02/05/31 第1回新たな看護のあり方に関する検討会議事録           第1回新たな看護のあり方に関する検討会議事録 日時  平成14年5月31日(金)       15:00〜 場所  経済産業省別館1020会議室 出席メンバー  井部俊子、上野桂子、内布敦子、川越厚、川村佐和子、國井治子、         西澤寛俊、平林勝政、藤上雅子、宮武剛、柳田喜美子(五十音順、         敬称略) ○田村看護課長  時間になりましたので、ただいまから「第1回新たな看護のあり方に関する検討会」 を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、本当にご多忙の中、本検討会にご 出席いただきましてありがとうございます。本来ならば医政局長がご挨拶を申し上げる ところでございますが、ただいま国会用務のためにそちらの委員会に出席しております ので、代わりに大谷総務課長からご挨拶を申し上げます。 ○大谷総務課長  委員の皆様方におかれましては、本検討会委員へのご就任を快諾いただきましてあり がとうございます。また、本日はご多忙の中ご参集いただきまして、重ねて御礼申し上 げます。もともと大臣が参りまして、挨拶を申し上げたいといった次第だったわけであ りますが、いま健保法の審議が大詰でして、大臣、局長以下、国会に出席しております ので、失礼ながら私からご挨拶を申し上げたいと思います。  我が国の医療は、世界保健機関が行った国際比較において、世界のトップと位置づけ られるなど、高い水準を達成してきています。これは我が国の誇るべきものであり、こ れまでの関係者の方々のご努力に深い敬意を表するものであります。  しかしながら、少子・高齢化の進展、医療技術の進歩、国民意識の変化等を背景とし て、医療提供体制全般の見直しが求められているわけです。厚生労働省においても、こ れらの課題を解決すべく、医療制度改革を推進しておりますが、この施策の1つとし て、質の高い効率的な医療提供体制といったものの構築に取り組んでいるところでござ います。特に看護分野において、近年の在宅医療の普及あるいは看護教育水準の向上な ど、社会情勢の変化に対応した看護が求められていると深く認識しており、今般、この ような検討の場を設けさせていただいた次第でございます。  本検討会は、実は坂口厚生労働大臣の強いご指示によって設置することとなったもの です。大臣は、このご著書『タケノコ医者』という本の中で、「現在は看護婦さん自身 が主体的にできる仕事、自分の判断でできる仕事が少なすぎる。看護婦さんが自分の判 断でやれることを明確にする必要がある。それはナースのためではない。日本の医療水 準を上げるためにだ」と述べておられますが、このような大臣のお考えも踏まえた検討 の場であると考えております。  具体的な検討事項としては、1つは「訪問看護などの医療現場における医師の指示の あり方」、またもう1つには「医療技術の進歩等による看護業務の見直し」といったも のを中心に検討していただきたいと考えております。委員の皆様方におかれましては、 当検討会の趣旨をご理解いただきまして、高い見地から広範なご議論を賜りますよう に、よろしくお願い申し上げます。 ○田村看護課長  続きまして本検討会の委員の皆様方、それから事務局を紹介させていただきます。聖 路加国際病院副院長看護部長 井部委員、聖隷福祉事業団在宅サービス部長 上野委員 、兵庫県立看護大学助教授 内布委員、ホームケアクリニック川越院長 川越委員、東 京都立保健科学大学教授 川村委員、社団法人日本看護協会常任理事 國井委員、社団 法人全日本病院協会副会長 西澤委員、国学院大学学長特別補佐・教授 平林委員、社 団法人日本薬剤師会常務理事 藤上委員、埼玉県立大学教授 宮武委員、社団法人日本 医師会常任理事 柳田委員でございます。  事務局のご紹介をさせていただきます。先ほどご挨拶をいたしました医政局総務課長 大谷、医政局指導課長石塚、同じく医事課長中島、それから医政局総務課企画官の武 田、私、看護課長の田村でございます。  続きまして、当検討会の座長についてお諮りしたいと思います。座長には、長年難病 の患者さん方の看護に携わり、そして在宅看護の研究、在宅看護の発展などに貢献して いらっしゃいました川村委員にお願いしたいと思っておりますが、委員の皆様、いかが でしょうか。                 (異議なし) ○田村看護課長  それでは川村委員にお願いしたいと思います。川村座長に一言ご挨拶をいただいた後 に、議事の進行をよろしくお願いしたいと思います。 ○川村座長  この度、本検討会の座長をさせていただくことになりました川村です。よろしくお願 いします。委員の皆様のご協力を得て、本検討会が実りある討論のできる議論の場にし ていきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いします。  議事に入らせていただく前に、少しお諮りをしたいことがあります。当検討会の進め 方について確認ということですが、当検討会については、公開で行うということと、議 事録については事務局でおまとめいただいたものを各委員にお目通しをいただいたうえ で、厚生労働省のホームページで公開するということにしたいと考えております。この 点についてご了解をいただきたいと思います。実際に、後ろで何人かの皆様方にお聞き いただいております。  それでは議事に入らせていただきます。まず、事務局よりたくさんの資料を提出して いただいておりますので、どうぞ、ご説明をお願いします。 ○武田企画官  企画官の武田でございます。どうぞよろしくお願いします。まず、お手元の資料確認 からさせていただきたいと思います。「議事次第」という1枚の紙がありまして、その あと新たな看護のあり方に関する検討会メンバー表で1枚のもの、資料1として検討課 題(案)のこれも1枚のもの、資料2として、関連資料20頁のものがお手元に置かれて いると思いますので、ご確認をお願いしたいと思います。  それでは早速ですが、お手元の資料の説明をさせていただきたいと思います。まず資 料1「検討課題の(案)」をご覧いただきたいと思います。これは、本検討会でこれか らご検討をお願いしたいと私どもとして考えている検討課題を列挙させていただいたも のです。1については「訪問看護の推進」ということで、「訪問看護における医師の包 括指示のあり方」、それから「訪問看護に関連する諸制度」ということです。これにつ いては後ほど関連資料をいくつか用意しています。訪問看護においては医師の指示書の 下に訪問看護が実施されるという制度になっておりますが、この指示のあり方につい て、個別的な指示、包括的な指示ということがありますが、訪問看護の一層の推進のた めに、こういったものをどのようにこれから考えていったらいいか、ご検討を賜りたい と思っております。  それから訪問看護に関連する諸制度ということで、本検討会においては、大変在宅医 療の現場に詳しい専門の先生方にご参加いただいておりますので、幅広く関連する制度 についてもご意見をいただいてまいりたいと思います。本日の提出資料の中で申し上げ ければ、例えば麻薬の取扱いだとか、診療報酬上の取扱いなどといったことについての 資料も用意しています。  2については、「医療、技術の進歩等に伴う看護業務の見直し」ということです。具 体的なテーマとして、「看護師等による静脈注射の実施」について、本日、若干の資料 を用意しています。  2つ目が「医療機関における医師の包括指示のあり方」です。静脈注射以外につい て、1は訪問看護ということで対象を絞っておりますが、より広く医療機関における指 示のあり方についてもご議論をいただければと思っております。  3については、「これらを推進するための方策」ということで、これまで様々な取組 みが進められてきましたが「標準的なプロトコールの策定」についてや、「入院診療計 画」、いわゆる「クリティカルパス」と言われているものなどの推進だとか、「看護基 礎教育、卒後研修の改善」といったテーマが今後議論を深めていかなければならない テーマであると思っています。この3については、本日特に資料は用意しておりません ので、後ほどご議論をいただければと思います。なお、この検討課題は、あくまで私ど もとしての案ですので、後ほどこのテーマでよろしいかどうか、またほかに付け加える ことがあるかどうか、ご議論をいただければと思います。  それでは資料2に移りたいと思います。「関連資料」という表紙がありますが、下に 頁数が振ってありますので、1頁目をご覧いただきたいと思います。  「I 訪問看護ステーションの現状」について、概括的な数字をいくつか拾っていま す。まず訪問看護ステーションの数ですが、平成12年9月1日現在活動中の訪問看護ス テーションは4,730か所で、前年に比べ1,160か所の増加です。ご承知のように、平成12 年から介護保険法が施行になっておりまして、その影響もあろうかと思いますが、非常 に大きな数の増加を見ているところです。これを開設者別に見ると、「医療法人」が2, 521か所で53.3%と最も多くなっています。次いで「社会福祉法人」492カ所、「医師 会」が330カ所など、ここに示しているとおりです。  2頁目は「職種別の従事者数」で、1訪問看護ステーション当たりの従事する方々の 数です。1訪問看護ステーション当たりで6.1人、それから常勤換算では4.7人となって います。職種別の内訳ですが、グラフや下の表に書いてあるように、基本的に看護師が 非常に大きな活動を占めていて、従事者数、常勤換算それぞれ3.5人、それに次いで准看 護師、さらに理学療法士、作業療法士という方々も配置されています。  続いて3頁目に「利用者数の推移」を掲げています。訪問看護ステーションの利用者 数ですが、平成11年までの調査と、平成12年からの調査と、若干訪問看護の統計調査の 名前が異なっておりますが、利用者数の推移をたどってみると、このように年々増加し ていることが窺えると思います。ちなみにこれも皆様よくご存じだと思いますが、老人 保健法において、訪問看護ステーションの制度が導入されたのが平成4年、健康保険法 で訪問看護ステーションが導入されたのが平成6年ということで、健康保険法の対象 者、いわゆる高齢者ではないけれども、難病、精神、がんその他、様々な疾患で在宅医 療を受けられている方々が、数の上でも割合の上でも増えていることがご覧になってい ただけるかと思います。  4頁は「利用者の寝たきり度の状況」を見たものです。これはランクJ、A、B、C ということで、ランクJがほぼ自立の割合で、Cが最も重いということです。今はもち ろん介護保険法で要介護認定がなされていて、より細かな介護度が認定されています が、歴史的に過去から振り返ってみると、このランクで傾向を見ることができるので、 それで今回お出ししています。  その訪問看護ステーションが増えている、さらに利用者が増えている、さらに健康保 険法の利用者が増えているということで、非常にどのランクも増えていますが、割合で いうと自立の方の割合も増えているということが1つ言えると思います。逆に重さでい うと、いちばん重いランクCの方々が、実数の上でもかなり大幅な伸びを示しているこ とに着目できると思います。ただ、本検討会ではむしろ医療行為、医療の必要度に着目 をしてご議論いただきたいと思いますが、あくまでこれは寝たきり度の状況ということ ですので、必ずしも医療の必要度が高いかどうかまでは実はわかりませんが、1つの参 考としてお出しをしています。  5頁は「利用者が受けている医療処置」です。これも実は私ども、旧厚生省時代から 現厚生労働省に至るまで、若干調査項目が年によって変わっておりまして、必ずしもき ちんと連続したトレンドが把握できるもの、できないものがあります。可能なかぎり連 続できる形で拾ってみたわけですが、現時点でいちばん高くなっている赤のいちばん右 でいちばん上にある四角で伸びているのが「浣腸・摘便」ということで、大変伸びてい ることがおわかりいただけると思います。  それから褥創関係ですが、かつては「創傷の医療処置」の項目しかありませんでした が、最近はむしろ褥創の処置ということで、非連続ですが、緑のラインがかつての「創 傷の医療処置」で、青のラインが新しく取っている「褥創の処置」ということで、いず れにしても右肩上がりで増えているということが窺われると思います。その下のピンク から紫、三角の所が「経管栄養」です。それからいちばん下の青のバツの所が「中心静 脈栄養(IVH)」です。これが新しい統計では合算されて、平成12年の所は*だけに なっていますが、ここにきています。連続しなくて恐縮ですが、いずれにしても在宅の 方でも栄養を経口摂取できずに、経管または中心静脈ラインで栄養を摂っている方々、 なかなかこれまでは在宅が難しいと言われていた方々の利用も増えていることが窺われ るところです。  そのほか、注目できるところとしては「終末期ケア」です。これも新しく平成11年か ら「がんの在宅(緩和)ケア」という項目で取っていますが、非常に大きく伸びてきて いることが、数字の上でもグラフの上でも明らかになっているのではないかと思いま す。  続いて6頁は、平成11年の訪問看護統計調査で上がってきた訪問看護ステーションの どういう看護行為が行われているかという統計です。ちなみに前の頁、または後ろの頁 もそうなのですが、統計の制約がありまして、あくまで訪問看護ステーションの看護内 容ということです。医療機関から派遣されている訪問看護は、残念ながら詳しい統計は ありませんので、今日の資料には含まれておりません。  大きく「I.病状観察」「II.療養上の世話」「III.医療的な処置」と分けられてい ますが、多いのは「症状観察・情報収集」、それから「療養指導・相談」といった症状 観察や心理的支援などの行為について、99%を超える看護内容となっていますが、「整 容・衣服の着脱の援助」「リハビリテーション」などの療養上の世話についても94%に なっています。  この統計の取り方、分類の仕方にもよるのですが、この統計で「医療的な処置」とさ れている「浣腸・摘便」「褥創の処置」「カテーテル」「疼痛の看護」等々、医療的な 処置が行われているものは50.6%ということですので、必ずしもすべての訪問看護ス テーションで、医療的な処置が行われているわけではないということが窺われます。  一方、次の7頁ですが、訪問看護ステーションにおいても、実際どの程度の医療処置 をやっているかどうか、非常に差が大きいというのが実態だろうと思われます。これは 平成9年度の厚生労働省の補助に基づく調査研究で、座長の川村先生にご尽力いただい た研究ですが、医療行為について積極的に実施をしている16の訪問看護ステーションか ら、どういう行為を実施しているのか、どういう行為を実施する意思があるのか、さら にこういう行為は訪問看護ステーションとしては実施しないと考えているのかを調査し た結果です。  左の上から右の下にかけて、実施経験の多い順に並べているわけですが、実施の多い 医療行為としては「女性の導尿」「人工肛門管理」「吸入」「在宅酸素療法の管理・指 導」「服薬管理・指導」「血糖測定」という項目については、全16訪問看護ステーショ ンが実施をしていたということになります。  それからだんだん右に行くにしたがって、実施経験ありのステーションが下がってき て、いちばん右下の「今後とも実施する意思がない」が多かった項目としては、「動脈 採血」「気管内洗浄」「抗癌剤のワンショット注入」が挙げられています。「その他」 にも非常に多彩な項目が挙がっておりますが、実際に平成9年度の時点で行われている 実態を表すものとして、本日資料の中に付け加えさせていただきました。  8頁に「訪問看護時間」のデータも出されています。介護保険法の適用対象者で、要 介護度別の分類が数字としてまとまっています。訪問1回当たりの平均訪問時間は「要 支援」が46.7分、いちばん介護度の高い「要介護5」の場合が61.1分で、見ていただく とわかりますように、要支援から要介護5まで、要介護度が高いほど、平均の訪問時間 が長くなるということが見ていただけると思います。  それから健康保険法等の対象者ですが、平均で見ると介護保険が平均58分、健康保険 法が63.4分と、平均訪問時間が長くなっています。比較的医療行為が多いことによるも のかもしれませんし、また点数設定の問題で、特定の場合に健康保険法は長時間の看護 が認められていることなどもありますので、単純な比較は難しいかと思いますが、実態 としてこういう数字になっています。  9頁は「緊急時の対応」の状況です。これも特に医療ニーズの高い方、それからター ミナルになると救急時の対応の必要度が非常に高くなると思われますので、特に今回付 けております。下の表を見ていただきますと、上の緊急時訪問加算の届け出、特別管理 加算の届け出は、介護保険法に基づく届出制度ですが、「緊急時の対応をしているかど うか」という調査項目で見ると、「緊急時の対応をしている」と答えている訪問看護ス テーションは4,203ということで、総数4,730のうちの88.9%と、非常に高いパーセン テージの訪問看護ステーションで緊急事態をやっているということが窺われます。  それから「特別な管理を要する利用者に対応ができるステーション」。これは在宅酸 素療法指導管理」または「在宅中心静脈栄養法指導管理」など、厚生労働大臣が定めた 特定のものについて特別な管理を行うと届出がされているステーションで3,792か所、こ れも8割のステーションがこのような体制を取っているということです。その他、「24 時間計画的な訪問看護をしているステーション」は1967か所、41.6%ということになっ ています。  ちなみに、グラフのほうは「医療法人」が非常に数として多くなっていますが、「地 方公共団体」「社会福祉法人」「医師会」「看護協会」、それぞれ左のブルーのライン が総数で、そのうちどれぐらいがそれぞれの加算なり、その対応を取っているのかを比 較したものです。  10頁は「訪問看護の指示書」です。ご案内のとおり、訪問看護は利用者の主治医が交 付する訪問看護指示書に基づいて実施されるものでして、示されている様式がここに若 干縮小した形で付けてあります。いちばん最後に「上記のとおり、指定訪問看護の実施 を指示いたします」ということで、医療機関の名前、医師の名前を書いていただくこと になりますが、上に「指示期間」がありまして、「平成○年○月○日から○年○月○日 まで」と、最長6カ月間の範囲で指示書が発行されます。  ただ、もちろんその患者の状態に変化があれば、指示書自体修正、または新しい指示 書が出されるわけですし、急性増悪の場合に、特に頻回訪問が必要になった場合には、 「特別訪問看護指示書」というものが出されることになります。急性増悪、終末期の場 合、頻回訪問ができることになり、「14日間、毎日訪問看護を行うことができる」。こ の場合は介護保険ではなくて、健康保険の適用対象になるという制度になっているわけ ですが、実際の訪問看護の現場においては、この指示書だけでは不十分ということで、 さらに細かい指示または細かい取決めがなされているということがあります。  そういう指示のあり方について、ご議論いただければと思っているわけですが、具体 的に在宅酸素や在宅末期のがんの患者さんの場合の疼痛管理、モルヒネ投与などの場合 が、実際問題として問題になってくるのではないかと思っているのですが、その1つの 場合として、在宅酸素療法のケースを掲げています。先ほどの訪問看護指示書の様式で 言いますと、酸素療法の場合は1分間何リットルということで通常埋めていただく形に なっているわけですが、1分間何リットルという具体的な指示をすると、左の個別指示 の例の所にありますが、「鼻カニューレ2リットル/分」となると、場合によっては非 常に酸素が必要になり、酸素不足の兆候が、例えば口唇四肢末梢のチアノーゼという形 で現れた場合であっても、患者さんの家族、また訪問看護師が医師にこの状態を報告し て、改めて指示の出し直しをしていただかなければ、この「2リットル/分」を変えら れないということになるわけですが、右のような包括的指示または包括指示ですと、ど ういう場合にどういう酸素流入量の調整が可能かという指示であれば、活動による酸素 消費量、また実際の患者さんの状況に応じて、ある程度実際現場で酸素流入量の調整が できるのではないか。そういう個別指示の例、包括指示の例ということで掲げています 。在宅の場合も、または場合によっては院内の場合も、この個別指示、包括指示はあろ うかと思いますが、こういうことをどう考えていったらいいかということだろうと思い ます。  12頁、13頁は「在宅医療における看護婦の麻薬の取扱いについて」ということで、平 成12年の問合わせと、これに対する平成13年の医薬局からの回答です。詳しいご説明は 省略しますが、宮城県保健福祉部長からの照会は、麻薬診療施設に所属する看護婦が、 麻薬処方箋により調剤された麻薬を家族に運んでいいかどうか。自分の所の看護婦では なくて、訪問看護ステーションの看護婦に運ばせることはできるかどうか。またできた としたら、どういう点に注意しなければならないのか。こういう照会で、13頁が厚生省 からの回答となっています。  照会1の(1)、(2)について、貴見のとおりとなっておりますが、「医療機関の看護婦 が、麻薬を患者宅まで運んで行くことは現行法上可能である。それから訪問看護ステー ションの看護婦についても、これを運ばせることが可能である。ただし、実際に当該患 者の看護に当たっている看護婦に限る」という解釈が示されています。留意事項もいろ いろ示されています。例えばホでは、「あくまで訪問看護ステーションの看護婦は、医 師の指示を受けて運搬をするということなので、これをステーションの中で留め置いた り、保管したり、ためておくことはできない」というような留意事項が示されているわ けです。  14頁が「医療保険における取扱い(在宅医療で使用できる薬)」です。いまの通知で も問題になりました在宅がん末期の疼痛管理でよく使われる麻薬製剤、この( )の中 で申し上げれば、「塩酸モルヒネ」ですが、「塩酸モルヒネ」とか「抗悪性腫瘍剤」を 含め、限定された医薬品が禁止から除外されるという保険の扱いになっています。在宅 医療で使用できる薬が在宅医療で使用できるとするためには、「除外をされる薬」とし てここに書いていかなければならないことになります。また、保険の取扱いとしては、 「通院不可能な診療中の患者に注射薬を投与することは原則できない」。それから「患 者が通院が不可能な場合はまず内服薬を投与すべきであって、注射が必要欠くべからざ るものである場合は、往診して治療すべきものである」。(1)のいちばん最後の3行 ですが、そういう保険の取扱いになっているということで、これも在宅医療に関係の深 い制度、運用ということでご紹介させていただきました。  15頁から検討テーマの2つ目ですが、「看護師等が行う静脈注射」の資料です。これ については平成13年度に、緊急に静脈注射の現状その他について研究事業をお願いしま した。現在、大まかな集計までできているところですが、「医師の認識」、それから 「看護管理者の認識」、それぞれ調査をしました。全国の病院から、病床規模に応じて 無作為抽出した900病院ということで、特に小さい病院、大きい病院と偏りがないように 調査していただきました。  その結果ですが、15頁は「医師の認識」です。94%の医師が、「看護師・准看護師に 静脈注射を現に指示している」、95%の医師が、「看護職員の静脈注射の実施は、看護 師に指示をして、医行為を行わせることができる相対的医行為と受け止めている」とい うことでした。それから看護師ができる静脈注射の範囲としては、静脈注射88%、点滴 静脈注射93%、輸血49%という数字が上がってきています。ちなみに、静脈注射を実施 する看護職員の能力についての問い合わせをして、その能力が不足であると考えている 選択肢の中の割合ということですが、特に「薬剤知識について不足面があるのではない か」という回答が多くなっています。その次に「感染安全対策」、その次に「法的責 任」ということになっています。  16頁は「看護管理者の認識」です。看護管理者ですので、調査対象となった病院の看 護の責任者、看護部長相当の方々の認識です。90%の看護師・准看護師が、「日常業務 として静脈注射を実施している」という結果です。それから60%の施設では、「静脈注 射マニュアルを看護部で作成している」ということ。それから「静脈注射は診療の補助 業務の範囲内である」というお答えが52%の看護管理者です。  そういうことで言うと、非常に看護の現場でも静脈注射がやられているということだ ろうと思いますが、能力不足の認識並びに内容を聞いています。やはり「薬剤知識につ いての能力不足があるのではないか」という回答が、医師の認識と同じようにトップに なってきておりますが、「法的責任」の数字も非常に大きくなっています。法的責任を 薬剤知識と並べて「能力」ということで括っていいのかどうかわかりませんが、法的責 任能力がないということ、逆に言えば法的に認められていないということを認識してい らっしゃる方々が、看護職のほうは多いということだろうと思います。  「訪問看護ステーションの認識」が17頁です。訪問看護ステーションの60%では、静 脈注射が実施されています。「利用者ニーズとして必要だ」というのは85%ということ で、必要だと思っているけれども、実際には実施していない訪問看護ステーションが20 〜30%あるということです。ここは指示が出ているのかどうか、またその訪問看護のほ うで受けているかどうかという問題があろうかとは思います。いずれにしても、「法 的、教育的条件の整備がなされれば静脈注射の実施に賛成」と回答した方が非常に多く なっているということです。  この静脈注射についての医行為としての解釈の過去の経緯を、18頁でお付けしていま す。昭和26年に国立鯖江病院で起きた注射事件、注射薬剤の取違い事件で患者が死亡し た事例ですが、当時の厚生省の解釈として、薬剤を静脈の中に注入をするという行為 は、医師、歯科医師が自ら行うべき業務で、看護婦の業務範囲を超えるという回答をし ています。ところが、これが裁判で争われたわけですが、2つ目の○にあるように、名 古屋高裁金沢支部の判決においては、「看護婦が医師の指示により静脈注射をなすこと は、当然の業務上の行為」という判決が出され、さらに上告に対して最高裁は上告棄却 ということで、静脈注射が看護師の業務であるということを前提として、医師法違反で はなく、刑法211条の業務上過失の責任で判決が確定しているという状況にあるわけで す。こういう判例もありますので、清水嘉与子著の『私たちの法律』という本の中で、 「かつて厚生省内でも解釈変更が検討されたものの、行政解釈が改められていない」と いう経緯も紹介されていましたので、併せてご紹介させていただいています。この具体 的な通知そのものについては、19頁、20頁に付けておりますが、内容が重複するので説 明は省略させていただきます。 ○川村座長  大変ありがとうございました。ただいまの事務局からのご説明について、何かご質問 等はありますでしょうか。 ○平林委員  何点かご質問をさせていただきたいと思います。まず第一に、11頁に包括的な指示の 例が挙げられているのですが、この検討会では、「包括的指示」という言葉をこういう 意味で使う、ということを改めて確認させていただきたいのです。というのは、「包括 的指示」という言葉にいろいろな意味合いを含ませて使われている方がいらっしゃいま す。本検討会では、「包括的指示」とはこういう意味である、ということをきちんと確 認をして議論をしないと、議論が混乱するだろうと思いますので、ご質問というより も、その点の確認をさせていただきたいということが1点です。  2点目は、15頁で「法的な責任」という言葉が出てくるのですが、私には「法的責 任」という意味がよく理解できません。これは適法な行為であるか、違法な行為である か、ということについて、それを「法的責任」と表したのかどうかということをお聞き したいということです。  3点目は、18頁で「看護婦が行う医療行為、静脈注射の解釈について」とあります が、「医療行為」なのか、「医行為」なのかという点について、少し厳密に言葉を使う とすれば、むしろ「医行為」と言ったほうがいいのではないか。これはご質問というよ りも意見です。  それから同じ頁で、先ほどのご説明の中で、3つ目の○の所で、確か医師法違反では なくて、業務上過失致死の責任が問われたとおっしゃられたと思うのですが、これはも ともと医師法違反は問われてなかったと思います。少しそれはミスリーディングになる と思いますので、その点で私のご意見を申し述べさせていただきました。 ○川村座長  何かご意見はございますか。 ○武田企画官  逆に後ろからさかのぼってお答えいたしますと、最高裁の判決は、医師法そのものは 起訴されておりませんので、先生のおっしゃるとおりです。それから「医療行為」とい う言葉ではなく、「医行為」ということだろうということですが、これもおっしゃると おりでして、タイトルは「医行為の解釈」としたほうが正確だったと思います。そこは お詫びを申し上げます。それから2つ目の「法的責任」という問が、適法なのか違法な のかという意味ではないかということなのですが、これは「法的責任」ということで調 査票を回したようですので、人によっては取り方が若干違ったケースがあるのではない かと思うのです。したがって、どこまで正確な調査になっているかというところは、若 干問題があるかもしれません。おそらく「法的責任能力」ということで、懸念があると いうことでそこにマルを付けた方が多かったのではないかというところまでしか、この 調査結果からは言えないのかなと思います。1番の「包括指示」については、1つの例 としてお出ししております。これを踏まえた議論をしていただければと思うのですが、 私どもは、あまりその議論に限定をかけるつもりもありませんので、少しその点につい て、「包括指示」ということをどういう範囲の中で考えたらいいのかということについ て議論があるのであれば、そこはこの検討会で、少し荒ごなしをしていただいたほうが よろしいかと思います。 ○川村座長  それではほかにございませんか。もし特にご質問がとりあえずないということでした ら、ご意見をお述べいただければと思います。 ○田村看護課長  すみません、ご意見をいただく前に、遅くなりましたが、審議官をご紹介させていた だきたいと思います。医政局それから保険局担当の中村審議官です。やはり国会業務で 遅くなりました。 ○中村審議官  遅くなりまして大変失礼いたしました。先生方には委員をお引き受けいただきまし て、本当にありがとうございます。先ほどお話があったと思いますが、大臣のイニシア チブの下に作られたこの会ですので、どうか意のあるところをお汲みいただいて、是非 看護業務あるいは日本の医療サービスの向上のために、いい結論を出していただきたい と思います。どうぞよろしくお願いします。 ○川村座長  それでは続けさせていただきます。どうぞご意見、必要なご質問もおありでしたらお 含めいただいて結構です。 ○井部委員  私は医療機関におりますので、「医療技術の進歩等に伴う看護業務の見直し」に関心 があるわけです。この項目の出し方ですが、1つは「静脈注射の実施」で、すでに昨日 の『朝日新聞』では、「看護師の静脈注射解禁」といった見出しで出ていました。その ような非常に技術的な側面と、それから「医師の包括指示」といった包括的な項目とが 並列で並んでいるのですが、ここは何か意図的なものがあるのでしょうか。  そのことと、先ほど法的な議論がありましたが、3番の「これらを推進するための方 策」で、法的に関係するものがあまり見えてこないのです。具体的に言うと保助看法は そのままにして、その範囲内でできることをやるということが伏線としておありなので しょうか。 ○田村看護課長  本日のこの会は、本当にフリートーキングをしたいということでお願いしておりまし て、今後検討をどういう観点からしていったらいいのかということを、むしろ幅広に、 積極的にお出しいただければと考えてこの資料1を作成しておりますので、先ほどの静 脈注射の実施のことに関しても、医師の包括指示のあり方等に関しても、確かに並びが 悪いと言えば悪いわけですが、もう少しこういった観点、あるいは例えばもう少し大き な分類における整理の仕方等があるのではないかといったようなことなどもご提案を頂 戴できればと思います。 ○川村座長  井部委員、何かご意見はおありですか。 ○井部委員  先ほど平林委員がおっしゃったように、「包括指示」とは一体どういうことなのかと いうことがはっきりしないので、そこがまずポイントかなと思います。包括指示は医師 が出す指示ですので、看護の独自の機能という点で主張すべきなのか、あるいは医師は どうのように指示を出したらいいのかという方向で議論を進めていったらいいのか、そ の辺が少し迷っているところです。 ○平林委員  井部先生が最初におっしゃられた、保助看法の改正まで視野に入れるのかどうかとい う点について、少なくとも私の考えは、現行法の保助看法の中でどこまでできるのかと いうことをまず検討すべきで、その中でここまでしかできなくて、しかし実際やりたい ことは違うことがあって、そのためにはやはり法改正が必要だ、ということになるのだ と思います。この検討会でどこまで検討するかどうかはともかくとして、少なくとも現 行法の枠の中で、どこまでできるかということをぎりぎりのところまで検討するという のが、1つの議論の進め方としてはあるのではないかと思っています。  それからその包括的な指示ないし包括指示について、先ほどいろいろな考え方がある のではないだろうかと申し上げましたが、例えば先ほどの訪問看護指示書の中で10頁で しょうか、「留意事項及び指示事項」の2に「1リハビリ」「2褥創の処置等」「3装 着・使用医療機器等の操作援助・管理」「4その他」という番号があって、例えば「褥 創の処置等」にマルを付けて、それが包括指示であるという理解の仕方もあるやに私に は思われます。そうすると、先ほどの例として出された包括指示とはやや中身が違うの で、従来そういういろいろな包括的な指示の捉え方があったので、そこをきちんと整理 して、どの範囲であれば現行法の保助看法の37条の指示の中に入り得るかどうかという ことを議論するというのが、おそらくこの指示のあり方についてのポイントではないか と理解はしているのですが。 ○上野委員  訪問看護ステーションは、平林先生がおっしゃったように確かにこの指示書で仕事を しますので、ある意味の包括的指示を受けて、その中で看護婦がアセスメントしながら 対処していくという方法を取っています。包括指示では少し心配かなという対象者がい らしたときには、個別指示をいただいて仕事をしていく。ですから、ステーションの場 合はそういう意味合いで「包括指示」という捉え方を今はしているのです。 ○川村座長  いかがでしょうか。指示をお出しくださっている先生方もいらっしゃいますが。川越 先生や柳田先生などは、たぶん訪問看護にご指示をお出しいただいていると思います が。 ○川越委員  難しい話はあまりよくわかりませんので、現場の話を少しさせていただきます。この 「個別指示」と書いてあるのが、まさにいま私たちが指示を出している現状の指示書に 書かれている内容だと思うのです。その中には、例えば酸素を1分間に2リットル、6 時間投与してください。そして呼吸困難があったときには、例えば3リットルにして30 分投与してくださいとか、そういう指示の出し方をするわけなのです。かなり細かい指 示を出しています。  こちらを見ると、それをもっと幅を持った指示にしていいのではないかという内容だ ろうと思うのですが、私はいま話を聞きながらふと思っていたことは、私たちはいまそ ういう形で指示を出していますが、それが法的な意味を持って、これにしなければいけ ないという形の指示なのか、あるいは指示の形を単に私たちが変えて、こういう格好に したらいいのかということが少しわからないので、そこまで細かく決めなければいけな いということが法的に規則づけられていることなのかな、ということを少し思いながら 伺っておりました。現実はいま申し上げたような格好で指示を出しています。 ○川村座長  ありがとうございました。いかがですか、先生。 ○柳田委員  指示の出し方等については、いま皆様がおっしゃったとおりのことが行われていると 思います。そういういわゆる包括的指示をどのように捉えるかとか、あるいは保助看法 でどこまでやるかとか、そういう議論はいまからおいおい深めていく必要があろうかと 思います。  全体的なことでもいいでしょうか。全体的に眺めて私が持った印象としては、やはり 時代がこのように移り変わりまして、改めて看護とか医療を考えてみるときに、やはり 消費者である国民が、必要としている医療・看護サービスが本当に提供されているの か。どのようなニーズがあるのかということを、このあたりで供給者の視点ではなく て、国民側の視点で捉える必要があると思います。  本日のこのような在宅看護の問題は、そのような方向へシフトするということは避け られない、やむを得ない現実だろうと思いますし、またそのためにはやはり医師と看護 婦の信頼関係というか、そういう非常に緊密な連携の下に厳重な指示書、これがどの程 度どのようになるのかは今からだと思いますが、その下に施行されなければならない。 そうなると、当然医師も看護婦も、やはり法的な責任が必要となってくるのかなと思っ ています。  それともう1つ、医師と看護婦、それから患者との信頼関係に努めて、ここで問題と なってくるのはやはりちょっとした不注意が、即不幸な、重大な結果をもたらすことに なるということにむしろ思いをいたさなければならないだろうと思っています。ですか ら、そうすることによって、やはり看護婦が自信を持ち、優しさを持ち、また自覚を 持ってやっていけるのだろうと思いますが、そのあたりはやはりそのときの看護水準に 基づいて、きちんとした知識を持って、そして生涯研修を行うということでしっかりし た体制を作っていけば、可能になるだろうという感じをいま持っています。今からおい おい皆様方のご意見を下に議論が深められていくと思いますが、少しそのような印象を 持ちました。 ○井部委員  川越先生にお聞きしたいのですが、先ほど11頁の在宅酸素の例で、個別指示を今は出 しているということですが、それでは鼻カニューレ1分間2リットルという指示でまず いって、訪問看護師が「患者の状態が呼吸困難でチアノーゼがあります」ということを 電話連絡か何かしてくる。それならばこういうふうにしましょう、というようなことを いちいち指示をする。看護師が判断をして酸素流量を上げたり下げたりすることは、基 本的にはしていないということですね。 ○川越委員  私は今は、建て前の話をしただけで、現実にそう指示を出しても、特に私は、がんの 末期の方をたくさん見ておりますので、呼吸状態は変わってきますから、その都度いち いちこられたら、私のほうではたまりませんし、実際問題は、現実には現場でやってい るのは、すでに包括的指示のような格好になっています。ただ、グループを組んでい て、私の考え方を理解している方はいいのですが、やはり別の訪問看護ステーションと 組んだ時は、医師の指示を非常に忠実に受けて、忠実にやるという訪問看護婦さんたち もいらっしゃいますので、いま井部さんがおっしゃったように、いちいち報告をしてこ られることもあります。  酸素は4時間という指示になっているが、長く続いているので、例えば「6時間にし てもいいでしょうか」とか、「どうも4リットルでは足りないようなので、もう少し上 げることはできませんでしょうか」という相談があったりすることもあります。しかし 現実は、私たちチームを組んでやっているのは、この包括指示という格好で動いていま す。酸素のほうはあまり問題にならないと思うのですが、例えば疼痛のことでモルヒネ の量を変えたりするという、現実にはそちらのほうが非常にシリアスな問題なので、そ の辺をどうしたらいいのかということを、ちょっと考えているのです。 ○井部委員  11頁のこの例だけでもいろいろなことが考えられるのです。例えば高度の慢性閉塞性 呼吸不全の人ですと、2リットルという酸素の流量そのものが、ちょっと多いのではな いかと思ったり、また酸素飽和度を見たり、場合によってはガス分析をしたりする高度 な情報収集をして、現場で判断をして、それで流量を上げたり下げたりするということ を、実際にベテランの訪問看護師はできるし、また実際にやっている人もいるわけです 。非公式に今までやっている私たちの現場でのやり方を、今回この検討会で公にする、 認めるというようなことの作業が1つあるのかなと思っています。  少なくとも、この11頁の右側の「包括的指示」に関しては、決して私たちにとって目 新しいことではないわけです。現場で行われていることが、建て前と本音がかなり乖離 している部分があって、本音の部分を公にして承認していくというような作業をやるの が、この検討会の1つの役割かもしれないというふうにも思います。 ○川村座長  まだこのことについてご意見がおありでしょうか。 ○國井委員  私自身も臨床にいた時に、プロトコールだとか医師の包括的指示で、実際はかなりな 判断と行動で、看護職がいろいろな役割を担っている実態は承知しているのですが、そ れがすべての病院ではないし、そういうことをされている病院は、ナースがきちんと医 師に異を唱えることもできるというような、わりと自立している組織であるから、そう いうことをある程度されているのだと思うのですが、日本全体の中で、看護職の教育が 高低があり、またいろいろなことがある時に、新たな看護業務を考える場合、その辺の ところをしっかり押さえながら検討していくことが、すごく必要だということをまず第 1番に思いました。 ○川村座長  いまのことは、実際に行っている看護婦の能力とか、その背景になっている教育だと か訓練だとかを前提とした上でということですね。 ○國井委員  はい、そうです。 ○川村座長  この指示のことについては、きっとまた何回目かでしっかり話が出るのではないかと も思いますが、先ほどの柳田先生のお話から、やはり国民のニーズに合わせて、国民の 側から見たサービスというふうな、新しいといいますか、提供側とは違うスタンスのご 提案もいただきましたが、どなたかそういうスタンスのご意見はありませんか。 ○宮武委員  私は、この中で唯一医療のことは何も分からない男ですが、むしろ先にちょっとお聞 きしたかったのは、15、16で、病院の医者の認識と、16頁は看護管理者の、これも病院 の方の認識というのが1つの考える材料として出ていますが、逆に訪問看護ステーショ ンなどが、これからこの種の問題に直面するところだと思いますが、訪問看護ステー ションにおいては、看護師自身に薬剤の知識であるとか、あるいは法的責任能力とか、 そういうことをお聞きになった調査はないのでしょうか。 ○田村看護課長  確認させていただきます。 ○川村座長  では、それはちょっと調べていただくことにして、すぐに正確なものが出ないとすれ ば、次回にお示しいただくということにして、そのほかのことでいかがでしょうか。 ○上野委員  訪問看護ステーションの立場からお話をします。訪問看護ステーションが、実際に指 示があって静脈注射、点滴等を行う場合、ほとんどは脱水の改善とかという単身のもの であったり、薬剤知識といえば、例えばブドウ糖であるとか、生理食塩水であるとか、 そういったもので、中にいろいろなものが混入されていないものを受けてしているのが 現実です。ステーション側としては、いま先生がおっしゃったような、では薬剤はどう だとかいう質問は、事業協会等では調査をしてはいないのですが、実務としてはそう いったことは聞かれていますし、実際に医師からも、例えば老人の終末期になった時 に、病院に入院させるよりは、単身の点滴をということで、初回は医師がもちろん行う わけですが、次回からは医師の指示の下に看護がというようなことはあります。 ○田村看護課長  宮武委員の先ほどのご質問ですが、主任研究者のほうからの報告ですと、実は訪問看 護ステーションに当初配布をした調査票の回収率が大変悪いということがありました。 しかし、私どものほうから、ステーションの静脈注射の実施状況についての調査をどう してもやっていただきたいということで、当初の調査票とは違う、もっとコンパクトな 調査票を再度送って、回収をしたということがありました。それは医師、看護管理者と は、調査票の構成も若干違っています。ですから、「法的責任があると思うか」といっ た項目は入っておりません。ただ、法的規制があるということで、実施を躊躇している という理由を挙げているステーションの方々はいらっしゃいます。 ○川村座長  現段階の回答ということで、よろしいですか。 ○宮武委員  結構です。 ○川村座長  いまのことでも、これだけ資料がありますので、別のことについてのご意見でも、新 たな課題でも結構だと思いますが、いかがですか。 ○内布委員  教育の立場から言わせていただきます。静脈内注射の場合は、採血等はも ちろんずっとしておりますので、技術的にはあまり問題はないと思うのですが、いま上 野委員からご発言がありましたように、内容が基剤である場合は特に問題はないが、内 容が状態の急激な変化を予測されるに至るような内容であるような場合は、やはり看護 婦はやらない。これは、訪問看護ステーションだからというわけではなく、病院でもそ れはやらないほうが国民の利益にはなるだろうと思います。薬剤の範囲ですが、その範 囲をある程度は決めないと、もしこれを認めていくということにしても、今の教育、薬 学、薬理学、薬理動態等々に関しては、そんなにたくさん時間を割いているわけではな い。在宅だとか、そういうものは今、必要度にかられてカリキュラムが増えてきました が、薬学の知識を増やすという話は、今のところあまり出ていません。  アメリカの看護教育では、薬学に関しての時間数はかなり多い。日本の看護のカリ キュラムの倍ぐらいはやっていると思います。向こうは、ナースプラクティショナーが いて、処方権を持っていまして、医者と同じように処方ができるということがあるから 当然だと思いますが、かなり多いのです。そうすると、どの範囲の薬剤をということを 決めると同時に、教育の中ではどこまで薬学、薬理動態、そういうことをきちんと押さ えていくのかということも、同時に話し合わないと、成り立たない話かなというふうに 思います。 ○川村座長  藤上先生、薬剤のお立場から何かご意見があればお聞かせください。 ○藤上委員  実際的なことではないかもしれませんが、医療の質と安全を担保するためには、チー ム医療ということが今、非常に重要視されています。チーム医療というのは、ある意味 ではお互いが相互監視をする、相互批判をする、あるいは相互補完をする、というよう なことで質と安全性を担保しているのではないかと思うのです。しかし、日本の医療現 場というのは、まだ相互批判とか相互監視とか相互補完といったことが出来る土壌には なっていないのかなと思うのです。  もう1つは、医療をチームでやるということは、ある意味で非効率的、あるいは利便 性に欠けるということがあるのですが、それがまた質と安全性を担保しているのではな いかと私は思うのです。そこを踏まえて、今回はナースの方の業務の検討会ですが、医 療に携わる者全般的に、業務のあり方を考え直していく時期なのかと思っています。医 療において利便性とか効率性とかということを求めていくことは、必ずしも質の向上と か安全性の向上に結びついていかないということを踏まえて、慎重に検討していただけ たらと思います。 ○西澤委員  病院団体の代表として出ております。職種から見ると看護職の観点、医師としての観 点、いろいろあると思います。それと、我々は病院を経営しているという、組織として の観点があると思います。それで、いま話を聞いていて、どう整理をしようかと実は 迷っているのですが、先ほどから議論がありますように、今は、これだけ時代が変わっ ている。サービスそのものが変わっている。それに対応するために医療サービスはどう あるべきか、その中で看護業務はどうあるべきかという観点で、まず考えるべきだと思 います。  その中で、片方では法律というものがある。今の法律の範囲内でどこまで考えられる か。法律を改正しなければならない場合もある。その論点も検討しなければならない。 この議論の中で、非常に発言しづらいのは、井部先生がおっしゃったとおりなのです。 現在やっていることで、もしかしたら法に抵触しているかもしれないと思うと、なかな かこの場では発言できない、その辺りがきちんと議論されないと、もしかしたらここで の整理ができない。今後、どういう委員会にしていくのか、この議論を最初にしていた だいたほうが、私たちも発言しやすいかなという気も片方でいたしました。 ○中村審議官  間違っていたら修正していただきたいのですが、資料の20頁をご覧いただきたいと思 います。例えば、井部さんのご質問で、なぜ静脈注射の実施がここに出ているかという 設題があったわけですが、この厚生省の医務局長の通知は、三重県からご照会があった 時に、静脈注射が保助看法37条との関係でどうなのかというふうに聞かれているわけで す。その時の回答が、1.静脈注射は本来、医師または歯科医師自らが行うべき業務で あって、保健婦助産婦看護婦法に規定する看護婦の業務の範囲外だと。ここでとにかく 問答無用で、保助看法の問題ではないと。これは誰が決めたのか知りませんし、どうい うメルクマールで判断されているのかは知りませんが、これは保助看法の外の話である と、こういう行為として昭和26年の整理があるわけです。  したがって、看護婦が静脈注射を業として行った場合は、医師法17条に抵触する、こ れはもう法律違反だといっているわけです。先ほどの資料の実態を見れば、現場ではそ んなことはないわけです。ここは裂け目がある。先ほどの武田さんの説明ははっきりし ませんでしたが、どうなんだというふうに自問自答しているというふうに、まず考えて いただく必要があるのではないかと思います。  2つ目のお話は、「なお」というところで20頁に書いてありますように、保助看法の 37条の規定は、看護婦の権能の範囲内においても、特定の業務については医師または歯 科医師の指示がなければこれを行うことが出来ないというので、では指示とは何なの か。先ほど包括的指示は何だというお話がありましたが、どういう指示なのかというの が問題になる。これはもう50年以上前の話ですが、自分で言うのも変ですが、いまだに 厚生労働省はこれで動いていると言い張っているわけです。  50年経って、医療界も変わった。そういう状況の中で、訪問看護というような新しい サービス形態も、ここ10年導入されてきているとか、院内の業務も非常に高度化してい るとか、他方、医療安全の話もあるとか。また、患者本意の医療と考えた場合に、こう いう解釈の仕方、こういう法解釈なり、こういう整理の仕方が医療サービスの向上とい う観点から、今の時代に合っているのだろうか。こういうことを検討していただきたい ということなのです。  私が理解していますのは、武田さんや看護課長から教育されて、審議官としてここに 座っていますのは、そういう思いで座っているので、間違っていたら直していただきた いのですが、そういう問題設定だと思うのです。看護業務の外だといわれている業務が あるという整理ですから、その整理をどういう観点でどうすればいいのかという話なの です。これは、法改正の話というより、何よりも解釈の問題ですから、あまりそんなこ とにビクビクしないで、ここでお知恵を拝借と、こういうことを言っているわけです。 是非、問題の所在を整理していただきたい。  1つは、どんなに良い指示があっても出来ないといわれている問題。もう1つは、い ろいろ仕事をしていく上で、患者の対応もさまざまで、在宅でがんの治療を受けている 方もいる。そういう状況の中で、どういう医療サービスがあり、それが医師、看護師、 さまざまな医療職種の中で、ここはたまたま看護業務のあり方ですから、看護師の立場 として、看護師の方々の能力を最大限に発揮させ、効率よく、かつ質を担保して、しか もチーム医療として齟齬を来さないような看護のあり方はどうなのか、という問題設定 であります。検討課題がこれではまずいというのであれば、いくらでも直しますが、そ ういう意味だということで、ご理解いただきたい。  静脈注射と訪問看護と指示のあり方、そのために推進する方策として、プロトコール の策定等々が入っている、あるいは教育の問題が入っているというふうにご理解いただ きたいと思います。先生方のご意見で、どうしても勘弁できない、法律を直せという結 論を出していただきましたら、私どもはそれを受けて、やれるかどうかは実際的な問題 もありますし、法律改正という手段が正しいのかどうかということも含めて、それは実 務家として私どものほうで考えさせていただくということになろうかと思います。 ○内布委員  これは保助看法の問題なのか医師法の問題なのか、どちらでしょうか。 ○中村審議官  それは整理の仕方はあるかと思いますが、縦の両面ですから、あまりそこを考えてい ただかなくても、まず保助看法の問題としてやっていただいてかまわないのではないか と思います。 ○内布委員  保助看法で良しといい、医師法で駄目といったらどうなるのですか。 ○中村審議官  保助看法で良いとも悪いともいっていませんし、医師法で良いとも悪いともいってお りませんので、そこの線引きを解釈権のある厚生省医務局長がしているということで す。どんなに法律を書いても、必ず全部は書き切れませんから、誰かが解釈をする分野 があります。それは、行政的には看護課なり医事課が持っておりますし、それを統括し ているのは、今の組織では医政局長ですから医政局長がやる。しかし、最終的に判断す るのは裁判所だと思いますので、裁判所でその適否は判断されると思います。  いずれにしても解釈が残ります。この問題は解釈の問題だということで、静脈注射が 医師の業務だと、法律に書いてあるわけではないです。そんなことを書き出したら、医 行為か医療行為かは分かりませんが、あらゆるものを書いていかなければならないとい うことになって、それは出来ませんので、どこかで解釈の余地は残るわけです。その解 釈を昭和26年に厚生省はしたということです。そして、その解釈は直されていないとい うことで、その経過を説明したわけです。38年に当時の担当者が直すことも考えたが、 直さなかったと書いてあるわけです。 ○川越委員  これは時効みたいなのがあるのですか。現実には、今のところは無視とはいいません が、何か我々としては、こういうものがあると魔法をかけられたようなものですから。 ○中村審議官  やはり、現場にとっても行政制度、法律制度としても良いことではないですね。です から、ないと思います。だからみんな迷いがあったりするのだと思います。確かに魔法 だか何だか知りませんが、そういうものが解釈はされているわけです。 ○川越委員  私が医者になってある病院へ行った時に、静脈注射か何かの指示を出したら、これは 医者のやることだからと看護婦ににらまれたことがあるのです。当時は、かなりそのこ とでピリピリしたようなことがありましたが、最近はそういうことがなくなったので変 わったかなとも思うのですが、いま話を伺っていて、昭和26年度の医務局長のこの通達 が生きているということは、我々としては安心して医療ができないという感じがありま す。多分、そういうものを改めるためにこの委員会が開かれたと思うのですが。 ○中村審議官  あらゆる行為について、実はどっちかという話があると思うのです。たまたま聞かれ たから答えているというところもあると思うのですが、地雷みたいなもので、事件に なった時に「それは困る」ということですね。日ごろ踏んでいるはずなのですが、爆発 していないだけということもあるかと思います。そういう考え方が1つあるかもしれま せんし、先ほど井部さんがお話になりましたように、そういうことというのは、ある意 味で現場できちんとやられているわけで、それを黒白つけることは、現場を混乱させる ことになるのではないかというのが、井部さんが言われたことではないかと思うので す。 ○井部委員  私は公にしたほうがいいと思っているのです。 ○中村審議官  しないほうが良いという人もいると思うのです。そこの問題になると思います。 ○武田企画官  私の資料説明が言わんとすることがなかなか言いづらい部分もありまして、分かりに くかったかもしれませんが、法律の解釈をして、現場をそのとおりに指導するというの も役所の仕事ですが、逆に現場に合わない解釈を、その現場に合わせて適宜直していく というのも、私はやはり行政の仕事ではないかと思っています。本日の資料で説明いた しましたのは、訪問看護というのは平成4年にスタートしているもので、その後に法律 でも在宅が医療の場所だということが位置づけられているわけで、それにもかかわら ず、いくつか法解釈を直さずにきているところがあります。これが実際の現場の妨げに なっていないかどうか。今日は資料でお出ししていませんが、病院の場合は病院の院長 が最終責任をとるということですが、訪問看護ステーションになり、所長が責任を持つ といった時に、やはり訪問看護ステーション側で法律論になった時にどうするか、とい うところで躊躇がある。それがゆえに、もし在宅医療が進まないということであれば、 それは解釈の問題なのか立法論の問題なのか、いずれにしてもここで議論をして、問題 を明らかにし、解釈の方向を考えなければならないということではないかと思います。  静脈注射は1つの例としてお出ししていますが、ほかに似たようなことがあるかもし れないので、その点も踏まえて、広くご議論をいただきたい。検討会のタイトルが非常 に幅広くなっておりますし、冒頭に大谷課長のご挨拶の中にもありましたが、大臣の指 示で始まった検討会で、その中ではやはり看護職が自分の判断でやれることを非常に狭 く解釈されているが、どこまでやるか、まず明確にしろというようなことが書いてあり ます。明確にするというのは、広げるとか狭めるとか、解禁するとかいうこととは、若 干違うような気もいたします。もし明確にすることで現場がうまく進むのであれば、そ れはそれで1つの検討結果としての成果だと思います。それが法解釈なのか、例えばこ この報告書として明らかにすること自体でもいいのかもしれませんし、こちらとしては 役人的な資料をお出しするしかないわけですが、それにとらわれずにご議論いただけれ ばありがたいと思います。 ○川村座長  幅広くご意見をいただければ幸いです。 ○川越委員  現場の話をさせていただきます。マスコミの方がいらっしゃるというので、こんな話 をしてもいいのかなと思っているのですが、やはりどこまでやるかということは、1つ どうしても在宅の場合はディレンマとしてあります。例えば、点滴のことでも、いわゆ る末梢血管を使った点滴というのは、非常に複雑なことをやった場合は別ですが、事故 というのはほとんど起きないと考えていいわけです。例えば、中心静脈栄養などという ことをしばしばやるわけです。大体、末期がんの方は1割ぐらいの方は中心静脈栄養を やっていますが、これはできるだけ安全にいくように、シンプルな形で看護婦さんたち にお願いしているわけですが、やはり見ていてやり方によってはこれは事故が起きるな というのがたまにあります。  先ほど審議官のほうから地雷源があって爆発しないだけだという話がありましたが、 まさに本当にそのとおりだと思います。爆発するとしたら、点滴の問題に関していった ら、中心静脈をやって何かトラブルが起きた時ということが考えられる。また、先ほど 井部さんがおっしゃっていた高度の呼吸困難があるような方について、在宅でやるにし ても、特殊な力を持った人たちがやるようにしないと、普通の所でやるということを、 もし一般的な形で「出来ますよ」というような格好にすると、逆にそのことが何かトラ ブルが起きた時にやっぱりまずいじゃないか」ということになる恐れが非常にある。私 たちは、規制緩和をすると同時に、もし中心静脈栄養とか、呼吸困難のレスピレーター を使ったような管理をする時は、在宅でもできるだけトラブルが起きないような形にし ていく、ということを考えていかないといけないと思っています。  私が現場で見ていて、例えば中心静脈ができる、看護婦たちも管理ができるというこ とではなくて、それが安全にできるという形に、やはり看護婦の資質を高めていかなけ ればいけない。教育とか、あるいはどういう形で質を保障・維持していただけるのかと いうことが大きな問題としてあるわけですが、これを中心静脈の管理は誰でも出来るん だというような格好でやると、折角いい形で普及してきている在宅ケアの、自らの首を 締めるということにもなりかねないので、その辺のこともしっかり議論をしていただけ れば、知恵をお借りして、良いものを出していただければと思っています。 ○上野委員  いま川越先生がおっしゃったように、確かに訪問看護制度が始まった時は、介護を中 心とした訪問看護というキャッチフレーズだったと思うのですが、健康保険法の改正 後、また今の早期退院のことから、すごく医療依存度が高い方が在宅に帰ってきている のが現状です。そうすると、どうしても医療的ケアが多くなる。パーセンテージでは 17%ぐらいと、介護保険対象者との差はありますが、その人たちのケア度はすごく濃密 だということ。また、難病の方が呼吸器をつけて帰ってきますので、そういう方たちの ケアはもちろんしなければいけない。静脈注射にしても、点滴のみならず、気管カ ニューレの交換とか、いろいろそういった医療処置があります。指示を出される先生 は、ある程度任せていただけるような感じの指示を出してくださるのですが、中には先 生方が医師法をタテにして、指示を出されないということもあって、先ほどの国民の ニーズにといった時、本当に何が利用者のためになるのかと考えていくと、今やろうと していることが大きく変化をしていけばいいなと、在宅を担当する者としては思いま す。 ○藤上委員  川越先生がIVHの管理が難しいということをおっしゃったのですが、具体的にどう いうところで問題が出ているのでしょうか。うちの場合も、在宅でのIVHというのは かなり進めていて、薬剤部が管理をしてやっているのですが、患者の教育と家族の教育 と、薬液をきちんと薬剤部のほうで作るということを徹底すると、かなり危険性は少な いのではないかと思っているのですが。 ○川越委員  具体的な話になってしまうのですが、ご存じのようにIVHというのは、中心静脈ま で入れますので、どうしても陰圧になります。ですから空気塞栓というのが非常に怖い わけです。点滴のラインのとり方によっては、空気塞栓が起きる可能性はすごくある。 三方括栓を使ってラインを組んでしまっているので、三方括栓が外れた時にどうなるか ということは考えていなかった。これは私が作ったラインではないのですが、事故は起 きませんでしたが、1,000例ぐらいやったら1例か2例起きる可能性は十分あるわけで す。ですから、そういうことも含めて、きっちりやっていかなければいけないというこ とだと思います。 ○藤上委員  在宅でのIVHというのは、当院の場合は三方括栓は全く使わないという形でやって います。なるべく簡単に、患者あるいは家族、あるいは訪問看護に行った方たちが管理 しやすい形で、という形でやっています。 ○川越委員  それは病院のやり方をそのまま踏襲したのですね。そういうこともあるということな のです。 ○西澤委員  いろいろな問題があると思います。今の問題は、IVH自体の問題よりも、やはり包 括的指示を出して看護婦がする時に、看護婦がそれが出来る技術と、きちっとした判断 が出来ないとできないという話だと思うので、そこに教育というものがあるというのが さっきの話だったと思います。確かにそれはそのとおりなので、そういうことをやはり 片方で考えながら、この包括的指示というものを私たちは議論していくべきだと思いま す。 ○川越委員  現場のほうとしては、法律といいますか、公に認められていないことをやるというの は、かなり勇気が要るのです。例えば、一昨年でしたか、モルヒネの皮下注射に風船式 のバルーンを使ってもいいという通達があって、実はあれによって現場はものすごく救 われたといいますか、やってもいいんだということをいただいたので、ものすごく心を 強くしたことがあるのです。私たちとしては、例えば痛みのために入院しなければいけ ないということは、やはり避けたい。痛みも家で十分コントロールできるんだというこ とをやりたい。それは患者が家で最後まで過ごしたい、家族も最後まで見たいという気 持に応えるためのことですので、そういう時に、厚生省のほうから1つ地雷を撤去して いただくということは、すごくありがたいことなのです。現場では、疼痛緩和1つのこ とについても、これをやっていただけたらありがたいというのが結構あります。 ○川村座長  ほかに、地雷として挙げられることは、例えばどんなことがありますか。 ○川越委員  1つは、やはり疼痛緩和の件で、痛みの緩和は難しいケースはどうしても微妙な調整 をしなければいけない。ですが、今は調整できるものを家で使ってはいけないという1 つの縛りがありますので、あれを何とか検討していただきたいと思っています。また、 患者が亡くなった時に、余ったモルヒネをどうするかというのが、実は現場では非常に 大きな問題なのです。一応マニュアルが出来ていて、私の所では全部院外処方でやって いますので、モルヒネがうちにあるということはあり得ないのです。しかし、現実に患 者が亡くなって、余ったモルヒネ、例えばカディアンという経口の徐放剤が余った時に それをどうするかというと、原則は患者の家族がどこか薬局へ持って行き、薬局で処分 していただくということになるわけですが、そういうところも、その廃棄をもう少し簡 単にしていただけないかということを思ったりするわけです。  また、薬の搬送の問題も、実は非常に大きな問題で、ここに法的な事例が書いてあり ましたが、現実にがんの患者が1人いて、家族はおばあさん1人しか見ていないという ことが結構あり、薬をとりに行くのがなかなか難しいことがあるわけです。特に、急に 痛みが出てきた時、坐薬を届けなければいけない。取りに来てもらうわけにはいきませ んので、現実には看護婦が急いで処方箋を薬にかえてもらってそれを持って行くという ことが普通に行われているわけです。私は勉強不足で、その辺はいいと書いてあるのか もしれませんが、そういうことをはっきり保障していただければ、非常にありがたいと 思っています。 ○藤上委員  いま、麻薬を届けるというような話ですが、居宅療養管理指導というのが薬剤師には あり、法的に整っていますが、薬剤師が処方を受けて調剤をして届けるということは、 かなり行われつつありますので、そこのところは利用していただけるかと思うのです が。 ○國井委員  持続注入などもできるのですか。 ○藤上委員  そうです。持続注入も、病院のほうで例えば5日間ぐらい詰めて持って行って皮下に 入れるということなのですが、それは出来るようになっているはずです。もう1つ、持 続皮下注に関しては、基本的な流量は決められますが、患者の痛みに合わせて使いすぎ ないような形にはなっていますが、ワンプッシュで追加ができるような形にもなってい ますので、そういうことを利用していただければいいと思います。内服に関しては、ま た問題は別かとは思いますが。 ○川越委員  いまのことは、十分よく知っていまして、そういう意味からいうと確かに一昔前と比 べると、薬剤師が服薬指導という形で届けてくださって実際にやるということで、確か に在宅の幅が広がって、これは本当にありがたいことです。ただ、薬剤師が行けるの は、月2回まで保険請求ができるというのが決まっていますので、突然の場合はなかな か難しい。そういう時は、どうしても薬剤師以外の方が動かなければいけないというこ とが現実にはあるわけで、そういう時はどうしたらいいかということを申し上げたので す。 ○藤上委員  今回の診療報酬の改定で、介護のほうはまた別ですが、医療のほうの居宅療養の患者 に関しては、在宅で4回まで出来るという形になりました。 ○川村座長  大変活発に、核心を突いたご意見をいただいたと思います。整理をするのが大変かも しれませんが、うまく整理をしていただければいいなと思っております。今回は、第1 回ということもあり、フリートーキングで資料を題材として、いろいろなご意見を幅広 くいただくということにいたしました。たくさんのご意見をいただきましたので、これ をうまく整理して、次回は詰めた議論ができればいいと考えております。今回、もう一 言いっておきたいということがおありでしたらどうぞ。 ○上野委員  初めに申し上げればよかったのですが、資料1は、検討課題「訪問看護の推進」とい う大きなタイトルになっています。資料2の1頁に訪問看護ステーションの現状が載っ ていますが、平成11年度で5,000カ所、それを平成12年にクリアしたのです。平成14年度 になって、実はそんなに伸びなくなり、逆に休止、中止というのが増えてきている現状 があります。その背景はというと、やはり看護婦不足が大きなウエートを占めていま す。よく事業協会のほうにも、休止したいとか、中止したいという電話があります。 「どうしてですか」と聞くと、看護職がいない、働く者がいないので、休止せざるを得 ないという話です。在宅療養を支えていこうという訪問看護ステーションなのですが、 そこが支えることが難しいのかなと、いま危惧している状況なのです。「訪問看護の推 進」といった時に、そこら辺も加味しながらやっていただければと思いました。 ○川村座長  訪問看護師の供給という話ですね。 ○井部委員  検討課題で、「訪問看護における医師の包括指示」と、「医療機関における医師の包 括指示」というのは、項目が分かれていますので、別のタイプの包括指示を検討するよ うに見えますが、私は基本的には、医師の包括指示というもののあり方について、訪問 であろうが医療機関であろうが、分離することなく検討していただくのが良いのではな いかと思います。在宅の包括指示と医療機関の包括指示が異なりますと、結局教育の問 題にも関係してきます。熟練した看護師を、在宅用と医療機関用と別々につくらなけれ ばいけないというのは、効率的にはあまりメリットはないと思います。 ○川村座長  それでは、これを整理していただき、次の討論をうまく進められるようにお願いした いと思います。事務局から次回の日程についてお願いします。 ○勝又補佐  先生方には、8月までの予定をいただき、事務局で調整させていただきまして、第2 回の検討会を6月24日(月)の4時から開催したいと考えております。3回目の会は、 7月24日(水)の午前10時から、第4回目は8月19日(月)の午後2時からということ で、場所等が決まり次第、別途正式なご案内をお送りさせていただきたいと思いますの で、よろしくお願いいたします。 ○田村看護課長  2回目、3回目のどちらになるか、まだはっきりいたしませんが、昨年来、この検討 会に向けて、諸外国における看護師の業務がどのようにいま変化してきているかという ことを、厚生科学研究で取り組んでいただいているものがございます。間もなくそれが ある程度まとまって、皆様にご提示できるようになるだろうと思っておりますので、そ ういった会も、早い時期に持たせていただきたいと考えているところです。 ○川村座長  ありがとうございました。それでは、これで第1回を終了させていただきます。長時 間ありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局看護課 課長補佐  勝又(内線2599) 保健師係長 習田(内線2595) ダイヤルイン 03-3591-2206