令和5年度 厚生労働省 障害者等のICT機器利用支援事業 ICTサポートシンポジウム 報告書 日時 令和5年2月20日(火)13:00〜15:30 オンライン開催(Zoomウェビナー) 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 令和5年度 厚生労働省 障害者等のICT機器利用支援事業 ICTサポートシンポジウム 日 時:令和5年2月20日(火)13:00〜15:30  開催方式:オンライン開催(Zoomウェビナー)、事前予約制(参加無料) 手話通訳・要約筆記・テキスト化資料、アーカイブ配信あり 主催:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 プログラム: 13:00 開会挨拶 13:05 事業の実施内容と今後の展開 13:15 講演「Society 5.0社会における障がい者ICTサポートセンターの価値と役割」      NPO法人札幌チャレンジド 理事長 加納尚明氏 13:45 ICTサポートセンターによる支援事例 @ 山口県ICTサポートセンター 社会福祉法人山口県盲人福祉協会、山口県障害者社会参加推進センター A 沖縄県ICTサポートセンター NPO法人沖縄県脊髄損傷者協会 沖縄県障がい者ITサポートセンター 14:15 休憩 14:25 パネルディスカッション    「ICTサポートセンターやICT機器利用支援に求められること」 * ファシリテーター * 日本福祉大学 健康科学部福祉工学科 教授 渡辺崇史氏 * パネリスト * NPO法人札幌チャレンジド 理事長 加納尚明氏 * NPO法人沖縄県脊髄損傷者協会 沖縄県障がい者ITサポートセンター 川田潤氏 * 一般社団法人山口県身体障害者団体連合会 山口県障害者社会参加推進センター 事務局長 武居ひとみ氏 * 社会福祉法人山口県盲人福祉協会 情報出版 ICTサポートセンター 中村真寿子氏 15:20 「インクルサポーター」のご紹介      公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与 西澤達夫氏 15:27 閉会挨拶 配布資料: 資料1  議事次第 資料2  事業の実施内容と今後の展開 資料3  Society5.0社会における障がい者ICTサポートセンターの価値と役割 資料4  ICTサポートセンターにおける支援事例@山口県 資料5  ICTサポートセンターにおける支援事例A沖縄県 資料6  「インクルサポーター」のご紹介 開会挨拶 ICTサポートセンター連携事務局 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 池永藍  ただいまより、令和5年度厚生労働省「障害者等のICT機器利用支援事業」ICTサポートシンポジウムを開催いたします。本日は大変お忙しい中ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。  ICTサポートシンポジウムは、厚生労働省「障害者等のICT機器利用支援事業」の一環として開催しております。  本事業では、障害者等のICT機器の利用支援を実施するICTサポートセンターの活動を支援するため、「ICTサポートセンター連携事務局」を設置し、ICTサポートセンターの支援体制・内容の充実、関係機関との連携強化等を図ることにより、障害者等のICT機器利用支援の更なる促進を目指してきました。  本シンポジウムでは、これまでの取組内容を報告し、ICTサポートセンターよりICT機器利用による可能性の拡がりや実際の支援事例についてお話いただきます。この機会を通して、参加者の皆様とICT機器利用支援の可能性やICTサポートセンターが果たす役割について考えていきたいと思います。 事業の実施内容と今後の展開 ICTサポートセンター連携事務局  株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 奈良夕貴    まず、本事業の実施内容からご説明いたします。本事業は令和4年度から実施しており、ICTサポートセンター連携事務局が全国のICTサポートセンターに対し後方支援を行っています。  本事業の課題意識として、ICTサポートセンターは全国展開を目指していますが、まだ全国の設置には至っておりません。もともと多様な機関が障害者等のICT機器利用支援を行っており、そこからICTサポートセンターが設置されたという経緯であるため、対応内容もセンターによって様々です。また、人材の確保・養成や対応方法に関する情報を得る機会が限られているという課題も挙げられます。  よって、本事業を通して、業務の実態や課題を把握した上で、ICTサポートセンターに求められる基本的役割を再定義し、対応力を強化していく必要があると考えています。今年度は、ICTサポートセンターがどのような課題を抱え、どのような対応をしているのか事務局で把握し、対応することができるか検討を行ってきました。来年度以降は、ICTサポートセンターが地域のハブとなることを目指し、全国への設置を目標としています。  今年度は、@情報収集、A情報共有、B情報展開の3つを軸として運営を行いました。@情報収集では、各ICTサポートセンターへのアンケート調査やヒアリング調査を通して、課題に対応したセンターのリストを作成しました。A情報共有では、ICTサポートセンターと自治体を対象にした全国連絡会議や地域会議を開催し、課題ごとにWEB会議で意見交換を行うなどして、ネットワークの構築を実施しました。B情報展開では、今回、参加者を限定せずにシンポジウムという形で報告させていただいています。    続いて、今年度の成果についてご説明いたします。今回は4点の成果についてご報告させていただきます。 1. 課題に対応した意見交換の場づくり  これまで、全国にあるICTサポートセンターが一堂に会して意見交換することが困難であったため、今回は対面での会議とWEB会議の双方を実施しました。ICTサポートセンターは全国に設置されていますが、抱えている課題には共通点があるため、この意見交換会を通して相談しやすい環境づくりを行いました。 2. 各種情報の整理による業務負担の軽減  各ICTサポートセンターの対応事項一覧を作成しました。また、情報収集先リストを作成し、これまでは各ICTサポートセンターで情報収集し利用者に発信していたものを、どのようなところから情報収集しているのか把握できるリストを作成しました。ICTサポートセンターによっては、業務負担の軽減とまでは言い難いかもしれませんが、これらを活用することで各種情報の整理に係る業務負担を軽減し、より直接的な相談対応の時間を増やしていけるよう支援したいと思っています。 3. ICTサポートセンターの見える化  各ICTサポートセンターがどのような相談対応をしているか見える化するとともに、センターの設置・運営類型について整理を行いました。今回ご参加されている方は、障害者等の支援に関わっている方が多くいらっしゃいますが、ぜひ各ICTサポートセンターの状況を知っていただき、ご協力いただけますと幸いです。ICTサポートセンターの設置・運営類型について、4つの観点を簡単にご説明します。 * センター設置形式 自治体により様々な考え方があり、センター1拠点で対応しているところや、複数の拠点を持って対応しているところがあります。 * センターの専門分野の特徴 相談の専門分野に関しても、広範囲な情報提供をするところや、障害種別に特化した対応を行っているところがあります。 * 支援における人材活用の手段 センターに専門職員を配置するところや、地域資源を活用してボランティアの方に協力いただくところ、または外部機関や専門家と連携するところがあります。 * 支援の体制 どこのセンターも直接的に利用者の相談対応を行うところではありますが、それ以外にも病院や教育機関等の中間拠点と一緒に情報や支援を届けるところがあります。また、支援者を育成することで、利用者に支援を届けるというセンターもあります。  資料の表には参考となるセンターを例として掲載していますが、ぜひ今回を機にご自身のセンターの設置・運営類型についてもご確認いただけますと幸いです。また、その他として、就労支援に力を入れているICTサポートセンターもあります。気になる点がございましたら、ぜひご質問・ご意見などいただけますと幸いです。 4. ICTサポートセンター設置までの流れの整理  センター未設置の自治体から設置のハードルが高いというご意見をいただきましたので、設置までの流れをヒアリングして整理しています。こちらに関して、ぜひ今回ご参加いただいている方にお願いがございます。自治体や事務局機能のところでは、当事者のニーズが把握しづらい状況にあります。そもそもICT機器を知らないという前提の上では、ICTサポートセンター未設置によってどのような未来がもたらされるか分からないため、アンケート調査の「必要な支援はありますか」という問いに対し、「特に困っていません」という回答になることが多く見受けられます。そのため、知りたい情報や希望のお声をいただけますと、今後の事業の発展につながりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  最後に、ICTサポートセンターの今後の展開についてお話します。本事業は単年度事業のため、来年度は別団体が担当となる可能性がございますが、今私どもが考えられる展開についてご報告します。センターの基本的役割の明確化を行い、どこまでをセンターが行い、どこまでを自治体や国が実施するのかについて整理していくことで、より対応力が向上するのではないかと考えています。また、地域資源や事務局との連携、発展をもう少し進めていく必要があると思います。さらに、ICTサポートセンターの未設置自治体に対しては引き続き情報提供を行い、設置について直接的な支援も必要と考えています。  簡単ではありますが、以上で本事業の報告とさせていただきます。 講演「Society 5.0社会における障がい者ICTサポートセンターの価値と役割」 NPO法人札幌チャレンジド 理事長 加納尚明    今日はよろしくお願いいたします。今日は全国のいろんな地域からご参加いただいていますし、障がいのある方の支援をしている人、行政の人、一般個人、大学関係など様々な立場の方がおられますが、共通する思いは1つありますよね。それは、障害のある方にとって、ICTを活用すると、きっと何かいいことがある、きっと役に立つということです。今日は皆さんで、その思いと社会を照らし合わせて、これからの社会で私たちはどのような役割を担っていけばよいのか、どのような価値が生まれてくるかについて考えるきっかけになれば幸いです。  簡単に自己紹介をします。私は現在北海道におりますが、大学を卒業するまで京都の自宅におり、就職で東京に住み始めました。元々理系大学にいたので、エンジニアとして就職し、4年後、結婚を機に札幌に移住しました。札幌では通信会社の営業マンとして働いており、2000年に今、代表をしている札幌チャレンジドに出会い、会社で働きながらNPOでボランティアとして活動していました。2006年、会社と札幌チャレンジドの双方をやり続けるのが厳しいと感じ、会社を退職しました。2008年、札幌市で企業の社会貢献活動をお手伝いする部門が新しくできたため、任期付職員の課長として3年間働きました。その後、札幌チャレンジドに戻って来ました。よく社会をセクターといいますが、NPOセクター、行政セクター、企業セクターなど、それぞれの分野で社会課題に関わることを仕事としてやってきています。  私が代表をしている札幌チャレンジドですが、NPOには必ずミッションがあります。札幌チャレンジドのミッションは、「ITでマザル・ハタラク・拓き合う社会を創ります。」というものです。経営理念を「社会性・事業性・革新性の追求」と定めています。社会課題を解決するのがNPOの本分ですが、社会課題を事業として、人を雇用して解決する。そして、誰も取り組んでいない革新的なことに取り組んでいく。誰かがやっていることは、誰かにお任せして、私たちは常に誰もやっていないことを取り組んでいこうと、これを経営理念として定めています。  ここでチャレンジドという言葉を、この業界の方は聞いたことがあると思いますが、大阪に竹中ナミさんというICTサポートの第一人者の方がいます。「プロップ・ステーションの挑戦」という本を出されて、アメリカで使っていた英語を日本に持ち込みました。チャレンジドとは、神から挑戦すべき課題や才能を与えられた人、障害のある人のことを指す英語です。札幌チャレンジドは、このチャレンジドから名前をいただいているので、「神から挑戦すべき課題や才能を与えられた団体」と勝手に理解しています。札幌チャレンジドは、常に様々な形で、障害のある方とICTで挑戦をしてきています。  2000年に団体ができました。2000年当時は、パソコンやインターネットを使っている人が少ない時代でした。障害がある人がICTを活用することで、今まで難しかったコミュニケーションも解決することができる、家で働くことができると考えました。北海道では団体そのものが初めてできました。このような団体がまだ無い時代でした。  その後、2003年に札幌市障がい者ITサポートセンターができました。福祉サービスで表すと、就労継続支援A型です。2006年に障害者の法律が大きく変わり、それまでは作業所というひとくくりの支援しかなかったのですが、A型、B型と分かれました。  札幌チャレンジドはその前の年から手弁当で、制度は使わず、障害のある人に働きに来てもらい、企業様から依頼を受けてデータ入力をするという、そのスタイルを自ら作っています。翌年に法律が変わったことでA型事業所となり、2011年には就労移行支援を始め、障害のある方がパソコンと就労のトレーニングを積み、企業で長く働くための支援を開始しました。働きたい人のニーズ、雇用したい人のニーズがあまりにも多く、札幌チャレンジドがボランティアで行うことは流石に困難であったため、2011年から制度事業として行うようになりました。資料にはこのような形で2023年から赤く3点を示しています。札幌チャレンジドの行っていることは、資料の内容を確認いただくと分かると思います。1点だけご紹介します。高校の政治・経済の教科書に社会的企業という項目があり、その事例として教科書に載せていただいて、大変有り難く、うちに関わっているボランティアの方々が大喜びしてくださいました。  ここからは今日の本題に入ります。  まずは、札幌市障がい者ICTサポートセンターの歩みをぜひ参考に聞いていただきたいです。この事業を一番長く行っているのは我々ではないかと思います。  ICTサポートセンターを始めたきっかけは、2002年に道庁の知り合いから、厚生省が大蔵省に障害者ITサポートセンターの予算要求をしたという話を教えてもらったことでした。ただ予算要求をしただけですが、これは札幌チャレンジドがやるしかないと思い、1週間で「北海道(札幌市)における障害者ITサポートのグランドデザイン」という資料を作りました。グランドデザインという言葉は、総合計画よりもう少し柔らかい、新たな社会の姿やイメージであったり、具体的に実施する内容を指します。グランドデザインを総合的な提案書という形で、北海道庁の障害者支援の部門とITの部門、また札幌市役所の障害者支援の部門とITの部門の合計4か所に持って行きました。予算が通ったらぜひ一緒にやりましょうと伝え、幸い予算のOKが出たことで、札幌市障がい者ITサポートセンターが開設されました。  北海道はとにかく広いので、どこかにセンターを1箇所開設しても、いわゆる受益の範囲は狭いです。3年かけて全道21箇所で障害者のためのパソコンボランティアを養成したいという北海道の希望を受けて、パソコンボランティア養成を実施しました。このようなプロセスを経て事業化されました。  札幌市障がい者ITサポートセンターでは、2005年にはパソコンボランティアの養成を開始しました。センターに来ることが困難な人がいるため、ちょっとした困りごとを解決することが非常に重要です。福祉では現在アウトリーチが必要とされていますが、2005年には札幌市に提案して派遣事業を当センター内で始めていました。それから、ずっと順調に利用者が増えていったのですが、コロナが始まる少し前くらいから、段々とパソコン講習を受けたい人が減少していました。  本事業は税金を使ってやる事業ですから、より有益な事業とするために、2022年にはパソコン講習のマンツーマン化を提案しました。いわゆるスクール形式のニーズではなく、個別のニーズに応えていくという対応が必要になりました。受講者とマンツーマンで、その人の習いたいことを聞き、月に4回、週1回来てもらって教えるということを開始しました。さらに今年度からは、個人の家庭に教えに行くだけでなく、色々な障がいのある方の支援団体や当事者団体に赴く出前講習も始めました。大雑把ですが、これらが札幌市障がい者ICTサポートセンターの行っていることです。各センターで位置づけが違うので、行っていることも違うと思います。札幌チャレンジドは、障がいの人にパソコン講習を行うなど、2本柱でずっとやってきています。  ここから、今日のタイトルにある、Society5.0社会の説明に入っていきます。5.0と書いてありますが、1.0、2.0と、物事が進化する姿をそのように表現しています。ここから先は、内閣府が唱え、作られた資料を使わせていただきます。今日お話するには、このような資料でお話するのが一番良いと思って使わせていただきます。  まず社会の流れについて。札幌チャレンジドという団体そのものも、常に革新的なことを目指してきています。革新的であるためには、常に社会の流れを見て、社会の流れより半歩先、一歩先と、次にどんな社会が来るかを考えてニーズに応える必要があります。ですから、社会の流れはすごく大切だと思っています。世界は元々、地球というものが生まれ、生物が生まれ、人間、ホモサピエンスが生まれた。最初は狩猟で人は成り立っていた。狩猟から農耕、次に工業社会。工業化社会の次が情報化社会と呼ばれるもの。今はまさにその真っ只中であり、次の社会の入口がどんどん近づいている状態で、その次の社会のことを、Society5.0と呼びます。ともかくSociety5.0の必要な社会が近づいていますということです。  実際にその説明文は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会が、Society5.0というものです。これは内閣府が作っている第5期科学技術基本計画で初めて提唱されましたから、1〜2年前ではなく少し前から、Society5.0という言い方がされています。  ここからは、資料に図がいろいろと貼り付けてありますので、目の不自由な方は当然見ることができず申し訳ないのですが、イメージとして捉えていただきたいです。今映っている図は、これまでの社会とSociety5.0の社会に対して、何がどのように変わるのかという事例が4つほどあります。これまでの社会は必要な情報の検索や分析をするために人々にはリテラシーという活用能力が必要であり、それが負担だ、という社会でした。それがSociety5.0になると、AIにより必要な情報が必要なときに提供される社会になる。自分でいちいち調べに行かなくても、必要条件が整ったら、教えてくれる社会とかですね。  もう少し違う絵で表現します。これまでの情報社会はクラウドに情報が存在し、フィジカル空間にいる人間がその情報を取りにいき、分析する社会です。Society5.0はビッグデータというデータが仮想空間にあり、それを人工知能が解析してフィジカル空間にいる人間に、色々なものを提供してくれるのです。  資料の文章を読みます。これまでの情報社会(Society 4.0)では、人がサイバー空間に存在するクラウドサービス(データベース)にインターネットを経由してアクセスして、情報やデータを入手し、分析を行ってきました。これまでのITサポートセンターはこのリテラシーで使い方を教えてきました。Society5.0では、フィジカル空間のセンサーからの膨大な情報がサイバー空間に集積されます。サイバー空間では、このビッグデータを人工知能(AI)が解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされます。今までの情報社会では、人間が情報解析することで価値が生まれてきました。人間が情報解析する。いろいろな分野にスペシャリストがいます。ところがSociety5.0では、膨大なビッグデータを人間の能力を超えた AI が解析し、その結果がロボットなどを通して人間にフィードバックされることで、これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになります。  次は、Society5.0は経済発展と社会的課題の解決の両立を目指す社会ですよ、と言われており、医療・介護分野においても生活支援、健康促進、最適治療、負担軽減など、新しいSociety5.0の社会が人びとの暮らしを豊かにする。交通に関しても、自動運転など想像がつきやすいと思います。交通分野では自動運転のように、様々な分野でSociety5.0の新しい姿があります。防災に関しては、1月に能登で大きな震災があり、能登の方たちは大変な中におられますが、物資の最適配送ということで、能登も道路が寸断され救援物資が届かないところがたくさんありましたよね。そのような地域には避難所にドローンが飛んでいきます。今は小さいですが、今後大きなドローンが飛んでいって、違う地域から支援物資を届ける。震災が起きたので、この分野は急速に技術開発されます。  私の話の最後のまとめ、提案に入ります。もうすぐSociety5.0の社会がやってきます。もう一部始まっています。その中で、私なりに障害者ICTサポートセンターの役割はどんなことだろうと考えてみました。 * 様々な情報を取捨選択して、必要な人に必要な情報を伝えること。新しいアプリケーションやサービスなどについて、情報がどんどん出てきます。パソコンの使い方の情報ではなく、AIも含めて、情報がもたらすサービスについてです。取捨選択をしていかないと不確かなものもあります。必要となる情報は障害によって全く異なります。そのため、目の前にいる障害を持つ方に、情報をレクチャーする。それはICTサポートセンターが現場でしかできないことです。しっかりと目の前の人に向き合って行います。 * ICTを揃えたり検証したり、場合によっては、お試しのものを各地に提供してくれるヘッドクオーターの役割、ヘッドオフィス的な役割を、ぜひ厚生労働省にお願いしたいということです。どんどん様々な機器類が増えていますが、機器類を各センターが自分たちで検証し、購入することは、物理的・財源的にもなかなか難しいです。厚生労働省が窓口となり、色々な開発メーカーと話をして、検証の部分を厚生労働省が行ったり、一部、自治体が行ったりする。そうして検証した機器が各地のセンターに配備される。そのようなものをぜひ厚生労働省にご検討いただきたいです。 * 各地のICTサポートセンターが一緒に実証検証をして、民間メーカーにフィードバックするという役割です。今後は国の力ばかりではなく、民民ベースで進むことが多くなります。情報家電開発も進んでいるため、その実証実験をしたり、そのサービスの啓発をすることも、ICTサポートセンターの役割として出てきます。実証実験は札幌と福岡、または札幌、沖縄、愛媛でやりましょうとか、そういう地域特性があるかもしれません。そのような機能もセンターで担えると、Society5.0の社会の中、我々が必要なポジションとしていられるのかなと思います。    改めて、私たちが行っている障がい者ICTサポートセンターは、障害者ICTサポート総合推進事業実施要綱に基づいて実施しており、予算措置がされています。これは2003年から始まった事業なので、20年間、次の目的のためにやっております。障害者等の情報通信技術(ICT)の利用機会の拡大や活用能力の向上を図り、情報へのアクセスを円滑に行えるよう支援する。インターネットの中にある情報にパソコンやスマホでしっかりアクセスし、使いこなせるよう支援しましょう、ということなんですが、これからの社会のことを考えると、この要綱の目的を次の文章に直しませんか。  障害者等の情報通信技術(ICT)の利用機会の拡大や活用能力の向上を図り、ここから少し違いますが、新たな価値が産業や社会にもたらされる結果を円滑に享受できるよう支援することにより、障害者等の自立と社会参加の促進を目的とする、と。  方法論の部分が社会の進化とともに変化します。これから、新たな価値が産業や社会にもたらされるんです。しかし、その価値はいわゆる健常者、場合によっては富裕者層にしかもたらされない。そのような社会にはしたくないですよね。そのような結果を誰もが享受できるよう、SDGsでいう誰一人取り残さない、誰もが享受できるように支援を行います。その主たる対象者として障害者や高齢者の方がいるんだろうと思います。このように、時代とともに法律も内容を変更して、新たに明文化されたものに基づいて皆で一緒に力を合わせてやっていくのはいかがでしょうか。  こちらが私のご提案です。ありがとうございます。 ICTサポートセンターによる支援事例@ 山口県ICTサポートセンター 一般社団法人山口県身体障害者団体連合会 山口県障害者社会参加推進センター 事務局長 武居ひとみ  山口県では2023年11月にICTサポートセンターを設置しました。山口県障害者社会参加推進センターは、障害者全般を対象とした相談窓口となっています。視覚障害者へのサポートは特に対応が難しいことから、視覚障害者からの相談は山口県盲人福祉協会が窓口になり、県内二カ所でICTサポートセンターを担っています。山口県障害者社会参加推進センターと山口県盲人福祉協会は車で一時間以上離れた場所にあるため、電話やメールで連携を取っています。  世の中でICT化が進んでいる中、まだまだ取り組むことが難しいと感じ、勇気のない方が沢山いらっしゃいます。例えばガラケーが使えなくなってしまうとか、駅のみどりの窓口がなくなって切符を買うことができないとか、インターネットからホテルの予約が必要など、スマホやパソコンだけでなく個々のニーズについても相談対応を行っています。  山口県は、ICT機器の展示や、実際に体験できるコーナーを常設することが困難です。そのため、来月3月3日にサポーター講習とICT体験教室を開催する予定です。その中で、まず便利さを実感するきっかけを作り、それから個々のニーズに合わせたサポートを実施したいと思っています。  これまでの取組については、山口県盲人福祉協会の中村さんにご説明いただきます。   社会福祉法人山口県盲人福祉協会 情報出版 ICTサポートセンター 中村真寿子  視覚障害者へのICTサポート活動の始まりは、コロナ禍で活動が制限されていた中、スマホに関する講演会を企画したことでした。デジタル庁ができたのが、2021年9月。視覚障害者には理解しにくいことが増え、行政手続きまでスマホ利用やホームページ経由を勧められるようになっていました。「ホームページをご覧下さい」とか「詳しくはQRコードを読み取り下さい」「手続きはスマホが便利です」「LINEで送って」とか言われても、視覚障害者にとっては難しいことです。  デジタル庁が目指す社会形態の1つとして、「誰一人取り残さないデジタル社会」あるいは「誰一人取り残されないデジタル社会」が提唱されています。ICT(情報通信技術)の進化は情報アクセシビリティの向上につながり、視覚障害者の生活も本来なら豊かに変えるはずです。  2021年頃、視覚障害者とスマホについて2つの意見がありました。1つは「スマホにはボタンもないしツルツルで、視覚障害者が使えるはずがない」というもの。当事者だけでなく周りの方からも、そのような声がありました。その一方で「視覚障害者でも使っている人がいるらしい」という話も広がっていました。「色々便利で文字も読めるらしい」「調べ物や乗換案内もできるらしい」というものです。しかし、視覚障害者の方が「本当のところはどうなのか」「具体的に知りたい」「試してみたい」と思って販売店に行っても誰も教えてくれず、「どこに相談したらいいのか分からない」という声が挙がっていました。  そこで、2021年度に下関市で「視覚障害者のためのスマホ講座」を開催しました。主催は、私が事務局をしている「NPO法人下関市視覚障害者福祉会」という当事者団体。開催資金は、下関地区共同募金会の助成金と、NPO法人の自己資金。講師は、地元のボランティア団体で長年ICTに関する活動をしている方に依頼し、スマホを持たない方でも体験できる練習用スマホ(SIMなしで通信機能のないスマホ)を用意しました。市報のお知らせ欄と地元情報誌で開催を告知し、会場やWi-Fiは山口県盲人福祉協会の全面的協力を得て、開催することができました。  2022年度は、下関市で「視覚障害者のためのスマホ講座」を月2回ずつ(1回台風で行うことができず)全23回開催しました。主催は、NPO法人下関市視覚障害者福祉会。開催資金は、下関地区共同募金、下関市障害者福祉事業費補助金と自己資金。講師と会場は、前年度と同様です。参加者合計は1年間で延べ545人、うち視覚障害者が延べ239人となりました。講座開催を知った県内他市の視覚障害者団体からも開催依頼がありましたが、NPO法人下関市視覚障害者福祉会は下関の団体です。そこで、山口県共同募金会の令和5年度助成事業に応募し、資金が得られれば出張することにしました。  2023年度、下関市では前年度と同様、「視覚障害者のためのスマホ講座」を月2回開催しています。主催や開催資金、講師や協力体制はこれまでと同様です。1月末現在の参加者は、延べ453人、うち視覚障害者が延べ218人です。山口県共同募金会の助成金も受けることができ、並行して県内他市への出張教室も始めました。出張教室には地元ボランティアも参加し、出張交通費について山口県盲人福祉協会が協力しています。1月末現在の参加者は延べ552人、うち視覚障害者は延べ252人です。  出張教室の内訳です。山口市は4〜7月に8回開催し、参加者合計は延べ132人うち視覚障害者が59人。周南市は6〜10月に8回開催し、参加者合計は延べ146人うち視覚障害者が89人。下松市と光市は近いため合同で7〜12月に8回開催し、参加者合計延べ164人うち視覚障害者は64人。宇部市は1月末現在で4回開催しており、これまでの参加者合計は延べ110人うち視覚障害者は40人です。来年度の4〜7月には、岩国市と萩市で、サポートセンターとして開催することが決まっています。  このような活動の中、2023年11月に山口県障害者ICTサポートセンターが開設され、社会福祉法人山口県盲人福祉協会内に視覚障害者相談窓口ができました。私は、このICTサポートセンターの設立自体が最大の成果だと思っています。センター設立は、視覚障害者がスマホ等のICT機器について相談できる公の窓口ができたということ。また、スマホ講座事業と連携して課題解決を目指す拠点ができたということです。人的・金銭的拠点ができたことは、非常に大きいことだと思っています。スマホ講座に限定せず、より幅広いICTサポートを目指せるようにもなりました。  ここで、ICTサポートセンターがスマホ講座と連携している実例を2つご紹介します。  一つめは、電話相談からスマホ講座その他のサポートにつながった支援事例です。  最初、ICTサポートセンターに電話があり、iPadのVoiceOverの使い方が分からないというご相談内容を受けました。YouTube等で具体的な使い方は出ているが、インターネットだけではそもそもの使い方が分からないということです。数日後に予定していたスマホ教室をご案内すると、ご家族と一緒にiPadを持って参加され、翌日には「非常にためになった」というお電話をいただきました。ロービジョンフォーラムのスマホ相談コーナーにも来訪されたので、4月開講のスマホ教室の日程をお伝えしました。  その後、ICTサポートセンターに電話がありました。進行性の視覚障害であり、その進行を止めるための手術直後は思うように見えず、仕事についても悩んでいるなど、ICTに関することだけではない相談を受けましたので、山口県盲人福祉協会が持っている情報をお伝えしました。その数日後には、「視力障害センターに見学に行きました」という連絡をいただきました。  二つめは、スマホ教室の開催を知って来訪された女性への支援事例です。  この方は、スマホ教室に飛び入り参加されました。進行性の視覚障害をお持ちで、見える間にスマホでどんなことができるか体験してみたかったそうです。教室で使用しているiPhoneSEや視覚障害者に便利なアプリ等をご紹介しました。ご本人のスマホはAndroidでしたが、ロービジョンフォーラムでお会いした時には、simなしのiPhone SEを購入されていました。VoiceOverの練習をしていて、「また分からないことを教えてください」「行ける日があればスマホ教室も参加します」と仰っていました。    スマホ講座から始まりICTサポートセンターとなった現在、最大の課題は、サポート内容や地理的範囲の広がりと個別ニーズの多様性をどのように両立させるかだと考えています。  最初はiPhoneのVoiceOverやSiriの便利な使い方などスマホ講座でのサポートでしたが、ICTサポートセンターとなってからは、Androidやタブレットに関する問合せも出てきています。今後は、スクリーンリーダーを使ったパソコン操作の他、音声家電に関する情報についても問い合わせがあるかもしれません。実際、同じ法人の他の部署に「音声が出る良い炊飯器はないか」など問い合わせがありました。声だけで操作できる機器等もご紹介できるようになればと思っております。  次に、地理的範囲の広がりについてです。現在開催中のスマホ講座は、下関市に始まり、他の市にも広がりました。山口県盲人福祉協会(ICTサポートセンター)がある下関市は、山口県の最西端に位置します。時間的、経済的効率を考えると、下関市から講師陣が出張する形ではなく、地元の講師が教えられる形を作っていかなくてはと思っています。各地の教室では、地元の音訳や点訳のボランティア、パソコンのボランティア、シニアを対象にしたスマホ講座を開催している方などが会場に来て手伝ってくださいました。しかし、「視覚障害者のためのスマホ講座を引き受けてもよい」と言ってくださる方は見つかりませんでした。未開催の市町村を含む県全体をカバーするには、今後どうしたらよいのかが大きな課題です。  また、個別のニーズも非常に多様性があります。同じ視覚障害者でも、全盲の方や視野が狭くなる方など多種多様です。同居家族についても、視覚障害が無い方と一緒に住んでいる方、一人暮らしの方、家族も視覚障害を持つ方など多様な背景をお持ちです。また、スマホに慣れている方とそうではない方、スマホをどの程度使いこなしたいのかなど、本当に多種多様なニーズがあります。理想を言えばマンツーマン対応ができたらよいと思いますが、人材や経費面の制約があり、対応しきれない実情があります。この多様化する個別ニーズに対応するには、どうしたらいいのか。現状を整理し、必要な対応策を検討し、課題解決に必要な仕組みをつくる。仕組みを作って実際に動いてみることしかないと思っています。  例えば、ICT機器使用に関するサポート事項を3種に分けてみました。  ※電波状況の悪化により、講演を中断。パネルディスカッションで補足することとした。 ICTサポートセンターによる支援事例A 沖縄県ICTサポートセンター NPO法人沖縄県脊髄損傷者協会 沖縄県障がい者ITサポートセンター 川田潤  今年度の沖縄県のICTサポートセンターの報告を行います。私たちの運営法人は沖縄県脊髄損傷者協会という当事者団体が母体となっており、県から委託を受けて事業を実施しています。私たちが行っている事業は就労支援事業所のA型・B型事業、IT支援としての事業など様々です。ITサポートセンターは2018年4月から開設し、運営しています。  主な事業の内容ですが、障害者のICTに関する困りごとである、パソコン・スマホの使い方の説明やアクセシビリティの説明等を行っています。また、iOSアクセシビリティの講習会やセミナー、情報支援機器の体験・貸出を行っています。事業にも情報支援機器の体験コーナーを設置し、または直接支援になりますが、スイッチの選定アドバイスも行っています。テレワーク支援も実施しています。今現在は、関連している就労支援A型・B型の中、環境支援やそれに伴う特別支援学校さんから要請があれば行っている状況です。  これまでの活動としては、直接支援がメインであり、主に私1人で相談を受けて支援を行っていました。私は2020年から入ってきていますが、それまでは職員が1年契約であったため、専門的知識を持つ職員の育成を行うことができないという面もありました。予算面についても、福祉機器は1つ何十万もするものが多く、全て揃えることは困難です。相談を多く受ける機器は揃えていますが、日常生活用具や、あまり相談がない支援機器やデモ機等は、購入することが難しいことも現状となっています。さらに、沖縄の離島や本島北部という人口が少ないエリアについて、支援がなかなか行うことができていない状況です。コロナ明けの2023年に、どういったところを改善していこうかと考え、今年は支援の変化を意識して少し取組を変えてみました。   * 支援方法の変化  今までは相談において、私がご家族やリハビリ士、OTに向けてスイッチの提案をしたり、デモ機で意思伝達装置の使い方の説明を行っていました。ですが、そうすると、スイッチが使えないという相談があった時に私が駆け付けないといけません。そのようなことが重なったので、やり方を変え、あくまでご家族やリハビリ士が当事者を支援するということを意識するようになりました。私からは、ご家族等にこのような使い方がいいですよとアドバイスを行います。勿論私も当事者の方を支援しますが、私だけが分かるのではなく、ご家族や私以外の方も支援機器について知っているという状況を作り上げました。  支援の輪が広がった事例をお話します。多系統萎縮症の方で、ファインチャットのスイッチ入力が上手くいきません。それまでは、スイッチが上手く活用できないとき、スイッチを新たに作っていました。ですが、支援の方法を変えてみて、まず一緒にいたお父さんとPTに、その方に動きがあるのか、その動きをどのように活用すればスイッチができるのかを考えてもらいました。すると、このような感じでやってみたらどうかと、お父さん自身がスイッチを作ったので、これを元に私が改良版スイッチを作り、今はスイッチの練習を進めることができるようになりました。これは私だけが見ているとなかなかできないことだと思います。お父さんも把握することによって、その支援の輪を広げることができました。 * 沖縄県難病相談支援センター NPO法人アンビシャスとの連携  沖縄県難病相談支援センターのNPO法人アンビシャスという組織が、ALSの方などに対しコミュニケーション支援、意思伝達装置支援など、同じような活動をされており、連携を進めていくために今年度始めに挨拶に伺いました。実際の現場ベースでは繋がりが無かったため、協力できることがあれば一緒にやっていきましょうと連携を始めました。  一番支援の連携が行いやすかったのは、支援機器の連携です。お互い必要としている機器が手元に無い場合、機器を貸し合い、相談者へスムーズにデモ機を貸出することができました。デモ機がない場合、当事者の方にお待たせする時間がありましたが、それが解消したことが大きな効果です。次に、セミナーや講習の共同開催です。今年はファインチャットの松尾先生を呼んで意思伝達の講習会を実施したり、3Dプリンタで自助具を作るセミナーを組みお互い協力を行いました。遠隔地、離島の支援についても連携しています。今度、離島の支援に向かうのですが、何か協力できることはありますかと情報共有し、必要であれば代わりに駆けつける、もしくは代わりに行ってもらうなど、そのような連携を取ることができました。離島の支援以外にも、通常の支援やスイッチの種類が変わってきた場合、私たちに相談があると、この過程をアンビシャスさんと情報共有することにより、よりよい流れを把握したり、もしくは再度繋ぎ直したり、そのようなことができるようになりました。アンビシャスとの連携は、今年すごく大きなネットワークの広がりとなりました。 * 障害者団体との連携  主に今年度は、視覚障害者福祉センターの方との連携ができるようになりました。連携した事例として、右目全盲、左目弱視、身体的障害、感覚障害を持っている方が、ピアカウンセラーの仕事のためにパソコンを活用したいという相談がありました。重複障害というところで、視覚障害者福祉センターだけでは支援が難しいところに対し、私たちと連携することによって、お互いに知恵を出し合い支援を進めることができています。また、私たちのところには日常生活用のデモ機がないため、機器の活用についても連携をとることができています。 * 医療機関・施設との連携  特に沖縄病院とは、業者を月に2回訪問して設置、聞き込み等を行っています。沖縄県の肢体不自由児の施設がありますが、南部療育医療センター、中部療育医療センターにも定期的に訪問し、OTなどの勉強会なども現在行っています。それ以外の医療機関にも相談に行くことがあるのですが、関わっているOT・PTだけではなく、リハビリ室で意思伝達装置の勉強会をしませんかと、勉強会の提案を行っています。今まで直接支援型を進めていたのですが、今年は支援する人をサポートするというところに視点を変えてみたところ、大きなネットワークの広がりと、今までできなかった支援について広がりを持つことができました。 * 遠隔地支援における連携  地域協力員という人を立て、まずはその人に相談してもらう。そして、私がすぐに駆けつけられない場合は、その方がかわりに駆けつけてもらうという協力員体制を取っています。    これからについては、いくつかありますが、ボランティアの育成がなかなかできていない状況です。今後は、ボランティアの育成を重点的に行い、特別支援学校の教員のネットワークを作りたいと思っています。駆け足になりましたが、私の報告を終わります。ありがとうございます。 パネルディスカッション テーマ「ICTサポートセンターやICT機器利用支援に求められること」 ファシリテーター * 日本福祉大学 健康科学部福祉工学科 教授 渡辺崇史 パネリスト * NPO法人 札幌チャレンジド 理事長 加納尚明 * NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会 沖縄県障がい者ITサポートセンター 川田潤 * 一般社団法人 山口県身体障害者団体連合会 山口県障害者社会参加推進センター 事務局長 武居ひとみ * 社会福祉法人山口県盲人福祉協会 ICTサポートセンター 中村真寿子 渡辺/皆様、こんにちは。日本福祉大学の渡辺です。よろしくお願いします。ここからはパネルディスカッションとして、少し質問に答えながら議論を深めていきたいと思います。  私は、日頃は大学でアシスティブテクノロジー、支援技術のことを教えています。地域の活動としては、今回のテーマであるICTサポートを始め、福祉用具についてなど様々な相談に応じています。前職が名古屋市総合リハビリテーション事業団におりましたので、月2回ほど元の職場に戻り、様々な障害のある方の相談に応じながら、特別支援学校でも訪問相談を行っています。今日発表していただいた皆様のお話を聞き、地域でいろんな課題を抱えながら、特色のある活動をされていると思いながら聞かせていただきました。  では、さっそく進めてまいります。発表者の皆様につきまして、札幌市の加納様、山口県の中村様・武居様、それから沖縄県の川田様と順に発表していただきましたが、それぞれ補足事項がありましたらお話いただくのですが、いかがでしょうか。 加納/札幌チャレンジドの基本は、他のICTサポートセンターさんと同じように、当事者支援です。実際にパソコンを習いたい、スマホの使い方を知りたい障害者の方に教えています。ただ、うちのスタッフが専属で教える形ではなく、講師をボランティアの方に有償で行っていただいています。札幌チャレンジドが2000年にできた時から、いわゆるパソコンボランティア団体が障害者にパソコンを教えています。1回1,200円です。スクール形式で教えるという背景があるので、障がい者ICTサポートセンターの講師は有償ボランティアですし、パソコンボランティア派遣事業も交通費は市が負担しています。受講者は、教えてもらうお金として、派遣されているボランティアさんに1時間1,000円を直接支払います。交通費はどこから来ても損得ないように、札幌市が予算化して払うという草の根活動をしている団体です。  いくつか質問が来ていますが、これはまた後ほどご指名いただいてお答えしましょうか。 渡辺/質問がきている内容も、かなり加納様の中でお答えいただいたのではないかと思います。有償かどうかもお答えしてもらっていますが、宜しければまた後ほど補足をお願いします。  活動報告をされた皆様、先ほど音声が途切れたところがありますが、補足はありますでしょうか。 中村/補足は特にありません。よろしくお願いします。 武居/山口県ICTサポートセンターは立ち上げてから4ヶ月なので、今からという立場でこれからのパネルディスカッションも発言させていただきます。よろしくお願いいたします。 川田/補足について、先ほどのボランティアの件に関連することをお話します。現在、地域協力員を設けているとの説明をしたのですが、その方については予算をとり、1件、動いた中で有償ボランティアとして活動をお願いしています。一方で、障害者の小さな悩み事に駆けつけていくようなボランティアはできておらず、今後どのような形で進めるか、予算をどうするかを課題として持っている状況です。 渡辺/川田さん、ありがとうございました。  ではいくつか質問をいただいているので、その質問に答えながら、皆さんとディスカッションしていこうかと思います。今日いただいているご意見もありますが、事前にもらっている質問もございます。  1つ目です。山口県の場合は立ち上げて間もないということで、地域でICTサポートセンターを設立したときの苦労したことや注意点などがあれば、皆様にお話いただけますでしょうか。沖縄県、山口県、札幌市の順番でお願いいたします。川田さんはICTサポートセンターを設立した当時、メンバーではないのかもしれませんが、設立したときの注意とか苦労話がありましたら教えてください。 川田/私が入ったときは2020年でしたが、人員が1年契約であったため、前任者がいない状況でした。上司も当事者の方で、誰もこの活動について教えてくれる人がいなかった状況です。まずは、業者やIT支援をしている人に同行し、どんなことをしているかの把握から始めました。それがすごく苦労したといいますか、障害者の幅が広くて、視覚・聴覚・身体、意思伝達装置、日常生活用具、あとはパソコン教室や、iPadのアクセシビリティとか、本当に幅が広くて、いったい何を教えればいいのかと。  病院や児童学校、最近では重度身体障害の児童デイサービスも増えてきたので、そのようなところからも相談があり、とても幅が広いので、一つひとつ対応するのに苦労しており、悩んでいる状況です。 渡辺/ありがとうございます。今のお話で出てきたのは、1つ目はどこからやっていこうか、という取っ掛かりで苦労したという内容でした。2つ目は、多様なニーズに対しどこまでICTサポートセンターが担っていくのかというところで、苦労されていると感じました。  同じような話を山口県がされていましたが、いかがでしょうか。 武居/先ほど触れましたが、体験できる用具や常設展示ができないところで仕事をしています。誰もがここに来て、いつでも触ってみてね、体験してみてねという体制ができない状況です。そのため、発信していかなければいけないと思い、3月3日に体験会を開催するのですが、開催する場所にそもそもWi-Fiが無いため、モバイルWi-FiやiPhone、タブレットのレンタル等を行い、体験会の開催を準備しています。そして、ICTを専門として仕事をしていないので、私自身も自分のスマホを触る程度の知識しかなく、得意な方にどの程度頼っていくかが悩みどころでした。  山口県盲人福祉協会を頼るのはもちろんですし、県内の高専でアクセシビリティの試験が行われていることを知り、高専の先生に連絡を取ったりと試行錯誤しておりますが、頼れるところを探していきたいと思います。 渡辺/ありがとうございました。今のお話からは、2点の課題がありました。  1つ目は機器の展示や貸出に係る、お試し機器がないこと。機器に触れられる機会を作らなければいけないという環境整備の問題が1つあると思いました。  2つ目は、ICTの専門性の知識を持っている人をどうやって確保するかというところです。地域リソースとの連携をどうするかご苦労されていたり、これからつながりを持っていこうと思っているところだ、と伺いました。  札幌市の加納さん、いかがでしょうか。 加納/そうですね。今回、行政の方もいろいろご参加されているかと思います。これから障害者ICTサポートセンターの立ち上げをどうするか悩んでいるところもあると思うので、1つの考え方をお話したいと思います。  札幌チャレンジドが、札幌市から障害者ICTサポートセンターの委託を受けているのですが、長年NPO活動をやっていて思うことがあります。いわゆる行政と市民との協働、行政とNPOの協働という言葉がありますよね。この協働をしっかり捉えていくことが必要で、全てを官がやろうとは思わない。官民が連携してどうやるか。それぞれの役割分担をどうするのか。  ICTサポートの事業でお話するのが、入口は行政、出口は民間という構図を作ったほうがいいですよと。例えば、パソコンボランティア派遣をするにも、ボランティア講習を受けたからいきなり派遣で教えに行けるかというと、恐らく精神的ハードルや技術的なことを含めて難しいと思います。札幌チャレンジドはもともとNPOとして、ボランティアが訪問講習をしたり、事務所でパソコンを教えているので、ボランティアデビューをNPOの事業でやっていました。ある程度感覚を掴んだボランティアが自信を持ち、行政の委託事業のICTサポートセンターの事業で活躍する。  札幌チャレンジドはNPOとしてパソコン講習を行っており、以前は年間延べ3000人の方が受講されていました。パソコン講習会場は4つあり、午前午後、毎回満員という時がありました。札幌チャレンジドが単体で広報しても、そんなに来る訳ではありません。各地域の広報誌にパソコン講習会のお知らせが載ると、人がわっと集まるんですね。よって、行政として幅広く広報を行い、入口を構えて出口をできるだけ民間事業者にスイッチしていく、そのような構図をどう作っていけるかが地域課題かなと思っています。 渡辺/ありがとうございます。質問いただいている内容に同じようなものがあり、ICTサポートセンターを立ち上げるために、まずは県に相談するのでしょうか、という質問がありました。  加納さんにも一部お答えしていただきましたが、事務局のほうからご質問者に対して過去の資料を提供していただけるかと思います。  もともとのICTサポート事業なのですが、障害者総合支援法の中に地域生活支援促進事業というのがあります。その一部に、障害者ICTサポート総合促進事業があり、その枠組の中で都道府県単位、または政令指定都市、中核都市単位でICTサポートセンターを置き、障害者のICTをサポートしようというものです。県や政令市、行政が、うちの地域でやります、と手を挙げていただくとICTサポート事業が立ち上がるようになります。また、法的な裏付けがなくというか、例えば、パソコンボランティアとかICTボランティアなどの地域団体としてやられているところはたくさんあると思います。  ここで言うICTサポートセンターというのは、加納さんのお話にあったように、促進事業の1つとしてされているというのが大きな枠組みです。しかし、ニーズが集中している地域やそうでない地域など様々です。沖縄県のように、補装具の対象になるような重度障害者の意思伝達装置をサポートしているところもあれば、山口県のように、身近なスマートフォンのような、情報そのものにアクセスしていこうという取組など、幅広い活動をされているのが今のICT支援センターの現状かなと。 加納/国からは2分の1補助事業と聞いています。都道府県や政令市が半分は自腹をきらなければいけないので、そこがどのように予算化されるかが大きいと思います。国が100%補助するようでしたら、みんな喜んで手を挙げると思います。 渡辺/そうですね、おっしゃるとおりです。ありがとうございます。  質問にいくつかお答えしようと思います。今回、障害種別というふうに、例えば視覚障害、肢体不自由とか、聴覚障害、発達障害など、様々な障害の人が支援の対象となると思いますが、皆さんの地域では多様なニーズや多様な障害に、どのようにサポートされているのかをお伺いしたいです。いかがでしょうか。どこからでも構いません。   加納/札幌市では、障害種別を問わず、全ての障害の方の支援をしています。一つだけ他の地域と違う点は、子ども、18歳未満は、札幌市の建付け上、障害者ICTサポートセンターの立場上、支援外となっています。以前、子どもの支援団体のところで、子ども向けに支援したいと言ったのですが、それだけは勘弁してほしいと言われました。自治体で行政の予算配分の建付けがあるのかなと思います。 渡辺/僕から質問です。障害種別関係なく対応されるというのは、それぞれの障害に対して、サポートできる人材がいるということですか。 加納/もともと2000年に団体を作った時から、全ての障害の人がICTを使えるようにしたいというのが、我々のミッションそのものです。20年間、一生懸命内部に支援のノウハウというかナレッジを積み重ねています。分からないことも沢山ありましたが、自分たちで努力して支援できるようにしてきましたので、今は大体どのような方が相談に来ても、例えば重度障害者のALSの方の支援も、2012年までは行っていました。  また、札幌チャレンジドからNPOとして別に独立したNPOがあり、そことも連携しています。 渡辺/ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。 川田/今までは、聴覚、視覚の障害に対応することが難しかったため、それぞれの当事者団体さんにご連絡をお願いします、とお伝えしていました。それだけだとどうなのかということもあり、お互いネットワークの強化をしようということで、今年度は繋がりを持ち始めました。対して、重複障害の方の支援は連携があるからこそ対応できるものだったので、とても良かったなと思っています。  また、それぞれの障害特性に対してのアクセシビリティを計画し、私たちが発信できないことも当事者団体を通して発信することでさらに広い支援ができると考え、来年度はそこもやってみたいと思っています。 渡辺/ありがとうございます。 武居/私たちはまだやっていないのですが、3月3日の申込に12歳のお子さんがいらっしゃいます。お母さんが申し込まれました。スマホを使う危険性とか、特に障害者だからというのではないご相談ではありますが、12歳でも受け付けています。また、内部障害の方、知的障害の方の申込もありました。それぞれどんなことを習いたいか、アンケートを取らせていただく申込様式になっているため、その内容を見てサポーターと相談しながら当日進めていきたいと思っています。今回、肢体障害者で、用具が必要な方の申込がなかったので特に必要なかったのですが、今後あったときにどうするかは、どなたかに頼りながら進めていきたいと思います。 渡辺/ありがとうございます。それぞれの地域の事情とか、経験などもあると思います。札幌は歴史的にも長いこともありますし、元々、コンピューターを使って就労支援といいますか、そこからスタートしており、多様な専門家がいるというのが1つの特徴かなと思いました。沖縄については、どちらかというとネットワークを組み、得意技を生かして相談や支援に乗っていこうというところだと思いますし、山口県については年齢に関係なく、機器に触れて勉強してみようというところで取っ掛かりとしているのだと思いました。  あくまでも個人的な意見ですが、これからICTサポートセンターを立ち上げる、充実させようと思っていても、人材を集めるのはなかなか難しいと思うので、どちらかというと、ネットワーク型というか、多様な専門性を持つ方と組んでやることがいいのかなと思いました。少なくとも、例えば沖縄県は、肢体不自由の方が得意というか、多分いろいろなスイッチをつくっておられます。肢体不自由のところが専門になると、少なくとも、視覚障害者情報提供施設や聴覚障害者情報提供施設と連携することが必要だと思いました。機器などもそちらの方が沢山持っていると思うので。川田さんのお話に出た、福祉センターはたぶん福祉用具の展示場ですかね。 川田/私たちのセンターの中に展示のブースがあります。 渡辺/更生相談所とは連携していますか? 川田/そちらとは相談していない状況です。 渡辺/地域には名前はいろいろですが、介護実習・普及センターがあるところでは、福祉用具の展示が沢山あったりします。そこと連携することは少なくとも必要と思いました。あと、年齢の問題もありますよね。札幌市は子どもの相談が寄せられたとき、どうされていますか。 加納/そこは使い分けているというか、ICTサポートセンターでの受講者としては受け入れが難しくても、電話相談の場合は対応します。子どもなので答えません、ということはありません。子ども向けには、NPOの事業として放課後等デイサービスをうまく活用し、障害のある小学生から高校生まで、キャリアデザインセンターとして事業化し、様々な形でICT支援をしています。子ども主体として支援はできませんが、来るものには応える形です。 渡辺/ありがとうございます。ICTサポートは年齢で区切るものではなく、相談者の立場において、ICTを使って活動を支援することになる。どちらかというとライフスパンで見て、地域のICTサポートセンターで関わることになるといいなと、個人的には思います。子どもなら遊びや勉強でICTが関わってきます。大学生や社会人になると、就労や生活、余暇等にもなると思います。  どのようなICTサポートセンターが地域にあると良いと思いますか?このようなセンターにしたいというのでもいいのですが、夢を語っていただけますか。 加納/夢ですよね。私は札幌駅の一等地に路面で障害者の人の支援機器がずらっと並んでいるところがあればいいなと。障害の有無に関わらず、Appleのショップは人通りの多いところにありますよね。そのような誰もが気軽に手に触れる、目に触れるようなことが、すごく大切だと思います。我々も、ある程度機器はありますが、誰もが気軽に来て触れるロケーションを確保できていません。普通に人が歩いていて、こんなパソコンがあるのか、と知ることができるとよい。  今、「分かりやすい」はすごく大切で、「Seeing AI」などのスマホのアプリが紙を読み上げてくれるなど、様々なものがあります。そのようなものを障害者と支援者だけが知っている社会だと、いびつだと思います。皆がそういうものを知っていたら、この人にはこれができるね、と思いつくことができる。そのようなものに身近に触れる場所が必要なので、予算がつくと良いと思います。 渡辺/加納さんから貴重な意見をもらいました。誰もが目に触れることが、すごく大事だ、ということは僕も本当にそう思います。ICTサポートセンターの講習会も、できればAppleストアなどでやったらいいのではないかと思います。量販店等と組み、機器を一緒に並べてもらって、どうやってマウスやキーボードを選んだらいいかを、一緒に行えたらいいのではないかと思います。 川田/大きな夢ではないかもしれませんが、今年ネットワーク強化を意識して動いたことで、これまで1人で動いていた以上にすごく大きな収穫を得られたと思います。  ITセンターだけで動くと、ITセンターって何だろうと分からない人が多く、周知活動もすごく大変だったのですが、連携強化ができると口コミ等で知ってもらう機会を増やすことができます。  障害者の支援機器は知らなかっただけで、知ることができると、いろいろな派生的な繋がりができて、繋がりがまた繋がりへと広がることができる。  また、加納さんが話されていたAppleストアとは違いますが、そのような大きな企業に働きかけて、障害者が使いやすいデバイスで一緒にやりましょうとすると、私たち1人ではできないことがより一層広がると考えています。企業とのネットワークも視野に入れて活動すると、より広がるのかと思っています。 渡辺/ありがとうございます。沖縄県に1つ質問なのですが、連携するといっても、本当に地理的に離れているところがあります。その場合、オンラインを使った相談や連携の事例はありますか。 川田/オンラインを使った事例は多くはないですが、久米島の中学生、筋ジストロフィーの子に対し、どのような形でパソコンを使えるのかという相談があった時の事例があります。  対象の子がどのような状況か見てみないとわからないので、Zoomを通して実際に映してもらって、身体の動きを見せてもらい、筋ジストロフィーでも動けるところで、パソコンの操作はこんなふうにすればできるよとアドバイスをしたことはあります。  しかし、よく関わっているエリアはできるのですが、あまり関わりがないエリアもあり、地域協力員もコミュニケーションが難しいと話しています。遠隔の支援は、私たちと現地の近くの協力してくれる方がいかにコミュニケーションとれるかが課題と思っています。 渡辺/ありがとうございます。山口県の中村さん、お願いします。 中村/私の夢は、19ある自治体全部に相談窓口ができて、皆さんが気軽に相談できるネットワークを作ることです。また、本当に夢なのですが、アレクサやGoogleアシスタントなどを試せるモデルハウスがあれば、視覚障害者にとっては嬉しいなと思います。そのような形で実現していければと思っています。 加納/モデルハウスという言葉、いいですね。 渡辺/ありがとうございます。まずは、試せる場所をつくるために、中村さんご自身の家を、まずスマート家電で全部生活してみるのもいいかもしれませんね。ありがとうございます。武居さんいかがですか。 武居/私は実現できないような夢ですが、私たちに相談がある方は、何が必要なのかも分からない方が多くいらっしゃいます。何を習いたいのかについても分からない、とにかく駅に行って困るとか、インターネットってどうやってつないで、どのようにすれば便利かも分からない人が多いです。  例えば、eスポーツを取り入れたり、ドローンサッカーなど、いろいろな種類の体験会を開催して、実際に参加しながら、このようなスイッチがないと自分はできない、このような器具がないと参加できないなど、ご自身が気付かれる経験ができるとよいと思います。これを習いたい、あれをしたいと、体験会やそのようなことに気付く機会を作っていきたいという夢を持っています。 渡辺/ありがとうございます。今の話は、貴重な意見だと思っています。そもそもICTにニーズを持っていたら、本人は恐らくどこかにアクセスしていて、情報を自ら取りにいったり、誰かに聞いたりできると思います。明らかに情報技術を利用したらもっと生活は便利になったり、できることが増えるだろうと周りが思っていても、何から取り掛かればいいかわからないというような、潜在的なニーズや困りごとを持っている人を、どのように繋げるかはすごく大事だと思いました。そのためには、先程、モデルハウスができたらと中村さんが仰っていましたが、やはり試せる場所があることがすごく大事かと思います。  また、ドローン体験会をやったということですが、僕の経験で申し訳ありませんが、3Dプリンタのものづくり体験会を企画し、障害のある子どもたちや地域の方に来てもらいました。その裏の目的は、3Dプリンタの体験するときに、パソコンを自分でデザインするので、キーボードやマウスが使えるか、車いすシーティングがどうなっているかを観察し、福祉用具やICTの相談に繋げることができます。そのようなところで繋がっていくことが大事だと思います。体験会や勉強会を地道に実施することが、貴重な相談の掘り起こしになると思いました。  事務局から情報提供があり、デジタル推進委員、デジタルアクセシビリティアドバイザーという資格があるということです。参加者の皆さん、キーワードで調べていただくと、デジタル推進委員、デジタルアクセシビリティアドバイザー、支援に関わる資格やスキルアップについての知識が得られると思います。    短い時間で申し訳ないのですが、いくつか整理ができたと思います。  一つ目にICTサポートと言ったとき、いわゆるコミュニケーション機器支援、日常生活用具でいう会話補助装置とか、重度意思伝達装置などの福祉の制度にのるようなサポートや、スマホやタブレットなど、情報機器アクセスに対する福祉の制度にのらないサポートがあります。さらに今は、環境制御や生活支援、スマートスピーカーやIoTに関する相談も来ているため、実はICTサポートセンターに課せられているニーズは非常に多様だと思いました。  もう一つは、年齢で切ることは難しいので、ICTサポートセンターこそ多様な年代にアクセスできるのではないかということでした。実際に色々な地域のICTサポートセンターの取組を見学し合うようなこともしてみればいいのかなと思いましたが、どうでしょうか。沖縄県や札幌市に行ってみて、一緒に支援に関わるともっと分かると思いました。いかがでしょうか。川田さん、札幌市に行きませんかとか。 川田/ぜひ、行きたいです。 渡辺/地域によってニーズはすごく違うと思いますが、中村さんいかがでしょうか。 中村/沖縄も札幌も行きたいのはやまやまなのですが、まずは県内のへんぴなところ、本当に人口が少なくて交通が不便なところに相談窓口ができるかどうかを考えていきたいと思います。沖縄や札幌の話はぜひまた聞かせていただきたいと思います。 渡辺/広域支援となると、札幌の事例も沖縄の取組もすごく参考にはなりますよね。どうやって専門性を地域にリーチしていくのかとか、参考になりますよね。 中村/勉強になりました。ありがとうございます。 渡辺/まだまだたくさんの話を聞いたり、実際に具体的な取組を聞きたいところではありますが、このような会をまた別の機会で持てればと思います。ご質問にすべて答えられなかった部分もありますが、またアンケート等で書いていただけば、可能な範囲で、今日のパネリストの皆さんと私で答えられたらと思います。  パネルディスカッションはここまでといたします。ご協力ありがとうございました。 「インクルサポーター」のご紹介 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与 西澤達夫  よろしくお願いします。インクルサポーターは、令和4年度に厚生労働省の「障害者等のICT機器利用支援事業」で開発したものです。インクルサポーターのネーミングは、インクルーシブな社会、共生社会をサポートする、ポータルサイトを目指すことに基づいています。本日はインクルサポーターの概要と特徴、活用事例についてご紹介します。  最初に、概要について紹介します。スライドにはシステム構成図が映っています。会員種別は利用者会員と支援者会員の2種類ですが、会員登録をしなくてもどなたでもご利用できるので、先ほどのパネルディスカッションを拝聴していて、一般の方への情報発信ツールとしてお使いいただければと思います。利用者会員では、障害をお持ちの方、当事者の方、家族・支援者が登録できます。支援者会員は、ICTサポートセンターをはじめ、様々な支援情報を提供している方がご登録をしていただけます。利用者会員は、会員登録をすると、例えば会員の登録地域における提供サービスや、自分の興味のある情報に絞られたものを入手できます。また、インクルサポーターの運営は当協会でやらせていただいています。  次に、特徴について説明します。ICT機器に関する様々な情報、ICTサポートセンターやICT機器の使用事例、提供サービス、イベントサービスがこのサイトから入手できます。利用者会員に登録することで、より便利に使うことができます。そして、支援者会員と双方向のコミュニケーションができることも特徴で、ICT機器や提供サービスについてレビュー投稿ができるようになっています。後ほど簡単な事例を紹介します。情報提供をする支援者会員にはICTサポートセンター、ICT機器メーカー、ボランティア団体等、様々な支援機関と個人が登録できます。    ではここでホームページの概要をご紹介します。ここで実際のホームページをご覧ください。まず、サイトからのお知らせとして、本日のシンポジウムの内容が記載されています。そして、情報検索として、メインメニューが4つあります。@ICT機器検索、Aサービスの検索、B事例検索、C支援者会員検索です。それぞれについてご説明します。 @ ICT機器の検索 ICT機器メーカー、販売代理店からのICT機器情報を見ていただくことができます。 A サービスの検索 全国のICTサポートセンターがご登録した情報を見ていただくことができます。 B 事例検索 ICTサポートセンター等が登録した事例を見ていただくことができます。 C 支援者会員の情報 全国のICTサポートセンター、ICT機器メーカーの情報を見ていただくことができます。条件を検索して指定して、ICTサポートで例えば、「東京」で絞り検索すると、東京都障害者IT地域支援センターがすぐヒットします。その他、新着情報がありまして、これは支援者会員の方にご登録してもらっています。直近のイベント情報等をご登録いただけるようになっています。  次に、東京都障害者IT地域支援センター様と、当協会で提供しているサービスについて2つご紹介します。 * 東京都障害者IT地域支援センター  体験会やサポーターズカフェをサービスとしてご登録いただいています。ご登録いただいたサービスに関連する利用事例についても、掲載いただいています。 * 日本障害者リハビリテーション協会  DAISY教科書の提供について登録しています。DAISY教科書とは、主に小学校、中学校の発達障害等で紙が読みにくい児童生徒などに提供している教科書です。サンプルとして評価、コメント、レビューをつけています。こちらの評価やコメントの設定や有無は、情報を登録するときに指定することができます。コメントのサンプルとして、利用者の投稿が示されていますが、これに対しサービス提供側が返信した事例となっています。  以上、本日は概要と特徴、活用事例、活用方法について、事例を中心にご紹介しました。ぜひ皆様の登録やご利用をお待ちしております。お問い合わせ先は資料をご参照いただき、アクセスしていただけますと幸いです。  以上、簡単ですがご紹介とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。 閉会挨拶 ICTサポートセンター連携事務局 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 池永藍    それでは、最後に事務局より連絡事項のご案内でございます。  皆様より本シンポジウムの感想、ご質問等をいただきたく、本シンポジウム終了後、アンケートメールをお送りいたします。恐れ入りますが、今後の運営に参考とさせていただきたく、ご回答をお願いいたします。ご質問は後ほど登壇者等に確認の上、事務局より回答させていただきます。  それでは、「ICTサポートシンポジウム」は以上とさせていただきます。本日は長時間にわたり、皆様にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。 以上