02/05/17 第2回少子化社会を考える懇談会議事録        第2回少子化社会を考える懇談会 <議事録> 1.日時  平成14年5月17日(金) 10:00〜12:00 2.場所  厚生労働省省議室(中央合同庁舎第5号館9階) 3.出席者  <メンバー> 木村尚三郎(座長)、山崎泰彦(座長代理)、青木紀久代、安達知子、大越将良、 大日向雅美、奥山千鶴子、柏女霊峰、熊坂義裕、玄田有史、小西秀樹、 酒井順子、佐藤博樹、残間里江子、清水ちなみ、白石克子、津谷典子、 水戸川真由美、山田昌弘 (敬称略)  <厚生労働省> 狩野副厚生労働大臣、渡邊厚生労働審議官、石本政策統括官(社会保障担当)、 坂本政策統括官(労働担当)、岩田雇用・均等児童家庭局長、河社会保障担当参事官、 西村政策企画官、佐藤国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長 4.議事内容 木村座長  まだお見えになっていない方もいらっしゃいますが、定刻になりましたのでこれから 第2回少子化社会を考える懇談会を開催させていただきます。  お忙しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。  本日は明治学院大学の黒澤助教授と日本青年会議所の松本会頭が御欠席でございます 。また、坂口大臣、宮路副大臣、田村政務官につきましては、本日、健康保険等改正法 案の国会審議のため、やむなく御欠席でございますが、後ほど、狩野副大臣が参議院本 会議終了後に御出席なられる予定と伺っております。  次に前回、第1回の懇談会に欠席されましたメンバーの方々を御紹介させていただき ます。まず、エッセイストの酒井順子さん。東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さ ん。コラムニストで「OL委員会」主宰、清水ちなみさん、清水さんはまだお見えにな ってませんね。よろしくお願いします。  それでは議事に入らせていただきます。  本日は少子化の要因と少子化社会に対する認識、経済社会全体のあり方について議論 をいたしたいということになっております。まず、事務局から資料の説明をお願いしま す。 河参事官  社会保障担当参事官の河でございます。よろしくお願いいたします。資料1から資料 5の5つの資料につきまして、20〜30分いただきまして私どもから御説明させてい ただきます。  私からは、冒頭の資料1「少子化要因と主な対策に関する整理」について、これまで の御議論、前回お出しさせていただきましたが、それに基づく全体のアバウトな整理と して、これまでこんな感じで行われてきた、というのをつくらせていただきましたので 御説明いたします。  その前に資料6として、分厚いものをお出ししておりますが、前回のときに、先生方 の御意見、お考えを是非紙に書いていただけないかというわがままなお願いをさせてい ただきましたところ、ほぼ全員の方から御意見を頂戴いたしました。それぞれ多くのこ とをおまとめいただき、お書きいただいたことを厚く御礼申し上げます。少子化の要因 につきましても、また次回議論をする予定でありますその背景、あるいはこれからの考 え方等々につきましても、あるいはこれからはこういうことをやるべきではないかとい うことにつきましても、かなり広範にいただきましたことを厚く御礼申し上げます。  昨日までにいただいたもの全部読ませていただきまして、このような形でお配りさせ ていただいたところでございますが、皆様方にも恐縮でございますが、ほかの方々の御 意見ということで次回までにお読みいただければ有難いと思います。  また、このような形のものをこれからの御議論も含めて併せて御審議いただく中で、 秋の中間まとめと方向への議論もできるのではないかと思っております。  当たり前のことですが、御意見違っている部分も、あるいは全く反対の御意見もある わけですが、そういうことを含めて御意見いただくことが大事なことではないかという ことを思いましたので、併せて資料6についての御礼を申し上げさせていただきます。  それでは、戻りまして、資料1ですが、前回お出しした大部な資料、人口問題部会で の御議論等から「少子化の要因と主な対策に関する整理」として、これまでのものとい うことで、特に要因について、どんなことがどんなことが語られてきたかというのを頭 の整理のために御紹介させていただきます。  少子化の要因として、これはこれまで何回も言われてきたことですが、未婚化・晩婚 化の進行。そして、今回指摘されている夫婦の出生力の低下ということが人口的な議論 としてはここがポイントになっているわけですが、この要因となる背景についてもこれ まで多くの議論がありまして、私どもなりのまとめ方ですが、  1つは、個人の結婚観、価値観が変化してきたことが大きな少子化の要因の背景なの ではないかという部分で、例えば、結婚に対する考え方、結婚生活を営むことへのため らい、あるいは老親扶養に関する意識の変化、いわば意識の面です。それから、世間の こだわりが少なくなったということからの変化というものがあるのではないか。  2番目に、子育てと仕事の両立の負担感ということで、先ほどの資料6のレポートの 中では、子育てと仕事の両立ということより、生活と仕事の両立ということではないか 、という御指摘もありますが、就業の継続と雇用環境ということが指摘されているとこ ろです。右側に、今日の御議論には直接関連しませんが、これまでこういう背景からこ ういう施策が必要ではないか、こういう施策をとったらどうかということがいわれまし て、また、現在行われている施策にはどんな施策があるかを備考として参考までに書い ております。これにとらわれる必要は全くございませんが、育児休業を取りやすい職場 環境の整備等がこれまで主な施策として行われているところです。  3番目は、職場優先の働き方ということで、いまはどちらかというと、子育て中心の ポイントでしたが、仕事全体、男性、女性問わず、子どもを持っている、持っていない を問わずということですが、職業生活と家庭生活の両立を妨げている部分があるのでは ないかということです。右にこれまで行われている施策を書かせていただいております が、ファミリーフレンドリー企業の促進等々も行っているところでございます。このへ んの部分についても、繰り返しになりますが、皆様方がお書きいただいた中に触れられ ていることで、なるほど同じような部分もあるなと思った部分もありましたが、とりあ えず、これまでの議論の整理ということで書かせていただいております。  4番目に、産み育てることの心理的・肉体的負担・不安感ということで、都市化、核 家族化で子育てに対する不安感、孤立感、あるいは家庭における子育ての心理的、肉体 的負担等々のことが指摘されています。また、子育ての持つ楽しみや喜びがどうもうま く伝わっていないのではないか。むしろ難しさばかりが伝えられているのではないかと いうことも指摘されています。また、これは多くの方々が今回のレポートでお書きにな っているところですが、育児サービス需要への対応の問題があります。  5番目に、子育てのコストが高くなっている。特に教育費等の子育てのコストが大き いという御意見が、これまでも各種意見として出ており、人口問題審議会での御意見で も出ているところです。具体的なコストというより、結婚や子育てを選択することによ り失われる利益、広い意味での機会費用が上昇しているのではないかという御指摘があ ります。 6番目は、社会保障のあり方ということで、これまでの部分では必ずしも明 解に出ている部分ではありませんが、社会保障では高齢者関係費用に比べて子育て支援 関係の費用が著しく低かったのではないかという御指摘もあるところです。  7番目は、その他ですが、これまでも多様な御意見が出されているところでして、そ れらをいくつか列挙しているところですが、あるいはこのその他こそがほんとじゃない かという御議論もあろうかと思いますが、固定的な男女の役割分担意識の問題、あるい はバブル崩壊後の景気低迷の中での将来に対する不安の問題が指摘されているところで す。  以上、これまで言われてきたことを頭の整理として、少子化の要因となる背景という ことでいわれてきたものを私どもなりにまとめさせていただいたものでございまして、 これまでこんなことをやってきたというのが右側の備考に書いてあるというものです。  繰り返しになりますが、資料6でお書きいただいたもの、この中には入れておりませ んが、御指摘されていることが重なっている部分も多々あるのかと思いました。  以上で資料1についての説明を終わらせていただきます。 西村企画官  政策企画官の西村でございます。引き続きまして資料2でございますが、資料1の整 理のもとになった過去の報告書などにおける少子化要因の分析の部分の抜粋でございま す。資料2の最初のページは、平成6年のいわゆるエンゼルプランというもので、エン ゼルプランでは、少子化の要因の背景ということで ○子育ての仕事の両立の問題 ○ 育児の心理的、肉体的負担 ○住宅事情 ○教育等の子育てコストの増大という4つの 要因に対して、どういう対応をするかといった、要因と対応を整理したものです。  2枚目は、平成9年の人口問題審議会の意見書でございます。これは時間をかけて少 子化の要因の背景について分析をしたもので、資料1の多くはこの人口問題審議会の報 告から引用しておりますが、人口問題審議会では少子化の要因の分析と、少子化の影響 の分析に分けて、それぞれについての対応という構成になっていますが、ここでは要因 の部分の分析を整理しております。  3枚目は、平成10年の少子化への対応を考える有識者会議の提言でございます。この 有識者会議におきましては、各界での取り組み、必ずしも政府だけではなく、民間各層 で取り組む対応を検討するということに重点がおかれましたので、要因分析の部分につ いては詳細に整理されておりませんが、ここにあるようなトーンで整理されているとこ ろでございます。  4枚目は、平成11年の少子化対策推進関係閣僚会議の「少子化対策推進基本方針」で して、これが現在最新の少子化対策の体系になっていますが、要因については、仕事と 子育て両立の負担感、子育てそのものの負担感の増大ということで整理をし、各省の対 策を網羅する形の報告になっております。  次に資料3ですが、外国では出生率の動向がどうなっていて、その要因としてどうい ったことが指摘されているかというものです。1枚目が各国別に表にしたもので、2枚 目はグラフです。これを照らし合わせながらご覧いただければと思います。  まず、60年代半ば以降、欧米先進諸国で出生率が低下している、というのは共通の傾 向でして、ここに書いてありますような原因によって軒並み出生率が下がっているとい うことですが、80年代半ば以降、国ごとに出生率の動向が大きく異っています。この 表は左から、アメリカ、フランス、イギリス、スウェーデン、ドイツ、イタリアと並ん でおりまして、現在出生率の高い順に左から右へ並んでいるわけですが、それぞれの国 の中で、高水準か低水準かということ、上昇傾向であるか横這いないし下降傾向である かというのは、かなり違いがあります。  アメリカで申し上げますと、基本的には80年代以降の出生率は非常に高い水準で、 かつ上昇傾向にあるということですが、要因としては、これまで婚外出生率の上昇とか 、晩産化は進んだけれども、いわゆるキャッチアップ現象によって出生率が上がってい るということがいわれています。  フランスでは、比較的高水準であり、かつまた近年上昇傾向ということですが、よく 言われているのは、婚外出生の増加、計画出産などです。フランスでは家族政策、人口 政策が積極的に行われているということがいわれていますが、この効果については出生 率を底支えする効果があるという指摘はあるけれども、上昇させる効果は限定的という 研究が多いという、フランスの人口学の分析結果はありますが、家族政策との関係はど うなのかということは議論になっているところです。  イギリスも比較的高水準で推移しており、これは十代の未婚の母が増えているという ことです。  スウェーデンについては、この領域でよく議論になるところですが、80年代後半に 上昇したあと、90年代に再び低下し、最近また少し上がりぎみということで上下が激 しいわけですが、80年代には積極的な家族政策、特にスウェーデンの場合、男女平等 の理念の下、出産・育児と女性の就労の両立に関する家族政策が積極的に行われたこと の効果が現れたといわれています。一方、90年代の低下は、若年層中心の失業率の上 昇等、経済が低迷したことが原因といわれています。  ドイツ、イタリアは、かなり低水準で、日本は1.36ですからこのグループに属す るわけですが、低水準で推移しているということですが、両国とも男女の役割分担に関 する伝統的意識ないし、3歳児神話といった伝統的な家族観が低水準に影響しているの ではないかということがいわれているところです。  家族政策については、フランス、スウェーデンは積極的にやっていて、アメリカ、イ ギリスは消極的だということがいわれていますが、家族政策をやっている国の出生率が 必ずしも高いというわけではないわけですが、この関係をどう考えるかというところが 議論になるところかと思います。  資料4ですが、少子化要因に関する資料集ということで、これまで議論されてきまし たいくつかの要因について御紹介しましたが、そのバックデータということでいくつか 拾ってみたものです。時間もありませんのでざっとだけ拾わせていただきます。  まず、1ページは、このあたりは前回ご説明申し上げました人口動態実態及び推計と 部分でして、現在は1.36という出生率、平成12年120万人という出生数という ことで低下傾向にあるということです。  2ページは、この1月にこのような新しい人口推計の数字が出ているということです 。 3ページは、左側は、夫婦の出生率低下の要因は、従来の未婚化、晩婚化のみなら ず、いわゆる結婚した夫婦の子ども数が減っているということが新たの要因として指摘 されているところです。右側は、未婚化、晩婚化に関すり資料で、未婚率の上昇という データで、特に男性のほうが未婚率が高いということがわかると思います。  4ページの、左側は生涯未婚率ですが、男性は2000年ではかなり生涯未婚率が高 くなっているということがおわかりいただけると思います。右はいわゆる晩婚化で、初 婚年齢が上昇しているということです。  5ページ、左側は、結婚観の多様化ということですが、真ん中の0を境にして、右側 がいわゆる保守的な結婚観、左側は新しい考え方ということで、2つずつありますが、 上が92年、下が97年の調査ですが、保守的な考え方、結婚したら子どもを待つべき だとか、結婚後は夫は外で働き、妻は家庭を守るべきといった考え方が減ってきている ということがおわかりいただけると思います。5ページの右側は、晩婚化の原因につい ての世論調査ですが、独身生活のほうが自由である。女性の経済力の向上、というよう な理由が挙げられていますし、その他、女性では仕事上、独身が有利だとか、家事、育 児の負担感、男性では世間のこだわりの減少といったことが指摘されています。  6ページは、なぜ独身なのかということを調査したものですが、25歳を過ぎると「 適当な相手にめぐり合わない」という方が非常に多いということです。これは本人がそ う言っていうので、本当にそうかどうかというのはまた別問題ですが、近年「必要性を 感じない」といった、したいけどできないというのでなくて、あるべくして独身である という積極的シングル理由を挙げる人が多くなってきているということです。右側は、 結婚の意欲ということで、結婚年齢に対するこだわり、ある程度の年齢までに結婚する つもりだという人は減ってきていて、いい人がいれば結婚するという人が増えていると いうことです。 7ページは、左側は結婚の利点、独身の利点ということで、男女とも 結婚の利点が減ってきており、独身の利点として行動や生き方が自由ということを言う 人が多いということです。右側は、結婚しなくても満足のいく生活ができると考えてい る人がとくに若い世代で多くなっており、20代では女性の43.3%、男性の34. 5%が結婚しなくても満足のいく生活ができると思っているということです。  8ページの、左側は親と同居している未婚者はなぜ親と同居しながら結婚しないのか という理由としては、男女とも「適当な結婚相手がいない」ということを本人は挙げて いるわけですが、まわりはそうは見ていなくて「経済面や身のまわりの世話で親に頼っ ているから」と見ているということです。  8ページの右側以下は、子どもを持つことに対する意識の問題ですが、まず、これは よく指摘される問題ですが、理想とする子ども数と、実際に持っている子ども数に乖離 があるということで、直近の調査では、2.53人の子どもが欲しいけれど、実際には 2.21人の子どもしかいないということで、この乖離が問題だという指摘もあります 。ただし、昭和52年以降一貫してこれについては開きがあるわけで、必ずしも最近出 た傾向ではありません。  9ページは、なぜ子どもが欲しいかということで、左側は、若い世代ほど、かわいい からと言っていて、上の世代ほど社会的に一人前とか、人間として当然じゃないかとい うことをいう人が多いということです。右側は、なぜ理想の数だけ子どもを持てないの かということですが、経済的にお金がかかると指摘している人が数としては多いという ことです。 10ページは、子どもを持つことに対する意識ということで、上をみます と、若いほど、また女性であるほど、結婚しても別に子どもを持たなくてもいいという 人が多くなっていますが、実際に子どもを持つと、やっぱり子どもを持つと豊かな人生 を送ることができるという人が多くなってくるということがわかります。右側は、子育 てコストの問題で、いわゆる教育費が高くなっているということで、特に高等教育には お金がかかるということが言われています。  11ページは、性別役割分業ということで、男は仕事、女は家庭という考え方はどう か、と聞いてみますと、2000年の世論調査でも、いや、そうは思わないという人が 半分になってはいますが、やっぱりそうだという人、ないしはどちらともいえないとい う人が半分おりまして、なお、男は仕事、女は家庭という考え方が根強いということが わかります。右側は、女性が職業を持つことについての考えで、子どもができても職業 を続けるほうがいいという人も増えていますが、子どもができたら一旦仕事をやめ、大 きくなったら再び職業を持つほうがいいという人が一番多いということがわかります。  12ページは、働き方の関係です。よく言われているように、勤務時間が長いのでデ ートもできないし、結婚もできない、子どももなかなかつくれない、というようなこと がいわれますが、労働時間自体は数字としては減ってきているわけですが、諸外国と比 べてまだ長いことは長いというのがわかります。  13ページは、生活時間ということで、特に男性の場合、圧倒的に仕事にかける時間 が多く、家事時間は少ないことがよくわかります。右側は、子育てと仕事の両立の関係 で、出産、育児世代の労働力率が下がるという統計ですが、この10年で若干改善して いますが、なおいわゆるM字カーブはあるということでございます。  14ページは、女性の働き方で、フルタイム、パートタイムを見たものですが、子ど もがいる方、有配偶者の場合はフルタイムが少なく、パートタイムが多いということ。 独身でないとフルタイムではなかなか働けないという状況にあります。  15ページ、右側で育児休業制度の利用状況で、現在、女性の場合56.4%が育児 休暇を取得しています。たったと56.4%とみるか、56.4%もとみるかというこ とですが、男性の場合は0.42%しか取得してないということで、これは極めて低い 水準だということがいえるのではないかと思います。  16ページは、育児休業制度利用の問題点ということで、なぜ育児休業が取れないの かということを見ますと、職場の雰囲気とか、周囲の理解がなかなか進まない。会社側 からしてみれば、代替要員の確保が困難だというようなことが指摘されていることがわ かります。  17ページ、最後のページですが、少子化対策を行うことについての考え方です。結 婚、出産を奨励、少子化を解消すべきという直接的な結婚・出産奨励策か、あるいは結 婚・出産を取り除くような環境整備をすべきか。あるいは少子化対策は一切すべきでは ないか、と聞いたところ、子育て世代では、結婚・出産の奨励は少数派で、大多数が環 境整備を挙げているということがわかります。ただ、一方、若い世代ほど少子化対策は 一切すべきでないという人の比重も多いということです。右側の資料は重点的に取り組 む対策としては何が求められているかということですが、育児休業制度、ないしは出産 ・子育て後の再就職といった育児期の働き方の改善を求める声が多いということがおわ かりいただけるかと思います。以上駆け足ですが、資料4です。  次の資料5は、これまでに少子化の要因についていろんなところで議論されておりま すが、人口学という学問の分野ではどういった研究成果が上がっているか。人口学全体 の状況をざっとサーベイしたものです。とりわけ、実証的な研究分析、こういう社会経 済要因の出生率はこういう関係にあるんじゃないかというふうに、よく言われているこ とが実証的にどう証明されているかという状況について社会保障・人口問題研究所にま とめてもらいましたので、御説明をしてもらいます。 佐藤部長  国立社会保障・人口問題研究所の佐藤と申します。お手元の資料にございますように 、私どもの研究所では、少子化に関していろいろな資料、文献等を多数集めております けれども、特に1.57ショック以降、また、少子化対策ということがいわれるように なりました1990年代以降、非常にたくさんの文献、資料が集まるようになっており ます。その中からいくつか、テーマごとに最近の研究事例から重要と思われるものを挙 げて整理いたしましたので、御報告いたします。  まず、1.家族、家族観、親子関係(出産、子育ての心理的、肉体的不安を含む)と 出生力との関係ですが、家族観や親子関係、あるいは、結婚や子どもを持つことについ ての価値規範が強く認識されているということでは意見は一致しておりますけれども、 その解釈については、新しいシングル化の現象、つまり、個人主義的な傾向であるとか 、伝統にとらわれない傾向といったものが未婚化、少子化の原因であるとするような研 究結果、また逆に、根強い性役割分業観など伝統的な結婚観、家族観というものが高度 経済成長期以降も変わっていないということがむしろ原因であるとする、2つの解釈が あります。  また、最近、未婚化は進んでいますが、若い人の間の性交経験率も非常に上がってお りまして、必ずしも男女の間での親密さというものが薄くなってきたというものでもな さそうだと。つまり、それが結婚という形をとらず、また欧米のような同棲という形も とらない。そこに日本の一つの特徴があるわけでして、このような男女のパートナーシ ップの変容という見方から見ていくことは大きな分析枠組みを提供することになるので はないかと思われます。  また、育児不安については、ある研究によりますと、従来、母親の年齢、子どもの数 、祖父母との距離、居住年数といったものが育児不安を生むのではないかといわれます が、他の研究ではそういったものの説明力が非常に弱くて、育児不安の要因については いまのところ必ずしも一般化できないということで、さらなる検討が必要であるといわ れています。  2.女子労働と出生力 の問題については、女性が雇用労働することと出生力との間 にトレードオフが存在するということは広く認められていることでありますけれども、 その内容につきましては、女性のキャリア化、高学歴化が結婚、出産を抑制していると いう見方、また、そういったことよりも仕事を続けることによって年齢が上がっていく ことがより強い要因であるという見方に分かれています。  また、夫の所得や同居の親の存在など、家族の属性が女子の就業にとって大きな要因 として働いているという見方もあります。  3の出産・子育て支援体制と出生力 ということで、これには主に育児休業制度と保 育サービスがありますが、育児休業制度については、これが就業継続を促すという点で は意見は一致していますが、この制度そのものが結婚や出産を促すことに結びついてい るかどうかということについては、まだ一定の結果が得られておりません。これが結婚 や出産の阻害要因をやわらげる効果があるという研究結果もありますが、その一方で結 婚の選択には影響を与えていないという研究結果もあります。  また、保育サービスについては、保育・育児施設の増加と出生率の関係についても、 プラスの関係があったとする報告も一部ありますが、概して直接的な因果関係を明らか にしたものはいまのところ少ないということです。  4の所得水準と出生力ですが、これには妻あるいは世帯の賃金水準の問題と、それか ら世帯間の相対的な経済的な状況の問題の2つに分けて考えることができます。  5の子育て費用と出生力の問題ですが、近年、子育て費用が非常に上がっているとい うことから、これが出生力にマイナスの影響を与えているのではないかという指摘があ ります。また、児童手当についても、これが出生率回復に対して効果があるのかないの かということについては、はっきりした結果で出ておりません。ただ、はっきりした効 果は認められていなくても、さまざまな家計の状況に応じて効果的な制度がとられるよ うな積極的な議論が必要だという指摘がなされています。  6の住宅事情については、特に第2子から第3子にいくときには部屋数が多いほど出 生率は高まるとか、あるいは持ち家とは正の関係があって、民間賃貸住宅とは負の関係 があるといった分析結果が出ています。しかし、これもまだ未解明の部分が多いと思わ れます。  7のジェンダー構造と出生力について、これは最近有力な説ですが、その一方では、 結婚、出産に対する女性のアンビバレントな意識とか、未婚男女の意識のギャップとい うことも指摘されています。  8の教育水準と出生力女性が高学歴であることは出生率を下げるということがいわれ ています。  最後の9はその他ということですが、そのほかにもいろいろな視点から分析がなされ ていますが、特に90年代以降、若者の失業率が上がっていることや非正規就業が増え ているといったことから、今後こういった若者の勤労観、就業行動の変化が未婚化、少 子化とどのような関係になるのかといった点が特に注目されてくると思います。  以上かいつまんでお話いたしました。 木村座長  ありがとうございました。只今、狩野副大臣が到着されておりますので、御紹介申し 上げます。よろしくお願いいたします。また、先ほど、清水ちなみ委員がお出でになっ ていますので、御紹介申し上げます。よろしくお願いします。  それではこれから自由討議ということですが、前回と同じように、なるべく全員の方 に御発言をいただければと思っております。手短に、お一人3分以内くらいでお話いた だけると全員にまわるという感じですので、よろしくお願いいたします。  どこからでも結構でございます。 佐藤委員  前回欠席し、先ほど河さんから指摘された1人ということで失礼しました。内容のあ る話ができるかどうかわかりませんが、前回は欠席したので議事録を読ませていただき ましたが、少子化の要因をいろいろ分析して、既存の施策では何が足りないのか。既存 の施策の中で有効性が低いものは見直して新しい施策を導入する。そういう議論をする ということがこの会議の一つのテーマになると思うのですけれども、全体の施策を考え るときに私が大事だと思っていますのは、施策の間のトレードオフの関係です。簡単に いいますと、旧厚生省でいえば子育て支援、旧労働省でいえば仕事と生活、子育ての両 立支援をやってきたわけですけれども、少子化対策では子育て支援が非常に大事なわけ ですが、もう一つ、例えば、年金等を考えると働き手を増やす就業支援という施策があ るわけですが、就業支援については両立支援ということで旧労働省でやってきたわけで すけれども、内容によっては子育て支援の施策が仕事を続ける両立支援と相反する場合 もある。例えば、長期の休業というのは子育てにとっては有効ですが、就業を続けると いうキャリアを選択する場合には非常にマイナスである。そういう意味では、短時間勤 務というような施策のほうが両立支援策としては有効なわけです。ですから、私は子育 て支援と就業支援という施策の間の関係がうまく整合がとれているかということが大事 だ思います。ですから、子育て支援が同時に仕事と生活の両立という観点から見てマイ ナスがないのかどうかということを見ていく必要があるだろうということが一つです。  もう一つ、両立支援の施策、仕事と生活の両立、生活はここでは子育てがメインにな るわけですが、そのとき両立支援を充実することがややもすると女性の役割を固定化す ることになりかねない。つまり、女性が子育ても仕事も両方をしやすくするという施策 が進んで、男女の役割分業が変わらないと、男性は子育てをしないで、女性が仕事をし ながら子育てもしやすくなる。それでは男女の役割分業が変わらないで固定化されてい ることにもなり兼ねないということですので、両立支援という観点から施策を進めると 同時に、女性は仕事もし子育てもするというような男女の役割分業を固定化するような 両立支援策でないようにする。そのためにはここでもあるような、男女の役割分業、男 性の仕事と生活の関係が変わっていくことを支援するような、つまり、男性の仕事と生 活の両立を同時に進めていかないと問題だと思います。 木村座長  ありがとうございました。大日向委員。 大日向委員  私、所用であと10分ほどで退出させていただきますので、はじめに時間をいただき たいと思います。そしていま佐藤委員さんがおっしゃったことと関連しているので同じ 時期に発言させていただきたいと思いますが、私のレポートも今の佐藤委員のご発言の 趣旨と同じことを書いてあります。ただ、後半の記述は短く書きすぎたために誤解を招 くといけませんので補足もさせていただきたいと思います。  社会政策というのは、まんべんなくいろんな人を対象に支援するということは、私は 無理だと思っております。どういう方向に社会が動くかということを明確に見極めて、 どこの対象を支援するかということが大事だと思います。それはいま佐藤委員さんがお っしゃったように、これからの年金問題等を考えたときに、もはや専業主婦の方を支援 していくということは、将来的にはかなり無理があるだろうと思います。子育て支援が ややもすると性別分業を強化し、女性を育児に閉じこめることになって、両立支援、仕 事を継続することにつながらないという問題を危惧いたします。  しかしながら、対策というのは、過渡期的なものと、将来的なものと、2段階、3段 階に分けて明確に打ち出すことが必要で、いま専業主婦となって子育てにいろいろ苦し んでいる女性たちを支援すること、これは絶対やらなくてはいけないと思います。しか し、専業主婦の方の育児を支援していくということはあくまでも対症療法的、過渡期的 なことであって、将来日本が2025年や2050年あたりに何を目指すかということ は経済政策としっかりと連携して、就労継続という方向に向かって支援が必要だと思い ます。現に結婚している夫婦家庭でも子どもの出生力が低下しているということですが 、これはいろんな理由があると思いますが、経済不安が大きく働いていると思います。 夫の年収別で見ていきますと、夫の年収が400〜700万未満のところで妻がパート タイマーで、130万の枠内でしか働けない世帯で出生率は劣って、育児不安が強まっ ている。このあたりをしっかりと見ていくと、日本が将来的に、20年、30年先に目 指すべきものの対策を現状の対策の2段階に分けて行うという必要性が明らかだと思い ます。 木村座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。今回初めて御出席のお2人はいかが でしょうか。清水さん、何か話をされますか。 清水委員  清水ちなみと申します。前回都合がつかなかったものですから欠席させていただきま して、どうもすみませんでした。実は本を書こうと思って資料を用意していたところに このお話をいただいたものですから、提出させていただいたレポートに挙げたデータは まだ未完成なものが多いんですが、主に私が特に気になっていることで、たぶんいまま でお話に上がっていないだろうと思うことを書きました。  それは、レポートのとおりなんですけども、働く女性と働きたくない女性、現段階で の話ですが、お互いにお互いのことが大嫌いということで、これは非常に根深い問題が ありまして、結局それば子ども嫌いにつながり、いま過渡的な、というお話がありまし たが、既にいまの段階でこれだけの溝ができてしまっているということはかなり遅すぎ るのではないかというような気はしています。 木村座長  ありがとうございました。ちょっと聞こえなかったんですが、何が嫌いだとおっしゃ いました? おとなが子どもを嫌いだというんですか。 清水委員  現段階でなんですけれども、現段階では、働いている女性と、いま女性に職がある段 階においても働きたくない女性が存在していて、お互いがお互いのことを大嫌いだとい うことです。 木村座長  わかりました。ありがとうございました。酒井さん、いかがでしょうか。 酒井委員  前回欠席しました酒井と申します。私はいま結婚も出産もしていないという状態で、 少子化を推進しまくっているという感じなんですが、なぜここにいるかと申しますと、 たぶん2年ぐらい前に「少子」という本を書いたからなんですが、自分が30歳過ぎて なぜ結婚も出産もしていないかということを考えたときに、これはなんとなく、としか 言いようがなくて、明確な、例えば、仕事を続けるのが困難であるとか、自由が失われ るとか、そういう理由がないままになんとなくここまで来た。  そのなんとなく子どもを産まない理由を無理やり考えてみると、それは何なんだろう ということでこの本を書いたんですが、主な内容はレポートにも書いてあるんですが、 例えば、出産が痛すぎるからとか、男が情けないからとか、あといろいろな年金問題と かが社会で言われいて、そのために産むような気がして、それが癪だからとか、身も蓋 もない内容なんですけれど、さらにそれをどうしたらいいんだろうと考えてみたときに 、私たち少子化を推進している本人たちから考えてみると、解決策がほとんど無理なも のぐらいしかみつからないというところがありまして、いまいろいろな対策を見ますと 、子どもを産んだ人とか、結婚した人に対しての対策はかなり充実しているものがある と思うんですが、その対象に憧れを持つことができない私のような者はどうしたらいい んだ、という部分がありまして、でも、それ非常に個人の問題なので立ち入るのが難し いかとも思うんですけれども、個人としてはそういう部分にも関心があります。  あとは、たぶんいまの時代に育っている子どもたちというのもなかなか結婚とか出産 に対する憧れは持ちにくく育っていってるのではないかと思うので、その部分も問題な のではないかといま思っております。 木村座長  ありがとうございました。副大臣があえてお産のつらさについてお話くださいます。 狩野副大臣  私も今回初めて出席をさせていただきましたけれども、お若い方、いま子育て中とか 、結婚前の方とか、皆さん方の御意見を聞かせていただいて、まだ少ししか聞いており ませんので、もっと聞かせていただくことは私にとってもうれしいことでございます。 私はいま67歳ですから、自分の生きてきたさまを見ますと、私が結婚して、子育てを していた時代から考えると、日本の国もずいぶん変わったなあという実感がわいており ます。いま酒井委員がおっしゃいましたように、結婚とか子育てに夢を描くことがいま できないわけですね。結婚すればこんなすばらしいことがある。子どもを産み、育てる ことによってこんなすばらしいことがあるんだという、そういう夢を描くことができな い世の中になってきていると思いますし、私自身も最初の子どもを産んだときに、こん なつらい思いをするんだったら子どもはもう二度と産みたくないという思いをいたしま したが、2人、次も産むことができましたけれども、そういうみんなが抱いている不安 とか、いろんなものをどういう形で解消することができるかということが、私たちの一 番の課題だと思いますし、昔の家族愛というものがいまはなくなってきていますから、 そういう家族愛みたいなあったかい雰囲気が社会の中にうまれてきて、社会の中でみん なが結婚とか子育てに夢を描けるような社会づくりをすることが一番理想的なのかなと いうことを考えなが、これから皆さん方の御意見を聞いていきたいと思っております。 木村座長  ありがとうございました。どうぞ、水戸川委員。 水戸川委員  いま副大臣のお話を伺って私も同感するところがありまして、いままでのデータを拝 見しておりまして、少子化というのは3つの観点からきているんじゃないかなと思うの は、自分自身の身体が変化する。気持ちも、肉体的にも変化するということと、もう一 つは経済的なもの、そして環境、住宅とか家族構成によるものだろうと思いますが、お 産の質というところの検討はいままでされていなかったのではないかと思うんですね。 ここにいらっしゃる方は男性が多いので、お産の質といわれてもピンと来ていただけな いかもしれませんけれども、資料4の17ページのデータではたしかに低くはなってい ますが、実は第1子を産んだお母さんたちで、もう二度と産みたくないと思っている人 は実は多いということを私はここ数年感じております。ただ、いろんな環境の中で気持 ちは変わっていくものだというふうにも実感しております。  私の経験をお話させていただきますと、18年前にお産をしたときにはとてもつらい 思いをして、子どもにも障害が残りました。そのときに母親としては自分を責める。何 か疑問を感じる。その疑問を解消したいと思っても、ケアをしてくれる存在がなかった ということが現状としてありました。その後、お産の状況を変わりまして、立ち合い出 産も広まりつつありまして、主人がいてくれたことでなんとか気持ちの上で乗り越えら れるのはないかという時代になっておりましたので、7年後に第2子を授かりました。 第3子はその7年後、14年後に産んでいますが、お産の世界もだいぶ緩やかになって きているものの、お産という行為に関しては、妊婦側はどうとらえたらいいかというこ とは教育されていない。つらいとか、痛いとかいうこと。例えば、テレビドラマのよう な、つわりといっら、ウッと来て流し台に立って、ということは考えられないんですね 。そういうイメージとか、お産のあと血だらけの赤ちゃんがいて怖いというイメージが 浸透している。  先ほど酒井さんもおっしゃっていましたが、痛いということでも、その痛みの中から うまれる女性の強さと得るものもたくさんあるはずだと思うんです。でも、妊娠初期か らお産を通過して子育てにつなげるという、産前からの教育がされていないような気が します。お産の業界では、きちんとした産前教育はよりよい環境の子育てにつながると いわれています。  そういうことで、お産の質、産むということに関しても着目していただけたらなとい うふうに自分の体験から思います。私は14年間かかって、第3子のときはとってもい いお産ができてほんとに満足しているわけですが、いいお産は女性の人生観までも変え るということは、いま私は一人でしゃべっていますが、実は私のまわりにはともに活動 している仲間がたくさんいて、実は第2子、第3子を次々に産んでいる仲間が多いんで す。そういったことにも着目していただけたらなと思っております。  また、経済面でも、妊娠初期から何十回という検診料がかかります。1回4〜5千円 かかるということは、ただ出産時にかかる費用を補填していただくということではなく て、妊娠期間のうちからの経済的な援助も必要ではないかと思う次第です。  あと、働く女性にとってやさしい社会環境ということでは、私のレポートにモデルケ ースとして、こんなのがあったらいいなというのを添付させていただきました。それか ら、女性週刊誌の抜粋、そして、産前教育ということで、妊婦さんではなく、独身時代 から自分の身体を知ってお産を迎える。そんなことをしていればお産のイメージもやわ らかくなって子どもを産みたくなるのではないかという活動も徐々に増えてきています 。そんな記事を添付させていただいておりますので、ご覧いただけたらと思います。よ ろしくお願いいたします。 木村座長  ありがとうございました。安達さん。 安達委員  私、産婦人科医なので、いまのお話については、常々、毎日赤ん坊に接し、妊婦さん にも接している者ですので、それなりの意見を持っていますけど、いまその話はおいて おきまして、とりあえず、私の実際の現場でも参考意見とさせていただきます。貴重な 御意見どうもありがとうございました。  まとめのところに大体書かせていただいたんですが、このうち強調したいこと、補填 したいことだけお話させていただきます。  子どももつくりたい、産みたいという気持ちになるためには、小さいときから子ども と接して、子どもの愛らしさというものを実感していかないとそういう気持ちにはなれ ないと思うんです。例えば、お年寄りにやさしくするという気持ちは年とった方と接触 している子どもたちが大きくなったときにそういう気持ちは大きいと思います。同じよ うに歩いていても速く歩けなかったり、バスに乗っていて急に立ち上がれなかったり、 そういう現場を見ていたり、そういうことに接していればやさしくなっていきますし、 そういう心も芽生えてくるわけです。  そういう意味では、レポートに書きましたが、子どもたちが、幼稚園、小学校、中学 校、高校と成長していく過程で小さい子と接していく。自分の兄弟姉妹が多ければそう いうものは自然に見ていくことが多いわけですが、そういうチャンスを実際につくって いくような政策、それについてはレポートに書きましたので触れませんが、そういうも のをとっていかなくてはいけないのではないと思います。  それから、先ほど佐藤委員がおっしゃったことに全く賛成で、私の職場その他を見て おりましても、育児休暇を1年間きっちり取った人はなかなか職場復帰が進まない。で 、結局それなりの不満を持っているんですけれども、常勤で復帰することができないで 、これは子どもの子育てをしたせいだというところにどうも気持ちがいってしまいがち です。いまの環境は育児休暇制度はあっても、オール オア ノン という感じで、す べて仕事をするか、全くしないかという以前の体制を引きずっている面があります。育 児休暇を取り始めた人に聞いてみても、できる限り早く復帰したいとか、とても有難い けれども、例えば午前中だけとか仕事を、リハビリのようなものはできないかとか、あ るいはまわりの者に遅れないようになんらかの研修やそういうものをしたいという意見 も大変多いんですね。 そういうところに目を向けて、育児休暇を1年間取れたら大変 有難いことだと思うし、もしかしたら、それは2年、3年取ったほうがいい方もいらっ しゃると思うんですけれども、そういう中で育児休暇を取っていても、仕事に復帰でき るような、勉強の機会なのか、あるいは実際に働く時間帯なのか、それともワークシェ アリングみたいな形でもう少し常勤のような形で仕事を管理した部分がいいか。人によ って違うと思うんですが、そういう対策を強化していくことが、仕事をやりながら子ど もを何人かつくりたいということにつながるんじゃないかと思います。 木村座長  ありがとうございました。ホームオフィスみたいなものもありますね。SOHOです ね。これは企業の協力が必要ですが。 津谷委員  先ほどのお話と関係ないんですが、この資料を見せていただいておりまして、資料の 3に、アメリカ、フランス、イギリス、スウェーデン、ドイツ、イタリアと上がてきて いまして、アメリカとイギリスは家族政策を包括的にプッシュしてないと。フランス、 スウェーデンは、やり方は違うんですが、包括的な福祉国家の伝統に則ってやっている 。ドイツは日本やイタリアと同じような低いグループ。  ここの、特にアメリカとイギリスがよく使われるのは、家族政策をやらなくても、比 較のレベルですけど、比較的高水準で出生力は安定する。アメリカなんか上がっちゃっ てるわけで、必要ないんだということがよく言われるわけですが、イギリスの場合、こ こでは家族政策のことだけ下に書いてあるので誤解が生じて、イギリスは80年代半ば 以降1.7とか8ぐらいで推移しているわけですが、見逃がしてはいけないのは、小さ な子どもを抱えたお母さんが働きやすいような就業の機会が増えているんですね。フレ ックスタイムとか、ワークシェアリング、最近変なコノテーションで使われていますけ ど、ほんとの意味でのそれが非常に積極的にやられている。日本のように例外的な形で はなく、雇用のレジッテメイトな形としてなされているということがあるのではないか と思います。  アメリカの場合は、まず就業の平均時間がフルタイムでもうんと日本より短い。です から夜働いたり、就業時間が違うんですね。そのときにお互い夫婦が子どもの面倒をみ たり、日本のように公的な保育サービスはあまりないわけですが、ベビーシッターも含 めて多様な保育サービスがあって、特に男性の家事時間が過去30年間めざましく、大 体60年代半ば頃は日本とそんなに変わらなかったんですが、大体3倍ぐらいに上がっ ています。特にびっくりするのは「子どものお母さんが働く場合、主に誰が小さな子ど もの面倒をみますか」という問いに「子どもの父親」という答えがここ10年ぐらいで 倍以上になっています。いまは、一番最近は99年だったと思いますが、父親という答 えが一番多かったんですね。日本のお父さんも子育てに時間を使ってらっしゃるのは知 っていますが、暇なときにお風呂に入れるとか、週末に公園に連れていく。時間は時間 として出てくるわけですが、主に保育をする、主に子育てに責任を持つということは心 理的なプレッシャーその他が全然違ってきている。その意味でニュー ファーザー フ ッド とアメリカで言われている、ある意味でのイコールパートナー、そういうことが ある国とない国。  ですから、必ずしも家族政策によらなくても、労働政策と組み合わせてフレキシブル にやれるはずですし、日本の家庭のジェンダー関係を変えていかなくてはならない。そ のために働き方を変えないと、いまのように長時間労働で非常に厳格な企業戦士として 、男性も女性もですけど、フルタイムでやろうと思えば、むしろ不況でその傾向が強く なっているような状況とかで、いくら家族政策だけお金をいっぱい注ぎ込んでやってみ ても難しいのではないかなと思います。  もう一つだけ、ここでたくさん資料をいただいて、大変興味深いんですが、ちょっと 注意しなければいけないなと思ったことがありまして、それは意識と行動の関係です。 資料4の10ページの左側、先ほどから子どもを持つことに対する意識の話が出てまし たので、若い、未婚の方ですとどっちともいえないと言ってるけど、実際に子どもを持 つと肯定的になる。ここから考えられることは、子どもを持てば意識は肯定的になるん だから、とにかく持ってもらえることが先決で、持てば大丈夫じゃないか、ということ で取られかねない。私はこれは違うと思うんですね。これはある時点でやった、時間の 一時点の調査ですよね。下の、実際に子どもを持つと肯定的な意見が多くなるんじゃな くて、肯定的な意見を持っているから子どもを持ったのかもしれませんし、持ったあと で、人間は必ず、ポスト ファクト ジャステフィケーションをしますので、子どもを 持ってしまったら、大変だ、えらいものを持っちゃった、やんなっちゃうなんて、なか なか言いませんので、持ったから肯定的になったかもしれないわけです。ですから、こ ういうデータの読み方は、特にそれが出生力とか行動へのインプリケーションになると 気をつけたほうがいいなというのがひとつです。  たとえば、例ですけど、じゃあ、意識は関係ないのか? 私は意識を読むことは、政 府にとっても、社会にとっても大切なことだというふうに信じておりまして、それは意 識自体のトレンドや構造を知ることは本当に大切で、同じ資料4の11ページ、性役割 分業についてという有名な、男は仕事、女は家庭、ですが、これはおそらく20歳以上 の全男女だと思うんですけど、これでずっときていて、だんだん減ってきているけど、 まだ半分いるというお話が先ほどあったんですけど、この間に日本の人口の年齢構造が めざましく変わっているわけです。そうすると、この中における高齢の方の割合が多く なっています。ですから、これを見るときには年齢別に見なければはっきりしたことは いえない。おそらくもっと急激に変化していて、変化のスピードがここに隠されている ように思います。  私もこれは前にちょっとやったことがあるんですけど、感じでは、全員変わってきて います。全員が非伝統的になってきていると思います。高齢者も含めて。それは確かな んですが、若いところだけ見てみますと、男女間の乖離が非常に大きいんですね、高齢 者よりも。これは私は大変大切なことで、なぜかというと、20代前半の人はほとんど が結婚してませんよね。そうすると、女性のほうが男性よりもうんと非伝統的で、その ギャップが大きいということは、結婚に対して、パートナーたるべき若い女性と男性の 結婚に対する期待がものすごく大きく違うということで、これはいま非婚化、シングル 化と大騒ぎしてますけど、意識の面から見たときに、結婚が選択の対象である以上、私 はむしろこれが問題で、そういうところが一体なぜなのか。先ほど政策のターゲットを 絞れという話がありましたが、私は意識を読むと、ターゲットを絞って、どっちがどっ ちかわからない、経済学者が言うエンド ジ ナイティ 外在性、内在性の問題でやる んじゃなくて、もう少しベールをはがして考えていかないと政策的な努力も効果が挙が らないのではないかと思います。 木村座長  ありがとうございました。 熊坂委員  今の津谷先生の御発言を受けて、たしかにアメリカ、イギリスはあまり国として少子 化対策をやってないが出生率は高い。フランス、スウェーデンは伝統的に国としてやっ ているから高いということですが、日本の中におきましてもかなりの地域差はありまし て、例えば、山形、福島、岩手それから山陰、南九州は出生率は非常に高いんですね。 おそらく、そういう地域、私も東北の生まれで東北から出たことないんですけど、子育 て、子どもを産むことが報われるというか、幸せにつながるという価値観が強いところ だと思うんですね。そういうことを考えますと、いろんな要因で少子化は起きていると 思うんですけど、これらの地域でも、政策は国の施策に基づいてほぼ一律にやっている わけですから、特別その地域が少子化対策に熱心だということはないわけです。でも、 出生率は高い。社会がこういう状況になってきて、何かやらなければいけないというこ とでこの委員会があると思うんですけど、この辺の分析をしたら面白いと思います。私 は今日ここに来るまで、内科の医者なものですから、小児科の先生方、保健師、保育士 、お母さん方と、いろんな現場に入ってレポートを出させてもらいましたが、宮古市は 出生率が1.71です。都市とすれば高いほうかもしれませんが、これをどうやって上 げていけるのか、ということでさまざまなやりたい施策を書かせてもらいましたが、こ れをやるにあたってお願いは、国のほうでも支援していただきたい。今日、一番面白い なと思った資料は社会保障・人口問題研究所の資料5ですが、こういう相関関係をいろ いろ出してもらって、これを一つ一つ潰していったらどうなるかということが非常に興 味があるんです。これに施策が伴っているわけで、それをやっていくべきではないかと 思うと同時に、これから地方分権の中で地方自治体が中心になっていくと思いますので 、財政的なものも含めた国の強力な支援があって、35ページから書きました宮古市で やってみたい施策を実際にやっていったときに、宮古市の出生率が1.71から果たし て上がっていくかどうか、5年後、10年後を目指して取り組んでいきたいと思ってお りますので、社会保障政策も含めて国が本腰を入れて少子化対策を考えていただきたい 。私は高齢者対策は自分でも一生懸命やってきたつもりですが、これからは少子化対策 のほうに予算も施策も力を入れてやっていかなければならないという、今が正念場のよ うな気がして今日もこの会に臨んでおります。 木村座長  ありがとうございました。奥山さん、お待たせしました。 奥山委員  先ほどからターゲットを絞れという話があって、私もそれに賛成します。  いま私は2つあるかなと思っていまして、1つは、1人目のお子さんを妊娠されてい る方から、子どもを産んで社会に復帰される方、働き方の話もありましたけれども、第 1子をもって、仕事に復帰するかどうかとか、仕事に復帰しなくても、第1子を持った あとのケアというのは非常に大切だと思っています。結婚しても子どもを持つ夫婦が減 ってきているというのは、結構、第1子を産んだあとのケアがされてないケースがある んじゃないかと思っています。  もう一つは、先ほどの20代前半の人の意識ですが、結婚するまでは仕事をしている 中でも男性だ、女性だという意識はあまりなくやろうと思えばできる社会になったと思 いますけれども、結婚してはじめて、もしくは子どもを持ってはじめて、女性は愕然と するわけです。家事、育児全部私なのねと。その部分は20代前半の女性たちはわかっ ていますよね。それを考えますと、そのギャップが非常にあるというこそ。そこの部分 をかなり解決していかないと、これから子どもを産んでいく世代にいろいろ影響を与え るのではないかと思っています。  また、お話の中で、働いている人たちと、働いていない人たちの間で対立があるとい う話もあったんですが、私自身は10年間ずっと仕事をしていまして、そのときには地 域を振り返ることもなく、子どもを産むことに価値観も見い出せないまま、仕事一筋と いうことで、ほとんど男性と同じ価値観だったんじゃないかと思うんですね。そういう 状態では地域のことは目に入らないし、子どもが目の前にいても目に入らないというこ とだと思います。それが、妊婦のときはまだ動けるんですが、子どもを産んで身動きで きなくなって初めて地域に目が向き、子どもという存在に気がついたわけです。私だけ でなく、こういう方はたくさんいらっしゃるのではないと思います。初めて子どもを産 んだお母さんが地域に目を向けたときにどんな支援システムがあるのか。フォローがで きるのか。仕事をしたいと思ったらそれを支えてあげられるのか、ということだと思い ます。そこで自分が支えられていると思えれば、それは夫でもいいし、友人でも、地域 でもいいと思いますが、支えられ感があれば、もっと子どもを産んでもいいかなという 気になるんじゃないでしょうか。私たちはグループをつくって支え合いみたいなことを 仕掛けとしてやりまして、私はなんとなく3人子どもがいて、副代表も子どもが3人い て、広場に通ってくるお母さんたちも、2人目を産んでもいいかなって思う人が出てき たかもしれない。そういうふうな実験のようなことをしていますが、私自身、働いてい るときは男性と一緒で効率優先でやっていましたが、子育てはその感覚とは合わないの で、そこをうまくフォローしていくシステムをつくっていかなければいけないというこ とを感じました。 木村座長  ありがとうございました。たしかに第1子の産んだあとのお母さんはピリピリしてま すよね。誰も助けてくれないと。私はいまでも恨まれてます、第1子を産んだときに助 けてくれなかったといって。いまおっしゃるような地域その他の支援は大事ですね。あ りがとうございました。 柏女委員  11時半には失礼をさせていただきますので、少しいままでの議論とずれるかもしれ ませんが、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  いまそれぞれの委員の方からポイントを絞るべきではないかという意見が出ていたよ うに思います。私もそれはそう思うんですけれども、そこに至る方法論を懇談会の中で 考えたほうがいいのではないかというふうに思っています。事務局からも御説明ありま したように、出生率低下、少子化の問題というのは、さまざまな要因の複合であるとい うこと、これはおそらく間違いのないことではないかと思っています。そうしますと、 一つひとつの要因を個別に見つけ出して、そこに対応する政策を打っていくという形に なると、どうしても総花的にならざるを得ない。すべての粒が小さくなってしまわざる を得ない。それがこれまでの少子化対策として挙がってきたものではないかというふう に思っています。 これをそのままやっていきますと、この懇談会の報告書はこれまで の焼き直しになってしまうのではないかと思います。そうしないためにはどうしたらい いのかということをずっと考えていたんですけれども、いまそれぞれの要因から、こう したほうがいいのではないかと意見が挙がってきます。この意見を集約したところに出 来上がる社会は一体どんな社会なんだろうか。先ほど狩野副大臣が、私たちはどんな社 会を目指そうとしているのか、将来ビジョンが大事だというお話をされましたが、いろ んな要因から出てくる、こういうふうにしたらいい、こういうふうにしたらいいという ことを集約したらどんな社会になるのか。それを挙げていって、私たちはどんな生き方 をしたいと願っているのか。そんな社会像がひとつ見えるのではないかというふうに思 います。私たちがどんな生き方をしたいかということで描いた社会のありようと、いま の仕組みとのずれを見ていくわけですが、そのずれを解消するのに一番影響力のあるポ イントは何なのか。つまり、装置を考えるということになるんだろうと思います。その 装置は、いまの価値観を前提にしてそこを補完する。つまり、いまの社会には悪いとこ ろがあるから、それを直すために手を施すということではなくて、先を見た上で、その 価値観に持っていくためにはどういう仕組みが必要なのかというような、意識を変える 仕組みとしても考えていく必要があるのかなというふうに思っています。  例えば、一つの例として、雇用均等・児童家庭局のほうで始めていらっしゃるファミ リーサポートセンター事業ですが、この事業はこれまで地域の中に既にあった血縁、地 縁型のインフォーマルなネットワークが崩れてきたわけですが、その崩れを補うための 治療としてと社会的な子育てネットワークという意味もあるんですけど、実はそれをす ることによって、もう一度地域の助け合いが再生するという側面もあるわけです。そう すると、それによって、こういう社会がよかったんだと。そういうふうに社会の仕組み を、あるいは意識を変えるために使っていくということも大切なのではないかなあと思 っています。  私はいまの社会で一番大事なのは、個と公、社会との関係のあり方を全体の中で変え ていなければいけないのではないかと思っています。虐待の問題もそうですし、出生率 の低下もそうですし、生きる力の低下もそうですし、そして、フリーターの話もそうで すけど、全部個と社会との関係のあり方がいまおかしくなっているんじゃないかと思っ ています。それを変えていくためにはどういう仕組みが必要なのか。そこを一点、大き なものを政策として出していけばいいのかなと思っています。私もまだ抽象的なんです が、これからこんなことを考えていきたいなと思っています。 木村座長  ありがとうございました。どういう社会が一番理想的なのか、たしかに根本にそうい う問題があると思います。小西委員、お願いします。 小西委員  先ほどからターゲットとか、いろいろお話が出ていますが、政策を実施する場合、何 を目的にするのかというのをはっきりしておかないといけないと思うんですね。いまま でお話を伺っていると、要するに、出生率を引き上げるとか、子どもの数を増やすとい うお話なんですが、じゃあ一体、出生率をどれぐらい、いつまでに引き上げるのか。そ して、人口構成をいつまでにどのように変えるのか。そこの数字というか、目的が何も 決まっていないにもかかわらず、こういう政策とか、ああいう政策とか、議論しても全 然意味がないんじゃないかという気がするんですね。実際、そういう政策自体のどれぐ らい効果があるのかということもほとんどわかってないような気がするわけです。  例えば、違う例を申し上げますと、地球温暖化という問題がありますが、あの場合で すと、例えば、大気をいつまでにどれぐらい安定させるかとか、あるいは何度ぐらい引 き下げるのか、そのためには何をやればいいのか。そういう政策を出すわけですね。経 済全体に対するインパクトという意味では温暖化の問題も少子化の問題もある程度似て いるところがあると思うんです、要するに、環境全体、子どもの数も含めた変化という 意味では似ていると思うんですけれども、少子化対策といっているにもかかわらず、一 体何を目的に政策がされようとしているのかというのがどうも見えない。そして、効果 があるかどうかもわからなくて、一体何年後の話をされているのかもよくわからない。 特に経済問題に関していいますと、例えば、今日の資料にもありましたが、年金の場合 には2025年ぐらいの高齢化のピークといわれるときにどうするのかというある程度 はっきりした時間があって、そこの負担率の問題とかいうことになるわけですけれど、 そういう問題を少子化対策で解決できるのか。ところが全然解決できない。20年しか ないんですから、いまから子どもをいきなり増やすことはできないので、そうすると、 私のレポートにも書きましたけれど、少子化対策というのは、50年とか100年の大 計になるはずなんですね。50年後、100年後、一体どうなってるのかということを 我々はどれぐらいきちんと考えて政策を立てなければいけないのかという話になります ので、少なくとも経済の観点からすると、ここでおっしゃっている少子化対策はほとん ど意味がないと思うんですね。むしろそうではなくて、繰り返しになりますが、子ども が減るのはしょうがないと思ったほうがいいんじゃないかと思うんですね。減るのはし ょうがないから、むしろ減ることを前提にして政策を立てるべきなのではないか。それ が例えば、子どもを持った人をどう支援して働いてもらえるようにするかとか、あるい は、子どもが減るのであれば、減った子どもの質を高める。あまりいい言い方ではない かもしれませんけれど、労働の質を高めるとか、あるいは将来の子ども、あるいはいま の若い世代にあまり負担がいかないような政策をするとか、そういった考え方で、子ど もを増やそうという政策ではなくて、少子化が進行することはしょうがない。しょうが ないからなんとかしようという政策でないといけないんじゃないかと思うんです。その 結果、子どもが増えてくれれば、それは結構だという、そういうことなんじゃないかと 思っております。 木村座長  ありがとうございました。前回も申しましたように、いま大きな価値観の転換期です ので、いままでのように、例えば、お金があれば幸せという時代ではなくなってきたの ではないか。命が大事だとか。ということで、いまちょうど変わり目なものですから、 なんだか訳がわからんという話がありましたが、いまの転換期の中で皆様方の御意見を 自由に出してもらいたいと思っているわけです。ですから、全く両極端の御意見が出て きてちっとも不思議ではないと思っております。残間さん。 残間委員  私もレポートに書かせていただいたんですが、本当に国が本気で子どもをつくってほ しいと言っているようには思えない。先ほどの人口問題研究所の方の話も、一言でいう とあまり効を奏していないという報告に聞こえてしまいます。経済の成長というような 延長線上で人口が減ることを憂いてはいるし、願わくば増えてほしいと言っているよう には聞こえますけども、こういうふうにしてほしいということの説明に説得力が感じら れないというのが正直のところです。酒井さんが言ったように、国の政策に乗るなんて 癪だっていう感覚というのはたぶんそのへんから来るんだと思うんですね。  日本人は9という数字にこだわるせいか、29歳のかけ込み結婚と、39歳のかけ込 み出産と、49歳のかけ込み離婚て多いですよね。ゼロになったとたんリセットしても う一度やり直そうっていう。出産で言うとこの38、9歳の「ここまで要らないと思っ てきたけど、ギリギリ、タイミリミットの前で、やっぱり子ども一人ぐらいは」と思う 人が案外いるんですよね。数として見るとたいしたことではないかもしれませんけれど も、このへんの層を狙うというのはイメージ戦略としてはあるかなと思います。  いささか語弊のある言い方ですが、ものをよく考えているように見える女の人は産み たがらないで、あんまり考えてないような女の人がボコボコ産んでるように見えるとい うことを、もちろん私も含めてですが、子供を産んだ女って結構かっこ悪く見えるんで すよね。世間並みといえば聞こえはいいけれども、並みの女になり下がったという感じ がこの国ではあるんですね、どうしても。だから、たくさん持っている人が、かわいい 、かわいい、幸せって言えば言うほど、かえって説得力がなくなるわけです。  子どもを持って幸せっていうイメージを表現するにはどんな人がいいのかっていうと 、「私、子供を持ちたかったんだけど持てなかった」という人のほうがむしろイメージ リーダーとしてはインパクトがあると思います。 木村座長  ありがとうございました。戦略的な御提言を頂戴しました。ほかに、いかがでしょう か。 山田委員  私も社会学、社会意識論的なところからお話させていただきたいと思います。結構い ろんな人が子育てのつらさとか大変さを語るんですけれども、私はよく考えると、昔は 実はもっとつらかったんじゃないか。昔はもっと男性が手伝わなかったんじゃないか。 亡くなった母親から、あんたの父親は全く何も手伝わなかったよ、なんていう話も聞き ましたし、数年前にお産をしたときどういう状況だったかというのを高齢の方に聞いた 調査をしたことがあるんですが、そんなところにも男性の手伝いなんて全く何も出て来 ないという状況でみんな何人も産んでいたということがあるわけですね。  精神分析学者のユングは「精神療法の最終目的は、患者をあり得ない幸せな状態にす ることではなくて、つらさや苦しさに耐える力をつけることである」と言っています。 つまり、つらさに耐える力があれば、つらい状況を乗り切ることができるということだ と思います。  じゃあ、なぜ昔の人が出産、子育てというつらさに耐えてきたかというと、これもま た別の心理学者が「希望というものは努力が報われると思うときに生じ、努力してもし なくても一緒だと思えば絶望が生じる」と言っていて、努力は苦労に置き換えてもいい と思います。となると、昔の人は、子育てに希望を持っていたんだな。じゃあ、どうい う希望かというと、これもお年寄りにインタビューをすると、今いくらつらくても自分 の子どもはきっといい生活をしてくれるに違いない、というような希望でたくさん産ん で育てていたらしい、ということがわかります。  アメリカが必ずしも家族政策をやっていないということですが、ファミリーフレンド 企業などということで、企業などは結構子育て支援策をたくさんやっているほうだと私 は思っていますが、それは別にして、アメリカで出生力が高いのは、子どもを産んだら その子どもが機会均等でいろいろチャンスのある社会なので、たくさん産んで社会に出 しても、実力どおりのことを発揮してくれるだろうという期待のもとに多いのではない かと、調査はしてないんですが、私は思っております。  そうなると問題は、前回も言いましたが、そこそこの能力を持った人の希望をどうつ なぐかといったときに、数年前「子育てに夢を持てる社会を」とあったんですが、最近 「夢」というのを調査していまして、宝くじで3億円当たったら何をするかという調査 では、ほとんどの人が、学生もおとなの人も、大体が大きな家を建てたいというのが夢 なんですね。つまり、大きな家を建てて、まわりの人から羨ましがられたいというのが もし夢だとするならば、それは子どもの数は少なくなるよな、少なく子どもを産んで相 続させたり、少ない子どもに投資したほうがいいよなっていうふうになると思います。 つまり、自分1人の力できちんと家を建てられないという状況があるから少子化が起こ るのではないか。 昔アメリカでケネデイが言ったように「ニューフロンティア」とか 、ジョンソンが言ったように「偉大な社会を」とか、ボランティアに社会を改革するこ とに夢を見い出せというようにはなかなかなっていかないというのが、もしかしたら日 本社会の悲しいところかなあと、いつまでたっても夢は大きな家を建てて快適な生活を することだと。  じゃあ、これをどうやって変えたらいいかというと、これもまた難しいことになって 、政策にのるかどうか。つまり、つらいことがあるからそのつらいことを取り除こうと いう政策は立てやすいんですが、苦労に耐える力をつける政策というのは、私もなかな か思い浮かばないし、希望をつなぐというのが政策的課題にのるかどうかもちょっとわ からなくて、これを決定的にやると今度は逆の、いわゆるファシズム的な方向になって しまうという危惧もありますので、その点を私も考えながらやっていきますが、一つ指 摘しておきたいと思います。 木村座長  ありがとうございました。白石さん。 白石委員  いままで皆さんがポイントを絞るというところでお話があったと思いますが、私もそ のへんの観点でお話をしたいと思います。  私は企業の中におりますもので、昨日も話をする機会がありまして、実際に育児休業 等々を取って現場に戻ってくる。例えば、4月に皆さん戻ってくるわけですが、そうい ったときにその人たちが非常に大変だったということを聞きました。それは保育所等々 に預けるという時点で、どこに保育所があってというところから探すことも大変だった し、手続きも非常にに大変だったということも聞いています。個を見たときにその人た ちがどういう点を望んでいるかという部分ももう一度見直したほうがいいのかなと思い ました。その中で、どこの保育所に行ったらいいのかということでも、市とか区で、こ の近くにはこういう保育所がありますよ、といったメッセージを発するようなところは 現在ないので、そういうものがあったらいいのかなと思います。  私、一昨年ヨーロッパ、スウェーデンに視察で行きましたときに聞いたお話では、ス トックホルム市では子どもが1歳から1歳半で女性が職場復帰するわけですが、そのと きに市が保育所等を探さなくてはいけないという法律でしょうか、そういう義務がある そうです。そういったことがない日本では女性はなかなか復帰できないし、大変な苦労 があるということで、小さなことだとは思いますが、そのへんからも直していかなけれ ばいけないなと思います。  もう一つ、私は企業の中におりまして、前回も少しお話をさせていただきましたが、 育児休業をとったり、短時間勤務をしている中では周りの理解を得ることが非常に大変 だと思います。これは、職場復帰をする際に、仕事をもっとしたいという人もいるし、 逆に制度にぶらさがっている人もいますし、また企業のトップの考え方次第で職場の雰 囲気が大きく変わることもあるわけです。私のレポートでも少し触れていますが、例え ば、トップが変わったら、男女共同参画の部分においても全く変わって、女性の部長が いなくなったというような企業もあると聞いておりますので、そのへんもどういうふう にしていったらいいのかというのもありますが、そのあたりにも観点があるのかなと思 います。 木村座長  ありがとうございました。大越さん。 大越委員  民間に働いている者として、先ほどの資料の中で労働時間が1900時間を割ったと いう話があるんですが、自動車の部品メーカーに勤めているんですが、まわりを見ても 皆さん夜中まで働いている。どうも実感に合わないなという気がします。女性が職場進 出しますと、女性が働きやすいように法律が変わると、職場の風土もたぶん変わると思 います。そういう風土、法律は実は男性にもやさしくて、私も長時間労働で深夜まで遠 きたいとは全く思わないんですが、まわりの男性が全部働いてしまえば、早く帰る人は 浮いてしまうということで、女性の職場進出が男性にもやさしい環境をつくるのではな いかと思って、私は個人的には非常に期待しています。それを後押しするような政策を お願いしたいと思います。  それと、私はフランス系の企業に勤めているんですが、よく休むんですね。36時間 ぐらいの労働時間ですから、法律がある種の歯止めになりますので、是非労働時間を絞 るという法律を積極的につくっていただきたい。あと、所定外労働時間、残業が一番の ネックだと思うんですね。私の古い会社の同僚が嘆くのは、会社は意図的に部下なしの 管理職に上げてしまう。それによって法の網をすり抜けて深夜まで働かされるというこ とで、実効ある残業規制ということで、一つ提案としては残業の割増賃金率を法律で上 げればよくなるんじゃないかと思います。  そして、ホンダ自動車がお客さんでつきあっているんですが、彼らは非常によく帰る んですね。残業もしますけど、しない日が多い。それはたぶん管理職が部下の勤務時間 を管理しないと落第ということで強い指導が入っているらしいんですが、その上を見る と、国から大企業は範をたれるために長時間労働をさせるなという指導があるのかなと 。そういう意味で残業時間を管理する第三者機関の設立は有効じゃないかと思います。 木村座長  ありがとうございました。青木さん。 青木委員  いろいろ伺っているうちに何も言えなくなったんですが、的を絞るというところに、 年齢層のことがすごく話題になっていると思うんですが、もう一つは、政策をしていく 上での時限、ターゲット、層が決まったあとにどんな時限でアプローチをするかという ところもやっぱり考えたほうがいいと思うんですね。というのは、子どもを産むという 最終的なところは個人だというのは皆さん了解がある。個人の選択だからこそ制度化さ れると反発も感じるし、私は制度は関係ないという人も出てくるという形で、両方のア プローチが必要なんだろうと思いました。  私は臨床心理士なので、ふだん子育ての悩みとか、もう少し病理の深い人たちの話を 聞いたり、学校での不適応の話を聞いたりということもたくさんあるんですが、相手に 伝わっているのかというところがすごく大事なところで、たくさんの施策があるんです が、それが伝えたい相手に本当に伝わっているかというと、フィードバックが実はあま りないような気がします。これをしましたという報告はたくさんあるんですが、それを したことによってターゲットにしていた人たちがどう感じているのかというフィードバ ックがここにあると、この施策がどう生きているかがわかるような気がしました。  もう一つは、いろいろ語られている制度は、子どもが欲しいと思ったら開かれている 制度ということで、漠然と子どもを産みたいと思わない人はこういう制度を探すことは ないと思うんですね。つまり、自分は子どもを産もうとも思わないし、考えたこともな いという人たちが実はたくさんいて、そういう人たちの話を聞いていると、というか、 私自身もそうですけれども、自分たちの育ちが同年齢で等質化された集団でずうっと来 ている。思春期の大事なときに異年齢の人たちと交わることが実はないんですね。自分 が子どものときな子どもとしての自分と親という会話は家庭の中でたくさんあるけれど も、思春期になったときに、ある長い時期、10年なら10年の間は小さい子どものこ となんて頭に入らなくなるし、触れ合うことが全くない。そこでポンと子どもを産むと きが来るという形で、子どもが全然イメージできなくなっているという事実があるんで すね。  ということで、いまの制度は支えながら、これから子どもを産むようになる人たちの 育ち方のところで地域とのかかわりが必要だと思います。  そういう意味でいくつか思ったことを挙げさせていただきますと、ターゲットの中に アプローチの時限、個人に対してと、もっと大きな経済的な施策というように、複合的 にやっでいただけることを望みます。 木村座長  ありがとうございました。皆さん1回は御発言いただきましたかね。あっ、ごめんな さい。玄田さん。 玄田委員  世の中にたくさんホームページがありますけど、たぶん最近ものすごく増えているの は子どもを産んだ専業主婦の人が、いかに自分の子どもはかわいくてすくすく成長して るかというホームページだと思います。最初は友だちのとかを見てるといいなと思うん ですけど、途中からだんだん見るのがおっくうになってきて、それは結婚式の披露宴の ビデオを見せられるのと同じで、いかにこれが幸せかというのを見るのは最初はとても 気持ちいいんですけど、途中から負担になってくるわけです。  何が言いたいかというと、子どもを持つことがいかに幸せかというふうなことはいろ んな情報があるんですけど、子どもを持ちながらどううまく仕事をやって、楽に子ども を育てられるかとか、うまく会社でそこそこに働けるかという、そういう知恵みたいな 情報は意外にないのではないかなあと。そう考えると、資料1にあるこれまでの対策と いうのは正しいんだと思うんですけど、いま必要なのは、制度をつくってお金をかける ことではなくて、ちゃんとした対策というときに、誰がどういう情報を必要としている かに合わせて情報をちゃんと提供していくことがむしろ大事じゃないか。国がすばらし いビジョンをつくって結構だと思うんですけど、国がビジョンをつくっても個人の選択 はまた別のものですから、いま個人はどういう情報を欲しがっているのかということは もうちょっと考える余地があるのではないかという気がします。  そう考えるともう少し実際の行為を見ていっていいんじゃないかと思います。びーの びーのさんなんかはよくご存じだと思いますが、例えば、育児休業をとった男性は一体 何を考えてどういうふうにとっているのか。どうすればうまくとれて、どうやって会社 にうまく戻れたのか。たぶんそれは制度の問題ではなくて、現場の知恵であったり、何 気ないやり方の問題だと思うんですね。ほんとに求められてるのは、制度もそうだけれ ども、一体この制度はどううまく利用できるのかといった情報のほうが必要であって、 それはもう国、行政がやるべきことではないのかもしれなくて、民間とかNPOがやる べきななのかもしれませんけど、必要なのはそういう情報ではないかなあという気がし ました。残間さんが書かれていたと思いますが、子どもを持って育てるというのは孤立 感があると。さっきも出産が大変という話がありましたが、わが家も結構大変で、子ど もが生まれたときに病気だとわかって、医学事典を見たら、あなたの病気は1万人に1 人だと書いてあって、大変な病気で、最初どうしようかと思ったんですけど、考えてみ たら1万人に1人ということは日本国内に同じ病気を抱えている人が1万人いるんだな と思ってホームページを探して、同じような状況で苦しんでいる人を探したんですけど 、そういう情報がいま求められているのがあるんじゃないか。  資料の対策の中でも、どうすればうまく行くのか。労働時間も短縮するために一体ど うすればいいのかといった知恵のような情報のほうが必要なのではないかということを 思いました。 木村座長  ありがとうございました。そろそろ時間でありますが、私個人は子どもが生まれない 原因をもう1つ、2つ感じておりまして、1つは、昔は子どもも産むか産まないかは男 が決めていましたね。1ダースぐらい子どもを産んで野球チームでもつくるかなんて気 楽なことを考えていたわけですが、いまは産むか産まないかを女性が決定している。こ このところは非常に大きいなと。悪いといってるんじゃないですが、ともかくそういう 現実があると思います。  もう1つ、いまの若い人を見てますと、大人といえない子どもみたいな人が多くて、 精神的に成熟していなくて、子どもだから子どもを持ってたら気持ち悪いですよね。ま さにいまの若い人の教育が大事じゃないかと思いますね。いつまでも一人前になれない 。昔は15歳になったらお国を背負って立つというおとなの気持ちになりましたけど、 いまはとてもとても、いつまでたっても子どもでいたくて、就職しないで大学院に行き たいなんていうのがやたらといるわけで、その意味で、お産の前の教育というお話があ りましたが、人間全体の教育のし直しが必要なのではないかという感じがしております 。  いずれにしても、ジジババばかりで子どもがいないというのは、このあいだも申しま したが、うっとおしいので、私も自分なりにうっとおしいと思いますが、申し訳ないこ とですが、社会に活気がなくなりますね、当然。そうなると、これから誰か年金を負担 するの? という問題が当然出てくるわけで、国もそういうところを心配してるんじゃ ないかと思いますが、どうしたらいいか。いまのままでいいのか。このあいだも申しま したように、人口が1億何千万もいるのは多すぎるので、江戸時代みたいに3千万人ぐ らいにせえ、子どもを産まずに、という意見もあるかと思いますが、一方で、いま申し ましたように、活気がなくなっていいの? ということも当然考えるわけで、どうした らいいのか。是非お知恵を拝借したいと思っております。  今日はまた大変いい話を頂戴しました。最初、お産から始まったものですから、男ど もは黙っているよりしょうがなかったんですが、だんだんと元気を回復して御発言いた だきました。ありがとうございました。  副大臣から。 狩野副大臣  いえ、もうたくさんいろんな話を聞かせていただきましたので。 木村座長  いいですか、すみません。次回は少子化の影響と少子化社会に対する認識、少子化対 策のあり方。私がちょっと最後に申し上げたようなことですが、御議論いただきたいと 思っております。日時は6月14日、10時から12時まで。場所は追って事務局より お知らせするということにしたいと存じます。  本日は、まことにありがとうございました。                                      以上 (照会先)  厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室   政策第一係長 森   政策第一係  木寺  電話:03−5253−1111(内7691、7692)