資料1―2「障害者による文化芸術活動の推進状況等について」 令和7年3月 厚生労働省 (1ページ目) 1.障害者芸術文化活動支援センターの設置状況 @「障害者文化芸術活動推進基本計画(第2期)」において、「身近な地域で支援を必要とする人が質の高い支援を受けられるようにするためには、障害者芸術文化活動支援センターの更なる設置の促進」が重要とされており、厚生労働省においては、「障害者芸術文化活動普及支援事業」を通じて、全国に障害者の芸術文化活動に関わる支援センター等の設置を行い、支援の枠組みを整備することにより、障害者の芸術文化活動を推進している。 ●障害者芸術文化活動支援センターの設置数(推移) (表) 以下、平成29年から令和6年までの各年の設置数 支援センター都道府県数 20 24 30 35 37 39 43 45 広域センター数 3 5 5 6 7 7 7 7 全国提携事務局 2 2 2 2 2 2 2 2 (表、終わり) 〈令和6年度設置状況〉 ・障害者芸術文化活動支援センター 45都道府県 ・障害者芸術文化活動広域支援センター 7ブロック ・全国連携事務局 2分野(美術分野・舞台分野) 1.北海道・北東北ブロック 北海道、青森県、岩手県 2.南東北・北関東ブロック 宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県 3.南関東・甲信ブロック 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県 4.東海・北陸ブロック 新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 5.近畿ブロック 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 6.中国・四国ブロック 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、徳島県、愛媛県、高知県 7.九州ブロック 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 (2ページ目) 2. 障害者芸術文化活動支援センターの推進状況 令和5年度に注力した11の施策項目 A支援センターの運営において「障害者文化芸術活動推進基本計画」に定められている11の施策のうち、「令和5年度もっとも注力した施策の方向性」を調査したところ、「作品等の発表の機会の確保」が最も多く、次いで「人材の育成等」となっている。本調査では上位3つまでを尋ねており、順位に応じてポイントを付与し、注力した事業内容の傾向を把握。(令和5年度全国連携事務局アンケート調査結果より) 【令和5年度に支援センターが注力した施策】 (表) (n=44) 以下、施策の方向性、1位、2位、3位、得点 ※得点は、1位を3ポイント、2位を2ポイント、3位を1ポイントとして合計 (1)鑑賞の機会の拡大 「1位」4 「2位」3 「3位」5 得点23ポイント (2)創造の機会の拡大 「1位」7 「2位」5 「3位」3 得点34ポイント (3)作品等の発表の機会の確保 「1位」18 「2位」6 「3位」5 得点71ポイント (4)芸術上価値が高い作品等の評価等 「1位」1 「2位」0 「3位」2 得点5ポイント (5)権利保護の推進 「1位」0 「2位」5 「3位」1 得点11ポイント (6)芸術上価値が高い作品等の販売等に係る支援 「1位」1 「2位」1 「3位」1 得点6ポイント (7)文化芸術活動を通じた交流の促進 「1位」1 「2位」10 「3位」12 得点35ポイント (8)相談体制の整備等 「1位」1 「2位」0 「3位」2 得点5ポイント (9)人材の育成等 「1位」8 「2位」8 「3位」4 得点44ポイント (10)情報の収集等 「1位」0 「2位」1 「3位」4 得点6ポイント (11)関係者の連携協力 「1位」3 「2位」5 「3位」5 得点24ポイント (表、終わり) 〈注力した施策の順位〉 (棒グラフ) 作品等の発表の機会の確保 71ポイント 人材の育成 44ポイント 文化芸術活動を通じた交流の促進 35ポイント 創造の機会の拡大 34ポイント 関係者の連携協力 24ポイント 鑑賞の機会の拡大 23ポイント 権利保護の推進 11ポイント 情報の収集等 6ポイント 芸術上価値が高い作品等の販売等に係る支援 6ポイント 相談体制の整備等 5ポイント 芸術上価値が高い作品等の評価等 5ポイント (グラフ、終わり) 〈上記で選択した項目について、特に力を入れている主な理由(一部抜粋)〉 ・作品展の実施を軸に地域の人たちとの協働・連携を大切にしたいと考えたため。【1位:発表機会の確保、2位:連携協力、3位:創造機会の拡大】 ・「人材育成」と「交流の促進」の施策については、影響し合い相乗効果があるから。「鑑賞機会の拡大」についても展覧会を運営したり、発表することに関わる場合、必要な事柄になるから。【1位:人材育成、2位:交流の促進、3位:鑑賞機会の拡大】 ・福祉事業所、支援者により文化芸術活動状況にばらつきがあり、支援センターが文化芸術活動の機会を創出することが必要。特に、就労事業所などに通う利用者の方などは、充分な支援を受けられないケースが見られ、創作・発表の機会を創出・発信することが重要と位置づけた。【1位:創造機会の拡大、2位:発表機会の確保、3位:連携協力】 (3ページ目) 2−1.障害者芸術文化活動支援センターの推進状況 相談支援業務について B令和5年度「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究」において、支援センターの事業内容のうち「相談支援」が非常に重要で中核となるものであるとの指摘があった。 これを受けて、支援センターの相談支援業務について、令和5年度の実施状況を見ると、障害者や支援者、家族等から障害者芸術文化活動支援センターに寄せられた芸術文化活動に関する相談件数は5,014件で最多となっている。 (令和5年度障害者芸術文化活動普及支援事業報告書、全国連携事務局アンケート調査結果より) ●相談件数の推移 (棒グラフ) 令和2年度 3175件 令和3年度 4183件 令和4年度 4102件 令和5年度 5014件 (グラフ、終わり) 【相談者の属性別 相談件数・対応回数】 ・令和5年度の相談を相談者の属性でみると「障害福祉関係者」が最も多く、次いで「障害者」となっている。令和4年度と比較すると、「障害福祉関係者」のほか「教育関係者」や「医療機関」等からの相談が特に増加しており、新たに選択肢を設けた「企業」についても一定数の相談が寄せられている。 ・「相談件数」は寄せられた相談につき1件とカウントし、「対応回数」は寄せられた電話やメールなどに助言や支援を行った対応ごとに1回とカウントしている。令和5年度において対応回数の集計を行ったところ、1件の相談に対して複数回の対応を行い、支援していることが読み取れる。 〈令和4年度 相談件数〉 (棒グラフ) (n=4102) 障害者 862件 障害者の家族、知人 357件 障害福祉関係者 993件 文化施設 288件 芸術家、文化団体、文化関係者 264件 市民団体(クラブ活動等) 124件 教育関係者 156件 医療機関 13件 自治体 219件 その他 826件 (グラフ、終わり) 〈令和5年度 相談件数・対応回数〉 (棒グラフ) (相談件数:n=5014、対応回数:n=13604) 障害者:相談 1117件 対応 2472件 障害者の家族、知人:相談 348件 対応 863件 障害福祉関係者:相談 1333件 対応 3539件 文化施設:相談 328件 対応 1167件 芸術家、文化団体、文化関係者:相談 295件 対応 1082件 市民団体(クラブ活動等):相談 119件 対応 371件 教育関係者:相談 200件 対応 589件 医療機関:相談 34件 対応 118件 自治体:相談 258件 対応 555件 企業:相談 344件 対応 1127件 その他:相談 332件 対応 1345件 無回答:相談 306件 対応 376件 (グラフ、終わり) (4ページ目)  2−2. 障害者芸術文化活動支援センターの推進状況 相談支援業務について 【令和4年度と令和5年度の相談内容の変化】 ・令和5年度の相談内容をみると、最も多かったのが「発表」に関する相談で、相談件数では、次いで「創造」「権利保護」の順に多くなっている。対応回数では、次いで「権利保護」「創造」の順となっている(いずれも「その他」を除く)。 ・令和4年度の相談件数と比較して、「鑑賞」「権利保護」「人材育成」に関する相談が特に増加している。 〈令和4年度 相談件数〉 (棒グラフ) (n=4102) 鑑賞 153件 創造 656件 発表 933件 交流・連携 285件 調査研究・保存 75件 権利保護 493件 人材育成 181件 情報発信 426件 その他 900件 (グラフ、終わり) 〈令和5年度 相談件数・対応件数〉 (棒グラフ) (件数:n=5014、対応回数:n=13604) 鑑賞:相談 356件 対応720件 創造:相談 778件 対応1768件 発表:相談 1054件 対応 3467件 交流・連携:相談 336件 対応 871件 調査研究・保存:相談 75件 対応 140件 権利保護:相談 666件 対応 2009件 人材育成:相談 294件 対応 901件 情報発信:相談 560件 対応 1576件 その他:相談 888件 対応 2151件 無回答:相談 7件 対応 1件 (グラフ、終わり) 〈令和5年度 支援センターによる相談内容に関する所見(一部抜粋)〉 ・コロナ禍が明け社会が動き出したことを受けて、展示会やワークショップ、イベントの企画や実施の相談などが増えた。 ・文化施設や社会教育施設、企業等から合理的配慮にかかわる相談が増え、研修やワークショップに至った。 ・マンガやアニメ、デジタルアートを描いているという障害者からの相談が増えてきている。 ・相談内容について、著作権や権利保護等に関する相談が多く寄せられ、法律分野の外部アドバイザーに介入していただいた。 ・相談内容の「その他」は、展示作品の購入希望や、作品を見てほしい、過去の出展者などからの近況報告など多岐にわたる。 ・芸術活動ができる場所や教室を探している方や、障害がある方にも教えたいと思っているが方法がわからないなどの問合せが比較的多くあった。 ・教育委員会や特別支援学校から、授業の一環として障害のある人たちと芸術活動を通じて何か企画をすることができないかという相談が多くあった。 (5ページ目) 3. 文化芸術活動を行う福祉施設等の取組状況調査等の実施について 令和6年度「全国の障害福祉施設における障害者による文化芸術活動に関する実態把握の在り方に関する研究」において、アンケート調査設計を行った。これを踏まえ、令和7年度には、全国の障害福祉施設における文化芸術活動の取組状況や障害者文化芸術推進法・障害者文化芸術活動推進基本計画の認知等を把握するアンケート調査を実施予定。アンケート調査は概ね以下の通りを予定している。 【全国の障害福祉施設における障害者による文化芸術活動に関する実態把握に関する調査について】 (表) 1.アンケート調査期間 令和7年7月から10月頃(予定) 2.調査対象 障害福祉サービス事業所、障害者(児)支援施設、身体障害者福祉センター、地域活動支援センター等 3.調査方法 Eメールによる協力依頼、ウェブアンケートによる回答・送信 4.調査客体数 46000件程度 ※令和2年度に実施した同様のアンケート調査では46733件に調査票を送信し、回収数は8092件であった(回収率17.3%) 5.主な調査項目 ・事業所の基本的な情報(所在地、障害福祉サービス等の種類、利用者数等) ・障害者による文化芸術活動に関する施策と興味や関心 (障害者文化芸術推進法や障害者文化芸術活動推進基本計画の認知等) ・障害者による文化芸術活動の実施状況 (実施している文化芸術活動の分野、実施期間、活動の方向性 [鑑賞・創造・発表・販売等、交流等]、実施することで実感している成果、推進するための課題等) ・障害者による文化芸術活動の課題や今後の意向 (表、終わり) (6ページ目) 4.令和7年度 厚生労働省における取組促進に向けた対応方針 1.障害者芸術文化活動普及支援事業の更なる促進 〈令和7年度予算案:2.9億円〉 ・ノウハウ・具体的な取組事例の収集・周知 令和7年度においても、障害者芸術文化活動支援センター等にアンケート調査、ヒアリング等を実施し、引き続き、第2期基本計画の推進の方向性に沿った事例を収集。支援センターの相談支援、人材育成、ネットワークづくり、参加する機会の確保、情報収集・発信等の取組の全体的な底上げが図られるよう、具体な取組事例(取組内容、さまざまな協力団体等との連携のあり方、推進の成果と課題等)をまとめ、厚生労働省HP等で周知予定。 ・障害者芸術文化活動支援センター等の様々な団体・機関等との連携の強化 第2期基本計画で定められている、地域における関係団体・機関等や、他の福祉施設や文化施設等との連携(目標2)の観点から、身近な地域で支援を必要とする人が質の高い支援を受けられるようにするため、引き続き、支援センター等の取組を通じて、障害者による文化芸術活動の裾野を拡げるとともに、支援センター等の様々な団体・機関との連携の更なる強化を進める。 2.障害者芸術・文化祭の開催 〈令和7年度予算案:0.7 億円(地域生活支援促進事業)〉 障害者の芸術文化活動への参加を通じて、障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与するため、引き続き、国民文化祭との一体的開催により、障害者芸術・文化祭を推進する。 令和7年度は長崎県にて「ながさきピース文化祭2025」(第25回全国障害者芸術・文化祭)[会期:令和7年9月14日〜11月30日]を開催、令和8年度は高知県にて「よさこい高知文化祭2026」(第26回全国障害者芸術・文化祭)[会期:令和8年10月25日〜12月6日]を開催予定。 3.障害者芸術文化活動特別推進事業の実施 〈令和7年度予算案:0.1 億円〉 特に芸術文化活動の普及が見込め、世界各国が参加する全国規模のイベントと連携し、障害者による文化芸術作品等を創造・発表・鑑賞する機会を創出するとともに、国内外に向け広く発信する。 4.文化芸術活動を行う福祉施設等の取組状況調査等の実施 〈令和7年度障害者総合福祉推進事業により実施予定〉 令和7年度に、全国の障害福祉施設等における障害者による文化芸術活動に関する実態把握に資する調査、及び障害者文化芸術推進法・障害者文化芸術活動推進基本計画の認知状況調査等を実施。本調査結果については、支援センター等の取組の参考とするとともに、第3期文化芸術活動推進基本計画の策定に向けた基礎資料とする。