身体障害者補助犬の訓練及び認定等の あり方検討会(第2回) 令和2年5月29日 資料1 現行の訓練基準・認定基準について 現行制度における訓練・認定について ○身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の訓練基準については、身体障害者補助犬法施行規則の第1条 (盲導犬)、第2条(介助犬)、第3条(聴導犬)において、以下のような内容を定めている。 ・基礎訓練、歩行誘導や介助・聴覚動作の訓練、使用予定者との合同訓練の実施 ・使用予定者の障害の状況等を踏まえた訓練計画の作成、使用予定者と訓練犬との適合性評価の早期実施 ・訓練計画の作成、適合性の評価、各訓練の実施における専門的な知識を有する者等との連携・協力の確保 ・補助犬の状況を使用者から定期的に報告を求め、 その状況に応じた追加訓練等を実施 ○指定法人が実施する介助犬、聴導犬の認定に関する手続きや基準については、身体障害者補助犬法施行規則の 第8条から第11条にかけて、 以下のような内容を定めている。 ・使用者と訓練事業者は、 身体障害者手帳、 訓練記録、 専門職の評価等の記録を添付して指定法人に対して申請 ・専門職等の審査委員会で、使用予定者を同伴の上、屋内や施設等で各種動作の確認の上、認定を実施。 ・認定した補助犬の状況を使用者から定期的に報告させ、必要に応じ検証実施。検証の結果、能力が欠く場合は認定取消。 ○上記の他、平成14年に開催された「介助犬の訓練基準に関する検討会」、「聴導犬の訓練基準に関する検討会」、 「介助犬及び聴導犬の認定基準等に関する検討会」の報告書において、補助犬の訓練基準や認定基準がより詳しく 定められており、 周知しているところ。 ○ なお、 介助犬訓練事業、 聴導犬訓練事業、 盲導犬訓練施設(訓練事業者)は社会福祉法に規定する第二種社会福 祉事業に該当し、 都道府県は同法に基づき必要な報告を求めたり調査を実施することができる。 〇また、介助犬・聴導犬の認定を行う法人は身体障害者補助犬法に基づき、申請により厚生労働大臣が指定してい る。 厚生労働省は必要があると認められる場合は、 事業の実施状況の報告や改善を求めたりすることができる。 ※盲導犬の認定については、当分の間、補助犬法の規定は適用されないため、認定を行う法人は、道路交通法に基づき、国家公 安委員会が指定している。 1 訓練・認定のあり方を検討する上での論点(案) 【訓練事業所における論点】 ○ 訓練事業所の体制(職員の体制、訓練士の要件・経験年数等)は適切か。○ 実施訓練内容の向上のため、 訓練事業所同士の連携は適切か。 ○ 訓練事業は、 使用者のニーズを踏まえたものになっているか。 ○ 適性評価は、 関係者の協力のもと、 適切に行われているか。 ○ 訓練記録等は文書化されているか。 ○ 公共の場での訓練が適切に行えているか。 ○ 認定後のフォローアップは適切か。 ○ 補助犬の引退を考慮した使用期間が検討されているか。 ○ 届け出等の適正な事業運営ができるような体制になっているか。 【指定法人における論点】 ○訓練事業者が指定法人を兼ねる場合の透明性が確保されているか。 ○認定基準や認定審査会は適切に運用されているか。 2 現行の訓練基準等と訓練に関する課題等の比較① 現行の訓練基準等 H30推進事業で指摘されて いる現状と課題 前回検討会(H31.4.26) で指摘された意見 【訓練事業所の体制等について】 ○訓練者の要件として、犬の飼育管理、 訓練を適正に行うための必要な知識・技 術、 障害特性に関する基礎知識等を規定 している。 ○ 訓練事業者の職員体制、訓練士の 経験年数、 認定頭数等に差があり、 訓練に係るノウハウや経験の蓄積に 差がある可能性。 ○ 訓練事業では、障害福祉サービスの自立訓 練と同じような訓練をしているが、異なる枠組 みでされていることに違和感がある。 ○国立障害者リハビリテーションセンター では、 身体障害者補助犬の訓練者等に 対する研修会を実施している。 ○ 補助犬は個別性が高いところがあるが、個別 性の対応を十分に損なわれないような基準を 作成するのが課題。 【訓練事業所間の連携】 ○ 基礎訓練、介助(聴導)動作訓練、合同 訓練の内容として、実施するべきものや その日数の目安を規定。 ○ 訓練事業者相互の情報共有が不足 しており、 情報共有の気運も消極的、 他の訓練事業所での訓練方法等に ついての情報も不足。 ○他団体の専門職との連携も不明で、共通認 識で認定が実施しているか確認すべき。 ○訓練や認定の実施状況について、指定法人 や訓練事業所間の情報共有以外に、一般の 方に向けての見える化も必要。 【ニーズを踏まえた支援】 ○動作訓練は、専門職との協力体制に よって使用者の障害とニーズに基づいて 作成された訓練計画により行う。 ○ 補助犬の使用希望者のニーズのア セスメントについて積極的ではなく、 あくまでも犬の訓練に注力する訓練 事業者も存在する。 ○ 訓練の実施方法のみならず、利用基準も訓 練事業者の意見が強く反映されている。 ○使用希望者は補助犬によりどのような生活、 社会参加をするかという視点が不足。 〇 使用者と事業所の連携が不十分。使用側の ニーズが伝わらないと、 実働数も増えない。 3 現行の訓練基準等と訓練に関する課題等の比較② 現行の訓練基準等 H30推進事業で指摘されて いる現状と課題 前回検討会(H31.4.26) で指摘された意見 【適性評価の実施、関係者との協力】 ○候補犬や使用者の適正評価については、 育成団体だけではなく、 内容に応じ、 専門 的知識を有する者と共同で実施すること としている。 〇訓練方法や犬の選択についても普及につな がると考えるが、 犬の適正についてもつなげ て検討する必要がある。 ○ 補助犬育成団体は、必要に応じて、地 域の障害関係施設、 福祉関係者、 ボラン ティア等の協力体制を確保。 ○ 適性評価に関しては、早い段階か ら実施されているが、医療機関等に 敷居の高さを感じている訓練事業者 もあり、医療・福祉専門職による専 門的な評価等といった協力を得るこ とができない。 ○訓練事業所が地域の当事者団体と協力・連 携する取り組みを広げるべき。 【記録や利用手続きの文書化】 ○ 訓練については訓練記録を作成、保管 することとしている。 ○ 適正評価、訓練、フォローアップ記 録などの文書化が進んでいない場 合や、使用者との契約手続きがなさ れていない場合がある。 ― 【公共の場における訓練】 ○ 訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害 をおよぼさないように責任をもって管理す ること。 ○訓練事業者によっては公共の場で の訓練を事前許可を得ることなく実 施している事例も確認され、 トラブル 等が起きた場合の影響が懸念。 ― 4 現行の訓練基準等と訓練に関する課題等の比較③ 現行の訓練基準等 H30推進事業で指摘されて いる現状と課題 前回検討会(H31.4.26) で指摘された意見 【引き渡し後のフォローアップ】 〇 引き渡し後の継続的な訓練・指導として、 ニーズや環境の変化に応じた訓練等を実 施。 ○フォローアップの内容についても訓 練事業所間で差が生じており、 利用 者から連絡があった場合のみ対応 している事業所も確認された。 ― 〇 1年に1回は、使用者から状況報告を求 め、必要に応じて自宅を訪問する等によ り継続的な指導を実施。 【補助犬の使用期間】 〇犬の引き渡し後における訓練事業所の フォローアップの一つとして、 犬のリタイア 時期及びリタイア後の対応についての相 談・指導がある。 ○ 補助犬の上限年齢の設定も、必ず しも設定されておらず、 利用者の安 全確保や動物愛護の観点から課題 があると考えられた。 ○ 希望者のケースによっては、実際の使用に至 るまで一定の時間を要するケースもあることか ら、 円滑に利用できるようにするため、マッチン グや利用期間等に関する一人一人の長期的 な計画書を策定すべき。 【適正な運営の担保】 ○ 社会福祉法の規定に基づき、各都道府 県は訓練事業者に対して必要な報告を 求めたり調査等を実施。 ○ 訓練事業者の届出をしても活動が ない事業者や、訓練対象に応じた届 出がなされていない事例もある。 ― 5 現行の認定基準等と認定に関する課題等の比較 現行の認定基準等 H30推進事業で指摘されて いる現状と課題 前回検討会(H31.4.26) で指摘された意見 【訓練事業者と指定法人の兼務】 〇 法律上、兼ねることは可能。平成14年 の検討会で、認定は、実際に訓練を行っ た事業者とは別主体が行うのが望ましい とする意見もあった。 ○ 訓練事業者と指定法人を兼ねてい る場合において、特に認定頭数が 多い傾向が見られた。 ― 【認定基準、認定審査会】 〇 書面審査を経て、使用者の指示により、 基本動作を実地検証し、聴導・介助動作 についても使用者のニーズに応じた動作 が行えることを確認。 ○指定法人に関わる専門職が選ばれる基準や、 専門職も審査会の中で認定の基準が理解でき ているのか。 〇 検証等は法人内だけでなく、 日程・配慮 事項等を事前に調整し、公共の場でも実 施する。 ○ 認定審査会の1 回当たりの審査件 数や審査に要する時間が認定法人 によって異なる。認定基準について もばらついている可能性があり、指 定法人によっては十分な検証等が なされないうちに認定されている可 能性がある。 〇社会福祉法に基づく第二種社会福祉事業で ある訓練事業所に対する運営指導等はある程 度実施しやすいが、訓練事業と認定事業を兼 ねた事業所については、 認定の部分まで踏み 込めない。 〇 基本動作等の検証等は、 訓練者(当事 者は除く)、獣医師、医師、専門職等で構 成された審査員会で実施。 その他、事業所等における受入の課題で前回指摘されたもの ○ 施設の円滑利用のために、身体障害者補助犬法の改正により、現事業所等の受け入れ義務の強化が必要ではないか。〇 受け入れの拒否が非常に多いのは、衛生管理、行動管理という部分も1つ理由にあるのではないか 〇ユニバーサルデザイン2020行動計画など、政府の各種ガイドラインでも事業者や社会における身体障害者補助犬の受け入れについ て触れられているが、そのためにも補助犬の質を担保していくことが重要。 〇頭数を増やすだけでなく、健康面を確保しないと動物愛護の観点のみならず、事故等にもつながり使用時にリスクが生じる。 6