資料2?2 事例発表 令和6年度障害者等による文化芸術活動推進事業 劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座 公益社団法人全国公立文化施設協会 (1ページ目) 1 公益社団法人全国公立文化施設協会 会長:野村 萬斎 設立:昭和36年(公益認定 内閣府 平成25年4月) 目的:国及び地方公共団体等により設置された全国の劇場・音楽堂等の文化施設が連絡提携のもとに、地域の文化振興と地域社会の活性化を図り、もってわが国の文化芸術の発展と心豊かな社会の実現に寄与する。 正会員数:1316施設(2024年10月現在) 主な事業:情報収集提供、研修、調査研究、保険、公立文化施設等支援 など ホームページ:https://www.zenkoubun.jp 2 劇場・音楽堂等の障害者に対する対応の変化 1)文化芸術に関わる法律の整備 ・文化芸術基本法(平成十三年法律第百四十八号) ・劇場,音楽堂等の活性化に関する法律(通称:劇場法)(平成二十四年法律第四十九号) ・劇場,音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針(平成25年文部科学省告示第60号)など →〔矢印〕貸館、上演を中心とした施設から「社会包摂機能を持つ」施設へ 2)障害者に対する法律の整備:社会的要請への対応 ・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十八年政令第三十二号) ・障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成三十年法律第四十七号) など →〔矢印〕劇場・音楽堂等で実施している芸術、文化活動に障害者が参加していただいているか?   1)、2)などを背景に 劇場・音楽堂等では障害者に対する意識がない(薄い) →〔矢印〕公文協:「課題」として認識、障害者の参加を広めるための啓発が必要 (2ページ目) 3 公文協で実施した障害者に関する研修等 平成25年度:文化庁 劇場・音楽堂等基盤整備事業「全国アートマネジメント研修会」で講座「公立文化施設のバリアフリーを考える」を実施 以降、全国アートマネジメント研修会、地域別アートマネジメント研修会を中心に障害者への対応に関する講座を実施 平成30年度:文化庁委託事業 戦略的芸術文化創造推進事業(共生社会実現のための芸術文化活動の推進)「劇場・音楽堂等の情報バリアフリー化に向けた最適システムの構築に関する調査・検証事業」 鑑賞サポート(字幕、音声ガイド)の機器調査・検証 令和元年度から:令和元年度障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)「劇場・音楽堂等バリアフリー化推進プロジェクト」を開始 情報提供のためのウェブサイト開設、「アクセシビリティ・ガイドブック」の作成・配布 など 令和5年度から:「劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座」を開始 4 「劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座」企画の背景 文化庁委託事業 令和2年度 障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)「障害者文化芸術活動推進に向けた劇場・音楽堂等取組状況調査」 1)劇場・音楽堂等による障害者を対象とした事業 「実施している」=13.5% 「実施する意義がとてもあると思う・あると思う」= 90.8% →〔矢印〕この2つの「差」を埋めることが重要 2)各施設の状況(考え方)の違い 1》「障害者に対して」と特化して事業を実施する必要性を感じない(意義が分からない)。 2》障害者を対象とした事業を実施したいが、具体的にどうしたらよいかわからない。 3》障害者を対象に事業を実施しているが、課題がある  など →〔矢印〕全体に向けた一律の研修ではなく、個別の状況に応じた研修が必要 ⇒〔白抜き矢印〕令和5年度から 劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座へ 5 「劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座」の基本的な考え @ 個人、施設の状況に応じた段階別の研修とし、複数年をかけステップアップをめざす。 A ステップ1は劇場職員であれば誰もが知っておくべき内容とし、ステップ2(初心者向け)、ステップ3(経験者向け)は、シリーズで実施し、多面的に学び、実施へとつなげる。 (3ページ目) B 受講生が受講後、それぞれの地域で障害者に対する事業を指導、支援する地域の中核的人材となり、ネットワークをはかるとともに、事業を広げていくことをめざす。 6 研修の体系と主な実施内容 (表) 段階 Step1 Step2 Step3 最終到達点 Step1の対象:すべての職員(劇場・音楽堂等に勤務する職員は必ず知っておくべきこと) Step1の目的:共生社会(障害者の文化芸術活動)の意義と劇場の役割について理解し、劇場の運営の中で何ができるかを考え、次のステップ(具体的な事業実施)へつなげる。 Step1の実施内容:(令和5年度)研修ビデオの作成(劇場と障がいのある方に関する取組の意義/合理的配慮/鑑賞サポート)  (令和6年度)@都道府県別研修会:劇場・音楽堂等と合理的配慮、社会包摂の意義、取組事例 など A合理的配慮に関するワークショップ:障害者をアドバイザーに迎え、劇場で鑑賞、出演の体験をし、課題を見つけ合理的配慮で何ができるかを考える。 Step2の対象:劇場・音楽堂等の職員で、これまで障害のある方を対象とした事業を実施したことがない方(主たる担当として実施したことがない方)、これから取り組もうとしている方 Step2の目的:障がいのある方に向けた事業を実施するために必要な基礎知識(法律、障害特性、企画のポイント等)を学び、事業の実施へつなげる。 Step2の実施内容:オンライン講座4回 ワークショップ1回 計5回 (主な講座内容) ・法律、政策、社会包摂とは ・障害特性を知る ・障害特性を踏まえた事業企画 ・連携について ・事業を企画してみる など Step3の対象:劇場・音楽堂等の職員で、障害のある方を対象とした事業を実施している方、経験がある方 Step3の目的:障がいのある方に向けた事業を実施している中で個々が持っている課題の解決と、ロジカルな思考を得、事業のブラッシュアップと継続を図る。 Step3の実施内容:オンライン講座6回 ワークショップ1回 計7回 (主な講座内容) ・法律、文化政策と施設のミッション ・事業の目的、目標の設定について ・鑑賞サポートを進めるには ・事業企画 ・連携と体制づくり ・ロジックモデルとは ・事例紹介 など 最終到達点:地域の中核的な人材(ネットワークのハブとなる人材)となる。 →〔矢印〕事業の更なる推進 (表、終わり) (4ページ目) 7 事業の工夫と成果(参加者アンケートより) Step1研修 都道府県別研修会 ・各地域のニーズに合った研修内容とする。 ⇒〔白抜き矢印〕講座と事例で具体的な事業のイメージを持つことができた 合理的配慮に関するワークショップ 障害者と「建設的な対話」をする経験をもち、対話から課題解決をすることの重要性を体験してもらう。同じ障害でも人により感じ方が違うことを体験を通して知る。 ⇒〔白抜き矢印〕具体的に実感を持った ⇒〔白抜き矢印〕自施設で何ができるか考えたい Step2初心者向け講座 事業は大きく考えず「ターゲットをしぼり、できるところから始める」という視点を伝え、実施に向けた精神的ハードルを下げ、実施を促す。 ⇒〔白抜き矢印〕「やってみたい」という気持ちを持った。 ⇒〔白抜き矢印〕「ワークショップで企画した事業を実際にやってみたい」 Step3経験者向け講座 少人数の講義とし、研修生それぞれの課題を元に、他の受講生、講師とのディスカッションを通して事業の改善と継続をめざす。事業の企画、改善をするための論理的手法(ロジックモデル)について学ぶ。 ⇒〔白抜き矢印〕事業を考える上で、何を目的とするのか 事業ありきではなく考えることが大事。 ⇒〔白抜き矢印〕一人で考えると視野が狭くなる。他の人との意見交換等から視野を広げることができた。 (写真)「聴覚に障害のある方との対話の様子」 (写真)「グループワークの様子」 (写真)「第2回講座・オンラインの画面」 (写真)「ワークショップ 発表の様子」 (写真)「第1回ワークショップの様子」 (写真)「第4回講座・オンラインの様子」 (5ページ目) 8 課題と今後 @合理的配慮、社会包摂、共生社会と劇場の役割等についてあまり意識をお持ちでない方(研修等に参加しない層)にどうアプローチをするか →〔矢印〕障害者に対する取組だけでなく、劇場の役割等について他の場を通して伝えていく A1シリーズで育成できる人材の数の限界(初心者向け、経験者向け) 研修の参加を希望されていても、施設の都合等により研修に参加できない方もいる →〔矢印〕自施設でも研修ができるような研修教材の開発が必要 B障害者に向けた事業を実施することに対し意義・必要性を感じてはいるが、実施が困難な施設(例 職員数が少ない、事業予算が少ない、貸館だけを実施している など)への支援 →〔矢印〕研修以外の支援が必要