02/07/18 第1回ヒヤリ・ハット事例検討作業部会議事録            第1回ヒヤリ・ハット事例検討作業部会             日時 平成14年7月18日(木)                10時30分〜             場所 厚生労働省専用第18会議室 ○新木室長  定刻になりましたので、ただいまから「ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」を開会さ せていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中ご出席いただきまして 誠にありがとうございます。私は、厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長の新木で ございます。作業部会長選出までの間、議事進行を務めさせていただきます。よろしく お願いいたします。  それでは、議事に入ります前に、私から委員のご紹介を五十音順でさせていただきた いと思います。  日本画像医療システム工業会国際部会部会長の石川廣委員です。  上智大学法学部助教授の岩田太委員です。  東京医薬品工業協会医薬品安全性委員会商品設計部会長の大澤總弘委員です。  杏林大学保健学部教授の川村治子委員です。  札幌社会保険総合病院院長の佐野文男委員です。  東京医科歯科大学歯学部付属病院薬剤部長の土屋文人委員です。  東京証券業健康保険組合診療所薬剤部長の中村幸一委員です。  横浜市立大学医学部教授の橋本廸生委員です。  法政大学社会学部教授の原田悦子委員です。  国立療養所南九州病院院長の福永秀敏委員です。  日本赤十字社幹部看護婦研修所専任教師の増子ひさ江委員です。  日本大学医学部付属病院板橋病院看護部師長の松月みどり委員です。  日本製薬団体連合会安全性委員会委員長の宮城島利一委員です。  武蔵野赤十字病院院長の三宅祥三委員です。  国立長野病院副院長の武藤正樹委員です。  国立国際医療センター臨床工学室主任臨床工学技士の目黒勉委員です。  毎日新聞社論説委員の山路憲夫委員です。  日本医療機器関係団体協議会安全性情報委員会副委員長の山本章博委員です。  委員は以上でございます。  続きまして事務局を紹介させていただきます。  医政局総務課長の大谷です。  医薬局安全対策課安全使用推進室長の伏見です。  どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、作業部会の開催に当たりまして、事務局を代表して医政局総務課長からご 挨拶を申し上げます。 ○大谷課長  本日は、委員の先生方におかれましては、ご多忙のところお集まりいただきましてあ りがとうございました。また、この作業部会の委員をお引き受けいただきありがとうご ざいます。  さて、相次ぐ医療事故の報道が続きまして、国民の医療に対する信頼は大きく揺らい でおります。そのため医療のさらなる安全性の向上と、信頼性の回復が当面の大きな政 策課題になっているところでございます。こうした状況の中で、本年4月、医療安全対 策検討会議におきまして1年間の審議の結果、「医療安全総合推進対策」が取りまとめ られ、厚生労働省では、この報告書を踏まえまして安全対策の実施に取り組んでいると ころです。その報告書の中で、昨年10月から実施しております医療安全対策ネットワー ク整備事業、いわゆるヒヤリ・ハット事例の収集事業につきましてもさらなる充実を図 るべきであると提言されております。この作業部会は、医療安全対策検討会議の下で医 療安全対策ネットワーク整備事業により収集されたヒヤリ・ハット事例についてヒュー マン・ファクター、それから医薬品・医療用具等の要因双方の観点から総合的に分析 し、より具体的、かつ効果的な改善方策の検討を行うとともに、ヒヤリ・ハット事例の 収集方法等に関する様々な検討を行うために今回新たに開催されることになりました。 委員の皆様方の高い見識に基づく幅広い視点からのご意見を賜るようよろしくお願い申 し上げたいと思います。 ○新木室長  それでは、本作業部会の開催要領につきまして事務局より説明させていただきます。 ○宮本専門官  最初に資料の確認をさせていただきます。まず資料1として、「医療安全対策検討会 議ヒヤリ・ハット事例検討作業部会について」、資料2として、「医療安全対策ネット ワーク整備事業の概要について」、資料3として、「医療安全対策ネットワーク整備事 業の第3回集計結果の概要について」、があります。資料4として、「第3回全般コー ド化情報の分析について」、があり、その後に参考1として、「単純集計結果」、さら に参考2として、「クロス集計結果」、があります。資料5として、「第3回重要事例 情報の分析について」、がありその参考資料が付いております。その次に資料6とし て、「第3回医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析について」という資料がありその 後に参考1として、「医薬品報告事例」、参考2として、「医療用具報告事例」、参考 3として、「諸物品報告事例」、があります。資料7として、「医療安全対策ネットワ ーク整備事業の今後の運営に関する検討課題について」、というのがあります。最後に 参考資料として、「医療安全推進総合対策の概要」、があります。また委員の先生方に は、この資料とは別に、医療安全対策検討会議が4月に取りまとめました「医療安全推 進総合対策」の報告書を配布しております。  それでは、資料1の「医療安全対策検討会議ヒヤリ・ハット事例検討作業部会につい て」、という資料をご覧下さい。  まずこの作業部会は、ヒヤリ・ハット事例の活用による医療事故防止方策の検討を目 的として、医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会および医薬品・医療用具等対策 部会の下にヒヤリ・ハット事例検討作業部会として開催されるものです。図式化したも のが資料1の3頁にありますのでご覧ください。  この作業部会では、ネットワーク整備事業を通じて収集されたヒヤリ・ハット事例の 分析、および改善方策の検討に関する事項についてご検討いただきたいと思います。ま た、医療安全対策ネットワーク整備事業によるヒヤリ・ハット事例の収集方法等に関す る事項についてもご検討いただきたいと思います。そのほかヒヤリ・ハット事例の活用 等に関する事項についてもご検討いただきたいと思います。 ○新木室長  次に、作業部会長の選出についてですが、委員の先生方の互選とさせていただきたく 思いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○新木室長  それでは、どなたかご推薦いただければ、と思います。 ○武藤委員  部会長として橋本委員をご推薦させていただきたいと思いますが、いかがでしょう か。 ○新木室長  武藤委員より橋本委員のお名前をいただきましたが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○新木室長  それでは、橋本委員、よろしくお願いいたします。 ○橋本部会長  このたび作業部会長ということでこの任を受けさせていただきたいと思います。いま 新木室長からご説明があったように、この上にヒューマンエラー等々のいくつかの協議 する組織がありますけれども、この検討作業部会で実際にヒヤリ・ハット事例の中身を 見て、それを検討して社会にそこから得た情報を提供していくという役割を担っている のだろうと思います。是非皆さんのお知恵を拝借して、良い情報が出せるように努めた いと思います。ご協力をお願いしたいと思います。  それでは、議事に入りたいと思います。今日は第1回ということですので、事務局か ら医療安全対策ネットワーク整備事業そのものについてまずご説明ください。 ○宮本専門官  資料の2の「医療安全対策ネットワーク整備事業の概要」、をご覧下さい。医療事故 防止対策を効果的に講じていくためには、医療事故につながるさまざまな要因を客観的 に把握し、分析に基づいた対策を講じる必要があります。このため、多くの医療機関に おいてヒヤリ・ハット事例の収集が行われておりますが、個々の医療機関による取組み だけでは、当該医療機関の特有の要因を把握できる反面、当該医療機関では起こってい ない要因などの把握が困難という問題もあります。この事業の目的は、個々の医療機関 が収集・分析した情報や当該情報を基に検討した対策について広く医療機関、国民が共 有する仕組みを構築することにあります。昨年の10月から事業を開始しました。  現在収集しております情報は、大きく3つに分かれております。まず1つ目として、 全般コード化情報。これは、ヒヤリ・ハット事例全般についてその発生傾向等を把握す るため、発生場面や内容に関する情報をコード表に基づいて収集しているものです。2 つ目として、医薬品・医療用具・諸物品等情報です。これは、医薬品・医療用具等の物 が要因となって発生した事例について製品名、発生要因、防止対策などを記述情報とし て収集しているものになります。3つ目として、重要事例情報。これは、医療事故を防 止する観点から、報告する医療機関として広く公表することが重要と考える事例につい て、その発生要因や改善方策等を記述情報として収集しているものです。  ヒヤリ・ハット事例の範囲は、(1)誤った行為が、患者に実施される前に発見された 事例(2)誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らな かったような事例、の2種類であり、現在は、特定機能病院、国立病院・療養所および 国立高度専門医療センターのうち参加登録を行った機関を対象として収集されていま す。  ヒヤリ・ハット事例の収集の流れは、3枚目の図のとおりです。まず対象医療機関で 発生したヒヤリ・ハット事例は、所定の形式で医薬品副作用被害救済・研究振興調査機 構に報告されます。厚生労働省はここから分析に必要な情報を受け取り、医療安全対策 検討会議の意見などを踏まえて発生要因や具体的な対策を検討しております。また、そ の結果に関しては、医療機関や国民に対して広く情報提供をしているところです。以上 が医療安全対策ネットワーク整備事業の概要です。 ○橋本部会長  ありがとうございました。ただいまの資料2の説明についてご質問はありますでしょ うか。 ○山路委員  基本的な疑問ですが、なぜいままでこういう活動が個々の病院に止まり、全国的に集 める仕組みがなかったのでしょうか。それから代表的な外国の例で結構ですが、こうい う取組みがなされているのかどうか。その2点を伺わせてください。 ○橋本部会長  実は、研究として始まったものです。研究班の責任者の武藤先生からご解説いただけ れば、と思います。 ○武藤委員  確かに各施設では、ヒヤリ・ハットを集めて、分析をしておりました。それは、最近 ではかなり定着しております。ただ、多くの施設から全国規模で実際にこのようなヒヤ リ・ハットを集めたのは、ご指摘のように今回が初めてです。  似たような例としては、イギリスのナショナル・ヘルス・サービスの中でこうしたヒ ヤリ・ハット事例を集めているというのは聞いたことがあります。なお、航空機産業で は、アメリカの航空安全報告システムがあるなど、こうしたニア・ミス報告制度は、他 の産業ではかなり一般的に行われています。 ○橋本部会長  いま、ちょっと遅いのではないか、というニュアンスでおっしゃられたと思いますけ れども、決してそうではなくて、ヒヤリ・ハット事例の収集・分析が個々の病院の中で 盛んになされるようになったのはここ2年ぐらいです。その間にヒヤリ・ハット事例の 定義や、どうやって出したらいいだろうかとか、どうやって書くべきかとか、それから ヒヤリ・ハットをお互いに進んで出せる土壌、安全文化が一番大事なのだという認識、 そういうことが検討され体制として定着するまで結構かかっている。それは現時点でも 少し問題はあるとは思いますけれども、そういうことがこういう事業として集約できる レベルに達したということではないでしょうか。 ○佐野委員  いまの件に関連しているのですけれども、7月15日のメディファックスにインシデン ト・レポートが情報公開条例にかかってしまって、その情報が開示の対象になるという ようなものが出ております。情報公開条例でもって公文書と位置づけられているために インシデント・レポートの開示を求められる自治体病院が出てきているようです。医療 の透明性をできるだけ高めるためというような理由のもとに、これは主に自治体病院で すけれども、こういう方向になっているところがあります。今回の対象機関は、国立、 あるいは特定機能病院ということですが、こういうことでインシデント・レポートが順 調に収集できないというような方向になったら困るな、というような気がするのです が、この辺のことはどうなのでしょうか。 ○新木室長  1点目ですが、本システムそのものについてまずご説明させていただきます。佐野委 員がご指摘のように、この情報を集めるにあたりそれにまつわる心理的な面も含めての 様々な障害は当初から心配しておりました。そうはいっても、こういう情報を集めて提 供するということは安全対策上有用であると考えられましたので、2つの点を考慮しま した。1つは、患者さんの名前はもちろんですが、医療機関や医師、従事者の名前も出 ないように、個人や施設を特定できる情報をマスキングして取り扱うこと。もう一つは 取扱いに注意を要する事故情報そのものについては、別に検討の場を設けることとし て、ここではヒヤリ・ハット情報を集める。こちらを収集・分析することで非常に大き な成果が得られるのではないか。他産業の例を見ましても、そういう2つの点を考慮し て運営しています。  次に、情報公開との関連ですが、情報公開は各自治体それぞれが条例等に基づいて 行っています。我々としては、病院の特性、機能、設置主体の特性等に応じてさまざま な状況ではあるとは思いますが、安全対策のためにこういう情報を医療機関の中はもち ろん、医療機関を越えて共有していただく。そのために積極的にお出しいただくように お願いする考えでいます。情報公開そのものについては、我々はコメントする立場にあ りません。 ○橋本部会長  いろいろ制限がありながらもそういう目的に向かって進めている事業であるというこ とをご理解いただければと思います。 ○原田委員  細かい質問で恐縮なのですけれども、現在集めておられる情報の集め方について確認 させていただきたいのですが、3種類の情報があると。全般コード化情報と医薬品・医 療用具等情報と重要事例情報の3つは、そもそも出す方が区別をして出されるのか、そ れとも1つのフォーマットで出されたものを収集された機関の方で分けておられるのか という点をご確認いただきたいのですけれども。 ○新木室長  現在のところ、提出する医療機関により、この3つのどのカテゴリーに当たるかとい うのを区別して報告しています。 ○橋本部会長  そうすると、1に入って報告したものと2のものがダブって出されることがあるとい うことですか。 ○新木室長  全般コード化情報で報告されて、さらに重要事例情報等で報告されるケースもありま す。 ○橋本部会長  それでは、議事を進めたいと思います。  第3回の集計結果についてご報告をいただきたいと思います。いまお話がありました ように3つの分析がありますけれども、全般コード化情報、次に重要事例情報、3番目 に医薬品・医療用具等情報の分析についてそれぞれ、ご担当の作業班からお願いしま す。まず全般コード化情報の分析を行っておられます武藤委員の方からお願いします。 ○武藤委員  資料の3をご覧下さい。全般コード化情報は去年の10月から集め始めまして、現在ま でに延べ1万件以上にも達しております。今回の報告は、3回目で平成14年の2月1日 から3月31日までの2カ月間に発生したヒヤリ・ハットを報告されたものになります。 参加登録は、特定機能病院と、国立病院・療養所の269カ所で、この期間中に報告してい ただいたのは99施設、参加施設の大体36%が報告していただいているということです。 全般コード化情報に関しては2カ月分4,820件です。  全般コード情報に関して、資料4に詳しいものが付いております。前回、前々回と比 べますと1施設当たり、あるいは1カ月当たりの事例報告数が増加しております。こう いった情報収集システムがようやく定着してきたということが言えると思います。  発生した要因としては、各職種とも確認不足が多く、医師の場合は、その他に連携の 悪さを原因とするものが挙げられていました。看護師、薬剤師では、勤務状況、心理的 条件が挙げられています。  また、事例の要因は確認不足としている事例が6割以上もある一方で、システムを要 因としているものは5%と少なく、いまだに根本的な要因の分析までは至ってないこと が分かりました。確認不足の裏にあるシステム要因についてまで掘り下げて分析してい る事例がまだまだ少ないということで、この辺は問題点でしょうか。  次に、ヒヤリ・ハットの事例の発生動向に関してですが、基本的には大きなパターン の違いはありません。例えば、資料4の参考(1)の2頁に発生場所の集計があります が、病室、ナースステーション、薬局、それから輸血部が多い。これも前回、前々回と それほど大きな違いはありません。  また、ヒヤリ・ハットの発見者も、1番が当事者、つまり実際にヒヤリ・ハットを体 験した人が報告しており、2番目が同職種者、3番目が他職種者で変化ありません。  当事者の職種は、看護師が圧倒的に多く、その次が医師、薬剤師の順に続きます。看 護師は、最終実施者である事が多いため、ヒヤリ・ハットに対する意識も高いし、体験 する場面も多いというふうに考えます。  当事者の部署配属年数も部署に配属されて1年未満の方が多かったです。  発生場面では、1番目が処方・与薬、その次が療養上の世話、それからドレーン・ チューブの順です。療養上の世話は、転倒がやはり一番多い。このパターンも、前回、 前々回とほとんど変わっておりません。  発生要因ですが、これも確認不足とか観察とか、それから勤務の状況といったパター ンです。  影響度には、実施されたけれども患者に影響がなかったものと、実施前で回避したも のの2つが含まれていますが、実施まで至ったものが大体6割となっています。その他 に、実施はされなかったけれども、もし実施されたら非常に影響度が高いと思われる、 あるいは中等度と思われるものが合わせて約7%ありました。具体的な項目としては、 輸血や機器に関するものです。  単純集計、クロス集計ともに、これまでと同様な頻度分布になっていますが、これは 3回ほど分けて分析しているものですから、今後これまで収集された全ての情報を通し て分析する必要があるかと思います。 ○橋本部会長  それでは、引き続きまして増子委員から重要事例情報のご説明をお願いしたいと思い ます。 ○増子委員  重要事例情報の分析について報告させていただきます。今回は831事例が報告されま したが、記載の不備などのため最終的に分析の対象となったのは614事例です。  第3回は、2カ月の収集ですが、614件集まっております。第1回が110件、第2回が 370件ですから、収集件数は増加しています。  重要事例情報では、医療事故を防止する観点から広く公表することが重要と考えられ る事例について、ヒヤリ・ハット事例の具体的内容、発生要因や改善方策などを記述情 報として収集しています。分析事例選定の考え方ですけれども、発生頻度は低いが致死 的な事故につながる可能性のある事例、他施設でも活用できる有効な改善策が提示され ている事例、専門家からのコメントとして有効な改善策や情報が提示できる事例を選ん でいます。  手技・処置区分別に見ると、チューブ・カテーテル類、あるいは転倒・転落、与薬に 関すること、調剤・処方に関することが大半を占めています。インシデントの発生要因 については、「忙しかったため」とか「疲れていたため」というような記述が見られて います。  改善策として、確認の徹底、集中力の持続、教育だけでなくて、他者への声かけです とか申し送り、メモを取るなどの業務遂行上の工夫も挙げられています。  チューブ・カテーテル類については、自己抜去が依然多い。それから、与薬に関する 情報に関しては、薬の種類ですとか、量や患者さんの間違い、三方活栓や輸液ポンプな どの操作の間違いなどがあります。それから、患者さんの自己管理の薬剤に関して服用 忘れなどが報告されています。薬の種類・量や患者さんの間違いについては、ラベルや 伝票、薬剤それぞれの取扱い方が錯綜することによって発生する事例が多く報告されて おります。医療従事者間の連絡・伝達ミスの事例も多く報告されています。これは医師 の手書きの指示による誤読、それから解釈の誤りなどが要因ですが、医師とコメディカ ルの連携によって事故を未然に防いだ事例も報告されています。  その他の事例としては、麻薬の取扱いや、紛失などのヒヤリ・ハットが報告されてい ます。それから、患者さんとのコミュニケーションがうまくとれなくて発生した事例も あります。  改善策として有効な対策が前回、前々回よりも随分多く報告されるようになりまし た。ただ、確認不足であったため今後は確認を徹底するとか、当事者個人の努力の範囲 で今後の改善策を検討するという例も多くみられます。システムとして何とか対策を考 えていくという形に変化していけるように私どもの改善案などの提案もしていきたいと 思います。  これからの課題ですが、記述の不足によって分析対象から外される事例が減少するよ うに報告の形・フォーマットについても検討が必要です。また、要因を確認不足、大丈 夫だと思った思込み、に止めるのでなく、なぜそういうふうに確認不足が起きてしまっ たのか、なぜ大丈夫だと思ったのかというような背後要因が明らかになるようにしてい かなければならないと考えております。 ○橋本部会長  それでは、最後に事務局から医薬品・医療用具等情報の分析の説明をお願いします。 ○宮下専門官  それでは、医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析についてご説明いたします。資料 の6をご覧下さい。今回報告のありましたヒヤリ・ハット事例のうち医薬品、それから 医療用具、諸物品等の情報に関するものが189件ありました。そのうち4件は重複報告 と考えられましたので、分析対象事例としては185例になります。そのうち医薬品関連 情報が148件、医療用具関連情報が32件、諸物品等関連情報が5件です。これは、前回 と比べまして全分析事例数を含めてほぼ同様の傾向を示していると考えております。  次に、医薬品関連情報の概要ですが、医薬品関連情報の要因として薬剤名が似ていた というものが最も多く、148件の内20.9%を占めています。続いて、複数の規格が存在 した、あるいは管理が悪かったといったものが12.8%、10.8%とそれぞれ前回と同様の 傾向を示しております。  医療用具に関しては、管理が不十分だったというものが32件中18.8%を占めておりま して、比率は、前回同様の管理不十分だったというものが30.6%と報告されています が、これよりは減少しています。  諸物品等関連情報の概要については、今回の報告の5件はすべて要因が無記入でした ので、前回は「管理が不十分」が42.9%と一番多かったのですが、今回は比較する情報 がありませんでした。  また、医薬品・医療用具等、販売名とか業者名の記載されていない事例、あるいはヒ ヤリ・ハット事例の要因として不適切な分析ではないか、と考えられるものもありまし た。このため3頁目に示した医薬品関連の要因分析というフローチャートを使って検討 班の先生方にご相談しつつ要因を再検討しています。4頁目のB−1が報告された要因 と再検討結果の対比表です。具体的な事例を挙げますと、解熱鎮痛消炎剤のロプレソー ルSRとボルタレンSRを間違えそうになったというような報告があります。医療機関 側からの報告では、発生要因は「薬剤名が似ていた」となっていますが、先程のフロー チャートに沿って再検討すると「同一記号」ということになります。次の頁にB−2と して、再検討後の要因を再集計したものを「医薬品関連情報の概要にいて」として示し ました。  これまで、医療関係者や国民が情報を共有できるように収集した情報は会議資料とし て公開してきましたが、もっと分かりやすく、あるいは有効に活用できるようなものに するべきだというようなご指摘もいただいております。今回は、事例情報を薬の効能の 分類に合わせて整理し、同じような薬効の薬についてどんなものが報告に上がっている のかを多少見やすくしてまとめたつもりです。  今後は、例えば、報告されている医薬品が仮に実際に患者さんに投与された場合の被 害の大きさや発生の頻度をリスク評価し、それらに対する対策案についても個々の事例 ごとにまとめていきたいと考えております。今回は、今後どのような形でまとめていく かということを、項目だけ挙げております。今後、重要事例の様式などを参考にしつつ 利用者が活用しやすい形式を早急に検討していきたいと考えております。 ○橋本部会長  それでは、質問とご意見をいただきたいと思います。まず全般コード化情報の点につ いていかがでしょうか。 ○山路委員  我々門外漢からするとよく分からないところがありまして、資料4の参考1の7頁の 発生要因のところですが、発生要因の01からのコードを見ますと、01が確認、02は観察 に、その後、例えば15の勤務状況とか08の心理的条件とか書いてあります。これは「結 果」として、例えば確認不足、観察不足が起きてヒヤリ・ハットが起きたというのなら ば分かるのですが、「要因」ということであれば、例えば勤務状況とか心理的条件に よって確認不足が起きたとか観察不足が起きたという関係ではないでしょうか。つま り、「結果」と「要因」とがごちゃ混ぜに並列にされているのではないかという疑問が 起きるのですが、この点はいかがですか。 ○橋本部会長  調査票を作るときのいくつかの要因を書くときの構造の問題ですが、左側の件数を全 部足すとトータルの件数より多いですから、多分複数回答があり得るわけですね。 ○宮本専門官  要因に関しては、複数で選択していただけるようになっております。 ○橋本部会長  01から08まであって、2桁で今度11から16まであって、21から24まであって、30が あって、40台があるという構造になっているので、おそらく発生要因としてくくられた ものをいくつかの構造に分けて考えているという仕組みのものだと思います。ですか ら、おっしゃるように、それがいくつか交差していると疑問に感じられると思います が、階層的に分析すると大丈夫ではないですか。 ○新木室長  ちょっと補足させていただきます。山路委員からご指摘の件ですが、発生要因は、大 きく5つほどに分けております。1つが当事者に関することで、この中に確認だとか観 察等が入っております。2番目が当事者に影響を及ぼした環境のシステムだとか記録な ど、3番目に医薬品・医療用具、4番目に教育・訓練、5番目に説明・対応という大き く5つに分けておりまして、その中をさらに細かく分けております。  こうしたコード体系をとった背景としては、発生要因が1つなのか、複数あるのか、 その間の関係はどうなっているのかなどは、簡単に分かりません。要因が相互に有機的 に影響しあっており、本当の原因はこれで、その原因が2番目の原因がこれ、3段階目 の原因がこれ、といった書き方というのがなかなか難しい。そのために複数選択でコー ド体系を組み立てているという状況にあります。そのためメリットもデメリットも生じ てきているというような状況ではないかな、というところです。 ○橋本部会長  いま新木室長から説明があったように、個人に関係するもの、システムに関係するも のというように5つの構造を持っていて、調査表としては、それぞれに反応してもらう というようなことになっていますが、いくつかの現実的な制約があってなかなか見えな い状況になってきている。ですから、これがもう少し成熟してきて、発生要因の5つの 構造それ自体をいろいろな起こった事柄と関連させて分析できると、もうちょっと構造 的なことが見えてくるかもしれないと思います。 ○原田委員  その点に関して、単純集計とクロス集計だけではなく、共編関係と申しますか、どこ に付けた人がほかにどこに付けているのかという分析をまずやっていただけると、どう いう関係があって、どういうコードを付けていかなければいけないのかという分析につ ながっていくかと思いますので、是非お願いしたいと思います。 ○橋本部会長  ただ、難しい問題もあります。データ自体はたくさん入っているわけではないですけ れども、変数としてたくさんあるのです。それをコード化まで1つ1つ行っていくと膨 大な作業量になりますから。分析の一般的な方法としては、まず当たりをつけるという 時期がまだ続いているのかな、という感じがします。おっしゃったような特徴的なとこ ろは、ターゲットを決めた絞込をしていってどう見えるかということを観察していくと いうことが大事かもしれません。 ○原田委員  直接結果が出るかどうかは分かりませんけれども、統計的にどういうものに共編関係 が多く出ているのかとまず当たりをつけるため、折角これだけのデータがありますの で、少し分析をしてみる価値はあるのかな、と思います。 ○武藤委員  例えば、クラスターにいくつか分かれてくるような形で出てくると思うのです。 ○土屋委員  これは全体にも関わることだと思うのですけれども、ちょっとお聞きしたいのです が、収集方法のウェブ方式とフォーマット方式の採用の比率はどうなっているのでしょ うか。例えば、いまのような話も、入力方式によって、たとえ元はすごくボリュームが あってもどんどん実施できるということもあり得るものですから、これはどちらがどの ぐらいの比率なのでしょうか。 ○宮本専門官  件数についての比率は手元にないのですが、施設数でいいますと、半数の施設がウェ ブ、半数の施設がCSV変換を使って報告しておられるという状況です。 ○土屋委員  4分の1の無効例があるというのは、折角報告をいただきながら残念です。いまは、 まさにスタートしたばかりで、この1年間でこの制度をどうやっていったらうまくいく だろうかということを一生懸命やる時期だと思います。例えばウェブ方式では必須項目 が入ってこなければ受け付けられないようなシステムにすれば無効例が減るというよう なことも考えられます。 ○橋本部会長  なかなか難しいところですね。自分たちのシステムを持っていて、スタンドアローン で入力して、それをCSV変換ソフトで流し込んでいく方がよほど作業効率はいいので すが、ウェブだと前に座って1つ1つ入れていくというわけですから作業効率は悪い。 それぞれの施設の事情にもよるかと思います。意識していきたいと思います。 ○石川委員  質問なのですけれども、全般コードのほうで4,820事例あって、それから重要事例情 報が831と。この相関をちょっと知りたいです。というのは、先程の発表で影響度のと ころで、すでに間違いが実施されたというのが2,600で約5割あります。さらに発見の 中で中等度まで入れると3000強になります。その数と重要事例情報の数字はかなり差が ある。重要事例情報の定義はあったのですけれども、そことの関連がちょっと見えなか ったので、それを教えていただければ、と思います。 ○増子委員  ともかく公開して皆さんの参考にしうるような事例であると報告施設が判断したもの について記述事例として集めておりますので、報告施設がそのように判断しない場合は 報告されません。ですから、こうした差が出ることになります。 ○武藤委員  基本的には、全般コード化情報と、それから重要事例情報は、一部は重複していると 思いますけれども、独立しているのだと思います。それから、これはあくまでも施設の 任意の報告ですからもちろん全数調査ではありません。ですから、そうした統計として のばらつきは出てくると思います。 ○石川委員  間違いが実施されてしまったというのは、結果論なのですけれども、潜在的なことも あるので、できればどこかフラッグが立っていて、それが重要事例情報の中で入ってい て、記述が足りないから落としていくといったほうが共通性が出てきて、他の医療機関 に対して啓発を図る場合、広く伝える場合には効果的だと思うのです。パーセント的に はこういうことがあって、潜在的問題があると、重要事例情報でも共通しているよ、と あったら、さらに広まるのではないかと思うのです。 ○武藤委員  1万件を全部通してみたときに。 ○橋本部会長  その辺は、さっき言われたように進めていただければ、と思います。 ○川村委員  私は、平成11年に1万事例を自由記載方式で収集しその分析に3年間を要したのです けれども、ここに出てくるようなことはすでに出ておりますので、むしろその次の段階 に進んだほうが良いと思います。この大変な労力をかけて施設が出してくれた全般コー ド化情報のデータですけれども、施設にどれほど有効な成果が還元できるかという立場 で見ますと、このコード化された項目の次の内容が欲しいのです。例えば、ドレーンの ところを見ると、自己抜去が多いと出ています。多分抑制をしていたり、あるいは最近 の抑制を廃止する運動の中で緩やかな抑制をしておられて、その中で自己抜去が起きて いると思います。そうしますと、いま現場が困っているのは、そういう方により負荷の かからない有効な抑制とはどういうことかということを知りたいのです。私の1万事例 の分析の結果と本質的にはそう変わらないと思うので、これから労力をかけてデータを 入れていただくならば、この次の段階、そして施設を越えて改善をしていくためのデー タになりうるものが欲しいのです。内容をより深めるような形に変えていくということ はありますでしょうか。 ○武藤委員  川村先生のおっしゃるとおり、確かにパターンとしては似ていると思います。それ で、注目しているのは、先程ご指摘のあった影響度の分析なのですが、発生場面と影響 度をクロス集計した表を見て下さい(資料4-参考2-16頁)。実際に実施されたが影 響が全くなかったものが約半数、そのほかに、もし実施されたら中等度ないし非常に重 大な影響があるものがあります。影響が中等度のものは例えば手術、診察、オーダーの 指示出し、影響が大きいものとして輸血や診察、設備の問題が出てきます。データが大 量集積してきますと、こうしたものが現れてくるということで、重点分野というような 分野が同定されてくるのではないかという期待があります。全般コード化情報ですから これ以上の掘下げは困難ですが、こうした重点分野を見つけていくという作業も1つ重 要ではないかな、と思ったのですが、いかがでしょうか。 ○橋本部会長  危険領域とか重要領域とかといわれているようなものを同定するのにこれがどのぐら い役に立つかという問題はあると思います。おそらく医療現場で働いている人たちがあ る種の経験を集積していくと、これによらずとも危険領域というのは分かってくるわけ で、感覚的にはもうそういう領域がわかっているような気がします。それからヒヤリ・ ハットがどう起こっているのかという意味での裏付けはできると思いますけれども、 おっしゃっているのは、その先どうしたらいいのかという知恵をどうやって集められる かですね。重要事例情報を分析していくチームは、かなり力のある人たちが集まってい ますけれども、その人たちがすべて解決できることではない。例えば、抑制の問題とい うのは、相当進んでいる病院でもいまいろいろ揺れている。 ○川村委員  私が申し上げたいのは、同定された重点領域は、フォーマットを別にして、それを深 めるような形にしてはどうかということです。 ○武藤委員  例えば、輸血だったら輸血の重点分野に関してもう少し掘り下げたコードと。 ○川村委員  そして、診療とその補助業務で起きたものと療養環境で起きたものを十把一絡げでク ロス集計をされていますね。そうではなく注射・与薬と転倒・転落というのは二大領域 ですから、こうした領域は、それをより深める形に分けて分析していかれたらいかがで しょうか。 ○橋本部会長  例えばオカレンスみたいな形で少し領域を狭めた形でちょっと形を変えたようなもの を取っていって、そこでの対応を少し深めるというのは、次の段階でありうる、という 想定は事務局もしていると思います。 ○松月委員  参加医療機関は、おそらく事例についてもう少し細かい分析まで実際はやっているわ けです。ただフォーマットの中にない情報は抜けてしまいます。ですので、先程の川村 先生のご意見のように、項目やコードをもうちょっと詳細にして、分析はしましたか、 それはどこでやりましたか、根本原因は何だと思いますか、など具体的に問いかけてい いのではないかな、と思います。 ○橋本部会長  想定されている問いかけの仕方としては。 ○松月委員  いちばん問題になるのが事故の要因だと思うのですけれども、その要因に、例えば直 接の要因はこれである、根本の要因はこれである、それはここで分析をした結果こうで あったと。例えば、転倒のアセスメントシートなどは、実際にコードにしてしまう。入 力作業はウェブでやるにしてもチェックするのは結構面倒なので、事故種類別に分けて もいいのではないかな、というのは強く感じています。 ○橋本部会長  いまおっしゃったようなことで。 ○松月委員  そうです。それを受けてもう少し細かくやれば、私たちも読みたいな、というのが もっと出るのではないかと。 ○橋本部会長  ある種のそういう議論を経て、ある種抽象コードに集約していって、それが意義があ るだろうという議論があって始まったところもありますけれども、個別の持っているい くつかの条件はやはり必要だという議論はあります。その辺も整理をしていかなければ いけないかな、と思います。 ○原田委員  その件に関して、大きく分けて質的な分析をいかにやっていくかという話と量的な分 析をいかにやっていくかという話があると思います。まさに重要事例情報のほうは、質 的な分析をやっていただくという意味でそこはうまく考えられているな、と思うのです が、全般コードの事例とのリレーションといいますか、重要事例情報のほうにもコード を付けておいていただいて、その関係がとれるようにしたうえで質的分析を深めていた だくというのが必要かな、というのが1つです。それに関してのフォーム等について は、いろいろ議論する価値があるかな、と思いますが、私自身は、量的な分析が必ずし もあまり役に立たないこともないのではないかなと。全国規模で厚生労働省のほうで集 めていただくことの価値というのはあると思っておりまして、ただ現状の単純集計だけ では、そこから何を得て現場のほうにフィードバックできるのか、あるいは現場の方が 見て何を学習できるのかというところがまだ距離があります。そこをどう分析するかと いうのをもうちょっと詰めていく必要があると思っております。例えば、統計的な指標 をもっと使ったほうがいいのではないのかな、というのは非常に感じておりまして、そ ういうことをやっていくための場があると、もっと工夫できるのではないかと思いま す。  また、いまは発生要因のほうを中心に分析していると思うのですけれども、ヒヤリ・ ハットのメリットは、発見されたというところにあると思いますので、どういう状況で どういうふうに発見されたのかというような要因をクロスで分析していくというのは価 値があるのではないか、と思っております。  もう一つは、全国での数のばらつきといいますか、分布の状況と自分の病院の分布の 状況の違いのようなものをどう見ていくか。ですから、1つ1つの病棟での1個の事例 のことは質的な分析でやるとして、量的な分析としては、病院を管理されている方、あ るいは病院での安全を考える委員会などで、うちの病院はなぜここが多いのだろうとい うのの量的な比較ができるような、そういう分析の仕方までも含めて公表していくとい うことが必要ではないかな、と思っております。 ○橋本部会長  分かりました。集団をレファレンス・データとして個別のところがどう見えてくるか ということをそれぞれの医療機関に提供していくというようなやり方ですね。 ○目黒委員  要因の問題につながっていくかと思うのですけれども、それと集計の前段階の問題か と思うのですけれども、この事業の参加医療機関のうち特定機能病院というのは大学病 院が多くて、それも国立大学が多い。国公立の部分が多いので、その中に臨床工学技士 は比較的少ないと思います。ここに出てくる数にも、要するに臨床工学技士が絡む数値 が非常に少ないと感じています。あとは、事故の医療機器の使用管理の部分で見てみま すと、管理が不十分というところでは、技士の活用が少ないのかなと。要するに、病院 の中にスタッフがいればできる部分があるのかな、という気がします。ですから、そう いう部分が医療現場というか、施設、あるいは管理者、あるいは国のほうの方々が考え ていただければいいのかな、と思います。  これは、医薬品・医療用具等対策部会でも言いましたが、要するに人工呼吸器、それ からいま新聞報道にもあるような人工心肺等の事故についてでも、基本的には、病院の 中にスタッフが少ないという問題も1つあると思うのです。施設設備の、あるいは管理 という立場からいうと、病院の中にそういう部分が組織化されていないというものも大 きいのかな、という感じがします。あと、技士の立場から見ると、施設設備にかかわる 部分でも、結構目につく部分があります。電源が来てないとか、そういう部分は、数と しては出てきてない部分があるのではないかなと。 ○橋本部会長  人の話になると難しくて、人数だけの問題なのか、例えば薬剤師が沢山いたって、院 外処方をやって、そっちは調剤ばかりやっていると病棟に手が回らなくていろいろなこ とが病棟で起こってしまうとか、そういう問題もあるし、MEが沢山いる所でも、人工 透析だけやっていて、器械の保守管理はきちっとやってないとか、そういう問題があり ますので人の数の問題だけではないでしょうね。ただ、そのことをどのように明らかに するかということと、いま我々が持っているデータでそれが分析できるかどうかという のはちょっと乖離がありそうです。ちょっと難しいかもしれません。 ○武藤委員  いまの話に関連してなのですけれども、1つは、これは任意の報告であるということ と、それから報告者は看護師さん一番多いということで、自分が当事者になった場合以 外にも他職種が原因となっていることもかなり報告されているのです。ですから、先程 お話しになった医療器械とか施設設備に関して、MEが少ないとしても、看護師さんの 目から見た、あるいは医師・薬剤師から見た報告は上がってきているはずなので、その 辺はどうなのでしょうか。ただ、それも報告者の認知の問題ですから、そうしたヒヤリ ・ハット報告そのものの限界も確かにあります。 ○土屋委員  限られた施設が報告していて、全く参加してない施設もありますから、たくさんの事 例を集めても、実は、そこの個別の事例というか、特殊ファクターということなのです けれども、それから出すほうも100あっても30だけ出そうかという話も現実はあるのだ と思います。それから、我々医薬品のところなんか分析しても、そこがオーダリングシ ステムが入っているのはどれぐらいあるのとか、そういうバックグラウンドが分からな いのですが、そこら辺もし分かりましたら教えていただきたいのです。 ○橋本部会長  1回目、2回目のデータでいうと、ある施設が相当多く出していて、という施設によ る偏りが出てきて、全体を見ているのか、それともある施設群の特徴を見ているのかと いうことがちょっと明確ではない。もしかするとそのおそれがあるな、という感じはあ りました。 ○宮本専門官  報告施設数としては、1回目の集計の際が78施設、2回目が113施設で、第3回目が 99施設となっておりますが、その施設の中でどのぐらいが重複して、例えば毎回出して いただいているとか、そのデータは、いま手元にありません。 ○橋本部会長  フリートーキングに近い形で進めさせていただいていますが、よろしいでしょうか。 ○原田委員  医薬品のほうで質問が2点ほどあります。1つは、管理が悪い、あるいは管理が不十 分というのが、要因の分析になっているのかどうかがよく分からない。実際上、管理が 悪いといったら、現場の方にとっては、あれね、というふうに分かるのかどうか。意味 のある分析なのかどうかというのが1点。  もう一つは、関連要因分析のチャートを出していただいておりますが、こういうフロ ーチャートに従ってやりますと、結果的に要因は1つだということになってしまうので はないかと思うのですが、実際にエラーが起きるときには、先程来お話がありましたよ うに、必ずいくつかの要因が複合的に起きております。こういう1つの要因に絞るとい うことの妥当性といいますか、そうすることでよいのだということについてどうお考え なのかお聞かせいただければ、と思います。 ○土屋委員  例えば、麻薬等の紛失などは、どうしても管理が悪いとしか言いようがありません。 それからこの薬を普通に出すということは通常あり得ない。必ず記帳してやっているは ずなのに、それで間違いが起きているというような例というのは、分析としては、もと もと法で決められた管理方法をきちんと守ってくださいということが1つあるわけで す。それから、期限が切れたものを使いそうになったというような事例では、もちろん それを深めていけば、そもそも使用期限などがチェックできるようになってないのが悪 いというような話にもなっていくのかもしれませんけれども、基本的には、そういうこ とについてのルールが出来ているという前提を1つ立てておいたうえでやっていかざる をえない。麻薬の数が合わないとか、そういう話を1個1個対策を言い出しますと、そ れはとにかく毎回チェックするということにもともとなっているものですから、そこら 辺が我々としてもそうとしか言いようがないというところです。  それから、フローチャートですが、先程示したような数値で少し変わってくると言っ たのも、例えばアダラートLの10ミリと20ミリというものを複数規格が違うと丸を付け られている方もおられますし、薬剤名が似ていると。ところが、アダラートLの10と20 というのは一緒なのでありまして、そもそもそれは似ていると丸を付けてもらっては困 るということがあります。そこはきちんと分けないと。というのは、同じ名称で複数規 格があるときには、こういう対策をとりましょうというのはとれるのですけれども、名 称が似ている場合とはちょっと違う対策があるものですから。そういった意味で、先程 出ておりましたが記号が同一であった事例、これはおそらくSRという記号に気を取ら れて調剤してしまったのだろうと。だから、同一記号のものがあったときには、どうい う注意をしたらいいのかというように分析ができるように同一記号というところに入れ ていく。それから、表を見ていただきますと、複数書いてあるのがあるのです。外観が 似ているとか同一とか、規格のファクターもあるし、名称が似ているというかもしれな いし、この人が外観が似ているといってきたのだから外観も似ているということにしよ うかということで、実は、このフローチャートは、一応出されたことを必要としてとい うか、本当は違うと思うのだけれども、少なくともそういってこられたので、そこでは どこかに入れられるようにしておこうと。  実は、名称が似ているけれども、例えば100cc同士というと、それは容量が同じだな と。そっちで引っ張られたのかなとか、それから外観が似ているから間違えたのかな、 というときになるべくどこかで必ず引っかかるようにしたいというのがあるのです。例 えば、どう見たってヒューマンエラーで、数が違うのが行ってしまったとか、そういう ような事例も上がってきているのですけれども、それはこの分析表でそもそも1のとこ ろで人的要素が主たる原因か、と聞いておいて、そうだよ、といっても、全く関係ない か、と聞くことで元に戻しているのです。少しでも関係したらこっちで検討するほうに 持っていきましょうと。しかし、それで全く名称や外観も関係ないときには、それは物 の原因とは言えないだろうということでヒューマンエラーというほうへ持っていく。あ とは、勘違いとか、そういうのが行くようにしてありますけれども、必ずしも1つの方 向にしか行かないということではありません。 ○原田委員  最終的には1つしか付かないのですね。 ○土屋委員  カウントとしては、報告件数との関係でいちばん主たるものでカウントはしてありま す。というのは、いま複数回答にはなってないものですから。なるべく要素としては複 数のところで引っかけられるようにしておこうと。複数のところに丸を付けるようにす るなどの方法で今後そういうこともきちんと拾えるのではないかと思っております。 ○橋本部会長  いま言われた最後のことですけれども、複数の要因をコード化して、その関連を見る ことによって分かるようなやり方がいいのかな、と思います。よろしくお願いします。  それでは、もう一つ、今後の検討課題というのを議論しておきたいと思います。それ では、事務局から資料7の説明をお願いします。 ○宮本専門官  医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集)に関してですが、今 年の4月に取りまとめられました「医療安全推進総合対策」の中でもこのネットワーク 整備事業における事例収集について何点か提言されているところです。それに関して は、いちばん最後の参考資料の3頁目にその抜粋を付けております。下線を付けた所が 提言されている内容になります。これらの内容について提言されていることから本作業 部会におきましてこのような内容についてもご検討いただきたいと考えております。  具体的に今後の検討課題として、まず1点目としては、定量的な分析の精度を向上す ることを目的として定点報告体制へ移行したほうがよいのではないか、という提言を受 けております。現在の体制としては、定点というのは定めておりませんが、今後定点と なる医療機関を定め、そこからの報告を集計する方法は考えられないかということでご 検討いただきたいと思います。  2点目としては、事例収集フォーマットの変更についてです。記述の情報の部分を収 集するに当たりまして、より的確な分析ができるような情報を得るということを目的と します。そのために記述情報のフォーマットを検討していく必要があると提言されてお ります。その部分については、現在の記述情報の収集のフォーマットを別紙の2と別紙 の3に付けております。また、事務局の案として、今後のフォーマットの案というのを 別紙の4に付けさせていただいております。  3点目としては、対象医療機関の拡大ということがあります。これについては、現 在、対象医療機関を特定機能病院と国立病院・療養所に限定させていただいております が、今後、より幅広く事例を収集するという目的から対象医療機関を拡大するというこ とについてご検討いただきたいと思います。  4点目ですが、より効率的に情報を収集するための運用について、ご検討いただきた いと思います。具体的には、現在のところ、特にテーマを定めずに事例の収集を行って おりますが、今後、これまでの通常の収集に加えて、各集計毎にテーマを定めまして、 特に重点的に集める事例ということで報告をお願いするというような方法について検討 していただきたいと考えております。 ○橋本部会長  今後の検討課題ということでいま事務局からお話がありました。先程来お話があった ように、この作業部会というのは、いま行われている医療安全対策ネットワーク整備事 業というものをより良い事業として支えていくということだろうと思います。そういう 使命があるということです。添付されていますように、4月に「医療安全推進総合対策 」というのが出て、要するにこれはグランド・デザインとなるわけですけれども、そこ からヒヤリ・ハット事業というものもいくつかの意見が出て、それは当然尊重すべきも のですけれども、ここに集まって議論していくプロセスの中で違った角度からの、ある いはもしかするとそれとは若干違うような方向のほうがよいのではないかという議論も 出てくる可能性がありますので、その辺は柔軟に対応してよろしいのでしょう。 ○新木室長  はい。先程来すでに何点か指摘していただいていると思いますが。 ○橋本部会長  ですから、「医療安全推進総合対策」だけにとらわれずに是非活発なご意見をいただ きたいと思います。それでは、いま事務局のほうから資料7に基づきまして検討課題が 何点かありましたけれども、ご質問とご意見を伺いたいと思います。まず定点について ということなのですが、なかなか思いきった案が総合対策のほうから出ましたけれど も、いかがでしょうか。 ○三宅委員  定点観測というのは非常に良い方法だと思います。ヒヤリ・ハットを、先程もどなた か言われていましたけれども、大体どこの病院もやっているわけで、川村先生のデータ でも出ているように、問題点は大体絞り込まれているわけです。ですから、定量的とい うか、そういう拾上げ作業というのは、全国にいくつか定点的に観測していれば大体 キャッチできると思います。むしろ先程川村先生が言われたように、いま問題があると いうことが分かっている分野をもう少し詳しくどうするかということのほうが大事なの ではないかと思います。ですから、エネルギーの使い方としてもっと集中的に使ったほ うがいいのではないかと思っています。ただ、医薬品とか医療用具とか、こういう物品 に関しては、施設とか環境で随分変わってきますので、これは全国的に収集したほうが いいと思っています。 ○橋本部会長  そういうご説明がありましたけれども、いかがでしょうか。 ○川村委員  いまは特定機能病院と国立医療機関が対象ですから非常に限られた医療機関です。例 えば、200床以下の小さな病院では、また別の問題があります。ある程度背景の要因を 分析できる病院が定点としていくつかあって、さらに病床規模や設置主体、あるいは情 報システムが入っている病院とか、またデータはコ・メディカルの事例が非常に少ない ですから、各職種団体がもし事例を収集されていないのならば、いままであまり出され ていない職種とか、そういういくつかの目的を明確にして、期間限定で必要な情報を集 めてフィードバックをするほうがよいのではないかと思います。もちろん定点はとても 良い考え方だと思います。その定点の選び方が一工夫いると思うのです。 ○橋本部会長  一つ危惧が懸念されるのは、この整備事業を始めてまだ半年ですか。そこで、定点と いうふうにある種限られた施設にお願いしますという方向転換がちょっと水をさすか な、という議論もありうると思うのです。ただ、岩田先生のほうから全部をやっていた だく項目もあるという言い方をされたので、そこは回避できるかなとは思いますけれど も、その辺の議論をちょっとしてみたいと思うのです。確かに定点でそういうバックグ ラウンドとか目的とかということをはっきりさせてやるというのは、考え方としては極 めて合理的だとは思います。いかがでしょうか。  もう一つお考えいただきたいのですが、ヒヤリ・ハットとかインシデント・レポート とかというものが、収集されたものをどうするかという議論はいいのですけれども、医 療機関にとって医療安全上でどんな意味があるのかな、ということを抜きには考えられ ないような気がするのです。これは私の個人的な意見かもしれませんが、ヒヤリ・ハッ トというシステムが病院の中にあることだけでも意味があると思うのです。つまり、患 者さんを目の前にして医療行為、あるいは医療の関連行為をしている一人ひとりがミス に気づいたときに何かを出すのだという仕掛けがあること自体が、医療安全文化という か、そういうものを向上させていくためにあるのです。そこのところに何か影響が出て くるとちょっといやだな、という感じは個人的にはしているのですけれども、いかがで しょうか。 ○三宅委員  私も川村先生と同じように、病床規模、設置母体、それから研修病院とか特定機能病 院とか、いくつかそういうふうな中で定点を設けて情報を収集すれば、平均的なデータ はちゃんと集められるのではないかと思うことと、それからこういうことをやってもら うということは、その病院には大きい負担をかけるわけです。先程松月さんも言われて いましたけれども、もし私どもが定点に選ばれたとしたら、私どもは私どもの病院の中 での1つの報告のフォーマットを持っていますし、そういうシステムを持っているわけ です。それに対して今度は厚生労働省のほうからこういうフォーマットでやってくださ いということになるわけで、その病院にとっては二重の負荷がかかるということになる と思うのです。ですから、そうしたときには、定点になってやっていただくには、それ なりに経済的な支援をちゃんとしますよと。それぐらいのことをしないとみんなやって くれないと思うのです。しかも、先程川村先生も言われていましたけれども、定点にな るのは、あまり固定しないで、2、3年ごとに変えていけばいいと思うのです。そうすれ ば、それぞれの病院がその気になってやると思うのです。そういうふうなことで情報を 広く集めていく。そうすると、平均化したものが得られる。私はそう思っています。 ○土屋委員  いまの話の続きですが、例えば医薬品についていえば、医療機関をたとえ選んだとし ても、いちばん多いのは薬局なわけです。保険薬局というのは、医療機関にはならない わけです。そうすると、薬の事例というのは、いまの対象のところではあまり上がって こないだろうということも考えられます。したがって、広げる必要性はあると思いま す。ただ、いまの時点のやり方が本当にいいかどうか。できれば今年度中にその方法論 を一生懸命検討して、数が少ないうちにきちんと直しておいて、それでそれを広げると いうやり方もあるのかな、という気がいたしますし、医薬品のところは、先程別の様式 というのが少し出ておりましたが、現状で参加してこない所の理由は何なのかと。多大 な労力がかかるからだとか、そういうことをきちんと明らかにしておくことも必要なの かな、という気がいたします。 ○佐野委員  定点観測をするというようなことは、ほかのケースで随分行われておりまして、これ は非常に良いことだと思うのですが、ヒヤリ・ハットの場合は、当然報告者の名前も、 それから患者さんの氏名も分からない状況で行われているといます。あまりにも定点と いうのが特定しすぎると、そういうデータの背景となる病院の規模その他が分かること によって、あれはあそこの病院のケースだな、というようなことになってしまうことは ないのかと。したがって、定点をどう決めるかとかどういう選択をするかということは 非常に大きな問題なのではないかな、とちょっとそんな気がいたします。 ○三宅委員  こういうヒヤリ・ハットの事例であれば、個人情報は当然消されていて、問題になる ことは少ないと思うのです。これがアクシデントの情報ですとプライバシーということ をきちんと守らないと駄目だと思いますけれども、ヒヤリ・ハットということであれ ば、あまり神経質にならなくてもいいのではないかと思います。 ○佐野委員  私もそう思っていたわけですけれども、ヒヤリ・ハットというのが普通の一般病院 に、あるいは今回みたく特定機能病院、あるいは国立病院では、年間こんなに職員がヒ ヤッとしたりハッとしたりしているのだということ自身が情報になるというのです。マ スコミも含めて周りの捉え方は随分違うのだろうと思いますけれども、職員の6割が年 間1回はヒヤッとするだとか、そういうようなことというのが我々の感覚とは違って、 一般にそういうのが活字になりますと、非常に不信につながるだとか、そんなような逆 の効果が出てくるという面が全くないわけではないな、という気がちょっとするので す。 ○橋本部会長  この点についてはまだ議論ができると思います。方法論的にどうですか。調査をやっ ている方からいうと、この定点というのは、どうするの、という話はあるのではないで すか。 ○原田委員  ちょっと混乱しているのですが、今後の検討課題の1と3とを考えたときに、対象医 療機関は広げて、集計するところを絞るという話が1だと思っていたのですが、そうい う話ではないのですか。 ○橋本部会長  その手もあります。 ○原田委員  そう考えれば、特に医薬品関係は、私は、できれば全数調査にしたいくらいだと思い ますし、しかしもうそろそろ定点に変えてもいいのではないかという領域も多分あるか と思います。定点にする病院を公表する必要があるかどうかというのはまた別途検討す ればいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○松月委員  定点の考え方だと思うのですけれども、例えば武蔵野日赤は転倒・転落だけとか、そ ういう考え方があってももうちょっとエントリーしやすいのではないかなと。登録して いるのに情報を全然出してない所というのは、多分フォーマットが違うとか、非常に面 倒だとか、それをわざわざ入力する人がいないとか、いろいろ事情があると思うので す。ですので、報告をしやすくするということをもし目的にするのであれば、そういう ふうにすると少し出しやすくなるというのがあるのではないかな、と思います。それ と、そういうことも全然整ってないような小規模病院の要因というのは全然違うものが あるかもしれないですので、そういうのはやはり定点と考えて、そこにお金と人材を一 時期投入してやる。そうすると、全然違うものが出てくるかもしれませんけれども、そ ういうことも考えてもいいのかな、と思います。 ○橋本部会長  多分結論を出せと言われているものではないと思いますので、いくつか議論を整理し て、またご相談申し上げたいと思います。  それから、2番目の事例収集フォーマットの変更というのが提案されております。先 程来議論もあったし、これとコード化情報のフラッグを立てた形で連動できるようにし た方が定性的なものと定量的なものが割によく見えていいのではないかという議論も あったと思いますけれども、これは何か取り立ててご意見があれば。中身について云々 は、いまはちょっと時間がないので事務局のほうに言っていただければいいと思います が、方向性としてはよろしいですね。これは案を取る段階でもうちょっと中身について やってみる。これは、事務局としては案を取って動かしたいのですか。 ○新木室長  もう少しご議論をいただきまして、次回にもう一度いまのご意見を踏まえていろいろ 見直すもので、すぐにこれで動かすということではありません。 ○橋本部会長  そのようにさせていただきたいと思います。対象医療機関の拡大について、いま定点 との関連で少し議論があったと思いますけれども、いかがでしょうか。おそらく違う問 題が出てくるとは思いますけれども、国の事業として参加をしてもらえるもらえない所 という大きな枠組みと関連団体との関係があるような気もいたしますけれども、そこは 手を挙げていただいてやっていただくということでよろしいのかな、という考え方もで きると。 ○三宅委員  対象医療機関を拡大するというのは、先程の定点という考え方とはかなり矛盾するわ けです。ですけれども、先程私がちょっとお話ししたように、定量的なものについては 定点でやっていくということがいいと思っていますが、薬品とか諸物品についての報告 というのは、対象を広げていったほうがいいと。できるだけ広いほうがいいだろうと思 います。ですから、目的に応じてということで考えたほうがいいのではないでしょう か。 ○宮城島委員  このヒヤリ・ハットは、いま医療機関を中心にやっていますが、薬剤師会でもやって いますので、可能であれば統一するような形でやっていただければ、総合的な対策とい うのはできやすいのではないかと考えています。 ○橋本部会長  逆の意見もあるような気がします。統一しないほうがいいという意見も聞こえてはき ますけれども。病院団体でも、例えば東京都病院協会などは、小さな病院も含めて、イ ンシデント・レポートを集めて分析する仕組みを作りたいという動きをしています。そ れがこういう所に参加をしていただくかとなると、病院団体として参加というよりも、 個別の任意の参加を求めるような形になると思います。そのときに私がちょっと気に なっているのは、医療の問題でいろいろ出てくるわけですけれども、結局、小さい病院 でも取組みの良い所がいくつもあると思うのですけれども、そういう所だけが参加して きて、日本の中小病院の医療の安全の現実が反映されていないという意見が必ず出てく ると思うのです。そういう意見が出てくるということと、そういうことはありうるかも しれないということを認識しているだけでも随分違うと思うのですけれども、そういう 意見はあるような気がいたします。 ○三宅委員  例えば、対象を広げるといったときに、任意にそれぞれの医療機関が手を挙げてやる のか、あるいは厚生労働省からお願いをする。ある程度の、例えば2年間なら2年間お 願いしますよ、という形でやっていくほうがいいのか。だから、あまりバイアスがかか らないように、平均的なところから情報が取れるような集め方を考えたほうがいいので はないかという気がします。 ○橋本部会長  その方向で努力していただくということになるかと思いますけれども、この辺の議論 はよろしいですか。  あと、ハイリスク領域をどういうふうにするかというのも、これまでのいろいろな議 論の中で出てきていると思いますので、それを整理すればいいかな、と思います。ハイ リスク領域云々の中には、1つの背景としては、インシデント、あるいはヒヤリ・ハッ ト・レポートの中で医師からの報告が少ないということがどうしてもあって、病院で起 こっていることの医師にかかわる部分がなかなか見えてこない。ですから、ハイリスク ということを設定して、医師がかかわる部分を特に厚くして、ある種のフォーマットを 決めてこれをやっていただくということは、情報がよく集まって、良い対策が立てられ るのではないかという考え方があると思います。これも検討課題ですので、意味がある ことだろうと認識してよろしいですね。そのほか、これから検討すべきだということの ご示唆をいただければと思いますけれども。 ○山本委員  先程目黒先生のほうから、臨床工学技士のあれがあまり反映されてないのではない か、というお話がありましたが、私もちょっとそういう印象を持っているのです。集め る所がリスク・マネジメント室か、大体そういう所で集まるようになっているのかな、 という印象がありますので、医療機器なんかの事故については、臨床工学技士が非常に 詳しくご存じですので、臨床工学技士会とか、そういう所に呼びかけてもう少しあれを するか、あるいはフォーマットを医療機関の中で1カ所ではなくて、何カ所からも集め られるようにしていただくか、その辺をちょっと工夫していただけたらと考えておりま す。 ○橋本部会長  そのほかにいかがでしょうか。 ○原田委員  2点ありまして、1つは、収集に関してはいろいろ議論とか検討なさっていると思う のですけれども、分析の方法について、いますぐ結果が出なくても3年後、5年後に役 に立つような分析方法を開発していくという視点での検討が必要ではないか。1つは、 先程から何回か申し上げましたが、カテゴライズされたデータの統計的な処理をどうし ていくのかという問題、もう一点は、質的な分析のほうでも、自由記述されたテキスト をできるだけ自動化して分析をしていこうという研究が最近いろいろ進んできておりま す。そういう意味で、ヒヤリ・ハット報告というのは、ある意味で定形化した形での文 章化ができる領域だと思いますので、そういう領域の専門家も入れて、どうやって分析 をしていく方法がありうるのかというのを検討していただく価値はあるのではないか、 というのが1点です。  もう一点は、先程松月委員からもありましたように、実際に出していただいた方にど う利用していただくかという視点でもうちょっと検討する必要があるのではないか。端 的にいいますと、データの公表をどうしていくかというところで、もう少し事例レベル の細かいものを電子媒体で出していく。ですから、実際に自分が問題に突き当たった人 が自分で調べて、それからだんだん手繰り寄せていって何かを考える資料にしていただ くというような、そういうことも考えていく必要があるのではないかと思っておりま す。集めた後のところも、もう少し議論の素材に乗せていただければ、と思います。 ○橋本部会長  良いご意見ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。全般的なことに関し てで結構ですけれども、今日ご発言をいただいていない委員の皆様、いかがでしょう か。 ○岩田委員  特にはないのですけれども、重要事例の分析のところできちんとシステム分析をして ないというようなことが指摘されていたと思うのですが、そもそも私はどういうふうに 収集しているかどうかがよく分かっていないからだと思うのです。報告者にきちんと自 分で分析しろというのは、有用な側面と、それだけでは分析しきれないのではないかと いう側面があるのではないでしょうか。もしかするとこれはヒヤリ・ハットの問題を越 えるのかもしれませんけれども、それがちょっと気になっているので、もし何か考えが あれば教えていただければ、と思うのです。 ○橋本部会長  そういう問題はあるかもしれません。その議論はまたさせていただきたいと思いま す。 ○中村委員  私は薬剤師なのですが、病院薬剤師会等のデータと今回のこのデータとの比較ができ れば非常に参考になると思います。 ○橋本部会長  使う側のほうの使い方の議論をして欲しいということですね。 ○福永委員  国立病院の代表として来ているのですけれども、今回、専任のリスクマネジャーがだ いぶ配属されましたので、情報の収集とか分析とか、国立病院での課題もだいぶ進んで いくのではないかな、と思っております。 ○目黒委員  社会的な問題というか、マスコミでクローズアップされる部分に人工呼吸器とか挙げ られるのですけれども、そのときのバックグラウンドがどのようになっているかという 部分についての情報、統計学的なデータとかが、我々もあまり見えてこない。さっき定 点観測とか、それからもっと範囲を広げるとかいう話が出ていましたので、今後、社会 的な問題となっている事例のバックグラウンドがどうなっているのかという集中的な観 測というのも、ある意味で定点観測というのであれば重要なことであるし、それは一般 社会に対する安心というのか、医療がどう行われているかということをきちんと国民の 皆様に知らせることが大事なのかな、という気もします。そこら辺の資料作りのための 活動ができればいいのではないかな、と感じます。 ○橋本部会長  今のことと関連があるのですが、特定の領域を考えるとなると、ある職種の方たち に、例えば人工呼吸器などは我々の経験でいうとMEの方が力を発揮することがありま すので、情報収集も含めて、それから問題がどこにあるかということも含めて、ある部 分専門的な知識が必要になるかもしれません。  今後の検討に当たりましては、いま言ったような意味合いで、各委員の方々からも必 要な資料の提供をいただきたいと思います。そして、良い議論をしたいと思いますの で、是非その件をお願いしたいと思います。ご用意のいただける委員の方は事前に事務 局のほうに連絡をいただければ、また事務局のほうから何かそういう関連の資料がない かということをお願いすることもあるかと思いますので、是非ご協力いただければと思 います。次回の検討会の日程等について事務局から連絡をお願いしたいと思います。 ○宮本専門官  次回の日程については、10月上旬を目途に委員の皆様のご都合を調整させていただい たうえで後日ご連絡いたしたいと思います。  また、検討いただく内容としては、第4回の分析結果のほか、今後の検討課題につい て本日の議論を基にたたき台を事務局で作成のうえ提出したいと考えております。その たたき台の作成に当たりましては、ご多忙中誠に恐縮ではございますが、事前に作業部 会長および委員の先生方にご相談させていただくことがあるかと思いますのでよろしく お願いいたします。  また、作業部会長からお話のありましたように、より充実したご議論をいただくため に、委員の先生方から資料の提供等がありましたら、事前に事務局にご相談をいただき ますようお願いいたします。 ○石川委員  物を作っているほうからすると、こういうヒヤリ・ハット的なことというのは、作業 上改善をしていくというのが常なのです。重要事例情報というのは非常に良い勉強材料 になるということがあるのですけれども、本日の資料の取扱いはどうなのでしょうか。 業界に戻って、これを見ながら別なフィードバックのほうに使ってよろしいのでしょう か。 ○新木室長  すべて公開いたしますので、ご自由にご利用いただければと思います。また、インタ ーネットにも掲載してご利用いただけるようにしたいと思っております。 ○橋本部会長  どうもありがとうございました。                       (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                       電話 03-5253-1111(内線2579)