資料4 スライド1 身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究 厚生労働科学研究 研究期間2019-2020年度 ほじょ犬イラスト ほじょ犬マーク 国立障害者リハビリテーションセンター 飛松好子 スライド2 目的 補助犬の質を確保し社会での受け入れを一層進めること ①現行法令、既存の各種ガイドライン等の内容を学術的な視点で検証する 担当 小澤温 筑波大学大学院人間総合科学学術院教授 ②補助犬の衛生管理の実態を把握し、訓練事業者および使用者が行うべき対応を取りまとめる 担当 水越美奈 日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科臨床部門教授  ③交通事業者、飲食店、ホテル、医療機関等、各分野で補助犬使用者を受け入れるための留意点について取りまとめる 担当 山本真理子 帝京科学大学アニマルサイエンス学科講師 高柳友子  (社)日本身体障害者補助犬学会理事・医学博士 、横浜市総合リハビリテーションセンターリハ科非常勤医師 ④障害者のニーズを的確に把握するために、補助犬の種別毎の需給推計方法について検討する 担当 清野絵 国立障害者リハビリテーションセンター研究所室長 スライド3 現行法令、既存の各種ガイドライン等の内容を学術的な視点で検証する 1.盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の運営および指定  基準に関して比較検討 ・盲導犬訓練施設の指定基準(国家公安委員会規則第17号)の概要 ①盲導犬として必要な訓練をする業務、認定する業務(盲導犬訓練業務等)の実施に関し適切な計画が定められていること、②盲導犬訓練業務等を行う施設が訓練士等として必要な知識、技能を有するものが置かれ、必要な設備を備えていること、③必要な経理的な基礎を有すること、④盲導犬訓練業務等が不公平になるおそれのないこと。 ・介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の指定基準(身体障害者補助犬法施行規則第7条)の概要 ①適正な法人運営、業務が適性に実施されていること、②身体障害者補助犬の訓練の業務または研究の業務を適正に行っていること、③必要な経理的な基礎を有していること、④身体障害者補助犬の認定業務が不公平になるおそれがないこと、⑤必要な知識経験等を有する者により構成された審査委員会を設置していること、⑥苦情解決のための体制が整備されていること。 スライド4 指定基準に関して、盲導犬訓練施設と介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の根拠制度が異なっていることの複雑さ ・先の介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業では、苦情解決のための体制が整備されていることが明記されているのに対して、盲導犬訓練施設では明記されていない点が異なっている。 ・ただし、盲導犬訓練施設では、身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準の第10条に苦情解決が明記されていることから同様の内容が含まれていると判断できる。 ・盲導犬訓練施設の指定法人は毎事業年度ごとに事業計画書、収支予算書、事業報告書、収支決算書等を国家公安委員会に提出する義務があること、指定法人の役員、訓練士等が盲導犬訓練業務等に対して不正な行為をした時は、当該指定法人に対して、国家公安委員会は役員、訓練士に対して解任を勧告できることから、国家公安委員会の監督権限は大きいことが理解できる。 スライド5 2.盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業と他の身体障害者   社会参加支援施設の設備および運営基準の比較 〇盲導犬訓練施設に関しては、身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準の第4章に記載がされているが、介助犬訓練事業と聴導犬訓練事業の記載はされていない。そのため、他の身体障害者社会参加支援施設との比較は盲導犬訓練施設に限定して検討した。 〇身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準では、身体障害者福祉センター、補装具制作施設、盲導犬訓練施設、視聴覚障害者情報提供施設の4施設が記載されていることから、この4施設の比較を行った。 ・身体障害者福祉センターでは、建築面積基準、設備基準、職員配置基準、運営規定、施設長の責務、衛生管理、利用者に求めることのできる金銭の支払いの範囲、が記載されている。 ・補装具制作施設では、設備基準、職員配置基準、職員の資格要件、共通項(運営規定、施設長の責務、利用者に求めることのできる金銭の支払いの範囲)、が記載されている。 ・盲導犬訓練施設では、設備基準、職員配置基準、職員の資格要件、入所者の健康管理、共通項(運営規定、施設長の責務、衛生管理、利用者に求めることのできる金銭の支払いの範囲)、が記載されている。 ・視聴覚障害者情報提供施設では、設備基準、職員配置基準、職員の資格要件、共通項(運営規定、施設長の責務、衛生管理、利用者に求めることのできる金銭の支払いの範囲)、が記載されている。 〇盲導犬訓練施設の設備及び運営に関する基準の観点は、他の身体障害者社会参加支援施設の基準の観点と共通しているが、入所者の健康管理に関しては、この施設の固有の基準であり、盲導犬と利用者を併せて訓練する事業の特徴として考えられる。 スライド6 3.盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の指導監査 ・社会福祉法第70条が根拠となり、身体障害者社会参加支援は第2種社会福祉事業であることから、都道府県(政令市)による指導監査の対象になっている。 ・都道府県(政令市)の指導監査項目に関しては、社会福祉法人の一般監査事項(基本方針、構造設備、人員、運営基準)に準じている。盲導犬訓練施設では、この基準に、厚生労働省令をもとに、設備基準、職員の配置基準、職員の資格要件、利用者の健康管理、衛生管理等の基準を加えている場合がみられた。 ・盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業に対しての指導監査がどの程度、都道府県(政令市)で実施されているのかについては、今後の検討課題である。 スライド7 ②補助犬の衛生管理の実態を把握し、訓練事業者および使用者が行うべき  対応を取りまとめる 令和元年度 ・補助犬訓練事業者に対する補助犬の衛生管理についてのヒアリング調査 日本盲導犬協会/日本介助犬協会/日本聴導犬推進協会 ・補助犬の衛生管理についての海外の文献調査 ・現行の「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」の検証 →訓練事業者が使用者に具体的に指導するようには書かれていないことがわかった →訓練事業者が補助犬の衛生管理として何が必要かについての理解が足りないため、具体的な指導がいていないのではないか、と考えられた 令和2年度 ・現行の「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」の検証 →訓練事業者がなぜこれらの衛生管理が必要であるかを理解できるもの、かつ使用者に指導できるような手引きが必要であることがわかった ・補助犬の衛生管理に必要と思われる国内外の文献調査 ・「補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き」作成 →日本獣医師会理事佐伯潤先生、TeamHOPE代表太田亟慈先生 →日本盲導犬協会、日本介助犬協会、日本聴導犬推進協会 →盲導犬使用者、介助犬使用者、聴導犬使用者 からチェックをいただく スライド8 補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き 訓練事業者が使用者に指導することを前提に、補助犬に必要と考えられる衛生管理/健康管理項目について記載した 目次 はじめに 1 補助犬の衛生管理 (1)使用者による健康状態の観察 (2)体重の管理 (3)飲水の管理 (4)被毛の管理 (5)耳掃除 (6)爪切り (7)足裏の管理 (8)肛門腺の管理 (9)歯磨き (10)装具の管理 2 補助犬の健康管理 (1)定期健康診断 (2)予防接種 (3)各種予防措置 (4)マイクロチップの装着 (5)ブルセラ症の発生予防 (6)その他の人獣共通感染症の予防 (7)不妊手術(去勢・避妊手術) (8)遺伝性疾患の排除 (9)熱中症の予防 おわりに 参考文献リスト 1 補助犬の衛生管理 補助犬使用者及び訓練事業者は、犬の保健衛生に関し獣医師の行う指導を受けるとともに、犬を苦しめることなく愛情をもって接すること(第21条)が求められています。日常的な衛生管理には、補助犬法第12条第2項(補助犬法施行規則第5条)に規定する「身体障害者補助犬健康管理記録」(健康管理手帳)に記録する等、その管理の経過を記録しておくことが重要です。 (1)使用者による健康状態の観察 使用者が対応すること 使用する補助犬の健康状態を絶えず観察し、異常の早期発見に努める。 健康管理手帳に健康状態等を記録し、補助犬を同伴する際は常に携帯する。 異常があったら速やかに獣医師による診察・診断を受ける。 訓練事業者が対応すること 個々の障害の状態像に配慮し、使用者が健康状態の観察ができるような支援を行う。 ガイドラインでは、使用者が行う毎日の健康チェック項目が紹介されています。ここでは、実際の補助犬使用者へのヒアリング等をもとに、ガイドラインで示すチェック項目を改変したものを紹介します(表1)。その上で、より詳細な内容を解説します。 表 1補助犬使用者が行う毎日のチェック項目 体調不良→普段と変わりなく元気か 体重の増減→体重計の数値は正常か →BSCの数値は正常か 食欲→食欲に変化はないか 飲水→飲水量に変化はないか 糞便→回数・形(硬すぎる・軟便・下痢)・血が混じる・ゼリー状のものが付着しているなどの変化はないか →匂いの変化はないか 尿→回数・量・血が混じる・色などの変化はないか →匂いの変化はないか 被毛→汚れていないか→死毛は浮いていないか →絡みや毛玉はないか(長毛種) 皮膚の状態→傷や腫れ、できものなどはないか →痒がっていないか →ノミ・ダニはいないか →被毛がベトベトしていたり、パサパサしていたり、触った感じに変化はないか スライド9 ③交通事業者、飲食店、ホテル、医療機関等、各分野で補助犬使用者を受け入れるための留意点について取りまとめる 1. 既存の医療機関向けのガイドブックの検証 (1)ガイドブックの内容の検証 〇 補助犬の同伴受け入れの判断を医療機関に委ねる記載になっており、見方によっては受け入れなくても良い印象。補助犬の安全・衛生面の情報が不十分。 (2)ガイドブックの内容について、現場の意見をヒアリング 10病院(無作為抽出) 〇 おおむね既存のガイドブックやマニュアルに満足。 〇 受け入れ体制は整えたものの、実際にユーザーを受け入れた経験がなく、「実際に受け入れてみないと分からない」、「職員がマニュアル通りに動いてくれるか不安」。ユーザーの受け入れ経験のある病院の事例や、問題があったときの対処方法などを知りたい。 ⇒一般の人が立ち入ることのできる区域であれば、受け入れが基本であることを明確に記載。また、場面ごとの具体例や、補助犬の安全・衛生面の情報を追加するが必要あり。 スライド10 2. 各分野の受け入れ実態調査 調査対象 A. 受け入れ側 医療機関 公共交通機関※ 宿泊施設 飲食店 複合商業施設※ 賃貸住宅管理・所有者 B. 管轄側 保健所 省庁 C. 当事者 補助犬ユーザー (1)補助犬ユーザーの施設利用に関する文献調査 〇 受け入れ拒否を経験したユーザーは、補助犬法施行直後・現在ともに多く、法律を説明しても受け入れが認められない「完全拒否」を経験した人は、4割程度。拒否事例の多くは施設側の「準備不足」「情報不足」が原因。 (2)受け入れ側、管轄側に受け入れの実態(経験や不安等)を把握するためのアンケート調査   ※印は厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬の普及・啓発のあり方に関する調査研究」による実施 〇 医療機関(n=226)受け入れ経験あり17.3%、受け入れに不安あり22.6%(アレルギー71.7%、利用者の反応65.0%、補助犬の衛生面38.3%、ユーザーへの対応38.3%)、受け入れの対策講じている10.5% 〇 宿泊施設(旅館 n=21)受け入れ経験あり38.1%、受け入れに不安あり57.1%(自由記述:他の利用者の理解・反応、アレルギー、ユーザーへの対応、衛生面、匂いなど) 、受け入れの対策講じている9.5% 〇 飲食店(個人経営 田舎n=20/都心n=36)受け入れ経験あり0.0%/16.7%、受け入れに不安あり45.0%/50.0%(自由記述:他の利用者の反応、アレルギー、衛生面、店内の狭さなど) 、受け入れに前向き30.0%/52.8% 〇 賃貸住宅(n=1,116)受け入れ経験あり2.4%、受け入れに不安あり87.8% (他の入居者への対応52.8%、他の入居者からの苦情47.4%、補助犬の匂い43.9%、補助犬の排泄物処理41.8%など) 、受け入れに前向き8.0%(条件次第37.3%) 〇 保健所(n=358)補助犬ユーザーからの相談あり5.6%、飲食店からの相談あり13.4%、病院からの相談あり2.2%。相談があったら担当窓口(障害福祉課)に案内するという回答が複数、保健所と福祉課の連携が不十分。 〇 省庁(n=12)障害者差別解消法に関する職員向け研修に補助犬の内容あり2省庁、補助犬に関する取り組み実施3省庁。 スライド11 2. 各分野の受け入れ実態調査(つづき) (3)受け入れ拒否への対策・工夫について、補助犬ユーザーを対象にアンケート・ヒアリング調査 〇 拒否経験後に何らかのユーザーの行動(法律の説明、訓練事業者への連絡、パンフレットの提示)で受け入れに変化51.2%。交渉しても変化なし35.7%、経過不明12.6%。 〇 対策として、補助犬の管理(衛生面・行動面)の徹底はほぼすべてのユーザーが実施。 〇 法律や権利を主張し過ぎず、受け入れ側の不安・状況も汲み取る意識を持つユーザー:拒否経験少。 ⇒分野によって、受け入れ経験、受け入れに対する姿勢、不安は、大きく異なる。飲食店では、受け入れの姿勢や経験に地域差あり。分野の現状に即したガイドブックの作成が必要。ユーザーによって受け入れ拒否経験に差あり 3. 各分野の受け入れガイドラインの作成(作成中) 飲食店を含む施設等で補助犬の同伴を受け入れるということ 概要版(ラフ段階)イラスト 『すべての人(ユーザー、受け入れ側、他の利用者)が安心して補助犬の同伴を受け入れられる社会の創造』を目指し 補助犬同伴の受け入れは、基本的な「権利」の保障であることの周知。ならびに、各分野が抱える不安や疑問を解消する内容に。 補助犬ユーザー受け入れガイドブック(7編) 本編(医療機関編、公共交通機関編、宿泊施設編、飲食店編、複合商業施設編、     賃貸住宅・分譲マンション編、保健所編) 概要版 一般向け補助犬リーフレット ※ユーザーのヒアリングから、外国人労働者、中国・韓国料理店店員による拒否が多いが、言語の問題で説明できない(話を聞いてもらえない)との声が複数あったため 英語 中国語(簡体字、繁体字) 韓国語 ベトナム語 スライド12 ④障害者のニーズを的確に把握するために、補助犬の種別毎の需要推計方法について検討する ①補助犬の需要推計について先行研究の概要  補助犬に需要推計について、国内外の文献を調査した。その結果、補助犬の需要推計については国内の盲導犬について下記の2件の推計値が確認できた。1件は20年以上前の調査であり、盲導犬希望者数は約7,800人であった(日本財団,1999)。この計算式の指標は、「盲導犬使用者の候補者」として盲導犬を持たない視覚障害者1級・2級を、また「潜在希望者および顕在希望者」として独自の調査により、盲導犬の使用希望や、関心、よく知っているか等から人数を算出していた。次に、もう1件は、2017年に発行された日本盲導犬協会50周年記念誌に記載されている数値であり、盲導犬希望者数は約3200~2600人となっている。この計算式の指標は、「盲導犬使用者の候補者」として盲導犬を持たない視覚障害者1級・2級の人数から、飼育不適や外出なしの人数を除き、外出する人数のみを取り上げ、 「潜在希望者」として盲導犬非希望者のうち盲導犬保有のメリットがデメリットを上回る層の割合、「顕在希望者」として顕在化した人で実際に盲導犬を申し込んだ人の割合を用いて人数を算出していた。これらの課題として、①視覚障害者1級・2級に限定する根拠が示されていないこと、②計算式に用いる指標の数が少ないこと、③希望者数の根拠となる調査の対象者数が少なかったり、調査の詳細が示されていないため信頼性を検証できないことが挙げられる。 ②使用者の障害の状態像  国内外の先行研究を整理し、補助犬使用者の状態像を明らかにした(表1~3)。 スライド13 表1 盲導犬使用者の状態像 使用者データ ・身体障害者手帳1級・2級 ・全盲・ロービジョン 専門家意見 ・全盲・弱視者・視野欠損者等 表2 聴導犬使用者の状態像 使用者データ ・全ろう・難聴 団体意見 ・中程度~重度の身体(聴覚)障がい、18歳以上 表3 介助犬使用者の状態像 使用者データ 障害状態 ・身体障害者手帳1級・2級  ・四肢麻痺,直腸・膀胱障害  ・歩行不可能,歩行困難 ・重複障害(肢体不自由+聴覚障害や肢体不自由+視覚障害)/(欧米)筋力低下,四肢麻痺,片麻痺 ・(欧米)筋力低下,片麻痺,四肢麻痺,下肢麻痺,下肢及び左上肢筋力低下 ・四肢・体幹機能障害,不完全対麻痺,膀胱障害 ・上肢不全麻痺,下肢完全麻痺(痙性)・上肢不全麻痺,下肢完全麻痺(弛緩性)・上下肢完全麻痺(弛緩性) 診断名・疾患 ・頸髄損傷(そのうちZancolli分類 C6A・C6・C5・C6BIIについて報告あり) ・多発性硬化症  ・筋ジストロフィー ・進行性筋ジストロフィー(Duchenne型)  ・進行性筋ジストロフィー(Becker型) ・脊髄損傷(そのうちZancolli分類C6B・完全損傷・C6A・胸髄・腰髄レベルについて報告あり) ・脳性麻痺  ・胸髄損傷,腰髄損傷,関節リウマチ,自己免疫疾患,エーランダンロス症候群,脳出血 ・小児麻痺後遺症 専門家意見 障害状態 ・身体障害者手帳1級・2級 診断名・疾患 ・脊髄損傷  ・頸髄損傷 ・多発性硬化症・脳性麻痺 ・神経難病,神経筋疾患,脳卒中後遺症,/重症筋無力症,筋ジストロフィー(ベッカー型),脊髄性筋委縮症等 ・脳卒中片麻痺,リウマチ/肢体不自由の原因となる疾患はすべて適応 ・筋疾患(筋ジストロフィー,多発性筋炎など),運動ニューロン疾患(筋委縮性側索硬化症,脊髄性進行性筋萎縮症,遺伝性感覚性運動性ニューロパチーなど),脱髄性疾患(慢性炎症性脱髄性ノイロパチー),変性疾患(パーキンソン病と関連疾患,脊髄小脳変性症),脳血管障害,慢性関節リウマチ,全身性エリテマトーデス ・神経筋疾患,筋疾患(筋ジストロフィー等),神経難病(パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋委縮性側索硬化症等),脳血管障害等/18歳以上が一般的 スライド14 ③補助犬の需要推計のための指標軸 補助犬に関する先行研究から、需要推計に関連する可能性がある要素について整理した(表4)。 表4 需要推計の関連要素の候補 ○管理能力 ・行動管理の能力 ・飼育管理,健康管理その他の管理の能力 ・飼育管理,健康管理,給餌,排泄等の能力 ○年齢・自己管理能力,経済効果,介助犬の経済性の観点から年齢制限が必要となり,18歳以上が一般的 ○利用適性に関する評価項目 ・基本属性/障害の内容・程度/生活環境/盲導犬に対する理解/ニーズ ○使用希望 ○日本聴導犬協会の規定 ・会社勤めの場合は,職場にも補助犬を同伴できる ・自宅訓練を受けられる、継続できる等 ○介助犬使用者の適性 ・介助犬認定試験に合格するだけの責任能力等 ④補助犬の需要推計のための計算式と推計値の試算 ③の要素と、研究班における検討から、下記に計算式(案)を作成した。 ●補助犬需要推計の計算式(案):補助犬の需要推計値=「対象障害者数(障害種別・障害者手帳の等級)」×「年齢(18~65歳以下)」×「犬の飼育率」×「一戸建て率」 ●推計値の試算:下記に判明している数を入力し、推計値を算出した。なお、この推計値はあくまで試算であり、現時点で、把握できる数を入力した最大値である。ここで入力した、障害者数は「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果」(厚生労働省,2018)から算出した。また、等級による人数は抽出できないため、それぞれ障害の等級は反映していない。 ●盲導犬の需要推計値=約5,900人 ●聴導犬の需要推計値(暫定)=約4,300人 ※聴覚障害の数は不明で、聴覚・言語障害の数を用いたため、実際の値はさらに少なくなる ●介助犬の需要推計値=約36,300人 ⑤結論・今後の課題  先行研究をふまえ補助犬の需要推計の計算式の提案と推計値の試算を行い、現時点で把握できる最大値を算出した。本研究により現在、補助犬を使用している障害者の状態像や疾患は明らかになったが、補助犬の貸与が適切である障害者や、その障害や環境のアセスメントについては、その定義や手順を明確化していくことが期待される。