01/11/09「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会(第14回)」議事録 「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会(第14回)」議事録              厚生労働省年金局年金課        「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方            に関する検討会(第14回)」議事次第                 日時 平成13年11月9日(金)14:00〜16:03                 於  厚生労働省専用18・19・20会議室 1.開会 2.委員出席状況報告 3.議事    ・女性と年金をめぐる諸論点についての討議 4.閉会 ○袖井座長  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「女性のライフスタイルの変化等に 対応した年金の在り方に関する検討会」を開催いたします。  本日は大変お忙しいなか、天候の悪い雨のなかをお集まりいただきまして誠にありが とうございます。  それでは、事務局より出席状況を報告していただきたいと思います。 ○度山年金課補佐  本日の委員の出欠状況について、ご報告を申し上げます。本日、宮武委員、藤野委員 、住田委員、高島委員が所用のため欠席をされておられます。その他の委員は全員出席 されております。 ○袖井座長  それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は、前回に引き続きまして具体的な 論議すべき制度設計上の論点のうち「離婚時の年金分割」と「遺族年金」について、ご 議論いただきたいと考えております。それから前回ご議論いただきました「短時間労働 者に対する厚生年金の適用のあり方」についても委員から要望のあった追加の資料を用 意していただいておりますので、もう少し議論いただきたいと思います。  それでは、事務局から資料の説明を受けたいと思います。なお、資料の説明は、前回 と同じようにまとめて全部していただきまして、議論につきましてはそれぞれの論点ご とにお願いしたいと考えております。また、きょうも非常にたくさんの資料がございま すので、ちょっと長くなるかもしれませんけれども、事務局よろしくお願いいたします 。 ○度山補佐  本日お手元に準備をしております資料は、事務局の方から資料1と資料2、それから 堀委員より追加意見の提出がありましたので、お配りしております。  それでは説明に入っていきますが、資料1につきましては、本日のご議論をいただき ます「離婚時の年金の分割の取り扱い」と「遺族年金」に関しましてのこれまでのこの 検討会での議論をまとめたものでございます。具体的な制度といたしまして、どちらも 極めて技術的な論点を含んでおりますので、その点も含めて、資料2に沿いましてご報 告を申し上げます。  まず「離婚時の年金分割」ということでございます。資料の1ページ目でございます が、離婚分割を語るときに、いつも年金の「一身専属性」ということが問題になるわけ でございます。これまでの議論の中でも、この一身専属性の性格について、これは年金 の政策上のいわゆる公法の問題なのか、例えば財産権とか私法に係る問題なのか、この 点についてどう考えるのかというお尋ねもあったところでございます。  それぞれの年金法には、年金給付を受ける権利について「譲り渡し、担保に供し、又 は差し押さえることができない」といういわゆる受給権の保護を定めた規定がございま す。これは、もしこのような制限がない場合には、年金は稼得能力を失った後の所得の 保障を目的とした制度でございますので、何か一時的な利益のために年金権を他人に譲 渡をする、あるいは差し押さえられるというようなことがあった場合には、その所得の 喪失を補い、生活を保障するという役に立たないものになってしまい、そうなることは 、長期にわたって国民の生活の安定を図る年金制度の趣旨に沿わない、そのような事態 が起きないようにと配慮してつくられた規定であるということでございまして、いわば 公共政策的な見地から、年金の財産権について一定の制限をかけているものであると理 解ができるかと思います。  この規定の解釈として、年金の受給権というものは、受給権者の一身に専属するもの だと理解がされておるわけでございます。  年金の受給権については、各年金法で、受給権者の死亡により消滅するということが 規定されておりますし、この一身専属という考え方から、相続の対象にもならないとい うふうに解されておるところでございます。  参考までに国民年金法、厚生年金保険法、それぞれ受給権の保護を定めた規定の条文 を置いております。  2ページ目でございますが、基礎年金について、どう考えるかということについても 議論がございました。基礎年金の導入と年金分割ということをどのように整理すればよ いかという点につきましては、以前、第3号を議論いたしましたときに見ていただいた 絵と同じものでございますが、60年改正前と60年改正後で左右に比較をしております。  従前の制度でサラリーマン本人に対して二人の生活を支えるものとして行われていた 給付について、これをサラリーマン本人と被扶養配偶者それぞれの基礎年金に分化・発 展させたという説明がされております。結果として、仮に離婚した場合でも、自分名義 の基礎年金が支給されることとなるということで、女性の年金権が確立したと説明され ております。  基礎年金自体はほかにも様々な政策目的を持って、全国民共通の年金給付ということ で設計がされているわけですが、年金分割との文脈で考えますと、老後の生活の基礎的 な費用に対応する部分については、かつての厚生年金の仕組みでサラリーマン本人に対 する年金給付が被扶養配偶者に対して、いわば制度的に分割をされたともとらえられる のではないかということでございます。  3ページ目でございますが、年金分割を語るときに、夫婦別産制ですとか、離婚のと きの財産分与との関係でも議論があるわけでございます。ここでは現在の民法の定めを まとめておりますが、今の民法は夫婦別産制を採用しており、夫と妻それぞれの財産と いうことですが、離婚をした場合には、清算的な意味合いで財産分与の請求ができると 定めておるわけでございます。  768 条の規定を書いてございますが、第3項を見ていただくとおわかりですが、「当 事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせる べきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」と規定されております。  それから、平成8年に法制審議会で決定をされました民法改正案の要綱の中では、こ の規定がより具体化される形で、離婚時の財産分与の額ですとか、方法につきまして、 そのルールについて、より法律上明確な規定として記されているところでございます。 現行の条文では、「その他一切の事情」と書かれているものにつきまして、例えば「当 事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況」等 々、いろんな考慮要素を規定しておるということと、もう一つは、考慮要素の1つでご ざいます財産の取得や維持に対します寄与の程度というものについて、その違いが明ら かでないときには、相等しいものとすると、推定するという規定を置いて、ルールを明 確化しておるところでございます。  4ページ目でございますが、この財産分与の中で、実務上離婚したときの年金という ものがどのような取り扱いを受けているかということでございます。財産分与には学説 上、夫婦の財産を清算をする、離婚後の扶養、離婚に伴う慰謝料と、この3つの要素が あると言われておりまして、それぞれに照らして、年金がどのようにとらえられておる かということで、様々な判例がございます。  東京高裁での昭和61年の判決では、将来受給する年金について、不確定要素が多いと いうものを、夫婦の現存する共同財産とすることができないとして、清算の対象とする ことを否定した、という判決がございます。  一方で、受給している年金というものも財産分与の対象にとらえて、定期的に支給さ れる年金の一部を相手方に支払うということを命じた判決も見られます。ここでは、以 前にもご紹介いたしました横浜地裁相模原支部の平成11年の判決の概要を記しておりま すが、64歳のご夫婦の訴訟でございまして、このときに両方の年金の差額の4割相当を 扶養的な財産分与、いわゆる離婚後の扶養という性格での財産分与ということで、妻に 分与すること、月々、年金の一部を妻の死亡まで毎月定期的に債務として支払うという ことを命じております。  分割割合の4割については、この判決での財産分与全体を通じた割合ということで、 定められているようでございます。  ただ、この判決については、その後控訴審がありまして、控訴審ではこのご夫婦の婚 姻関係が完全に破綻しているとまでは認められないということで、この判決が取り消さ れておりますので、確定判決ではないという留保が必要かと思います。  そのほかに、資料には書いてございませんが、やはり横浜地裁で平成9年に、相手が 離婚後に得られる収入と、現に受給をしている年金額というものを考慮して、月々15万 円ほどの支払いを命じたという判決がございます。  判例における取り扱いはこのように、まだ確立している状況ではないように思われま すが、年金生活者が離婚をしたときの扶養的な財産分与という形では認められたものが あると言えるかと思います。一方で、未裁定の年金につきましては、清算の対象とする ことを否定した判決もございますので、まだ未裁定の年金についての整理はなお未確定 であろうかと思いますが、判例の流れとしては、退職金について、受領前にも分与対象 とする傾向が最近はあるようでございます。  5ページ以下、年金の分割ということが議論にのぼる背景となる状況についてまとめ ております。  まず最初に、年金の受給額、女性の年金額と男性の年金額を比較した場合に差がある という現実がまずございます。  6ページ目には、65歳以上単独世帯の所得金額を男女で比較しておりますが、ここに も差が見られるところでございます。  7ページ目の2番目でございますが、離婚の件数が増加をしています。若年齢の離婚 も増えているわけでございますが、このグラフを見ていただいてわかりますように、40 代後半から50歳代における増加も目につくところでございます。  8ページ目には、同居期間別にみた離婚件数と構成割合、これも以前見ていただいた 資料でございますけれども、20年以上連れ添ったご夫婦の離婚が、昔に比べてかなり増 えている状況があらわれてございます。  9ページ目、3点目でございますが、年金制度が成熟化したということ、3世帯同居 から核家族化の傾向があるということが相まって、高齢期の生活にかかわります年金の 比重というもののウエイトが高まっているということが言えようかと思います。平成12 年の厚生白書でご紹介をしたデータでございますが、高齢者の属します世帯の所得の合 計を世帯員数で割って、1人当たりの所得を出し、そのうち公的年金が所得全体に占め る割合について、所得分位別に見ておるわけでございますが、真ん中ぐらいの第4、第 5、第6十分位で見ますと、昭和60年(1985年)の段階では大体3割前後でありました ものが、1997年の時点では半分を超しており、それだけ高齢期の生活にかかわります年 金の比重のウエイトが高まっているということがいえようかと思います。  10ページ目でございますが、これも以前ご紹介をいたしました諸外国におきます離婚 時の年金の取扱いです。第9回の年金分割の資料につきまして抜粋をいたしまして、一 部新たに得られました情報も追加をしてまとめております。10ページにまとめておりま すけれども、ドイツとイギリス、カナダの取扱いですが、どの国においても分割が行わ れますのは、離婚時に受給権が発生している場合に限られず、受給権が発生する前でも 行われているということと、もちろん両方が年金権を持っている場合の調整も含まれて いるということ。  それから、分割の方法としては、これはなかなか整理が難しいのですが、年金権その ものを分割する方法と、支払われる年金額を債権的にとらえて、それを分割するという 方法があり、両方の方法が併用されている国もあるということでございます。  また、分割をどういうふうにするかということと、手続的な点でございますが、これ は様々でございまして、離婚に伴って自動的に均等に分割をしているのはカナダでござ います。離婚をめぐる裁判手続の中で、原則均分する取扱いにしている、これがドイツ の取扱いでございます。それから、財産分与を行うに当たり、その中で総合的に考慮さ れて、個別のケースごとに裁判所が定めるというのがイギリスの取扱いでございます。 それから、分割をするかしないかということについて、ドイツの仕組み、カナダの一部 の州では、当事者間で分割を行わない取決めがあれば、それが優先されるというような 定めが家族法などの規定にあり、そのような当事者間の合意が尊重されております。  分割の対象になっている年金でございますが、公的年金では所得比例の年金がその対 象になっているほかに、ドイツやイギリスでは企業年金のウエイトも大きいわけですが 、企業年金等も対象に含まれて考えられております。  それから、離婚をした場合の年金給付という広い意味でとらえますと、分割をすると いう方法以外にも、離婚した元配偶者に対しまして、配偶者に給付される年金、配偶者 年金が給付されるという取扱いがアメリカにございます。  このようなことから、離婚時の年金分割というものを考えますときのポイントを12 ページに整理しております。それぞれご説明してまいりますが、まず1点目は、年金の 分割の是非についての議論。1つの意見として、そもそも離婚に伴う財産の整理という ものは当事者間で行うべきことであるということで、年金制度がとやかく言う問題では ないという意見もあるわけでございますが、そもそもまず年金の分割の是非ということ をどのように考えるか。  次に判例実務上も年金の差額を支払えというような取扱いがあるということでござい ますが、そういった取扱いとの関係をどう考えるか。ご紹介をいたしました判例に見ら れますように、今の仕組みのままでも配偶者の年金の一部に相当いたします債務、定期 的な債務の確認というものがなされれば、金銭的には、年金を分割したのと同じような 効果が生じるということでございます。もちろん、制約がないわけではありません。先 ほどご説明した一身専属性との関係で、年金権を譲渡をしたり、差し押さえたりするこ とはできないので、例えば相手がその履行を怠った場合に問題が生じるということと、 相手が死亡した場合には支払いを受けられないなどの問題も指摘されており、このよう なことについてどう考えるかということが論点になろうかと思います。  3点目、冒頭にご説明をいたしました一身専属性との関係の整理でございます。受給 権者の権利を保護するというのが一身専属が設けられている趣旨でございますが、その ような趣旨との関係で年金分割はどのような考え方であれば認められるのかという点に ついての整理が必要だということと、一身専属性の規定なり趣旨から考えて、一定の制 約があるのかないのかということです。例えば相手にすべて年金を譲渡してしまうよう な分割は、受給権保護という趣旨から考えて妥当なのかどうなのかということも議論の 対象になろうかと思います。 13ページ、4点目の論点ですが、分割の位置付けなり方 法、割合ということでございます。これは二分して考えるならば必ず均等に分割をする 、あるいは原則均分するというような扱い、当事者間の調整に委ねるという方法などが あろうかと思いますが、「必ず分割をする」という考えをとった場合につきましては、 民法の財産分与の規定が一切の諸事情を考慮して分与の有無、割合を定めるということ との関係をどう考えるか、あるいは財産分与との関係を離れて、年金の生活保障といっ た観点から、こういう扱いを定めるということは必要なのか、あるいは適当なのかどう かということが問題かと思います。  それから、当事者間の協議あるいは裁判の結果に委ねるという方法もあろうかと思い ますが、その場合には、この一身専属性との関係で、先ほどの繰り返しになりますが、 一定の制約を受けるのではないか。全部を譲ってしまう、あるいは半分以上を譲ってし まうようなことになると、当人の生活保障という観点からどうかといったようなことも 考えられるのではないかということでございます。  5つ目の論点ですが、分割の対象となる年金ということで、基礎年金部分については 、先ほどご説明したとおり、制度的な分割が行われていると考えられますが、どう考え るか。報酬比例年金を対象と考える場合に、企業年金的な色彩のあるもの、今の仕組み ですと厚生年金基金が厚生年金の給付の一部を代行しておりますが、その扱いや、企業 年金に相当します職域部分を含んだ共済年金の扱いについて、どう考えるかということ が論点となると思います。  次の14ページ、分割の方法ということでございます。先ほど年金権そのものを分割す るということと、支給される年金額を分割するということで、言葉で申し上げましたが 、図示を試みてみました。年金権そのものを分割するというのは、我が国の仕組みに置 き換えますと、保険料を納付したことが、記録されて、それが将来、年金を受けるとき の根拠になるのですが、保険料を納付したという記録のレベルで分割を行う形と理解で きます。  そういたしますと、ちょっと図が見にくいかもしれませんけれども、婚姻期間中にそ れぞれの納付の記録があり、夫婦の差がある場合に、婚姻期間中に対応した記録の一部 を、離婚に伴って、このケースですと、夫から妻に移転をする。それぞれ支給事由が生 じたとき、例えば、65歳を迎えたときに、その納付記録に基づいて、分割をした方は減 った記録で、分割を受けた方は増えた記録でそれぞれ裁定が行われて、それぞれ亡くな るまで支給がされるという形になります。  次に、支給される年金額の分割を考えますと、記録の移転ということではなくて、年 金の支払いを受け始めるときに、婚姻期間中に相当する部分について、年金の一部分を 金銭的に夫から妻に移転する。婚姻期間中に対応する年金額の一部分を分割して妻に支 給するということになりますと、あくまで夫の年金の一部を妻に渡すという形になりま すので、頭の整理としては、夫の受給開始年齢から妻にその一部分が渡されて、夫が亡 くなったところで終わるという構成になるのではないかと考えられます。  このような2つの方法についてどう考えるかということですが、15ページ目に論点を まとめてございます。年金権そのものを分割をすることになりますと、元配偶者の保険 料の納付記録を用いまして、自分が年を取った、あるいは障害になったという保険事故 に対する給付が自分名義で行われるということを意味いたしますので、これは単に 1,00 0万ある財産を 500万ずつに分けるといったような財産の分割とか債権の譲渡という意 味を超えた、年金制度上の対応という性格も有するのではないかと考えられます。  結果といたしまして、元配偶者から独立した年金権が得られることとなりまして、自 分が受給年齢になったときに年金が支給され、仮に相手が亡くなっても、自分の最期ま で年金が支給されるという帰結になろうかと思います。基礎年金をかつて夫の厚生年金 から分離をしたときに同じようなことが起きておりますが、それと同じことが分割され た年金について起こると考えられるわけでございます。  この方法につきましては、いろいろ書いてございますが、先ほどご説明したように、 厚生年金の中で一部積立方式的な財政運営をとっております厚生年金基金と厚生年金と の本体の間でこの分割という問題をどう調整するか。あるいは夫婦の間で加入している 制度が違う場合、例えば、片方は厚生年金、片方は共済年金の場合の調整。分割をした 給付を例えばどちらから出すか、そのときに財源をどういうふうに移管をするかという ようなことですとか、分割した記録の管理。あるいは、今、こういう規定がございませ んものですから、分割をされた記録を用いたときの新しい年金額の算定ルールというも のを法律上整備しなければいけませんし、業務システムにおいても対応が出てくるとい ったように、非常に細かな綿密な検討を要する事項が相当量あるのではないかというこ とが指摘できるかと思います。  それから、年金額を分割するということになりますと、このようなややこしい問題は ないわけでございますけれども、公的年金でこのような仕組みをとらえますと、幾つか 考慮が必要な点が出てくると思います。  最初に、(1)で書きましたように、元配偶者が死亡した場合には分割された年金の支給 も受けられなくなるという意味で、生活保障の面ではやや劣るかということ。  (2)元配偶者が年金受給年齢に達しますと、自分はまだ若くても年金の一部を譲渡を受 けるということになると、離婚という保険事故ではない事由によって年金を受給すると いうことにもなるわけで、そういうことをどう考えるかということです。  (3)イギリスがイアーマーキングとしてこのようなやり方を認めておりますが、離婚後 もずっと相手の状況を気にかけていなければいけない。相手が仮に受給年齢前に死亡い たしますと年金の移転もないということになりますので、そうすると、できれば離婚後 はお互いのかかわり合いを断つ、いわゆるクリーンブレークが望ましいという考えに及 すると指摘されていると聞いております。  それから、年金を払う側にとっても、だれとどのように暮らしているかということを 、それぞれの状況を確かめて、初めて年金が支給できるということで、その間の事務量 も膨大になろうかと思います。以前の議論の中で、離婚、結婚を繰り返したときの、こ ういう分割の履行可能性についてどうなのだろうというご指摘がございましたが、特に 後者のやり方ですと、Aさんに何万円、Bさんに何万円、Cさんに何万円というような ことになって、それぞれの方のステータスを確認して年金の支払いをするということで 、これはなかなか大変なことではないかと考えられるわけでございます。  16ページでございますが、分割する際の手続的な側面でございますが、これは各国の 家族法の仕組みともかかわってまいるわけですが、ドイツやイギリスにおいては、分割 は裁判所の判決や命令に基づいて行われています。  一方で、我が国の離婚のほとんどは協議離婚が占めておるということで、そのような 状況の中で手続をどう考えるかということが論点としてあるのではないかと思います。 当事者間の合意のみでの分割を適正に行っていくことは可能であろうか、それは適当な ことであろうか。あるいは当事者間の合意のみでは心もとないということであれば、何 か裁判手続の関与を求めるとした場合に、今離婚件数が大幅に増加しておりますので、 裁判所における体制といった意味でどうだろうかということがあろうかと思います。  それから、どのような離婚が対象になるかということですが、3 つの国とも、制度を 施行した日以降の離婚を対象にしておるということでございまして、施行日以前の離婚 を対象とするということはなかなか問題が大きいと考えられるということ。また、婚姻 期間の問題があろうかと思います。カナダでは1年以上の婚姻期間がある場合を対象に しているというインフォメーションがありますが、我が国の離婚件数、中高齢の方が増 えてきているということはあるのですが、若年の婚姻期間が短期間の離婚が大半を占め るわけでございまして、このような場合まで認める必要性なり実益性というものをどう 考えるか。あるいは少し性格は異なりますが、アメリカの配偶者給付は10年以上の婚姻 期間がある場合に支給されるということになっておりまして、こういった一定の婚姻年 数以上の婚姻を対象とするという考え方についてどのように考えられるかということが あろうかと思います。  それから、2つ目の論点、「遺族年金」でございます。  遺族年金につきまして、いろいろこれまでもご議論をいただいたわけでございますが 、遺族年金の全体像というものをおつかみいただくことが必要かと思いまして、現在の 遺族年金制度の仕組みを総括的にまとめております。  遺族年金制度には、現役期に被保険者が死亡したときに、その者によって生計を維持 されていた配偶者や子に対する給付という側面と、年金を受給する高年齢のときに厚生 年金の受給者であります配偶者が死亡したときに、その者に生計を維持されていたもう 一方の配偶者に対する給付という、2つの性格があろうかと思います。自分の老齢厚生 年金との間で3つの選択があるということがよく遺族年金の場合議論にのぼるわけです が、今の整理で申し上げますと、いわゆる高齢の遺族配偶者にのみこういう問題が起こ るということをまずご理解いただきたいと思います。  18ページでございますが、若年の遺族配偶者(妻)につきまして、どのような給付体 系になっておるかということでございます。厚生年金に加入していた夫が死亡したとき に、18歳未満の子がある妻がどういう給付になるという流れを書いてございますが、夫 が死亡してから、子どもが18歳になるまでは遺族基礎年金に子の加算がつき、それに遺 族厚生年金、これは夫の厚生年金の4分の3で計算されますが、被保険者期間が25年に 満たない場合は25年で計算するということになっていまして、ここではモデル年金にな らいまして、36万 7,000円という標準報酬で、25年間のケースで計算してございます。  子どもが18歳に到達をいたしますまで、遺族基礎年金がもらえます。その後は、大半 のケースは、妻が40以上になっていると考えられますので、厚生年金制度の方から、中 高齢寡婦加算という給付がございます。そして65歳になったときには、自分の老齢基礎 年金に遺族厚生年金が上乗せされるという構造になるわけでございます。  次の19ページでございますが、子どもがいない場合にどうなるかということでござい ます。妻の年齢とも多少かかわってまいりまして、夫が死亡したときに妻が35歳未満で あった場合については、64歳までの給付はいわゆる2階部分の遺族厚生年金のみでござ いまして、65歳になったときに老齢基礎年金が支給されるという仕組みでございます。  それから、夫が死亡したときに、妻が35歳以上ということになりますと、40歳から64 歳までの間は中高齢寡婦加算という給付が行われることになっておりまして、65歳を過 ぎますと、それが基礎年金と遺族厚生年金という構成になるわけでございます。  それから、20ページでございますが、今度高齢になってから遺族になったというケー スですと、いわゆる夫40年片働きという形でよくお示しをしておりますモデル年金の受 給世帯で、夫が亡くなったときにどういう計算になるかということですが、基礎年金は 当然妻一人ということで1人分になります。厚生年金の方は、夫の厚生年金の4分の3 ということで、合わせまして15万円程度の給付となるわけでございます。お二人で暮ら していらっしゃったときには約24万円。お一人になられますと15万円ということですか ら、概ねお二人で生活をしておられたときの6割ぐらいが保障されておるということで ございます。  それから、自身の老齢年金が受けられるときには、よくご存じのとおり、自分の老齢 厚生年金をとるか、遺族厚生年金をとるか、あるいは両方を一定割合で併給をするかと いう3つの方法からいずれかを選択をするという関係に立ちます。  このような方法をとっていることで、21ページでございますが、共働き家庭と片働き の家庭で遺族年金については不均衡が生じているのではないか。世帯報酬が右と左同じ でございますけれども、老齢年金については、報酬比例部分も含めて夫婦の受給額は同 じですが、片方が亡くなった後の遺族年金ということを考えた場合には受給額に差が出 るということでございます。  論理的にはこの差といいますのは、遺族厚生年金の水準である、老齢厚生年金の4分 の3という水準と両方合わせて併給をする場合の水準であります、両者の老齢厚生年金 のそれぞれ2分の1、この4分の3と2分の1という水準を合わせることによって、左 側と右側のケースを等しくすることができるわけでございます。  それから、22ページ目でございますが、亡くなったときに被保険者や年金受給者に生 計維持されていたということが遺族年金の要件となっており、死亡した被保険者と生計 を同じくし、それから恒常的な収入が将来にわたって年収 850万円以上にならないと認 められることということをもってその認定をしております。  経緯は22ページの左側の方にまとめたとおりでございますが、これはいわゆる所得制 限とはやや考えが異なりまして、遺族年金の受給権が発生するか、発生しないか、権利 発生要件でありますので、この時点でどうだったかということをワンポイントで見ると いうことになります。このため、社会通念上物すごく高額の収入を有している場合でな ければ、通常は生計維持の関係があったというふうにとらえて、遺族年金の支給対象と するという考え方がとられてきておりまして、 850万円といいますのは、大体所得分位 の上位10%に当たりますものの推計の年収をもって定めておるということでございます 。  それから、遺族年金、大変複雑な仕組みになっておるわけでございますが、基礎年金 制度を導入いたしました昭和60年以前の仕組みがどうだったかと申しますと、厚生年金 の定額部分、報酬比例部分両方を合わせたものの2分の1というのが遺族年金の水準だ ったわけでございます。これにつきましては、当時から2分の1では低いのではないか という指摘が非常に多うございまして、昭和60年の改正で、遺族の年齢や態様、子ども を養育するということを特に重くとらえまして、給付を重点化して水準の引き上げを図 ったものでございます。左から右に見ていただきますと、子どものある妻や子どもに対 しては遺族基礎年金が支給をされるということで水準も引き上げられております。それ から、中高齢という要素にも考慮が必要であろうということでございまして、ここにも 加算を設けておる。一方で、そういった要素のない方については、2階の報酬比例部分 のみの給付とするという形で、要はめりはりがつけられたということで、先ほど見てい ただいたように、態様が変わりますと給付の中身が変わるという構成になっていること をご理解いただきたいと思います。  24ページ目でございますが、以前、ご説明をいたしました諸外国の遺族年金の取扱い につきまして、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの5カ国の制度 をレビューをした結果のまとめでございます。子どもを養育いたします若齢の遺族配偶 者に対する遺族年金は、フランスを除きましていずれの国にも存在をしております。フ ランスではこの点の給付を家族手当の仕組みでやっておりまして、社会保険類似の仕組 みでやっているということを考えますと、こういう子どもの養育ということにかかわり ます遺族という給付は、広い意味での社会保険のシステムでとらえられているというふ うに言えるかと思います。  それから、子どもを養育をしない若齢の遺族配偶者に対する遺族年金でございますが 、ない国もありますし、あっても有期という国もありますし、また、子どもを養育する 場合よりは一般的に低額であるということでございます。  それから、高齢期の遺族配偶者に対する給付ですか、スウェーデンを除きまして、い ずれの国にも存在をいたします。この場合に、自分の老齢年金の受給権があるというこ ともあるわけですが、ドイツを除いて、自分の老齢年金を受給するということがまず基 本にあって、その上で遺族年金について一定の調整が行われて支給されるというのが一 般的であるというふうに整理ができるかと思います。  それから、受給資格における男女差は見られないか、ある国においても撤廃の傾向で ございます。  個別の国の説明は省略をさせていただきます。  27ページでございますが、遺族年金に関します論点のポイントです。  まず制度的には2つの側面があるということでございますので、現役期、高齢期に分 けて考える必要があろうかと思います。現役期の被保険者の死亡に伴います所得の喪失 への対応ということでございますが、子どもを養育する若齢の遺族配偶者に対する保障 はほとんどの国の年金制度について行われておる。  そのほかのカテゴリーに比べても手厚い給付が行われているという現実がある中で、 このような必要性についてどういうふうに考えるかということでございます。  それから、子どもを養育しない若齢の遺族配偶者につきましては、今の我が国の制度 でも、ご説明をいたしましたように、子どもを養育する者と比べて低額の給付としつつ 中高齢者に配慮をしたという給付設計になっていますが、諸外国の制度においては給付 がない国もありますし有期の給付の国もございます。こういったことについてどう考え るかということでございます。  高齢期になってまいりますと、基礎年金部分については、これは自分の老齢基礎年金 を受けるというふうに整理をされておりまして、遺族給付はございません。  また、遺族厚生年金の給付は、高齢期の所得保障という性格が非常に強いと考えられ るということがあろうかと思いますが、この検討会でもしばしば個人単位化を貫ければ 遺族年金を廃止するというような考え方が出てきておるわけでございますけれども、諸 外国においては、子どものない若齢の遺族配偶者について給付がない、あるいは有期の 給付という厳しい給付設計になっている国であっても、高齢期には亡き配偶者の保険料 納付に基づく給付は一定の配慮がみられる中で、どう考えるかということであろうかと 思います。  28ページ目でございますが、支給要件における男女差につきましては、ほとんどの国 で存在をしないということでございます。  男女差をそういう意味ではなくしていく方向で考えるとするならば、例えば給付設計 でどういう配慮が必要か。あるいは先ほどご説明いたしました生計維持要件というもの をどう見るかという点が論点になってこようかと思います。  最後に遺族年金と老齢年金との併給、あるいは共働き、片働きの不均衡への対応とい うこともあろうかと思います。  先ほどご説明いたしましたように、論理的には4分の3と2分の1という割合を合わ せることでこの不均衡を同一のものにできるわけでございます。この割合を合わせると いうことを考えた場合に、まず2分の1となっているものを4分の3に引き上げて両者 の割合を合わせるというようなことを考えますと、ともに長期間高報酬を得ていた夫婦 で過剰な給付になるということが考えられますし、今後厳しくなることが想定される年 金財政からみて、こういったことが可能かどうかということが論点になろうかと思いま す。  逆にこの4分の3を引き下げて割合を揃えるといった場合に、老齢期で考えましても 、厚生年金加入期間のない、あるいは少ない夫婦の給付水準というものが下がるという ことがありますし、それからこういった併給問題とは関係のない若年の遺族配偶者の給 付も併せて下がるということになろうかと思いますが、こういうことが適当かどうかと いうことのご議論が必要かと思います。  それから、高齢期の遺族年金と老齢年金の調整の方法ですが、自らの保険料納付に基 づく老齢年金というものはまず自ら受け取るといった構成がとられている国が多い中で 、自分が働いて保険料納付したことができる限り給付に反映する仕組みというものを今 後考えていく必要があるということであれば、遺族年金の構成についてもどう考えるか ということが問題になってこようかと思います。  大分時間を使っておりますが、最後に追加でパートタイムの資料を若干準備をしてお りますのでご説明申し上げたいと思います。  パートタイマーは労働者なのかどうか、どのようにとらえているのかということでご ざいますが、パートタイム労働については、時代とともに変化というものが認められる かと思います。そういった中で最近どのような認識に立っておるかということを様々な まとめられたものから抜粋をしてきておりますが、企業の側からも、あるいは労働者側 からも、例えば企業側からいたしますと、事業環境の変化に機動的に対応ができる、労 働者側からも、自由な時間に自らの能力が生かせるということで、双方にメリットがあ るものとして、パートタイム労働が増えてきているということと、かなり労働力として も基幹的・恒常的な労働力としての役割を担いつつあるということが現状認識となって いると考えられます。  31ページ以下に関係の資料を準備してございます。31ページは、就業形態の多様化に ついてまとめておりますが、男女の労働者の労働形態の割合、あるいは正社員、非正社 員ということで分けたときの割合ということでございますが、女性は多様な働き方が見 られるということと、時代とともに正社員、非正社員で分けますと、非正社員的な働き 方が多くなってきているという現状。  それから、32ページは、何度もご説明しておりますパートタイマーの増加という現象 。33ページは、パートタイマーの勤続期間の調査ですが、5年以上、現在の職場で就労 しておられるパートタイマーの方も4割を超えるような割合でいらっしゃるという現実 。  34ページ目でございますが、どういったお仕事をしておられるか、これはあくまでも 意識のレベルではございますけれども、正社員で何年目ぐらいの方の仕事を自分はして いるだろうかということの調査ですが、同じ期間勤めておられる正社員の方と同等の、 あるいはそれ以上の仕事をしているというふうにとらえている者も少なくありませんし 、リーダー格の仕事をする人も増えてきているという現状があろうかと思います。  35ページ目でございますが、生計との関係で言いますと、男女を通じまして申し上げ ますならば、約4分の1は、自分のパート労働の収入で生活をしているという実態も認 められるわけでございます。  このような中で、30ページでございますけれども、年金制度においてどのように取り 扱ってきたか。配偶者が厚生年金の被保険者である場合、労働時間が長い方で、常用的 な使用関係のあります雇用労働者の方を厚生年金の被保険者としてきたと。  真ん中のところですが、雇用労働者であるけれども、常用的な使用関係とまでは認め られないということで、それを時間なり日数で基準を設けまして適用を分けてきたわけ でございますが、先ほどご説明してきたように、パートタイム労働というものが質的に 変化が見られるということで、この図で申し上げますと、Aの部分とBの部分の関係が 非常に相対化をしてきているという現状ではなかろうかと考えられます。  このような状況の中で厚生年金の適用の範囲をより拡大して、労働者というふうに考 えて、報酬比例部分も含めた年金保障を行っていくべきではないのかということが課題 として挙げられているということであろうかと思います。  それ以外の働き方、ないし働いていない者は、雇用労働する立場ではないということ ですから、これは厚生年金を直接適用するかどうかという関係では外れる。別の体系で ございます年金保障は報酬比例部分を含まない基礎年金の体系で保障が行われるという ことで整理ができるのではないかということでございます。  それから36ページでございますが、短時間労働者に厚生年金の適用拡大を行っていっ た場合に、年金財政上の影響についてどのように整理ができるかということでございま す。それを定量的に説明をするといたしますと、それは今後の労働力の見通しですとか 、あるいはどのように適用拡大を図っていくかということにもよりまして、これは財政 再計算作業の中で検証していくことが必要だろうと考えておりますが、定性的には次の ように整理ができようかと思います。  短期的に申し上げますと、今、厚生年金でカバーされている方は、長期的に給付と負 担の均衡がとれた財政運営を行っていると考えて、新しく対象に加わってきた人につい て、出と入りがどういうふうになるかということを巨視的に考えてみますと、短期的に は年金給付が生ずるのが将来のことになりますので、短期的には適用によって保険料収 入が増加するということで、当面は積立金が増加するという効果が出てきて、これを財 政上評価するならば、当面の収支の安定化には貢献すると位置づけられると思います。  長期的には当然保険料の支払いに伴いまして将来の給付が生じるわけでございますが 、現在報酬比例部分については、皆さん同じ率でいただいて、同じ率で年金を出すこと になれば、これは財政的には中立でございますので、影響は基礎年金の部分で生じるわ けでございますが、第3号被保険者でありますパートタイマーの方につきましては、今 の給付体系の中に給付の部分が織り込まれているということでございますので、ここの 点だけ考えますと適用拡大はプラスの要素になると。  一方で、1号被保険者については新たに国民年金の方から移ってくるということにな りますので、厚生年金の財政から考えますと、新たにこの者にかかります給付の負担が 生じるということで、これは賃金が平均に比べて低いと考えますと、マイナスの要素も あり得るということで、こういうプラス、マイナスの両面を併せ持っていることを考え ますと、2つの要素が打ち消し合って中立的に機能するのではないかとまとめられるか と思います。  一番最後に派遣労働者についてのお尋ねもありましたので、ここで派遣の適用の関係 について整理しておりますが、特別な定めがあるわけではございませんので、通常の労 働者と同じように、就労実態に着目して適用することになります。  派遣には2タイプございまして、特定労働者派遣(常用型派遣)、一般労働者派遣( 登録型派遣)がございますが、常用型の派遣ですと、まさに常用型ということですので 、その常用のスタイルがいわゆる厚生年金の適用基準でございます期間、日数、時間と いうものの条件をクリアーする場合には厚生年金の被保険者になるということでござい ます。  登録型の場合は、派遣されて、働いている期間については、その働き方に応じて適用 がなされ、待機期間については、厚生年金の適用がされずに国民年金の1号ないし3号 になるという関係でございます。  実態でございますが、右側の方に表でまとめてございますが、派遣労働者を通じた調 査で申し上げますと、特定と一般を通じまして、厚生年金加入の有無で加入している方 が67.4%ということですので、7割ぐらいの方は厚生年金適用がされておる、適用を受 ける働き方をしていらっしゃるという実態にあるということが言えようかと思います。  大変長くなりまして申し訳ございません。以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。ただいまの説明につきまして、まず最初に、離婚時 の年金分割について何かご質問、ご意見がございますでしょうか。 ○駒村委員  年金分割についてご質問というか意見申し上げます。  この年金分割が、なぜ必要なのか、そのニーズの問題です。これは多分現在において 、単身高齢の離婚を経験した女性世帯がかなり貧困になっているのだろうと、貧困率が 高いのだと思うのです。今後この方たちが増えることになれば、生活保護の問題も出て きますしニーズが大きくなる。そうなってくると急がなければならないかという問題に なってくると思うのです。  それと関連するのですけど、ニーズがある、また今後増えるだろうといったときに、 これを入れる根拠と目的は一体何か、政策目的は何かということで、もともとも持ち分 であった財産権を分割するという方向で重視していくのか、それとも生活保障的な色彩 を重視して考えていくのか、その前者の方でしたら極めてすっきりしているのですけれ ども、本人同士の合意のみです。しかし、それが果たして公的年金の機能として望まし いのかという問題も起きてくるでしょう。後者の方になると、いろいろ制約ルール化が 必要になってきて事務量も非常に増加するのではないか。  現在ある方法はどうなのかということになってきますと、一身専属をどうクリアーし ていくかという問題なのですけれども、それ以上にルール化がはっきりしてないので、 裁判で争うコスト、分割ができるかどうかというリスク、これがよくわからない。非常 にコスト高になる。それから分割と一時金では全く意味が、分割または口座を分ける年 金権の分割、一時金を払うというので、これ3つでは多分かなり質的な意味が違うだろ うと思うのです。  私は是非入れるべきであろうと思う。ただ、他国で、例えばアメリカの配偶者年金と いうのはどういうことになっているか。離婚保険みたいなものになっているかどうか、 こういう選択肢もあるのか。この場合、実際にモラルハザードみたいなことが起きてな いのかどうなのか。または企業年金を分割する場合は、これは基礎率が変わってしまう ので、どういうふうに処理をしているのか、技術的に非常に難しいので、十分な調査が 必要かなと思います。 ○袖井座長  この辺のことはわかりますでしょうか。企業年金の処理とか。 ○度山補佐  まず企業年金にということで考えますと、一般的に積立方式の財政運営をしておると 思いますが、一般的に女性の方が長生きだということを考えますと、女性が生きている 間支給がされるということになりますと、財政的には変わってくると考えられるので、 検討しなければいけない課題だろうと思います。  それから、アメリカの方でございますが、離婚保険というよりは、離婚をしたとして も、老齢という状況になったときに配偶者年金が同居しているのと同じように出るとい うことでございますので、いわゆる離婚自身を保険事故としているのではなくて、保険 事故はあくまで自分の老齢であり、元配偶者の保険料の納付記録を使って給付を受ける ことが可能であるという仕組みと理解をしなければいけないのだと考えます。 ○中田委員  私も駒村委員に賛成なのですが、離婚した場合に、特に女性の方に何らかの形で給付 されるというようなことのニーズは非常に強いと思っております。ただ、事務局の資料 にもございますように、これをやろうとした場合にかなり技術的に難しい問題がたくさ んあるので、そういうものを十分に検討された後でないとなかなかできないのではない かと思っております。  それから、先ほどの企業年金の場合の分割ですが、例えばイギリスなどですと、移行 するお金のトランスファー・バリュー(CETV)という特別なものをつくっています。企 業年金で積立型ですと、必ずしも債務と積立額と一致してないので、そうした場合に積 立金の方で分けるか、あるいは債務の方で分けるか、それから、先ほどのトランスファ ー・バリューと3つぐらいやり方があって、トランスファー・バリューがベースになっ ているのですが、必ずしも絶対それを使うとは言っていない、それぞれの裁判の中でど うも決めていくというようなことがあるようでございます。  したがって、1つの方法で決めていくというのはなかなか難しいのではないかという 感じを持っております。 ○吉武審議官  企業年金では多分非常に難しい問題が起きて、現実に今の日本の企業年金で申します と、例えば、遺族で出ていますように、死亡のとき、死亡で例えば母子が残るというよ うな給付ですとか、あるいは障害状態になったときの給付というのは基本的には行わな いケースがほとんどです。  この前の企業年金法の改正で一応労使の協議によって導入は可能という形にしており ますが、実態的にはないというふうに考えていただいた方がいい。  もう一つ、最大な問題点は、日本の企業年金の場合には、基本的には退職金の性格を 併せもっているということになりますので、その退職時に企業年金で支給を受けるのか 、いわゆる退職金で支給を受けるのか、この選択はあるということであります。  したがいまして、この問題を議論をずっとやっていきますと、最終的には退職金の分 割がどうなのかという議論に必ず帰着するということですが、その点も含めて議論をし ておかないと、つまり企業年金的な側面だけで分割をしたときに、片一方で退職金のと きには分割はできないということになりますと、本質的な実際の選択のところからいっ て非常にアンパランスの問題が生じるだろう。 ○袖井座長  先ほどの説明だと退職金分割はやっているのですか、裁判事例などで。 ○度山補佐  あくまでも判例にあらわれているということでございますが、まだ何年か先に退職を したときに、例えばどれくらいの退職金が得られそうかということを考慮いたしまして 、財産分与するときに、退職金が支給された場合にはそのうちから幾ら払えとか、何割 払えとかという判決はあるようでございます。  ただ、当然のことながら、退職金でございますので、別れた妻自身が請求をするとい うことはできないわけでございまして、あくまで夫婦間での債務の確認ということで整 理されております。 ○堀委員  2階部分の年金は、今の考えでは夫婦2人分の生活費という世帯単位の考えでできて いると思うのですね。1階部分については、個人単位なので離婚しても問題は生じない 。世帯単位の考えでできている2階部分年金については、離婚したら夫だけがもらうの は問題がある。そういった考えからすると、離婚した場合に、2階部分の年金権は分割 していくのが妥当である。また、女性の年金額が低い、女性の貧困が多い、そういった ことをも考えると、分割を考えていかざるを得ないのではないかと思います。  ただ、分割の割合を2分の1とか、そういうことまで法定できるのかどうか。確かに 裁判離婚では、財産分与とか、あるいは子どもがいる場合の養育費についての協議とい うのはなされるのですが、日本の離婚は大部分が協議離婚です。協議離婚の場合には財 産分与も、また養育費の協議も余りなされてないわけですね。民法の規定も一切の事情 を考慮して財産分与するとありますので、それに先立って年金だけを2分の1とするの は日本の社会の実態とは合わないのではないか。  したがって、財産分与と同じように、年金権についても協議によって分割する。そう いう方法しか、今のところはとれないというか、その方が妥当ではないか。  ただ、問題は、日本では、協議離婚は2人で協議して市役所に出せば、それで終わり です。諸外国では、小さい子どもがいる場合には必ず家裁の承認とか届出かなんか知り ませんけれども、そういうのが必要で、子どもの養育費について必ず協議するというこ とになっている。日本はそのようになってないので、協議離婚の場合に年金分割をどう するかということを少し考えていく必要がある。分割された年金を年金行政のサイドで 手当てをするとすれば、本人の協議だけで済ますのはなかなか難しいのではないか。家 裁の承認とか届出とか、年金について、そういう協議が家裁に出された場合に年金サイ ドでも協力をすると、そういった形になるのではないかという感じはいたします。  年金権の分割か、あるいは年金額の分割か、こういう議論については、年金権の分割 という形にする方が望ましいと考えている。年金行政も、協議が整って、分割の合意が あったら、行政が直接支給する。例えば夫の年金が分割される場合には、夫の死亡にか かわりなく年金権がもらえるような形の方が望ましいのではないかと私は思っておりま す。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  大島さんが手を挙げておられる。 ○袖井座長  先に大島さん、それから佐藤委員。 ○大島委員  年金の分割ということのニーズが高いというお話が今あったのですけれども、私も行 政の相談機関の仕事をしていまして、離婚相談の多い中でも、最近中高年の離婚という のは増えてきています。長い間、夫の暴力を耐えてきたのだけれども、もう限界です、 というような相談に対しまして、私どもも、それではこれから自由に自分の人生を、と 言いたいのですけれども、経済力を考えますと、もう少しがまんできませんか、という ような答えをせざるを得ないというようなこともあります。  例えば、私、今60歳から、若いとき3年間2号の厚生年金をもらっていますけれども 、月額1万 2,000円足らずです。65歳からもう少し増えるとしましても、空期間があり ますから、大して増えるとは思いません。ですから私の前後のような人たちはまだまだ 基礎年金が満額出るわけではありませんので、非常に少ない年金になってしまうのでは ないかと思います。ですから将来的に働く女性が増えて、基礎年金と自分の厚生年金が とれるようになればですけれども、現状ではやはり離婚の場合の年金分割は必要という ふうに思います。  ただ、若い女性の離婚相談の中では、非常に自己中心的な相談もありますし、最近で は、中高年でも女性の側に離婚の原因、有責がある場合もありますので、いちがいに原 則年金分割ということは、やはり離婚の原因というのは非常にいろいろですので、一定 期間の婚姻期間があればとか、原則的なことを決めた上で、先ほども出ていましたよう に、協議によって決めていくという程度の形になるのでしょうかというふうに思います 。 ○袖井座長  ありがとうございました。佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  この問題は、まず最初に最低限、現実化している年金について、それを分割の対象に するということは技術的には可能だろうと思います。一身専属性の議論もありますけれ ども、最初は家庭裁判所の手続を経るという前提で、考えてみてはどうでしょうか。こ れには件数の問題もありましょうが、試みに8ページのグラフで、10年以上のところを 見ていますと大体3割ぐらいかなと思うので、これであれば、激増ということも余りは ないのではないか。仮置きとして10年という婚姻期間を要件にして、裁定したものにつ いては2分の1を超えない範囲で家庭裁判所の命令で分割することができるというよう な制度をつくることはできると思うのです。裁判所が行政にこれだけのものを送れと直 接命令する、そういう形をつくれば、差し押さえと不払いの問題が解決されますから、 制度としてはできると思うのです。これは私も急ぐべきだと思います。それが第1点で す。  ただ、第2点として、そこまで待てない部分、裁定よりも前の50歳代ぐらいで夫の暴 力に耐えないというような人たちにとっては、この方法は使えない。つくっても事実上 役に立たないということになります。そこが大きなネックで、それでもなお、やった方 がいいのかどうかということを考える必要がある。  また、14ページの図で、これは今私が申し上げたこととは違って、将来年金の分割と して年金権と年金額ということになっているわけですが、これは技術的に見ると、年金 額の方が恐らくクリアーすべき問題が少ないということと、それから、夫の死亡で支給 が終了する点については、確かにおかしいようにも思えますが、夫婦で暮らしていても 、ここから先は遺族年金の制度がどうなるかという問題であって、一番極端に遺族年金 がなければ、ここで終わるという話でありますから、その部分はそんなに不合理ではな いのではなかろうか。これに関連して、離婚した後、夫が別の女性と結婚して、なお、 そこで亡くなったときの遺族年金の問題があるものですから、すぐには言えないのです けれども、可能性としては支給される年金額を分割する方法で少し先を考えてみてよろ しいのではなかろうかというふうに今は思っております。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。 ○中田委員  今の14ページの件でございますけれども、これはイギリスの例なのですが、イギリス では年金権そのものを分割する方法を「シェアリング」と言い、支給される年金額を分 割する方法を「イアーマーキング」と言っているわけでございますが、「イアーマーキ ング」と言っている年金額を分割する方法は、受給までに、例えば前夫が亡くなってし まうともらえないとか、そういう幾つか問題があって、実際には余り使われていないと 実務書に書いてございました。それもあって、昨年の12月から「シェアリング」という 方法が検討されて実施されているということがございます。  それで、その実務書などを見ますと、前夫が亡くなってしまう可能性があるので、そ の前夫に保険をかけるとか、そういうことまで細かく書いてあるという状況でございま した。 ○堀委員  佐藤委員からも提起された問題ですけれども、離婚した配偶者に対して遺族年金を支 給するというのは、なかなか日本のシステムでは難しい。立法論としてはあり得るのか もわかりませんが、基本的に日本の保険というのは、保険事故が起きたときの関係に基 づいている。遺族年金は、生計維持関係があった者にしか支給されないので、離婚した 後には一般的には生計維持関係がない。保険というのは、保険事故が起きたときの状態 で判断しますから、なかなか離婚した後に遺族年金を支給するのは難しいかなと思いま す。  年金権の分割については、事務的にこういうふうにはできるのではないかと思うんで すね。婚姻期間中の両方の標準報酬月額がありますね。離婚したときに協議によってそ の部分について5対5なら5対5、6対4なら6対4という形で、割り切って計算して しまう。そういうふうにすれば、簡単にできるのではないかというふうな感じはいたし ます。 ○佐藤委員  これは事務局の方に伺いますが、15ページで、今、堀先生がおっしゃった問題が扱わ れていて、上の箱の3つ目のポツですが、これは厚生年金基金とか共済間との問題とい うふうに挙げていらっしゃいますが、今、堀先生おっしゃいましたように、厚生年金に 限ってみれば、そんなに難しくないというふうに考えてよろしいのですか。年金間の調 整問題がややこしいということなのか、厚生年金自体でもなかなか綿密な検討を要する 事項が多いとお考えなのか、そのあたりをお聞かせ願いますか。 ○榮畑年金課長  仮に同じ制度、厚生年金の中であっても、そこに書いています記録の管理、年金額の 算定ルールの確立、社会保険の業務処理のコンピュータのシステムなどをどう変えてい くかとか、かなり事務、検討が必要な事項は、何分こういうような仕組みを想定してつ くっていませんから、そういう点ではいっぱい詰めなければならないことがあって、だ からといって、発想、考え方としてできないというわけではないでしょうけれども、詰 めなけれはいかんところ、こなさなければいかんとかは多々あるというふうな気がいた します。  それと、ここに書いています、厚年共済とか厚生年金基金等々の調整というのは、ま た違う問題としてありますが、厚年内部の話としても、基本的には時間とかきっちり詰 めていけば、やればできるという面はあろうかと思いますけれども、それでもいっぱい 議論をして、うーんと唸らんならんというような話が恐らく出てくるというのが直観的 に思っております。 ○翁委員  企業年金との関係につきましては、少なくとも今度企業年金が随分変わって、代行部 分がない基金型とか規約型とかいろいろな形が出てきますので、そういった新しい制度 との関係で考えていけばいい部分というのはかなりあるのではないかというように思い ますし、この年金権か年金額の分割かといった場合には、女性の年金の独立した年金の 権利という点とか、それからそのニーズに合った形での支払いが受けられると、保障が 受けられるというような観点から考えると、年金権そのものの分割という方が考え方と してはすっきりするような気はします。さっきの佐藤先生のご指摘もよくわかる点なの ですけど。 ○袖井座長  ほかに、どうぞ。 ○下村委員  離婚の年金分割もそうですし、遺族年金にも言えることなのだと思いますけれども、 やはりこれが女性にとっての、いわゆる年金しばりというふうなものになっていて、こ れによって離婚をがまんしているという現状もあることも確かだと思います。  私も、先ほど皆さんがおっしゃったように、これはあくまでも生活保障費的な色合い の濃い現状では年金分割が求められているように思います。こういうことを、結局裁判 によってしか決められないというのは非常に今後、それこそ裁判コストもかかるという ようなお話ですから、もう少し簡略化して、当面はこれに頼らざるを得ない人たちの救 済の意味も込めて、これは分割できるものとして、その割合については、2分の1が妥 当かどうかということはちょっとわかりませんけれども、やはりそうしたものは保障し ていった方がいいと私は思っております。 ○袖井座長  ほかに。 ○堀岡委員  私も堀先生と同じで、離婚等々にいろんな理由があると思いますので、それは協議で 、お互いが納得する方向が必要だと。一律にルールでどうだと決めるのはどうかなとい う感じがしております。ただ、選択の余地として、年金を分割させる方向というのは当 然あるべきだろうと、こういうふうに思っております。  ただ、さっき企業年金との関係が出ておりましたが、事務的な関係でも、厚生年金と 基金とのやりとりというのは非常に難しいと思いますが、一方、冒頭おっしゃっていた だいたように、女性の方が平均余命が高いと、こういう現実になると、財政上いわゆる 終身年金であれば、財政に与える影響は企業としては少し負担が増えるのではないか。 男性と女性の平均余命、その分、財政上影響が出てくるので、その点も非常に基金とし ては困るのではないか、こういう気がしているのです。 ○袖井座長  企業年金というのは終身が普通ですか。 ○堀岡委員  普通です。 ○袖井座長  そうですか。そうするといろいろ大変ですね。 ○堀岡委員  代行部分ですから。それ以外の全くの企業年金というのは、通常有期年金が多いです 。 ○袖井座長  永瀬委員どうぞ。 ○永瀬委員  協議によって離婚の際の年金分割を考えるという考え方を支持する意見がこれまでの お話に出ています。私自身も機械的に行政が立ち入ってすべてのケースについて2分の 1と決めていいのかどうかということについては、今のところは留保を持っております 。ただ、協議によって支払いを決めるという制度をとっている離婚後の子どもの養育費 の支払い状況を見てみますと一番最新のデータを見ても2割しか、実は離婚後の養育費 が支払われておりません。日本の現状として協議離婚の割合が非常に高くて、裁判によ る離婚が非常に低いのです。  協議による分割を基本とするのであれば、とりあえず裁判所に簡略でもいいですから 、行って別れることが増える仕組みを何か導入しませんと実態として年金分割はほとん ど起こらないのではないか。例えば、養育費の方は、このような制度が組み込まれてい ませんので、幼い子どもを抱えた協議離婚の母親が非常に困る実態がある。離婚年金分 割という制度ができても利用が少なければ大変困るということは変わらないのではない かと思います。 ○袖井座長  でも、そういう離婚時の年金分割でもらえるのは高齢になってからですから、子ども が成長しちゃってからですよね。だから養育費に当たらないですね。 ○永瀬委員  養育費の現状を見ると、それだけ裁判所に行って、実際に別れている人は今現在では 少ないということが示されているのですね。ですから、離婚分割の制度を入れるのであ れば、そういうところに行って別れるというのを基本とするかあるいは奨励するような 制度変更が必要なのではないか。 ○榮畑課長  それは、今の裁判離婚というか、裁判離婚は少ないという現状自体を変えていくべき だと。離婚の制度、法制度自体を改めていくべきだというお話ですか。 ○永瀬委員  私は法学者でないので法制度の変更にまで踏み込んだ考えを提案できる知見はありま せん。しかし、実態は色々と見ています。年金分割をするに当たってこれまで2つの考 え方が議論されています。1つは原則的に2分割だと。もう一つは協議できめる。協議 によって裁判所を通じて何らかの形で決めるというのが堀先生のお話でした。もう一つ の考え方としては、原則2分割にするというのがあります。この2つのどちらをとるか が、結果に非常に大きな距離をもたらすでしょう。私は原則2分割というのも随分と行 政が立ち入り過ぎるのではないかという気がしますけれども、かといって、では裁判に 行かない限り、何も起こりませんよという制度、しかし、今現実的に大多数の離婚者が 裁判所に行っていないこと、一番困っている人はむしろ裁判所を利用できずに別れてい ることを考えますと、もう少し結果が2分の1に近づくよう、手続きややり方に知恵を 絞れないものかという提案ということです。 ○袖井座長  いかがでございましょうか。そろそろ遺族年金の方の議論もしないと時間がなくなっ てしまうのですが、離婚につきましては、どうでしょうね。機械的に2分の1というの は余り賛成ではないような感じがしますが、それから、婚姻期間についても一定の限度 をつけた方がいいというような感じですけれども、離婚理由というのはちょっとどうな んでしょうね。その辺のところは、そこまで立ち入れるかどうかということで難しいか と思うのですが、離婚時の年金分割につきまして、もし、まだご意見がありましたらお 伺いしたいと思うのですが、時間の関係もありますので、遺族年金の方にも議論を移し たいと考えておりますが、いかがでしょうか。 ○下村委員  ここの遺族年金こそ、本当に3号問題と絡みまして非常に重要な点かなと私は思って おります。先ほどの離婚の件とも連動しますけれども、たった今困っている高齢の方々 には、これはやむを得ないことだと思っておりまして、それをどうのこうのというふう なつもりは一切ありませんけれども、今後何年かにかけましては、これは明らかに廃止 の方向にいくべきだと私は思っております。  そういう私自身も、働き続けてきたものですけれども、3号の方々よりも多分私はそ の場合には低いので、結局夫の4分の3をとる方が有利というふうなケースに私は当た りますけれども、幾ら相互扶助原理とか3号の夫さんが多く保険料を支払っているので いいのではないかという理屈も確かにわかりますけれども、結果的に自分自身のかけた 年金の保険料が自分に反映されないというケースが現状では多いわけですよね。ですの で、税も払い、年金保険料も払い、あるいは介護保険料も払いという、そういう社会的 義務を果たして、受益には負担が伴うという、明らかな国民の義務として、現状はやむ を得ない部分があるとしても、将来的には廃止すべきだと私は思っております。 ○袖井座長  駒村委員とその後で佐藤委員。 ○駒村委員  以前、 3,000人ほどの方に調査をしたことがあって、公的年金に期待するところの理 由として、50%の方は遺族年金にかなり期待をしている部分もあるのですね。したがっ て、現下においては、子どもを持って働けない妻を残したまま死んでしまうかもしれな いというこのリスクに対して重要な役割を果たしているのではないかと思う。  この議論は、単に遺族年金というよりは、19ページにあるような若年の遺族配偶者に 対して、例えば子どもがいないケースについてと、高齢の方に対しては分けて議論をし ていった方がいいと思う。例えば、これは遺族年金5万円もしくは10万円もらえるわけ ですけれども、子どもがいない場合でも。さっきの離婚の話と比べると、同じ別れてい るのだけれどもこれは余りにもバランスが悪過ぎる。  それから、若年の方は、一時点でのリスクで、その後ずっともらえるということです から、これは少しおかしな話だと思います。他国においても、ここに出てないですけれ ども、カナダなどもかなり厳しい条件をつけていますし、若年離婚の方については、数 年のうちに自立をしてもらうという形の給付形態にすべきだろう。直ちに廃止するべき だとは思いませんけれども、併せてさっきの離婚の年金分割と同じように、報酬比例部 分に対して分割みたいな形で渡してあげる必要はあるかもしれないと思います。高齢者 の方はなかなか難しい話で、確かに掛け捨ての問題をどうするかという問題もあると思 いますし、移行過程であるということを、女性の働き方が変わっていたり、家計のスタ イルが変わっている移行過程だということを考えて、この掛け捨てがなるべく少なくな るような形での選択肢の組み合わせの工夫をできないかなと、こういうふうに思います 。 ○佐藤委員  前半は、実は駒村さんがおっしゃったことなのですが、事務局サイドの発想で、上の 高齢者の4分の3を下げると若年の方も下がるのではないかという問題の指摘がありま したが、これは必ず揃っているべきものであるという前提が、年金の制度上あるのでし ょうかというご質問が1点であります。  2つ目は意見で、先ほどの離婚時の場合との対比を考えておく必要があるだろうとい うことでありまして、今、下村委員がおっしゃった、長期的には遺族年金廃止というこ とになりますと、連れ添って亡くなったら、そこでアウトである。自分の分しか残らな い。しかしながら別れると、これまでの議論では年金権ごと分割するという意見が有力 です。私が年金額の分割の方がよいと申したのはこのことがちょっと頭にあったのです が、離婚の際に夫の給付記録によって独立した自分の年金権が生まれるという発想の制 度と遺族年金廃止論とは、親和性に乏しいのではないか。その意味で、どの時点まで、 どこまでを保障するのか、この2つは両方見ておかないと、片一方で勇ましいことを言 うのは難しいかなというのが今の私の発想であります。  前者について、もしも何かご意見あればお願いいたします。 ○袖井座長  何かありますでしょうか。 ○度山補佐  制度的にその率を分けて考えることができるかどうかというのは、今の仕組みでは遺 族年金の構成は、老齢年金の4分の3を掛けると規定をされていますので、今の法律の まま率を変えるとすれば、それはともに下がってしまうという効果が生じると思います 。率を分けて考えられるかどうかというのは、余りそのように考えたことがなかったの で、可能かどうかというのは、かなり制度的に詰めてみないと断じられませんけれども 、ここでご指摘を申し上げたかったことは、主に高齢の時期を念頭に置いて、例えば3 つの組み合わせでどういうふうに率を考えるかということが、今の仕組みですと、他に 影響する可能性があるということであり、例えば影響を排除するのであれば、そこの仕 組みは切り分けた上で何か考えなければいけないということがあるものですから、こう いうご指摘をさせていただきました。 ○榮畑課長  ただいまのお話ですけれど、若齢と高齢を切り分けて考えるということは、更地で考 えたら、そういうことはあり得るのではないかと思いますが、ただ1つ、その場合に、 切り分けて考えて、水準違うといたしましたら、例えば40とか45歳で受給し始めた方が6 5になったとき水準が変わってしまいますね。先ほどのお話だったら下がるということ も当然あり得る。そこをどう考えるか。そのときにどう考えるかという議論が当然出て きますから、65になったときに下げていいのかどうかという議論等、彼が言いましたが 、その辺きっちり詰めさせていただかないと何とも言えないのかなという感じがいたし ます。 ○袖井座長  堀委員どうぞ。 ○堀委員  その問題を含めて、少し遺族年金の問題について考えを述べさせていただきたい。確 かに若齢遺族と老齢遺族で4分の3という数値は現在では合っているのですが、実は違 うのですね。違うというのは、加入期間と賃金が違う。若いときは賃金額が低い、年功 序列賃金の下では低いわけですね。老齢遺族の場合には年功序列賃金の下では賃金が高 い。若齢遺族の場合、25年までに死ねば、25年分の遺族年金が支給されますので、多く は25年分だと思うのですね。高齢遺族の場合には、基本的には40年分支給される。そう いう実際の違いがありますし、今議論しているのは、65歳以上の場合は夫婦2人分の何 分の何にするという案です。若齢遺族は夫1人分の4分の3ということで、若齢遺族と 高齢遺族とではベースが違う。遺族年金廃止論についてですが、2階部分の年金は保険 料を納めた見返りという意味、保険原理に基づく面が多いのですね。夫が長い間保険料 を納めながら早死にすると2階部分の年金は支給されないという問題が生ずる。本当に それでいいのかという感じはいたします。  それから、若齢遺族の場合ですけれども、今の日本の仕組みでは、女性は男性並みの 賃金も得られないし、就職機会もないため、小さな子どもを抱えた場合の遺族年金の必 要性は残るのではないかという感じがいたします。  基本的に若齢遺族と老齢遺族は理念が違うのではないかと思うのですね。若齢遺族は 、小さな子どもを抱えた母親の就職の困難性とか賃金の低さから援助しましょうという 考えだと思うのですね。高齢の遺族の場合には、そういう考えではなくて、老後になっ て賃金がなくなるからそれに補填する、そういう考えです。若齢遺族の場合には一時的 な給付、子どもが小さいうちとか、そういうことはあり得るのですけれども、高齢遺族 の場合にはそういうことではない。基本的にはこの二つは分けて考えることはできるの ではないかと思います。  今問題となっているのは共働きと片働きの間で遺族年金額に不公平な差があることで す。それについては私の報告のときに言いましたように、夫婦の2階部分の老齢年金を 合算して、私の提案では5分の3にすることが考えられる。5分の3については他の数 値があり得ると思いますけれども、そういった形にしていくのが格差の解消につながる のではないかと思います。  支給要件の男女差が遺族年金にはあります。日本の実態としては、母子家庭と父子家 庭では所得差があるのですね。母子家庭の場合は年収200数十万円で、父子家庭の場 合は 400万ぐらいです。そういう実態を考えると、母子家庭にしか遺族年金を支給しな いというのは理由がある。しかし、今後は男女平等の形にしていって、それを生計維持 されていたか、扶養されていた、そういった要件をつける、そういう方向が望ましいの ではないかと私は思います。 ○袖井座長  永瀬委員どうぞ、それから駒村委員。 ○永瀬委員  私は事務局資料の28ページの一番下の提案がいいのではないかと思うのです。「自ら の保険料納付に基づく老齢年金の支給を基本とし、遺族年金額を調整する構成」、これ がいいのではないかと思うのです。例えば先ほどの21ページの共働きの方が減ってしま うという図を見てみましょう。これは片働きの夫が10万円の報酬比例部分を持ち共働き 夫婦それぞれが6万円と4万円の夫と妻で分かれた報酬比例部分をもつ場合に、遺族に なると8万円と5万円というふうに変わり、自分自身が拠出してきた妻の年金権がむし ろ下がってしまうという問題についてです。妻の自分自身の年金である4万円は動かさ ないことを基本として、その上に夫分がのるという形にすれば、例えばもしも4分の3 のままであるとすれば、このケースですと9万円ぐらいになり、働いたこと、拠出した ことのメリットが出てくる仕組みとなります。そういう形があり得るのではないか。  そのようにしますと、非常に高い報酬比例をもつ共働き夫婦の場合どう調整するか。 その場合には自分のを基本として、上に遺族年金をのせると考えますので、余り高い場 合はのせる遺族年金を減らすという方向で考える。そして 850万だと支給停止というの がありますけれども、これですと、ただ単にそのときに収入が 850万であったかどうか というので、その人の年金額がどのくらいかというのは全然考慮していませんので、そ ういうケースも自分の年金権を中心に考えながら、それが低い場合には、夫の遺族年金 がその上にのるという、そういうのを基本として考えたらいかがかなというふうに思う のですが、という提案です。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。駒村委員。 ○駒村委員  今の永瀬先生と堀先生のお話とかなり重なる部分もあるのですが、20ページなんです けれども、今の現行の3つの選択肢であるわけでして、マル2は自分のを選ぶわけで、 マル3は足して2分の1ですから、これは年金分割の一種のスタイルになり得るのでい いのかなと思うんですけれども、問題はこのバランスで一番バランスを崩すのが一番上 の選択肢ですよね。  先ほど堀先生は20分の12ということになると思うのですけれども、現行は20分の15と いうところですけれども、モデル年金が準共働き世帯にも変わります。働く女性も増え てくるので、その辺のバランスを見ながら、堀先生おっしゃるように20分の12、これの 4分の3が動く、これは動き得るものだという仕組みにするというのも一個案かなと思 いました。 ○堀委員  私と永瀬さんの折衷というのはできるのですね。まず夫婦2人分の老齢年金を足した 分の5分の3とかにします。自分の老齢年金の方がそれよりも多ければそっちもらう。 少なければ足して5分の3から自分の老齢年金を引いた残りを遺族年金として支給する 。そういうことは可能だと思います。 ○永瀬委員  今の案ですと、5分の3が上限になってしまいますので、自分のを基本として考えて 、その上に夫のが付加的にのっていくというのが良いと思います。少しでも働いていた 方がより良いというような、そういうのを入れた方がいいのではないか。それはどうし てかというと、自分自身の年金だからです。自分自身で払ってきた年金であるから。そ して遺族年金というのは、夫の部分が上にのるということであります。先般訪れたドイ ツで日本の遺族年金の事情を話しましたら非常に驚かれて、自分自身が払ってきた年金 権を放棄するということがあり得るのかというふうに言われたのですけど、なるほどと 思いました。つまり自分の年金というのは自分の年金で、プラス夫の遺族年金が来ると いう考え方もあり得るのだなと、そのときに実は初めて気づきました。日本の事情が基 本かと思っていたものですから、言われてみると確かにあたり前の考え方だと思ったの ですけれども。 ○袖井座長  ですから永瀬委員は、どんなに高くても必ず夫の遺族年金は上にのっかってくるとい う話ですか。 ○永瀬委員  そうではありません。もちろんある一定水準以上になったら、自分だけですね、もち ろん。 ○佐藤委員  今の永瀬さんのお考えなのですが、確かめたいだけなんですけれども、自分のをまず もらいますね。そして、夫のものについて何割かというのをのせることにして、仮に例 えば総額は足して5分の3案という堀先生の案を超えてものるけれども、例えば月額60 万なら60万で切ると、そういうイメージでとらえていいのですか。 ○永瀬委員  そうですね。例えばの案にすぎませんがイメージとして、男子の今の平均の報酬比例 部分以上になるようであれば、そこでおしまいにすると。 ○佐藤委員  金額で抑えるのですね。 ○永瀬委員  はい。自分の年金の上昇に伴い遺族年金の支給率を下げていって最後はゼロとする考 え方です。 ○佐藤委員  わかりました。 ○袖井座長  ほかにいかがでしょうか。 ○下村委員  現在、65歳までの女性で、20年未満の厚生年金に加入している方というのは6割ぐら いいるというご報告がありますね。そしてほとんどの女性が結婚・出産で退職なさった 方でも大体平均すると5年くらいの就業経験があるといった報告もあるのですね。そう しますと、その間の納めた厚生年金をきちんと反映させるような、例えばこれですと、 夫の4分の3のみですよね。あとは自分の4分の4か、あるいは2分の1ずつの合算か というケースが示されていますけれども、夫とかつて働いたことのある厚生年金の部分 の反映をもう少し夫の4分の3の方に合わせて、夫と妻の合計の何分の1かという、そ ういう方法をカウントにあげる方が私はかなり働きがいがあったということ、また、こ れからも働こうということになるのではないかと思っているのです。 ○中田委員  1点、事務局に質問したいのですが、遺族年金の財政的な影響はどのぐらいなのでし ょうか。というのは、お話を聞いていますと、給付が増える議論が多いような感じがす るので、財政的な影響も少し考えていただきたいということです。遺族年金は、今でも 結構財政影響が強いと思うのですが、今後は遺族年金の影響自体が明らかに増える方向 なので、余り増える話ばかりだとまずいと思いますので。 ○袖井座長  前、一度そういう資料は出ませんでしたか。すごくどんどん増えてくるのですよ、遺 族年金受給者。 ○坂本数理課長  遺族年金の財政見通しということでございますけれども、現在大体厚生年金の2階部 分につきましては、老齢年金の2割ぐらいのサイズでございます。一方、基礎年金の方 は遺族年金はほとんどありません。それは高齢になりますと、自分の老齢基礎年金が出 るということに、いわゆる個人単位化されておりますので、高齢になると遺族年金がな いと。若齢の方の遺族年金というのがテーマになっておりますけれども、若齢で死ぬ方 がほとんどいないということでございます。だから、遺族基礎年金の割合というのは非 常に小さいということが言えようかと思います。  将来でございますけれども、これから日本の人口はだんだん減っていく方向というこ とで、今現在高齢者の人口が増えておりますけれども、将来的にも高齢者の人口が減り 始めるという時期があるわけでございまして、そのときに男子の方が減り始めた後に遺 族年金受給者がしばらく増えたままで、それから減り始めるという状況になりますので 、相対的な遺族年金の割合が増えていくと、そういうことが言えようかと思います。 ○袖井座長  100歳以上が、今1万 5,000人いて、8割ぐらいが女ですよね。そうすると、これか ら大変になるのではないかしらと思うのですけれども。どうぞ、翁委員。 ○翁委員  私は考え方とはさっきの永瀬先生の考え方というのが、今後共働き世帯が非常に多く なっていくということを考えますといいと思います。女性の就労インセンティブを考え ても、遺族年金の考え方にそういった発想を取り入れていくということが、最終的には 年金財政にも資するというか、女性が働き手となっていくという点で資すると思います 。ただ、その難点というのは、さっきおっしゃったように、まさに給付過剰になるとい うことですから、そこに先ほどのような金額をベースとしたキャップをつけておくとい う考え方は、1つのいい提案ではないかと感じております。 ○袖井座長  そのほかに、例えば男女の差とか、 850万とか、そのあたりはどなたかご意見ござい ますでしょうか。よろしいでしょうか。  何らかの形で女性が働いたということを反映させた方がいいということでは恐らく異 論がないと考えていいのかと思います。ただ、事務的な作業とかそういうことはまた別 の問題かと思うのですが、遺族年金につきまして、何かそのほか、ぜひおっしゃりたい ことございますか。 ○榮畑課長  こちらが聞くのも妙なのですが、先ほども、この前も一回お話が出ておりますけど、 堀先生の5分の3ということについて、5分の3自体に積極的な意味合いとか理屈みた いのがあるのですか。 ○袖井座長  堀先生どうぞ。 ○堀委員  5分の3の積極的な理由はない。ただ、夫婦である場合に、世帯共通経費があります ので、単身になった場合には夫婦の額の5割以上にする必要がある。6割か7割にする かは別として、そうすると2分の1以上になる。現在の4分の3というのは、夫の老齢 年金の4分の3です。今後は夫婦2人分をベースにするわけですから遺族年金より多く なるわけです。だから財政的には4分の3以下にする必要がある。5分の3はどういう 数値でも結構なのですが、それが財政中立的に決めることは可能だと思います。5分の 3というのは、試みに出した数字で、2分の1以上、4分の3未満であればよい。 ○吉武審議官  私どもながめてきましたら、そこは非常に問題があって、問題があってというか、2 つの側面がございまして、今の老齢遺族のバランス論ですね。バランス論とは別に、実 際上今の年金受給者の姿見ていただくと遺族というのは老齢ですから、ですからサラリ ーマンの夫婦がお二人とも健康なときには基本的には老齢でいっているわけですけれど も、その中でお一人が亡くなると遺族が機能するということは老齢なんですね。サラリ ーマン夫婦で見たときに。端的に申しますと、今の年金受給者などのいろいろ世論調査 なりをやると、7割ぐらいの方は非常に安定して機能しているという評価をしていただ いています。  20ページの上の表が、従来のいわゆる厚年モデルなのですけれども、しかしこの形態 というのは、実際の高齢者家族が相当おられるわけですね。そこで機能しているわけで 、これは要するに 100に対して60という形ですので、お二人の生活のときは 100ですけ れども、お一人になったときに50というわけにはいかないだろうというのが基本にある わけです。そこを60ぐらいの線に設定して、それは現状で申しますと相当よく機能して いる、受給者の方からいうと。ですから、この60の線を設定するというところで上が4 分の3になっているわけですから、だからこの75の問題をどこに持っていくかというの が、こっちの方法をどう考えるかということをご検討いただかないと、片一方だけのバ ランス論だけでは決められない問題だろうと思っています。 ○袖井座長  ただ、これは女性が専業主婦というモデルですよね。 ○吉武審議官  はい。 ○袖井座長  ですから、それでなくなってくれば、また数字は変わってきますよね。 ○吉武審議官  現実の姿ではこういうタイプの方が相当数おられると。そこで年金が機能していると いう実態はありますので、ここをどう考えるかということを常に念頭に入れていただか ないと、現実の年金受給者、これから10年ぐらいの年金受給者、そこを念頭に置いてい ただかないと、遺族とはいうものの基本的には老齢の機能ですので。 ○袖井座長  現在では確かに専業主婦の方はたくさんいらっしゃると思うのですが、将来的にはそ の辺変わってくるので、どの時点を見るかということの問題ではないかしらというふう に思っております。  ほかに何かございますでしょうか。もし、ございませんようでしたら、前回議論した 積み残しのような感じになっていますが、短時間労働者に対する厚年の適用の在り方に ついて、何か追加したいとか、そういうご意見もございますでしょうか。この前、高島 委員から、派遣についてという質問がありましたが、きょういただいた資料では、派遣 も結構厚生年金に入っているというような資料もありますが、この辺、何かご意見とか 質問ありますでしょうか。  年金財政への影響というのは、本当はもうちょっとちゃんとした数字で出てくるとい いのですが、非常にアバウトで本当にいけるのかなという点、私は心配なのでございま すが、いかがでしょうか。 ○坂本数理課長  その点につきましては、財政再計算の過程の中でしっかりと検証させていただきたい と思います。いわゆる短時間労働への適用ということもしっかりと詰めないといけませ んし、その前提によりましていろいろ数字は少しずつ変わってくるという可能性もござ いますので、その辺、前提をしっかりと詰めた上でやらせていただきたいと思います。 ○袖井座長  堀岡委員どうですか。 ○堀岡委員  質問したので。基本的にはこの枠組みの厚生年金の中における財政というのはこうい う形である程度プラス、マイナスがあるだろうという感じはわかるのですが、私自身と しては財政を計算するときに、国民年金と厚生年金という関係でいきますと、国民年金 の方の1万 3,000円払っている人は厚生年金にいくと七千幾らでやるということは、ト ータルの年金財政で見ると財政に大きく影響あるのではないですかという疑問が1つ。  それから、これはこの部分の部分ではないのですが、もともとの年金そのものの資質 と将来の給付という関係で、現行の厚生年金で財政上非常に課題が多くて、将来負担が 増えるよという構造の中で、報酬比例の部分の人たちが拡大していけば、財政上に大き く、また現行でも影響あるのに増えると影響出るのではないでしょうかと、この2点の ことを前回申し上げたつもりでいますので、その辺の検証もよろしくお願いしたい。  この枠組みの中ではこの定性的なイメージではわかります。 ○吉武審議官  実はここに出てないのですが、厚生年金は国民年金と違って上の報酬比例持っており ます。そういう意味では財政の大きさというのは国民年金よりはるかに大きいわけです けれども、例えば現実に今起きていることを申し上げますと、この数年、厚生年金の適 用事業者が非常に減ってきています。これは多分リストラの影響だと思います。現実に 厚生年金の被保険者は減っております。これはある意味で申し上げますと、サラリーマ ン年金の一番基礎になる、少子化の問題がサラリーマンの分野で起きているという状態 でありますので、賦課方式の年金に変わりますと基本的に望ましい姿になる。  片一方で、女性の年金の問題であるとともに、雇用の変動についてどう考えていくか という相当基本的な問題があるのではないか。そうしますと、事業主負担の問題もある わけですけれども、サラリーマン年金としての基盤が雇用の形態が変わってきたときに 、現代的な雇用に合わせてどこまできちんと設けておくか、そういうテーマがあるので はないかと思います。非常に悪夢みたいな世界ですけれども、この5年ぐらい厚生年金 で起きている状態が、例えばこれから40年、50年続いていくというようなことになりま すと、これはまさにサラリーマン年金の後継者がいなくなるという、これは簡単に言え ますことは、厚生年金の支え手がなくなるということになります。  しかし、そういう状態になりながら、片一方で、実際に雇用労働でパートタイムの方 ですとか、派遣という方で、現実に世の中にたくさんおられるという状態を、従来の雇 用の考え方のままで、このサラリーマン年金を構成していいかどうかという、そういう 基本的な問題が、財政影響の問題と一緒にあるのですけれども、そういう点についても 検討が必要なテーマだろうというふうに思います。 ○永瀬委員  質問なんですけど、今のお話、なるほどと思いましたけれども、37ページの派遣につ いての質問なのですが、平均加入率が61%と随分高く出ているのですけれども、私のイ メージではもっと低いように思うのですが、これは登録していて、たまたまこのとき仕 事にちゃんとついている人の61%が入っているというだけで、実は1カ月の間とか、30 日とか20日待機している人は全部外れているわけですよね。そういう方たちが非常に事 務的に大変だという話は聞くのですね。事務的に大変、3号、2号、1号というのをぐ るぐる回るのが本当に大変だという、そこは派遣という働き方に合わせたものを少し考 える必要があるのではないか。事務的な意味で思います。 ○袖井座長  いかがですか、事務局。 ○榮畑課長  恐らく37ページの67.4%をどう見るかというお話なのだろうと思うのですが、確かに これも一時点で加入している、加入してないというのをとっていますから、例えば37ペ ージの一般労働者派遣で適用、適用されない、適用、適用されない、適用と書いていま すが、その調査時点が適用時点なのか、適用されない時点なのか、それは変わってくる ことがあり得ると思いますが、ただ、逆に今の先生お話のように、適用というふうな時 点でとらえられた人もいるでしょうし、逆に適用されないという時点でとらえられた人 もいるでしょうから、そこは両方の影響が入っているのだろうと思っておりますが。 ○永瀬委員  派遣先がないで待機している期間は社員ではないからこの統計から抜けているのかと 思っていましたけれども、社員と数えているわけですね。 ○榮畑課長  はい。 ○袖井座長  ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。  それでは、特にないようでしたら、本日の検討会はここまでとさせていただきます。 離婚における年金分割も遺族年金も、将来男女が本当に平等になれば要らなくなるのか なという感じもしますが、現段階で女性の経済的な地位が低いという現状を考えると、 何らかの考慮をしなければいけないというふうには考えております。それを技術的にど うするかというのはこれからかなり難しい問題ですけれども、配偶者を失った女性の経 済保障という視点から考えると、何らかの手段を講ずるべきというところでは皆様の合 意が得られたのではないかと考えております。  それから若年の場合と高齢の場合とか、あるいは子どもがいる場合といない場合とか 、そういう条件などについて、婚姻期間をどう見るかとか、そういう点などについては 、きめ細かい配慮をしないといけないというふうに考えております。  本日で、具体的に論議すべき制度設計上の論点につきましては、一通りご議論いただ きました。まだ議論すべき点もあるかもしれませんが、この検討会を始めるときに、そ の当時の津島厚生大臣から、平成13年中に取りまとめていただきたいというお話もちょ うだいしております。そこでそろそろ平成13年も、平成13年度ではなかったかと思うの ですが、13年も終わりに近づいてきておりますので、次回の検討会では、今までご議論 いただきました内容を整理いたしまして、この検討会の報告書を作成するに当たっての 骨子、ドラフトについてのご議論をお願いしたいと考えております。一応そういう形で 進ませていただきたいと思います。  次回予定しております骨子、ドラフトに関する議論につきましても、また十分議論し ていただきたいと思いますし、いろいろお伺いしていると、必ずしも全部が合意に達し ているというわけではありませんので、なるべく皆様のご意見を率直に出していただい て、それを反映させる形で取りまとめさせていただきたいと考えております。  次回に報告書の骨子、ドラフトを提示してご議論いただくことにいたしますが、それ を作成するに当たりまして、私と宮武座長代理が中心になって作業に当たりたいと考え ておりますが、二人だけでは心もとないということで、委員の中で大学の先生で比較的 お若い方にお手伝いいただきたいということでありまして、これも年齢差別ではないか と私は思うのですが、佐藤委員、駒村委員、永瀬委員に作業に加わっていただければと 思っておりますが、いかがでございましょうか。 (「はい」の声あり) ○袖井座長  よろしいでしょうか。  それでは、私と宮武座長代理、宮武先生はまだアメリカですか、きょうお帰りになる のかと思うのですが、宮武先生と佐藤委員、駒村委員、永瀬委員の5人を一応起草委員 という形で進めさせていただきます。もちろん事務局にもいろいろお手伝いいただきま すが、佐藤委員、駒村委員、永瀬委員、いろいろお忙しいことと存じますが、よろしく お願いいたします。  それでは、次回の検討会の日程について、事務局から説明をお願いいたします。 ○度山補佐  次回でございますが、ちょうど来週になります。11月16日(金曜日)午後2時から、 会議室が異なりますが、厚生労働内18階にございます専用22会議室で開催します。別途 、開催案内をご送付申し上げますので、よろしくお願いいたします。  次回、ただいま座長からお話がございましたとおり、この検討会の報告を取りまとめ るに当たりましての骨子、ドラフトといったものについてのご議論をお願いしたいと考 えております。よろしくお願い申し上げます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。 お忙しいところどうもありがとうございました。                                      以上                        (照会先)                         厚生労働省年金局年金課                          課長補佐     度山                          企画法令第3係長 三浦     電話03-5253-1111(内3338)        03-3591-1013(夜間)