資料1 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第9回)資料 各省庁における「これまでの取組成果・達成状況、今後の取組・目標について 事務局(文部科学省・厚生労働省) P.1 厚生労働省P.56 文部科学省 P.63 文化庁 P.77 総務省 P.78 国立国会図書館 P.81 経済産業省 P.142 (表紙) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第9回)資料(関係省庁等) 省庁等 事務局(文部科学省・厚生労働省) 所属 文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 厚生労働省社会・援護局障害者保健福祉企画課自立支援振興室 役職・氏名 室長 鈴木 規子 室長 川部 勝一 基本計画 @総論(1)都道府県等への計画策定の働きかけ これまでの取組 【都道府県の計画策定の働きかけ】 ・視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画策定状況調査(令和5年2月1日現在)を実施し概要及び自治体の計画策定状況をHPで公開。【資料:事-1】 ・公益社団法人日本図書館協会障害者サービス委員会が策定した「地方公共団体において『視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画』を策定するための指針」の周知【資料:事-2】 成果・達成状況 令和2年度:計40% 内訳(自治体数):策定済0、作業中10、検討中41 ⇒令和4年度:計60%(前年比9%増) 内訳:策定済23(都道府県13、指定都市3、中核市7)、策定中12(都道府県7、指定都市1,中核市4)、策定に向けて検討中42(都道府県22、指定都市9、中核市 11) 今後の取組・目標 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画策定状況調査(令和6年2月1日現在)の継続令和5年調査時点で70%(令和2年度調査比30%増)目標最終目標:100% 資料番号 事-1、事-2 (1ページ) 事-1 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況概要 T 令和4年度視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況について 調査対象:都道府県、指定都市、中核市(計129、回答率100%) 調査時点:令和5年2月1日現在 (表の説明) 1.計画の策定について (1)策定状況 ※全体の6割が策定済、策定作業・検討中 1.既に策定済み 都道府県:13 指定都市:3 中核市:7 全体:23 2.現在策定作業中 都道府県:7 指定都市:1 中核市:4 全体:12 3.策定に向けて検討中 都道府県:22 指定都市:9 中核市:11 全体:42 4.策定する予定なし(未定も含む) 都道府県:5 指定都市:7 中核市:40 全体:52 (2)策定時期【1(1)で1〜3と回答した場合】 1.〜令和2年度 都道府県:5 指定都市:2 中核市:4 全体:11 2.令和3年度 都道府県:5 指定都市:0 中核市:2 全体:8 3.令和4年度 都道府県:5 指定都市:1 中核市:3 全体:9 4.令和5年度 都道府県:10 指定都市:2 中核市:6 全体:18 5.令和6年度〜 都道府県:6 指定都市:4 中核市:4 全体:14 6.未定 都道府県:10 指定都市:4 中核市:3 全体:17 (3)計画の位置づけ【1(1)で1〜3と回答した場合】 1.単独の計画として策定 都道府県:13 指定都市:2 中核市:3 全体:18 2.障害者政策の計画の一部に位置づけ 都道府県:15 指定都市:4 中核市:11 全体:30 3.その他の計画の一部に位置づけ 都道府県:6 指定都市:2 中核市:4 全体:12 4.未定 都道府県:8 指定都市:5 中核市:4 全体:17 2.連絡会等の開催について (1)開催状況 1.定期的に開催している 都道府県:12 指定都市:2 中核市:3 全体:17 2.過去に開催したことがある 都道府県:11 指定都市:7 中核市:3 全体:21 3.開催に向けて準備・検討中 都道府県:12 指定都市:3 中核市:3 全体:18 4.開催する予定なし(未定も含む) 都道府県:12 指定都市:8 中核市:53 全体:73 (2)開催開始時期【(1)で1〜3と回答した場合】 1.令和2年度 都道府県:8 指定都市:2 中核市:1 全体:11 2.令和3年度 都道府県:13 指定都市:5 中核市:4 全体:22 3.令和4年度 都道府県:4 指定都市:2 中核市:2 全体:8 4.令和5年度 都道府県:7 指定都市:1 中核市:0 全体:8 5.令和6年度〜 都道府県:0 指定都市:0 中核市:0 全体:0 7.未定 都道府県:3 指定都市:2 中核市:2 全体:7 3.外部関係者を含めた会議の開催について (1)開催状況 1.定期的に開催している 都道府県:12 指定都市:4 中核市:6 全体:22 2.過去に開催したことがある 都道府県:6 指定都市:2 中核市:3 全体:11 3.開催に向けて準備・検討中 都道府県:7 指定都市:3 中核市:4 全体:14 (2)開催開始時期【(1)で1〜3と回答した場合】 1.令和2年度 都道府県:6 指定都市:0 中核市:2 全体:8 2.令和3年度 都道府県:6 指定都市:4 中核市:4 全体:14 3.令和4年度 都道府県:8 指定都市:2 中核市:4 全体:14 4.令和5年度 都道府県:5 指定都市:1 中核市:2 全体:8 5.令和6年度〜 都道府県:0 指定都市:0 中核市:0 全体:0 6.未定 都道府県:0 指定都市:2 中核市:1 全体:3 (2ページ) U 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況の推移について (グラフの説明) 1.計画の策定状況の推移(%) 都道府県 令和2年度:策定作業中:約15%、策定検討中:約40% 令和3年度:策定済み:約10%、策定作業中:約20%、策定検討中:約45% 令和4年度:策定済み:約30%、策定作業中:約10%、策定検討中:約50% 指定都市 令和2年度:策定作業中:約5%、策定検討中:約35% 令和3年度:策定済み:約10%、策定作業中:約5%、策定検討中:約35% 令和4年度:策定済み:約15%、策定作業中:約5%、策定検討中:約45% 中核市 令和2年度:策定作業中:約5%、策定検討中:約25% 令和3年度:策定済み:約10%、策定作業中:約5%、策定検討中:約20% 令和4年度:策定済み:約10%、策定作業中:約5%、策定検討中:約20% 全体 令和2年度:策定作業中:約10%、策定検討中:約30% 令和3年度:策定済み:約10%、策定作業中:約10%、策定検討中:約30% 令和4年度:策定済み:約20%、策定作業中:約10%、策定検討中:約30% 2.連絡会等の開催状況(%) 都道府県 1.定期的に開催している:約25% 2.過去に開催したことがある:約25% 3.開催に向けて準備・検討中:約24% 指定都市 1.定期的に開催している:約10% 2.過去に開催したことがある:35% 3.開催に向けて準備・検討中:約15% 中核市 1.定期的に開催している:約5% 2.過去に開催したことがある:約5% 3.開催に向けて準備・検討中:約5% 全体 1.定期的に開催している:約15% 2.過去に開催したことがある:約15% 3.開催に向けて準備・検討中:約15% 【令和2年度、令和3年度調査参考】開催済み及び開催準備・検討中とした全体の割合 令和2年度:36% 令和3年度:38% 3.外部関係者を含めた会議の開催状況(%) 都道府県 1.定期的に開催している:約25% 2.過去に開催したことがある:約10% 3.開催に向けて準備・検討中:約15% 指定都市 1.定期的に開催している:約20% 2.過去に開催したことがある:約10% 3.開催に向けて準備・検討中:約15% 中核市 1.定期的に開催している:約10% 2.過去に開催したことがある:約5% 3.開催に向けて準備・検討中:約5% 全体 1.定期的に開催している:約15% 2.過去に開催したことがある:約10% 3.開催に向けて準備・検討中:約10% 【令和2年度、令和3年度調査参考】開催済み及び開催準備・検討中とした全体の割合 令和2年度:27% 令和3年度:32% ※各地方公共団体からの調査回答をもとに、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室において作成。 (3ページ) 事-2 事務連絡 令和5年6月5日 各 都道府県・指定都市・中核市担当課殿 文部科学省 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 地方公共団体における「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定するための指針について(送付) 日頃から読書バリアフリーの推進に御尽力いただき、厚く御礼申し上げます。 文部科学省・厚生労働省では、令和元年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第 49 号。以下、「読書バリアフリー法」という。)」第7条に基づき「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下、「基本計画」という。)を令和2年7月に策定しています。読書バリアフリー法第8条では、地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」(以下、「読書バリアフリー計画」という。)の策定に努めることとされています。この地方公共団体における読書バリアフリー計画の策定状況については、文部科学省・厚生労働省のホームページにて公表しているところです。 この度、公益社団法人日本図書館協会障害者サービス委員会にて、「地方公共団体において『視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画』を策定するための指針」が公表されましたので、(別紙1)のとおり送付いたします。読書バリアフリー計画を策定していない各都道府県・指定都市・中核市においては、(別紙2)「視覚障害者等の読書環境の整備の推進における留意事項について」(令和2年12 月22 日付け事務連絡)や視覚障害者等その他の関係者の意見を踏まえつつ、当該指針等も参考にしながら、計画策定に努めるようお願いいたします。 なお、各都道府県においては、域内の市町村においても読書バリアフリー計画策定が推進されるよう、当該指針等の周知をお願いいたします。 (4ページ) 【別紙資料】 (別紙1)地方公共団体において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定するための指針 (参考:公益社団法人 日本図書館協会ホームページ) http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/1016/Default.aspx (別紙2)「視覚障害者等の読書環境の整備の推進における留意事項について」(令和2年12月22日付け事務連絡) 【参考ホームページ】 〇図書館利用に障害のある人々へのサービス(障害者サービス)評価シート(公益社団法人日本図書館協会ホームページ) http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/1015/Default.aspx 〇文部科学省ホームページ 視覚障害者等の読書環境の整備(読書バリアフリー)について https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/1421441.htm 図書館における障害者利用の促進 https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/mext_01829.html 〇厚生労働省ホームページ 視覚障害者等の読書環境の整備(読書バリアフリー)について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukus hi/sanka/bunka_00003.html 【本件担当】 文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 TEL:03-5253-4111(内線3613) E-mail:sst@mext.go.jp 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 TEL:03-5253-1111(内線3076) E-mail:syougaijyoui@mhlw.go.jp (5ページ) 別紙1 地方公共団体において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定するための指針 2023年4月1日 公益社団法人日本図書館協会(障害者サービス委員会) (6ページ) はじめに  2019年6月に,「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(以下,「読書バリアフリー法」)が成立した。その第7条を受けて,国の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下,「読書バリアフリー基本計画」)が公表され,地方自治体にも第8条で「視覚障害者等のための読書環境の整備の推進に関する計画」(以下,「読書バリアフリー計画」)の策定が努力義務とされている。  ところが,各地方自治体における読書バリアフリー計画の策定は思うように進んでいないのが現状である。また,すでに策定された計画を見てみると,内容的に不足しているもの,今後の改定で充実させていってほしいものも多い。  そこで,この指針では,地方自治体の計画策定を支援し策定を促すと共に,今後の改定にあたっての参考となることを目指している。  地方自治体の読書バリアフリー計画は,国の読書バリアフリー基本計画を受けて,まず都道府県・政令指定都市を中心に策定するのが現実的である。さらに,それらの地方自治体の計画を踏まえて市区町村の計画を考えていくものと思われる。そこで,ここでは主に都道府県を想定して,地方自治体における読書バリアフリー計画を策定するための指針を示す。  実際の計画は,「第2章 読書バリアフリー計画の内容」を参考に策定してほしい。  市区町村は,都道府県の基本計画を踏まえ,さらに地域の実情に合わせたものを策定する。市区町村が計画を策定するための考え方を第2章の末尾に入れる。 (7ページ) 目次 はじめに 第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方 1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義 (1) 読書バリアフリー法の特徴 (2) 読書バリアフリー計画策定の根拠と目的 2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと (1) 計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携) (2) すでに実施していることと,不足していることの把握(実態調査を含む) (3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない (4) 地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け (5) 都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点 (6) 指標(数値目標)の提示 (7) 進捗状況の把握と,計画の更新 (8) 従来の教育計画・福祉計画に新項目として追加する場合の注意点 3 読書バリアフリー計画を策定するための体制 (1) 関係者協議会を設立する方法 (2) 従来ある協議組織を活用する方法 (3) 地方自治体の組織内で策定する方法 (4) パブリックコメントの実施 第2章 読書バリアフリー計画の内容 1 概要 (1) 読書バリアフリー法の概要 (2) 読書バリアフリー計画策定の意義,目的 (3) 読書バリアフリー計画の対象 (4) 読書バリアフリー計画の策定者 (5) 読書バリアフリー計画の期間 (6) 地方自治体の現状 (7) 今後の目標 2 具体的施策 (1) 基本的な方針 (2) 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) (3) インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) (4) 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) (5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) (6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) (7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) 3 指標,数値目標 4 読書バリアフリー計画の今後 (1) 読書バリアフリー計画の周知及び啓発 (2) 進捗状況の検討組織 (3) 読書バリアフリー計画の更新 5 「読書バリアフリー計画の用語集」の作成 6 参考資料(例) 補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点 (1) 計画策定のための体制作り(関係部局などとの連携) (2)  計画実施のための連携協力 (3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定 (4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定 (5) 視覚障害者等への読書支援についての人材育成 第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及 1 対象 (1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民) (2) 域内市区町村 (3) 関連する団体 (4) 文部科学省・厚生労働省 2 周知方法 (1) 各戸配布される県政だよりのような広報誌 (2) ウェブページ・SNS (3) 公立図書館 (4) 点字図書館(視覚障害者情報提供施設) (5) 公立小・中学校,義務教育学校,中等教育学校,高等学校及び特別支援学校 (6) 身近な医療機関等 3 配慮すべきこと (8〜10ページ) 第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方 1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義 (1) 読書バリアフリー法の特徴  読書バリアフリー法には次のような特徴がある。読書バリアフリー計画策定においては,地方自治体の状況を踏まえ,これらの意味を十分理解し,適切に組み込んでいく必要がある。 @ 対象者は,「視覚による表現の認識が困難な者」(視覚障害者等)とされ,障害等何らかの理由で視覚による読書(情報入手)が困難な人である。障害者手帳の有無にはとらわれない。(第2条) A 国,地方公共団体の責務を明確にしている。(第4〜5条) B 関係者協議会(第18条)の協議により,国の基本計画(第7条)が公表されている。この基本計画は文部科学大臣及び厚生労働大臣の連名によるもので,事前に関係する省庁との調整も求めている。これは,教育や福祉の壁を越えて,民間も含め,社会全体で障害者への情報提供を行うことを示している。 C 地方公共団体に読書バリアフリー計画の策定を求めている。(第8条) D 国や地方公共団体に図書館や点字図書館の役割やその連携を提示している。(第9条) E 国や地方公共団体に「サピエ図書館」への支援と,「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」等との連携を求めている。(第10条) F 国や地方公共団体に著作権法第37条による障害者サービス用資料の製作支援と,国に製作施設への出版者からのデータ提供を促進している。(第11条) G 国に利用しやすいアクセシブルな電子書籍の刊行を促し,もしくは本を購入した利用者へのアクセシブルなデータの提供を求めている。(第12条) H 国や地方公共団体は,アクセシブルなデータを再生する端末機器等と,それに関する情報の入手を支援する。(第14条) I 国や地方公共団体は,視覚障害者等の情報通信技術の習得支援を行う。(第15条) J 国や地方公共団体に図書館職員等のサービス人材の育成と,障害者サービス用資料の製作人材の育成を図る。(第17条) (11ページ) (2) 読書バリアフリー計画策定の根拠と目的  条文では,地方自治体の読書バリアフリー施策とその計画について,以下のように書かれている。 (地方公共団体の責務) 第5条 地方公共団体は,第3条の基本理念にのっとり,国との連携を図りつつ,その地域の実情を踏まえ,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を策定し,及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の計画) 第8条 地方公共団体は,基本計画を勘案して,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない 2 地方公共団体は,前項の計画を定めようとするときは,あらかじめ,視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。  これらの条文から,国の基本計画を踏まえて,地域の実情に合わせた地方自治体独自の読書バリアフリー計画を策定することを求めていることがわかる。なお,地方自治体の読書バリアフリー計画の策定は必須項目ではなく,努力義務となっている。ただし,法律の趣旨を実現するためには,都道府県・政令指定都市・市区町村においてそれぞれの計画を立てることには大きな意義がある。さらに,都道府県の計画を受けて市区町村の計画が策定されるであろうことから,都道府県の計画策定は必須である。 2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと (1) 計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携)  国の読書バリアフリー基本計画でも地方自治体の読書バリアフリー計画でも,その策定に当たっては「あらかじめ,視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」よう努めるものとされている。  また,国の基本計画策定においては,「第4章 協議の場等」で 第18条 国は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の効果的な推進を図るため,文部科学省,厚生労働省,経済産業省,総務省その他の関係行政機関の職員,国立国会図書館,公立図書館等,点字図書館,第10条第1号のネットワークを運営する者,特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者,出版者,視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。 としている。この条文を受けて,国は関係者協議会を設置し,基本計画を検討し発表した。また,その評価や実施について協議を継続している。  地方自治体においても,これらの趣旨を踏まえ,地方自治体内の関係部局(教育・福祉等)・公立図書館・学校図書館・大学図書館(短期大学・高等専門学校含む。以下同じ)・点字図書館・障害者支援施設・視覚障害者等の当事者団体・専門家・有識者等,地域の実情に合わせた構成員による検討組織における協議が求められる。具体的には本章「3 読書バリアフリー計画を策定するための体制」にて後述する。 (2) すでに実施していることと,不足していることの把握(実態調査を含む)  読書バリアフリー計画を策定するためには,その前提として地方自治体内の状況を正しく把握することが必要となる。  点字図書館においては定期的に全国的な実態調査を行っているが,都道府県レベルで域内の状況を毎年調査している例はわずかである。定期的に実態調査を行い,地方自治体内の図書館等で,どのようなサービスがどのくらい行われているのかを把握し,現状と不足している点を確認することが必須である。  あわせて図書館や関連施設間の連携の状況も把握したいが,事情により把握が難しい場合は,協議会における情報交換,お互いの訪問,ヒアリング調査なども活用する。  さらに,実態調査を行うこと自体が,普及のためのPRになる。 (3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない  読書バリアフリー計画を策定する前提として,従来の公立図書館・学校図書館・点字図書館等による視覚障害者等へのサービスがまだ不十分であるという認識を持つことが重要である。事実,サービスが必要であると思われる人と,現実に利用している人の数には大きな隔たりがある。先進地域の状況を知ることで,問題点を見つけることもできる。  そこで,計画策定においては,従来実施している施策のみをまとめたのでは不十分といえる。先進地域の事例も参考にして,地域で不足している点を把握し,それを改善するための前向きな計画策定が求められる。 (4) 地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け  国の読書バリアフリー基本計画と地方自治体の読書バリアフリー計画では,当然その内容に違いがある。  たとえば,都道府県のものは,都道府県が自ら行うべきこと,都道府県立図書館・都道府県立学校の図書館の役割に加え,点字図書館等の関連施設との連携や,域内の市区町村立図書館や小・中学校等を加えた全体としてのビジョンが必要となる。さらに,国や地方自治体の福祉サービスも念頭に置く必要がある。 「サピエ図書館」への支援や,出版社が行うアクセシブルな電子書籍の刊行等については,国の基本計画で明らかにするべきものである。  市区町村の読書バリアフリー計画では,地方自治体や地域の図書館の役割に加え,ネットワークを活用した視覚障害者等への直接サービス・個別支援に関することが中心になるものと思われる。 (5) 都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点  域内に政令指定都市がある都道府県が読書バリアフリー計画を策定する場合は,以下のことに留意する。 @教育部門の公立図書館では域内の都道府県立図書館や市区町村立図書館同士の何らかのネットワークが存在するのが普通で,そこには政令指定都市立の図書館も含まれる。それに対して,福祉部門の点字図書館等は,政令指定都市が存在するとそこにあるものは都道府県の所管ではないため内容を把握していないことが多い。 A義務教育学校は,政令指定都市内の学校とそれ以外の県内の学校では管轄が異なることも多い。 Bこれらの組織上の違いを考慮して,都道府県が計画策定をする場合は,政令指定都市内の点字図書館や学校図書館等もネットワークに加えて考えなくてはならない。 (12〜14ページ) (6) 指標(数値目標)の提示  読書バリアフリー計画では,本来指標・数値目標の提示が必要であることはいうまでもない。しかし,前述のように地域の実態把握がなされていない場合は,それを示すことも困難となる。各図書館等の業務統計から数値を出すと,現状の域を出ないものとなり,計画としては不十分になりやすい。  現状を把握した上で,計画期間満了までの数値目標を立てると共に,現在行っていないが新たに行うべきことを加えたい。指標は館・施設ごとの目標ではなく,地方自治体全体として示したい。 (7) 進捗状況の把握と,計画の更新  読書バリアフリー計画では,計画策定自体が目標ではなく,その推進,目標達成が求められる。数年単位で計画が策定されるが,その進捗状況を最低でも年に1度は確認していきたい。関係者協議会等の協議会組織による継続的な確認と検討が求められる。  読書バリアフリー計画の更新時は,これらの進捗状況の確認と,全国で新たに取り入れられたサービス等を踏まえ,地方自治体の特徴も加味して,より積極的な計画を策定したい。他地方自治体の優れた計画も参考になる。 (8) 従来の教育計画・福祉計画に新項目として追加する場合の注意点  独立した読書バリアフリー計画を策定するのではなく,従来の福祉や教育の計画に追加する方法で計画を策定することもできる。その場合は以下の点に注意する。 @ 視覚障害者等の当事者の意見を反映できるように工夫する。単なるアンケート調査や,後述の本章「3(4)パブリックコメントの実施」だけではなく,ヒアリング調査等により,具体的な意見を定期的に取り入れられるようにする。 A 庁内の教育部門と福祉部門の連携はもちろん,公立図書館等と点字図書館,福祉関係機関等との連携についても十分配慮する。前述したように,従来の施策に満足してはならない。 B 個々の部局からの計画の寄せ集めにならないように,地方自治体全体としての実情把握に努め,地方自治体全体としての計画が策定できるように工夫する。特に,指標や目標設定では,全体を見据えた前向きな対応が求められる。 C 個々の計画が離れた位置に掲載されることも考えられる。それにより読書バリアフリー計画の全体が把握しにくくなることが懸念されるため,関係の計画をまとめたもの(ウェブサイトや冊子)を提示したい。 3 読書バリアフリー計画を策定するための体制  以下のいずれの方法をとる場合でも地方自治体本庁の教育部局と福祉部局の協力体制が必須となる。また,図書館も計画策定に必ず参画しなくてはならない。 (1) 関係者協議会を設立する方法  国の関係者協議会を参考に,その地方自治体版を立ち上げる方法。  必ず障害当事者(障害のタイプが異なる複数の団体から)の構成員を含める。  必要に応じて途中で構成員の追加や変更もある。  事務局は,教育・福祉部局の職員が担当する。状況により都道府県立図書館等の職員が担当することも考えられる。  障害当事者の構成員のために,情報保障*や会議への安全な参加方法に十分配慮する。 ★関係者協議会の構成員の例 地方自治体内の関係部局(教育・福祉等),公立図書館,学校図書館,大学図書館,点字図書館,障害者支援施設,視覚障害者等の複数の当事者団体,出版社や書店,音訳等の資料製作者,専門家・有識者等 (2) 従来ある協議組織を活用する方法  既存の協議会等をそのままあるいは新構成員を追加することで関係者協議会と同じものとする方法。  地方自治体によっては,従来から公立図書館と点字図書館や学校図書館等との連絡協議会を設置しているところがある。その協議会をそのまま,もしくは新構成員を追加することで関係者協議会と同じものとする方法がある。  事務局は従来担当しているところがそのまま担当することが多い。ただし,読書バリアフリー計画に対する責任を確認するためにも,本庁内の教育・福祉部門の職員を必ず参加させる。 (3) 地方自治体の組織内で策定する方法  特別な関係者協議会や協議組織を立ち上げずに行う方法。  地方自治体の教育・福祉部門が協力して計画案を策定する。ただし,図書館や点字図書館等の現場の職員とも連携して,より具体的な実情把握と計画策定に努める。さらに,障害当事者の意見の集約について積極的に取り組む必要がある。  注意する点は前述の「2(7)進捗状況の把握と,計画の更新」に示したので,あわせて参照いただきたい。 (4) パブリックコメントの実施  読書バリアフリー計画案ができたところで,必ずパブリックコメントを実施する。特に関係者協議会を設けていない地方自治体では,パブリックコメントに寄せられた意見を反映できるように柔軟に修正していく。  パブリックコメントの実施に当たって,パブリックコメント募集のウェブサイトや回答方法のアクセシビリティにも配慮して,さまざまな障害者が意見を出せるように工夫する。また,募集期間も十分な長さをとる。さらに,関連する障害者団体へのヒアリング調査を行う方法もある。 寄せられた意見とそれに対する対応策をまとめて,ウェブサイト等で公開する。 (15〜17ページ) 第2章 読書バリアフリー計画の内容  以下の内容を参考に地方自治体の読書バリアフリー計画を策定する。 表紙 (地方自治体名)視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画 目次 1 概要 (1) 読書バリアフリー法の概要  初めに法律の目的・対象・施策の概要等を簡潔に記す。 (2) 読書バリアフリー計画策定の意義,目的  地方自治体の状況を踏まえ,この計画で何をしたいかを簡潔に記す。 (3) 読書バリアフリー計画の対象  本計画の対象者を具体的に示す。 (4) 読書バリアフリー計画の策定者  読書バリアフリー計画を検討,策定した組織やプロセスを記す。 (5) 読書バリアフリー計画の期間  本計画がいつの期間を対象としているかを記す。 (18ページ) (6) 地方自治体の現状  地方自治体の読書バリアフリーの現状を以下の点について記す。実態調査等を行っている場合は,その結果の概要も加える。 @ 視覚障害者等の状況 A 都道府県立図書館(資料,サービス,利用者等) B 市区町村立図書館(全体的なサービスの状況,特徴のあるサービス等) C 点字図書館(資料,サービス,利用者等) D 大学図書館 E 学校図書館 F 音訳者等のボランティアグループ G ネットワーク,連携の状況 H 福祉サービス,ICTサポートセンター等 I 課題 (7) 今後の目標  地方自治体全体として,これからどこに力を入れていくのか,特に取り組む項目等を記す。 2 具体的施策 (1) 基本的な方針 @ アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供  出版社によるアクセシブルな電子書籍の刊行を見守り,図書館等は刊行された場合に積極的に購入提供する。また,視覚障害者等が自ら購入して利用できるように支援する。  図書館は,引き続きアクセシブルな書籍等を積極的に購入し提供する。提供にあたってはネットワークを活用して種々な図書館で行えるようにする。 A アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上  著作権法第37条第3項で製作する資料について,国立国会図書館・都道府県立図書館・市区町村立図書館・点字図書館等による製作分担,役割分担を行い,より多くの資料が提供されるように努める。  資料の質の向上のための研修会を連携して行う。 B 視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮  公立図書館等・点字図書館・ICTサポートセンターの,それぞれによる支援等を明らかにする。  関連する福祉サービスを紹介する。 C その他  それぞれの地方自治体で特に力を入れる部分や,特徴を明らかにする。 (2) 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)  以後の項目は,「基本的な考え方」「具体的施策」のように分けて表記してもよい。 @ アクセシブルな書籍等の充実(資料)  図書館の種類(都道府県立・市区町村立・大学・学校等)ごとに,購入等して蔵書とするものを示す。  点字図書館の資料についても明らかにする。  現在実施していることだけではなく,これから実施する予定も加える。 A 円滑な利用のための支援の充実(サービス)  図書館の種類(都道府県立・市区町村立・大学・学校等)ごとに,実施している障害者サービスを示す。  点字図書館のサービスを示す。  現在実施していることだけではなく,これから実施する予定も加える。 B その他,体制の整備等(施設,予算,職員)  現状と新たな取り組み,課題などを示す。 (3) インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) @ 基本的な考え方  「サピエ図書館」「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」を活用して,資料の全国的な相互貸借とダウンロードによる情報提供と,視覚障害者等が自ら利用できるサービスを記す。 A 具体的施策  公立図書館等・点字図書館等によるネットワークを活用したサービスを示す。 (4) 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) @ 基本的な考え方  著作権法第37条第3項による資料製作について,都道府県立図書館・域内の市区町村立図書館・点字図書館等の役割を示す。 A 具体的施策  各図書館の実情や,目指すものを示す。 (5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) @ 基本的な考え方  アクセシブルな電子書籍の販売等の促進については,地方自治体の読書バリアフリー計画でそのまま記すものではないが,利用者が図書を購入した場合に,出版社からアクセシブルな電磁的記録(テキストデータ等)の提供が受けられる場合があることを知らせる。  図書館は電子書籍の配信サービスのアクセシビリティを検証し,優れたものを積極的に導入する。 A具体的施策   電子書籍配信サービスのアクセシビリティの検証には,国立国会図書館等の関係者による「図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会」の報告(ガイドライン)を用いる。 ★第13条(外国からの視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の入手のための環境の整備)については,地方自治体の読書バリアフリー計画でそのまま記すものではないが,外国で製作されているアクセシブルな電子データの相互貸借ができることを知らせる。記載場所は,図書館のサービス,またはネットワークを活用したサービスに入れる。 (6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) @ 基本的な考え方  各図書館等による,再生機器の体験,操作支援,貸出を行う。  福祉サービスの「日常生活用具給付等事業」や障害者ICTサポート事業等の情報を記す。  図書館等職員は,これらの情報や操作技術を学ぶ。 A 具体的施策  上記サービスの具体的利用方法等を記す。 (7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) @ 基本的な考え方  司書,司書教諭・学校司書,職員等の確保と資質向上  点訳者・音訳者,アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成と育成 A 具体的施策  職員の状況,職員研修会の実施状況  音訳者等の資料製作者の状況,養成講座や研修会の状況  これらの課題と解決策 3 指標,数値目標  この計画期間に達成したい数値目標を記す。  ただし,現状を数字で把握していないと目標も立てられないため,最初からは出さずに,次回更新時の課題とすることもできる。  おおむね以下のことを図書館の種類別(都道府県立,市区町村立,点字)に,数値で記したい。 @ 視覚障害者等の利用者数 A 障害者サービスのサービス実施館数 B 資料の所蔵数,製作数(著作権法第37条第3項によるもの) C 資料の提供数 D 再生機器等の所蔵数,貸出・案内件数 E ICTサポートセンター等,福祉サービスの利用件数 F 担当する職員数,音訳者等資料製作者数 G 職員研修会,音訳者等資料製作者研修会の状況 H その他 4 読書バリアフリー計画の今後 (1) 読書バリアフリー計画の周知及び啓発  第3章にある普及方法を参考に,具体的取り組みを示す。 (2) 進捗状況の検討組織  計画の進捗状況をどの機関ごとに確認するのか。また,それはどこで検討されるのかを記す。 (3) 読書バリアフリー計画の更新  この計画を何年ごとに更新していくのか。また,更新のための検討組織について記す。 5 「読書バリアフリー計画の用語集」の作成  計画で用いている用語の解説を付ける。 6 参考資料(例) (1) 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」 (2) 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(国の読書バリアフリー基本計画) (3) 「著作権法(抜粋)」 (4) 都道府県立図書館障害者サービスの利用案内 (5) 都道府県内点字図書館の利用案内 (6) 障害者ICTサポートセンターの案内 (7) 「サピエ図書館」「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」の案内 補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点  第1章で都道府県における読書バリアフリー計画策定で注意してほしいことを記載しているが,そこにある注意事項は第1章2「(5)都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点」を除き市区町村にも当てはまる。  しかし,第1章2(4)「地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け」にあるように,市区町村の読書バリアフリー計画では,地方自治体や地域の図書館の役割に加え,ネットワークを活用した視覚障害者等への直接サービス・個別支援に関することが中心になるものと思われる。  そこで,ここでは特に市区町村レベルで計画策定をする場合の留意点を記載する。 (1) 計画策定のための体制作り(関係部局などとの連携)  都道府県と同じく市区町村でも,地方自治体内の関係部局(教育・福祉など),学校(特別支援学校・学級など),障害者支援施設,高齢者施設,点字図書館,障害者の当事者団体,専門家・有識者等,地域の実情に合わせた構成員による検討組織における協議が求められる。  市区町村では地方自治体の規模・地域により,点字図書館や,障害者の当事者団体などがない地方自治体もある。その場合は,これらの施設・団体の代わりとなるような方法(例:当事者団体がなければ,地域の障害当事者を構成員に含めるなど)を取り入れる。 (2)  計画実施のための連携協力  上記(1)で挙げた組織・団体等とは,計画を実施していくにあたっても連携協力を行う。 (19〜24ページ) (3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定  市区町村立図書館は住民と直接サービスを行う最前線の図書館である。そのため,身近にある図書館だからこそ行いやすい,各市区町村の実情に合わせた計画を策定する。 例: @ 自館で実施している障害者サービス(図書館利用に障害のある人々へのサービス)の具体的提示。特に,扱っている障害者サービス用資料,行っているさまざまなサービス,行っている支援,施設設備等を明らかにする。 A 障害者・高齢者福祉,包括支援センターとの連携 B 地域の学校,学校図書館,特別支援学校・学級との連携 C 地域の障害者・児施設,障害者団体との連携 D 過疎地域,離島,山間部,豪雪地域など,アクセスが良くない地域においては,郵送,配本,自動車文庫等の,より積極的な活用 E 地域への障害者サービスの広報の充実 (4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定 例: @ デイジー・拡大読書器等の読書支援機器に関する情報及び読書支援機器の操作説明 A 視覚障害者等が読みやすい資料の案内 B 自宅への訪問・配本 C 日常生活用具給付等事業等の福祉サービス,ICTサポート等のボランティア活動 (5) 視覚障害者等への読書支援についての人材育成  策定した計画を実行していくには,視覚障害者等への読書支援を行える人材が必要である。  読書バリアフリー計画には,視覚障害者等へのサービスのための研修への積極的な参加,人材の育成,障害当事者の雇用なども計画に取り入れる。  デイジー等の資料を製作している図書館では,資料製作の充実(製作数,質の向上)等の目標も立てる。音訳者等の資料製作者の養成や育成についても明らかにする。 (25〜26ページ) 第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及 1 対象  策定した計画を推進するにあたり,地方自治体内部で共有することはもちろんであるが,次のような対象へ周知することが求められる。 (1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民)  視覚障害者等のサービス対象となる人が,居住する地方自治体の読書バリアフリー計画の存在を知り,自分に役立つ情報であることを知ってもらうことが大切である。  さらに,ネットワークを活用した図書館等のサービスやアクセシブルな図書等を実際に利用することにより,現状の問題点や課題を考え,それは計画の評価や修正にもつながっていく。  そのためには,サービス対象である人に計画の周知がなされることが必要であるが,当事者に直接周知するのは難しい点もあるため,合わせて広く一般の市民にも周知したい。  広く住民に伝えることで,今現在サービスを必要としている人だけでなく,サービスを必要とする人の家族,友人,介護者等,本人と関係する人に伝えることにもつながる。  さらには,将来,誰しも「視覚による表現の認識が困難な者」となるかもしれず,視覚障害者等への情報提供の存在を知っておくことは,将来の読書機会の喪失を回避することにもつながる。 (2) 域内市区町村  読書バリアフリー計画の策定は,都道府県のみならず市区町村にも求められる。 (26ページ)  域内市区町村が計画を策定するにあたり,都道府県が策定した計画が参考となることから,研修や会議等を通じて,域内市区町村に都道府県の計画を周知することが重要であり,同時に市区町村に計画策定を働きかけることも求められる。 (3) 関連する団体  教育・福祉・当事者団体・ボランティア等の関連する団体に周知することで,視覚障害者等につないでもらうことができる。  また,関連団体の多くは,直接当事者とつながっているか,あるいは障害当事者への周知の手段を確立していることも多く,協力を得ることが欠かせない。 (4) 文部科学省・厚生労働省  文部科学省及び厚生労働省では,地方自治体の計画策定を推進するため,両省のウェブサイトや主催する会議・研修会等において,地方自治体の策定状況や実際に策定した事例等の周知が図られている。 2 周知方法  本章1に示した対象者への周知に当たって,特に必要と思われる周知方法に次のようなものがある。  それぞれ協議会,関係部局,関係団体等と協働して行うことが望ましい。 (1) 各戸配布される県政だよりのような広報誌  地方自治体の広報の基本であり,各戸配布されることで,広く住民に伝えることができる。  音声版,点字版といった視覚による表現以外の媒体に変換されることも多い。  計画策定時や更新時には,特集を組むなどして紹介するとより効果的である。 (2) ウェブページ・SNS  作成に当たっては,アクセシビリティに配慮する必要がある。  ICTの進化により画面の文字情報を自動的に音声化することが可能になってきているが,操作が困難であったり,そもそもウェブへのアクセスができない人がいることも忘れてはならない。 (28ページ) (3) 公立図書館  公立図書館には,さまざまな障害者サービス用資料や,それを利用するための方法を広く市民に周知する役割がある。その中で,読書バリアフリー計画の存在や内容を案内する。さらに,より具体的な個別相談に応じられるようにしておく必要がある。 (4) 点字図書館(視覚障害者情報提供施設)  点字図書館には多くの利用者(視覚障害者等)がいて,定期的に目録・利用案内等の情報を発信している。また,拡大・点字・録音等,利用者の希望に合わせた形での情報提供を行っている。  そのような情報提供の機会に読書バリアフリー計画を合わせて掲載してもらう。 (5) 公立小・中学校,義務教育学校,中等教育学校,高等学校及び特別支援学校  児童生徒においては,学校から伝える方法も有効である。特に,読書に困難のある子どもを最初に見つける可能性があるのが学校であることから,学校関係者にこの計画を周知して,そこから子どもや保護者への周知が期待される。 (6) 身近な医療機関等  突発的な傷病による受診や検査で立ち寄るほかに,「視覚による表現の認識が困難な者」は,障害の原因となる疾患等で受診していることが考えられる。そこで,医療機関による案内やポスターの掲示なども有効である。     3 配慮すべきこと  本施策の対象となる「視覚による表現の認識の認識が困難な者(視覚障害者等)」は,情報に触れる機会や方法が制限されている恐れがある。  視覚障害者等への周知にあたっては,家族や支援者から伝わるということもあるが,自らが情報を得て理解できるようにすることが最も重要である。  具体的な方法としては,障害特性に合わせ適切な媒体で情報を提供できるよう,通常の印刷版の他に,テキストデータや点訳データなどを準備するといったことがある。提供方法も,郵送・インターネットによる提供・データのメール添付等も行う。  なお,家族や知人,福祉関係者から「直接話して伝える」ということも重要なので,関係者が広く知っていることは大切である。  主な媒体においては,次の事柄に配慮する。 @ウェブページ:JIS規格「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第三部:ウェブコンテンツ」を参照して作成する。 A配布物:印刷資料においてはUDフォントを活用するなどフォントを工夫し,文字間隔やコントラストにも配慮する。必要に応じて拡大文字版,音声版,点字版,やさしい日本語版などを提供できるよう準備する。 (29〜30ページ) 別紙2 事務連絡 令和2年12月22日 各都道府県・指定都市・中核市担当課殿 文部科学省 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 文部科学省 総合教育政策局地域学習推進課図書館・学校図書館振興室 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 視覚障害者等の読書環境の整備の推進における留意事項について 令和元年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)」第7条に基づき、文部科学省及び厚生労働省において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)を令和2年7月に策定し、「「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」について(通知)」(令和2年7月14日付け2文科教第328号、障発0714第1号文部科学省総合教育政策局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)(以下「計画通知」という。)により施策の留意事項と併せて、お知らせしたところです。 読書バリアフリー法第8条では、地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画策定に努めることとされています。このため、計画策定の検討にあたって、留意していただきたい事項について以下のように整理しました。 各都道府県におかれては、障害福祉、公立図書館、学校図書館、特別支援教育等の関連部署や管内の市町村に対し、各指定都市・中核市におかれては、障害福祉、公立図書館、学校図書館、特別支援教育等の関連部署に対し、それぞれ周知をお願いします。 (31ページ) なお、地方公共団体の計画策定状況を把握し、国の取組の参考とさせていただくため、今後各都道府県・指定都市及び中核市に対して、本事務連絡を踏まえた計画策定状況等に関する調査を実施いたしますので、御協力のほどお願いします。 記 1.計画策定等に向けたプロセス、地方公共団体内における連携体制の構築 視覚障害者、読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害がある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障害者(以下「視覚障害者等」という。)の読書環境の整備の推進にあたっては、公立図書館、点字図書館、学校図書館、福祉用具や情報通信技術等、多くの事項が関係します。そのため、地方公共団体の計画策定にあたっては、多様な関係者の意見を反映させる観点から、以下のようなプロセスが考えられます。 ・地方公共団体内における情報共有、実施施策や課題の整理 ・外部関係者も含めた会議の開催、計画内容の検討 ・計画案についてパブリックコメント等、住民からの意見聴取 ・地方公共団体における計画決定 また、地方公共団体においては、多数の関係部局の連携が必要となります。そのため、関連施策の共有、円滑な連携を図ることができるよう、社会教育部局や福祉部局を中心に担当者による連絡会を設置するなど協議体制を整備することが効果的です。 【連絡会の構成員(例)】 ・障害福祉を所管している部局 ・公立図書館を所管している部局 ・学校図書館を所管している部局 ・特別支援教育を所管している部局 更に、組織的な検討を進めるため、必要に応じて連絡会には幹部職員も加わるなど、効果的な実施をお願いします。 なお、計画通知でも記載されているとおり、計画策定にあたって開催される外部関係者も含めた会議の構成員には、視覚障害者等の読書環境の整備を支援する団体の関係者や視覚障害等当事者も参画するように努めていただくことをお願いします。 2.地方公共団体が策定する計画の内容 計画通知第2−1では、各地方公共団体において推進を求められる施策を示しておりますが、地方公共団体が策定する計画の内容については、基本計画を勘案した場合、以下の様なことが考えられますので、一例として示します。なお、実際の策定にあたっては、地方公共団体の実情や障害当事者等の状況を踏まえた内容とすることが必要です。 また、視覚障害者に対する支援のノウハウが豊富な点字図書館、障害者サービスの実施をはじめ多くの方にとって身近であり通いやすい公立図書館、児童生徒の教育を支援する学校図書館など、視覚障害者等の読書環境の整備の推進にあたっては関係機関等の協力が不可欠であることから、連携がより円滑になることを目指して、計画の策定をお願いします。 なお、別添の基本計画V施策の方向性のうち、特に勘案していただきたい部分に下線を引いております。 (1)視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) @ 視覚障害者等が利用しやすい(以下「アクセシブル」という。)書籍等の充実 ア 公立図書館や学校図書館におけるアクセシブルな書籍等を充実させる取組の促進 イ 点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の充実、製作の支援 A 円滑な利用のための支援の充実 ア 公立図書館や学校図書館における館内の整備、障害者サービスの充実を図る取組の促進 イ 学校図書館における司書教諭・学校司書の配置、司書教諭等の教員間の連携、 視覚障害等のある児童生徒に対する図書館利用の促進 ウ 点字図書館におけるアクセシブルな書籍等や端末機器による読書機会の提供、アクセシブルな書籍等の利用支援 (2)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) ア 国立国会図書館やサピエ図書館のサービスの周知や利用促進 (3)特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11 条関係)(電磁的記録等の提供促進は除く。) ア 各図書館間における特定書籍(著作権法第37 条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍)等の製作ノウハウや製作された書籍等の情報共有等による製作の効率化 (4)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) ア 様々な読書媒体の紹介、サピエ等の利用方法に関する相談及び習得支援、端末機器等の情報入手や貸出支援の促進 イ アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等の給付 ウ ICTサポートセンターの普及 (5)製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) @ 司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 ア 障害者サービスや読書支援機器の研修等の実施、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備 A 点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ア ノウハウ等の習得に係る研修の実施、計画的な人材の募集や養成 3.他の計画における記載の拡充について 地方公共団体の計画については単独で策定すること以外に、障害者基本計画等既存の計画に読書バリアフリーの項目を拡充すること等も考えられることから、地域の状況等を踏まえ、計画の策定をお願いします。 なお、他の計画に項目を拡充する場合においても、抽象的な文言のみを記載するのではなく、単独で策定する場合と同じように、関係部局間の連携・協議や、外部団体等からの意見聴取の実施の上で具体的な内容を記載する等、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に資するものになることが推奨されます。 4.基本計画の特徴 国が策定した基本計画は、視覚障害者等が読書を通じて文字・活字文化に触れることのできる環境整備を行うための第一期の計画として、当面の取組の方向性を示したものであり、今後、更に実態把握を行い、より具体的な目標や達成時期等についての検討や定期的な評価を行っていくこととしております。 そのため、地方公共団体におかれましても、このような基本計画の特徴を参考にしつつ、当面の取組の方向性を示した計画を策定の上、策定後も実態把握の実施や定期的な評価、より具体的な目標や達成時期等についての検討をお願いします。 5.管内市町村に対する働きかけについて 読書バリアフリー法による地方公共団体の計画策定に関して、地方公共団体には都道府県のみならず、市町村も含まれているところです。そのため、都道府県の計画については、管内市町村が計画を策定するにあたり参考となることから、積極的な策定をお願いするとともに、研修や会議等を通じて、管内市町村に対して計画策定の働きかけをお願いします。 6.策定した計画の情報提供 文部科学省及び厚生労働省では、地方公共団体の計画策定を推進するため、両省のホームページや主催する会議・研修会等において、地方公共団体の策定状況や実際に策定した事例等について周知していく予定です。 (32〜34ページ) つきましては、各地方公共団体が計画を策定した場合、両省の下記連絡先に対して情報提供をお願いします。 7.関連施策の周知 視覚障害者等が各種支援施策を通じて、読書に親しむことができるようにするためには、支援施策の認知も十分されることが不可欠であり、関係部局や関係団体と協力して、地方公共団体のHP・SNS・広報誌等による周知活動に努めていただくようお願いします。また、周知にあたってはテキストや点訳データの準備など、障害特性を考慮した対応についてもお願いします。 基本計画、全般に関すること 文部科学省 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 TEL:03-5253-4111(内線3613) FAX:03-6734-3719 公立図書館・学校図書館に関すること文部科学省総合教育政策局地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室 TEL:03-5253-4111(内線3030) FAX:03-6734-3718 点字図書館・サピエ図書館等その他福祉施策に関すること 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 TEL:03-5253-1111(内線3076) FAX:03-3503-1237 (35ページ) 別添 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画 令和2年7月 文部科学省 厚生労働省 (36ページ) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画 (目次) I はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  2.基本計画について 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 U 基本的な方針 1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 2.アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮 V 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) W おわりに (37ページ) T はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  令和元年6月21日、議員立法により、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)が成立した。 我が国は、平成26年に、国連の「障害者の権利に関する条約」を批准した。同条約は、「障害の社会モデル」(*1)の考え方を示しつつ、締約国に対して、障害者があらゆる形態の意思疎通によって表現及び意見の自由についての権利を行使できるようにすること、障害者の生涯学習の機会を確保すること、障害者が利用しやすい様式を通じて、文化的な作品を享受する機会を確保することなどを求めている。また、同条約の締結に向け、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)をはじめとする様々な国内法制度が整備され、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けた取組が進められている。 こうした大きな流れがある中で、特に「読書バリアフリー法」の成立に向けた動きの契機となったのは、平成25年6月27日の世界知的所有権機関(WIPO)による、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(以下「マラケシュ条約」という。)の採択である。 平成30年の第196回通常国会においては、「マラケシュ条約」の締結の承認とともに、著作権法(昭和45年法律第48号)の改正が行われ、一部の条項を除き、平成31年1月1日に施行された。これにより、視覚障害者等のために書籍の音訳等を著作権者等の許諾なく行うことを認める権利制限規定(著作権法第37条第3項)において、同規定の対象者として、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持てない者等が含まれることが明確になった。また、権利制限の対象とする行為について、コピー(複製)、譲渡やインターネット送信(自動公衆送信)に加えて、新たにメール送信等も対象とされた。更に、視覚障害者等のために書籍の音訳等を権利者の許諾なく行うことができる団体等についても、障害者施設、図書館等の公共施設の設置者や文化庁長官が個別に指定する者に加え、新たに、一定の要件を満たすボランティア団体等も対象とされることとなった。 (38ページ) 更に、この改正著作権法に係る国会での審議の際、衆議院・参議院の両委員会において、「視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、(略)当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。」との附帯決議がなされたことが、その後の読書バリアフリー法の制定の動きを加速化した。 2.基本計画について (1)位置付け 読書バリアフリー法は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法(昭和45年法律第84号)の理念にのっとって、障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とするものである。 読書バリアフリー法第7条第1項には、「文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を定める旨の規定があり、この基本的な計画(以下「基本計画」という。)には、基本的な方針、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策その他必要な事項を定めることとされている。   また、同条第3項及び第4項では、基本計画を策定するときは、あらかじめ、「経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議」することを定めているとともに、「視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ものとされている。加えて、第18条において、国は、「施策の効果的な推進を図るため、(略)関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずる」ものとされている。これらの規定に基づき、本基本計画は、関係者協議会を設置し、関係者から聴取した意見を踏まえて、策定されるものである。   なお、基本計画は、視覚障害者等の読書環境の整備を通じ、障害者の社会参加・活躍の推進や共生社会の実現を目指すものであり、障害者基本法に基づく「障害者基本計画」の基本理念や方針を踏まえて作成する必要がある。また、基本計画の実現に向けた取組を進めることは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨にも適うものである。 (39ページ) (2)対象期間 本基本計画は令和2年度から令和6年度までを対象とする。基本計画の策定後は、定期的に進捗状況を把握・評価していくものとする。 (3)構成 本基本計画は、この「T はじめに」、「U 基本的な方針」、「V 施策の方向性」及び「W おわりに」で構成される。 「U 基本的な方針」では、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本理念を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。 「V 施策の方向性」では、読書バリアフリー法第9条から第17条までに規定する9の分野の基本的施策について、本基本計画の対象期間に国が講ずる施策の方向性を示している。 「W おわりに」では、計画に基づく取組を進めるに当たり念頭に置くべきことなどを示している。 (4)基本計画の対象 読書バリアフリー法第2条第1項において、「視覚障害者等」とは、「視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍(略)について、視覚による表現の認識が困難な者」と定義されている。具体的には、視覚障害者、読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害がある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障害者(*2)であり、基本計画においてもこれらの者を対象とする。 なお、読書環境の整備に当たっては、視覚障害者等以外の、読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も必要である。 また、乳幼児期から高齢期までの各ライフステージにおいて必要とされる様々な種類の書籍を考慮しつつ取り組む必要がある。なお、同項において、「書籍」には、雑誌、新聞その他の刊行物も含むこととしている。 (40ページ) 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 読書は、乳幼児・青少年期、成人期、高齢期の一生涯にわたって、個人の学びや成長を支えるものであり(*3)、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動である。特に、学校教育段階においては、教科書以外にも(*4)、副読本、参考書、資料集、学術論文等が、学習や教育・研究に関連する活動の支えとなる。また、中等教育機関、高等教育機関及び職業教育機関への選抜試験の受験、進学や、資格取得のほか、就職活動、職業生活等の人生のあらゆる段階において、書籍を通じて専門的知識を得ることが不可欠である。   一方で、我が国において視覚障害者等(*5)が利用しやすい書籍等はいまだ少なく(*6)、障害の有無にかかわらず全ての国民が文字・活字文化を等しく恵沢できる状況とはなっていない。 視覚障害者等の読書環境の整備を推進するため、読書バリアフリー法は、第3条で「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること」等を定めている。 読書バリアフリー法第2条第2項において、「視覚障害者等が利用しやすい書籍」(以下「アクセシブルな書籍」という。)とは、「点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍」と定義されており、例えば点字図書、拡大図書、音訳図書、触る絵本、LLブック(*7)、布の絵本等がある。 また、読書バリアフリー法第2条第3項において、「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」(以下「アクセシブルな電子書籍等」という。)とは、「電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録(略)であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるもの」と定義されており、例えば、音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書(*8)、オーディオブック(*9)、テキストデータ等がある。 視覚障害者等による、これらのアクセシブルな書籍及びアクセシブルな電子書籍等(以下「アクセシブルな書籍等」という。)に関する状況と課題については、「借りる」と「購入する」の2つの側面から捉えられる。 「借りる」に関しては、点字図書館と一部の公立図書館が、ボランティア・図書館協力者等の協力を得つつ、アクセシブルな書籍等の製作に取り組むとともに(*10)、窓口貸出・郵送貸出・宅配サービス・施設入所者へのサービス等の障害者サービス(*11)を必要に応じて展開してきており、視覚障害者等の情報保障の支えとなってきた。また、視覚障害等のある学生が在籍する大学や高等専門学校においても、学生からの求めに応じ、書籍等の製作が行われつつあるとともに、特別支援学校(視覚障害)の一部においてもサピエ図書館(*12)との連携により、在籍する児童生徒が書籍等を利用できるよう環境を整えている。 一方で、これらのアクセシブルな書籍等の数がニーズに対して不足していることに加え、点字図書館と公立図書館においてアクセシブルな書籍等の製作等に協力する人材の確保が難しくなってきており、今後の継続的な提供体制には課題がある。また、製作される書籍等の質が必ずしも担保されていない場合があること、サピエ図書館や国立国会図書館を含む、各図書館が所有する様々な形態の書籍等が十分に共有されておらず、全国の視覚障害者等が効率的に利用できる仕組みになっていないことが指摘されている。更に、今後、アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるに当たり、視覚障害者等がそれらを公立図書館で利用できるようにする観点からの取組も重要である。 「購入する」に関しては、点字出版施設(*13)等が製作するアクセシブルな書籍に加えて、出版者が製作する合成音声読み上げや文字の拡大に対応できる電子書籍等が、少しずつ市場に出回ってきている。点字図書や大活字図書等の印刷物の利用者としては視覚障害者が中心となるが、電子書籍等は、読み上げや文字の拡大が可能であるなど、発達障害者や肢体不自由のある者でも利用がしやすく、電子書籍等の発展に期待が大きく寄せられている。 その一方で、視覚障害者等にとって利用しづらい電子書籍等も少なくないこと、印刷本の出版と同時に販売されるものは少ないこと、紙市場に比して電子出版の市場規模(推定販売金額)は令和元年時点で2割弱に留まり(*14)、特に教育や研究において求められる電子書籍等は極めて少ないこと等、日本における普及は始まったばかりであり、多くの課題が残されている。なお、視覚障害者等のために、自社発行物の巻末に電子データの引換券を添付するといった取組も存在するが、ごく一部の出版社に限られているのが現状である。 また、電子書籍等に加えて、点字図書や大活字図書等の印刷物についても引き続き多くのニーズがあり、より多くの書籍が発行されることが望まれている。 前述のとおり、平成30年の第196回通常国会において成立した改正著作権法及び読書バリアフリー法において、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持つことができない者等が対象となり、アクセシブルな書籍等へのニーズが拡大していることを踏まえ、近年の先端技術を活用した、効率的で持続可能な仕組みを構築する必要がある。   *1 「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、という考え方。 *2 マラケシュ条約第3条において、同条約の「受益者」は、@盲人である者、A視覚障害又は知覚若しくは読字に関する障害のある者であって、印刷された著作物をそのような障害のない者と実質的に同程度に読むことができないもの、B身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができない者のいずれかに該当する者であると定義されている。 *3 文字・活字文化振興法(平成17年法律第91号)は、「文字・活字文化が、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上、豊かな人間性の涵(かん)養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないもの」であることにかんがみ、すべての国民が生涯にわたり、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを基本理念として謳っている。また、子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)は、「子ども(略)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない」と規定している。 *4 教科書については、平成30年の学校教育法等の改正により、特別な配慮を必要とする児童生徒の困難低減等のため、学習者用デジタル教科書の活用が可能となっているほか、音声教材、拡大図書等について、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号)に基づき、ボランティア団体等が、教科書発行者から提供を受けた教科書デジタルデータを活用し製作している。 *5 日本の視覚障害児・者について、厚生労働省が行った平成28年度「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」によると、視覚障害により障害者手帳を所持している児・者(推計)は約31.2万人(うち、日常的なコミュニケーション手段の一つとして点字を利用している者は約2.4万人)、同じく肢体不自由は約193.1万人(うち、「上肢」「脳原性運動機能障害・上肢」は約67.5万人)とされている。また、ディスレクシアと呼ばれる学習障害の一種とされる読字障害者の正確な人口は把握されていないが、現在、学習障害を理由に、公立小・中学校の通級による指導を受けている児童生徒数は、20,175人、平成30年度より制度が開始された公立高等学校の通級による指導を受けている生徒数は、72人である(平成30年度特別支援教育資料(文部科学省))。一方で、独立行政法人日本学生支援機構が毎年行っている高等教育機関への悉皆調査(「平成30年度障害のある学生の修学支援に関する実態調査」)では、学習障害(SLD:限局性学習症)のある学生数は213人に留まっている。 *6 国立国会図書館が平成29年度に全国の公共図書館を対象として行った調査(回答率約83%。『公共図書館における障害者サービスに関する調査研究』(https://current.ndl.go.jp/node/36508参照。)によれば、全国の公共図書館が所蔵するアクセシブルな書籍等は約170万タイトル(延べ数)である。なお、社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会平成29年度実態調査「日本の点字図書館34」によると、全国の点字図書館84館が所蔵するアクセシブルな書籍数は約136万タイトル(延べ数)である。 *7 「LL」とはスウェーデン語の「Lattlast(分かりやすく読みやすい)」の略で、「LLブック」とは、読むことに困難を伴いがちな青年や成人を対象に、生活年齢に合った内容を、分かりやすく読みやすい形で提供すべく書かれた本のことである。 *8 「DAISY」とは、「Digital Accessible Information System」の略で、「アクセシブルな情報システム」を指す。特徴としては、@目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことができる、A最新の圧縮技術で一枚のCDに50時間以上も収録が可能である、B音声にテキストや画像を同期させることができる、等がある。 *9 オーディオブックとは、書籍等の文章を読み上げ又は口演し、必要に応じて効果音及びBGM等を付与することにより、利用者が耳で聴くことを通じて情報を得られる形式の電子音声コンテンツを指す。文字を目で読んで情報を得られる電子書籍とは異なり、オーディオブックは利用者の視界を占有しないこと及び発音、抑揚等の発声技術を駆使した表現が可能となること等の特徴を有する。 *10 著作権法第37条第3項では、視覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものが、視覚障害者等のために録音図書等の製作等を行うことができる旨が規定され、政令で、(1)障害者施設や図書館等の公共施設の設置者、一定の要件を満たすボランティア団体等、(2)文化庁長官が個別に指定する者が定められている。 *11 図書館利用に障害のある者に対して、点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入りの映像資料等の整備・提供、手話・筆談等によるコミュニケーションの確保、図書館利用の際の介助、対面朗読の実施など、来館・移動のための支援や、物理的環境への配慮、意思疎通への配慮を行う等、障壁となるものを取り除いて図書館を使えるようにするサービスのこと。 *12 視覚障害者及び視覚による表現の認識に障害のある方々に対して点字データ、デイジーデータ等を提供するネットワーク。日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行っている。正式名称は「視覚障害者情報総合ネットワーク」。 *13 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に基づく視聴覚障害者情報提供施設の一種で、点字刊行物の出版に係る事業を主として行う施設。平成30年社会福祉施設等調査によれば、全国にある点字出版施設は10施設。 *14 公益社団法人全国出版協会の発表「2019年の出版市場規模発表」(https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html)によれば、紙の出版市場は1兆2,360億円、電子出版市場は3,072億円。   U 基本的な方針  1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 市場で流通している電子書籍等が少なかった時代には、著作権法第37条第1項に基づき製作された点字図書や、同条第3項に基づき障害者施設、図書館、一定の要件を満たすボランティア団体等が権利者の許諾なく製作できる録音図書、拡大図書等の書籍が、視覚障害者等の読書環境を支える中心となってきた。 今後は、それらに加え、市場で流通する電子書籍等と、著作権法第37条第3項に基づき製作される電子書籍等を車の両輪として、両面から取組を進め、アクセシブルな電子書籍等の普及を図る時代となっている。 合わせて、アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等を視覚障害者等がより円滑に使える環境を整備することも必要である。 また、障害の状況によって端末機器等を使えない場合や、紙や布といった現物の書籍が必要とされる場面・ニーズもあるため、引き続きアクセシブルな書籍の提供を継続するための取組も必要である。更に、書籍利用のためのアクセシビリティのみならず、書籍の入手や利用に係るアクセシビリティの改善・向上にも合わせて取り組む必要がある。 2.アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 利用者の視点からは、アクセシブルな書籍等の「量的拡充」及び「質の向上」の両方のニーズがある。 「量的拡充」に関しては、今後のアクセシブルな書籍等のニーズの拡大に対応するため、公立図書館、点字図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館、国立国会図書館において、各々の果たすべき役割に応じ、アクセシブルな書籍等を充実させることが重要である。また、アクセシブルな書籍等を全国の視覚障害者等に届けるための仕組みとして、製作されたアクセシブルな書籍等の共有に向けた図書館間の連携やネットワークを構築することが重要である。 「質の向上」については、書籍等の製作に係る基準の作成や、製作に従事する者の研修が必要である。 また、「量的拡充」及び「質の向上」のいずれにおいても、これまでに製作された書籍等について、書籍・電子書籍等の形態を問わずアクセシブルなものにし、長期的にデータとして保存するための取組や、製作者が効率的に作業できるよう出版者から製作者に電子データを提供する仕組みを構築することが効果的である。特に、教育や研究に必要とされるアクセシブルな電子書籍等がニーズに比して不足しており、この分野の取組が喫緊の課題である。 なお、書籍等のコンテンツや用途によって、「正確性」が求められる場合、「速報性」が求められる場合など様々であり、双方の観点のバランスを取りながら進めていくことが必要である。 3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮 視覚障害者等の障害の種類及び程度によって、アクセシブルといえる書籍等の提供媒体及び利用方法は異なる。このため、読書環境の整備を進めるに当たっては、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な形態の書籍等を用意することが必要である。 なお、視覚障害者等が、著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍(以下「特定書籍」という。)及び同条第2項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな電子書籍等(*15)(以下「特定電子書籍等」という。)の利用を希望する場合、これらの特定書籍・特定電子書籍等を視覚障害者等の利用に供する機関においては、障害者手帳や医学的診断基準に基づく診断書の有無に限ることなく、他の根拠資料を用いる等、柔軟な対応により障害等の確認を行うことが適切である。 (41〜45ページ)   *15 著作権法第37条では、視覚障害者等のために書籍の複製等を著作権者等の許諾なく行うことを認めている。同条第1項において、公表された著作物を点字により複製することが、同条第2項において、点字データを記録媒体に保存することや、インターネット等で送信することが認められている。また、同条第3項において、書籍の音訳等、視覚障害者等が利用するために必要な方式により複製すること(紙媒体と電子媒体の両方)や、作成されたものをインターネットやメール等で送信することが認められている。 V 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 【<基本的考え方> 公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、点字図書館とも連携して、アクセシブルな書籍等の充実、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。 また、点字図書館については、アクセシブルな書籍等の充実、公立図書館等に対する利用に関する情報提供、視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図る。】 (1)アクセシブルな書籍等の充実 ・ 公立図書館等において、地域や機関等の実情を踏まえ、点字図書館や他の図書館等と連携しつつ、アクセシブルな書籍等を充実させる取組を促進する。 ・ 国立国会図書館において、学術文献の録音資料やテキストデータの製作を促進するとともに、公立図書館等で製作される特定電子書籍等を収集し、アクセシブルな書籍等の充実を図る。   ・ 点字図書館及び点字出版施設(以下「点字図書館等」という。)が、今まで培ってきたノウハウを生かし、引き続き障害の種類及び程度に応じたアクセシブルな書籍等が充実するよう、点字図書館等による製作の支援を行う。 ・ 国立国会図書館と日本点字図書館が協力して実施している図書館等におけるテキストデータ製作支援の実験の取組を進め、それにより得られた知見を活用すること等により、点字図書館や公立図書館等におけるアクセシブルな電子書籍等の製作の取組を支援する。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・ 公立図書館や学校図書館において、各館の特性や利用者のニーズ等に応じ、段差の解消や対面朗読室等の施設の整備、アクセシブルな書籍等の紹介コーナーの設置、拡大読書機器等の読書支援機器の整備、点字による表示、ピクトグラム等を使ったわかりやすい表示、インターネットを活用した広報・情報提供体制の充実及び障害者サービスの充実を図る取組を促進する。 (9ページ) ・ 学校における学校図書館を活用した支援を充実するため、設置者である各教育委員会等に対し、司書教諭・学校司書の配置の重要性について周知するとともに、司書教諭をはじめ学級担任や通級の担当者、特別支援教育コーディネーター等の教員間の連携の重要性について周知するなどして支援体制の整備を図る。 ・ インクルーシブ教育システムの理念にのっとって、視覚障害等のある児童生徒及び学生等が在籍する初等中等教育機関及び高等教育機関において読書環境を保障することが重要であり、以下の取組を推進する。 @点字図書館及び公立図書館と学校図書館の連携を図り、視覚障害等のある児童生徒を支援するための取組を進める。 A各教育委員会を通して、特別支援学校、特別支援学級設置校、及び視覚障害等のある児童生徒が在籍する学校に対し、視覚障害等のある児童生徒が生涯学習の場である図書館の利用について学ぶ機会を設けることの重要性及び具体的な利用方法について周知を図る。 B全国の大学及び高等専門学校の附属図書館が保有するアクセシブルな書籍等の所在情報を共有するためのリポジトリを国立情報学研究所において整備し、視覚障害者等による円滑な利用を促進する。また、同リポジトリと国立国会図書館のデータベースとの連携について検討を進める。更に、同リポジトリやデータベース等で公開される学術論文等について、視覚障害者等のアクセシビリティの向上に努める。 C全国の大学等の障害学生支援を担う施設は、大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば、著作権法施行令(昭和45年政令第335号)において視覚障害者等のための複製が認められる者として位置付けられていることについて大学等に周知するとともに、大学等の図書館と学内の障害学生支援担当部局等の関係部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化する。 ・ 点字図書館において、公立図書館や地域のICTサポートセンター(*16)等との連携を図り、視覚障害者等に対し、様々なアクセシブルな書籍等や端末機器を活用して読書の機会を提供する等とともに、点字・録音図書等の郵送サービスを含む地域の視覚障害者に対するアクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援を引き続き実施していく。 ・ 点字図書館が担ってきた音訳図書の製作やアクセシブルな書籍等の利用に関する情報提供などの機能は視覚障害者以外の視覚による表現の認識が困難な者の読書環境の整備の推進に役立つものであることから、地域における公立図書館等との連携を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と協議しながら、点字図書館等の利用対象者の範囲について、アクセシブルな書籍等を必要とする方が利用できるよう制度面を含め検討を行い、その検討結果を踏まえ、受入れ環境の整備及びアクセシブルな書籍等の充実について検討する。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 【<基本的考え方> インターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援を行い、アクセシブルな書籍等の十分かつ円滑な利用を促進する。 また、国立国会図書館、同ネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携強化を図り、インターネットを利用したサービスの提供体制の強化を図る。】 ・現在、国立国会図書館においては、自ら製作した「学術文献録音図書」の音声デイジーデータや、公立図書館等が製作し、国立国会図書館が収集した視覚障害者等用データを、個人、公立図書館等及び点字図書館に送信するサービスを実施している。一方、サピエ図書館においては、全国の点字図書館等で製作された点字やデイジーデータを個人や会員施設等がダウンロードすることができる体制を整えている。また、双方のシステム間の連携も図られており、視覚障害者等が全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できるシステムも国立国会図書館により整備されている。これらのシステムの十分な活用を図るため、視覚障害者だけでなく視覚による表現の認識が困難な者も利用できることも含め、関係機関・団体間の連携等を通してこれらシステムの周知を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を図り、国立国会図書館やサピエ図書館のサービスについての周知や連携に必要な情報提供を研修会の開催やリーフレットの作成等を通じて行い、多くの視覚障害者等が視覚障害者等用データの送信サービスやサピエ図書館を利用できるよう会員加入の促進等の取組を進める。 ・このような取組を進めていく中で、視覚障害者等の障害の特性に応じた利用しやすいサービスが提供できるよう、国立国会図書館とサピエ図書館の役割も踏まえながら、サービス内容、システムの改善や提供体制等の検討を行う。 ・サピエ図書館の運営は、加入図書館やボランティア団体等からの会費や障害当事者からの寄付、国の補助金で実施しているところであるが、会員加入の促進を図り、将来的な会員の拡大等の状況や国の役割も踏まえ、安定的な運営が図られるよう支援を推進していく。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 【<基本的考え方> 特定書籍・特定電子書籍等の製作支援のため、製作に係る基準の作成等、質の向上を図るための取組に対する支援を行う。】 (1)製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 ・アクセシブルな書籍等やサピエ図書館におけるアクセシブルな電子書籍等の充実及び質の向上を図るため、その製作手順や仕様の基準の作成についてサピエ図書館を運営する者への支援を行い、特定書籍や特定電子書籍等の製作を行う者への製作手順等の共有を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を支援し、特定書籍や特定電子書籍等の製作のノウハウや製作された書籍等に関する情報の共有による製作の効率化を図る。 ・出版者に対し、特定書籍及び特定電子書籍等の製作に係る基準の作成等の質の向上を図るための取組に資する情報提供や助言等を行う。 ・障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発(特定電子書籍等の質の向上に資する製作支援技術を含む。)を行う者への支援を引き続き実施する。 (2)出版者からの製作者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備への支援  ・出版者からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する電磁的記録の提供を促進するための情報提供や助言等を行う。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討していく。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 【<基本的考え方>  アクセシブルな電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策の推進を図る。 また、視覚障害者等への合理的配慮の提供の観点から、出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策の推進を図る。】 (1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進  ・アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるようにするため、昨今の新たな技術(特にICT)の動向と視覚障害者等の多様なニーズを分析し、視覚障害者等の読書環境の整備に向けた取組を検討する。 (2)著作権者と出版者との契約に関する情報提供  ・出版者は、著作権者との出版に関する契約において電磁的記録の提供が含まれていない場合、著作権者から改めて許諾を受ける必要がある。このため、著作権者と出版者との契約の在り方等、アクセシブルな電子書籍等の販売等に関する著作権者と出版者との契約に資する情報提供や助言等を行う。 (3)出版者からの書籍購入者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備に関する検討への支援 ・出版者が書籍に係る電磁的記録の提供を行うこと、その他出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に資する情報提供や助言等を実施する。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討するとともにアクセシブルな電子書籍等の製作及び販売等の促進を図っていく。 (4)その他 ・音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における適切な基準の整理等を行い、図書館への導入を支援する。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 【<基本的考え方> 「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の枠組みに基づき、視覚障害者等がアクセシブルな電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備を図る。】 ・アクセシブルな電子書籍等の受入れ・提供のための国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関(国立国会図書館、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会等)において、役割分担及び連携方法の整理を行い、外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手及び国内で製作されたアクセシブルな電子書籍等の外国への提供を促進する。また、大学関係機関への情報提供やノウハウの共有を行う等、連携の強化を図り、外国で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を円滑に入手したり、日本で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を外国に提供したりできる環境の整備を進めていく。 ・外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進するため、国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行うとともに、その運用状況も踏まえつつ、必要に応じて更なる環境整備を行う。 (46〜51ページ) 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 【<基本的考え方> アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等、これに関する情報及びこれを利用するのに必要な情報通信技術について視覚障害者等が入手及び習得するため、必要な支援等を行う。】 ・視覚障害者等によるアクセシブルな書籍等の利用を促進するため、端末機器等の利用に当たり、支援の必要な者が必要な支援を受けられるよう、以下の取組を推進する。 @ 点字図書館と公立図書館が地域のICTサポートセンターと連携し、視覚障害者等に対して、様々な読書媒体の紹介やそれらを利用するための端末機器等の情報入手に関する支援を行う。なお、読書困難者の読書を支援する拡大読書機、ルーペ等の拡大補助具、点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の機器について、個々の状態に応じた活用に留意する。 A 点字図書館と公立図書館が連携し、サピエ図書館及び国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービス等にかかる、パソコン、タブレット、スマートフォン等を用いた利用方法に関する相談及び習得支援、端末機器の貸出等による支援を行う。 B 地方公共団体による、アクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の端末機器等の給付を行う。 ・上記の取組を推進するため、ICTサポートセンターの普及の支援や端末機器等の習得支援等を行う公立図書館等の職員等に対する研修を実施し、視覚障害者等が身近な地域において端末機器等の利用に係る講習会等の支援を受けることが可能となるよう、施策の推進を図る。 ・小・中・高等学校、特別支援学校の学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、また、現在、学校におけるICT環境整備が進められていることも踏まえ、各教育委員会の指導主事等を集めた全国会議等の場においてその趣旨を説明する等、その周知を図る。 (52ページ) 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 【<基本的考え方> アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発及びその成果の普及に必要な施策の推進を図る。】 ・アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器も含め、広く障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発やサービスの提供を行う者に対する資金面での支援及びその開発成果の普及を引き続き実施する。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) <基本的考え方> 特定書籍・特定電子書籍等の製作及びアクセシブルな書籍等の利用のための支援に関する人材について、これらの養成、資質の向上及び確保に係る支援を行い、円滑な利用を促進する。 また、公立図書館等及び国立国会図書館において、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実のため、司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ、司書等の資質の向上を図る。】 (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上  ・司書及び司書補(以下「司書等」という。)、司書教諭及び学校司書(以下「司書教諭等」という。)並びに職員、ボランティア及び図書館協力者(以下「職員等」という。)を対象に、障害者サービスに関する内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法に習熟するための研修等を実施し、資質の向上を図る。また、公立図書館においては、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行う。 ・大学の司書等及び司書教諭等の養成は、専門的職員としての入口に位置付けられる重要な段階である。このため、養成課程において、学生段階から障害者サービスの知識等について学習する機会を充実する。 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ・点字図書館等や公立図書館等及びそこで活動するボランティア団体等における点訳、音訳、アクセシブルな電子データ製作等に携わる人材について、製作基準の共有やノウハウ等の習得に係る研修の取組を支援し、質の向上を推進する。 ・点訳や音訳、アクセシブルな電子データ製作に携わる人材の不足が課題となっており、この分野における人材の確保が必要となっている。このため、点字図書館、公立図書館等と地方公共団体が連携して、人材の募集や養成、活動支援等に計画的に取り組むことができるよう支援する。 なお、製作人材の確保に関しては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策を関係者間で検討していく必要がある。 ・新たな端末機器やソフトウェア、合成音声の活用等、技術の進歩に応じてアクセシブルな書籍等の製作を行う人材や体制を確保していくことも必要である。 *16 障害者等のICT(情報通信技術)の利用機会の拡大や活用能力の向上を目的として、@ICT機器の紹介、貸出・利用に係る相談、Aサピエ図書館等のインターネットサービスの利用支援等を行うパソコンボランティアの養成・派遣等の事業を行う拠点(都道府県・指定都市・中核市に対する厚生労働省補助事業)。 W おわりに 本基本計画では、視覚障害者等が読書を通じて文字・活字文化に触れることのできる環境整備を行うための第一期の計画として、当面の取組の方向性を示した。今後、更に実態把握を行い、より具体的な目標や達成時期等についての検討や定期的な評価を行っていく。   本基本計画に基づき取組を着実に推進していくためには、地方公共団体や関係機関、当事者等多くの関係者の理解が必要であり、丁寧な周知を行うとともに、国において、引き続き、関係者間による協議会を設置し、課題の解決に向けた取組を実施していく。また、関連施策の実施に当たって、国は必要な財源の確保に努める。   また、地方公共団体においても、本基本計画による取組がより具体的に進展するよう、取り組むべき事項や課題ごとに、組織の枠を超えた取組や関係者間で連携した取組が行えるような体制の構築を図る必要がある。特に都道府県は、域内全体の視覚障害者等の読書環境の整備が図られるよう、自ら行うべき図書館等の施策の充実を図るとともに、市町村に対して必要な指導・助言等を行うものとする。 国は、本基本計画を踏まえ、地方公共団体における計画の策定が円滑に行われるよう、好事例の周知をはじめとした支援を行っていく。 本基本計画に基づく施策の推進を図る際には、その対象者である視覚障害者等には、盲、弱視(ロービジョン)、盲ろう、発達障害、肢体不自由等、様々な特性があることを踏まえて取り組むことが求められる。加えて、聴覚障害者、知的障害者、高齢者、外国人等、様々な状況により読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も認識して取り組むことが必要である。とりわけ、アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る研究開発の推進に当たっては、長期的な視点から、全ての者に配慮したユニバーサルデザインの実現を目指すことが重要である。 この基本計画に基づく施策の推進により、全ての国民が文字・活字文化の恵沢を享受できる社会が実現し、真の共生社会の実現に寄与することが期待される。 (53〜55ページ) 省庁等 厚生労働省 所属 社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 役職・氏名 室長 川部 勝一 基本計画 @総論(2)国民等への周知 これまでの取組 文部科学省と協力して、公立図書館や点字図書館等でどのようなサービスが行われているのか、またどのような本があるのかを知ってもらうための啓発用リーフレットを作成し、HPでの公開や、自治体を通じて地方公共団体の障害福祉、公立図書館、学校図書館、特別支援教育等の関連部署や域内の行政機関窓口、福祉施設、公立図書館、学校図書館、特別支援学校等を利用する障害児・者及びその家族などに周知した。 今後の取組・目標 引き続き、HPやリーフレット等を通じて、図書館における各種サービス、インターネットを介した図書の利用など、関連施策の紹介について定期的に発信するとともに、関係団体や地方公共団体に対しても積極的な周知を依頼する。 基本計画 AV.1(第9条関係)視覚障害者等による図書館利用に係る体制整備等 これまでの取組 【点字図書館における取組の充実】 点字図書館におけるアクセシブルな書籍等の充実や視覚障害者等の円滑な利用を図るため、令和元年度に身体障害者保護費負担金(点字図書館等事務費)における情報化対応特別管理費加算単価を増額した。【資料:厚-1、厚-2】 また、令和2年度において、各都道府県等に対し、点字図書館における視覚障害以外の障害者の利用促進を図るため、読書環境に関する相談、情報機器の貸出、サピエの利用登録等について視覚障害以外の障害者の支援を可能とするよう依頼するとともに、点字図書館が端末機器等に関する情報の入手支援、ICTの習得支援を行うにあたり、ICTサポートセンターと連携するよう周知した。 更に、令和3年度において、アクセシブルな書籍等の円滑利用のために実施する支援の内容や視覚障害以外の者も含めた利用状況等、点字図書館における提供体制及び点字出版施設や公立図書館等も含めた点訳・音訳図書の製作状況についての実態調査を行った。 成果・達成状況 令和元年度に情報化対応特別管理費加算単価を増額1施設あたり月額20万円→月額40万円 令和3年度実態調査にて、公共図書館等に対するアンケート調査を実施 (回答数) ・公共図書館310館 ・視覚特別支援学校の学校図書館58館 ・点字図書館81館 今後の取組・目標 令和3年度に実施した実態調査の報告書等に基づき、点字図書館における取組を促進する。 基本計画 BV.1(第9条関係)(2)円滑な利用のための支援の充実 これまでの取組 【各図書館間の連携強化】 各都道府県・指定都市・中核市に対して、協議会の設置やノウハウの提供など、点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、活用するよう好事例も含めて周知した。 成果・達成状況 「地域における読書バリアフリー体制強化事業」【資料:厚-2】 実施自治体 ・令和2年度:13自治体 ・令和3年度:20自治体 ・令和4年度:25自治体 今後の取組・目標 点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、引き続き好事例等を普及の上、地方公共団体に対する支援を着実に実施する。 令和6年度までに「地域における読書バリアフリー体制強化事業」を全自治体で実施 基本計画 CV.2(第10条関係)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化 これまでの取組 【サピエ図書館への支援強化】 サピエ図書館の安定的な運営・利用者の増加に資するよう、令和3年度予算における国庫補助事業において広報活動強化等に係る経費の拡充を行った。【資料:厚-2、厚-3】 成果・達成状況 サピエの利用状況 ・総目録数:令和元年度末:728,459件、令和4年度末:808,802件 ・個人会員:令和元年度末:16,942人、令和4年度末19,951人 ・団体会員:零wあ元年度末:382団体、令和4年度末:459団体 今後の取組・目標 引き続き、サピエ図書館の運営団体と定期的に協議を実施しつつ、サピエ図書館に対する支援を着実に実施する。 (56ページ) 基本計画 DV.2(第10条関係)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化 これまでの取組 【サピエ図書館のサービスの周知等】  公共図書館や、特別支援学校図書館等の担当者に対してサピエの利用方法や申込み方法等を周知・教示する研修会を実施し、地域の図書館等のサピエの理解と活用を促進する。(特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会 成果・達成状況 公共図書館等に対するサピエ研修会の開催(令和4年度から) 令和4年度:7自治体、11ヶ所 今後の取組・目標 引き続き、サピエ図書館の運営団体と定期的に協議を実施しつつ、サピエ図書館に対する支援を着実に実施する。※再掲 基本計画 EV.3(第11条関係)(1)製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 これまでの取組 【サピエ図書館への支援強化】 点訳・音訳等の製作手順書の周知等による音訳者・点訳者等の質の向上のための取組を実施。(特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会) また、点訳・音訳の実施方法の統一・質の向上に資するよう、令和3年度予算における国庫補助事業においてサピエ図書館の運営団体による点訳奉仕員及び音訳奉仕員向け研修やマニュアルの作成等に係る経費の拡充を行った。 成果・達成状況 令和4年度 ・『改訂版 点訳問題集1』の作成、公開 ・『音訳ボランティア養成講習会テキスト 基礎課程編』の刊行 今後の取組・目標 引き続き、サピエ図書館の運営団体と定期的に協議を実施しつつ、サピエ図書館に対する支援を着実に実施する。※再掲 基本計画 FV.3(第11条関係)(1)製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 これまでの取組 【点字図書館・公立図書館等の連携強化】  各都道府県・指定都市・中核市に対して、協議会の設置やノウハウの提供など、点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、活用するよう好事例も含めて周知した。※再掲 成果・達成状況 「地域における読書バリアフリー体制強化事業」実施自治体※再掲 ・令和2年度:13自治体 ・令和3年度:20自治体 ・令和4年度:25自治体 今後の取組・目標 点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、引き続き好事例等を普及の上、地方公共団体に対する支援を着実に実施する。※再掲 令和6年度までに「地域における読書バリアフリー体制強化事業」を全自治体で実施※再掲 基本計画 GV.5(第13条関係) 外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備 これまでの取組 【マラケシュ条約に基づく視覚障害者等用データの国際交換サービスの実施】  マラケシュ条約に基づく視覚障害者等用データの国際交換サービスを実施(特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会)。 今後の取組・目標 引き続き、マラケシュ条約に基づく視覚障害者等用データの国際交換サービスを着実に実施する。(特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会) 基本計画 HV.6(第14条・第15条関係)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 これまでの取組 【点字図書館における取組の充実】 令和2年度において、各都道府県等に対して、点字図書館が端末機器等に関する情報の入手支援、ICTの習得支援を行うにあたり、ICTサポートセンターと連携するよう周知した。※再掲 さらに、アクセシブルな書籍等の円滑利用のために実施する支援の内容や視覚障害以外の者も含めた利用状況等、点字図書館における提供体制及び点字出版施設や公立図書館等も含めた点訳・音訳図書の製作状況についての実態調査を行った。※再掲 成果・達成状況 令和3年度実態調査にて、公共図書館等に対するアンケート調査を実施※再掲 (回答数) ・公共図書館310館 ・視覚特別支援学校の学校図書館58館 ・点字図書館81館 今後の取組・目標 令和3年度に実施した実態調査の報告書に基づき、点字図書館における取組を促進する。※再掲 (57ページ) 基本計画 IV.6(第14条・第15条関係)端末機器等及びこれにする情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 これまでの取組 【障害者ICTサポート総合推進事業の着実な実施】 令和2年度において、各都道府県等に対して、障害者ICTサポートセンターの設置及び支援対象とする障害種別の拡大、市町村等と連携した出張教室や相談会等の開催、アウトリーチ支援、相談・貸出体制の強化について実施するよう周知した。【資料:厚-2】 また、令和4年度より、各自治体が設置するICTサポートセンターの活動を支援する「ICTサポートセンター連携事務局」を設置し、ICTサポートセンターにおける取組の好事例の横展開、情報の共有機会の提供等により、地域における障害者のICT機器利用に関する相談体制等の充実を図る事業を実施。【資料:厚-2】 成果・達成状況 ICTサポートセンター設置都道府県 令和元年度:23都道府県 令和4年度:31都道府県 今後の取組・目標 令和6年度までにICTサポートセンターを全都道府県に設置を目標 基本計画 JV.6(第14条・第15条関係)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 これまでの取組 【日常生活用具等給付事業の推進】 地方公共団体による、アクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の端末機器等の適切な給付が実施されるようにするため、通知・全国会議を通じて、法や基本計画の理念、障害者のニーズや地域の特性等を踏まえた日常生活用具給付等事業の実施を促した。 今後の取組・目標 引き続き、通知・全国会議等を通じて、法や基本計画の理念、障害者のニーズや地域の特性等を踏まえた日常生活用具給付等事業の実施を促す。 基本計画 KV.8(第17条関係)(2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 これまでの取組 【点字図書館等における取組の充実】 点字図書館等における製作人材等の育成の充実を図るため、図書等の点字・音声・テキストデータ化ができる人材養成を行う事業を実施した。 成果・達成状況 「地域における読書バリアフリー体制強化事業」実施自治体※再掲 ・令和2年度:13自治体 ・令和3年度:20自治体 ・令和4年度:25自治体 今後の取組・目標 引き続き、点字図書館等における製作人材等の育成の充実を図るため、図書等の点字・音声・テキストデータ化ができる人材養成を行う事業について、引き続き好事例等を普及の上、地方公共団体に対する支援を着実に実施する。 令和6年度までに「地域における読書バリアフリー体制強化事業」を全自治体で実施※再掲 基本計画 LV.8(第17条関係)(2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 これまでの取組 【各図書館等との連携強化】 各都道府県・指定都市・中核市に対して、協議会の設置やノウハウの提供など、点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、活用するよう好事例も含めて周知した。※再掲 成果・達成状況 「地域における読書バリアフリー体制強化事業」実施自治体※再掲 ・令和2年度:13自治体 ・令和3年度:20自治体 ・令和4年度:25自治体 今後の取組・目標 点字図書館や公共図書館等の連携促進を図る事業について、引き続き好事例等を普及の上、地方公共団体に対する支援を着実に実施する。※再掲 基本計画 MV.8(第17条関係)(2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 これまでの取組 【製作人材育成の調査】  アクセシブルな書籍等の円滑利用のために実施する支援の内容や視覚障害以外の者も含めた利用状況等、点字図書館における提供体制及び点字出版施設や公立図書館等も含めた点訳・音訳図書の製作状況についての実態調査を行った。※再掲 成果・達成状況 令和3年度実態調査にて、公共図書館等に対するアンケート調査を実施※再掲 (回答数) ・公共図書館310館 ・視覚特別支援学校の学校図書館58館 ・点字図書館81館 今後の取組・目標 令和3年度に実施した実態調査の報告書に基づき、点字図書館における取組を促進する。※再掲 (58ページ) 厚-1 点字図書館の概要 ○点字図書館においては、点字刊行物や視覚障害者用の録音物の製作や貸出のほか、情報機器の貸出、視覚障害者に関する相談等に係る事業及び点字刊行物の出版に係る事業を実施しており、その運営に要する費用を国が負担している。 事業内容、設置基準等 設置数 76施設(令和4年4月1日時点) ※うち公立50ヶ所、私立26ヶ所 事業内容 ・無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物など視覚障害者が利用するものを製作する。 ・点訳(文字を点字に訳すことをいう。)等を行う者の養成・派遣、点字刊行物等の普及促進、視覚障害者に対する情報機器の貸し出し、視覚障害に関する相談等を行う。 根拠法 身体障害者福祉法第34条 設置基準 ・閲覧室、録音室、印刷室、聴読室、発送室、書庫、研修室、相談室、事務室を設ける他、点字刊行物及び視覚障害者用の録音物の利用に必要な機械器具 人員基準 ・施設長1、司書1以上、点字指導員1以上、貸出閲覧員又は情報支援員1以上、校正員又は音声訳指導員1以上の他、その他運営に必要な職員 費用負担 ・身体障害者保護費負担金により、国が二分の一を負担。 ・令和5年度予算額20.3億円(聴覚障害者情報提供施設分も含む) ※設置数は身体障害者保護費負担金における交付対象施設数 (59ページ) 厚-2 視覚障害者等の読書環境の整備について 平成31年にマラケシュ条約及び、改正著作権法、令和元年に読書バリアフリー法の施行を踏まえ、点字図書及び音声図書の製作や視覚障害者等の読書環境の整備に向けた取組の充実を図る。 1 身体障害者保護費負担金(点字図書館等事務費)における加算単価の増額(令和元年度〜) 身体障害者保護費負担金の情報化対応特別管理費の加算単価を増額し、点字図書館における点字図書及び音声図書の製作に係る経費※を充実する。 ※経費の例 パソコン、点字プリンタや録音機器等の購入費、ボランティア等の募集広告費、講習会開催経費、講習会出席に必要な旅費、点訳・音訳を行う者への謝金や旅費等 平成30年度まで1施設あたり(上限)月20万円 令和元年度以降1施設あたり(上限)月40万円 2 地域生活支援促進事業における新規事業の創設 ◆障害者ICTサポート総合推進事業(令和元年度〜) 障害者のICT機器の利用促進等に関する総合的なサービス拠点(サポートセンター等)の運営や、ICT機器の操作やサピエの利活用支援を行うパソコンボランティアの養成・派遣等を実施。 ◆読書バリアフリー体制強化事業(令和2年度〜) 点字図書館と公共図書館等の連携を図るための協議会の設置や、視覚障害以外の障害者の利用促進のための研修の実施、点訳・音声訳奉仕員等の養成等を実施。 3 視覚障害者等用情報総合ネットワーク「サピエ」の充実強化 ◆予算額の年次推移(単位:千円) 運営費 平成30年度:0千円 令和元年度:8,700千円 令和2年度:8,702千円 令和3年度:24,020千円 令和4年度:44,509千円 令和5年度:44,509千円 管理費 平成30年度:60,444千円 令和元年度:123,731千円 令和2年度:41,944千円 令和3年度:69,880千円 令和4年度:71,449千円 令和5年度:88,650千円 合計 平成30年度:60,444千円 令和元年度:132,431千円 令和2年度:50,646千円 令和3年度:93,900千円 令和4年度:115,958千円 令和5年度:133,159千円 ◆主な予算額増の内容 (令和元年度) ・コールセンターの設置・運営費を新たに計上 ・蔵書増・会員数増に対応するため、サーバーの更新・増設 (令和3年度) ・会員拡大のための広報活動の実施 ・音訳・点訳の研修やマニュアル作成 ・蔵書増に対応するため、サーバーの増設 (60ページ) 厚-3 視覚障害者等用情報総合ネットワーク「サピエ」の運営支援 ○「サピエ」は、視覚障害者等(視覚障害、発達障害、肢体不自由等の障害により、書籍について、視覚による表現の認識が困難な者)に対して点字、デイジーデータ(音声、テキストを利用したデータ)の情報を提供するITネットワークであり、日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行っている。 ○ 国は事業に要する経費の一部を助成している。(令和5年度予算額:1.3億円) 視覚障害者等用情報総合ネットワーク「サピエ」と点字図書館等の関係図 (図の説明) サピエ(システム管理:日本点字図書館、運営:全国視覚障害者情報提供施設協会)上段中央に記載 マラケシュ条約加盟国のAE(Autorized Entity)上段左側に記載 国会図書館(視覚障害者用データ送信サービス)学術文献録音図書DAISY資料、公共図書館が製作し国会図書館が収集した音声DAISYデータ・点字データ 上段右側に記載 全国の点字図書館(視覚障害者等用図書の貸出・製作)中段に記載 全国の視覚障害者等 下段に記載 マラケシュ条約加盟国のAEとサピエ間双方に矢印:電子データの国間で交換 全国の視覚障害者等から全国の点字図書館に矢印:来館、電話、手紙、FAXによる貸出申し込み 全国の点字図書館から全国の視覚障害者等に矢印:来館または郵送にて貸出 全国の視覚障害者等からサピエに矢印:サピエは全国の点字図書館と書誌データ及び貸出状況を共有しており、サピエ経由での貸出依頼が可能。 サピエから全国の視覚障害者等:点字、デイジーデータを無料でダウンロードすることができ、パソコン等で視聴が可能。 ・「サピエ」は、インターネットを通して、全国の視覚障害者等、ボランティア、情報提供施設・団体をつなぐ「知識」(Sapientia サピエンティア= ラテン語)の広場。 ・全国の会員施設・団体が製作または所蔵する資料の目録ならびに点字・音声図書出版目録からなる、点字図書や録音図書の全国最大の書誌データベース(約81万件)として広く活用されている。「オンラインリクエスト」を利用すると、簡単な操作で自宅から点字図書や録音図書の貸出依頼が可能。 ・個人会員は、25万タイトルの点字データや、12万タイトルの音声デイジーデータを全国どこからでも、あるいは海外にいてもダウンロードが可能で、読みたい本を自由に選べ、直接入手でき、視覚障害者等の読書の自由が広がっている。( 「サピエ」視覚障害者等用情報総合ネットワークHPから)(一部要約及び数値更新) (61ページ) 厚-4 障害者等のICT機器利用支援事業 【令和5年度事業実施団体:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所】 障害者等のICT機器の利用機会の拡大や活用能力の向上を目的として、各自治体が設置するICTサポートセンター(ICT機器の紹介や貸出、利用に係る相談等を行う拠点:地域生活支援事業等)の活動を支援する「ICTサポートセンター連携事務局」を設置し、ICTサポートセンターにおける取組の好事例の横展開、情報の共有機会の提供等により、地域における障害者のICT機器利用に関する相談体制等の充実を図る。(令和4年度創設) 事業のイメージ ICTサポートセンター連携事務局が各県のICTサポートセンターの後方支援を実施するイメージを図式化している。 (図の説明) ICTサポートセンター設置自治体:A県サポートセンター(身近な相談窓口支援、WEBによる情報提供、ICT機器の展示・体験利用、ICT機器の紹介・貸出、ICT機器利用相談、利用支援団体の紹介) 上段中央に記載 視覚障害者情報提供施設、障害当事者団体、メーカー、パソコンボランティア等 上段左側に記載 ICTサポートセンター連携事務局(前項連絡会議の実施、ICTサポートセンターに対する支援、ICT機器に関する情報収集・発信、関係機関との連携、センター未設置自治体への支援、その他必要な取組) 上段右側に記載 市町村障害担当 中段左側に記載 障害者、そのご家族等(PC、スマホ、ネット等の利用において、自分に適した機器を知りたい、基礎的な使い方を知りたい、便利な利用方法がわからない、ICT機器を使った社会参加活動がしたい、障害により会話が困難となった友人とコミュニケーションがしたいなど)下段に記載 ICTサポートセンター設置自治体:A県サポートセンターと視覚障害者情報提供施設、障害当事者団体、メーカー、パソコンボランティア等間双方に矢印:連携 ICTサポートセンター連携事務局からICTサポートセンター設置自治体:A県サポートセンターに矢印:後方支援 (62ページ) 省庁等 文部科学省 所属 男女課障害者学習支援推進室地域課図書館・学校図書館振興室地域課社会教育人材研修係 役職・氏名 室長補佐 五十嵐 裕 専門官 毛利 るみこ 課長補佐 小山 聡 基本計画 @総論(2)国民等への周知 これまでの取組 【文部科学省共催イベント「超福祉の学校@SHIBUYA 」における普及・啓発活動】 シンポジウム 読書支援の最先端〜よむことが困難な人のために〜(令和4年11月6日)https://peopledesign.or.jp/school/symposium/1056/ 成果・達成状況 「超福祉の学校@SHIBUYA 2022」令和4年11月4〜6日開催 ・アクセシブルな書籍(LLブック・布の絵本等)の展示 ・ 参加者数:4,298人(オフライン:会場1,343人 オンライン:シンポジウム視聴者数3,585人) ・HP:35,715のページビュー(8,755人のユーザーからのアクセス) ・露出媒体数:154(ラジオ:4 公共広告:1 WEB:149) 今後の取組・目標 読書バリアフリーに関する一般の理解増進に資する普及啓発フォーラム等を実施(令和6年度検討中) 基本計画 A総論(2)国民等への周知 これまでの取組 【国民等への周知】 1.障害当事者、視覚障害支援者、司書など図書館関係者、地方公共団体、 教員、出版関係者などを対象とした文字・活字文化推進機構によるフォーラム「読書バリアフリーと図書館の役割 〜誰もが読める環境づくり〜」を令和3年2月13日に無観客開催し、3月1日よりインターネット配信を開始した。https://www.mojikatsuji.or.jp/news/2021/03/01/4598/ 2.令和3年9月5日開催の独立行政法人 国立青少年教育振興機構によるオンラインシンポジウム「本と多様な立場の読者をつなぐために」について、都道府県・指定都市の読書バリアフリー担当課にメール通知し周知を図った。(令和3年8月31日)https://www.mojikatsuji.or.jp/news/2021/09/22/5011/ 3.障害者やその家族等に公立図書館や点字図書館等でどのようなサービスが行われているのか、またどのような本があるのかを知ってもらうための啓発用リーフレットを作成し、HPで公開した(令和3年4月)。令和3年9月、印刷したリーフレットを都道府県、市町村の図書館所管担当等に配布した。 4.障害当事者等へのヒアリングや有識者会議での議論を踏まえ、令和5年3月28日、第五次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、多様な子どもたちの読書機会の確保にむけた積極的な取組を進めていただくよう、都道府県等への通知により周知を行った。(令和5年3月28日) 成果・達成状況 1.事前申込者 454名、再生回数1,961回(令和5年6月22日現在) 2.再生回数1,334回(令和5年6月22日) 3.配布先1799 箇所 4.資料 文-1参照 今後の取組・目標 関係機関等で実施する読書バリアフリーに関するフォーラム、シンポジウム等についても、情報を収集し各都道府県・指定都市に通知し、周知を図る。 基本計画 BB V.1(第9条関係)視覚障害者等による図書館利用に係る体制整備等 これまでの取組 【高等専門学校の附属図書館の体制整備等】 ・全51国立高等専門学校において、新・統合図書館システムOPAC端末に、表示画面内容の音読機能を導入。 ・そのほか、朗読CDや朗読CD付き図書、英語多読用電子ブック(PDF拡大可能)、リーディングトラッカーや、ハンドルーペ等の読書補助具及び筆談器の整備を実施。 成果・達成状況 ・全51国立高等専門学校において、新・統合図書館システムOPAC端末に、表示画面内容の音読機能を導入した。 ・視覚障害者等からの問い合わせ等があった場合に備えて対応が取れるよう準備を行っている。 今後の取組・目標 ・新・統合図書館システムの操作に関する研修等により、国立高専図書館スタッフのスキルアップを図る。 ・利用者のニーズに応じたアクセシブルな書籍等を充実させる。視覚障害に対応した書籍の選書や視覚障害に関する技術的支援の開発等に関する資料の選書を進める。 基本計画 CV.1(第9条関係)視覚障害者等による図書館利用に係る体制整備等(資料番号:文-2) これまでの取組 【大学図書館等における取組】 読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムを構築。複数の大学図書館と連携して試験運用を行い、令和4年10月4日より正式運用を開始した。国立国会図書館のデータベースとの連携について検討してきた。同取組や学内の障害学生支援担当部局等の関係部局と連携強化について大学図書館関連団体の会議等にて周知を行った。 成果・達成状況 令和4年10月4日より読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムの正式運用を開始した。申請機関数は98機関、登録済みメタデータ数は295件(2023年6月27日時点)。 今後の取組・目標 今後も大学図書館関係者等の意見や運用状況を踏まえ、引き続きシステム 機能の改善を図る。また、国立国会図書館のデータベースとの連携について引き続き検討していく。 (63ページ) 基本計画 DV.1(第9条関係)視覚障害者等による図書館利用に係る体制整備等 V.1(第9条関係)(1)アクセシブルな書籍等の充実 V.1(第9条関係)(2)円滑な利用のための支援の充実 これまでの取組 【読書バリアフリーコンソーシアム】 令和3、4年度、公立図書館、学校図書館、大学図書館、点字図書館等が連携した読書バリアフリーコンソーシアムを組織し、各館の物的・人的資源の共有、図書館を利用する視覚障害者等の増加を目的とした広報の強化等のモデル的な取組を行う地方公共団体、法人を支援した。 【読書バリアフリーコンソーシアム】 公立図書館、学校図書館、大学図書館、点字図書館等が連携した読書バリアフリーコンソーシアムを組織し、各館の物的・人的資源の共有、図書館を利用する視覚障害者等の増加を目的とした広報の強化等のモデル的な取組を行う地方公共団体、法人を支援する。 【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】(東京大学先端科学技術研究センター) 1令和3、4年度、学校・学校図書館等で製作された電子書籍等の所在情報の把握・共有(リポジトリ)の在り方を検討した。 2.令和3年度、アクセシブルな書籍・電子書籍等の製作・共有に関する情報提供や先進的な取組事例の紹介を行うウェブサイト「進めよう、豊かな読書活動」を作成した。https://accessreading.org/conso/ 3.令和4年2月23日、「学校図書館における読書バリアフリーコンソーシアム」によるオンライン公開シンポジウムを開催。それぞれの障害区分に適した特別支援学校での読書活動の取組事例の発表を行い、活用事例の周知を図った。 4.令和4年度、特別支援学校、特別支援学級設置校等の学校図書館における体制や図書・データの共有についてアンケート調査した。 5.令和5年1月22日、「学校図書館における読書バリアフリーコンソーシアム」によるオンライン公開シンポジウムを開催し、学校図書館でできるアクセシブルな図書の共有等について周知を図った。 【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】 1.公立図書館、学校図書館等によるコンソーシアムを構築することにより、アクセシブルな書籍等の充実を図るための各館の資源の共有や人材の交流等を行うとともに、引き続き、図書館の優れた取組の収集や周知を行う。 2.視覚障害等のある児童生徒が必要とする学習参考書、問題集、資格試験類のアクセシブルな書籍等の整備が不十分であり、実効的な施策の検討が必要なため、「読書バリアフリーコンソーシアム事業」の中で、学校・学校図書館等で製作された電子書籍等の所在情報の把握・共有(リポジトリ)の在り方を令和4年度のアンケート調査結果も踏まえ検討する。 3.令和3年度、都道府県から推薦のあった、公立図書館における読書バリアフリーに関する取組事例をホームページに掲載するとともに、各都道府県・指定都市図書館担当課に周知し、各地方公共団体の公立図書館・学校図書館における促進方策の参考とした。https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/mext_01461.html 4.令和4年度、隔年で実施している「電子図書館・電子書籍と子供の読書活動推進に関する実態調査」において、特別な教育的支援を必要とする子供のための公共図書館、学校図書館の取組等を調査した。 【その他】 1.公共図書館等における国立国会図書館、サピエ図書館との連携の促進を図った。 ・障害当事者等へのヒアリングや有識者会議での議論を踏まえ、令和5年3月28日、第五次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、多様な子どもたちの読書機会の確保にむけた積極的な取組を進めていただくよう、都道府県等への通知により周知を行った。(令和5年3月28日)【再掲】 成果・達成状況 【読書バリアフリーコンソーシアム】 資料 文-3参照 【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】 資料 文-4参照 【調査】 2.公共図書館における令和3年度のアクセシブルな資料数:3,188,060冊(平成30年度比251,914冊増)資料 文-5参照 3.資料 文-6参照 【その他】 1.国立国会図書館による視覚障害者等用データサービスの送信承認館登録令和2年度:153館、令和4年度:239館(56%増)  サピエ図書館の登録令和2年度:422館、令和4年度:459館(9%増) 今後の取組・目標 【読書バリアフリーコンソーシアム】 公立図書館、学校図書館、大学図書館、点字図書館等が連携した読書バリアフリーコンソーシアムを組織し、各館の物的・人的資源の共有、図書館を利用する視覚障害者等の増加を目的とした広報の強化等のモデル的な取組を行う地方公共団体、法人を支援する。  【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】(東京大学先端科学技術研究センター) 1.令和3、4年度、学校・学校図書館等で製作された電子書籍等の所在情報の把握・共有(リポジトリ)の在り方を検討した。 2.令和3年度、アクセシブルな書籍・電子書籍等の製作・共有に関する情報提供や先進的な取組事例の紹介を行うウェブサイト「進めよう、豊かな読書活動」を作成した。https://accessreading.org/conso/ 3.令和4年2月23日、「学校図書館における読書バリアフリーコンソーシアム」によるオンライン公開シンポジウムを開催。それぞれの障害区分に適した特別支援学校での読書活動の取組事例の発表を行い、活用事例の周知を図った。 4.令和4年度、特別支援学校、特別支援学級設置校等の学校図書館における体制や図書・データの共有についてアンケート調査した。 5.令和5年1月22日、「学校図書館における読書バリアフリーコンソーシアム」によるオンライン公開シンポジウムを開催し、学校図書館でできるアクセシブルな図書の共有等について周知を図った。 【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】 資料 文-4参照 【学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム】 1.公立図書館、学校図書館等によるコンソーシアムを構築することにより、アクセシブルな書籍等の充実を図るための各館の資源の共有や人材の交流等を行うとともに、引き続き、図書館の優れた取組の収集や周知を行う。 2.視覚障害等のある児童生徒が必要とする学習参考書、問題集、資格試験類のアクセシブルな書籍等の整備が不十分であり、実効的な施策の検討が必要なため、「読書バリアフリーコンソーシアム事業」の中で、学校・学校図書館等で製作された電子書籍等の所在情報の把握・共有(リポジトリ)の在り方を令和4年度のアンケート調査結果も踏まえ検討する。 【調査】 公共図書館、学校図書館における点字図書、拡大図書等多様な蔵書の整備状況について図書館関係者に周知を行うとともに、さらなる整備を促す。 【その他】 1.引き続き、連携促進による、登録館の前年比増を図る。 (64ページ) 基本計画 EV.8(第17条関係)(1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 これまでの取組 1.司書、司書教諭・学校司書、職員、ボランティアが障害者サービスの内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器(拡大読書器、DAISY再生機など)の使用方法に習熟するための研修等を行った。障害当事者でピアサポートができる司書・職員の育成や環境の整備を行った。製作人材の育成が効果的に実施出来るようにするため、関係団体や各省庁との協議を実施した。 2.令和4年度、学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアムにおいて、特別支援学校、特別支援学級設置校等の学校図書館における体制や図書・データの共有についてアンケート調査した。【再掲】 3.令和2年度に司書や司書教諭等の養成課程を置く大学及び講習を実施する大学その他の教育機関に対し、視覚障害者等に対する図書館サービスの内容を学習できるようにする旨の連絡を行った。 4.令和3年度及び令和4年度の司書・司書補の講習及び学校図書館司書教諭講習の実施機関について、実態調査を行った。 5.障害当事者等へのヒアリングや有識者会議での議論を踏まえ、令和5年3月28日、第五次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、多様な子どもたちの読書機会の確保にむけた積極的な取組を進めていただくよう、都道府県等への通知により周知を行った。(令和5年3月28日)【再掲】 成果・達成状況 1.資料文-3参照【再掲、資料文-7 2.資料文-4参照【再掲】 4.司書及び司書補講習実施機関における実施状況:令和3年度:6機関/6機関中、令和4年度:5機関/5機関中 学校図書館司書教諭講習実施機関における実施状況:令和3年度:19機関/33機関中、令和4年度:17機関/33機関中 ※開講する科目や科目数については、講習実施機関が実情に応じて設定しているため、年度によって変動することがある。 今後の取組・目標 1.司書、司書教諭・学校司書、職員、ボランティアが障害者サービスの内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器(拡大読書器、DAISY再生機など)の使用方法に習熟するための研修等を行う。 2.視覚障害等のある児童生徒が必要とする学習参考書、問題集、資格試験類のアクセシブルな書籍等の整備が不十分であり、実効的な施策の検討が必要なため、「読書バリアフリーコンソーシアム事業」の中で、学校・学校図書館等で製作された電子書籍等の所在情報の把握・共有(リポジトリ)の在り方を令和4年度のアンケート調査結果も踏まえ検討する。【再掲】 4.令和5年3月に閣議決定された「第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を踏まえた読書バリアフリー法に基づく取組を含む多様な子どもの個別最適な読書環境の提供を可能とする人材を育成している実態把握が必要。そのため、司書や司書教諭等の養成課程を置く大学及び講習を実施する大学その他の教育機関に対し、令和5年度に実態把握を行う。 (65ページ) 文-1 第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画の概要 (趣旨) ○「子どもの読書活動の推進に関する法律」(H13)に基づき、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(計画期間はおおむね5年)を策定 〇子どもの読書活動の推進に関する有識者会議による議論を経て、R5〜9年度の子どもの読書活動推進に関する基本方針と具体的方策を明らかにする (第1章近年における子どもの読書活動に関する状況等) ・子どもの読書活動に関する取組の現状 ○増加している点:図書館数、図書館でのオンライン閲覧目録の導入率、学校司書を配置する学校等の割合は増加 〇減少している点:図書館の児童用図書の貸出冊数、全校一斉の読書活動を行う学校の割合は減少 ・子どもの読書活動の現状 不読率の現状(注:1か月の間に本を1冊も読まない児童生徒の割合 目標:R4年度末までに不読率 小学生2%以下、中学生8%以下、高校生26%以下 現状:不読率の推移(%)いずれの学校段階でも数値目標は達成されていない (グラフ)全国学校図書館協議会「学校読書調査」より 平成12年 高校生59% 中学生43% 小学生16% 平成13年 高校生67% 中学生44% 小学生11% 平成14年 高校生56% 中学生33% 小学生9% 平成15年 高校生59% 中学生32% 小学生9% 平成16年 高校生43% 中学生19% 小学生7% 平成17年 高校生51% 中学生25% 小学生6% 平成18年 高校生50% 中学生23% 小学生6% 平成19年 高校生48% 中学生15% 小学生5% 平成20年 高校生52% 中学生15% 小学生5% 平成21年 高校生47% 中学生13% 小学生5% 平成22年 高校生44% 中学生13% 小学生6% 平成23年 高校生51% 中学生16% 小学生6% 平成24年 高校生53% 中学生16% 小学生5% 平成25年 高校生45% 中学生17% 小学生5% 平成26年 高校生49% 中学生15% 小学生4% 平成27年 高校生52% 中学生13% 小学生5% 平成28年 高校生57% 中学生15% 小学生4% 平成29年 高校生50% 中学生15% 小学生6% 平成30年 高校生56% 中学生15% 小学生8% 令和元年 高校生55% 中学生13% 小学生7% 令和3年 高校生50% 中学生10% 小学生6% 令和4年 高校生51.1% 中学生18.6% 小学生6.4% 新型コロナウイルスの感染拡大 〇各学校の臨時休業、図書館の臨時休館等により、図書へのアクセスがしにくい状況が影響を与えた可能性 〇小学生から高校生までの子供の不読率は、令和元年度から令和3年度、全国一斉臨時休業等を経て上昇 ※令和元年〜2年、自宅学習が難しい小学校低学年、中学校、高等学校入学直後の学年に不読率が特に上昇、本を読む時間が減少、漫画や雑誌を読む時間が増加 読書量・読解力の現状 〇1か月間の平均読書冊数は、いずれの学校段階でも、推進法が制定された平成13年よりも令和4年の方が多い (小学生6.2冊から13.2冊、中学生2.1冊から4.7冊、高校生1.1冊から1.6冊)全国学校図書館協議会 「学校読書調査」より 〇日本の子どもの読解力の平均得点は、OECD平均より高得点のグループに位置している(加盟国37カ国中11位) ※日本は漫画やフィクションを読む生徒の割合が高い。新聞、フィクション、ノンフィクション、漫画のいずれも、よく読む生徒の読解力の得点が高い(OECD 生徒の学習到達度調査 2018 年調査) (66ページ) (第2章基本的方針) 急激に変化する時代において、必要とされる資質・能力を育む上で、読解力や想像力、思考力、表現力等を養う読書活動の推進は不可欠であり、全ての子どもたちが読書活動の恩恵を受けられるよう、以下の点を考慮し、社会全体で子どもの読書活動を推進する 1不読率の低減  就学前からの読み聞かせ等の促進、入学時等の学校図書館のオリエンテーション等の充実  不読率が高い状態の続く高校生:探究的な学習活動等での図書館等の活用促進、大人を含めた読書計画の策定等 2多様な子どもたちの読書機会の確保  障害のある子ども、日本語指導を必要とする子ども等、多様な子どもの可能性を引き出すための読書環境を整備 3デジタル社会に対応した読書環境の整備  社会のデジタル化、GIGAスクール構想等の進展等を踏まえ、言語能力や情報活用能力を育むとともに、緊急時等を含む多様な状況における図書への継続的なアクセスを可能とするために、図書館及び学校図書館等のDXを進める 4子どもの視点に立った読書活動の推進  子どもが主体的に読書活動を行えるよう、子どもの意見聴取の機会を確保し、取組に反映させる (第3章子どもの読書活動の推進体制等) 〇国及び地方公共団体は、子どもの読書活動の推進に関する施策が円滑に実施されるよう、学校、図書館その他の関係機関及び民間団体との連携の強化その他必要な体制整備に努める 〇都道府県、市町村は、子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画策定に努める(推進法第9条) ※地方公共団体の判断により、教育振興基本計画など他の計画との統合や他の地方公共団体との共同策定も可能 市町村 市町村推進計画策定率の数値目標(令和4年度末までに、市100%、町村70%以上)を達成(令和3年度:市:93.9%、町村:74.4%) 目標:市:100%、町村:80%以上 都道府県 ●都道府県立図書館を活用した市町村への支援 ●域内市町村への助言、取組・施策の紹介 ●高等学校、私立学校等を所管する立場から、高校生や私立学校に通う子どもに着目した読書活動の推進等の関連施策の実施 国 ●ICTを活用した取組、市町村計画策定状況、読書推進にかかる人材の育成、多様な子どもの読書環境の整備等について、調査等を通じ、実態把握・分析 ●地方公共団体・図書館・学校図書館等の運営の参考となる資料等を全国に共有 (67ページ) (第4章子どもの読書活動の推進方策@) 子どもの読書活動の推進に当たっては、家庭、地域、学校等が中心となり、社会全体で取り組む必要がある T共通事項 1連携・協力 〇教師(司書教諭を含む)、学校司書、保育士、司書、指導主事、社会教育主事、ボランティア等、関係者の連携・協力 〇地域における学習資源・人的資源の共有 ・地域の図書等資料の有効活用、読書バリアフリーコンソーシアムの推進等 ・地域学校協働活動の推進(コミュニティ・スクールとの一体的な推進) ・読書活動など体験活動に関するポータルサイトの構築 2 人材育成 〇読書バリアフリー法やICT環境の変化を踏まえ、 ・司書等の講習・研修等の見直し ・国が実施する講習のオンライン化の推進 3 普及啓発 〇国等による「子ども読書の日(4/23)」の普及促進(子どもの読書活動推進フォーラム) 〇文部科学大臣表彰等の対象範囲の拡大(幼児教育関係分野) 4 発達段階に応じた取組 〇多様な子どもの状況に応じ、乳幼児期からの切れ目ない支援の促進(乳幼児健診等の機会を通じて絵本を配布する取組等) 〇不読率の状況を勘案し、学校種間の移行段階に着目した取組の促進(入学時等の学校図書館のオリエンテーション等) 5 子どもの読書への関心を高める取組 〇子どもが主体となって実施する活動や協働的な活動の推進(読書会(ビブリオバトル)、子ども司書、図書委員、まわし読み新聞等) 〇ICTの活用による既存の取組の更なる参加促進(オンライン読み聞かせ、読書記録アプリ等) 〇全ての子どもの参加しやすさを考慮した取組の促進(手話、多言語対応等) U家庭 〇家庭教育支援の一環として位置づけ、家庭での読書活動の習慣化を推進 ・家庭教育支援チームの配置促進を図るとともに、その際「ブックスタート」、「家読(うちどく)」等の活動推進 V地域(図書館) 〇地域における読書活動の推進を図るため、以下の取組を促進 多様な子どもたちの読書機会の確保 ・アクセシブルな電子書籍・書籍等(点字資料等)の整備・提供 ・多言語・やさしい日本語による利用案内 ・地域の子どもが親しみやすい講座、体験活動等に関連付けた取組 ・民間団体(子ども食堂等)への貸出、出前おはなし会 デジタル社会に対応した読書環境の整備 ・電子書籍貸出サービス、デジタルアーカイブの充実 ・オンラインでのイベント開催(読書会、読み聞かせ) 子どもの視点 ・イベント等への企画段階からの子どもの参画 ・子どもの要望を取り入れた資料・環境整備 (YA(ヤングアダルト)コーナーの設置、子どもが立ち寄りやすく・心地よい読書環境づくり) 〇図書館の設置・運営及び資料の充実 ・図書館資料の計画的整備 ・施設整備に係る官民連携の取組やデジタル化の推進 ・「望ましい基準」の見直しの検討 〇司書等の配置の促進 W学校等 〇学校等における読書活動の推進を図るため、以下の取組を促進 多様な子どもたちの読書機会の確保 ・特別支援学校含めた学校図書館資料の整備 ・多様な背景を持つ子どもへの読書機会の場の提供 ・図書館、ボランティア等との連携(団体貸出、出張読み聞かせ、絵本を通じた異年齢交流会、各教科等における図書館の活用促進等) デジタル社会に対応した読書環境の整備 ・1人1台端末の活用(学校図書館システム等のリンク等) ・電子書籍貸出サービスの導入(図書館の電子書籍貸出サービス等との連携) ・学校図書館図書情報のデータベース化 子どもの視点 ・子どもの意見聴取の機会の確保 ・図書委員等の子どもの学校図書館の運営への主体的な参画 〇学校図書館資料の計画的整備 ・第6次学校図書館図書整備等5か年計画に基づく整備推進 ・「学校図書館ガイドライン」等の見直しの検討 〇司書教諭、学校司書の配置の促進 X民間団体 〇民間団体における読書活動の推進を図るため、以下の取組を促進 ・読書週間等のキャンペーン、読書感想文コンクール、フォーラムの開催 ・専門的知識を有する者の養成(絵本専門士等) ・地域における読み聞かせ等の活動の推進(図書館のボランティア登録制度の充実) 〇民間団体やボランティアの取組の周知・推奨及び子どもゆめ基金による助成等 (68ページ〜69ページ) 文-2 読書バリアフリー法対応メタデータ共有システム(イメージ) ・大学等で製作した視覚障害者等用データのメタデータ(所在情報等)を登録・共有するシステムを国立情報学研究所(NII)において構築。 ・同システムにより、視覚障害者等用データが大学等の間で活用されることを期待。 ※今後、本システムとIRDB(機関リポジトリデータベース)を連携し、国立国会図書館のデータベースにデータを提供予定 (同システムを活用したデータ提供依頼やデータ提供の流れ図) (各図の説明) NII、読書バリアフリー法対応メタデータ共有システム(上段中央に記載) A大学図書館(上段左側に記載) B大学図書館(上段右側に記載) 最寄りの公共図書館等(下段左側に記載) 大学に所属していない視覚障害者等(下段中央左側に記載) B大学所属視覚障害者等(下段中央右側に記載) (各図をつなぐ矢印と説明文) A大学図書館から読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムへ矢印 視覚障害者等用データのメタデータ(所在情報等)を登録 B大学図書館から読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムへ矢印 メタデータ検索 最寄りの公共図書館等から読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムへ矢印 メタデータ検索 大学に所属していない視覚障害者等、B大学所属視覚障害者等から読書バリアフリー法対応メタデータ共有システムへ矢印 メタデータ検索※視覚障害者等用検索機能は準備中 ※次の矢印は本システムの範疇外 B大学図書館からA大学図書館へ矢印 データ提供依頼 A大学図書館からB大学図書館へ矢印 データ提供 B大学所属視覚障害者等からB大学図書館 依頼 B大学図書館からB大学所属視覚障害者等 提供 大学に所属していない視覚障害者等から最寄りの公共図書館等へ矢印 依頼 最寄りの公共図書館等から大学に所属していない視覚障害者へ矢印 提供 最寄りの公共図書館等からA大学図書館へ矢印 依頼 A大学図書館から最寄りの公共図書館等へ矢印 提供 (70ページ) 文-3 図書館における障害者利用の促進 令和5年度予算額1,200万円(前年度予算額1,400万円) 趣旨 令和元年6月に成立した「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)は、障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的としている。また、読書バリアフリー法に基づき、令和2年7月に決定された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(読書バリアフリー基本計画)では、具体的な施策として、視覚障害者等の円滑な利用のための支援の充実、司書、司書教諭・学校司書等の資質向上、組織の枠を超えた取組や関係者間で連携した取組が行える体制構築などが具体的な施策としてあげられている。 このため、先導的な読書バリアフリーに関する研修や関係者が連携した取組を支援するとともに、これらの取組の成果を全国に普及することにより、地域の実情を踏まえた効果的な読書バリアフリーの取組を推進する。 事業内容 1.障害者サービス検討委員会の設置等4,336,000円 視覚障害者等の図書館利用に係るサービスの充実を図るため、有識者、自治体、公立図書館、学校図書館、大学図書館等の関係者で構成される委員会を設置し、振興方策の検討を行うとともに、実態調査や事例の収集等を行う。 2.司書・職員等の支援人材、ピアサポート人材の育成1,872,000円 司書、司書教諭・学校司書、職員、ボランティアが障害者サービスの内容を 理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器(拡大読書器、DAISY再生機など)の使用方法に習熟するための研修等を行う。また、障害当事者でピアサポートができる司書・職員の育成や環境の整備を行う。【2箇所】 3.読書バリアフリーコンソーシアムの設置等6,012,000円 公立図書館、点字図書館、学校図書館、大学図書館等によるコンソーシアムを構築することにより、各館の資源の共有や人材の交流等を図るとともに、図書館を利用する視覚障害者等の増加を目的とした広報の強化を図る。また、これらの成果の普及及び読書バリアフリーの理解促進を目的としたフォーラムを開催する。【2箇所】 【対象者・事業種別等】 1国(本省直轄事業) 2、3国から地方公共団体・民間団体(受託事業) 成果の普及 @研修のプログラム・教材について文部科学省及び関係団体等のホームページで公開する。 A地域において構築されたコンソーシアムの成果をフォーラム等で発信するとともに、ネットワークが恒常的なものとなるよう多様な資金調達の方法等を検討する。 (例:図書館基金の設立、ファンドレイザーの配置、ふるさと納税の活用等) (71ページ) 文-4 令和4年度「読書バリアフリーコンソーシアム」東京大学先端科学技術研究センター 課題 教育分野における図書・教材のバリアフリー 事業のねらい @読書バリアフリーに関する実態調査(アンケート)を行い、今後必要な連携のあり方を検討 ・他の学校図書館や公立図書館等との間で、アクセシブルな図書や資料を円滑に共有できるのかについての知見が必要 A一般への情報公開 ・@で得られた知見を広く啓発するため、公開シンポジウムやウェブサイトで情報公開 実施内容 1.学校図書館がアクセシブルな図書や資料を円滑に共有できるのかについて、全国の特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室・特別支援教室設置校にアンケート調査を実施 2.調査結果を整理し、公開シンポジウムおよびウェブサイトで公開 @関係者会議の開催 ・全4回オンライン開催 ・読書バリアフリーに関する話題提供や、GP分析、必要な連携のあり方について議論 A公開シンポジウムの開催 ・オンライン開催(無料) ・約220名が参加 ・学校図書館ができる製作や図書共有について、NDLやサピエ等も紹介 Bウェブサイトの充実 ・学校図書館ができる、著作権法第37条による複製・翻案・提供に関し、他の学校図書館、NDL、サピエ、地域の図書館との連携について解説図を掲載 Aアンケート結果公開 成果 (1)アンケート調査結果 ・学校図書館への実態調査を通じて、下記課題を確認 @学校司書の配置と勤務日数・時間の少なさ、A特別支援学校の蔵書・貸出・図書購入予算の少なさ、Bバリアフリー図書・資料は、約7割〜9割の学校に蔵書がない、C学校図書館ができるバリアフリー図書・資料の製作やその共有、公衆送信できることについて認知度は約1割 (2)学校図書館ができることを明示 ・学校図書館の関係者が適切にアクセシブルな資料を制作し、共有する方法を知ることができるよう、公開シンポジウムで話題提供およびウェブサイトでも公開 学校図書館や学校図書館間でできること、国立国会図書館やサピエ、近隣の公共図書館を活用して図書・資料や教材等のアクセシビリティ保障を拡大する具体的方法を一般公開 ・障害のある児童生徒・学生の、より広範な図書や資料へのアクセス拡大に期待 (72ページ) 文-5 図書館における障害者サービスの現状 図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)(抄) 第二 公立図書館一市町村立図書館(※都道府県立図書館に準用) 1管理運営(六)施設・設備 2市町村立図書館は、高齢者、障害者、乳幼児とその保護者及び外国人その他特に配慮を必要とする者が図書館施設を円滑に利用できるよう、傾斜路や対面朗読室等の施設の整備、拡大読書器等資料の利用に必要な機器の整備、点字及び外国語による表示の充実等に努めるとともに、児童・青少年の利用を促進するため、専用スペースの確保等に努めるものとする。 3図書館サービス(四)利用者に対応したサービス  市町村立図書館は、多様な利用者及び住民の利用を促進するため、関係機関・団体と連携を図りながら、次に掲げる事項その他のサービスの充実に努めるものとする。 ウ(障害者に対するサービス)点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入りの映像資料等の整備・提供、手話・筆談等によるコミュニケーションの確保、図書館利用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施 <障害者関係設備・資料の保有状況> 【設備】 ○スロープ2,140館(2,082館)○障害者用トイレ3,026館(2,916館)○障害者用駐車場2,688館(2,587館) 【資料】 ○大活字本:大活字本、拡大図書など2,028,480冊(1,812,110冊)2,698館(2,542館) ○点字図書館等・点字図書、さわる図書など408,143冊(390,168冊)1,738館(1,525館) ○録音図書751,437冊(733,868冊)784館(724館) ※令和3年度社会教育統計(括弧内は平成30年度社会教育統計) <障害者等利用者向け取組事例> ○高齢者・障がい者向け本の宅配サービス(大分県・国東市図書館) 来館による図書館資料貸出及び返却が困難な市内在住の利用者(高齢者または障がい者)に対して、図書館が当該利用者に代わって直接集配を実施。 (73ページ) 文-6 安来市立荒島小学校(島根県) 読みに困難を抱える児童に読書機会を 〜国立国会図書館「視覚障害者等用データ送信サービス」導入〜 取組の主体 島根県安来市荒島小学校 取組の経緯 荒島小学校は、全校生徒170名が在籍し1学年1クラスで構成されており通常学級の他に特別支援学級があります。 特別支援学級では以前より、音声と一緒に文字や画像が表示されるマルチメディアDAISY図書「わいわい文庫」を利用していましたが、使用していたCD-ROMはデータ上、目次番号とローマ字表記のタイトルしか記されておらず児童が個人で操作することは極めて難しく、教員が準備をしないと読書ができず、更に限られた書籍データの中から選択することしかできないため、読書の自由度が低いことが課題となっていました。 そのような中で令和3年度に、GIGAスクール構想により児童に1人1台タブレット端末が整備され、校内のWiFi環境が整備されました。同時期に、「わいわい文庫」が国立国会図書館に収蔵されインターネット上から電子書籍の利用が可能になったことから、個人のタブレット端末で読書ができるよう国立国会図書館「視覚障害者等用データ送信サービス」を導入することとなりました。 具体的な取組内容 荒島小学校では、国立国会図書館データベース上から書籍データをダウンロードし児童に読んでもらうためのデータの橋渡し役として「CHATTYBOOKS」を採用しました。 児童は書影ポスターを見て読みたい本を選び「よみたいですカード」を学校図書館に提出します。学校司書は国立国会図書館データベース上から対象の書籍データをダウンロードし「CHATTYBOOKS」にアップロードすると、児童は個人のタブレット端末で書籍データをダウンロードし本を読むことが出来ます。読了後は学校図書館へ「よみましたカード」を提出することで返却となります。 貸出・返却の際、学校図書館では同じ本の蔵書があれば紙書籍で貸出処理を行い、学校図書館に無い場合、市内他校や市立図書館で借りて貸出処理を行います。 成果・今後の展望 児童が読みたい本を選びカードに書いて学校図書館に提出し、アップロードされた書籍データを個人端末でダウンロードして読書し、読了後は学校図書館へカードを提出するだけという、至ってシンプルな運用のため、特別支援学級の低学年児童もすぐに一人で手続きができるようになりました。 公共図書館でも本サービスが導入され活用が広がっていることから、児童が卒業した後も公共図書館で同様に利用することができます。読みに困難を抱える児童も学校図書館を通じて人生における読書との付き合い方を学んでほしいと考えています。本サービスを活用した取組はそのきっかけのひとつになると感じおり、多くの学校に広がることを期待しています。 POINT ●読了後に実際の本を手に取って紹介 返却の際は学校司書が児童に対し、読んだ本の紙書籍を手に取って見せています。実際の本に触れることで読書への関心の高まりや達成感をより感じる機会の創出につながると感じています。 ●自由に読書活動ができる環境の提供 従来は、児童一人ひとりへ読書環境を提供するため教員らがサポートできる時間・人数は限られていましたが、本サービスを導入しハード面・ソフト面の大きな課題が解決されたことで、多くの児童が自由にたくさんの本を読める環境を提供できています。 (74ページ) 文-7 「令和4年度読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修」委託事業 大阪教育大学 課題 〇読書バリアフリー法の公布・施行 読みに困難のある人々に、アクセシブルな電子書籍等が提供されることが基本理念 〇通常の小中学校には、読み書きに著しい困難を示す児童生徒:3.5% →合理的配慮を提供する必要がある。 〇マルチメディアDAISY図書 →アクセシブルな電子書籍等の一つ 読書バリアフリー法の理念に則り、読みに困難のある児童生徒に対して、地域図書館や学校図書館がマルチメディアDAISY図書を提供することが必要 事業のねらい 目的1 地域の図書館において、@図書館員等への研修の実施、A図書館における「音声教材啓発コーナー」の設置による地域への音声教材の啓発に取組み、地域の図書館員及び地域住民へ音声教材を普及させること 目的2 小中学校の学校図書館において、学校司書が学校に在籍している読みに困難のある児童生徒に対してマルチメディアDAISY図書を製作・提供するモデルを構築すること 主な実施内容 1.大阪市立中央図書館の図書館員等や小中学校学校司書等への研修 テーマ:読みに困難のある子どもに対する支援と図書館の役割−その背景と音声教材について− 2.小中学校の学校司書に対する音声教材の製作支援 (実施内容の説明) 1.図書館員等や学校司書への研修の実施 読みに困難のある子どもに関わる関連法律とともに、知的障害、外国籍の子どもに対する音声教材を用いた支援事例を紹介。 2-1.小学校の学校司書に対する製作支援 小学校3校の学校司書に対して、マルチメディアDAISY等の音声図書の製作支援を実施。 さらに、読みに困難のある児童が活用しやすい図書館になるよう指導助言(説明の左側に「図書室に入る時、出る時は必ず手を洗いましょう!」という文字とQRコードが書かれたポスターの写真)。 図書室のポスターにQRコード→GIGA端末で読み取り 2-2.中学校の学校司書及び生徒に対する製作支援 学校司書1名と中学校生徒18 名が児童書「おしりたんてい」(ポプラ社) のマルチメディアDAISY化に取組んだ。 生徒はテキスト入力グループ、画像編集グループ、音声入力グループに分かれ、それぞれ製作支援した。(説明の左側に生徒たちがマルチメディアDAISYの製作に取り組む姿の写真) 成果 1.図書館員等への研修の実施 計106名の参加があった。研修後にアンケートを実施し、分析した(5件法)。令和3年度から継続して研修を受講した図書館員等の平均点の上昇が見られた。 よって、研修の継続は読みに困難のある子どもの支援に関係する法律、支援方法等の理解の深まりにつながったと言える。 2-1.小学校に対する製作支援の成果 学校司書が「みえるとかみえないとか」(アリス館)、「字のないはがき」(小学館)「ひらがなにっき」(解放出版社)などをマルチメディアDAISY化した。 製作支援を繰り返すことで、学校司書一人で製作できるようになった。 2-2.中学校に対する製作支援の成果 中学校生徒が製作した「おしりたんてい」(ポプラ社)を小学校4年生の図書の時間でお披露目した。(説明左側に、その様子を映した写真) 図書の時間終了後に参加した児童65名にアンケートを実施したところ、全て肯定的な意見であった。 まとめ 〇継続して研修を行うことで、読みに困難のある子どもの支援等の理解につながった。 〇製作したマルチメディアDAISY図書を今後図書室で読めるような体制整備の実施。 (75ページ) 令和4年度「読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修」公益財団法人文字活字文化推進機構 課題 ○各図書館での環境整備に向けて、より具体的な取り組みを行えるよう、好事例を示し、理解を広げる ○図書館関係者同士の活発な交流の場が、コロナ禍によって減少 事業のねらい 各図書館での環境整備に向けて、より具体的な取り組みが行なえるよう、以下の点に特化し、参加者の意識の向上を図る⇒具体的取組みに繋げる ・各図書館における施設面とサービス面の好事例を講義によって示し、現状と課題を認識するとともに、課題の解決について考える ・グループワークにより参加者同士の情報交換を行い、多角的な視点を得る ※会場の一角には、アクセシブルな書籍やマルチメディアDAISYを展示。参加者らには、自由に手に取って閲覧いただいた(展示コーナーの写真) 実施内容 @読書バリアフリー概論 AWS「図書館のソフト面のバリアフリーについて」 BWS「図書館のハード面のバリアフリーについて」 質疑応答・まとめ ※事前に当機構の読書バリアフリー関連動画の視聴と、自館の課題点の調査レポート提出を課した 有限会社読書工房代表 成松一郎 様(総合司会及びコーディネーター)の写真 @読書バリアフリー概論文部科学省 総合教育政策局地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室 専門官 工藤松太郎 様(写真) 読書バリアフリー法の基本計画の概要をご説明いただき、本法律の要点、指針をお伝えいただいた。 A「図書館のソフト面のバリアフリーについて」 一般社団法人スローコミュニケーション副理事長羽山慎亮 様(写真) あらゆる人にわかりやすい言葉遣い・コミュニケーションの要点を、「利用案内づくり」を通して学ぶWSを実施。 A「図書館のハード面のバリアフリーについて」 鹿島建設株式会社一級建築博士(人間科学) 原利明 様 ※所属先の規程により、外出制限があり、オンライン出演(その様子の写真) 視覚障害当事者の立場から、使いやすい施設の工夫点など、好事例を紹介。各班で図書館施設の課題等を考えるWSを実施。 成果 ○好事例を示し、課題や目標を明確化するとともに、理解を促進した 特に、ソフト面のバリアフリーワークショップでは、各館でもすぐに取り入れられる「分かりやすい利用案内」を作成するための具体的なノウハウを伝えた。 「利用案内情報」を分かりやすい表現に書き換えるワークショップ。各班で話し合い、分かりやすさを検討した。 ○参加者同士の活発な意見交換が果たせた 担当・地域の異なる参加者同士が、各視点を踏まえたグループワークを行うことにより、図書館全体や自館の課題の認識に繋がった。また、意欲向上も図ることができた。 ワークショップ「図書館内のバリアフリー的な課題と解決案」を書き記した模造紙(写真)。各班での活発に議論された。 ※成果については、「参加者アンケート」(別添資料)に基づきまとめた (76ページ) 省庁等 文化庁 所属 著作権課 役職・氏名 課長 吉田光成 基本計画 @V.5(第13条関係) 外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備 これまでの取組 【中心的な役割を果たす機関に係る周知等】 外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進するため、国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行った。 (参考) 現在、文化庁のホームページにおいて、国立国会図書館、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会の連絡先や関連ホームページ等が記載されている。また、国立国会図書館のホームページでは、@国内在住の個人及び図書館等向けに、外国で製作された視覚障害者等用データの国内(日本)への取寄せ方法、A外国在住の個人及び図書館等向けに、同館が所蔵する視覚障害者等用データの外国への提供について、詳細に案内が記載されている。 ・文化庁ホームページ:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/marrakesh/ ・国立国会図書館ホームページ:http://www.ndl.go.jp/jp/support/index.html 成果・達成状況 「文化庁ホームページにおいて周知を行うとともに、著作権セミナー・講習会(5回)の受講者(4,547名)に対しても周知を行った。 今後の取組・目標 外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進するため、国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行うとともに、その運用状況も踏まえつつ、必要に応じて更なる環境整備を行う。 また、文化庁ホームページに掲載している情報を必要に応じて更新するとともに、引き続き、著作権に関する講習会等、機会をとらえて周知を行う。 (参考) 現在、文化庁のホームページにおいて、国立国会図書館、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会の連絡先や関連ホームページ等が記載されている。また、国立国会図書館のホームページでは、@国内在住の個人及び図書館等向けに、外国で製作された視覚障害者等用データの国内(日本)への取寄せ方法、A外国在住の個人及び図書館等向けに、同館が所蔵する視覚障害者等用データの外国への提供について、詳細に案内が記載されている。 ・文化庁ホームページ:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/marrakesh/ ・国立国会図書館ホームページ:http://www.ndl.go.jp/jp/support/index.html (77ページ) 省庁等 総務省 所属 情報流通行政局情報流通振興課情報活用支援室 役職・氏名 課長補佐 輿石美和 基本計画 @V.7(第16条関係)外国からのアクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等 これまでの取組 【障害者の利便の増進に資する研究開発への助成】 ICT分野の情報バリアフリー促進支援事業【別添資料1】を通じて、アクセシブルな電子書籍等・端末機器等を含む障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスの技術開発の促進や、技術的な課題の解決に資する調査研究等を実施。 成果・達成状況 令和4年度のICT分野の情報バリアフリー促進支援事業を通じて、障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスの研究開発等を実施(助成件数6件)。 今後の取組・目標 障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスの研究開発の成果の社会実装による情報バリアフリー環境の整備(先進的なICT機器の社会実装、サービス高度化等)の継続。 資料番号:総-1 (78ページ) 総-1 通信・放送分野における情報バリアフリー促進支援事業 令和5年度予算額130百万円 ◆デジタル・ディバイドを解消し、障害者や高齢者を含めた、誰もがICTによる恩恵を享受できる情報バリアフリー環境を実現するため、以下の助成を実施。 @デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発 本省 高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスの充実に向けた、新たなICT機器・サービスの研究開発を行う者に対し、経費の2分の1(最大3000万円)を上限として助成金を交付。 A情報バリアフリー通信・放送役務提供・開発推進助成金 NICT 国立国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)を通じ、身体障害者の利便の増進に資する通信・放送役務の提供を行う者に対し、経費の2分の1を上限として助成金を交付。 (参考)助成事例 駅構内を想定した視覚障害者の歩行誘導サービスの研究開発 地下鉄の駅構内に設置したQRコードからの情報とメガネ型ウェアラブルデバイスから得た情報をスマートフォンで統合し、クラウドサービスを利用しながら、道案内、駅構内情報、危険回避、さらには広告の提示などを実現 モバイル型情報保障サービス(e-ミミ) 聴覚障害者の学びを支援するため、高等学校・大学及び講習会・セミナーへの、遠隔地からのパソコン文字通訳(要約筆記)による文字情報の配信提供。 携帯電話を活用した聴覚障害者向けモバイル型情報保障サービス(e-ミミ)の仕組み @スマートフォンを通して送られた会場内の音声を文字へ変換。 Aインターネットを使って、会場内の利用者が持っているスマートフォンやタブレット端末に字幕として表示 (79ページ) 通信・放送分野における情報バリアフリー促進支援事業 (令和4年度採択案件) デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発 対象事業者 1株式会社想隆社 対象事業名 視覚障害者・ディスレクシアのための音声を使った読書方法の研究開発 対象事業者 2イースト株式会社 対象事業名 機械学習を活用した非アクセシブルなPDF文書の構造化とテキスト抽出に関する研究開発 対象事業者 3BIPROGY株式会社 対象事業名 AIを用いた手話動画認識による手話学習支援アプリの研究開発 情報バリアフリー通信・放送役務提供・開発推進助成金 対象事業者 1株式会社アイセック・ジャパン 対象事業名 ローカルTV局向けライブ字幕サービス 対象事業者 2株式会社コンピュータサイエンス研究所 対象事業名 視覚障害者向け歩行支援サービスの開発 対象事業者 3特定非営利活動法人メディア・アクセス・サポートセンター 対象事業名 映画・映像・舞台芸術等に対応したクラウド型情報保障サービスの提供 (80ページ) 省庁等 国立国会図書館 所属 総務部 役職・氏名 企画課長小澤弘太 基本計画 @V.1(第9条関係)(1)アクセシブルな書籍等の充実 これまでの取組 【国立国会図書館での製作及び他機関製作分の収集】 ・他機関では製作が困難な学術文献について、視覚障害者等向け録音図書やテキストデータを製作 ・公共図書館、大学図書館等のデータ提供館から視覚障害者等用データを収集 ・デジタル化資料のOCRテキスト化事業の実施 ・オープンソースで公開可能なOCRの研究開発も併せて実施 成果・達成状況 ・令和4年度について、視覚障害者等向け録音図書(DAISY仕様)を11タイトル(362時間分)製作した。また、50タイトルの校正済テキストデータと85タイトルの未校正テキストデータを製作した。 ・公共図書館、大学図書館等のデータ提供館125館から、計3,572件の視覚障害者等用データを収集した。 ・令和5年3月に試験公開した国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)β版において、視覚障害者等用データ送信サービスに登録した視覚障害者等個人や機関を対象に、全文検索用に作成した全文テキストデータ約247万点の提供を開始した【別添資料1】。 ・令和4年度末時点で、当館が製作したデータ、データ提供館等から収集したデータ、全文テキストデータをあわせて、視覚障害者等用データ送信サービスを通じて約250万件のデータを提供している。内訳は以下のとおり。  当館製作の視覚障害者等用データ2,742  当館が収集した視覚障害者等用データ35,799点  デジタル化資料の全文テキストデータ2,465,935点  計2,504,476点 ・令和3年度に開発したOCR処理プログラム(NDLOCR)の改善を実施し、視覚障害者等用データとして適するよう読み順の整序等を行った。 今後の取組・目標 ・他機関では製作が困難な学術文献について、視覚障害者等向け録音図書(DAISY仕様)及びテキストデータの製作を継続する。 ・全文テキストデータについては、デジタル化の進捗にあわせて、順次OCR処理によるテキスト化を行い、出版者等による所定の除外確認手続を経て、視覚障害者等用データ送信サービスで引き続き提供する予定である。 <令和5年度の目標> ・視覚障害者等向け録音図書(DAISY仕様)を230時間分、校正済テキストデータを50タイトル製作(予算は55百万円) ・公共図書館等のデータ提供館から3,000件の視覚障害者等用データを収集 ・順次、OCR処理によるテキストデータを作成する。また、除外確認手続きを引き続き行う。 ・全文テキストデータの利用方法等の周知のための説明会の開催 ・視覚障害者等用データに適するよう読み上げ順等の性能改善を行ったNDLOCRを、オープンソースで公開 資料番号 国図-1 基本計画 AV.1(第9条関係)(1)アクセシブルな書籍等の充実 これまでの取組 【図書館等におけるテキストデータ製作支援の実験の取組】 国立国会図書館の共同校正システムを用いて、日本点字図書館等の参加機関がテキストDAISY等を製作(アクセシブルな電子書籍製作実験プロジェクト) 成果・達成状況 令和4年度について、国立国会図書館の共同校正システムを用いて、日本点字図書館等の参加機関が411点のテキストDAISY等を製作した。 今後の取組・目標 引き続き、参加機関によるテキストデータ製作を支援するとともに、公共図書館等におけるテキストデータ製作支援の枠組みを検討する。 <令和5年度の目標> 公共図書館におけるテキストデータ製作に関するヒアリングを実施 BV.2(第10条関係)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化充実 これまでの取組 【各インターネットサービスの周知】 国立国会図書館が提供するインターネットサービス、サピエ図書館等について、研修等の機会を通じて周知 成果・達成状況 ・視覚障害者等が全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できる新たなシステムとして開発中の国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)のβ版を令和5年3月に試験公開した【別添資料2】。 ・公共図書館、大学図書館等で障害者サービスを担当する司書・職員を対象とした障害者サービス担当職員向け講座を、オンライン形式で実施した(日本図書館協会と共催)。本講座は講義及び体験講座からなり、国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービス及び国立国会図書館サーチ障害者向け資料検索、サピエ図書館について周知を図った。参加者は講義266名、体験講座57名。 ・国際子ども図書館で令和3年度に作成した、障害を持つ子どもたちへの読書支援をテーマとした動画コンテンツ(視覚障害者等用データ送信サービスやサピエ図書館の紹介を含む)について積極的な広報を行い、図書館員等を含め広く視聴を呼び掛けた。 今後の取組・目標 ・みなサーチにおいて、引き続き視覚障害者等が全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できるようにする。 ・視覚障害者等用データ送信サービスへの参加を促進するため、図書館関係者を対象とした説明会の開催を検討する。 ・公共図書館、大学図書館等で障害者サービスを担当する司書・職員を対象とした障害者サービス担当職員向け講座を引き続き実施予定。 <令和5年度の目標> ・令和6年1月にみなサーチの正式版を公開予定。 ・みなサーチの活用方法を周知するための説明会の開催 ・障害者サービス担当職員向け講座を昨年と同規模の定員(講義300名、体験講座60名)で実施 資料番号 国図-2 (81ページ) CV.4(第12条関係)アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等 これまでの取組 【民間電子書籍サービスについて、図書館における適切な基準の整理】 ・令和3年度は、「図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会」を立ち上げ、検討会を4回開催した。そして、「図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会 令和3年度報告書」をとりまとめ、令和4年5月に、国立国会図書館のホームページに公開した。 ・令和4年度は、引き続き検討会を4回開催した。 ・本検討会のメンバーは、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会」に委員を出している団体のうち、サービス事業者側、ユーザ側の各関係団体の代表及び有識者からなる。 成果・達成状況 令和4年度に検討会で「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン1.0」(案)を作成した【別添資料3】。「ガイドライン1.0」の概要は以下のとおり。 -目的:商用の電子書籍を図書館を通じて提供するサービス(以下「電子図書館」という。)を視覚障害者等が利用するにあたって必要なアクセシビリティに係る要件を整理すること。 -システム上の対象範囲:ウェブサイト、ビューア。 -対象とするアクセシビリティ機能:音声読み上げを中心に、それを可能にすることで付随的に可能となることが想定される詳細読み、ナビゲーション機能、文字拡大、点字ディスプレイ表示。 -ガイドラインの活用場面@:公立図書館等においては、電子図書館調達時の仕様の検討における活用、すでに導入している電子図書館のアクセシビリティ対応状況の確認等での活用等。 -ガイドラインの活用場面A:電子図書館事業者においては、電子図書館の開発・改修時の対応項目や優先順位の検討における活用、アクセシビリティ対応状況を確認するためのチェックリストとしての活用等。 -アクセシビリティ要件:電子図書館を閲覧する導線に沿って、利用手順ごとに、実現することが望ましい要件を示した。各アクセシビリティ要件に1から3の「ステップ」を付与することで重みづけを行った。 今後の取組・目標 以下のように想定している。 <令和5年度の目標> ・ガイドライン1.0の公開と普及:視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第9回)で検討会の活動について報告し、ガイドライン1.0についても報告する。報告後、NDLのHPに公開する。また、ガイドラインの利用を促すために、図書館関係者及び出版関係者の集うイベント等に参加して、ガイドラインの説明を行う。 ・ガイドラインの更新に向けた調査:中長期的目標としてガイドライン1.0に盛り込むことを見送ったアクセシビリティ機能について要件に関する調査を行う。 ・検討会の開催:令和5年度は、検討会を2〜3回程度、開催することを予定している。内容は、ガイドラインの普及、ガイドラインの更新に向けた調査の進捗の共有と意見交換等を想定している。 <令和6年度の目標> ・令和5年度に実施する調査の結果等に基づいて、ガイドラインを更新する。 資料番号 国図-3 DV.5(第13条関係)外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備 これまでの取組 【マラケシュ条約に基づく視覚障害者等用データの国際交換サービスの実施】 外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手及び国内で製作されたアクセシブルな電子書籍等の外国への提供を促進 成果・達成状況 令和4年度について、国内の図書館から9件の依頼を受けて、外国で製作された点字データ、音声DAISY等20タイトルを収集し、視覚障害者等用データ送信サービスを通じて提供した。また、海外1機関の依頼を受けて、国内で製作された視覚障害者等用データ18タイトルを提供した。 今後の取組・目標 引き続き、マラケシュ条約に基づく視覚障害者等用データの国際交換サービスを着実に実施する。 <令和5年度の目標> 研修等を通じた、図書館等に対する国際交換サービスの周知 EV.8(第17条関係)(1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 これまでの取組 【司書等を対象とした研修の実施】 国立国会図書館が提供するインターネットサービス、サピエ図書館等について、研修等の機会を通じて周知 成果・達成状況 各種図書館で障害者サービスを担当する司書・職員を対象とした講座・講演を実施・提供した。 ※詳細はBを参照。 今後の取組・目標 公共図書館、大学図書館等で障害者サービスを担当する司書・職員を対象とした障害者サービス担当職員向け講座を引き続き実施予定。 <令和5年度の目標> 障害者サービス担当職員向け講座を昨年と同規模の定員(講義300名、体験講座60名)で実施 (82ページ) 国図-1 国立国会図書館デジタル化資料の全文テキストデータの視覚障害者等への提供 概要 国立国会図書館(以下「当館」という。)では、読書バリアフリー法に掲げるアクセシブルな電子書籍等の量的拡充に資するため、以下のとおり、当館のデジタル化資料から作成する全文テキストデータ(以下「全文テキストデータ」という。)について、国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)β版において、令和5年3月から視覚障害者等に提供を開始した。 事業内容 1.全文テキストデータの概要 当館が「国立国会図書館デジタルコレクション」を通じて提供するデジタル化資料(画像データ)からOCR(光学的文字認識)処理を行い、作成したテキストデータ。テキストデータの作成対象となったデジタル化資料は、図書、雑誌、博士論文等約247万冊分(令和2年12月時点で「国立国会図書館デジタルコレクション」上で画像データの提供を行っていたもの)。下記はそのうちの代表的な資料群。 図書:1968年までに受け入れた図書のほか、震災・災害関係資料の一部(1968年以降に受け入れたものを含む)約97万点 雑誌:明治期以降に刊行された雑誌(刊行後5年以上経過したもの)約1万タイトル(約133万点) 2.全文テキストデータの視覚障害者等への提供方法 (1) 提供プラットフォーム 視覚障害者等用データ送信サービス(※1図を参照)のデータとして、みなサーチβ版において提供。 同サービスは、著作権法第37条に基づき、当館と図書館等が視覚障害者等のために製作した電子データ(DAISYデータ、点字データ及びテキストデータ)を、インターネットを通じて送信するサービスである(平成26年1月に開始)。 ※1図 国立国会図書館、公共図書館、大学図書館、学校図書館、ボランティア団体などが作成した全文テキストデータを国立国会図書館がデータ収集し、視覚障害者等利用者に対して、直接又は承認を受けた図書館等を経由して、データ提供する図を掲載している。 (2) 提供方法 OCR処理を行ったものを、未校正のまま提供する。 全文テキストデータの冒頭には、ユーザー名やダウンロード日のほか、同データが著作権法第37条第3項の規定に基づき、視覚障害者等に限定して提供するために製作されたものであり視覚障害者等以外への提供はできないこと及び校正されていないテキストデータである旨の文言が挿入されている。 (3) サービスの利用対象者 視覚障害者等に該当する者として当館が確認した上で同サービスの利用者登録をした個人 視覚障害者等へのサービス提供体制が整備されていることを書面により当館が確認し、サービスを利用することを承認した図書館等 (4) 提供対象からの除外 著作権法第37条第3項ただし書に基づき、下記の除外基準・確認手続により提供対象から除外する。 <除外基準> スクリーンリーダーによる読み上げ(Text to Speech(TTS))に対応している等、視覚障害者等が利用する支援技術を通じて利用できる方式で当該資料又は同内容の著作物の電子書籍が、電子書籍市場、出版者のホームページ等で流通している場合等に除外する(オーディオブックについても暫定的に除外)。 <ただし書き該当データの確認に係る手続> 当館による入手可能性調査(日本出版インフラセンター出版情報登録センター(JPRO)が公開しているデータベースを利用)、出版者による事前確認手続等を経て提供する。提供開始後も、出版者から該当データに関する申出を受け付ける。 *事前・事後確認手続に用いる「提供(候補)資料リスト」を当館ホームページで公開。 (83〜84ページ) 国図-2 国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)β版の試験公開 概要 現行の「国立国会図書館サーチ障害者向け資料検索」の後継として、全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できるシステムとして開発中の国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)のβ版を令和5年3月に試験公開した(正式版の公開は令和6年1月の予定)。 事業内容 1.アクセシビリティ・ユーザビリティを高めたシステム  様々な支援技術を使用する視覚障害者等にとって、よりアクセシブルな書籍等を見つけやすく、使いやすいユーザインターフェイスを備えた統合検索サービスの開発。 2.検索対象の拡大  現行システムにおいても検索対象であるサピエ図書館等に加えて、新たに国立国会図書館デジタル化資料の全文テキストデータ、国立国会図書館歴史的音源、日本出版インフラセンター出版情報登録センター(JPRO)が公開しているデータベース収録の読み上げ対応の電子書籍・オーディオブック、青空文庫等を検索対象に追加。正式版では、国立情報学研究所読書バリアフリー資料メタデータ共有システム等とも連携する予定。 3.デジタル化資料へのアクセスの拡大  国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索に相当する機能を持つ専用画面をみなサーチ上に設けた。  全文検索でヒットした箇所は検索結果一覧に表示され、登録している視覚障害者等であれば、全文テキストデータをダウンロードして利用することが可能。 (85ページ) 国図-3 電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン1.0(案) 令和5年7月国立国会図書館 図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会 (86ページ) 目次 まえがき 1.本ガイドラインの目的・位置づけ・活用方法 1.1.目的 1.2.法制度上の位置づけ 1.3.活用方法 1.4.本ガイドラインで用いられる用語 2.適用対象 2.1.電子図書館における範囲 2.2.ルートにおける範囲 2.3.電子図書館のシステムにおける範囲 3.参考規格など 3.1.JISX8341-3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」 3.2.Web Content Accessibility Guidelines 3.3.User Agent Accessibility Guidelines 4.対象とする電子図書館の利用者及び支援技術・アクセシビリティ機能の想定 4.1.本ガイドラインが前提とする電子図書館利用者及びそのスキル 4.2.対象とする支援技術・アクセシビリティ機能 5.運用体制及び運用手順 5.1.取組の全体像 5.2.公立図書館等における取組 5.2.1.運用体制 5.2.2.運用手順 5.3.電子図書館事業者における取組 5.3.1.運用体制 5.3.2.運用手順 6.対応方法 6.1.ウェブサイト 6.1.1.ウェブサイト全体に求められるアクセシビリティ 6.1.2.ログイン 6.1.3.書籍検索 6.1.4.検索結果一覧 6.1.5.書誌詳細情報の確認・貸出手続き・予約手続き 6.1.6.アカウントページ(貸出し状況の確認など) 6.2.ビューア 6.2.1.書籍の閲覧 6.2.2.書籍のナビゲーション 6.2.3.読書支援 別紙1図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会関係者名簿 別紙2ステップごとのアクセシビリティ要件 別紙3チェックリストの書式 附属資料1.利用ストーリー 附属資料2.電子図書館利用手順ごとの想定される課題と対応例 附属資料3.視覚障害者等による電子図書館の利用を促進するために必要なこと 附属資料4.音声読み上げの設定項目及びパターン 附属資料5.音声読み上げ以外のアクセシビリティ機能に係る取組の事例 (87〜88ページ) まえがき 令和元年6月、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)が施行された。令和2年7月には、同法第7条の規定に基づき、文部科学省及び厚生労働省において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)が策定された。基本計画では「音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における適切な基準の整理等を行い、図書館への導入を支援する。」という施策を講ずることが求められている(「V. 施策の方向性」>「4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等」>「(4)その他」)。関係省庁との協議の結果、本施策は、国立国会図書館が中心となって取り組むこととなった。 本ガイドラインは、この施策を実施するものとして、国立国会図書館が事務局となり、「図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会」(別紙1 参照)が作成したものである。 1. 本ガイドラインの目的・位置づけ・活用方法 1.1. 目的 本ガイドラインは、商用の電子書籍を図書館を通じて提供するサービス(以下、「電子図書館」という。)を視覚障害者等(注1)が利用するにあたって必要なアクセシビリティに係る要件を整理することを目的としている。その際、スクリーンリーダーを用いた操作を可能とし、また提供される電子書籍の音声読み上げを可能とするためのアクセシビリティに係る要件を中心に位置づけている。 注1)「視覚障害者等」とは、視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍(雑誌、新聞その他の刊行物を含む。)について、視覚による表現の認識が困難な者をいう(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律第2条第1項)。 1.2. 法制度上の位置づけ 令和元年6月に読書バリアフリー法が施行され、令和2年7月には基本計画が策定された。基本計画はV.4.(4)において、音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における適切な基準の整理等を行い、図書館への導入を支援することを求めている。本ガイドラインは当該基準の整理のために作成された。 1.3. 活用方法 障害者基本法(昭和45年5月21日法律第84号)第11条に基づいて策定される障害者基本計画(第5次)には、「各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格、日本産業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する」とある。また、障害者基本法の第11条第2項及び第3項によって、都道府県及び市町村は、障害者基本計画を基本にそれぞれ障害者計画を策定することが義務づけられている。このように調達を通じて、情報アクセシビリティの観点に配慮した情報通信機器などが各府省、都道府県及び市町村に導入されることとなっている。 上記を踏まえ、本ガイドラインは、公立図書館、大学図書館、学校図書館(以下「公立図書館等」という。)及び電子図書館事業者に以下のように活用されることを想定している。 ●公立図書館等 ○民間の電子図書館を調達・導入するための調達仕様を検討する際に利用する。 ○導入している民間の電子図書館のアクセシビリティ対応状況を確認するために利用する。 〇電子図書館のアクセシビリティについての理解を深めるために利用する。 ●電子図書館事業者 ○自社が提供する電子図書館の開発や改修を行う際に、対応項目や優先順位を検討するために利用する。 ○地方公共団体などにおける電子図書館の調達においてアクセシビリティに関して求められる要件を自社のサービスが満たしているかを確認するために利用する。 ○図書館からのアクセシビリティ対応状況確認に対し、チェックリストとして利用する。 1.4. 本ガイドラインで用いられる用語 用語 支援技術 内容 パソコンなどをそのままでは利用できない利用者のために、必要となる機能を提供するための機器やソフトウェアなど。 例えばスクリーンリーダー、ジョイスティックやスイッチによる入力機器などが挙げられる。 用語 スクリーンリーダー 内容 パソコンなどの画面を音声で読み上げ、キーボードで操作できるようにするソフトウェアのこと。支援技術の一つ。視覚障害を持つ人は、視覚によってパソコンの画面を認識することができないため、スクリーンリーダーが読み上げる音声をもとに画面を理解する。また、マウスでの操作も難しいため、音声を聞いてキーボード入力することで、パソコンの操作を行う。 パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットもスクリーンリーダーでの操作が可能。 ただし、固定レイアウト型電子書籍や画像化されたテキストなどで代替テキストが付与されていない場合は、スクリーンリーダーで読むことはできない。 用語 音声読み上げ(TTS) 内容 ウェブサイトに表示されたテキストやその他の情報、電子書籍の内容などを、音声合成技術を用いて音声に変換して読み上げることをいう。 あらかじめパソコンなどのOS に用意されている音声読み上げ機能や、スクリーンリーダーを利用し、音声による読み上げを行う。 用語 詳細読み機能 内容 パソコンなどの画面に表示された文字を音声読み上げする際、同音異義語や発音が同じ又は似ている文字を判別するため、音読みと訓読みを組み合わせるなどの方法によって1文字ずつ確認する機能。詳細読みの辞書には数種あり、いずれもJIS基本漢字の第2水準まで対応している。 用語 ビューア 内容 電子書籍の読書に用いるソフトウェアのこと。 専用のアプリの他、ブラウザ内で拡張機能として提供される場合もある。 用語 電子書籍コンテンツ 内容 デジタル化され、ビューアで読むことが可能な書籍をいう。 DRM によって暗号化され、利用権限を持った利用者以外が利用できないようになっていることが多い。 用語 CAPTCHA入力 内容 ゆがんだ文字画像やノイズが乗った文字画像など、人間には理解できるがプログラムでは解析しにくい情報を表示し、その文字列を正しく入力させることにより、プログラムによる不正アクセスなどを防止する入力手続きのこと。 2. 適用対象 本ガイドラインが対象とするサービス、ルート、システムの範囲は以下のとおりとする。なお、本ガイドラインの対象範囲が、本ガイドラインの各項目に沿った実装を進めることでアクセシブルになったとしても、そのことのみによって視覚障害者等が電子図書館を利用するための環境が整ったとは言えないことへの留意が必要である(本ガイドラインの対象範囲ではないが、取組が必要と考えられる諸要素については附属資料3参照)。 2.1. 電子図書館における範囲 図書館が民間事業者と契約し、主に商用の電子書籍を利用者に提供するサービスを対象とする。 2.2. ルートにおける範囲 アクセシブルな電子書籍が視覚障害者等の手元に届くまでには、大まかに5つのルートがある。 @紙の本を購入した視覚障害者等が、出版社に連絡してテキストデータを提供してもらう。 A出版社から提供された書籍のデータを基に、図書館やボランティアなどによりDAISY 図書・点字・テキストデータなどの特定電子書籍(注2)が製作され、視覚障害者等に届く(国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスやサピエ図書館を経由する場合もある)。 B図書館に所蔵されている紙の本や視覚障害者等が購入した紙の本から、図書館やボランティアなどによってDAISY 図書・点字・テキストデータなどの特定電子書籍が製作され、視覚障害者等に届く(国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスやサピエ図書館を経由する場合もある)。 C書籍が、出版者、電子書籍制作会社、電子取次及び電子図書館事業者を経由して、図書館で導入されている電子図書館経由で視覚障害者等に届く。 D書籍が、出版者、電子書籍制作会社、電子取次及び電子書籍販売事業者を経由して、消費者向け電子書籍サービスとして視覚障害者等に届く。 このうち、本ガイドラインの対象範囲はCの一部、電子図書館を通じて書籍が視覚障害者等の手元に届くまでとする。 (以上の内容を図式したものが掲載されている。) 注2)「特定電子書籍」とは点字図書館等によって著作権法第37条第2項又は第3項本文の規定により製作される電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるものをいう(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律第2条第3項及び同法第10条第1項第3号)。 2.3. 電子図書館のシステムにおける範囲 電子図書館はウェブサイト、ビューア、電子書籍コンテンツからなる。それらは、電子図書館事業者のサーバ上に配置されており、利用者または図書館の端末からのリクエストに応じて各端末上で表示される。この際、電子書籍コンテンツは、ビューアを介して表示される。電子図書館がアクセシブルなものとなるためには、ウェブサイト、ビューア、電子書籍コンテンツという電子図書館の構成要素のそれぞれがアクセシブルである必要がある。 本ガイドラインは、このうちウェブサイトとビューアを主な対象とする。 なお、以下に電子図書館におけるウェブサイト、ビューア、電子書籍コンテンツと利用者が利用する端末の関係を図に示されている。 (89〜92ページ) 3. 参考規格など ウェブサイトやビューアのアクセシビリティに関しては以下のような国際・国内規格やガイドラインなどがある。 本ガイドライン第6 章で示すアクセシビリティ要件については、これらの規格やガイドラインなどの関連する項目と紐づけを行う。 3.1.JISX8341-3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」 ・本規格は、高齢者及び障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく利用することができるように、ウェブサイトが確保すべきアクセシビリティの基準について規定するものである。 ・本規格が適用されるウェブサイトとは、支援技術を含むユーザエージェントによって利用者に提供されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指す。例えば、インターネット又はイントラネットを介して提供されるウェブサイト、ウェブアプリケーション、ウェブシステムなどのコンテンツ、及びCD-ROMなどの記録媒体を介して配布される電子文書が挙げられる。 ・各ガイドラインには、検証可能な達成基準が設けられており、A(最低レベル)、AA 及びAAA(最高レベル)の三つの適合レベルが定義されている。 ・本規格を基に、総務省では「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を策定した。ホームページなどを提供する公共機関に対し、ウェブアクセシビリティ方針を策定・公開し、遅くとも2017年度末までに適合レベルAAに準拠することを求めている。 3.2. Web Content Accessibility Guidelines ・Web Content Accessibility Guidelines(以下「WCAG」という。)は、World Wide Web Consortium(以下「W3C」という。)に設置されたウェブコンテンツアクセシビリティガイドラインワーキンググループから出された、ウェブコンテンツのアクセシビリティ実現のために求められる達成基準を示した勧告であり、ウェブコンテンツをよりアクセシブルにするための広範囲に及ぶ推奨事項を網羅している。 ・WCAG の達成基準を満たすための、ウェブコンテンツ制作者及び評価者向けの具体的な達成方法集が関連資料として公開されている。本ガイドラインではこの達成方法集も参照する。 ・WCAG2.0 は2008 年に勧告され、2012 年に国際規格ISO/IEC 40500:2012 として承認された。その後、2016年にWCAG2.1が勧告され、2022年9月にWCAG2.2が勧告候補となっているが、前項であげた国内規格JISX8341-3:2016が国際規格ISO/IEC40500:2012の一致規格として策定されていることから、本ガイドラインはWCAG2.0を参照することとする。JISX8341-3:2016とWCAG2.0が一致規格であるため、電子図書館がWCAG2.0に準拠している場合は、同時にJISX8341-3:2016の要件を満たしているといえる。3.3.User Agent Accessibility Guidelines ・User Agent Accessibility Guidelines(以下「UAAG」という。)は、W3C でアクセシビリティを担当するWeb Accessibility Initiative が作成したユーザエージェント向けのアクセシビリティガイドライン。 ・ユーザエージェントには、ブラウザ、ブラウザ拡張機能、メディアプレーヤー、ビューア及びウェブコンテンツをレンダリングするその他のアプリケーションが含まれている。テキストのカスタマイズ、設定、ユーザインターフェイスのアクセシビリティなど、一部のアクセシビリティのニーズは、ウェブコンテンツよりもブラウザでより適切に満たされる。 4.対象とする電子図書館の利用者及び支援技術・アクセシビリティ機能の想定 4.1.本ガイドラインが前提とする電子図書館利用者及びそのスキル 本ガイドラインが想定している電子図書館の利用者は、視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害(以下、「視覚障害等」という。)により、視覚による表現の認識が困難な者とする。聴覚障害者、知的障害者、高齢者、外国人など、様々な状況により読書や図書館の利用に困難を伴う者へも配慮する(障害種別ごとの電子図書館を利用する際のストーリーの例示は、「附属資料1」参照))。 電子図書館はパソコンなどでの利用を想定したサービスであるため、利用者が支援技術などによって端末を操作し、内容を把握する能力を有していることを前提とする。 4.2. 対象とする支援技術・アクセシビリティ機能 パソコンを利用する際のユーザインターフェイスとして、スクリーンリーダーを使用する場合はキーボードを中心に想定する。また、スイッチやジョイスティック、ソフトウェアキーボードなど、障害の内容に応じた多様なユーザインターフェイスを想定する。 電子図書館のアクセシビリティを実現する上で想定する支援技術として、利用者自身がインストール又は接続するサードパーティ製の支援技術であるスクリーンリーダーや点字ディスプレイのほか、文字拡大などの端末のOS や標準的なブラウザが提供する支援技術も対象とする。 アクセシビリティ機能としては、これらの支援技術を用いることによって電子図書館で利用が可能になる音声読み上げ、点字ディスプレイでの表示、文字の拡大などを対象にする(本ガイドラインで取り上げていないが、有用と思われるアクセシビリティ機能の例については附属資料5参照)。 5. 運用体制及び運用手順 5.1. 取組の全体像 電子図書館のアクセシビリティを維持していくためには、公立図書館等及び電子図書館事業者がそのための体制を整備し、取組を継続していくことが望ましい。以下に公立図書館等及び電子図書館事業者の取組の内容を記す。 (93〜94ページ) 5.2. 公立図書館等における取組 5.2.1.運用体制 5.2.1.1公立図書館等の長の役割 公立図書館等の長は、電子図書館のアクセシビリティに対する取組の重要性と必要性を理解した上で、取組体制の構築及び取組の推進にリーダーシップを発揮する。 5.2.1.2.組織内での役割分担 電子図書館の管理運営担当者と障害者サービスの担当者(特別支援学校並びに小学校、中学校及び高等学校の特別支援学級等の教員等並びに大学における障害学生支援室の職員を含む)は、導入している電子図書館のアクセシビリティ対応状況を把握するとともに、利用者からの意見を集約し、関連する部署や担当者と共有する。 調達担当者と障害者サービスの担当者は連携して、電子図書館の選定、導入において本ガイドラインに沿った調達を行い、電子図書館の利用促進に取り組む。 5.2.2. 運用手順 5.2.2.1. 電子図書館アクセシビリティに対する取組 公立図書館等は、電子図書館のアクセシビリティに関する利用者からの要望を集約するとともにアクセシビリティに関する問題の有無をチェックし、電子図書館の導入及び導入後の運用を通じて電子図書館事業者に働きかけてアクセシビリティ向上に努める。 5.2.2.2. 取組の実行 5.2.2.2.1. 日々の運用における取組 定期的に電子図書館のアクセシビリティに関する問題の有無をチェックする(この際に活用可能なチェックリストの書式は別紙3参照)。また、図書館などのホームページなどを活用して視覚障害者等からの意見収集に努め、集約する。 5.2.2.2.2. 一定期間ごとに計画し実行する取組 視覚障害等がある利用者からの意見を集約し、一定期間ごとに電子図書館事業者と共有する。 5.2.2.2.3. 外部発注などにおける取組 電子図書館の調達を実施する場合は、外部発注の準備・実施、プロジェクトの実施、検収までの一連の作業において、電子図書館のアクセシビリティが確保されるよう留意する。 例えば調達仕様書を作成する際に、本ガイドラインの第6章に記述されているアクセシビリティ要件を参考にして、導入する電子図書館に必要と考える要件を記述することが考えられる。その際、単に「『電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン』に準拠していること」といった形で概括的に記載するのではなく、例えば以下の記載例のように具体的な準拠方法を示すことが適切である。 例1:「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン」に記載された要件のうち、ステップ1 の要件を満たしていること。 例2:「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン」に記載された要件のうち、ウェブサイトの「6.1.1.3.1. 代替テキストの付与」「6.1.1.3.6. キーボードのみでの操作」・・・・・・を満たすこと。 5.3.電子図書館事業者における取組 5.3.1.運用体制 5.3.1.1.電子図書館事業者に求められること 電子図書館事業者は、電子図書館のアクセシビリティに対する取組の重要性と必要性を理解した上で、取組体制の構築及び取組の推進を行う。 5.3.1.2.組織内での役割分担 電子図書館事業者の製品統括部署または担当者は、自身が提供する電子図書館のアクセシビリティ対応の取組を統括する。 また、電子図書館の開発にあたって、アクセシビリティに関する担当者を配置し、本ガイドライン「6.対応方法」に沿った開発を行う。ウェブやアクセシビリティについての専門的知見を持つ外部機関と連携することも考えられる。 5.3.2. 運用手順 5.3.2.1. 電子図書館アクセシビリティ方針の策定 自社が提供する電子図書館につき、下記「5.3.2.2.取組の実行」により、アクセシビリティ向上に向けた取組を検討する。検討結果に基づき電子図書館アクセシビリティ方針を策定する。 5.3.2.2. 取組の実行 5.3.2.2.1. 日々の運用における取組 自社が電子図書館を提供している公立図書館等から意見が寄せられた場合は、アクセシビリティ向上に向けた対応方法を検討する。 5.3.2.2.2. 一定期間ごとに計画し実行する取組 電子図書館の更新や機能追加などの時期を踏まえ、「5.3.1.運用体制」に沿った体制の整備、「6.対応方法」の達成状況を検証する(この際活用可能なチェックリストの書式は別紙3参照)。検証結果は、事業者のウェブサイトや電子図書館のウェブページに掲載することが考えられる。またそれと関連して、利用者向けに、提供しているアクセシビリティ機能の紹介コンテンツを掲載することも考えられる。 6.対応方法 電子図書館ウェブサイト及びビューアに求められるアクセシビリティ要件を以下に示す。「6.1.ウェブサイト」では、まずウェブサイト全体のアクセシビリティ要件を示し、その後、求める書籍を選択するまでの利用手順ごとの具体的な要件を示す。「6.2.ビューア」では書籍の閲覧及び読書を支援する機能の要件などを示す(電子図書館の利用の各手順で想定される課題例及び対応例は、附属資料2に表形式でもまとめている)。本ガイドラインで取り上げていない機能や、今後新たに開発される機能についても本ガイドラインを参考にアクセシビリティに配慮すること。各要件には、JISX8341-3:2016などを参考に、1から3のステップを付与している。各ステップの位置づけは以下の通り。 ステップ1:電子図書館をアクセシブルなものとするために基本的に対応が求められる要件 ステップ2:電子図書館をアクセシブルなものとするために備えることが望ましい要件 ステップ3:アクセシビリティ対応の優先度は高くはないが、実装することでより高度なアクセシビリティを達成することが可能な要件あるいは特定のニーズに最適化するための要件 以下で示す各アクセシビリティ要件には、関連するJIS X8341-3:2016 の項目を記載している。また要件を達成する手段として参考となるWCAG 2.0達成方法集の項目がある場合には、その項目を記載している。 なお、電子図書館によっては、以下に示す利用手順とは異なった方法で利用されるものもある。その場合は、当該利用手順に対するアクセシビリティ要件は適用外となる。 6.1. ウェブサイト 6.1.1. ウェブサイト全体に求められるアクセシビリティ 本節では、電子図書館ウェブサイト全体を通じて求められるアクセシビリティ要件について記述する。同一のJISX8341-3:2016の項目などに対応するアクセシビリティ要件が「6.1.2.ログイン」以降の節でも示される場合、それぞれの機能の実現に際して具体的な対応方法を示す。 6.1.1.1. 概要 電子図書館ウェブサイトは、視覚障害者等が円滑に利用できるよう、音声読み上げとキーボード操作のみで利用することを前提に提供することが求められる。 6.1.1.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●画面に表示されている内容を理解したり、操作したりするために必要な画面要素が音声で読み上げられず、内容理解や操作が円滑に行えない。 ●弱視の人が画面を拡大表示して文字を読もうとした際に、フォントサイズが拡大されず読み取れない。 ●画面上のボタンやチェックボックス、ページを移動するためのリンクなどにキーボード操作で移動できず、必要な操作が行えない。 ●利用案内の動画に音声もテキストもないために利用方法が分からない。 ●適切なページタイトルが付与されておらず、どのページを開いているのかがすぐに分からない。 (95〜97ページ) 6.1.1.3. アクセシビリティ要件 ウェブサイトにおいて実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。これらの要件を満たす、テキストを中心とするウェブサイトを別途用意することも考えられる。 6.1.1.3.1. 代替テキストの付与【ステップ1】 内容 ・利用者が理解する必要がある全ての非テキストコンテンツに代替テキストを付与すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.1.1 非テキストコンテンツ(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G82 非テキストコンテンツの目的を特定するテキストによる代替を提供する」「G94 非テキストコンテンツに対して、それと同じ目的を果たし、かつ同じ情報を示す、簡潔なテキストによる代替を提供する」「G95 非テキストコンテンツの簡単な説明を提供する、簡潔なテキストによる代替を提供する」「H2同じリソースに対して隣接する画像とテキストリンクを結合する」 6.1.1.3.2. 時間依存メディアに対する代替コンテンツ【ステップ1】 内容 ・利用案内などの時間依存メディア(動画、音声、スライドショーなど)に代替コンテンツを付与すること。また音声が自動再生され、3 秒以上続く場合は、音声を一時停止または停止、あるいは音量レベル調整が行えるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.2.1 音声のみ及び映像のみ (収録済み)(レベルA)」「1.2.3音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G158 音声のみの時間依存メディアに対する代替コンテンツを提供する」「G159 映像のみの時間依存メディアに対する代替コンテンツを提供する」 6.1.1.3.3. ウェブページの構造化 【ステップ1】 内容 ・ウェブページに見出し、段落、リスト、テーブルなどのタグを指定することなどにより、適切な構造化を行うこと。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.1 情報及び関係性(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G115構造をマークアップするために、セマンティックな要素を使用する」「G140異なる提示を可能にするために、情報と構造を表現から分離する」「H42 見出しを特定するために、h1要素〜h6要素を使用する」「H48 リスト又はリンクのグループに、ol要素、ul要素、dl要素を用いる」「H49強調又は特別なテキストをマークアップするために、セマンティックなマークアップを使用する」「H51表形式の情報を提示するために、テーブルのマークアップを使用する」 6.1.1.3.4.コンテンツの適切な順序での提供【ステップ1】 内容 ・コンテンツを適切な順序で並べることにより、支援技術を用いて正しい順序で読み上げられるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.2意味のある順序(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G57コンテンツを意味のある順序で並べる」 6.1.1.3.5色や感覚的な特徴の使用方法への配慮【ステップ1】 内容 ・色の違いや、形、大きさ、視覚的な位置、方向、音など構成要素がもつ感覚的な特徴によって何らかの情報(例:フォーカスしているリンクのテキスト色を変更する、書籍のジャンルを色分けによって伝える、必須の入力フォームに色付けする、複数ページにわたる検索結果一覧のうち、現在表示しているページ番号を色や囲み線で示すなど)を伝える場合、色や感覚的な特徴以外の手段(例えば色や形状に依存しない説明文を付与するなど)でもその情報を提供すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.3 感覚的な特徴(レベルA)」「1.4.1色の使用(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G14色の違いで伝えている情報をテキストでも入手可能にする」「G96理解させる必要のあるアイテムを感覚的にだけ伝えるのではなく、テキストによる識別情報もあわせて提供する」「G205色のついたフォームコントロールのラベルに対して、テキストによる手がかりを含める」 6.1.1.3.6.キーボードのみでの操作【ステップ1】 内容 ・すべての機能をキーボードで操作できるようにすること。 ・ボタン、チェックボックス、リンクなどの画面要素は、キーボード操作によってフォーカスが移動し、リターンキーなどの押下でマウスクリックと同等の動作を行えるようにすること。 ・入力手段として入力支援デバイスを用いる場合、その入力を妨げないこと。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G90キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.1.1.3.7.キーボードトラップの防止【ステップ1】 内容 ・キーボード操作でウェブサイト上のコンポーネント(例:ブラウザ内で呼び出されるビューアなど)に移動した際に、キーボード操作のみでそのコンポーネントから他のコンポーネントに移動できるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.2キーボードトラップなし(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G21利用者がコンテンツ内に閉じ込められないことを確認する」 6.1.1.3.8.時間制限の調整【ステップ1】 内容 ・入力時間などに時間制限を設ける場合、利用者がその制限を解除、調整、延長のいずれかを行うことで、時間制限を回避できるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.2.1タイミング調整可能(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G198 利用者が制限時間を解除できる手段を提供する」 6.1.1.3.9.繰り返すコンテンツのスキップ【ステップ1】 内容 ・複数のウェブページ上で繰り返されているコンテンツのブロックをスキップできるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.1ブロックスキップ(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G1メインコンテンツエリアへ直接移動するリンクを各ページの先頭に追加する」「G123繰り返しているコンテンツのブロックの先頭に、そのブロックの末尾へのリンクを追加する」「G124ページの先頭に、コンテンツの各エリアへのリンクを追加する」「H69コンテンツの各セクションの開始位置に見出し要素を提供する」 6.1.1.3.10. ページタイトルの付与 【ステップ1】 内容 ・各ウェブページにそのページの内容や目的を説明したタイトルをつけること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.2 ページタイトル(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G88 ウェブページに説明的なタイトルを提供する」 6.1.1.3.11. フォーカス可能な要素への理解しやすい順序での移動 【ステップ1】 内容 ・入力フォームやチェックボックスなど、フォーカス可能なコンポーネントは、コンテンツの意味や操作性を損なわない順序でフォーカスされるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.3 フォーカス順序(レベルA)」 ・WCAG 2.0達成方法集「G59 コンテンツ内の順番及び関係に従った順序で、インタラクティブな要素を配置する」「H4 リンク、フォームコントロール、及びオブジェクトを通して、論理的なタブ順序を作成する」 6.1.1.3.12. リンクの目的や移動先の明示 【ステップ1】 内容 ・リンクの目的やリンク先の内容が推測できるように、リンクテキストや本文の記述を行うこと。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.4 リンクの目的(コンテキスト内)(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G53 リンクテキストとそれが含まれている文中のテキストとを組み合わせて、リンクの目的を特定する」「G91 リンクの目的を説明したリンクテキストを提供する」「H30 a 要素のリンクの目的を説明するリンクテキストを提供する」 6.1.1.3.13. 入力時に表示内容が変化する場合の通知 【ステップ1】 内容 ・利用者が入力フォームへの入力やコントロールの選択などの操作を行うことによって画面の表示内容を変更する場合、変更は入力や選択後に改めて表示内容の変更の実行を指示することで引き起こすようにすること。自動的に変更する場合は、入力や選択などによって画面内容が変更されることを利用者が把握可能なように、そのことを案内する情報を掲載すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.2.2. 入力時(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G13 状況の変化を引き起こすフォームコントロールへの変更が行われる前に、何が起こるのかを説明する」「G80 状況の変化を開始する送信ボタンを提供する」 (98〜101ページ) 6.1.1.3.14. エラーの特定 【ステップ1】 内容 ・入力エラーが自動的に検出された場合は、エラーとなっている箇所を特定し、そのエラー内容をテキストで表示すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.1 エラーの特定(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G83 入力が完了していない必須項目を特定するために、テキストの説明を提供する」「G84 利用者が許可された値のリストにない情報を与えた場合に、テキストの説明を提供する」「G85 利用者の入力が要求されたフォーマット又は値の範囲外の場合に、テキストの説明を提供する」 6.1.1.3.15. 入力を要求する場合のラベルや説明文の付与 【ステップ1】 内容 ・入力フォームやチェックボックスなどのコンポーネントが利用者の入力を要求する場合は、ラベル又は説明文を付与すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.1.1.3.16. 文字サイズの変更 【ステップ2】 内容 ・テキストの文字サイズをブラウザの拡大機能を用いて最大200%まで変更可能にすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.4.4 テキストのサイズ変更(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G142 ズーム機能をサポートする一般に入手可能なユーザエージェントのあるウェブコンテンツ技術を使用する」 6.1.1.3.17. 同一機能に対する一貫性 【ステップ2】 内容 ・同じ機能を有するコンポーネントに対して、同一の機能であることが明確となるよう一貫したラベルや代替テキストを使用すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.2.4 一貫した識別性(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G197 同じ機能を有するコンテンツに対して、一貫したラベル、名前 (name) 及びテキストによる代替を使用する」 6.1.1.3.18. 内容が理解できる見出しやラベルの付与 【ステップ2】 内容 ・見出しやラベルは、コンポーネントの内容や目的を明確に示すものになっていること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.6 見出し及びラベル(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G130 説明的な見出しをつける」「G131 説明的なラベルを提供する」「H42 見出しを特定するために、h1 要素〜 h6 要素を使用する」 6.1.1.3.19. ナビゲーション方法の統一 【ステップ2】 内容 ・ウェブサイトが提供するナビゲーションのメカニズムは、どのウェブページにおいても原則として同じ順序で出現するようにすること。ただし、利用者が変更した場合は除く。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.2.3 一貫したナビゲーション(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G61 毎回同じ相対的順序で繰り返されるコンポーネントを提示する」 6.1.1.3.20. セクション見出しの付与 【ステップ3】 内容 ・コンテンツの各セクションの開始位置に見出し要素を付けること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.10 セクション見出し(レベルAAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G141 見出しを用いてウェブページを構造化する」「H69 コンテンツの各セクションの開始位置に見出し要素を提供する」 6.1.2. ログイン 6.1.2.1. 概要 ID やパスワードなどを用いて、電子図書館を利用するためのログインを行う機能。 ログイン画面は、主に以下の要素から成る。 ●ID 入力欄 ・ログイン用ID を入力する領域。 ●パスワード入力欄 ・利用者のパスワードを入力する領域。 ●ログインボタン ・ログインを実行するためのボタン。 ※個人単位のID 認証を行わず、例えば特定のIP アドレスからであれば利用者を特定せずに利用できるサービスについては、ログイン機能は対象外となる。 ※ログイン以外の利用場面(例えば電子書籍コンテンツのダウンロード)で利用者認証を行う場合も、本アクセシビリティ要件を参考とすること。 6.1.2.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●キーボード操作でログインボタンに移動できず、またリターンキーなどを押してもログインできない。 ●ログインID とパスワードの入力欄が見つけにくい、あるいは見つけることができないため、ID とパスワードを入力できない。 ●入力したパスワードを表示するようにしても入力したパスワードが音声で読み上げられないため、パスワードが正確であるかを確認できない。 6.1.2.3. アクセシビリティ要件 ログイン機能において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.1.2.3.1. ID 入力欄・パスワード入力欄・ログインボタンへのラベルの付与 【ステップ1】 内容 ・ID 入力欄、パスワード入力欄及びログインボタンに適切なラベルを付与し、スクリーンリーダーで認識できるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.1.2.3.2. ログインボタンへの移動 【ステップ1】 内容 ・ログインボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によってログインできること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202 すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.1.2.3.3. ログインエラー時のエラー内容の表示 【ステップ1】 内容 ・ログインエラーとなった場合に、ログインできなかったこと及び想定される原因を音声読み上げ可能な形式で画面上に表示すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.1 エラーの特定(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G83 入力が完了していない必須項目を特定するために、テキストの説明を提供する」「G84 利用者が許可された値のリストにない情報を与えた場合に、テキストの説明を提供する」「G85 利用者の入力が要求されたフォーマット又は値の範囲外の場合に、テキストの説明を提供する」 6.1.2.3.4. 画像を用いたログイン認証を行う場合の代替手段の提供 【ステップ1】 内容 ・ログイン時に画像選択やCAPTCHA 入力、パズル認証など、画像を用いたログイン認証を行う場合、それを経由せずにログインできる代替手段を提供すること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.1.1 非テキストコンテンツ(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G82 非テキストコンテンツの目的を特定するテキストによる代替を提供する」「G94 非テキストコンテンツに対して、それと同じ目的を果たし、かつ同じ情報を示す、簡潔なテキストによる代替を提供する」「G95 非テキストコンテンツの簡単な説明を提供する、簡潔なテキストによる代替を提供する」「H2 同じリソースに対して隣接する画像とテキストリンクを結合する」 6.1.2.3.5. 支援技術によるパスワード入力、確認、変更への配慮 【ステップ1】 内容 ・ワンタイムパスワードの通知を支援技術で把握できるようにすること。 ・入力欄に入力したパスワードを表示させる機能がある場合、支援技術を用いて読み上げられること。 ・パスワードの変更をするとき、支援技術の利用を阻害しないこと。 (102〜105ページ) 6.1.2.3.6. リターンキーによるログインの実行 【ステップ3】 内容 ・ID 及びパスワードを入力後、リターンキーの押下によって、ログインボタンに移動せずそのままログインできるようにすること。 6.1.2.3.7. ブラウザなどによるパスワード保存を抑止しないこと 【ステップ3】 内容 ・ID 入力欄やパスワード入力欄の自動補完を無効にせず、ブラウザがID やパスワードの入力支援を行うことを妨げないようにすること。 6.1.3. 書籍検索 6.1.3.1. 概要 読みたい書籍などを検索する機能。主に以下の要素からなる。 ●検索条件入力欄 ・書籍検索時に入力した検索条件を表示する領域。 ・検索条件を追加して絞り込み検索を行ったり、検索条件を変更して再検索したりすることもできる。 ●検索実行ボタン ・入力した検索条件に基づき、書籍の検索を行うボタン。 6.1.3.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●検索条件入力欄が見つけにくい、あるいは見つけることができないため、検索キーワードの入力が困難。 ●キーボード操作で検索実行ボタンに移動できず、またリターンキーなどを押しても検索実行できない。 ●音声読み上げ可能な書籍に絞り込むことができないため、読みたい書籍を選択することが難しい。 6.1.3.3. アクセシビリティ要件 書籍検索機能において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.1.3.3.1. 検索条件入力欄・検索実行ボタンへのラベルの付与 【ステップ1】 内容 ・検索条件入力欄及び検索実行ボタンに適切なラベルを付与し、スクリーンリーダーで検索条件入力欄あるいは検索実行ボタンであることが分かるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.1.3.3.2. 検索実行ボタンへの移動 【ステップ1】 内容 ・検索実行ボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によって検索を実行できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.1.3.3.3. 音声読み上げ可能な書籍などに限定した検索条件の設定 【ステップ2】 内容 ・検索時に、アクセシビリティに関するメタデータを活用し音声読み上げ機能などに対応した電子書籍などに限定して検索を行えるようにすること。 6.1.3.3.4. リターンキーによる検索の実行 【ステップ3】 内容 ・検索条件欄に検索したいキーワードを入力後、検索実行ボタンに移動せずに、リターンキーの押下によって書籍検索を実行できること。 6.1.4. 検索結果一覧 6.1.4.1.概要 電子図書館利用者が読みたい書籍などを検索した結果を一覧表示する機能。主に以下の要素からなる。 ●検索条件欄 ・書籍検索時に入力した検索条件を表示する領域。 ・検索条件を追加して絞り込み検索を行ったり、検索条件を変更して再検索したりすることもできる。 ●検索結果一覧表示欄 ・検索条件に該当する書籍などを一覧表示する領域。 ・書籍のタイトル、著者名などの書籍概略情報が表示される。 ・検索結果が複数件の場合は、同一のページに複数件がリスト形式やタイル形式などで一覧表示される。 ・一覧表示された書籍概略情報には、当該書籍の詳細情報を表示するためのリンクやボタンが示される。 ・検索結果の表示順を利用者が切り替えることもできる。 ・検索結果と合わせ、該当した書籍などの件数が表示される。 ●検索結果ページ移動のためのリンクやボタン ・検索条件に合致する書籍などの数が多く複数ページにわたって表示する場合に、検索結果ページを移動するためのリンクやボタン。 ●検索結果の絞り込みの条件(ファセット) ・検索条件を指定して絞り込み検索を行うための条件が表示される。 6.1.4.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●検索結果一覧に表紙画像があった場合に、書籍内容と関係のない内容(画像ファイル名など)をスクリーンリーダーが読み上げてしまい、混乱する。 ●検索結果一覧を確認しようとする際に、ページのヘッダー領域など、検索結果一覧を読み上げるまでに結果と無関係な内容を長時間(あるいは繰り返し)読み上げる。 ●検索条件に合致する書籍などが多く検索結果が複数ページにわたる場合に、現在表示されているページから別のページに容易に移動することができない。 ●複数の検索結果を飛ばしながら確認することが容易でなく、検索結果から探している書籍などにたどり着くのに時間がかかる。 ●検索結果がどのような順序で並んでいるかが分からず、飛ばしながら確認する際に予測が難しい。 ●前後や任意の場所の検索結果に移動することが困難。 ●検索結果を音声読み上げしているのか、それ以外の情報を読み上げているのか分からなくなってしまう。 6.1.4.3. アクセシビリティ要件 検索結果一覧において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.1.4.3.1. 書籍の表紙画像などへの代替テキストの付与 【ステップ1】 内容 ・検索結果一覧として書籍の表紙画像、動画キャプチャ画像などの非テキストコンテンツを表示する場合、当該画像の内容が分かる代替テキストを付与すること。 ・ただし書籍の表紙画像を表示し、その近隣に書籍タイトルを表示する場合は、書籍のサンプル画像に対して書籍名を代替テキストとして付与しなくてもよい(例:スクリーンリーダーが読み上げないように「“”」といった形で代替テキストを付与するなど)。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.1.1 非テキストコンテンツ(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G82 非テキストコンテンツの目的を特定するテキストによる代替を提供する」「G94 非テキストコンテンツに対して、それと同じ目的を果たし、かつ同じ情報を示す、簡潔なテキストによる代替を提供する」「G95 非テキストコンテンツの簡単な説明を提供する、簡潔なテキストによる代替を提供する」「H2 同じリソースに対して隣接する画像とテキストリンクを結合する」 6.1.4.3.2. 書籍情報の構造化 【ステップ1】 内容 ・検索結果一覧として表示される書籍タイトル、著者名などの情報は構造化されるとともに、適切なラベルが付与されることにより、プログラムによる解釈が可能な形であること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.1 情報及び関係性(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G115 構造をマークアップするために、セマンティックな要素を使用する」「G140 異なる提示を可能にするために、情報と構造を表現から分離する」「H42 見出しを特定するために、h1 要素〜 h6 要素を使用する」「H48 リスト又はリンクのグループに、ol 要素、ul 要素、dl 要素を用いる」「H49 強調又は特別なテキストをマークアップするために、セマンティックなマークアップを使用する」「H51 表形式の情報を提示するために、テーブルのマークアップを使用する」 6.1.4.3.3. 検索結果の表示順に関する情報 【ステップ1】 内容 ・一覧表示される検索結果(条件に該当した書籍の書誌情報)がどのような順序で表示されているかが分かるようになっていること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.2 意味のある順序(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G57 コンテンツを意味のある順序で並べる」 6.1.4.3.4. キーボードのみでの操作 【ステップ1】 内容 ・検索結果をスクリーンリーダーの音声読み上げで利用する場合などにおいて、キーボード操作のみによって次や前のタイトルに移動し、希望のタイトルを選択できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.1.4.3.5. 検索結果一覧箇所への速やかな到達 【ステップ1】 内容 ・ブロックスキップ、検索結果一覧箇所へのリンク、Tab キーによる移動順序の指定などの様々な工夫により、キーボード操作により検索結果一覧箇所に速やかに到達できるようにすること(目安として、キーの押下回数が概ね10 回以下が望ましい)。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.1 ブロックスキップ(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G1 メインコンテンツエリアへ直接移動するリンクを各ページの先頭に追加する」「G123 繰り返しているコンテンツのブロックの先頭に、そのブロックの末尾へのリンクを追加する」「G124 ページの先頭に、コンテンツの各エリアへのリンクを追加する」「H69 コンテンツの各セクションの開始位置に見出し要素を提供する」 6.1.4.3.6. 検索結果1 件ごとの移動 【ステップ2】 内容 ・検索結果(条件に該当した書籍の書誌情報)1 件ごとに見出し(h1 要素〜h6 要素)またはラベルが付与され、キーボード操作による見出しジャンプなどで移動できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.6 見出し及びラベル(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G130 説明的な見出しをつける」「G131 説明的なラベルを提供する」「H42 見出しを特定するために、h1 要素〜 h6 要素を使用する」 6.1.4.3.7.音声読み上げ可能であるかなどの情報の検索結果への表示 【ステップ2】 内容 ・検索結果一覧に表示する情報として、音声読み上げ機能などに対応しているか否かなどのアクセシビリティに関するメタデータに基づく情報を提供すること。 6.1.4.3.8. 検索結果一覧を示す見出しの設置 【ステップ3】 内容 ・検索結果一覧をスクリーンリーダーによる音声読み上げで利用する際に、検索結果一覧の開始部分に明確に認識できる文言の記載をし、かつ当該記載に見出しを付けること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.4.10 セクション見出し(レベルAAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G141 見出しを用いてウェブページを構造化する」「H69 コンテンツの各セクションの開始位置に見出し要素を提供する」 6.1.4.3.9. 複数の検索結果ページの移動 【ステップ3】 内容 ・検索条件に該当する書籍が多く、検索結果が複数ページにわたって表示される場合に、前後の検索結果ページや任意の検索結果ページを容易に指定し、移動できること。 6.1.5. 書誌詳細情報の確認・貸出手続き・予約手続き 6.1.5.1. 概要 検索結果一覧などから選択した書籍の詳細情報を表示し、貸出手続きや予約手続きを行う機能。主に以下の要素からなる。 ●書誌詳細情報欄 ・選択した書籍の詳細情報を表示する領域。 ・書籍タイトル、出版社名、シリーズ名、著者名、内容紹介、出版年月といった書誌情報や書籍表紙画像などが表示される。 ●貸出ボタン/予約ボタン ・選択した書籍の貸し出しを行うボタン。最大貸し出し可能冊数を超えている場合など、当該書籍を貸し出すことができない場合は予約ボタンが表示される。 ※書籍の閲覧に際して貸出手続きを要しないサービスについても、本アクセシビリティ要件を参考とすること。 6.1.5.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●表示されている書籍タイトルや出版社名、著者名などにラベルがなく、読み上げられている言葉が何を指しているか分からない。 ●キーボード操作で貸出ボタンに移動できない。 ●貸出ボタンにフォーカスを移動したことが分からず、貸出手続きを実行できない。 6.1.5.3. アクセシビリティ要件 書誌詳細情報の確認・貸出手続き・予約手続き機能において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 (106〜111ページ) 6.1.5.3.1. 書籍情報の構造化 【ステップ1】 内容 ・書誌詳細情報として表示される書籍タイトル、著者名などの情報は構造化されるとともに、適切なラベルが付与されることにより、プログラムによる解釈が可能な形であること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.1 情報及び関係性(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G115 構造をマークアップするために、セマンティックな要素を使用する」「G140 異なる提示を可能にするために、情報と構造を表現から分離する」「H42 見出しを特定するために、h1 要素〜 h6 要素を使用する」「H48 リスト又はリンクのグループに、ol 要素、ul 要素、dl 要素を用いる」「H49 強調又は特別なテキストをマークアップするために、セマンティックなマークアップを使用する」「H51 表形式の情報を提示するために、テーブルのマークアップを使用する」 6.1.5.3.2. 貸出ボタンへのラベル付与 【ステップ1】 内容 ・貸出ボタンに適切なラベルを付与し、スクリーンリーダーで貸出ボタンであることが分かるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.1.5.3.3. 貸出ボタンへの移動 【ステップ1】 内容 ・貸出ボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によって貸出手続きを実行できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202 すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使 用する」 6.1.6. アカウントページ(貸出し状況の確認など) 6.1.6.1. 概要 利用者が借りている書籍、予約している書籍を確認し、書籍を指定してビューアを立ち上げて読書したり、予約している書籍の貸出手続きを行ったり、読書を終了した書籍の返却手続きを行ったりする機能。主に以下の要素からなる。 ●貸出中書籍情報欄 ・現在借りている書籍の情報を一覧表示する領域。 ・書籍タイトルなどの基本的な書誌情報や書籍表紙画像などが表示される。 ●読書ボタン ・ビューアを立ち上げ、選択した書籍の読書を行うボタン。貸出中書籍一覧の1 冊ごとに読書ボタンが配置され、読みたい書籍を指定してビューアを立ち上げることが可能。 ●返却ボタン ・選択した書籍の返却手続きを行うボタン。貸出中書籍一覧の1 冊ごとに返却ボタンが配置され、返却したい書籍を1 冊単位で指定することが可能。 ●予約中書籍情報欄 ・現在予約している書籍の情報を一覧表示する領域。 ・書籍タイトルなどの基本的な書誌情報や書籍表紙画像などが表示される。 ●貸出ボタン ・選択した書籍の貸出を行うボタン。予約中書籍一覧の1 冊ごとに貸出ボタンが配置され、借りたい書籍を1 冊単位で指定することが可能。 ※利用者を特定せずに電子図書館を利用させるサービスについては、アカウントページは対象外となる。 6.1.6.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●表示されている書籍タイトルや出版社名、著者名などにラベルがなく、読み上げられている言葉が何を指しているか分からない。 ●キーボード操作で読書ボタンや返却ボタン、貸出ボタンに移動できない。 ●読書ボタンや返却ボタン、貸出ボタンにフォーカスを移動したことが分からず、読書や返却、貸出手続きを実行できない。 6.1.6.3. アクセシビリティ要件 アカウントページにおいて実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.1.6.3.1. 書籍情報の構造化 【ステップ1】 内容 ・一覧表示される書籍タイトル、著者名などの情報は構造化されるとともに、適切なラベルが付与されることにより、プログラムによる解釈が可能な形であること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.3.1 情報及び関係性(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G115 構造をマークアップするために、セマンティックな要素を使用する」「G140 異なる提示を可能にするために、情報と構造を表現から分離する」「H42 見出しを特定するために、h1 要素〜 h6 要素を使用する」「H48 リスト又はリンクのグループに、ol 要素、ul 要素、dl 要素を用いる」「H49 強調又は特別なテキストをマークアップするために、セマンティックなマークアップを使用する」「H51 表形式の情報を提示するために、テーブルのマークアップを使用する」 6.1.6.3.2. 読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンへのラベル付与 【ステップ1】 内容 ・読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンに適切なラベルを付与し、スクリーンリーダーでボタンの種類や機能が分かるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.1.6.3.3. 読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンへの移動 【ステップ1】 内容 ・読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によって読書開始や返却手続き、貸出手続きを実行できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.2. ビューア 6.2.1. 書籍の閲覧 6.2.1.1. 概要 電子図書館ビューアは、電子図書館で借りた電子書籍の読書に用いるソフトウェアであり、ブラウザ内で利用されるものと、独立したアプリケーションソフトとして提供されるものがある。利用者が借りた電子書籍を開き、読書するための書籍閲覧画面は、主に以下の要素からなる。 ●書籍紙面 ・借りた電子書籍の誌面を表示する。 ・読書している電子書籍がリフロー形式で、かつ音声読み上げに対応している場合は、表示されている紙面のテキストを音声で読み上げることも可能。 ●移動ボタン ・前後のページの移動、章単位の移動、あるいは一定の間隔での前後の移動を行うためのボタン。 6.2.1.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●ビューアが音声読み上げに対応しておらず、読み上げできない。 ●音声読み上げの設定を変更することができず、快適な声質・速度で読み上げることができない。 ●音声読み上げの開始や停止が行えない。 ●キーボードで操作できない機能があり、読書に必要な操作が行えない。 ●ビューアで読書をしているときにキーボード操作でウェブサイトに戻ることができない。 ●書籍全体のどのあたりを読んでいるのかが分からない。 ●同音異義語、発音が同じ、あるいは似ている文字の確認ができない。 ●書籍の文章の一部を論文作成のために引用したいが、支援技術を用いてコピーできない。 6.2.1.3. アクセシビリティ要件 電子図書館ビューアが書籍の閲覧において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.2.1.3.1. 書籍の音声読み上げ 【ステップ1】 内容 ・音声読み上げ可能な書籍を音声で読書できること。 ・ビューア自身が音声読み上げ機能を提供する場合、ボリュームの変更、速度、声質の変更が行えるようにすること(音声読み上げの設定項目については附属資料4 参照)。 参考規格 ・UAAG2.0「4.1.1 プラットフォームのアクセシビリティサービスのサポート(レベルA)」「4.1.3 同等のアクセシブルな代替を提供する(レベルA)」 ・UAAG2.0「1.6.1 発話速度、音量及び音声(レベルA)」 6.2.1.3.2. 音声読み上げの停止、再開 【ステップ1】 内容 ・書籍のページ送りやスクロールを自動で行う場合、利用者がそれらを停止及び再開できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.2.2 一時停止、停止及び非表示(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G4 コンテンツを一時停止させて、一時停止させたところから再開できるようにする」 (112〜115ページ) 6.2.1.3.3. キーボードのみでの操作 【ステップ1】 内容 ・ビューアが提供するすべての機能をキーボードで操作できるようにすること。 ・ボタン、チェックボックス、リンクなどの画面要素について、マウスによる操作のみを想定するのではなく、キーボード操作によってフォーカスが移動し、リターンキーなどでマウスクリックと同等の動作を行えるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202 すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 ・UAAG2.0「2.1.1 完全なキーボードの機能を提供する(レベルA)」 6.2.1.3.4. キーボードトラップの防止 【ステップ1】 内容 ・キーボード操作でビューア上のコンポーネントに移動した際に、キーボード操作のみでそのコンポーネントから他のコンポーネントに移動できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.2 キーボードトラップなし(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G21 利用者がコンテンツ内に閉じ込められないことを確認する」 ・UAAG2.0「2.1.3 キーボードトラップを避ける(レベルA)」 6.2.1.3.5. 文字サイズの変更 【ステップ2】 内容 ・ブラウザの拡大機能を用いる、あるいはビューア自体が文字サイズ拡大機能を持つことにより、テキストの文字サイズを最大200%まで変更可能にすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.4.4 テキストのサイズ変更(レベルAA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G142 ズーム機能をサポートする一般に入手可能なユーザエージェントのあるウェブコンテンツ技術を使用する」 ・UAAG2.0「1.4.1 基本的なテキスト書式設定(グローバル)(レベルA)」 (116ページ) 6.2.1.3.6. 点字ディスプレイへの出力 【ステップ3】 内容 ・点字ディスプレイを用いて読書できるよう、パソコンに接続された点字ディスプレイに書籍の内容を出力できること。 6.2.1.3.7. 詳細読み 【ステップ3】 内容 ・本文の文字列を1 文字ずつ詳細読みできるようにすること。 6.2.1.3.8. 正確な引用をするための手段の提供 【ステップ3】 内容 ・支援技術を用いて読書する利用者自身が執筆する場合、書籍から文字表記を含めた正確な引用を可能にするための手段を講ずること。 6.2.1.3.9. 音声読み上げに関するショートカットキーなどの割り当て 【ステップ3】 内容 ・再生、停止などの音声読み上げに関する操作を、各ボタンに移動することなく行うことを可能とするため、各操作コマンドに対してショートカットキーなどを割り当てること。 6.2.2. 書籍のナビゲーション 6.2.2.1. 概要 電子図書館ビューアで読書する際に、目次や注などから紙面の該当の箇所に移動したり、読書中に前後の箇所や目次、索引などに移動したりする機能。書籍のナビゲーションは、主に以下の要素からなる。 ●論理目次 ・書籍の紙面にある目次でなく、ビューア側が提供する目次。ビューア画面で目次ボタンをクリックすることで表示されたり、画面左側などに設置され、ポップアップ表示されたりする。 ●書籍内リンク ・電子書籍内の特定の箇所へのリンク。目次から章見出しへのリンクや、文章内の単語や脚注表示から索引や脚注へのリンクなど、様々な書籍内リンクがある。 ●スライドバー ・電子書籍全体の分量のうち、現在どの場所を読んでいるかを示す表示。スライドバーの任意の場所をクリックすることにより、電子書籍の当該箇所に移動することが可能。 ●移動ボタン ・前後のページの移動、章単位の移動、あるいは一定の間隔での前後の移動を行うためのボタン。 (117ページ) 6.2.2.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●キーボード操作で書籍内リンクのクリックによる移動が行えない。 ●キーボード操作で移動ボタンのクリックによる移動が行えない。 ●スライドバーの位置情報が音声で読み上げされず、現在書籍のどのあたりを読んでいるか分からない。 ●スライドバーの位置マーカーをキーボードで操作することができず、スライドバーによる書籍内の移動が行えない。 6.2.2.3. アクセシビリティ要件 電子図書館ビューアが書籍のナビゲーションにおいて実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.2.2.3.1. 論理目次へのキーボードでの移動及び操作 【ステップ1】 内容 ・論理目次をキーボード操作で表示できること。 ・論理目次が表示された際にスクリーンリーダーのフォーカスが論理目次に移動し、キーボード操作で目次の項目を移動できること。 ・目次の項目の中から読みたい章節などを選び、リターンキーなどの押下によって選択した章等への移動を行えること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.2.2.3.2.移動ボタンへのキーボードでの移動及び操作 【ステップ1】 内容 ・移動ボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によって電子書籍内の移動を行えること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 (118ページ) 6.2.2.3.3. 書籍内リンクへのキーボードでの移動及び操作 【ステップ2】 内容 ・紙面内の目次や注などの書籍内のリンクにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によってリンク先への移動を行えること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.2.2.3.4. 支援技術による現在位置の把握と移動 【ステップ2】 内容 ・現在位置を示すスライドバーなどにキーボードで移動し、キーボード操作で移動先位置を指定してリターンキーなどまたは他のキーを入力することにより、電子書籍内の移動を行えること。 ・電子書籍に、底本にした紙の書籍と対応したページ情報が付与されている場合、支援技術でページ番号を読み上げ、またページ番号を指定してそのページに移動できるようにすること。 ・現在位置を示すスライドバーなどにキーボードで移動した際に、現在電子書籍全体のどの位置を読んでいるかについて、パーセント表示や分数表示などで位置を示し、またその位置に関する情報を音声で読み上げられるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「1.1.1 非テキストコンテンツ(レベルA)」「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G82 非テキストコンテンツの目的を特定するテキストによる代替を提供する」「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G94 非テキストコンテンツに対して、それと同じ目的を果たし、かつ同じ情報を示す、簡潔なテキストによる代替を提供する」「G95 非テキストコンテンツの簡単な説明を提供する、簡潔なテキストによる代替を提供する」「G202 すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H2 同じリソースに対して隣接する画像とテキストリンクを結合する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.2.3. 読書支援 6.2.3.1. 概要 電子図書館ビューアで読書する際に、マーカーで線を引く、メモを添付する、しおりを挟む、語句を指定して書籍内検索を行うといった、読書を支援するための各種機能。例えば以下のような機能が提供されている。 ※読書支援機能が実装されていない場合は、本アクセシビリティ要件についての対応は求められない。 ●マーカー機能 ・電子書籍の本文中の一部を指定し、ハイライト色などのマークを付ける機能。 ●メモ機能 ・電子書籍の本文中の箇所を指定し、メモを付与する機能。メモの内容はキーボードを用いて入力できる。 ●しおり機能 ・電子書籍の本文中の箇所を指定し、しおりを挟む機能。しおりを挟んだ箇所を指定することにより、当該箇所に移動することが可能。 ●書籍内検索機能 ・検索語句を指定し、書籍内を検索する機能。検索結果を指定することにより、合致箇所への移動が可能。 6.2.3.2. 音声読み上げなどで想定される課題例 ●支援機能にキーボード操作でアクセスできず、支援機能が利用できない。 ●音声ではどこがハイライトされているか分からない。 ●書籍内検索の検索条件入力欄が見つけにくい、あるいは見つけることができないため、検索キーワードの入力が困難。 6.2.3.3. アクセシビリティ要件 電子図書館ビューアが読書支援において実現することが望ましいアクセシビリティ要件と、具体的な実施内容について以下に示す。 6.2.3.3.1. 読書支援機能へのキーボードでの移動及び操作 【ステップ2】 内容 ・ビューア内で提供される読書支援機能にキーボード操作で移動できるようにし、メニューをキーボードで選択し、リターンキーなどの押下によって利用できるようにすること。 ・しおり機能、メモ機能については、しおりを挟んだ箇所やメモを付与した箇所をキーボードで指定し、当該箇所に移動できること。 ・読書支援機能に移動した際に、本文でなく読書支援機能にフォーカスしていることを音声でも容易に認識できるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 6.2.3.3.2. 書籍内検索条件入力欄・書籍内検索実行ボタンへのラベルの付与 【ステップ2】 内容 ・書籍内検索条件入力欄及び書籍内検索実行ボタンに適切なラベルを付与し、スクリーンリーダーで検索条件入力欄あるいは検索実行ボタンであることが分かるようにすること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「3.3.2 ラベル又は説明(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G131 説明的なラベルを提供する」「H44 テキストラベルとフォームコントロールを関連付けるために、label 要素を使用する」 6.2.3.3.3. 書籍内検索の実行 【ステップ2】 内容 ・書籍内検索条件入力欄及び書籍内検索実行ボタンにキーボードで移動し、リターンキーなどの押下によって検索を実行し、検索結果一覧に遷移して音声で読み上げ、また選択した本文に移動できること。 参考規格 ・JIS X8341-3:2016「2.1.1 キーボード(レベルA)」 ・WCAG 2.0 達成方法集「G90 キーボードがトリガーとなるイベントハンドラを提供する」「G202すべての機能に対してキーボード制御を確保する」「H91 HTML のフォームコントロール及びリンクを使用する」 (119〜121ページ) 別紙1図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会関係者名簿 <有識者・関係者団体> 阿部 一彦 日本身体障害者団体連合会会長 粟野 健一 日本発達障害ネットワーク理事 植村 八潮 専修大学教授 宇野 和博 日本弱視者ネットワーク教育担当役員 近藤 武夫 東京大学先端科学技術研究センター教授 佐藤 聖一 日本図書館協会障害者サービス委員会委員長 鈴木 直人 電子出版制作・流通協議会事務局 田中 敏隆 日本書籍出版協会AB(アクセシブル・ブックス)委員会委員 冨倉 由樹央 一般社団法人デジタル出版者連盟法務部会部会長 三宅 隆 日本視覚障害者団体連合組織部長 見形 信子 DPI 日本会議会員 <事務局> 国立国会図書館総務部企画課 <関係省庁等(オブザーバー)> 黄地 吉隆 文部科学省総合教育政策局地域学習推進課長 藤澤 亘 文部科学省研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室長 渡邊 佳奈子 経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課長 <委託先> アライド・ブレインズ株式会社 (122ページ) 別紙2ステップごとのアクセシビリティ要件 ガイドライン「6. 対応方法」に挙げられている要件をステップごとに一覧化すると以下のとおりとなる。 ・ステップ1 の要件 【6.1.1. ウェブサイト全体に求められるアクセシビリティ】 6.1.1.3.1. 代替テキストの付与 6.1.1.3.2. 時間依存メディアに対する代替コンテンツ 6.1.1.3.3. ウェブページの構造化 6.1.1.3.4 コンテンツの適切な順序での提供 6.1.1.3.5 色や感覚的な特徴の使用方法への配慮 6.1.1.3.6. キーボードのみでの操作 6.1.1.3.7. キーボードトラップの防止 6.1.1.3.8. 時間制限の調整 6.1.1.3.9. 繰り返すコンテンツのスキップ 6.1.1.3.10. ページタイトルの付与 6.1.1.3.11. フォーカス可能な要素への理解しやすい順序での移動 6.1.1.3.12. リンクの目的や移動先の明示 6.1.1.3.13. 入力時に表示内容が変化する場合の通知 6.1.1.3.14. エラーの特定 6.1.1.3.15. 入力を要求する場合のラベルや説明文の付与 【6.1.2. ログイン】 6.1.2.3.1. ID 入力欄・パスワード入力欄・ログインボタンへのラベルの付与 6.1.2.3.2. ログインボタンへの移動 6.1.2.3.3. ログインエラー時のエラー内容の表示 6.1.2.3.4. 画像を用いたログイン認証を行う場合の代替手段の提供 6.1.2.3.5. 支援技術によるパスワード入力、確認、変更への配慮 【6.1.3. 書籍検索】 6.1.3.3.1. 検索条件入力欄・検索実行ボタンへのラベルの付与 6.1.3.3.2. 検索実行ボタンへの移動 【6.1.4. 検索結果一覧】 6.1.4.3.1. 書籍の表紙画像などへの代替テキストの付与 6.1.4.3.2. 書籍情報の構造化 6.1.4.3.3. 検索結果の表示順に関する情報 6.1.4.3.4. キーボードのみでの操作 6.1.4.3.5. 検索結果一覧箇所への速やかな到達 【6.1.5. 書誌詳細情報の確認・貸出手続き・予約手続き】 6.1.5.3.1. 書籍情報の構造化 6.1.5.3.2. 貸出ボタンへのラベル付与 6.1.5.3.3. 貸出ボタンへの移動 【6.1.6. アカウントページ(貸出し状況の確認など)】 6.1.6.3.1. 書籍情報の構造化 6.1.6.3.2. 読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンへのラベル付与 6.1.6.3.3. 読書ボタン、返却ボタン、貸出ボタンへの移動 【6.2.1. 書籍の閲覧】 6.2.1.3.1. 書籍の音声読み上げ 6.2.1.3.2. 音声読み上げの停止、再開 6.2.1.3.3. キーボードのみでの操作 6.2.1.3.4. キーボードトラップの防止 【6.2.2. 書籍のナビゲーション】 6.2.2.3.1. 論理目次へのキーボードでの移動及び操作 6.2.2.3.2. 移動ボタンへのキーボードでの移動及び操作 ・ステップ2の要件 【6.1.1. ウェブサイト全体に求められるアクセシビリティ】 6.1.1.3.16. 文字サイズの変更 6.1.1.3.17. 同一機能に対する一貫性 6.1.1.3.18. 内容が理解できる見出しやラベルの付与 6.1.1.3.19. ナビゲーション方法の統一 【6.1.3. 書籍検索】 6.1.3.3.3. 音声読み上げ可能な書籍などに限定した検索条件の設定 【6.1.4. 検索結果一覧】 6.1.4.3.6. 検索結果1 件ごとの移動 6.1.4.3.7. 音声読み上げ可能であるかなどの情報の検索結果への表示 【6.2.1. 書籍の閲覧】 6.2.1.3.5. 文字サイズの変更 【6.2.2. 書籍のナビゲーション】 6.2.2.3.3. 書籍内リンクへのキーボードでの移動及び操作 6.2.2.3.4. 支援技術による現在位置の把握と移動 【6.2.3. 読書支援】 6.2.3.3.1. 支援機能へのキーボードでの移動及び操作 6.2.3.3.2. 書籍内検索条件入力欄・書籍内検索実行ボタンへのラベルの付与 6.2.3.3.3. 書籍内検索の実行 ・ステップ3 の要件 【6.1.1. ウェブサイト全体に求められるアクセシビリティ】 6.1.1.3.20. セクション見出しの付与 【6.1.2. ログイン】 6.1.2.3.6. リターンキーによるログインの実行 6.1.2.3.7. ブラウザなどによるパスワード保存を抑止しないこと 【6.1.3. 書籍検索】 6.1.3.3.4. リターンキーによる検索の実行 【6.1.4. 検索結果一覧】 6.1.4.3.8. 検索結果一覧を示す見出しの設置 6.1.4.3.9. 複数の検索結果ページの移動 【6.2.1. 書籍の閲覧】 6.2.1.3.6. 点字ディスプレイへの出力 6.2.1.3.7. 詳細読み 6.2.1.3.8. 正確な引用をするための手段の提供 6.2.1.3.9. 音声読み上げに関するショートカットキーなどの割り当て (123〜125ページ) 別紙3チェックリストの書式 ガイドラインにおけるアクセシビリティ要件ごとに適用(○、−)、対応状況(○、△、×)、備考欄を記載する表形式の様式を掲載。 (126〜129ページ) ※以下に示す附属資料1〜5は、視覚障害者等による電子図書館や電子書籍の利用についての理解の助けとなることを目的として作成したものであり、ガイドライン本編ではない。 附属資料1. 利用ストーリー 視覚障害者等が電子図書館を利用する際の利用体験を、電子書籍の閲覧に至らなかった場合と至った場合とをストーリーにして記述する。特定の電子図書館の利用の際の実例ではなく、現状では提供されていないサービスも含めた記述をしている。閲覧に至らなかった場合と至った場合の分岐点については、ガイドライン本編「6 対応方法」に挙げられた「音声読み上げなどで想定される課題例」を参照いただきたい。 全盲のA さん 【閲覧に至らなかった場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手してスクリーンリーダーで読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。しかし図書館のウェブサイトのどこから電子図書館に入れるのかが分からない。図書館に電話で問い合わせると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。図書館の端末で電子図書館の使い方を教えてもらおうと思ったが、図書館の端末にはスクリーンリーダーが入っていないとのことで、自宅に戻ってから使用してみる。 スクリーンリーダーで、図書館のウェブサイトに入り、なんとか電子図書館の入口を見つける。クリックして、発行してもらったID とパスワードを入力し、読みたかった本のタイトルを入力して検索してみる。ヒットしない。もしかしたら電子図書館ではその資料は提供されていないのかもしれない。どんなものがあるのかを調べるために、適当なキーワードを入れて検索してみる。検索結果一覧から資料を適当にクリックする。貸出しボタンを押して、閲覧を開始するが、本の文字をビューアが読み上げないために、全く読むことができない……。 【閲覧に至った場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手してスクリーンリーダーで読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。スクリーンリーダーで読み上げていくと、「電子図書館」というリンクがあったので、入ってみると、ログインしなければ電子書籍を閲覧できないようだった。ヘルプを見てみると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。図書館の端末で電子図書館の使い方を教えてもらうように依頼すると、障害者サービスの担当の職員が、スクリーンリーダーがインストールされている備え付けの端末で、操作方法を説明してくれた。 帰宅してから説明を思い出しながら操作してみる。スクリーンリーダーで、図書館のウェブサイトに入り、電子図書館のリンクから入り、発行してもらったID とパスワードを入力しログインする。読みたかった本のタイトルを入力して検索すると、2 件ヒットした。書名に続いてデータ形式が書かれており、一方は電子書籍、もう一方はオーディオブックと記されていた。電子書籍の方の貸出しボタンを押すと、タイトルや著者名、目次などが読み上げられた。音声読み上げのボタンがあったので、押してみると、本文の読み上げが始まった。うっかりして聞き逃してしまったが、1 段落前に戻って聞き直すことができた。本の内容を大まかに把握したかったので、目次を開いて次の章に移動して、また読み上げを再開することができた。 弱視のB さん 【閲覧に至らなかった場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して大きな文字を表示させて読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらマウスで操作し、電子図書館の入口を探そうとするが、文字が小さくてよく見えない。そこで、ブラウザの拡大機能で文字サイズを大きくしようとするが、文字サイズが変わらなかった。文字色と背景の色とを反転してみると、なんとか文字を読み取れるようになった。しかし、電子図書館の入口を探すが見当たらない。図書館に電話で問い合わせると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。電子図書館の使い方を教えてもらおうと依頼すると、障害者サービスの担当者が説明してくれた。しかし、画面を見ようとディスプレイに顔を近づけると、図書館員が画面を見ることができず、一緒に画面を見ながら説明してもらうことが難しかった。図書館員に操作してもらって説明を聞くだけにし、自宅に戻ってからその説明を思い出しながら使用してみる。 しかし、やはり電子図書館の入口が見当たらない。説明をしてくれた図書館員が「画面の右下のボタン」と言っていたことを思い出し、マウスを持っていくと、ポインタの色が変わるところがある。文字色と背景色を反転したことで、ボタンの部分は反転しないで残ってしまい、背景の色に紛れて見えなくなってしまったボタンがあるようだ。試しにクリックしてみると、反転していた文字色と背景色が元に戻ってしまい、大きくしていた文字サイズも元に戻ってしまった。改めて色反転し、文字サイズを大きくすると、電子図書館のトップページだということが分かった。発行してもらったID とパスワードを入力し、本を検索しようとするが、キーワードを入力する検索ボックスが見当たらない。検索実行ボタンは見つかったので、その周辺でマウスを動かしてみると、ポインタが点滅するところがある。ここがエディットボックスだが、枠の色が薄くて見つけられないということのようだった。読みたかった本のタイトルを入力して検索してみる。ヒットしない。もしかしたら電子図書館ではその資料は提供されていないのかもしれない。どんなものがあるのかを調べるために、適当なキーワードを入れて検索してみる。検索結果一覧から資料を適当にクリックする。貸出しボタンを押して、閲覧を開始するが、反転していた文字色と背景色が元に戻ってしまい、変更できない。文字サイズを大きくしようとするが、それもできないために、全く読むことができない……。 【閲覧に至った場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して大きな文字を表示させて読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらマウスで操作し、電子図書館の入口を探そうとするが、文字が小さくてよく見えない。そこで、OS の拡大機能で文字サイズを200%にし、文字色と背景の色とを反転してみると、見やすくなった。画面をスクロールしていくと、「電子図書館」というリンクがあったので、入ってみると、ログインしなければ電子書籍を閲覧できないようだった。ヘルプを見てみると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。図書館の端末で電子図書館の使い方を教えてもらうように依頼すると、障害者サービスの担当の職員が、備え付けの大きなディスプレイの端末で、操作方法を説明してくれた。 帰宅してから説明を思い出しながら操作してみる。図書館のウェブサイトから電子図書館のトップページに入っても、図書館のウェブサイトを閲覧しているときに設定したOS の文字拡大と色反転の設定が引き継がれ、スムーズに閲覧できた。発行してもらったID とパスワードを入力しログインする。読みたかった本のタイトルを入力して検索すると、2 件ヒットした。書名に続いてデータ形式が書かれており、一方は電子書籍、もう一方はオーディオブックと記されていた。電子書籍の方の貸出しボタンを押すと、タイトルや著者名、目次など、書誌情報の詳細が表示された。読むというボタンを押すと、本の内容が表示された。図書館のウェブサイトを閲覧しているときに設定したOS の文字拡大と色反転の設定が、電子書籍を開いても引き継がれ、スムーズに閲覧できた。本の内容を大まかに把握したかったので、目次を開いて次の章に移動して、また読み進むことができた。目で読むのに疲れたので、スクリーンリーダーを起動して読み上げを試みてみたところ、スクリーンリーダーで読み上げることもできた。 ディスレクシアのあるC さん 【閲覧に至らなかった場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらマウスで操作し、電子図書館の入口を探そうとするが、いろいろな内容がびっしりと詰め込まれていて、電子図書館の入口が見つからない。なんとか電話番号を見つけられたので、図書館に電話で問い合わせると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。電子図書館の使い方を教えてもらおうと依頼すると、障害者サービスの担当者が説明してくれた。図書館員が画面上を指やマウスポインタで示してくれたときには、なんとか読み取ることができるが、指やマウスポインタを動かすと、他の文字に紛れてしまい、今読んでいたところを見失ってしまう。図書館員に操作してもらって説明を聞くだけにし、自宅に戻ってからその説明を思い出しながら使用してみる。 しかし、やはり電子図書館の入口を見つけられない。説明をしてくれた図書館員が「画面の右下のボタン」と言っていたことを思い出し、マウスを持っていって、ポインタの色が変わるところで試しにクリックしてみる。目立つ文字で電子図書館と書いてあり、電子図書館のトップページだということが分かった。発行してもらったID とパスワードを入力し、本を検索しようとするが、検索ボックスが見当たらない。試しにリンクを順に開いてみるが、ページごとにデザインやレイアウトが変わって統一感がなく、どこに何があるか見つけにくい。なんとかID とパスワードを入力してログインする。ファセット検索で本を選ぼうとするが、階層が深くなっていくと、どこにいるのかが分からなくなってしまった。キーワード検索で、読みたかった本のタイトルを入力して検索してみる。ヒットしない。もしかしたら電子図書館ではその資料は提供されていないのかもしれない。どんなものがあるのかを調べるために、適当なキーワードを入れて検索してみる。検索結果一覧は、文字ばかりなので、興味がある本を見つけることが難しい。絞込ができればと思うが、その機能があるか見つけられない。しかたがなく、適当にタイトルをクリックしてみる。貸出しボタンを押して、閲覧を開始する。行間や字間を広くしようとするが、その機能はないようだ。ハイライトやルビの機能もないので、全く読むことができない……。 【閲覧に至った場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらマウスで操作し、電子図書館の入口を探そうとするが、いろいろな内容がびっしりと詰め込まれていて、電子図書館の入口が見つからない。そこで、OS の機能で行間と字間を広くしてみると、見やすくなった。画面をスクロールしていくと、「電子図書館」というリンクがあったので、入ってみると、ログインしなければ電子書籍を閲覧できないようだった。ヘルプを見てみると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 後日来館して登録を行う。図書館の端末で電子図書館の使い方を教えてもらうように依頼すると、障害者サービスの担当の職員が、行間と字間を広くして、操作方法を説明してくれた。 帰宅してから説明を思い出しながら操作してみる。図書館のウェブサイトから電子図書館のトップページに入っても、図書館のウェブサイトを閲覧しているときに設定したOS の行間と字間を広げる設定が引き継がれ、スムーズに閲覧できた。発行してもらったID とパスワードを入力しログインする。リンクには文字だけでなくアイコンも表示されている。試しにあちこちのリンクを入ってみると、全体にページのレイアウトが統一されていて、内容を把握しやすい。ファセット検索で本を選ぼうとすると、階層が深くなっても、どこにいるかが表示されていた。読みたかった本のタイトルを入力して検索すると、2 件ヒットした。書名に並んで書影が表示されている。続いてデータ形式が書かれており、一方は電子書籍、もう一方はオーディオブックと記され、ピクトグラムでも表示されていた。電子書籍の方の貸出しのアイコンを押すと、タイトルや著者名、目次など、書誌情報の詳細が表示された。読むというアイコンを押すと、本の内容が表示された。図書館のウェブサイトを閲覧しているときに設定したOS の行間と字間を広くする設定が、電子書籍を開いても引き継がれ、スムーズに閲覧できた。音声読み上げのアイコンがあったので、押してみると、本文の読み上げが始まり、読み上げている部分の文字がハイライトされ、ルビも表示された。本の内容を大まかに把握したかったので、目次を開いて次の章に移動して、また読み進むことができた。 肢体不自由のあるD さん 【閲覧に至らなかった場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらジョイスティックで操作するが、図書館のウェブサイトのどこから電子図書館に入れるのかが分からない。図書館に電話で問い合わせると、来館してから電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことである。来館が困難なため、利用を諦めた。 【閲覧に至った場合】 自分の住む自治体の図書館が、コロナ禍で電子図書館の導入をしたことを知った。ふだん電子書籍を入手して読書をしているため、同じように電子図書館も利用できるのではないかと、図書館のウェブサイトを訪れてみた。画面を見ながらジョイスティックで操作し、「電子図書館」というリンクから入ってみる。ログインしなければ電子書籍を閲覧できないようだった。ヘルプを見てみると、図書館とは別に電子図書館の登録を行う必要があるとのこと。図書館自体の利用登録はしていても、電子図書館には別の登録が必要とのことだった。 図書館に電話で、非来館で登録する方法を問い合わせると、オンライン登録のページを案内された。オンライン登録で発行されたID とパスワードを入力しログインする。操作方法が分かりにくかったので、図書館に再度電話をすると、オンライン会議ツールを使って画面共有し、操作方法を説明することを提案された。オンライン会議に慣れておらず、戸惑うところもあったが、画面を見ながらの説明で、よく理解できた。 後日、改めてログインし、読みたかった本のタイトルを入力して検索すると、2 件ヒットした。書名に続いてデータ形式が書かれており、一方は電子書籍、もう一方はオーディオブックと記されていた。電子書籍の方の貸出しボタンを押すと、タイトルや著者名、目次など、書誌情報の詳細が表示された。読むというボタンを押すと、本の内容が表示された。本の内容を大まかに把握したかったので、目次を開いて次の章に移動して、また読み進むことができた。 以降、自宅から電子図書館にアクセスして頻繁に読書をするようになった。 (130〜134ページ) 附属資料2. 電子図書館利用手順ごとの想定される課題と対応例 「6.対応方法」に記載されいている電子図書館の利用の各手順で想定される課題例及び対応例を表形式でまとめているものが掲載されている。 (135ページ) 附属資料3.視覚障害者等による電子図書館の利用を促進するために必要なこと 電子図書館を構成するシステムが、本ガイドラインの各項目に沿った実装を進めることでアクセシブルになったとしても、そのことのみによって視覚障害者等が電子図書館を利用するための環境が整ったとは言えない。本ガイドラインの対象範囲ではないが、取組が必要と考えられる諸要素について以下に列挙する。 1. 電子書籍コンテンツの制作やライセンス契約について 1-1. 支援技術の利用を阻害しないDRM のあり方の検討コンテンツを保護するために、出版社及び電子図書館事業者は、DRM を必要としている。海外の電子図書館サービスには、支援技術の利用を阻害しないDRM を開発し、DRM を適用したコンテンツを支援技術を用いて閲覧することを可能にしている事例がある。国内においても、コンテンツの的確な保護と支援技術の利用を両立させるDRM のあり方を検討する必要がある。 1-2. 音声読み上げに対する許諾についての整理EPUB リフロー形式のコンテンツであっても音声読み上げが不可になっているものがあるなど、コンテンツによって利用可能なアクセシビリティ機能が異なる。電子図書館のコンテンツに関し、音声読み上げ機能を提供するために、電子図書館事業者が得る許諾について整理する必要がある。 1-3. 電子図書館で提供可能なタイトル数を増加させるための契約モデルの検討電子図書館にコンテンツを提供するライセンスモデルが変わると、出版社は改めて著作権者に説明をして許諾を得なければならなくなるため、全体としての提供可能なタイトル数が増えないという結果になる。アクセシブルな電子図書館に関するガイドラインが決まっても、提供可能なタイトル数が少ないということにならないように、電子図書館にコンテンツを提供するためのライセンスモデルに関する引き続きの検討が必要である。 1-4. 視覚障害者等が利用可能な電子書籍のタイトル数の増加前項までに述べた事情のため、音声読み上げが可能な電子書籍コンテンツのタイトル数は現状では多いとは言えない。視覚障害者等にとっての電子図書館サービスの利便性を高めるためには、そのアクセシビリティを改善することと並行して、前項までに述べた取組などにより、視覚障害者等が利用可能なタイトル数を増加させる必要がある。この点は、一般向けのサービスのアクセシビリティを高めて視覚障害者等に利用してもらうアプローチ、音声読み上げが許諾された電子書籍コンテンツに限定したサービス・提供画面を提供するアプローチのいずれにも共通の課題である。 2. 電子図書館サービスのシステム設計・開発について 2-1. 管理者用システムのユーザビリティ及びアクセシビリティの改善 管理者用機能は、特段の高いICT スキルを要することなく利用できるものにし、職員にとって使いやすいシステムとなることが必要である。また、図書館には障害がある職員も勤務していることから、管理者用システムについてもアクセシビリティに配慮した設計が必要である。 (136ページ) 2-2. スマートフォン・タブレットでの使用への対応及びアプリの開発 近年パソコンではなくスマートフォンやタブレットでインターネットを利用する者が増えていることから、電子図書館をスマートフォンやタブレットで利用する際のアクセシビリティ対応も図っていく必要がある。またウェブ上のアプリケーションではなく、端末にインストールするネイティブアプリによって電子図書館が利用できるサービスもあり、アプリのアクセシビリティ対応状況も踏まえ、電子図書館のアクセシビリティを考える必要がある。 3. 各図書館における取組について 3-1. 図書館のウェブサイトなどのアクセシビリティ対応多くの利用者は、図書館のウェブサイト経由で電子図書館を利用する。また大学においては、ディスカバリーサービス経由で電子図書館が利用されることが多い。そのため、図書館のウェブサイトやディスカバリーサービスがアクセシブルでないと、電子図書館の利用に至らないということになることへの留意が必要である。図書館のウェブサイトの構築とアクセシビリティ対応を業者に外部委託する場合、その業者との契約が終了して委託先業者が変わると、アクセシビリティ対応が引き継がれずに更新されないままになることがある。ウェブサイトの新規構築時だけでなく、委託先業者が変わった場合でもアクセシビリティ対応をいかに継続するかが重要である。 3-2. 新規登録の際のアクセシビリティへの配慮立図書館で提供されている電子図書館を利用する場合、利用者は電子図書館に登録する必要がある。現在、多くの公立図書館では、電子図書館の登録のために来館を求めている。来館すること自体に困難を感じる利用者のために、新規登録をアクセシブルに行う方策の検討も必要である。 3-3. 利用者用端末のアクセシビリティ対応スクリーンリーダーなど、視覚障害者等が読書するために必要なソフトウェアがインストールされた利用者用端末(パソコン、タブレットなど)を、図書館内に配置する必要がある。 3-4. 支援技術を用いた環境での電子図書館の利用案内図書館が、支援技術を利用した環境でのマニュアルを作成し、公開するのが望ましい。また、来館が難しい利用者のために電話での利用案内を行う。 3-5. 操作支援担当者の養成支援技術を使用して電子図書館を閲覧する利用者に対し、操作支援をする担当者を養成する必要がある。 3-6. アクセシブルな電子図書館を導入していること及び図書館の障害者サービス全般のPR電子図書館の認知度が低いため、図書館は電子図書館を導入していること及びその前提として障害者サービス全般についての広報が必要である。また、障害者と健常者の境界線にある人たちにも、アクセシブルな本に対するニーズがあると考えられる。それらの潜在的なニーズを持つ人たちに情報提供をし、サービスに結び付けていくことが重要である。 (137ページ) 3-7. 他機関との連携 点字図書館、地域のパソコンボランティア、ICT サポートセンターなどの機関は、支援技術に関する専門技能を有している。公立図書館等は、これらの支援技術に関する専門技能を有する機関と連携することが重要である。 4. 電子図書館の図書館への導入の促進 4-1. 電子図書館は電子コンテンツに対する契約であることへの理解の促進電子図書館は、資料が所有資産とならず、毎年利用料金が発生することから、図書館において契約の打ち切りが検討されることがある。電子図書館サービスを継続するには、電子図書館が電子コンテンツに対する契約であることへの図書館員の理解の促進が必要である。 4-2. 電子書籍ならではの選書基準の作成電子書籍の参考書や問題集には書き込みをされる可能性がないことから、紙の本とは異なり、選書対象から除外する必要はない。また、読みたい本のジャンルによって、読者が便利と感じる媒体は多様である。そのため紙の本とは異なる電子書籍の特徴を生かした選書基準の作成が求められる。 5. 電子図書館の学校への導入の促進地域の学校には、通常学級と特別支援学級も含めて、障害のある児童生徒が在籍している。GIGA スクール構想によって、児童生徒1 人につき1 台の端学習用末の配備を推進するのであれば、その端末及びソリューションには、障害のある児童生徒の利用を想定したアクセシビリティ対応が求められる。 (138ページ) 附属資料4. 音声読み上げの設定項目及びパターン 音声読み上げを利用して読書を快適に行うには、音声の聞き取りやすさに関する設定を、利用者が選択できるとよい。スクリーンリーダーでは、音声の聞き取りやすさに対する取組を蓄積してきていることから、ここでは電子図書館の音声読み上げの聞き取りやすさを向上させるための参考として、日本国内において普及している主要な四つのスクリーンリーダーに実装されている音声読み上げに関する設定項目のうち、主だったものを挙げる。また関連して、電子図書館で提供されている音声読み上げの方法のパターンを紹介する。 1. スクリーンリーダーにおける主だった音声読み上げの設定項目 日本国内において普及している主要なスクリーンリーダーとしてPC-Talker(株式会社高知システム開発)、NVDA(NV Access、NVDA 日本語チーム)、JAWS(有限会社エクストラ)、ナレーター(Microsoft)の四つが挙げられる。これらのスクリーンリーダーには、以下のような音声読み上げの設定項目が用意されている。電子図書館の音声読み上げの聞き取りやすさは、これらの設定を実装し、利用者に選択可能にすることで向上すると考えられる。 ・言語:国名を選択する方式やスクリーンリーダーの言語設定に合わせる方式がある。 ・音声エンジン:数種から選択可能になっている。 ・音声(人物):設定した音声エンジンによって異なるが、多いものでは十数種から選択できる。 ・音量:OS のボリュームに連動するボリュームと、連動しないスクリーンリーダー独自のボリュームとが用意され ている。十数段階から選択する方式と100 段階から選択する方式とがある。 ・音声のスピード:標準と高速のモードの切り替えがあり、それぞれに段階が用意されている。段階は、十数 段階のものと100 段階のものとがある。 ・音声の音程:数段階から選択する方式と、100 段階から選択する方式とがある。 ・句読点:チェックボックスで読み上げる・読み上げないを選択する方式と、「読まない」「一部読み上げ」「ほと んど読み上げ」「全て読み上げ」から選択する方式とがある。 ・括弧:チェックボックスで読み上げる・読み上げないを選択する。 ・記号:チェックボックスで読み上げる・読み上げないを選択する方式と、「読まない」「一部読み上げ」「ほとん ど読み上げ」「全て読み上げ」から選択する方式とがある。 ・数字を位取りして読む:チェックボックスで位取りする・しないを選択する。 ・改行の読み方:「息継ぎ」「読む」「読まない」から選択する。 ・英語の読み方:「発音読み」と「スペル読み」から選択する。 ・大文字のピッチ変更率:100 段階から1 刻みで選択する。 ・大文字にビープ音を付ける:チェックボックスで付ける・付けないを選択する。 ・仮名文字をフォネティック読み:チェックボックスでする・しないを選択する。 ・アルファベットをフォネティック読み:チェックボックスでする・しないを選択する。 ・カタカナのピッチ変更率:-100 から100 の間で1 刻みで選択する。 ・半角のピッチ変更率:-100 から100 の間で1 刻みで選択する。 (139ページ) 2. 電子図書館の読み上げ方法のパターン ●OS のアクセシビリティ支援機能、あるいは専用のスクリーンリーダーソフトでの読み上げ ・使い慣れた閲覧ビューアと支援技術で読むことができる。 ・点字ディスプレイでの出力などが可能。 ・スクリーンリーダーの詳細読み機能によって誤読や同音異義語の確認が可能。 ・文字情報を取得できるため自分が執筆するときの引用が可能。 ・ビューア側で音声読み上げ機能を提供する必要がない。 ・音声読み上げで使用できる機能は、利用者が使っている音声エンジンの種類(OS のアクセシビリティ支援機能、専用のスクリーンリーダーソフトなど)によって異なる。 ●ビューアが音声読み上げ機能を提供し、OS の音声合成エンジンを用いて端末側で再生 ・再生音声はOS が提供する声質に限られる。 ・操作方法はふだん使っている音声読み上げと異なる。 ・利用可能な機能はビューアが提供するものに限られる。 ●ビューアが音声読み上げ機能を提供し、電子図書館サービスのサーバ側で音声データを生成してその音声を再生 ・利用者がふだん使っている音声読み上げと異なる声質や操作方法となる。 ・利用可能な機能はビューアが提供するものに限られる。 ・電子図書館事業者側がサーバ上に音声合成及びストリーミング機能を用意する必要がある。 ●電子書籍コンテンツをダウンロードし、利用者がふだん使っている音声読み上げツールなどで読み上げ ・使い慣れた閲覧ビューアと支援技術で読むことができる。 ・点字ディスプレイでの出力などが可能。 ・スクリーンリーダーの詳細読み機能によって誤読や同音異義語の確認が可能。 ・文字情報を取得できるため自分が執筆するときの引用が可能。 ・オフライン環境でも音声読み上げを行える。 (140ページ) 附属資料5. 音声読み上げ以外のアクセシビリティ機能に係る取組の事例 本ガイドラインは、アクセシビリティ機能のうち音声読み上げを中心に作成されている。音声読み上げ以外のアクセシビリティ機能については、デジタル教科書において取組が進んでいる。以下では、事例として東京書籍と光村図書の取組を紹介する。 東京書籍のデジタル教科書3は、ビューアにLentrance(レントランス)4を採用することによって、Lentrance が有するアクセシビリティ機能を読者に提供している。Lentrance は、リフロー表示(読みやすく拡大したサイズに合わせてテキストが画面幅で折り返される)、フォントや行間の変更(文字サイズやフォント、行間の変更や、縦書きから横書きへの切り替え)、画面の背景色や文字色を変更(画面の明るさやコントラストを調整したり、色反転、グレースケール、文字や背景の色変更)、音声再生・読み上げ(録音音声の再生や機械音声読み上げ(TTS、SSML)をサポート、音量や再生速度の変更)、操作音(画面が切り替わることを知らせる操作音)、DAISY 対応(DAISY 教科書の再生)が可能と紹介されている。 光村図書のデジタル教科書5は、サポートボタン(見ること、読むこと、聞くことで困ったときにまずクリックするボタン)、教科書紙面からの読み上げ(文字を機械音声で読み上げ)、1 文ずつ文字を強調(文字に色がつくことで「どこを読んでいるのか」「どこを読めばいいのか」を分かるようにする)、すべての漢字にふりがなを表示する機能があると紹介されている。 (注) 3 https://www.tokyo-shoseki.co.jp/ict/feature/h/textbook(参照 2023-03-02) 4 https://www.lentrance.com/(参照 2023-03-02) 5 https://2022-digital.mitsumura-tosho.co.jp/productsc /(参照 2023-03-02) (141ページ) 省庁等 経済産業省 所属 商務情報政策局コンテンツ産業課 役職・氏名 課長 渡邊佳奈子 基本計画 @V.3(第11条関係)(2)出版者からの製作者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備への支援 AV.4(第12条関係)アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等 BV.4(第12条関係)(3)出版者から書籍購入者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備に関する検討への支援(資料番号経-1) これまでの取組 1.令和2年度に策定した読書バリアフリー環境整備に向けた経済産業省及び出版業界の取り組みのロードマップ及びアクションプランの実行 (1)総合的なデータベースの構築(第12条関連) (2)電子書籍(リフロー形式)の基準の検討(第12条関連) (3)サポートセンターの設置・運営(第11条関連) (4)テキストデータ抽出等に関する基準の検討(第11条関連) 2.電子書籍等の制作及び販売等の促進並びに音声読み上げ機能(TTS)の利用促進を図るための方策に関する調査 (1)電子書籍等の制作ワークフローに関する調査(第12条) (2)出版物におけるTTSの利用・普及に関する課題調査ヒアリング(第12条) (3)読書バリアフリー環境整備のための電子書籍市場等の拡大に関する検討会の実施(第12条) (4)読書バリアフリーに関する国や出版業界の取組の普及・啓発 成果・達成状況 @テキストデータの受け渡しについて、出版社から利用者までの提供スキームを整理し、出版社側の窓口となるサポートセンターについては、日本インフラセンター(JPO)のもとにアクセシブルブックサポートセンター(ABSC)準備会を設置し、令和5年度内の活動に向け準備をしているところ。利用者側の窓口となる機関について、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省で協議し、検討を進めることとしている。 A近刊情報等を一元管理しているデータベース(JPRO)について、紙の書籍だけでなく電子書籍やオーディオブック等の販売情報まで登録、網羅できるデータベースへと改修し、一般利用者が出版情報等を検索できるサイト(Books)と連携。また、Booksサイトのアクセシブル化を行い、視覚障害者がサイトへアクセスし、電子書籍等の販売状況が検索できるよう環境整備を行い、令和4年1月より運用開始。 Bリフロー型電子書籍やオーディオブックの制作ワークフローの整理及び制作における諸課題の洗い出し等を実施。また、視覚障害者がリフロー型書籍を利用する上では音声読み上げ機能が重要との認識の下、出版物におけるTTSの対応状況や課題について、TTSに関する事業者へヒアリング調査を実施した。 今後の取組・目標 @令和5年度、令和6年度にかけて、テキストデータやアクセシブルな書籍が、川上であるABSCから利用者側の機関である特定電子書籍等製作者、その先の障害者の方々の手に渡るまでのフローについて、三省(文科省・厚労省・経産省)において関係機関の協力の下、検討を進めるとともに、ABSCと特定電子書籍等製作者間で必要となるデータの保持の仕方や契約等について、出版業界等関係者、関係省庁で議論を進める。 A出版情報へのアクセスに関してはデータベースの改修により一定の整備が図られたところ、令和5年度以降に関しては、コンテンツの充実(登録出版社の増加、電子書籍のTTS対応の可否等)のため、各出版社への情報提供やプロモーション等を継続、協力を要請していくほか、サピエ図書館等外部団体との連携も検討する。 B読書バリアフリー法の施行から4年が経つ読書バリアフリー法に対する出版社各社の現状の対応状況をアンケート調査等によって把握・分析し、検討会の中でアクセシブルな電子書籍作成時の留意点等の整備を進める。令和5年度は骨子案の検討までを目標とし、令和6年度以降に各社の合意を取ることを目指す。 (142ページ) 経-1 経済産業省委託事業(令和4年度コンテンツ海外展開促進事業) 読書バリアフリー環境に向けた電子書籍市場の拡大等に関する調査報告書 令和5年6月 (143ページ) 3.読書バリアフリー法第11 条・第12 条に基づく電子データの提供の方向性(案) (1)背景 読書バリアフリー法第11 条第2 項(特定書籍及び特定電子書籍等の製作の支援)・第12条(視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等における電磁的記録の提供)に基づく電子データ(電磁的記録)12の提供は、2021年度においては別々の提供方法を想定しており、特に第12 条については新しい受け皿機関の設立を想定していた。しかし、新しい機関の設立は、その準備に多大な時間及びコストを要してしまうことから、両方の流れを統合するとともに、特定(電子)書籍等製作者のうち図書館等が視覚障害者等の窓口を担うことを想定する。 (2)提供までのスキーム 第11 条の提供については、特定(電子)書籍等の製作者への製作支援を目的に、特定(電子)書籍等製作者が当該書籍を購入したこと(詳細は(3)提供の条件を参照)及びABSCと契約を締結していることを条件に、電子データ(電磁的記録)の提供を取り次ぐ。特定(電子)書籍等製作者がABSC から受領した専用の電子データ(電磁的記録)を受領して製作した書籍については、特定(電子)書籍等製作者の蔵書等あるいは国立国会図書館・サピエ図書館から直接もしくは特定(電子)書籍等製作者を経由して視覚障害者等に提供することが想定される。 書籍を購入した視覚障害者等から電子データ(電磁的記録)の要請があった場合、当該視覚障害者が当該書籍を購入したこと等(詳細は(3)提供の条件を参照)を条件とする。当該視覚障害者等は、「特定(電子)書籍等製作者」を経由し、ABSC が各出版社から電子データ(電磁的記録)の提供を取り次ぐ。特定(電子)書籍等製作者は、ABSC から受領した専用の電子データ(電磁的記録)を受領した後、「各視覚障害者等のニーズにあわせたデータに加工」した後に視覚障害者等に提供を行う。上記について図にしたのは以下の通りである。 (注) 12 ここでいう電子データ(電磁的記録)とは、書籍製作で生成されるデータ(テキストデータ、PDF、EPUB、InDesign、Microsoft Word など)の形式を想定している。 (144ページ) 図5 電子データ(電磁的記録)の提供スキーム(第11 条及び第12 条) (図の説明) ・特定(電子)書籍等制作者(著作権法第37条第3項により製作できる者)として、大学図書館、学校図書館、公共図書館、点字図書館、ボランティア団体などが、視覚障害者等からデータ提供依頼を受けてデータを提供する。(データ提供にあたっては、国立国会図書館やサピエ図書館を介して行うことも想定される。) ・特定(電子)書籍等制作者は、ABSCとデータ提供契約を結び、ABSCは特定(電子)書籍等制作者を介して視覚障害者等からのデータ提供の依頼を受け、国立国会図書館やサピエ図書館の既存データを照会し、既存データがないものについては、出版者へデータ提供を依頼する。 ・出版者は、ABSCからデータ提供依頼を受けたら、著者へ許諾を取り、印刷会社へデータ作成・提供を依頼する。 (3)提供の条件 第11 条ならびに第12 条の電子データの提供の窓口となるのは、特定(電子)書籍等製作者となるが、その条件は以下の内容を想定する。 @第11 条・第12 条共通した提供の条件 1)提供されたデータ利用について、ABSC⇔特定(電子)書籍等製作者で利用契約を締結し、データ流出等への一定の担保を確保 今後、データの利用が増えていく中で、特定(電子)書籍等製作者にセキュリティ対策(たとえば、セキュリティソフトウエアの導入、データ授受の管理、クラウド上のみで作業し、作業完了後は消去するなど)をすることが要請されることが想定される。 2)提供データについては、提供する書籍によりデータの整備状況が異なることから、電子データ(電磁的記録)(テキストデータ、PDF、EPUB、InDesign、Microsoft Wordなど、電磁的記録ならば提供方式は問わない)ことを想定 この理由は、視覚障害者等によってデータ種別や加工方法のニーズが様々であり、特定(電子)書籍等製作者が視覚障害者等のニーズに合わせて加工する方が望ましい。出版社がデータの形式を選択できることは、データ提供のスピード並びに出版者及び著者に対して同一性保持を配慮する場合においても適切である。 (145ページ) 3)ABSC へのデータ提供依頼は、市場、国立国会図書館及びサピエ図書館に視覚障害者等への資料等が存在しないこと、提供されたデータは視覚障害者等用の資料作成にのみ用いられ、かつデータ提供を依頼する書籍等の購入が前提 上記のうち「市場」とは、申請者側の特性(視覚障害者(さらに弱視、全盲、盲聾別)、上肢障害、ディスレクシア)と、現在流通しているコンテンツの特性(EPUB、TTS 対応、オーディオブックなど)を踏まえて総合的に判断する。この判断の在り方は、引き続き検討していく。 A第11 条関連の提供における条件 1)ABSC と特定(電子)書籍等製作者は可能な限り窓口を集約したやり取りを想定 データ提供を必要とする製作者が現状少ない(ボランティア団体もデータを必要としない録音図書制作が多い)ため、直接の依頼でも当面は提供が集中しすぎることは想定されにくい。ただし、各団体それぞれから逐次対応していくと、ABSC が対応しきれなくなる可能性があるため、特定(電子)書籍等製作者において一定の単位(例:公立・私立学校・公共図書館・大学図書館等)で集約した代表者等が窓口となり、ABSC とやり取りを進めていくことを要望していく。特に、今後ニーズが増大した際には、前述の一定の単位で統合的な窓口を設置していくことが必須であり、継続的に検討していく必要がある。 B第12 条関連における提供の条件 1)障害者の窓口として特定(電子)書籍等製作者が担い、特定(電子)書籍等製作者による分野別の代表者がABSC とのやり取りを進める 仮に書籍等購入者に対してABSC が直接対応した場合、@ABSC において視覚障害者等のスクリーニングまですることが困難であること、A利用対象者数も膨大となることが予想され、視覚障害者等の相談などについて、視覚障害者等に近い団体がきめ細やかに対応する必要があるなど様々な課題があると想定される。 こうした視覚障害者等の確認やニーズ対応については、よりユーザーに近い立場である特定(電子)書籍等製作者が担っていくことが考えられる。 また、特定(電子)書籍等製作者も各団体それぞれから逐次対応していくと、ABSC が対応しきれなくなる可能性があるため、特定(電子)書籍等製作者において一定の単位(例:公立図書館、大学図書館等)で集約した代表者等が窓口となり、ABSC とやり取りを進めていくことを要件としていく。 (146ページ)