50%以上の学校で行われていました。その中で最も多い のが「筋肉内注射」94%、次いで「口腔内吸引」88%、「グリセリン浣腸」86%、「冷 罨法」84%、「赤血球沈降速度」82%、「一時的導尿」80%でした。与薬で見ますと、1 3項目中4項目で、具体的には「筋肉内注射」「皮下注射」「静脈内注射の介助」「輸液 ポンプの管理」が入っていました。  臨地実習の実習経験項目の設定については、56項目中31項目が51%以上の学校で設定 されていて、与薬に関しては6項目でした。「筋肉内注射」「静脈内注射」「皮下注射 」が50%を下回っていました。少し薄く色をつけてある所が50%以下になっています。 これは臨床の変化や患者さんの権利、無資格の学生が実施することに対する批判等を受 け、教育主事の経験期待が下がったためと考えられます。  近畿支部研究班では今年度、この下がったことに対することも含めて、新たに看護基 礎教育における与薬技術の実践能力の育成についての研究に取り組んでいるところです 。以上、近畿管内国立病院・療養所の附属看護学校の実態調査から述べてきましたが、 臨地実習は、臨床と学校の連携なくしては成立しません。実習指導者会だけでなく、今 年から専任のリスクマネージャーが配置されたことに着目して、お互い情報交換をし、 臨床で起こっている事故を看護基礎教育に反映し、学校の教育内容をリスクマネージャ ーに伝え、連携をより強固にする必要があると考えています。臨床の現状、実情に合わ ない内容を私ども教育側が原理原則として教えていないか、基本としているものが本当 に基本なのかを再考し柔軟に対応していくことが必要だと思っています。以上で発表を 終わります。 ○竹尾座長 ありがとうございました。 ○看護課長 辻本委員がお見えになりましたので、ご紹介します。「ささえあい医療人 権センターコムル」の理事長でいらっしゃいます辻本好子先生です。 ○辻本委員 辻本です、よろしくお願いします。 ○竹尾座長 いまのこの発表の中で、調査結果ですが、調査総数はいくつぐらいだった のでしょうか。 ○渡津委員 全学校16校の教育主事ということです。現在は16校ありませんが、その時 点で16校でしたものですから、16校になります。 ○竹尾座長 そのうちの7校とか5校ですね。 ○渡津委員 そうです。一部を抜粋いたしました。 ○竹尾座長 よろしいでしょうか。次は大学の立場から正木委員にお願いします。 ○正木委員 資料4を用意していますので、お開きください。大学における看護教育で 、千葉大学看護学部を例としてご説明します。先ほどの養成所の調査のように複数の大 学等を調査していませんので、あくまで一大学の例としてお聞きください。  まず1番目が「看護学科の教育課程の構成と特徴」で、全体像を示しています。木の 形を示していますが、その下のほうに「普遍教育科目」いわゆる一般教養科目と今まで 呼んでいましたが、千葉大学では「普遍教育科目」と称して、全学でこの科目を提供し ています。この普遍教育科目においては、看護学に必要な普遍教育科目ということを考 えまして、4つの系を考えています。1つが自然系科目、2つ目が人文系科目、3つ目 が社会系科目、4つ目が芸術系科目、広く人間や社会や芸術等を理解するという目的で この4つの系からバランスよく学習することを学生に課しています。  その右側が「共通基礎科目」で、これは一般的に大学を卒業する者として必要となる 外国語やスポーツ・健康科学、情報処理科目等を位置づけています。これらの普遍教育 科目を学んだ後、または並行して、その上に書いてあります「専門基礎科目」ならびに 「専門科目」を学習する位置づけとしています。専門科目と専門基礎科目を「専門教育 科目」と称していますが、専門基礎科目はそこに4つ示しています、医学関係、保健学 関係、人間学関係、医療福祉学関係の科目を置いています。  それを学んだ後、専門教育科目として、基礎看護学を初め、母性、小児、地域、訪問 、指定規則では在宅看護になっていますが、千葉大学では「訪問看護学」と称して位置 づけています。精神、成人、老年看護学を学びます。平成7年度にカリキュラムを改革 しまして、それまでは講義、演習が一通り終わったのちに臨地実習を位置づけていまし たが、平成7年以降のカリキュラムにおいては、母性看護学から老年看護学それぞれの 科目において、講義、演習、実習を効果的に行うという意味で実習を位置づけています 。そのために、ここでは講義、演習、実習という形で分けて表示していません。  それぞれの専門科目を学んだ後に、看護管理学や看護教育学、まとめの総合実習を経 て、卒業研究を学習することになっています。これが千葉大学看護学科での教育課程の 全体像です。その中から今回、技術教育を考えるという意味で、2番として、身体侵襲 を伴う技術に関する実習が現実どのような形で行われているかを示したものです。身体 侵襲を伴う技術の例として、左側に注射、採血、吸入、吸引、浣腸、導尿を挙げて、い ちばん下にそれぞれに関する指導体制を簡略して述べています。  まず、「学内演習」に関して、吸引に関しましては、人形で行うことにしていますが 、その他の「注射」から「吸入」に関しては、学生同士で実際に行うことにしています 。これに関しては、事前に学生の感染症の状況等すべてチェックした後、看護師の免許 を持つ者が大学所属の医師の免許を持つ者の指示を受け、これらの演習を学生同士でさ せています。  浣腸、導尿に関しましては、実際に身体への挿入は人形等になりますが、羞恥心等へ の配慮やその体位を実際に学生同士が行いながら、演習をしています。この学内演習の 指導体制としましては、1グループ5名から10名の学生ですが、それに指導者が1名つ きまして学内演習をし、さらに最終的には各技術が習得されたかどうかのチェックをし ています。  次に「実習前チェック」に関しましては、先ほど申しましたように各領域の実習ごと に講義、演習、実習を展開していますので、各領域ごとの実習前チェックになります。 それらがそこに書いてありますが、△というものに関しましては、受け持ちケースに応 じて、必要が生じた場合に教員がチェックを行っています。これはその右の「助産実習 」以外の臨地実習で、受け持ちケースでこういう注射や採血、吸入、吸引等の必要が生 じた場合に事前にその学生にチェックをし、実際に患者さんにさせていただいています 。  助産実習以外の臨地実習に関しまして、注射は△として、「筋肉注射のみ」としてい ます。実際に患者さんにさせていただくとしていますのが、筋肉注射のみです。ただ、 これに関しましては主に手術前のプレ・メディケーションを想定していますが、現在、 主たる実習病院である大学病院ではプレ・メディケーションの是非をめぐって疑義が出 されているところです。さらに大学病院に入院される患者さんに筋肉注射の機会がかな り減っていまして、機会があれば、実施させるとしていますが、機会がなくなっている のが現状です。採血に関しましては指先からの血糖測定のみを行っています。吸入に関 しましては△で、先ほど申しましたように受け持ちケースに応じて、必要が生じた場合 に、教員の指導の下に行います。そのため、受け持ちの患者さんに必要がない場合には 、その学生は経験しないということになります。  導尿に関しては行わせていません。4年制の大学においては助産実習も選択で行われ ています。助産実習においては吸入以下、吸引、浣腸、導尿もすべて患者さんに学生が させていただいています。ただし、この場合は学生1人につき、必ず臨地での指導者が 必ず1人付き、もし付けない場合には教官が必ず付き、その指導の下に行うことにして います。以上が身体侵襲を伴う技術に関する実習実施体制です。  次に、いちばん下の3番目、「学生の看護実践能力向上に向けたカリキュラム改革案 」について述べさせていただきます。これはそこに()で書いていますが、本年の3月 に文部科学省から「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」という報告書が 出ましたので、それを受けて千葉大学看護学部においても、カリキュラム改革の案を現 在検討中です。この報告書においては、大学において看護実践能力の育成を充実させる 必要があるという方向性が強く出ていますので、それに向けてどんな改革が必要かとい うことを現在検討中です。千葉大学の予定としましては今年度中にカリキュラム改革案 をまとめ、全学的な普遍教育科目の時間割等の調整も必要になってきますので、来年度 に時間割等の調整をし、再来年度から新しいカリキュラムで動く予定です。  新しいカリキュラムの改革案としましては、教育内容のコアを精選すること、次に学 生の看護実践能力の到達度の明確化と適正評価ということをポイントとして挙げていま す。先ほど、述べましたようにそれぞれの科目において、講義・演習・実習を位置づけ ていますので、特に看護技術ということが前面に出てこないために、看護基本技術に関 して、どのような押さえ方をしているかということが目に見えてこない。そのためにも っとそれを前面に出した教育課程を作る必要があるのではないかと考えています。「態 度・行為を備えた『看護基本技術』」に関しては後ほど次の頁でご説明します。  最後に臨地実習に望まれる要件として、1つは無資格の学生が可能な実習の法的保証 を挙げています。これは先ほど事務局からの説明で、医学教育に関して平成3年度に報 告書が出ていますが、看護学教育の実習においては、それぞれの法解釈の下にいままで させてきたのが現状ですが、それが現在、かなり患者の権利意識や法的な責任という面 で揺らいでおり、その解釈にかなり差がある状態です。なかなかそれを統一できないた めに、実際学生に身体侵襲を伴う技術をさせようと思ったときに種々障害が出ているの が現状です。そのため、やはり無資格の学生が可能な実習に法的な解釈等を、ある面文 章で共通認識が持てるものを望んでいます。同時に、先ほども助産実習においては臨地 の場で必ず1名の方が付き添って、実際に浣腸や導尿等ができるという現状を考えると 、実習施設側の実習指導に関わる人的確保が望まれます。  次頁は「看護基本技術」をどのように捉えるかということです。いま千葉大学では検 討の最中なので、まだ検討結果として示すものはありません。ただ、先ほども言いまし た文部科学省から出た「大学における看護実践能力の育成の充実に向けての報告書」の 中に、看護基本技術に関して記述があるので、それらを参考に現在検討している最中で す。報告書の中では、左側の表に看護基本技術の学習項目として、aの「環境調整技術 」からmの「安楽確保の技術」まで述べており、「学習を支える知識・技術」として学 生が最低限学び、習得すべき項目として挙げています。左側はaからmまでの看護基本 技術学習項目に関して、それを支える態度や行為の構成要素として知識と判断、実施と 評価、対象者への説明、安全・安楽確保、プライバシーの保護、指示確認、報告・記録 、個別性への応用、家族相談・助言という項目を挙げています。  表2と表3についてですが、例えば「環境調整技術」に関して、表3では縦軸と横軸 のように絡んだ位置付けになっており、私どもも学生の看護基本技術を中心とした実践 能力の到達度を明確にすべきと考えていますが、それらの到達度はいわゆる表2の各項 目の手技的な側面のみではなく、手技が実際に患者に行われるものとして、表3の態度 ・行為を備えた上で表2の技術が施行できることを学生の到達度として考えております 。具体的な到達度の表示に関して報告書には例が述べてありますが、千葉大学では現在 それを検討中です。以上です。 ○竹尾座長 引き続き、実習を受け入れている病院の立場から神田委員にお願いします 。 ○神田委員 前提条件から説明します。私ども都立病院の場合には都立の看護学校の実 習を主に受けております。隣接する都立病院と都立の看護学校は附属関係ではなく、全 く別の組織です。そのために、看護学校にはドクターの資格を持っている職員はおりま せん。事務職員と看護職員のみです。病院ですが、都立病院改革会議などで報道されて いるように、現在ほとんど急性期型の病院になりました。平均在院日数が15日から20日 前後です。看護職員はほとんど2対1以上の配置で、一部を除き全員が看護師の資格を 持っています。したがって、全員が学生の指導者であるという前提を取っています。  指導体制ですが、各病棟ともに実習指導担当者として2ないし4名指名します。 実習 指導担当者は研修の受講済み、または受講予定の職員で決めております。指導に関する 話し合いですが、「実習協議会」「実習連絡会」「実習指導担当者会」の3つで組織さ れています。実習協議会は看護学校及び主たる実習病院の職員のトップも含めて組織し ております。実習連絡会については専任教員と看護長、実習指導担当者によって組織し ています。実習指導担当者会は看護部の中の職員のみで組織しており、各病棟の実習指 導者、研修担当の看護長などで組織しています。以上の前提条件を基に、私どもの病院 実習の現状をお話いたします。  まず「病棟の状況」ですが、平均在院日数の短縮に伴い、業務密度の高まりが著しく 見られています。例えば、平均在院日数が20日前後だったときと、現在私どもの病院は1 4.5日から15日くらいなのですが、点滴、検査あるいは処置などの件数が1.5倍から2倍 ぐらいに増えています。例えば、月曜日から木曜日までの新入院の患者を1日当たり4 名から8名受ける状況があります。この状況は看護職員の業務を繁忙化させ、ゆとりの ない動きになっています。当院における「実習受け入れ病棟の状況」を資料5の3頁に 示しました。現在、私どもの病院では6病棟で実習を受けております。平均在院日数が 病棟によって差がありますが、産婦人科の7.5日から外科の19.8日までです。病床利用率 は90%前後、これは土・日の落ち込みを含めてこのパーセンテージですので、月曜日か ら金曜日は92、3%から95、6%ぐらいになります。  看護師は2対1の配置基準を取っているので、夜勤体制で準夜勤3、深夜勤2または 準夜勤3、深夜勤3の体制を取っています。夜間勤務等看護加算は1から2ですが、3 というのは「5B病棟」の整形とリハビリテーションの病棟であり、重症度が低いとい うことで今年度の申請で3を取っております。週日、つまり月曜日から金曜日までの日 勤看護師数は9名から11名ぐらいですが、これには病棟管理責任、いわゆる看護長、外 来複合勤務が含まれていますので、日勤者は7名から9名程度がスタッフとして勤務し ている状況です。  次に1頁に戻り、「患者の特徴」についてです。医療技術の高度化、高齢社会などを 反映し、高齢者に対する手術をはじめとした積極的な医療の提供は一般的になってきま した。キュアとともにケア密度の高い対象者の増加が見られています。このことはナー スの業務の繁忙化もさることながら、患者自身の回復過程で、合併症などイレギュラー な例が増加しております。例えば、高齢者で全身麻酔の手術をするとか、あるいは人工 呼吸器を装着することも多く、そのような患者さんでリスクが高い場合は学生の実習に は適さないということが各病棟とも増えています。  一方、少子化の影響により小児病棟では患者数の減少が著しく、当院は30床の小児病 棟を持っていますが、大体20名を割るぐらいです。さらに、医師の専門分野の特徴もあ り、アレルギーを主としていることから入院期間が3日から1週間程度、ぜん息、肺炎 がほとんどという状況があります。  3番目は「看護職員の配置状況」ですが、先ほど言いましたように全病棟が「一般病 棟入院基本料1」を取っており、夜間看護加算1ないし2です。ナースの配置としては 多いほうだと思いますが、業務の多忙さから、看護職員は常時人手不足を感じておりま す。投書にも「看護婦さんを増やしてください」というものが月に1、2件入る状況が あり、余裕のない動きをしている実態があります。  引き続き、「実習の状況」に関して、学生の受け入れですが、私どもは隣接する都立 豊島看護専門学校3年課程の主たる実習病院となっております。1グループ6名ないし 8名の実習を受けていますが、基本は8名です。基礎実習などで一時期に全学生、ある いは全教員が実習に出るときに6名という人数がありますが、基本的には8名です。こ れについて病棟スタッフの人数と学生の人数とを比べると、ちょうど同じくらいか学生 数のほうが多いということになります。  2つ目は「担当患者の決定」ですが、学校から提示された実習目標を考慮しながら、 病棟の学生指導担当者が受け入れてくれそうな患者さんを学生数と同数程度選択してい ます。患者さんには口頭で了承を得た後、教員及び学生と調整し、受持ち患者を決定し ております。この場合、自分の技術、あるいは看護展開に自信のない学生はどうしても 処置の少ない方を選ぶ傾向があり、益々技術から遠のいているような印象を受けていま す。この際、流れがわかっている、いわゆる学生の成長過程を理解している教員が積極 的に関わってくれた場合、あるいはフォローしてくれた場合には技術を学ぶチャンスが あるようですが、学生の反応あるいは病棟実習指導者からの状況を聞くと、どうしても 3週間の実習だけに焦点がいってしまい、前の実習からの流れで受持ち患者も選んでい くということが少ない感じを受けています。  「実習指導の状況」ですが、現在1グループにつき1名の専任教員が指導に当たるこ とになっています。ただ、学内の業務と重なった場合は学内が優先されます。従って、 実習の時期によっては、実習期間の半分くらいしか教員が病棟にいないということもあ ります。教員は学内では、他の実習に出てこない学生の授業、あるいは学内実習の指導 、会議などと重なっているようです。仮に教員が病棟にいる間でも、8名の学生に対し て1名の教員では指導に限界があり、気になる学生の処置に1人ないし2人付くのが精 いっぱいの状況があります。  病棟では実習指導者を指名していますが、連絡調整が主になっています。日常の指導 はその患者のその日の担当看護師がケアの指導を行うという形にしています。したがっ て、実際の指導を行う看護師全員が十分な指導力や実践力を備えているとは言えない現 状があります。日勤者の7ないし9名ぐらいの人数の中には新人看護師も含まれていま す。職員の最近の状況を見ていると、経験3年を過ぎてようやく人の指導もできる余裕 が出てくるように思います。1年目、2年目、3年目ぐらいは自分に与えられた業務を やるのに精いっぱいですから、学生1ないし2名の指導を行いながら自分の業務を行い 、役割を果たせるスタッフは日勤の中では3名から4名ぐらいしかいないのが現状です 。私どもの病院の平均在職年数は11年、看護職員の平均年齢が32歳という職場でもこれ が実態です。  「技術に関する実習の状況」ですが、日常生活の援助技術でその患者に必要なことは ほぼ計画に挙げています。例えば、3年生でもうそろそろ実習が終わりの時期に当たっ ている学生の行動計画表を見ると、朝、行動計画をナースに発表、その後環境整備、バ イタルサインの測定、清拭、午後のバイタルサインの測定は計画されていますが、医療 技術がほとんど入っていない例があります。診療補助行為の多くは、学生が計画した場 合のみ実習としています。これは先ほど言いましたように、学校に医師免許を持つ職員 がいないことと、学校と病院が別組織であることから、医療行為を行った場合の責任の 範囲があるので、学生が計画した場合にはそれを実習するという形にしております。た だし、安全のために1人での行為は制限していますので、指導看護師の業務状況を調整 し、実施または見学としています。  積極的に技術を学びたい学生が多くの行動を計画してきた場合でも、ナースが受持ち 患者の業務に入れないときは、見学のみと言わざるを得ない場合もあります。学内でで きることも、不足のままに病棟へ実習に出てくるケースが多くなっています。例えば、 点滴準備を学生が希望した場合、1人分のミキシングと点滴ルートの接続に大体30分程 度要します。朝10時の点滴開始の場合、ナースは自分が行うべき処置の準備とともに、 学生の指導は1人分を行うのが精いっぱいということになります。そうすると、1週間 に2人とか3人ぐらいの学生に1回ずつ経験させるのが精いっぱいという状況がありま す。開始時間が設定されているので、治療計画どおりに進めるためにはこれが限度です 。  学生の反省会あるいは感想文を見ると、実習を通して「満足した」という場合は、技 術ができるようになったということよりも「患者さんが受け入れてくれた」「いいコミ ュニケーションが取れた」あるいは「パンフレットを作り指導をして大変誉められた」 というときなどに喜びを感じている印象があります。稀に「技術をたくさん見学できた 」あるいは「体験できた」という感想文があるものの、8名の実習グループのうちに1 名あるかないかというのが私ども臨床側から見た現在の印象です。  4頁目で私どもが受けている実習の看護技術の状況を少し整理してみました。学内で 習得してくる技術と、現実の臨床と乖離している技術では、まず「ベッドメイキング」 があります。学内ではまだホテル仕様のベッドメイキングを指導していますが、臨床で はホテル仕様をほとんどやっておらず、包布形式になっています。これは患者さんが自 分で寝返りをうったりしたときに乱れにくいということもありますが、いまはほとんど が委託化しているので包布を掛けて病棟に納入されるという状況があるわけです。  「石鹸による全身清拭」を学内ではかなり時間をかけて実習していますが、臨床では いま石鹸による全身清拭はほとんどやっておりません。許可が出次第というか、ナース 主導になることも多いのですが、可能な限りシャワー浴あるいは介助浴槽を使っての入 浴をしていただいております。したがって、石鹸を使う場合は部分清拭、傷があって入 浴ができない場合のみ石鹸を使うことが多くなっています。また、「注射器の取扱いで 」、アンプルから吸い上げる技術などもそうですが、アンプルと注射器の把持の仕方が 異なっています。これは学生にとって大きな驚きのようです。  2つ目は「臨床実習では行われているが、学内では必ずしも押さえられていない技術 」についてです。これは剃毛、ガーゼ交換、氷枕作成、経管栄養法、口腔ケア、陰部洗 浄、酸素吸入、尿留置カテーテルの管理、死後の処置、術後ベッド作成、成人のおむつ 交換、座薬挿入など、臨床の場で実習としてかなり実施していますが、学内ではほとん ど押さえられてきていません。1回見学をして、2回目には指導者の指導の下に行うと いう形を取っています。ただ、剃毛については現在件数が少なくなっていますので、必 ずしも必要であるかどうかは別の議論になるかと思います。  3番目は「臨床実習で経験不足となりやすい技術」についてです。これは時間や対象 者の関係で十分な指導ができない場合もありますが、点滴準備、点滴の介助があります 。私どもの病院は今回の答申が出るまで、点滴はすべてドクターが行っておりましたの で、その場合の介助はほとんどやっておりません。それから包帯交換で直接介助、これ は清潔操作についての技術ですが、これはほとんど練習で終わっている状況です。導尿 、浣腸、使用器材の消毒、後かたづけなどもほとんどが経験不足のままで終わっていま す。  また、「卒業まで全く人体に行わない技術」についてですが、都立の場合には採血、 注射、気管内吸引、輸液ポンプなどのME機器の取扱い、胃カテーテルの挿入などがあ りますが、未経験のまま卒業ということになっています。以上です。 ○竹尾座長 それぞれのお立場からご意見をいただきましたが、今回は第1回目ですの でフリートーキングということで皆様方が感じられたことやお考え、あるいは質問等々 をお話しいただけたらと思います。 ○世古委員 いまの報告を伺い、私どもの学生との共通性が多分にあると思いました。 臨床側の報告だったかと思いますが、神田委員の報告内容は特に耳が痛いような気がい たしました。コミュニケーションの問題に指摘があった中で、私どもの学校に入学して くる学生たちの特徴ばかりではないと思うのですが、非常に最近の学生はパーソナリテ ィーそのものに問題を持っていることが多くなったという印象があります。  したがって、学生が卒業間際になって、なおコミュニケーションを円滑に持てるとい うことそのものが非常に喜びになるという現状が一方にはあると認識しています。そう いった学生たちに技術教育を教えるということは非常に難しいと私も考えており、この 問題が例えば大学の検討会に出る前でも、やはり私たちの印象としても卒業時の経験項 目に特に偏りがあることを感じていました。  一方では、やらなければいけないということを教員たちもよく理解しているのですが 、1つには先ほども報告内容にあったかと思いますが、例えば身体侵襲に伴う技術を得 る機会というのは、与薬に関しても、注射をすることは少なくなってきていると思うの です。一生懸命努力しても、なお難しい問題があるのではないかと思います。どうした らいいのかということを私どもも考えている最中でした。だからと言って、やらなくて もいいとは思っておりません。どうしたらいいのかということです。注射を刺入するこ とが目的ではなく、そのプロセスの中で患者のインフォームドコンセントを取り付ける ということと、人権に基づいた技術を大いに学ぶ機会でもあると捉え、私どもの現段階 では頭を痛めつつも、何とかしたいと考えているわけです。以上です。 ○竹尾座長 技術教育をどのようにするかということは大きな問題ですね。臨床サイド の方はこの件についていかがでしょうか。 ○大内委員 神田委員の説明を伺い、大体看護技術の実習の状況としては当院でも同じ かと思います。以前、だいぶ昔のことですが看護技術はどのようなものを経験したかと いうチェックリストなどがありましたが、やはり最近の実習の目標などは、技術を優先 させる実習ではないと思います。技術実習を軽視するわけではないでしょうが後回しに なってしまう状況かと思います。 ○竹尾座長 いま言われたように、実践したくても、機会がまったくないとか、少ない ということがあるということです。それに考え方そのものが、技術を昔ほど重視してい ないということなのでしょうか。 ○大内委員 考え方ですが、例えば与薬にしても、なぜこの人が、こういったものを服 用するかという理論的なものが把握できていれば、敢えてそれを実際に実習するという ところまでは求めていないということです。 ○國井委員 看護協会において、ここにも出ていますが新卒者の技術能力を卒業後3カ 月経った7月半ばぐらいの時点でチェックしているのです。そうすると、かなり出来る 項目が多くなっていることから、やはり体験することは非常に大事であると思うのです 。ヒアリングもしたのですが、学内で練習している項目は初めてであってもかなり考え ることができるというのです。技術教育が少ないことで現場が今いちばん困っているこ とは、例えば与薬などでその与薬がどういう行為で、どういったことが起こり得るかと いうプロセスを全然たどれない、単なる作業で終わってしまうということだと思います 。技術を体験するということは、それを行ったことによってどんなことが起こり得るか というところまで考えられる、そのような能力開発に繋がるのではないか、いまそれが 欠けていることで臨床は非常にひやひやしているということがあるのではないかと思い ます。単なる技術を教えるということだけでない効果があるのではないかと考えていま す。 ○竹尾座長 技術だけを取り上げると周りが見えなくなってしまうということがありま すが、教育サイドから濱田委員のご経験を伺いたいと思います。 ○濱田委員 たまたまいま総合実習の最中なので、非常に耳が痛く感じています。2、 3年生の各論の実習と比べたとき、総合実習になると、4年生のいまの時期はかなり学 生は変わってきているので、吸引を要する等、症度の高い患者さんを受け持たせていた だいております。実際、採血はもちろん注射は筋肉注射やインスリンなども一緒にして おります。4年生になるとすぐ就職、外へ出るということで臨床のことが頭にあるせい か、非常に積極的に取り組んでいます。学生の2割ぐらいはクライアントとの関係を重 視して、精神的ケアやターミナルの方を中心にし、フィジカルな部分にはあまり手を出 さないという状況です。  2、3年生の各論の実習のときはほとんど見学で、何とかやらせていただくことは少 ないパーセンテージですが、総合実習になるとかなり経験ができるという形を取ってお ります。学内ではここまでは全部チェック済みとか、経験させようとか、1人でもでき る項目というように3段階に分けています。特に昨年文部科学省から「看護の実践能力 を育成する指針」の発表があったことから、今年度学生たちは自分のやった行為はどこ まで到達したのか、どこまで自分はできるようになりたいのか、ということをその技術 項目の中から自己評価をさせています。  重症の患者のケアをすることはなかなか難しいので、大学から教員が複数で、なおか つ5人ないし6人の学生に対して専門の臨床指導者が病院側1名、学校2名という形を 取っています。特に、総合実習ということで最後ですから、力を入れて何とか実習目標 に到達させたいという現状ですが厳しいです。学生は非常に緊張しています。  別な話になりますが、いまの学生はかなり一生懸命勉強して知っていても、生活経験 が少ないのか、不器用なのです。説明を聞くとわかっているなと思うからやらせてみる と、注射などは緊張して清潔がまた不潔になってしまうことも度々あります。実施させ る前には必ず学内で練習させております。全学生に平均的に経験させるということは難 しい状況にあります。大体3分の1の学生はできるのですが、学生間に格差があるとい う現状です。その辺もちょっと困っているところです。 ○竹尾座長 いろいろな問題が出てきましたが、協会からもいまお話がありましたが、 受入側はやはり筋道を立て、きちんとわかった上で技術ができるようにしてほしいとい うことなのです。その辺のことは学校側でも努力はしているけれど、3分の1くらいの 学生しか達成できないということなのですね。 ○竹尾座長 指導体制はかなりしっかりとして教えていらっしゃるように思いますが・ ・・。 ○濱田委員 総合実習のときだけは全教員が出ていきます。 ○竹尾座長 この問題について、何か他の視点からご意見がありますか。 ○辻本委員 患者の立場としては、聞かなければよかったというような何か空恐しい感 じを持ちながら現状を伺っていました。私どもへの電話相談は月に300件ぐらい全国から 届きます。豊島病院の神田委員の報告の中に、2の「実習の状況」の(2)に「口頭で 了承を得て」と書いてありますが、まさにこのことが私どもへの電話相談に届くのです 。病院に身を預けている患者ないし家族の立場は、病院側の都合を押し付けられること にノーと言えない気持ちがあるわけです。謙譲語を装った命令口調ということで、「よ ろしくお願いしますね」と言われるとノーと言えない関係の中、次のような相談が届き ます。患者である夫は非常に気分が揺れ動いており、何にイラついているのかと思った ら「今日、学生が来てた」という一言で、どうしても外してほしいが誰に相談したらい いかわからない、と。その辺りについて、私は神田委員のレポートから1つの話し合い をしてほしい点として、いまどきのインフォームドコンセントの時代に、本当に口頭の 了承でいいのかどうか。患者すべてにボランティア精神があるとは限りません。まして 、教育に協力する余裕のある状況の患者であるかどうかということも、問題として精査 すべきだと思いますので、この辺りの議論を深めていただけたらと思いました。  正木委員のレポートの中で、3のいちばん最後にある「無資格の学生が可能な実習の 法的保証」と「実習施設側の指導に関わる人的確保」という点について。臨床研修の話 の中にも指導医をどう手当するかということが議論にもなっていました。やはり患者は 自立の支援者ということでもナースに非常に大きな期待を抱いております。私自身もCOM Lの活動を通して、ナースの方の力がなければ日本の医療は変わらないと期待を寄せてい ます。本気で育てる気持ちがあるのかどうか、私はこの委員会の話をいただいた際、そ こを利用者側として声を上げたいということで入れていただいたのです。いま本当に患 者も自立しなければいけないときに、患者の自立の支援者として、十分に能力を持った 看護師を育てていくことに、国をあげて本気になっていただきたいと思うのです。そこ には実習現場の、正木委員の言われる人的確保というところを、それこそ税金を使って でもきちんと手当をしていただかないと、残念ながら犠牲者は私ども患者になるので、 是非その点をこの検討会において、成果が上がる話し合いにしてほしいと心から願って おります。 ○竹尾座長 私ども看護に携わる人間にとっては、本当に胸が痛む思いですが、教育す る側も一生懸命やっていることは私も感じています。いろいろな所で何かが足りなかっ たり、何かが不都合だったりということのようです。 ○神田委員 辻本委員の発言に対してですが、数年前までは学生が受け持たせてほしい と言うと、ほとんどの患者さんが喜んでくれたのです。退屈しのぎになるとか、あるい はいろいろなことをやってくれるとか、学生の成長を自分も見ることができるというこ とで喜んでもらえたのですが、ここ数年、本当に生活体験のなさから学生が不器用にな っている、先ほども点滴の例でも言ったように、やりますと言いながら準備ができない ために予定どおりにいかず、治療計画が30分、1時間ずれてしまうということがありま す。そのようなことに対して、やはり、患者さんも「えっ」という思いがあるので、で きれば付いてほしくないと言われる方が出てきました。  実習生が3名とか4名ならば、大体40床から50床ぐらいの病棟で、学生の教育目標に 合わせてこちらで選択できるのですが、8名ともなると、ちょっと無理かなと思う方ま で依頼せざるを得ない状況があります。実は、私どもはいま実習指導者や看護長にお願 いしているのは、実習生が来ない金曜日に受け持ちの患者さんの所に挨拶に時々行って もらうことなのです。「学生が実習していていかがでしょうか」ということで、毎回で はありませんが、ちょっと気になるときにはそのようなことを聞き、患者さんのほうが 「ちょっと」というような場合には、学校の教員と連絡して受け持ちを替えています。 その場合、学生は看護過程の展開の実習をメインにしているので、学校側としては学習 が繋がらないということもあるようなのですが、何名か受け持ちを替えたことがありま した。理由を言い、患者さんに迷惑をかけることは看護の実習にはならない、看護の実 習は患者さんの安全や安楽、自立に貢献することである、それが望めなければ看護の実 習ではないということを現場の看護長から話してもらい、替えたということもありまし た。  このことはいまの学生の生活体験、あるいは成熟過程、インフォームドコンセントの 問題、患者の権利から見ると、本当に重要な問題であるかと思います。ただし、ここの 所を解決していかないと、本当に臨床で期待する学生の教育は難しいのではないかと考 えています。 ○西澤委員 医師の立場で出席していますが、いま聞いていて、ある意味では思ってい た以上の状況だと感じました。もちろん、我々の医師のほうはもしかしたらもっと酷い のかもしれないと考えています。いま現場で、教育機関あるいは実習機関の先生方は本 当に熱心にやっているのは事実だと思いますから、あとは技術と理論のバランスではな いかと思いました。昔は視点が技術教育ばかりにいってしまい、理論教育を軽視した事 が問題だったが、いまは逆になっているのかなという気がします。そういうことでは、 この検討会で、おそらくバランスのとれた形ができるのではないかと期待します。ただ 、この検討会でできない課題がいまたくさん出てきました。やはり法的な整備というこ と、人的、財政的な問題、学生の適性といろいろあるようです。これは本検討会の検討 内容から外れるかと思いますが、ある程度ここから発信して、是非厚労省の方々にそれ ぞれに適当な場で議論をしていただき、同時に改善していただきたいと思います。 ○柳田委員 いま各地の実情を聞いて、まさにそのとおりであると思います。1つの病 院に5、6カ所の看護学校が入り、実習をしているというような実態もあります。どこ までそれをするのかということと、先ほども出たように法的な責任が非常に重く出てく るだろうと思われます。およその病院で余裕の持てない状況の中で実習指導を行ってい るということ、入院期間の短縮等により、なおさら業務が濃厚になってくる中での実習 なわけです。それにさらに加わってくるわけですから、実習施設の基準の緩和や実習指 導者をどうかしなければならないというマンパワーの問題などが出てくると思います。 例えばモデル人形等を使って、最低限身体に侵襲のない基礎的なものはやっていく、後 は卒後教育でできるのではないかというような感じを持っております。 ○川原委員 私の所の大学はまだ4年制になって2年目であり、まさしくこれからどう いった技術教育をしようかということを検討しているところです。千葉大学の報告はそ ういう意味で参考になりました。個人的なことですが、思えば三十数年前、私が看護学 生の時代はもちろん患者に採血もしましたし、ぶるぶる震えながら導尿もしたわけです 。いまいろいろな報告を伺い、紛れもなく歴史が流れ、技術か理論かという意見があり ましたが、確かにそのような面もあるかもしれないと思いました。敢えて、いまは理論 にこだわっていかなければならない側面があるのではないかという気がします。与薬に しても、行為そのものではなくプロセスの理解というのはまだまだです。私ども教育者 がこだわっていきたいところだと思います。 ○木村委員 2点ほど教えていただきたいところがありました。1点目は、いま技術の 話がだいぶ出ていましたが、侵襲性が高いかどうかということが問題になるかと思うの ですが、文科省のほうから大学側に指導項目があったということで、これはやはり技術 不足が問題だという意識で作られたと理解していいのでしょうか。 ○正木委員 報告書で書いてある意見として、やはりいろいろな状況が加味されて、先 ほど神田委員、大内委員からもあったように、臨床で求めている技術と、実際に新卒者 が身に付けている技術との間に乖離があるというところが臨床側から出ていました。た だ、それは教育側の要素もあり、臨床側の要素もあります。先ほど出た在院日数の短縮 化やリスクマネージメント等事故に対する責任の問題、患者の権利意識の高まりで患者 の同意を得るインフォームドコンセント等、以前はすべてOKだったものが、1つひと つがだんだん難しくなっている現状があることから、もう1度見直す必要があるという ことで出された報告書と解釈しております。 ○木村委員 おそらく、この検討会ではどの程度まで教え、実習させるべきだという項 目が検討対象になるのかと思うのですが、その際、これがかなり大きな1つの指針にな るであろうと理解していいのでしょうか。 ○正木委員 この報告書ではそのように位置付けられております。 ○木村委員 2点目は、お話を伺っていて、学校側と病院側の連携が非常に大切だとい うことがわかったのですが、実際に学生が来て実習するときに、法的な立場だとどうし ても誰が責任を負うのかということが気になっております。最終的には、学生なので大 学の教員が出向いてというお話が先ほどありましたが、その辺りは内部的にはどのよう に考えているのでしょうか。1つ気になったのは、先ほどの了承を得るときには病院側 が了承を得ているということですが、そこに教員は普通は入らないということになるの ですか。 ○濱田委員 他はわかりませんが、本学の場合は患者に関しては病棟の師長が全責任を 負っています。学生のために受持ケースを選ぶのは病棟の師長と専任の臨床指導者です 。学生数の2倍ぐらいの患者を選んでくれるので、それを学生に選ばせるという形を取 っています。許可が出ても容態の悪いようなときは、家族と本人の承諾を書面にサイン や口頭でしてもらうとか、書けない場合はこちらが許可を取ったときに書くというよう にしてもらっています。学生が受け持ってもいいという了承を得ています。 ○木村委員 了承に当たっても、やはり病院側に協力していただいていると理解してい いのですか。 ○濱田委員 はい。いまのところは大きな事故があまりないのですが、いつも私たちは ひやひやし、何かあったらということで保険にも入ったりいろいろと準備はしておりま す。臨床上の事故は大学がということもあり得るだろうということで、きちんと学生の 傷害保険にも入っておりますが、どこに責任があるのかという辺りでは、資格のない学 生ですから非常に神経を使っているというのが現状です。是非、その辺も明確にしてい ただけたら嬉しいと思います。 ○竹尾座長 患者さんについてはやはり臨床サイドが最終的に責任を負っているようで す。最終的な責任は病院の例えば師長、あるいは部長が持つことになります。当然学生 が何かやれば、学生も落度として咎められますが、責任の主たる所在は病院と考えられ ると思います。そのような意味で、臨床サイドがかなり主導権を発揮しているというこ とになるかと思います。 ○看護課長 先ほどの発言の中に質問が1点あるのですが、渡津委員の発表の中で、3 頁に体験の減少による影響ということで、与薬の関連で誤薬といったようなことが挙が っているのですが、これは学生のその時期に誤薬が起きているということでしょうか。 その辺がちょっとはっきりせず、卒業後の実態としてそのようなことが起きていること も、学校の先生方が調査等で書かれているのか、それとも実際に実習中に誤薬が起きて いるということなのか、その点お聞きしたいと思います。 ○渡津委員 総括のほうが曖昧になっています。5頁に与薬の実態で、これは各校を切 り取ったものになっていますが、調査の中に学生で答えたところもあれば、臨床のほう からそのような言葉を聞いたということもあります。例えばC校については臨床からの 意見というように、卒業生がその後どうなっているか、A校の場合も卒業生が2番のほ うでどうなっているかというように、そこでの調査のとき、学生だけではなく現状とし て臨床からで聞いていることも含めた内容が入ったものなので、ちょっと言葉として説 明が不足しておりました。  ただ、学生も現実に薬の確認をするときに、薬が一包化、つまり薬がまとまって入っ ており、いままでのようにこれがこれというような確認ではなく、薬剤業務の中ですべ ての薬が1つに包まれて病棟に上がってくるわけです。そのようなシステムの中で、カ ルテと処方箋とで確認する行為自体を学内で教えていても、現実にそこが違っていたり するのです。学生たちは錠剤の中までの確認はしたことがないわけですから、現場で起 こっている内容と同じ方法をもっと学内でよりリアルに教えていかなければならないと 思います。そのようなことがたくさんあるということで、学生時代もそうですが、卒業 生になったときに現場で起こしやすいということが出てくると思います。 ○正木委員 先ほど辻本委員から、患者も看護師に期待しているという言葉を聞きまし たが、学生自身も実際に学内で演習をするときと、患者を前にしたときとでは、その後 の効果というのは本当に大きな違いがあるのです。やはり、学内で50回練習したのと1 人の患者に1回実施したのでは、その学生にとっての学習効果というか身に付け方はか なり違ってくるものです。実際に実習で成長していく学生の姿というのは如実なのです が、それはやはり患者の力を借りていると思うのです。  そういう面で、安全性を確保するということの条件を本当に明確にしていただいて、 患者と臨床の現場の方々の協力を得ながら、教育側も努力していきたいということなの です。 ○竹尾座長 看護側は安全面を考えて、一生懸命頑張ることが実習をさせて頂くための 前提となると思います。演習の時には反復練習ができますが、実際の場面でどう実践で きるかが、問題です。まして、周辺知識を持って技術を実践することは、演習ではでき ても、実際の場面で、正しく行うことは難しいのだと思います。そこに法的、人的問題 もからんでくるわけで、そこでどうしたらいいか、難しい課題をこの委員会は議論して いかなければならないと思われます。  本日は皆様より気付かれた点、課題、問題点を出していただきましたので、これから 少しずつ整理しながら議論していけたらと思っております。この検討会に対しての希望 やご意見がありましたら事務局へお寄せいただくことにして、今日の会議は以上で閉じ たいと思います。次回以降の日程について事務局より説明をお願いいたします。 ○ 勝又補佐 委員の方の机上に12月から3月までの日程表を配付してありますので記入 していただきたいと思います。皆様の予定が決まり次第、日程についてはご連絡いたし ます。以上です。本日はどうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局看護課 勝又、平良 連絡先 03-5253-1111(内線 2599、2595)