01/05/14 第2回保健医療技術情報普及支援検討会 第2回保健医療技術情報普及支援検討会 平成13年5月14日(月)15:00〜16:30                       厚生労働省別館特別第1会議室 1.開  会 【武末補佐】  定刻を過ぎましたので、ただいまから第2回保健医療技術情報普及支援検討会を開催 させていただきます。本日の検討会も公開でございます。また本日は、葛西委員が欠席 されております。桜井委員も多少遅れてまいられるそうでございます。  それではこれより高久座長に議事進行をお願いしたいと思います。 【高久座長】  本日は週の初めのお忙しいところ、また暑い中、お集まりいただきましてありがとう ございました。それでは、まず事務局のほうから、資料の確認をよろしくお願いいたし ます。 【武末補佐】  それでは、お手元の資料を確認させていただきます。厚い冊子で「第2回保健医療技 術情報普及支援検討会議事次第」という資料がございます。それに、1枚めくっていた だきますと、右側に資料1と書かれた「第1回保健医療技術情報普及支援検討会 議事 要旨(案)」というものがございます。続いて、4枚めくっていただきまして、右肩に 資料2と書いた「診療ガイドラインの作成の手順 ver.4.1 」という資料がござい ます。続きまして、右肩に資料3と書いてございます「平成12年度厚生科学特別研究事 業 EBMを指向した『情報科学センター』機能の設置効果に関する研究 健康情報セ ンターの役割と機能」という資料がございます。さらに、右肩に資料4と書いてござい ます「医療のスリム化と質の保証を可能にする『コンビニ医療』」という資料がござい ます。さらにめくっていただきまして、右肩に資料5と書いてございます「米国におけ る医学・医療情報サービス」という資料がございます。  この資料に加えまして、別にB5判の小さい冊子の「米国ピッツバーグ地域における 消費者健康情報サービスの実施調査報告」という資料と、もう1つ、A4判で「米国に おけるEBMを支援するNLMを中心とした情報サービスという資料がございますが、 全部おそろいでしょうか。 【高久座長】  資料はお手元におそろいでしょうか。 【久繁委員】  小さいほうが、私のところはないんですが。 【高久座長】  ああ、これですね。わかりました。よろしいでしょうか。それでは議事をさらに進め させていただきます。 2.前回議事録について 【高久座長】  資料の「前回の議事要旨」について、事務局のほうから説明しなければならないこと がありましたら。何かありますか。 【武末補佐】  資料1のほうに前回の検討会での議事要旨を添付してございます。検討会の時間も限 られてございますので、後ほどご一読いただきまして、何かお気づきの点がございまし たら、事務局のほうまでご連絡いただければ幸いでございます。また、本日は2回目と いうことで、ある程度具体的な方向性を示していただきたいと思いますので、よろしく ご議論のほどをお願いいたします。  (1)診療ガイドラインの作成の手順(福井委員) 【高久座長】  それでは、そういうことで本日の議論を進めさせていただきたいと思います。まず本 日は現状の把握ということで、診療情報が実際にどのように運用されているのか、この 問題については前回もご議論がありましたが、福井委員と久繁委員の両方にご説明をし ていただいて、そのあと少しまた議論をしていただきたいと思います。  最初に「診療ガイドラインの作成の手順」ということで、福井委員からよろしくご説 明、お願いいたします。 【福井委員】  厚生省からの研究費で、今12の学会で診療ガイドラインをつくっていただいておりま す。当初、私たちは一定の手順でつくっていただけるものだというふうに何となく思っ ていたのですが、かなりつくり方が様々だということが分かってきました。そこで、国 立公衆衛生院の丹後先生とご一緒に、何名かで、昨年の10月以来、現在のところ最も適 切な診療ガイドラインのつくり方というのをまとめ、それを各学会に配付させていただ きました。簡単ですが、内容について説明させていただきます。  資料2の1ページ目の真ん中から次のページに、手順を14項目書いております。最初 に「診療ガイドライン作成のテーマを明確にする」。それから「作成委員会を設置す る」。 その中に、プライマリー・ケアの医師を含め、診療ガイドラインをつくる方法論の専門 家、そしてできましたら、それぞれの当該テーマの病気の経験者なども入っていただい てつくるということが、欧米では行われているということを書いてあります。3番目 が、リサーチ・クェスチョンを明確にする。4番目が、それぞれの疑問点について文献 を検索いたします。このステップで、恐らく医師だけではなくて、図書館の司書の方、 そのほかのいろいろな方の援助をいただくことが多くなると思います。  5番目が、ある一定の基準で検索した文献を診療ガイドライン作成に採用するものと 採用しないものを、明確な基準を設けて仕分けするということであります。6番目が、 採用すると決定した文献1つ1つについて、研究デザインが特に大切なのですが、妥当 性についてチェックをします。7番目が、それぞれのチェック項目についての一覧表を 各文献についてつくります。8番目が文献の記載スタイルでありますが、バンクーバー ・スタイルに則ることをしました。  9番目が、得られた文献のエビデンスのレベル分けであります。実はここのところが 重要でして、5ページの[註9−B]に書いてありますが、国際的にもほぼこれに則っ た分類が行われておりますので、私たちも、「同じようなテーマについて異なる研究、 デザインが用いられている場合には、とりあえずは、システマティック・レビューが行 われているものの結論を一番重視しましょう」というふうに、1番目から6番目までに エビデンスを分類しました。  10番目が、そのようなエビデンスのレベルに基づいて勧告を、リコメンデーションを つくる段階になります。5ページの[註10A]にありますように、エビデンスのレベル 以外にも、このような要素を考えた上で勧告をつくる必要があります。私は個人的に は、このプロセスが非常に大切だと思っております。エビデンスのレベルでそのまま自 動的に勧告がつくられるものではございません。それ以外にもいろいろなファクターを 考えなくてはならないということであります。  11番目が、そのようなリコメンデーションを網羅した診療ガイドラインを一定のフ ォーマットでつくっていただきたい。  12番目が、ガイドラインを公表する前に、できましたら作成委員以外の者による評価 を受けていただきたい。評価のしかたについては、6ページに書いてありますように、 これはいくつか提唱されております。例えば25項目の評価項目があり、このうちのいく つを満たしているかにより判定します。「半分以上を満たしていないからクォリティー があまり高くない」といった判定をいたします。  13番目が、作成後のアウトカム・スタディーになります。「つくった診療ガイドライ ンが実際にどれくらい医師の診療行為を改善するのに役立っているのか。または患者さ んのアウトカム、健康状態を改善するのに実際にどれくらい役立っているか」という評 価も、何年間かかけてでもぜひ評価していただきたいと思います。  14番目が、何年間かの間に改訂が必ず必要になりますので、そのこともそれぞれの学 会でアナウンスしていただければありがたい。以上のような手順で、現在作成中の診療 ガイドラインをつくっていただければ、利用するほうとしてはかなり助かるのではない かと考えます。以上です。 【高久座長】  今、福井先生のほうから「診療ガイドライン作成の手順」ということでご説明があり ましたが、どなたかご質問は? これはもうできて、配っているわけですね。まだ? 【福井委員】  はい。学会のほうにはお配りいたしました。 【高久座長】  この中で「診療ガイドライン作成の専門的知識を有する者」という項がありますが、 確かにそうなのですが、こういう人はそんなに多くはないですね。 【福井委員】  はい。多くありません。 【高久座長】  それでも、できるだけそういう人を入れてもらいたいということですね。ほかにどな たか? 【久繁委員】  今、12ガイドライン作成されていますが、この手順でもういっぺん、最終的には報告 はそれに基づいて受けるということになっているわけですか。 【福井委員】  できましたら、これに基づいて評価をさせていただきたいとは思っております。公表 するかどうかとは別に、フィードバックをかける必要があると思います。 【高久座長】  それに、現在できているのも、いずれ改訂をしなければならないと思いますので、改 訂のときにはぜひこれを参考にして、と言っていることになると思います。  (2)健康情報センターの役割と機能(久繁委員) 【高久座長】  では次に、引き続きまして久繁委員のほうから、「健康情報センターの役割と機能」 ということで、イギリスの電子健康図書館の事例などをご紹介していただければと思い ます。久繁先生、よろしくお願いします。 【久繁委員】  OHPを使ってご紹介させていただきます。お手元には資料がこの中に入っていると 思いますので、それを見ていただければと思います。  現在、国際的には、健康の情報センターという形で、アメリカ、イギリスを中心にか なり進んだ形で情報提供と活用、それから普及が行われています。アメリカのほうはま た別の方が紹介されるとは思いますが、非常にコンパクトで使いやすい形で、今、作成 されて、恐らく2002年に完成すると思いますが、イギリスでそういう健康情報センター といいますか、電子図書館みたいな形で進められているということで、そういうものを 考慮に入れて、日本で情報センターをどうするかということで。これは最後のところに あるのですが、日本の情報センターということで、良質な医療の提供を促進するため に、とにかく一番新しい情報を、一番望ましい情報を利用すると。  この組織のほうは、日本でもしこういう健康情報センターをかなり広範囲な内容につ くる場合は、だれが主体となってやるかというということですね。多くは、アメリカ、 イギリス、カナダも含めて政府がそういう支援、それから機関をつくってやっているの ですが、これはいろいろ考え方がございますので、検討していただきたいですね。  3番目。利用者は保健医療の各従事者。それから3番目、非常に重要なのは患者、国 民となります。  具体的な内容は、先ほどから論議が出ていますが、ガイドラインというのは非常に重 要なのですが、ガイドラインはこの健康情報のごく一部で、そのエッセンスはどうやっ て使うかというところが中心になりますので、それは非常に主要な機能なのですが、そ のほかに実際にまとめられた知識、一応ふるいにかけて良質な情報だといわれているも のについて、どうやってアクセス、利用できるかという2番目。それから3番目。その 使い方だとか人をどう組織して管理するかという知識管理ですね。それから4番目。こ の前もお話ししたのですが、特定の課題、例えばがんだとか小児医療だとか母子保健だ とか、そういう特定の領域ごとにテーマを決めて情報提供する。それから5番目に患 者、国民向けの専門のサイトをつくって情報提供する。その中身もかなり考慮してやる ということが、課題になるのではないか。  ですからこの5つぐらいのテーマを、全体を統合するような形で1番目に健康情報セ ンターというのがあって、その中で、ガイドラインを含めて主要なところをそれぞれセ ンター化して、それを有機的に結びつけるということが非常に重要なのではないかと。  イギリスのほうは1988年から、かなり大がかりな健康情報、特に診療評価を含めて改 革が進められて、こういうNational Electric Library  of Healthと。電子図書館、健康図書館というふうに勝手に訳していますが、 これはNational Health Searviceが運営しているのですが、 これもやはり「いちばん新しい情報でいい情報を、いかに早く使って成果をあげるか」 ということに目的を置いています。役割もここに書いていますように、「そういう保健 医療を使うときの判断をいかに支援できるか」ということです。  この組織構造を見ていただくと、やはり知識の適用法というのは、これは実際に診療 現場で、もしくは保健の現場でどう使うかということで、ガイドラインが中心になりま す。それからこれは一応情報の質をふるいにかけた情報のデータベース、そういうもの をいかに迅速にかつ効率的に利用するかと。それからこれが、先ほど言いました知識の 管理です。どういうふうにマネージメントして人を育て、その使い方を教えるかという リテラシーの問題ですが、そういうものを健康情報学とともにやっている。  それから4番目に、これは最初の構想では、1988年の構想では、患者向けの情報サー ビスは独立したのをつくる。これは健康の電子図書館から少し外しまして、独立して大 きい組織を立てています。イギリスの現在の中には、これは含まれていません。  それで実際に何が目的かといいますと、とにかく時間的にこのような論議といいます か、緊急に早く最新最善の情報を利用できるかどうか。そういう課題が達成できるかど うか。患者の対応は15秒以内ということで、患者について症例検討するときは2分以 内、トレーニングは1週間以内で、そういう最新最善の情報をちゃんと利用できる。こ こに情報の内容を書いていますが、個別の患者に検討する場合、2分以内でガイドライ ンが、そういうエビデンスに基づく情報を整理したものについて、2次的な情報をちゃ んと使えるようにするかどうかということがある。実際にトレーニングだとかベッドサ イドの教育では、そういう本文を全文利用した形でやる。というようなことを念頭に置 いて、電子健康図書館というのをつくるということが進められているわけです。  ただ、恐らく情報も、すべて情報が利用できるような形になっているわけではなく て、研究が発表されていない場合は登録の業務というのが結構重要でして、がんの臨床 試験なんかそうですが、そういうのを進めると。研究が多量にあって情報が混乱してい る場合は、システマティック・レビューという、ガイドラインの前の段階ですが、そう いう個別のテーマの評価をちゃんとやって、情報を管理するような形です。だから研究 の把握が困難なコクラン共同なんかでは、そういう各テーマごとに情報を集めて、今あ る情報を全部集めて質を評価すると。  で、研究の問題があるのですが、これはエビデンスをつくるほうですが、そういうこ とを進めるというようなことをちゃんと対応する。ですから、そういうのを含めて構想 を立てようという話でやられています。  実際に利用者と情報源ですが、公衆衛生の場合、保健の場合には、こういう増進だと か予防についてどういうふうにするかということになりますが、ここに「われら健康な 国民」という、「健康日本21」と同じような形で、イギリスでは10年前からやっていま すが、それぞれウェッブサイトがありますから、即そこへ入って情報をすべて把握でき るというような格好になっています。そういうウェッブサイトがいくつかありますか ら、そういうところに入っていく情報と。まあ臨床行為の場合には、そういう多様な判 断とか診療タイムですね。そういう根拠に基づく判断ができるかどうかということで、 これも領域がありますから、いろんな領域が情報に入っていけると。で、EBMセン ター。  それから患者のほうは、先ほど言いましたが直通のオンラインをつくって、患者向け に24時間態勢で提供すると、こういう具体的な情報源として利用者を想定してありま す。で、実際のウェッブはこういう形で出てきています。これも最近、2000年からパイ ロット版が出て、2001年もまだパイロット版だと思うのですが、かなり整理された形 で、ここでガイドライン、いかに情報を使うかというコーナーがありまして、ここにそ ういう情報、しかももうふるいにかけられた情報ですね。そういう知識。それからここ に、各健康問題別のバーチャル・ブランチ・ライブラリーというのがありますが、仮想 の分館みたいなもので健康状態についてそれぞれあると。この3つが、大きな基本にな っています。  で、実際にガイドラインという「知識をいかに使うか」というところは、ここにあり ますように、目的はそういう明確な知識を早く、しかも系統的に集めて臨床の場でいか に使えるかということで、イギリスはNICEというところでガイドラインの作成と検 討を行っていますが、そういうデータベースがあります。それから電子図書館のガイド ラインのデータベースを独自に一応つくっています。これはまだ非常に不十分ですか ら、内容が限られておりますが。  それから、国家のサービス基準。医療の基準についていろんな情報を集めて評価した ものですが、そういうようなネットワークだとか、そういうものを使って、実際に使う 情報を提供すると。これがNICEのところを引けば、そのままNICEの関連の医療 技術を評価した情報が、こういうもうガイドライン風にまとめられています。ですか ら、消化性の潰瘍だとか高血圧とか、様々な問題がかなりもう膨大に作成されてありま す。それはガイドラインの場合もあるし、ガイダンスということで少しゆるい場合もあ りますが、そういう内容が引けるということです。  これが実際にいかに現場で使えるかというような、組織でそういうものを使って医療 の質を、保健の質を改善するということなのですが、その前段階で知識ですね。もとに なる情報をどうするかということですが、毎年200 万点ぐらいどんどん出されて、それ をすぐに利用できない。ただし、利用する場合もちゃんと質を評価してふるいにかけ た、もともとの情報を見てやるとして、それは研究だとかそういうようなことはいいの ですが、日常診療に使う場合はかなり遅れますから、そういうものをもうあらかじめE BMの基準に基づいて評価した情報ですね、そういうものをやる。  ここにありますが、これもウェッブサイトがそれぞれありますから、そこに入ってい けば大体、ほとんどの情報が把握できると。クリニカル・エビデンス、今、日本でも訳 されていますが、それはコクラン・ライブラリーとか、経済的評価のデータベースもで きていますから、保健医療の経済的評価についても、こういう有効性の問題だけではな くて経済性の問題もすぐに、しかもレビューした内容までコメントが入ったものが利用 できます。  それからアメリカのMEDLINE、PubMed、それぞれがあって、研究の知見 の登録だとか様々なそういう情報が。これは一応、ある程度整理された情報が中心にな るわけです。で、クリニカル・エビデンスを引くと、こういう情報が、どんな内容があ るかというのが。で、検索がありますから、臨床問題を設定すればすぐにそういう、も う整理されてガイドラインに近いような情報がそのまま使えると。  それからコクラン・ライブラリー。これももう系統的な評価で、さまざまな情報を淘 汰しますが、これもここから入ればそのまま利用できる。多分これはパスワードがあっ て一般の人は入れませんが、抄録ぐらいはすぐに無料で使えるようになっていますか ら。  次に、そういう情報をいかに人が使えるかということです。知識の管理のほうです が、そういうつくる、使える。貯蔵して評価して利用する。こういうふうな、どうやっ てやるかということが非常に理解されないと実際上は使われないのですが、そういうこ とをどういうふうに管理するかということ。それから組織と個人。そういう知識をつく ったり、そういう人をどうやって訓練していくかというようなことが、非常に大事で す。  あと、コクラン、情報サービスだとか情報学、そういうものについて整理する。これ についてはまだウェッブサイトが十分できていませんので、今後、こういうものが整理 されてくるのだろうと思います。そのときはそういう、EBMだとか情報の使い方のト レーニングと書いてありますね。そういうフォースだとか、仮想のマニュアルみたいな ものをつくってやると。  もう1つは、先ほど出ましたバーチャル・ブランチですが、いろんな問題ごとにプラ イマリーケアですね。学際的にいろんな専門かも入った形で、そういう情報を提供でき るような窓口をつくって、心臓の疾患とか、診断とか、いろんな領域を定めて、そこで 統合した情報が読めると。実際にバーチャル・ブランチはこんな画面が出てきますか ら、がんだとか小児の問題だとか、心疾患とか糖尿病とか、様々な形でここから入って いけば、それぞれの問題に行き着くことができる。  それからもう1つ、この電子図書館の中に入っていないのですが、先ほど患者、国民 向けの情報のサービスですか、National Health Serviceの直 送のラインというのがありまして、患者にとにかく情報を提供すると。こういう雑誌だ とかガイドだとか、それから資料についてこうつくって、それで患者が直接対話型で入 っていけると。それからオーディオテープがあると、フィードバックだとか、24時間の 助言のサービスがある。こういうもので構成されているわけです。実際にこういう画面 がありまして、ディレクトで引けば、様々なつくっているものが。具体的なそういう状 況になって入っていけば、いろんな問題が。これはオーディオでやるものですね。 フィードバックだとかガイドだとか、症状の問題とか、そういうものを引いていけば、 自分の行き着くところにたどり着く。  例えば病気の状態だとか治療ですね。たまたまこうなって、こういうところが、例え ば自分がどこの問題があるかクリックすれば、例えば心臓なら心臓の問題を引くと、こ ういう問題、それから回答式の画面が出てきますから、そういうふうなパートアタック みたいな形で進めていく。あるかないかで次に行くと。あるということであれば、どん なことがあるかというと、それは前に心筋梗塞があったときに、同じような痛みだった らすぐにダイヤル9関係ですね。専門家の指導を受けて治療をちゃんとやるというよう な、枝分かれ方式で、アルゴリズムで流れていくということになります。  ですからそういうことで、多様な目的があって、やはり総合的な、アメリカの場合は いろんな情報センターが、National Library of Healthだ とか、あと、ナショナル・ガイドライン、クリアリングハウスだとか様々な、非常に優 秀な機能があるのですが、それをまとめて管理するような機能がまだまだ十分にできて いないような感じがします。そういう意味では、もう少しわかりやすい形でそういうふ うな構想をまとめてということで、日本でもそういうのを十分に参照して、先ほども出 しましたが、この内容をどういうふうにするか、ガイドライン、それから知識、情報、 それから管理の問題、特定の課題、患者・国民向けのものですね。そういうものをいか にうまく統合して、健康情報センターみたいなものをつくるのが大切なのではないかと 思われます。  それで、この中で特にガイドラインの関連の情報というのは前から論議されていまし て、要旨にも、そういうガイドラインを中心とした形でまとめられているのですが、今 回ちょっと資料を前もって送っていたのですが、配付されていませんので、簡単に1つ か2つだけ。やはり診療ガイドラインも、国際的にかなり、ガイドラインをいかに正し く使って成果をあげるか。これはガイドラインも害と利益がありますから、そのバラン スが必ずあるわけで、できるだけ害を少なく、利益が大きい形で使おうということにな りますが、目的としてはそういう、良質のガイドラインをちゃんと利用して、医療の質 を高めると。  組織も、これはだれが主宰するかということでいろいろ問題ですが、運営委員会だと か、財源の問題もありますが、実際の内容としてはガイドラインをどうやって使うかと いうマニフェストですか。そういうのが、ニュージーランドだとかカナダとか、アメリ カ、イギリスで様々な形で出されていますが、そういうものをちゃんと、どういう目的 で使っているのかということが非常に問題であります。先ほどのガイドラインの評価と か開発の方法もこの中へ入るということですね。それから実際にガイドラインについ て、今利用できる最新最善のガイドラインをどうやって使うかと。そのためには、ガイ ドラインのデータベースをちゃんとつくらないといけないわけで、その内容ですね。登 録のしかただとか基準だとかそういうものについて、恐らく様々な形で論議をしてやら なければいけないだろうと思います。  情報提供センターのニュースとかガイドラインに対する研究も、恐らく啓蒙活動も非 常に重要で、それもやらないといけないと思いますし、それからそれを使う教育訓練と いうのも、非常に重要な課題になってくるのではないかと思います。  ガイドラインの情報センターは、アメリカ、カナダ含めまして、かなり進んでいま す。今回、もう詳細な説明は省かせていただきますが、ナショナル・ガイドライン、ク リアリングハウスというアメリカの、これはかなり大規模なものです。実際に利用でき るような情報については、エビデンスに基づくものを、ガイドラインを集めて評価しよ うと。非常に重要なのは、これ、全文以外にストラクチャーだとか、ちゃんと要約して 評価した内容が全部のガイドラインに利用できると。それが、その個別のガイドライン だけではなくて、同種のガイドラインもコンピューターの画面にすぐに比較の一覧表が 出てくるというような、かなり工夫された内容であります。ですからこれはもうガイド ラインもちゃんとふるいにかけて、いい質のものを集めて、それを普及させるというと ころが非常に。  ですから先ほども、福井先生のほうからも、ガイドラインのチェックの問題が出てき ましたが、こういうふうに50項目、全部要約のために項目がありまして、ここはもう一 部しか出していませんが、どういう形でつくっているのかというような要約がありま す。そういうものを、要約を全部して、それをデータベースの中に入れると。  もう1つはカナダの医師会の情報、インフォマティックスというのですか、情報とし ても同じような形で、ガイドラインをチェックして、その中へ入れて、みんなが利用で きる。非常に機能的に利用できるような形になっています。  ですから、先ほど言いましたように、情報センターの中にこういうガイドラインの。 情報センターというのは1つの下部の構成要素に入っています。それが非常に重要な役 割を果たすのではないか。ですから今回の診療情報の問題につきましても、どういう角 度から要約して、実際そういう情報センターというものをつくるかということを、根本 的に論議していかないと、行く先が見えてこないのではないかと思います。  ガイドラインの評価につきましては、お手元に緑色の冊子を配っていますが、国際的 な、一番標準化された方法というのはもう今までの検討の中でわかっていまして、それ で実は日本のガイドラインについて適用して評価したのがその中へ入っています。た だ、厚生省が支援している「根拠に基づくガイドライン」も、まだ評価の対象になって いませんので、今後、先ほど福井先生のお話があったように、開発された段階で外部の 第三者機関でチェックするということになっておりますが、そういう試みの1つだと考 えています。実は、国際的な標準の大体半分ぐらいの点数でして、質は必ずしもよくな っていないかもしれませんので、今後新しいものをつくるときは、そういう方法をちゃ んとチェックして、なおかつそういうのをガイドラインの情報センターに登録するとい うことになるのではないかと思います。以上で発表を終わらせていただきます。 【高久座長】  今の久繁先生のご説明に何かご質問、ご意見、おありでしょうか。あれは先生、イギ リスのNeLHは、NHSはどれぐらいのお金を出したんですか。 【久繁委員】  これ、大したことないんですけれど。 【高久座長】  それから利用者は、お金を払うのですか。 【久繁委員】  いや、それは無料です。 【高久座長】  全く無料ですか。 【久繁委員】  無料です。だから私も入っても何もありません。ですからイギリスだけではなくて。 【高久座長】  世界的にできるのですか。それからもう1つの、患者さん向けのときに「相談」とい う項目がありましたが、その場合にはだれが答えるのですか。 【久繁委員】  看護婦さんが一応、大丈夫かなと。 【高久座長】  担当がいるわけですね。 【久繁委員】  電話のところに配置して、何か電話がかかってくると相談できるような形になってい ます。 【高久座長】  そうするとコンピューターで見て、「ここに電話をする」という項目があるわけです ね。 【久繁委員】  ええ。直接窓口がありますから、聞きたいことがあればそこへ電話をかければ。 【高久座長】  それもNHSでカバーしているのですか。 【久繁委員】  そうです。 【高久座長】  ほかにどなたか? そうすると、今回私どもが議論しているような健康情報センター では、当然先生がおっしゃったような、下部組織でも良いのですが、ガイドラインの情 報センターをその中に含まないといけないということですね。そうですね。わかりまし た。  どなたかご質問? 【開原委員】  質問よろしいですか。国際的なお互いのガイドラインの利用というのは、どういうふ うに今、考えられているんでございますか。例えばイギリスはアメリカでできたガイド ラインを何かうまく使おうとしているのか。やっぱりイギリスはイギリスで、独自につ くらなければいけないと思っているのかですね。例えばカナダの医師会も、随分たくさ んガイドラインをつくっていますが、中を見ると、あれはみんなカナダで自分でつくっ たのかなというのも割と多いですね。すると、アメリカでつくったものはカナダでは使 わないというのか。その辺はみんな、どんなふうなポリシーを持っているんですかね。 【久繁委員】  基本的には、エビデンスがあってもそれぞれの地域、人種も含めましてそれをいかに 使えるかというところを検討しないといけないということがありまして。ですから、国 際的に共通のガイドラインもあるのですが、それぞれ国別の特性を持った形で、自分た ちが使えるような形でガイドラインをまとめるということも、結構ありまして。カナダ の場合は、やっぱりカナダ中心に開発されたものを中心に。ただし他から依頼があった り、利用できるものについては、入れるということになっています。  アメリカはアメリカで。ただしアメリカの場合も、ガイドラインをやると必ずしもア メリカだけではない。カナダのも入っていますし。そういう意味では、質の高いものは 大体ほとんど網羅できるような格好になっていると。イギリスはそういう意味では、少 しそういうガイドラインの機能としては遅れていますが、今、NICE(ナショナル・ インスティテュート・オブ・クリニカル・エクセレンテッド)が評価して、ナショナル・ ヘルス・サービスで使うためのガイドラインをつくっているんです。で、それをデータ 登録してやっているということがあります。ですからやっぱり、共通性のあるものもあ るのですが、独自のものを使うように工夫しないと、そのまま使えないのではないかと いうことが、一応コンセンサスではないかと、私は思っているんです。 【福井委員】  似たようなことになりますが、「ローカルユースということを考えて、ガイドライン はモディファイしなさい」というのが一般的だと思います。1つの例ですが、高脂血症 の治療薬をプライマリー・プリベンションで用いるのは、アメリカだとかイギリスです と、例えば50〜60人に使えば1人の心筋梗塞を予防できるというようなデータがあるわ けです。日本でそれをやろうとすると、頻度からいって数百人に1人しか救えないとい うことになります。そのように、日本ではほかの国と比べてプライオリティーが違って くる可能性がございます。いろいろな病気の頻度を考えて、それぞれの地区でモディフ ァイする必要があります。 【久繁委員】  恐らくそれをしないと、利用度が非常にだめなんですね。落ちてしまう。ですから日 本でも国全体でつくると、それをそのまま使うのとそうでないのと、日本の場合はちょ っとわかりませんが、その地域地域で自分たちが使うような形で、質は落とさないで使 えるような形の工夫をするということが、やはりすごく重要な課題になってくると思い ます。  (3)わが国にける診療情報提供システムの具体方策について 【高久座長】  よろしいでしょうか。それでは次の「わが国における診療情報提供システムの具体的 方策についての提言」が、お手持ちの第3番目の議題になっていますが、あらかじめ矢 崎委員、野添委員、福井委員からご説明をいただくことになっています。それでは最初 に矢崎委員、よろしくお願いします。 【矢崎委員】  今、医療センターでやっている1つが、このコンビニエンスストアで行っているPO Sシステムですね。医療行為をそのつどちゃんとコンピューターに記録を残しておこう というシステムです。  3つの利点がありまして、1つは、物品管理とか維持管理がしっかりできるので、経 営の合理化ができるということがあります。2番目が、医療の質の向上、あるいは均一 化ができるということであります。3番目が、医療過誤、医療事故を防止するのにも役 立つのではないかということです。  それで、ちょっと関係があるかなというのは、今、福井先生と久繁先生がお話しにな ったエビデンスなのですが、従来、エビデンスというのはいろんなケース・コントロー ル・スタディーとか、あるいはRCTによってできたものですが、毎日の診療行為をす べてそれでカバーするというものではありませんので、そういう材料がそろっているの はごくごく一部の領域であります。  日常診療、一般の診療医が入れているデータをコンビニのようにすべて中央で集積す れば、どういう医療が一番コスト・ベネフィットがいいか、あるいは臨床的なアウトカ ムがいいか、現状の中で、診療の中で出てくるのではないかと。それを標準のレベルで 取るのではなくて、リーズナブルでしかも最もいい診療を選んで、そこにそろえるよう な努力をすれば、クリニカル・パスとかそういうのも、おのずからできてくるのではな いかということで、実は医療センターはこの5月から、このシステムが開始されまし て、9月からフル稼働します。  恐らく日本中の方々がうまくいくかどうか見ておられると思いますので、1年後に本 当に私どもが言っている経営の合理化、医療の質の向上、それから医療過誤・医療事故 の防止にどれほど役立つかということを見ていただければということで、きょうはそう いう医療情報を、提供システムということから見て、診療行為を集積してそれで何とか エビデンスとしてつくり出せないかということであります。  今までの治療試験というのは、どうしてもメーカーさんのリードで研究が行われてお りますので、本当にわが国で純粋なコフォート・スタディーというものが、今後十分に 行われればいいのですが、そうでないときは、こういう手段が有効ではあると思ってい ますので、ちょっと参考のために述べさせていただきました。 【高久座長】  何かご質問は? よろしいでしょうか。それでは次に野添委員のほうから、よろしく お願いします。 【野添委員】  私、資料5ですが、これは『厚生科学研究』一昨年度のものですので、ちょっとデー タを新しくしたものを、きょう別添で4枚のA4のもので配らせていただきましたの で、そちらのほうで説明させていただきます。  私のほうは提言というよりも、先ほど久繁先生がイギリスの例をお話しになりました ので、アメリカの例を中心に、EBMを中心とした情報提供がどういうふうに行われて いるかということと、日本の状況を少し、最後に述べさせていただきたいと思います。  まずアメリカのEBM関連の情報というのは、もちろん現在のところ、インターネッ トのベースで、ウェッブサイトで提供するというのが中心になっております。その結果 として、先ほどもちょっとお話が出ましたが、いろいろなところにいろいろな情報が散 逸していたものが、NLMを中心にしてかなり流れがよくなってきたのではないかと思 います。  最初の図は、アメリカのいろんなEBM関連情報ですが、最初に臨床試験の情報があ って、それはClinicaltrials.govというウェッブサイトがございまして、そこで臨床試 験の情報が見られる。医学論文は電子ジャーナルで見られる。それらを集めたものが、 アメリカの国立医学図書館、NLMのデータベース、MEDLINEというものがござ いまして、現在、97年からインターネット上でPubMedという名称で見られる。こ れはだれでもがアクセスできる。これを利用してシステマティック・レビューをつくっ て、ここではちょっと書き忘れたのですが、AHRQがその中心になっている。  それから診療ガイドラインについては、先ほどお話が出ましたguideline.govというウ ェッブサイトを使ってやっている。  それから3年前からは、NLMが中心になりまして、それまでは専門家向けに情報を 流すということをNLMはやってきたわけですが、方向を広げまして、一般の人にもす べての医学の情報を流していこうということで、MEDLINEplusというウェッ ブサイトを立ち上げています。内容は後ほど申し上げますが。  こういうようにインターネット上でやることによって、特にPubMedが公開され たことによって、前回、開原先生もお話しされていたとおり、下の図ですが、利用者 が,研究者あるいは医師を含めた医療にかかわる人が70%ぐらいだとすると、一般の人 が30%も使っているということがわかったわけです。まあ使い方はどうかはわからない のですが。  2枚目には、NLMの情報サービスというのが、最近はかなりまとめられてきまし て、去年の秋ごろからは、その上の図で、NLMゲイトウェイというものをつくりまし て、ユーザーはそこに入ればNLMのいろいろな情報源に自由にアクセスできるという ふうになっております。それについては。一番上に書いてあるシソーラス、用語Meshと いうものを全部にカバーすると。  それから1つ飛びまして次の3枚目に、よくお話に出てきますPubMedですが、 これはもともとはMEDLINEのデータベースをインターネット上にのせたものです が、現在はそういう2次的な情報、書誌データとかキーワードとか抄録だけではなく て、PubMedにいろいろなものがリンクして、技術情報、電子ジャーナルまでアク セスすることができるようになっております。  あと、これについては、関連の文献とかゲノム・データとか、図書の一部も見られる ということになって、PubMedが出てきたおかげでその利用も非常に大きくなりま して、下の図ですが、1997年段階で、1年間で約2,000 万、MEDLINEのほうが、 PubMedがスタートした時点で2,100 万回の利用がありましたが、98年に1億回ぐ らい。で、99年にその97年の10倍、2億回ぐらいPubMedというデータベースが使 われるということになっております。  その後、MEDLINEplusという、先ほどお話ししました一般向けの情報サー ビスができまして、それが1枚前に戻っていただいて、2枚目の下ですが、これは最初 のトップページですが、一般の人がいろいろな医療情報、健康情報にアクセスできるよ うに工夫されています。ここでは、左側下にいろいろな項目がありますが、病気の情 報、それから薬、それから医学辞書ですね。それからいろんなディレクトリー。これは 病院のリストとか医師のリスト。それからほかのものに使えるということで。右下のほ うにクリニカル・トライアス・ドット・govという臨床試験のウェッブサイトにもリ ンクするようになっていると。ここではかなり、ここに登録するウェッブサイトは質の 高いものをフィルターをかけて登録するということになっております。  一番最後の4枚目をお開きいただきますと、あとはNMLとほかの機関、EBMに関 連する機関との関連ですが、AHRQ(エージェンシー・フォー・ヘルスケア・リサー チ・アンド・クォリティー)とNLMとは非常に密接で、AHRQはいろいろなEBM 活動の研究支援を行っているわけですが、そこでできた成果については、NMLのデー タベースで見られるということになっております。AHRQが先ほどお話しになられた ナショナル・ガイドライン・クリアリングハウスとか、エビデンス・プラクティス・セ ンターなどがあるわけです。それからもう一方は、臨床試験のデータベースは、NIH とNLM、FDAが協力してやっておりますので、これもつながっているということに なっています。  その下の図は、EBM活動、システマティック・レビューとかガイドラインをつくっ ていく中で、MEDLINEが重要な位置を占めるわけですが、あとコクラン・ライブ ラリーと。それから日本の場合ですと、『医学中央雑誌』というものがあるわけです。 『医学中央雑誌』は大体30万件ぐらいの文献を、日本で発表される文献を収録している わけですが、原著論文が大体40%ぐらいではないかと思います。インデックス、キー ワードのつけ方がMEDLINEほど深くはないので、現在のところ、EBMについて のシステマティック・レビューをガイドラインをつくるときに、RCTとかそういうも のを探すキーというのがまだ不完全なのですが、日本で発行される臨床論文というのが ほとんど100 %含まれていると考えていいと思います。以上で、現状のご報告をさせて いただ期ました。 【高久座長】  今の野添委員の説明に何かご質問おありでしょうか。PubMedとMEDLINE plusの関係はどうなっているのですか。 【野添委員】  MEDLINEplusいうのは。 【高久座長】  一般向けですね。 【野添委員】  MEDLINE自体は文献のデータベースです。MEDLINEplusは、いろい ろなところへ、サイトにリンクしていくという、リンク集のようなものです。ディレク トリーがインターネット上にのっていると。ですから、MEDLINEplusからM EDLINEに入ることもできます。かつ、利用者のために、例えばdiabetesと押せ ば、最新の糖尿病の論文だけをMEDLINEで自動的に探してくれるということもや っております。 【高久座長】  ほかにどなたか? ご質問よろしいでしょうか。NLMがやっているということは、 ほとんど費用は国が出している? 【野添委員】  そうですね。 【高久座長】  そうですか。よろしいでしょうか。それでは、福井先生からご説明をお伺いします。 よろしくお願いします。 【福井委員】  私、資料を用意していなくて申しわけないのですが、今まで久繁先生、それから野添 先生がお話しされた、恐らくイギリスのタイプのような情報センターを考えるのか、ア メリカのようなタイプの情報センターを考えるのかで、今後わが国でこの分野の情報普 及をどうするかというのはかなり違ってくると思います。私自身は、野添先生のこの資 料ですと最後のページの一番上にありますように、AHRQが診療ガイドライン関係 の。 【高久座長】  ここですか。 【福井委員】  RQ。はい。AHRQがどちらかというと、作成した診療ガイドラインなどを評価を して、クリアリングハウスというところで、膨大な数の診療ガイドラインのクォリ ティーをある程度評価し、まとめて、見やすい格好で提供しているという仕事をしてい ます。  NML自体、MEDLINE自体はどちらかというとオリジナルな研究、文献にアク セスするためにいろいろな工夫をしてきたということであります。恐らく日本で診療ガ イドライン関係のところと、それからオリジナルなデータベースへのアクセスをどうす るか、この2つを統合するものを最初から考えるのか、それとも別個にとりあえず立ち 上げていくかによって、センターの機能はかなり違ってくるのではないかと思います。  私自身は、厚生省の中に全部こういうものを取り込んだものを新たに立ち上げるとい うことは恐らく難しいと思いますので、第三者的な機関で、診療ガイドライン関係のも の、エビデンスを全部まとめるなり、診療ガイドラインそのものの評価とインターネッ トでの提供、それから定期的にリバイズするという作業なども支援できるような機関が 新たに必要ではないかと思います。  データベースそのものにつきましては、日本でつくる一番大きな理由は、先ほどの開 原先生のお話にありましたように、結局外国でつくられたいろいろなエビデンスなどを 日本で使うときにどうしても、日本のデータとの突き合わせをする必要がありますので わが国特有なデータも重要になります。日本の論文、日本語でしか出ていない論文など も十分レビューする必要があります。『医学中央雑誌』などを含めたデータベースを十 分活用できることも、最低限必要になります。『医学中央雑誌」などを使いやすくし、 外国のMEDLINE、EMBASEなどにも十分アクセスできるような、そのような データベース関係の機構を1つつくることと、診療ガイドライン関係の第三者的な機構 をつくるのは、最初は別々でもいいのではないかと思っております。  ただ、一番効率的なのはイギリスのタイプであるのは確かでして、全部それをまとめ てしまって1つの大きな機構にしてしまうというのも、将来的には考えていいのではな いかと思います。資金だとかポリティカルなファクターが大分かかわってきますので、 私としては、絶対に最初から1つを目指さなくてはならないかどうかということはよく わかりません。どちらにしてもその2つのファンクションを担えるところが必要だと思 います。 【高久座長】  先生のご意見をお伺いしたいのですが、イギリスの場合、電子図書館。それからアメ リカのMEDLINEplusの場合には、患者からのアクセスということを言ってい ますね。かなり規模が違いますね。 【福井委員】  そうですね。 【高久座長】  診療ガイドラインですと、これは主として医療関係者に対してですね、サービスの提 供が健康情報センターになりますと、場合によっては患者からのアクセスも受けなけれ ばならない、アクセスできるようにするとなると、内容が随分変わってきますね。それ はどうお考えですか。 【福井委員】  患者さんにとって、ユーザーフレンドリーなものをつくろうとすると、患者さんは診 療ガイドラインについてのアクセスを希望する場合もあれば、恐らくオリジナル・アー ティクルについてのアクセスを希望することもあると思います。それに加えて、全く別 個の患者さん用のいろんなソフトを開発しないといけなくなります。医療者が使う形の ソフトだけでは使えないと思います。 【高久座長】  その内容も、わかりやすくしなければなりませんね。言葉の説明も加えて。ですから 内容が随分変わってきますね。患者さんからのアクセスができるかできないかによっ て。 【福井委員】  そうですね。そういう意味では、いってみれば3つのかなり大きなプロジェクトが必 要になると思います。効率性からいえば、全部一度に、3本柱を最初からスタートした ほうがいいとは思いますが、かなり大がかりなプロジェクトになると思います。 【高久座長】  なりますね。要するに、初めからMEDplusみたいなことを。やっぱりイギリス 式ですね。 【福井委員】  そうですね。 【高久座長】  それについては、何かお考えおありですか。もちろん費用の問題とマンパワーの問題 ですね。もう1つ、だれでも考えることですが、どういう規模にせよ、何らかのオーガ ニゼーションをつくらないと運営できないということも、間違いないと思います。 【櫻井委員】  福井先生がおっしゃったオリジナルのデータベースみたいなものと、それから診療ガ イドラインのデータベース的なものの、2つとおっしゃいましたが、そのオリジナルと いう意味は、例えば『医学中央雑誌』とかMEDLINEとかという、本当のオリジナ ルから、ある程度何か選別したものという意味ですか。それとも大もとでいいんです か。 【福井委員】  ええ。もとの論文。 【櫻井委員】  それを先生がおっしゃった、例えばローカルユースのために、外国のものと日本のも のと比べてどうとかというのは、それはガイドラインをつくるときにやればいいという ことですか。データベースとしては、そこの選別はしないということですか。 【福井委員】  そうだと思います。 【高久座長】  データベースというと、選別しなくて良いのですか。 【櫻井委員】  何というか、本当の生の論文がいっぱいのっているものを、ある程度、日本にあった ものとして評価して、「これを使って、どうぞガイドラインをつくってください」とい うオリジナル・データベースという意味ではないんですね。 【福井委員】  そういう料理ができるのは、恐らく診療ガイドラインをつくるプロセスでないとでき ないんです。診療ガイドラインをつくらないのに、いろんなテーマについてそういうも のを準備するということは、恐らくできないと思います。 【櫻井委員】  そうすると、先生の言うオリジナルのデータベースというのは、現在あるオリジナル のいろんなデータベースと、別個にまたオリジナルのをつくるべきだとおっしゃるんで すか。 【福井委員】  そういうわけではございません。例えば『医学中央雑誌』にしても、今、日本のデー タにアクセスしようとすると、まだまだ非常に難しいんです。例えばパブリケーショ ン・タイプといって、ある研究デザインで行われたものだけをピックアップしようとす ると、まだできないはずなんです。そういう意味で、MEDLINEがものすごく今、 使い勝手がよくなっているんですが、そういうレベルまで、日本のデータについても、 かなりアクセスのしやすさを高める必要があると思います。 【高久座長】  『医学中央雑誌』の内容をそのままのせても、あまり意味がないということですね。 【福井委員】  恐らく今のレベルだとまだまだ使いにくい。 【高久座長】  リファインしなければならない。それから、患者さんのアクセスを考えると、そのた めのモディフィケーションが当然必要になりますね。 【福井委員】  そうだと思います。 【櫻井委員】  今のお話で、『医学中央雑誌』だけではなくて、MEDLINEのものもそういうふ うにして、何か先生のおっしゃるオリジナルデータベースに入れ直すという意味なんで すか。それとも、使えるものはそのまま使わせてもらうと。 【福井委員】  それで恐らくいいと思います。ただ、言葉の問題がございまして、日本で使うときに どういうふうにするかというのは、かなり考える必要があります。 【高久座長】  外国の診療ガイドラインものせる必要があると思いますが、基本的には日本の診療ガ イドラインになると思います。データベースの場合には、これは基本的に日本のデータ ベースですね。そう考えて良いのですね。 【福井委員】  かなりエネルギーを費やすのは、当然日本のデータベースですね。 【櫻井委員】  日本のオリジナル・データベースをつくるべきだろう。それが日本では不十分だと、 このように考えます。外国では割とそれがうまくできているのではないかというふうに 考えていいわけですか。 【福井委員】  そうですね。 【櫻井委員】  ある程度、直接外国のものが、そうすると診療ガイドラインをつくるとき、言葉の問 題は別としても、使えるけれども、日本のデータベースから引こうと思っても、今あま り十分に引けないと。 【福井委員】  そうですね。 【櫻井委員】  だから、そういうオリジナルデータベースの設置が必要だと。 【福井委員】  その上で診療ガイドラインをつくるときには、英語のものも日本語のものも、両方組 み合わせて使う必要があるということです。 【高久座長】  そうですね。そうすると、診療ガイドラインの場合に、評価と提供と改訂とありまし たね。評価は外国のガイドラインに対してもするのですか。それは必ずしも必要ない?  基本は日本のガイドラインに対してでしょうね。 【福井委員】  ええ。日本でつくったものについての評価ということになります。 【高久座長】  そうですね。ですから『医学中央雑誌』のものを利用して、それを医療関係者も、場 合によっては患者さんも利用できるような形に内容を組みかえるという作業をしなけれ ばならないということで、そう簡単ではないわけですね。専門家もいるし、MEDLI NEのような使いやすいものにするという変更が当然必要になってくるわけですね。  ほかにどなたか? 【久繁委員】  恐らくガイドラインをいくつかつくっていますが、それと関連する、もしくはそれの 少し下部になるかもしれない、システマティックレビューというメタアナリシスを含め て、個別の課題について整理したものも、日本はあまりやられていないんです。そのと きは恐らく、整理された情報、質の高い情報を、それは医者も使えるし患者も、国民も 使えるというような意味では、整理した情報を提供するというようなことを考えないと いけないですね。 【高久座長】  そう。データベースですね。 【久繁委員】  そのときは当然日本の、それこそデータベースからすくい上げて、アメリカからもす くい上げて、それで整理されたもの。そういう研究はあまりにもまだ日本は少ないの で、当然そういうまとめるような研究を含めて支援する。学会も。そういうことを積極 的にやっていくようなことが。 【高久座長】  ですからその操作の中で、『医学中央雑誌』にのっているのをそのまま引用するので はなくて、セレクションをしなければならないでしょうね。 【福井委員】  例えば研究デザインだとか。 【高久座長】  それらを見てですね。 【福井委員】  そういういくつかの項目をつければ、ある程度サマリーから判断できると思います。 【高久座長】  『医学中央雑誌』の場合には、かなり機械的にサマリーを紹介していって、セレクシ ョンはあまりやっていないのですね。 【福井委員】  結局、ストラクチャード・アブストラクトみたいな格好できれいに、こういう項目に ついては必ずキーワードで入っていて、コンピューターでいつでも全部引けるというふ うに、MEDLINEみたいに整備されていけば、簡単にエビデンスも引き出せると思 います。 【高久座長】  そういう形にしなければならないということですね。 【福井委員】  はい。 【櫻井委員】  例えば『医学中央雑誌』のデータベースが不十分だという意味は、例えば入力のしか たというか整理のしかたとかという問題だけではなくて、内容的なものも含まれるんで すか。つまり、本来内容的なことは判断しないんですね。そこへ入れるのに価値のある 論文なのか、価値のない論文なのかという評価はしないんですか。論文が出たら何でも 入れてしまう? そうではないわけでしょう?  そうすると、不勉強でどういうのが入っているのかも知らなくて、こんなことを言っ てはいけないのですが、価値のない論文までのっているのなら、それは要らないではな いかと。評価みたいなことをしないんですか。それとも、のせ方、分類、何かが悪いの だというのであれば、そこへのっているものは全部必要だと。ほかにも落ちているもの を加えるとか、そのへんのところは?つまりオリジナルデータベースをつくるときに、 何らかの評価とかふるい分けとか何かが行われるのかどうかについての考え方? 【福井委員】  例えばMEDLINEも、掲載するジャーナルを最初から決めています。 【高久座長】  『医学中央雑誌』の抄録を、私は以前、浴風園に行っていたときにアルバイトでやっ たことがあるんですが、昔の話で、現在のことはわかりません。少なくとも以前は、セ レクションをしませんでしたね。ほとんど自動的に抄録の紹介を、日本で出た論文につ いて網羅的にしていましたが、最近はセレクションしているのかどうか。あの雑誌社に それだけのキャパシティーがないのでしょうね。矢崎先生、ご存じですか。 【矢崎委員】  あまり詳しくありませんが、大体学会誌はほとんど網羅しているのではないかと思い ます。 【高久座長】  学会誌という意味でのセレクションは、やっていると思います。 【矢崎委員】  ええ。ですから、相当母集団は大きいのではないかという。 【野添委員】  ほとんどセレクションはしていないと思います。掲載対象になった雑誌はすべて、原 著論文はすべて。 【高久座長】  ですから商業誌の論文や、ケースレポートも入っているわけですね。 【野添委員】  はい。座談会とかも入っていますし。 【高久座長】  必ずしもピアレビュードペーパーだけではないわけですね。 【野添委員】  違います。それで櫻井先生のおっしゃられるように、入れるときの入れ方が、今度は 検索の立場で、EBM、クリニカル・ガイドラインをつくるときに検索できるようには できていないということです。 【櫻井委員】  もう1つ、だからその入れ方も問題になるけれども、その入れる内容もある程度、例 えばMEDLINEなんかが雑誌を決めてセレクトすれば、そのセレクトするというと ころが1つあるわけですね。オリジナルデータベースといっても、つまりそこに入れて もらえない……。その入れてもらえない人にとっては、自分のオリジナルだと思ってい るデータベースもあるということでいいわけでしょう?  だれかが、そこでは何でもかんでも入れているのではなくて、評価とは言わないかも しれないけれど、少なくともセレクトして入れていると。 【福井委員】  そうですね。 【櫻井委員】  そういうオリジナルデータだと。日本ではそれさえないということで、今、おっしゃ っているのでしょう? 【福井委員】  よくわかりません。『医学中央雑誌』がどういうクライテリアで雑誌を決めているか というのは、よく知りません。 【高久座長】  最近のことは詳しく聞いていないのですが、『医学中央雑誌』には非常に長い歴史が あって、日本の雑誌の論文を網羅していることは間違いないと思います、セレクション というプロセスは今、私の理解している範囲ではあまり行われていない。それだけの能 力はないのではないか。先ほどから福井先生のご提案にありますように、第三者機関を つくって、その中で『医学中央雑誌』から出てきたものをセレクトする機能を持たなけ ればならない。 【櫻井委員】  そうですね。セレクトというか評価というか、それは言葉の問題だけれども、少なく とも何でもかんでも取り入れるということにはならないということですね。 【高久座長】  というわけにはいかない。ですから、医学情報センターとか『医学中央雑誌』に資料 を集めてもらわなければならないと思いますが、それを健康情報センターとして入れる かどうかという判断は、一定のフォーマットを決めてそれに合ったものを入れるという ことにすれば、不可能ではないと思いますが、それでも膨大な資料がありますから、フ ォーマットに入れるだけでも、なかなか大変ではないかと思います。 【久繁委員】  結局、恐らくこの委員会で検討しないといけないのは、先ほどから出ていますが、ど ういうふうな全体像を描くかということと、それから個別にどうするかという話だと思 います。で、一応基本的に戦略的には、大きな、統合するような、それこそ健康情報セ ンターみたいなものを構想して、その中で、例えば5か年なら5か年の中でどれに優先 順位をつけて、例えばガイドラインの情報センターを先に立ち上げる。もしくは、どう いう順序でもいいのですが、先に立ち上げるか。それともそういう2次的な、系統的な 評価だとか、EBM的にもう評価した情報、もしくは外国のものを、恐らくそのまま使 えませんので日本語に翻訳したような、そういうもういっぺんふるいにかけた情報のセ ンターですね。  それからもう1つは、患者向けとかそういうのがありますが、そういうものをどうい う順序で、なおかつどういう戦略のもとでつくるかと。イギリスも結局、長期的な戦略 で、88年ですから4年計画ぐらいでどうするかというのをやっぱり検討してやっていま すから、日本も、いっぺんにできるかどうかはそれこそ財源と人の問題があって。しか し、将来的な目標はやっぱりこういうことに立てて、それでどう進めるのかという。 【高久座長】  私個人の考えで申しわけないのですが、最終的にはやはりイギリス的な健康情報セン ターにしないと。一般の方の理解というか、国民へのサービスという点を入れなければ ならないと思います。ですから最終目標はそれで良いのではないか。それを何年ぐらい かかってどうするのかという事は、予算の問題とマンパワーの問題がありますから簡単 には言えませんが、最終目標は国民にイギリス的なものにしないと、税金を使ってやる ことになると思いますから、納得をしていただけないのではないか。どうですか、櫻井 委員。 【櫻井委員】  「すぐそういうことを言う」と言われるかもしれないけれど、さっき久繁先生のお話 で、イギリスのものでは、NHSに使うためのガイドラインをつくろうとしているとい うか、つくるということをおっしゃったので、そこら辺がやっぱり我々としてはひっか かるのです。ここで考えていることが日本の保険診療のためのガイドラインづくりをす るのであれば、これは非常に抵抗するというところがあるわけなのです。組織、システ ムとしてはイギリス型でやっていくのは良いことでしょうが、日本ではそれを、どうい う形か分からないけれど、医学界というか、学会の先生方のもとでやる。やっぱりそれ が一番いいかなと、私は思っていますし。  その辺がわからないところですが、その窓口的なものを日本医師会に役割を持たせて もらえるのならば、日本医師会が音頭をとるというか仲介をして、学会の先生方を中心 に組織をつくって、そこにお願いする。  外国のシステムは私は知りませんが、今、お話ししていただいた中ではカナダのとこ ろには医師会が何とかというようなことも書いてありましたから、そういうようなシス テムが外国でないわけではないし、イギリスは何たって国営医療ですから、それはNH Sだと思いますし。アメリカの場合はまたこれは医療という意味ではどちらかという と、ご存じのようにHMOみたいな、いってみれば民間企業といっていい保険者が中心 の医療ですから、そこのガイドラインに使われている可能性もあるというのが、我々と してはその辺がひっかかるので、日本ではできたら学会の先生方を中心のデータベース ラインであり、診療ガイドラインの評価機構であり、というふうにしてほしいと思いま す。 【高久座長】  アメリカの場合には、ご説明があったのはMEDLINEが主で、国立医学図書館が 中心ですね。私はよく知らないのですが、この機能の中には情報の提供ですから、先ほ どの診療ガイドラインの情報センターの機能というようなものは、アメリカはどこで行 われているんですか。野添先生、ご存じですか。 【福井委員】  アメリカは、AHRQが。 【高久座長】  ああ、そういうことですね。わかりました。 【福井委員】  これは政府のエージェンシー。 【高久座長】  政府のエージェンシーですか。 【福井委員】  ええ。厚生省に当たるところのエージェンシーです。 【高久座長】  そうですか。アメリカの場合は二本立てになっているわけですね。イギリスみたいに 1つにはなっていないということですね。わかりました。ほかにどなたか? 【久繁委員】  そうしますと国によってガイドラインの、健康情報センターはもうアメリカとイギリ スが中心になって動いていますが、ガイドラインの情報センターについてはかなり。ア メリカ、カナダ、それからニュージーランドだったですね。それからドイツだとか、 様々な形であれして。でも、例えばイギリスなんかの場合、先ほど言ったようにNIC Eというナショナルヘルスサービスの関係のもあったり、大学関係で、大学が立ち上げ ているような情報センターが複数立っているところもあるわけです。  それから日本でそういう第三者の機関をつくる場合は、かなり広い社会的な立場に立 って利用できるような形でやるというのが、やっぱり基本だとは思うんですね。ただ、 財政的に、やはりそういう社会的な立場で国の全員に役立つ、利害関係者に役立つとい うことであれば、第三者的に国が援助するという形になってきますが。ですからその辺 は、必ずしも、アメリカのAHRQでも、そこにガイドラインのクリアリングハウスと いう情報センターをつくっているのですが、それは政府がつくったものであって、必ず しも一般的な学術団体がつくったものに必ず当てはまるようになっていますから、中立 的に使えるような形ですから、当然そういうことをするべきであるということだとは思 います。 【開原委員】  アメリカのAHRQのクリアリングハウスの位置付けというものがちょっと誤解され るといけないのではないかと思うので、ちょっと発言をしたいのですが、あれの中を実 際に見てみるとわかるのですが、例えばある疾患について1つしかガイドラインがない なんて、そんなものでは全然ないですね。いろんな人が勝手につくったガイドラインが ございます。勝手にというとちょっと言い過ぎなんですが、それがただ登録されている というだけなんですね。 【高久座長】  評価されていないのですか。 【開原委員】  いや、もちろん評価はされているんですが、例えば「高血圧ならばこのガイドライン を使いなさい」というわけではなくて、高血圧というものの中にも、高血圧のこういう 場合のガイドラインとかいろんな、高血圧に関するガイドラインでも全部で10や20はあ る。ですから、ある意味ではそれを使う人はお店にずらっと並んでいるものの中から自 分の好きなものを持ってきて使う。そのための、いわば登録されているものだという、 そんな感じでしょうか。ただ、そこにあるものは質はちゃんと保証されていると。です からここにあるガイドラインは今、僕の依頼していたのは恐らく200 ぐらいあります ね。 【久繁委員】  今、ですね。 【開原委員】  800 ぐらい? 【久繁委員】  そうですね。疾患だけで653 で、まあ700 か800 ですね。 【開原委員】  非常にたくさんあるわけで、ですからどれを1つ使わなければいけないなんてこと は、だれも言っていないわけです。お店みたいに並んでいるわけですから。 【高久座長】  ただ、その評価はしているわけですね。 【開原委員】  そうです。質だけは保証しているけれども。 【高久座長】  それからあと、改訂のレコメンデーションはしないわけですね。 【開原委員】  そこはちょっと僕はやっていない。 【久繁委員】  あれは最新、5年以内に改訂したものしか登録しないんです。5年以上たったら、も うアウト・オブ・ベーパーですから。 【高久座長】  なるほど、そういう形でその改訂をレコメンドしているわけですね。そういう意味で はですね。 【開原委員】  それでアメリカでしたら、通貨のインタラクティブのあれも、まさにそのクリアリン グハウスであって、単に「そこにありますから、その中で好きなものをお使いなさい」 と言っているだけの話であって、別にどれをお使いなさいと言っているわけではないわ けで。そうすると、「どれをお使いなさい」と言っているのは、それではだれがやって いるかというと、例えばある病院があったとすると、その病院の中で自分で好きなガイ ドラインを集めてきて、その病院は「それではこういう方向で行きましょう」というよ うなことをやっている病院もあるし。 【高久座長】  例えばHMOがとりあえず利用する? 【開原委員】  ええ。ということはあり得るわけです。 【高久座長】  ということはあり得るでしょうね。このガイドラインでやれるという事を。 【開原委員】  ええ。それから例えばある医師会みたいなところは、その中から好きなガイドライン を集めてきて、では家のあれは、あまりたくさんあるのではわかりにくいでしょうか ら、少しわかりやすいように。 【高久座長】  あるいは個人で選んでも良いわけですね。 【開原委員】  ええ。それは個人で選んでもいいという、アメリカはそんな感じなのだと思うんで す。ですから日本の場合のガイドラインというと、高血圧だったらこのガイドラインを 使いなさい、糖尿病だったらこのガイドラインを使いなさいという。もう何かその2つ しかなくて、それを全部プロセスみたいなイメージを与えるとしたら、それは大変合理 的であって。全然そうではない。 【高久座長】  確かに久繁先生がおっしゃったように、日本でも、高血圧1つとっても、いろんなガ イドラインがありますね。ですからその中で、どこがつくったガイドラインということ を明示すれば、利用者のほうである程度自分の信頼しているものを使うとか。それから もう1つ、先ほどお話ししていたように、何年以内としますと、ほったらかしになって いるガイドラインは自然に入らなくなるという形で、つくるほうに対するインセンティ ブを与えるという意味では、そういうことも良いかもしれませんね。 【開原委員】  僕もきちんと確かめたわけではないけれど、クリアリングハウスさんが入っているガ イドラインは、同じようなことについて、2つダブってガイドラインがあるものとか、 そんなものも多分あるんですね。ちょっと食い違っているかもしれないけれど、かなり 似たような表を扱っているガイドラインなんかも。 【福井委員】  先生のおっしゃるとおりですが、ただ内容を見ますと、一定の手順でつくられている ものは、やはりほとんど同じ結論に到達するようです。エビデンス・ベースト・メディ シンのこの手順でつくる限りは。料理のもとになるオリジナル・アーティクルもほとん ど同じものを使うため、ひどいバリエーションにならないと思います。ただし、非常に 不明確な分野については、かなり違います。つまりデータベース、エビデンスがない事 柄については、コンセンサス的な部分が強くなりますので、かなりバリエーションが大 きくなるようです。  そういう意味では、結局背後にどれくらいのレベルのエビデンスがあるかによって、 最終的なレコメンデーションの内容が変わってくるということだと思います。レコメン デーションの変動の大きさというのは、もともとどうしようもない部分についてのこと が大部分のように思います。 【久繁委員】  それで本当は今回、そのガイドラインのセンターのまとめたものをつくったのです が、ちょっと事務局の手違いで配付されていないのですが、ガイドラインのアメリカの センターは、基本的には選択基準というのがありまして、とにかく系統的に、つまりそ ういう明確な方法にのっとってやって、そういうレコメンデーションを含むというのが 1つで、それから「医療専門団体の後援によってちゃんと作成されている」。それから 「科学的情報の把握評価にそれをちゃんと裏付ける文章がある」。これが3つ目。4番 目が「英語で最新版。5年以内」というこの4つの基準。  実際に先ほどお示ししましたように、50ぐらいのチェックポイントを設けて全部要約 を出しています。それも簡約版とフルの50項目の要約版がいっぺんに出てきます。先ほ どの先生のお話しのように、それで例えば乳がんのガイドラインと。乳がんのガイドラ インを全部拾って、それがその50項目についてすべて一覧表で出てきます。ですからそ ういう意味では、消費者の判断にある程度委ねる面はあっても、そこまでちゃんと支援 して、手続き上助けてあげるようなことをして、それで利用を非常にやりやすくすると いうような格好で進められていると。  だから、これほどチェックというか要約を入れて情報提供しているのは、アメリカの このクリアリングハウスが一番重要視されていると思います。 【高久座長】  そうですね。ですから評価が一番難しいですね。 【久繁委員】  これ、実際評価をやっているのはECRIというシンクタンク、調査機関です。そこ に委託して、50項目の評価についてはお願いしてやっているというような格好ですね。 【開原委員】  今のはまさにそのとおりだと思います。評価もそうなんですね。ただ、それではカ バーしている領域が系統的かということですが、そこは系統的ではないんだそうです ね。例えば乳がんにしてみても、乳がんの放射線をかけた何かの場合のガイドラインと かですね。それから乳がんの化学療法と何とかのガイドラインとかですね。そうする と、それでは乳がんの治療法がすべてメニューがそろっているかというと、まあ乳がん ぐらいだとそろっているかもしれませんが、ずっと調べていくと、ない病気もたくさん あるし、同じ病気の中でもガイドラインのない領域もたくさんあると、そういう意味 で、対象が系統的につくられているというわけではないんですね。 【久繁委員】  ですから、あれは積み上げ方式なんですね。 【開原委員】  そうそう。だから、いろんな人がつくったものの中で質のいいものだけが登録されて いる。 【高久座長】  実際に健康情報センターのようなものをつくるとするときに、それにどういう機能を 持たせるか。それは今後の議論になると思いますが、基本的に第三者的な機構をつくる 必要がある。その内容とか規模とか、あるいはいつまでというような問題はまたいろい ろご議論願いたいと思いますが、そういう点では委員の先生方にご異存はないと思いま す。具体的なことについて、今後委員会の中でまた事務局のほうともいろいろ相談をし て、議事を進めさせていただきたいと思っています。先生方、よろしくご検討をお願い します。 4.その他 【高久座長】  事務局のほうで何か、皆さん方にご連絡することはありますか。いいですか。次回の こととか? 【谷口室長】  先生がおっしゃいましたように、できればぼちぼちもう具体的な話ということに、検 討していただければと思っております。特に役割分担という趣旨から、特に官民の役割 という意味で、学会でおつくりになるのもよし、医師会でおつくりになるのもよし。で きない部分を国でつくるもよし。そういう視点から、ではどこの部分をこういう機構、 団体、そういったものがつくっていくかという具体的な議論を、できれば次回から、ち ょっと進めていただければと。 【高久座長】  そうですね。 【櫻井委員】  それではちょっと、勝手に約束はできないのですが、日本医師会でもいろいろと議論 していますので、日本医師会なりに「こんなことはどうだろう」というような意見を次 までに用意して、先生方のご意見を伺い、できたら、議論の1つの糸口にしたい。さっ き申し上げたように、基本的には、これは日本では学会の先生方を中心にやるべき問題 ではないかなと。だけれど、それをどういうふうに組織化していくかを、ちょっと考え なければいけないと思います。 【高久座長】  次回の委員会は、日本医師会のほうである程度ご意見がまとまるのを受けて、開きた いと思っています。それがいつごろになりそうですか、先生。 【櫻井委員】  先生方のご都合でいつか決めたもらって良いと思います。「いつできるかな」なんて いうと、いつまでたってもできませんから。 【高久座長】  それでは、そのようにさせていただきたいと思います。きょうのお話で、久繁先生、 それから野添先生から、アメリカとイギリスのことをいろいろお伺いして、ある程度健 康情報センター、あるいは診療ガイドライン情報センターのイメージが、はっきりした と思います。次回は6月の25日の午後3時から開かせていただき、まず櫻井委員のほう から、ご意見をお聞かせいただいて、それについて皆さん方からいろいろご議論をして いただきたいと、考えていますので、どうぞよろしくお願いします。  本日は4時半の予定をしていたものですから、これでこの委員会を終わらせていただ きます。どうもありがとうございました。                                     (了) 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課  医療技術情報推進室  (担当)武末、高橋  (代表)03−5253−1111        内線2589,2588