02/06/14 第3回少子化社会を考える懇談会議事録           第3回少子化社会を考える懇談会 <議事録> 1.日 時  平成14年6月14日(金) 10:00〜12:00 2.場 所  厚生労働省省議室(中央合同庁舎第5号館9階) 3.出席者  <メンバー>   木村尚三郎(座長)、山崎泰彦(座長代理)、青木紀久代、安達知子、大日向雅美、   奥山千鶴子、柏女霊峰、酒井順子、佐藤博樹、白石克子、松本秀作、水戸川真由美、   山田昌弘  (敬称略)  <厚生労働省>   近藤厚生労働事務次官、渡邊厚生労働審議官、石本政策統括官(社会保障担当)、   坂本政策統括官(労働担当)、岩田雇用均等・児童家庭局長、辻年金局長、   河社会保障担当参事官、西村政策企画官 4.議事内容  木村座長  では、時間でございますので、まだお見えになってない方もおいでですが、これから 第3回「少子化社会を考える懇談会」を開催いたします。  お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございました。  本日は、委員のうち、大越さん、熊坂さん、黒澤さん、玄田さん、小西さん、残間さ ん、清水さん、津谷さんが御欠席であります。  また、坂口大臣、田村政務官につきましては、本日国会審議のためやむなく御欠席で ございます。  それでは、議事に入らせていただきます。今日は2つ大きな議題がございまして、前 半はまず「少子化の影響と対応」について議論をいたしまして、後半は「少子化対策の 基本的考え方とポイント」について議論することになっております。  何卒よろしくお願いいたします。  大体、前半と後半、11時ぐらいで分けようかと思っております。  まず、前半の「少子化の影響と対応」について、事務局から資料の説明をお願いいた します。  河参事官  おはようございます。社会保障担当参事官の河でございます。資料の御説明を私と西 村企画官でさせていただきたいと思います。前半の「少子化の影響と対応」についての 御議論に用意させていただいたのは資料1〜資料6までです。全体を概括する意味で資 料1を見ていただきたいと思います。  これまでの先生方の御議論、あるいはこれまで人口問題審議会をはじめとして行われ ていた議論で「少子化の影響と主な対策」という影響論から考えたときに、このような ことが概ね言われてきたのではないか。あるいは先生方のご指摘の中に入っているので はないかと思っております。  一番上に2行書いてありますが、個人の望む結婚や出産を阻む要因を取り除くための 対策ということと、少子化のマイナス面の影響を最小限にするための対策、ということ でございます。左側に影響ということでこのようなことがいわれているのではないかと いうことを、私どもなりに整理させていただきました。右側には、参考まででございま すが、これまで行われてきた主な施策を書かせていただきまして、前回、その要因等に ついて出させていただきましたが、今回は影響編ということかと思います。  左側には、少子化の影響、大きく分けて3つのことがいわれているのではないかと思 われることを書いております。1つは、社会経済全体の中で、特に経済面での影響、2 番目は社会面での影響、そして、ここで経済的影響、社会的影響で指摘されているとこ ろは、こういうところが問題になるのではないかということですが、あるいはこういう プラスもあるのではないかというところ、若干議論が分かれておりますが、指摘されて いるのを3番目に書かせていただいたということです。  最初の、経済的影響については、まさに、生産年齢人口の減少等々によって、労働力 供給の減少をもたらすおそれがあるのではないか。あるいはそれとつながることです が、労働力の制約と貯蓄率の低下という関係の中で労働生産性の上昇を抑制する要因と なるのではないか。それから、高齢化の進展によって年金など社会保障の分野における 現役世代の負担の問題があるのではないか、ということです。  これについて、これまでの施策としては、たとえば、高齢者、障害者、女性の就業環 境の整備、いわば、社会を担う方々に多くなっていただきたいというような御議論、あ るいはそのための終身雇用、年功序列等固定的な雇用慣行の見直し等々がいわれており ますし、また、産業としては、高付加価値型の新規産業分野の創出、また、社会保障に おいては、給付と負担の適正化、あるいは、できれば元気な方々が多くなってほしいと いうような議論が、経済的影響に関する指摘の中で対策として組み合わせてみるとこん なことかなということでございます。  2番目に社会的影響として、これまで指摘されているのは、単身者や子どものいない 世帯が増加するということですので、家族の形態がいろんな意味で変化し、多様化す る。また、単身高齢者の増加も想定されるということですし、子どもの仲間が減るとい うか、子ども同士の交流の機会が減るということで、健やかな成長への影響が懸念され る。  地方自治体においては、過疎化の進行が、行政部門にも、住民生活にも影響を与える のではないかという指摘があります。  これについての対策としては、高齢期における社会参加の推進、また、子どもについ ては、生きる力を育てる学校教育の推進、これは文部科学省でいま取り組まれていると ころです。また、市町村合併、広域行政の推進がいも政府の課題となっているところで す。  3番目に、プラス面の影響として、生活面では環境負荷の低減、受験競争の緩和など がいわれていますが、逆に、経済成長の低下により生活にゆとりがなくなり、人口減少 は教育サービス供給が制約されるのではないかという意見もあります。  併せて私からもう一つ、資料6をご説明させていただきますと、資料6は、最初にこ のようなことを考えておりますということを申し上げたかと思いますが、「2025年 の日本の姿」というと、えらい大仰ですが、やや分厚いのがございますが、34ペー ジ、一番後ろのページに何人かの名前が書いてあります。下に年齢構成があって、20 代後半から30代前半の者、誰が既婚か未婚か、わかりませんが、未婚者7人、既婚者 6人ということで、昨年、厚生労働省の若手の職員13名で「懇談会」のご議論の参考 にしていただいたらどうかということで、3ヵ月近くで何回が議論をして、私どもは関 与せずに、純粋に、若い人たちはどう思っているかということで、25年後の社会を、 数値とか財政影響という側面からよりも、生き方、生活について物語としてつくってみ たというものです。いま申し上げましたように、厚生労働省はこういうことをやろうと しているとか、こういう理解をしているという公式見解ではございませんので、留意は していただきたいと思いますけども、省内の若手が書いてみたものを、外の友人、知人 等にみてもらっての「本報告書に対する若者の声」というのが29ページからつけてい ます。  御参考までに、この場で御披露させていただければ有難いと思います。  私からは以上2点、御説明させていただきました。  西村企画官  残りの、資料2から5について補足的に御説明させていただきます。  資料2は、資料1にありました「少子化の影響と主な対策に関する整理」の元となっ た過去の報告書等の抜粋でございます。とりわけ、資料2の最初に載っております平成 9年10月の人口問題審議会の意見書におきましては、少子化の影響とその対応につい て、少子化の影響をやわらげる意味で、少子化そのものを止める要因に対する対応とと もに積極的に進める必要があるということで、詳細な分析が行われているところです。  資料3は「社会保障の給付と負担の見通し−平成12年10月改訂版−」ということ で、平成12年10月の「社会保障の給付と負担の見通し」を、最近出ました新しい人 口推計の数字に置き換えて見通しを示したものです。これを見ますと、1ページに、社 会保障給付費は、2002年度では82兆円、対国民所得比22.5%ということです が、今後、少子化の進展によって、いわば支え手の数が減ること、また、高齢化に伴っ て給付費が増えることによって、2025年には176兆円となって、対国民所得比は 31.5%と現在の1.5倍になるということを推計している数字です。  資料4は、このうち年金についての財政影響の数字です。2ページに、年金につい て、2025年度以降の最終保険料率で示したものがあります。中位推計で厚生年金の 場合、最終保険料率が国庫負担1/3の場合、24.8%になるということで、高位推 計の場合でも22.8%、低位推計では27.5%となっています。  資料5は、今後の経済の見通しについて、各種報告書等の数字だけを抜粋したもので す。期間は報告書によってかなり違っていますが、最初の3つ、産業構造懇談会の答 申、内閣府経済財政諮問会議、大和総研のものは、どちらかというと供給サイドを重視 したもの、次の3つ、第一生命経済研究所、野村総研、三和総研のものは、需要サイド を重視した推計になっています。そして、日経研究センターも供給サイドを重視したも のになっています。必ずしも、労働力人口なり、少子化に伴うものが直接経済成長に出 ているというわけではなく、いろんな要素が入っているわけですが、とりわけ、供給サ イドを重視した推計では今後の労働力人口の低下という要因を重くみて、長い目でみれ ば、経済成長率が低下するというような結果になっています。需要サイドを重視したも のでは、今後の景気刺激策等によって需要が増えることによって、長期的に経済成長率 は回復するという見通しになっているものです。  2枚目は人口区分です。これは当たり前のことかもしれませんが、今後、少子高齢化 が進むということで総人口が減り、15〜64歳までのいわゆる労働力人口が、左側の 2000年から右側の2025年になるとかなり減少することが予想されているところ です。ちなみに、斜線の部分が女性で、白い部分が男性です。  3枚目は、地域ブロック別の総人口です。これもこれまでのトレンドを伸ばした形の 推計ですが、東京圏では人口が増える。一方、東京以外の地域では、人口が地域によっ て非常に大きく減少するという地域毎の差がよくおわかりいただけるのではないかと思 います。  資料の説明はとりあえず以上でございます。  木村座長  ありがとうございました。それでは「少子化の影響と対応」について、どこからで も、どの資料についてでも、資料についてでなくても、お願いいたします。  佐藤委員  資料1「少子化の影響と主な対策」というところですが、少子化対策をどういうふう に考えていくかというときに、一つは、個人が希望する結婚とか出産を阻害するような 要因を取り除くような施策と、もう一つ、少子化自体の影響についての対策。二つを分 けて議論されなければいけない。僕もこのとおりだと思います。そのときに、ここでは 後者のほうですが、「2025年の日本の姿」の中にもありますが、前半の、個人が望 む結婚や出産ができるような状況になったとしても、増加に転じたとしても、出生率は 大幅に上がっていかないだろう。そしてもう一つは、増加に転じたとしても、これから 生まれてくる人たちが労働力人口として現われるまでに少なくとも25年はかかかるわ けです。そうしますと、後者の施策がすごく大事で、つまり、これから人口が減ってく る、あるいは若い人が減っていくという前提の下で、そのマイナスの影響を取り除くと いうよりは、全体として人口が減る、若い人たちが減る、そういう人口のあり方に適応 できるような社会をつくっていくという、もう少し積極的は考え方も大事なのではない かと思います。  それと、そのとき大事なのは、年齢構成のあり方があるのかなと思います。問題は、 急激に減ることが問題であって、あるいは増えるのも急激に増えるのが問題であって、 年齢構成のアンバランスということが一番問題だろうと思います。ですから、そういう ことも踏まえながら、新しい人口構成のあり方を前提として社会経済の仕組みをどう考 えていくのかということがすごく大事だと思いました。  もう一つは、この対策の中で、一番上の働き手が減ってくるというところの政策の中 身ですが、先ほど、年金等の担い手を増やすというお話がありましたけれども、そうし ますと、大事なのは、雇用政策だけではなくて、就業政策なんですね。つまり、社会の 中で働いている人たちをどれだけ増やすことができるのか。その政策が大事でありまし て、ここに書いてあることは雇用政策なんですね。私、雇用政策も大事だと思います が、これから同時に考えなければいけないのは就業政策なんですね。雇用政策ですと、 失業率を減らすというのが一つのターゲットになるわけですが、失業率を減らすといっ たときに、失業者が非労働力化すれば失業者は減るんです。ところが、就業政策という 観点から見ると、就業率がターゲットになる。働く人たちが減るというのは社会的に問 題だ、ということになるわけです。短期的に失業者が増えても、就業率が高くなればい いわけです。働く人たちが増えていけばいいわけです。でも、そういう見方が雇用政策 だけでは出て来ないのではないか。就業政策、就業率みたいなものを一つの政策目標に していくというような考え方もすごく大事だろう。たとえば、労働力人口のうち、少な くとも7割ぐらいの人が働ける社会というのを考える。そういうことも新しい時代に 合った政策の見直しという点では大事なのではないか、と思いました。  木村座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。  山田委員  2点について、意見なりを述べさせていただきます。まず1点は、佐藤先生が述べた ところと同じで「少子化の影響と主な対策に関する整理」ですが、どうも平均値で語っ てしまうのはいけないのではないかという気が私はしていまして、たとえば、生産年齢 人口の減少、労働力供給の減少、とありますけれども、もしかしたらあるところでは供 給が減少するけれども、別のところでは過剰になるといったような、もちろんそれはミ スマッチだから自動調整されるという仮定があるのかもしれませんが、私、家族や働き 方を考えると、建設業をやっていた人がいきなり介護にまわるということもできないわ けで、そういう形でのミスマッチの影響、どこで増えて、どこで足りなくなるといった ようなところを影響として詳しく出す必要があるのではないかというのが一つありま す。  あと、ちょっと矛盾してると思ったんですけれども、プラス面の影響で大都市部での 住宅、土地問題や交通混雑等過密に伴う諸問題の改善、と書いてありますが、人口予測 では大都市圏で増えると書いてあるわけで、大都市圏の人口はますます過密になって交 通混雑が進行し、逆に過疎地はその反面でますます過疎化するという、予測データをき ちんと読めばそうなるのではないかなあという気がして、一様に少子化が進むのではな いということであります。  あと、私の専門である家族のところでも、単身者というと未婚のひとり暮らしと考え がちなんですが、増える単身者というのは高齢単身者で、それも地域的に増える。あ と、私の調査では、ある地域では高齢の親と中年の男性が増える地域もあれば、高齢の 親と中年の未婚の独身女性が増える地域もあるという形で、地域的なミスマッチといっ たらいいのかわかりませんが、影響がある。そういう影響をもう少し整理して示したほ うがいいのではないか。平均値で語ってしまうとどうしても薄まってしまうという印象 を受けました。  厚生労働省の若手職員に書いていただいた「2025年の日本の姿」ですが、あらか じめ送っていただいたので楽しく読ませていただきましたが、たしかにこういう生活は いいなというふうに思えますし、こういう生活に今なっている人も少数ながらいると思 うんです。ただし、問題はそういう生活にたどり着く手段、ルートはどういうものなの かということが示されないというのが困ったものだ、という印象がありました。私は、 高度成長期の家族が、サラリーマンと専業主婦で豊かな生活を目指すというのが若い人 の一つの目標だったと思います。そのときには、若い男性は一生懸命勉強していい企業 に入っていればそういう生活が送れる。女性は一生懸命勉強していい企業に入って安定 した収入の男性と職場結婚すれば、サラリーマン・専業主婦で豊かな生活を送れるとい うモデルとそれに至るルートというものが明確に示されていたと思うんです。たしかに 「2025年の日本の姿」というのは、目標としては、こういう30代半ばの夫婦がい いなと思えても、じゃあどうしたらこうなれるんだといったルート、それも多くの人に 可能なルートはどういうものかということが示されていない。たぶんよくわからないん だと思うんです。私も女子学生などに、ファミリーフレンドリー企業に売り込むにはど うしたらいいんですかとか、そういう話をされることもありますが、ウーンということ にならざるを得ないわけで、それも併せて示していただけたら、と思いました。感想で ございます。  松本委員  青年会議所の松本でございます。私は「2025年の日本の姿」について意見を申し 上げます。青年会議所でもこういう感じのことはよくやりますので、同じような趣旨で つくられてるなあと思って読ませていただきました。私も、山田委員が言われたとお り、ここにたどり着くまでが大切かなあと思っております。それともう一つ、中身につ いては、地域とのかかわりあいという観点が青年会議所としてはもう少し欲しいなと 思っております。地域における具体的な手法として、青年会議所等でしたら、チャー タースクールということを提唱していたり、もうちょっと具体的な部分を盛り込んでい ただけたらと思いますし、また、いろんな社会制度を充実していくにあたっては財源等 の問題もあります。そんな中で一番頼りになるのがNPOとかそういった時代になると いうテイストの部分、また、社会のため、地域のために尽していくこと自体が我々のラ イフスタイルの中で非常に重要なことであるという啓蒙的な部分は青年会議所なんか やっているわけですが、そういうテイストがここの中に、これはこうあったらいいなと いう世界でありまして、この次の部分に期待するところであります。  大日向委員  若手のワーキングチームのレポートに話題が集まっていますので、私もこれに関して 感想を申し上げたいと思います。私はとても楽しく読ませていただきました。若い方々 がこういうビジョンを描いてくださったということで、私たちがどういう対策を打てば いいかという打つ手までも明確に出されているなとポジティブに拝見しました。とか く、若い方々は保守化が進んでいて、中高年よりもある意味で、性別役割分担論者が多 いというようなことが言われていますし、そういう傾向もあると私も思っていました。 これは厚生労働省の若手の方々、いわゆる都市部の若手の方々の意見ということでバイ アスはあるかもしれませんが、保守的な要素はあまり見られませんね。若干一部の男性 の中に、こういう意識をまだ男性が持っていたら、こんなに躊躇するんだったら、やっ ぱり女性に遅れていくんじゃないかと思うご意見もちらほろあるんですが、相対的には ポジティブな意見がたくさん出ている。しかも、単なる夢物語じゃなくて、実現可能性 があると判断したビジョンが描かれているように拝見いたしました。たとえば、私が関 心がある子育て支援のところを見ますと、あとのほうのご意見で、男性も育児に参画す る義務を課す必要がある、と書いてある。参加ではなくて参画と書いてあるところがす ごくいいと思います。また、しぜんに意識が変わるのを待つのではなかなか変わらな い。制度によって意識を変えるという発想もあっていいのではないかと20代の男性の 方が言っておられる。  これは皆さんもよくご存じだと思いますが、ノルウェーの「パパクォーター制」など はまさにこれをやったんだと思うんです。ノルウェーは10年以上前から男性もとれる 育児休業法があったんですが、ノルウェーの男性も出世競争が厳しくてなかなかとらな かったようです。そこに「愛ある強制」ということで、1か月間だけは男性しかとれな いパパクォーター制を課したわけです。そうしましたら、いま90%の男性がとるよう になって、ノルウェーの公園ではべビーカーを引きながら夜泣き対策を語り合う男性た ちが出てきているわけです。意識とか関心を変えるにもそういう法制度が必要だという 例が諸外国にありますし、若い方がこういうことをしっかり考えていらっしゃる、ここ まで若い方が考えてくださっているんだったら、この懇談会はそういう諸外国の例とか をどんどん出して、こういう対策があります、これもありますよ、というふうにバンバ ン出していくことで、私はある程度明るい未来を描くことも可能かなというふうに思い ました。  木村座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。私もこの「2025年の日本の姿」 は少し甘いかなと思っているんですね。現在の延長線上で考えているわけですよね。農 水省さんは2025年頃、食糧危機が来ると。これははっきりしませんけどね。可能性 があるということですね。気の早い人は2010年頃世界的に食糧危機が来る。これは 地球全体の土壌の劣化と中国をはじめアジアで猛然と工業化、産業化が起こっていて、 それだけ食糧を多消費するようになる。そうすると、いざというときに、車をつくって いてもあれは食うわけにいきませんから、日本など大きな影響を受けるのではないかと いうことですね。気の長い人でも2050年までに食糧危機が来るというので、中をと ると確かに農水省のいう2025年頃、ちょうどこの頃ですね。もしそれが本当だった ら、大都会にはいられなくなりますね。地方都市でまだ畑のあるところ、そこでお互い に菜っぱをつくったり、お米をつくったりするかもしれない。いまワークシェアリング ということがオランダ中心に言われていますが、たしかに人が余っている状況があっ て、労働時間を減らして、その分農業をやる。そうすると新鮮なものが食べられます し、給料は減りますが、幸せな生活が実現できると。これは加藤登紀子さんの旦那さん の藤本敏夫っていう人が提唱していますね。あるいは、そうなりますと、今度はローカ ル都市のほうが大都市よりも幸せだということが起こるかもしれない。これはフランス でもいまそのような、いい土、いい水、いい空気の自然環境と都市的な条件が整ってい る、バランスのとれているところが一番のこれからの幸せの都市だという言い方をして いて、もうそういうふうになるかもしれないんですね。お互いに空いた時間というか、 無理やり空かされた時間に農業をやる。そうなると必ず仲良くなりますね。いままで口 もきかなかった人同士でもお互い口をきくようになる。そうなりますと、子育てには大 変プラスになる可能性がありますね。というようなケースはここではあまり考えられて いないのではないか。いまの延長線上で大考えになってらっしゃるので、ほんとにそう なのかなと。何も暗く考える必要はないんで、それが幸せかもしれませんね、これから も。ということがひとつあり得るのではないか。それから、私がしゃべっていけないん ですが、少子化で一番心配してるのは、むちゃくちゃ言う人が減っちゃうということで すよね。若い人がむちゃくちゃ言えるので、年とるとどうしたってむちゃくちゃ言っ て、徹夜して仕事してパッタリ倒れたらつまらないと思うから、割と合理的な訳知りの 生き方になりますが、若い人はむちゃくちゃができますね。むちゃくちゃやれるから、 社会が変革され、革命が起こるわけで、年寄りが革命をやったという例はないんです ね、昔から。明治だって若い人がつくり出したわけですから。いまサッカーをやってる ような人たちの力が実はあるわけで、この人たちの、サッカーはむちゃくちゃかどうか はわかりませんが、ともかく瞬間瞬間の若さを発揮してるんだと思いますが、少子化が 進むとそういうような力がだんだん出せなくなるんじゃないか。おとなの訳知りの考え 方が子どもたち、あるいは青年にも影響を与えるというのが私は一番こわいような気が しています。  若さというものの持っている意味を、若さってすばらしいんだ、なんでもできるんだ ということをもっと社会全体がサポートするようなことは必要なんじゃないかと思うん ですが、日本はいま既にかなり訳知りになってはしまいかと思いますが、いかがでしょ うか。私の意見です。  柏女委員  「2025年の日本の姿」、とても興味深く拝見させていただきました。少子化とい うことを考えるときに、少子化の影響ということがよく議論になるんですけれども、少 子化をもたらした要因がもたらす影響というか、そこを考えていかないとならないのか なあと思っています。少子化の要因はいろんな複合要因ですから、その中のひとつに人 と人とのつながりを持つことを避けるとか、あるいは手間暇かけることを厭うとか、そ ういう社会状況がある。あるいは個人の価値観、そういうものがあるわけで、そういう 状況がずうっと続いていったときにどういう社会になるのか。ほんとにみんな結婚した いと思うのだろうか、というような気がしています。つまり、人と人とのつながりが もっともっと薄くなっていく社会になるのではないかなあという思いがひとつありま す。  それから、もう一つは、いまの少子化の要因の中で育てられている人が、2025年 には親になるわけですね。そうしますと、いま申し上げたような、子どもを持つと大変 だぞ、独身よりも子どもを持ったら大変だぞということを親から擦り込まれて育って いった人がおとなになって子どもを産むときにどういう思いを持つだろうか、というこ とも少し気になるところです。そういう意味では、早めに手を打たないといけないのか なというような思いがしています。  奥山委員  まさしくいま自分の子どもが7、5、2歳なんですが、25年後には結婚してるだろ うか、子どもを持ってるだろうかということをちょっと考えたりしました。先ほどから NPOとか地域というようなお話が出ておりますが、私たちも子育て中の母親たちが中 心になって地域でのNPO活動を展開しております。少子化といったときに、行政では 厚生労働省、文部科学省、いろんな省がそれぞれやってらっしゃると思うんですが、地 域においては、それをトータルで見ていく横のつながりがないとどうしても解決できな いことがたくさんあります。たとえば、私たち毎年「幼稚園・保育園ガイド」というの を地域でつくっていますが、行政としては、保育所のことはわかるけれど、幼稚園はみ んな私立だし、僕たちは関係ない、わからない。でも、お母さんたちは両方聞きたいん ですよね。いまは預かりのついている幼稚園も増えていますし、0〜2歳までの認証保 育所ができていて、そのあとは幼稚園に行かせたい親もいれば、保育園に行かせたい親 もいる。自分の働き方、在宅の中でどんな選択肢があるのか母親は考えています。先日 も労働組合の方が、地域に育児休業で戻ったときに相談するところがなかった、という お話がありましたけれども、縦割行政の間を抜って地域でいろんな情報を持っているN POが育っていくことが大事なんじゃないかと思っております。  今回の「2025年の日本の姿」ももう少し地域のことが出てくると面白いなあと思 いました。施設であれば、公設民営のモデルがあって、柔軟に地域特性を活かした内容 にしていただきたいと思います。  それから、木村先生がおっしゃった食糧危機についてですが、子どもを持ってはじめ て、この子に安全なものを食べさせたいという思いから食糧のことに関心を持つんです ね。それで私たちも離乳食のつくり方とか、生産農家に体験に行ったりという企画など もしています。それまでは気にならなかったことが子どもを持つことで、この国の将来 についても、子どもたちのためにという視点で考えることができるというのは私自身勉 強になっています。子どもを産むまでは全然そんなこと考えなかったのが、子どもを持 つことで親も変わってくる。子どもを産む、産まないということの中で、産んてみて初 めてわかることも実はたくさんある。それをどうやって地域が支えていくか。そこのと ころを大事にしていきたいと思っております。  木村座長  ありがとうございました。厚生労働省の、その前の厚生省の社会福祉の基礎構造改革 もその基本に、ともに助け合う「共助」という感覚が入っているはずで、自分たちだけ でなく地域の人間、いまおっしゃったNPOとか、先ほど松本さんがおっしゃいました けど、それは非常に大事なことですね。ありがとうございました。いかがでしょうか。  もう次の話題に行きますか。  それでは「少子化対策の基本的考え方とポイント」ですね。事務局から説明をお願い いたします。  河参事官  資料7〜12までのご説明を先ほどと同じように私と西村からさせていただきます。  最初に資料9をちょっとご紹介させておいていただきます。これは皆様方に直接とい うことではございませんが、政府の中でいまこういうことがあるということで、総理大 臣から私ども厚生労働大臣に対して、こういうことをやってほしいということで5月2 1日に御指示をいただきました。資料9、1枚紙ですからすぐお読みいただけると思い ますが、まさにここでご議論いただいているような人口推計に基づく、急速な少子化の 進行、あるいは、社会経済全体に及ぼす影響というようなことで認識を新たにしたとい うことが第1パラグラフに書いてあります。  ついては、ということで、厚生労働大臣において、これまでの少子化対策のどこが不 十分なのか、またさらに対応すべきは何なのか改めて点検し、厚生労働省の枠を超えた 幅広い分野について、子育てしやすい環境はどうあるべきかなど少子化の流れを変える ための実効性のある対策を検討してほしい。という指示をされたということです。  皆様方のこの懇談会は厚生労働大臣がこのような議論をするために主催させていただ くというものでございますので、ここでのご意見を参考とさせていただいて、これらの 議論を政府部内でもさせていただく形にしたいと思っております。  具体的には、ということで、3つ目のパラグラフですが、9月頃には中間的なもので よいので、他府省関連のものを含めてメリハリのきいた対策の方向をまとめてほしい。 それを受けて、必要があれば私の方からも関係府省に指示を出したい。  特に、ということで、育児休業、看護休暇制度、職場づくり、多様な保育事業等々に ついての体制づくりに一層の努力をお願いしたい。  これが5月21日に総理大臣から私どもの坂口厚生労働大臣にあてた指示でございま したので、ご参考までに資料9としてお配りさせていただきます。  私からの説明、もう一つ、資料12ですが、先ほどの資料1の「少子化の影響と主な 対策の整理」ということで、前回は資料1で「少子化の要因と主な対策に関する整理」 を出させていただきましたが、要因と影響について、これまで議論されてきたこと、そ れから皆様方のご意見等踏まえて書き込んでみたものをまとめさせていただいておりま すが、これのことを踏まえて、これからこのようなことをご議論いただいたらどうだろ うかということでございます。  ご参考までにというと恐縮ですが、資料11にこの懇談会のメンバーの皆様からきち んとしたレポートをいただきました。それらをまとめさせていただきました。ご案内の ように、いただきました枚数はこの5倍ぐらいですので、それをまとめるということ で、私はこういうつもりではない、とご指摘いただ部分があろうかと思います。これは まだ作業中でございますので、この中から私の名前を消せとかいうことも、ご遠慮なく 事務局まで言っていただきたいと思いますが、いくつかの項目についてそれなりの項目 分けをしてまとめさせていただきました。是非先生方にチェックをいただければ有難い と思います。  これらの、いただいたレポートも含めて、こんなところが論点なのかなということで つくらせていただいたのが資料12でございます。まだ作成途上でございますので、こ の議論はおかしい、いいという議論もあろうかと思いますが、事務局なりに「論点メ モ」をつくらせていただきましたので、それをご紹介させていただきたいと思います。  1番目に、対策の基本的な視点、2番目に、今後の対策の重点や新しい取り組みの方 向性。視点と方向性という形になっておりますが、視点では6つのことを書いてみまし た。(1)子どもを持ちたい人が持てるための環境整備  環境整備という言葉がこれまでもよく使われてきたところですので、見出しはこうい う形にさせていただいております。安心して子どもを産み育てることができる環境。  実は開会前に木村座長から、安心して子どもを産み育てることができる環境というの は、たとえば、外に自動車が走っているのは安心できるのか、というようなご指摘もい ただきまして、考えてみると、やや言葉がすべってるなと私自身反省しましたけれど も、むしろ、これは前後が逆で、子どもを産み育てることができる環境があると、それ が安心につながるということではないか、というようなご指摘もいただきまして、ここ でご紹介しながらどう直そうかと考えているんですが、いわゆる環境整備が1番目で す。 (2)社会全体での次世代支援  多少言葉遣いが粗いかもしれませんが、次の世代を育てていくというのが普通の社会 であるとするならば、それをどのような形でやっていくかという中で、もっと子育て支 援を考えてく必要があるのではないか。 (3)明るい未来への展望  先ほど私どもの若手が書いたビジョンについて、ご批判も含めていただきましたが、 明るい未来、将来の社会をどういうふうに見るか、明るい未来に対して、暗い未来もあ るのかもしれませんが、明るい未来への展望があることが安心の原点ではないかという 議論もあるかなと思います。 (4)子育ての価値の認識  先ほどどなたかからご指摘がありましたが、子育ての価値、意義というものをもう ちょっと考えていくべきではないか。 (5)国民的は広がりを持った取り組み  これは数年前からいわれていますが、政府だけでできることではないものですので、 幅広く国民的な広がりを持って議論の展開、あるいは啓発が必要なのではないか。 (6)多様なライフスタイルへの配慮  留意事項ともいえるようなことで、これらのことをやっていく上で、子どもを産む産 まないは個人の選択の問題であるとか、あるいは働き方も選択の問題である等々、多様 なライフスタイルへの配慮を前提に考えていく必要がある。  というのが基本的な視点ということで6項目です。  2 今後の対策の重点や新しい取り組みの方向性  前回と今回出させていただいた資料等で、こういうことがこれまで議論になった。特 に皆様方からのレポート等を通じて、これからはこういうことを積極的に議論していく 必要があるのかなということで9項目挙げております。9がいいのか、10がいいの か、あるいはもっと少ないか、もっと多いか、これもご議論いただきたいと思います が、論点ということでお許しいただければ、 (1)子どもの健全育成  何よりもまず、いま生まれ育ちつつある子どもたちが健やかに育つことを支援するこ とが何より大事なのではないか。 (2)男性も含めた働き方  ともすると、女性の、という議論がこれまでは多かったわけですが、男性も含めたと いうことを皆様方もご指摘されていて、男性も含めた働き方と考える。 (3)両立の負担軽減のみならず総合的で多様な子育て家庭支援を  仕事と子育ての両立の負担軽減、もちろんそれも大事ではあるけれども、それととも に総合的で多様な子育て家庭の支援策があるのではないか。就業というのも、あるいは そういうことなのかもしれないと思いました。 (4)少子社会への対応としての老若男女共同参画など  先ほどの資料でもご説明したことですが、2025年までの議論かどうかは別とし て、社会全体の中で老若男女が仕事に限らず参画するということが必要なのではない か。 (5)次世代支援の比重  基本的な視点の2番目に挙げております次世代支援という中で、特に私ども社会保障 にかかわる部分でいいますと、いま社会保障の給付に使われているお金、先ほど西村が ご説明しましたように、82兆円ぐらいあるわけですが、その2/3が高齢者への給 付、医療、年金等全部足してみると、になっておりまして、保育所のお金等を全部足し ても子どもへの給付は3%ぐらいでして、割合のバランスがどうなんだろうかという指 摘があろうかと思います。 (6)出産への支援  ここでもご議論が出ておりましたが、まさに楽しい出産というのはおかしいのかもし れませんが、それらについての考え方をもう少し積極的にしていく必要があるのではな いか。 (7)高等教育費用などの軽減 (8)地方の特色に応じた地域での子育て支援活動 先ほど「2025年の日本の姿」についてのご批判の中にもございましたが、地域社会 にはそれぞれ特色があるわけでありまして、その特色を踏まえつつ考えていくこと。 (9)子育てバリアフリー  こういう言葉がいいかどうか、バリアフリーのまちづくりというのは、主に対障害者 とか高齢者ということでいわれていますが、子育てに関するバリアフリーという議論も あるのではないか。  「論点メモ」ということで、私どもなりに用意させていただいたのが資料12です。  西村企画官  残りの資料について簡単に触れさせていただきます。  資料7は「少子化対策推進基本方針」平成11年12月に閣僚会議決定されているも のに基づいてここ数年実施された主要施策を挙げています。  少子化対策については、この10年ほどかなりそれなりに取り組みがされてきたわけ ですが、この懇談会においては、それを踏まえて、そのうちでこのへんはもっと進めて いったらいいんじゃないかとか、あるいはこれまでやっていなかったこんな切り口はど うかというところをご議論いただくことをお願いしておりますが、その参考とするため にこれまでどういうことをしてきたかというのを簡単にまとめたものです。  左側が「少子化対策推進基本方針」の柱で、右側の黒い四角の中は、ここ数年各省で 行われてきた具体的な施策です。  一番目に、男女共同参画ということで、そもそも固定的な性別役割分業や職場優先の 企業風土を是正すべきではないか、ということです。  2つ目の、仕事と子育ての両立のためと雇用環境の整備については、育児休業制度の 充実、あるいはテレワーク・SOHOの促進、短時間勤務制度を設けた事業主に対する 助成金の支給などを行ってきているところです。  3つ目の、家庭や地域の環境づくりということについては、地域子育て支援センター の設置、児童虐待への対応、母子保健に関する「健やか親子21」という総合ビジョン に基づく取り組み、あるいは児童手当制度の見直しといったことが行われてきていま す。  4つ目は、利用者の多様な需要に対応した保育サービスの整備については、低年齢児 の受け入れ拡大とか、延長保育、休日保育、あるいは放課後児童クラブの拡充などを 行ってきているところです。  5つ目は、教育の関係ですが、文部科学省を中心に積極的な取り組みが行われてきて おりまして、子どもの社会性、人間性を育むということで体験学習、ゆとり教育、奨学 金の充実といったようなことが行われてきております。  6つ目は、住宅等生活環境の整備で、住宅と子育て支援施設の一体的整備の推進、あ るいは交通バリアフリーといった取り組みが少子化対策ということで各省で行われてき ているところです。  資料8は、過去の報告書などから、基本的な視点という部分を抜粋したものです。特 に資料8の一番上の平成9年の人口問題審議会の答申では、基本的考え方の中で、少子 化の要因に対応すべきかどうかというそもそも論をかなり丁寧に議論しており、少子化 要因への対応はすべきではないのではないかという意見が一方にあり、また、すべきと する考え方が一方にあるけれども、どうなのかという議論があり、結論としては、個人 の自己決定権を制約してはならないけれども、すべての個人が自ら望んだ場合には妨げ られることのないような支援策を講じていく必要があるというようなことで整理されて います。  資料10は、少子化に関連する主要国の取り組みということで、アメリカ、フラン ス、イギリス、スウェーデン、ドイツ、日本で比較したものです。先ほど大日向先生か らご指摘のあったノルウェーは入っておりませんで恐縮ですが、主要な施策で比較しや すい、特い育児休業、保育、児童手当について、施策や水準を並べております。  2ページには、こういった各国の取り組みを分類してみますと、フランス型モデル、 ドイツ型モデル、スウェーデン型モデル、アメリカ・イギリス型モデルということにな るということですが、出生の促進を正面から掲げて、家族手当、日本でいう児童手当を 重視して積極的に対応してきているフランス。母親による保育を強調して長めの育児休 業期間を認めて小さいうちは母親が育てられるための支援策を講じているドイツ。男女 共同参画ということで、男女がともに仕事と子育てを両立できる仕組みを重視している スウェーデン。基本的にそういった形での家族政策はあまり講じてきておらず、特に困 窮している母子家庭といったような家庭に対する施策にとどまっているアメリカ、イギ リス型モデル、ということがよくいわれているところで、そんな分類をお示ししていま す。  資料の説明は以上です。  木村座長  ありがとうございました。先ほど河参事官から私の名前が出てしまったので、ちょっ と一言、私なりの考えをつけ加えさせていただくと「安心して子どもを産み育てること ができる環境」というのは際限がないのではないかと思っているわけです。お金がいく らぐらいあったらほんとに安心できるのか、家がどういうふうならほんとに安心できる のか、2人の親が子どもに四六時中ついていてもパッと車道に飛び出すということもあ るわけで、そうすると車は全部地下に入れなきゃいけないのかとか、先ほど奥山さんか ら食べものの話が出ましたが、一応食品表示があっても必ずしも信頼できないかもしれ ないので、しかし自分で食品の成分分析なんてできませんので、そうすると、自分で 葉っぱをつくるとか、米をつくるとか、あるいは先ほどのお話のように生産者と仲良く なって常時そこからいただくとかしなきゃいけなくて、結局、これはキリがないのでは ないかと思っているわけです。  むしろそうではなくて、いまのように先行き不透明なときには、命あるものとともに 生きていくということはどんなに大きな安心か。それがいまガーデニングブームとか ペットブームをよんでおりますが、最高の命あるものと生きていって安心を得られるの は自分の子どもではないか。その意味では子どもを産み育てることによって安心を得る という生き方がこれからはあるのではないか、とこういうことなんですね。それを申し 上げたかったわけでございます。以上です。  それではご質問、ご意見等、ご自由にお願いいたします。  佐藤委員  2つあります。1つは総理大臣の指摘の中にもあるんですが、これまでの少子化対策 のどこが不十分かということと、新しく何をやればいいかの両者を検討すると書いてあ るわけですが、個人的には、施策としてはかなり用意されているだろうと思います。も ちろん新しくやらないといけないものはゼロだとはいいませんけれども。それで、いま ある施策がそういうものはありながら、なぜうまく機能してないのかということをもう 一度きちっと政策評価することが大事じゃないか。つまり、いまの施策は全てだめで、 何か新しいことをやらなければいけないというふうに考えるのではなくて、まず、なぜ 既存の施策がうまく機能してないのかということを考える必要がある。つまり、運用の 問題がかなり大きいのではないか。  そして、もう一つは、資料12の2枚目で、先ほど座長の指摘ともかかわるんです が、たとえば、男性の働き方を見直すとか、男女共同参画で雇用・就業支援とか、地方 の特色というようなことが書かれているわけですが、どうもいろんな施策を見ますと、 先ほど私がお話しましたように、想定しているのは、大都市の雇用者なのではないか。 農業というお話もありましたが、地方あるいは都市部でも自営業、非雇用セクターで働 く人たちが視野に入っているのかどうか。たとえば、育児休業は、自営業にはないわけ ですね。ですから、これからはいろんなライフスタイルとかさまざまなワーキングスタ イルが選択できるような言い方をしているわけですけれども、施策自体は雇用者を想定 しているということなのではないか。長い職業生涯を考えますと、一人がいろんな働き 方をする。雇用者からある時期農業に移るかもしれない。逆にまた戻ってくる。ビジネ スを起こして、失敗してまた雇用者に戻るということも出てくると思います。そういう いろんな働き方をいったりきたりして、あるとき雇用者じゃなくなると、雇用者であれ ば受けられたようなさまざまな子育て支援策が受けられなくなるということがないよう にするということが大事で、それにはいろんな働き方を想定したような子育て支援を考 えていただければと思います。  大日向委員  資料10のことで教えていただきたいのですが、少子化に関連する主要国の取り組み ということで、大変詳細な、育児休業に関する取り組みの一覧表を出していただいて参 考になりました。ありがとうございます。一つわからないのは、こういう取り組みをし ていても出生率が上がっている国とそれほど効果のない国があるんですが、その原因は 何かということを考えたときに、育児休業明けの復職がどういう形で保障されていて、 その場合の賃金体系とか社会保障制度がどうなのかということをこの表に加えていただ くと、少子化の原因の一端がより鮮明になるのではないか。いま申し上げたように、対 策で上がっている国と上がっていない国の原因の一つがそこにあるように思います。育 児休業を取ろうか取るまいかと考えている人は休業中のいろんな給付ももちろんすごく 大切なんですが、復職後のことを心配しているかと思いますので、雇用形態、賃金体系 との関連も、あとで結構ですが、もしわかったら教えていただければと思います。  木村座長  ありがとうございます。たしかに元の地位にスポッと横から入るということは下が許 さないですね。といって一番下につけるのはまた問題で。  山田委員  関連してですけれども、前回も実は言いましたが、アメリカというのは家族に不介入 で少子化対策をやっていないというふうにいわれますけれども、何か手当を出したり、 一律に制度を整えることだけが少子化対策なのだろうか。いまの大日向先生の復職とい うことに関しても、アメリカでしたら、機会均等の原則をきちんとすることによって、 女性に対する昇進や賃金差別を禁止したり、さらに、復職する場合においても、制度は ないんですが、就職する人に対して、あなたは子持ちですか、なんていうふうに聞いた ら、雇用差別で訴えられるわけですね。子持ちの女性であってもそういう形で判断せず に、能力を評価する、機会均等をきちんと規制しているという意味では十分にファミ リーフレンドリーではないかと思っていますので、アメリカというのは放っておいても 出生率が高いんだというふうにいってほしくないというのがこういう記述を見る際に私 がいつも思っている点です。  あともう一つ、女性が仕事に就きさえすれば、それでいいんだというのは違うのでは ないか。女性もちゃんと自分の能力に応じた働き方をしたいわけで、保育園ができたの で、さあ、どんな条件でもいいから働きましたということで、女性が満足するというも のではないと思います。特に、私は男性の意識に結構注目しているんですけれども、あ る調査では、男性が育児や家事を手伝うというのは、労働時間の長い短いには関係な く、すべて妻の給料に依存する。妻の給料が高ければ自分の小遣いも高くなるので、労 働時間が長くても一生懸命手伝いをする。逆に妻の給料が低ければ、いくら早く帰って も手伝いはしないという調査もあります。妻の給料が夫の給料の1/3を超えなければ 家族関係への影響はない。つまり、意識改革といった場合に、単に教育したり、こんな のがいいと押しつけるのではなくて、インセンティブの意識や性格なり、役割分業意識 なりをつくり上げていくという点をもう一つ強調していいのではないかと思います。  青木委員  いつもいろいろおまとめいただいてほんとに助かります。この施策の論点メモを拝見 していると、どうしても最初の前提であり、最後まで持っておきたい部分というか、子 どもを持つことは個人の選択だということで、こんなにたくさんの施策をやってます、 やってますと言うほど、その視点が薄くなる危険があるようで、(6)多様なライフス タイルへの配慮という部分がすごく大きくて、たとえば、夫婦が前提の子育てだけに焦 点を当てたサポートの仕方をしていくと、シングルマザー、シングルファザーがすごく 問題になってくると思うんですね。それは、子ども自身が自分に親がないということを 卑屈にとらえるような社会をつくり出すことになると思うんですね。だから、子どもは 社会で歓迎するし、子どもが生きやすい環境も整備するというようなプレゼンの仕方を 是非していただきたいなと思いました。  もう一つは、これまでたくさんの施策があったのに、うまく行かなかった。子どもを 産むのは大事なことだと思うし、国家に重大な影響を及ぼす。だけれども、施策がうま くいかなかったということは、国民が考えていることの国に対する最大のフィードバッ クだと思うんですね。だから、そうだったんですね、いままでの施策がうまくいかな かったというのは皆さんの答えだったんですね。ひとつ受けとめますというところから 大臣なりどなたかが施策を対話になるように出していくという姿勢がポイントじゃない かなと思うんですね。これだけのことをやっています、というアピールの前に対話、 さっき佐藤委員がおっしゃってましたけれども、これまでのことをもう一回見直してみ る。それを皆さんに提示する。たしかにいままでの成果を一旦受けとめましたというこ とで仕切り直す。そういうことが大事だと思います。というのは、個人的な選択の中に どこかで操作されているという部分が読みとれるといやになるというのはほかの委員も おっしゃっていましたけど、プライベートなことに触れるものですので、対話形式で努 力しているという姿勢を見せないと出されたものに気持ちよく乗れない。再三女性は騙 されてきたというのがあるので、だからだと思います。  もう一つは、男性の育児に対するサポート。男性ができるように半強制的に育児をす るように向けていく施策がもちろん大事な一方で、しかし、結局のところ、社会でそう いう正論が発生してくると、夫婦間では逆に葛藤、緊張を呼ぶわけです。奥さんが旦那 さんに正論で迫ると「それはわかってる、キミの言うことは全く正しい。だけど僕はそ う言われて不愉快だ」と言ってしまう男の人の実態というか、私はそれがわかるんです ね。それを言われると、一つの家族の単位の中で母親はやり場のない思いを抱え込まさ れるんですね。そういう微妙な葛藤というところは、制度としてこうあるべきだと一つ の方向だけで押してしまうと、そこをかえって助長することになるので、夫婦、家庭と いう単位から、子どもがひとりでも地域の誰かと出会って楽しく生きていける場所を同 時に活性化させるようなものを両輪のように入れていくということが大事なんじゃない かと思いました。  安達委員  今日はあえて私のごく狭い社会の中での狭い意見を述べさせていただきます。いま育 児休暇をとれるようなシステムが広がってきています。このあいだのレポートに、その 育児休暇をとっているときに、研修ができるような施策や支援システムがほしいという ことも書きました。けれども、それとは別に、さっき大日向先生もおっしゃいました が、復帰後のいろんなことと、社会の労働力が減るということの2点を兼ね合わせて、 育児休暇中に研修システムだけではなくて、自分の能力を生かしたような仕事を一時的 にパートでできるような支援システムが取り込めれば、本人の復帰に対する支援にもな りますし、労働力が低下の対策にもなると思うんですね。もともとの常勤の仕事を休ん で育児休暇をとっているわけですから、本来よそで働いたりということは普通はしては いけないという判断だと思うんですが、しかし、雇用されている施設でのパートや、そ こにきちんと届け出たり、納得してもらえれば、可能になるかもしれないです。この発 想はなぜ出たかといいますと、いま私の職場、常勤20人ぐらいいるところで6人が一 度に妊娠、出産に入りまして、そのために労働力が6人減ってしまったのです。それか ら関連している病院でも1人出産するため、そこへも支援を出さないといけないという 形になりまして、7人減の大変な状態になっているのです。そのために、私の上司か ら、勝手に妊娠、出産をしないように私からみんなに注意するようにとの圧力がかかっ て参りまして、私は本来、自分の人生の好きな時期に自分で妊娠、出産を決める権利と いうのは人間の持っている基本的な権利だと思っておりますので、大変困ってしまった わけです。そういうことばかりで発想したわけではないんですけれども、建前は、仕事 ができないから育児休暇をとっているのですが、本人が希望した時に限り、そういう支 援というか、考え方の転換も必要なんじゃないかと思います。 もう一点は、日本では すごい勢いで少子化が進行、出生率が低下しました。これに対して、私は人口問題審議 会の中の専門委員の一人だったんですけれども、いろんな対策が出されて、男女共同参 画というものが一番大切という形になりました。しかし、実際には意識改革の問題はす ごく遅れているという印象を持っています。これも私のまわりの非常に狭い世界の話で すが、働く女性がどうやって仕事をするかの視点で、女性医師だけ集まって座談会を開 いたり、意見を聞いたり、何回かアンケート調査もありました。その中で、医長及び医 局長または教授、部長に、いつ妊娠したらいいか許可をとってから妊娠、出産したので うまくいった、と答える人がいるんですね。この意見を言う人は必ずいらっしゃるんで すけど、私はそれを聞くたびに、何か間違っているという、非常に不愉快な思いをいた します。上司の納得を得ていないと、結局のところ、妊娠、出産で常勤のポストを失 い、研究生になり、そういうポジションだと保育園にも入れないというような悪循環の 中に入って仕事をやめるというパターンをとってしまうということなのです。いま施設 の長になっている世代、50代ぐらいの方が多いんじゃないかと思いますが、特に男性 が施設の長になっている場合が当然多いんですが、意識の改革が全然ついていっていな い。建前上、いくら育児休暇も申請できる、保育園も増やしたとか、いろいろなことを しようとしても、内心は意識の改革ができていない。さっき大日向先生がおっしゃった ノルウェーのパパクォーター制度も、政策で無理やり縛ることによって意識が変わって いくということかと思います。「2025年の日本の姿」の中でも、意識が変わった社 会になっているという前提でストーリーが展開しているのですけれども、このへんがつ いていってないのではないかなという印象を持っております。  柏女委員  いくつか申し上げたいと思いますが、1つは、児童福祉の視点から考えてみたいと思 いますが、児童福祉論の授業を大学で担当しているんですけども、いまご説明いただい たようなサービスについて授業で説明をしていくわけです。そして、それを受けてゼミ などで、じゃあ、自分たちが住んでいるところにどんなサービスがあるのか調べてみよ うということでやると、ほとんどないんですね。10個のうち2個しかないとか、ある いは別の2個、別の3個があるということで、学生たちはこんなにたくさんサービスが あるのかと思っていたけれども、実際にはそんなにないということで、つまり、全部が 小粒で数が少ないという状況になっています。そういう意味で、施策がたくさんあると いうのは幻想を生み出してしまうのではないかということを思っております。  それから、2つ目は、児童福祉、子ども・家庭福祉について、市町村なり地域レベル での取り組みが非常に弱いわけです。それは現在のシステムが養護児童を中心として都 道府県、指定都市が責任を持っているという体制になっているので、地域福祉を子ど も・家庭福祉について進めていこうというインセンティブが働きにくい。したがって、 社協などの活動でも、あるいは民生・児童委員の活動でも、9割が高齢者・障害者で、 児童の分野は1割という状況がずっと続いてるわけです。市町村にしてみれば、子育て 支援サービスに取り組まないで養護児童問題が発生すれば、それはすべて県と国で対応 してくれるという仕組みになっている。このへんのところはもう一度考えていかなけれ ばならないのではないか。県と市町村と役割分担、棲み分けを考えなければいけないの かなと思います。  3点目は、日本の国というのは、子どもが大切にされていないというイメージを強く 持っています。先ほどアメリカが家庭に介入しないという整理をしてありましたけれど も、実はアメリカというのは、家庭に対して介入しているわけで、たとえば、子どもを 車の中に置いてスーパーに買い物に行くと、とたんに虐待だということで通告がいくと いう社会で、日本の場合、それがいかないために毎年、親がパチンコをしている間に子 どもが車の中で熱中症で亡くなるという事件が続いているわけです。子どもが大切にさ れてないということがみんななんとなくわかっている。そんな社会を変えていかなけれ ばならないのではないかと思います。  4点目は、これは前から考えていることなんですが、うちの学生たちを見たり、ある いは卒業生のつきあっていきながら、一番多いのは実習などをすると、福祉の仕事とい うのはとても意義深い仕事だけれども、続けていけない。あるいは私はやれない、とい う人がだんだん多くなってくる。保育や介護、看護を含めて、人が人をケアすることに 対して、日本の国はお金をかけなさすぎるんじゃないかと思っています。ものをつくる ことについては、すごくお金をかけるんですけれども、人が人をケアすることにお金を かけていない。そのことが、このまま行くと保育や介護を行う人がいなくなってしまう のではないか。あるいはいても、2、3年でやめてしまう。いまもほかの仕事に比べ て、ほんとに早くやめてしまうわけです。私たちはそれを埋め合わせるためにどんどん 学生を保育や介護の場に送り出していく。でも、3年、4年で使い古されて、また新し い人を送り出す。かつて、子どもを戦場に送るな、というスローガンがありましたけど も、それをしているような虚しさを感じてしまうことがあります。もう少し、人が人を ケアすること、あるいは、人と人とのつながりをつくるという仕事に対してお金をもっ とかけていくべきではないかということを考えています。  木村座長  ありがとうございました。人間が嫌いなんですね、ものは好きだけど。ものを好きな 人をもの好きっていいますけどね。もの好きだけど、人好きじゃないんですね。  奥山委員  いま人の問題が出ましたが、特に子どもの問題についてですが、先ほど青木先生が おっしゃったように、どんな形の夫婦から生まれた子どもでも「社会の子ども」という 認識で子どもを見ていくということが大事じゃないかと思います。また一方で、雇用と いうことで、女性が働いているか、働いてないかで差をつけるというのもどうなんだろ うかということを感じたりします。たとえば、公立の保育所に入れた場合、ゼロ歳児だ と1人月50万円ぐらいのコストがかかるといわれています。考えてみたら私は3人子 どもを産んでゼロ歳児で預けないで育てました。預ければ1人月50万円分のことを専 業主婦である間にやっていると思うと、なぜその50万が専業主婦にないんだろうかと 単純に考えてしまう部分もあって、子どもは社会のものと考えたときに、親が就業して るしてないにかかわらず、一律の保障があってもいいんじゃないかなと思うわけです。  子ども3人のうち、上は幼稚園を出て、下2人は保育所におります。そうしますと、 1人目は自分自身が非常に未熟で困ったときに、身近に保育士さんがいたらもうちょっ と自分の子育てに自信がもてたかなって、いまになって思うわけです。このように家で 子育てをしている人たちにも、なんらかの手を差し伸べていかなくちゃいけないんじゃ ないか。それが社会で子どもを育てるということにうながっていくんじゃないかと思い ます。  そういうことを考えると、お金の問題がどうしても出てくるわけですが、社会保障の 給付額については2/3が高齢者で、子育てには3%ぐらいじゃないかというお話があ りました。たしかに、介護のミニデイケアセンターを経営しているNPOに聞きました ら、1日12組から15組のお年寄りが通ってきて、月300万円の補助金を行政から いただいているというんですね。3人の職員を雇ってやっているわけです。ひるがえっ てうちの施設も12〜15組ぐらいの親子が来ていますがなんの補助金もなく自主運営 でやっています。保育所の分まで入れても3%というのはいかにも少ないんじゃない か。これをどうシステム化していくか。社会の中でもう少しお金をかけてもいいんじゃ ないかという共通認識を持たせるかというところがとても大事なところだろうと思いま す。  もう一つだけ。いまの若い人たちを含めて、人と人のつながり方が非常に下手じゃな いかという柏女先生のお話もありました。ほんとにそう思います。小さい時期から乳幼 児に触れていくということが大事なんですが、資料では文部科学省さんで一応やってい るということになっています。ですけれども、社会のシステムとなっていないと思いま す。欧米では13歳になったら、ベビーシッターの資格を取る。地元のYMCAなどで きちんと認定証を貰って、私は今度は保育する側よ、ということになるわけです。それ で地域の乳幼児を抱えているご家庭に行ってボランティアをする。そこで非常に安い、 500〜600円というお金を貰うというようなことが社会のシステムとしてあるわけ です。だからこそ、車に置きざりにするというようなことはない。13歳以下の子ども は必ずおとなが一緒にいなければいけないという社会的な共通認識ができているわけで す。ですから、どこかの学校でやっている特別な事例ということではなくて、社会全体 にそういうシステムができてこないと厳しいのかなと思いました。  山崎委員  資料10の主要国の取り組みという表ですが、低年齢児の主要サービスというところ で、利用数が出ていますが、ついでに就学前の子どもの総数を入れていただくとどの程 度がサービスを利用しているかがわかると思います。  それから、児童手当の実額が出ておりますが、これは国によってかなり所得水準の違 いもありますから、平均賃金のようなものを参考につけていただくと児童手当の価値が わかると思います。  論点メモに関してですが、先程来のご意見を伺って、私自身も子育てを若干してみて 痛感していることですが、視点として、子どもとともに親も成長する。そして、子ども を持つことによってより今後の社会のあり方を考えるという視点も必要なのではない か。これはおそろらく多くの方に賛同していただけると思います。子どもを産み育てる ことは大変です。いろいろ支援もほしいと思いますが、しかし、お金には変えられない ものを親としていただいたという感じがしておりますが、いかがでしょう。  もう一つ、1枚目、2枚目共通してですが、柏女先生の話にもありましたが、地域、 職場、国が総合的に考えるということなんですが、ここは厚生労働省の検討の場でござ いますので、中央政府が地域や企業を支援するという観点も必要なのではないかなとい う気がします。それは、地方に行きまして、こういうことをよくやっておられる市町村 の関係者の方の話を聞くと、いくら子どもにお金をかけても、この子は都会に行ってし まうということなんですね。東京は子どもは生まれないんですが、労働力は潤沢に得ら れるんですね。このことは大変な矛盾ではないかという気がします。ですから、子育て に力を入れる地域を支援するということが必要なのではないかと思います。これは、私 は社会保障が専門で、医療保険などにも関心を持っておりますが、先日、沖縄に行きま して、沖縄の医療保険が財政的に非常に厳しいんですね。これは、医療費が高いんじゃ ないんです。若干賃金が低いという面もあるかと思うんですが、関係者の方が一番言っ ておられるのは、子どもが多いことなんです。老人医療というのは、子どもを含めた医 療保険の加入者がみんなでお年寄りを支えるという仕組みになっているんですが、その 支える側に子どもの数が入っているんですね。したがって、沖縄では働き手の割には子 どもの数が多くて、その子どもも含めて、社会連帯という名の下にお年寄りを支える仕 組みになっているので、これをなんとかしてあげなければいけないのだろうと思いまし た。  もう一つ、そういう意味で、地域を支える、中央政府が全国的に支えるという視点。 それから企業を支援するということだと思います。おそらく、ファミリーフレンドリー 企業というのは、競争上、そのことだけをとらえると不利な状況におかれるんだろうと 思うんですが、そういうことのないように、施策はやっておられるんですが、競争上、 十分ファミリーフレンドリーであることが企業にとってもむしろ有利になるような仕組 みにする必要があるんじゃないかと思います。  具体的にどのようなことが考えられるかということですが、ファミリーフレンドリー 企業を表彰しておられるんですが、これをもっと進めて、医療や福祉の世界ではサービ ス評価ということで、事業者の評価、あるいはサービスの評価がありますが、こういっ たことができないだろうか。これはお金をかけないで、そういう企業が注目され、いい 人材がしぜんに集まるという仕組みになるのではないかという気がします。たとえば、 育児休業法はあるけれど、育児休業制度の社内規定はないという企業はバツだろうと思 うんですね。その程度のことはいますぐにでもできるのではないかと思います。  白石委員  先ほどから、社会保障費の3%ぐらいしか子育てのために使われていないということ で、私もその数字を聞いて非常にびっくりしております。前回もお話したと思います し、私のレポートにも書きましたが、そこの部分をもう少し手厚くしていくのは皆さん 同じ考えかなと思います。私は江戸川区に住んでおりまして、江戸川区の子育て支援を 見ますと、医療では小学校就学までの子どもの医療費は無料ということで、区の広報を 見ますと、江戸川区は子どもの数も多いということですので、地域差をなくすというこ とも書いていますが、そういう部分も検討していただきたいと思います。それから、社 会保障をもっと厚くしてほしいという部分がひとつあります。  資料12の2ページに、取り組みの方向性ということでいくつかありますが、(2) 男性も含めた働き方という部分で、先ほどのノルウェーの例が大日向委員からありまし たが、資料10のドイツのところに、男性の育児休業取得を促進するための制度改正を 検討中となっていますが、昨年ドイツに行ったときに、これを法整備をしてかなり進ん でいます、というように聞いておりますので、これは検討中なのか、法ができたのかど うか、ちょっとお調べいただきたいと思います。  ここの部分ですが、最近新聞等々を見ますと、ゆとりある共働きの社会というのが必 要かなと思われます。ドイツの例もそうですが、「両親であるための休暇」取得の促進 するための法整備をして子育て支援をやっているということですが、最近の30代男性 の意識には変化が起きてきていて、子育ても一緒にしていきたいと思う方が増えている ということも聞いております。ですから、制度をきちんと入れていって、男性も制度が あるんだから休暇を取りますよ、というような部分を企業の中に反映していったらいい のかなと思います。その反面、現状を見ますと、30代の男性は働きざかりで、一番パ ワフルに働いている年代ですので、現在の長時間就業の中心が30代という統計もあり ますので、相反するところですので、そのへんを今後どういうふうに考えていったらよ いか、皆さんからご意見いただきたい。どうしたらいいのか、企業にいる者としては心 配な部分でもあります。  水戸川委員  私が思いますには、トータル的な支援ということで、子どもを持つという過程は、妊 娠の時期から出産、子育てへとつながると思うんですけれども、柏女委員からもありま したように、横のつながりがないということで、子どもを生みお産がすむと子育ての情 報もなかなか行き渡らない。子育て支援のこういう制度があるという情報がいまのお母 さんたちにどれだけ届いているかというと、それはほんとに少ないと思います。特に妊 娠から出産までの期間には情報が入りにくいし、情報を知ろうというお母さんも実は少 ないと思います。私も次女からは保育園に通わせておりますが、民間の保育所では、子 育て支援、こんなことやります、やってますというようなチラシなりポスターは見たこ とがありません。ですから、お母さんたちは何かきっかけがない限り、そのへんに目を 向けることが少ないんじゃないかと思います。  トータルな支援ということを考えると、妊娠から子育てにつなげていくということが 必要だと思います。もっと極端にいえば、妊娠前の若い女性のからだから、というとこ ろになると思うんですけれども、その方法ということで例を挙げますと、ともに寄り添 う助産師さんの役割が、お産を取り上げるだけではなくて、妊娠中からの女性の心身の ケア、そして、産んだあとのケア、これは安達先生のほうがよくご存じだと思います が、助産師さんたちの役割の一つでもあると思います。ケアの部分というのは医療では なかなか補填されない部分かと思いますので、そこをもう少し見直していただく必要が あるかと思います。  そして、データとしては、たくさん産んでいる人はどうして産もうと思ったかという ところに焦点を当てて拾い出してみると、また違った意見も出てくるような気がしま す。 私が参加してます「いいお産の日」の活動の目的の一つに、主体的になるという のがあります。産む側のお母さんたちが自分で産む、産もうという気持ちが年々薄れて いるということがあるんですね。昔は当たり前のように自宅で産むのが自然だったわけ ですが、世の中が変わり、病院で産ませてもらうというところが非常に強くて、それで 主体的になれないというところから、お産はとてもしんどくてつらいもの、というとこ ろにつながっていると思います。そうではなくて、産むということに主体的になって、 産んだことがすごくよくて、その思いを子育てにもつなげていくというケアを重点的に 考えていただきたい。  近年、この中にももしかすると、立ち合い出産とかなさっている方もいらっしゃるか と思うんですけども、陣痛というのは何時間、何十時間しかありませんが、その間にお 産に対してどう心が向いていくか、その姿勢によってホルモンのバランスも変わるとい われています。「2025年の日本の姿」にも、妊娠、お産のありようについては出て きてないので、残念だなと思ったんですが、取り組みの方向性の(6)出産への支援、 とありますのでほっとしています。できれば「出産への支援」ではなくて「妊娠・出産 への支援」というところで考えていただけると、そこからよりよい子育てへとつながっ ていくのではないかと考えております。  木村座長  ありがとうございました。産前・産後を一貫してとらえるということですね。  青木委員  関連して、子育て支援の時期をいつまでとするか、産んで1、2年とか、赤ちゃんの 支援に割と偏っているというのがあって、働き出して一番しんどくなるのは、実は子ど もが小学校低学年の頃、10年ぐらいしたときにすごく疲れが出るということが、いま 私がそうなんですが、要するに、学童保育が終わって子どもがひとりで鍵をあけて、お 母さん、お父さんが帰って来るまで、5時まで働けば、6時、7時の帰宅が当たり前な んですが、その2時間を安全に耐えられるかというと、すごく不安な時期ですよね。そ れで、学童の時期も2、3年までで切れるという状態をどう考えるかということもある と思うんですね。  もう一つは、育児休業の使い方も、むしろ初めての子どもの場合、人手があると乳幼 児期は、意外とお父さんの出る幕なしで終わってしまうこともあって、父親の最初の子 どものイメージというのは、圧倒的にキャッチボールが多いんですね。私はかつてそう いう調査をしたときに、子どもが生まれてすぐにキャッチボールするかよと、男性の育 ち具合というか、心理的な準備のほうに疑問を感じたんですけれど、いま子どもが キャッチボールをする年齢になってみると、サラリーマンのお父さんたちが土日に地域 に帰って少年野球の指導を始めたと。でも、そうすると、朝6時半に出掛けて、うちの 夫もそうですけど、11時、12時の帰りで、睡眠時間4時間で1週間暮らして、つき あいのお酒も飲んで、土日に1日陽に当たるわけです、1回の練習が4時間です。それ で地域のサラリーマンのお父さんの何人かがずっと陽に当たっているからまず皮膚に異 常が起きた。そして、肝臓が悪くなった。要するに、疲れきって月曜日に入るというこ とがあるんですね。  ですので、地域に帰ってそういう活動をしているような人たちに特別な休暇、たとえ ば、2か月に1回でもいいんですけど、子どもからも離れて平日に休めるとか、なんか そういう男性にもやさしい、子どもの生涯発達の中でトータルで休める。たとえば、1 0歳ぐらいまでの間で家庭の裁量で自由に使えるようにするとか、そういった制度が考 えられてもいいかなと思いました。  木村座長  絶対必要ですね、ありがとうございました。  岩田局長  今日のご発言を伺っておりまして、また、先生方が文章で出されたご意見を読ませて いただきました感想を述べたいと思います。  一言でいいますと、法律上の制度、あるいは予算に基づく事業はもうさまざまなもの がございまして、先生方のご意見に対して、当初、いちいち反論したくなる衝動にから れていたぐらい、メニューは揃っていると思うのですが、先生方のご意見を伺って痛感 いたしましたことは、そういった法制度や予算事業が、社会のシステム、社会の慣行に なっていないという残念な事実だというふうに思います。例を挙げたらキリがないんで すが、今日割合話題になりました育児休業のことを例にとらせていただきたいと思いま すが、育児休業というのは、請求権ですので、企業の中に育児休業制度がなくても、取 りたいと思えば請求をすれば、取らせないといけない。それを取らせない企業があれ ば、行政のほうで指導・勧告して是正させるという仕組みになっているんですね。ま た、育児休業から復帰するときにも、不利益取り扱いは禁止をするという法律改正を昨 年やらせていただきましたので、たとえば、戻ったときに、フルタイマーからパートに 変わってくださいとか、ポストを下げるとか、そういうことはよもやあってはいけな い。法律上あってはいけないことで、これまた申し出ていただければ、企業を指導する わけです。休業期間中、あるいは、復職に当たっても、能力が維持できるように事業主 は配慮するように、法律上は、事業主の努力義務ですが、義務がございますし、それを 支援するような国の予算の助成制度もあるんですね。  だけれども、残念ながら、そういう法律制度や予算制度があっても、現実を変える力 になりきってないということを認識するというところから出発かなと思うんです。公的 な制度、助成金などの制度はあるわけです。もちろん、柏女先生がおっしゃったよう に、それは非常に小粒であるとか、量的に足りないとか、そういう問題はございます が、一応メニューは揃っている。けれども、それが現実を変える力になっていない。そ れを埋める仕掛けをどうつくるか。これが非常に難しいように思いました。  今日、事務局からのご説明の中に総理大臣からの指摘事項のペーパーがございました けれども、その中に、私は当初非常に簡単に受け止めてたのですが、というのは、育児 休業の取得や看護休暇制度の普及について、具体的な目標を定めて職場づくりをしろ、 というご指示で、それほど難しい仕事とも思っておりませんでした。けれども、いろい ろ考えてるうちに、そしてまた今日のご意見を伺っていると、これは制度と現実の橋渡 しをする一つの試みだと思うんですね。数値目標など具体的な目標を立てて、実際の職 場を変えていく。これはもう大変な仕事だというふうに思います。その仕組みをどうい うふうにつくるのか。そして、とても政府だけでできる仕事でもありませんので、企業 の皆さん、NPOその他の皆さん、そして、国民のおひとりお一人を巻き込んだ国民運 動的な取り組みをつくる、その仕掛けをどうつくったらいいかというのが大きな課題だ と、ご意見を伺いながらそういうふうに思いました。  木村座長  ありがとうございました。たしかに制度と現実のくい違いがあって、地域社会におけ る子育てというのも、言うと非常に簡単なんですけど、そのために日頃仲良くなってな きゃいけませんですよね。仲良くなるというのは大変なことで、アメリカあたりは しょっちゅうパーティーをやってますよね。そのパーティーをうまく奥さんが切り盛り できないと離婚ものだといいますよね。要するに、それが非常に大事なことなんで、 さっき野球の話がありまして、男も大変だけど、女も大変で、そういう仕組みを変えて いかないと、制度だけではどうもならんというところがありますね。  フランスなどは、36歳まで社会的に一人前と認知されてなくて、事実上ですね、選 挙権とかそういう問題じゃなくて、36歳までは毎週毎週親元へ帰って行きますね。お そろしいぐらい親元に帰る。そうすると家族の結びつきができますからね。日本にはそ ういう習慣は全くありませんから、親子冷たいですから。  だんだん時間になってきましたが、今日は事務次官さんが初めてお出ででありますの でいろいろと思いの丈などを。  近藤事務次官  3回目で初めて出席させていただきました、すみません。前2回ともたまたま出張に なっておりまして、初めて出席できたわけでございます。  私、20何年か前に初めて課長になりましたのが、児童手当課長でございまして、そ の頃、ちょうど臨調・行革というのが始まりまして、児童手当制度を廃止しろというの が、大合唱になっていた頃でございまして、私どもそれに対抗するという意味でいろい ろ考えたわけですが、そのとき、ちょっと話が出ましたけれども、社会の子という言葉 を答申かなにかに使ったんですが、大変な不評でございまして、なんてことを言うん だ、とだいぶ言われたような記憶がございます。  おそらく、戦後人口が過剰である、人口が過剰なときに少子化対策をいうということ 自体がタブーであったわけです。22年ほど前でございますが。  その頃既に少子化は進んでいたわけですが、10年ぐらい前まではやっぱりそういう 状況が続いていたと思いますが、この数年をみますと、そういうことを言う人がほんと に多くなってきたわけです。まだまだ社会的な勢力というまではいきませんが、タブー というのはほんとに消えてきたと私は思っています。  私、常々内部では言っておりますが、人口が増えるという時代においては、少子化対 策というのは、自分の身体で感じない。こういうことを思っておりまして、子どもの数 は既に減ってきているわけですが、いよいよ人口そのものが数年後には減少に転ずる と。既に市町村では当然ですが、県レベルでもマイナスと県が出てきておりまして、私 のところにも時々、知事さんなり副知事さんがお出でになりますが、過疎地を抱えてい る県知事さんなんかはトップに少子化対策をという陳情が最近では非常に多くなってき ております。  そういう意味では、少子化対策を考えるのは肌身に感じてきているのかなと思ってお ります。肌身に感ずると、意識改革というのが一気に進むんじゃないか。まだまだ意識 改革ができているとは思いません。特に高年齢層においては、極めてコンサバティブだ と思っておりますし、頭でわかっても身体がついていかない、こんなような状況じゃな いかと思っています。  私はあと数年すれば、一気に変わってくるんじゃないか、こんな気持ちを持っていま す。そのための準備ということもあって、今回、成功するかどうかわかりませんが、い ずれこういうキャンペーンというのは、成功するというか、そうならざるを得ないん じゃないかという感じを持っているわけでございまして、施策が伴わなくても、ある程 度の情報というか、考え方を発信する必要があるんじゃないか。こんな気持ちを持って おります。  この懇談会、あるいは総理の指示、こういう力も借りて、私どもとして是非とも少子 化対策に道筋を立てていきたいという気持ちを持っております。  どうぞよろしくお願い申し上げます。  木村座長  ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。  そろそろ時間でございます。まだまだご議論がおありかと思いますが、本日はこの程 度で終了させていただきたいと思います。  大変活発なご議論を頂戴しまして本当にありがとうございました。  次回は7月17日の10時から12時まで、場所は今日と同じ厚生労働省の省議室で 開催したいということでございます。  これをもちまして、第3回少子化社会を考える懇談会を終了させていただきます。 本日、まことにありがとうございました。                                      以上  (照会先) 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室   政策第一係長 森   政策第一係  木寺  電話:03−5253−1111(内7691、7692)