01/05/24 第3回保健医療情報システム検討会議事録 第3回保健医療情報システム検討会議事録 平成13年5月24日(木)16:00〜18:00 経済産業省別館825号会議室 【事務局】  それでは定刻となりましたので、ただいまから「保健医療情報システム検討会」を開 催いたします。  開催に先立ちまして、本日の委員の出欠について報告させていただきます。大山委員 が所用のために、欠席でございます。  まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。  右肩に資料1と書いてあります「医療の情報化に関する委員指摘事項等のマトリック ス(素案)」という3枚の資料がございます。  次に資料2と書いてあります「前回までの主な意見」という資料がございます。  それ以外に 電子カルテシステムのJAHIS分類、V1.1(案)という資料をご準備し ております。お手元にございますでしょうか。以上の3つの資料以外に、委員の方々に は、前回の議事録をご準備しております。  それでは開原座長お願いいたします。 【開原座長】  それでは本日の議事に入ります前に、お手元の第2回検討会議事録がございますの で、それにもしご訂正がありましたならば今日でも結構ですけれども、お帰りになって からでも、できるだけ早いうちに事務局のほうへお知らせいただければありがたいと思 います。  この第1回の議事録につきましては、厚生労働省のホームページに5月16日付けで既 に掲載されておりますが、この第2回目もそういうことになると思いますので、よくお 目通しをいただいて、何か訂正があれば至急お知らせいただくようにお願いいたしま す。  今日は樋口委員が5時半にご退出と伺っております。  それでは早速ですが、本日の議事に移らせていただきたいと思います。前回、各委員 から項目の洗い出しをしていただいておりますので、それらの項目について資料1の 「医療の情報化に関する委員指摘事項等のマトリックス」と、資料2の「前回までの主 な意見」といういわばこれまでのまとめのような資料がお配りをしてあるわけでござい ますが、本日は今後のグランドデザイン策定のこともありまして、資料2のほうに少し 力点を置いてご検討をいただきたいということでございます。どうぞよろしくお願いを いたします。  まず資料1のほうでありますが、これは医療の質の向上、効率化とそれぞれの観点か ら目標を定めて、前回までの各委員から指摘のあった事項をマトリックスに整理したも のでありますが、その内容につきまして事務局からご説明をお願いいたします。 【事務局】  資料1でございますけれども、「医療の情報化に関する委員指摘事項等のマトリック ス(素案)」とございます。これは委員の先生方のご意見や一般にいわれている医療の 情報化に関する議題を左のほうから目標・手段・技術的進歩で分類したマトリックス表 です。大きく「医療の質の向上」と「医療の効率化」に分類しております。  まず1の最新医学医療情報へのアクセスという項目におきましては、EBMガイドラ インが少ない、データベースにおいては、日本独自の大規模で網羅的なものがないとい うことが指摘されております。  院内情報システムにおいては、主に情報の二次利用に関することが課題とされており ます。また、診断技術の向上の面では、ネットカンフアレンスによる診療技術向上とし ての地域連携体制の整備でありますとか、画像などの配信によるカンファレンス普及な どか挙げられております。  院内情報システムの普及におきましては、制度面、導入維持コストまた医療の現場に 即したシステム開発等が課題として挙げられております。  IT技術による医療情報提供という点につきましては、医療情報コンテンツの不足な どが言われております。また医療機関情報の提供として、情報化を加味した評価法の必 要性があります。  次に診療録の開示という点におきましては、診療情報の所有権の問題というのが課題 として指摘されました。  では、2の患者診療情報の共有においてですが、電子カルテをツールとした診療連携 体制についての課題が主に指摘されております。  ページをめくっていただきまして、遠隔医療システムの方面においてですが、遠隔医 療などをサポートする体制づくりが普及のための課題とされております。  またネットワークにおけるセキュリティー確保も大切であると指摘されております。  3の安全な医療の提供におきましては、IT技術を医療事故防止に活用する必要性が 提唱されております。  4の患者満足度におきましては、ほとんど今までの項目の中で指摘されておりますけ れども、改めてインフォームドコンセント、プライバシー保護という観点で課題を再掲 載いたしております。  一方で、医療の効率化の課題としては、1の院内物流の効率化、2の電子商取引の実 施としまして、医療分野における物流の合理化や3の医療事務の効率化として、ペー パーレス化を目標とするということが課題として挙げられております。  最後に4のレセプト審査支払事務の効率化として、電子カルテとレセプト電産処理シ ステムの連動、推進及びそのための傷病マスターの見直し、ペーパーレス化の検討など が課題として挙げられているというふうに大まかではありますけれどもこのようにまと めております。 【開原座長】  どうもありがとうございました。これはこれ自体を議論するということもある程度必 要なのかもしれませんが、これは次の資料を議論していただくときのある意味では辞書 みたいに使っていただくということでいいのではないかという気がいたします。これ自 体をまたここが足りないとか、このように並べ替えろと言っておりますときりがなくな りますので、もしどうしてもこれはちょっとおかしいではないというご指摘があればそ れだけを伺うことにいたしまして、これが最終的なものとして必ずしも外に出ていくと かそういうものにもならないと思いますので、いわばワーキングペーパーみたいな形で 使っていくことにいたしたいと思っております。  しかしそうは言っても何か大きく抜けているとか、少しこの並べ方を変えたほうがい いのではないかというようなことがありましたら、どうぞご指摘いただければと思いま すが何かございますか。 【樋口委員】  よろしいですか。これは私の専門に関わるのですが、実はうまく説明できないので す。ただ問題点だけを指摘しようと思っているのですが、この情報の問題を扱うにあた っていろんなアプローチがあるのですが、我が国において根強く指摘されるのは、典型 的には「カルテは誰のものか」というアプローチなのです。「情報は誰のものか」ここ でも診療情報の所有権の明確化という話になっていて、これは素人的にはというのはち ょっと言い方が傲慢になるかもしれませんが、わかりやすいですね。「情報は誰のもの なんだろうか」と、しかし法律的に言うと、情報についての所有権を云々するのは、も うやめようというかあまり効果がないというのですか、つまり所有権の対象になるよう なものというのは典型的には例えば土地などですが、土地に誰かが入ってきたらそれは 「出て行け」と言える、これが所有権の一番大きな力です。  情報というのは、いったん入ったら「出て行け」と言っても情報と一緒に出ていって しまうのです。すぐに忘れてくれといってもなかなか忘れてくださらないわけですか ら、だから所有権というようなものではなくて、それと同じような別の何権でもいいの ですが、枠組みで考えていかないといけないというようになっている、ちょっとこれは 言葉遣いだけの問題なのかもしれませんが、ちょっと整理が必要かなと思います。 【開原座長】  どうもありがとうございました。ここは何かうまい言葉を後で先生に教えていただい て、この資料は書き直したほうがいいかもしれません。あと何かありますか。 【井上委員】  目標の一つに最新医学医療情報へのアクセスが挙げられていますが、確かにその通り ですが、これはインターネットが普及した今日、ほとんど実現できているわけです。医 療のITというのは、もう一歩踏み込んだものではないかと。つまり私の言葉で言え ば、ITに一番期待されることは医療の品質管理ということではないかと、そういうニ ュアンスを目標に出せないものかなと考えます。  一般企業において、なぜITを導入するのか?それは製品の品質管理と経営の効率化 です。医療のIT化においても、医療の品質管理ということを問い直すべきではないかと 思います。  それからもう一つは、国民・患者の期待をどういうことによって捉えるかということ ですが、患者さんあるいは国民が望んでいる情報化というのは医療の透明性だと思いま す。透明性とは、どの病院、どの先生にかかったらいいのか、アクセシビリティと言う のでしょうか、選択とか評価といったことがIT化によって進まないであろうかという ことを国民が期待しているのではないかと私は受け取っています。そういったことはグ ランドデザインの目標に入れたほうがいいのではないかと考えております。 【開原座長】  ありがとうございました。先生の言われた質の問題はその通りですが、これたぶんこ の資料で、1枚目の左の上に「質の向上」と書いてあるので、これが全体にかかるの で、その中にあるようには思ったのですが、ですから先生の最初におっしゃったことも ある程度中で実現されているのかなという感じはいたしましたが、そのへんを確かに多 少強調したほうがいいのかもしれません。あとは何かありますか。 【藤本委員】  前回の平成6年の中間報告ですと、最初のほうで4つ目標をきれいにまとめていまし て、「保健医療サービスを効率的に提供する・保健医療サービスの質を確保する・公平 と公正を保証する・保健医療技術を進歩させる」と4つの観点にまとめられていてこれ はわかりやすかったのですが、今回はそれに対応させているとすると、まずサービスの 効率化のほうにサービス提供の効率化が入っていないように思いますし、それからあと 2点、「公平、公正の保証」という話と「技術進歩を進歩させる」という話が抜けてい るのですが、これはこの委員会から出なかったからこうなってしまったということにな っているのですか。それとも前回の4つの観点とは無関係な分類だと、どう思えばいい のでしょうか。 【事務局】  とりあえずこの資料につきましては、前回の話とは切り離してお考えいただいたほう がいいのかもしれません。 【開原座長】  しかし前の理念のようなものも確かに参考にして、最終的なペーパーではまたどこか に入れたほうがいいのかもしれませんので、今のは是非記録には止めておきたいと思い ます。他に何かございますか。  それでは場合によったらこのマトリックスというのは、だんだんと改定をしていっ て、少しずつ精緻なものにしてもいいかと思いますので、今のご意見を伺って次回に改 訂版が出てきてもいいしと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  ちょっと気が付いたのですが、1番の最新医学医療情報へのアクセスというのは、こ れ主語が誰なのかということです。医療関係者がアクセスするという話と患者さんがア クセスするという話とがたぶんあって、下のほうの診療録開示のところとか、医療機関 情報の提供のところは主語は患者さんであって、上の方は医療関係者かとそんな感じも するのですが、先ほどのご意見だと、場合によると患者さんがアクセスするという話は さっきのご指摘のように、患者の満足の方に入れるという手もあります。整理の仕方と して、主語が誰かということが、2つが一緒になっているような感じがするのでちょっ とわかりにくくなるといけないと思いました。  それではここはよろしゅうございますか。これも参考にしながら、今日はむしろ資料 2の「前回までの主な意見」をご議論いただきたいということでございますが、まず事 務局からこの資料の読み方といいますか、構成についてご説明をいただければと思いま す。 【事務局】  それでは資料2でございます。前回までの主な意見というペーパーにつきましてご説 明をさせていただきます。  これは第1回、第2回目の検討会におきまして、各委員の先生方から出していただき ました主な意見を下に、グランドデザインの項目立てをも念頭に置きまして、事務局に おいてとりまとめをしたものでございます。お出しいただきました意見の中で重要なも のが抜け落ちていないだろうか、不適切な場所にご意見が入ってしまっていないだろう か、そのへんのご検討もしていただければということが一つであります。  もう一つ、今後のグランドデザインの策定に向けまして、先生方のこの主な意見とい うものを基にまとめていくということでご了解をいただけないだろうかということもご ざいます。  今日のこのペーパーでこの通りにまとめていくということではございませんので、こ れにご意見をいただいた上で何か足りないもの、不適切なものを加えた上で徐々に膨ら ませていってグランドデザインにしていければという趣旨でございます。  中身につきましては、大きな項目立て1から6までございます。1のグランドデザイ ンの策定により目指すもの。2番の保健医療における情報化の進展と現状、これは平成 6年中間報告以降の話でございます。3番の保健医療情報の活用が医療にもたらすも の。4番では、保健医療分野の情報化における目標とその実現に向けての課題。5番 は、今後の推進方策。6番としまして、関係者の役割分担という切り口でとりあえず整 理はいたしております。  グループ毎に一つずつ順番に読み上げさせていただきまして、ご説明をさせていただ ければと考えております。  まず1番でございます。「グランドデザインの策定により目指すもの」というグルー ピングをしたものでございますが、この部分はグランドデザインのいわば目的ともいう べき部分でございまして、平成14年度からの概ね5年間を見据えた医療における情報化 の推進計画を策定をし、医療の質の向上と効率化を図ること。というふうに書いてござ います。これを受けまして先生方のこれまでのご意見といたしまして、 ・サービスの質の向上のため、限られた資源を有効活用できる合理的・効率的なサービ ス提供体制を築いていくこと。といったご指摘や、 ・目標達成の道筋とそのための課題を示すこと。といったご示唆、また ・国民にとってわかりやすいものでなければならないというご指摘、こういったものが あったところでございます。  とりあえず一つずつ切って、ご意見等を賜ればと考えておりますのでよろしくお願い をいたします。 【開原座長】  それでは、だいたいこの資料2というものがどういうものかというをご理解いただけ たと思います。要するに、これまでにいただいたご意見を事務局のほうでうまく項目に 分けて、その中に埋め込んでいったものであるということですので、この大きな1. 2.3というこの数字自体で項目として足りないというご指摘はまたあっても結構だと は思いますが、さしあたってはこの項目の中に盛り込むものを少しご議論いただきたい ということでございます。  まず1が、一番最初のそもそも本委員会の目的みたいなところの話だと思いますが、 この四角の中に書いてあるのは本委員会の設置の目的のところに書いてありますので、 それに関していろいろ計画を策定するということは当然のことだと我々は考えがちであ りますが、そもそもグランドデザインは策定すること自体がどういう意味があるのかと いうことを少し考えておくのも意義があるのではないかということであります。いかが でございましょうか。  ここはあまり中身がないから議論しようといっても、なかなか議論しにくいですか ね。 【樋口委員】  ちょっとよろしいですか、これも言葉の問題かもしれませんが、3つ目のポツに、国 民にとってわかりやすいものでなければならないこと。というその客体ですが、何がわ かりやすくなくちゃあならないのだろうかということですが、将来の将来像というのが わかりやすくなければならないのか、そのための道筋と課題というのが非常に平易な形 で現れるということが大事なのか、みんな含んでいるような気もするのですがちょっと 確認をと思います。 【開原座長】  何か事務局のほうで。 【事務局】  事務局の立場からいたしますと、最終的な将来像というのが一番大事な話かなとは思 っておりますけれども、委員の先生方のほうから逆にそれだけではという話がございま したら、むしろご示唆をいただければと思っております。 【開原座長】 今確かに樋口委員からご指摘があったように、グランドデザインというのは目標とそ れからそれに至る道筋とたぶん両方あるのでしょう。目標だけ掲げておいてもそれだけ にどうやって立ったらいいかわからないのではちょっと困るから、たぶん両方ないとい けないのかもしれませんですね。「世界は平和でなければいけない」とただ書いても、 どうやったら平和になるのかその道筋が書いてなければどうしようもないわけですから いろんな方法もあるわけですから、両方がセットになったのがグランドデザインだとい う解釈でいかがでしょうか。  ここはあとで最終的な文章になったときは、前書きみたいな感じのものかなという気 もしますので、そこは作文をしていただくときに、いろいろご意見をいただくことにい たしましてむしろ実質的なところを議論していただいたほうがいいかと思いますので、 2のほうへ行きましょうか。 【西島委員】  よろしいですか。確かにサービスの質の向上のため、と書いてあるのですが、それと 限られた資源を有効活用できる合理的・効率的なサービス提供体制を築いていくこと。 ということと、サービスの質の向上のためというのが本当にうまく文章として繋がるの かなと思うのです。  資源というのは限られていますから、その有効活用するということは大事だと思いま す。それとサービスの質の向上のためといいますか、これに繋がるかどうかです。例え ばサービスの質を向上するということであれば、資源は限られないほうがいくらでも サービス提供できる、質も向上することができるわけです。それがどうなんだろうかと ちょっと今思いました。 【開原座長】  何かご意見ございますか。 【事務局】  事務局がお答えしていい問題かわかりかねますが、恐らく前提としたら、医療資源と いうのはこれまでである程度限られているという議論がされてまいりましたので、それ がまず前提としてあって、その限られた医療資源を有効に活用できる合理的なサービス を提供をさせというのが、それがひいては医療サービスの質の向上に繋がると、そうい うことでこの文章が出来上がっているのではないかと考えるのでございますが。 【開原座長】  これは事務局が作った意見というよりは、委員の方のご意見がそのままここへ入って いるという理解でよろしいですか。それではこの細かい事項を議論していても、今ここ で最終的な文章を作るわけではないので、ただ今の西島先生のご指摘は大変良く理解で きますので、「ため」と書いてあるからなんとなくひっかかってくるのだと思うのです が、この両方を並列的に書けば、目標としてはたぶん並列的にあってそれをどうやって 実現するかというそのプロセスの問題が次に問われるということなんでしょうね。  だから理念としては、並列的に書いておいたほうがいいのかもしれないので、その後 のプロセスをどのようにするかというところが、むしろその次に書いてある合理的・効 率的なサービス提供体制を築いていくというのは、そのプロセスなのかもしれません。 ですからここは今のご指摘を記録に止めておいて、この文章がそのまま最後の報告書の 中へ生きてきたりするとまたおかしなことになりますから、今のご指摘があったという ことを是非記録に止めておいて、最後の作文のときには注意して考えるということでい かがでしょうか西島先生。 【西島委員】  結構です。私が言いたいのはまさにそうであって、サービスの質の向上、これは努め なければいけないというのは当然のことでございますけれど、それとこれとが私は並列 だと思うのですが。 【開原座長】  他に何かございますか。  あまり座長が意見を言うのもいけないのですが、私はグランドデザインを作るという ことの意味は、そのプロセスとそれから目標を定めておくことによって、世の中の流れ に無駄がなくなるということはあるという感じがします。その目標がわからないとあっ ち行ったりこっち行ったりして、それで結局いろんなところに無駄がでてくる。しか し、ある程度目標とプロセスが掲げられているとみんなその道筋に沿って努力すれば早 くそこへ到達できる、そういう意味はあるのではないかという感じはしていまして、そ ういう意味でこういうものを示しておくというのは大変いいことではないかと感じてお ります。 【井上委員】  わかりやすさということから言うと、数値目標みたいなものは書いたほうがいいので はと思います。ITにはお金が必要ですから、納得していただくために、ある程度の数値 目標をいろんな面で考えておくべきだと。たとえば、医療の安全性の向上については情 報伝達や確認の精度が上がって、情報伝達のミスによるインシデントが、IT化によっ て3分の1ないしは4分の1に減らすことが出来るというようなことも一つの数値目標 ではないかと思います。 【開原座長】  大変これは興味あるご指摘で、要するに最近、数値目標を示すということが世の中で 流行っているというとちょっと言葉が悪いのですが、なるべく数値目標を示そうという ことになっておりますが、我々の委員会の最終的な報告もある程度数値目標があったほ うがいいんですかね。これについては事務局なりのご意見がありますか。 【事務局】  努力の仕方によって十分達成が可能なものであるということであれば、我々としても 積極的に示すべきであろうという認識に立っております。ただ、ハナからできもしない ものを出されますと事務局も大変困るので、そのへんの見極め方を今先生方に十分ご討 議いただいた上で、お示しをいただければそれはそれで我々としても頑張らねばならな いものだという認識は致しております。  ちなみにe-Japan重点計画で3月に出ておりますが、その中でも既に例えば電子カルテ のいろんなフォーマットの問題ですとか、こういったもの標準化にして2003年度までに 行うというようなことが示されたりしておりまして、そういう意味では既にタガがある 部分はめられておりますし、それの延長線上で幾つか数値目標をお示しいただくことは 全然問題ないと我々は理解いたしております。 【藤本委員】  数値目標のイメージですが、医療の質と効率という一番上位のレベルで指標と数値目 標があって、ブレークダウンされた一部を情報システムが担う、という形になると分か りやすいと思います。私が知らないので委員の先生にお聞きしたいのですが、いまの日 本は医療の質と効率というものを数値的にはどう把握しているのでしょうか。どなたに お聞きしたらよろしいものか分からないのですが。 【開原座長】  その一番大きな理念というか目標みたいなものがそもそも数値で示すことが可能なの かというご質問です。ですからそこが可能でなければ、むしろもう一段下のレベルのと ころの数値目標というふうに考えることもできるかもしれません。 【西島委員】  確かに私もそう思いまして、今回でも電子カルテという言葉が飛び交っているわけで すが、実際に私が電子カルテというのを知れば知るほど、これは難しい問題だなと思っ ているのです。実際アメリカの状況などを調べてみましてもほとんど電子カルテが普及 していない、じゃあこの場合には電子カルテを効率化という形で使えるのではないかと か云々と書いてありますが、本当に電子カルテがその目標数値を出してその目標に向か って進んでいくのかというのは非常に疑問なんです。私、決してマイナスイメージで言 っているのではないのですが、現状としてはそうだし例えば歯科だけであればそれは非 常にある程度確定されたものであるだろうと思うのですが、医療というのは各科があり まして、その各科の中での情報も違うし使う言葉も違ってくる云々ということの中で、 電子カルテというのはそういうものを標準化していかなければいけないということにな ると、これは非常に大変な作業がそこにありますし、これは教育の問題もでてまいりま す。そういう意味では、数値目標というのは非常に厳しいのではないかという気がしま す。 【井上委員】  ご指摘のように、医療の質をどう評価するかということ大変難しい問題で、私は医療 情報学会を代表してここへ出ておりますので、ちょっとだけお話させていただきます。  質を問題にすれば必ず医療の評価ということが伴うわけで、評価をいかに適正に行う かが日本の医療の質を上げるために重要だと思います。医療評価の一つの問題は、あく までも相対的評価であって、絶対的な評価はできないということです。比べるためには 公平でなくてはいけない。公平の条件は何かというと、そこを追求した一つの案としてD RGという概念が出てきているのだと思います。いきなりPPSや支払のことでなくて、DRG を基本単位として医療を評価できるようなシステムをITによって築いて行くことが、 一つのポイントではないかと思います。  それではDRG単位で質をどういうふうに評価するかということですが、いろんなことが あります。例えば、前回指摘したようにDRGごとに在院日数や医療費のバラツキの程度が どうかということもあるし、コストがどうかという比較もあるし、アウトカムがどうか という比較もできる。IT化というのは、ハード、インフラだけの問題ではなくて、ソ フトを伴って、医療改革に繋がっている問題だという受け取り方でやっていく必要があ ると思っております。 【開原座長】  今のは藤本委員が医療の質はどうやって測るのかという大変難しいテーマを出された ものですから、この議論をやり出すと大変なことになりますので、 【西島委員】  ちょっと違うのですが、もう少し抜本的に日本の医療の効率の一つとして言うと、ど ういう評価しているのかなという、井上先生がおっしゃっているように難しいことをお 聞きしたわけではないのです。 【開原座長】  ちょっとこの議論は一旦置かせていただいて、今のDRGの問題も今度はむしろ一つのプ ロセスとしてDRGがあるという考え方もあろうかと思いますので、ここの1のところでは 「グランドデザインの策定により目指すもの」ということでありますので、そのへんは ちょっとまた後でどこかで議論する必要あろうかと思いますが、こればかりやっていま すと他ができなくなりますので、いったんこの議論は打ち切らせていただいて次へ行か せていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それではその次の2番目をまた事務局からご説明いただけますか。 【事務局】  2.保健医療における情報化の進展と現状ということでございます。これも平成6年 にお出しいただきました中間報告でございますが、それ以降の情報化の進展と現状とい う意味でございます。  平成6年以降制度的に申しますと、平成9年に遠隔医療、平成11年に電子カルテとい うものが制度的に認められる運びになったわけでございます。現在、社会全体を考えて みましても、社会全体の情報基盤として、5年以内に少なくとも3000万世帯が高速イン ターネットに常時接続可能な環境が整備される予定であること。e-Japan計画のほうで明 記をされておりまして、こういう世の中になってきているという前提がございます。  ただその一方、・互換性、標準化についてはなお、課題が残されているというご指摘 がございました。さらに、 ・情報へのアクセスが用意となった一方、プライバシー保護、セキュリティの確保とい ったようなものが求められているのだというご指摘もございました。 ・情報システムにのせるべき有用な医療情報提供体制というものがまだ整備されていな いという指摘もございます。2につきましては以上でございます。 【開原座長】  これは現状をどう認識するかということですね。現状というか、この間の報告書がで て以降から現在までの状況をどう認識するかという問題だと思いますが、何かご意見ご ざいますか。一言で言えば非常にうまくいったといういうのか、うまくいっているけれ どもいろいろまだ課題は残っているよというのか、全然だめだというのかいろんなニュ アンスで認識はあろうかと思いますが、いかがでしょうか。先生方のご認識はいかがな のかというのを伺っても、これ大変興味ある問題ですがこんなところでさしあたっては よろしいですかね。  ここの認識はずいぶん問題は解決されてきつつあるけれども、しかしまだ残っている しまた新しい問題もでてきたという、一言で言えばそんな感じの認識だと思いますがこ こはよろしいですか。それではその次3番目お願いします。 【事務局】  3番、保健医療情報の活用が医療にもたらすものという項目でございます。この中で は、・電子カルテで診療のプロセスが評価されることにより、医療の質も向上が期待さ れるというご意見。それから ・信頼できるデータの客観的評価により保健医療サービスの質の担保ができる。という ご指摘。さらには、 ・最新の医学情報を迅速に提供することにより、保健医療サービスの質を高めることが できる。というご指摘。それから ・効率的な医療の提供が期待できるのではないか。というご意見もございました。 ・医療へのアクセスの向上性が増すというご意見もございました。 ・どこにおいても正確な情報が迅速に得られることにより、保健医療資源の地域偏在の 緩和ができる。というご意見もございました。これなどは遠隔医療に結びつく話かと理 解をいたしております。 ・情報開示や医師と患者との共同医療の実現につながることを明らかにしたほうがいい のではないかという趣旨のご発言もございました。3番については以上でございます。 【開原座長】  これはいかがでしょうか。そうするとさっきの目標みたいなものを実現する上で、こ の医療情報技術がどういう関わり合いを持ってくるかということがまとめてあるのだと 思いますが、これはさっきのマトリックスで言えばある意味では2番目の欄の手段とい うところですかね。  マトリックスではその手段がこの目標のところの下のレベルに書いてありますから、 その目標を実現するためにはこういう情報的な手段が役に立つというのが、たぶんさっ きのマトリックスの意味ではないかと思いますが、そこに書いてあるようなことが3番 目でうまくまとめてあればいいのかもしれませんが、ここはどうですか、もう少し整理 して書かないと、これは今までいただいた意見がそのままアットランダムにピックアッ プしてあるという感じですが、ここはちょっと整理が必要な感じがします。 【樋口委員】  本当は藤本委員の意見に触発されてということですが、きっと違うことをお考えなん だと思うのですが、先ほどちょっと開原先生から数値目標云々についてとりあえず後で という話だったので、それを蒸し返すようなことになっては恐縮ですが、ちょっと私も いつも話の前置きだけが長くて中身がないのですが、藤本さんのようにちょっとマクロ で数値目標という大きな話を考えていないのです。しかし先ほどの意見で触発されて思 い出したのは、つい最近「ジャーマ」というかアメリカの有名なジャーナルがあります ね、あれを一つだけ読んでいたのですが、それは日本の人が書いて日本の医療の医療関 係の事故の状況それにどうやって対処しているかということについての論文です。その 一番末尾は何になっているかというと、それはアメリカの医学界の雑誌ですからアメリ カの医学界の中ではご存じの方も多いかもしれませんが、何年か前にハーバードのメデ ィカルスクールがニューヨーク州の委託を受けて、これは電子カルテでもなんでもなく てまさに紙のカルテを51,000だったと思いますが、全部精査したと言っているわけで す。そのカルテを見た上で、言葉の上では威厳性というのですか、そういう事故という のがどの程度あって、カルテから推察される限りに置いては法律上の過失を伴うような ものがどのくらいあったかというのを推測している。それでその原因はどういうような もので何によって防げるかという調査ですね、そこへ繋げるためのものですが。  つい最近には、アメリカでもどこでもそういうことをやっているというのは大変なこ とですからそうでもないのですが、やはりコロラド州などで同じような調査をやってい てという話がでているわけです。それでさっき私の読んだ論文では、日本では、私が知 らないだけかもしれないのですが、そういう医療関係のまさに医療の質の向上と裏腹の というか、同じことですが、医療上でいろんな事故というべきだと思うのですが、が起 きたことについてのいろんな研究班でやっておられることなんだろうと思うのですが、 調査というのが大々的には行われていない、非常に残念だという形で、だからこの限ら れた情報の範囲ではこういう論文の推測しかできないという話なのです。  この保健医療情報の活用というところと医療事故の問題をどうやって結びつけるかと いうことですが、あまりストレートに全部が結びつく話ではないと思うのですが、先ほ ど井上先生がおっしゃったように、医療事故の中身の中には分析すれば明らかに情報の 伝達のミス、それがこういう形で電子的な手段をとれば人間的な意味での情報伝達のミ スは防げてというタイプの事故もあるはずなのです。それから他に、結局人間的なミス を防ぐためにこういうIT技術を使えば、きっとこの事故は防げただろうと思うような ものも私ちょっと素人考えで言っているものですから本当に当たっているかどうかわか りませんが、でてくると、でてくるはずだと思うのです。  IT技術というのは、推進を医療の面に応用しようというのはまさにそのためだと、 そのためだけではないかもしれませんが、だと思いますので、ちょっと話を元に戻す と、我が国でまだ十分にそういう実体的な、この保健医療情報の活用がまさに医療にも たらすものとしては、医療の質の向上が期待できるというところへ数値目標とも絡めな がら、こういうような事故、全部について調査する必要はないと思うのですが、ランダ ムに何か調査をした上で、この何%の事故はこの技術の推進によってきっと防げるとい うようなことがでてきたらいいかなと考えてみたわけです。 【開原座長】  ありがとうございました。大変大事な話でありますが、日本というのはそういう大々 的な調査とか大々的なデータベースとかいうのが、できにくいということはこの間も 再々指摘されているところだと思いますが、本当にそういうのが生まれてくるといいと 思います。  今、厚生労働省のほうでも医療の安全の問題は、組織までお作りになって努力されて いると理解しておりますが、今の樋口先生のようなそれを使って、その中でITがどう いうふうに生かされるかというようなそういうデータというのはでてきそうですかね。 【事務局】  日本の中での話というのは、ちょっと今即答する能力ございませんけれども、これも 開原先生のほうがよくご存じだと思いますが、アメリカで情報化によってどれだけ事故 が減ったかという話はあったというふうに、数字は覚えておりませんが記憶いたしてお ります。そのへんのところ、次回また少し参考資料としてお出しさせていただくような ことでよろしゅうございますでしょうか。 【西島委員】  さっきからずっと電子カルテにこだわっているわけですけれど、結局どういう情報が 電子カルテの中に入っていくのかということで、そういう分析ができるかできないかと いう問題も当然のことあると思うのです。ですから必ずしも医療の質の向上ということ の一つのツールとしておっしゃっているのだろうと思うのですが、しかしこの情報を入 れるのは結局人です。今おっしゃったようなことは、実は先ほどから井上先生もおっし ゃっているような様々なレポートの中で、だいたい出尽くしていると思うのです。です からそのあたりを、まさにヒューマンエラーといわれる部分でまさしく人の資質の問題 が今大きく問われてはじめていて、医療事故というのはいろいろ分類しなければいけな いのですが、だいたいそれはわかってきていると言っていいだろうと思うのです。  それでも電子カルテでそういうプロセスがわかって、しかもそういう問題がでてく る。これは本当にわかるのですけれども、先ほどから何回も言っていますようにアメリ カでさえ紙ベースでやっているわけです。電子カルテがなかなか進まないというのは、 入れる情報の標準化というのは非常に難しいのだろうと思うのです。先ほど言いました ように各科ありますから、歯科だけだったら一つに非常に限定されていますけれど、で すからそういう意味から考えて、先ほどの数値目標のところで言うのですが、確かにそ れはできればいいなと思うのですが非常に難しい部分でないかなと思うわけです。  それともう一つは、単なる電子カルテというのは病・病連携、病・診連携という中で どう使っていくのかの中で後にもでてきますけれども、まさしくセキュリティをどうし ていくのかという大きな問題が立ちはだかっているというところで、先ほど私が申し上 げたのはそこなのです。決して否定的に言っているわけではございません。 【井上委員】  まず細かいことですが、電子カルテで「診療のプロセスが評価される」という言葉で すが、「診療のプロセスの支援あるいは制御が行われる」という表現のほうが適切だと 思います。  どういうことかと言うと、診療プロセスにおける「判断の未熟」を電子カルテで支援 できないかということです。経験の乏しい医師の底上げということに電子カルテシステ ムの目的の一つを置くべきではないかという意味です。  それから西島委員ご指摘のように、データを入力するのは医師であって、そこが間違 っていたら電子カルテにしても意味がない。その通りです。それで、電子カルテに期待 していることの1つは、データを入力するときに、そのデータの精度だとか用語の標準性 といったことをチェックできる、つまり入力されるデータそのものの精度をチェックで きる、これが電子カルテのいいところではないかと。たとえば、病名を入力したとき に、その病名が正しい用語かどうかということをチェックして、正しい名前で入れさせ る。あるいは、その病名の診断根拠が妥当であるのかどうかということをチェックリス トを提示してチェックさせ、その病名の信憑性を担保することができる。そのことによ って医療データ全体の精度が高まる、こういう効果を私は電子カルテに期待をしている ということを付け加えさせていただきたいと思います。 【開原座長】  どうもありがとうございました。西島先生のおっしゃっているように、電子カルテと いうのが難しいというのは結局、今の井上先生のお話とも関連するのですが、電子カル テというのは人によって何を電子カルテというかということの多少持っているイメージ が違うものですから、なかなか定義しようと思っても非常に難しくて議論が時々食い違 ってしまうわけであります。そのへんは最終的にもう少し概念を整理したり用語の解説 をしたりということで文章のほうは作っていかなければいけないと思いますが、今日は いろいろご意見を伺うということに止めさせていただきたいと思います。  今の医療事故というか安全性の話はITとはもうちょっと単純なところでもあるので す。例えば今まで手書きのものが電子化されることによって、印刷体になるわけですか ら読みやすくなるということだけでもかなり事故が減るということはありまして、この 間のアメリカのCNNのレポートなどはその点が非常に大きいのだというようなことを 言ってました。ですからこれはいろんなことがあろうかと思います。  それでは次へ行きましてもよろしいでしょうか、次あたりが一番大事な話になってく るわけで、だんだん中身の重要な話になってまいりますが、4番目が今度はその情報化 における目標と書いてありますが、目標はある意味では大きな目標は示されたわけです が、今度はプロセスとその課題ですかね、その話になるわけですがそれではまた説明を お願いいたします。 【事務局】  4番でございます。保健医療分野の情報化における、今は目標と書いてございます が、プロセスかもしれません。目標とその実現に向けての課題ということでございま す。  その中を少し大きくいくつかにまた分けておりまして、その一つ目が○電子カルテの 推進というところでございます。その中で、 ・最初の段階では、それぞれ特有の目的を持った電子カルテという形から入っていき、 それがつながりインテグレートされ立派な電子カルテに発展するという方向を目指すべ きではないかということ。 ・保健医療情報システムの潜在的危険性についての検討と安全なシステムを作るための 検討というものがまず必要ではないかというご指摘がございました。  それから電子カルテといっても、・使い勝手の良いものを作っていかないと、そのも のの標準化すら進まないのではないかというご指摘がございました。  次に○標準化というところでございますが、 ・診療録の電子化を進めるにあたって、用語、コード、様式等の標準化というのを進め るべきであるということ。 ・標準化についてのなんらかの財政的支援はどこが行うべきことかというご指摘もござ いました。  それから○正確性という括りですが、 ・情報の精度、信憑性といったものを担保するために、第三者的な機関というものが必 要ではなかろうかというご意見がございました。  ○制度・運用という視点でございますが、 ・IT化を前提とした制度の整備というものをするべきではないかというご指摘。 ・マスターデータをパブリックドメインの形にしていかねばならないのではないかとい うご意見もございました。 ・情報化に関するリスクマネージメントのコンセンサス形成のため、情報交換の体制が 必要ではないかというご指摘がございました。  ○コスト問題という括りでございますが、 ・情報化の価値を評価した上で経済的インセンティブが必要ではないかというご意見。 ・マルチベンダーの環境下で標準的なものを作るモデル事業というものが必要ではない かというご指摘。 ・情報化と言いましても全てがコストアップ、全てがコストダウンというふうな画一的 なものではなくて、この部分はアップ、この部分はダウンということがございますの で、そこをちゃんと整理して考えるべきではないかというご意見がございました。 ・IT化に要するコストとその価値というものをどのように判断をして、情報化の優先 順位というのをつけていくのかというご指摘がございました。  ○プライバシー保護に関してでございますが、 ・個人情報保護の確保が必要であると。 ・万全な対策をとっていかないと社会的な支持が得られないのではないかというご意 見。 ・診療データベースが医学研究等での二次利用において利用されるならば、それが本当 に安全なんだということをきちんと証明しないといけないのではないかというご指摘が ございました。 ・保健医療情報の活用を進める上で、プラバシー保護の技術基盤は早めに確立する必要 があるというご指摘でございました。これは各医療機関等でもバラバラにやられてはい けないというご趣旨だったと思います。 ・情報保護の問題として、システム全体そもそもの安全性の問題があるというご指摘が ございました。 ・医療情報は誰のもののかという問題を検討すべきであると、これは先ほど樋口先生の お話もございましたけれども、こういうご指摘もございました。 ・個人情報保護基本法の運用に関し、当事者間でガイドラインを作っておいて、自己管 理というのをきちんとすべきであるというご意見がございました。 ・個人を特定する情報が暗号化されておりましても、なお性別、年齢、血液型等の論理 積をとるだけでかなりの絞り込みが可能であることから、どのようにシステムを構築し ていくかということを考える必要があるのではないかというご意見がございました。   ○認証のところですが、 ・認証の問題は、プライバシー保護という視点だけではなく、全ての情報化の基盤とい う視点で扱うべきではないかというご指摘がございました。 ・電子認証における資格認証の基盤整備というものをしっかり行うべきではないかとい うこともご指摘をされております。4番につきましては以上でございます。 【開原座長】  どうもありがとうございました。このへんが実質的な部分になってくる気がいたしま す。そういう意味で少しゆっくり議論をしていただいたほうがいいかと思います。ここ では、○のついている課題自体がこれで足りているのかどうか、まだこれ以外に○をつ けて項目として挙げておかなければいけないような課題が残っているのではないかとい う問題もありますし、それからその○の中身のほうがこういうことでいいかどうかとい った問題もあろうかと思います。ご意見をいただきたいと思います。  これは最初に資料1でご説明いただいたマトリックスで言えば、最後のところに「課 題」というのが書いてあります、そこをある意味では文章化したものだと考えることも できると思います。そういう意味では、それと比べてみるとマトリックスのほうにはあ るけれど、こっちには上がっていない問題があるかもしれません。  順番はどうでもいいのですけれど、真っ先に電子カルテの推進が来るというのはなん となく西島先生でなくても私も多少違和感があります。 【井上委員】  私も多少違和感があります。電子カルテとは何かということをちゃんと説明する必要 があるかと思いますが、なかなか難しいことも確かです。  私は、電子カルテとは何かと聞かれたときに2つの意義を答えています。1つは、 データをデジタル化することだと、もう1つは、コンピューターの制御機能を有効に生 かすことだと。デジタル化するということ、つまりアナログでは何も始まらないと、こ このところが電子カルテの重要なことだと考えております。ですからIT化というの は、医療データのデジタル化を進めることが最初の第一歩ではないかなと。そういう意 味で、電子カルテという言葉をここで出すというならわかりますけれども、しかし、一 般には、電子カルテとは今の手書きのカルテそのままを全部ペーパーレスにしてしまう のだと受け取る方も多いかと思うので、言葉の使い方は確かに難しいと思っておりま す。電子カルテについては以上です。 【石川委員】  電子カルテの件についてコメントさせていただきます。例えば一般の国民が、自分自 身の情報にアクセスしたいと思ったときに、情報バリアフリーという観点からですと、 デジタル化に加えてテキスト化ということが必要になってくると思います。もちろん、 リスクの問題も当然ついてまわってきますが、さしあたりそういったものを捨象して、 デジタル化し、かつ電子テキスト化することによって情報へのアクセシビリティが増す ということを付け加えさせていただきたいと思います。 【開原委員】  どうもありがとうございました。他にどうですか。 【西島委員】  これに欠けているのは教育だと思うのです。教育のところから入っていかないと、こ ういうのは進まないと思います。先ほど言いました標準化云々の話でも、教育の中で標 準化を進めていかないことには一向に進まないと思うのです。先ほど樋口委員がおっし ゃいましたように、こういうものを使えば成果できるということですけれども、その前 段階として教育がなければバラバラの全然違った意味でのデータというのが入っていっ たりするわけですから、そのあたりは入れ込まないといけないのではないかと思うので す。これは文部省の話にもなるかもしれませんが。要は大学医学部の教育の問題です ね。 【開原座長】  ありがとうございました。これは私も大変大事な問題だと思っております。また座長 があまりコメントしてはいけないのですが、私は今の教育の話というのは実は2つある のではないかと思っています。1つは、医療関係者に対してITを教育するという話が あると思うのです。もう一つは、IT技術者を養成するという話があるという感じがし ております。今、病院などで一番欠けているのはITのわかる職種の人で、普通は事務 官や検査技師の中でコンピューターのわかる人を無理矢理に頼んでいますが、どうもそ ろそろそれだけではもたなくなってきているのではないかという感じがしておりまして そういう人がいないものですから結局、産業界に依存したりするということも起こって います。ITを支えていく人を医療界の中に持っていないと本当の意味での医療のIT 化はできないのではないかというのが最近の私の心境ですが、そのへんはいかがです か。 【井上委員】  実際はそういう問題も含めて情報弱者という言葉、適切かどうかわかりませんが、そ れには2つあると思います。情報を提供する側と情報を受ける側です。情報を提供する 側についても教育が必要だったり、情報処理技術者を迎えることなど努力しなければな らないことは多いと思うのですが、僕は、むしろ、医療に限らず情報化社会一般につい て配慮すべきは、情報を受ける側の情報弱者ではないかと思います。よほどしっかりや っておかないと、せっかくの社会のIT化あるいは医療のIT化ということについて、 その恩恵を享受できる国民が限られてくるということをすごく心配するのです。そこの ところはよく考えておく必要がある。それは教育の問題もあるでしょうし、周囲からい かにサポートするかという問題もあるかと思います。  情報弱者のことはいずれゆっくり議論したいのですが、今日、是非、整理していただ きたいのは、IT化というのはすごく費用がかかるので、このコストを誰が負担するか ということです。医療のIT化にはいろいろな目的・利益があることは先ほど来議論さ れている通りですけれども、その目的が実現されたら誰が利益を得るのか?ということ を整理して、それでは誰がIT経費を負担したらいいのかということをこの委員会でも議 論しておいてほしいと思います。  なぜかというと、民間営利企業のIT化というのは、自分の会社の商品やサービスの 品質管理をして商品の価値を高め、同時にそれを生産するためのコストを削減(効率 化)することで安くてよい商品を提供でき、したがって顧客が増えてよく売れて収益が 上がる。だから企業自体が投資をしてIT化を進めるわけです。しかし、医療の場合も 同じように考えられるかどうかというと、そこが非常に私は疑問ではないかと。そこの 筋道をはっきりしておかないと、なかなか医療のIT化は進んで行かない。ちょっと簡 単に考えると、たとえば、民間病院がIT投資をして、それで品質管理をして安全性を 高めて、資源の有効利用で効率をよくすれば、患者さんの人気が出て経営改善も行われ てペイをすると受け取る方も少なくないと思いますが、必ずしもそうではない。せっか く質を高めたり安全性を高めても、それにちゃんとした見返り(診療報酬)が保証され ておりませんから、IT投資は恐らく医療ではペイしないのではないかと思います。だ からITによって本当に安全性向上とか質を向上がもたらされるなら、それによって一体 得をするのは誰かということをよく考えておかないと、医療のITは進まないと思いま す。 【開原座長】  どうもありがとうございました。今2つのことをおっしゃったのですが、最初のほう は教育の話で、情報弱者のデジタルディバイドは、文部省の教育も大事ですが、それで は間に合わない人たちがずいぶんいるわけで、大学をはるか昔に卒業した人は今更文部 科学省に頼んで再教育してもらうというわけにもいかないので、そういう人たちをどう するかという問題は当然あるわけです。  後半のコストの問題は、これはここにもちゃんと○としてコスト問題という形で掲げ てあるわけですが、要するにITの費用を誰がどうやって負担するのかという原理原則 ですね、そこが今、はっきりしていないということは確かにあるので、これをここで議 論して答えが出るかどうかというのも私もあまり自信がないのですが、非常に大事な問 題としてあるということは確かだと思います。  普通の産業界だとIT化してその費用を上乗せするということができるわけですが、 医療の場合はできませんから、それをどうやって捻出するかというのは考えなければい けない問題が多くあるとは確かに思います。  大きな○にあたるような課題で、何か足りないというところはないですか。制度問題 はありますね、セキュリティの問題は確かにある。西島先生からご指摘いただいた人材 養成と教育の問題、これは新しく大きな課題だろうと思います。人材養成という話は確 かe-Japanも掲げているのですね、それからデジタルディバイドの話もe-Japanにはでて くるので、医療でも当然それを受けた形であると思います。  ちょっと私の個人的意見をまた申し上げますと、課題のところなのかITとむしろ上 の3で申し上げたほうが良かったのかもしれませんが、ITによって医療を受けられる 場が広がってくるという話があるのではないかと思っていまして、今までは病院だけで しか受けられなかった医療が、例えば家庭にいても受けられるというような話ですね、 ちょうどITによって家庭にいても働くことができるというのと同じような意味で、家 庭にいてもある程度の高度医療とか、最近は家庭で遠隔医療を応用して自宅でターミナ ルケアをやろうとそういう試みもでてきているわけですが、そういう意味で診療を受け る場が広がるということはあるのではないかと思います。そういう環境を整備していく というのも一つの課題とそれから上の理念みたいなところで入れておいてもいいのでは ないかという感じはしております。 【藤本委員】 最初の1番のところで、「グランドデザインは国民にとってわかりやすいものでなけ ればならないこと。」と書かれています。大きな3番にいろいろな項目があるのです が、これらは医療提供側から見た効果と医療を受ける側から見た効果が混在していま す。、結局医療というのは、たぶん医療提供者と受ける側の共同作業という定義をしま すと、この項目は、その間医療提供側から効果と医療を受ける側からいくのとが混在し ておるのです。今、開原先生がおっしゃったことは医療を受ける側からの効果をまとめ られたものだと思いますが、医療を受ける側(患者さんというのか国民というのか消費 者というのかわかりませんが)からこうなるというのをまとめて、一方提供側はこうす ると、分けて考えた方がすっきりするのではないでしょうか。単なるまとめ方の提案で ございます。 【開原座長】  今のは、まとめ方とし私もさっき一つアクセスのところで、主語が二つあるんじゃな いかということを申し上げたのと同じような問題だと思いますが、そのへんは整理の仕 方としては一つ承っておくべきご意見だと思います。  あとここの委員会のバウンダリーを超えてしまうのかもしれませんが、もう一つ大事 なのは、最近思うのですが情報化が進んできたために医療と福祉が近くなったのではな いかという感じがしているのです。ですから少し他の領域ですね、保健、福祉といった ところが非常に連携が良くなってくるということがあるし、課題として捉えればそれを むしろもっと積極的にやったほうがいいといったことも今言っておいてもいいのではな いかという感じはします。  福祉の世界というのも最近興味があるものですから、いろいろ見たり調べたりするこ とがあるのですがあれもなかなか奥の深い世界です。西島先生、医師会は福祉の情報化 の問題というのはかなりご関心をお持ちでいらっしゃるのですか。 【西島委員】  はい。ですから総合的にやっていかなければいけないいうことで、医師会の総合情 報、地域のここに医療が入っていないのです。 【開原座長】  総合であって。 【西島委員】  総合的にやっていかなければいけないということです。 【開原座長】  医療だけではないということですね。他にご意見ございませんでしょうか。  それではまた元へ戻ってきてもいいので、次へ行きましょうか。 【石川委員】  先ほど座長がおっしゃったことですが、自宅にいて医療が受けられるようになるとい う可能性についての話ですが、それを例えばインターネット病院などとわかりやすく言 ってしまうと言い過ぎでしょうか。これは感想あるいは質問です。例えば初診はともか くとして、定期的に通院しているような場合時間がなくてついつい行けなくてというこ ともあったりしますが、医療の電子化といったようなときに、インターネット病院みた いなことも話として入ってくるかどうかということです。  もう1点は、情報は誰のものかというような言い方を前回不用意にしたのは私なので すが、情報に関わる権限の問題といったらいいでしょうか、コンピューターの用語でい えばリード権とかライト権、それも追記する権利あるいは既に書かれているものを編集 してオーバーライトする権限とか、そういった権限がどのように誰に帰属されるべきな のかといったようなことを含めて、情報に係る諸権利に対して、どのような考え方、ど のような基本的な枠組みでもってやっていこうとしているのかをはっきりさせた上で、 あるいははっきりさせつつ検討していって、その結果を報告していくことが必要なので はないかといいたかったのです。その点を補足というか訂正というかさせていただきた いと思います。 【開原座長】  どうもありがとうございました。最初のほうのインターネット病院というのは、今ま であまりそういう言葉は聞いたことがないので、これは新語として提案してもいいかと 思いますが、今まではバーチャルホスピタルという言葉はあったのです。これはだいぶ 使われていて、今の石川委員がおっしゃったことと似たような意味でバーチャルホスピ タルという言葉を使っている人はいましたけれど。  それではその次の5番の今後の推進方策へ行きましょう、これは大変な問題でありま して、それではご説明いただきます。 【事務局】  それでは5番でございます。今後の推進方策として、これは一つ事務局からのむしろ ご質問というか確認という意味もございますが、計画期間が当初2005年まで、今後5年 先というイメージでしたけれども、本当に5年で良いのかということをご確認をまずさ せていただきたいというのがございます。  それから推進方策の中のご意見といたしまして、 ・電子カルテ・レセプト電算処理システムの推進を図るべきだろうと。次に、 ・標準化を推進するための恒常的な組織というのが必要ではないかというご意見。 ・保健医療面での情報開示とプライバシーに関する社会的コンセンサスの形成というの が、やはり推進方策として要るのではないかと。 ・情報弱者に対する具体的取り組みというものを検討する必要があるのではないかとい うのがご意見としてあったところでございます。以上でございます。 【開原座長】  これはあくまでも今までにあったご意見をそこへ並べたということであって、これに 縛られるということでもないし、またこれに限るということでもないので、大いに議論 をして付け加えたり変更したりする必要があろうかと思いますが、最初にご質問があっ たように2005年まででいいのかというのは、どういう意味ですか。 【事務局】  我々は素人なものですから、考えるに情報化を描くときに当初は10年ぐらいではさす がに長かろうと、10年の間に変わってしまうのでせっかくグランドデザイン書いていた だいても、10年経ったら全然役に立たないものになっているのではないかという心配か ら2005年ぐらいが適当ではないかと思って、2005年を見越したものとしてお願いできな いだろうかという申し入れをしたのですが、ご専門の先生方から見れば、そういう5年 先の設定でよろしいのかというご確認をむしろしていただければということです。 【開原座長】  これはいかがですか。最近はドッグイヤーだと言われている、要するに人間の一生は 60ですけれど、犬の一生は20年か30年ですか、そのぐらい世の中が早く動いていくとい うので、5年先を昔で言えば、もう10年先とかもっと先かもしれないというので、推測 しがたいということなので5年でも無理だというご意見も逆にあるのです。  これはe-Japanも確か5年先になっていたのではないですか、ですからそこはそれに合 わせておくぐらいでいいのではないかと私は思っていますが、本当に5年先のことはわ かるかという人もいるのですよ、情報をやっている人たちは。 【井上委員】  数値目標の話に戻りますが、5年先のことを描くわけですから、5年に見合った数値 目標があってもよいのではないか。たとえば、今、インターネットにアクセスしている 国民は20%くらいということですか、そのうちの45%くらいは健康だとか医療情報の ホームページにアクセスしているというデータがあります。そうすると5年先に国民の 何パーセントの人がインターネットにアクセスしていて、そのうちの何パーセントの人 が健康だとか医療のホームページを見るような時代になっているのか? 医師でイン ターネットやっている方々はずいぶん多いですけれども、電子カルテを使っている医師 は極めて少ないわけです。5年先には、何パーセントくらいの医師が電子カルテを使う ようになっているのか? また、インターネットで調べて病院や医師を選んでアクセス するような初診患者が何パーセントくらいになるのか? そういうことが具体的に数字 で示されると、予測だから多少は狂ってもいい、わかりやすいのではないかと思いま す。 【開原座長】  確かに5年先ぐらいの数値というのは情報関係のいろいろな資料を見ていると出てく ることはありますね。だけど10年先というのは予測した人というのはほとんどいないの ではないかな。  雑談して申し訳ないのですが、昔医師会のお手伝いをしていた頃に、やはりそういう 問題があって、少し先のことをイメージしたほうがわかりやすいのではないかというの で、「一太郎医師などの物語」というのを物語りにして書いたのですが、あれは確か10 年先のことを書いたと思うのですが、今から考えると10年先だと思っていたことがもっ と早く実現したようなところもあったような感じが私はしていますけれど、それはそう として特にご異論がなければ、谷口室長のご提案の5年先というのは大変リーズナブル な数字ではないかという気がしております。  5年問題はそれとして、あと今後の推進方策というところにここでは4つ書いてある わけですが、本当にこの4つだけでいいのかどうなのかというのは大問題でありますの で、ここは少し別に今日に限ったことはないと思いますが、繰り返し議論になる可能性 はあると思いますが、今でもどうぞご感想なりご意見なりおっしゃっておいていただい たほうがよろしいかと思います。  さっきの西島先生のおっしゃった教育の話を情報弱者に対する取り組みというのを、 もう少し枠組みを広げて、単なる弱者だけでなくもう少し全体のレベルアップをすると か、あと技術者を育てるとかそういうぐらいにして少し枠を広げたほうがいいような気 はします。もちろん情報弱者も非常に大事ですが。 【藤本委員】  5年間の推進方策としてこれらの項目が並んでいますと、全部を並行して進めるよう にも取れますが、やはり5年先をビジョンとして掲げた場合、そこに至る組立がほしい と思うのです。5年先のことを描くのだけれど、そのためには1年でこれをやって2年 で、3年とそういうことがここで出せればと思います。そういう意味では、プライバ シー保護だとか認証だとか、産業界だけで決められる話じゃないことは早めに基盤とし て築き上げられると、その上でいろんなシステムを作りやすいと思いますので、早めに やっていただきたいなと思います。  と言いますのは、今は多分個々の病院のシステムを構築するときに先程申しました基 盤部分についても個別に気を使わなければいけなくなっていると思うからです。プライ バシー保護と認証は、私が思いついただけで他もあるかもしれませんが、基盤を先に築 くという組立がほしいなという感じがいたしました。 【開原座長】  ありがとうございました。今のはさっきのグランドデザインを示すことの意味という 一番最初の議論にもあることだと思いますが、少なくとも走るべき方向だけは早めに示 しておいたほうがいいと思います。早めに示しておけば、あとは民間がそれに乗って自 力でおやりになるということは当然あると思うのです。方向がわかっていないとみんな 怖くて走れないという状況もあると確かに思うのです。ですからこの推進方策もどの部 分をいつやるかという、時間的なプロセスに細かく分けて議論する必要があろうという 気はします。 【医政局長】  いろいろ整理しなければいけないなと思いながら聞いておるのですが、特に4のとこ ろでコストの問題がでているのですが、もちろん行政なりの役割もあると思いますが、 特にメーカーサイドでもう少しコストダウンのために何が障害になっていて、そのため に何をしなければいけないのかということを是非入れていただきたいと思います。 【開原座長】  どうもありがとうございます。これはむしろ6番の関係者の役割分担というところで も議論するべき問題かもしれません。産業界の役割というのも当然あると思いますの で。 【西島委員】  まさしく今局長がおっしゃったのが、今回の中で変わってきた部分なのです。まるで ほとんど標準化と言いますかそういうのがなされていない。例えば電子カルテに関して もバラバラと開発をしている。そういう中でそれぞれが動くものですから高い値段とし て販売されてきているということは今まであったと思うのです。その他の機器も含め て、そういう意味でやはり企業が幾つかの企業が一緒になって開発していくという、例 えばパナソニック型なんとかということでなくて、そういうことはやはりある意味では していかないといけないのではないかという気がするのです。そういうことによって標 準化されれば、それの次のステップはそれぞれの企業が企業努力をしてコストダウンし ていくのだろうと思います。  それからもう一つ、この推進は今後の議論になるんだろうと思うのですが、いろんな 推進をしていくということになると、だいたい医療の分野では診療報酬で誘導していく というようなことがあるのです。それはちょっと違う話だと私自身思うのです。ですか ら今後の議論だろうと思いますが、推進というのは別の意味で考えないといけない。  それから次の標準化を推進するため恒常的な組織という、この「恒常的な組織」とい うのが実は今まで標準化というのを壁を作ってきたという気がしないでもないのです。 そういう意味で、このあたりも今後の議論だろうと思いますけれど。 【開原座長】  ただ今の西島先生のご意見は大変大事な問題をたくさん含んでおりまして、私もその 背後にある西島先生のおっしゃったことがよく理解できるのですが、ちょっとここで今 議論できる問題ではないかと思いますが、いずれ是非議論していただくといいかなと思 っております。 【井上委員】  標準化だとかインフラというのですか、基礎的な共通部分というのは、これは5年間 でどこまで行くのだということをきっちりと推進計画を立てる必要があると思います。 先ほど開原委員長が、そうすれば民間の努力でどんどん進んでいくのではないかとおっ しゃったのですが、そこのところがちょっと疑問なところがあります。医療というのは 一般の営利企業と違って、放っておいたら勝手にIT化が進んでいくかというと、そう でないところがあるからこそ、いろんな行政的な取り組みが必要ではないかと感じるの です。  僕は、推進方策として、モデル事業的なものを上手にやって、その結果を示すという ことが一番の早道ではないかと感じております。 【開原座長】  これもまた大変興味ある問題で、これはそのコスト問題のところの一番最初に、情報 化の価値を評価し、経済的なインセンティブが必要ではないかという意見があるわけで すが、経済的なインセンティブをうまく使って情報化を進めていくというのが今の井上 先生との対極的なご意見ですね。もちろん今の民間の産業の場合はだいたいそういう形 で進んでいるのだと思うのですが、医療の場合にはその方式が駄目なのかということは 大問題なのです。これもここで議論しだすと、これだけで何時間でも議論できる話では ないかと思います。ちょっと産業界のご意見を伺いましょうか。 【細羽委員】  医療のIT化がローコストにも実現できれば一つの産業として成り立つということに なりますので、私ども努力しなければいけないわけでございます。けれども、本日の最 初のお話に戻ってしまうような気がするのですが、IT化に対して対価を払うというこ とになりますと、やはり医療の質あるいは医療サービスの効率化のレベルといったもの が評価されないと、なかなかそれに対して答えが出ないような気がしております。その あたりがもっと明らかになっていけば、コスト問題も、もう少し明確になってくると思 われます。ということで、最初に戻ってしまって申し訳ございませんがそのようにとら えております。 【開原座長】  今の点などが結局最後の関係者の役割分担というところになってくるのかもしれませ ん。何が民間でできて何が民間でできないのかという、したがって6のほうへ少し議論 を進めさせていただきたいと思います。これのご説明をお願いします。 【事務局】  それでは最後の6番、関係者の役割分担というところでございます。 ・民間のイニシアティブを発揮してもらうため、情報化は民間主導という考え方のもと で、政府は民間活力発揮のための環境整備に徹するべきではないか。このような理念の もと、官民の役割分担をどう整理するかというご意見がございました。 ・学会はどのような役割を果たすべきかというご指摘もございました。さらに、先ほど の話から続くような気がいたしますが、 ・情報化の費用は、誰がどのように負担をするべきかというご指摘もございました。以 上でございます。 【開原座長】  これも大変大事な問題で、もしこれを本当に盛り込むとすればどのように書くかとい うのはいろいろ議論がでてくるところだと思いますが、その前哨戦みたいな形でもし何 かご意見があれば、今のところはいろいろな意見が併記されているという感じだとは思 いますが。どうぞ。 【藤本委員】  最初のポツの「民間主導」に関してですが、「民間」が意味するところは「民間の医 療提供者」もあれば、「民間の企業」もあるわけですね。ここでいう「民間」どちらの つもりでしょうか。私は「民間の医療提供者」ととったのですが。 【開原座長】  確かに今のご指摘も大変大事なので、医療界にも民間と国がある、産業界は民間だと いうことですが。 【事務局】  失礼いたしました。この6の1ポツにつきましては、これは委員の先生のご発言とい うことではなくて、e-Japanに書き込んである文章だということで、こういう意見があっ たということではないということでございます。ちょっと私のプレゼンテーションが間 違っておりました。ですからe-Japanの話でございますから、必ずしも医療機関を想定し た書きぶりではないのだろうということでございます。 【開原座長】  そうですか、なるほどそうなるとたぶんe-Japanの民間というのは確かに産業界を指し ているのです。ただ医療界は今まさに藤本委員がご指摘のように、産業界が民間だけで はないのです。ですから西島先生のところも民間になってしまうわけですからね。です からe-Japanの文章をそのまま持ってくると確かにいろいろ誤解を招くところもあるし、 また舌足らずになりますので、これはそうすると改めて医療界で議論し直してみる必要 はありますね。 【西島委員】  民間という言葉は非常に難しいと思うのです。ですからこういう言葉を使うと皆さん 方からご批判を得るかもしれません。一つにやはり継続性だと思うのです、一つの目標 に向かってのですね、そのあたりで民間人の民間をどういうレベルで民間というのかど うかということですけれども、やはりその下におられる患者さんなり、医者なりがどう いう目標に向かってやっていくのか、ではその人たちの中にニーズを捉えていかなけれ ばいけないわけで、それを先ほど言いました診療報酬云々という話が実はそこでして、 上から押しつけるということではこれは進まないだろうという考え方だと思うのです。 そういう意味での民間という捉え方をされればいいのではないかという気がします。官 と民という意味でのですね。 【審議官】  この資料2につきましては、いわば私どもは論点整理のさらに前の段階のものという ような意識で作っております。従いまして今、民間と政府というようなものも、IT化 の問題を論じるときに一般的にはこのように論じられておりますが、これを保健医療の 分野でやっていく場合、それも例えば電子カルテだとか遠隔診療だとかそれぞれの分 野、いろんな分野についてやっていく場合、それからプライバシーの保護だとかコード の統一化、認証だとかそういった様々な個別項目について丁寧にそれぞれ関係者の役割 分担なり例えば政府がやるとしても補助金なのか、診療報酬なのかあるいは税制なのか 様々な手段を書き込んでいかなければならないと思いますので、そういった意味で一般 論として議論しても中にこれ以上は入っていかないのではないかと思いますので、これ は前回までの先生方のご意見を、論点整理風に整理するとこういうことになるというこ とだと思いますし、サブスタンスのほうはここにはでてこないわけですのでそういった 意味で電子カルテだとかそういう推進すべき分野なり、それからクリアしなければなら ない課題なりそれぞれについてこういう役割分担という観点から記述していくなり、整 理していくと、このように整理されるのではないかということを盛り込まないと最終的 な成果物にならないというような発想で書かさせていただきましたので、むしろこうい う論点があると、レベルの問題は別にしてあるということを今日言っていただきました ら、それを踏まえて各論に入っていくというか、さらに作業を進める場合にはあらゆる 項目について役割分担から見ると、このことを踏まえながらどう整理していくかという のをまたお出しして各論として議論していただいたらどうかと思っています。 【西島委員】  そういう意味で、ニーズであれば当然これは医療というのはサービス業なのです。こ ういうふうに限定するといろいろ言われる人もいらっしゃいますがサービス業なんで す。ですからニーズがあればそのニーズに応えていかなければいけないわけです。そう いう意味では、必要であればそれはどんどん推進されていくでしょうし、しかしよく議 論されないまま一つの目標があって、その中にある意味では少し強制的に持っていくと いう考え方であれば、どこかでこれ間違ってくるわけです。しかも先ほどお話の2005年 でいいかどうかというのはまさしくそれだと思います。ニーズが変わっていくわけで す。そうするとただもうこれで目標設定した、これで行かなければいけないのだという ことではないだろうと思います。ニーズというのはどんどん変わっていきますからね、 そういう意味で私は民と官の違いだと思っています。  それともう一ついいですか、これはどこに入れるのか一番最初のところで入れるのか 要するに基本的な確認が必要だろうと思うのです。それは何かというと、医療というの は人間が人間に対して提供するサービスなのです。ここが他の様々な企業の話も今日も でましたけれども、そこが違うところだと思うのです。人間が直接人間に対して提供す るサービス、ですからそれと同時に人間ですから100人いれば100人全部状態が違う、特 に病気の場合はですね。そういうことも全く前提にして議論をしていかないと、確かに 効率化というのは他の企業でしたら、確かに効率化できるでしょうが医療の場合はでき ない効率化がたくさんあるわけです。効率化したことによって実は事故が起きたという こともあるわけで、そこでなんで批判されるかというと一度事故が起きればその人の命 がなくなるわけです、そういうところが非常にポイントとして重視して話を進めていか ないといけないのではないかという気がします。 【開原座長】  ありがとうございました。今の話はたぶん理念のところにまず書いておくべき問題か なという感じもいたしました。  私がまた余計なことを申し上げますが、全体を通してみて一つ欠けていると思うとこ ろがあるのですが、それはマトリックスのほうには書いてあるのですが、EBMという かコンテンツのほうの話です。情報化を進めていく上ではコンテンツを持ったデータ ベースを誰かがどこかで作っていかないと、本当の意味での、例えば医療の質の向上を やろうと思っても武器がないという話になってしまうと思うのです。そういうコンテン ツづくりというのですか、EBMの基盤づくりというのかそのへんが、この資料2のほ うにあまり明示的に出てこないような感じもするのです。 【事務局】  確かにおっしゃる通り、はっきりとは書いてはいなかったのですが、2の最後のポツ ですが、情報システムにのせるべき有用な医療情報提供体制が整備されていない。とい うところで例のデータベースというか、それの基になるガイドラインの話ですか、その へんもちょっとこのへんに含ませたつもりではおったのですが、確かにわかりにくいの でそのへんまた再考させていただきます。 【開原座長】  なるほど、そうするとこれは医療情報提供体制でなく、医療情報のコンテンツが整備 されていないという意味ですね。 【事務局】  体制も含めて。 【開原座長】  コンテンツと体制がないと。そうすると問題認識が2に書いてあるのですが、それを 受けるところの4があってもいいのかもしれませんですね。  それではいかがでしょうか、何か全体を通して他にお気づきのようなことがあります か。 流通体制を今盛んにe-japanなどで言っているのはe-コマースという言葉ですが、 医療のe-コマース的な話というのは、これはあまり強調しても意味ないですかね。 【医政局長】  バーコードシステムの医療器具がありますね、そういうテーマがあるのでしょうか。   【開原座長】  ええ、何かその流通体制をもう少し近代化してもいいかなという感じはしているので すけれども、そのへんは皆様どういうふうにご認識でいらっしゃるか、そのへんはどこ かにでてきましたか。 【事務局】  そのあたりはあまり書いてございません。 【開原座長】  医師会は流通体制のご関心はありますか。 【西島委員】  いえそこまではでませんでした。 【開原座長】  e-コマースまで行くかどうかは別として、確かに今局長がおっしゃったように、もう 少しバーコードを使ってモノの購入、在庫管理などをやるといった話は考えようによっ ては大きな話で、1医療機関だけがやっても駄目なので産業界が全部協力しなければ駄 目だとか、そういう話にもなってくるのでそうなると誰か旗振り役が必要になってく る。そうするとこれもグランドデザインで示しておいた方がいいという話になる可能性 はあるのですね。 【西島委員】  今の話は恐らく大規模の医療機関の話だろうと思うのです。どちらかというとそうい う物流の話はですね。ですからこれは少し分けて話を詰めていったほうがいいのではな いかと思います。扱う量が全然違いますから。 【開原座長】  ただ診療所でもそれをやると結構便利なことあるんじゃないですか、最近家庭でも例 えば文房具をインターネットで買おうというのがありますね、そうなると結構便利かも しれないので、必ずしも大病院だけでないような気もしていますがそのへんは今議論し ても。 【西島委員】  そういう意味でだったら当然あるだろうと思いますが、もうちょっと違う意味でのこ れは物流云々だったのです。効率化のところで書いてあるところを読んでみますと、ち ょっとそう思ったものですから。 【開原座長】  他にご意見ございますか。それではそろそろ時間になりますので、今日のところは大 変いろいろご議論をいただいたということで、今日、別に結論を出さなければいけない わけではないので、今日いろいろいただいた意見を再び盛り込んでだんだん精緻な報告 書的なものを作り上げていくということになるのではないかと思いますので、また事務 局のほうにご苦労をおかけするのではないかと思いますが、どうぞよろしくお願いを致 したいということでございます。  局長、審議官がご出席いただいておりますが、何かございますか。よろしゅうござい ますか。  それでは次回のことをご相談させていただきたいと思いますが、6月21日の10時 からということにさせていただきたいと思います。  それでは本日は、これでお計りすることは終わりだと思いますが、特に事務局のほう からございますか。 【事務局】  最後にお願いばかりで恐縮でございますが、委員の先生方時間が足りなくて発言でき なかったこと、もっと間違っていると指摘したかったことございましたら遠慮なく事務 局のほうへどうかご意見をお寄せいただきますようによろしくお願い申し上げます。 【開原座長】  それでは今日は大変ありがとうございました。 +---------------------------------+ | 照会先:医政局研究開発振興課 | |        医療技術情報推進室| | 担当 :武末、植田 | | 内線 :2589 | +---------------------------------+