01/09/21 第6回保健医療情報システム検討会             第6回 保健医療情報システム検討会 日時 平成13年9月21日(金) 会場 厚生労働省 17階 専用第21会議室 【事務局】 定刻となりましたので、ただ今から保健医療情報システム検討会を開催い た します。本日は委員の方々、全員出席となっておりますけれども、西島委員と大山 委員が多少遅れて来られるという連絡が入っております。  開催に先立ちまして、去る8月31日付で医政局長をはじめ、人事異動がございました のでご紹介申し上げます。医政局長の篠崎英夫です。 【篠崎医政局長】 医政局長の篠崎と申します。8月31日付で、前伊藤局長のあとを受 けて就任いたしました。私も今から数年前に厚生科学課長をしておりましたときに、当 時のG8絡みで保健医療に関する情報化の窓口を、あれは1年ぐらいでございましたが担 当しておりましたことがございます。今日はまだお見えでありませんが大山委員とか、 あるいは上岡先生等にも、いろいろご参加をいただいて、始めたのは数年前でございま した。1度だけ、ビデオカンファレンスというものをやりまして――情報化の会議なの でビデオカンファレンスでやろうというので――カナダが会議の場所だったものですか ら、われわれの場合はG8の他の国と違って、行ったり来たりするのにいちばん遠いとい うこともありまして、カナダと東京を結んでビデオカンファレンスをやったのを覚えて おります。それからもう、数年たちまして、この情報化といいますかIT化といいますか 、日進月歩の分野でございますので、あれからまたはるかに進歩している部分があると 思います。  今回、この検討会におきまして、この先、どんどん進歩していくんでしょうけれども 、おおよそ、この保健医療分野ではこんな形でやっていこうということについて、グラ ンドデザインを描いていただく作業をしていただいているというふうに承知をいたして おりますけれども、これは小泉内閣にとりましても非常に大きな柱のひとつでございま す。いろいろ他分野に比べますと、この保健医療分野というのはIT化という側面から見 ると、若干、遅れているというふうに言われておりますし私どももそのように感じてお ります。これはいろいろ、中身が中身でございますので、いろいろ難問が山積しており まして、こうなっているんだと思いますが、しかし、この時代でございますから、いろ んな難問も十分解決可能な時期に来ているといいますか、あるいはまた、技術上もそれ がだんだん可能になってくるのではないかというふうに思っておりますので、ぜひこの 検討会で、あるべきグランドデザインを詰めていただきたいと思うわけでございます。  8月の末にまだ代わったばかりでございまして、若干、所用が立て込んでおりますの で、このあとご挨拶をして、また失礼をさせていただきますが、どうか今後とも、よろ しくお願いいたします。 【事務局】 研究開発振興課長及び医療技術情報推進室長の交替もございましたので、 紹介申し上げます。研究開発振興課長の遠藤明です。 【遠藤課長】 遠藤でございます。よろしくお願いいたします。 【事務局】 研究開発振興課医療技術情報推進室長の遠藤弘良です。 【遠藤室長】 私も遠藤と申します。よろしくお願いいたします。 【事務局】 それでは次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。本日の資料は 「保健医療情報システム検討会第6回議事次第」と書いてございます資料であります。 資料を3枚めくっていただきますと、右肩に資料1として「経済財政諮問会議等におけ る医療の情報化関連指摘事項」と書いてございます4枚ほどの資料がございます。次に 右肩に資料2と書いてございます、「歯科におけるIT化への取り組み」という1枚の資 料がございます。その次に、右肩に資料3と書いてございます「電子カルテを医療の基 盤にするために」という6枚の資料がございます。資料以外に、委員の皆様には、前回 の議事録の未定稿を配布させていただいております。今月の28日までに何かご訂正等が ございましたら、ご連絡いただけたら幸いでございます。では議事進行のほうを、座長 の開原先生のほうによろしくお願いいたします。 【開原座長】 それでは、本日の議事に移らせていただきたいと思います。まず最初に 、去る8月8日に保健医療分野の情報化に向けましてグランドデザインというものを公 表したわけでありますが、その後、皆様もいろんなところで既にお読みになっているか もしれませんが、様々な政府の会議で医療の情報化に対する提言がなされたようであり ます。また、8月末には平成14年度の予算の概算要求が出されまして、医療の情報化関 連のものもあると伺っております。そこで、本日の検討に入る前に、まず最近の動向に ついて、事務局からご説明をお願いいたします。 【遠藤室長】 それでは、私のほうからお手元の資料にしたがいまして、ご説明させて いただきます。資料1をご覧ください。まず、1枚めくっていただきますと、経済財政 諮問会議および関連云々と題した資料がございます。第2回目のこの検討会で、e-Japan 重点計画について詳しい説明をさせていただいたわけでございますが、その後、ここに 書いてあります経済財政諮問会議および関連会議におきまして、医療の情報化関連の提 言あるいは指摘を受けてございます。  まず、経済財政諮問会議では、6月26日の閣議決定といたしまして、医療制度改革の 項目の中に、医療機関経営の近代化として医療サービスのIT化の推進、電子カルテ、電 子レセプトの推進により、医療機関運営コストの削減を推進するという決定がなされて おります。また、総合規制改革会議でございますが、こちらは7月24日に中間とりまと めを行っております。医療に関する徹底的な情報公開とIT化の推進、カルテの電子化、E BM、医療の標準化などの推進、複数の医療機関による患者情報、カルテなどの共有、有 効活用の促進がまとめられてございます。そして産業構造改革雇用対策本部では、6月2 6日の本部決定といたしまして「医療システム改革と新たな医療市場の創出として、電子 カルテ、レセプト電算システムの普及など、医療分野のIT化の推進について、保健医療 情報システム検討会で検討し、今年度早期に戦略的グランドデザインを策定する。なお 、一層のIT化を医療機関に働きかけ、インフラ整備を進める」となっております。この ように各会議におきまして、ご指摘をいただいております。  こうした政府の各会議の動きを受けまして、e-Japan重点計画、e-Japan2002プログラ ムの加速前倒しが検討されました。去る9月14日開催のIT戦略本部におきまして、IT関 連構造改革工程表中間とりまとめが配布されたところでございます。医療分野のIT化に ついては、次のページの中程をご覧ください。今後の改革工程といたしまして、前倒し で秋までにできるものとして、医療の情報化の基盤整備の観点から、厚生労働省と文部 科学省は、両省間の連携を密にするとともに、関係府省の参加を得て、医療機関間の情 報交換ができるよう、統一的な用語、コードや規格の利用等に関する協議を開始します 。また、2番目といたしまして「臨時国会で法改正措置等を行うことにより、年内にで きるものとして、医療情報化のための戦略的グランドデザイン(電子カルテ、レセプト の電算化等のための具体的な普及目標、期限、普及方策等を明示したアクションプラン )の策定をすべし」とあります。このように、この改革工程表の中にも載った次第でご ざいます。  次のページをご覧ください。平成14年度の、私ども厚生労働省の情報化関連概算要求 の概要を、この資料にしたがいましてご説明申し上げます。この資料は既にございます 、私ども医政局の概算要求のPR版から抜粋したものでございます。あるいはご覧になっ た方がいらっしゃるかもしれません。  まず初めに情報関連といたしまして、情報化による医療の質の向上と効率化の推進と して、14億5,200万円を要求してございます。その内訳として、まず、「情報化による医 療の質の向上と効率化」に13億6,200万円。具体的な事業といたしまして、地域医療機関 連携のための電子カルテによる診療情報共有化モデル事業がございます。これは構造改 革特別要求枠で要求しているものでございますが、約10億円。内容は電子カルテ等の導 入を図りまして、病歴等の診療情報の病院診療所間での共有、効果的活用による地域連 携診療体制の充実のためのネットワーク構築を目指したものでございます。  次に「ITを用いた良質かつ効率的な医療の提供」として3億6000千万円を要求して ございます。内訳としては情報提供データベースの構築、これは厚生科学研究費補助金 の枠内でございますが、約2億7,000万円。内容は、根拠に基づく医療、EBMが実践でき るよう、インターネット等を利用した質の高い情報を医療関係者等に提供するためのデ ータベースを整備するということを目的としたものでございます。それから、ITを用 いた診療支援策のひとつといたしまして、診療支援の質の向上と安全性の向上のために 、電子カルテとクリティカルパス連動システムの開発を目的とした予算も要求しており ます。  一方、「患者の皆さんの選択を重視した医療等の実現」といたしまして、9,000万円を 要求してございます。その内容といたしましては、医療機関のインターネットを利用し た情報提供のあり方のための、検討のための検討会経費がございます。その他、診療情 報提供の環境整備といたしまして、患者さんに対する診療情報の開示や医療機関に関す る診療情報の適切な提供を図るための研修等を実施することとしております。  その他、ここにはあげてございませんが、遠隔医療支援事業等は引き続き、要求をし ているところでございます。既にご存じの方も多いかと思いますが、確認の意味も込め まして、ご説明をさせていただきました。 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは、ただ今の政府関係の動き、 それから厚生労働省の概算要求等につきまして、せっかくの機会でございますので、も しご質問があればお受けしてもよろしいと伺っております。何かございますか。この委 員会の名前が、雇用対策本部決定においては名前まであげて、いろいろ書いてあるよう でございますので、たいへん責任が重い気もいたしますが、ぜひ、今後の審議もよろし くお願いをいたしたいと思っております。  それでは、ただ今のご説明は承らせていただきまして、早速、本日の議事に移らせて いただきます。まずは前回、ご提言がございまして、歯科と看護の方々からは、今まで あまりご意見をうかがう機会がなかったので、それぞれの分野から現状と今後の課題と いうものについて、ご提言をいただいてはどうかというお話があったわけでございます 。そこで2名の委員の方に新たにご就任をいただいて、これから審議に加わっていただ こうということになりましたので、まず、事務局のほうから、お二方の委員をご紹介い ただけますでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。 【事務局】 ただ今、座長よりお話しいただきました、お二人の委員をご紹介させてい ただきます。まず、歯科の分野につきましてご提言をいただきます、日本大学松戸歯学 部口腔診断学教室助教授、齊藤孝親委員です。 【齊藤委員】 齊藤と申します。よろしくお願いいたします。 【事務局】 次に、看護の分野につきましてご提言いただきます、NTT東日本病院看護部 長、坂本すが委員です。 【坂本委員】 坂本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 【開原座長】 齊藤先生、坂本先生、どうぞ今後ともよろしくお願いを申し上げます。 それでは、今日はお二方からご意見をうかがうということにしたいと思いますので、ま ず最初に齊藤委員のほうから、歯科関係のことをお話しいただければと思っております 。委員のご就任の自己紹介なども、もしあればどうぞおっしゃっても結構でございます 。 【齊藤委員】 日本大学松戸歯学部の齊藤と申します。大学におりますので、歯科の開 業医の皆様の現状をすべて存じ上げているわけではありませんが、私の認識している範 囲での、歯科におきますIT化への取り組みについてお話し申し上げたいと存じます。お 配りしていただいております資料に沿ってお話を進めたいと存じます。  まず、歯科医療について、IT化と関わると思われる事項をいくつかあげてございます 。1番は歯科医療機関の84%は個人開業医であるということでございます。スタッフは 歯科医師、歯科衛生士、そして歯科の補助業務をなさる方をあわせて4名前後の構成が 多いように認識してございます。そして、個人開業医であります歯科診療所の多くは、 歯科としてほぼ同じ範疇の医療をしておりますので、ちょうど2番目にあげましたよう な、個人の歯科診療所間が連携するようなチーム医療というのはなかなか希であろうと 存じます。  それと3番に、診療ユニットで診療と外科的治療を行うということをあげさせていた だきました。これは、私どもの歯科では問診、診察、そして治療をほとんど歯科診療ユ ニットと申します椅子の上でやることが多く、実際の治療は患者さんを中心に、その両 サイドに歯科医師と補助者が座りまして治療を進めていくような形態になってございま す。ですので、治療をする私ども歯科医師あるいは補助者が姿勢を崩さずに、効率よく 安全に医療器具が取れて、なおかつ扱えるように、非常に狭い範囲で、効率よく、器具 、材料が配置されております。ということは、逆にいうと余剰スペースが不足しており まして、また切削粉などの飛散などもございますので、なかなかパソコンなどの大きな 機械を置けないというのが現状でございます。  4番目といたしまして、小規模ということをあげさせていただきました。診療所の規 模自体が、構成が4名ほどでなされるという規模の小ささもあるわけですが、内容的に 見ましても、歯科医療の中では臨床検査の実施というものがほとんどございません。ま た、医薬品としまして、抗生物質あるいは痛み止めを処方することは、抜歯をしたあと などにあるのですが、それ以外の医薬品の処方というのは、かなり少のうございます。 また、医薬品以外の医療材料ですとか器具は、小さなものが多品種ございますが、使わ れるものは比較的少量ですので、どうしても全体的に規模としては小規模と言わざるを 得ないだろうと認識しております。歯科に特徴的なものとして、入れ歯などの技工物と いうものがございまして、これを外注いたしますが、このオーダー自体も、それほど多 数になるようなことはないと存じます。  5番目として、スタディーモデルというものをあげてございます。これは噛み合わせ を調べるために、上の歯型、下の歯型を型どりしまして、それを石膏でつくりあげた模 型でございますが、これは上あごの模型と下あごの模型を組み合わせて、そのかみ合わ せの様子を調べたりするものですから、立体的に情報を把握する必要がございます。で すので、なかなかデジタル化するということには馴染みにくい部分がございます。  以上、ここまであげさせていただきましたものが、どちらかといいますと歯科の特徴 的な部分でございます。次に、歯科の医療の中に変化が起きていると感じている部分に ついて述べさせていただきます。  6番目として病診連携の必要性の増加と書かせていただきました。より安全な歯科医 療のために、抜歯や口腔外科手術は病院歯科で行い、外科処置が終了したあと、在宅あ るいは診療所で入れ歯の製作を行うというような、緊密な病診連携の必要が今、非常に 増しつつあります。そして今後さらに増すであろうと実感しております。  7番目としまして、歯科医療のニーズの変化をあげさせていただきました。80歳で20 本の歯を残して、おいしくお食事をしましょうという、8020運動というものがございま して、歯科界をあげてそれに取り組んでおります。そしてまた、食べること、楽しくお 話をすることの重要性が再認識されつつありますので、歯科的な対応が今、非常に急が れております。歯科医師会や学会、あるいは大学をあげて、やはりその方向へ目を向け ているところでございます。  8番目としまして、保健、福祉、医療の情報の重要性が増加しているという項目をあ げさせていただきました。これは6番目あるいは7番目の項目とも非常に関連する項目 でございますが、質の高い医療、患者のニーズに応える医療を実施するうえで、やはり この情報というのは不可欠なものでございます。ですから、この重要性は日に日に増し ていくものだと実感しております。  9番目に、レセコンの利用は約60%というふうに書かせていただきました。歯科のレ セプトと申しますのは、その様式が、処置と点数が表形式で既に印刷されておりまして 、それに処置の回数を記入して計算していけばできあがってしまうものでございます。 ということは手作業で、あるいは手集計でも、ある部分、できあがってしまうのですが 、それでもやはり、開業なさっていらっしゃいます先生方は、レセコンを応用しはじめ て、約60%に達したものだと私は理解しております。  以上、お話ししましたような、歯科医療の基本的な歯科の特徴的な部分と、歯科医療 の変化に対して、様々なIT化への取り組みがなされております。  1番に、代表的なものとして日本歯科医師会によりますIT化事業について書かせてい ただきました。レセプトの電算化の問題ですとか、あるいは医療情報システムの問題に ついての具体的な検討が進んでいるようでございますし、歯科医師会雑誌におきまして も、「IT革命と歯科医療」という連載がありますし、また、それを実際に実践しておら れる、自分でレセプトあるいは電子カルテをおつくりになっている先生の事例報告まで 、近頃はなされるようになってきております。そのような全体としての取り組み以外に も、医療の現場でも様々なIT化が進んでございます。  2番として、歯科医療の質の向上として、3つほどあげさせていただきました。まず 1番目に、デジタル画像機器の導入がございます。デンタル撮影と申しますのは、歯科 独自の、お口の中にフィルムを入れて撮る撮影で、フィルムの大きさは3cm×4cm程度 の小さなものでございます。これもデジタル化された機械が、今、浸透しつつございま す。また、パノラマ撮影というのは、上あごと下あごのかみ合わせを左右に開いたよう な形で展開した、4ツ切サイズに近い形のレントゲンフィルムです。このデンタル撮影 とパノラマ撮影の2つは、私たち歯科の診療において不可欠なものでございます。それ がデジタル化されまして、今、非常な勢いで広がってきております。ただ、残念なこと に、DICOMへの対応はなされておりません。3つ目にあげております歯科用の小照 射野CT、これは3次元のCTで、歯科頭頸部領域を目指して開発されたものでございます 。これは高額な機器でもありますので、病診連携の基幹病院に入れた使い方ができるよ うに聞いておりますが、これについてはDICOMへの対応が図られていると聞いてご ざいます。このようなデジタルレントゲンの浸透によりまして、現場の歯科の先生から お聞きするのは、患者さんとのコミュニケーションが非常にとりやすくなったというこ とです。また、先生ご自身が経時的にその疾患を追うときに、その変化を濃度変化とし て客観的に把握できるので非常に診療上のメリットが高いというふうに、皆さん、お感 じになっているようでございます。  2番目に、インフォームド・コンセントにおきますマルチメディアの活用というもの をあげてございます。歯科というのは、お口の中を、なかなか皆さん、のぞくことがご ざいません。前歯の色、形というのは皆さん、お気になさいますが、奥歯で虫歯がどう なっているか、実際に自分の歯ブラシで歯がきれいに磨けているか、そのようなことは なかなか、患者さんご自身は気づくことがございません。そのため、お口の中に小型のC CDカメラを入れまして、それを実際に撮影し患者さんにお見せする、それを見ながら、 患者さんと私どもでディスカッションしながら、患者さんと一緒に治療を進めていく、 そういう状況が非常によくとられております。また、歯並びを直します矯正、あるいは 歯の色を直す、あるいは歯にかぶせものをかぶせるといったときに、「実際、私はどの ような顔になるのだろう?」という疑問を持たれる患者さんに対しては、それをシミュ レートするソフトなども、今は実際に市販されておりまして、現場で使われております 。それを見せることによりまして、患者さんが十分納得したうえで、しっかりしたイン フォームドコンセントがとれた中で医療を進めていくということで、患者さんにとりま しても私どもにとりましても、非常に大きなメリットが実感されている次第でございま す。  3として、3次元のCAD、CAMによります補綴修復物の作成というものをあげてござい ます。通常ですと歯を削りまして、粘土のような印象剤というもので歯の型をとりまし て、それをもとに鋳型をつくって金属を流し込む等の操作をして、虫歯の穴の治療をし ていくですが、この機器ですと、お口の中をCCDカメラで撮りまして、画像解析によって 3次元的に形態を割り出し、それを旋盤のようなミリング機械によって削り出していく 、そうしますと、熱収縮等の問題がなくなりますので、適合性が非常によいものができ る、そういう機械も現実に実用化されて、少しずつではありますが普及してきておりま す。  大きな3番として、次に、歯科医療におきますEBMの推進ということをあげさせていた だきました。私ども歯科におきましても齲蝕、歯周病と申しますのは、ディシーズマネ ジメントとしての対応が今、早急に必要であろうという形で、いろいろな方面からいろ いろな検討がなされております。そしてやはり、そのためのデータベース、あるいはラ ンダム化、比較したような研究データの蓄積が必須であろうと、学会の中でも、また、 医療の現場でも考えられていると思います。  そして4番目に、医療、介護におきます医科との連携。要は患者さんを中心としたシ ームレスな情報の共有化というところをあげさせていただきました。私はケアマネジャ ーもやっておりまして、介護の現場にも出ております。そうしますと、やはり患者さん を中心として情報がシームレスに集まるということがいかに大切かということを実感で きるのであります。やはりその都度、問い合わせをして郵送をして、あるいはお電話で お聞きして、情報を得るということは目の前にいる患者さんに何か治療をしよう、何か ケアをしようというときに、すぐにできないというような事態も生じてまいりますので 、やはりシームレスな、タイムリーな情報の共有というものが望ましいものだと思って おります。またこれは歯科の中でも大きな課題であろうと考えております。  5番目として、歯科コードの検討あるいは電子カルテの検討ということをあげてござ います。歯科の場合には、お口の中の歯を1番、2番というふうに数字を使って表現す る場合がありまして、これがなかなかコード化の統一がとられておりません。そのため に医療情報学会課題研究会の先生方が、いろいろご苦心なさって、そのコード化を図ら れたり、あるいは電子カルテについても医療管理学会のほうで本年度の学会ではシンポ ジウム、ミーティングが持たれたようでございます。やはりそういう方向で、歯科の中 でも非常にある意味で遅れている部分に向けての取り組みが、今、非常に活発になされ ている次第でございます。とくにこの歯科コードの問題と申しますのは、実際のワープ ロの中に、私どもがふだん使います、ウィンドウズですとか一太郎ですとか、そういう ものの中にさえございませんので、実際にワープロを使って情報をやりとりするときに 、それを書き込めないという問題が起きておりますので、早急な対応をとりたいと考え ております。  6番目に、大規模災害時の身元確認作業のための患者情報データベースの検討という ものをあげてございます。現在は紙のカルテで、しかも最終治療の内容が具体的な形で 残されておりません。治療の進展状況はカルテを前からたどっていくとわかりますが、 最後にどのような形で治ったのか、それを視覚的に、あるいは形態的に長期保存という ことは、今、されていないのが実情でございます。もし仮にそれがきちんとした形でデ ータベース化されて保存されるようになりますと、歯というのは硬組織であり、かなり 長くまで残りますので、その状況をもとにいろいろな確認作業が効率よく、しかも安価 にできるというような一面もあるかと思います。  以上、お話ししましたように、歯科というのはどちらかというと手作業主体の、家内 工業的な状況で行われているわけですが、その中でも、やはりデジタル化に向けての、 電子カルテに向けての、また、歯科のコードを統一しようという気運は今、高まってお りまして、徐々にではありますがその方向に進んでいっております。また、構造的にも とくにお口の中は見えないものですから、患者さんとのコミュニケーションをとるため にも、マルチメディアによるデジタル化の進展、IT化の進展というものが必要であろう と考えられています。以上のような形で、歯科におきますIT化の取り組みを、私は認識 している次第でございます。 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは少し時間がございますので、1 0分ばかり、もし何かご質問でもあれば、どうぞ齊藤先生にお聞きいただければと思いま す。 【樋口委員】 せっかくの機会なので、私が完全に時間を私有化するようではいけない と思いますけれども、お教えいただきたいと思うことが3つございます。3点目は本当 はこの委員会とは少し離れるかもしれませんが、時間の許すかぎりで結構ですから、素 人に対して教えていただければと思います。  第1点はITの推進ということですが、それはいったい何のためなのかという話がいち ばん根元的なところであって、私の単純な発想ですと、やはりコストパフォーマンスだ と思うんです。まず、夢のような話だけを考えているんですが、IT化の推進によって、 全体の歯科医療に関するコストがダウンするということがあれば――当座はアップする にしても、長期的な視野で見てダウンするとか、いろんな形があると思いますが――コ ストダウンの話につながるのかどうかという話がひとつ。パフォーマンスのほうは、2 つで計るんだろうと思うんですが、1つはクォリティというか質であり、もう1つはや はり歯科医療に関するアクセスの拡充というようなことだと思うんです。アクセスのほ うから言うと、私はやはり、今は東京に住んでいますので、歯医者さんは本当にたくさ んあって、これはたいへんな競争だろうと思うんですが、日本全体を見るとそうでもな いのかどうか、そういうことについてこのIT化が何らかの形で寄与するのかどうかみた いなことを教えていただければということです。2つ目はクォリティですが、IT化の推 進が歯科医療において質の向上につながるといいと思うんですけれども、これはいった い何によって計るのかということです。質の向上というものをどういう形で目に見える ようにするのか。私は一応、法学部に所属しているので、たとえばいちばん簡単な例は 、日本でもどこでもそうですが、医療関係の事故が起きて訴訟が起きますよね、その訴 訟の数がたとえば年度を経て、IT化の推進とともに減少していくようだとわかりやすい 。ここに本当に相関関係があるのかどうかというのがひとつ問題だと思うんですが、事 故が減るとかそういうようなレベルで質を計るというのもあると思いますが、そういう 事故とかなんとかというのではなくて、患者さんの満足度というんでしょうか、それを またどうやって数量化するかということがあると思うんですが、そういう質の向上とい うことについてこのIT化がどういう形で歯科医療に関係して、どうやってこれを計るの か。まあ、計ることは難しい問題なのかもしれませんが、そういう点についておうかが いしたい、これが第1点です。  2つ目は、このIT化の推進でいろんな動きがあって、これはなかなか、いろんなこと があるんだなあと思ってうかがいましたけれども、そのインセンティブは何かというこ となんです。どうしてこういう方向へ、歯科の方たちが動きだしているのか。ひとつは やはり、よりよい歯科医療を提供したいという、専門家としての熱意とかそういうもの もあると思いますが、さっき言ったような歯科の配置の競争関係というんでしょうか、 そういう要素がインセンティブになって、それぞれ患者を引きつけるようなものを考え ているのか。どういうインセンティブなのかというのが2つ目です。  3つ目は、ちょっと小さな話かもしれないんですが、やはりIT化というのは情報化で あり情報の集中でもあるので、それに関係した話だとは思っているんですけれど、いち ばん最後に身元確認のときに歯医者さんが決定的な力を発揮することがありますよね、 ああいう形で、現在の話でいいんですけれども、災害であれ事件であれ、たとえば警察 から、あるいは消防署から照会が来たときに、歯医者さんとしては、医療関係の個人情 報に関してどういう形で対処しておられるのかというのを、ごく簡単でいいんですが、 お答えできる範囲でお願いしたいと思います。 【齊藤委員】 非常に難しい問題が含まれていますので困惑しておりますが、まず、1 番目のコストパフォーマンス、コストダウンにどうつながるかということでございます が、私どもの医療はほとんど手作業の部分がございます。その部分をIT化で何かできる かというのは、ちょっと私は個人的には考えにくいだろうという気がしております。た だ、先ほどデジタル化のレントゲンのお話を申し上げましたが、そのような形で、もう 、チェアのそばでリアルタイムに患者さんとお話ができる、その待ち時間がなくなると いうことで、患者さんに対してかける時間が非常に多くなる、そういうことで、目に見 えない部分での、コストというよりも患者さんに対するサービス的な部分でのメリット は非常に大きいものがあると思います。私、たいへん申し訳ないんですが大学におりま すので、コスト的な問題をどう考えたらいいかということについては具体的に申し上げ にくい部分がございます。  次にクォリティ、質の向上ということでございますが、やはりお口の中というのは非 常に目に見えにくいものがございます。そうしますと、やはり患者さんはものが入って しまうとそれで終わりというような形になりまして、それが逆に患者さんのケアを放置 する結果になってしまったりもするわけで、それを具体的に実際に患者さんの目で見て いただく、それで私どもと一緒にどう進んでいくかを、一緒に参加していただいて歩ん でいただくことによって、今までのように患者さんが、痛ければ行く、かめなくなった ら行く、こういう状況がかなり改善されてくるだろうというふうに私は考えております 。そういう状況が改善されてくるということは、要は大きな状況になって歯を抜かなく てはいけない、そこに入れ歯を入れなくてはいけないという、そういう状況の前に、未 然に小さな状況で医療をあてることができまして、そうしますとトータルなコスト的に はかなりダウンするのではないかなあというふうに個人的には思っております。  大きな2番目の、インセンティブのことでございますが、実際に今、歯科は過剰な部 分が非常に多くございます。ですから患者さんに対して、先生がどうアピールするか、 あるいは患者さんと一緒になってどのような医療を展開するかということが多分、私ど も歯科の業界では捉えられているんだろうと思います。その中で、やはりIT化をひとつ 、「私どもの歯科医院の特徴は、こういう形で患者さんご自身のお口の中を一緒に考え ながらやっています」というような形でなさっている先生もいらっしゃいます。ただ、 それがすべてかと申しますと、やはり実際にIT化で時間が短縮できるものがあれば短縮 して、やはり患者さんと接したい。と申しますのは、歯科の場合には、患者さんのお話 をお聞きする時間よりも、患者さんにお口を開いていただいて削っている時間のほうが どうしても長くなってしまいます。ただ、やはり、私は大学病院におりますので、街の お医者様の治療がうまくいかなくて、あるいは人間的にうまく先生と合わなくていらっ しゃるような患者さんもいらっしゃいます。ですからそういう場合に、やはりいちばん 大事なことはお話をする時間が、先生方は忙しくてとれない、そういう部分があるかな あ、と。すべてではござませんが、そういう部分も多少あるような気がしております。 そうしますと、その部分でもし、患者さんに時間を費やすことができれば、より充実し た医療に向かっていくのではないか、と。それを考えてIT化をなさっている先生も現実 におられます。ですから、私は大学のほうから来ておりますので、申し訳ありませんが 、歯科医師会がどのようなインセンティブをとって進めている状況なのかを細かくまで は存じ上げておりませんが、やはり私のまわりの先生方から、あるいは大学に身を置い ていろいろな情報を集めた中では、やはりひとつは患者さんに対するアピールとして使 おうと考えておられる先生、それとIT化によって省力化することによって、患者さんに 費やす時間を増やそうと考えられている先生、そのようにいろいろいらっしゃるかと思 います。  それと3つ目。IT化が歯科において、どのような形でというのは、現実に私もそのイ メージというものが非常にわきにくい部分があります。現実に私どもが、今、大学でも やっていて、また、街のお医者様もやっているところはやはりインフォームドコンセン トの部分に非常に力を入れております。やはりどうしても歯科というのは審美的な部分 もありますので、同じものをしても患者さんによって満足度というものが非常に違って きます。患者さんの満足度を得るために、やはり予後の雰囲気まで見ていただく、そう いう中で、ITが非常に使われる。それは今はマルチメディアを主体とした部分ですので 、大学におります中で考えますと、やはりデータベースの蓄積というのがIT化の最大の メリットになるということは感じております。それがあることによって、やはり日常の 診療をなさる先生方に的確な、適切な情報を、私ども大学等でデータベース化したもの を提供できるようになりたいというふうには思っております。  歯科というのはどうしても手作業の部分がありますので、IT化がどこまで必要視され ているのかというのは、なかなか、一概にはお答えしにくい部分があるので、ご質問の 答えになったかどうかわかりませんが、今のように私は考えております。 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは、またあとで時間があればご 質問をお受けすることにして、次へ移りたいと思います。坂本委員のほうから、看護関 係のところをよろしくお願いいたします。 【坂本委員】 私は医療情報の専門家でもなくて、たまたまNTT関東病院の看護管理者と して働いてきたわけですが、NTT病院はオーダリングシステムまでは入っておりまして、 新しい建物にするというときに、一気に電子カルテということで導入しようとしたわけ です。それで、電子カルテとしていくには看護部門はどうするかという話が出まして、 じゃあ、看護関係も電子診療録の一部としてやろうということで、まず、動きはじめま した。 看護関係でつくりはじめましたときに、いちばん私自身の課題としては、今ま では紙ベースで動いておりましたものを、電子診療録の一部にするということにおいて 、はたと困ったことがあります。その1点は、まずは看護が、標準化されていないとい うことです。それから2つ目は、院内で他職種と共有化したり、それから仕事の役割を 分担しあうということの話し合いが病院の中ではローカル的なものはいっぱいありまし たけれども、公にきちんと約束したものが文章であるかというとないに等しいような状 況でありました。それからもう1点は、やはり現在、医療事故のことがいろいろ言われ ていますので、できるだけそういうものを防ぐ方向のものがつくれないかということが ひとつ、課題でもありました。それからもう1点は、当院の総合医療情報システムとい うのは、院内でクローズされております。そうしますと、もう、現実に訪問看護ステー ションなり他病院なりに患者さんを送る状況が生じておりますので、どのようにしてそ ういう方たちと連携をとるかというと、やはり紙ベースになるだろうということが残さ れるということが課題でありました。ということから、末端のことにまでなりますけれ ども、12月4日にオープンしましたので、そのプロセスも踏まえて聞いていただきたい と思います(パワーポイント:「電子カルテを医療の基盤にするために(看護部門の立 場から)」)。  まず、総合医療情報システムの開始は去年の12月です。それから当院はクリティカル パスを紙ベースでつくって実施しておりましたので、クリティカルパスも電子化の中に 入れないと意味がないのではないかということで、追加予算をもらいまして、基本的な ものができあがった状態のうえにクリティカルパスをつくりはじめたというのが実際で す。2001年の4月にできあがっております(パワーポイント:「関東病院の電子カルテ 等」)。  看護部門のほうに視点を当てさせていただきますが、看護の標準化とそれから、でき るだけ部門間の共有化をしようということです。同じことを患者さんに聞いたり、それ から伝票で複写にしていたものを切って渡したりするようなことが、できるだけないよ うにしよう、と。スタッフが、第1番目に患者さんに出会ったときに得た情報は、全部 、他の方たちも同じように転送されて、情報として得られるようにしようということが ありました。あとは、院外へのセキュリティの問題と、院内でのセキュリティの問題が 、ありました。 現在もまだそれは抱えております。あとは、理想としては患者さん自身がどれだけ電子 化したことにおいて参加できるかということも課題としてありました(パワーポイント :「電子カルテを医療の基盤にするために」)。  標準化しなければどうしようもないということが分かってきました。最初は医療情報 の人たちがなんとかしてくれるのかと思っていましたら、箱だけはつくるけれども中身 は全然つくらないということが私自身もわかってきまして、そこで、看護と言われてい るものを標準化しなければいけないということでプロジェクトを組みました。ナースの 中でもそういうことに優れている者、秀でている者を専任にして統率をとっていかなけ れば、バラバラになるだろうということで組織化しました(パワーポイント:「1.期 間・組織」)。  結果としましては、看護の標準化という名前で呼んでおりますが、449の疾患に対して 、看護界では看護の標準看護計画という呼び方をしていますが、449セットの看護計画を つくりました。それから、それだけでは間に合わないものについて、どのようなケアを 行うか(看護介入)、9,907作成しました。それから、介入後どのような結果になるかと いうことを197つくって、今、運用しております(パワーポイント:「2.看護の標準化 」)。  それから、標準看護セットというものは、では、どのようにするのかということにな りますが、1つ1つの疾患で、ただただ名前がついたものを疾患としてつくっていくと いう考え方もありましたが、できれば系統的に似通ったものもあるだろうから、系統的 なものから入っていこう、と。たとえば母性なら母性、呼吸器系統、循環器系統という ような系統があります。手術前と手術後、それから、やや回復期状態になったときには 違うのではないかということで、そういう区分けもしております。それからさらに思春 期とか老年期とか終末期等で、共通するものがあるのではないかということで、このよ うなくくりもしております。それから単に検査だけ、治療だけ、というようなことも視 点に入れてつくりました(パワーポイント:「3.標準看護セット 449セット」)。  恐らく、今の仕事をしながらつくっていけるかといったら、なかなかそれは難しかっ たのではないかと思います。当院は幸いといいますか、新病院のときに、オープンする ためのナースが若干、余分にいましたので、つくりあげられたのではないでしょうか。 (パワーポイント:担当者がパソコンに向かっている写真)。  それから目的は、電子化や情報システムの構築時にはだいたい出てくることですが、 やはり明確にあげなくてはいけないということです。情報の共同利用、それから看護に おいてはやはりデータを残していくということを目的にしました。 それから効率的で安全な看護の提供。この目的を3本柱にしました。(パワーポイント :「看護部門における新医療情報システムの目的」)。  それから、個人情報の医療チームにおける共有化としましては、院内で分散して重複 していた情報を、現状を洗い出し、分類し、整理して、そして患者さん自身のフロー、 それから職員のフローを洗い出しながら、どの部分を誰が担うかということを決めてい きました。これはなかなかたいへんな作業でした。どの人の仕事だということを結構、 討論しながら決めていきました。最終的には決めないで走ったものも若干、残りました が、だいたい8割ぐらいは標準化できました。それから、医療チームの誰もがどこから でもアクセス可能というふうにしましたけれども、これは共同利用の基本になりますが 、この中では大きくは5段階のレベルでガードをかけています。病院の中に働くすべて の人たちが全員、介入・カルテが開けるようにしておりません。それから、患者さんに 理解されやすい情報提供ということで、共通理解してルール化された基準と、重複した 質問をしないようにし、、できるだけ、当院にかかった患者さんについては継続的に利 用していけるような方法をつくろうということでやりました(パワーポイント:「1. 情報の共同利用」)。  それから蓄積データは実践上、これはもうあたりまえで、質の維持、向上に使えるよ うにしました。それから次に、これが当院のオリジナルといいますか、計画したものを 実践し、それから評価するという、このセットを標準化するということを、ひとつ新た につくりました。それを標準化で、7割ぐらいがいけるだろうということを標準化して おきますと、そこからはずれる状況の患者さんについては、予備を持っておりまして、 削除したり追加したりしていくということで、ナースは効果的に今、使っております。 それから研究とか業務改善の利用ということです(パワーポイント:「2.蓄積データ の利用による看護の質の向上」)。  転記ミス防止ということでは、今まで何回も業務改善で転記をしないようにしようと いうことを言っておりましたけれども、これについて電子化では大幅に改善できました 。それから看護情報伝達の迅速化ということにおきましても、これは大幅にできます。 端末があるところでは誰が開いても患者さん自身にお答えできるという形です。今まで は、最初にかかった科に電話をして、「今、こういう患者さんが質問されているんです が……」ということを聞いて、どういう患者さんかということを説明して、それから情 報を得て、待たせてあった患者さんにお答えするということだったのですが、患者さん のそばのナースが開けば、どういう状況で診察を受けたかということも迅速にわかって 、すぐにお答えできるということです。今現在、これも効率的です。患者さんには喜ば れています。それから看護実施記録の明確化ということでは、患者さんの反応等の記録 をつくって、実施責任については、ナースがケアをしたら必ず責任を明らかにするため にサインをするんだということで指導していますが、何回言ってもなかなかサインしな かったり、誰が行ったかわからない、それからチームで仕事をしているとどうしても責 任をとっているようでとっていないということがありましたけれど、電子化によってそ れが明確になりました(パワーポイント:「3.効率的・安全な看護の提供」)。  次に特徴としましては、完全なペーパーレスというふうに表現しておりますが、これ は完全ではありません。「ほぼ完全」というふうに入れさせていただきます。まだまだ 、印鑑が必要なこと、患者さんの署名が必要なことについては残しております。保存で すが、ほぼ完璧に、もう、ペーパーレスで保存しております。フルオーダリングです。 それから診療録の記載はSOAPということで、全職員がSOAP記録を採用しております。そ れからテンプレートを活用して徹底的な入力支援とありますが、これはテンプレートを つくるということによって結果として支援ができるということで、各科、それぞれの部 門がテンプレートをつくりました。それから大々的な看護計画機能の導入ということで 、これが恐らく特徴ではないかと思います。それから、クリティカルパスの導入という ことで、クリティカルパスを電子化に伴って効率的にうまく使えるかということを一応 、試行ということで紙ベースで動きはじめながら、最終的には電子化したということで す(パワーポイント:「特徴」)。  これは総合医療情報システムの概要ですが、関東病院におきましては30余りのベンダ ーさんが入りまして、こういう形でネットワーク化をしました。この中で、看護部門に おきましては、現在、看護支援システムという名前で売られているものがあるわけです が、当院におきましては看護支援という言葉をはずしまして、患者さんの基盤になるも のだというふうに捉えております。そこで、入院患者ケアシステムという名称にしまし た。患者さんの全体像を把握するものとして捉えております(パワーポイント:「NTT関 東病院総合医療システム概要」)。  病棟のシステムのイメージですが、この部分に入院患者ケアシステムという端末があ るわけですが、患者さんが入院されますと、ナースコールシステム、それから院内の1 人1人のナースが持っているPHC――パーソナルホスピタルコミュニケーションという名 前をつけておりますが――これも連動しまして、さらに、病室表示に転送されるという 形です。これは今まで、ナースコールが鳴ったときにナースがすべてナースステーショ ンに戻って、患者さんからのことをお聞きするということでしたけれども、このPHCを持 つことによって、受け持ちの1患者から1ナースに転送されるということで、ナースステ ーションに帰らなくてもよくなり、便利です。それから、端末を持ち歩くナースという のも、時々、雑誌等で見かけますし、そういうものを採り入れている病院もありますが 、当院はそうはしておりません。端末はベッドのそばに全部、端子はつくってあります が、ワークパッドというバイタル入力、観察項目を入力できるものをナースが持ち歩い ております。便利なようですけれども、なかなか慣れないと、使い切れない状況もあり ます。それから、カンファレンス等も、あとで写真があればお見せしますけれども、こ のように全部、電子カルテを画面に表示しまして、カンファレンス等を行っております 。またICUは、ICU別個のシステムを入れまして、全体的な患者さん情報だけは全体的に ネットワークするという形にしております(パワーポイント:「病棟システムイメージ 」)。  入院患者ケアシステムは、このような形でつくっておりまして、患者さんのデータベ ースをとりまして、それから看護診断というのはちょっとわかりづらいというような評 判もありますけれども、すごくロジックにできておりますので、何例かの看護診断を採 り入れまして、それからどのような成果を出すために看護介入をするかということを設 定しまして、そこを選んで、看護オーダーとして転送して、それから患者さんの温度表 の下の部分というふうにイメージしていただければいいんですが、それをフローの形に しまして、そこでドクターやナース、それから薬剤師さん等が共有して、患者さんの状 態を見ていくというふうにしております。その温度表の下部分は、患者さんの経過とい うものが出ますけれども、それ以外にいろんなことが起こったことに対しましては叙述 記録ということで、SOAPでナースやドクター、それからコメディカルが記録して共有し ていくという形にしております。クリティカルパスはこの部分に入ってくると思います (パワーポイント:「入院患者ケアシステム(看護記録)」)。  (パワーポイント:「入院患者ケアシステム関連図」)。  これは、多くの電子カルテと同じですが、データベースはこのようになっております (パワーポイント:「データベース」)。  当院の特徴としましては、ここが少し違うのですが、これは、たとえばここに書いて ある部分が最初は全部ないというふうに捉えていただければと思います。ある感染が起 こりそうだということをクリックしますと、結果として感染がないように、損傷がない か、免疫状態はどうかというふうな結果が出まして、どのようなことをその患者さんに 行うのかということが表示されます。そしてそれをナースが患者状況と比較し、判断し て選びます。どのことを何日までにやっていって、具体的にケアをしていくのかという ふうにできます。ここが特徴ではないかと思います(パワーポイント:「看護計画」) 。  それから、ドクターと共有する項目につきましては、観察する内容を全部、つくりま した。たとえばこれは母性ですが、母性を選びますとこれだけのものが小分類として出 てきます。それからその中で妊産婦ということを選びますと、妊産婦の中では、項目と してはこれだけのものが標準的に観察するのだということが出てきます。(パワーポイ ント:「ケアフロー項目設定画面」)。  そうして温度表の下に、どのような観察をしていくのかということが項目としてあが りまして、それを受け持ちのナースが、いつ、どの時期に観察するのかというふうに計 画を立てていきます(パワーポイント:「看護オーダー」)。  全体的に帳票として見たいときは、このような画面で打ち出しますと、どのような状 態かということを書面のように見ることができます(パワーポイント:「継続中の看護 (帳票)」)。  先ほどお話ししました、フローで見ていくというのはこういうことです。  これが温度表でして、そのあとに、これをスクロールしますと点滴、介助すること、 それから観察することが、ずっと出てきます。ドクターにおいては主に検査、それから 検査結果が返ってくると、このようなところに表示されまして、それをドクターがクリ ックすると検査結果を見られるということになっております。(パワーポイント:「ケ アフロー初期表示「全体表示」」)。  これは、バイタルサインの入力の画面です(パワーポイント:「バイタルサイン入力 画面」)。  ただただ観察して「ある」「なし」だけでは困りますので、どのような状態かという ことも全部、叙述でコメントできるようになっております。看護側からの経過記録、経 過状況、患者さんがどういう状態になっているかという経過です(パワーポイント:「 観察項目結果入力」)。  観察が、終了しましたら、このように「終了」というふうに出てきます。ドクターも これを診ますので、どのような状態になっているかということがドクターも把握できま す(パワーポイント:「ケアフロー「看護側の経過記録」」)。  これがSOAP記録でありまして、これは助産婦が記録した状況です。この次にドクター が記録しますと、「ドクター○○」というふうに出まして、それをクリックしますと、 ドクターがどういうことを書かれているかということがわかってきます。それから一応 、どういう形で記録しようかということも決めるほうがいいのか決めないほうがいいの かということで討論しましたけれども、どちらでもいいだろう、と。でも、一応、枠組 みはつくっておこうということで、枠組みもつくってあります。SOAPで書きたくないと いう方がいらしたら、フリーでも良いということにしております。そこにフリーに、ラ ンダムに書いていっていいということでつくっております(パワーポイント:「診療記 録(SOAP)」)。  クリティカルパスと電子化ということですが、クリティカルパスは質的評価委員会と いうものがありまして、そこで統制をとっております。その質的評価委員会でOKをもら わなければ登録してはいけないことになっております(パワーポイント:「クリティカ ルパスと電子化」)。  それから、その登録のOKを誰が出すのかということにおきましては、医師とナースと コメディカルの3者がOKを出すということに決めております。クリティカルパスの仕様 は誰でもがわかるようなことにしよう、と。それから看護診断という言葉がよくありま すけれども、これはクリティカルパスの中には用いないように決めております。作成の ガイドラインもつくっております。(パワーポイント:「CP作成のガイドライン」)。  クリティカルパスの画面ですが、この中で責任の問題がありまして、クリティカルパ スはドクターが判断して、これをクリックして使っていくという意思決定をします。ド クターのオーダーで使いはじめます。それから日々の指示におきましては、日々にドク ターがその確認をしてOKを出すということにしております。リスクの問題がありますの で、そういうところは慎重にしています。それから、何か検査を追加したり処置を追加 したりしたときには、ここに「V」という字がバリアンスということであがっておりま す。それから、ここではスクロールできませんが、アウトカムというふうに設定してお ります。「生命の危機」ということがありまして、それをクリックしますと医師部門、 看護部門のアウトカム指標が表現されます。1つの項目に対して5つぐらいの指標を見 て、最終的にその患者さんについてゴールが達成されたかどうかということを判断しま す。そちらのほうにアウトカムを達成したかどうかという判断を入れていくというふう になっております(パワーポイント:「クリティカルパス画面」)。  それから、電子化とセキュリティーの問題ですが、あとでお見せしますが当院は指紋 認証で入っております。誰かの指紋を使って電子カルテに侵入していくことは不可能で す。しかし、ドクターが指紋認証したことで最終的にクローズしないで、どこかに行っ たときに誰かがオーダーを出すということは可能です。そういうことを含めまして、徹 底したセキュリティー、それからプライバシー保護ということについては、パーフェク トかどうかということについてはまだまだ課題であると思っております。しかし、看護 部長としましては、ナースのほうには医療者のモラルということで啓発をしております 。それから侵入した者は全部、医療情報部で把握できますので、時々はそれを開示して 、どういうことで入力したのかを問うということを、当院では決めております(パワー ポイント:「電子化とセキュリティー」)。  これが指紋認証で、指紋は両指で登録しております。手荒れがひどいときはなかなか 認証されなくて、当初は、こんなものは役に立たないといって、すごく文句を言われま した。引っ越し当時は結構忙しくて、なかなか指紋認証ができませんでしたけれども、 最近は、すぐ反応します(パワーポイント:指紋認証の写真(2点))。  電子カルテの条件というのは、厚生労働省が出されている真正性、保存性ということ においては絶えずフィードバックしながら評価していかなくてはいけないというふうに 思っております(パワーポイント:「電子カルテの条件」)。  最後ですが、やはり看護部門におきましては、標準化というものをどのように捉えて いくかということが、まず大きな課題であるだろうというふうに思います。それぞれの 病院が標準化ということでつくっておりますけれども、これは単なる自分たちだけの標 準化でありまして、どのように連携していくかということが課題だと思っております。 それから、電子化はやはりあくまでも道具だろうと思います。そうなりますとリスクの 関連等に関しまして、やはり道具としてどのように使いこなすかという、運用面の問題 がついてきます。外の病院との連携、それからステーションとの連携等が残っておりま す。データ活用におきましては、どのように活用するかということが今後の課題です( パワーポイント:「最後に」)。  少し長くなりましたが、以上でございます。 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは、ただ今のお話に対しまして 、何かご質問あるいはコメントがございましたら、お願いいたします。 【井上委員】 ちょっときつい質問かもしれませんけれども、導入前後でどう変わった かということをお聞きしたいと思うんですが、インシデントレポートの数は何%減りま したか。2番目に、感染症のことをおっしゃっていましたが、術後の感染率は何%減り ましたか。それから、在院日数はどれぐらい減少しましたか。1人あたりの入院医療費 はどれぐらい変わりましたか。もし、こういうデータが出ていましたら、お尋ねしたい と思います。 【坂本委員】 電子カルテに関係しているインシデントというのは、今のところありま せん。しかしインシデントにおきましては、当院の概念が、患者さんに何もなかったけ れどもヒヤリハットしたようなものを出すということを継承しておりますので、それに ついては恐らく、電子カルテとは関係なくよく出すようになっています。今のところは まだ少ないかなあと思っていますけれども、年間300前後のヒヤリとしたことのインシデ ントがあるのではないでしょうか。まだまだ、これは看護部門だけですので、コメディ カル、医師部門からは出る回数が少ないので、今、出すようにリスク委員長から呼びか けています。そういう状態ですので、恐らく電子カルテとの関連は不明です。  それから感染ですが、感染におきましても、サーベイナンスをやっておりまして、い ろんな対策を感染対策委員会でとっておりますので、当院の感染率は若干ですが減少傾 向にあります。これは恐らく、病院ではどうしても起こる感染というものに対して、ベ ンチマークがありませんので、それを今、当院が事務局になってつくろうというふうに 動いておりまして、ネットワークをつくっておりますので、そこからいきますと、CDCで 感染対策のITCのメンバーが研修を受けた中では、聞いたかぎりでは恐らく一般的な感染 率からすると高くはないという評価をいただいてきております。それから在院日数にお きましては、減っておりません。だいたい16日前後を移動しております。 【井上委員】 なぜ、そういうことをお聞きしたのかというと、ITはすごくお金がかか ります。ですから、そのコストパフォーマンスという話がつねに出るわけです。だから 、お金を投資するためにこれだけの効果があるんだということをださないと納得しない だろうと思うんですね。安全性がどれぐらい向上したか、医療費がどれぐらい安くなっ たか、あるいは医療の質がどれぐらい良くなったかということを出す仕掛けをつくって おく必要があるのではないかということで、少し厳しい質問をしてしまってすみません でした。 【坂本委員】恐らく当院では、NTTですので電子化におきましてはたくさんのお金を使っ ていると思います。じゃあ、今、他の病院から見学に見えているんですけれど、いくら ぐらいですということはなかなか言わないようにしています。言ってしまいますと、と てもではないけれどやれないというふうに言われるといいますか、NTTだからできるんだ と言われて終わりですので、私たち病院で働いている者が、「ああ、これはすごい」と いうふうに思ったのは、カルテの搬送がなくなったために、カルテ搬送がいらなくなり ました。 あの人たちが全部いらなくなる」ということが電子化での効率化がわかった ということのひとつです。 それから看護におきましては、恐らく人件費等の絡みで、 じゃあ人件費が減ったかというと、そういうことにはならないと思いますけれども、仕 事が明確になることによって、看護職ではない仕事も明確になったことによって、アウ トソーシング的なものを導入できるようになってきました。それから、たとえば看護婦 が8時間のうちに、1時間半、2時間ぐらい看護記録を書いているんじゃないかという ものが、どのように変化したのかということですが、看護記録においては、電子化する ことによって看護記録の内容を減らすということはありません。ただ、チェックしたり クリックすることによって記録ということは減少していると思います。――今のところ はまだ調査はしていませんが――看護記録の内容は減っておりませんが、周辺業務は大 幅に減っております。レントゲンを持って走らなくていい、それから回診のときにいろ んな書類を集めなくていいということは、もう、何もいらないわけです。そういうこと では減っております。ただ、それを次に、コストパフォーマンス的にどういうふうにな ったかということは、これからの調査であるだろうというふうに思っております。  【石川委員】 素人的な質問で恐縮なんですが、患者さんたちの満足度といいますか、 何か変化はありましたでしょうか。あるいは病院の雰囲気として、看護を受けていて何 かの違いを感じるようなことなのか。肯定的な方向、あるいは何かが失われたというよ うな方向、両方があるかと思うんですけれど、何かそういったことというのはあるので しょうか。看護というのはなかなか、IT化と馴染まない側面もあったりするような気が しますし、これは中立的な意味でとりあえず言うんですが、ある意味で看護の合理化と いうことをもたらすことになるかなあという気がするんですが、言葉にできなかったり 分類できなかったりしている、しかし非常に重要な機能を果たしている側面みたいなも のがあると思うんです。先ほど、アウトソーシングとおっしゃったんですが、自覚され ているものはアウトソーシングされることで補完されるかもしれないんですけれど、形 にできないものが消えていったりするという心配はないかどうかということについて、 もし、何かございましたら。 【坂本委員】 私自身が15〜16台の端末をナースステーションに置きまして、看護婦が それに一斉に入力するという状況が、12月4日から起こったわけです。それに関して、 いちばん危惧していたのは、患者さんをほったらかしにして端末に向かってしまうナー スばかりになるのではないかということが、やはりものすごく気になりました。これを 使っていくとよくわかると思いますけれど、やはり面白くなってクリックしていくとい う状況が起こるわけで、やってもいないことをクリックしていく状況が、ケアと分離す るのではないか、と。直接のケアと本当に分離するのではないかということが、すごく 危惧されました。それから患者さん自身からの投書にも、最初は「端末にばかり向かっ て私たちのことをしてくれない」という状況がありまして、本当にどうなるのかという ことを心配しておりましたけれども、今はもうほとんどその心配はしておりません。と いうのは、看護というのはほとんど変わっていないというふうに私は思っております。 情報の得方がかわりました。最近はほとんどそういう投書もなくなりました。最初は慣 れておりませんし、先生方がかわいそうだという投書もありました。そういうことがあ りましたけれども、現在、見回っている状況では、端末ばかり向かっているということ ではなくて、変わらないといいますか、直接に接することに手を抜くということありま せん。ただ、ひとつは、やはり周辺業務が整理されたことによって、看護職の業務は少 なくなりました。そうしますと、やはり患者さんのところに行くという状況が起こって いると思います。私としては看護関係の電子化におきましては、どちらかといえばいい ほうに捉えております。  【石川委員】 ありがとうございました。 【大山委員】 電子カルテの話をはじめとして、情報システムの導入というと、だいた い高いという話が一般的に出てくるんですけれど、ご案内のとおり、ちょっと別の世界 かもしれませんが、今、電子政府関係で地方自治体をはじめ様々なところが調達をかけ ていて、何が問題になっているかというと、法外な安値になっているという実態がある わけです。今日も新聞に750円と出ていましたが、こういう状況というのは医療とどこが 本質的に違うのかというのが、ちょっと私、まだよくわからなくて、要するに電子政府 関係のほうが、結局は最初に導入するときの費用と、それからそれを利用していくとき にかかるメンテの費用といいますか、利用期間のトータルで、本来、コストというもの が出ると思うんです。というのは情報システムというのはあくまでも道具ですから、そ の道具をある目的のために――その目的はそれぞれの分野で違いますが――その目的を 達するために必要なツールとして導入するわけですから、そのツールを使うのにかかる 費用というのは、本来の目的から見て見合っているか見合っていないかという考え方を すべきだと思うんです。その意味で、いつも皆さん方がよく聞かれる話で高いという話 は、導入費用が高いのか、それともランニングコストが高いのかというところがまず1 点。これはちょっと、NTTの関係なので違うかもしれませんが、逆に言うと先ほど、費用 をあまりちゃんと言えないというお話がありましたが、これは導入なのか、あるいはあ とのメンテなのか、ここのところを教えていただければと思います。それから、もうひ とつはランニングコストに関して、ランニングコストというのはどうしても、ある一定 の費用はかかるのはいたしかたない面だと思いますので、そこに対して業務の効率化と の、あるいは他の、サービスの質の向上等々、それが、評価軸は難しいにしてもバラン スするかどうかを、本来、考えるものだと思うんです。それに対して最初の導入のとこ ろが、もし高いとすると、これも私が知っているかぎりだと、時々出る話でありますが 、各病院ごとにみんな違うソフトウェアを欲しがる、それがさらに値段を上げていると いうふうにも聞くことがあるんですが、このへんについて、もし、実態あるいは経験上 、ご存じだったら教えていただければと思うのですけれど。 【坂本委員】 そうだと思います。私が関東病院に就職したときに、NTTデータがオーダ リングシステムを構築しましたけれども、やはり病院のスタッフの言い分を聞いている と、どんどん、ものすごいお金がかかってきます。今回、IBMさんに入っていただいたん ですそれで当院は簡単に言ってIBMさんの既存のものに加えてバージョンアップしたとい うことですので、今回はそんなにはお金はかからなかったんですが、やはりクリティカ ルパス等の構築をしておりますし、あとは看護関係の構築を新しく開発しましたので、 それについてはやはりコストがかかっていると思います。これから安くなるんじゃない でしょうか。 【大山委員】 ランニングコストはいかがですか。 【坂本委員】ランニングコストも、ちょっとここでは公表できませんけれど、やはり、 かかることはかかります。私の場合はものすごく素人なんですけれど、簡単に、人件費 等を考えていきますと、人件費というのは本当にかかっていくんですね。だから、例え ばこれが10億としたら、メンテナンス等を入れて15億ぐらいになったとして、コストと しては人件費のほうが高いです。 【井上委員】 今のこととも関係するんですけれども、この14年度の情報化関連概算 要求で出していただいて、たいへんありがたいことだと思います。その中で、情報化に よる医療の質の向上と効率化という中の「ア.地域医療機関連携のための電子カルテに よる診療情報共有化モデル事業」というものがございまして、せっかくですからぜひ、 これで成果を出さなければいけないと思うんですけれど、これは技術開発というところ に重点を置くのか、それとも連携をやることによって医療の無駄がなくなるとか、ある いは質がよくなるとかといったようなことを検証することが主たる目的なのか、どちら なのか教えていただきたいのですが。 【遠藤室長】 どちらかといいますと、後者のほうでありまして、技術開発のほうは経 産省のいろんなモデル事業等がございますけれど、私どもはまさに今のお話で出ました ように、単なる経費だけではなくて、どのようにネットワークが構築できるのかという ことを検証したいというふうに考えております。 【開原座長】 まだいろいろとご質問等もあろうかとも思いますけれども、一応、今日 は6時半までということになっております。残された時間が5分ということになりまし たので、今日は看護のほうと歯科のほうからお話をうかがったということでございます が、一応、ここでお二方からのプレゼンテーションとディスカッションは終わりという ことにさせていただきます。どうも本当にありがとうございました。  それから、今後の進め方の問題でございますけれども、事務局のほうからご提案があ ると伺っておりますので、ご説明をお願いいたします。 【遠藤室長】 本検討会の目的でございますグランドデザインの最終報告につきまして は、かねてより年内のとりまとめをお願い申し上げている次第でございますが、この委 員会の冒頭でご説明申し上げましたように、たとえばe-Japanの改革工程表におきまして も、前倒しの指示が来ておりまして、とにかく早く出せというお叱りを受けているわけ でございます。また、たいへんご多忙の委員の方に、このような形で今後、何回も集ま っていただくということも、現実的にはかなり難しいというふうに考えておりますので 、今後は具体的な方策などを明確にするアクションプランを盛り込んだグランドデザイ ンにつきましては、事務局と各委員とで個別に検討させていただきまして、こうした形 で全委員の方にお集まりいただきます会合としては、11月初旬を目途に考えておりまし て、そのときに個別に詰めさせていただきましたものに基づいてつくりましたグランド デザインの最終報告原案をご提示させていただきたいと考えておりますが、いかがでご ざいましょうか。 【開原座長】 今、今後の進め方についてご提案をいただいたわけでありますが、次回 は11月ということにして、そうすると残るところ2カ月ないぐらいですが、その間に、 各委員と事務局のほうで、それぞれ皆様、お得意の問題がおありだと思いますので、そ の部分についての今後の詰めをやらせていただきたいというご提案でございます。いず れにしても、早く最終報告のところまで到達しなければいけないと思いますので、個々 の問題をやっていると、多分、終わらなくなってしまうおそれもあろうかと思いますの で、たいへんもっともなご提案ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。 このような進め方でよろしゅうございますでしょうか。  それでは、ただ今の事務局からの提案にご賛同いただいたということで、今後はその ように進めさせていただきたいと思います。結局、そうしますと個々の委員の先生方に 、事務局とともにご努力をいただかなければいけないということになりますが、私のほ うからも、ぜひ、よろしくお願いをいたしたいと存じます。  次回をいつにするかということでありますが、そうのんびりもしていられないと思い ますので多分、11月の初旬頃ということではないかと思いますが、今日ここで決めるに は、少し先すぎるような気もいたします。また、今後の作業の進行状況によっても、少 し日程がずれるということもあろうかと思いますので、今日のところは決めないで、だ いたい11月の初旬頃ということにしておいて、日程についてはまた調整させていただく ということにしたいと思いますが、そんなことでよろしゅうございますでしょうか。  とくにご発言がございませんようでしたら、これで本日の検討会を終わらせていただ きます。どうも、たいへんありがとうございました。 +---------------------------------+ | 照会先:医政局研究開発振興課 | |        医療技術情報推進室| | 担当 :武末、植田 | | 内線 :2589 | +---------------------------------+