資料3−1 障害者による文化芸術活動の推進に関する現状と今後の課題 1ページ目 ※ 本資料では、文化庁と厚生労働省が第1期計画期間に実施した下記の調査に基づき、現状や今後の課題を整理。 文化庁が実施主体となった調査では、令和元年度に美術館・博物館を調査対象とした「障害者による文化芸術活動の推進に向けた全国の美術館等における実態調査」を実施。本資料における略称は「文化庁令和元年度美術館等調査」とする。 令和2年度に劇場・音楽堂を調査対象とした「障害者文化芸術活動推進に向けた劇場・音楽堂等取組状況調査」を実施。本資料における略称は「文化庁令和2年度劇場等調査」とする。 令和3年度に障害者を調査対象とした「障害者の文化芸術活動の実施状況調査」を実施。本資料における略称は「文化庁令和3年度障害者調査」とする。 令和3年度に文化芸術団体を調査対象とし、また横断的な整理・分析を行った「障害者による文化芸術活動の推進に関する実態把握事業(各分野の統括団体や先行モデル団体からヒアリング、専門家研究会の実施)」を実施。本資料における略称は「文化庁令和3年度芸術団体調査」とする。 厚生労働省が実施主体となった調査では、令和2年度に障害者、障害福祉施設、障害者芸術文化活動普及支援センターを調査対象とした「全国の障害者による文化芸術活動の実態把握に資する基礎調査」を実施。本資料における略称は「厚労省令和2年度調査」とする。 令和3年度に横断的な整理・分析を行った「全国の障害者による文化芸術活動の現状分析に関する研究」を実施。本資料における略称は「厚労省令和3年度調査」とする。 2ページ目 1 鑑賞の機会の拡大 @ 過去1年間に文化芸術を直接鑑賞したことがある障害者の割合は、令和2年は平成30年と比較して16.2%減少。令和2年に直接鑑賞しなかった理由は「特に理由がない」が48.3%。 文化庁令和3年度障害者調査によると、過去1年間に文化芸術を直接鑑賞した障害者の割合は、平成30年で42.6%、令和2年で26.4%となっている。 文化庁令和3年度障害者調査によると、過去1年間に文化芸術を直接鑑賞しなかった理由は、「近くで公演や展覧会などをやっていないから」が平成30年は10.8%、令和2年は11.9%、「入場料・交通費など費用がかかり過ぎるから」が平成30年は7.8%、令和2年は7.8%、「文化芸術に関心がないから」が平成30年は12.6%、令和2年は9.8%、「新型コロナウイルス感染症の影響により、公演や展覧会などが中止になった、又は外出を控えたから」が令和2年は20.9%、「特に理由はない」が平成30年は60.7%、令和2年は48.3%となっている。 A 障害者の鑑賞機会の拡大に向けた展示活動に取り組んだことがある美術館・博物館は24.2%で、令和元年度に主に障害者を対象とした鑑賞事業を実施した劇場・音楽堂は8.0%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館・博物館における、これまでの、障害のある方の鑑賞機会の拡大に向けた企画展・常設展等の展示活動の実施状況は、「実施した」が24.2%、「実施していないが計画はある」が4.6%、「実施も計画もない」が70.3%、「回答不明」が0.9%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂における令和元年度の主に障害者を対象とした鑑賞事業の実施状況(貸館以外の事業)は、「実施している」が8.0%、「実施していない」が92.0%となっている。 3ページ目 B 障害福祉施設のうち41.6%が利用者による文化芸術活動を実施しており、そのうち鑑賞に関わる活動を行う施設は34.1%。 厚労省令和2年度障害者調査によると、障害福祉施設に対して利用者による文化芸術活動を実施しているかどうかを聞いたところ、「実施している」が41.6%、「実施していない」が52.6%、「無回答」が5.8%となっている。 「実施している」施設での文化芸術活動の方向性を見ると、「鑑賞」は34.1%、「創造」は77.0%、「発表」は37.0%、「販売」は18.6%、「交流」は20.2%となっている。 C 障害者芸術文化活動普及支援事業※(以下「普及支援事業」)の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「情報保障や環境整備」「障害理解や鑑賞支援に関する研修等」に関する助言や協力等を行った団体はともに66.7%。 ※障害者芸術文化活動普及支援事業とは、地域における障害者の自立と社会参加の促進を図るため、全国に障害者の芸術文化活動に関わる支援センター等の設置を行い、支援の枠組みを整備することにより、障害者の芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)の普及を支援する事業。 厚労省令和3年度調査の普及支援事業の実施団体アンケートによると、令和元年度から3年度に「情報保障や環境整備」に関する助言や協力等を「行った」団体は66.7%、「行っていない」団体は33.3%、「障害理解や鑑賞支援に関する研修等」に関する助言や協力等を「行った」団体は66.7%、「行っていない」団体は33.3%となっている。 D 令和3年の障害者差別解消法の改正により、民間事業者においても合理的配慮の提供が努力義務から法的義務に変更。 E 障害者の鑑賞する機会について、準備・企画段階から障害当事者が参加して専門家へのヒアリングや相談をしながら準備を進めるなど、障害者にとって鑑賞の質をいかに高めるかを考えていく必要があるとの意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 F 鑑賞機会の拡大の実施が難しいと考える普及支援事業の実施団体からは、「具体的な対応のノウハウが十分ではない」などの理由が挙げられた(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 4ページ目 2 創造の機会の拡大 @ 過去1年間に鑑賞以外の文化芸術活動について、何らかの文化芸術分野・活動形態で活動を行っている障害者の割合は、令和2年は平成30年と比較して5.1%減少。 文化庁令和3年度障害者調査によると、鑑賞以外の文化芸術活動を実施した障害者の割合は、平成30年で16.3%、令和2年で11.2%となっている。 文化庁令和3年度障害者調査によると、鑑賞以外の文化芸術活動の実施状況を活動形態別に見ると、「仕事として報酬を得て作品を創作/演者として出演」が平成30年は7.1%、令和2年は6.4%「趣味などの個人的な活動で作品を創作/演者として出演」が平成30年は9.3%、令和2年は7.7%、「福祉事業所等で作品を創作/演者として出演」が平成30年は7.0%、令和2年は6.1%、「スタッフやボランティアとして参加」が平成30年は7.5%、令和2年は6.1%、「イベントやワークショップ、体験会などに参加」が平成30年は7.9%、令和2年は6.3%、「学校の授業や部活動など」が平成30年は8.0%、令和2年は6.5%となっている。 A 障害者に向けた教育普及活動に取り組んだことがある美術館・博物館は館内が21.0%・館外が15.0%で、令和元年度に主に障害者を対象とした創造事業を実施した劇場・音楽堂は1.8%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館・博物館における、これまでの障害のある方の創造機会の拡大等に向けた教育普及活動の実施状況について、館内では「実施した」が21.0%、「実施していないが計画はある」が4.2%、「実施も計画もない」が73.7%、「回答不明」が1.1%となっている。館外(アウトリーチ)では「実施した」が15.0%、「実施していないが計画はある」が3.3%、「実施も計画もない」が80.2%、「回答不明」が1.5%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂における令和元年度の主に障害者を対象とした創造事業の実施状況(貸館以外の事業)は、「実施している」が98.2%、「実施していない」が1.8%となっている。 5ページ目 B 障害福祉施設のうち41.6%が利用者による文化芸術活動を実施しており、そのうち創造に関わる活動を行う施設は77.0%。 (再掲)厚労省令和2年度障害者調査によると、障害福祉施設に対して利用者による文化芸術活動を実施しているかどうかを聞いたところ、「実施している」が41.6%、「実施していない」が52.6%、「無回答」が5.8%となっている。 (再掲) 「実施している」施設での文化芸術活動の方向性を見ると、「鑑賞」は34.1%、「創造」は77.0%、「発表」は37.0%、「販売」は18.6%、「交流」は20.2%となっている。 C 普及支援事業の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「芸術水準の向上の牽引力となる創造活動等」に関する助言や協力等を行った団体は75.6%であり、「福祉施設等を訪問・巡回した創造活動等」に関する助言や協力等を行った団体は73.3%。 厚労省令和3年度調査の普及支援事業の実施団体アンケートによると、令和元年度から3年度に「芸術水準の向上の牽引力となる創造活動等」に関する助言や協力等を「行った」団体は75.6%、「行っていない」団体は24.4%、「福祉施設等を訪問・巡回した創造活動等」に関する助言や協力等を「行った」団体は73.3%、「行っていない」団体は26.7%となっている。 D 文化芸術の鑑賞や創造などの活動は、お稽古事、習い事、生涯学習などから入る人が多いと考えられるため、「鑑賞の機会の拡大」や「創造の機会の拡大」のためには、その辺りの間口の広げ方も必要との意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 6ページ目 3 作品等の発表の機会の確保 @ 障害者の作品展示活動に取り組んだことがある美術館は20.7%で、令和元年度に主に障害者を対象とした発表事業を実施した劇場・音楽堂は2.3%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館のこれまでの展示活動における、障害のある方の作品展示の企画・実施状況について、「実施した」が20.7%、「実施していないが計画はある」が3.1%、「実施していない」が71.4%、「回答不明」が4.8%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂における令和元年度の主に障害者を対象とした発表事業の実施状況(貸館以外の事業)は、「実施している」が2.3%、「実施していない」が97.7%となっている。 A 障害福祉施設のうち41.6%が利用者による文化芸術活動を実施しており、そのうち発表に関わる活動を行う施設は37.0%。 (再掲)厚労省令和2年度障害者調査によると、障害福祉施設に対して利用者による文化芸術活動を実施しているかどうかを聞いたところ、「実施している」が41.6%、「実施していない」が52.6%、「無回答」が5.8%となっている。 (再掲) 「実施している」施設での文化芸術活動の方向性を見ると、「鑑賞」は34.1%、「創造」は77.0%、「発表」は37.0%、「販売」は18.6%、「交流」は20.2%となっている。 B 障害者による発表の機会が限られていることに関して、文化施設の企画に市民の発表活動が関われる余地が少ないこと、自主企画事業と貸館事業の中間的な事業を行うために、専門性のある人たちが地域文化の横のつながりをつくることが必要ではないかとの意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 C 普及支援事業の実施団体からは、「作品等の発表の機会」に重点的に取り組んでいるという意見が最も多く聞かれ、支援センターとしての重点的な取組が、初期は作品等の発表の機会ではあったものの、徐々に「人材の育成等」や「関係者の連携協力」に移行しているという意見も複数聞かれた(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 7ページ目 4 芸術上価値が高い作品等の評価等 @ 障害のあるアーティストの作品を収蔵している美術館は9.6%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館における障害のあるアーティストの作品収蔵・コレクション状況は、「作品収蔵・コレクションしている」が9.6%、「作品収蔵・コレクションしていない」が85.1%、「回答不明」が5.3%となっている。 美術館で作品収蔵を実施していない理由は、「館の収集方針と合わない」が46.7%、「寄贈の申請・依頼がない」が37.6%、「収蔵するうえで専門性を持った人材がいない」が14.8%、「作品の評価の方法がわからない」が8.3%となっている。 A 普及支援事業の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「作品等の評価を受ける機会等」に関する助言や協力等を行った団体は62.2%、「作品の収集・保存、アーカイブ化等」に関する助言や協力等を行った団体は55.6%。 厚労省令和3年度調査の普及支援事業の実施団体アンケートによると、令和元年度から3年度に、「作品等の評価を受ける機会等」に関する助言や協力等を「行った」団体は62.2%、「行っていない」団体は37.8%、「作品の収集・保存、アーカイブ化等」に関する助言や協力等を「行った」団体は55.6%、「行っていない」団体は44.4%となっている。 B 文化芸術団体や統括団体の役割を理解するために、社会的包摂に関する考え方や国際的な潮流について、評価や学びの場を求める意見や、文化芸術と社会との関わりを視野に入れた取組の必要性を言語化したり、現在の状況を批評したりすることが課題だとする意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査統括団体ヒアリング)。 C 「芸術上価値が高い作品等」をもう少しかみ砕いて説明する必要があるという意見や、障害のある人たちの芸術表現について学ぶ機会の不足を指摘する意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 D 普及支援事業の実施団体から、芸術上の評価のあり方や基準に関して、「障害者の表現が、既存の芸術の価値観を揺さぶっている現状からしても、既存の芸術の価値観では測れないものではないか」などの意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体アンケート)。 8ページ目 5 権利保護の推進 @ 普及支援事業の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「権利保護に必要な知識や手続きの普及」に関する助言や協力等を行った団体は75.6%、「知的財産に関する相談への助言や協力等」に取り組んだ団体は60.0%。 厚労省令和3年度調査の普及支援事業の実施団体アンケートによると、令和元年度から3年度に「権利保護に必要な知識や手続きの普及」に関する助言や協力等を「行った」団体は75.6%、「行っていない」団体は24.4%、「知的財産に関する相談への助言や協力等」に関する助言や協力等を「行った」団体は60.0%、「行っていない」団体は40.0%となっている。 A 文化芸術団体の取組の先行モデルとして、障害のあるアーティストの作品データ管理や著作権管理を代行する事業に取り組む事例も生まれている(文化庁令和3年度芸術団体調査先行モデル団体ヒアリング)。 B 著作権そのものは芸術性とは関係なく、人権という観点から、作者自身や作者が創作し表現したものに対する扱いや考え方の研修が必要であるとの意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 C 普及支援事業の実施団体から、参加者が実際に必要性を感じていないと知識だけの話になってしまう、実践の中で必要性が高まるという環境をつくることが重要であるとの意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 9ページ目 6 芸術上価値が高い作品等の販売等に係る支援 @ 障害福祉施設のうち41.6%が利用者による文化芸術活動を実施しており、そのうち販売に関わる活動を行う施設は18.6%。 (再掲)厚労省令和2年度障害者調査によると、障害福祉施設に対して利用者による文化芸術活動を実施しているかどうかを聞いたところ、「実施している」が41.6%、「実施していない」が52.6%、「無回答」が5.8%となっている。 (再掲) 「実施している」施設での文化芸術活動の方向性を見ると、「鑑賞」は34.1%、「創造」は77.0%、「発表」は37.0%、「販売」は18.6%、「交流」は20.2%となっている。 A 普及支援事業の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「販売や二次利用等に関する相談支援や人材育成、連携・協力」に関する助言や協力等を行った団体は80.0%。 厚労省令和3年度調査の普及支援事業の実施団体アンケートによると、令和元年度から3年度に「販売や二次利用等に関する相談支援や人材育成、連携・協力」に関する助言や協力等を「行った」団体は80.0%、「行っていない」団体は20.0%となっている。 B 主にデザイン分野で、障害者の作品の販売や、企業と連携して、様々な商品のデザインに障害者の作品を二次使用することで収益化を図る取り組み事例が生まれている(文化庁令和3年度芸術団体調査統括団体ヒアリング)。 C 普及支援事業の実施団体のうち「芸術上価値が高い作品等の販売等に係る支援」について、実施に困難を感じているという団体から、「芸術上の価値」の評価が難しいなどの意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 10ページ目 7 文化芸術活動を通じた交流の促進 @ 主に障害者を対象とした交流事業を実施している劇場・音楽堂は3.3%。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂における令和元年度の主に障害者を対象とした交流事業の実施状況(貸館以外の事業)は「実施している」が3.3%、「実施していない」が96.7%となっている。 A 障害福祉施設のうち41.6%が利用者による文化芸術活動を実施しており、そのうち交流に関わる活動を行う施設は20.2%。 (再掲)厚労省令和2年度障害者調査によると、障害福祉施設に対して利用者による文化芸術活動を実施しているかどうかを聞いたところ、「実施している」が41.6%、「実施していない」が52.6%、「無回答」が5.8%となっている。 (再掲) 「実施している」施設での文化芸術活動の方向性を見ると、「鑑賞」は34.1%、「創造」は77.0%、「発表」は37.0%、「販売」は18.6%、「交流」は20.2%となっている。 B 普及支援事業の実施団体のうち、令和元年度から3年度に「地域の障害者文化芸術活動のネットワークづくり」に関する助言や協力等を行った団体は86.7%(厚労省令和3年度調査実施団体アンケート)。 C 普及支援事業の実施団体から「文化芸術活動を通じた交流の促進」に重点的に取り組んでいるという意見も多く聞かれた。そうした取組は、各地域でのキーパーソンやサポーター的な人材の発掘、ネットワーキングにつながっている。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で交流の機会を作ることが難しいという意見や、地域的な特性で事業所同士の横のつながりが意外に少ないという意見もあった(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 11ページ 8 相談体制の整備等 @ 文化芸術活動を実施していると回答した者のうち、文化芸術活動を実施する際に、障害者の27.7%、障害福祉施設の24.3%が「鑑賞に関する相談や情報提供」について、障害者の20.9%、障害福祉施設の13.4%が「創造(創作)環境に関する相談や情報提供」について、障害者の44.1%、障害福祉施設の24.4%が「発表(公演・展示)環境に関する相談や情報提供」について、それぞれ外部の機関からの支援や協力を受けている。 厚労省令和2年度障害者調査によると、文化芸術活動を「実施している」と回答した障害者は67.3%、利用者による文化芸術活動を「実施している」と回答した障害福祉施設は41.6%となっている。 「実施している」と回答した障害者と障害福祉施設に、外部の機関からの支援や協力を受けている内容を聞いたところ、「鑑賞に関する相談や情報提供」は障害者の27.7%、障害福祉施設の24.3%、「創造(創作)環境に関する相談や情報提供」は障害者の20.9%、障害福祉施設の13.4%、「発表(公演・展示)環境に関する相談や情報提供」は障害者の44.1%、障害福祉施設の24.4%となっている。 A 普及支援事業による相談の対応件数は、平成30年度が約3,900件、令和元年度が約4,900件、令和2年度は約3,200件で推移している(厚労省令和3年度調査)。 B 相談をきっかけに、創造、発表、交流につながっていくことが多いとの意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査先行モデル団体ヒアリング)。 C 「相談体制の整備等」について重点的に取り組んでいる普及支援事業の実施団体からは、相談を丁寧に行うことで関係者の連携協力につなげているという意見や、ノウハウがない場合、専門家に話せる体制があればいいのではないかという意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 12ページ 9 人材の育成等 @ 障害者を対象とした事業について知識や経験のある職員を配置している劇場・音楽堂は14.4%、障害についての理解や障害者への対応についての研修を実施している劇場・音楽堂は32.7%。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、障害者を対象とした事業について知識や経験のある職員の配置状況について、「配置している」が14.4%、「配置していない」が85.6%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、障害についての理解や障害者への対応についての研修の実施状況は、「実施している」が32.7%、「実施していない」が67.3%となっている。 A 過去3年間の普及支援事業による研修会の参加人数は、平成30年度の約4,000人から令和2年度には約1万人へと増加している(厚労省令和3年度調査)。 B 統括団体から、現場に必要な人材やマンパワーの確保が難しい、ファシリテーターのスキルを学ぶ場がない、経験則のある特定の個人に負担が集中する傾向がある、障害福祉分野の専門性のある外部との連携が必要、障害福祉と文化芸術それぞれの領域を越えた連携のために持続的な関係を作る人材が両方に必要との意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査統括団体ヒアリング)。 C 普及支援事業の実施団体からは、より幅広い技術や経験をもった支援者を育成し、その人たちが活きるような現場(福祉施設や学校、地域の団体など)を増やすことが必要という意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体アンケート)。 D 実施に困難を感じている普及支援事業の実施団体からは、障害福祉施設の職員は異動等が多く、中長期的な観点での育成が必要という意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体ヒアリング)。 13ページ 10 情報の収集等 @ 今後、社会全体で障害者による文化芸術活動を推進していく必要があると考える回答者のうち、「障害者による文化芸術活動に関する支援や情報が障害者本人に十分届いていない」と回答した障害者は64.8%、障害福祉施設は59.3%。「障害者による文化芸術活動に関する国、地方公共団体、民間、現場関係者の情報共有ができていない」と回答した障害者は50.0%、障害福祉施設は32.5%、「障害者による文化芸術活動に関する実態把握や基礎調査が不足している」と回答した障害者は35.5%、障害福祉施設は18.4%。 厚労省令和2年度障害者調査によると、「今後、社会全体で障害者による文化芸術活動を推進していく必要がある」と回答した障害者は67.1%、障害福祉施設は85.4%となっている。 「今後、社会全体で障害者による文化芸術活動を推進していく必要がある」と回答した障害者と障害福祉施設に、障害者による文化芸術活動を推進するための課題を複数回答で聞いたところ、「支援や情報が障害者本人に十分届いていない」は障害者の64.8%、障害福祉施設の59.3%、「国、地方公共団体、民間、現場関係者の情報共有ができていない」は障害者の50.0%、障害福祉施設の32.5%、「実態把握や基礎調査が不足している」は障害者の35.5%、障害福祉施設の18.4%となっている。 A 普及支援事業によるウェブサイトアクセス数は、平成30年の約37万9,000回から令和2年度の約107万3,000回に増 加(厚労省令和3年度調査)。 B 文化芸術団体や統括団体の役割として、障害者文化芸術活動を推進するネットワークを形成し、成功事例や苦労した経験などの情報を共有しながら、意見交換や学び合う機会を作ることや、専門知を育み、文化芸術の社会的な価値を示していくことが重要という意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査統括団体ヒアリング)。 C 障害の種別によって情報の届け方が異なることから、福祉施設の人たちも情報の発信、受信にスキルを要するという意見や、行政の障害福祉の部署では障害者関係の情報提供のサポートなどをしているため、福祉だけでなく文化面でも情報共有・情報発信を求める意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 D 普及支援事業の実施団体から、活動地域によって文化芸術活動の機会に偏りが出てしまっているようにも感じる。行政の福祉・文化振興担当者が障害者の芸術文化活動について学べる機会、現場での実態を知る機会を増やし、その地域では最低限どのような情報や機会があればよいのか、あらためて検討することが必要との意見があった(厚労省令和3年度調査実施団体アンケート)。 14ページ 11 関係者の連携協力 @ 美術館・博物館のうち、障害のある人を対象として実施した企画・展示で外部機関との連携した施設は53.8%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館・博物館における障害のある人を対象として実施した企画・展示での外部機関との連携状況について、「外部連携機関あり」が53.8%、「外部連携機関なし」が25.1%、「回答不明」が21.1%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂における障害者を対象とした事業を実施するにあたっての他の組織・機関等との連携状況について、「連携して実施している」が18.1%、「連携して実施していない」が81.9%となっている。 A 美術館・博物館が求めることは「助成・補助制度の充実」が69.6%、劇場・音楽堂が障害者を対象とした事業の実施を可能とする条件(サポート)は、「障害者を対象とした事業の企画や福祉について専門の知識を持った人の協力」が53.5%。 文化庁令和元年度美術館等調査によると、美術館・博物館が障害者の来館促進に向けて国・自治体等に求めることは、「助成・補助制度の充実」が69.6%、「ガイドラインやマニュアルの整備」が58.0%、「成功事例の情報提供」が45.3%、「研修機会の提供」が41.6%となっている。 文化庁令和2年度劇場等調査によると、劇場・音楽堂が障害者の来館促進に向けて国・自治体等に求めることは、「職員に負担のかからないような体制ができること」が50.7%、「職員に障害者を対象とした事業についてのスキル(ノウハウ)を身に着ける研修等の実施」が40.5%、「予算の確保」が50.8%、「障害者を対象とした事業の企画や福祉について専門知識を持った人の協力」が53.5%となっている。 15ページ B 障害者芸術文化活動普及支援事業の支援センターが協力してもらう機関や専門家の上位3位は、「障害当事者団体・福祉関係者」が91.7%、「行政の福祉部課」が88.9%、「文化施設」が80.6%。 厚労省令和2年度調査の障害者芸術文化活動普及支援事業の支援センターのアンケートによると 、支援センターの活動を実施する際に協力してもらう機関や専門家では、「障害当事者団体・福祉関係者」が91.7%、「行政の福祉部課」が88.9%、「文化施設(美術館、博物館、劇場、ホール等)」が80.6%、「普及支援事業の実施団体」が77.8%、「ボランティア」が72.2%、「文化団体・文化関係者」が66.7%、「特別支援学校・学級」が63.9%、「行政の文化部課」が52.8%、「上記以外のNPO」が38.9%となっている。 C 支援センターが協力してもらう機関や専門家について、「行政の文化部署」の割合が低いのは大きな課題であり、行政内部で福祉と文化が縦割りにならずに情報共有していくことが今後は重要だという意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査専門家研究会)。 D 文化芸術の領域でも関心のある人が限られている、「合理的配慮」に対する理解が不足している、社会的包摂の活動への評価や効果測定が不十分ではないか、障害者の創作活動に経済的価値を導入することに違和感があるなどの意見があった(文化庁令和3年度芸術団体調査統括団体ヒアリング)。 16ページ 参考資料:地方公共団体における計画策定状況 文化庁地方文化行政状況調査によると、地方公共団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する計画の策定状況について、令和2年10月1日時点での策定済みの団体数は、都道府県で11団体、政令指定都市で4団体、中核市で10団体、その他市町村で10団体となっている。 令和3年10月1日時点での策定済み団体数と策定率は、都道府県は27団体で57.4%、政令指定都市は6団体で30.0%、中核市では15団体で24.2%、その他市町村では36団体で2.2%となっている。 (参考)都道府県における計画の位置づけ 単独の計画として策定している都道府県は千葉、滋賀、鳥取、大分の4団体、文化政策の計画の一部に位置付けている都道府県は岩手、宮城、山形、静岡、京都、福岡、鹿児島の7団体、障害者施策の計画の一部に位置付けている都道府県は北海道、福井、山梨、岐阜、愛知、大阪、奈良、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、熊本の13団体、文化政策と障害者施策の両方の計画に位置付けている都道府県は栃木、埼玉、神奈川の3団体となっている。