02/02/21 第10回 医療安全対策検討会議議事録           第10回 医療安全対策検討会議           日時 平成14年2月21日(木)              10:30〜           場所 省議室 ○森座長  それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。第10回の「医療安全対策 検討会議」でございます。皆様方それぞれお忙しい中、また遠方からもお出掛けいただ いてありがとうございました。  本日は、委員が19名出席です。飯塚委員、黒田委員のお二方がご欠席と伺っており ます。また途中で退席される方もあるようですが、いずれにしましても、たくさんお出 掛けいただきまして、ありがとうございました。  本日の議事は、「報告書骨子(案)」についてということです。骨子(案)は、時日 が差し迫っていましたが、一応は事前に皆様方のお手元に届くように手配したつもりで す。できれば今年度いっぱいとも考えていましたが、場合によっては多少明年度にずれ 込むことがあっても、遠くない将来に報告書をとりまとめるという方針に則って、前回 はこれまでの検討会議のいろいろな意見、議論を踏まえて、報告書の作成に当たって、 さらに考えを深めていく。あるいはさらに議論を要する事柄をご検討いただきました。  それから報告書全体を構成する全体のおよその考え方について、いろいろお考えを賜 り、その間、5名の起草委員の方々には大変お忙しい中を、そうしたもののとりまとめ をしていただきました。その結果が、すでにお手元に届いている「報告骨子(案)」で す。  ご覧いただいてお気付きのように、骨子とは申すものの、かなり詳しく、報告書その ものに近い内容だろうと思います。これも堺先生をはじめとする起草委員の方々のご努 力の結果と思っております。まず資料の確認からお願いいたします。 ○新木室長  お手元に配布しております資料を確認させていただきます。1枚目は「議事次第」、 資料1は「医療安全対策検討会議報告書骨子(案)」です。一綴になっていますが、30 頁あります。資料2は、「医療安全に関する用語の整理(案)」、資料3、本日ご欠席 の飯塚委員より「医療安全対策検討会議への意見」として、「安全における標準化・規 制の意義」を2枚紙で事前にいただいています。参考資料として、第1回目の本検討会 議に提出した参考資料「医療安全に関係する概念の整理(案)」を付けています。 ○森座長  ありがとうございました。いま最初に触れられましたが、資料1だけでなく、資料2 、資料3、あるいは参考資料が全部一綴りになっています。欠落でもあればおっしゃっ ていただきたいと思います。  それでは、「報告書の骨子(案)」について、議論をお願いいたします。まず、起草 委員会の座長をお務めいただいている堺先生から、全般について説明していただき、そ のあと各項目、あるいは各頁を追って、大ざっぱに皆様方のご意見をいただいていこう かと思います。それでは、堺先生に全般的な説明をお願いいたします。 ○堺委員  では、私から「報告書骨子(案)」の全般的な説明をさせていただきます。去る1月 30日の検討会議の結果を踏まえ、起草委員の間でメーリングリストおよび起草委員会 を2回ほど開催して、まとめたのがお手元の資料です。  この資料は30頁ありますが、冒頭の2頁が目次です。目次をご覧になりながら中の ほうを見ていただきますと、各項目の、そのまた中の構成が分かりやすいかと思います ので、そのようにお願いいたします。  それでは、3頁の1の「はじめに」です。これはこの検討会議および報告書が、いか なる推移でできたのかを簡略にまとめたものです。経緯だけが記してあります。  2の「国内外の医療安全対策の状況と概念の整理」ですが、目次にありますように、 (1)、(2)、(3)があり、3頁の(1)の「我が国の医療安全対策の現況」です が、これは行政の動きと次の頁の関係団体の動きを、ごく簡略にまとめてあります。  4頁の(2)の「諸外国の状況」ですが、これは長谷川委員に主としてまとめていた だいたものです。ここにはまだ載せてありませんが、図表等の資料も若干付けることに なろうかと思います。英語圏3国、日本およびそのほかの国々という状況を説明いたし ます。またWHOにおける最近の動きも最後に触れることになろうかと思います。  5頁の「概念及び用語の整理」です。(1)の検討の範囲ですが、医療事故を未然に防 止して、医療の安全性を高めるという、この検討会の趣旨に則り、その範囲で報告書を まとめるという方針にさせていただきました。  (2)のリスクとリスク・マネージメントの一般的な用法ですが、これは用語の定義と いうのが資料2にも出ていますが、ここではいちばん中心になる「リスクとは」、ある いは「リスク・マネージメントとは」ということについての、これまでの経緯および現 況を記しました。  6頁の項目3の「医療安全対策の基本的考え方と国の責務等」ですが、(1)〜(6 )がこの中にありますが、全般的なことに触れた(1)に続いて、(2)以下が国の責 務、地方自治体、関係者、医療従事者、個人、そして患者さんに期待される役割という 順番で書いてあります。この中については、後ほど討議のときにご覧にいただければと 思います。それぞれの立場でのあり方、役割、責務といったものを記しました。  10頁です。4の「医療機関における医療安全対策」ですが、ここはかなり頁を費や しましたが、(1)から(3)まであり、(1)の基本的考え方で、安全文化を根付か せようということが、この案の骨子になっています。そのためには医療機関の中でどう いうことが望まれるかが書いてあり、(1)〜(6)がその内容です。  12頁の(2)「医療機関内の体制整備等」ですが、これもやや具体的にどのような 体制整備が求められるかを、多少具体的な事項も踏まえて触れてあります。(3)の「患 者相談窓口設置」も同様です。  13頁の「職員の配置」ですが、ここも医療職というのは大変多岐に渡りますので、 それを総合して医療安全を高めるための配置をしなければいけないということで、(4) に○印が付いていますが、上から4つ目の「また、高度化・複雑化した医療においては 、専門看護師等の高い技能や判断力を有する職員の積極的活用をすることも有効である 」。「専門看護師等」と書きましたのは、いろいろな医療職が総合的にかかわらなけれ ばいけませんので、本来、その職種のすべてを網羅すべきかと思いますが、いまのとこ ろ、看護師がいちばん専門職として確立していますので、それを代表に書かせていただ いて、その他の職種も当然そこに入るということを滲ませていただいたつもりです。  (5)の教育・研修です。これはまた後ほど出てきますが、おそらく最も大事なところ だろうと思いますので、繰り返し書くことにしました。14頁の他機関との連携に触れ ています。  (3)の「医療機関内の安全管理のための活動方策」ですが、(1)から(4)までありま す。標準化等の推進で、「標準化」という言葉に若干異議のある方もあるやに伺ってい ます。「医療のマニュアル化ではないか」というご意見もありますが、そうではなく、 安全を高めるためになるべく漏れのない、質の高い医療を提供するためにはどうしたら いいか、そのための1つの手段という考えに立って書いております。クリティカルパス 、あるいは医療機関のルールの明確化も同じです。  15頁の「書式・記載方法の統一化等」の辺りは、おそらく医療機関の枠を越えた、 場合によれば何か行政的な配慮も必要な部分かと考えています。  (2)の良好な情報伝達の促進です。これは当然ですが、職員間、あるいは部署間の情 報が円滑に伝達されなければいけませんし、そのためには最近急速な進歩を遂げている さまざまな情報機器、あるいは技術の活用が望まれるということを、多少具体的なもの を挙げて説明しています。  16頁です。診療情報の管理、ICDに準拠して医療機関内の診療情報を的確、かつ 正確に管理しなければいけないということを書きました。  「インフォームドコンセント」も、だいぶ我が国で定着してきていると思いますが、 さらに、これの活用、徹底が必要だろうと感じます。  17頁の(3)の報告システムですが、これも現在、厚生労働省の研究班で調査してお りますが、まだまだ全国が同じレベルというわけには至っておりません。しかし、これ は是非これから推進する必要があると考えています。  (4)の医薬品の管理体制ですが、これも医薬品にかかわる各職種が連携して、あるい は医薬品を提供する立場の方々も共同して安全に当たらなければいけないということを 書きました。  18頁です。(5)の医療用具ですが、これも同様に医療用具に携わるさまざまな職種 、あるいは医療用具を製造・提供する方々等の連携が、十分必要だろう。それについて の継続的な教育・訓練が必要だということを書きました。  (6)のその他、作業環境・療養環境の整備等ですが、これもまだまだこれからいろい ろな研究が行われなければいけないと思いますが、医療の環境の整備が医療安全の確保 、向上に大きな役目を持つことは疑いのないところです。  19頁です。5の「医薬品・医療用具等の安全性向上」です。この項目だけではなく 、全体を通じて用語、あるいは語句については、これまでのさまざまな文書との整合を 図る必要があろうかと思いまして、字句・語句については、若干の改訂があることをお 許しいただきたいと思います。医薬品・医療用具の安全性向上ですが、まず基本的な考 え方としては、物、人、環境、そして情報が統合されなければいけないということを中 心に書いています。  20頁です。医薬品については、これもこの検討会でも、いろいろご指摘がありまし たが、名称・外観の類似性を避ける、あるいは安全性向上のために、企業間における標 準化・統一化を図る。そして医薬品の情報を伝達・活用する。いずれも非常に重要なこ とかと思います。  21頁の(3)の医療用具です。これも設計段階から安全を確保するようなものでな ければならないと思いますし、医療機関内の使用法、保守に関する教育・研修も、さら に充実しなければいけないと考えています。  22頁です。(3)の医療用具情報の伝達・活用ですが、これは医薬品と同様な体制が 将来望まれますし、保守管理というのは医薬品と異なって機器ですので、常に継続的に 行わなければいけないと考えています。  6の「教育研修」です。この部分が最も重要な部分ではないかと考えています。基本 的には医療従事者、安全管理を行う者が、常に継続的に教育研修を受け続けなければい けない。その教育研修の源としては、患者さんからのいろいろなご意見も含めたさまざ まな情報を常に組み入れていかなければいけないと書きました。当然ながら倫理観、心 構え、知識といったようなものが、個人のレベルで検証されなければいけないと記載し ました。  23頁の(2)の「卒前・卒後教育の役割分担と連携」ですが、卒業前、卒業後のど ちらもできるだけ具体的にしてはいけないこと、しては非常に危険なことを教える必要 がありますし、卒前と卒後の教育の連携、一貫性が各職種にわたって、極めて大切であ るということを書きました。  24頁です。(3)の「修得内容の明確化」ですが、どういうことを修得しなければ いけないか、また修得できているかどうかを、どのように判定するかといったこと、こ の検討会議で提出された議論を基に書きました。  (4)の「効果的な教育を進めるための方策」です。この辺がこれからも大いに工夫 が必要なところですが、教育効果はどのような手法を用いるのが効果的か。ここが最も 難しいところですが、教育の効果をどのように判定するか。25頁の指導体制をさらに 確立し、指導者自身の継続的な研修も必要、と書きました。  25頁の(5)の「管理者及び安全管理実務担当者の教育」ですが、これも当然で、 管理者、安全管理実務担当者を継続的に教育する。そのための方法、手段、体制等の整 備が必要と書きました。  25頁の7の「医療の安全向上のための方策」です。ある程度具体的なことですが。 (1)〜(7)に分かれています。(1)の関係者をあげての医療安全の向上に向けた 取組、26頁の(2)の患者の参加を促進するための相談機能の充実、(3)の国民への 情報提供、(4)の医療の安全性向上のためのインシデント事例の収集・分析・還元等 、27頁の(5)の第三者評価、(6)の医療技術向上に必要な情報の提供、(7)の医 療安全に資する調査研究といったものが医療の安全向上のための方策として挙げたいと 考えました。  28頁の8の「当面取り組むべき課題」です。これは(1)から(6)までありますが 、(1)の「医療機関内の安全管理体制の充実」について、ある程度具体的なことを書 きました。(2)の医薬品・医療用具等の安全対策の充実、(3)の医療従事者に対す る安全教育の充実、(4)の患者の視点に立った情報提供の相談機能の充実、30頁の( 5)の医療安全に関する医療関係者の共同行動の促進、(6)の医療安全に資する調査 研究の実施といったことを、当面取り組むべき課題として挙げました。  最後の「おわりに」の結語はごく短くまとめる予定で、文章としてはここには掲げて おりません。 ○森座長  大部のものを要領よくご説明いただいたと思います。本日配られている資料のほかに 事務局で報告書に使う、あるいは今後一般に使われるであろう用語を整理した資料とし て添えられておりますし、もう1つは、本日ご欠席ではありますが、飯塚委員からご意 見が出ており、それが資料として添えられておりますので、事務局からこの2つの資料 について説明していただきたいと思います。 ○新木室長  それでは、資料2「医療安全に関係する用語の整理(案)」について、ご説明いたし ます。先ほど堺委員から説明していただきましたように、2章の(3)の「概念及び用 語の整理」の延長線上として議論いただく中で、特に別途紙として用意して議論してい ただいたほうがいいのかなということで用意したものです。したがいまして、資料2に ついては、方針でこういう用語の整理を決めていただければ、全体の本文もこれに合わ せて用語の整理をしていくものです。  まず、資料2では2つのことについて議論をお願いしたいと考えています。(1)の「 医療事故及び医療過誤」です。医療事故及び医療過誤については、四角の中のような使 い分けが適当ではないかと考えております。1つは、医療事故ですが、医療にかかわる 場所で、医療の全過程において発生する人身事故一切を包含し、医療従事者が被害者で ある場合や廊下で転倒した場合なども含む。  医療過誤は、医療事故の発生の原因に医療機関・医療従事者に過失があるものを言う 。  補足として3点ほど掲げています。次に(2)、アクシデント事例とインシデント事例 です。これは片仮名のままこれまで使われてきていますが、各々の項目の最後にあるよ うに、日本語で使うことを提案しています。アクシデント事例についてですが、通常、 医療事故に相当する用語として用いる。アクシデント・レポートとして報告制度の対象 となる場合は、目的や個別の医療機関によって対象となる範囲が異なる。本検討会議で は、今後同義として「事故事例」を用いる。  インシデント事例ですが、日常診療の場で誤まった医療行為等が患者に実施される前 に発見されたもの、あるいは誤った医療行為等が実施されたが、結果として患者に影響 を及ぼすに至らなかったものを言う。本検討会議では、今後同義として、どちらかを検 討していただければと思っていますが、「未然事例(注意事例)」を用いる。補足を付 けています。  続きまして、資料3の飯塚委員からのご意見について簡単に説明いたします。飯塚委 員は、本日は欠席ということで、2月17日に事務局に対してこの場で参考までにご意見 を提出するよう依頼を受けております。「安全に関する標準化規則の意義、特に医薬品 ・医療用具等の安全性向上のために適切な規制を設け、また標準化を推進すべきである 」という趣旨から、2枚の紙をいただいております。ご参考にしていただければと思い ます。また資料2の参考として、「参考資料」を付けております。 ○森座長  まず最後に事務局から説明のあった事柄から済ませていくのがよろしいかと思います 。資料3の飯塚先生から出されているものについては、最後のとりまとめをするときに 起草委員の方々の中でできるだけこのお考えも取り入れていただければいいという程度 でよろしいですね。  資料2が医療安全に関係する用語ですが、これは論議し始めると、相当時間がかかる かもしれません。一応いまの時点での事務局の考えをここに示しておりますが、いかが でしょうか。  いちばんの問題は「アクシデント」とか「インシデント」という言葉は、もともと英 語でありながら日本の考えをそのままアメリカとかイギリスへ持っていって、この言葉 を使って通用するかというと、なかなかしにくい面があるように感じていますが、とり あえずこれでよろしいでしょうか。  あるいはインシデント事例の日本語として、「未然事例」という言葉を用いることを 、一応ここでは推奨しておられますが、いかがでしょうか。これに相当する英語では「 ニアミス」ですね。日本では私の知る限り、製造業、その他では「ヒヤリ・ハット」と いうのは、随分定着していると申してもいいぐらいの日本語だろうと思いますが、一部 には若干、「医学用語としてはふさわしくない」という反対もあるかもしれません。「 未然事例」というのも難しい言葉ですね。  それから「事故」と「過誤」も本当にこういう立場で同等のものとして相対する言葉 として分けてよろしいのかどうか。一般的には「事故」というのは、大体1つ、2つと 数えられるようなものを指すことが多い。「過誤」も数えられるようなことを指すこと もありますが、どちらかといえば、全般的に「誤り」とか「過ち」を示す場合が多いか と思います。こういう2つの言葉は相対する同等、同格のものとして比較として使って いいかどうかという問題も残ると思います。何かご意見のある方はおっしゃっていただ いきたいと思います。  いかなる言葉を使うにせよ、こういった言葉が、この検討会で認められるとすれば、 今日行われている「インシデント報告」などという言葉も、将来は変わってくるかもし れませんね。この問題はお考えおきいただいて、折に触れて事務局、あるいは起草委員 にご意見をお話いただければと思います。  進め方は大ざっぱに2つあろうかと思います。1つはどこの場所でもいいから、随時 いかなる事柄でもご意見をいただきたいというのが1つですし、もう1つは、例えば頁 を追ってというか、項目を追って進めていくという方法もありますが、いかがいたしま しょうか。 ○堺委員  それぞれの大項目がありますので、大項目ごとぐらいに討議し、随時ほかの所にも戻 るということでお願いできればと思います。 ○森座長  それでは、いつでも立ち戻っていただいていいという条件で、一応項目を追ってまい ります。もし時間内に最後まで到達しましたら、そのあとは全般的な事柄でご意見をい ただくことにしたいと思います。  そうしますと、材料は資料1です。最初の1枚、2枚は目次のようなものですから飛 ばして、3頁に「はじめに」というのがあります。この辺りはいかがでしょうか。 ○岸委員  「はじめに」全体を通読して、1つインパクトが欲しいと思います。この中にも触れ られていますが、アメリカのレポートなどは「誤りは人の常なり」という表題を掲げて います。私も、こういう時系列を追った「はじめに」という説明の冒頭に、教育研修の 中にある「患者には最大の医療を受ける権利がある」、あるいは「医療従事者にはその 権利を最大限尊重する義務がある」という趣旨の、この報告書をすべて包含するような 、一種のキャッチフレーズのようなものを、掲げていただければという気がします。 ○森座長  おっしゃるとおりですね。この報告書の副題的な、いま言われたキャッチフレーズに 相当するようなものを、何か心の中では考えておられますか。 ○堺委員  実は報告書とすべきかどうかという議論があります。当初は「グランドデザイン」と いう用語も用いられていましたが、日本語でいい言葉はないかということを苦慮しまし たが、なかなかいい言葉が見付かりませんでした。何か明治時代の言葉ではないかと思 うような古い言葉で、今風の若い人々も含めた国民の心を捉えるような、「こういう文 書なのだ」という題を、まだ考え付くことができないでおります。 ○森座長  「To ERR Is Human」というのも、実は随分古い言葉ですね。ほかに何かご意見はあ りませんか。確かに「はじめに」という部分は、かなり重要な部分です。ですから、副 題を考える考えないにかかわらず、「はじめに」の中に、いま岸委員が言われたような ことを、何か1つ入れていただくと印象強く受け取れるかもしれませんね。 ○山崎委員  私もいま岸委員が言われた印象と全く同じ印象を受けておりました。淡々と事実関係 を述べて対策に入っていくという形式がいいのかなとも思ったのですが、例えば、6頁 の3で「基本的考え方と国の責務」というのがあります。ここに「医療の安全と信頼を 高めるために」というこの検討会議の目的が書いてあります。1つの案として、「はじ めに」という順番を、これをむしろ先に持っていって、外国の状況等については、その あとにこのような状況が現在ありますという形にすると、この検討会議の努力が、この 報告書として世の中に出ていくときのインパクトが、もう少し出てくるかと思います。  患者中心、ペーシェント・センタード・メディスンに視点を移そうということで、患 者さんの安全を第一に考えて我々は作業をしてきたのだということが、最初に分かって いただけるような構成にしたらどうかと、私は感じました。 ○堺委員  岸委員、山崎委員のご意見、誠にそのとおりだと思います。ただ、1つ少し工夫が必 要だと思ったのは、常に関係諸団体がさまざまな形で医療安全に取り組んでおられます ので、そこへこのような文書が、厚生労働省とは言え出てきますと、「一体どういうわ けでこういうものが出たのだ」という質問、疑念が生じる可能性もあるかと思います。 理念とどうしてこういうものができたのかという両方を書いておく必要が、最初のほう にあるかなという気もしますが、いかがでしょうか。 ○全田委員  いまから10年前に、厚生労働省で「インフォームド・コンセントのあり方の検討委員 会」を作ったのです。この報告書は、先ほど岸委員がおっしゃったように、文学的なと いうか、普通の非常にソフトな言葉で始まっています。ですから、そういうことも報告 書として間違いではないと思います。「インフォームド・コンセントのあり方検討委員 会」の冒頭を見ていただければ分かりますが、そういう報告というのは、非常にアトラ クティブです。 ○新木室長  たしか「元気の出るインフォームド・コンセント」という言葉だったと思います。 ○全田委員  そうです。 ○森座長  その類のやさしい言葉ですね。  その反面、「平成11年に神奈川県で起こった事柄」とか「特定機能病院等で」などと いう事柄も、もしかしたら要らないのかもしれませんね。1つの直接の動機ではあるに しても、全体からの考えとしては、そういうのがあったから検討するというよりも、社 会の推移の如何にかかわらず重要なことであるからということですね。「はじめに」は このぐらいでよろしいでしょうか。 ○岩村委員  非常に立派な骨子だと思って読ませていただきましたが、読み手として誰を想定され ているのかなというのは、若干気になりました。この中でもいろいろな分野の話が出て きますので、この報告書がどういう人たちに読んでほしいのかということが、「はじめ に」の所で書いてあると、ある意味ではこの検討会議の意図もそれなりに明確になるの ではないかと思います。 ○堺委員  実は、起草委員会の検討の段階で原案では、医療機関への要望がもっとたくさんあり ました。しかし、その後の議論を経て、医療機関だけではなく、国、国民、患者さんに 至るまでトータルなシステムが医療安全というものに必要だろうという観点から、いま のご指摘の焦点がぼやけているという欠点は確かにありますが、医療安全というのは、 すべての人々にかかわるものだという考えで書いております。 ○岩村委員  私が言いたかったのは、いろんな人に呼び掛けているとすれば、幅広く読んでほしい という趣旨が、「はじめに」の所にあってもいいのではないかということです。 ○森座長  おっしゃるとおりですね。そのためには言葉遣い1つにしても、多少配慮して、時に はやさしい言葉を使わなければいけないかもしれませんね。 ○岩村委員  そういう意味では、やや文章が堅いなという印象は持ちました。 ○森座長  ありがとうございました。それでは、いつ戻っていただいても結構ですが、とりあえ ず先へまいりましょう。「国内外の医療安全対策の状況と概念の整理」ということです が、3頁ほどに渡って書かれています。この辺りはいかがでしょうか。あとの言葉の定 義とも関係してきますが、4頁の中ほどにアメリカの紹介があって、「年間に4〜9万 人が医療事故で死亡している」とありますが、これはいいのでしょうね。 ○新木室長  これはIOMのレポートを引用しております。 ○森座長  ただ、4万人の患者さんが医療事故で亡くなったというと、4万人の医師が4万人の 患者さんを殺してしまったというような、そういう印象も受けると思います。原語は私 が知っている限り、何とかかんとかdie as result of medical errorなのです。それを 日本語として「4万人が医療事故で死亡している」と言って、アメリカ人が怒らないか です。日本語からいうと医療過誤でしょうか、やはり医療事故ですか、その辺も考えて いただきたいと思います。何かご意見ありませんか。 ○長谷川委員  日本の事故の現状ですが、もちろん正確な現状を知るのには、かなり詳細な積極的な データが必要ですが、一部の学会、例えば、内視鏡学会とか整形外科学会などでは、か なりいい調査をしていますし、一般的な医療訴訟等の動向は少なくとも把握されていま す。諸外国も必ずそういう現状認識が書いてあるので、いかがでしょうか。 ○森座長  そうですね、「国内外の」ということが大きく謳ってありますから、内のことももう 少し入れてあればと思いますね。 ○山崎委員  これは安全対策のために何を考えたらいいかという報告書ですので、その経緯を踏ま えて対策というのは考えられるのは当然ですが、例えば、そのような経緯をかなり詳細 に記した資料は、むしろ資料のような形で付けたほうが報告書としては形が整うのでは ないかと思います。 ○森座長  確かに、もしこれを「グランドデザイン」という名前の報告書ということにするので あれば、いま言われたような資料ということもいいかもしれませんね。 ○堺委員  これが報告書であるのか提言書であるのかという論議もいたしました。この検討会議 では現状分析ではなく、今後いかにあるべきか、という議論が中心だったと思いますの で、それを踏まえて書いたつもりです。 ○森座長  それにしても参考資料みたいなものを付けることは、スタイルとして可能ですか。 ○新木室長  可能です。 ○児玉委員  先ほどの森先生の「アメリカで4万4,000人死んでいる」とまで書いてしまっていい のかという疑問ですが、もともとIOMレポートの原文は、based on findings of one major studyとあり、あるメジャーな研究によれば4万4,000人で、another study puts higher number、別の報告では、また9万8,000人とも言われていて、このときに作っ たレポートではなく、どちらかは忘れてしまいましたが、『コクランスタディ』という 有名な報告書は、だいぶ以前からあるものです。  これらの数字は小さいフィールドから全体を推計した推計値ですから、「死亡してお り」と断定するのではなく、「との報告もあり」という形で、原文に忠実に趣旨を活か すとしたほうがいいのかもしれないと、ご指摘を聞いて思いました。  医療事故の実情から始めて、それに対する対策という組み立てを明瞭に記載するとい うのが本来の報告書のあり方だろうと思いますが、アメリカの「IOMレポート」でさ え実情の全貌は分からない。現状の問題点を必ずしも明示できないところ自体が問題な のではないか、という言い方もできると思います。 ○森座長  ありがとうございました。この辺りはよろしいですか。それでは先にまいります。「 医療安全対策の基本的考え方と国の責務等」については、この辺りはいかがでしょうか 。 ○堺委員  先ほど申し上げたことと一部重複しますが、医療安全の推進は、やはり国も含めたす べての機関、そしてその医療機関の従事者、あるいは患者さんに至るまでの個人、すべ てを包含するものだろうという考え方から、この章を立て、とは言え、医療機関の責務 は極めて重大ですし、また現場において、さまざまなことをしなければいけないという ことで、医療機関における対応を次の4の章にするという構成にしました。 ○三宅委員  8頁の「医療安全を確立するために」の(2)の「医薬品・医療用具関連の企業」の3 行目に「より安全な製品の開発供給」というところに、国の責務ということで、改善の 指導をするとか、何かガイドラインというか方向付けをすることが入るべきではないか という気がしています。  その次の「安全情報の提供に努める」というところも、「努めるとともに、安全に対 する標準化の作成」、あるいは「規制及び指導を行う必要がある」という言葉を入れた ほうがいいのではないかと思います。 ○森座長  そうすると、いま言われたことの一部は、本日の資料の3の飯塚先生のご意見とも若 干同じ方向ですね。 ○堺委員  いまの三宅委員のご意見と同じ8頁の上から2行目の「国の責務」の一部ですが、「 医療安全対策の基本的指針や遵守すべき基準等の策定」というところに、そのようなも のを滲ませていただいたつもりです。そこをもう少し強めるように、という意見ですと 、また工夫をしたいと思います。 ○全田委員  例えば、7頁の「患者への十分な説明と患者の参加」というのは、辻本さんのほうが よく分かっていると思いますが、この表現は、どうも医療を施す側からの雰囲気なので す。やはりこれからの医療というのは、確かに説明も必要ですが、むしろ一緒にどうい うシステムを作っていくかが問題だと思います。その辺を検討いただけば有難いという 気がします。 ○辻本委員  ありがとうございました。施すのではなく、提供という意識を持っていただきたいと いうことをお願いいたします。  その関連になろうかと思いますが、10頁の(5)の最後の○印ですが、「患者が診 療内容を十分理解し」と始まって、「自己の予防に資することもある」、これは日常用 語としてあまり使わない言葉なので、まずここを患者が読んでも分かるように表現を変 えていただきたいということをお願いしたかったのです。  もう1つは、その項の最後に「患者に対して、診療などに伴うリスクも含めた説明な どを積極的に行う必要がある」とありますが、確かにリスクの説明を行うことは大切で すが、一方的に「リスクを説明しましたよ」というだけの関係で終わらずに、患者は当 然に不安という気持になるわけですから、その患者の不安に寄り添うということを一文 是非加えていただきたいと思います。 ○森座長  そういうことを随分伺ったことがありまして、いわゆるインフォームド・コンセント などに際しても、自分自身が手術を受けようと思うと、本当に大変な心境になりますね 。ほかにいかがですか。 ○堺委員  いまの辻本委員のご意見は、誠にごもっともと思います。私どもが表現で苦労してい ますことの1つが、まさにそこです。今後いろいろな施策を検討なさるための資料とい う性格もあろうかと思います。その意味では、私も官庁の用語には極めて疎いのですが 、官庁での言葉の使い方もあるかと思います。一方、患者さん、あるいはごく一般の市 民が日常使う言葉もあるわけで、その辺の整合をどう付けたらいいのか、若干実は苦労 しているのが実情です。 ○森座長  おっしゃるとおりですね。どの程度の言葉にするかですね。 ○全田委員  分かります。私もずっと国家公務員をやってきました。ただ、私は時代が変わると思 います。例えば、「何々はいかがなものか」というのをよく使われますが、はっきり言 ってもらったほうが国民は分かるのです。本当に医療そのものが変わってきたとすれば 、そういうことを先取りすることも重要なことだと思います。 ○井上委員  先ほどの8頁の(4)の(2)ですが、医薬品、医療用語関連の企業の運営そのものは 、法的規制になっていくものではありません。医薬品の類似名称とか外観類似で事故が 起こっていることは明らかですので、このグランドデザインの中では、三宅委員、飯塚 委員のご意見のような踏み込んだ記載がもしできればやっていただければというふうに 考えております。 ○堺委員  いまのご意見も踏まえまして、三宅委員、飯塚委員のご意見をどこにどのように入れ るかということは工夫させていただきたいと存じますが、そのような方針は確かに承り ました。 ○森座長  専ら堺先生にばかりご発言をお願いしておりますが、ほかの起草委員の方々、あるい は起草委員でない方々もお答えの言葉をいただければありがたいと思います。  9頁に報道機関に対する言葉が1つあります。最新のことを報道していただくのはあ りがたいことですが、それによって社会の人々が過大な期待を持ってしまうようなおそ れが時々ありますので、ある意味で正確な報道を期待していいかもしれません。世の中 の人はすぐ、実験の結果でも何でも、もう明日から方々の病院でやってもらえるものだ というような、ある意味で早とちりをしがちです。  今お考えいただいている辺りの部分は、かなり根幹を成すところであるかと思います が、よろしいですか。 ○三宅委員  先ほど辻本委員と全田委員がおっしゃったことについてですが、製品の質ということ を考えるときに、普通の工業製品でも、生産者と消費者の間には非常に情報の偏りはあ るのです。ですから、生産者がいかに消費者の要求を斟酌して作るか。私はいま辻本委 員とか全田委員がおっしゃったことについては、書いていることはこれで十分だと思う のですが、医療者側が患者さんの立場とか状況とか心情とか、そういうものを斟酌して 行うという重要性、そういう表現を使えばわかっていただけるのではないかという気は いたします。 ○辻本委員  「斟酌」ということをどう受け止めてお聞きすればいいのか、いま迷ってお聞きしま した。患者の立場に立ってというふうに、医療者の側がいくら思っていただいても、本 当にその人の気持にはなりきれないという現実があります。患者の立場に立ってという ことを一生懸命していただくことがかつてのパターナリズム医療ということだったわけ ですが、これからは世代交代で患者もものが言える人たちが増えてきておりますので、 患者しか持ち得ない情報をきちっと確認する。つまり、そこで対話、やり取りをすると いうことの中で、相互理解、単なる合意ではない違いを認め合った中で、きちっとした その目的に向かうという相互理解を努力していただく、という時代になってきていると 思います。 ○三宅委員  まさにそのとおりなのです。そういうものを受けたうえで、医療者側が斟酌をしなけ ればいけないと、私はそう思います。 ○辻本委員  その辺りのニュアンスをどう加えていただけるといいのでしょうか。 ○森座長  いろいろなお話を含めて、その辺になってくると、規則だとか指導だとかというより も、もう人そのものみたいなところもありますね。確かに患者さんの立場に立ってとい う言葉よりは、日本語で言えば、立場だけでなしに、もうちょっと中身の気持を察して というほうが適切かもしれません。ほかにいかがでしょうか。これはいつでもお戻りい ただいていいということで、先にまいりましょう。  10頁の下半分は、4、「医療機関における医療安全対策」です。これも非常に大き なテーマで、量から言ってもこの報告書なりデザインの中の非常に大きな部分を占めて おりまして、19頁の上の2行ぐらいまで、10頁近くにわたっているところです。こ のセクションについて、改めて一言おっしゃいますか。 ○堺委員  いいえ、結構です。最初かなり大部な草案だったものをここまで圧縮いたしましたが 、骨子は失われていないと思っております。 ○森座長  いまでもかなり大部と拝見しておりますが、お考えの途中ではこれでも圧縮したもの であるというご披露がありました。この10頁の所でどこでも結構ですが、いかがでし ょうか。 ○三宅委員  2つ目の○の所ですが、その下の所に「大学の医局から」という所があります。その 下に、「チームの一員としての意識不足も指摘されることから、意識変革が強く求めら れる」という所があります。これは、誰が何をするのかということがあまり明確でない ような気がしますので、「大学における卒前教育の中で医師の意識変革を」というふう に、きちんと書かれたほうがいいように思います。 ○森座長  「特に大学の医局から交代で勤務する医師」、この言葉は引っかかる方があるかもし れません。実情ではあろうと思いますけれども。 ○堺委員  あまり起草委員会の内情をばらし続けるのもいかがなものかと思いますが、実はここ はかなり議論をいたしまして、最初の試案にはもっとどぎつい言葉が出ておりまして、 ここまで薄めたというのが実情です。もう少し工夫をいたします。 ○森座長  そうですね。このままですと、少なくともこういう制度を容認しているというふうに 受け取られかねないこともあるかもしれません。この辺の所は、おそらく相当苦心をな さったところでしょう。 ○全田委員  いま大学の独立法人化に向けて、管理者の指導力というのはかなり強力にしなさいと 。そういう中で(1)の(2)だと思うのですが、病院長が絶大なる力を持つことによっ て、本当に医療の安全が図れるかということは、私は真剣に考えていただきたいと思う のです。大変失礼ですけれども、病院長というのは我々と同じレベルなのです。だから 、やはり医療というのはチーム医療というか、それぞれの職種がそれぞれの分野で活躍 することがまともだと思うのです。そういうことが医療の社会でいいかどうかというこ とは本当にお考えいただきたいと思うのです。  1人の人間に権力を持たせて、責任体制をしっかりさせるということはわかります。 ただ、私は医療というのはやはりチーム医療だと思います。申し訳ございませんけれど も、お医者さんだけ、歯科医師さんだけ、看護婦さんだけ、あるいはほかの医療技師の 方々で、私は患者さんが治るとは思っておりません。薬剤師だって、そこに参加してい るわけです。だから、チーム医療として考えていくというときに、病院長とか責任者に そういうことを持たせるのはどうかということはご検討いただいたのだと思います。 ○堺委員  あまり私だけがお答えするのもいかがかと思いますが、これは起草委員の立場ではな くて、病院の運営に携わっている者からの意見です。現在の医療法では院長は医師です が、これはおそらく、そう遠くない先にかなり緩和されると思います。組織の責任者と いう立場からこれを書かせていただきました。決して医師という特定の職種を念頭に置 いたものではありません。これからますます日本の医療は変革してまいりますし、この ようにものごとがどんどん変わっていくときに、もちろん全員の合議というのは必要な のですが、スピードが求められる時代には、誰か1人に最終的な舵取りを任せませんと 、船はどこへ行くかわからないということかと考えております。これは企業経営、ある いは国家の運営と同じだと思いますが、ある程度大きな組織を動かすのにどのようなや り方がいいか。合議制でいいのか、それとも最終的に誰か1人が舵を握るべきか、そこ の判断の違いというものかと思います。 ○全田委員  意味は理解しています。 ○長谷川委員  長年、病院管理を研究してまいった研究員の立場で申し上げますと、残念ながらこれ まで、全田委員がおっしゃったようなことが医療事故につながっています。ここの解釈 は必ずしも病院長とは書きませんけれども、部門部門における解釈としてリーダーシッ プ、特に安全管理に関しましては最初のリーダーシップがいちばん重要となっています 。したがって、これでいいのではないか。特に安全管理に関しましては、強大なリーダ ーシップ等権限を持って組織を引っ張る、ということが安全管理の出発点の定義だと思 います。 ○森座長  どうもありがとうございました。ほかに何かご意見はありませんか。権限を持つとい うことと、その人1人の責任で、あとは知らないよということでは決してないわけです からね。 ○長谷川委員  それぞれの職員が職種を超え、あるいは部署を超えまして、意味合いにおいては1人 の人間がやれるというわけではありませんので、全く先ほどおっしゃったとおりだと思 うのです。ただ、いままではっきり責任が明確にされていなかったのが事故につながっ たのではないかと私は心配しております。 ○矢崎委員  いまの病院の中での責任体制、縦のラインですけれども、もう一方では非常に細かな 医療の手技も、いろいろな職種の人が関与して行われますので、11頁の(4)の「組織 横断的な取組み」というのが極めて重要なポイントで、いまは看護部と診療部、あるい は薬剤部との連携は比較的保たれていますが、またさらにそれを広げていく必要がある のではないか。基本的な考え方の中に安全文化と組織文化という良い言葉を使われたの で、11頁に例えば「事故防止策を進める上での横断的立場を調整し」とあります。そ ういうような対策を進めること、そういうような組織文化を醸成するようなことが重要 であるような言葉を、ここでもう1回使われたほうがいいかと思いました。 ○長谷川委員  編集上の工夫なのですが、12頁から突然細かい話になりまして、院内体制がかなり 細かく書いてあります。そうすると、これが提案書なのか、グランドデザインなのか、 マニュアルなのかというご議論があるわけですが、いくつかのオプションがあるのかな と。例えばこういう細かいのは後ろに資料を適用するというのもあるでしょうし、逆に これはこのままにしてサマリーのようなものを作るという案もあるでしょうし、その中 間として主要なポイント、例えばこういう細かいことだけ後ろにあって、基本的考え方 みたいなものを中心にまとめ直すと、そういうのがあるのかなという感じがいたします 。起草委員ではあるのですが、ほかの先生方のご意見はどうなのかなというふうに思い ます。 ○森座長  どうもありがとうございました。いろいろな選択肢をお示しいただきましたが、もし この程度の大きさのものになると仮定して、何か2、3頁のサマリーのようなことはお 考えですか。 ○堺委員  はい。冒頭に2頁または3頁の要約を付けるべきであろう、ということは起草委員会 内部で論議しております。 ○森座長  確かに忙しい人はこんなものを全部読んでくれるとは限りませんので、そういうのを お付けいただいたほうがいいかもしれませんね。 ○梅田委員  私も是非それは作っていただきたいと、このように思います。 ○中村委員  現場からの話なのですが、看護学校の講師会を開きました。次年度の計画といたしま して、医療安全対策、これを取り上げようと提案いたしました。多くの先生方はそれに 賛成していただいたのですが、そこで出てきたのは、大体それはどの項目に入れたらい いのだろうか。いまでも精一杯の時間なのに、さらにそういうような時間をとれるのか 等々、質問等がありました。それでも、内容的にはかつてないような盛り上がりをいた しました。私は極めて重要だと思うのですが、そうなりますと本日いただいた骨子だけ では、具体的な取組み、どのようにしたらいいかというのが見えてこない部分がありま す。できたら部分的でも結構なのですが、マニュアル、あるいは具体的にどのようにし て取り組めばいいかというようなものをこの案に加えて出していただければ非常に助か るのではないかと、そのように思います。 ○森座長  それはいかがでしょうか。 ○堺委員  冒頭に申し上げましたように、これは国から個人に至る全部を包括するという立場で 書いてありますので、いちばん最後の8、28頁からの「当面取り組むべき課題」という 所に、ある程度書かせていただいたつもりです。これ以上の細かいことになりますと、 もしかしたら資料的なものを付ける必要があるかもしれませんが。 ○大谷課長  特に行政上も有用な、例えば行為規範的なもの、そういうものについては、これのエ ッセンスをこれがまとまり次第集めまして、それはまた関係者に使えるような形で行政 の側としても提出したいと思っておりますので、まさに今おっしゃったのは、私どもの ほうで工夫させていただきたいと思います。 ○森座長  一口に「医療機関」と言ってもいろいろあるでしょうから、最終的には各医療機関で そういったものをお決めになるのかと思いますが、標準になるものとか、これだけは必 要、欠かせないものとかというものは何かあるといいかもしれませんね。 ○辻本委員  質問なのですが、部会のほうでお作りになった「10の要点」というものがありまし たね。ああいうものも、資料という形で入るのでしょうか。といいますのは、現在、各 医療機関にあの要点10項目がどれぐらい普及しているかということを訪問先の病院で 確認するのですが、やはり現場にはほとんど通達されていないという感じです。折角部 会があれだけのエネルギーをおかけになったので、非常に基本ということではあります が、安全というのは基本だと思いますので、あの10の要点などもここにしっかりと組 み込んでいただきたいと思います。 ○堺委員  この報告書はこの検討会議の報告書ですので、この検討会議でお作りになられたもの は、できるだけ資料の形で入れさせていただければと思います。 ○森座長  方々の医療機関で持っておられるものを全部集めても、あまり意味ないことだと思い ますが、必要な資料をお付けになるといいかもしれません。 ○望月委員   12頁の「医療機関内の体制整備」という所なのですが、ここを全体的に読ませてい ただいたときに、医療機関によっても、いろいろできること、できないことがあって、 先ほど座長のほうもおっしゃられていましたが、標準的なこの辺りのことはやったほう がいいというのを、出せるとしたらその辺りで出すしかないのかなとは思うのです。ど んな組織、横断的な体制で、どういうふうな部門があって、安全管理のために医療機関 としてやっていくのかという形が、文章だけですと見えにくいので、可能でしたら、そ ういう概念的な図式化した組織体制のようなものを加えたほうが、読者にとってはわか りやすいのかなという気がいたしました。 ○森座長  それはどうですか。 ○堺委員  組織図のサンプルを作るということは可能かと思います。ただ、医療機関によって、 かなり制度実情が異なると思います。ですから、どこの医療機関もこういう組織図にし なさいというふうに受け取られることは、逆にちょっといかがなものかと思いますが。 ○望月委員  私ももちろん冒頭にも申し上げましたように、先ほど座長がおっしゃられていました ように、標準的なところで落とし所として目に見える形というのが出せるほうが理解し ていただきやすいかな、というふうに思いました。 ○森座長  標準的と言っても、規模だけから言っても、様々です。なかなか困難で、最終的には 各医療機関でお考えになることだと思いますが、資料として使っていただけるものがあ ったらいいかもしれません。 ○森座長  14頁のちょうど真ん中辺りに「クリティカルパス」という言葉がいきなり出てきま すが、先ほどのいったいこれは誰向けのものだ、誰がこれを読むのだというご趣旨から いえば、むしろこういう言葉は最後に出てくるようにして、イの所で「医療の質の向上 、標準化、チーム医療の促進、情報の共有化を可能にし」、何々「有用な方法、例えば クリティカルパス」というふうに、あとに持っていらっしゃったほうが読みやすいかも しれませんね。ほかによろしいですか。  19頁の5、「医薬品、医療用具等の安全性向上」です。これもかなり重要な部分を 占めておりますが、頁数にすれば22頁の半ほどまでということで、大体3頁ぐらいの 紙数がここに当てられていますが、いかがでしょうか。先ほど三宅先生がおっしゃった ようなこともちょっと関係してくるかと思いますが、よろしいですか。 ○櫻井委員  総論的な所に戻るのですが、医療安全の問題というのは、構えて実効性がないと意味 がない。私がこれ全体を拝見して感じるのは、理念論というか、当然それは必要なこと で結構なことだと思うのですが、実効を上げるためには方法論的なことが必要ではない か。そうすると、方法論としてもし要素的に分けるとすれば、1つは心の問題、これは 安全文化とか安全意識とかという言葉で表されていますが、これはたぶん教育とか訓練 とか、あるいはリーダーシップとか、そういうようなことに帰着するのかと思います。  もう1つは仕組みの問題、これは法とか規制とか、いろいろあると思います。  私は実は3番目がいちばん大事なところだと思うのですが、金のことがここには全然 書いていない。書いていないのは当然と言えば当然だと思うのですが、ここにこういう ことをやるにはいくらかかるとか、あるいはこういうことはいくらあればできるという ようなことを書かないと、結局はやはり絵に描いた餅になってしまうわけです。  コスト・ベネフィットというようなことがどこかにあったような気がしたのですが、 安全の問題というのは結局はコスト・ベネフィットということに帰着してしまうので、 金額的なエスティメーションがないと、例えばこれが何百兆円かかるのか、何百億円で 済むのかとか、そういうことがないと現実味を帯びてこないのではないか。これは非常 に難しいことだと思いますが、もしできればいろいろな部分について教育とか何とかで いくらかかるとか、あるいは医療用具の安全を確保するためにはどのくらいの資本投下 が必要であるとか、もちろんおよそで致し方ないと思うのですが、そういったようなコ スト的なバックのエスティメーションというようなものがどこかに入ると、非常に現実 性が帯びてくるのではないかとちょっと思いましたので、それを1つ挙げさせていただ きます。  もう1つは、できれば目標を書いていただければありがたいのかなと。目標というの は何かというと、例えばクリントンのあれは、たしか5年で死亡を半分にするとかとい うことが書いてありました。これは何年で何をどこまでもっていくのかというようなこ とは、あまり明確ではないような気がいたしました。何をすべきだとか、何が必要だと いうことは十分よくわかるのですが、いつまでに何をどこまでやるのかというようなこ とを明示するということが実効性につながるのではないかと思います。 ○森座長  いかがでしょうか。なかなか難しいことかと思います。 ○堺委員  櫻井委員のご指摘のとおりですが、まずコストといいますか、お金の所ですが、残念 ながら極めてエビデンスが乏しいというのが現状です。いかなる根拠に基づいてそれを 書けばいいのかということが判然といたしませんので、一応ここはこういう表現にして 、国の責務、あるいは医療機関の責務というような表現にさせていただきましたが、す べての活動の根底に経済があるのは自明のことです。むしろこれは今後いろいろな調査 を精力的に行うべきだということを書かせていただきましたが、その中に経済的なエビ デンスを集めるというようなことも含ませていただければというふうに考えます。  目標の設定ですが、これは目標を設定した場合に、その目標の達成はどこが、誰が責 任を持つかということを書かなければいけないだろうと思います。そうしますと、いっ たいどこだということになるのですが、本当はそれを明記すべきだろうと思いますが、 それではお国によろしくお願いしますと書いてしまって、医療機関は知りませんとか、 国民一人ひとりは知りませんとかというわけにもいかないだろうと思います。目標設定 ということは、イコールそれを達成する責任の所在を書かなければいけないと思います 。これは本当は書くべきだと思うのですが、いまがその時期であろうかという気もいた します。逆に櫻井委員にお尋ねしたいと思います。 ○櫻井委員  おっしゃることはよく分かります。ただ、私がコストということを冒頭に申し上げた のは、要するに1,000万円ならここまでできる、あるいは5億円ならここまでできると いうのを、それは非常にアバウトなエスティメーションしかできないのは私はよくわか ります。そういうことで1つの問題を投げかける。要するに、ある意味では金がないと 何事も進まないので、例えば1年で半分にするには100億からとか、そういうようなこ とをもし言えれば非常にインパクトはあるのではないかという気がちょっとしたもので すから申し上げたわけで、先生のおっしゃることはよくわかります。 ○堺委員  個々の対策にどのぐらいかかりそうかということは、極めて限定されたものでありま すが、多少はエビデンスがあると思います。医療安全全般となりますと、我が国におけ る医療の安全を2倍に高めるにはいくらかかるかということになりますと、すべてのフ ァクターを網羅しなければいけませんので、そのためのエビデンスはまだちょっと存在 しないのではないかと思います。 ○森座長  2つお伺いしたいことがありますが、1つは数字的な目標を何か掲げるとすれば、そ の前提条件として、現在の状況を数字で表すことができない限り、数値的な目標は得ら れませんね。こういった事柄について、現在の状況を数字で表すということができるか どうか、ということが1点です。  もう1点は、研究費などの面で、例えば全研究費のうちの2%か3%ぐらいは、倫理 的な事柄を研究するために当てるということを決めて、実際に医学の大きな研究費でそ れが実行されている所があると思います。各医療施設で、例えば予算の中の5%は安全 の施策に当てるのだと、そういう意味でのサゼッションはできないのでしょうか。その 2つをお教えいただければと思います。 ○堺委員  全体のことは、国の施策にかかわるところかと存じます。個々の医療機関におきまし ては、医療機関を網羅したエビデンスというものはまだ全くありません。しかし、極め て個人的な感想ですが、いま森座長のおっしゃられました5%という数字は、申し訳ご ざいませんが、その10分の1程度というふうに私は理解しております。 ○全田委員  私はポイントは、逆に安全対策の中でそれなりの対応をすればどれだけお金が浮くか 、というような考え方もすることが必要ではないかと思うのです。10何億かけてくださ るのですから、それはそれでいいのですが、私は医療人ですから、そういう方向で考え ないと、実は病院の人員配置の問題も厳しくご指摘を受けたのです。薬剤師が病棟にい たら、本当にどれだけ医療費が少なくなるのだというようなこともご指摘を受けました が、どれだけプラスになるのだというほうの考えも私はあるような気がいたします。 ○児玉委員  いまの全田先生のお話で、現状どれぐらいの損失が出ているだろうということは、先 般、私から若干委員会でもお話させていただきました。実は国立病院の状況を踏まえて 、長谷川先生に試算をしていただいて、私とメールのやり取りをしたりしているのです が、何しろまだそういう本格的な研究がない段階で、独り歩きをするような数字をちょ っと出しにくい。議論の細かいところは省略いたしますが、長谷川先生の側のデータか ら推計するとこの辺りになるだろう、私の側から推計するとこの辺りになるだろうと、 それが桁が違ってきてしまうような状況なので、もう1回フィールドを考えて推計して みないと出せないのではないかというような状況です。  もう1つ費用対効果のことは、先ほど総論のところでスッと過ぎていってしまったの で、ご理解をいただけたかなということだったのですが、6頁の上から4行目の○が付 いている部分、「リスク・マネージメントについての政策立案に当たっては、ア、危険 についての社会的許容範囲、イ、リスク・マネージメントに要する費用対効果の両面か らの十分な検討が必要である」。私はこの部分をご提案させていただいて、「社会的許 容範囲」という言葉をそのまま使っておりますが、気持としては医療の安全性について の社会の期待がどこまでのものであるのか。それから、それに対してどこまでの費用を かけられるのか。さらに、どの分野にどれだけ費用をかければ、どれだけ効果があるの か。まさにこれはEBMの発想、エビデンス・ベスト・アプローチなのです。  我々が、医療安全についてのサイエンスといいますか、科学というのは自然科学だけ ではなくて、経済学的な、あるいは社会経済的な観点も含めた、医療安全についての政 策科学を立案していくための基礎的なデータ自体が不足している、ということを前提と して言わざるを得ません。それから、櫻井先生からもご指摘があったとおり、やはり費 用対効果の話はせざるを得ないと思っております。6頁の4行目の○の部分は抽象的な 言葉でサラッと書いてはいるのですが、かなり大胆な話を言っている部分なので、ご意 見をいただければと思います。むしろこの間のご意見は、こういう視点ではっきりもの を言うことについて、好意的なご意見をいただけたのではないかとは理解しております 。 ○森座長  どうもありがとうございました。確かに費用対効果は費用対効果ですが、現状が安全 な方面に0.5%しか使われていないのであれば、それを0.8%にしてはどうかとか、1% にしてはどうかと。もし何らかの意味でお金ということで提言をするとすれば、あまり 個々のことについて、こういうことをすればいくらかかるから、そしていくら損失が減 るからといったような議論よりも、もっと大きなほうがいいかもしれません。 ○川村委員  皆さんは実現性という観点から非常に疑問を感じておられて、コストの話も出たので はないかと思います。コストというのは、1回数字を出しますと研究者も責任を持たな いといけませんし、また持てるような研究など、いまの研究費用ではとてもできるよう なものでもないような感じがいたします。ただ、短期的に取り組めることと、中・長期 的な時間のかかることは医療機関の中でもわかりやすいですし、教育の中でもある程度 目安がつくのではないかと思いますので、いまのご意見を伺いまして足りなかった部分 というのは、大きな意味での目安みたいなものをもう少し盛り込むべきではなかったか なという感じがいたします。 ○山崎委員  この項目が大事な内容を含んでいるということで、頁を割いていただいて大変良いこ とだったと思うのですが、20頁の医薬品、21頁の医療用具の記述を拝見しますと、 例えば外観・名称の類似性とか、設計上の問題とか、主として企業への要望というか、 期待というか、そういうものがあるわけです。それから、「情報の伝達・活用」という 所も、国民に対する伝達、例えば健康手帳とかお薬手帳、これも患者さんに対するケア 、話になります。  その前の頁の19頁の「基本的な考え方」の○の4つというのは、フィロゾフィーと いいますか、本当の意味で基本的な考え方。○の4つ目の所、「製品の開発段階と臨床 使用の段階に分けた検討が重要」、ここはもう一歩踏み込んで整理をしていただいて、 先ほどからお話が出ていますように、医薬品、医療用具に関する事故というのは、名称 が類似しているとか、外観が似ていることによる取り違いのようなことが実際に多いわ けですから、これは例えば行政指導も含めて、きちっと形を整えていただく。メーカー のほうも設計の段階、あるいは開発の段階からそれをきちっとやっていただくというこ とは重要なのですが、安全対策のためには、ここと関連して基本的考え方のどこかに、 開発段階と臨床使用、それぞれにこういう注意が必要なのだという整理をして書いてい ただくと、企業への要望だけに偏らないのではないかと思います。 ○三宅委員  私もこの項目について同じことを感じていまして、医薬品および医療用具についてで すが、誰がどういうことをするのかということが何も明確にされていないのです。望ま しいということで、誰がどういうふうにするのかということがはっきり書かれていませ んので、そこのところを明記していただきたい。特に行政指導とか、そういったことも 含めて、誰がどういうふうにし、そして誰がどういう指導をするのか。そういうところ が私は非常に不明確だというふうに思います。 ○山崎委員  医薬品というのは、名称とか外観のほかに、例えばこれが間違いなく患者さんの所に 行くとしても、例えば定期的な血中濃度を測らなければいけないとか、副作用の初期症 状を的確に捉えなければいけないというような、内面的な情報も伴ってくるわけです。 その問題というのは、ここに書かれたような「名称・外観の類似性」というようなこと だけではなくて、17頁に書かれている管理、医薬品情報の活用ということによる適正 使用ということが非常に重要になると思います。そこのところをやはり連携して記述し ていただくというのが、三宅先生がおっしゃったように、誰が何をするのかということ を明確にする1つの方法ではないかと思います。 ○森座長  次の6.「教育研修」ですが、22頁の下半分、23、24、25頁のほとんど、こ ういうところですが、何かありますか。 ○中村委員  先ほどもちょっとこの辺の頁を絡めて発言させていただいたのですが、医学あるいは 看護学で、将来、医療安全対策は国試の問題になりますか。実は講師会のときには、も しそれが出るようであれば、かなり大きなインパクトだなという非常に俗っぽい意見が 出たのですが、私もちょっと関心があります。 ○新木室長  「卒前教育の義務化」という所で、厚生労働省でできることの大きな1つに国家試験 がありますので、そこでのことも今回の検討会のご意見を踏まえて検討していきたいと 思っております。 ○岡谷委員  どこの部分で言っていいのかわからなかったのですが、教育研修の所の「基本的な考 え方」の2番目の○に、「オープンな人間関係が医療チームとしての安全機能を高める ということを教育する必要がある」というふうに書いてあるのです。ですから、医療従 事者間で、誰からの指摘や注意にも謙虚に耳を傾けるというような、そういう姿勢が非 常に重要だと。これは確かにいまの医療現場の中でとても大事なことだと思うのですが 、ただこういうソフトな努力だけではなしに、踏み込んだ形で言いにくいとか、言えな いとかということではなくて、専門職としてはきちんと誰に対しても疑義を申し立てる とか、おかしいと思ったら注意をするとかいうことを踏み込んでやっていけるような、 そういう書きぶりをしていただけないかと思うのです。 ○櫻井委員  24頁の下から6行目の(2)の「教育ツール、教育方法」という所で、こういうことに 触れていただいているのは大変ありがたいことだと思うのです。その中で、「模擬体験 ソフトなどの」ということがあるのですが、これは是非ハードも入れていただきたいと 思うのです。ハードというのは何かというと、シミュレーターとか、そういうものによ る訓練です。アメリカ辺りでは、例えばバーチャルリアリティーなんかは医療のトレー ニングに相当使われているわけです。したがって、そういう教育工学的な手法の重視と いうのを、そこに強調していただけるとありがたいと思うのです。 ○森座長  個々の医療機関でということになるとなかなか難しいかもしれませんが、小泉先生、 例えば医師会のような所でそういう施設なんていうのはやはりできないでしょうね。難 しいでしょうね。 ○小泉委員  現実には、医療安全推進者の研修ということを行っております。ただ、それは職種と いうことを限定していませんので、医師でも、看護の方でも、事務職でもということで すが、それをさらにそういう形で若干特殊化して、そういうカリキュラムなり何なりを 設けてということは、十分考えられることだと思います。  質問ですが、「医療従事者」というふうに総括してありますが、これは職種を若干例 示するとか、例えば医師・歯科医師・看護師等と。そのほうが読んでいてリアルにわか るのではないか。卒前卒後と言っても、医師・歯科医師・薬剤師・看護師で、それぞれ 教育体系が違うということもあります。  もう1つ、この会議の途中で看護協会でありますとか、北里大学の病院でありますと か、非常によくやっていらっしゃる事例がありました。ああいう現地教育というのでし ょうか、現地で卒後にその職に就いた方に対する研修と、現実に日常的に事例に即して 教育する体制とか、そういうところまで踏み込んで、1、2行でも書いていただいたら どうかと思います。 ○森座長  いままでのご議論も含めて、25頁からの7、「方策」、28頁からの8、「当面取 り組むべき課題」、この辺りのことについて、これが1つの提言になろうかと思います 。もちろん、今までの所も含めて結構です。 ○三宅委員  「当面取り組むべき課題」という所で、「病院の安全管理体制を」云々と書いていま すが、「職員の研修など、実施すべきである」となっています。これは病院という、本 来持っている職業的機能、あるいは社会的機能ということから考えれば、安全体制とい うことについては義務付けるというぐらいの少し強いものが必要ではないか、というふ うに私は思っております。それについては、当然定期的に医療監査を行うということで 、それがどの程度行われていくかということも必要ではないかと思っています。ただ、 先ほどコストの問題が出ておりましたが、それにはやはりコストがかかりますので、「 それに対して十分な資源の配分を行う」というふうな文言を入れていただければと思っ ております。  その点については、次の2番目の「特定機能病院および臨床研修病院」ということに ついても、そういうことを義務付けるべきであろう。それから、「そういう教育研修に ついての資源配分を十分行う」というようなことも是非入れていただきたいと思ってお ります。  29頁、「医療従事者に対する安全教育」の所で、(3)の6に入るかと思いますが 、医療従事者の個人の問題として、これは非常に失礼な表現かもしれませんが、医道審 議会の機能を強化していただきたいと思います。やはり医道というものが何なのか。そ の医道にもとる人をきちんとそこで審議する。そうすると、それについてどういう報告 体制をとるかとか、いろいろな問題があると思います。その辺りについてはいろいろ検 討していただきたいと思いますが、医療者の我々自身がそういうものに自浄作用が働く といいましょうか、自分たちで自分たちを規制するというか、襟を正すというか、そう いう機能がきちんと働く必要があると思うのです。ですから、そういうものを何かここ に入れていただきたいと思います。 ○岸委員  三宅先生がたまたまおっしゃったので、私も前から考えていたのですが、私は確かに 安全管理者の設置義務というのは必要だろうと思うのです。その場合に資源の再配分と いうことをおっしゃいました。要するに配置してある所にはそれなりの診療報酬を付加 するということなのでしょうけれども、その前提条件として、やはりそれは専任である こと。併任であってはならないということ。少なくとも各科の医長さんと同列に議論が できるということが必要である。その程度の人を配置しなければ、ほとんど意味がない だろうというようなこと。いろいろな前提条件を噛ませて、しかも権限とそれに対応す る義務を明確にする。そういう形できちっとシステム化されたもの。そして、報告制度 の中の中核的な部分になっていただかなければ困るということ。そのようなことがかな りはっきりしたものであるならば、私はそれこそ資源再配分に値するものだというふう に考えております。 ○井上委員  ちょっと感じていたことなのですが、長谷川先生がお詳しいのだと思うのですが、ア メリカのコミュニティ・ホスピタルの中にByelawというのがありまして、各職制の義務 と責任範囲というのが明確に書いてあります。クリティカル・パスウェーを使うときで も、職制と責任範囲はByelawによって決まってくるわけで、これは病院ごとに、病院の 機能とか規模等によって違ってくるのですが、日本の場合それに類似したものはあるの ですが、どこまでがいったい誰の責任範囲なのかというのが全く明確ではないような現 状が多いです。ケース・バイ・ケースで、結局何かやっていたら、みんな医師の責任か なみたいな話になってしまうのです。この全体を見ても、先ほど望月先生が言われた組 織図とも関連してくるものなのかもしれませんが、そういうものがもう少し明確化され てもいいのではないか。そういった視点も1つ盛り込んでみてはどうかという気がして おります。 ○辻本委員  26頁の上段の(2)の所に、「患者の参加を促進するための相談機能の充実」と項 目を挙げていただいております。しかし、この相談機能というのは実に難しい問題であ るということは、12年間のささやかな活動を通して感じていることなのです。2つ目 の○の所に是非加えていただきたいということのお願いです。「患者の医療への参加の 促進」ということの中で、「患者の意見を聞き、疑問や不満に対する相談窓口」とあり ますが、私どもが12年前に相談活動をしたときには、胸に溜った思いだけを聞いてく れればそれでいいと、そういう傾向が患者の相談に見てとれました。しかし、最近は随 分世代も変わってきたことと、やはり行動を起こす患者さんたちが増えてきております 。ですから、「患者の意見を聞き、疑問や不満に対応する」、そのことに加えて、「患 者の自立の支援」。相談窓口の機能の中で先ほどお話がありましたが、権利の主張の裏 側に義務ということが患者にも伴うわけですから、そこで医療の限界性、不確実性とい うことをきちっと理解でき、さらに患者が何を役割とすべきかというようなこと、1つ の啓発というような役割も担っていただきたいと思います。 ○児玉委員  いまByelawについてのご発言があったのですが、かなり範囲の広い言葉で、いちばん 広くは会社の設立のときの定款もByelawなのです。例えば大学病院なら大学病院で、内 部規定集などがあります。これをByelawと呼ぶ場合もあります。医療安全にかかわる、 先ほどご指摘があったByelawというと、いわゆる業務分担、ジョブ・ディスクリプショ ンにかかわる部分ではないかと思います。とりわけドクターとナースと薬剤師の間の関 係について、28頁の「当面取り組むべき課題」の(1)の(9)なのですが、「可能な 限り、薬剤部門が医療機関内の医薬品等を管理するなど、医薬品等の管理体制を見直す べきである」と。この辺は全田先生にご意見をいただきたいところで、「可能な限り」 という表現が、要するに起草委員会で出てくる可能な限りの範囲の表現だと私は理解し ているのですが、いかがなものでしょうか。 ○全田委員  例えば手術室の中に常時、薬剤師がいれるかどうかなどの反論がありますが、私は「 薬動く所そこに薬剤師あり」という姿勢で、それだけの人員を配置してくれと、そうい うことを言っているのです。そういう意味で、おそらく「可能な限り」と言ってくださ って、大変に好意的な表現にしていただいたと私は思っております。  30頁の最後の(4)、「第三者」と、ここで初めて突然と出てくるのです。「第三者 による機能評価」というと、ここで初めてこの文章で「第三者」というのが出てきます ので、どういうイメージをお持ちかというようなことをちょっとお付け加えいただきた い。願わくば患者さんを含めたとか、そういうことをお願いしたいと思います。 ○小泉委員  いまの第三者ですが、27頁の「第三者評価」という所で、医療機能評価機構を例示 して説明してありますので、これでカバーできると思います。 ○全田委員  すみません。ありがとうございます。結構です。 ○小泉委員  別のことで、資料2の関連で一言提言したいのですが、資料2は用語の問題ですが、 今日の資料でも用語に関連、あるいは概念というところまで広げると、いくつも資料が あります。これは概念の整理とか、あるいは関連図とか、こういう説明はいわば基礎に なる部分で、そのうえで現実には用語を例示して、「インシデント」ということであれ ば、それはどういうことだというような、そういう用語集を付けていただいたほうが使 いやすいのではないかと思って提言いたします。 ○森座長  若干時間が超過しておりますが、あとお一人、お二人、是非とおっしゃる方があれば ご意見をいただきますが、いかがですか。 ○矢崎委員  25頁の7番目の「医療の安全向上のための方策」は、先ほど出しました「医療安全 のための10の要点」があります。それと順序とか整合性を保って記載していただけれ ば、大変ありがたいと思います。 ○堺委員  数字というのは一度口に出たりすると、とかく独り歩きいたします。現時点では、日 本の大・中・小の医療機関がどれほど厳しい経営状況にあるかということは、これはお そらく小泉委員がいちばんよくご存じかと思います。医療制度の根幹にかかわる部分で 、先ほどエビデンスということを申上げましたが、実態を調査し、そして医療制度との 整合を図ったうえで数字を決めるべきかと思いますので、この会議では、いまの時点で は数値目標を挙げないほうが、むしろ近未来の摩擦を起こさないで済むのではないか、 というふうに考えております。 ○森座長  どうもありがとうございました。今日はそんなことでよろしいですか。いろいろと前 向きの有益なご議論をいただきましたので、おそらく堺先生以下、起草委員の方々が報 告書そのものの作成に移っていただけると思います。どうぞよろしくお願いいたします 。事務局から、次回のことについて連絡がありますか。 ○新木室長  次回の日程につきましては、事務局より委員の先生方に3月7日に開催する旨、連絡 しておりましたが、当日出席の先生方の人数、また本日からのスケジュール等を勘案い たしまして、3月7日はとりやめて3月18日ということでお願いできればと思ってお ります。スケジュール変更で恐縮ですが、3月18日10時から11時半まで、経済産 業省別館944会議室にて開催させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○森座長  それでは、今日はどうもありがとうございました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係 電話 03-5253-1111(内線2579)