01/06/21 第4回保健医療情報システム検討会議事録                  第4回            保健医療情報システム検討会議事録           平成13年6月21日(木)10:00〜12:00            厚生労働省別館共用第23会議室 【武末補佐】 定刻を過ぎておりますので、ただ今から保健医療情報システム検討会を 開催いたします。開催に先立ちまして、本日の委員の方の出欠について報告させていた だきます。井上委員、樋口委員が所用のため欠席でございます。  討議に入ります前に、まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。「保健医療 情報システム検討会 第4回議事次第」という紙以外に、右肩に「資料1」と書いてご ざいます、「第3回目までの各委員からの主な意見」という6ページの資料がございま す。次に「資料2」としまして「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン (第1次提言)(案)」という、11ページの資料がございます。次に、右肩に「参考資 料」と書いてございます「ITを利用した医療事故防止に関する文献」という2枚の参 考資料がございます。これ以外に、委員の先生のお手元には「第3回保健医療情報シス テム検討会議事録未定稿」という、25ページの資料をご用意しておりますけれども、す べてございますでしょうか。委員の先生方には、「第3回保健医療情報システム検討会 議事録未定稿」に関して何かございましたら、25日月曜日までに、事務局のほうまでご 連絡をいただきたいと思います。その後、ホームページへの掲載の手続きをとらせてい ただきます。  また、第2回の議事録を6日に、ホームページに掲載しておりまして、あわせて現 在、保健医療情報システムに関する意見の募集を行っております。その締切が今月の26 日までとなっておりますので、できるだけ早く、この第3回の議事録も掲載したいと思 いますので、どうかよろしくお願いいたします。集められましたご意見に関しまして は、最終的にとりまとめられた時点でまたご報告させていただきたいと考えておりま す。  それでは開原座長、議事進行のほうを、よろしくお願いいたします。 【開原座長】 それでは早速ですが、議事に入らせていただきます。今日は、資料の2 といたしまして第1次提言というものがございますので、これをご審議いただくという ことがいちばん大事なことだと思いますが、その前に資料1として、このあいだいただ いた意見をまとめてございますので、まず、それをご説明いただいたうえで、第1次提 言のほうのご審議をいただきたいと思います。それでは、まず、資料1についてご説明 をお願いいたします。 【谷口室長】 それでは、資料1でございます。これまでの検討会におきます各委員の ご意見をとりまとめたものでございます。前回、出しました資料に加えまして、第3回 目で新たにご発言いただいたものを書いてございます。下線部を引いてございますが、 新たに追加したものだけ簡単にご説明を申し上げます。  まず「1.グランドデザインの策定により目指すもの」という項目の中であります が、策定の意味というのは、プロセスと目標を定めることにより世の中に無駄といいま すか、手間がかかるのを省くことではないかというご意見。それから、平成6年の中間 報告の「4つの目標」というものがございましたけれども、この目標に示された視点と いうのは残すべきではないかというご意見。それから国民にとって、目標・道筋とも に、やはりわかりやすいものにすべきであるというご意見。それから前回は、「サービ スの質の向上」のために「合理的・効率的なサービス提供体制の構築」という書き方を いたしておりましたけれども、そうではなくて並列的なものであろうというご指摘。そ れから、医療には効率化できないところがたくさんあるので、そのあたりをちゃんと留 意すべきであるというご意見等がございました。  それから「2.保健医療における情報化の進展と現状」でございますが、電子カルテ についての概念の整理や用語の解説が必要ではないかというご指摘がありました。  「3.保健医療情報の活用が医療にもたらすもの」という項目の中では、電子カルテ で診療する際に、その診療のプロセスというものが支援されるということと、電子カル テ自身が経験の浅いドクターの診療をサポートするためのツールとして有意義であるこ とをもう少しアピールすべきではないかというご指摘。それから信頼できるデータの客 観的評価――また提供側の話ですが――こういったものを通して医療全体の精度、正確 性が高まるというご指摘がございました。それから医療機関情報などの提供による連携 の促進――これは提供側どうしの話であると思いますが――そういったものが考えられ るのではないかというご指摘。それからIT技術の進展により、たとえば事故が減少す るということは言えないのか、というふうなお尋ねといいますか、そういうご質問もご ざいました。ITに期待されるのは医療の品質管理と医療の透明性ではないかというご 指摘。それからITにより、医療を受ける場面が広がるので、そういった環境を整備す べきではないかというご意見がございました。それからe-COMMERCEについてもここで言 及しておくべきではないかというご意見もございました。  それから「4.保健医療分野の情報化における目標とその実現に向けての課題」のと ころでは、数値目標が必要ではないかという問題意識に対しまして、やはり数値目標と 簡単に言っても、それは難しいのではないかという意味で、少し、対立するようなご意 見もございました。  それから、その中での小さなくくりとしまして、「電子カルテの推進」という原題を 小さなテーマにしておりましたけれども、いきなり「電子カルテ」というのがいちばん 最初に出てくるのは問題ではないかというお話がございまして、広い意味での「医療情 報ネットワークの構築」というくくりにするような形にしております。その中ですけれ ども、5年後に電子カルテがどの程度普及しているかという推計というものが必要では ないかということ。それから電子カルテについては患者さんの医療へのアクセサビリ ティという視点から見ると、デジタル化ということとともに電子テキスト化するという ことが必要ではないかということ。それからインターネット病院・バーチャルホスピタ ルといったものが実現可能であるかどうかというご意見。それから情報のコンテンツと その提供体制の整備ということについても、もう少し言及すべきではないかというこ と。将来的に国民の何%がインターネットから保健医療分野の情報を得るようになるか というような推計というのも背景として必要ではないかというご指摘もございました。  それから「制度・運用」という小くくりの中では、医療関係者に対するIT教育とI T技術者の養成というものも書き込みが必要ではないかというご指摘。それから医療だ けではなく、保健・福祉など関連領域の情報化ということも積極的に検討すべきではな いかというご指摘。  それから「コスト問題」という小くくりのところでは、IT化に向けての費用負担に ついてやはり整理することが必要であるということ。それからIT化が質の向上や効率 化に寄与することが明確になれば、誰が実際に恩恵を受けるのかという視点が明らかに なって、費用負担問題も少しわかりやすくなるのではないかというご指摘もございまし た。それから診療報酬ということが以前、出ていましたけれども、診療報酬で誘導する という短絡的な考えというのはいかがなものかというご指摘もございました。それから メーカーサイドで何がコストダウンの障害になっているのかを整理することも必要では ないか、と。これはうちの局長のほうからの指摘ではございましたけれども、そういう 点がございました。  それからプライバシー関係のところでは、情報は誰のものかという議論は「所有」権 という考え方に基づくのではなく、情報に関わる権限の問題であり、たとえば情報を読 む権利、情報を書き込み・書き換える権利という枠組みの中で検討したほうがいいので はないかというご意見がございました。  それから「5.今後の推進方策」の中で、目標として5年先を想定することについて の、事務局の問いかけに対しまして、概ね5年先を想定することというのは、これで適 切ではなないかというお答えでございました。標準化やインフラ整備など基礎的な部分 は推進計画を立てて行政が取り組むべきであるというご指摘。それから推進モデル事業 的なものをやって、その結果を広く公開することが大切ではないかというご指摘。プラ イバシー保護のような問題は5年と言わず早く解決すべきであるというご指摘等もござ いました。  最後の役割分担のところですけれども、これは事務局の書き方が誤解を招きまして、 委員の意見ではなくてe-JAPAN計画から抜いたものであるといったご説明をさせていただ いたところでございますが、民間というのは産業界・医療界どちらのことを言うのかと いった疑問が呈されました。それから、個別課題ごとに関係者の役割分担をもう少し はっきりしておくべきではないかというご指摘もいただいたところでございます。  前回、新たに加わったところは以上のようなことかと存じます。 【開原座長】 どうもありがとうございました。このご意見はあとの資料2のほうに、 きちんと採り入れてありますが、しかし、いただいたご意見が間違って記録されている といけませんので、もし何かご発言の趣旨が違っているとか抜けているとか、そういう ことがあればどうぞ、ご指摘をいただければと思いますが、何かありますでしょうか。 よろしければ、この点はまたあとの資料2のほうを審議する中で、また振り返っていた だいても結構です。今日は資料2のほうに少し時間を使いたいと思いますので、早速で すけれども資料2のほうの審議に移らせていただきます。それでは資料2について議論 を進めたいと思いますが、これは第1次提言という題になっております。その、第1次 提言という意味も含めて、事務局のほうからこれをまとめた趣旨をご説明いただけます でしょうか。 【谷口室長】 その前に、大山先生が今、こちらのほうに移動中というご連絡が入りま した。もうすぐお着きになるということでございますので、ご了承いただきたいと思い ます。  それでは資料2につきましての性格と申しますか、事務局での考え方についてご説明 させていただきます。今回も資料2ということで、「グランドデザイン(第1次提 言)」とさせていただいてはおりますけれども、この資料2の作成とは別に、現在、事 務局レベルにおきまして、これまでの各委員のご指摘等を踏まえ、細かい課題別の推進 方策について、いわば個票のような形で、今、たたき台を作成しているところでござい ます。それらをまとめまして、本来的な、最終的なグランドデザインにしたいと考えて おりますけれども、基本的な考え方につきましては、これまでの討議で意見も概ね出さ れているというふうに理解されますので、来年度予算の考え方の整理ということもござ いまして、1次提言という形で国民の皆様に方向性を示したいというふうに考えており ます。なお、そういう形でございまして、本文の中にも若干、そのような趣旨のことは 書いてございますけれども、そのあたりをお含みいただきまして、お目通しをいただ き、ご議論をいただければというふうに考えております。よろしくお願いいたします。 【開原座長】 どうもありがとうございました。これは、第1次があるということは、 第2次があるというふうに考えてもいいわけですか。 【谷口室長】 第2次になるのか最終になるのか、そのあたりはわかりませんが……。 【開原座長】 いずれにしても最終報告書のようなものは――年度末か年内かよくわか りませんが――出るとして、まずさしあたって基本的な考え方だけでも先に示しておこ うという趣旨だと思います。したがいまして、今日はそういう目でこれを読んでいただ いて、ご審議をいただければと思います。それでは、これはもう、事務局のほうで文章 化してくださっておりますので、読んでいただいて、0、1、2というふうに書かれて いるようですので、6つに分けてご審議をいただくということで進めさせていただきた いと思います。それでは、まず「0.はじめに」というところからお願いします。 【谷口室長】 全体の構成でございますけれども、まず、「0.はじめに」ということ で、これは<グランドデザインの目指すもの>という章立てでございます。次に「1. 保健医療分野における情報化の理念と目的」。<何のために情報化を進めるのか>とい う副題をつけております。以下、「2.保健医療分野における情報化の現状<情報化は どのように進んでいるか>」「3.情報化によって変わる保健医療サービスの姿<情報 化を進めれば医療はどう変わるか>」「4.保健医療分野の情報化の目標と課題<情報 化を進めるために何をするか>」「5.今後の推進方策と関係者の役割<どのように進 めるか>」というふうに、大きく章立てをいたしております。  まず、「0.はじめに」というところでございます。 [以下、資料読み上げ] 「0.はじめに<グランドデザインの目指すもの> ○21世紀において日本はかつてない高齢社会を迎えているが、それに伴う疾病構造の変 化を踏まえ、今後の医療の姿として予防からリハビリ・在宅ケアまでを包含する、患者 中心の包括的・全人的な医療が求められている。 ○また、政府IT戦略本部が策定した「e-JAPAN重点計画」において、急速に進展する情 報化社会に対応するため、保健医療分野のIT化を推進するための戦略的グランドデザ インを2001年度早期に作成することとされている。 ○そのため、情報通信技術を活用した今後の望ましい医療の実現を目指して、保健医療 分野の情報化について、平成6年の保健医療情報システム検討会中間報告(以後「中間 報告」と略す)以降のめざましい進展や社会状況の大きな変化を踏まえ、情報化推進方 策の見直しを行い、将来の方向性を示したグランドデザインを策定するものである。 ○今回のグランドデザインにおいては、平成14年から概ね5年間を見据えた保健医療 サービスにおける情報化計画を策定するが、保健医療サービスの「質の向上」と「効率 的なサービスの提供」を大きな目的とし、達成のための道筋と推進方策を国民にわかり やすく示すこととする。 ○本検討会においては様々な個別課題について議論を進めているところであるが、これ までの検討結果を集約し、基本的な考え方を第1次提言として示すものである。 ○今後、本第1次提案を骨子とし、本年度できる限り早い時期に最終報告を取りまとめ ることとする。」  以上でございます。 【開原座長】 いかがでしょうか。たいへんよく、趣旨がまとめられているように思い ますが、何かご意見はございますでしょうか。ここは前文にあたるところですので、も し何かあればまた戻っていただいても結構でございますが、実質的なところが次に控え ておりますので、次へ移らせていただきたいと思います。では、お願いいたします。 【谷口室長】 はい。 [以下、資料読み上げ] 「1.保健医療分野における情報化の理念と目的<何のために情報化を進めるのか> <理念> ○従来、患者の診療情報は医療従事者間ですらなかなか共有されず、院内でのチーム医 療や地域での医療機関連携が思うように進まなかった。さらに、患者にとっても、自分 自身の診療情報が不足しがちで情報の非対称性があると言われてきた。 ○また、へき地・離島においては最新の医学情報がなかなか入手できず、都市部と地方 の情報格差がそのまま住民が受ける医療サービス水準の格差の問題として指摘されてき た。 ○このように従来から指摘されている課題を克服する手段として、情報化は大いに期待 される手段である。これは一般に情報化が進展し、情報のネットワーク化が実現される ことにより、大量の最新情報がリアルタイムに遠くまで伝送、共有されることが可能と なるからである。 ○したがって、今後の望ましい保健医療サービスの提供を実現するためには、情報化を いかに進展させ、活用するかがその理念として明らかにされなければならない。 ○保健医療分野における情報化の理念は、平成7年の「保健医療福祉サービスの情報化 に関する懇談会報告書」および平成10年度改訂の「保健医療福祉分野における情報化実 施指針」において「情報の安全性の確保に留意しつつ、サービス利用者の立場から情報 処理・通信の技術を活用して情報の高度利用を図ること」であると述べられている。 ○この理念は今でも十分通用するものであり、今回のグランドデザインにおいてもこれ を踏襲することとする。 <目的> ○情報化の目的については「中間報告」の中で記載されている4点(注)を考え方の基 礎とすることが適切であるが、大きな2つの柱として「保健医療サービスの質の向上」 と「資源の有効活用による合理的・効率的なサービス提供体制の構築」に集約できる。 (注) (1)保健医療サービスを効率的に提供すること (2)保健医療サービスの質を確保すること (3)保健医療サービスの公平と公正を保証すること (4)保健医療技術を進歩させること」  以上でございます。 【開原座長】 いかがでございましょうか。ここは理念のところですけれど。 【西島委員】 理念の最初の○の3行目ですが、「情報の非対称性」というのが、いつ も、間違った使い方をされていると思うのです。つまり、診療情報の開示ということ と、それと情報の非対称性というのが、どうも、イコールなものとして議論されていま すけれども、これは全然違った意味で使われているわけでして、少なくとも医療に関し ては、情報の非対称性というのはいつまでたっても埋まらないはずなのです。ですか ら、この言葉はやはり、ここで使うべきではないと思います。 【開原座長】 いかがでございましょうか。これはどちらを使われているのでしょう か。「自分自身の診療情報が不足しがちで」ということですから、これはそうすると、 診療情報の開示の話として情報の非対称性が使われている。 【西島委員】 ええ。診療情報開示の話なのです。ですから、それは非対称性とは言わ ないですよね。 【開原座長】 そうですね。確かに医学知識のほうで非対称性という言葉を使うことも ありますよね。 【西島委員】 ですから、それは絶対に埋まらないはずですから。 【開原座長】 なるほど、埋まらない……。そうすると、確かに「非対称性」という言 葉はよく使われることは事実なのですけれども、確かに人によっていろいろな解釈があ るし、また、ここはカルテの問題として「非対称性」を使っているのですが、一般的に は、医学知識のほうの「非対称性」というふうに使う場合のほうが多いような気もする ので、定義が定まらないような抽象的な言葉は避けましょうか。 【西島委員】 はい。これはちょっと、使い方がおかしいと思います。 【開原座長】 そうしますと、これはどういふうに直しましょうか。「患者にとって も、自分自身の診療情報が不足しがちで」……。 【西島委員】 ですから、この「情報の非対称性が」というのを消せばいいのです。 【開原座長】 そこを消して「不足しがちであると言われてきた」というふうにすれば いいということですね。 【西島委員】 はい。「不足しがちであると言われてきた」というのは、そういう言わ れ方はよくされていますから。まさに今、これを変えようとしているわけですから。 【開原座長】 それでは、今の西島委員のおっしゃるように、そこを削除するというこ とでよろしいですか。 [賛成多数] 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは他に何かございますでしょう か。その他のところは、これまでの考え方を踏襲しているというのがほとんどですか ら、その理念が大きく変わったということはないと思いますので、ここは一応よろしい ということにさせていただきまして、次へ進ませていただきます。では2番目のほうを お願いいたします。 【谷口室長】 それでは、2の現状の関係でございます。 [以下、資料読み上げ] 「2.保健医療分野における情報化の現状<情報ははどのように進んでいるか> ○平成6年中間報告以降の保健医療分野の情報化の進展にかかる技術動向とそれを取り 巻く状況の推移は大略以下のとおりである。 <情報処理における技術革新> (ネットワーク化) ○医療機関内の部門間での情報の分散処理、共通利用が可能となり、カルテの電子化 (いわゆる電子カルテ)、院内画像情報システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)などの導入が進んだが、最近ではインターネットの普及によ り、外部の医療機関との連携が可能となっている。また、へき地・離島などにおいても 通信衛星を利用することによりネットワーク化が可能となった。 ○これらのネットワークを利用して情報を交換する際のセキュリティ技術(PKI:Public Key Infrastructure)も整備されてきている。また、これらのネットワークを利用して ソフトウェアのネット直販、ASP(Application Service Provider)サービスが提供可能 となっている。 ○ただし、ネットワーク化に必要な互換性・標準化という問題についてはなお課題が残 されている。 (オープン化) ○マルチベンダ方式(製造者の異なるハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせた システム)による、データの共通利用、機能の分散処理が進行している。 (ダウンサイジング化(小型化)) ○ハードウェアの価格低下と高性能化がさらに進み、予算および目的別に対応した段階 的なシステム整備の環境が形成されつつある。 (マルチメディア化(文字、画像、音声の利用)) ○文字・画像・音声などを総合的に取り扱えるマルチメディアに大きな期待が寄せられ ているが、最近ではこれに対応するマルチメディア端末が出現している。 (カード化) ○ICカード、光カードなどのカード媒体の容量増加、低価格化が進む一方で、保健医 療情報のオンライン処理が可能な環境が整いつつある現状において、データキャリアと しての役割は二義的なものとなりつつある。 ○しかしながらICカードについては高いセキュリティ機能があり、ネットワークにア クセスする資格確認のための個人認証ツールとしての役割が期待できる。 (ソフトウェアの重視) ○実際の目的を達成する機能はソフトウェアであり、ハードウェアはそのための道具で あるという認識が広まり、最近では、ソリューション(顧客の経営課題をITと付加 サービスを通して解決するビジネス技法)重視へと移行している。 (シングルベンダからマルチベンダへ) ○各製造者が標準仕様に則ったシステムの開発を行い、同一の規約上でデータを共通利 用しようという動きを受けて、マルチベンダ方式のオープン分散型システムの開発・導 入が促進されている。 (高度情報通信インフラ(高度ネットワークシステム)) ○最近では、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、CATV (Communication Antenna Television)、通信衛星などのインフラが整備されつつある。 (携帯型複合情報端末(マルチメディア端末)、高性能パソコン) ○現在これに該当するモバイル端末としては、携帯用パソコン、PDA(Personal Data Assistant)、携帯電話端末、PHS端末などがあり、音声情報、文字情報、簡易画像伝送 に使用されている。 (高性能ワークステーション) ○マルチメディア環境を実現するために必要であるが、低価格化により、今後広く普及 する条件が整いつつある。 (オブジェクト指向プログラミング) ○最近では、オブジェクト指向プログラミングも指向され、ユースケース解析、モデリ ングが進んでいる。 (グループウェアシステム) ○施設間の業務管理などを共通化することを目的として業界標準を用いて構築された オープンシステムが普及しつつある。 (バーチャル・リアリティーシステム) ○3次元画像処理による、バーチャルオペ支援などが大学などを中心に実用化段階に入 りつつある。 <医療機関の情報化の現状> ○第3世代ともいえる保健医療情報システムの技術的環境が整備されてきたことを受け て、診療録の電子保存を認める通知が平成11年4月に出され、電子カルテが医療機関に 導入されはじめた。 ○電子カルテは院内および医療機関相互のネットワークを介して患者情報の共有化を促 進し、一患者一カルテを実現し、患者中心の医療の実践に寄与することから、その普及 に期待がかけられている。しかしながら院内限りの電子カルテシステムは普及段階に 入ったものの、地域医療連携のための医療機関相互のネットワーク構築という視点から はまだ普及レベルには達していない。 ○一方で、近年EBM(Evidence-Based Medicine)の必要性が認識され、我が国でも試行 的にEBMに基づくガイドラインなどが作成されつつある。 ○今後、これらの有用な医学情報をネットワークを介して電子カルテ上で参照できるよ うにするために、EBMに基づく最新医学情報データベースの構築などの環境整備が求めら れている。 ○レセプト電算処理システムについては、現状ではまだ262医療機関での稼働(13年1月 現在)であるが、医事業務の効率化にとって有用なツールであることから今後大規模病 院での導入が進むものと見込まれる。 ○ICカードについてはデータホルダーとしての役割は需要性を失いつつあるが、その セキュリティ機能の高さから、ネットワーク上の個人認証ツールとして電子カルテとの 組み合わせが検討されつつある。 ○情報通信技術を活用した遠隔医療システムについては、平成9年12月の規制緩和を進 める通知により、遠隔画像診断システムの普及が期待されたがそれほど進展はしていな い。しかし、従来のへき地・離島医療の支援というイメージから、専門分野における地 域医療機関相互支援のツールとして、また在宅医療への応用という面などでの検討が進 み、効率的な医療サービス提供の一形態として、認知されつつある。」  2については以上でございます。なお、先ほど申し忘れましたが、このグランドデザ インの1次提言全般について、中にちりばめられている専門用語ですとか、かなり難し い言葉がございますので、事務局として、今回は間に合いませんでしたけれども、用語 集といいますか注釈といいますか、そのへんの作業を進めておりまして、次回までには それをお示しさせていただきたいと考えております。以上でございます。 【開原座長】 ここは現状認識であるということだと思いますが、前半が技術的な意味 での現状認識で、後半が医療機関の情報化の現状についてというところであります。こ れについてはいろんな見方があろうかと思いますので、少し、ここは議論が必要かとい う感じがいたします。まず前半の、情報処理における技術革新という部分と、それから 後半の医療機関のほうとを分けてもいいのですが、どうぞ、ご自由にご発言いただけれ ばと思います。 【石川委員】 小さい項目で「オブジェクト指向プログラミング」という項目があるの ですが、プログラミングの手法について言及されているのですけれども、これが必要か どうかということです。 【開原座長】 必要かどうかというのは、少し細かすぎるのではないかという意味です か。 【石川委員】 細かいと同時に、もっと言えば不要なのではないか、と。 【開原座長】 なるほど。ある意味ではあたりまえのことかもしれませんね。 【石川委員】 そういうことです。 【開原座長】 ありがとうございました。 【藤本委員】 石川先生のご意見には賛成なのですが、技術革新のテーマをあげていく と、まだきりがなくて、他にもいっぱいあると思うのですけれども、なぜここに載せる かという観点が多分、必要だと思います。それとあと、やはり最初に医療機関の情報化 の現状からスタートして、それに役立った技術革新があればそれを列挙するという形の ほうがいいのではないか、と。いきなり技術がずらっと並びますと、なぜここに書かな ければいけないのかということで、一つひとつ悩むのではないかと思うのです。そうい う意味では、後半を先に議論したほうがやりやすいのではないかと思うのですけれど。 【開原座長】 後半を先にやりますか。 【藤本委員】 ええ。 【開原座長】 どうぞ、混ぜていただいて結構かと思いますけれど。 【藤本委員】 そうですか。それでは、ついでに1つだけ。これは言葉の定義なのです が、後半の2つ目、5ページの上でしょうか、「電子カルテシステムは普及段階に入っ たものの」とありまして、これは普及段階の定義の問題だと思うのですけれど、たとえ ば医事会計システムはとっくにもう、普及してしまっている。オーダーリングシステム は今、普及しつつあるというときに、電子カルテも普及段階だというと、何か同じぐら いに普及しているのかという印象を受けますが、まだそんな感じではなくて、われわれ はまだ開発が進んでいるところだと認識しているのですが、それを「普及段階に入っ た」というのは、ちょっと言いすぎかなあ、と。 【開原座長】 そうですね。ここはかなり、まだいろいろとご意見があろうかと思いま すので、どうぞご自由にご発言いただいて、ただ、そのご発言いただいたものがそのま ま採用されるかどうかというのは別として……。 【審議官】 普及段階でないとしたら、何段階と言えばよろしいでしょうか。使ってい るところもありますよね。 【藤本委員】 工業会で議論したのでは開発段階ということです。もちろん、開発とい うことは、実際の病院で動くということも含めてですけれど、まだ同じものがたくさん あちこちに入っている状態ではないということで、工業会では一応、開発段階という定 義をしたのですけれど。4つのステップがありまして、まず、創成期があって、研究が いろいろされている段階から、今は本当に開発段階に入っている。その次が離陸。実際 にあちこちの病院で使われるようになってくる。それから普及ということで、4つの段 階に分けたのですけれど、その2段階目ぐらいだろうと思っております。オーダーリン グシステムはもう、普及段階、最後の段階だろう、と。そういう具合に、一応、工業会 の中では議論したのですけれど。研究が終わったら全部が普及だと言えば、それは普及 段階とは言えるのですけれど。これは言葉の定義だと思いますけれど。 【西島委員】 私もそう思います。これはまさしく開発段階にあって、確かに「便利 だ、便利だ」という形で情報は出てくるわけですけれども、しかし、それはその人に とっての便利の価値であって、決してそれは、普及というところまで行っている便利さ ではないといふうに考えています。 【開原座長】 今度は、座長の立場としてではなくて、むしろ1人の委員として発言さ せていただきたいのですが、最近のオープンソース的なものというのは入れなくていい のでしょうか。たとえばLinuxの普及とか、そういうものはこの中のどこかに入っていま すでしょうか。オルカ(ORCA)というのはLinuxですよね。 【西島委員】 そうです。 【開原座長】 かなり、そういう話が医療の世界にもどんどん浸透しつつあるのではな いかという気がするのですけれどね。それはこの中にありますか。あれはもう、むしろ 技術の進歩というよりも本当に哲学の進歩みたいなところもあるので、かなり大事な話 のような気もするのですけれど。すみませんが何か技術屋さんの立場で、藤本さんか細 羽さんのほうで何かうまい文章化といいますか、もし、ご賛同をいただければと思うの ですが、どうですか、入れておく必要はありませんか。 【藤本委員】 ちょっと、いい言葉が思い浮かばないのですが、医療の中で何か例があ るとわかりやすいと思うのですけれど。 【開原座長】 ですから今の、医師会のオルカなどはもう、完全に……。 【藤本委員】 Linuxというのは、世の中一般の話ですけれど……。 【開原座長】 ええ。 【藤本委員】 世の中で、つくられたリソースでオープンなもの。たとえばそういうも のがあるとわかりやすいのかなあ、と。 【開原座長】 ああ、医療の中でつくられた……。 【藤本委員】 ええ。医療の中でつくられたもの。たとえばいろんなマスター類だとか もそうかもしれませんね。 【開原座長】 まあ、そういう方向へは行くのではないかなあという感じはしているの ですけれどね。オルカなども、成功すればまさにそういう格好になるのではないかと 思って期待はしているのですけれど。 【石川委員】 データ形式の話があまりないように思います。たとえばXMLとかそういう もの、メディカルマークアップランゲージみたいなものが……。 【藤本委員】 そうですね。あれも医療の中の進歩を取り込んでいる面がありますか ら、入れたほうがいいかもしれませんね。 【開原座長】 ダウンサイジングというのは、今さら言う必要はないですよね。 【藤本委員】 そうかもしれませんね。 【開原座長】 これだけパソコンが普及して、パソコンの上でもう、いろんなことがで きるのに、今さらダウンサイジングでもない、と。それから、モバイル化の話が携帯型 複合情報端末という形と高性能パソコンというものの中に少し出てくるのですが、これ はむしろ、項目を立てて別にしてもいいぐらいではないでしょうか。 【藤本委員】 技術に関して、前回から今までの間を振り返った感じになっていますか ら、今までにあるものと、今、ねたが出て未来を感じさせるものと、多分、両方あると 思うのです。今、モバイルは多分、もうすでにあるのですけれど、どちらかというと医 療にとって未来を感じさせるものだと思うのです。だから、そういう観点だと入れてい いと思います。ただ、ここに書いてあるのはなんとなく、過去を振り返って語っている 感じがしないでもないですね。 【開原座長】 これは情報化の現状ですから、ここは必ずしも医療にまだ応用が十分さ れていなくても将来的には医療に必ず入ってくると思うようなものはあげておいてもい いのではないでしょうか。それはもう、1〜2年先には入ってきそうなところ、目に見 えているものはたくさんありそうなので……。 【谷口室長】 事務局から1つお尋ねさせていただいてよろしいでしょうか。 【開原座長】 はい、どうぞ。 【谷口室長】 先ほどの普及という考え方ですが、いろいろ立場ごとに違うような気も いたします。グランドデザインの今後の打ち出し方にもかなり影響するので、そのあた りはむしろお尋ねしておきたいのですけれども、われわれの感覚からいたしますと、技 術的にある程度、もう、ものになりつつあって、少ないとはいえ医療機関で実用化もさ れている状況にあるわけです。すべての医療機関が電子カルテを同じように使うような ものに、そこまで電子カルテが熟度を高めているとは確かに思いませんけれども、それ ぞれカスタマイズすることによって、もう、実用化されているというふうに、われわれ は感じておりましたものですから、個別の医療化についてはもう普及だという認識を 持ったわけであります。もし、技術的にまだ十分、そのあたりで開発段階が必要である ということになれば逆にわれわれとしても、行政としての何か後ろ盾をしなくてはいけ ないのかという形になりますし、個別の医療化については普及段階であるというふうに 理解をするとすると、あとはもう、民間のほうで、それは医療機関のほうでうまく使っ ていただくような、むしろ環境整備をしていくという立場にわれわれとしては立つべき だろうというふうに思います。そこのところで、今後の行政施策のことばかり言って申 し訳ないのですけれども、そういう、気になるところがございまして、グランドデザイ ンとしてそれを打ち出すかどうか、普及という言葉を使うかどうかというのは、かなり 大きな違いになってくるというふうに思いますので、そのあたりについてもう一度、ご 示唆をいただけますでしょうか。 【開原座長】 なるほど。これは確かに言葉の問題ですが、行政的にどう対応するかと いうのは、開発段階にあるのか普及段階にあるのかによってかなり違いますでしょう ね。そこのところはいかがでしょうか。5ページの上のほうですけれども、ここの書き 方は非常に注意して書いてあって、院内限りのものは普及段階だけれども、地域連携の ものはまだ普及していないという、そういう書き方ですよね。ですから、2つに分けて 書いてあって、確かに2つに分けるというのはそのとおり必要なので、個々の診療所な どではすでに商品がいっぱい売られているわけですから、商品が出てきて買う人がいる ということはもう、普及だと言ってもいいのかもしれないとは……。 【藤本委員】 診療所のほうはそうかもしれませんね。ただ、私が先ほど申し上げたの は病院を意識しているのですけれど。 【開原座長】 大きな病院のほうですね。 【藤本委員】 ええ。そこが普及というのはちょっと……。 【西島委員】 ですから、先ほど私が申し上げたように、それぞれの便利さの考え方に よって、確かにそれは採り入れられているわけですけれども、それが本来の電子カルテ と言えるのかどうかというのは、まだ、もう少し議論の余地があるというふうに思うの です。この中にも、そういうことが書いてありますからね。電子カルテの言葉の使い方 云々とかが書いてありますから。ですから、電子カルテというものがいろんな意味を含 んでいるはずなのに、こういう形で狭い分野で書き込まれているから、今、考え方の違 いが出てきているのだと思います。 【開原座長】 そうですね。今の西島先生のおっしゃることは非常に重要なところであ りまして、電子カルテとは何かという問題が実はこの裏にある。確かにそうなのです ね。だから強いて書けば「初期の電子カルテシステムは、診療所レベルでは普及段階に あるが」というふうに書けば、なんとなく意味がわかるかもしれない。しかし、そうす ると今度は、「初期の電子カルテとは何か?」と言われると、また問題になりますが、 そこはまた、どこかに辞書か何かで少し解説をする必要が確かにありますね。 【藤本委員】 今日はご欠席ですが、井上先生が1、2回目のときに的確にお話しされ たと思うのです。ちょっと、記憶で言いますと、電子カルテというのは目的が今、多面 的であって、それを全部できるものはまだない。どれをやるかは、それぞれの病院の環 境とか考え方によって違ってきているので、それでいろいろなことがされているのです よ、とおっしゃったと思うのですが、あのへんの議事録が残っていれば……。まあ、あ あいう段階だというのは、私はまだ開発段階だと思うのですけれど。何か、ものという のではなくて、使う人、運用も含めて開発段階かなあと思っているのですが、今、井上 先生がいらっしゃったら、そういうまとめ方をもう一回、されるのではないかと思うの ですけれど、どこかにありませんでしたでしょうか。 【開原座長】 今日は残念ながらご欠席ですけれど、もちろん、井上先生のご意見をう かがうことは可能なので、今の西島先生のご意見は非常にはっきりしておりまして、そ こは井上先生のご意見も同じだと思いますので、あとは要するにどう文章化するかとい うことだけの問題かなあという気はしますので、ちょっとそこは、ひと工夫させていた だくことにして、趣旨としてはたいへんよくわかりました。もう一度繰り返せば、診療 所レベルの単機能の電子カルテというのは確かに商品が存在し普及しているけれども、 本当の意味での電子カルテは診療所レベルといえども、まだ十分に普及していないかも しれない。それから今度は大きな病院レベルになると、まだ開発段階かもしれない。そ れからさらに、地域を連携するような電子カルテということになると、これはまさに、 これからの大きな開発課題であるということで、このように、レベルから言うと3つ あって、しかも電子カルテ自体のレベルにもまたいろんなものがある、そういう感じか もしれませんね。  それから、私もせっかくの機会ですから、技術系の方にいくつかうかがいたいのです が、4ページの上から2番目の○の「高度情報通信インフラ(高度ネットワークシステ ム)」のところで、ADSLとCATV と通信衛星という3つが例示されて、整備されつつある というふうに書いてあるのですが――ちょうど大山先生がいらっしゃったので、大山先 生に教えていただければと思うのですが――e-JAPAN計画などの考え方というのは、むし ろそうではなくて、ファイバー・トゥー・ザ・ホームではありませんが、要するにもっ と基幹的なバックボーンを日本につくっていこうというほうに主眼があるのではないか という感じもするのです。  大山先生すみません、今、技術的なところの現状認識をやっていまして、4ページあ たりは現在の技術の現状認識がずっと書いてあるのですが、その上から2番目に「高度 情報通信インフラ(高度ネットワークシステム)」とあって、その下に「最近では、 ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、CATV (Communication Antenna Television)、通信衛星などのインフラが整備されつつある」という文章があるのです けれど、高度情報通信のインフラを整備するという今の国家的戦略から言うと、ADSLを 普及させようという話ではなくて、むしろもうちょっと本格的なネットワークを整備し ようという話ではないかという感じもするのですけれど、そのあたりはいかがでしょう か。 【大山委員】 ネットワークの話は、他のところには書かれていないのですか。 【開原座長】 ええ。技術的な話はここに集約されているのです。これはちょっと、1 次提言なものですから、まだ概要版なのです。 【大山委員】 なるほど。これは多分、客観的に見て、ADSLとかCATV とか通信衛星のイ ンフラが整備されていると言っているだけだというふうに私はとりますけれど。 【開原座長】 現状として……。 【大山委員】 ええ、現状として。ただ、国がやる話の中で議論をしたら、途端に、確 かに誰もADSLを普及させようなどとは思っていない。そんなものはもう、民間がやる話 というふうに、位置づけが終わってしまっていると思うのです。それよりはやはり、ご 案内どおり、インターネットのアドレス空間を増やすIPv6と呼ばれるものを提供する、 これはインフラを、今のバージョン4から6に上げるということは決まっている話だと 思うのです。ただ、それをやって何になるかということは実はe-JAPAN重点計画には書か れていなくて、そこは足りないのではないかと僕は思っているのですけれど、まず、何 のために、バージョン6でアドレスを増やすのか。効果的な例としては、たとえば情報 家電と言われる、家電製品まで含めてすべての電子機器がIPのアドレスを持つというこ とは間違いありません。持てるという状況は出てくる。それでどうなるのかという話 が、あの中には実は欠けていて、書かれていないのです。まずは2005年までにそういう 環境をつくろうということだけが決まっていて、できたらどうなるのかという話はあま りはっきり言ってないことなのです。このへんにあるものというのは、インフラとして いろんなものがありますよ、という意味で言うのであれば、やはり……。どちらかだと 思うのです。客観的に世の中を見て、家庭あるいは医療機関から見たときに、たとえば ADSLが使えるようになりますよね、スピードが上がりますよね、あるいはCATVも入りま すね、という意味で言っているのか、あるいは5年とかその先を見たときに、もっと高 速なネットワークができているよ、ということを言うのかで、ずいぶん意味が変わって くるような気がしますけれど。 【開原座長】 確かにそうですね。ここのところは現状なのですよね。確かにそうです ね。全体のタイトルは「保健医療分野における情報化の現状」ということなのですね。 そうすると、現状だからこれでいいのかなあ……。 【藤本委員】 ただ、現状を書くのがいいのか、それとも現状を踏まえたうえで今後の 見通しを書いたほうがいいのかというと、5年後のグランドデザインを描いているので すから、多分、後者のほうだと思うのです。e-JAPANではこうなろうとしている、と。現 状はこうだけれど、そのうえで今後はこうなってくる。だから現状というのは、これは 並べる趣旨が、さっきも申しましたけれど、もうひとつ、ぴんとこない感じがするので す。 【大山委員】 現状といっても、情報化がどのように進んでいるかと書いてある以上は ……。 【開原座長】 多少、未来的なところが見えていないと……。 【大山委員】 そう思いますね。 【開原座長】 そうでないと、5年後のグランドデザインの確かに基礎になるところで はあるので、多少、そこはさきがけたほうがいいかもしれませんね。ところで今のIPv6 の話はソフト的なインフラなのですか。ハード的なインフラというのは今、どういうふ うに考えたらいいのですか。 【大山委員】 IPv6はあくまでも規格であって、アドレスのビット数が増えるという意 味です。ビット数が増えるから、たくさんに割り当てられるというだけの話で、それを ハードでやるかソフトでやるかというのは、もう、ハードとソフトは結構、融合してい て、たとえばルーターなどはもう、ソフトウェアが乗っているのです。 【開原座長】 そういう意味のハードではなくて、昔からといいますか、今でもそうだ と思うのですがファイバー・トゥー・ザ・ホームとか、要するにファイバー自体をもっ と――今日本では必ずしもファイバーが家庭まで行っていないわけですから、それを もっと早く普及させなければいけないとか、そのへんの方針というのは今でも生きてい るわけですか。 【大山委員】 その意味ではちょっと、具体的な数は忘れてしまったのですけれど、 2005年までに超高速回線を1,000万世帯だったでしょうか……。 【谷口室長】 3,000万ですね。 【大山委員】 3,000万世帯でしたか。2つありませんでしたか。 【細羽委員】 超高速は1,000万で高速が3,000万ですね。 【大山委員】 超高速が1,000万で高速が3,000万と書いてあったようが気がするのです けれど、そのへんはあるのですが手段は言っていないはずです。まあ、そうは言っても 超高速がまさかADSLでできるとは思えませんけれど。そういう意味でファイバー・ トゥー・ザ・ホームというのは、あくまでも1つの考えで、もともとNTTさんがさん ざん言った話ですけれど、もう今になるとあの当時の規格というかあの当時の目標は ADSLで十分、超えてしまったという話で、今さらファイバー・トゥー・ザ・ホームとい うと、海外へ行くとしょっちゅう、「おまえの国はまだファイバー・トゥー・ザ・ホー ムと言っているのか」と言われる。要するにファイバーも本来の能力はもっと上なので すね。だから、本当に超高速だったらファイバーかもしれませんね。そのへんのところ が今の目標から見たときに、あくまでも手段ですから、超高速ネットインフラがある、 あるいはネットワークが家まで来ているというのは、そういう表現でいいのではないで しょうか。 【開原座長】 どうもありがとうございました。ここのところは少し整理をしたほうが いいという感じもしますので、たいへん恐縮ですけれども、技術系の方々に、いろいろ 個人的に相談に乗っていただいて、少し整理をするということで、今はいろいろご意見 をうかがうということにさせていただきたいと思います。  それから、後半の医療機関の情報化の現状というところは、今、電子カルテの部分に ついて議論されたところですけれども、その他のところはいかがでしょうか。 【大山委員】 すみません。2回休んでいましたので、今日は的はずれなことを言うか もしれませんけれど、お許しいただきたいと思います。電子カルテもそうですけれど も、やはり情報化の流れから見ると、「そもそも論」というのがやはり非常に重要なこ とだと思います。それは何かというと、もう、病院にコンピュータシステムが入ってい るとか、どこどこのソフトウェアがあるということは、起こるべき話ではないと思うの です。そんなことはもう、どうでもいい、と。要はその情報システム、ITを使って何 ができているかということと、どういう情報を残していくのかというのが重要なポイン トになっている。  これは電子政府も同じなのですけれど、その意味ではこのカルテの中に、昔から言っ ている話で言うと、医療に関係する情報を残す必要があるのかどうか。カルテの保存が たとえば5年から10年に延びるという議論がありますけれども、そういうレベルなのか どうかだと思うのです。要するに情報化というのは、デジタルデータなので場合によっ ては100年でも1,000年でも残していこうと思えば、場合によっては残せるわけです。そ れが確か、前回のこの検討会でも、開原座長と同じようなお話を一緒にさせていただい た記憶があるのですけれど、医学的な学術進歩あるいは研究のサイドと、それから患者 さんに直接関わることと、二面性があるような気がするのです。あくまでも患者さんの 話で5年とか10年という議論が私はあるのではないかという気がするのです。一方、学 術的な面から見ると、いろんな方の情報というのがやはり医学の進歩にどう活用できる か――高度利用というふうに当時、言っていたと思うのですけれど――その観点から見 て、両面から見て、カルテの情報というものを、いったいどう扱うつもりかというの が、ちょっとこれを見せていただいても、この中にその理念みたいなものが書かれてい ないような気がするのです。ひょっとするとうしろに書いてあるのかなあという気も… …。 【開原座長】 そこはむしろその後に出てくるかもしれません。ここはただ、現状に さっと触れているというところで、ちょっと引っ掛かっているものですから……。 【大山委員】 もし、現状に触れるならば、情報自体が、あるいはコンテンツ自体がソ フトウェアやハードウェアに縛られていることが問題だと書くべきだと思うのです。流 通を阻害しているとか、そういう話……自由に流通しろと言っているのではなくて、必 要なときに相手に渡っていくということが阻害されている要因がありますよ、と。やは りそこはめりはりをつけつためには、認識として書いてもいいのではないかという気が するのですけれど。だから標準化が必要ということにもなると思うのです。 【開原座長】 はい。わかりました。今のご意見をどういうふうに表現するか、そこは ちょっと考えさせていただきます。あと、大山先生に確認しておきたいのは、5ページ の上から5番目の○のICカードのところの触れ方で、これも現状認識なのですが、 「ICカードについてはデータホルダーとしての役割は需要性を失いつつあるが、その セキュリティ機能の高さから、ネットワーク上の個人認証ツールとして電子カルテとの 組み合わせが検討されつつある」という認識は、現状認識としてはいいでしょうか。 【大山委員】 これは合っていると思います。 【開原座長】 どうもありがとうございました。それでは、またここへ戻ってきてもい いのですが、少しいろいろ、ご意見をうかがうということで、もう1つだけ――座長が 発言するのはあまりよくないのですが――1つだけ、少し根本的な問題として、医療機 関の情報化の現状とそれから技術の話が出てくるのですが、やはり一言触れておいたほ うがいいと思うのは、一般社会の情報化とか、別な言葉で言えば患者側の情報化という のが、やはりかなり進んでいます。ですから医療機関だけが情報化していると思ってい ると、とんでもない話です。患者さんもみんな情報化しているわけで、そのことがやは り陰に陽に、私はこれからの日本の医療に影響を与えるのではないかという気がするも のですから、そこは現状認識としてやはり、一言どこかに入れておく必要があるという 感じがするのですけれど。これは私の個人的意見なのですが西島先生、いかがでしょう か。 【西島委員】 それはそれとして構いませんけれど。ですから、情報の非対称性とか、 ああいうところをきちんとしておかないと誤解を生むという話を先ほどしたわけです。 【開原座長】 タイトルが医療機関になってしまっていると、ちょっと入りにくいので すけれど、そこをひと工夫していただく必要があろうかという気はいたします。それで は3のほうへ行かせていただきたいと思います。3は「情報化によって変わる保健医療 サービスの姿」ということでございますが、どうぞお願いいたします。 【谷口室長】 はい。「3.情報化によって変わる保健医療サービスの姿<情報化を進 めれば医療はどう変わるか>」。<医療サービスの質の向上が期待できること>という 中見出しでございますが、受け手サイドから見た場合と提供者サイドから見た場合とに 分けております。まず、受け手サイドから見た場合です。 [以下、資料読み上げ] 「3.情報化によって変わる保健医療サービスの姿<情報化を進めれば医療はどう変わ るか> <医療サービスの質の向上が期待できること> (受け手サイドから見た場合) ○医療機関マップ、最新医学情報などがオンライン提供され、家庭で入手できることか ら、医療へのアクセスがしやすくなる。 ○遠隔診療等により地域医療機関における情報格差が解消されることからへき地・離島 診療に従事する医師の需給が改善され、全国レベルでの医療サービスの格差が解消され る。 ○一般住民向けの最新医学情報などがオンラインで入手できるほか、電子カルテが導入 された医療機関においては自分の診療情報をつねに医師と共有できる。 ○つねに医師と情報の共有ができ、医療の透明性が担保されることから、インフォーム ドコンセントに基づいて自ら選択した医療を受けることを通して、自分の健康に対する 責任感と診療に参加しているという満足感が得られる。 (提供者サイドから見た場合) ○電子カルテを中心とする院内情報システムの活用により、診療のかたわらオンライン でEBMに基づく診療ガイドラインを参照できるなど、最新医学情報が取得できるほか、随 時整理され保存されいつでも即時に取り出せる過去の診療情報をもとに、リアルタイム で専門医のコンサルテーションが受けられるなど、診療のプロセスが支援される。 ○その結果、研修医など経験の浅い医師やへき地・離島において最新医学情報を得にく い医師の診療が支援されることになり、EBMに基づく適切な医療を行うことが可能にな る。 ○診療情報の共有化により院内でのチーム医療や地域医療機関相互(病診・病病)の連 携が実施しやすくなり、より適切な診療が行えるほか、クリティカルパスシステムとの 連動により、より患者中心の包括的な治療およびケアが実践できる。 ○正確で大量の医療情報が蓄積されるため、それらのデータを解析することにより医療 のパフォーマンスの数値化や治療結果の客観的評価が可能となる。 ○情報開示を行う医療機関においては、必要な情報の検索・デモンストレーションが容 易に行えるため、効率的な情報開示手段となる。 ○情報通信技術の活用により、診療プロセスにおけるチェックシステム(たとえば、薬 の過剰投与や不適切な指示に対する警告など)が働き、医療事故の未然防止に役立つ。 <医療サービスの合理的・効率的な提供が期待できること> (受け手サイドから見た場合) ○一患者一カルテが実現できることなどから、診療科ごとの窓口での受付での煩わしさ がなくなるほか、紹介先医療機関での再検査などの手間がなくなる。 ○遠隔医療技術の応用により在宅医療が受けやすくなる。 (提供者サイドから見た場合) ○オーダエントリーシステムなどの導入により、効果的な院内物流管理や医薬品・医療 材料の電子商取引が可能となり、在庫コントロールなどにより経営コスト削減に寄与す る。さらに蓄積されたデータの解析により経営分析が可能となり、経営改善に貢献す る。 ○レセプト電算処理の導入などにより、医療機関における医事会計処理が簡素化される とともに、保険者による審査・請求事務が効率化される。(レセプト請求事務の省力 化、ペーパーレス化)」  以上でございます。 【開原座長】 どうもありがとうございました。これは多分、前回、樋口委員が少しは 夢も語っておけよということをおっしゃったのを受けて、この3番ができたのではない かと思いますが、そういう意味では、どちらかというとバラ色の話が並べてあるという 印象もあるわけでありますが、こういう情報システムがうまく働いた場合はこういうこ とが期待できるということです。ですから、あくまでもこれは期待できるものであっ て、本当にそうするためにはかなり努力しなければいけないものもあるかとは思います が、そういう目でこれは見なければいけないと思います。  そういう意味で、多少、前の注釈がいるかもしれないというような感じはいたします が、それも含めてどうぞご議論をお願いいたします。個々のことについては、少し具体 的に書きすぎてしまっているような感じのところもあるし、どうも少し抽象的なところ もあって、というような感じもいたしますが、これもいろいろご意見をうかがわせてい ただきたいと思います。ここで文章をいじるところまではなかなか時間がないと思いま すので、項目として考え方がおかしいとか、これはあったほうがいいとか、これはない ほうがいいとか、これは修正すべきだとか、そういうような感じでご意見をいただけれ ばと思いますが、いかがでございましょうか。 【西島委員】 6ページですけれども、提供者サイドから見た場合の2つ目の○です が、「研修医など経験の浅い医師」という言葉が、ちょっと引っ掛かるのです。これは まさしく、今、別のところでやろうとしているわけで、平成16年からスタートしますけ れども、研修医制度の必須化という形でスタートするわけで、これがあるから研修医な どの支援になるということではないと私は思うのですけれど、そのあたりはいかがで しょうか。ここに、ぽつんと「研修医など経験の浅い医師」と出てきていますから。経 験が浅いということは、極端なことを言いますと、そういうことを見て判断するという ことにも、やはり危険性がありますよね。 【開原座長】 いかがでございましょうか。私も西島先生のご意見はよくわかります。 専門医であってもEBMは当然、必要だと思うのです。 【西島委員】 そうです、そうです。 【開原座長】 逆に専門医のほうが、専門的な医療をやるうえでEBMを必要としているか もしれない。ですから、これは、わざわざ「研修医など経験の浅い医師」と言わなくて もいいような気がするので、ここもちょっと、文章を少し考えさせていただきたいと思 います。それから研修医の問題をここに持ち込むと、誤解を招いてもいけないので、研 修医の問題は切り離したほうがいいかもしれませんね。少し文章は考えさせていただく ことにしたいと思います。それからへき地だけではないのかもしれませんね、そのEBMの 話は。これはどうすればいいでしょうか。 【西島委員】 前はへき地・離島だったのでしょうけれど、今はやはり、隣の診療所間 ――たとえば病診連携というものにも使われるわけですから。 【開原座長】 そうですね。必ずしもへき地だけの問題ではなくなってきて、非常に専 門的なEBMができてきていると、大学病院も大いにEBMのデータベースを使うという話 が、すでにアメリカなどでは行われている話ですから、少しそこは、ご趣旨は非常によ くわかりますので、文章を考えましょう。 【審議官】 どうも情報化の最初は、こういうところから始まっていて、われわれのほ うの気持ちの切り替えができていないということではないかと思います。そのへんはご 指摘を踏まえてもう一度、谷口さんとも相談して対応させていただきます。情報化とい うとすぐ、へき地・離島が頭に浮かぶような構造になってしまっていますので。 【大山委員】 ただ、現実はまだ、へき地・離島において効果が出るというのは事実だ し、でも一方で、まだそれが十分できていないということもありますよね。 【西島委員】 逆にへき地・離島になりますと、実は医師に来てもらうために、そうい うものを結構、整備してきているわけです。そうすると、逆に言えば都会のほうが情報 が得られにくいということもあるわけです。これは情報の話ですけれど。 【大山委員】 ちょっと別件ですが、ここを見ていて気づいたのですけれど、「情報化 によって変わる保健医療サービス」と書いてあって、次に<医療サービスの質の向上が 期待できること>と出ているのですけれど、保健の分野はどこにあるのでしょうか。大 項目の3は保健医療サービスなのですが、医療の話は主に書いてあるのですけれど、保 健のところが見えないような気がするのです。用語を全部、保健医療に変えればいいと いうような話でもないような気がするのですけれど。それが1点です。  それから2点目は、提供者サイドから見た場合という、6ページの○の4つ目で、 「正確で大量の医療情報が蓄積されるため」云々とあるのですけれども、こういうこと をお書きいただけるというのは、すごくありがたいなあと思うのです。かつて8年ほど 前に、こういう考え方について、保健情報――すなわち当時からといいますか、今もあ まり変わっていないのかなあというふうにも認識していますけれど、予防医学とか様々 なことを言われて疾病にかかったあとの治療の話よりも、どちらかというとそれを未然 に防ぐという話が情報化の流れの中に1つ、保健の範囲ではあると思うのですが、その ときに、集団検診をはじめとする様々な健康状態――まだ疾病にはかかっていなくて健 康だという認識のもとでも生活習慣病をはじめとした様々な、ゆっくりと変化する状況 というのは見えていると思うのです。ところがそういう状況に対して、情報が大量に集 まってその後どうなるかという予測のような話というのは、あまりなされていないとい うのが今の状況だと思うのです。ここに書いてあるのは医療情報ですから、やはり考え 方としては何らかの疾病にかかったあとの話かなあというふうに、狭義に解釈してしま うのですけれども、本当に重要なのは、やはり予防の話へ持っていく、これももちろん 重要ですけれども、もう1つ別にあるのではないかという気がするのです。先ほど、8 年前と言ったのは、当時、そういうことをやるべきだと言ったら、当時の厚生省の方か らは「原子爆弾をつくるのはやめてください」と言われた記憶がありまして、今日、こ ういうものが出ていて、はっきり書いていただけるのは、私は非常にうれしく思ってい ます。やはり予防医学のための情報システム、ITの活用というのは、ものすごく大き いのではないかなあと思うのですけれども、ぜひ、全体に保健のところが抜けているの と、それについて書き込んでいただければすごくうれしいなあと思うのですけれど、い かがでしょうか。 【開原座長】 どうもありがとうございました。 【谷口室長】 確かに読みながら、言葉が足りないところがあるなあと感じてはおりま した。ただ、冒頭、実はご説明の中で申し上げまして、大山先生がいらっしゃらなかっ たところで申し訳なかったのですけれども、基本的に今後、予防からリハビリ、それか ら在宅ケアまでを包括するような、包括的・全人的な医療を求めていくという大前提に 立ちまして、このグランドデザインを書こうというスタート時点の理念がありまして、 そういう意味では医療というふうに書いても、これを中心にしながら予防とか、そう いったものをすべて包括的にやっていただきたいという気持ちが心の底にはあったので すが、書き込みが足りないのは事実でございます。それがちゃんと見えるように書くべ きだというご指摘はそのとおりだと思いますので、そこは十分注意しまして……。 【大山委員】 その意味では、ここに書いてある「医療情報が蓄積されるため、それら のデータを解析することにより医療のパフォーマンスの数値化や治療結果の客観的評 価」という話を超えているのです。 【谷口室長】 はい、おっしゃるとおりです。 【大山委員】 まったく、全然、保健に関しては違う可能性があるので、私はそれをや はり、表に出していただけると……。実はアメリカでも、ここはやっていないのです。 なぜかというとアメリカの場合は集団検診とかの情報を集めていないので、そういう意 味では――まあ、保険会社が一部、他の件でやっているのがありますけれど――私は非 常に重要なポイントではないかと思っているものですから、このようなことを少し申し 上げました。 【開原座長】 どうもありがとうございました。他にもどうぞ。何でも結構ですが、い ろいろご意見をいただいておくと、あとでこれを直すときに参考になりますので。 【藤本委員】 受け手サイドからしますと、いまひとつ、樋口先生が期待されているバ ラ色の夢が書かれていないような気がするのですけれど。何か、端的にわかりやすく、 病気の発見とか治療が早くなるとか、患者さんから見て、何かそういう、わかりやすい 効果を導き出せないものかなあと思うのですが。 【開原座長】 もう少し具体的にお願いします。 【藤本委員】 多分、提供側はこういう努力をするわけですよね。情報化は、提供側に とっていいことがあるわけですよね。それが患者さんにとって何に結びつくかという と、ちょっと、医療の言葉をどう使っていいのかはわからないのですが、要するに診断 がより適切になり治療方法が適切になって早く治るとか、そういうことに現れるのでは ないかと思うのです。そういうことを受け手側の効果に書きたいなあ、と。 【西島委員】 今、大山委員がおっしゃったのは非常に重要なことだと思うのですが、 それは、今、厚生労働省になりましたけれど、その中でのシステムにまで踏み込んでい かないとできない問題なのです。たとえば、最初は母子保健からスタートして学校保健 に行って次が産業保健です。ところが成人保健というのはありません。そして今度は老 人保健。それが今、バラバラにデータとして取られていますので、そういうところまで 含めて踏み込んでいかないと、今、先生がおっしゃったような、個人にとってのデータ の有用性というものが生まれてこないのではないか、と。 【大山委員】 そのあたりの議論を深くやってはいけないと思うのですが、非常に簡単 に申し上げると、実は母子の話からずっと老人までの、今ある範囲は、われわれ技術か ら見ると、逆に予測できない範囲なのです。その理由は簡単で、その間は変化している わけです。成人のときは一定の割合で、生活習慣病が主なのですけれど――いわゆる成 人病です――それはゆっくりと変化するので、年1回とかという集団検診でもわかるの です。これは最近、技術をやっていて、われわれもわかってきたところで、現実に某所 のそういう情報を分析したりさせていただいているのですが、私が申し上げたいのは、 予防医学というのは子供の頃の話も大事かもしれないけれど、やはり、最もメジャーな のは成人病、生活習慣病だと思うのです。そこに対する手段を講じることにおいて、こ の情報システムが非常に価値があるということを申し上げているのです。 【西島委員】 それは実によくわかるのですが、ところが成人保健という分野がないの です。 【大山委員】 それは確かにそうですね。そういう意味ですね。 【西島委員】 ですから、システムまで踏み込んでいかないといけない話なのです。 【大山委員】 ああ、そういうことですか。わかりました。 【西島委員】 そういうことなのです。それはすごく大事なことだと思いますけれど。 【開原座長】 今の大山先生のお話はたいへんよくわかりましたし、それから藤本委員 のおっしゃったことも理解はできましたが、どういうふうに文章化するかでちょっと… …。確かにそこがいちばん大事なところで、患者さんにとっては医療自体がよくなるだ けでは意味がないわけですから、それをどう書いていくかということがあるかと思いま す。  それでは、ここはまだ、いろんな角度から効果を期待することはできると思いますの で、また、いろいろご意見があればあとでうかがうことにしまして、その次へ行きたい と思います。だんだん重要な話になってまいりまして、その次あたりがいちばん大事な ところだと思いますので、よろしくお願いいたします。 【谷口室長】 はい。 [以下、資料読み上げ] 「4.保健医療分野の情報化の目標と課題<情報化を進めるために何をするか> <保健医療情報システムの構築とコンテンツの充実> (保健医療情報システム) ○保健医療分野の情報化に際して、電子カルテは医療情報共有の手段としてはたいへん 有用であり今後推進すべきものと考えるが、一気に汎用システムを普及させるのは現実 的ではない。 ○まず、医療機関のニーズを踏まえて固有の目的(たとえば医療事故防止を重点とする など)のため電子カルテの導入が優先される場合を想定し、その後目的別に順次導入し たシステム相互のネットワーク化により汎用的な標準化システムが開発されるよう検討 を進める。 ○院内での電子カルテはすでに普及の段階に入ったが、地域医療連携という視点からは 医療機関相互のネットワーク構築はほとんどなされておらず、来年度以降中核的な医療 機関を中心に周辺の医療機関を結ぶモデル事業などを通して課題を検討し、導入に向け ての環境整備を進める。 ○なお、日本医師会においては全国の診療所の医療情報ネットワークシステムを構想中 であり、地域医療連携の視点から、官民相互の協力の下に有効な仕組みをつくり上げる べきである。 ○レセプト電算処理システムについては医事業務の大幅な改善につながり、経営の安定 化にも資することから、導入する医療機関において十分その効果を発揮できるよう、レ セプト電算処理用語コードの標準化を推進するなど、環境整備につとめる。 ○遠隔医療については、在宅医療の進展への活用など、都市部における技術の応用に関 しても、その有効性を引き続き検証していく。 ○ICカードについては、データホルダーとしての役割は重要性を失いつつあるが、そ のセキュリティ機能の高さから、今後はネットワーク上の個人認証ツールとして電子カ ルテとの組み合わせによる有効活用を検討する。 (コンテンツと提供体制) ○保健医療情報システムが効果をあげるためには、コンテンツとして役に立つ情報を伝 達することが大切である。 ○たとえば、医師にとってネット上でEBMに基づく最新の医学情報をリアルタイムで電子 カルテ上で検索できることは日常診療上たいへん有益であるほか、一般市民にとっても 家庭でインターネットから自分の病気に関する医学情報を入手することで自分の病気を 理解できるようになることから、最新の医学情報をネット上で提供できるようにするこ とはインフォームドコンセントを行ううえで有用である。 ○そのためには、EBMに基づき最新医学情報を集約した診療ガイドラインを学会等におい て作成することや、そのもとになる臨床研究の推進が必要であり、国は研究費等で積極 的にその活動を支援する。 ○作成された診療ガイドラインや、そのもととなる臨床研究文献をデータベースに蓄積 し、ネット上で提供できる体制を構築すべきであり、そのためのデータベースの構築方 策について早急に結論を出すべきである。 ○また、日常診療や臨床研究から得られるカルテ情報をデータベース化しておくこと は、新たな医学的知見を得るために重要であり、疫学調査等情報の2次利用に際しての 個人情報保護に留意しつつ、その構築に向けて検討を進める。 ○その際、薬の副作用情報や感染症情報など、現在も利用されている既存のデータベー スとの関係に留意し、ユーザーからみて使いやすいシステムとなるよう検討する。 <情報の正確性とプライバシーの保護> (保健医療情報の正確性の担保) ○保健医療情報システムにおいて処理・伝達・保管される情報は、その利用の仕方に よって国民の生命を左右する場合もあるので、正確性・信憑性については十分に担保さ れるべきである。 ○伝達・保管のプロセスにおける情報の正確性が低下することは基本的にシステム設計 に依拠するものであり、ベンダーの責に帰するものであるが、情報の生成・処理過程に おける正確性・精度の保証は難しい問題である。 ○正確性や信憑性を担保するため第三者的な機関を必要とする意見もあるが、個人の診 療情報の場合、医学文献情報の場合、医療機関マップ情報のような場合と、それぞれ状 況が異なり、生成処理段階において一律に第三者機関によるチェックが現実的かどう か、本検討会においてさらなる検討が必要である。 (プライバシー保護) ○患者個人の診療データを保健医療情報ネットワークにおいて共有することは、医療の 質の向上に寄与するが、万全なセキュリティ対策をとらないとシステムそのものの社会 的支持が得られない。 ○このため、プライバシー保護の技術基盤および運用の基準を早期に確立するととも に、とくに、医学研究等のために、2次利用される場合などにおいては、その取り扱い について、学会を中心に関係者によるガイドラインを整備し、それに則してきちんと自 己管理できる環境を、現在国会に提出されている個人情報保護法(仮称)の動向を踏ま え整える必要がある。 ○その際、情報は誰のものかという議論は、「所有」権という考え方に基づくのではな く、情報に関わる権限の問題という枠組みで検討し、学会においてガイドライン等に反 映するようにすべきである。 <基盤整備> (制度・運用) ○医療サービスは公的色彩が強く、情報化に際しては制度面での公的バックアップが必 要となるが、医療情報のネットワーク化の実現に不可欠なカルテの外部保存の問題など について早急に検討を進める。その際、保健・福祉などの関連領域の情報化についても 積極的に検討し、情報の共有化を図る。 (標準化) ○医療機関相互のネットワークで情報を電子的に共有するためには、これまで進めてき たカルテの用語、コード、様式等の標準化をさらに推進する必要があり、関係者の協力 を得て2003年度完成を目途にその作業を進める。 ○なお、その後のメンテナンス体制についても恒常的な必要性を含め、検討を進める」  次の「ユーザビリティ」に関しましては、若干、文章にまずい点がございまして、別 の1枚紙をお手元に配らせていただいているかと思いますが、そちらのほうの文章をご 参照ください。 [以下、引き続き資料読み上げ] 「(ユーザビリティ) ○本来国民全体にとって医療の質の向上と効率化に役立つはずの情報化が、一部の人だ けに有用なものとならぬよう(たとえば障害を持つ医療従事者や患者にとって情報通信 技術が社会参加への妨げにならないように)、利用する立場に立ってハード・ソフト両 面からの開発につとめる。 (電子認証システム) ○ネットワークにアクセスする人を電子的に本人であると証明する電子認証の問題は、 プライバシー保護や情報の改ざん防止という視点だけではなく、限られた人が情報にア クセスする権利を行使する際の手続きという意味もあるなど、すべての情報化の基盤と いう視点で取り扱うべき課題である。 ○とくに患者情報にアクセスする資格(医師・歯科医師・薬剤師・看護婦等)および被 保険者資格の認証をどのようにシステム化するかという点について、技術面・制度面か ら検討を進め、2003年度までに結論を得る。 (人材確保) ○医療従事者の養成機関におけるIT教育、職域におけるIT研修などが必要である。 さらに保健医療分野の特有な情報システムのメンテナンスのために医療機関内のIT技 術者の確保(養成も含め)についても必要な方策を検討する。 <コスト問題> ○情報化により医療業務全体のコストダウンに寄与することが期待されるが、実際に検 証された例は極めて少ない。 ○初期投資・運営費に関する費用は負担増になるが、導入による業務の効率化がもたら すコストダウンとの比較について部門別に整理して評価する必要がある。 ○ベンダーサイドにおいては導入の際の障碍について検討し、ユーザーサイドにとって 導入のインセンティブとなるようなコストダウンを推進する必要がある。 ○医療機関においても、情報化のメリットについて部門別の評価により導入されるシス テムの優先順位を決定するなど現実的な対応が必要である。 ○また、診療報酬上の評価など公的な経済的インセンティブを求める立場もあるが、一 方で情報化の推進を医療機関の主体性に求める立場もあり、この点についてはなお継続 して検討すべき課題である。 ○いずれにせよ、情報化が医療の質の向上や効率化に寄与することを明らかにしつつ、 誰がその恩恵を受けるかという視点から論点を整理して費用負担問題を引き続き検討す べきである。」  以上でございます。 【開原座長】 ここがいちばん大事なところだと思います。ここはいろいろご意見があ ろうかと思いますので、少し時間をとって、ご意見をうかがいたいと思いますが、いか がでございましょうか。順番にやってもいいのですが、お互いに多少、関連していると ころもありますので、どこからでも結構ですが、少し長いですから、多少、分けて議論 しましょうか。まず、いちばん最初に「保健医療情報システム」という話が出てきて、 それから「コンテンツと提供体制」という話が出てきます。そのあたりはいかがでしょ うか。まず、真っ先に電子カルテの話が出てきますが、このあたりは先ほど大山先生が 言われた、「……などがある」だけではなくて、どのように使うかという話が出てきま す。医師会のことにも少し言及してございますが、このような言及の仕方でよろしいか どうか……。 【藤本委員】 先ほど、3つ目のときに普及云々の議論がありましたから、両方、あげ させていただくということですよね。 【開原座長】 「普及の段階に入ったが」というところが、多少、注釈が必要だという ところですね。どちらかで少し詳しく説明することで、もう一方は、そちらを参照とい うような形でもいいかもしれませんが。 【西島委員】 今の3つ目の○のところ、「中核的な医療機関を中心に周辺の医療機関 を結ぶ」というところでですが、こういうことはいつも引っ掛かるのです。つまり、そ れはどういうことかといいますと、中核的と言われている医療機関が実は連携をいちば んしていないという現実があるわけです。ですから、こういう形でやると、なかなかシ ステムとして進んでいかないだろうと思うのです。こういう言葉で、このように「中心 に」という言葉を使われると。そこが今、病病・病診連携のいちばんのネックだという ふうに思うのですけれど。 【開原座長】 建て前が必ずしも、そのとおりにいかないという話ですよね。西島先生 のおっしゃる意味は私もよくわかるのですけれど、「中核的」というのは、行政的には 定着した言葉なのですか、「中核的医療機関」というのは。 【谷口室長】 中核的な病院の定義というのは本当はないのですけれども、慣用的に 使っているものでございまして、必ずしも明確な定義があるわけではありません。西島 先生のおっしゃることはよくわかっていて、われわれも実は――まあ、そこまで書いて はいけないと思って書かなかったのですけれど――そういうところが進まないからネッ トワークができないということで、だから中核的病院にはしっかりやってくださいよと いう意味が本当はあるのですけれど、そのニュアンスを出すようにしましょうか。 【西島委員】 ひとつには、だから、そういうことが進まないからできたのが、れいの 地域医療支援病院ですよね。そういうものができたわけです。 【開原座長】 理念としてはいいですよね。だから、理念と実態が乖離しているという のは、まさにそのとおりなのですが、ですから……。 【西島委員】 たとえば「来年度以降、地域医療支援病院的な医療機関を中心に」であ れば、それは、そのためにできた病院ですよね、地域医療支援病院というのは。 【谷口室長】 「的な」ですか。 【西島委員】 ええ。地域医療支援病院がまだできていない地区もいっぱいあるわけで すからね。 【開原座長】 それは確かに、行政的に既にできあがったひとつの制度ですから、その 言葉を「中核的な医療機関」のかわりに置き換えるということは、ひとつのやり方かも しれませんね。まさに「中核的な医療機関」を育てるために、ああいう制度をつくった ということではあると思いますので。 【谷口室長】 それでは、ここは検討させていただきます。 【開原座長】 はい。ここはちょっと、検討していただきたいと思います。 【谷口室長】 はい。 【開原座長】 それでは、どうぞその次のコンテンツのところあたりについて、いかが でしょうか。ここでICカードの話がまた出てきますが、これは前と文章がだぶってい るようなところがあるから、どちらかでうまく整理するといいかもしれませんね。それ から、コンテンツの2番目の「たとえば」というところの最後の部分、「インフォーム ドコンセントを行ううえで有用である」ということは確かなのですが、「インフォーム ドコンセントを行ううえで」というふうにしてしまうと、何か、話が少し小さくなって しまうような感じもしますね。むしろ抽象的に、「よい医療を行ううえで有用である」 というのはおかしいでしょうか。 【西島委員】 少し戻りますが、7ページの下から2番目の○の2行目の、「官民相互 の協力の下に」という、この言葉がいるのかどうかなのですが。今、官の役割がどんど ん変わってきていて、たとえば国立病院も統廃合という形になっていますよね。「官民 相互の協力の下に」という、この言葉はもう、いらないのではないかなあというふうに 思うのですけれど。今、どんどん役割が変わってきていますから。 【開原座長】 この、官民の話はまたあとで、どこかで出てくると思いますので、わざ わざ書くまでもなく、あたりまえの話だということで。 【西島委員】 はい。 【開原座長】 それから、ちょっと気がついたのですが、8ページ目の下から3つ目の ○ですが、最後のところで「早急に結論を出すべきである」ということになっているの ですけれど、「結論を出すべきである」というと、何かここの委員会が議論をしていて 結論を出すべきであると言われているような感じもするのですけれど、これはそういう 意味ですか。 【谷口室長】 ご案内のように、実はEBMのデータベースの問題につきましては別の検討 会が入っておりまして、そちらのほうで検討されているものですから、その頭があった もので、実はここと混乱をして書いたような文章になっています、確かに。基本的には そちらのほうで早く結論を出してくれというふうにご理解いただければと思います。文 章を書き直します。 【開原座長】 はい。 【大山委員】 ここの全般にかかる話ですけれど、「コンテンツ」という言葉を、どう いう意味でお使いなのか、僕はちょっと、これを読んでいてよくわからないのですが。 たとえば8ページ目の「コンテンツと提供体制」という中に、「コンテンツとして役に 立つ情報」という言葉があります。役に立つ、立たないということがコンテンツという 意味になっているのか……ちょっと、このへんの言葉の意味がよくわからないのです。 役に立つ、立たないというのは、ある人にとって役立つか役立たないかというのがあっ て、同じ情報でも役に立つ人と役に立たない人がいるわけですよね、一般的には。情報 を持っている本人、あるいは情報を出す側というのは、それが誰にとってどう役に立つ かということを考えているというよりも、自分が持っている情報を客観的なものとして 出していく、あるいは自分の主張として出していくという、様々なやり方があると思う のですけれど、ここで言う用語の定義なのですけれど、そのへんがちょっと私には見え ないので、どういう意味でお使いなのか、もし説明をいただければありがたいし、もし そうでなければちょっと、議論をしていったらいいような気がするのですけれど。 【谷口室長】 事務局の生半可な知識で書いているがゆえに混乱を来しているのかもし れませんけれども、基本的な意味としては、情報ネットワークシステムに乗せていただ けるような、そういう情報の内容という意味で使っているつもりなのですけれど。です から役に立つか立たないかという……。 【大山委員】 わかりました。コンテンツという意味で言うと、よく最近、整理する中 では、情報システムを3つに分解して、最初がいわゆるハードウェア、その次がソフト ウェアということで――この、ハードとソフトは最近、融合していてわかりにくいとい うか境界線が見えなくなっている部分はあるのですけれど――ハード、ソフトがある。 それ以外はコンテンツという言い方をしているのです。それが役立つ、役立たないは関 係ない、それがコンテンツであるというのがもともとも考えなのです。 【開原座長】 だから、ここは文章の問題で、多分、「保健医療情報システムの効果を あげるためには、必要なコンテンツを必要な場所に迅速に伝達することが大切である」 とかね。 【大山委員】 その意味で申し上げると、保健医療情報システムの効果をあげるには、 伝達させるだけではなくて蓄積することにも価値があるはずなのです。それはデータ ベースの話につながっていると思うのですけれど。そのときに、蓄積する仕方として、 あるいは利用する仕方として、ハード、ソフトから分離させないと、その価値を下げる ということになるというのが、先ほどから申し上げている論法なのです。そこが何か、 どこかで読みとれるようにしていただければ、すごくいいのではないかなあと思うので すけれど。 【開原座長】 なるほど。そうすると、「保健医療情報システムの効果をあげるために は、システムの整備とともにコンテンツを整備し、それを必要な場所に迅速に伝達する ことが大切である」とか、こんな文章はどうでしょうか。 【大山委員】 加工することが必要かどうかもありますよね。もともと、客観的な事実 というのは加工すべきではないのです。たとえば身長が何センチというのは加工する話 ではないので。それは著作権との絡み、うしろの「情報は誰のものか」というところに つながってくるのですけれど、知財で言える著作権の整備というのは、あるものを表現 する手段がいっぱいあるから著作権になるのであって、身長何センチというのは、これ は著作権の対象ではありません。これは著作権でもないし知財の対象でもないはずで す。その意味で、カルテの中にはいくつかあって、検査データ自体がその意味で知財か といったら、僕はそれは違うと思うのです。誰がやっても同じ結果が出るならば知財で はない、と。そのようなことで、ちょっと、わかりづらくなったかもしれませんが… …。 【開原座長】 ニュアンスとしては、ここで言う「コンテンツ」は、診療情報のコンテ ンツのほうではなくて、多分、医学知識のほうのコンテンツだと思うのです。 【大山委員】 ああ、そういう意味ですか。 【開原座長】 ええ。ですから、そこがちょっとわかりにくいかもしれませんから、 「保健医療情報システムの効果をあげるためには、医学情報のコンテンツを整備するこ とが」ということで、むしろ伝達するのはあたりまえですから、「医学情報のコンテン ツを整備することが大切である」というように、さらっと、そういうふうにしてしまっ たほうがわかりやすいかもしれませんね。要するに、EBMの基礎になるようなコンテンツ という意味だと思うのです。多分、ここの「コンテンツ」はそうだと思います。確かに 診療情報も、加工するとEBMの基礎にはなるのですけれど、どちらかというと、ここでは 文献情報とか、多分、そういったもののイメージがあるのではないでしょうか。あとの ほうを読んでいくと、そういうイメージですけれど。 【大山委員】 なるほど。 【石川委員】 今のところですけれども、先ほど座長がおっしゃったことと重複するの ですが、「病気を理解しインフォームドコンセントを行ううえで有用である」という表 現ですけれど、これはもう少し、やはり、患者側の能動性を活かすような表現のほうが よろしいのではないかという感じがしました。これはまあ、読み方にもよるのですけれ ど、受け止めようによってはややパターナリスティックな響きがあるのではないかと思 うのです。 【開原座長】 インフォームドコンセントというのは確かにパターナリスティックな感 じがしますよね。伝えておけばいいというような感じがするものですから。おっしゃる 意味はたいへんよくわかりますので、少し、そこのところは――まあ、「患者の協力を 得たうえでの医療を実施する」とか、何か、そのようなことを盛り込んで……。 【石川委員】 あるいは、能動的に関わりたいという意欲みたいなものに答えるうえで とか、そういう感じかと思うのですけれど。 【開原座長】 はい。これは、文章上で少し工夫をしてみましょう。それから9ページ の上から2番目の○は、これは何か、メッセージがあるのでしょうか。何か評論家みた いに、「正確性・精度の保証は難しい問題である」ということを言っても、確かに難し いのですけれど、ただ難しいと嘆いてもしょうがないような感じもするので、ここはも う少し、ひと工夫がないでしょうか。 【大山委員】 まあ、でも、この文章をそのままとると、「ベンダーの責に帰するもの である」というのは、これはかわいそうですよね。それに「情報の正確性が低下するこ とは」と書いてありますから、これはデジタルでやっている以上、もともとのデータの 正確性は低下しないはずですよね。だからこれは作為的というか、何か人が介在して初 めて低下するのであって、それはベンダーではないような気がしますけれど。 【藤本委員】 いえ、伝達・保管はベンダーの責任に帰するけれどもということが最初 にあって、それから、生成・処理は正確性・精度の保証は難しいというふうに分けて書 いてあるから……。 【大山委員】 いいのですか、それで。 【藤本委員】 ええ、いいのではないかと思いますけれど。 【大山委員】 本当にそうですか。ベンダーさんがそう言うなら、僕は何もべつに… …。 【藤本委員】 伝達の中に人間が入っていることは確かですけれど。 【大山委員】 だって、システム設計というけれど、どんな設計をするかというのは利 用者側が言っていて、そのシステム設計に従ってつくったところで途中で手を加えれば 変わってしまうわけでしょう。それですべて「ベンダーの責に帰する」と言っていると いうふうに僕はとったのですけれどね。 【藤本委員】 伝達・保管も結果的には運用が入ってきますからね。そうすると、確か にベンダーの責任となると困る、そういう部分はあります。ただ、開原座長がおっ しゃったように、これは全体として何を言いたいのでしょうね。 【大山委員】 そうですね、確かに何を言いたいのかというのはありますね。 【谷口室長】 これは確か井上先生のご提言だったかというふうに記憶しているのです けれど、要するに情報の中身をちゃんと正確に担保するために第三者機関が必要ではな いかというご発言がありまして……。 【開原座長】 ああ、次のものへの前文ですね。 【谷口室長】 はい。それをちょっと、ごちゃとごちゃと余計なことを言って紛らわし くしている部分がありますけれども……。 【開原座長】 なるほど。次の文章への前文にあたるわけですね。第三者機関の話とい うのは、これは本当に、この話を議論しだしたらたいへんな話でもありますよね。この 第三者機関というのは、いわゆるPKIの認証局のような話では全然なくて、むしろ中身の 保証の話ですよね。 【谷口室長】 ええ。たとえば病院が発信する情報が正しいかとか、そういうことも含 めてだろうと思うのです。この前、事例を出されたのは、広告の話もちょっと、あった かと思うのですけれど。病院のマップの話も含めてですね。 【開原座長】 今、何かJIMAとかという、インターネットの医療情報の正確性を、マー クをつけて保証しようというようなことをやっておられる団体もありますけれどね。た だ、これはどうかなあ、と……。ここまで書き込んでしまっていいのでしょうか。「意 見もあるが」と書いてあって、「現実的かどうか、本検討会においてさらなる検討が必 要である」というと、結局……。要するにそこの文章というのは、ある意味では何も 言っていないということですよね。いろんな意見があるけれども、と。だから、あえて ここまで言う必要があるのかどうか。言うと、変に痛くもない腹を探られてしまって困 るという面もないわけではないという気もしますからね。ここはもうちょっと、さらっ と書いてもいいのではないかという感じもしますけれどね。 【審議官】 まとまっていないので、むしろ第1次提言では触れないでおいて、最後に まとめるときに、もし議論があれば触れさせていただくということで……。 【開原座長】 ええ。やるのなら、もうちょっと、ちゃんと議論する必要があるでしょ うね。まだちょっと、これは消化不良ですね。 【大山委員】 全体を見ていて気づいたのですが、今のところにも正確性とか伝達・保 管とか、いろいろ書いてあるので、余計に気になったのですけれど、e-JAPANの重点計画 に、2003年までに紙情報と電子情報を同等に扱う電子政府を実現すると書いてあるはず なのです。ということは、電子情報に関する正確性というのは発生源の問題を言うの か、それを活用する、あるいは保存していくという流れで言うのかで位置づけは違いま すけれども、基本的にそういう関係ができるということが、この文章のどこを見るのか わからないのですけれど、それが、やはり医療だけが違うのではなくて、全部がそう なっていくという状況を踏まえてやっていかなければいけない。その意味で正確性とか 信憑性の担保というのは、発生源のところの話はそれはお医者さん、あるいは医療関係 者の人がちゃんとやっていただくという話しかないと思うのですけれど、そのあとの話 というのは、条件はべつに医療機関だけではなくて全部について同じになっているので はないかという気がするのです。そういう、環境変化でどこかで変わると書くというの もいいかもしれませんけれど、そういう言い方をすると楽ではないかという気がするの です。 【開原座長】 要するにもう、インフラの問題だ、と。 【大山委員】 ええ。 【開原座長】 社会的インフラの問題であって、医療だけの問題ではない、と。だから 社会的インフラが、e-JAPAN計画の言うとおりに本当に整備されれば、この問題は社会的 に解決されるが、という話になるわけですよね。 【大山委員】 そこから先はあまり言えないですけれどね、本当にできるかというの は。 【開原座長】 それはe-JAPAN計画が本当に実現されれば、と書くと怒られてしまうかも しれませんけれど……。 【大山委員】 でも、目標ははっきりとそう書いてありますから。まあ、審議官が言わ れたとおり、今はまだ省いておくという方法もありますけれど、何か、現状認識とか将 来動向認識というのが、ちょっと違うというか、そういうことが踏まえられていないの ではないかという感じがするのです。 【開原座長】 それから、「信憑性」という言葉がちょっと気になるのですけれど、 「信憑性」という言葉は出てきますか。 【大山委員】 今までは「真正性」だけですよね、言葉は。 【開原座長】 データ保護の世界、セキュリティの世界では、「信憑性」という言葉を 使うのでしょうか。この提言のどこかで使ってありましたよね。 【谷口室長】 実はこの「信憑性」というのは、ご発言に引きずられて事務局が書いた 言葉なのですけれども、医療機関の広告の話で、たとえば美容外科の話が出たかと思う のですけれど、ああいう誇大広告のような感じで、発信源情報として正確なのかとか、 そういう議論のときに信憑性という言葉が使われて、それをわれわれが、そのまま書い てしまったのです。 【開原座長】 なるほど。だからここは、要するにPKI的な形で真正性を保証するという 話と、それからさっきの誇大広告みたいな話とが混合して書かれているから、話が ちょっと混乱するのかもしれませんね。だからもう、誇大広告みたいなものはべつにPKI がいくらできても、どうしようもない話ですよね。 【大山委員】 それは無理です。絶対に無理です。 【開原座長】 そうですよね。要するにそれは、データの発生するところ自体の真正性 が疑われるわけですから、これはもう、どうしようもないわけです。ですから、このへ んも少し、その点を整理する必要があるかもしれませんね。 【細羽委員】 ただ、不当に書き換えられているとか、そういうことが起こり得るのか なあということもあると思うのですけれど。 【開原座長】 ええ。だから、その不当に書き換えられるとかという話の場合には、あ まり信憑性という言葉は使わないのではないでしょうか。その場合にはむしろ改ざんと いう言葉だと思うのです。それでは、ひとわたりご意見をうかがいましたので、最後の 5をお願いいたします。 【西島委員】 その前に、基盤整備のところで「医療情報のネットワーク化の実現に不 可欠なカルテの外部保存の問題などについて早急に検討」というふうになっていますけ れど、ずっとこの議論の中で出ているように、環境がまだ整っていない中で、カルテの 外部保存というようなことを早急に検討するというのは、まだ時期的に早すぎるのでは ないかという気がするのです。先ほどから出ています、電子カルテ云々の問題も含めて でございますけれども。 【開原座長】 では、その「早急に」というのを除きましょうか。大いに議論をしてい ただくことは結構だと思うので……。今のはどこだったでしょうか。 【西島委員】 すみません。9ページの下から2番目の○です。 【開原座長】 基盤整備のところですね。それでは、「早急に」を除いて「検討を進め る」にしましょうか。 【藤本委員】 同じ場所の「制度・運用」のところですが、最初と2回目で発言させて いただいたのですけれど、やはり情報化、IT化を進めるにあたっては、それに向いた 制度・運用にしなければいけないと申し上げました。そのときに、意識していましたの は診療報酬改定のプロセスなのです。だから時間もそうですし、情報システムを変更す る時間もそうですし、中の論理も、非常にこう見ると、情報化しにくいという部分が 入っているように思うのですけれど、そういうところを変えてくださいとお願いしたの ですが、だんだん、どこかへ消えてしまいまして、最初はこの「制度・運用」のところ にあったと思うのですが、「IT化を意識した制度・運用」という言葉は残ったのです けれど、ぜひそのあたりをもう一度、思い出していただきたいと思うのですが。表現が 難しいのかもしれませんけれど。 【開原座長】 今の話はむしろ、診療報酬請求のところに書いたほうがいいかもしれま せんね。 【谷口室長】 コストの部分に入れ込んでしまったところがあるものですから……。 【藤本委員】 ああ、コストのところに入っているのですか。それによってコストのと ころもだいぶん変わってきているかもしれませんね。ぜひ、忘れないようにお願いしま す。私も忘れないようにしますけれど。 【谷口室長】 はい。 【石川委員】 あと1点、プライバシーのところで、細かいのですけれども、「情報は 誰のものか」というところにむしろ「 」をつけていただいたほうがいいと思うのです けれど。今は「所有」に「 」がついていると思うのですけれど、これを「いわゆる 「情報は誰のものか」という議論に対して、所有権あるいは知的所有権」としたほう が、さらに正確になるのではないでしょうか。 【開原座長】 はい。「 」のつけ方ですね。 【石川委員】 はい。細かいですけれど。それからユーザビリティですが、たとえば 「ユニバーサルデザイン」というような言葉、キーワードをここに入れることは可能か どうかということをご検討いただけたらと思います。 【開原座長】 はい。それはたいへんいい言葉でございますので、ぜひ入れておきま しょう。 【石川委員】 「情報のユニバーサルデザイン」とか。 【開原座長】 「情報のユニバーサルデザイン」、「情報機器のユニバーサルデザイ ン」ですね。今まで、「情報機器のユニバーサルデザイン」ということを、誰か言った ことがあるのでしょうか。 【石川委員】 結構言いますね。 【開原座長】 結構ありますか。そうですか。 【西島委員】 もう1つだけ、10ページです。2003年という言葉が2カ所に使われてい て、そこに標準化ということですが、今までいろいろと、ずっと標準化に関して検討さ れてきて、その標準化ができていないわけですよね。もう、あと2年しかないのに、果 たしてそれができるのかどうか。様々な問題があると思うのです。この前も、標準化連 絡協議会みたいものがまたできてしまったりして、果たして、ここに数字をあげて… …。 【大山委員】 まあ「目途」と書いてありますけれどね。 【開原座長】 この2003年というのは何か意味があるのですか。 【谷口室長】 まさにe-JAPANでそういう環境ができるのに、ここの部分だけ遅れるとい うわけにはいかないだろうというのが本音のところではありますけれども。 【大山委員】 決意はある……。 【開原座長】 e-JAPANにあわせているということですね。 【大山委員】 用語というか解釈論というか、理解の仕方をあわせるためにご説明申し 上げたいのですけれど、電子認証システムに関して、「ネットワークにアクセスする人 を電子的に本人であると証明する」と書いてありますが、本人であると証明することは 電子認証ではないですよね。ネットワークにアクセスする人の行為の正当性を保証する のが認証で、本人確認と電子認証がここでは用語としてごっちゃに使われているわけで す。 【開原座長】 なるほど。本人認証はむしろ……。 【大山委員】 はい。本人認証は確認の手段なのです。 【開原座長】 それは登録するところが、むしろ本人確認かもしれませんね。 【大山委員】 ですから、そこのところをちょっと、整理なさるほうがいいだろう、 と。 【開原座長】 言葉使いの問題ですね。 【大山委員】 それで、同時に電子認証システムでは、前にお話があったと思います が、GPKIのように役職、いわゆる公印ですよね、個人に帰属しているのではなくて公印 という、役職に対する証明が出ていますが――平沼大臣が署名したとかという話が、つ いこのあいだ出ていましたけれど……。 【開原座長】 あれは平沼大臣ではなくて、大臣が署名したということですね。 【大山委員】 そうです。大臣が署名したということであって、公印だから、平沼さん かどうかは関係ないわけです。それと同じ話が、保健医療機関にもあるのではないかと いうことで、法人の組織の云々は法務省がやっていますけれど、保健医療機関であると いうことは、これは許認可の関係なっていますから、そこの証明というのは組織認証の 話でありますけれど、もうひとつあるのではないかという気がします。ですので、個人 とそこのところを、2つお書きになられておくほうがよろしいのではないかという気が しますけれど。 【開原座長】 わかりました。ちょっとここは、文章化のところでいろいろとご相談に 乗っていただくことがあろうかと思います。それでは最後の、「今後の推進方策と関係 者の役割」についてお願いします。 【谷口室長】 はい。 [以下、資料読み上げ] 「5.今後の推進方策と関係者の役割<どのように進めるか> ○今後の推進方策については、このグランドデザインの主旨に則り、目標と課題に示さ れた個別事項ごとに、官民の役割分担を明確にした年次ごとの実施計画表を作成し、引 き続き保健医療情報システム検討会においてその実施状況についてフォローアップを行 う。 ○その際、e-JAPAN重点計画の考え方にも示されているとおり、民間主導という考え方の もと、政府は民間活力発揮のための環境整備を行うこととし、民間の関係団体(学会・ 医療関係団体・産業界)はそれぞれの役割において主体的に情報化の推進を図るものと する。 ○また、情報開示推進と個人情報保護の視点に立ってプライバシー問題に関する社会的 コンセンサスの形成に努めるものとする。」  以上でございます。 【開原座長】 はい。ここで、さっきの官民の役割みたいな話が2番目に、基本的な考 え方として書いてあるわけです。それから民間というものの定義がどうかという話だっ たのですが、この場合はすべてであるということが注釈で示されているということです ね。いかがでしょうか。 【石川委員】 いちばん最後のところ、「コンセンサスの形成に努めるものとする」と いうことですが、どのようなコンセンサスかというのが、これだとわかりづらいと思い ます。ここで言う「社会的コンセンサス」とは何ぞやということは、この文章を読んで いてもわからないように思うのですけれど。 【開原座長】 そうですね。 【大山委員】 たとえばプライバシー保護の重要性とかそういうことですか。 【石川委員】 重要であるというコンセンサスなのか、重要でないというコンセンサス なのかがわからないので……。 【大山委員】 そうですね。わからないですね。 【石川委員】 だから、読みたいように読めてしまうのはよくないと思うのです。誤解 を招きますから。 【開原座長】 そこはもう、医療関係者の間でガイドラインをつくるべきであるという ところまで踏み込んでいってはいけないのですか。 【谷口室長】 基本的には、私どももできれば学会レベルでそういったガイドラインを つくっていただきまして、それが医療関係者の中で自己管理というのでしょうか、自己 コントロールにうまく機能するようになれば、それがいちばん望ましいのではないかと いうふうに考えているのですけれども。 【開原座長】 いずれにしても、法律を別につくるという話はないわけですから、結 局、個人情報保護法ができたそのあとは、やはり医療関係者の間で、医療版の何かガイ ドラインがないといけないということは確かなのではないかなあという感じはしている ので――まあ、そこは実際、研究のところでは少しずつそういう話はもう、できつつあ るわけですから、今の石川先生のおっしゃることはよくわかりましたので、少しそのあ たりは、また事務局と相談をして、表現は考えさせていただきたいと思います。 【大山委員】 もう1つ、ひっくり返す話かもしれないので、ちょっと気にはなるので すが、○の2つ目なのですけれども、確かにe-JAPANの重点計画の考え方には民間主導と いう議論が書いてあるはずです。それはわかっているのですけれども、なぜ民間主導で 政府は環境整備という話になったかというと、民間主導の中の最大のインセンティブ は、自分たちがやることで新しいビジネスがつくれるということなのです。それは情報 システムあるいは情報化の流れというものが環境にあわないと、当然、阻害要因があっ てうまく発展しない、あるいは進化しないということから民間主導というふうになって いるのですけれど、果たしてこの医療の分野というのが、この考え方ができているの か。すなわち、言い方を変えると今の保健の制度等々の流れから見たときに、自由社会 ではないですよね、と。そのときに民間主導と言っている意味が果たしてどうなのです か、というのが、素朴な疑問としてまずあります。  その実例は、全然違うように見えるかもしれませんけれど、民間主導というのはもと もと、電子商取引等検討部会の中に最初に書いてあるのです。私が座長をやっていたと きに書いた言葉なのですけれど、その同じ話を、たとえば発展途上国に行きますと、そ うすると民間主導と言っても何の意味もないのです。できる環境もないし、そんな考え 方もないのです。僕がここでちょっと気になるのは、e-JAPAN重点計画からはこうなので すが、本当に民間主導で、政府は民間活力発揮のための環境整備だけと言ってしまって いいのですか、という気がするのです。僕は、政府自らやるべきことがあるのではない ですか、と。この場合はあえて、そういう気もするのですけれど、それでちょっと、話 をひっくり返すというかe-JAPAN重点計画にぶつかるような話になるかもしれないのです けれど、素直に考えるとそういう気がするのですけれど、いかがでしょうか。 【開原座長】 大山先生の言われることは非常によく理解できるのですけれど、ただ、 こう書いておいて悪いということはないのではないかなあという感じはするのですが… …。 【大山委員】 これを官民の役割分担と読まれてしまうと困るのです。要するに官は環 境整備しかやってはいけないというふうにとられてしまう可能性もあるわけですよね。 【開原座長】 なるほど。 【大山委員】 重点計画の話は社会全体の総論なので、あれはいいと思うのですけれ ど、ここは保健医療分野の情報化ですよね。そうすると、現実を踏まえたときに、本当 にこれでいいのですかというのが……。もともとそういうことを言っていた人間が、こ う言うのも変ですけれど、非常に私は、この分野についてはちょっと違うのではないか という気がするものですから、申し上げたのですけれど。 【開原座長】 それともうひとつ違うのは、このあいだ指摘があったように、e-JAPANの 民間というのは産業界を意識しているわけですよね。 【大山委員】 そうです、そうです。 【開原座長】 ところが医療界において民間と言った場合には、むしろ産業界ではなく て、日本医師会に代表されるような民間の医療機関というのがもうひとつあるわけで す。そうすると民間の医療機関は産業なのかというと、まあ、最近はサービス産業とい う考え方もあるようですけれど、純粋な意味での産業ではないのかもしれない。そうす るとe-JAPANの考え方がそのまま適用されると、多少、違和感があるということはありま すよね。 【大山委員】 たとえば非常にわかりやすい話でEBMの話が出ていますが、EBMは民間の 今の医療機関を含めて、第三者的に見ると、推進しようとなさっているのですかとい う、客観的な疑問があるのです。やはりこれは政府主導なのではないか、と。何らかの 目的があって、しっかりやるべきだということは、僕は書くべきだという気がするので す。 【西島委員】 それはちょっと違うのです。まず、EBMは絶対に必要であるということ は、私どもも言っているわけです。しかしそれが官主導になると、どういう方向のEBMに 行くのか、と。 【大山委員】 ああ、そうか。そうか。 【西島委員】 診療報酬とのリンクがされているからということがあるのです。 【大山委員】 わかりました。そうですね。そこはよくわかります。その意味は。 【開原座長】 ここはどうでしょうか、西島先生、ここの書き方の問題ですけれど。 【西島委員】 私はこの書き方でいいのではないかと思います。 【大山委員】 官主導というと、そいううふうにとってしまうのですね。 【西島委員】 そういうことです。 【大山委員】 なるほど、意味がわかりました。 【開原座長】 確かにe-JAPANの言っている民間主導とは違うということはありますね。 それは僕もよく理解できるのですが……だから、ちょっと医療界の特殊性というものを どこかに2〜3行、あるいは2〜3行でなくても1行ぐらい書き加えることがあっても いいかもしれないけれど、まあ、基本的にはこう書いていて悪いことはないのではない かなあという気がしていますけれどね。 【大山委員】 ちょっと参考までに申し上げますが、当時言っていた環境整備の意味 は、規制緩和、制度の見直し、法律の改定、それから新たな法律の策定の4つです。そ うすると解釈論は、これだけしかやってはいけないということになってしまうのです。 だからちょっと気になるのです。それがもともとの発想だったので。もちろん規制緩和 とかそちらのほうが、当時は非常に、いちばん重要だというふうに言われていたのです けれど。 【開原座長】 わかりました。今の点をよく注意いたしまして、医療は普通の意味でのe -JAPANの民間主導とは違うということを、どこかで多少、書き込んだほうがいいかもし れないということは私も理解できますので、そこも預からせていただければと思いま す。  それでは、今日はもう時間がなくなりましたので、一応、これで全部、見ていただい たということで、いろいろご意見をいただきましたが、ただ、本日ご欠席の委員で樋口 委員と井上委員もいらっしゃいますので、そのお二方のご意見もまた、あわせてうかが わないといけないところもあります。そういうご意見をうかがったうえで、それを事務 局のほうで、ある意味では最終的な文章をつくっていただきたいと思います。ただ、そ れをまた議論していると時間がなくなるといけないので、それを事前にお送りして、1 回か2回ぐらい、電子メールでもいいですし本当のメールでもいいと思いますが、そこ で少し、あらためてご意見をうかがわせていただいたうえで、できるだけ最終的な文章 を次回までにつくるという形にさせていただくといいのではないかと思っております。 そのあたりを含めて、事務局のほうから何かお考えがあればお願いしたいと思います が。 【谷口室長】 ぜひ、そのようにしていただければ幸いです。 【開原座長】 そういうことでよろしいでしょうか。 [賛成多数] 【開原座長】  それでは、そういう形にさせていただくことにして、そのかわり、事前 に必ずお送りして、ご意見を1回か2回ぐらいでも、うかがえる機会をつくるというこ とにしたいと思います。それでは、次回を決めさせていただきたいと思うのですが、次 回としては、そういうプロセスを考えると、ひと月はないといけないですよね。今日が 21日ですから、そうすると7月の23日ぐらいの週になりますでしょうか。では、23日の 週でうかがってみましょうか。井上先生はうかがってあって、樋口先生がちょっとない のですが、午前、午後というふうにうかがっていきますが、23日月曜日の午前はいかが でしょうか。ご都合の悪い方はありませんか。大丈夫ですか。それでは23日の午前中と いうことで、ただ、樋口先生だけがわからないのですが、樋口先生にはできるだけそこ を開けていただくことにして、決めてしまいましょうか。時間的には23日で間に合いま すか。 【谷口室長】 頑張ります。 【開原座長】 それでは、うまく決まったみたいでございますので、恐縮でございます が23日の午前ということでよろしくお願いをいたします。これからまだ、いろいろとや りとりが必要かと思いますし、また、個人的にいろいろご相談に乗っていただかなけれ ばいけないようなこともあるのではないかと思いますが、どうぞよろしくお願いをいた します。  それでは、今日は少し時間が超過いたしまして申し訳ございませんでしたが、これで 終わりたいと思います。本日はたいへんありがとうございました。                       +---------------------------------+                       | 照会先:医政局研究開発振興課  |                       |        医療技術情報推進室|                       | 担当 :武末、植田       |                       | 内線 :2589        |                       +---------------------------------+