参考資料1-1介助犬訓練基準(改正後全文)(案) 第1訓練内容等について 介助犬の訓練は、基礎訓練、介助動作訓練及び合同訓練の3段階において行うことを基本とし、それぞれの訓練記録を作成、保管すること。また、使用者の生活を長期的な視点で支援していく観点から、使用者への引き渡し後も、育成した介助犬がリタイアした後の対応を見据えて継続的な訓練及び指導を行うこと。 また、介助犬の使用について相談があった際に、使用者のニーズを適切に把握することが重要となることに鑑み、適切な相談対応を行うとともに、訓練計画の作成等にあたり、必要に応じ、身体障害者補助犬法第15条により厚生労働大臣が指定した法人(以下「指定法人」という。)に助言を求めること。 1基礎訓練 基礎訓練とは、犬に対する基本的なレベルの訓練をいう。なお、通常生後12か月から24か月の間に訓練を開始するのが望ましい。 (1)基礎訓練においては、概ね次のような基本動作を確実に行えるよう訓練すること。 ①呼んだら来る ②座る、伏せる、待つ、止まる ③②の状態について、解除の意思表示があるまで維持できる ④強く引っ張ることなく落ち着いて歩く ⑤指示された時・場所で排泄できる ⑥音響、食物や他の動物など様々な刺激や関心の対象を無視できる ⑦使用者に注目して集中することができる ⑧指示された場所(部屋、車等)に入ることができる (2)上記の基本動作は、室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければならない。その場合、次のような環境においても、必要に応じて可能な限り訓練を行うこと。ただし、その際には、受け入れ側の事情にも配慮しつつ、犬が一定程度習熟された段階で実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。 ①公共交通機関(電車、バス等) ②ホテル等の宿泊施設 ③スーパー、百貨店等の商業施設 ④レストラン、喫茶店等の飲食施設 (3)基礎訓練は、実働日数として概ね60日間以上行うこと。 2介助動作訓練 介助動作訓練とは、肢体不自由者の日常生活動作を介助するために必要な動作訓練をいう。 (1)介助動作訓練においては、使用者のニーズに応じて、概ね次のような介助動作を確実に行えるよう訓練すること。 ①物の拾い上げ及び運搬 ②特定の物を手元に持ってくる ③ドアの開閉 ④スイッチの操作 ⑤起立、体位変換時の介助 ⑥車いすへの移乗介助 ⑦歩行介助と姿勢支持 ⑧階段昇降の介助 ⑨車いすの牽引等 ⑩衣服や靴等の着脱 ⑪緊急時の連絡手段確保 (2)上記の介助動作は、室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければならない。 (3)介助動作訓練は、実働日数として概ね120日間以上行うこと。但し、介助動作訓練は基礎訓練と並行して実施して差し支えない。 (4)介助動作訓練は、専門職との協力体制によって使用者の障害とニーズについての正しい評価に基づいて作成された訓練計画により行うこと。 (5)介助動作訓練の過程において、使用者と候補犬との適合評価をできるだけ早期に行うこと。 3合同訓練 合同訓練とは、使用者本人が犬に指示をして、基礎動作及び介助動作を適切に行わせることができるようにする適合訓練をいう。 (1)合同訓練においては、概ね次のような訓練及び使用者に対する指導を行うこと。 ①使用者の障害やニーズに合わせた訓練 ②使用者の生活環境(室内外)に合わせた訓練 ③使用者に対する犬の飼育管理、健康管理、給餌、排泄等に関する指導 ④公共交通機関、宿泊施設、商業施設及び飲食施設等の利用施設に同伴する訓練 (2)合同訓練においては、使用者に対する犬とのコミュニケーション手段の指導を行うこと。 (3)合同訓練は、実働日数として概ね40日間以上行うこと。ただし、介助犬の使用経験を有する者が使用する犬については、習熟状況や使用者の負担等を勘案して介助犬育成団体の判断で実働日数を短縮することも差し支えない。 (4)合同訓練の最終段階では、使用者の自宅、職場又は学校において(1)の①から③の内容を概ね10日間以上行うこと。 (5)(1)の④については、受け入れ側の事情にも配慮しつつ、実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。 4継続的な訓練・指導 介助犬使用者の障害やニーズの変化あるいは環境の変化等に対応するため、犬の引き渡し後においても継続的な訓練及び指導を行うこと。 (1)継続的な訓練及び指導は、概ね次の点について行うこと。 ①使用者の障害やニーズの変化に応じた補充訓練 ②環境の変化に応じた追加訓練 ③使用者の必要に応じ、犬の基礎動作及び介助動作の再訓練 ④介助犬の健康状態及び行動・作業状況の確認と指導 ⑤犬のリタイア時期及びリタイア後の対応についての相談・指導 (2)最低1年に1回は、(1)の①から④の内容について使用者から報告を求めるとともに、必要に応じて自宅を訪問する等により継続的な指導を行うこと。 なお、最初の一年目は2から3ヶ月に一度は報告を求めること。 (3)概ね10歳以上の介助犬については、介助犬として活動を継続することが可能と見込まれる期間について適切に確認を行い、その結果に応じて必要な育成を検討すること。 第2訓練体制について 介助犬育成団体は、使用者が介助犬に求める様々な介助ニーズに対応するため、相当な経験を有する訓練者を配置するとともに、専門家等の協力体制を確保し、訓練者等は、使用者のプライバシー保護に十分留意すること。 なお、必要に応じて認定申請予定の指定法人に対して助言を求めること。 1訓練者の要件 (1)訓練者は、人と犬に対し愛情と思いやりを持ち、安全性に関する責任を持って訓練を行うこと。 (2)訓練者は、犬の飼育管理及び訓練を適正に行うための必要な知識及び技術を有していること。 (3)訓練者は、犬の社会適性及び作業適性についての評価と選択ができること。 (4)介助動作訓練及び合同訓練を行う訓練者は、障害、疾病及びリハビリテーションについての基礎的知識を有していること。 2専門職の協力体制 介助犬育成団体は、医師、獣医師、作業療法士、理学療法士、社会福祉士等の専門的知識を有する者の協力体制を確保しておくこと。 少なくとも次のような評価等は、介助犬育成団体のみによって行われるのではなく、その内容に応じ、専門的知識を有する者とともに行われること。 特に、使用者のニーズの把握は、介助犬の使用以外の方法も含めた最適な支援内容を検討していく上で重要であることから、適切な相談体制を確保すること。 ①候補犬導入段階における犬の身体面及び性質面の適性評価(特に身体面では、代表的遺伝性疾患で問題となる眼、心臓、関節の評価を含む) ②使用者の適性・適応評価 ③使用者のニーズ評価と介助訓練計画の作成 ④使用者と候補犬との適合評価 ⑤合同訓練終了後の総合評価・判定 3その他の協力体制 介助犬育成団体は、必要に応じて、地域の障害関係施設、福祉関係者、ボランティア等の協力体制を確保しておくこと。 第3介助犬の適性について 介助犬としての訓練を行うに際しては、その犬の身体及び性質についての適性評価を行うこと。 1身体 (1)体高や体重は、使用者のニーズに対して適正なものであること。 (2)健康で体力があり、遺伝性疾患及び慢性疾患を有していないこと。 (3)被毛の手入れが容易なこと。 2性質 (1)健全で陽気な性格であり、動物や人間に対して友好的で臆病でないこと。 (2)人間と一緒にいることを好むこと。 (3)他の動物に対して強い興味を示さず、挑発的な行動をしないこと。 (4)攻撃的でなく、過剰な支配的性質を有していないこと。 (5)大きな音や環境の変化に神経質でなく、落ち着いていられること。 (6)平均的な触覚、聴覚及び感受性を有していること。 (7)集中力と積極性及び環境への順応力があること。 (8)乗り物酔いがないこと。 第4適性犬の確保及び健康管理等について 1安定的な確保 (1)介助犬育成団体は、候補犬として適性のある犬を安定して確保するよう努めなければならない。また、適性がないと判定された犬について譲渡先を予め確保しておく等の配慮が必要である。 (2)介助犬を繁殖させる育成団体にあっては、遺伝性疾患が生じるおそれのある犬を繁殖の用に供さないように努め、また、候補犬の選定にあたっては、遺伝性疾患のおそれのある犬を選定しないように努めなければならない。 2健康管理等 (1)健康管理義務として、毎年1回、狂犬病ワクチン接種等を行うとともに、避妊・去勢手術を施すこと。 (2)獣医師による定期的な健康診断や検査等を行うこと。 (3)犬に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、人への感染の防止に努めること。 (4)犬の疾病及びけがの予防、並びに寄生虫の予防と駆虫等日常的な健康管理に努めること。