参考2  視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第14回)資料 令和6年度コンテンツ海外展開促進事業(アクセシブルな電子書籍市場等の拡大等に関する調査)【EPUBに関する最新の標準動向調査】令和7年11月12日 (1ページ) 1.本調査研究事業の概要 令和6年度調査の実施内容 1. 前年のアンケート調査及びヒアリング調査から得られた示唆に基づき、電子書籍を製作する上で求められるアクセシビリティガイドブック骨子案を策定する  EPUBを対象としたアクセシビリティに関する国内及び国際的な最新の標準動向調査  出版社・電子書籍制作事業者・ビューア開発事業者等関係者による議論に基づく、アクセシビリティガイドブックの骨子案策定 2. 出版業界内の取組やその進捗及び課題を共有するための会議を実施し、報告書に取りまとめる  ガイドブック骨子案の作成に関する助言・承認  出版業界内における取組や課題等の共有  アクセシブルな電子書籍等の普及促進を図るための方策検討 実施手順 電子書籍の標準的なファイル形式である「EPUB」を対象に、アクセシビリティに関する国内及び国際的な最新の標準動向を調査するとともに、アクセシビリティガイドブックの骨子案を策定した。 骨子案の策定にあたっては、出版社、電子書籍制作事業者、ビューア開発事業者等関係者によるWGを設置し、議論した。 議論において、まずアクセシブルな電子書籍に求める要件を整理・合意し、その要件それぞれについてどのように実現するかの方針を取りまとめた。そしてその方針に基づき、ガイドブックの構成・内容を具体化するという手順で実施した。 STEP1 EPUBに関する最新の標準動向調査 STEP2 アクセシブルな電子書籍に求める要件の整理 STEP3 アクセシビリティガイドブックの構成案及び記述方針の具体化 STEP4 アクセシビリティガイドブックの骨子案の作成 (2ページ) 2.EPUBに関する最新の標準動向調査(1)対象となる技術仕様 調査対象の技術仕様と作成主体と概要 EPUB3.3 W3C(World Wide Web Consortium)2023年5月25日にW3Cによって勧告された最新のEPUB仕様。本仕様の中で、EPUBAccessibility1.1とも連携している。 EPUBAccessibility 1.1 W3C EPUB電子書籍が満たすべきアクセシビリティ要件を定めた技術仕様。EPUB電子書籍が「最低限WCAG 2.0を満たさなければならない。WCAG 2の最新バージョンを満たすことが強く推奨される」と規定されている※JIS X 23761はEPUBAccessibility 1.0との一致規格であり、1.1はまだ反映されていない。 WCAG 2.2 W3C 2023年10月にW3C勧告となった最新のウェブアクセシビリティ技術仕様。現在ISO化に向けて検討が進められている。 JIS X8341-3:2016 正式名称は『高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ』。高齢者や障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。規格本文は対応国際規格『ISO/IEC 40500:2012』(W3C勧告『WCAG 2.0』)と一致した内容。 Readium LCP Readium Readiumが提供するオープンなDRM仕様。Readium LCPはISO/IEC 23078-2:2024として参照されるISO国際標準になっている。 User Agent Accessibility Guidelines W3C ユーザエージェント向けのアクセシビリティガイドブック。ユーザエージェントには、ブラウザ、ブラウザ拡張機能、メディアプレーヤー、ビューア及びウェブコンテンツをレンダリングするその他のアプリケーションが含まれる。 電書協EPUB 3 制作ガイドver.1.1.3 2015年1月1日版 一般社団法人デジタル出版者連盟(注)令和4年2月に日本電子書籍出版社協会(電書協)から社名変更 電書協加盟社のための、一般書の『EPUB 3』を制作する際のガイド。2014年11月13日に、EPUB 3.0.1に準拠してアップデートされ、ver.1.1.3が最新版となっている(2015年1月15日に誤植修正)。 ページの下部にはEPUBに関する図が掲載されている。 EPUB3.3 EPUB出版物がEPUB Accessibility1.1で定義されているアクセシビリティ要件に準拠することを推奨 →EPUB Accessibility1.1 WCAGをEPUB出版物に適用する方法を定義、アクセシビリティメタデータの提供によってEPUB出版物のアクセシビリティ品質を発見できるようにすることを規定 →Web Accessibility Initiative ( WAI )記載されている大きな枠のうちWCAG(2.0以降)に矢印がつながっている。 Web Accessibility Initiative ( WAI ) W3Cが定めるウェブアクセシビリティガイドブック の枠の中には3つの形式が記載されている。 WCAG(2.0以降)ウェブコンテンツのアクセシビリティガイドブック。EPUB出版物のアクセシビリティを定義するための基礎。 User Agent Accessibility Guidelines(UAAG) ウェブブラウザやメディアプレーヤー等のウェブコンテンツを利用するためのユーザエージェントについてのアクセシビリティガイドブック Authoring Tool Accessibility Guidelines (ATAG) ウェブコンテンツを制作するためのオーサリングツールに関するアクセシビリティガイドブック JIS X8341-3:2016 WCAG 2.0の一致規格 →Web Accessibility Initiative ( WAI )記載されている大きな枠のうちWCAG(2.0以降)に矢印がつながっている。 電書協EPUB3制作ガイド:電書協加盟社のための一般書のEPUB3を制作する際のガイド →(EPUB3に準拠)→EPUB3.3に矢印がつながっている。 別枠にアクセシブルな電子書籍の配信に関するソリューションの一つ Readium LCP 図書館貸出や書店販売等の多様なビジネスモデルをサポートするデジタル著作権管理ソリューション(DRM)と記載されている。 (3ページ) 2.EPUBに関する最新の標準動向調査(2)調査結果の概要/3.利用者側ヒアリング 調査結果の概要 調査対象の技術仕様と評価 EPUB3.3 アクセシビリティに関する規定はEPUBAccessibility1.1を参照しているため、EPUB3.3自体のアクセシビリティ要件はない EPUBAccessibility 1.1 具体的なアクセシビリティ要件については、WCAG2.0以降の達成基準を参照している。WCAG2.0のレベルAに準拠すること(最低基準)、WCAG最新版(2.2)のレベルAAに準拠することを強く推奨。EPUBAccessibility1.1の中では、必須及び推奨となるアクセシビリティメタデータを定義している。 WCAG 2.2 ウェブコンテンツのアクセシビリティ要件について、4分野について規定。知覚可能、操作可能、理解可能、堅牢。レベルA、レベルAA、レベルAAAの3段階の適合レベルに分けて達成基準を規定。最低限、レベルAを満たすことが求められる。できるだけレベルAAに対応することを推奨。 User Agent Accessibility Guidelines 2015年にW3Cワーキンググループノートとしてリリースされ、それ以降アップデートされていない。 JIS X8341-3:2016 WCAG2.0の一致規格であり、内容が同一。 電書協EPUB 3 制作ガイドver.1.1.3 2015年1月1日版 国内のEPUBコンテンツ制作のスタンダードであるが、アクセシビリティに関する要件は規定されていない。 Readium LCP パスフレーズ(文章化されたパスワード)の共有が禁止されておらず、第三者によるコンテンツ利用をある程度許容している。電子書籍販売事業者は新たにReadium LCPに準拠したDRMを導入する必要がある。 利用者側ヒアリング 回答者の属性といただいたご意見 視覚障害者 海外の電子書籍ストアはADA(障害のあるアメリカ人法)の規制により、米国内で販売するものは少なくともレベルAAをクリアすることが求められるため、国内の電子書籍ストアでも同等レベルを目指してう必要がある。DRMについては、オープンなDRMについて調査してガイドブックの中に反映していただきたい。 視覚障害者 文芸や小説などの分野は肉声の方が向いており、小説などは点字図書館等での対応が進んでいる一方、専門書系を合成音声で読み上げるニーズが高いため、学術分野などのリフロー版書籍についても読み上げ対応を進めてほしい。 読み上げ方法については、スクリーンリーダーの方が望ましいという点をガイドブックでも出してほしい。専門書については、音声読み上げでは揮発的であり、学習や学問探求には不十分。時にはどういう漢字が使われているかを知りたかったり、正確に論文に引用したい時もある。 ディスレクシア ディスレクシアのユーザーはスクリーンリーダーは用いず、オーディオブックを利用することが多い。 (4ページ) 4.ガイドブック骨子案策定に向けた論点整理 ガイドブック骨子案策定の基本方針 1. アクセシブルな電子書籍として求められる基本的な要素を明確化する 2. 出版社、電子書籍販売事業者が過大な負担なく対応でき、ビジネス面も考慮した内容とする 3. アクセシブルな電子書籍として対応すべき要件を規定するが、実現方法については特定の技術仕様等に限定せず多様な対応方法を可能とする アクセシビリティ対応の対象となる利用者及び対応方法 利用者と対応とアクセシビリティ対応方法等 視覚障害がある方 対応〇 合成音声による音声読み上げ(スクリーンリーダーやOSの支援機能の利用、または電子書籍ビューアによる読み上げ)。点字ディスプレイによる読字(スクリーンリーダー利用と同じI/F)。キーボードによる操作(パソコン)、音声コマンドやアイコン・ボタンの音声読み上げによる操作(タブレットやスマートフォン)。 視覚と聴覚の両方に障害がある方(盲ろう) 対応〇 点字ディスプレイによる読字(スクリーンリーダーと同じI/F) 上肢障害がある方 対応〇 キーボードや入力デバイスによる操作(パソコン) 発達障害や学習障害、知的障害がある方 対応△ 適切なアクセシビリティ対応方法が明確化されていない 色覚特性がある方 対応△ 色調変換(OSが色調変換機能を提供しているため、それを利用) 高齢の方 対応△ フォントサイズの拡大(すでに提供済み)。色調変換(OSが色調変換機能を提供しているため、それを利用) 一時的に障害のある方(眼鏡を忘れて文字が読みづらいなど) 対応△ フォントサイズの拡大等、既存機能で対応 →最初のステップとして、「音声読み上げ」及び「キーボードによる操作」(パソコン版)に対応することを目指す (5ページ) 5.コンテンツ及びビューアに求められるアクセシビリティ要件 リフロー型EPUBコンテンツは、WCAG2.2(レベルA)のうち電子書籍に関わる項目、EPUBAccessibility1.1、及び電子書籍固有のアクセシビリティ要件を満たすことが求められる。 電子書籍ビューアについても、ブラウザアプリとして提供されるビューアについては、ビューアそのものがウェブコンテンツの一種としてWCAGのレベルA項目に準拠することが求められる。ネイティブアプリとして提供されるビューアはそれ自体がWCAGの対象とはならないが、視覚障害者等の利用者が支障なく電子書籍を利用できるよう、ビューアが提供する機能やユーザインタフェースはWCAGのレベルA項目を満たす形で提供されることが望ましい。 ガイドブックが対応すべき技術仕様及びその対応方針 分類と概要と求められる対応 1 WCAG2.2 EPUB電子書籍を含む、ウェブサイトやウェブアプリケーションにおけるテキスト、画像、動画、音声、フォーム、ナビゲーションなど、あらゆるコンテンツが対象となるアクセシビリティ基準。ISO、JIS化されているのはWCAG2.0だが、最新のWCAG2.2のISO化に向けて手続きが進められている。  →WCAG2.0達成基準レベルAへの準拠が求められる。WCAG2.2達成基準レベルAAへの準拠が推奨される。2025年6月に施行される欧州アクセシビリティ法*1では電子書籍がWCAG2.1の達成基準レベルAAを満たすことが求められている。2024年4月に改定されたADA法*2Title2で、州政府及び地方自治体がWCAG2.1レベルAA以上が求められることが明記された。 *1 European Accessibility Act(EAA)(指令2019/882) *2 Americans with Disabilities Act 2 EPUBAccessibility1.1 EPUB向けアクセシビリティ対応要件を定めた標準  →アクセシビリティ対応についてはWCAG2.0の達成基準レベルAを満たすことが求められる。可能な限りWCAG最新版(WCAG2.2)のレベルAA以上への対応を求められている。 3 電子書籍固有の要件 WCAGやEPUBAccessibility1.1で言及していない、(日本の)電子書籍に固有のアクセシビリティ要件  →ルビの付与や読み上げ、数式や図表の読み上げなど、WCAGの達成基準だけでは具体的な対応方法が明確でない要素についてルール化する必要がある。