01/10/05  第5回薬剤師の人員配置基準に関する検討会議事録 第5回「病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会」   日時 平成13年10月5日(金)15:30〜17:30 場所 厚生労働省省議室 ○座長(岩崎)  ただいまから第5回「病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会」を開会さ せていただきます。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中をご出席いただき ましてありがとうございました。まず資料の確認をお願いいたします。 ○保健医療技術調整官  それでは本日の資料を確認させていただきます。大きなクリップで止めてある「議事 次第」といちばん上に書いてあるほうですが、その後に資料1として、前回の議事録を 付けています。資料2として、日本病院薬剤師会からご提供いただいた資料を付けてい ます。  資料3として、事務局のほうで準備した資料を付けています。参考資料の1、2、3 ということで、3点ほど付けています。  あと、委員の皆様のお手元にだけ届いているかと思いますが、別に小さなクリップで 綴じた資料があります。1つは1枚紙で、ちょっと用語について簡単に解説した紙で す。その後の綴じたものについては、これまで事務局のほうにいただいたいろいろな要 望書等を議論のご参考のために付けています。 ○座長  資料に欠損はございませんでしょうか。それでは、まず資料1の議事録について、特 別に何かございましたら、事務局によろしくお願いいたします。特にご意見がなければ 進めたいと思います。  それでは、前回に引き続いて病院における薬剤師の人員配置基準に関する事項につい て、ご議論いただきたいと存じます。本日は基準の見直しについて、具体的な議論を進 めてまいりたいと考えておりますが、若干の資料が提出されておりますので、まずはそ れぞれについて説明を伺った後に議論に移りたいと考えております。まず事務局から資 料が提出されておりますので、それについてご説明をお願いいたします。 ○調整官  お手元の資料3に基づいてご説明させていただきます。各委員の方々からも、医療機 関における薬剤師さんの配置状況等について、いろいろここでデータをいただいてご議 論いただきました。また事務局のほうでも第2回目だったかと思いますが、平成10年の 医療法に基づく立入検査の結果についてはお示しさせていただきましたが、平成11年の 立入検査の結果について、とりまとめたものが資料として準備できましたので、それを ご報告させていただきます。  資料3の1頁目の1、これは人員配置基準の遵守率の年次推移ということで、医師、 薬剤師、看護婦について書いてございます。これは1回目に出させていただいた資料と 全く同じです。平成11年の段階で82.9%の医療機関で、薬剤師さんの人員配置基準が遵 守されているという数字になっております。  次に2番目、3番目で、医療法第25条に基づいて、平成11年度の立入検査を行った医 療機関のデータについて、いくつか分析したものです。平成11年度に立入検査を行った 医療機関のうち、特定機能病院は除いて、8,602の病院について分析したものです。これ は、医療施設調査等のほかの調査を比較して、大体病院の分布が検定した結果、ほぼ同 じだろうというような形になっておりますので、データとしてそれほど偏りがないので はないか、統計学的に偏りがないのではないかと考えております。  8,602の病院について、病床規模別に基準がどのくらいの病院で遵守されているかどう か、あるいは標準人員に比べて欠員を生じているかどうかを示したのが、真ん中の表で す。  病床規模別に見ると、いちばん右側の枠で、全体では16.8%の医療機関で標準に満た ないという数字になっていますが、この割合が200床から300床、あるいは300床以上とい う規模の大きな医療機関で、その標欠の割合が出ております。実数では、100未満の所が いちばん多いという数字になっております。  同じデータについて、開設者別に見たものが、1頁のいちばん下の3の所です。これ も同じような見方をしていただきますと、全体で標準に満たない所は16.8%ですが、特 に国公立や公的・社会保険の医療機関で、標準に満たない割合が高いという数字になっ ております。実数では、医療法人の病院がいちばん高いという数字になっております。  1頁めくっていただいて、今回の議論に関係ある部分ですが、平成10年に定められた 暫定基準については、経過措置が2つ付いています。1つが一般病院の100床未満の所 は、入院患者さん本来70人に1人という暫定基準の所が100人に1人でいいという基準 と、当基準をすでに満たしている、当時開設されている所については、旧基準が満たさ れている場合についても、基準を満たしているものとするという2つの経過措置が認め られているところですが、この経過措置が、いまの医療法の施行規則上では、平成13年 12月29日に措置が切れるというような位置づけになっております。  この経過措置が廃止されたときに、どういうような状況になるのかというのを、ちょ っとわかりやすく絵にしたものです。上の右側は、先ほど申し上げた特定機能病院を除 く8,602の病院について、基準を満たしている病院が7,155病院、満たしていない病院が 1,447病院ということで、この1,477病院が基準を満たすために必要な薬剤師さんの数 が、個々の、端数はすべて切り上げた数字で足し上げたもので、2,148人必要であると いうような状況です。  実際に2つの経過措置が廃止された場合に、その○→×と書いてありますが、基準を 満たしていたという形の病院が基準を満たさない病院になってしまうというのが、514病 院で、6%に当たります。その結果、下の枠になるわけですが、基準を満たす病院は6,6 41病院、満たさない病院が1,961病院になってしまって、この場合には、純粋にほかの要 件が変わらないと仮定すると、同じような考え方で、必要な薬剤師さんの数は約800人増 えて3,013人必要になるという形になります。  この514病院について、病床規模別と開設者の区分別に見たものが、下の2つの表で す。特にII.○→×と書いてある真ん中のカラムを見ていただくと、この514病院の内 訳、病床規模別に見ると、割合としては100床から200床の所がいちばん多くなっていま すが、数としては100未満の所が多くて、その次が100床から200床の所という形になっ ております。  開設者別に見ると、割合はこういう形ですが、実数としては、医療法人の所が、かな り大きな数字で○→×になるというような形になっております。 ○座長  資料3の説明をしていただきましたが、質問がございましたらどうぞ。討議は後でし たいと思いますので、この資料について何か疑問点がありましたらどうぞ。  数字をお示ししたということで、後の討議の材料にしていただければと思います。 ○櫻井委員  2頁目の下のほうの、○→×の、さっき2の所とおっしゃった、100床未満となってい る部分ですが、これは上の、経過措置が廃止されたときに○→×になる514病院について の内訳という書き方をしているのは、100床から上については、経過措置といっても、旧 基準の適用というふうに読んでいいのですか。100床以下の所は、2つの経過措置のどち らかはわからない、そういうふうに読んでいいのですか。 ○調整官  これは全く純粋に病床の規模だけで分けてありまして、計算の仕方は、それぞれの病 床によって分けてあります。ですから、例えば150床の病院で、100床が療養型で50床が 一般というような場合には、ここにも。 ○櫻井委員  これは一般病床数じゃないんですね。 ○調整官  はい、100床がかかってくる可能性があります。ですから、ご指摘のとおり、100床未 満については、100床以下の特例の経過措置と旧基準が両方で、100床以上についても、 そんな大きな数にはならないかとは思いますが、若干、100床以下の特例がかかっている 医療機関は入ってきているというふうに見ていただければと思います。 ○奈良委員  国公立の公的病院が標欠が多いのにびっくりしたのですが、ただ国立と公立、私が認 識しているところでは、やはり国とか市の大きな病院というのは、比較的標欠が少ない のではないかと思うのですが、町立とか村立とか、そういう病院の仕分けはあります か。 ○座長  つまり、国立と公的と公立との違いですね。 ○調整官  結論から申しますと、それは分けて計算してはいません。国立、厚生労働省とか文部 科学省、あるいは労災病院も入っていますが、それ以外に都道府県立と市町村立、すべ て一緒の数字で計算しています。 ○座長  私は公的と言いましたが、公的はこの公的とこの社会保険の中に入っているわけです ね。そうすると、公的を除くと、いまおっしゃった国立と都道府県立、市立まで含め る、そういう所がこの国公立の中に入っているということですね。その内訳はしていな いということです。それでは、後の討議の材料になりますし、また、後でも結構です。  事務局のほうからもう一つ、参考資料が出ていますので、参考資料の1、2、3につ いてご説明をお願いします。 ○調整官  参考資料の1については、諸外国の状況についてということで、前回の資料でも付け させていただいたものとほぼ同じです。アメリカの状況、カナダの状況、前回に追加し たものとして、1頁めくっていただいてイギリスの状況というような形で付けていま す。これらの国々においては、基準という形では定められていないということを記載し ております。  3頁目、4頁目については、前々回になろうかと思いますが、田中委員からいろいろ ご説明がありました、関連の数字について拾ったものを付けてあるという状況です。  参考資料の2は、これまでの主な意見等を見ていこうということで付けさせていただ きましたが、これは、もちろん皆様のお手元には、最初から前回までの分厚い資料が付 いていて、議事録を見ていただければ、すべてご発言されたことは載っているわけです が、事務局のほうで簡単に拾ったものです。全部拾いきれているかどうか、ご指摘はあ ろうかと思いますが、ご参考までにということでまとめたものです。  次に参考資料の3ですが、これも毎回付けている資料で、主要な検討項目及び考慮す べき事項ということで、この検討会の1回目に、こういう形で進めたらどうかというこ とをご提案させていただいたものです。  特に考慮すべき事項、参考資料の2にもこの考慮すべき事項というような流れでまと めさせていただいたのですが、1回目から4回目までは、ここを中心に、これまで委員 の方々にも資料を提供していただいて、これまで議論を進めてきたところですが、若 干、今日補足の資料を事務局からも出させていただきましたが、上のほうの「主要な検 討項目」というところを中心に、ご議論いただけたらという話が、今日冒頭に座長から もありましたが、そういう意味で付けさせていただいた資料です。  参考資料以外に、若干補足でご説明させていただきます。お手元に別綴りで配布して あります資料のいちばん上の1枚紙についてです。いろいろご議論いただくときに、言 葉の定義が若干ズレていたら困るのではないかということで、これも、何度も資料の中 には出てきているものですが、「暫定基準」ということで、暫定基準の中身は、本来10 年に決めた基準ですので、経過措置も含めて、暫定基準という考え方もあろうかと思い ますが、暫定基準というときには、この数字の所だけで、経過措置というのは別に1) と2)の2つの経過措置がありますということと、旧基準というのは、ご案内のとお り、80調剤に薬剤師1人という基準ということを、改めて確認の意味で書かせていただ いているものでございます。  暫定基準の「入院」の所について、少し解説させていただきますと、10年に決めたと きから今回の議論の間に、第4次医療法の改正があって、若干、病床の定義、区分が変 わっていますので、解説させていただきます。  「入院」の所に、一般病床、感染症病床、結核病床、精神病床、旧総合病院という表 現をしましたが、内科等5つの科があって、100床以上の病院または大学付属病院にある 精神病床というのが、医療法上規定されていますので、その病床のことですが、そこに ついては入院患者さん70人に薬剤師1人という形になっています。10年のときには「そ の他病床」というものがここにも入っていたかと思います。ここに該当している区分で した。  それから、療養病床と、上のほうで定義した以外の精神病床については、現段階で150 人に1人という形になっているということです。  第4次医療法改正で経過措置になった、昔の特例のいわゆる精神病院といわれていた もの、あるいは結核病院といわれていたもの、それから特例許可老人の関係は、カッコ を付けていますが、そのまま暫定基準を当てはめると、150人に1人という状況になって いるということです。 ○座長  それでは参考資料について、何かご質問ございますか。後ほど、参考資料3に基づい て、討議は進めたいと思っておりますので、是非この中で、どうしても、いままでもそ うでしたが、1枚の、いまの必要算定数の出し方が、暫定基準と経過措置と、旧基準と いうものがあるので、これを十分参考にしていただきながら、議論をしていただければ と思っております。  資料2については、日本病院薬剤師会からさらに提出されていますが、後ほど議論の 中でご説明いただくことにします。  それでは、いままでの参考資料、最初に出された資料3等に基づいて、病院における 薬剤師の人員配置基準について、具体的な議論に入りたいと思っております。  そこで、参考資料の3を参考に、この順序に従ってご意見を伺いたいと思うのです が、そういう手順でよろしいですか。外来における、入院における、そして経過措置等 についてという手順でやっていきたいと思うのですが。  それでは最初に、外来における薬剤師の配置基準について。実はいままで、あまり外 来のことではご議論がなかったのですが、特にご発言があれば伺いたいと思います。  よろしいですか。ほとんど議論がないままに今日まできているのですが、これまでの 資料の中で、このようなことは、たまには出てきておりますので、それにかかわる発言 としては、例えば調剤にかかわる業務が非常に簡素化されてきたとか、また、院外処方 率が高まってきたとか、そういうことを勘案した場合に、外来の基準はこのままで良い のかどうかという問題です。  外来の基準というと、そこに処方せん75枚に1人ということが、いま暫定基準の中で 書かれています。これは旧基準の中でも、(入院調剤数+1日当たり外来調剤指数)÷8 0ということで出されているわけですが。 ○全田委員  75枚でいいのか60枚なのか40枚なのかということについては、ご承知のように、国の 施策として医薬分業がどんどん進んでいく中で、どういう動きになるか、後でご説明さ せていただきますが、大変な進展率で進んでいるわけです。  ですから、先生方ご承知のように、普通の保険調剤薬局だと、40枚に1人というの が、薬歴管理を含めての基準です。ですから、実際75枚に1人ということになると、本 当に病院の外来で十分な患者さんに薬の説明までできるかというと、できはしません。 それが現実です。  ただ、どんどん医薬分業が進んでいくので、その動きを見ながら考えなくてはいけま せんので、正直申し上げて、我々病院薬剤師としても、75枚ではとてもやれないけれど も、それでは60枚ならいいのか、開局薬剤師さんと同じように、40枚にしてくれという ことを申し上げるべきかについては、入院のほうに非常にウエイトをかけているので、 正直のところ数字は出せません。  ただ、現実問題として75枚に1人ということは、とても十分な服薬指導、薬の説明は できないということだけはご理解いただきたいということを申し上げておきます。 ○伊賀委員  枚数の根拠が、いわゆる調剤業務といったものでおそらく出されてきたと思います。 服薬説明というのもあったのですが、保険薬局における昨今の調剤過誤、そういった点 においても、不備な処方せんの発行が1つの原因になっているということがすでに言わ れております。したがって発行する側も、院外処方せんに関しても、やはり薬の専門家 である薬剤師が、病院側の立場として、処方監査をすべきであろうということは、国立 大学の病院長会議の提言の中にも盛り込んでございます。そういった点も考慮していて いただければ、現在の枚数が単純に調剤ということだけの基準ではなくて、もう少しそ ういった、リスクマネージメントというものを置いた上で、院外処方せんに対する外来 での薬剤師の役割を少しご考慮いただきたいと思います。 ○座長  いわばチェック機構を働かせるというような意味での、そういう役割ですね。 ○伊賀委員  そういう役割です。 ○座長  ほかにはいかがですか。あまり議論がなければ、特に変更する必要はないということ でしょうか。そういうことで、一応この外来の基準については、あまり変更する必要は ないのではないかということでまとめてみたいと思いますが、後でまたご議論があれ ば、そこでもしていただきたいと思っております。  次に、この主な検討項目でいくと、「入院における薬剤師の人員配置基準について」 ということですので、これについてご議論いただきたいと思います。その中でも、 (1)(2)に示しているようなことについてのご議論があれば、お伺いしたいと思い ます。 ○奈良委員  私、前回の委員会に欠席しまして、本当に申しわけございませんでした。ただ、日本 病院会で2度ほど理事会のときに、皆さんにご意見を承ったのですが、日本病院会とい うのは、2,780の病院があって、大きな病院、小さな病院、国公立、私立と、いろいろな 病院が入っているわけです。  ところが、病院の中に、この問題で地域性を取り上げていただきたいという要望が非 常に強かったのです。私は赤十字で、赤十字には92の病院がございます。ところが19の 病院が200床以下で、100床以下の病院が5つあります。  医師をはじめ、看護婦、その他の職種も、非常に少なくて大変で、あちらこちらの病 院から援助しなくてはならないという状態で、どこが最も苦しんでいるかというと、北 海道とか長野県の山の中の病院です。そういう病院は、非常に地域医療に貢献してい て、信頼も厚いですし、赤十字としてもなかなか、これをどのようにするか判断しきれ ないような状況です。都会の病院は比較的薬剤師さんが充足されると思うのですが、私 は、栃木県の足利市で、昔は繊維で大変繁栄していましたが、いまは繊維が全滅したも のですから、非常に地盤沈下していて、どんどん若者が都会に流出してしまうのです。  特に薬剤師の方は、東京とか京浜、東海ベルト地帯のほうに行っているようなところ があって、しかも、もう一つ、最近、スーパーなどにある調剤薬局のようなものがあっ て、そういう所で、厚生省のご指導が厳しくあった後、我々の病院にも結構引き抜きの 手が伸びているわけです。給料も格段に違うというようなこともあって、若い薬剤師 は、とかく都会に行きたがるところがあって、薬剤師の年齢も、私どもの病院では少し ずつ高齢化する傾向があります。  それから、先ほどご質問したのですが、国立と公立、公立の中でも特に市立の病院 と、町村立病院で違うのではないかということが、やはり赤十字などを見ていても、田 舎のほうに行くにしたがって、非常に厳しい状況なのです。  そういう意味で、いま、地方分権ということがしきりに言われておりますので、確か にここでは、定数については県知事の裁量というのがあったような気がしましたが、そ れをもうちょっと幅を広げていただいて、やはり私どもの仲間でも、本当に山の中で必 死になって良い医療を提供している病院が標欠で、場合によっては厳しいご指導を受け ないように配慮していただきたいと思います。 ○座長  これは、前々回も前回もそうですが、各病院団体さん、特に豊田委員のほうから4病 院団体等を含めたご報告があって、そこの中でも地域性ということが大変謳われてい て、その問題はかなり委員の中では浸透してきたかと思います。  邊見委員も、その話をされたのではないかと思います。仙波委員も、地域性というこ とについてかなり述べられたのではないかと思うのですが、その辺については、例えば 数でどこをどこまで、どのように勘案して数を一々つくるのかという議論ではないです ね。そういうことへの配慮の必要性があるのではないかというご意見と承ってよろしい でしょうか。 ○奈良委員  はい。やはり地域の実情がわかっているのは、県とか市町村だと思いますので、その あたりでご英断いただきたいと思っております。 ○田中委員  具体的な意見というよりは、これからの議論のために私たちが考えなければならない 点について、申し上げたいと思います。出席させていただいて、安全な薬品業務のため には、より多くの薬剤師が必要だというご意見と、一方で、それはわかるけれども、現 行の診療報酬では、経営上難しいというご意見がありますね。それはよくわかるのです が、実はその2つの意見だけではなくて、いま、医療に対する環境として、ご存じのよ うに市場経済原理主義者による攻撃がかなり強くある現状を意識していなければいけな いと思うのです。それはどういうことかというと、既存の医療機関だと、お客様指向と か、効率性で問題があるから、異なる経営主体を認めよとか、現行の診療報酬がいまく らいの水準しか給付できないなら、そこまで健康保険でカバーして、そこから先は混合 診療を導入せよ、などです。  具体例として、薬剤師がそこでの議題に上がったことは1回もありませんが、例えば そういう低い水準を健康保険の給付基準にして、もっと薬剤師を置いたら、混合診療料 を取ったらどうだというような感じの攻撃があるのは、先生方もご存じのとおりだと思 います。  ですから、これに対して、それに賛成してしまえばそれで終わりですが、そうではな い、日本の医療はやはり非営利原則を大切にし、患者の経済水準が受療のあり方に影響 しない姿が日本の医療の良さであると考えるなら、やはり質の確保は、どうしても頑張 ってもやらなければならない。  いま奈良先生が言われたように、経過措置とか地域性とか、さまざまな工夫によって 仕かけつくって救っていく手当てには全然反対しませんが、表に出る水準自体を下げた りするような方向にしては、絶対にいけない。その理由はさっき言ったように、日本の 医療のいままでの哲学を守るためにも、私たちはより高い水準を目指す。  ただし、一部については、多少、目こぼしといっては変ですが、経過措置をどうこう という工夫で配慮すべきであって、本体の意見は、やはりより良い質という方向にもっ ていくべきではないかと私は思います。 ○座長  まとめるのに大変よい発言をいただいたのではないかと思います。 ○櫻井委員  私も具体的な話ではなくて、いま田中先生も総論的なことをおっしゃいましたから、 これはすでに議論してきたことですが、この人員配置基準を医療法で決めるというの は、おそらく最低基準、これ以上必要ということで決める基準だと思うのです。それと 一方で、いろいろご意見も出ましたが、こういうことをして、こういうふうにしてああ するには、これだけ人が要るというような、目標基準なのか、理想的な数なのか、どう いう表現がよいかわかりませんが、これだけあったら、こんな良いことができるという ことがあればいいと思うのです。  もう一つは、現状を分析した数字が出ていますね。その辺の3つの数字をどう考える かということを、いま田中先生がおっしゃったこととの兼合いになるのではないかと思 うのですが。  また、医療法という法律で決める。これは外国の例を調べてもらったら、普通外国で はそういうことを法律で決めている所はないということでした。では日本にはなぜ医療 法があってそういうことを決めるかというと、最低限度、これ以下であると国民に何か の迷惑をかけるかもしれないから、それだけは何とかしてほしいというところだという ふうに考える基準だろうと思うのです。  ですからその辺の数字の兼合いが出てくるのではないかと、私は思っていますが、そ れをきちんと考えないと、実際に具体的な数字を出していくときに議論が混乱するよう な気がしています。 ○仙波委員  いまの議論ですが、私はやはり医療法で決めるものは最低基準で決めて、それが必ず しも十分な質の高い医療を確保するということに追いつかない部分も機能によって出て くると思うのです。その部分はまさに、病院の裁量でやるのがよい。市場原理の問題も いろいろありますが、医療法で決める最低基準を高い所にすると、みんなアップアップ してしまいます。そのメルクマールは、やはり、4分の1が標欠になるというところ は、1つの実証的な線ではないかと思います。  精神科の場合は、標欠が26%で、特に九州地区とか北海道地区は、それよりも足りな いというような状況ですから、私はいまの基準を最低基準とし、やはり必要なところは 各病院の裁量によってやる余裕をもったほうが、これからの市場原理云々というような 話に入ると、そこで対応すべきではないかというふうに基本的には考えております。  それでは、アメリカとか、諸外国では、国の基準がないというが、これを全部なしに するよりは、やはり現在程度のものは、押さえておいたほうがいいのではないかと思っ ております。 ○金子委員  いま各先生方からお話のあったとおりだと私も思うのです。ただ一つ、医療法の考え 方というのは、各諸外国と日本が大きく違うのは、日本が皆保険制度だということにほ かならないのではないかと思うのです。きちっと医療法の中で、国民の医療を安全に守 るという立場をとれないと、皆保険そのものが無意味になってしまう。もしくは、国民 から皆保険そのものが支持されなくなってしまう形態になりかねない。  やはり日本の皆保険という制度は世界に誇るべき制度であるわけですから、これをき ちっと守っていくためには、やはり国民に安心して受けられる医療の質というものを私 たちは考えなければいけないだろう。その中で、いま1つの職業として薬剤師の定数と いうものを議論しているわけですが、前回の委員会でも私からお話させていただきまし たが、その中で、例えば1人の薬剤師ということが、現に数字からは1人だけれども、 医療の中で薬剤師が本当に必要であれば、不在であるということを法律の中で容認でき るかということを、各先生方にそこら辺のお考えとご意見をお伺いしたいと思うのです が、いかがでしょうか。 ○座長  質問の内容をもっとわかりやすくお願いします。 ○金子委員  いま暫定基準の中で「100床以下1名」という薬剤師の定数があります。いま、中でも う70床に1人という、スタートラインが「1」から始まっているということで、1人と いう病院ができるわけです。ということは、いま1年365日のうち、薬剤師も年休も取る でしょうし、病欠もするでしょう。その中で、薬剤師不在の時間ができる。前回も私か らお話したように、調剤薬局等では、薬剤師が不在のときには営業を中止するような指 導の中で、医療を守ってきている。本当に医療の中で各先生たちが、薬剤師が必要だと いうことで認められているのであれば、はたして病院の中で薬剤師が不在のまま、医療 行為が継続することをどうお考えかという質問なのです。 ○佐々委員  いまのお話で、1人といっても、実際に1人という所はほとんどないと思うのです。 ベッド数の少ない所でも、パートさんを雇うとかして、夜間は別にして、日中に薬剤師 不在ということは、実際には聞いたことがない。ただし、もっと厳しくすると、この病 院では1.1人という数が出ると、これは2人いなければいけないことになります。そうな ると、病床数の少ない病院にとっては大変きつい。ですから、実際の内容はそういうも のではないだろうと思うのです。 ○櫻井委員  もう一つは、これは日本だけの特異な事情ということで、歴史的なことをひっくり返 さなければいけなくなりますが、原則は、調剤に関しては薬剤師さんがやっていくとい うことになっていますが、ある程度医師がそれに代われるということで、その善悪を議 論したら、また歴史を遡ってやらなければいけないので大変ですが、日本の現状はそう なっていますから、ベッド数の少ない所は、万が一薬剤師さんが、例えば1人だとし て、もちろんいま佐々先生がおっしゃったように、実際に1人という所は少ないだろう と思いますが、病気で休んだりしたら、その部分の業務は医師が代われる部分があると いうところがあると思うのです。  ですから、当分はそのように考えればいいと私は思っています。これは、だんだん各 論の話をすることになりますが、さっき私が申し上げたように、最低基準的な考え方 と、何か目標というか、これだけあったらいいよという数と、現状があるわけです。ど ちらかというと、こういうことができるよというのは、一般的に考えれば、大きな病院 であり、病床数の多い所であり、しかも公的とか、あるいは国立、公立の病院ではない かと思うにもかかわらず、現実にはもう一つ現状分析という数字でいうと、そっちのほ うが全然足りないわけですね。  だから、そういう問題が、むしろそっちのほうが非常に大きな問題になっているので はないかと私は認識しているのです。事実、確かに500床の病院では、さっき言ったよう なことで、例えば70人、80人の病床の病院のように、薬剤師さんが1人欠けたからどう というのは、逆にいうとそれは、10人定員の所であれば、1人欠けても9人薬剤師がい るから補ってしまうだろうということがあるのかもしれないとは思っています。まあ、 少ない所の部分は、確かにいまおっしゃったような疑問はあるでしょうけれども、それ はやはり、日本の特別な事情があって、問題は起こしていないというふうに理解せざる を得ないと思うのです。 ○座長  いまお2人だけはお答えになられたのですが、ほかにございますか。 ○金子委員  いまのお2人の先生のお答えも、私のほうで知り得る限り。それから、1つ事務局に 確認していただきたいことがあります。まず、100床以下の施設の問題について、これは 前回私が話したかと思いますが、100床以下の施設は、施設数としては、先生方のご認識 のとおりだと思います。1人薬剤師の問題で、全施設のうち24%という数字が出ていま す。ですから、全体の4分の1の施設は薬剤師が1名しかいないという実態がありま す。これをまずご認識いただきたいと思います。  もう1点は、先ほど櫻井先生のほうからお話のあった、医師が代わることができると いう行為について、これは私の認識不足でしたら訂正しなければいけないので、事務局 のほうに確認をお願いしたいのですが、医師が薬剤師の業務を代行する場合には、特定 の要件があったかと思うのです。すべて無条件の中で、薬剤師がいない場合医師がそれ にとって代わることができるというふうには、おそらく医療法上なっていないのではな いかと思うのです。そこの特定要件を満たした場合については、医師が代行できるとい うふうになっているのではないかと思うのですが、確認をお願いします。 ○座長  いま確認してもらうことにして、ほかにどうぞ。 ○金子委員  医療法ではなくて、薬剤師法で。その条件がどこに書いてあるのか。 ○座長  そっちへいきますか。いまの議論の続きで。 ○全田委員  本来といいますか、先ほどから田中委員、あるいは櫻井委員からご発言がありました ように、私たちは当事者ですから、国民に安心してもらえる医療を提供し得るにはどう いう。人が多ければ、絶対にミスは犯さないというようなことは申し上げられません。  ただ申し上げたいのは、後で要望書も出させていただきますが、少なくともいまから 5年前の医療審議会において、病院の薬剤師の業務が平成8年のときに、かなりもう外 来から入院中心に変わってきた。そういうときに、今後の病院薬剤師の人員配置という のは、病棟単位で考えることが望ましいであろうということで、専門の先生方から、す でに5年前にそういうご意見を賜っているわけです。  それから、少なくとも、院外処方せんというか、医薬分業が進んできて、我々病院薬 剤師は、外来は極力調剤薬局にお願いして、入院患者さんのベッドサイドでの、いろん なことについて、薬剤業務、薬学的指導といいますか、そういうことで頑張ろうとして きたわけです。  そういう中で、特に数年、いままでもあったのだと思うのですが、ここにきて大変に 医療の事故が起きている。特に医薬品に関する事項は、カワムラ報告案ではないです が、50%近くになっているということからいけば、常々私が申し上げさせていただいて いる、薬ある所に常に薬剤師がいる。薬が使われる所に薬剤師がいなければ、薬剤師が いれば、少なくとも薬に関するミスは少なくすることができるというのが、我々のスタ ンスなのです。  ですから、先ほど田中委員や櫻井委員が言ってくださった、そして仙波先生がおっし ゃいましたことは、確かにわかるのです。しかし現実は、病院としては1.5倍の薬剤師を 雇ってくれているわけです。それで、標欠は12.5なのです。  私は数の理論を言いたくないですが、87.5は、一応満たしてくださって、我々を評価 してくださっている。ですから、仙波先生にお言葉を返すようですが、とにかくそれぞ れの病院において、企業努力なり経済原理を入れていくというのですが、何回も言うよ うに、ご理解のある先生ならいいのです。でも、やはりそうでないと、我々は雇われて いる身ですから、厳しい状況がくるだろうということです。  要望書を作らせてもらっているのですが、我々の日本病院薬剤師会のスタンスとして は、病棟に最低1人の薬剤師は置いていただきたいというのが基本的な姿勢でございま す。同じことを何回も言って申しわけございませんが、そうすれば、少なくとも国民 に、いまよりは、安心した医療を、少なくとも必ず薬が使われるときに、プロたる薬剤 師が目を光らせることができるということを申し上げておきます。それが我々の基本で す。  座長宛てに要望書を作ってきたのですが、回してよろしいですか。それと、平成8年 の審議会具申の内容をもう一度先生方にご覧いただきたいのですが、よろしいでしょう か。 ○座長  どうぞ。 ○全田委員  それでは事務局で回していただけますか。 ○調整官  それでは資料を配らせていただいている間に、先ほど金子委員からご質問のあった件 について答えさせていただきます。調剤業務については、薬剤師法の19条によると、 「薬剤師でない者は販売または授与の目的で調剤してはならない。但し医師もしくは歯 科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するときはこの限りで はない」ということで、どういう場合かというと、「患者または現にその看護に当たっ ている者が特にその医師または歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申 し出た場合」。2つ目として「医師法第22条の各号に掲げる場合」で、この「医師法第2 2条の各号に掲げる場合」というのは、すでに委員の方はご存じかもしれませんが、処方 せんをわざわざ発行しなくてもいい場合ということで、病状が刻々と変わる場合とか、 いろいろ条文は省略させていただきますが、いくつか、8つほど要件が書いてあります から、そういう場合には処方せんは交付しなくてもよいということです。  この号に当たる場合には、調剤を医師あるいは歯科医師ができるというような形にな っております。 ○金子委員  いまの件に関する質問ですが、ということは、「処方せんによる調剤」というのは、 医師が行う場合には、自分の書いたもの以外はできないという解釈でよろしいですか。 ○調整官  確認させていただきます。 ○座長  一種の調剤権の問題ですね。それは事務局のほうで確認していただく間に、ほかに議 論していきたいのですが、いまお配りいただいた、全田委員の要望書について、全田委 員のほうからお話いただけますか。 ○全田委員  先ほどもお願いしたとおりで、資料1として付けさせていただいた、平成8年の意見 具申という、すでに5年前においても、医療環境の変化が進んできた中で、こういう状 態で、確かにいまは医療経済等、いろいろな変化がありますが、その時点で、やはり病 院薬剤師の重要性というものは、医療の中で評価されてきているわけですから、これを 尊重していただきたいということです。 ○座長  医療審議会のこの意見具申を尊重しようということですね。  私どもはおそらく尊重しながら議論をしてきたのではないかと思いますが。 ○伊賀委員  1枚目のほうにあるように、「国民に求められる病院薬剤師業務を遂行するため」と いう所は、平成8年以来、すでに何度もここでご説明しておりますように、医療の高度 化とか多様化によって、特定機能病院ですら、30人に1人でやっている現状において は、なかなかこの現状のいまの業務の展開というのは大変厳しいということを、私ども は特定機能病院におりますが、感じております。  したがって、一般病院におかれても、やはりこういった国民に求められる病院薬剤師 業務の多様化と、そういったものを考慮すると、平成8年のときの暫定の70人に1人と いうのは、現在の、田中先生がさっきおっしゃったように、医療の質を確保するという 面では、やはりここに書いてあるように、是非病棟に1人というような形で見直してい ただきたいと、改めてお願いいたします。 ○奈良委員  国民に良い医療を提供しようということは、我々も常々思っているわけですが、た だ、実際問題として、先ほどから何回も申し上げていますが、地方においては薬剤師が 非常に少ない。特に、卒業したての若い薬剤師は、どうしても都会のほうに住みたが る。  それではどうしたらいいかということですが、実は先日、4病院団体協議会で、研修 医の研修制度について提言を申し上げたのですが、そのときに、やはり国民に安心して いただける医療を提供できる研修医を育てるためには、大学病院の中だけではなく、臨 床研修指定病院を中心にした実践をしてほしい。それで、すべての科を満遍なく研修し ていただきたいという提言を出して、厚生労働省の医政局も、日本医師会も、大体ご賛 同いただいたのではないかと私は自負しております。  ただ、臨床研修指定病院は、やはり薬剤師さんをもっときちんと配置してもいいので はないか。そうなってくると、特定機能病院と一般病院の間に臨床研修指定病院を置い て、薬剤師の数をもうちょっと重点的に配置するように指導するのも、一つの方法かと 思います。  それから、私どもは医師の臨床研修のときに、大学病院だけに研修の医師が固まって しまうので、研修病院群というのを提言して、地方の小さい病院とか、場合によっては 立派な診療所の先生のご指導をいただくということを考えているわけです。そこで今度 は、これは暴論かもしれませんが、薬剤師の方も研修するわけでしょうから、そのとき に是非、実際に地方の病院等にもある程度強制的に配置するというのも、一つの方法で はないかと思うのです。  というのは、先ほどから地方の病院、あるいは小さい病院で、薬剤師が1人しかいな くて、では薬剤師が休んだときどうするんだというご意見があったのですが、それを解 消するためには、ちょっと暴論かもしれませんが、臨床研修のときに、地方のそういう 病院に、ある程度義務的に、そういう薬剤師を配置するというのも一つの方法かなと思 うのですが、いかがでしょうか。 ○座長  それについては、前回私が最後に発言させていただいた経緯がございますが、改め て。 ○金子委員  いま奈良先生がおっしゃったとおりだと思うのです。いろんな方法がありまして、私 は実は北海道なのですが、北海道の場合は、薬剤師の臨床実習というのは、ほぼ百パー セント実施されております。基本的には、まだ大学、医学部の医局の形態が薬学部のほ うにはないものですから、臨床施設に関してもまだ指定機関がないということで、原則 的には、学生の出身地に戻って研修するというような形で実施しているわけです。  ですから、北海道の場合は、研修の時点では随分いろんな地方にばら撒いて研修をし ているというのが実態なのですが、確かに奈良委員のおっしゃるように地方に関して は、研修は受け入れたが卒業したあと戻ってこない、という問題が残っていることも周 知しております。ただ、法の規則を決めていく中で、もちろんそこの部分を十分考慮し なければいけないとは思うのですが、先ほど田中委員からもご意見があったように、例 えば、仮に罰則規定のほうとか、いろいろな部分で柔軟性を持たせるという面では、加 味する必要があるのかなという気はしますが、規則の中でそれを加味して決めていくと いうのは、私としてはいかがなものかという考えを持っております。 ○座長  事務局のほうはいかがですか。 ○調整官  先ほどのご指摘の点を調べさせておりますが、間に合わなければ、次回に説明させて いただければと思います。あとこの法令の解釈で何か追加があれば、一緒にご指摘いた だいたほうがありがたいのです。 ○座長  金子委員、何かありますか、よろしいですか。それでは、本論の議論を続けたいと思 いますが、いかがでしょうか。 ○櫻井委員  先ほどから同じことを繰り返しているのですが、実際に医療法の最低基準にもあっ て、機能を十分に果たす、薬剤師が良い医療提供の仕事をされるという意味の人数が必 要だということで、確かに特定機能病院というのは、そのための配置を増やしている形 になっていると思います。奈良委員がおっしゃった臨床研修指定病院というのも1つの 考え方ではあるのですが、本来でしたら、薬剤師臨床研修指定病院というのがあれば、 そこに人数を増やすというのは、臨床研修をきちっとやる意味でやられるなら分かると 思います。  いま金子委員がおっしゃった病院の研修というのは、いま病棟での研修が薬剤師に行 われているのか、非常に疑問に思います。大体病院で研修をやっていると言っても、そ れは薬局の中で製剤などの実習はやっておられるかもしれませんが、病棟ではどうなの か。もし実際に病棟で患者さんと接する形の研修もされているのでしたら、それも教え てほしいのです。  その辺の所は正直言って、確かに薬剤師の方々がおっしゃっている意味は非常によく 分かるし、大事なのですが、そこへ至るまでの基盤整備みたいな、本当の意味の病棟実 施で患者と接するような研修が行われているのでしょうか。つまり、ほかの医療職種、 医師は一応当たり前ですが、もちろん医師の指導の下で、学生時代からベッドサイドの 教育を受けますから、患者の所へ行っていろいろ問診をしたり、このごろは患者との会 話の練習までさせられているようですが、そういうようなこともしています。看護婦は もちろん病棟実習があって、実際に患者の身体に触れるということをやっているわけで すが、そういうようなことの基盤整備がどうなっているのか、非常に疑問なのです。そ の辺の所も考えて、実際にこれこれこういうふうになっているから、そういう人たちが 病棟で働くのだというふうに言っていかないと、なかなか難しいかなと思うのです。 ○全田委員  当事者から申し上げますと、いま薬科大学というのは前にもご説明したように、国 公・私立入れて46あります。実務実習がほぼ8割の大学で、今年からようやく必須にな りました。ただし、1カ月実習です。いま櫻井委員が言われたように、1カ月の実習の 中には調剤室だけではなくて、1週間ぐらいはベッドサイドへ行きます。それをもって 十分であるか十分でないかというのは、私も決して十分ではないと思っております。そ ういう動きは出てきている。それが現実であって、医者の場合、平成16年からの臨床医 になる2年の研修、歯科医師の場合、17年からの1年の研修ということで、医療法の改 正を行った。では薬剤師法なりで改正が行くまで待って、人員をどうこうするかという ようなことが、ここの会議で出来るかどうかというのは分からないのです。  方向としては、かなり遅れています。この間、伊賀委員からも説明がありましたよう に、薬剤師の資格を取ったあとは、少なくとも半年なり、1年の研修をしている人間が かなり増えてきているのが現実です。 ○伊賀委員  いま全田委員がお話されたとおり、短期間の場合ということで、見学的に病棟のほう に入るということだと思うのです。卒後の場合は、私ども研修制度の中では当然です が、全面展開している病棟活動の中で、服薬指導も含め、病棟での調整等も積極的に研 修薬剤師を病棟に出して一緒に行っておりますので、医師まではいかないかもしれませ んが、今後はそういった病棟活動が全面的に展開されていく中では、研修医においても そういったことを十分やっていけるような態勢を、櫻井委員が基盤整備とおっしゃった のですがそれを進めております。それについては、今後もさらに展開を見ていただけれ ばと思います。そのためにも、人員の確保が非常に重要であるということを、最後にも う1つ付け加えておきます。 ○仙波委員  いま「病棟単位に薬剤師1人」というものが配付されましたが、私は薬剤師の人員配 置は、機能とかなり関連するものだと思うのです。例えば、精神科でも非常に忙しく、 急性期の病棟では、いまの基準ではもう足りない。ですから余分に雇っているのです。 実際にそういうことです。長期入院の痴呆の患者で、いろいろ服薬指導も少なくていい というような状況の場合は、それほど薬剤師は獲得しなくても済むというふうに、機能 によってずいぶん違う話ではないかと思うのです。皆さん委員の方が急性期を頭に置い ているのか、長期入院を頭に置いているのか、あるいは、いろいろ小さな病院と大きな 病院はそれぞれイメージが違いますから、1病棟に1人というのは、少し乱暴な論議で はないかと思います。  ちなみに、私のほうでは2回緊急調査をやったのですが、精神科特有なこととしてこ ういうことがあるということをお示ししたいのです。1つは、入院患者1人当たりの処 方枚数は精神科の場合、一般科の4割なのです。注射の頻度も極めて少ないのです。一 般科の場合は、80〜90%はみんな注射で、精神科の場合は入院者の10%しか注射をやっ ていないとか、管理している薬剤の数も一般科の3分の1程度、急性期を除く病棟での 処方変更は、極めて少ないのです。すなわち、長期入院の場合、例えば、1年以上の入 院者が70%を占める、5年以上が47%ですから、薬物も医事療の処方になっておりまし て、変更がほとんどない。  それに1週間に4回も服薬指導を行ったら、これは少しおかしいのではないかと思い ます。痴呆患者がいるということです。服薬指導も精神科の場合は250床というのは平均 病床数ですが、大体、服薬指導も60%ぐらいかと思います。急性期と処方が変わったと きだけは、適切だと思うのです。  そんなふうに考えると、やはり、その機能を持つもので適性配置ということがあっ て、私がしばしば言うように、医療法で最低基準を決めて、必要なときにはそれに合わ せて病院の裁量権でそれを雇う、ということは実は実際に行われておりまして、43%の 病院の精神科では、基準を超えて採用しているのです。自分の所は急性期をやっている ので足りないというので雇っている。その辺、そんな病院はあまりいないということは 言わないでほしい、そういう気持は十分にあるわけです。一方、これから医療費が上が る見込みがあるのかを、我々は非常に不安に思っているところなのです。  基準だけがあって、薬剤師の診療報酬上の担保率というのは医療費の中で60%しかあ りませんので、やはり、これではいかがなものかという感じがしますから、いろいろな ことを勘案して、精神科の場合はいまの基準でいいかなというふうに思います。その代 わり、皆さんに必要な所は積極的に埋めていくのだという方式のほうが、いまの規制緩 和の時代に合っているのではないかと思います。 ○座長  精神病床に関しては、いまのままでもいいのではないかということですが、同じくこ の中身で療養病床が括ってあるのです。それについて、豊田委員か奈良委員、いかがで しょうか。 ○豊田委員  療養病床についてお話しますが、ただいま仙波委員から精神科についてお話があった とおり、療養病床においてもそこに入院している患者たちは、いわゆる慢性期の患者で す。そう頻回に処方が変更あるわけでもなく、また、点滴等の急性期に対応するような 医療措置も、急性期の一般病床に比べれば違うわけでして、そこに療養病床というこの 区切りが付けられたわけです。  したがって、例えば、薬剤管理や薬剤の服薬指導については、精神科と同じようなこ とが言えるわけです。場合によっては、月を越えて同じ薬を飲んでいるという状況の場 合に、毎週何回も服薬指導が果たしてあるのかという問題があります。精神科の場合も そうですし、慢性期の患者の入っている療養病棟でも、服薬指導というのは、この薬 が、いわゆる薬剤の内容についていろいろ説明する服薬副作用のいろいろな情報を提供 するということだけでは、精神症状あるいは慢性期の患者にとっては十分ではないので す。日常の生活の有り様、精神症状ならば、日常のそういった病状あるいは生活様式を 含めて説明をしていくことが非常に大事なので、これらの問題は、従来は精神科医や慢 性期の患者を扱うドクターにとって、非常に重要な仕事の部分でした。そういったこと がありますので、単に薬剤だけの問題ではない、ということがあります。一般病床と療 養、精神というのは機能が違うということで、現在こういうふうに分けているのはその 辺の議論を踏まえて決まったことだと思うので、私はこれでよろしいのではないかと思 います。 ○全田委員  この際ですから話させてください。先生がたの話を聞いていますと、我々は薬のプロ であるとは言っていますが、決して薬だけの問題ではないと思うのです。では、入院な さっている患者のケアをするのは医者と看護婦だけでいいのかというと、いろいろなこ とがあるわけです。この間、豊田委員にお聞きしたように我々のセンスと、先生方ご専 門の医者としてのケアと同じでしょうが、処方が変わらなければ、そのまま1年も続け て行って患者の状態が変わってもいいのかと。これは水掛け論になるからあまりやりた くないのですが、私が申し上げたいのは、病院薬剤師も1医療人として認識していただ きたいということです。医療人として認識していただくためには、やはり、ナースス テーションなりに薬剤師を置いていただきたい。別にそれはこと薬だけではないと思い ます。  薬のプロですが、毎回申し上げているように、確かに医療体制が厳しい状態になって おりますが、精神科は別にしても医者が16人に1人、看護婦が3人に1人というとき に、なぜ薬剤師だけが。いままでは調剤室の中にこもっていたけれども、医療人には変 わりないのです。なぜそのメンバーの1人としてお考えいただけないのか、私が申し上 げているのは、そういうことなのです。 ○豊田委員  いまの全田委員のご意見ですが、私は、最初から薬剤師の医療人としてのチームから 外した議論は、一度もしておりません。今回の議論も現在もそうですが、先ほど田中委 員が言われたことは非常に当を得ている話だと思うので、私どもはそのような数の問題 でまだ具体的な数字は出ていませんが、全田委員からいくつか貴重な資料が出ました。 そういったことで、薬剤師の役割を勉強させてもらったことがあります。いずれにし ろ、医療の質を上げる上で、薬剤師の取り組む姿勢ということに対しては、私どもは何 ら異議は唱えていないのです。医療の質を上げるためには、そういった方向に向かうの が当然だというのは共通の認識だと思うのです。  ただ一方では、それは1つのいまは理念の問題であるし、今後あるべき方向なので す。これは認めております。しかしながら、私どもは数について話をするときに、決し てそのことを否定する意味ではないのです。私どもそれぞれの団体から出されたとお り、数が現実に足りていない。薬剤師の数がたくさんあるのに我々が恣意的に雇わない とか、要らないのだということでは決してないのです。雇いたくてもなかなか雇えない 現実があるという、この問題です。ですから理念の問題と、これとをある程度きちんと 区別して議論しないと、いつまで経っても、これはまとまらないと思うのです。  我々は繰り返して言いますが、全田委員が言われているような、いろいろ出された資 料に対して何ら異議はございません。そのとおりだと思います。また、そうしたいと思 うわけですが、いつも医療者の数の議論をするときに、各病棟に薬剤師を1人ずつ配置 する、そう決まればそういうことになるのでしょうが、そういった素晴らしいことが決 まったときに、それをクリアできる病院が果たしてどれぐらいあるのかということを、 我々は当事者として考えるわけです。  それは質が高いほどいいわけです。こういうことはあまり言いたくないのですが、実 際問題として、一握りの非常に素晴らしい病院が各地にポンポンとあるということと、 そこまではいかないが、ある程度一般の住民たちに不安を与えないような形で、配置基 準は低いかもしれないがそれぞれの病院がある。どちらがいいかというのは、私の価値 観としては、やはり国民にあまねく安心感をある程度与える。受療機会を損なわないよ うな形で病院が配置されているということは、非常に大事だと思うのです。  先ほどから出ている最低基準、いわゆる医療法でどうするかということをここで議論 しているわけですから、当然のことながらそこの理念は分かりますが、実際ここにはい ないという現実があります。この辺ははっきり分けなければいけないわけでして、我々 はそういうことで言っているのであって、決して薬剤師の存在云々とか、チームの外に 阻害しているというようなことは毛頭ありませんので、その辺は誤解なきようにしてい ただきたいと思います。 ○邉見委員  仙波先生の精神科の話はそのとおりだと思うのですが、我々自治体病院の精神科部会 のほうでいろいろ討議をして、その話を聞いてきましたので、少しお話します。恵まれ ているかも分かりませんが、自治体病院で精神科を持っている病院は100ぐらいあって、 その中で単科の病院は40余りということです。35ぐらいの統計といいますか、アンケー トの調査を33病院でやっております。  1人の薬剤師が服薬指導している人数は69.462人ということで、70人ぐらいというこ とです。  どちらかというと急性期治療型の病院が多くて、収容型慢性期の精神科とはちょっと 違う系統がありますので、先生のおっしゃった機能ということが、やはり、いちばん大 事なのかなと思います。この委員会の流れといいますか、討論のことをずっと考えてお りますと、機能でいくのか、まず地域性とか、病院の大中小など規模でいくのか、それ から、現状認識でいくのか、目標の二段施行でいくのかというような時系列の問題、過 去のことも踏まえての問題。それと周りの医療情勢です。痛みを伴う改革というのは、 痛みが医療界にいちばん来そうなムードと、こういうことなどを含めて総合的に判断し なければいけないと思うのです。  機能ということを一番に考えないと、この議論はなかなか難しいのではないかという ことです。先ほど奈良先生もおっしゃったような特定機能病院と、一般病院の間で何か 置くとか、全身麻酔の症例が何百以上はどうとか、あるいは、新生児を預かっていると か、抗がん剤を扱っている量がたくさんであるとか、人工心肺で心筋保護液がどうだと か、マスキラックスのような筋弛緩剤がどうだとか、ある程度そのような個々の機能も 含めてやったほうが大まかに何かというよりも、具体的なような。細かいですが、こう いうものは、中医協のほうで経済的なインセンティブとしてやるということになればま た別ですが、そういうことも何か考えないと、なかなか難しいのではないかと思いま す。 ○座長  一応医療界といいますか、薬剤界を含めてご意見をいただきましたが、田中委員も含 めて、山田委員、渡辺委員、何かありましたらどうぞ。 ○山田委員  2点ほど申し上げたいと思います。1点は薬剤師さんの不足の問題ですが、地域差は 別の手立てが必要かと思います。しかし、一般的な不足の問題では、私の知人にも 女性の薬剤師であった人がたくさんおりますが、ほとんど結婚か出産で家庭に入ってい ます。なぜ再就職しないのかと聞きますと、再就職するには、医薬品の現状について空 白期間の変化を埋めるための再教育を受けないととても対応ができないという人が多い です。なかには調剤薬局などにパートで勤め、それから、常勤化された人もおります が、ごく少数です。折角の資格を活かせずもったいない話だなと思っています。数の不 足でしたら、潜在薬剤師の再教育も一つの条件整備として必要なことではないでしょう か。また、出産と同時に辞めてしまうことが避けられるように、保育対策などの条件整 備も必要なことと思います。  もう1点は、いま、医療ミスや医療事故などによる訴訟の情報を調べているのです が、医療事故が少なくとも国の医療提供体制の基準が不備なためにおきたというよう な、不幸な出来事にならないように、責任をもって対応できる条件をお考え頂く必要が あるのではないかと思っています。 ○座長  田中委員、追加等ありましたら、お願いします。 ○田中委員  先ほど邉見委員が言われた機能と地域性などの点ですが、私も機能は本則で考えるこ とだと思います。例えば、一般病床と精神病床を分けるかどうかは、機能の問題です ね。機能別区分というのは、諸外国でもあります。先ほどの諸外国の資料で、「政府は 何もしていない」という例が載っていましたが、政府が基準を定めないとは、自由放任 とは違います。座長がいちばんよくご存じですが、これは当然第三者機関による機能評 価がなされているから政府が手を出さなくて済んでいるのであって、本来成熟した民主 国家では、政府は何もこういうことはしない。ただし、ほとんど全数の病院に対して、 中立の第三者が機能評価を行っているから出来る。  そういう国々を見ても、機能による差はあって当然だと思われています。地域性、雇 えない、薬剤師がいないなどは経過措置等で対処すべき話であって、それを本則で勘案 してはいけない。本来は機能による差はしょうがない。あと、現実に雇いたいが雇えな い実態がもし残っているなら、これは基盤整備の問題ですから、経過措置の期間をどん な位置づけにするという話にすぎず、両者の重みが違うのだと思います。 ○座長  ありがとうございます。いま田中委員がおっしゃった病院機能評価に私も携わってお りますが、比較的薬剤師が基準に達していない病院も、受けていただいているのです。 いま言われたところで非常に大事なことは、薬剤師が標準を充たしていない、つまり標 欠であっても機能評価をする場合、機能という観点から評価しますので、標欠だから直 ちに認定しないとするのではなくて、十分機能しているかどうかということで、認定す ることを決定しています。そのことをちょっと付け加えておきたいと思います。最後に なりましたが、渡辺委員お願いします。 ○渡辺委員  いま伺っていて大変難しいな、というのが率直な印象です。私は結局、理想を求める と、標欠問題が出てくる実態に合わないといったような、簡単に言えばそういう構造を 解決するのは非常に難しいなと思って聞いていたのですが、最初に田中委員がおっしゃ ったことは注目すべき発言だと思っております。  もう1つ田中委員がおっしゃった中で、いわゆる最近の医療改革の動きの中で、市場 経済主義といいましょうか、具体的に言えば、医療機関の株式会社参入といった問題が 出ていますが、私はああいったものも確かに注目すべき、注目すべきというのは配慮し ておくべきテーマですが、私は個人的には反対です。ああいう中で専門家の方ともいろ いろ議論をしたのですが、株式会社といいますか、営利法人が入ってきたときにいちば んクリアできないのはこの人員配置基準、あるいは、営利を追求するときに人員配置基 準に縛られると、非常に営利が追求できない。逆に言えば、リストラをすることによっ て、営利を追求することはできない。  一般論で言うと、医療機関における人員配置基準は、ある程度厳しいよりよい方向で 設定すべきだと思っております。現実問題として、医師についても、看護婦についても 標欠の問題はありますし、標欠をやると現実問題として、診療報酬が減らされるという 厳しい問題が出てくる。そこの所で堂々めぐりをしているような印象を受けたわけです が、そこは田中委員は「あとは工夫で」という表現を使われましたが、そこの所の議論 がもう少しできないのかな、という印象を受けました。 ○座長  そこの工夫するのが、この委員会ですから。 ○渡辺委員  そうなのですが、いま聞いて非常に難しい。 ○奈良委員  実は私どもの病院は、臨床研修指定病院なのです。それで臨床研修をかなり厳しくや っておりまして、病棟回診やカンファレンスを非常に積極的にやっているのです。そこ に是非薬剤師も加わっていただいて、病棟回診のときに薬剤師の人が付いて歩けばいい のではないかと。ただ、いま申したように、1病棟に1人いる人が、その病棟だけ行っ て、次の病棟に行ってしまったから私は知りませんというのでは困る。  臨床研修指定病院でしみじみ思っているのは、皆さんのおっしゃるように、これから の医療はチーム医療だ。お互いに自分の持っている知識をフルに提供しながら良い医療 を築いていくということになってくると、やはり、薬剤師の方も非常に大切だろう。櫻 井委員が臨床研修指定病院でなぜ薬剤師が要るのかというお話がありましたが、私は薬 学の問題とか、薬剤学の問題を若い先生たちによく叩き込む人がいる必要があるかな、 という夢を持っています。  これはガラッと変わって大変な暴論なのですが、赤十字にいくつかの特定病院があり まして、特定病院というのは特定機能病院ではなくて、そろそろ赤十字の任務が終わっ たから地方自治体に肩代わりしてもらおうとか、場合によってはやめてしまおうかとい う所もあるのです。北海道が非常に多いのです。それこそ病院の名前は申せませんが、 いちばん寒い陸別という所のすぐ傍にある病院は、医師、看護婦数が非常に足りなく て、北海道で一生懸命探しているのですがいないものですから、期間を切って関東から 送っているような状況があるのです。  八ケ岳の裾の日赤病院もやはり医者がいなくてといいますか、本当に困っていて、い ま必死になって各病院から3日交代とか、1週間交代で送っているのが現実です。そう いう所は標欠に近いんだから閉めてしまったらどうかというと、そこにみんな高齢の一 生懸命に生きてきた方がいらっしゃるわけですから、赤十字としてはそういう人を見限 るわけにはいかないわけです。そうなってくると、92の病院の中に200ベッド以下の病院 でかなり厳しい病院もある、ということをご理解いただきたいと思います。しかし、一 方においては、臨床研修指定病院はきちんとやっておりますが、そういう所は、薬剤師 のもう少し積極的な参加を必要とするかなと。やはり、若い先生方に服薬指導とはどう いうものかとか、そういうものを指導する意味では、いきなり特定機能病院のようにポ ンと空地をあげられると大変困るのですが、さし当たり中間ぐらいでいかがかなと日病 の幹部で話をしたところ、そんなところでどうかと、確かに医療をよくする、これから 研修を臨床研修指定病院が中心になってやっていくことになると、やはり、薬剤師の配 置基準も増やしてもいいのではないかというご意見がありました。 ○邉見委員  奈良先生の話で病棟回診が出たので、奈良先生に勝っているのはこれだけかなと。う ちはチーム医療ということで、薬剤師が一緒に回っています。糖尿病関係等は、栄養士 も一緒に回診しております。ナースステーションという言葉を使わずに、スタッフス テーションと言います。PT OTも整形外科、脳外科などは回っています。これからの 医療の方向としては、そういうチーム医療だろうと思っています。  私は3年前に、この病院薬剤師の定数問題にかかわっていたころと比べますと、薬剤 師の職種が違うというぐらいに、当院では変わりました。私が入っていたこともあっ て、当院の薬剤師もいろいろ感じるところがあったのかもしれませんが、以前のこの委 員会で3年前は、薬剤師は薬棒、薬鉢とかメスシリンダーで、水薬とか、オブラート、 天秤などでやっているときと、いまPTPでさっと割れるというのが同じ80調剤でいい のかということで言わせていただいたのですが、それから、いまはもうチーム医療の一 員として、患者ベッドサイド中心というようなことで、ずっと薬の番人みたいに調剤室 にいるということは、ずいぶん減りました。  そういう意味では、かなり前回の改定というのは、職機能といいますか、働く場を変 えたというふうに、私はよかったのではないかと思います。今度これをますますこの流 れを進めるという意味では、いまは厳しくてもプラス方向に行ったほうがいいのではな いか、というのが私の率直な考えです。機能が上がっていくのではないかと思っており ます。 ○座長  ありがとうございました。この問題がいちばん重要なのですが、おそらく平成8年の こういう要望書が出た時点から5年も経っているのですが、5年の間に薬剤師の教育が どのように変わったのかとか、研修のあり方がどのように変わってきたのかというの は、なかなか変わらないという印象を、先生方の話を聞いても受けるのですが、それは それとしても、この委員の皆さんで薬剤師が必要でないなどと思っている人は誰もいな いと思いますし、私もそう思っております。  薬剤師の必要性というのは、皆さんが理解をしていると思っています。どれくらい必 要かということがこの議論のところですが、最近いろいろ薬剤師の業務が大変多様化し て、複雑化してまいりました。そういう指摘がある一方で、個々の一つひとつの病院の 薬剤師の役割や業務というものは、その形態によっても、機能によっても、ずいぶん違 ってきたのではないかと思います。  一方で国民皆保険ということもありますが、医療法の中における、これは再三櫻井委 員も指摘されましたが、医療法の中での人員基準というのは、最低基準という考え方が 根底にあるわけですので、その最低基準を引き上げることには、相当慎重でなければな らないことは、皆さんご指摘のとおりではないかということです。本当に最低基準の引 き上げについて、ここで結論を出す必要があるのかどうかはもう1回残されております ので、今日のご議論を少しまとめた上で、その必要性について座長の立場でもう少しま とめてみたいと思っております。  そして、精神病床や療養病床については、仙波委員、豊田委員からのご指摘もありま したが、それぞれの機能の特性に応じて、一般病床のあり方次第によって左右されるの ですが、いまの現状から見ると、さしたる変更が本当に必要なのかどうかは現実的な話 で、今日厚労省が出された資料3等を見ても、なかなか難しい問題かなと感じておりま す。これも含めて、この主要な検討項目の2の所については、相当ご議論をしていただ きましたので、次回までに何とか座長提案といいますか、そういうものを出してみたい と考えております。  もう1つ問題が残っているのは、「経過措置」の3番目に、「施行後3年間とされて いる経過措置の廃止について」の問題ですが、この点について、何かご意見をお持ちの 委員はおられますか。そのままにしておいても、これは12月で切れるのですね。 ○調整官  はい。 ○座長  ここで何も議論しないで、日切れを待つのかというのは、あまりにもこの検討委員会 としてナンセンスではないかという感じもしないわけではないので、やはり、この問題 をこの検討委員会で議論しておかなければならないのではないかと思いますが、いかが でしょうか。 ○佐々委員  先ほども出ましたが、小規模のベッド数の少ない病院で、いくつでもいいのですが、 例えば、入院患者70人に1人と出たときに、例えば、それで必要人数が1.12人とか1.2人 要りますというふうに出たときには、切り上げて2名置かなければいけないということ があります。これが1.2名とか1.3名であればいいのですが、その辺は先ほども言ったよ うに、常勤1人とパートを入れて業務に差し支えないようにしているということから、 小規模病院については、ある程度のそういったものが必要かなと思います。  80調剤のほうは、おそらく3年前の議論で済んでいると思うのですが、そういった調 剤にするというよりも、薬剤師の役割が変わってきているということがありますから、 個人的な意見ですが、この旧基準の80調剤に1人というのはなくしてもいいのではない か、と考えております。 ○豊田委員  この経過措置ですが、先ほど田中委員が言われた工夫というのは、この経過措置の運 用にあると思います。具体的に申しますと、私からは、この経過措置1、2ともに残 す。ただし、これには期限を切るということで、私の意見としたいと思います。期限 は、5年間延ばすことを提案したいと思います。なぜ5年かと言いますと、例えば、現 在、薬剤師を雇いたくても地域差があってなかなか大変であるということは述べたわけ ですが7月17日に事務局から出された資料をご覧いただきたいのです。この中に今後5 年間は現状をだんだん改善しながらいく。5年後には、今度薬剤師が余ってくるという データが出されています。  これが1つの考え方かなと思うわけですが、余ってからやるというのは、極論として もこういう形で、数字の上からは現状でも薬剤師が多いということですが、現実はそう ではないということは、数字は違いますが、例えば、今日出された資料でもあるわけで す。そういうことを踏まえると、今後ターニングポイントとなる5年後を目途に、各病 院で責任を持っていく形で、この経過措置は是非残していただきたい。 ○座長  佐々委員は旧基準の適用については、廃止してもいいとおっしゃったのですが、豊田 委員は両方とも。 ○豊田委員  両方ですね。 ○全田委員  先生方は先ほどから病院薬剤師の最近の活動といいますか、大変評価していただきま して、その中で100床以下の病院としても、我々としては病院薬剤師としての活動をして いるわけです。奈良委員がいろいろおっしゃってくださっていることはありがたいので すが、私としては、100床以下はこのぐらいで頑張れと。そのほかはもう少しいいほうに 行くだろうということは、申し上げられません。私は経過措置は即この時点で廃止とし ていただきたい、ということを是非申し上げたいです。 ○座長  ほかの委員はいかがでしょうか。廃止か継続かという話ですが。 ○奈良委員  現実を見据えてみますと、薬剤師の地域性といいますか、偏在が非常に目立つので す。新しい薬剤師が出てくると、どうしても都会に勤務したい、大きな病院に勤務した いという傾向が強くて、本当に地方で必死になって頑張っている病院に、薬剤師がいな い所もあるのではないか。そうすると、3年なり5年なりの間に是非、病院の医師側の 我々も一生懸命努力して、そういうところを解決しようと思っているわけですが、そう いう地方の標欠病院に対して、病院薬剤師会とか薬剤師会が何か手を打っていただかな いと、国民の医療に大変なことが起こってくる。つまり、標欠病院だから、その病院を 取り潰してしまおうか、というようなことが起こってしまう。我々が地方に行ってみる と、本当にお気の毒な病院もあるわけです。そういう所を何とか残していかないと、や はり、平等な、それから、どこでもきちっとした医療が受けられる制度は日本だけのも のだと思っていますが、それを守るためには、是非薬剤師会の方々もご努力いただい て、標欠に近いような地方の病院にも、積極的に出ていただくようにしていただかない と困ると思うのですが、いかがなものでしょうか。 ○全田委員  おっしゃるとおりでして、ただこういうことを具体的に始めていることをご理解いた だきたい。前回でも申し上げましたが、いま全国の46薬科大学について、出身校を全部 調べました。3年生の最近数年間の北海道何人、青森何人と。結局、我々ができること はUターン、Iターンといいますか、とにかく地方に帰れと。それも先ほど申しました ように、病院実習1カ月をまずそこでやって、故郷のよさを味わってくれと。ただし、 豊田委員もおっしゃっていますが、都会がいいというのです。私もいま東京の薬科大学 の先生をやっていて、このところずっと面接しているのですが、やはり、8割は都会に 残ると言っているのです。  ただ、我々として出来ることは、いま先生がおっしゃったように1つは、やはり故郷 に対する魅力と、医療に対する、豊田委員は褒めてくださっていますが、正直言って、 医療人としての意識の教育が足りなかったことも事実なのです。ここは素直に考えてお りますから、例えば、ローテイト方式でずっと長い間いなくても何とかなるということ を含めて、願わくばこの次でしょうが、少し余裕を与えてください。いま確かに標欠に 対する対応が地方には散っていませんが、もう数年待ってくだされば、あるいは、私が 出来るかどうか分かりませんが、少なくともこの地方で自分の故郷で頑張ろう、という 薬剤師が出てくるのではないかと信じているのです。そういうことを調べていること を、一応ご報告しておきます。 ○伊賀委員  卒業したあとを短期的に見ると、確かに2、3年は都会でという形になっているかと 思います。それ以後になりますと、これはご存じのように、大型の調剤薬局等は、人件 費などを考えると、長期に雇うことは多分していないのです。ですから、どんどん新し いのをターンドオーバーさせている。そうすると、当然3年経つと、大体その方たちは どうするのか。都会で単身で生活することは、先生方もご存じのように、東京などでも 厳しいわけです。  そういった意味でも、給与的に恵まれている、比較的最初の段階はよろしいのです が、長期的に見ると、故郷のほうに帰られるケースがいまでも十分ありますので、むし ろ、逆にお願いしたいのは、標欠の問題もすべて雇う原資の問題が入ってくるのです が、待遇面での改善がもう少しなされれば、故郷にもちろん帰り、そして、また故郷で きちんとそういったことを薬剤師として病院に勤めることも可能になるということもあ りますので、その辺も考慮いただければと思います。 ○奈良委員  金子先生が北海道だとおっしゃったので、北海道でも、やはり大都会に集まる、ある いは、市に集まる傾向があるのではないかと思うのです。先ほどちょっと病院の名前は 申し上げられませんが陸別、日本でいちばん極寒の地に病院がありまして、そこは本当 に「何とかしてくれ」と我々に泣きついてくるわけです。ところが、北海道の中でいく ら探してもいない、北海道は陸別の辺りが大変不便で、厳しい状況だということを知っ ているものですから行かないわけです。  ところが、我々がやっている手は、関東からある期間切って、陸別の近くの病院へ行 ってくれと、そこに永久就職するのでなければ、「ちょっと行ってこよう」という者も 出てくるわけです。故郷に帰るだろうというのは、ちょっと甘いのではないかと思うの です。何で都会に人口が集中してしまったかというと、やはり、都会のほうがいいから なのです。みんなそういうところで、それこそ都会の楽しい生活をエンジョイしながら 薬剤師業務をしよう、というお嬢さんたちが非常に多い。そういうことで本当に国民の 医療ということを考えると、やはり、薬剤師会とか、そういうところである期間を切っ て、辺地の北海道の山の中の病院に是非行ってこいというか、義務化は難しいかもしれ ませんが、そういうことをやっていただかないと、3年経っても、5年経っても解決し ないと思います。 ○座長  ありがとうございました。渡辺委員、どうぞ。 ○渡辺委員  言葉の問題と世間一般の常識として、経過措置が3年あって、これを単純に延ばすに は何かの説明がないと、一般常識から見ておかしいと思うのです。先ほどの何らかの工 夫の1つということを豊田委員がおっしゃいましたが、その工夫をする理由が標欠の、 つまり地域差があるからだということであるならば、単純にこれをそのまま延ばすとい うのは、説明が付かない。区割りといいますか、線引きは非常に難しいかもしれません が、そういった所には、暫定的にということならば分かりますが、そういったひと工 夫、それこそもう1回の工夫がないと、残すことの説明が付かないのではないかという 気がします。 ○櫻井委員  それがちょっと厳しいところなのです。田中委員は工夫でとおっしゃいましたが、地 域差の問題と小病院の問題が、結構リンクしているのではないかという気がしているの です。これはたまたまの経験なのですが、私、昨日から四国の今治市という所に行って 帰ってきたのですが、人口7万か8万という所ですが、そこに30ぐらいの病院があっ て、どういうわけかみんな小さいのです。100床以上は済生会と県立病院だけで、あと はみんな個人病院なのです。これは何か歴史的な事情もあるのでしょうが、その人たち に個人的に意見を聞いて、今日この委員会があるから、公のものではありませんが懇談 の場などで、「これをどう考えますか」と言うと、やはり、薬剤師がなかなかいないと いうことを言うわけです。  小さい病院と地方で薬剤師がいないということがもしリンクしているのであれば、こ れは本則の問題で、工夫の問題ではいかないのではないかと、その辺に何かいい解決法 があればと思います。  もう1つは、全田委員がおっしゃったように、100床以下の病院でも、当然病棟等で働 くのだとおっしゃいますが、そのとおりなのでしょうが、現実を考えた場合、例えば、1 00床以下の場合、1人プラス2人とか3人というような体制でやっているところでは、 例えば、その2人、3人がいままで本当にそういう教育を受けたりしてきているかとい うと、まずそうではないわけです。大きな病院では12〜15人いると言えば、そういう所 で指導者的な立場の人がいて、若い人を教育していく余裕があるでしょうけれども、と ても3人の中でそれを教育していくようにはならないのです。先ほど言ったように、そ ういう基盤整備があまりにもなさ過ぎるので、将来こうなるだろうという展望について は非常に賛成ですが、薬剤師の学部教育、卒前教育とか、6年制の問題なども出ている ようなのですが、そういうようなものとか、医師・歯科医師に課せられている卒後の研 修みたいなものなど、基盤整備をすることができたところで、薬剤師さんたちが考えら れていることを実現していくように考えないと、それこそその部分が工夫の部分の経過 措置に入るのではないかと思っているのです。  私の意見を言えば、経過措置の中で80調剤基準はもともと考え方を変えてきたのが新 基準といいますか、いま暫定基準と言っていますが、言ってみれば見直すことによって の新基準ですから、これは経過措置から外してなくなってもいいと思います。100床以下 の一般病院に係る経過措置というのは、むしろ経過措置ではなくて、本則において100床 以下は1人でいいが、それ以上は、例えば70人に1人とすればそのままでいってしまう わけです。いろいろな基盤整備などを考えて、どこかで見直すということは、今度は経 過措置などに入れればいいと思います。 ○座長  ありがとうございました。金子委員、どうぞ。 ○金子委員  いま100床以下という施設の議論をしているわけですが、1つ私のほうで持っている資 料を紹介しますと、現実、いままで薬剤師の必要性という議論をしてきた中で、調剤の 問題と薬剤管理指導の業務がこの中で議論されてきたと思うのです。調剤だけをするの であれば、従来の70人に対して1人でよろしいと。ただ、すべての患者に対して薬剤管 理指導業務を行うのであれば、48人に対して1人くらいの薬剤師の数が必要だ、という 資料が過去の検討会の中に出てきたと思うのです。実は、病床に関係なく、一応薬剤管 理指導業務をとる基準は、2人です。  ところが、薬剤師が2人いる所での薬剤管理指導の取得率は、ベッド数関係なしで50 %を割ってしまっているのです。ところが、3人以上になると、ベッド数関係なしに71 %で、70%以下というのは1つもありません。ということは、いまの基準は一応2人で 薬剤管理指導ができますよということにはなっていますが、現実として、2人で薬剤管 理指導をやっている施設は50%以下です。ところが、それが3名になると、いきなり70 %以上に上がっている現実があります。いま100床以下の施設で1名でよろしいのではな いかという議論をされていますが、そこの部分では、いまの基準をいじれば出来ること になるのでしょうが、仮にそれで薬剤管理指導業務をとっていいですという基準が今後 可能になったとしても、現実としては出来ないでしょう。  ということは、100床以下の施設に入院されている患者にとっては、それ以上の施設に 入院されている患者と同じ医療費を払って、不平等な医療しか与えられないということ を前提にして、この中でそういう法でいくのかいかないのかということを、各委員の先 生たちに判断いただかなければいけないと思います。先ほど来あります100床以下は1人 でいいという根拠が、いま聞かせていただいて、どうも不透明な感じがします。  これは国民にもう少し納得してもらえるような、なぜ100床以下だったら1人でいいの か。100床以上になると、それプラス70人に1人となるのに、100床以下だけが人がいる いないとか、地域格差という問題はもちろあります。現実問題としてすごく重要な問題 ですし、私どもの施設でも非常に苦慮していることは事実です。しかし、規則として決 めるときには、国民は、それだけではなかなか納得してくれないだろう。それであれば 納得できる根拠と、理由を示さなければいけないと考えます。 ○櫻井委員  3年前の経過措置については、どういう根拠だったのですか。根拠がないとすれば3 年間にしろそれをやってきたわけですから、根拠のないことを3年もやってきたことに なります。根拠の話をするのであれば、これは非常に難しいので、私は最初に申し上げ たのですが、本来なら根拠になるのは、実際にどういうことが起きるかというアウトカ ムの検討をしなければいけないので、それでしたら規制を外して自由にやらせてもらっ て、どうなったかの結果だけ見ればいい、という話になるだろうと思うのです。これは 最低基準ですから、それをただ担保しようという話をしているだけなのです。  いまの小さい所で管理指導ができていないというのは、これはあまり言いたくないの ですが、薬剤師を1人増やすと、絶対に薬剤師1人の給料よりもたくさん稼げる点数に なっているのです。それをもう少しPRしてやれば済むだけのことで、最低基準として 考える必要はないだろうと思うのです。  これもいろいろな議論があるのですが、もしそういうことで差ができているとすれ ば、我々が言っているのは、いまでも競争原理が働いているということで、入院してみ て差があって、あっちの病院のほうがいいということになれば、駄目な病院は負けてい くというだけの話なのです。競争原理は、いまの制度の中でも十分働いているという話 だろうと思うのです。 その問題は実際には小さい所でも、残りの50%が1人増やして服薬管理指導をやってい けるなら、やっていく方針になることを期待していけば、それでいいことだと思いま す。 ○座長  そろそろ時間になりましたが、先ほど金子委員の薬剤師法に関するご質問がありまし たので、医薬局の方からお願いします。 ○医薬局成田課長補佐  先ほどの金子委員からのご質問の調剤に関してですが、薬剤師法の第19条において、 薬剤師以外に医師もしくは歯科医師が調剤できる場合として、「自己の処方せんにより 自ら調剤をするとき」となっています。この場合については、「患者または現にその看 護に当たっている者が、特にその医師または歯科医師から薬剤の交付を希望する旨を申 し出た場合」、それから、医師法の規定に基づいて、病状が変わっている場合というよ うなことがありまして、「医師もしくは歯科医師が調剤できる場合」ということは、基 本的には「自己の処方せんにより自ら調剤するとき」という規定になっています。 ○座長  よろしいですか。 ○金子委員  はい。 ○座長  そろそろ時間になりましたので、ちょうど今日のご議論を踏まえて、全般について私 からちょっとご意見を申し上げます。薬剤師の需給関係については、これは前々回から もお話がありましたが、地域における採用の困難性であるとか、地域によってずいぶん 違うとか、そういう話も当然十分配慮して、この人員を決めていく必要があります。  また薬剤師の教育の改善が進められていると聞いておりますので、そういうことでの 今後の推移を見極めていく必要はあるだろう。そういうことを勘案して、それから経過 措置を廃止するかどうかということを含めて、入院の基準との兼合いでこの問題を考え ていく必要があるのではないか。廃止したからいいと、では入院基準はいじらなければ いけないということではなくて、入院基準と経過措置というのは絡み合っている問題で すから、渡辺委員がおっしゃったような考え方もあるわけです。そういったところで入 院基準をどういうふうにするのか、廃止した場合にはどうするのかという話になるのか なと思います。  本日たくさんのご議論をいただきましたことを踏まえて、次回までに私、座長と事務 局のほうで取りまとめを行いたいと思います。それを次回に提出してご議論いただいた 上で、この検討会の決着をつけたいと、一応いまのところはそのように考えておりま す。どうぞよろしくお願いします。全田委員の資料2は議論の中でご説明があるかと思 っていたのですが、よかったのですね。 ○全田委員  一言だけ言っておきます。この資料2の2枚目は、標欠の問題です。要するに標欠の 病院というのは、院外処方せんの発行といいますか、医薬分業が進んでいない。ですか ら、それが現在のように40なり50%進んでくれば、標欠の問題はそんなに問題にならな いだろうということです。  3枚目の問題も、これはあまり言いたくないのですが、現在の数字は1.5倍ということ を調査いただいているので、仮にいまの基準といいますか、入院患者50人に1人という 数字を仮に出したとしても、院外60%を出していただければ、現在の薬剤師数よりも少 なくて済む。そういう数字を一応シュミレーションしたということです。 ○座長  要らないではないかという議論に繋がりそうなのですが、それはそれと。 ○全田委員  標欠に関してということですが。 ○座長  標欠という観点で見ますとこういうことです、ということですね。 ○全田委員  はい。 ○座長  ありがとうございました。先ほど申し上げましたように、次回にこの問題を持ち越し たいと思います。次回の日程について、事務局のほうからよろしくお願いします。 ○保健医療技術調整官  次回については委員の皆様方の日程を調整した結果、10月26日(金)10時から、この 建物の17階の専用21会議室で開催を予定しておりますので、よろしくお願い申し上げま す。 ○座長  本日の審議は、これで終了させていただきます。大変お忙しいところ、ご出席いただ きましてありがとうございました。 照会先 医政局総務課 宮嵜、鯨井 内線 2513