01/09/28 第1回母子健康手帳改正に関する検討会議事録 第1回 母子健康手帳改正に関する検討会 議 事 録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 第1回 母子健康手帳改正に関する検討会議事次第 日 時 平成13年9月28日(金)14:00〜16:28 場 所 厚生労働省共用第7会議室(第5合同庁舎(厚生労働省)5階) 議 事   1.事務局挨拶   2.委員紹介   3.会長の選任   4.母子健康手帳の改正について(改正の背景、主な改正検討項目、スケジュール 等についての事務局からの説明)   5.「母子健康手帳の評価とさらなる活用に関する研究」について(日暮委員から の研究結果の説明)   6.自由討議   7.その他 ○桑島課長補佐  定刻となりましたので、ただいまから、第1回母子健康手帳改正に関する検討会を開 催いたします。本日は誠にお忙しい中、お集まりをいただきましてありがとうございま す。  私は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の桑島でございます。会長選任ま での間、議事進行役を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げま す。 それでは議事に入らせていただきますが、まず私どもの母子保健課長より一言ご 挨拶を申し上げます。 ○谷口母子保健課長  母子保健課長の谷口でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。検討会の開 会に当たりまして一言ご挨拶を申し上げます。  今さら申し上げるまでもございませんけれども、母子健康手帳は、前身でございます 昭和17年の「妊産婦手帳」というものがその起源となっておりまして、60年近くの歴史 を有しているものでございます。この間、先生方ご案内のように、我が国の母子保健と いうものは飛躍的に向上いたしまして、現在では世界の最高水準に達するまでに至って おるところでございます。  この母子健康手帳、妊娠・出産・育児に関します一貫した健康記録という一面を持っ ておりますとともに、乳幼児の保護者の方々に対します育児の指導書という面も持ち合 わせているところでありまして、この制度が母子保健思想でございますとか、各種の健 診(健康診査)などの普及・定着、さらには母子保健全体の水準の向上に果たしてきた 役割は大変大きいものであろうと考えておりまして、諸外国からも高く評価をされてい るところでございます。  この母子健康手帳の様式につきましては、その時々の医学的知見でございますとか社 会情勢といったものを踏まえまして、適宜内容の見直しを先生方にご指導を得ながら行 ってきたところでございますけれども、このたび平成12年に行われました乳幼児身体発 育調査の結果の公表に合わせまして、来年度(平成14年度)から使用される母子健康手 帳への反映を目指しまして、この手帳の様式の改正を行うこととしたところでございま す。改正に際しまして、幅広い見地からご意見をいただきますために、このたび検討会 を設置をいたしまして、本日お集まりの先生方にご参集願ったところでございます。  繰り返すようでございますが、この母子健康手帳は、妊娠・出産・育児という多くの 人々が経過をいたしますライフサイクルにおける母と子の健康と成長の記録でございま して、その様式の改正が国民生活に密着した国民的関心の高い課題であろう考えており ます。検討会が実り多いものになりますよう事務局の方といたしましても努力をいたし ますので、先生方にもどうぞよろしくご指導のほどお願い申し上げまして、簡単でござ いますが、開会に当たりましての挨拶にかえさせていただきます。どうぞよろしくお願 い申し上げます。 ○桑島課長補佐 それでは次に検討会の委員のご紹介をさせていただきます。本日は奥山委員がご欠席 というご連絡をいただいてございますが、本日ご出席いただいている委員の皆様方のお 名前を資料1に名簿を付けさせていただいてございます。五十音順で掲載させてござい ますけれども、ご紹介させていただきますので、各委員から一言ずつご挨拶いただけれ ば幸いでございます。それではご紹介申し上げます。  朝倉委員でございます。 ○朝倉委員  日本医科大学産婦人科助教授をしております朝倉と申します。また、日本母性保護産 婦人科医会で母子保健担当の常務理事をしている関係でここに参りました。  母子健康手帳というと我々産科医にはとても身近にあるものでありまして、実際妊 娠・分娩・育児にわたって見ていくという非常に大事なものですので、それについて新 しい点を考えようということに非常に意義を感じております。よろしくお願いいたしま す。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。新井委員でございます。 ○新井委員  日本歯科医師会の地域保健、産業保健担当常務理事の新井でございます。よろしくお 願いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。大林委員でございます。 ○大林委員  大阪で小児科を開業しております大林でございます。日本小児科医会の常任理事をし ておりまして、その関係でご指名があったものと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。小野委員でございます。 ○小野委員  こんにちは。愛育病院の助産婦の小野と申します。現在はNICUにおりますが、そ の前は産科病棟・産科外来におりまして毎日母子健康手帳は使っておりましたので、実 際の場面から意見が述べられたらいいと思っています。よろしくお願いします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。加藤委員でございます。 ○加藤委員  国立公衆衛生院の加藤でございます。乳幼児身体発育調査のお手伝いをさせていただ きました。発育グラフのことでまたかかわらせていただければ幸いです。よろしくお願 いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。川井委員でございます。 ○川井委員  川井でございます。最前、母子保健課長の言われた乳幼児身体発育調査に併せて平成1 2年度に幼児の健康度調査をいたしました。その結果を何らかの形で母子健康手帳に反映 させることができたらというか、有益であればということで参りました。よろしくお願 いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。小林委員でございます。 ○小林委員  大阪府立母子保健総合医療センターの小林です。よろしくお願いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。渋谷委員でございます。 ○渋谷委員  愛知県知多保健所長の渋谷でございます。よろしくお願いいたします。私は小児科医 でございます。地域の保健所や市町村保健センターの母子健康手帳に関するいろいろな 声をお話しさせていただきたいと思っております。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。高石委員でございます。 ○高石委員  高石でございます。国立公衆衛生院で主として母子保健を担当させていただいており ました。退官してから8年ほど大妻女子大学で公衆衛生の授業を担当しておりました が、この春、これも退職いたしまして、今ここに書いてございますが、国立公衆衛生院 の顧問という立場でございます。実質的には特に何もしているわけではございません が、この母子健康手帳につきましては、先ほど加藤委員のお話にございましたが、乳幼 児身体発育調査の絡みで前から関係をさせていただいておりました。乳幼児身体発育値 につき昭和35年から何らかの形でかかわり合いを持たせていただきましたけれども、ま た今回、昨年の調査の関係でこの会議に出させていただくことになったと思っていま す。どうぞよろしくお願いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。長井委員でございます。 ○長井委員  初めまして、企業の専属産業医をやっております。産婦人科の経験があるということ から、労働環境における女性の健康問題ということで、母性健康管理指導事項連絡カー ドのことと、今回の検討会でぜひ頑張らせていただきたいと思っております。よろしく お願いいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。日暮委員でございます。 ○日暮委員  日暮でございます。私は現在東京家政大学の児童学科におります。それまでは隣の平 山先生の後に東大の母子保健の教室におりました。平成11年度に厚生省の「母子保健の 評価並びにさらなる活用に関する研究」という研究班のお世話をさせていただきまし た。よろしくお願いをいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。平山委員でございます。 ○平山委員  平山でございます。ただいま母子愛育会の研究所におります。その前は東京大学の医 学部に「母子保健」という講座ができましたときに、小児科から移ってそちらへ移籍し たものですから、それ以来は臨床を離れてしまって母子保健の仕事をさせていただいて おります。今、育児相談以外は小児科医としては役に立たない状態でございますが、よ ろしくお願いをいたします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。水野委員でございます。 ○水野委員  水野と申します。私は平成7年の離乳の基本の改定するときにお仕事の一部をかかわ らせていただきました。現在は平山所長の下で、母子栄養についていろいろ学ばさせて いただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。雪下委員でございます。 ○雪下委員  日本医師会の雪下でございます。日本医師会では母子保健、母体保護を担当しており ますのでこの会に出席させていただきました。よろしくお願いします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。吉岡委員でございます。 ○吉岡委員  現場の保健婦ということで声をかけていただきまして参加させていただきました。よ ろしくお願いします。 ○桑島課長補佐  ありがとうございました。  次に配付をさせていただいてございます資料について確認をさせていただきたいと思 います。欠落等ございましたらご指摘いただきたいと思います。次第の方に配付資料と いうことで、裏面にわたりますけれども、資料1から11まで載せさせていただいてござ います。ご確認のほどをお願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。  それでは次にまいりたいと存じます。本日最初の会合でございますので、まず会長の 選任をお願いしたく存じます。事務局といたしましては、会長といたしまして、平成4 年の母子健康手帳の大改正があったわけでございますけれども、その際に委員長をお願 いしてございました、あるいは平成10年、11年の2回の改正時にも、中央児童福祉審議 会の母子保健部会の部会長としてご活躍をいただいてございました平山委員にぜひ会長 としてお願いをしたいと考えてございますが、いかがでございましょうか。                  (拍 手) ○桑島課長補佐  特に異議がないということでございますので、平山委員に本検討会の会長をぜひお願 いしたいと存じます。  それでは以降の議事運営につきまして、会長どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○平山会長  平山でございます。ただいまご指名をちょうだいいたしましたので、ふつつかですけ れども進行役を務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いを申し上げ ます。ただ、最初におわびしなければいけないのは、2〜3週間前から風邪を引きまし たら、合併症の滲出性の中耳炎にかかりまして、目下耳鼻科のお世話になっておりまし て、ちょっと聴力が落ちておりますのでお話が聞きそびれる部分があったりするかもし れませんが、早く治すように努力をいたしますので、ご勘弁をお願いいたします。  それではお手元に既に配っていただいております議事次第に従いまして、その後の進 行をさせていただきます。きょうは最初の会合でございますので、まず事務局から今回 の改正の背景、先ほど課長のご挨拶の中にも一部ございましたけれども、主な改正検討 項目、スケジュール等についてご説明をいただきたいと思います。桑島補佐お願いしま す。 ○桑島課長補佐  それでは事務局から資料2から8に基づきましてご説明をさせていただきます。お手 元の資料2をご覧いただけますでしょうか。これは今回の母子健康手帳の改正を1枚に まとめたものでございます。そういう意味ではイメージを持っていただくための概要で ございます。これについてご説明申し上げます。  まず母子健康手帳、これはそもそも市町村が母子保健法第16条の第1項によりまし て、母子健康手帳を交付しなければならないということでございます。  2つ目のマルでございます。ここでは大きくイメージを持っていただくために、この 母子健康手帳の様式の構成についてご説明をしてございますけれども、大きくは書いて ございますけれども、厚生労働省令で定めることとされており、具体的にはその様式に ついて全国統一部分と同省令の7条に基づきまして各市町村が各々に判断して具体的な 記載をつくることができる任意記載事項の部分に大きく2つに分かれてございます。要 は必要記載事項の部分と任意記載事項の部分と2つに分かれているとご理解いただけれ ばと思います。  3つ目のマルでございますが、各市町村が各々の判断で作成することとされている任 意記載事項の部分についても、実はこの部分について母子保健課長の通知でその作成例 を各市町村にお示しをしているという現状がございます。  今回の様式の改正についてでございますが、その背景として母子健康手帳の必要記載 事項の中で「乳幼児身体発育曲線」というものがございます。これは後ほどまたご説明 をさせていただきますけれども、このベースとなります乳幼児身体発育調査が10年に一 度調査をされることになってございます。その調査結果が出てまいりますので、それに 合わせまして今回この改正をしようというのが大きなきっかけでございます。  その改正に合わせまして現行の母子健康手帳の記載内容に、これ以外にも任意記載事 項の中で併せて幾つか改正する事項がございますので、その検討をお願いをするという ことでございます。  それから、3つ目のマルですが、14年度から使用される母子健康手帳への反映を目指 すということで、課長のご挨拶で申し上げた点でございます。  そういう意味で、今後のスケジュールということになるわけですが、12月ぐらいまで にこの検討会を3回から4回開催をさせていただいてご検討いただき、併せて最終的に は改正の省令の様式を来年の4月1日の施行を目指して対応していくということでござ います。  以上が資料2の説明でございます。概要ということでご説明を申し上げましたが、続 きまして資料3でございます。  この母子健康手帳に関連をいたします関係規定といいますか、母子保健法、関係の施 行令、通知についての記載のまとめをしてございます。1つ目のところで母子保健法で ございますけれども、これは前のペーパーでもご説明しましたとおり、16条の中で交付 をしなければならないと第1項で言っているわけですが、その様式については下線が引 いてございますが、第3項で「母子健康手帳の様式は、厚生労働省令で定める」として ございます。その下の点線のところで書いてございますが、これらの規定に基づき、全 国統一様式、いわゆる省令様式として定めておるわけでございます。これはまた後ほど ご説明申し上げます。  それから、その下でございますが、母子保健の施行規則の中で、これは母子健康手帳 に今申し上げた全国統一様式のほかに次の各号に掲げる事項を示した面を設けるものと するということで、一から六号まで定めてございますが、例えば日常生活上の注意、養 育上の育児の注意、予防接種のこと、母子保健に関する制度に関すること。あるいは最 後のところでは、この健康手帳を使用するに当たっての留意事項等、これらの一から六 の各号に関することを定めてございます。  この規定につきましては、点線以下でございますけれども、基本的には各市町村がご 判断をいただいて具体的な内容をお決めいただくことにされてございますけれども、た だしで書いてございますが、母子保健課長の通知で、この部分の作成例を、後ほど資料 5で説明申し上げますが、参考として市町村にお示しをしているということでございま す。  このほかに関係するものといたしまして、厚生省児童家庭局長通知で「母子健康手帳 の作成及び取扱い要領」ということで、多少細かい話になりますが、作成に当たっての 留意点を市町村にお示しをしてございます。これが関連する通知等の記載でございま す。資料の3については以上でございます。  今、ご説明を申し上げてまいりましたそれぞれの全国の統一の部分と市町村のいわゆ る任意記載事項を具体的に次の資料でご説明を申し上げますが、資料4でございます。 これがいわゆる今申し上げました中での全国を統一してございます省令様式と申し上げ た部分でございまして、資料4、ちょっと分量的には多うございますけれども、主にこ の中では妊産婦、新生児、乳幼児の特に記録を中心に様式を定めてございます。ざっと ご覧いただきますと、まず表紙のところで、1つご注目をいただきたいのは、表紙の左 側の一番下、注意書きのところで、「用紙は、日本工業規格A列6番とする」というこ とで、サイズについてこの部分で規定をしてございます。まずその点が1点でございま す。  あとはざっと流す形でご申し上げますが、以下1ページから13ページまで、この部分 については妊娠中あるいは出産後の経過の記録でございます。いわゆるお母さん側の記 録を1ページから13ページでそれぞれ記載をしていただくことになっています。  14ページから45ページまで、この部分につきましては、それぞれの月齢あるいは年齢 におきます発育・発達、要は子どもさんの記録の様式となってございます。月齢あるい は年齢ごとの記録を記載するようになってございます。  今回の改定に大きくかかわってございますけれども、38ページからでございますけれ ども、「乳幼児の身体発育曲線」というものを載せさせていただいてございます。今回 このベースとなります調査がまとまってまいりますので、今回の大きな改定につながっ てございます。ちなみにちょっとご覧いただきますと、38ページは男児の乳児、幼児そ れぞれ月齢、年齢ごとの発育の曲線を示してございます。いろいろと説明書きがござい ますけれども、39ページの注釈に若干説明が加えられてございます。線の中には各月・ 年齢の94%の子どもの値、多少黒く塗りつぶされております帯の中には80%の子どもの 値が入ります。こういうものを参考にお母さん方が自分の子どもの発育を見ていく、あ るいは保健指導が行われるという状況にございます。  それから最後の方になりますが、46ページから49ページにかけましては、予防接種の 記録が記載できるようになってございます。  以上が省令様式のご説明をさせていただきました。資料4については以上でございま す。  資料5ですが、こちらはいわゆる任意記載事項の部分でございまして、妊産婦の健康 管理や新生児、乳幼児の発育、予防接種、行政的なサービスについて、いわゆる母子保 健として必要な情報を、先ほどがいろんな記録をおさめることに対して、こちらはかな り情報を提供するという意味でこの部分が構成されてございます。主なものといたしま しては、妊娠中の食事、療養、各年齢ごとの発育の注意点、歯科保健、事故防止等のい ろんな情報がこの中に記載をされてございます。内容については省略をさせていただき ます。資料5につきましては以上でございます。  続きまして資料6ですが、先ほどの資料3で局長通知のことについて多少触れさせて いただきましたが、その具体的なものでございます。箱書きにしてございますが、「母 子健康手帳の作成及び取扱い要領」ということで、1番で作成について注意点を記載し てございます。例えば(2)でございますが、総ページ数を極力抑制する。受診券や予防 接種問診票等はとじこまない。(4)の中では母子健康手帳が非常に長期間使用するもの であるとこから、紙質については丈夫なものを使用し、とじ方はミシンとじとするよう にというような非常に細かいことまで随分局長通知の中で申し上げております。  以上でございます。  資料7でございますが、これまでの母子健康手帳の主な改正の経緯をお示しをしてご ざいます。特に下線を引いてございますのは、今回のこの改正も同様でございますけれ ども、乳幼児身体発育調査の結果をもとにこの改正を始めるということで、昭和46年、 昭和56年、平成4年、ことしにつながるわけでございますが、主な改正事項については それぞれの年度のところに記載をさせていただいてございます。10年ごとにそれぞれの 発育調査に基づく改正が行われてきたということでございます。  今までが大体現状をお示しをしてきたわけですが、今回この改正に当たりまして、主 な改正を検討してございます事務局の中での案をお示しをしてございます。資料8をご 覧いただけますでしょうか。構成としては大きく省令様式、任意記載事項の部分がござ います。そういったもののどの部分をどう直したいかということをお示しをしているわ けですが、(1)は今随分お話を申し上げてまいりましたが、「乳幼児身体発育曲線」 の結果に基づいた改正ということでございます。  (2)は、母子健康手帳の大きさの自由化ということで、先ほど(注)のところで若 干ご説明を申し上げましたが、現在は規定がございまして、A列6番ということで書い てございますけれども、市町村の自主性を尊重するために大きさを自由にしてもよいの ではないかということでございます。  (3)は妊産婦の葉酸の摂取に関する記載の追加ということでございまして、これに 関しましては、昨年の12月に私どもの方から通知を出させていただきましたが、神経管 閉鎖障害の発症リスクを低減することに関して、葉酸を摂取するということを報告書を まとめて、それで通知を出させていただいたわけですが、そうした内容を母子健康手帳 の中に盛り込むように考えてございます。  (4)は、妊娠中の喫煙等についての記載の充実ということでございます。現行にお いては任意記載事項の中に「酒とたばこの害から胎児を守りましょう」と、この1行で ございまして、近年における妊産婦の喫煙率の増加ですとか、妊娠中の喫煙等について の記載をもう少し充実させた方がよろしいのではないかと考えております。  (5)子育て支援に関する情報についての記載のさらなる充実ということで、これは 近年ご案内のとおり、児童虐待の事例の増加等に鑑みまして、子育て支援に関する情報 について記載のさらなる充実を考えてございます。  (6)働く女性のための出産育児に関する制度についての記述の充実ということです が、括弧の中で「母性健康管理指導事項カード」とございますが、事項とカードの間に 連絡という文字が抜けてございまして、私どものミスでございます。「母性健康管理指 導事項連絡カード」でございます。このカードにつきましては、先生方ご案内のとおり でございますけれども、妊娠中、産後の女性労働者に対するかかりつけであります産婦 人科の先生方からの保健指導が適切に管理者に伝わるようにいうことで設けられたもの でございます。こうしたものをよりご理解いただくためにも母子健康手帳の中にこの様 式を追加してはいかがということで考えてございます。  次のページをめくっていただきますが、労働関係の法令の改正によります改正でござ います。雇用保険の育児休業の給付率が13年の1月から、以前は25%であったものが、 現在既に40%に変わってございますので、それらの記載の変更を考えてございます。  2.といたしまして「母子健康手帳の作成及び取扱い要領」、いわゆる先ほど申し上 げた局長通知の改正事項でございます。  (1)といたしまして、各市町村が実情に応じて盛り込むべき行政情報等の具体例の 特だしということで、先ほど申し上げましたが児童虐待事例の増加ということがござい ますので、育児相談窓口等の育児支援情報を盛り込むということを改めてその留意事項 の中に記載させていただきたいということでございます。  (2)でございますが、「総ページ数を極力抑制する」と今規定してございます。あ るいは受診券等をとじこまないようにということを言ってございますが、こういうよう な規制を一切削除するということを今考えてございます。  次に各種団体からのいろいろとご意見もいただいてございます。簡単にご紹介を申し 上げます。この次のページでございますが、日本小児科学会、日本小児保健協会、小児 科医会、この小児科3団体からのご意見をいただいてございます。一番下の段になりま すけれども、「母子健康手帳を今後改正されます時には、子育てに関する相談機関の各 項目に、小児科医ならびに小児科医療機関の名を是非加えていただきたく心よりお願い 申し上げます」、こういった要望をいただいてございます。  次のページでございますけれども、もやもや病の患者と家族の会からいただいてござ います。この中では母子健康手帳で育児情報の注意事項として、括弧のところは省略さ せていただきますが、それぞれ注意事項が記載をされている中に「『一過性の脱力発 作』を追加記載をしてください」ということで、もやもや病の特徴的な症状を追加して くださいということを要望していただいてございます。  次の要望でございますが、陣痛促進剤による被害を考える会からいただいてございま す。特に冒頭のところの「母子健康手帳の『薬の影響について』の項目の内容変更と、 『出生の状況』の欄にアプガースコア記入欄を追加されることを要望いたします」とい うことでございます。  次のページでございますが、日本労働組合総連合会からいただいてございます。「母 子健康手帳」の改訂に当たっての連合意見・要望についてということで、数が多うござ いますので簡単に項目だけご紹介申し上げますが、2の(1)で、育児休業に関する情報 を追加してほしいということ。(3)で「母性健康管理指導事項連絡カード」を現在副読 本にあるものを母子健康手帳の方に移してほしい。(4)の中で、子どもの血液型を記載 する欄を設ける。(6)で「乳幼児身体発育曲線」「身長体重曲線」については、あくま で目安であることを強調すべき。こういったご意見をいただいてございます。  資料8につきましては、以上でございます。  事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○平山会長  ありがとうございました。ただいまのご説明でご質問等ございましたらお受けしたい と思います。この後、次の資料にございます日暮委員からいただいています厚生科学研 究費による母子健康手帳の評価と活用に関する研究のご紹介をいただきたいと思うので すけれども、その前にただいまの桑島補佐の話にご質問等ございましたらお願いいたし ます。  続けてもう少し資料の説明を先に聞いていただきましょうか。日暮委員、よろしくお 願い致します。 ○日暮委員  私は、先ほど自己紹介のところで申し述べましたように、現在使われております母子 健康手帳の利用状況に関して検討するようにということで、平成11年度の厚生科学研究 でこれからご説明をする調査をさせていただきました。ここでは以下申し上げます地域 の子どもたち1万 900の子どもたちの保護者に対しまして母子健康手帳の利用状況につ いて調査をさせていただきました。  実施をいたしましたのは平成11年11月から12月にかけてでございまして、対象は横浜 市、新潟県、岐阜県、静岡県、広島県、広島市の1歳6カ月児健診を受ける保護者に対 して、もちろん同意を得た方々に対してでありますが、実施をいたしました。1万 900 件というのは、ちょうどこの時期に1歳6カ月になる子どもたちの全国の対象は、平成1 0年5月から6月にかけて生まれた子どもたちがそうなのですけれども、その時期に生ま れた子どもたちは全国で20万 3,555人おりまして、約5%を対象にいたしたわけでござ います。  これはあらかじめ健診の勧奨通知を配布する場合には事前にそれにアンケートを送付 した。それからそういう事前の通知をしない者に対しては、健診の待っている時間を利 用して実施をいたしました。  アンケートの内容は資料の中にございますが、16項目ございました。実際に「母子健 康手帳を読んだことがあるかどうか」、「内容の記録について、記録をしたという経験 があるかどうか」、「医療機関に受診をする場合にこれを持っていくかどうか」、「母 子健康手帳を紛失したとかそういうことがないかどうか」、「子育てへの役立ちの資料 として有効であったかどうか」、「その内容について」、「利用のしやすさについては どうか」、つまり使い勝手はどうか。「もし今後母子健康手帳を改訂をするに当たって どういうことを期待するか」、それは自由記載でございます。  そういうようなことについて調査をいたしました。  お手元の資料には各実施をいたしました市町村の、細かいどこでどういうのがという ことが表になっておりますけれども、中身を調べまして、その地域差はそれほど差がな いということであったので、大体大まかに全国対象の共通にどのくらいの率で調査事項 がどうだったかということをまとめてみました。  まず「内容を読んだかどうか」ということですけれども、「読んだことがある」とい う人が98.3%、ほとんどの人が読んでおります。なお、書いた人は大部分がお母さんで ありますけれども、ごくわずかではありますけれども、父親、そのほかの人もございま した。 それから、「内容の記録を記録したことがあるかどうか」ですけれども、これ も97.8%「書き込んだことがある」という経験のある人がほとんどであります。これは 国際的なレベルから見て日本の識字率が非常に高いということとパラレルであるだろう ということがわかりました。  「健診等の記録(体重、身長)、健診で得た所見等の記録を見たことがあるか」、こ れもほぼ全員99.6%が見ております。  それから母子健康手帳の中で後半の部分、先ほど桑島補佐からご説明がありました資 料4に、母子健康手帳の中身についてのご紹介がありましたが、そこの50ページ以下 に、育児等に関する情報が盛られておるわけでございますけれども、その後半の部分を 読んだことがあるかどうか。つまり中身によって読んだことがあるかどうか、ちょっと 分けてみました。ここでは「全部読んだ」というのは47.1%、半分ちょっと足りないく らい。「一部読んだ」というのが51.5%、合わせるとかなりのところでございますけれ ども、後半の部分に関しては完全には読んでいないということがわかりました。  それから、「医療機関に持参しているかどうか」ということ。子どもが健診ではなく て病気のときに小児科医、内科医にかかるときに母子健康手帳を持っていっているかど うかというのを聞いたのですけれども、「いつでも必ず持っていく」というのが68.5 %、「ときどき持っていく」というのが19.7%、「ほとんど持っていかない」というの が10.1%でございました。「全く持っていったことがない」というのが1.6%ほどあり ました。 また「母子健康手帳をなくしてしまった」、紛失率でございますけれども、「紛失し たことがある」というのが1万 900の中で95件ありまして0.9 %。ほとんどの人は必ず 持っているということがわかりました。 「子育てをするに当たって、母子健康手帳が役立ったか」ということについて聞いた わけですけれども、「とても役に立った」というのが41.5%、「少し役立った」という のが45.5%、「どちらともいえない」というのが11.3%でありました。  その次の質問で、「役立ったのは、どういう内容が役立ったのか」ということを聞き ました。「妊娠の記録」については72.2%、これは複数回答でいいわけですけれども、 「出産の記録」は74.0%。「新生児の記録」が75.0%。「乳幼児健診の記録」について は77.3%。これはちょっと問題なのですが、「歯科の記録」、これが21.3%です。これ はこの表を見てごらんのとおり、私は専門でないものですからよくわからないのですけ れども、歯科医が見れば理解できるのでしょうが、ほかの人たちが見てもわからないと いうことで、ましてや理解は全くできてないというお母さんが非常に多かったことがう かがえます。それに対して「予防接種」が大変役に立ったのが81.6%で、役立った内容 の中でかなり光った存在でございます。 それから「利用のしやすさ」はどうかということですが、「とても使いやすかった」 というのが30.2%、「少し使いやすかった」というのが25.8%、「どちらともいえな い」というのが一番多くて34.1%でありまして、ここらあたりが今回の改訂に非常にか かわりがあるのではないかとうかがえます。 今度自由記載のところで、「内容を改訂するときにどういうことを期待するか」、ど ういうことが望ましいかということですが、先ほど桑島補佐から、こういう視点で変え たいという幾つかお話がございましたけれども、これからそれを追加していただくか、 あるいは参考になるかと思いますけれども、一番多かったのが「子育てに関する情報を もっと盛りこんでほしい」という、今度の1つの目玉になるというように伺っています けれども、これが60.6%、6割の人たちがこういう意見を持っておりました。それに関 連して「父親のことも書く欄がほしい」というのが23.0%ありました。つまり子育てに 対して父親も参加している場合にぜひ父親用の欄がほしいという要望がございました。 これは先ほど回答したもので父親はそんな多くなかったにもかかわらず、こういう欄が2 3%もあったというのは母親の側からもこういう意見があったのだろうと思います。  それから「内容をもっと簡単にしてほしい」というのが13%、「カラーページをもう 少し増やしてほしい」が18.1%ありました。「ページ数を全体的に増やしてほしい」と いうのが7%。サイズの話、先ほどありましたけど、「手帳のサイズを大きくしてほし い」が 6.3%。そのほかに「その他」というところに、先ほどのページ数を増やしてほ しいとか、それと相反するかもしれませんけれども、特に手帳のサイズ、大きいところ もあるようですが、「もっとコンパクトにしてほしい」という要望がありました。それ から「フリーのスペースをもう少し増やしてほしい」、「表紙などにかわいいキャラク ターを入れてほしい」、「製本のとじ方をもっとしっかりしてほしい」、「予防接種の 問診票の添付」、それを開きやすいところに入れてほしい、「見出しをつけてほし い」、「色分けをしてほしい」、そういう細かい要望がございました。 このアンケートは16項目と申しましたけれども、今までご説明をしたところが11項目 でありまして、あと12項目以下は同時にSIDSの調査を併せてやったものですから、 それに関する項目がありましたけれども、母子健康手帳に関する項目では以上でござい ます。 ○平山会長  ありがとうございました。ただいま日暮委員から研究班の報告書の中で、母子健康手 帳についてのいろいろな利用の実態、要望事項等のご説明をいただきました。私の知っ ている限りでちょっと補足させていただきますと、平成11年にこの研究をやっていただ くときに、当時の母子保健課からのご注文の1つは、今ご説明ありましたように、近々 今回母子健康手帳の改正が見込まれるので現在の実態調査をしてくださいというのが1 つ。それが今のお話があったとおりのもの。  もう一つが、母子健康手帳、その前身でございます母子手帳、さらにその前の妊産婦 手帳、そういうものが我が国で使われ始めるようになったころのいきさつとか、そのこ ろの記録がかなり散逸して今にわからなくなってしまいそうだということで、そういう ことをまだ記憶していてくれたり、資料を持っている方から集めて報告書としてまとめ ておいていただきたいというご要望と2点あったと思います。  今申し上げた方の母子手帳時代からのいきさつについては、資料9の前半の辺に、そ の当時厚生省に在籍しておられた巷野悟郎先生を中心にした記録がまとめていただいて ありまして、これをお暇なとき読んでいただくと当時の様子がわかっておもしろいな と、私自身も思った次第でございます。  そんなことで日暮委員にこの研究班のお世話をいただいたということでございました が、今のご説明に何か直接のご質問がございましたらお願いをいたします。後ほど自由 討論という格好で、それぞれ委員の先生方からご発言をいただきたいとは思っておりま すが、とりあえずはよろしゅうございますか。  それでは事務局と日暮委員から今回の改正の前提になるいろんな事情とか事項につい て一通りご説明いただきましたので、具体的なこれからの改正についてのご意見の取り まとめ等に入りたいと思いますが、第1回目ですので、皆様からの自由討議をいただく 前に、川井委員から、お手元の資料10の資料をちょうだいしておりますので、これにつ いてご説明をいただいて、その後で自由討論ということにさせていただきたいと思いま す。  資料10は、乳幼児の発育調査をするときに、これは10年置きにやっているのはご存じ のとおりですけれども、前々回のときから、それに合わせて日本小児保健協会がお引き 受けをするというような格好で厚生省のご指示を得まして「幼児健康度調査」というの をしてきております。要するに乳幼児といいますか、幼児期の子どもの生活実態や発達 の状況等をその機会に全国的に調査をしようということでございましたが、平成12年度 に行われた幼児健康度調査は、やはり母子健康手帳の改訂をにらんでおりましたので、 母子保健課のご指示で手帳の、殊に左側のところに出ています親に対する子どもの状況 の質問事項がございますね。これは健診等の機会に親にもう一遍自分の子どもの発達、 その他の様子を気をつけて見てもらって、その上で健診などに来ていただこうという、 そういうねらいでつくられたものでございましたが、その項目等が最初につくられたこ ろと何年かたちましたので、発達状況、子どもの生活状況等に差が出てきていて、今に 適していないものがあるかもしれないということで、その辺のチェックのための項目 を、幼児健康度調査の中に混ぜて実施されております。  その辺を取りまとめまして、これから川井委員に資料10についてご説明をいただきた いと思います。お願いいたします。 ○川井委員  お手元にピンクの報告書があると思いますが、出して見てください。今、平山先生に 説明していただきましたが、1ページ目をあけていただくと、「はじめに」に、「幼児 健康度調査」、これまでのことが書いてございます。第1回目が昭和55年、平成2年、 そして昨年度(12年)、この約20年間ということでございますけれども、1つは、12年 度の健康度調査の調査項目を作成していくときに、この20年間の大事な点の変化を見る ために残した項目があります。  2番目は現在の育児環境等々、育児不安、今問題になっているようなものを入れたと いうことと、3番目は「健やか親子21」の指標の現状のベースラインを示して、今現在 はどれぐらいであるか、目標をどうしようかということに少し寄与しようということ。  それから、母子健康手帳に月齢、年齢ごとに保護者の記録欄がございますが、そこは 主に発達を中心とした子どもたちの様子について、これも今までは母子健康手帳の発達 項目等は従来の発達検査等々から選んでおいたものですけれども、これの実際のいつご ろできるのかというパーセントが今までなかったわけで、そこで従来昭和55年、平成2 年とやってきた健康度調査の中の発達項目を保護者の欄の発達項目と相当程度入れかえ て調査をいたしました。その結果も後ほどお示しします。  この4点ですが、そこで母子健康手帳改訂案というか、ご検討いただくたたき台のよ うな形でお示しをしたいと思います。幾つかたたき台を出してございますので、ご検討 いただければと思います。  第1番目は、「子育てサークル」についての調査をいたしました。いずれにしまして も、母と子の密着、孤立を防ぐためにというようなことで1つは子育てサークルが有用 であろう。お母さんたちに聞きましても、子どもの遊び相手ができたとか、自分自身に 友達ができた、母親同士の情報交換ができた等々、いずれにしても人とのかかわりの中 にそのよさを見出している。これはまだ全国でどれぐらいの子育てグループがあり、ど ういうふうにやっているかよくわからないのですけれども、そこにパーセントを書いて おきました。こんなことをどの程度盛り込むか。  それから日暮先生の研究班でも「乳児突然死症候群(SIDS)」についてですが、 SIDSを知っている者は92%。そのうち「うつ伏せ寝」を知っているのが88%。父母 の習慣的喫煙でしょうが、今度は子どものいるところで喫煙、「受動喫煙」のような形 で聞いてみたのですが、半数を切っている。少し周知度が喫煙については低いように思 う。これをどうするか。  3番目、「乳幼児健診を受けた感想」を聞いてみました。従来から疾病志向から健康 志向へと健診もシフトしてきて、お母さんたちが健診についてどんなような感想を持っ ているだろうか。受けた側にとってどうかというようなことで調べてみました。これも 「信頼ができて安心できた」、31%等々。この比率をどう評価するか。31%くらいにす ぎないというふうにとるかどうかですが、中には「形式的だった」等々、こんなものも 実際にお母さんたちに聞いてみるとどうだろうか。  それから、生活リズムが表に書いてありますが、「10時以降の就寝」が、昭和55年か ら12年、10時以降の就寝、これが確実に夜型になってきています。例えば5〜6歳はほ とんどが保育園か幼稚園に行っているのですが、それでもなおかつ10%〜17%、平成12 年度は40%までになっている。質のよい睡眠を確保するという意味からもここら辺も育 児のところで考える。  また、「忙しいなどの理由で、テレビやビデオ」を見せているという比率がこれだけ あります。本当はテレビとビデオを分けて調べればよかったと今は思っているのです が、特に今ビデオは知恵を絞って、子どもの興味を引くように知恵のあらん限りつくら れているものですから、子どもたちは見せられると見てしまうのですね。その分ほかの 体験が減ってくる。そのほかテレビ、ビデオ、視聴時間、テレビゲームも調べてありま す。  平成2年と今年度で、いつも遊ぶ場所が「自分の家」が8%〜75%。これは信じがた い数値ですが、「友達の家」が66から31に減ってしまう等々、「外遊び」、「友達遊 び」等々が減ってくる。ここら辺も社会性の発達等、遊びとの関係も含めて問題になっ てくるかと思っています。  それが主な点で、その次をあけていただくと、例えばこんなところに入れ込んでみた らどうかという試案です。例えばSIDSについては、母親自身の記録のところのここ ら辺に入れるとどうだろうかとか、入れるかどうかということと入れ場所もお考えいた だければと思います。  2番目は、「子育てに困難を感じるときがあるか」、「子どもを虐待しているのでは ないかと思うことがあるか」。これは育児不安やその関連した虐待もにらんでのことな のですが、「子育てに困難を感じる」というのは、全年齢集めたものですけれども、33. 4%、「何とも言えない」が26%。「子どもを虐待しているのではないか」というのは、 これを手帳に入れるのは少し直接過ぎると思いますけれども、この2項目は、私たちが ここ数年やってきた育児不安の項目なのです。これをどうするか。  3番目は「育児のしおり」のところで、これを入れてみようというだけです。  その次は「保護者の記録で(9〜10カ月のところ)、3項目の「指で、小さい物をつ まみますか」、これが現行では「つかみますか」になっているのです。つかむのという のはこういうふうになるので、もうつまめてくるので、「つまみますか」にしていま す。  「異物の誤飲」ですが、この報告書の58ページ見ていただきたいのですが、自由記載 の誤飲のリストです。これをごらんになっておわかりのように、誤飲されるものは子ど もの身の回りにあるありとあらゆるものです。誤飲については従来も母子健康手帳にあ りますが、こんなものを参考にしていただきたい。  それから「●」印が追加をしたらどうかということで、「人みしり」と「後追い」を 入れました。これは母子関係の項目で入れておくとどうだろうか。  その次は1歳のところですけれども、ここに「子育てサークル」を入れてみました。  それから、「忙しいなどの理由で、テレビやビデオを長時間見せるのはやめましょ う」、こんなことも入れてみました。  それから薄くて見えにくいと思いますが、パーセントは今回の調査の全国値です。大 体高い比率を持っているだろうと思います。  1歳6か月では、「犬や自動車などの知っているものを指さして声を出して教えるこ とがありますか」、言葉とコミュニケーションの項目を入れてみました。  2歳のところでは、「積み木で塔のようなものを見立てて遊ぶこと」、ごっこ遊びの 始まりのようなところ、発達の全体的なものをチェックできるので入れました。  「同じくらいの子どもたちと一緒にいて遊ぶことをよろこぶか」、人とのこと。ここ で「なるべく外遊び、友だちとの遊びの機会をもちましょう」とか「早寝、早起きの生 活リズムをつくりましょう」、夜型のところです。  3歳のところでは、ちゃんとした「ごっこ遊びができるかどうか」、大人や子どもと のやりとりやコミュニケーションのところ、3番目は母親とのこと、お話をする。それ から、ここに「乳幼児健診を受けた感想」を入れてみました。1歳半に入れていると思 いましたけれども、1歳半と3歳が省令で決まっているものですので、3歳児は少し迷 いましたけれども、4歳は「お手本を見て十字が描けますか」、これは1つ頭の中にあ るのは、ADHD(注意欠陥多動障害)の子たち、将来は学習障害に結びついていく。 以前は学校という集団、ああいう課題の多いところに入っていって問題になったという ようなことがあるのですが、今はだんだん幼児期に随分問題になって相談機関も随分訪 れていますし、3歳児以降の就学までにもう一度幼児の健診をというような話があった ことがありました。市町村移管でどこかへ行ってしまいましたが、4歳から5歳にかけ て健診をもしやるならば、この子たちについてのこともやろうということで、それで1 つの目安の、目と手の供応のところ、この子たちはとても下手なものですから、これを 入れました。  それから「信号の色」、これは安全というようなことも含めて入れてみました。  「衣類の着脱」は、以前は6歳に入っていましたけれども、4歳で93.5%でここに移 しました。  5歳のところで新しく入れたのは、「お話を読んでもらってその筋がよくわかるよう になりましたか」、これは今ADのことも話しましたけれども、あの子どもたちも含め て、人の話に注意をしっかり向けて聞けるということ、これはとても大事なことで、こ こら辺で入れてみました  6歳のところは2項目、「仲良しのいつも一緒に遊ぶ友だちがいますか」、友だちの ところ、「おもちゃやお菓子などほしくても我慢できるようになりましたか」、欲求不 満態勢のところ、我慢ができるというようなところを入れてみました。87.4%。  今のところ幼児の健康度から取り上げてたたき台にしていただこうと思いました。  そのほか父親のことが出てまいりますが、25ページに父親に関する調査項目がありま す。「父親の育児への参加」、「家事」、「母親の相談相手、精神的な支え」、「父親 が虐待をしているのではないかと思うことがあるかどうか」、「子どもとよく遊ぶかど うか」、「父親の心身の健康状態」等々がありますので、ここら辺ももし参考になれば と思います。  以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。最近の調査の結果、こういう質問に対してイエス、ノーが どのくらいの比率になっているかということを含めてお話と資料を見せていただきまし た。今の川井委員のご説明に直接ご質問がございましたら、まず伺いたいと思います が、いかがでしょうか。  もしよろしければ残り時間を自由討議という形でお願いしたいと思いますけれど、最 初でございますので、恐縮ですけれども、委員の先生方一通りご発言をいただきたいと 思いますので、それぞれのお立場でお気づきの点、あるいはきょうご説明をお聞きいた だいての改めてのご質問なり確認なり何でも結構でございますがお願いしたいと思いま す。五十音順で恐縮ですが、朝倉委員からお願いをいたします。 ○朝倉委員  私は産婦人科医でありますけれども、今のご説明を聞きまして、母子手帳というのは 非常に幅の広いところを扱っているということを再確認することができました。確かに 私の子どもの母子手帳もいまだに持っているようなものですので、一生ものであるかと 思います。その中で、私としては、妊娠・分娩というようなところの記載をどうすれば いいかということを考えなければいけないだろうと思います。  この資料、きょうご説明なかったのですが、アプガースコアを入れた方がいいとかよ くないとかという話もあるようですけれども、個人的にはそういった一生ものの母子健 康手帳ですのでアプガースコアとか入れて、その人にスタンプを押すようなことは避け たいと思っております。  それから、この資料を今見ておりまして、先ほどのピンクの報告書の26ページであり ますが、「妊娠・出産に関する快適さ」という項目がありまして、その調査の結果が書 いてございます。「満足している」ものが全体で84%、「していない」ものが14%、10 %を超える人が「満足していない」というようなこともはっきりとこの調査で出ている ようですので、母子健康手帳を改訂することによって、これが変わるとは思いません が、少しでも快適さというようなものを感じさせる記載、概念、思考というようなもの が少しでも反映できればと感じております。  まだ、ちょっとまとまりがなかなかつかないので、感じたところだけお話させていた だきました。以上でございます。 ○平山会長  ありがとうございました。突然にお願いをして失礼をいたしましたが、妊娠中・出産 のときの記録等この機会にもう一度お見直しをいただいて、直すべきところがあればお 願いをしたいと思います。  続いて新井委員お願いいたします。さっき歯の部分の記録がどうこうという話もちょ っとございましたが、私も思っているのは、昔、妊娠中はカルシウムが赤ちゃんの方へ 行っちゃうので虫歯ができやすいということが言われて、しかし、その後それはうそだ ということになったと思うのですが、それやこれやで妊娠中のお母さんの歯のことがこ こにずっとあると思うのですけれども、これのことに限らずひとつご意見をお願いいた します。 ○新井委員  この検討会で歯科医は私だけだと思いますが、先ほど日暮先生の方から、歯科の記録 が非常にわかりづらい、記録の内容について読み取りなど母親がほとんど理解できてな いというお話をいただきましたが、歯科の記録のところを事前に目を通してまいりまし たが、「1・6健診」と自分たちはいいますが、1歳6カ月診査の歯科の記録のところ の「虫歯の罹患型」というところの記録があるのですが、ここは大変我々でも理解しに くい記載になっております。もう一点、3歳の健康診査の項、虫歯の罹患型といいます か、ここだけの記載が理解しづらいかなという点がありますので、この辺は次回までに 整理して改正のところをお願いしたいと思います。  それから、本日のお手元の資料5の53ページですが、「歯の衛生」というところの記 載がございますが、「歯槽膿漏」という表現を使われていますが、これは大分前の古い 表現ですので、歯槽膿漏でなしに「歯周病」等に改めていただきたい。そんなことで目 を通してまいりましたが、次回までにまた小児歯科の先生方とも今検討をお願いしてお りますので、確認をさせていただいて次回お持ちしたいと思っております。ありがとう ございました。 ○平山会長  ありがとうございました。どうぞよろしくお願いをいたします。  次、大林委員お願いいたします。 ○大林委員  小児科の医者でございますので、そういうことを踏まえながら少し意見を述べてみた いと思います。  1つは、先ほど加藤先生からお話のありました睡眠時間の問題ですけれども、これは 一般的に我々の医院で見てみましても睡眠時間がだんだんずれ込んできておるようでご ざいます。ひどい家になりますと11時とか12時、そういう子どももかなりたくさんある ように思います。これは父親の帰宅時間が非常に遅いので、それを待って入浴をして寝 かせると、そういう習慣があるような場合に遅くなっていますので、この点につきまし ては母子健康手帳にも睡眠時間のことについてもう少し詳しい記載がしていただければ と思います。不景気になりまして残業が減りましたから、お父さんが帰る時間が早くな って、かえって子どもにはいいことなのかもわかりませんけれども。  もう一つは、これはまだきっちりとでき上がっている制度ではないのですけれども、 プレネイタルビジットが今年からもう一回再出発しようということで考えられておりま すので、これが現実になるようでしたら、母子健康手帳にプレネイタルビジットという のをある程度の説明をしていただければいいのかなと思います。  それから、発育曲線なのですけれども、我々学校医とかそういうものもやっています のですが、6歳まででこれが切れてしまいますので、文部省の関係になりますから、そ こら辺がどうかなと思うのですけれども、小学校の健診にどうもつながらない。小学校 とか中学校の学校医はその子どもの出産のときの状態ですとか、発育・発達の知識とい うものを持っていた方がいいのではないか。特に何か問題のあるような子どもではそう いうことが必要になるのではないか。これはプライバシーの問題がありますので、おい それとはいかないのかもしれませんですけれども、そういうこともお考え願えればと思 います。  それから、最後に予防接種のことなのですが、先ほどの調査でも予防接種については 非常に参考になったという意見が多かったように思うのですが、最近麻しん(はしか) の罹患率が日本は非常に高いと。特にアメリカで日本から持ち込まれたはしかがほとん どなのだというようなことを随分言われております。これははしかのワクチンの接種率 をもう少し上げないとどうしようもないと思いますので、特に麻しんについての予防接 種の必要性とかそういうものも少し盛り込んでいただければいいのではないかと思いま す。以上でございます。 ○平山会長  ありがとうございました。今のお話の中で私が知っているかつての情報で言います と、学校へ入ってから続けて使えるようにしたいというご意見はこの前の大改訂のとき からございまして、そのときにいろいろ議論されたのは、母子健康手帳そのもの全部を 学校まで持ち込むとプライバシーにかかわる部分が結構ある。つまり妊娠中の記録など の部分はそうですね。そういう意味で、これをそのまま持ち込むのは難しいから、学校 での健康教育にも使えそうな部分を取り外せるようにしたらどうだろうという意見があ ったのです。体重、身長の発育曲線の部分と予防接種の記録の部分をぽんと外せるよう にしたらという話があって、アンケートで全国の小児保健の関係者にも伺ったのです が、外せるとなくしちゃうだろうというご意見も結構あって、結局この前のときは継続 して考えましょうということで終わってしまったいきさつがございました。その辺も含 めて何かいい名案がこれから出てくるかどうか。  それから、予防接種をやっている別の課の方では、予防接種の記録を母子健康手帳か ら外すというのか、あるいは予防接種の記録カードを別につくるという話も耳にしたこ とがあるのですけど、どうなっているか、その後の情報を存じませんが、そんなこと で、この辺についてはよその部局のことも含めて今回いろいろとお知恵を出していただ きたい部分があると思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。  それでは今度、小野委員さんお願いします。 ○小野委員  まだよくまとまってないのですけれども、私は助産婦なので大体産科外来で使うか、 あるいは分娩から産後の記録までを日々使っているのですけれども、繰り返しになるか もしれませんけど、先ほどの調査の中にも要望が幾つかあったと思うのですけれども、 ああいう内容が主で、特に東京都などは小さいし表紙もおしゃれでないということはよ く言われます。全体的に字が小さいので書きにくいというところも意見としてありまし た。  あと、例えば資料4の4ページ、5ページなどのところでは特に字が小さくて書きに くいというのもありますけれども、例えばお母さんが救急車で母体が搬送されていく場 合に、その病院からサマリーを十分に受け取られない場合は、母子健康手帳がかなり情 報の収集源としては貴重なものになったりします。その際に感染症、梅毒血清、B型肝 炎、血液型などが検査結果が添付されている場合が結構多いのですけれども、そういう 資料が非常に重要になるのですけれども、その添付される場所がないのでいろいろお母 さんによってはあちこちに貼って工夫されているのですが、そういうページがあるとい いなと思います。そうすると超音波なども貼れます。超音波などの写真も大抵のお母さ んが今もらっているのですよね。それを搬送先が見て、予定日の修正や実際の正しい週 数を修正したりする上では貴重な資料になったりしているのが現状です。  あと産後に関してですけれども、例えば9ページなどでは出産後の母体の経過で、実 際は尿、たんぱくだけでなく、尿糖とむくみも書くところがあると便利だなと思いま す。実際は、余白に書くのですけど、かなり字が小さくなってしまいます。  母乳栄養に関する情報がほとんどないので、もう少しページをさいて母乳哺育を推進 するに当たってのお母さんへの正しい情報と、どうしたら母乳栄養が続けられるかみた いな勇気づけるような内容があるとすごくいいと思いますけれども、そういうのがない なと思います。  今思いつくのはそういうところです。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。  それでは加藤先生にお願いしますが、加藤委員は、今改訂の直接の原因になっており ます乳幼児の身体発育曲線が直る部分の実際の作業を担当された先生ですので、そのこ とも含めてでも何でもいいのですが、情報を含めてお願いをいたします。 ○加藤委員  新しい発育値に関しましては現在作成中ということで、きのう委員会が開かれまして 議論の上固まりつつあるところです。それだけしか申し上げられないのですけれども、 手帳と発育曲線に関する私なりの意見としましては、実は発育調査の方の専門委員会の 高石委員長が同席されていらっしゃるので、私の意見と相違点につきましては、高石先 生の方から改めてご指摘いただきますといたしまして、まずこの手帳のグラフの存在に つきましてですけれども、現在虐待予防ですとか心の健康づくり、育児不安対策という ことが非常に問題になっておりまして、このグラフが育児不安の原因になっていること は明らかなことだと思います。  それに対応いたしまして、10年前の改正のときに、10から90までの正常域を3〜97に 広げましたといいますか、線を加えました。そのようにできる範囲で努力はしておりま すけれども、なお、これゆえにずっと暗い気持ちで育児する人がいるということはよく 聞きます。冗談だとは思いますが、ない方がいいなんていう専門家の方もいらっしゃい ます。そんなことを常に考えてしまっておりますということです。ですからあくまで目 安なのでということは、グラフの下のところに1〜2行書いてはあるのですが、もっと 不安が少なくなるように書けないかというのを常々感じております。  ただ、逆に見落としがあってはいけないという意見も、やはり低身長のことですとか いろんな専門家から、常にこれも必ず同数出てきてしまうので、その辺のかねあいが難 しくて常に悩んでしまうところです。  あと、要望事項としての資料の中で、日本労働組合総連合会から、発育曲線につきま して、あくまで目安であるということの強調ということのほかに、ちょっと質問にもな るかもしれないのですが、読み方がよくわからないのですが、資料8、別紙4の2. 「『母子健康手帳』に明記するもの及び要望等について」の(8)に「男の子が先」とい うのがありますが、母子健康手帳は厚生省乳幼児身体発育値は昭和35年からずっと男子 が先にして発表してきています。余り変わることはないと思っているのですが、米国等 の手帳を見ますと、時どきといいますか、だんだん増えてきているように思いますが、 女子が先のが増えてきているので余り触れるつもりはなかったのですが、コメントだけ ということで。  ありがとうございました。 ○平山会長  ありがとうございました。また後で高石委員にもご意見を伺います。次、川井委員、 先ほどのご説明以外のところに何かありましたらお願いいたします。 ○川井委員  最前、幾つか試案というような形でお話いたしましたけれども、この報告書をまた読 んでいただき、大林先生からも睡眠等々のこともご指摘ですが、この中で何かお気づき のようなところがありましたらば、私たち見た範囲で今これだけ出したわけですけれど も、もっとこういう点はというようなところが恐らくあるのではないかと思います。そ んなことを出していただけたらありがたいと思います。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。小林委員お願いいたします。虐待のこともこの中へ少しは 入っているのですが、その他まだこれから改訂のときに、先生のお立場で入れたいこ と、直したいところ等ございましたらお願いします。 ○小林委員  母子健康手帳につきましては、私は30年前小児科医になって、初め保健所で仕事をし ていまして、とても大事なものだということでずっと見させていただいています。歴史 的に見ますと、初めは体の発育を中心にしたところから、1歳半健診のときに発達が入 ってきたと思うのですが、今転換が必要なのはメンタルヘルスについてを入れていくこ とではないかという気がしています。  そういう意味では、発育・発達の経過がわかるものですが、これからは子どもからす ると大きくなった時に自分の歴史、自分史を振り返るものになると思いますし、親側か らしますと子育ての経過がわかるものであって、さらに子どもが大きくなったときに振 り返って親子関係を確認していくといったとても大事な意味が大きくなっていくのでは ないかと思います。このような子と親のメンタルヘルスという柱に入れ込んだ母子手帳 に発展していけないものかなと思っています。  そういう視点で見ていきますと、幾つか感じますのは、母子健康手帳と言いながら、 母親のことが、妊娠中から出産のところまでには系統的に入っているのですが、子育て の時期の親の側のことの記載・記録が本当に少ないのではないかという気がします。例 えば子育ての初めのときの夜も眠れなくて、非常に体も疲れているということとか、子 どもの夜泣きや、1歳半、3歳のころの子どもの反抗期とかでとても苦労しているとか が少し盛り込めるといいなと。また、そういうときに親へのアドバイスが入っていくと 親子関係が円滑にいく助けになるのではないかという気がします。  もう一つは、虐待予防も考え、あるいはメンタルヘルスのためにも、子どもが育つ環 境、その子どもが今育っていっている環境についての情報がもう少し入っていくといい のではないか。例えば、兄弟のことも出産歴としての記録はあるのですけれども、今一 緒に住んでいる兄弟、これはこのごろ離婚、再婚もありますので義理の兄弟関係もでき ていると思いますし、新たな子どもの出産と子育てをめぐっての兄弟関係のこととかも 出てきます。また、先ほど川井先生からもありましたけれども、遊び友達とか遊べる場 があるのか、保育所生活や幼稚園生活とか集団生活がいつから始まり、そこでどんなふ うだったのかということもとても大事な子育ての記録ではないかと思います。それは言 いかえれば、孤立しない子育て、サポート、横の関係の中でどう子どもが育ち、育てて いくかということの歴史にもなるのではないかという気がします。  もう一つは、より具体的な虐待予防ということについて考えますと、親御さんは今、 わが子を好きになれないとか、虐待しているのではないかとか、自分の子育てがうまく いってないのではないか、子どもを傷つけているのではないかということで悩んでいる 方が本当に多い気がします。そのお母さんたち、お父さんたちに直接そういうときにど う対応していったらいいのかといったことも今母子健康手帳の中に入っていく必要があ るのではないでしょうか。特に親子関係がうまくいかないとき、それが起こりやすい夜 泣きのことや子どもの反抗期のこと、トイレットトレーニングのこと、いろんなことが 起きても、そのことの意味とか、どう対応したらいいのかというところら辺が少しアド バイスのところにも入っていくといいのではないかという気がいたします。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。それでは渋谷先生お願いいたします。先生は保健所長とい うお立場を中心にお願いいたします。 ○渋谷委員  地域で実際に私どもが母子健康手帳を使うとき、使う側の立場、お母さんたちの意見 を聞くチャンスがあるわけですけれども、総括的に言いますと、子どもの最初に記録を つける手帳であることから生涯にわたっての健康づくりのスタートになる。  今「健康日本21」あるいは「健やか親子21」という施策を国の方で出されて、それぞ れの都道府県や市町村ではそれに応じた行動計画をつくっているわけですけれども、そ ういうことを考えますと、まず母子健康手帳の中に生活習慣の重要性ということをもう 少し盛り込んでもいいのかなということで、先ほど川井委員がおっしゃっていたような 睡眠のリズムですとか食生活のこと、遊びのこと、そういうことも含めて生活習慣のこ とをもう少し強調してもいいのかと思います。  それから、任意の事項というのがあるわけですが、ここのところは本当に市町村によ って積極的に取り入れるところとそのまま一応形式だけは載せているというような場合 もあるわけですが、今後は市町村が母子保健を実質的に考えていくということですと、 積極的にいろいろな事項を盛り込めるような形がいいのではないかと思っております。 昨年愛知県でも虐待の死亡事例がありましたときに、私どもの管内ではそれぞれの市町 村の母子健康手帳を発行する窓口でNPO、虐待の防止活動をしている団体の紹介のも のを一緒にそこに挟み込みをしまして、母子健康手帳を取りに来られるお母さんたちに 渡るように、つまりリスクがあるとか、ないとかではなくて、すべての方にその情報が 渡るようにということでご配慮をいただきました。地域によってはなかなか民間の団体 を市町村の窓口で紹介するということが難しいところもあるのかもしれませんけれど も、ただ、これからの時代は、地域の中のいろいろな社会資源を活用するという意味で いいますと、子育ての相談や支援の機関をそれぞれの市町村が紹介する場合に、公的な 機関だけではなくて民間の機関も活用できるような、そういうことを積極的に取り入れ てほしいというようなメッセージを出してもいいのではないかと思っております。  もう一つは、この母子健康手帳ですけれども、愛知県の中でも15歳まで使える母子健 康手帳というのをつくった市があるのですけれども、将来、子どもが自分の手帳を見た ときに、お母さんやお父さんがどんなふうに自分を育ててくれたのだろうかというメッ セージが残っているのがいい、もう少しその時どきの思いとか、中には写真を貼りつけ たいとか、子どもが後で見たときに、親の子育ての苦労がわかるといいますか、そうい うことも含めて自分への愛情が伝わってくるような、そういう手帳であったら長く使え るのではないかというような意見がありました。任意に工夫のそれぞれできる部分と、 ここだけは決めておかなければいけないという政省令の部分は確かにあると思うのです が、任意の部分を積極的に市町村が活用するようにということをさらにもう一押しして もいいのかなと思っております。  それから、先ほど川井委員が虐待のところでダイレクトに直接こういう質問で載せる のはどうかというようなこともございましたけれども、例えば今市町村がつくっており ます母子健康計画の中でいろんな指標をそれぞれのところで考えているわけですが、聞 き方として、例えば「子育てが楽しいと思いますか」というお父さんの割合とか、お母 さんの割合、あるいは「子どもをかわいいと思いますか」というような問いかけ、そう いう親の割合を指標にして考えるということもできる。そうすると直接「虐待をしてい ると思いますか」というふうに聞くよりは、多少ニュアンスは違うのですけれども、実 際お母さんたちが子育てを楽しいと思っているかどうか、お父さんがそういうふうに思 っているのかどうかということを、書けたらいいのかなと。  保護者の記録のところもそんな内容で、子育て支援ができるような、あるいは子ども が大きくなって見たときに、子どもにも伝わるような、そういう母子健康手帳が望まれ ているのかなという気がしています。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。では高石委員お願いします。先ほどのグロースカーブ以外 のことでも、先生は歴史みたいなもので、何でもご存じだと思います。よろしくお願い いたします。 ○高石委員  先ほど加藤委員の話にありましたように、昨年(平成12年度)の乳幼児身体発育調査 の結果は、加藤先生はじめ関係の先生方、事務局・母子保健課の方々のご努力でほぼで き上がっておりまして、多分次回のこの会にはお示しできるだろうと思っております が。加藤先生の話にもありましたけれども、そもそも身体発育曲線不要論というのは時 どき私どもの耳に入ってまいりますが、先ほどの日暮先生の研究班のご報告を見ており ますと、記入ありという、この曲線使っておられる方は78.4%です。この数字を大きい と見るのか、小さいと見るのかは判断が難しいと思いますが、いずれにしても不要論が 出てくる理由は、先ほどの労働組合のお話にもありましたけれども、あくまで目安なの ですが、これが育児不安の元凶になっているのだということだろうとは思います。  ちょっと長くなって恐縮ですが、しかし振り返ってみますと、先ほどの日暮先生のご 報告の中の1つに、巷野悟郎先生のお話がございましたが、母子手帳の時代のころは平 均値だけが載っていたのです。一本の曲線ですから、あの当時はつまり全ポピュレーシ ョンの半分のお母さんなりお父さんなりは、そうか、うちの子どもたちは平均以下なん だということでやっぱり嫌な思いをしたのだろうと思うのですね。  私が仕事に入ったのは昭和30年でございますけれども、昭和25年のまだ行政調査にな る前に全国調査がございましたが、それに基づいて、母子健康手帳にどういうふうにつ くったのかと申しますと、ご存じの方も多いと思いますが、当時は平均値プラス・マイ ナス・2分の1標準偏差並びに2分の3標準偏差で級外・上・中・下・不良という5段 階でつくっておりました。しかし5段階をつくったものの、これはただの平均値だけで なくて幅があるのだということをわかっていただこうということだったのですが、下や 不良という表現は、今考えてみるととんでもないと思います。当時は大きい方がいいの だということがあったからそうだったと思うのですね。  私が実質的にこの仕事にかかわり合いを持ちましたのは、昭和35年の最初に行政調査 になった年ですが、そのときには現在は亡くなってしまわれた多くの先輩の先生方の意 見等を聞いておりまして、なるほどなと思ったのですが、つまり級外と上を合わせて 大、中は中、下と不良は合わせて小と、たまたま大きいのだ、中くらいだ、小さいのだ ということで決して価値観を入れているわけではないというので、大・中・小になった のですね。ところが大・中・小も統計的に見れば、約31%と38%と31%ですからほぼ3 分の1の人が小さいということでやっぱり心配をすることになります。  そんなことがありまして、私その当時いろいろ外国の例等を参考にしながら、やはり パーセンタイルという考え方を導入した方がいいのだろうということで、45年度値がで き、大・中・小で母子健康手帳にあらわしていただいたその後、昭和51年にパーセンタ イルを導入して、大体小さい方を10%と大きい方90%、10パーセンタイルと90パーセン タイルでとりあえずスクリーニングして経過をみたらどうですか、そして3パーセンタ イル、97パーセンタイルからはずれたら保健所へ行くなりお医者さんに診てもらうな りしたらどうでしょうということにしたわけです。  しかし、さっきからの話ではありませんが、あくまで目安というものの、皆さんが気 にしてしようがないということで前回新しく入った頭囲については最初からたしか3と 97にしたのですね。身長、体重も最初から3と97にしてもいいのかなとは思ったもの の、しかし、今までの流れがありますから、続いて見る場合に誤解があってはいけない というので、現在のように3と97に線があって、それから10と90は陰影でつぶすという ような感じになっているのですが、この次はもしかしたら3と97にしてもいいのかなと 私も個人的に思っております。ただ、一方で、さっき加藤先生もおっしゃってくださっ たように、見落としがあったらいけませんで、3と97というのは真ん中に、要するに94 %入りますから、小さい方を3%、大きい方を3%というのは気にしておかなければい けません。両端3%につきそれを大丈夫だと思ってほうっておくために、本来早く医師 に診てもらえば何とかなったようなものがそのまま放置されていたら、今度逆な意味で 大きな問題になりますので、私は発育のグローススタンダートというものはどうしても 必要だと思っているのです。ですから3と97で線を引くか、もっと目安だという意味で 言えば、線でなくて点線にするか、いろんな工夫はあるだろうと思います。それが1つ です。  もう一つ、男女の順序、これは私はどっちでもいいとは思うのですが、英語でもボー イズ・アンド・ガールズといいますか、大人になるとレディース・アンド・ジェントル メンになりますし、確かに加藤先生おっしゃるように、最近のもので同じような理由で 意識的に女子を前に出す場合もあるかもしれません。性別の順序、ほかの身体発育曲線 に限らずいろんなものが、女子・男子というふうに並ぶようになれば、私はそれでもい いかなとは思うので、当面は男・女でいいのではないかと個人的には思っております。 実はあるところで、ジェンダーに関連して、ジェンダーとセックスの問題を議論し出す ときりがないでしょうけれども、ある女性学者とおっしゃる方が、人類学関係の研究に 関連して、なぜ男性と女性を別々にデータを出すのだ、これはけしからんというような ことを学会の席上でおっしゃったというのを聞いて私はびっくり仰天しました。本来男 の子と女の子を一緒にしたデータというのは、私たちの感覚から言うと全くナンセンス だというふうに思うのですが、そういうお考えがあることは事実でありますから、女 子・男子でもいいかもしれませんが、さっき申し上げたように、一般論の考えに従うべ きだと思います。 それから、長くなって恐縮ですが、もう一つは、大林先生がおっし ゃった学校保健との連携につきましては、会長の平山先生がフォローしてくださったと おりでございまして、前回の大改訂のときにも大変議論になりました。学校保健の分野 からも本当は体の大きさ並びに感染症の記録、予防接種の記録等はどうしても必要にな りますから、何か本当に切り離してつなげられればいいなというのが前回の議論でござ いましたね。現実には難しいかもしれませんが、しかし、一応話題として議論の俎上に のせておいていただくことは大切かと思っております。以上でございます。長くなりま して失礼しました。 ○平山会長  ありがとうございました。私もグロースカープのいきさつは覚えておりますが、今の 3〜97パーセンタイルカーブを使っていて、なお、いろいろ親の不安をかき立てると言 われるとすると、それは現場での説明が悪いのではないかしらとさえ思ってしまうので すけれども、それはそれとして、またゆっくりご検討いただくことにしたいと思いま す。長井先生お願いします。職場での、仕事を持っている方々の健康管理のお立場を中 心にお願いいたします。 ○長井委員  母性健康管理指導事項連絡カードというのは診断書と同等に本来扱われるべきという 形で出ておるのですけれども、実際のところはまだまだ産婦人科の先生方の記入要領が 浸透しておらず診断書として出てくる場合の方が多いのですね。ただ、職場の方として はいろんなアンケート調査等、「働く女性の身体と心を考える委員会」の方で行った中 では、事業所側にとっては、多少プライバシーの問題とかいろんなことは言われるので すが、あのカードで統一して出されるのは非常に水準的なものがわかりやすいという評 価です。妊娠中の病気ということさえほとんどの職場は知らないのですね。  ついこの間もこういうようなことが聞こえてきたのですけれども、ある切迫流産の女 性社員なのですが、切迫流産という診断書を書く前に数日間休んでいたと。引き続き休 むかどうかで、診断書を一応はもらっておきながら、職場には出てしまった。職場には 「出血が続いているのですが……」ぐらいしか言わなくて、職場の方はじきに配置転換 するからというようなことで、切迫流産の緊急性というか、そういうことが普通の一般 男性あるいは職場に女性がいたってわかっていないわけですね。それが診断書では十分 伝わらなかったというところもありまして、やはりまだ妊娠中の病気そのものが、ほか の糖尿病であるとか高血圧であるとかというようには世間一般に知られてないと。  そうすると妊産婦に対する配慮さえ、妊産婦さんが満員電車に立っていてもだれも席 をかわろうとしませんし、そういう意味からもまだまだ女性の健康にかかわる部分が周 知されてないという意味では、カードの存在というのは、私どもの方では教育にも使え るというふうに評価しています  今度はもう一つ問題になってくるのが、カードの中には標準措置というものが書かれ ており、労働負荷をこういうように軽減しなさい、作業時間を短縮しなさい、ストレス のかかる作業を軽減しなさいとかある程度の大枠で書いてあるのですけれども、より具 体的なところというのはまだまだ研究段階とか調査段階でして、どの仕事についている 人がどれだけ配慮してもらったら妊娠が安全に進むのかというのはこれからの課題なの です。ただ、そういったことのまず土俵に乗せるためにはカードを 100%周知しなけれ ばいけない。 これは「健やか親子21」でも周知事項として目標に書かれておりますので、母子手帳 に入るということは、少なくとも母子手帳の普及状況から見たら「知っている」という 女性は増えると思います。 今度はその活用において考えると、資料4の6ページ、7ページの「妊娠中の経過」 というところで、右の方は医師の特記指示事項ということで、安静・休業などを書く欄 があります。恐らく今までにここには自宅安静しなさいとか何らか産婦人科の方では特 記事項として書いていたのですけれども、この項目の中にカードを発行したというよう なことが簡単に記入できて、あるいは発行した後にそれが事業所において適切に措置さ れたかというのを産婦人科の先生方はやはり気にされるので、それが事業所の方として も主治医の指示に基づいて、こういう措置をしましたということをむしろフィードバッ ク主治医の方にしてあげた方が、また次の連携ができます。いわゆるカードという名称 がついていること自体が、本来は一方通行のものでなくて、場合によっては双方向のも のという意味合いを含んだはずではないかというふうに私は思っていますので、そうい う意味ではここの母子手帳の中で、そういうやりとりの欄ができると非常にいいかなと 思う一方、やはり母子手帳はあくまでもプライバシーという意味で、だれにでも見せる わけにいかないという点をどう配慮するか。ですから本当言うと、職業の欄として別 ページ設けて、そこだけでも開けば、さほどプライバシーの侵害に当たらないような項 目立てをできないかなというふうに今少し考え始めているところです。  そういう意味では、お母さんの就業環境というのは、最初のところに妊婦の職業と環 境というページが3ページにありますけれども、勤めが「常勤」か「パート」か「家 業」か「内職」、「その他」か「なし」かというような書き方ですけれども、仕事の内 容とここで書いたときに、普通は学校の先生であれば「教師」か、私の場合でしたら 「医師」とか書くのでしょうけれども、産婦人科の先生方により職場に関心を持ってい ただこうと思ったら、少なくとも立ち作業が多いとか、あるいは座作業が多いとか、い ろんな労働負荷ということがもう少しわかるような内容をここに盛り込まないとわから ない。切迫流産で自宅療養というのは、本人がそれで休めないといって会社へ行ってし まうくらいなら、会社で少なくとも休憩を今よりは多くもらってくださいとか、そうい うことがわかりやすくなるような情報をここに盛り込めた方が、本当の意味で働いて出 産・育児をやっていこうという中には必要な項目となってくると思います。それをどう 盛り込んだ方がいいのかというのを1つ考えていることと、それとこちらの報告書の22 ページのところで「母親の就労」状況というのがありまして、育児期でも働く女性がど んどん増加していると。しかも常勤の方が初期の段階で多くて、年齢が上がってくるほ どパートが増えるとか、いろんなおもしろい情報がこちらで初めて私も拝見させていた だいたのですけれども、そういうことから考えると、育児期の就労状態というのも、実 際は先ほどいろんな育児期にも母親の健康状態というような意見もありましたけれど も、就労状態あるいは父親の育児のかかわりという意味でも、どういうふうに父母が家 庭生活を送っているか、それをまた小児科の先生方にも理解いただくという意味でも、 少しどこかそういう欄があった方が参考になるのではないかと思います。  というのは、実際、例えば私が子どもの発熱で病院へ連れて行ったときに、小児科の 先生は母親の状況というのは別に問診しないわけですね。そうすると「あしたも保育園 休ませなさい」と簡単に言ってくださるのですけれども、実際のところどうしよう、あ した休めないということでうろたえるわけですよね。でも一言、「休みなさい」の次は なかなか相談できる雰囲気ではないと。そうするとそのときに少し「お母さん仕事して いるのだったら、大変だね」という一言でもあったら、かなり助かる母親も多いんです ね。  また、それがいつも母親の方にかかってくると。父親はなかなか会社休めないという のが、まだ日本の状況ですから、家庭の環境において、場合によったら、あなたのとこ ろは、お父さん休んでもらった方がいいかなとか、いろんなことも相談できると、もう 少し育児に対する不安だとか負担だとかということが、たった1つの手帳を通じてでも 情報交換、主治医との信頼関係の中で行える。場合によったら職場との関係の中で行え るということだと思います。  もう一つ、職場の方で言いますと、妊娠の申し出そのものというのを何らかの形で伝 えなければいけない。そのときに口頭で済む場合もあるのですけれども、普通口頭で言 ったら、本当に妊娠しているかどうかなんてわかりませんから、何らかの書類を書かせ るということが多いのですね。いろんなところで聞いてみましたら、母子手帳の写しと いうことも多いですし、診断書を書いていただくということもありますけれども、一番 私がふだんお勧めしているのは母子手帳の表紙、少なくとも表紙をお見せしていると、 妊娠した事実はほぼ大体の場合は間違いないだろうと。就労において、先ほど別立ての ページがあるといいなというのは、妊娠の申し出というところから始まるということも もう少し盛り込みたいですし、あと申し出の中で、女性の就業環境がさまざまな分野に 及んでいますから、やはり妊娠がわかった時点で、直ちにそこの職場から離脱させない といけない場合がある。有害職場で働いているということがわかれば、それは自分自身 がその仕事が妊婦にとっては危険であるということを知っていなけれは申し出をしない わけですね。そういったことの情報というのは、どういうふうにして伝えたらいいの か。そのあたり全部盛り込んでいますと、働く女性の母子健康手帳と別のものをつくら ないととてもじゃないけど、おさまらないかと思いますけれども、第一歩は少なくとも カードを入れることによって関心を持っていただくというところにはつながるかと思い ますので、今後の課題として少しずつ検討したいかなと思っています。  長くなりましたけど。 ○平山会長  ありがとうございました。予定いただいている時間になりましたけど、あと4人の先 生がおられますので、ぜひお話を伺った上で、第1回目は終わりたいと思います。日暮 委員、お願いいたします。 ○日暮委員  では簡単にします。ほとんど今まで話題に出たことですけど、1つ、大林委員、高石 委員からもお話ありましたけれども、学校保健との連結ということを何とか具体的に考 えていい案が出てこないかなということが第1点です。  第2点は、母子健康手帳について、さっきから話題になっていますけれども、私はこ れはある程度カルテにも入っていると思うのですね。特に産婦人科の先生、朝倉先生か らもお話がありましたけれども、私は実は公衆衛生は、初代、当時母子衛生課長でしょ うか、私、瀬木先生に公衆衛生を学生時代に習ったのですけれども、瀬木先生は「動く カルテ」だというふうに母子手帳のことをおっしゃった。  先ほど来話題になっていますけれども、どこでプライバシーとの問題を線引きしてい くかということは、ここで基本線を出して、そしてここなら大丈夫だということは盛り 込んでいくといったことが必要なのではないだろうかということが第2点。  第3点は、グロースカーブの話がありましたけれども、私は実は障害児をやっており まして、特にダウンなのですけれども、なかなか標準のカープに入ってこない。それで 親は大変それを問題にするお母さん方おられますけれども、私は基本的にはスタンダー ドですから絶対必要だと思います。私どもはダウン、数が割合多いものですから、ダウ ンの子どもたちの発育曲線をつくって、パーセンタイル曲線つくって、それを使ってい ます、ダウンのお母さんたちに。当然ずれたカーブですけれども、私どもがつくった カーブに入っていれば、そう心配しなくていいというようなことで話していますけれど も、そういってもダウンはひと握りです。日本全体の子どもたちのスタンダードがどの 辺にあるかということをきちんと押さえておくということは必要なので、私はグロース カーブはぜひ入れておいていただきたいと思います。  小さいことですけれども、サイズの問題ですけれども、今時どき、西の方は余りわか らないのですけれども、私が知っている限りでは、母子健康手帳を少し大型の母子健康 手帳を使っているのは横浜市と名古屋市と相模原市が使っていると思います。確かに字 が大きくていいのですけれども、例えばお母さん方、私が聞いている点は、ハンドバッ クに入りにくいとか、今のA6がとってもいいといった意見もあるということは一応申 し添えておきたいと思います。  以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。続いて水野委員、お願いします。 ○水野委員  先ほど小野委員からお話がありましたように、厚生労働省はじめ母乳栄養を推進して いらっしゃいますが、母子健康手帳の中で母乳に関する記載が少ない気がいたしまし た。  必要記載事項についてですが、最近の副読本を拝見しておりませんが、資料4の、 「1歳健診」「1歳6か月健診」に「断乳」という言葉が出てきています。平成7年の 離乳の基本の改定のときに、「断乳」という言葉は使わない方向で検討されたように記 憶しておりますので、これを検討しなければいけないと思います。  1歳以降の「保護者の記録」に書かれている食に関する事項は少し検討する余地があ るように思っています。それは先ほど川井委員の方からお話がありました生活リズムの 乱れの件です。平成7年に厚生省が行った乳幼児栄養調査を解析した結果、保育所や幼 稚園に通っている子どもよりも、家庭で生活している子どもの夜型化が目立ちました。 家庭にいる子どもというと1歳、2歳、3歳が問題になるのでしょう。生活の夜型化は 朝食時刻の乱れにもつながっていきますので、現代の子どもの姿をどこかできちんと押 さえる項目があった方がいいと思います。  小学生になると、朝食の欠食が昨今問題になっていると思います。それがその後ダイ エットにつながっていく場合もあると思われますので、小学校に入る前の5歳ぐらいの 時期に、朝食をしっかり食べさせる習慣を親が意識してほしいので、それに関する記載 も加えていただければと思いました。  資料5の53ページ「妊娠後半期」の頃で、貧血と妊娠中毒症が目立つという表現にな っていますが、妊娠糖尿病も次第に目についてきているように思います。  資料5の55ページ、ここには漠然と「栄養のバランス」をという表現をしております が、今の若い女性の中はダイエット、欠食が習慣化し、そういう状況から結婚・妊娠と いう形につながっていく可能性の人がありますので、「一日3回食べる」という基本的 な姿勢を打ち出した文言があるといいと思います。  67ページの「離乳の完了」の文章が昭和55年のままになっています。  資料8で、今後の「主な改正検討項目」の中に葉酸が入っていますが、ビタミンAも 加える必要はないでしょうか。平成8年だったと思いますが、当時の厚生省の母子保健 課長通知で、再奇形防止に関してビタミンAの過剰摂取の通達が出ていたと思います。  日暮先生の調査を拝見して保護者は情報の資料はたくさん欲しいけれども、持ち歩き を考えると薄くという相反する意見もありました。フリーアンサーの中にもありました が、分冊にするのも1つの案であると思いますが、分冊にした場合に、必須はいつも手 短なところにあるけれども、任意の方がどこかへ行ってしまったりと、一長一短がある のですね。 ○平山会長  ありがとうございました。それでは、日本医師会の雪下委員お願いいたします。 ○雪下委員  時間がないので、きょうは私は幸い当たらなくていいのかなと思っていましたら、回 ってまいりました。先ほどからいろんな専門の方々から意見を聞かせていただいており ますが、その中で大切なのは、乳幼児期の保健が生涯を通じての健康保健のスタートと して学校保健につながり、学校保健が産業の保健につながり、それが老人保健につなが るというのがどうしても必要だと思うのです。これは前から、例えば5歳児の健康診断 の中で、心電図の検査をしているところが多いわけですが、その結果を何とか小学校で もらいたいというような話をしましても、これが今いろいろ皆さんから言われているプ ライバシーの問題とか、あるいはその管轄が違い、予算の出どころが違うということ で、どうしても学校保健の情報の中に入ってこれなかったというようないきさつがあっ て、これはとてもだめだなと思っておりました。しかし今度ご承知のように、小学校と 中学校の健診カードが、これは強制的ではありませんが、つながったのが旧文部省から 参考までに提出されて一歩前進だと思います。  これは、特に心臓、腎臓、糖尿病健診における管理区分などが小学校から中学校へ伝 えられたという点で大変役に立っていると思います。少なくとも健診の記録と予防接種 の記録については、何とか小学校につながるような形をとってほしいなというふうに感 じました。  もう一つ、これもいろいろ話が出ております、今日本医師会においても重点的に実施 しております子どもの虐待の問題において、発育曲線が有効に活用できるような判りや すいものであってほしいと思うのです。現在 573例の医療機関から報告された子どもの 虐待を分析してハンドブックをつくっておりますが、0歳児の硬膜下血腫というのが意 外に多いということで、私は脳外科の医者なのですが、びっくりしております。しか し、これはいわゆるシェーキングベビーということで、必ずしも虐待でもなくても、高 い高いと揺すっただけでも起こる可能性があるといわれています。いろいろ考えてみま すと、確かに脳と硬膜とをつなぐ静脈がまだ十分でない6か月までとか、あるいは首の すわりがまだ不十分な時期には、それも起こす可能性があるということから、シェーキ ングベビーについての注意を入れるべきかなというような感じがいたします。  また、もやもや病についても、3〜4歳頃に発症のピークがあり、重い障害を残すこ とが多いので、細かいことですが、過呼吸による誘発というのをぜひ入れられたらいい と思います。  それから、プレネイタルビジットについても、先ほどから何人かの委員の先生から話 が出ております。今48郡市医師会を主体にしてこの事業を日本医師会でまとめて、1 年 間モデル事業を実施しておりますが、少なくともその結果を踏まえて、厚生労働省の方 に提案したいと思っているわけですが、それはちょっと間に合わないかもしれませんの で、少なくとも産婦人科の先生方から、うちへ帰っての、小児科のかかりつけ医の先生 へのコメントみたいなものが何か入れるようなところがあったらいいかなという感じが いたしました。 もう一つは予防接種、これも先ほどから話がありました。特に風しん、麻しんについ ての早期の接種の必要性とか、その他の予防接種実施のチェックとか、それができやす いような工夫が必要。特に1歳半、3歳児、就学時の健診で医師が一目見てチェックで きるようなものがほしいと思います。  その他、妊婦のたばこの問題、これは相当厳重に何とかもっと強い言葉で禁止してい くということが必要であると思います。それから葉酸摂取の問題、これら神経管閉鎖不 全の予防で平山会長が委員長でやられた仕事ですが、これも何らかの形で情報提供して いくことも必要だし、あるいは乳児の難聴の早期発見というようなものも何かの形で情 報提供が必要かと思います。  職場での妊娠カードのこと、これは先ほどるる説明がございましたけれども、一番の 問題は、産業医の中に、産婦人科の先生が大変少ないということネックで、今モデル事 業で一般の産婦人科の先生に協力願いながら産業医活動の中でも努力いただいています が、なかなかこれが実績となってあらわれてこないというようなことがあるかと思いま した。  ざっといろいろ皆さんからの話をうかがい、感ずるところを申し述べましたが、その 都度またお話ししていきたいと思います。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。では最後になりましたが、保健婦の立場も踏まえまして、 吉岡委員お願いいたします。 ○吉岡委員  きょうこちらに伺う前に職場の保健婦やら、保健所に来ています住民さんに少し母子 健康手帳についてどんなふうなことを思うということで聞いてみまして、3点だけきょ うお伝えしたいと思います。  1つには余白ページが大変少ないので、これはお母さん方からのご意見だったのです けど、今の方は非常にパソコンもお上手ですし、書くことは余りいとわない、両極端で すけれども、全然書かない人もいますけれども、余白ページが圧倒的に少ないと。いろ んな相談できることや感じたことを書きたいというふうなご意見がありました。  2つ目には、母親と子ども、母子健康手帳なのでそうなのかもしれないのですけれど も、母子手帳にもう少し父親の参加、お父さんのいない人はどうなるのかというふうな こともあるのかもしれないのですが、この母子健康手帳が夫婦のコミュニケーションの ツールの1つになったらいいのではないかということで、例えば最後の方に余白もある のですけれども、妊娠中から、プレママからプレパパへのメッセージとか、逆にプレパ パからプレママへの返信とか、それが1歳とか1歳半とか3歳のところでも記載できる ようなことがあるといいかなというふうなことを、うちの保健婦とかが言っておりまし た。  それから、3点目なのですが、さっき小林先生もおっしゃっていたのですが、親の育 児のつらさ、子育てをしていてサポート感などが記載できるような項目がもう少しある といいなというふうなことがありました。  きょうは3点ぐらいで、おいおいまた細かいことをお願いしたいなと思っておりま す。以上です。 ○平山会長  ありがとうございました。今のお話でも、確かに父親の育児参加を重視しろといえ ば、シングルマザーはどうしてくれるという話が一方で出てくるのでバランスが難しい ところだと思いますが、いろいろありがとうございました。  それから、1つはお願いなんですけれども、きょうはいろいろご意見大事なことをご 指摘いただいております。事務局の方でメモしていらっしゃると思いますけれども、な ろうことならば、簡単なメモを具体的に何ページのどこのところをどう直したいという のをちょっとメモで事務局に教えていただけますと、整理がしやすくて助かると思いま す。必要があれば、我々もお手伝いしながら、この次までにさらに整理をしたいと思い ますし、日本医師会でもまた別途調査をしていただいているようですので、次回、また そういうものを全部踏まえまして、ご検討をお願いすることにしたいと思います。  時間が少し過ぎてしまいましたけれども、大変貴重なお話をたくさん伺いましたの で、ありがとうございました。  事務局にこれからの予定などをお願いいたします。 ○桑島課長補佐  会長どうもありがとうございました。それでは次回の検討会の予定をご連絡申し上げ ます。次回は10月26日(金曜日)14時45分から16時45分、2時間程度時間を予定させて いただいてございます。多少延びる可能性もございますけれども、考えてございます。 場所は厚生労働省5階の共用7会議室となります。 ○平山会長  ここですね。 ○桑島課長補佐  失礼しました。ここでございます。  今、会長の方からもおっしゃっていただいたのですけれども、本日、先生方からいろ いとご意見ございましたけれども、そのご指摘の点についてメモをいただけますと、私 ども事務局としても非常にまとめやすく、また次回の議論にもスムーズに入れると考え てございますので、どうぞその点よろしくお願い申し上げます。また、ほかの点につき ましても、いろいろとご意見等ございましたらメールあるいはファックス等で事前にち ょうだいできればと考えてございます。  なお、資料を事前に先生方にお配りをさせていただきたいと思っておりますので、で きましたら早めにと考えてございますけれども、恐縮でございますけれども、その期限 を切らせていただきたいと存じます。次回が10月26日でございますので、できましたら1 0月23日までに事務局までにご連絡をいただければというふうに考えてございます。事務 局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○平山会長  ありがとうございました。それではそのようなことで、ご出席いただくほかにいろい ろのお願いを申し上げてすいませんが、どうぞよろしくお願いをいたします。時間が限 られておりまして、年内には全部を取りまとめる必要があると思いますので、皆様方の ご協力をお願い申し上げます。 ○桑島課長補佐  事務局の手違いでございまして、資料1の名簿を一部間違ってございましたので、訂 正したものをお配りさせていただきたいと存じます。 ○小林主査  ちょっと補足になるのですけれども、今回の検討会なのですが、原則として2時間と いうことでお願いしているのですが、何分今年の12月までということで、会議の回数が 3回か4回ということで余り回数が多くとれないということもございますので、議論の 進行の度合いによっては3時間まで延ばしていただくということもあり得るということ で、お忙しいところまことに恐縮ではございますが、よろしくお願いします。  あともう一点なのですが、会長からもお話いただいたのですけれども、委員の皆様方 から、今回の改正についてのご意見をいただきたいと思っておるのですが、その際に何 分我々専門でないところも多く、先生方の方がご専門ということですので、改正の趣 旨、理由とか、あと先ほど会長からもご発言いただきましたけれども、具体的に何ペー ジのどこをどういう文言に変えればいいかということまで示していただけると事務局と しては大変助かるということで、よろしくお願いできればと思います。  以上でございます。 ○平山会長  課長、何かご挨拶でもお願いできますか。 ○谷口母子保健課長  きょうのご審議承っておりまして、大変いろいろな問題があるというのを重々再認識 をしたところでございます。いずれ時代の要請に応じた母子健康手帳にしていかないと いけないと事務局として考えておりますが、その辺は行政も最近頭が大分フレキシブル になっておりまして、従来のようなかたい頭は我々捨てたつもりでございますので、そ ういう意味では思う存分ご意見を出していただきまして、できるだけ拾っていきたいと 考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それから、小林先生大変失礼をいたしました。所属がちょっと違っておりまして、新 しいものを今配らせていただきましたけれども、訂正をさせた次第でございます。  どうもきょうはありがとうございます。 ○平山会長  どうもありがとうございました。また引き続きよろしくお願いをいたします。                                   以 上 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 03−5253−1111(代) 桑島(内線:7933) 小林(内線:7939)