第10回障害者文化芸術活動推進有識者会議議事録 日時:令和8年2月18日(水)13時00分から15時00分 会場:オンライン開催 議事: (1)障害者による文化芸術活動の推進状況等について(文化庁・厚労省) (2)事例紹介 ・「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」(一般社団法人日本ろう芸術協会 代表理事 牧原 依里様) ・「日本博『東京2020』『2025大阪・関西万博』における障害者文化芸術活動 メディア従事者からの視点から」(映像プロデューサー、精神保健福祉士 牧野 望様) (3)意見交換 (4)その他 概要: 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 本会議はYouTubeライブによる公開にて開催しております。本日の出席状況でございますが、配付しております出席者の名簿の通りとなります。なお、今回は設置要綱の一部改正を行いましたので、ご報告いたします。要綱は本日付けでの改正でございます。まず、参考資料1としてお送りしている設置要綱案のうち、「3. 構成員の委嘱期間」について、委嘱期間満了前に構成員の変更があった場合、他の委員と委嘱期間を合わせるため、前任の任期を引き継ぐものとしております。 次に、別紙名簿が改正後の委員となります。高知県子ども・福祉政策部障害福祉課長の山崎千夏様に今回新たにご就任いただいておりますので、ここでご紹介をさせていただきます。その他、構成員の肩書き変更を反映しております。佐久間構成員、長津構成員、野澤構成員については本日ご欠席のご連絡をいただいております。 なお、本日の資料につきましては、事務局から事前にお送りしております通り、議事次第、出席者名簿、資料1-1、1-2、2-1、2-2、参考資料1、2、3となっております。各構成員の皆様には、後ほどご意見をいただく際に、併せて自己紹介いただく予定としておりますので、よろしくお願いいたします。 続きまして、事務局側の出席者をご紹介いたします。文化庁からは、松坂審議官、生活文化創造担当の武藤参事官。厚生労働省からは、障害保健福祉部の野村部長、同じく障害保健福祉部の前田自立支援振興室長が出席をしております。 また、オブザーバーとして、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省および国土交通省から担当者に出席をいただいております。よろしくお願いいたします。 さらに、本日は、一般社団法人日本ろう芸術協会より、牧原依里代表理事、映像プロデューサーの牧野望様より、それぞれの事例についてご紹介をいただきます。 始めに、文化庁と厚生労働省からご挨拶を申し上げさせていただきます。まず、文化庁から松坂審議官、よろしくお願いいたします。 【松坂(文化庁審議官)】 文化庁審議官の松坂でございます。障害者文化芸術活動推進有識者会議開催にあたりまして一言ご挨拶を申し上げます。構成員の皆様におかれましては日頃から障害者の文化芸術活動の推進につきましてご指導を賜り、誠にありがとうございます。 令和5年に策定された、第2期「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」は、令和9年度までの5カ年の計画でございます。現在、中間年度を迎えております。この間、障害者の文化芸術活動は着実に進化・進展しており、本日ご説明いたしますが、鑑賞やそれ以外の活動においても、コロナ禍に落ち込んだ状況からは回復していることが伺えます。一方で、法律に定める11の基本的施策のうちさらなる推進が期待されるものもあろうかと思います。また、令和8年度から9年度にかけては現計画を着実に推進していく一方で、令和10年度を始期とする第3期基本計画の策定に向けた検討も開始してまいります。第3期基本計画における論点を把握する観点からも、皆様が課題と考える点につきまして忌憚なくご意見をいただけますと幸いです。 文化庁といたしましては、引き続き、先導的な事例の創出やそれらの成果を普及・展開する人材の育成等を通じて、障害者の文化芸術活動についてご支援をしてまいりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。本日はどうぞよろしくお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 続きまして厚生労働省から野村障害保健福祉部長、よろしくお願いいたします。 【野村(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)】 厚生労働省の障害保健福祉部長の野村でございます。本日、構成員の皆様方、さらには事例発表者の皆様、そして関係機関の皆様方におかれましては、ご多用の中、ご参集を賜りまして誠にありがとうございます。 構成員の皆様方におかれましては、今年度が計画期間の中間年となります「障害者による第2期文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」の進捗状況などにつきまして、忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げます。 この第2期基本計画に基づきまして、厚生労働省におきましては、障害のある方々の自立と社会参加を促進するという観点から、障害者芸術文化活動普及支援事業、あるいは全国障害者芸術・文化祭の開催、こうした文化芸術活動の支援施策を進めていきているところでございます。 障害のある方々を初めとした皆さんの、身近な地域における支援拠点としての障害者芸術文化活動支援センターにつきましては、令和7年度において最後の2カ所の設置が行われまして、これをもって全都道府県での設置が完了したという次第でございます。これまで以上に支援を必要とする方々が質の高い支援を受けられるように、全国の支援センター同士の横の繋がりであるとか、支援センターと文化政策担当部署や福祉担当部署を始めとした自治体や中間支援団体などとの連携の強化に取り組んでまいりたいと考えております。 また本年10月には高知県において「よさこい高知文化祭2026」として、第26回目の全国障害者芸術・文化祭が国民文化祭と一体的に開催される予定でございます。この祭典を通じて、障害の有無にかかわることなく様々な文化芸術活動が各地に展開できるように取組を進めてまいりたいと考えております。 今後も、障害のある方々の文化芸術活動がより一層推進されるように、文化庁を始めする関係機関と密接に連携をとりながら取り組んでまいりたいと考えております。そういった点からも、本日はまた忌憚のないご意見をお聞かせ賜れば幸いでございます。何卒よろしくお願い申し上げます。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 ありがとうございました。ここで文化庁の松坂審議官、厚生労働省の野村障害保健福祉部長につきましては、他の公務のため退席をさせていただきます。 それではここから日比野座長に議事の進行をお願いしたいと思います。日比野座長よろしくお願いいたします。 【日比野座長】 それでは皆さんよろしくお願いいたします。では議事次第に沿って進めていきます。構成員の皆様からのご意見は議事次第(1)(2)が終わった後にいただく予定になっておりますので、よろしくお願いいたします。 まずは資料の説明に先立ちまして今回の会議の趣旨、そしてどのように、どのような観点から構成員の皆様にご意見をいただきたいのかについて、事務局の方から説明をいただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 【武藤(文化庁参事官(生活文化創造担当))】 文化庁参事官の武藤でございます。よろしくお願いいたします。本日のこの会議の趣旨等についてご説明をさせていただきます。お手元に参考資料2がございましたらご覧いただければわかりやすいと思いますが、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」をこの資料に記載しております。左下に文部科学大臣と厚生労働大臣が基本計画を定めなければならないということが規定されておりますこと、それから右下の第20条に、本日のこの障害者文化芸術活動推進有識者会議を設けて、構成員の皆様に、基本計画等に基づく取組の進捗状況などについてご意見を伺うということが規定されております。 お手元の資料3は第2期の基本計画の概要でございますが、右側に計画期間において目指す姿が書かれておりまして、目標1から目標3までの各目標に※印で進捗指標を設けております。この指標に関して進捗状況を把握して、検証していく観点から、本年度文化庁、厚生労働省それぞれで実施しております調査結果を、議事次第(1)のところで両省よりご説明させていただきます。また冒頭にもご説明がございましたが、議事次第(2)で事例紹介として具体的な取組や意見をご紹介させていただきたいと思っております。構成員の皆様方におかれましては文化庁や厚生労働省からの説明、それから事例紹介の内容に限らず、広い視野から改革・進捗に向けたご意見を頂戴できればと存じます。以上でございます。 【日比野座長】 ありがとうございました。ただいま説明のあった観点も含めまして構成員の皆様と議論を深め、最終的には令和10年度を始期とする第3期の計画へ繋げていきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。それでは続きまして議題次第(1)障害者による文化芸術活動の進捗状況等について事務局から説明をお願いいたします。 【武藤(文化庁参事官(生活文化創造担当))】 まず文化庁よりご説明させていただきます。資料の1-1をご覧いただけますでしょうか。文化庁では第2期基本計画における目標ごとの進捗を把握するための指標を定めております。先ほどの参考資料3のところでご説明させていただいた目標1から3の部分です。その内、目標1に関わる部分が4つございまして、「文化芸術を鑑賞した障害者の割合」、それから「鑑賞以外の文化芸術活動を行った障害者の割合」、3つ目が「活動しやすい環境づくりが進んでいると考える障害者の割合」、そして最後に、これは目標2の関係になりますが、「障害者における障害者文化芸術推進法及び基本計画の認知状況」を今年度取り上げて調査を行いましたので、結果をご報告申し上げます。 1ページ目でございますが、まず調査対象は男女7歳以上、小学校以上の、障害者ご自身、またはご家族に障害者がいらっしゃる方を対象に、障害者ご自身に関する内容を質問しております。インターネット調査により2,000名程度の方から回答を得ております。 2ページ目でございますが、初めに「直接鑑賞」の状況でございます。2024年に文化芸術を直接鑑賞した割合は50.6%。2020年のコロナ禍における割合26.4%からは回復しているという状況でございます。中では映画やアニメ、デジタルアートが29.7%という高い割合でした。続きまして直接鑑賞をしなかった理由として、「近くで公演などを実施していない」が19.7%、それから入場料や交通費などの「費用がかかる(19.3%)」、「関心がない(18.9%)」が主な理由として挙げられております。 3ページ目は直接鑑賞のしやすさというタイトルで、4年前のコロナ以前との比較を聞いておりますけども、2021年頃と比較して「以前より直接鑑賞しやすくなった」と答えた人は全体で24.1%、「あまり変わらない」が36.4%でございました。 直接鑑賞がしやすくなった要因としては「障害に配慮した設備が整っていた」というのが50%を占めておりまして、続いて「スタッフの配慮」、ハード面とソフト面の両方が理由として挙げられております。 続きまして4ページ。創作活動や発表等の「鑑賞以外」の実施状況でございます。2024年に鑑賞以外の文化芸術を行った割合は15.3%。15.3という数字が下の表から足すと出てこないのですが、一番左の「創作活動をした(11.9)%」と「発表した(4.6)%」、それから次の「その他の活動をした(1.0)%」を足しまして、重複してやられている方を除くと15.3%になります。赤い枠でくくっております。高い数値ではございませんが、コロナ禍からは回復していると言えるという状況でございます。それから実施しなかった理由は、「経済的な余裕がないから(18.5%)」、「関心がないから(16.4%)」、「時間がないから(11.5%)」という理由がございました。 それから5ページ目ですが、鑑賞以外の活動のしやすさにつきまして4年前との比較をお聞きしましたところ、「以前より実践・参加しやすくなった」人が全体で22.3%、「あまり変わらない」が36%でした。それらの活動がしやすくなった要因というのが下の欄にありますけども、「福祉施設で、作品をつくったり発表する場があった(22.1)%」「自分の作品を、くわしい人にみてもらって、しっかり評価してもらえた(20.9%)」「地域の施設や団体に、創作や発表のことを相談できる場所があった(20.7%)」などが挙げられております。 それから6ページ目、合理的配慮の状況と法律・計画の認知状況についてでございます。直接鑑賞における障害となる問題などを取り除く合理的配慮を求めた人の割合は32.8%でした。そのうち、求めた合理的配慮につきまして、適切な対応がとられたという割合は87.1%と、高い割合で適切な配慮をなされているという結果が出ております。また障害者文化芸術推進法の認知率は16.9%、計画の方は15.4%というところでございました。 それから7ページですが、地方公共団体における法律に基づく計画の策定状況の一覧でございます。令和6年の10月時点になりますけども、都道府県、政令市、それから中核市、その他の市町村のいずれにおきましても、策定団体数が増加してきておりまして、中核市以上の策定率が高いという状況でございます。 最後に8ページ、まとめでございますが、障害者の文化芸術活動につきましては直接の鑑賞、それから鑑賞以外のいずれにおきましても、コロナ禍以前の状況に回復してきていると言えると思います。鑑賞に関しましては、文化施設における設備が整ってきておりますことや、スタッフの配慮が行き届いているなどの理由として、直接鑑賞を行う方が増えてきておりまして、昨今のバリアフリーの推進ですとか、改正障害者差別解消法の施行に伴います合理的配慮の義務化などによりまして、社会全体として環境整備が進んでいることが伺えます。今後の課題といたしましては、文化芸術活動に対する「関心の低さ」、それから「近くで実施していない」などの面ですとか「入場料・交通費など費用がかかりすぎる」などの経済的ハードルが課題として挙げられておりますことから、これらに留意しました支援のあり方が今後の検討課題であると考えております。 足早でございますが文化庁からは以上でございます。 【前田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長)】 続きまして厚生労働省の自立支援振興室長の前田と申します。厚生労働省における障害者による文化芸術活動の進捗状況等についてご報告を申し上げます。 資料1ページ目をご覧ください。初めに第2期基本計画の進捗指標にもございます「障害者芸術文化活動普及支援事業」における「障害者芸術文化活動支援センター」の設置状況をご報告させていただきます。厚生労働省が全国の都道府県に設置を進めてまいりました支援センターでございますが、今年度をもちまして、全都道府県における設置が完了いたしました。都道府県によって規模感に多少の差はございますが、身近な地域で支援を必要とする方々への質の高い支援が提供できるよう取り組んでまいります。 2ページ目をご覧ください。今年度実施いたしました「全国の障害福祉施設における障害者による文化芸術活動の実態把握に資する調査研究」では、第2期基本計画の進捗指標にもある福祉施設における障害者文化芸術推進法および基本計画の認知状況や、文化芸術活動の取組状況を把握するといった基礎情報の収集を実施いたしました。 全国の主な障害福祉サービス事業所等を対象とし、対象客体の約3割弱から得られました回答をもとに、@からDの集計を行いました。@の「障害者文化芸術推進法および基本計画(第2期)」の認知状況では、法律の認知率は43.8%、基本計画の認知率は21.8%という結果でございました。 資料の3ページをご覧ください。「A文化芸術活動の実施状況(実施の有無、活動分野)」などでは、障害福祉サービス事業所等における文化芸術活動の現在の実施率は43.9%と、前回調査とほぼ横ばいの数値となっている一方、現在実施はしていない事業所のうち、今後新たに実施または再開を検討している割合は全体の約2割弱。現に実施をしております事業所等における活動分野では、美術分野の63.4%が最も多く、次いで音楽分野で43.8%、国民娯楽分野においては41%となっております。文化芸術活動以外のスポーツ活動やイベント活動といった分野では、7割以上の事業所等においての実施が確認されたところでございます。 資料4ページをご覧ください。「B文化芸術活動の活動分類」では、絵を書く、歌う、造形などといった創造活動が約8割弱と高く、作品を見たり聞いたりいたします鑑賞活動では33.8%と、前回調査とほぼ同じ傾向が見られてございます。作品の販売やデザイン提供などの活動や、地域住民とのイベントへの参加などの交流活動は、前回調査に比しまして、増加傾向が見られました。一方、展覧会や舞台公演への参加など発表活動では、前回調査から10%程度の減少の傾向が見られたところでございます。 5ページをお開きください。「C文化芸術活動の成果と課題」では、文化芸術活動を実施しております事業所の約6割強が「障害者の趣味や余暇時間の充実」を、約5割強では「障害者の自己肯定感の向上」を成果として実感し、約5割弱の事業所等では「支援の関わり方に対して新しい視点や気づきが得られた」とされるなどといった結果が得られておりまして、前回調査より大幅に増加をしてございます。 約4割強の事業所等では「指導者や支援スタッフの人材の確保」、約4割の事業所では「職員や利用者の時間的余裕がない」といったことを課題と捉えている傾向が見られました。 6ページ目をご覧ください。最後に「D文化芸術活動の連携協力等」では、事業所等が現在外部機関から受けているものといたしまして、「発表の場の提供」や「発表の場に関する相談・情報提供」などの発表活動に関するものが上位となっている傾向が見られます。事業所等の希望では3割強が「資金援助の提供」、「発表の場の提供」となっている他、「外部機関などによる訪問活動」や「創造(創作)や練習に必要な材料・機材の提供」「専門家やプロのアーティストによる指導・助言」など、利用者の創造意欲の向上、技術向上に資する創造活動にかかるものの割合が高い傾向が見られたところでございます。 以上で説明を終わらせていただきます。 【日比野座長】 ありがとうございました。続きまして議事次第(2)に移らせていただきます。事例紹介に入ります。事務局より事例紹介の進行等について説明をよろしくお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 続きまして取り組み事例をご発表いただきます。本日の事例紹介では、今年度開催されました「大阪・関西万博」や「デフリンピック」を契機とした取組についてご発表いただくこととしておりまして、一般社団法人日本ろう芸術協会代表理事の牧原依里様、映像プロデューサーの牧野望様にご出席をいただいております。それぞれご説明は10分ずつを想定しております。 また本日はそれぞれの事例発表において、動画の共有を行います。広瀬構成員におかれましては、動画の内容について事前に送付しておりますテキストデータを参考にしていただきますようお願いいたします。 【日比野座長】 それではまずは牧原様よりよろしくお願いいたします。 【牧原(一般社団法人日本ろう芸術協会代表理事)】 皆さん、初めまして。一般社団法人日本ろう芸術協会の牧原と申します。 昨年11月に4日間、高円寺を中心に、「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」を開催いたしました。デフリンピックが11月にあるということで、そのシナジーを期待してそのデフリンピックの1週間前にこの芸術祭を実施しました。今回、事例として紹介させていただきます。 3分から4分ぐらいの動画がございますので、皆さんご覧ください。今から見ていただきますが、音はありません。この動画を通して、「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」とはどういう雰囲気だったかを掴んでいただければ幸いです。今から共有します。 (動画再生) ご覧いただき、ありがとうございます。当事者であるろう者たちが中心となって集まり、主導して企画運営を進めてきました。この芸術祭の特徴ですが、ろう文化やろう芸術の表現の可視化として、例えばろう者から生まれる視覚的な表現や身体性、空間デザインなどといった視点から進めてきました。例えばホームページには文字だけではなく手話で表すモーションを取り入れたり、会場の空間を目で見て直感的にわかりやすい案内方法だったり、いろいろ工夫してやってきたわけです。そして参加国ですが、約23カ国になります。デフリンピックシーズンだったため、芸術祭とデフリンピック両方の目的で来日された方々も多い印象でした。そしてプログラムは、映画、舞台芸術、そしてマルシェなど様々にあり、54プログラムを開催いたしました。そしてろう者聴者も関係なく、延べ1万5,000人、想像を超える、沢山の方々が来てくださいました。アンケート結果では満足度86%という結果を得ることができました。 成功の要因を考えますと、今までろう者が主導して活動してきたということ、東京国際ろう映画祭を2年に1回開催してきた実績があったということ、様々なその積み重ねが、今回の規模の拡大に繋がったと思います。また外国とのネットワーク、いわゆる外国で芸術関連で活動しているろう者たちとのパイプを持っており、そうした外国の文化芸術祭にも赴いて、いろんな情報を得てきたり、ネットワークをしっかりと構築してきたことが、今回の結果に繋がったのかなというふうに考察しております。また、デフリンピックがあったために、各国から多くの取材陣がいらっしゃっていました。その取材者たちが「手話のまち東京国際ろう芸術祭があるんだ」ということで、デフリンピックに絡めて取材をしていただくことができ、世界への発信にも繋げることができました。例えばデンマークのネットメディアでは「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」を特集として30分の尺で取材してくれました。その動画はデンマークのネットメディアのホームページにも掲載されています。 この間、文化庁主催での障害者の芸術に関する報告会に参加させていただいたのですが、その時に思ったのは、企画主催をしている聴者たち(非当事者たち)は障害者たちに参加していただくためにどうしたら良いのかという悩みを抱えているんだな、というのが印象に残りました。私たち当事者の立場から見ると、ろう芸術はもともとろう者コミュニティの中で発展してきて、その芸術を楽しむために多くのろう者たちが集まってきた。そういう景色は私たちにとってごく当たり前のことです。でもそのような文化や場は、これまで聴者、つまりコミュニティの外側には十分にひらかれてこなかった面もあります。ですので、ろう芸術というものを社会にひらいていくということが、今回の芸術祭でできたのではないかな、聴者たちに共有することができたのではないかと思っています。 ですからそういった悩みに対する解決方法の一つとして、私たち当事者が中心になって主導していくというモデルを示せたのではないかなと自負しております。 今回のろう芸術祭では、日本の作品を中心にキュレーションしましたが、今後はアジア規模に広げて、アジアならではのろう芸術を発信して行けたらと思っています。また今回の実施に終わるのではなく継続していきたく思っております。3年に1回のペースで開催していきたいと思っておりますので、皆さんどうぞよろしくお願いします。短い時間ですが事例発表は以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。 【日比野座長】 牧原さん、ありがとうございました。では続きまして牧野様より発表をよろしくお願いいたします。 【牧野(映像プロデューサー)】 牧野望です。よろしくお願いいたします。私は日本放送協会(NHK)で32年間、ディレクターそしてプロデューサーとして番組制作をしておりました。2023年9月に早期退職しまして、現在は精神保健福祉士・キャリアコンサルタントとして、メンタルヘルス関連事業会社やクリニック等でカウンセリング・相談業務に従事しております。 昨年2025年は、全国手をつなぐ育成会連合会(本日同団体顧問の久保構成員さまも出席されています)とのご縁がありまして、日本博2.0事業で大阪・関西万国博覧会を核に「障害者の文化芸術国際フェスティバル」の総合プロデューサーを務めさせていただく機会をいただきました。 万博での様子を短く動画にまとめておりますので、まずはご覧いただけたらと思います。 (動画再生) 2分半ほどでしたが、見ていただきありがとうございました。動画の中でも紹介しておりますが、今回、万博では「4つの柱」のプロジェクトを展開しました。 ひとつは「アート展」。自宅や施設等で創作活動に打ち込む障害のある方々のオリジナリティあふれる123作品をギャラリーWest会場で展示しました。作品の一部をスタンプにして来場者と作家とが一緒に台紙に押す体験会を催し、スタンプアートの台紙を持ち帰る、作品をデジタル加工してプロジェクションマッピングにして大きく投影するなど、日頃の活動の延長と、日頃ではなかなかできないトライアルもすることができました。ふたつめが「パフォーミング・アーツ」。障害児者が中核となって体躯をつかう様々な表現活動を、万博のメインホールEXPOホール・シャインハットで実施しました。例えば文化庁日本遺産に認定された「石見神楽」、埼玉県で誕生した障害者とプロダンサーがセッションする「ハンドルズ×コンドルズ」のパフォーマンスショー、さらに車椅子ダンスやファッションパフォーマンスショーも組み込みながら、障害の有無や国籍、言語の違いも超えて出演者も来場者も最後には会場ステージに登壇、出演する「インクルーシブ・ディスコ」など、伝統芸能からコンテンポラリーまで多種多様な身体をつかった表現を展開しました。第三は従来の農福連携の仕組みに加えて、産業界と学生に協力・参加いただいた「農福産学」のキッチンカーの試みです。そして最後4つめが「ユニバーサル・ツーリズム」。日頃、遠隔地観光地への往来が難しい方でも万博という国際的なイベントを訪れることができるよう、企業のボランティアの方々に協力いただき、旅の、万博の、醍醐味を共に満喫してもらいました。 この4つのプロジェクトのゴールは新しい「つながり」の発見でした。「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博の理念のもと、広大な会場内で様々な背景や文化をもつ人々が集い、文化芸術を単に「観る」だけでなく、観る人と創る人、演じる人との直接の交流を意識しました。万博に来場した人たちが、他のパビリオン同様に楽しみながら「観て」「感じて」、表現者と直接に「交わり」ながら、互いに「障害」や「福祉」にもっともっと近しくなる場にならないかと考え、企画を立案しました。 なぜそういうことをやろうと思ったかといいますと、私自身がもともとNHKで福祉や美術関連の“専門家”ではなく、ドキュメンタリーやドラマの作り手だったということも関係があるかもしれません。 「障害者の文化芸術」の世界との出会いは、2006年放送のNHKスペシャルの大型シリーズ(ドキュメンタリー番組)の制作の過程でした。糸賀一雄さんら先哲が取り組んできた戦後の障害児者の人権・権利を巡り、社会保障を拡げていく取組を取材したのですが、このとき障害のある方々の多様な表現活動に触れる機会がありまして、いつかこうした豊かで個性的な表現の世界を番組化したいという思いが私の中で芽生えました。当時、NHKのアーカイブを調べたのですが、日本の場合、障害者の療育という出発点があったせいか、どうしても彼ら彼女らの表現が福祉という括りの中でのみ語られてきたことに気づきました。特別な能力・才能を持つ人たちや、懸命に格闘している支援者にフォーカスを当てる単発のドキュメンタリーがほとんどでした。それはそれで決してネガティブなことばかりではないのですが、一方でいつの間にかある種の固定観念を醸成してしまったのではないか―そんな風に感じたことを思い出します。実際はたった1人の特別な人だけではなくて、たくさんの表現者や支援者がいます。既存の枠組みを変え、障害や福祉にあまり関心のない方たちにもリーチできる番組企画はできないだろうかと思い、今スライドに出ているような様々な番組を開発しました。その一つが現在もNHKのEテレで日曜日の朝8時55分からやっております「no art, no life」というウィークリー番組です。毎回5分間、一人の作家にフォーカスしたドキュメンタリーで、既に130人を超える方々に出演いただいています。 こうした一連の番組は、結果的に国内外で想像しなかった大きな反響があって、2020年に東京藝術大学・大学美術館で、本日ご参加の保坂構成員さまなどのお力もお借りして「あるがままのアート、人知れず表現し続ける者たち」展(主催 NHK、東京藝術大学、文化庁、日本芸術文化振興会/日本博2020事業)という展覧会を開催しました。テレビで見た作品を、リアルに鑑賞・体感していただける場・機会を作りました。コロナ禍だったのですが、小さなお子さま連れのご家族を中心に20代から40代にかけての鑑賞者が数多く訪れ、当時の東京藝術大学の関係者からは「いつもとは違う年代層が上野の森に来場した」という言葉も寄せられました。 こうした反響は単にNHK(メディア)だけの力ではなく、当時の社会を取り巻く「風」の存在も大きかったです。その一つが2013年に招致が決まった東京オリンピック・パラリンピックでした。オリンピック憲章では、文化プログラムはスポーツと文化・教育を融合させる根本原則に基づき、開催都市に実施が義務付けられている不可欠な要素で、NHK内でも競技だけでなく文化的なアプローチで東京2020大会をとらえようとする機運がありました。それからもう一つ、これは非常に大きなことではないかと私は捉えているのですが、今日も冒頭にご説明がありました「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(2018年)でした。この法律によって、各都道府県に支援センターなどが制度的に整えられ、新たな活動拠点・社会基盤となり、障害者の文化芸術活動に広がりが生まれたと聞いておりますし、実際にそうなっていると皮膚感覚でも感じています。 こうした中で、私自身がクリエイター・ジャーナリストとして日本博2020に続き、2025年、再び日本博2.0で大阪・関西万博にて障害者の表現活動について関わる機会をいただきました。この間に環境や人々の意識は、成熟期ともいえる次段階にあります。 社会情勢の変化やNHKでの経験の中で、豊かで多様な障害者の表現の世界を“届けきる”にはどうしたらいいかということを、自然と万博のコンテンツ作りの文脈の中で考えるようになりました。 そして考え至ったのが「あたらしいつながり」の模索、そのための「プラスワン」の存在の発見・発掘でした。今までは、どうしても「アーティスト・作家」と「サポーター・支援者(福祉関係者)」という関係を中心に障害者の表現の世界は存在してきたと感じています。その両者の濃密な関係を前提とし、そのリフレクションを受け身的に観る「鑑賞者」がいる。でも、もうちょっと「鑑賞者」が「作家」や「支援者」との間に軽やかに入ってみるような試みができないだろうかと考え、ユニバーサル・ツーリズムや農福産学のプロジェクト、インクルーシブ・ディスコ等をやりました。「ユニバーサル・ツーリズム」では、気持ちがあっても日常生活では障害と少し離れたところにいる企業人が、「農福産学」では、「農福連携」で生産された産物の確かな存在や価値をしっかりと受け止めて料理する「産業・企業」がいて、その手を介した料理を福祉の世界で働こうと考える「学生」と就労機会が少ない「障害当事者」とが共に国内外の万博来場者に販売する。 アートもパフォーマンスも音楽ライブも食もボランティアも…全てが個々ひとりひとりの表現だと捉え直し、単なる鑑賞する側に留まらずに、従来の支援する側とされる側との良好な関係を土台にした新たな存在=プラスワンとなって、輪の中に一歩入って新しいつながりを育んでいく―障害者の文化芸術、表現活動を媒介にICF「生活モデル」の実践が、未来社会のデザインを掲げる万博という場では挑戦できるのではないかと考えました。100%できたかと問われると自信はありませんが、日頃、障害とは少し遠かった参加者からはある種の発見や手応えがあったとアンケートでわかっています。こうした参加者こそがあすのプラスワンにつながっていくのではないかと思っています。 私自身は前職での経験から日本の障害者の表現は世界に誇る、アピールできる文化であると強く感じています。歌舞伎やアニメ、漫画と同じように、あるいはそれに匹敵するような表現・文化だと考えています。実際に手がけてきた番組コンテンツも実は国内よりも先に海外での評価や栄典をいただきました。こうしたことから障害者の表現は作品単体としての魅力に留まらず、この国の法制度や福祉サービス、その根っ子にある「歴史的な歩み」「共生への理念」と一体となって世界に対し発信できる日本の文化芸術コンテンツではないかと思っています。法律をもとに令和10年度を始期とする第3期の計画に進むと伺っております。表現活動を契機にしたICF生活モデルが、日本そして海外でも実際の生活の中でもっともっと当たり前になるためにも、その鍵となる表現活動に寄り添いながら一緒に参加する「プラスワン」が拡がっていく―そんな議論を関係者のみなさんに期待することで、駆け足となりましたが私からの事例報告を終わりにしたいと思います。 このような機会をいただき、ありがとうございました。 【日比野座長】 牧野様、ありがとうございました。では以上で議事次第(2)事例紹介を終了いたします。 それでは議事次第(3)意見交換に移ります。議事次第(1)の説明や(2)の事例発表を踏まえて、あるいはそれらに関わらず、構成員の皆様からご意見をいただければと思います。その際、事務局または事例発表者への質問については、各構成員の皆様がそれぞれ発言された後に最後にまとめて回答をお願いいたしたいと思います。 構成員のご意見については1人あたり3分を目安にお願いいたします。3分経過しましたらベルが鳴りますので、お話をまとめていただければと思います。皆さんの意見を予定通りの時間に収めたいと思いますのでご協力よろしくお願いいたします。発言の順番は名簿順で、いつものようにお願いいたしたいと思いますので、まずは今中構成員からよろしくお願いいたします。 【今中構成員】 社会福祉法人素王会の今中です。よろしくどうぞお願いいたします。 まずはじめに、厚生労働省資料の1ページ目で、支援センターがめでたく47カ所になったのは皆様の努力の結果だと思います。そこで、僕は、この法律がちゃんと動くかどうかは、結局「支援センターをどう運営するか」にかかっていると思っています。現場にいる立場として、理念や志があるだけでは回らなくて、実際に動かす段階になると一番気になるのは予算です。そこで事務方のみなさんに伺いたいのですが、支援センターに付く予算は、今後増額されていく流れなのでしょうか。 2点目は、全国連携事務局が、8年間ぐらい2つの部門でやっていたものが、令和7年から、後ほどお話をしていただけるNPOリンクさんの方になったと思います。そのため業務量的には非常に大きい、多いと思うのですが、何か困りごととか要望とかがあれば聞かせていただきたいと思います。 同じく厚生労働省の資料の5ページの下段の方で、「支援と文化芸術の両方に対応できるスタッフの育成が非常に難しい」というのが3番目に上がっています。実はこれは僕の記憶が間違ってなければ、この会議体を設置して7年半経過するのですが、それ以前の準備委員会のときから同じことがずっと言われていると思うのです。そもそも、皆さんご存知の通り、社会福祉労働者はそれでなくても人材難で、なかなか労働者が少ない現状です。加えてこの支援と文化芸術の両方の能力を持った方を雇用する、もしくは育成するというのは非常に難しいのです。自治体(大阪府)の担当者の方と話をしても、この育成は自治体レベルでは手に負えないと。それ以上に、我々事業者としても、これを育成するというのは、なかなかできるものではないです。その辺を勘案して、国として、この育成にどういうふうに取り組んできたのか、これから取り組んでいくのか、その中でももう少し焦点化すると大学教育の中で、今までこの人材をどう作ってきたのか、もしくはこれから作っていくのかというのをお伺いしたいと思います。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。質問に関してはまた後ほどまとめて対応したいと思います。では続きまして大塚構成員、よろしくお願いいたします。 【大塚構成員】 大塚です。意見を述べる機会をいただきましてありがとうございます。私の方から3点ほど意見を述べさせていただきます。 1点目は、参考資料3にもありますように、基本的な計画第2期が中間年であるということでございます。参考資料3の2ページにあります政策の方向性として、障害者文化芸術推進法に定める11の施策が書かれておりますけども、この施策を「総合的・複合的に推進」していくということですので、各政策について一定の指標を持った評価というのが必要かなと思っています。できれば中間報告、さらには2期の最終年における全体のまとめ、そして第3期へと繋げていただきたいというふうに考えております。 2点目は、この計画とも関係しますけども、今、社会保障審議会の障害者部会などにおいて、障害福祉計画および障害児福祉計画の議論が進んでおります。この中においては、国が基本的な指針を3月を目途に告示で示すということであります。障害者芸術に関しましては、この中に障害者の社会参加を支える取組定着ということで、障害者の文化芸術活動を推進するということを定めております。具体的に都道府県や、あるいは市町村がつくる障害福祉計画、あるいは障害児福祉計画の中にこの障害者芸術の基本的な計画と連携してか、一体的にか、各都道府県市町村が計画を作るべきだというふうに考えております。 3点目は、先ほどありましたように厚生労働省の障害者芸術文化活動支援センターが47都道府県に全てできたということは喜ばしいことだと考えております。あとは、それぞれの支援センターが一定レベルの相談支援ができるように進めていく必要があると思っています。非常に幅があると思っておりますので、一定の相談ができるためには、引き続いて、広域センターの役割が重要ではないかと思います。各支援センターをサポートする広域センター、それから各支援センターにおける人材の養成。先ほどもお話ありましたけれども、人材をどのように養成していくかということ。最後に全国の連携事務局、一つではありますけれども、このあり方、そして活動というものを、その内容についてよく決めていかなければならないと。良い支援ができるようにしていただきたいと思います。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして岡部構成員、よろしくお願いいたします。 【岡部構成員】 たんぽぽの家の岡部です。先ほどの牧原様、牧野様の発表もありがとうございました。先ほど既に今中様や大塚様のお話にもありました、厚生労働省の普及支援事業に関してですが、私は近畿ブロックの広域の支援センターも担っております。ご指摘にありましたように支援センターが全都道府県に揃ったのですが、ネットワークや事業規模、ノウハウの蓄積などに関してばらつきがあるということを、どう改善していくかということが私達の使命でもあるというふうに思っております。同じ府県内でも地域格差があったりと、それぞれの府県の規模、あるいは広域といっても地域ごとの差もあったりもするので、そのあたりをどう見ていくかが課題だというふうに思っております。 厚生労働省の調査の方をメインに見ていたのですが、未だに障害のある人のアート活動は福祉施設単位での活動が主流だというふうにお見受けしました。その中で、これから実施をしたいと検討している層が19.3%ということで、意外と多いように感じました。一度やめていたがまたやりたいとか、活動することに関心があるという層に、どんな機会や情報を提供できるかということが、次の開拓をしていくヒントになるかなというふうに思っています。先ほど牧野様がご報告されたように、その中でどれだけ異分野連携ができるかというのが大事かと思っています。福祉人材が特に不足している状態が続いていると思いますが、福祉施設の環境や人材だけでなく、地域全体に目を向けて関係者を増やしていくことが大事だと思っています。 少し話は変わるのですが、現在は学校教育の中でも、部活動など、スポーツ文化の地域活動移行というのが進んでいると思います。そういった意味で文化施設との連携だけではなく社会教育施設や民間施設、あるいは関心のある企業など、地域の中で連携できる人たちはまだまだたくさんいると思います。小さくとも多様な取組が各地で広がっていくことが重要だというふうに思っております。もちろんそもそも地域の企業・市民活動などを担う人材不足も課題になっていることも承知はしております。 もう一つ、福祉施設での活動、創作活動というのが8割近くあるのですが、発表の機会というのは意外と少なく3割ほどというのに驚きました。各地で発表の機会は結構増えていると思いましたが、まだまだ発表する機会が足りないというふうに思いました。大規模な展覧会だけではなくて、身近な人たちが作品を見せ合うような場から作っていく。交流を目的とした発表の機会作りも大事だと思います。 最後に創作の種類と幅について、最近は生成AI等のデジタルツールを用いた創作、鑑賞、発表の機会も増えていると思います。障害のある人たちが身近なツールを使って発表や鑑賞あるいはオンライン上での交流もできる機会だと思っています。権利問題や評価をどうするかといった課題もありますが、ポジティブに捉えながらひろめていきたいと思っております。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして小川構成員、よろしくお願いいたします。 【小川構成員】 アートNPOリンクの小川智紀です。厚生労働省の障害者芸術文化活動普及支援事業の連携事務局を担当しています。厚生労働省から説明があった通り、今年度から全ての都道府県に障害者芸術文化活動支援センターが設置され、全国を網羅する体制になりました。この事業で最も重要なのは、今中さん、大塚さん、皆さんに言及いただいていますが、支援センターのやはり人材です。活動の方向性を決め、民間団体や市町村とのネットワークを築いて、事業の企画運営から相談支援対応まで行い、その上で障害福祉と芸術文化双方の状況を理解する専門人材というのは、これは十分ではありません。手探りで今事業に取り組んでいる段階です。この専門人材の育成についてぜひご理解をいただきたいというふうに思っています。 さて私からは障害者の文化芸術活動の意義である地域共生社会についてお話しします。最近では、「秩序ある共生社会」という危うい造語も見聞きしますが、厚生労働省が示す理念が明確に示されているのは昨年5月の地域共生社会のあり方検討会議の中間取りまとめです。この会議で地域共生社会とは、支え手と受け手側にわかれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら自分らしく活躍できる地域コミュニティ、ケアリングコミュニティであることが確認されています。またこの報告書では地域共生社会の実現に向けて、福祉以外の分野との連携協働が重要だとされており、審議途中にあった文化に関する議論こそ盛り込まれていないものの、福祉分野以外の居住支援や教育、司法など多機関協働の具体的な仕組みや事業化が必要だと示されています。こうした総合性を見据えた観点からすると、現在の障害者芸術の取組の射程はやや狭いのではないでしょうか。 文化庁や厚生労働省の状況を考えてみると、政策というよりは、事業化された分野という認識が多いように思います。例えば文化庁の事業を見ると、「障害者等による文化芸術活動推進事業」の他にも、「劇場・音楽堂等機能強化推進事業」の中で共生社会の実現に資する社会包摂や社会課題の解決を目的とする事業も増えてきています。「学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業」の枠で、ユニバーサル公演事業もあります。あるいは文部科学省の障害児教育や生涯学習分野での取組、厚生労働省の領域での取組、こども家庭庁関連の子供の居場所に関連した活動の把握も必要です。外務省系の国際交流基金による他国の障害者芸術団体とのネットワーク、経済産業省での新規事業創造施策における障害者団体の活動についても含め、障害者と芸術の関わりの全体像を確認したいところです。第2期の計画では各省庁間および地方公共団体との連携や情報共有を継続強化すると記述があります。各領域に広がる活動を把握し、事業を超えてその成果や課題を整理し、各地に広がる取組の総合性を再確認する必要があると考えています。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして尾上構成員、よろしくお願いいたします。 【尾上構成員】 DPI日本会議の尾上です。ありがとうございます。まず文化庁の調査に関しての意見ですが、文化芸術の直接鑑賞経験について、障害のない人といいますか、一般的な調査と、障害のない人との比較ができるようにしていただければというふうに思います。回答に関して、以前より良くなったという人が24%ということで、増えてきているのはもちろんいいことなのですが、ただやはり見ておかなければいけないのは、一番多いのは「あまり変わらない」という36.4%なわけですね。まだまだ大きな変化までには至っていないというのが現状ではないか。これをどう変えて、さらに大きな変化にしていくのかというのが課題ではないかと思います。 また、障害者差別解消法に対する認知も併せて聞いていただければなと思います。仮に合理的配慮を求めたと答えておられる方が、差別解消法を知っているという前提で求められたということならば、少なくとも32.8%の方は差別解消法のことをご存知なわけですね。障害者文化芸術推進法の認知の度合いの倍になるということになります。やはりこの障害者文化芸術推進法が、まだまだ認知が低いというのが気になるところであります。これがアンケート、調査に関する意見です。 また、障害者文化芸術の計画の、いよいよ後半に向けて、2点申し上げたいことがあります。この間、東京オリパラ、万博といった大きなプロジェクトを起爆剤にしながら、取組を進めてこられたわけですが、これらの取組の成果をレガシーとしてどう残していくのか。ハード面に関しては、バリアフリー法や各自治体の条例の基準やガイドラインという形に徐々に結実してきている部分があるわけですが、ソフト面、プログラム面のアクセシビリティに関して継続し発展をしていくための、レガシーとして残していけるような施策や仕組みが必要なのではないかというのが一点です。 もう一つは、東京オリパラから万博という形で、この障害者文化芸術計画の第2期前半戦が進められてきたわけですけど、この後後半に向けて、ポスト万博といいますか、万博以降の推進策を色々と打ち出していく必要があるのではないかなというふうに思うのですね。もちろん大きなイベントがあってもなくても進めていく必要があるのですけども、やはりオリパラ、万博でウワッと盛り上がったものが、もう後はだんだんしぼんでいくというようなことにならないように、ぜひ万博以降の推進策を打ち出していっていただきたい。それを検討していただきたいということをお願いします。 以上です。ありがとうございました。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして久保構成員、よろしくお願いいたします。 【久保構成員】 全国手を繋ぐ育成会連合会の久保でございます。お二方の発表をどうもありがとうございました。よく現状がわかったような気がいたします。それを見て、今回文化庁と厚労省からの資料も見させていただきながら、育成会としても万博に参加をさせていただきましたので、その辺のところからも感じていることを申し上げたいと思います。 支援センターさんの動きがあまり見えないなという感じが前からしていまして、育成会としては万博に参加させていただいたのですけれども、支援センターさんたちとの連携がしたかったと思っていますし、これから活動していくことがあったら、ぜひやらせていただきたいと思っています。何とか一緒にやっていけないかなという思いは持っています。 それから、調査の結果を見ても、地域の中での活動をどのようにできるのかというのが、今後の活動として重要ではないかと思っています。障害のある人の社会参加にもつながりますけれども、このまぜこぜの文化芸術の活動といいますか、そういうことが地域の中でのバリアフリーとか共生社会に貢献することができるのではないかと思います。障害のある人たちの日々の暮らしの中にもそういうことが影響して、共生社会に結びついていくのではないかなというふうに思っておりますので、ぜひ支援センターさんと一緒に全国でいろんな活動ができて、それがもとになって共生社会に何か役に立つようなことができたらなと思っています。そこがやはりこれから先の活動として重要になってくるのではないかなというふうに思っております。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして柴田構成員、よろしくお願いいたします。 【柴田構成員】 柴田でございます。事例発表の方々、本当にご苦労様でございました。ご報告ありがとうございました。少し感想を述べさせていただきます。国際ろう芸術祭につきましては、高円寺の新しい文化、まちの文化を作ってくださったと思いまして感謝申し上げる次第です。高円寺は演劇文化が盛んで阿波踊りが活性化するまちとして有名です。その高円寺にもう一つの顔を作ってくださったと思いました。また大阪・関西万博のご発表につきましては、日本の新しい文化の発信に繋がったのではないかなと思いました。ご発表の中の映像からは、基本計画第二期の「はじめに」に記載されたウェルビーイングとはどういう状態のことかを考えさせられました。当事者のみならず、ご家族、周辺に関わる人々、もっと言えば社会全体のウェルビーイングとは、どういう状態がベストなものなのかということです。ありがとうございました。 今回は意見を大きく二つに絞って、述べさせていただきます。私は全国公立文化施設協会でアドバイザーを務めているなかで、共生社会の人材育成に関わっております。文化庁からこの数年間ご支援をいただきまして、劇場・音楽堂で中核となる共生社会の推進人材を育成するという目的で実施しております。その研修の中から優秀な人材が輩出されてきまして、人材育成も次の段階に移っていると思っています。今後は、全国で頑張っている共生社会を実現する人材の方々の劇場ネットワークを強化し、構築する時期であると考えています。推進体制の自律的・持続的な仕組み作りを考えることが重要と思います。また、劇場職員の共生社会支援人材の専門性を高めることも重要と思います。一方、劇場・音楽堂の施設長、館長の方々の意識をもっともっと開発していかないと前に進んでいかないなということも重要な課題として浮かび上がってきました。来年度の募集から劇場・音楽堂の地域中核の助成事業類型の中に共生社会事業が枠組みとして出てまいりました。この共生社会事業の中身を見極めて、同志として一緒に推進していく仲間を広げる必要があると思っています。支援の幅が広がっていくのではないかという期待感がございます。 最後に第3期の基本計画に向けてでございますが、今までの中間評価を議論する機会が必要ではないでしょうか。来年度、第3期の基本計画の下地を作っておくということが極めて重要だと思っております。2030年度につきましてはユネスコの文化指標、持続可能な社会の構築の成果年にも当たっておりまして、文化政策も地球規模で考えていく必要があります。2030年の前と後でどういう政策が必要かということを考えないといけません。支援の当事者のみならず、そのご家族、関係者の方々のウェルビーイングを可視化し、評価し、次につなげていくことが必要です。そのことを念頭に置きますと、来年度はとても重要な年回りであると思います。以上でございます。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして鈴木構成員よろしくお願いいたします。 【鈴木構成員】 国際障害者交流センターの鈴木です。よろしくお願いします。お二方の発表をありがとうございました。いろいろ知らないこともあって、大変勉強になりました。 私の方から2点ほど意見を申し上げたいと思います。文化庁の調査に関連することになるかと思うのですけれども、現場視点で見た意見ということでお話させていただきたいと思います。鑑賞の機会に関しましては、コロナ禍前、もしくはそれより少し上昇しているというところで、これはやはり評価すべきことであるとは思います。とはいえそこで終わるのではなくて、今後も普及推進していくことが重要であると考えております。 一方で、実施している件数であったり、鑑賞の機会が増えていくという一方で、今後は量から質、数から質への転換も求められているのではないか、そういう段階に入っているのではないかと思っております。特に鑑賞の機会というところではハード面やアクセシビリティに配慮した鑑賞機会の取組が広がっていますけれども、年に1回だけなど単発的な実施にとどまる例も多いと感じております。また字幕、音声ガイドに関しましても、付けるということが目的ではなくて、鑑賞する作品の理解や体験の質を高める内容になっているかどうか。これを制作者が創作段階からきちんと考えているかどうか。こういった視点も重要であると思います。実施したことで何が変わって、何が蓄積されて、何がそこで生まれたのかという視点も持って見ていく必要があるかと思います。継続性、蓄積ノウハウ、意識、内容等に繋がっているのかどうかということの課題があるのではと感じています。 もう一点は、鑑賞の機会ということ以外で、鑑賞に比べて特に実演芸術の分野の取組が少ないと感じています。障害のある人も、実演芸術において継続的な育成やキャリア形成を支える仕組みが現状十分とは言えないと思います。実演芸術は参加の裾野層から次の段階を目指す人、セミプロやプロフェッショナルへと成長していく段階構造を持つ分野だと思います。現状の施策の多くは入口支援、裾野への支援であり、継続・発展を支える設計は弱いのではないか。また演出家や振付家、アーティストなど、創作側の理解、専門性の向上、芸術と支援する人を横断する人材の育成も重要ではあるかと思います。今後は単発事業ではなく、創作、実演、評価、改善を循環させるプログラム設計を施策として位置づけ、段階的な育成とキャリア形成までを見通したモデルの構築が必要ではないかと思います。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして津田構成員、よろしくお願いいたします。 【津田構成員】 神戸大学の津田と申します。よろしくお願いいたします。私の専門は社会教育という領域で、障害のある人たちの生涯学習の推進というところに深く関わっておりますので、その観点からお話をするということになります。牧野さんが事例発表でお話をしてくださった「プラスワン」という表現に関わることで、今日も多くの構成員の方にご指摘していただいたことを上塗りするようなお話をさせていただきます。 支援センターの機能がどんどん広がってきている、充実しているということは大事ですし、一定の成果を見ているということもわかりましたが、共生社会作りという上位目標への取組として、しっかりと言葉にしながら強化していっていただきたいというのが一つ目です。私の関連領域で言いますと、障害のある人たちの自由時間の問題ですね。とても自由時間は長いのですが、充実した時間を過ごすことができていないということは明らかです。そういう領域の方たちが多いということは明らかで、社会参加の停滞と直結するような課題になっております。これは障害者の生涯学習推進政策で挑戦している部分ですが、この障害者の生涯学習推進政策は、文科省でやられているものも10年目を迎えようとしています。まだまだ強化していかなければならないことなのですが、最初からずっと申し上げているように、この厚労省、文化庁での取組と、文科省の取組が全然リンクしてこない。全然と言うと語弊があるかもしれませんけれども、とてももどかしく感じております。この協働関係を強化していただきたいと思います。 それから障害のある方たちのアートを鑑賞した人たちが、障害認識をどう変化させたのかという、鑑賞者の社会認識、障害認識に影響があるということについても、私自身の小さな研究でやっておるところですが、成果を見せていくことができる部分だというふうに思っております。文化芸術活動の推進がどのような社会的なインパクトをもたらして、どのような過程で社会の変化を生み出していくかということのビジョンを、強く示していっていただきたいというふうに思っております。引き続きよろしくお願いいたします。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして服部構成員、よろしくお願いいたします。 【服部構成員】 はい。甲南大学の服部です。興味深い事例のご報告をありがとうございました。ご報告いただいた文化庁の調査を拝見しますと、約50%の方が文化芸術活動の鑑賞をしていて、約15%の方が活動を実施しているというのは、ほぼ一般の方の数値に近づいているのではないかと思いますので、それは大変喜ばしいことだと思いました。あとは望んでいるけれども参加できていない人とか、情報さえ届けば参加するかもしれないのに、という人に必要な支援が届くよう、一層の普及を進めていただきたいと思います。 全都道府県で支援センターが設置されたというのは大変喜ばしいことだと思いますが、あとはそれぞれの支援センターでの活動の質を高めていくということが大切だと思います。既に多くの方がご指摘くださっていますように、支援センターによって活動に対する温度差といいますか、内容の差が大きいというふうな印象はあります。設置当初は熱心に取り組んでいたセンターの活動が、同じ団体が長期で受託を続けることでマンネリ化といいますか、活動が停滞気味になっているという支援センターもあるのではないかなと思います。これについては活動をどう評価するかということが課題になるかと思います。個人的には現場の支援者の方や個人で活動を行っている方々、当事者の方々からいろいろお話をお聞きする中で、展示の場所とか発表の場所が欲しいとか、制作の場所とか、練習の場所が欲しいとか、あとは作品や楽器の保管場所に困っているというふうな声をよくお聞きします。もちろん全てのニーズに応えるのは困難だとは思いますが、大きな母体で活動しているのではなくて、個人とか小規模な団体で活動される方の声もぜひ拾い上げていただきたいなと思います。 支援センターの運営者のほとんどは福祉事業所とか、直営の場合には都道府県の福祉関係の部署ではないかと思いますが、活動の質を高めるためには、やはりそこに芸術関係の部署とか施設が積極的に関わることが不可欠だと思います。文化庁の助成金にしても、補助金の事業を見ても、プロの実践家の方や、美術館、音楽堂などの施設、文化芸術系の部署が主体的に関わっている事業はとても充実した精度の高い活動を展開しているように思います。ですが、全体で見るといまだに、福祉と芸術の分離とか行政の縦割りとか、芸術関係者の無関心というような状況が散見されますので、ぜひその解消を目指すような取組を両事業において進めていただきたいと思います。 社会に目を向けますと、巷には分断を煽る言動があふれていますし、多様性を否定するような声も大きくなっているように思います。経済格差とか文化資本の格差の拡大も深刻だと思います。いろいろな形で行われているこの障害のある方々の芸術活動が、決して障害のある方の中での分断とか、障害のある方と健常者の分断とかに繋がることがないように十分に注意していただきながら、国際交流を推進するとか、障害のある方に限らず多方面での多様性を尊重する機運を高めたりするなど、最近の排他的な風潮に歯止めをかける役割をぜひ担っていただきたいと思っています。私からは以上です。ありがとうございます。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして廣川構成員よろしくお願いいたします。 【廣川構成員】 NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)の廣川麻子と申します。よろしくお願いします。まずは鑑賞の機会の拡大について、昨年もお話ししましたが、アーツカウンシル東京による鑑賞サポート助成制度は今年度、2025機運醸成枠が加わり、予算規模が前年度に対し3倍、採択件数も2倍以上と増加しました。これは助成があれば取り組む事業者が増えたということです。 しかし東京と地方の格差が著しくなっていることが明らかになっています。TA-netで運営している公演情報サイトに掲載された範囲に限りますが、2025年の1年間に実施された字幕・手話・音声ガイド付き舞台公演は177件。うち東京は115件、つまり、65%は東京が占めています。 公演期間中に1回だけ実施のため、土日に集中し、実施日が重なってしまうことがあります。例えば2月21日は少なくとも4件が重なっていることを確認しています。きこえる人ならば公演期間中いつでも行けます。これも機会の格差といえます。また、それぞれの質にばらつきがあると感じています。資格認定などの評価は馴染まないかもしれませんが、質の担保という観点からも、アクセシビリティの適切な運用へのチェック機能が求められる時期に来ていると感じます。 なお、嬉しい事例を紹介します。下北沢演劇祭が開催中ですが、字幕タブレットを5つの団体が全公演で提供しています。これこそ、機会の均等といえます。 このような取組を東京だけに限らず、全国に広げるための仕組みを真剣に検討していただきたいです。一方で、助成があるからやるのではなく、企画立案の時から、アクセシビリティに関する予算を、照明や音響などと同様に位置付け、当たり前のこととして組み込むような構造にするよう働きかけることも重要であると申し添えます。 みなさまご存知の通り、昨年6月に手話施策推進法が施行されました。手話への理解を、芸術文化の力によって広げていく機会と捉えています。 そして支援センターが全ての県に設置されましたので、アクセシビリティに関する取組を、自治体や劇場、障害者団体と連携、強化していただきたいです。特に、芸術文化を育てるためにも、子どもの頃からアクセシビリティのある観劇体験の機会を作ることは何より重要であると考えます。以上です。ありがとうございました。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして広瀬構成員、よろしくお願いいたします。 【広瀬構成員】 国立民族学博物館の広瀬です。よろしくお願いします。まず文化庁に対して、2,072人のアンケートということですけれど、非常に気になるのがその調査対象の属性です。これは短い期間でインターネットということですが、施設入所している人なのか、自立して社会生活をしている人なのかによってずいぶん違ってくると思います。それから法律の認知度というのも、例えば小中学生がどれくらい入っているのか、知的障害の方がどれくらい入っているのかによって結構違ってきます。大まかな数字を出すというのは大事なことですけれど、もうちょっと細かく属性ごとの数字を出さないと、この数字を元にいろんなことが議論されていくのはちょっと危険かなという気がいたします。 それから鑑賞のところで、これも障害属性と関わるのですが、「スタッフの配慮がゆきとどいている」34.7%というところで、これは割と高い数字というふうに評価されていたと思うのですが、僕ら視覚障害者、あるいは聴覚障害の方も一緒だと思いますが、ハード面の設備というのは我々にはそんなに必要なくて、やはりスタッフの配慮、人的サポートというところが大事なところなのです。この有識者会議でもずっと話題になっている人材育成という部分も含めて、34.7%というのは視覚障害、聴覚障害の立場からすると決して高い数字ではない、もっと上げないといけないなという気がいたします。 それからこれもいろんなところで言われることですけれども、合理的配慮を求めた人が32.8%。これも低い数字で、やはり当事者が求めないと始まらないので、この辺の啓発活動みたいなことは自分も含めてしっかりやっていかないと数字が上がらないなという気がします。 厚労省に対しては、まず皆さんがおっしゃっている支援センター設置が47件揃ったということで大変めでたいし、努力に敬意を表します。一方で基本計画の認知度が低いということが、やはりこれからの課題になってくるのだと思います。 それから非常に些末なことで申し訳ないのですけれど、今日の資料をいただいて読んでいて気づいたのですが、厚労省の方は「障害者芸術文化支援」という名称が頻出しています。おそらく施設名称が先だったんだと思うのですが、我々の会議の名称は「文化芸術」で、「芸術文化」と「文化芸術」というのが混在しています。施設の名称などはもうどうしようもないですけれども、若干疑問に感じます。もし何か理由があればお聞かせいただきたいし、可能な範囲で統一できるなら統一した方が今後いいと思います。 同じように些末なことですけど、文化庁関係では鑑賞以外のところで「創作」という言葉が使われていて、厚労省関係では「創造」、それから後の方では「創造(創作)」という言葉も出てきました。この辺も大差がないと言えばそれまでですが、同じようなことを指しているならやはり同じ表現を用いた方がいいと思います。 それから厚労省に対して、アンケートの回収率が3割以下です。これにはさまざまな理由があるのでしょうけれど、3割以下のアンケート回収率でいろいろ論じるというのは、危険な部分もありますので、回収率をどう上げていくかということもこれから考えていただきたい。 もう一点だけ、「視覚障害者情報提供施設、聴覚障害者情報提供施設は除いた」とありますけれど、これはやはり当事者からするとすごく残念です。そういう情報提供施設が芸術文化芸術活動の拠点になっているということがあるので、ぜひここもしっかりフォローしてほしいと思います。逆になぜ除いたのかという理由があればお聞かせいただきたいと思います。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして保坂構成員、よろしくお願いいたします。 【保坂構成員】 滋賀県立美術館の保坂です。よろしくお願いします。東京国際ろう芸術祭の事例を面白く見ました。ろうの人たちによるアートフェスが、福祉の観点ではなくて、言語的少数者の権利として行われているということが強く感じられたからです。日本は公用語が法的に定められていないので、どうしても構造的に言語的少数者に対する関心が薄くなるように感じているのですが、そうした中で画期的なイベントだったと思います。 ここで美術館で働く者として挙げたいのは、英国のミュージアムの事例になります。英国では会場で解説パネルとともにブリティッシュ・サインランゲージ、英国手話の映像があります。これは手話を提供すべき言語の一つとしてきちんと扱っているということになります。またこれは、合理的配慮における予見義務という考え方に基づいています。日本でも合理的配慮は今でこそ法的義務になりましたが、その解説を見る限りはどうしても出てきた要求に対してどのように対応するかという、事後的な対応という観点が強いように思います。これに対して英国では、平等人権委員会が2010年の平等法で言われている合理的配慮は予見義務(Anticipated Duty)という考え方を持つべきだと明確に述べています。 ここから日本の課題が見えてきます。一つは日本には平等人権委員会のような、パリ原則に適合した機関、政府から独立して明確な法的権限を持つ人権に関わる機関がないこと。そしてもう一つは、予見をするミュージアムがあったとしても、それを実施するための裏付け、つまり資金援助が不十分であることです。英国ではナショナル・ロッタリー・ヘリテージ・ファンドが、中核となる投資原則の一つに、インクルージョン、アクセシビリティなど幅広い観客層が利用できるユニバーサルデザインを取り入れたプログラムを定め、積極的に資金援助しています。例えばロンドンのデザイン・ミュージアムでは、2029年に向け向けた展示室のリニューアルで、アクセシビリティ向上のために5,500万ポンド程度の支援を受けているようです。 今日本ではミュージアムをいかに世界スタンダードに合わせていくかということが文化庁を含めて議論されていますけれども、そのとき忘れてならないのは、ミュージアムのアクセシビリティの向上が今世界のトレンドであって、しかもそれを実現するための資金援助を行政が行うことはもう当然になっているということです。今回いただいたデータも興味深いものでしたが、日本の国立アートリサーチセンター(NCAR)が実施したアンケートにも面白いものがありました。美術館で導入した方が良いサービスを関東、関西それぞれ1,000人に聞いたところ、視覚障害者への鑑賞補助ツールに丸をつけた人が関東で9.8%、関西で8.4%でした。これは関東ではキッズルームやSNS向け撮影スポットを上回ったので、ニーズが確かにあることがわかったわけです。国のリサーチでそういうことがわかっている以上、国が率先して予見義務に基づき、対応策を積極的に講じていくこと、また助成プログラムを作っていくことは義務だと思います。 以上になります。 【日比野座長】 はい。ありがとうございました。では続きまして森田構成員、よろしくお願いいたします。 【森田構成員】 森田です。まず事例発表をありがとうございました。感想として、先週文化庁の「障害者等による文化芸術活動推進事業」の報告会でも牧原さんの発表があり、同様のことを申し上げたので、重複する部分はご容赦ください。ろう者が主体的にこれほど豊かなプログラムを達成されたことに非常に感銘を受けました。海外の障害を持つアーティストが主体的に事業を行っているのを今まで見ていたので、やっと日本でもこの段階に来られたということです。昨年、アクセシビリティの研究をされている田中みゆきさんが、韓国の芸術文化における障害者アクセシビリティの現状を調査された記事を拝見しました。アートスケープというウェブサイトで公開されていますので、興味がある方はぜひ読んでいただきたいと思います。その記事によりますと、韓国では1972年に制定された文化芸術振興基本法が2023年に改定され、2024年に施行されました。ここに障害のあるアーティストによる公演や展示を推進する項目が加わり、具体的な内容としては公演法に登録された劇場および博物館および美術館振興法に登録された美術館において、年1回の公演や展示を実施することが義務化され、実施状況が行政によって評価監督される仕組みとなっています。その公演や展示は障害のあるアーティストが50%以上貢献し、制作・企画に関わること、監督・演出または指揮者として参加すること、あるいは参加アーティストのうち、障害のあるアーティストが30%以上を占めていることとされています。田中さんは韓国のこの法律に対して、韓国に人権意識が根付いていることの表れであると言われましたが、日本は人権意識が失われているかというと、私は決してそうではないと思います。障害者運動を始め先人の障害者は差別と戦ってきました。しかしその思いが文化芸術活動に接続されたかというと疑問が残ります。共生社会という言葉の下で、どちらかというとマジョリティの世界にどのように同化していくか、そこに力を注がざるを得ませんでした。そして、私達は声を上げにくくなりました。教育や社会のあり方の影響もあるかもしれません。障害当事者の1人としても、意識の改革が必要であると感じています。そして、障害のある人が主体として芸術活動を行うということに、まだハードルが高いのも事実です。 さて日本の障害者文化芸術推進法は、あくまでも理念法であり強制力は弱く、努力義務が中心となっています。具体的な数値目標やそれに基づいた実施義務もありません。個人的にはこの法律が強制力を持つことに関しては疑問が残ります。しかし具体的な数値として見える化していく必要を感じます。また障害者という属性も、現在の日本では障害者手帳を保持するという区別の仕方となっています。現実的にはアクセシビリティについても私達はまだお願いをし、答えを持たなければならない存在です。私自身、共生社会という言葉が、ただ差異の封じ込めにならず、文化芸術とは何なのかを、皆様とともに考え問い続けていきたいです。ありがとうございました。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして山崎構成員、よろしくお願いいたします。 【山崎構成員】 今回初めて参加させていただいております、高知県障害福祉課の山崎と申します。高知県での取組を報告させていただきたいと思います。高知県では平成9年から障害者美術展を開催しておりまして、今年度で29回目の開催となりました。今年度は900名ほどから応募をいただきまして、うち240点余りを入選作品として県立美術館の展示室で展示させていただきました。会期は10日間で4,000人程度の入場がございました。 また令和6年度からは、企業が入選した作品の商品化ができるよう作家さんにオファーできる取組を開始しておりまして、去年度は2団体から利用申し込みがありまして、13作品がカレンダー用として利用されるような形になりました。カレンダーは販売商品ではなく、趣旨に賛同いただいた企業への配布用として作られたものでございます。8年度は障害者美術展が30回目の節目を迎えますので、審査員の方や入選者の方による作品解説や商品化されたものを展示するといったことなども検討しています。 先ほども申しましたれけども、8年度は国民文化祭と全国障害者芸術文化祭が高知で10月から12月にかけて開催されます。障害者美術展もこの会議中に開催できるよう準備を進めております。また障害者芸術文化祭では障害のある方の世界観を理解するプログラム、わからなさに寄り添うというような題で、全盲のアーティストの方による作品制作と展示であったり、聴覚障害の方が案内人になり静寂の中で表情とボディランゲージで意思疎通に挑む取組であったり、視覚障害の方が案内人になり、視覚以外の感覚でするコミュニケーションを体感するというようなイベント等も検討をしているところです。情報保障や合理的配慮にも対応したものとなるよう準備をしているところです。 今日皆様からいろいろご意見を伺ったこと等も踏まえて、高知県としても、障害者の方の芸術文化に取り組んでいきたいと思っております。以上です。ありがとうございました。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして吉野構成員よろしくお願いいたします。 【吉野構成員】 愛知大学の吉野です。まず牧原さん、牧野さんのご発表を大変興味深く聞かせていただきましてありがとうございます。高円寺の方は私も2日ほど行ったので、とても楽しませていただきました。さて事前のご説明を受けまして少し意見を述べさせていただきます。 まず文化庁の調査報告で、鑑賞等において様々な努力により成果が見られたのはよかったと思います。また厚労省の支援センターが全ての都道府県に設置できたことも大事な成果だとは思います。こちらについては知見やノウハウの蓄積ができてきたセンターが、それをどう他のセンターと共有して発展させていくかも課題になるかなと思っています。 次に文化庁の資料の2枚目の「文化芸術を直接鑑賞しなかった理由」、それから5枚目の「鑑賞以外の文化芸術活動を実施しなかった理由」についてです。鑑賞の方の理由の上位に「近くでやっていなかった」「費用がかかりすぎる」「関心がない」とあり、活動の方では「経済的な余裕がない」「関心がない」「時間がない」とありました。これらの回答ですが、住んでいる地域によってもかなり差があったんじゃないかなと思われます。交通の便もよく、文化芸術施設やイベントなどの選択肢も多い都市部とそうでない地域とでの比較などもできる調査が必要かと思います。 またどちらの回答にもあった「関心がない」ですが、これも地域格差などにより接する機会や環境によって、そもそも関心を持てるようになる機会がないといった影響もあるのではないかと思われます。そうした地域別の現状も把握した上で、各地の公立文化施設への支援なども通じた格差を改善していくような制度や取組を今後期待いたします。 また、第3期基本計画に向けての準備も始まっているとの事前説明を受けての意見です。次の計画に向けて、刑務所など矯正施設にいる、もしくは出所後の障害のある人たちのことも視野に入れていけないでしょうか。「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が制定された際に、そこまでの想定がされていなかったかもしれませんが、そうした人たちを除外するような文言も見当たりません。法務省の令和6年の犯罪白書では、入所受刑者の20.4%、少年院だと31.9%が精神や知的発達などの障害があると記載されています。ここ数年、私も刑務所での文化芸術活動に関わることになって現場に入っていますが、私の場合は現在女性刑務所ですけれども、活動に参加した被収容者の方たちの多くにそうした傾向が見られます。そうした方たちの中には出所後の社会参加が難しく、支援にも繋がりにくいまま、また戻ってしまうという方も多いと現場で伺いました。 昨年6月から始まった拘禁刑の制度によって、その人の特性に応じた更生教育や支援のプログラムを実施しなければならなくなって、現場では試行錯誤が始まったばかりのようです。特に知的や精神の障害のある方たちが文化芸術活動を通じて、刑務所に戻るのではなくて、社会に戻って留まることができる社会参加を支援するという視点から、法務省矯正局との連携および、現場となる各地の刑務所と文化芸術施設や団体、障害者の文化芸術活動を実施する施設や団体が協働する取組などを支援できるような整備を、今後検討していくべきではないかと思いますが、文化庁、厚労省の方はどうお考えでしょうか。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。以上、本日出席していただいている方々のコメントをいただきました。本日欠席されています佐久間構成員、長津構成員、野澤構成員に関しては、事前にテキストをいただいておりますので、事務局の方から代読をお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 はい、それではまず野澤構成員のご意見を代読させていただきます。 【野澤構成員】(事務局代読) 障害者の「作品」については芸術的価値や経済的価値が社会的にも注目されるようになったが、「活動」の福祉的な可能性や精神的幸福についてはもっと光を当ててもよいと思う。 現在、私は自閉症や重度知的障害者を中心とした強度行動障害の研究をしているが、自傷や他害、もの壊しなどで支援が難しい利用者を受け入れた施設・事業所が試行錯誤しているうち、芸術活動にたどり着き、行動障害の緩和とともにユニークな芸術作品を作成するようになった例がいくつもある。文化芸術活動がウェルビーイングや自己実現に深いところで影響している可能性がある。障害者の文化芸術に特化した法律を制定した意味はこのあたりにあるのだと思う。 厚労省の資料の「2. 文化芸術活動を行う障害福祉施設等の取組状況調査について」のCで、「支援の関わり方への新しい視点や気づきの獲得」が令和2年度調査21.0から、令和7年度調査48.6%へと大幅に増えていることは注目に値する。「新しい視点や気づきの獲得」は利用者のウェルビーイングや自己実現を求めていく入口になり得る。今後、文化芸術活動と支援のあり方に関する研究を行うとともに、効果的な実践について周知させるべきと思う。 その上で参考になるのは、D「今後提供してほしいもの」の回答だ。「資金援助の提供」(31.0%)や発表の場(29.9%)、「訪問活動」(29.6%)、「道具・機材」(29.5%)、「専門家等の指導・助言」(29.1%)などの施策を進めていただきたい。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 続きまして佐久間構成員のご意見を代読させていただきます。 【佐久間構成員】(事務局代読) ご提示いただいた資料中、文化庁の資料1-1を拝見しての感想と、関連した仙台市の状況について、お話しさせていただきたいと思います。 資料1-1の3ページに、直接鑑賞がしやすくなった要因として、「スタッフの方の配慮が行き届いていて、安心して快適に鑑賞できた」が、34.7%で3番目に高い数値になっておりました。 直接鑑賞を増やしていく方策として、施設のハード面での対応となると物理的、予算的な制約から、なかなかすぐに対処することは難しくなるかと思いますが、心理的なバリアをなくしていくことが、高い比率で鑑賞体験を延ばしていくことにつながることが数字として確認できたと考えており、そうしたスタッフの養成が非常に大事だと、改めて感じたところです。 また、同じ資料の6ページに、合理的配慮についての調査結果が示されております。配慮を求めた経験は3割ほどですが、求めれば高い確率で適切な対応がなされているということを踏まえれば、配慮を求める心理的なハードルを下げていく、そうした環境づくりが大事だということだと思いますので、これもやはり施設スタッフの育成・養成が大切だということが言えるかと思います。 では自治体の文化施設職員の育成はどうなっているかと申しますと、仙台市では、昨年度から、全ての市民利用施設に勤務する職員向け、これは指定管理者を含むものでございますが、そうした職員向けに障害理解促進や差別解消に関する研修を実施しております。これはEラーニングによる研修ですが、この取り組みによりまして、仙台市の公共施設における障害理解を底上げしていこうとしております。 当然、施設の種類に応じた専門的な研修は必要で、例えば(公社)全国公立文化施設協会が行っている人材養成講座などがありますが、機会が限られますので、施設が企画する事業の中で、障害者芸術活動支援センター(宮城県の場合、NPO法人エイブルアートジャパンが運営されておりますが)の助言や指導をいただきながら、実践をとおして施設スタッフの育成を進めている状況です。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 最後に長津構成員のご意見を代読させていただきます。 【長津構成員】(事務局代読) 本日はやむを得ない事情により欠席となりましたことをお詫び申し上げます。書面にてコメントを述べさせていただきます。 まず、文化庁からのご報告について、「以前より鑑賞しやすくなった」との声が多く寄せられていることは、関係各位の継続的なご尽力の賜物であると受け止めております。ハード面だけでなく、職員の方々の対応や意識の変化といった人的・心理的な側面でのバリアフリーが進んできていることは、文化芸術活動へのアクセスのあり方そのものを変える重要な前進であると考えます。 また、厚生労働省からのご報告にあったように、支援センターが47都道府県に設置され、支援体制の基盤が全国的に整備されたことは、本政策の大きな到達点であると思われます。障害のある人の表現活動を通じて、支援者や周囲の人々の認識そのものが変化していくという成果も見られていることがとても良いことだと感じました。 さて、第3期基本計画の策定に向けては、次の段階の課題についても検討する必要があるのではないかと考えます。 「障害者文化芸術活動推進法」の制定から8年が経過し、制度的基盤は大きく前進しました。多様性や包摂の意義は社会的に共有されつつある一方で、多様性に対するバックラッシュとも言える言説が広がっているのもまた事実です。 こうした状況において、障害のある人の文化芸術活動に関する政策にとって重要なのは、支援体制の整備を引き続き継続することはもちろんですが、本政策が社会に対してどのような意義を持つのかを、より広い文脈の中で示していくことであると思われます。文化芸術活動は、個人の表現の機会を保障するだけでなく、多様な他者の存在を社会の中で可視化し、人々の認識や関係性を更新していく契機となりうるものです。この点について、今後の政策の方向性を考える中で、より明確に位置づけられる必要があると考えます。 また、「文化芸術活動においては,障害の有無はかかわりないと捉えつつも,社会的障壁等により文化芸術活動に困難が生じている局面がなお残っていること」を計画の前提としていることを踏まえるならば、誰にとって文化芸術活動への参加の障壁がより大きいのかという視点が重要であると考えます。例えば、地域差や制度へのアクセスの困難さなどを含め、支援が届きにくい状況にある人々の存在にも目を向ける必要があると考えます。 さらに、社会的障壁は障害のある人のみに関わるものではなく、高齢者、外国人、子ども、LGBTなど、多様な人々の社会参加の条件とも重なり合うものです。本政策がこれまでに蓄積してきた知見は、こうしたより広い社会的課題に対しても示唆を与えるものであり、文化政策が社会の包摂性そのものにどのように寄与しうるのかという観点からも、今後の基本計画において検討が深められることを期待しております。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 以上でございます。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では私の方からも、皆さんのご意見、そして最初の事務局等からの説明を伺いまして、手短に感想を述べさせていただければと思います。 構成員の皆様からもご意見ありました人材育成、そして地域の中での連携、量から質というようなキーワードもございました。やはりオリンピック、デフリンピックがあり、万博あり、かなり数多くの文化プログラムが障害者をテーマとし、障害者を対象としたものが数多く行われたというところで、かなりの経験値を得たかと思います。私も、今日事例説明の中でありました牧原さんとともに、ろう文化のプログラムを行う中で本当多くの気づきがありました。そんな中で、改めてこの文化芸術活動というものの定義を考えたときに、厚労省のデータにもありますけれども、美術・音楽・演劇・囲碁将棋・カラオケ・茶道・舞踊などありますけれども、こういう文化芸術活動というのが、いわゆる障害者の中から生まれてくる活動も多々あるかと思います。私の経験した中で、ろう文化の中だからこそ生まれてくる表現活動がありました。聴文化の中では生まれ得ないような表現活動、文化芸術活動の種類やコンテンツも、きっとまだまだたくさんこれから生まれてくるだろうと思います。そしてそういうものを見つけ出していくことができる、もしくは作り出していくことができる人材育成というものも、やはり次のフェーズでは必要になってくる。ハード面ではなく、人材育成というソフト面、そしてこれまでの既成概念にとらわれないような着眼点というものを持った人材を育成するということも、今この推進活動には必要になってくるのかなという感想を持ちました。 はい、皆様どうもありがとうございました。ではここからは、構成員の皆様からいただいた質問に対して、同じ領域の質問などもございましたので、事務局の方から対応していただければと思います。よろしくお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 厚生労働省の増田でございます。私の方からまず、厚生労働省でお答えすべき部分をまとめてご回答させていただきたいと思います。 まず冒頭の今中構成員から、支援センターの普及支援事業の予算が増加傾向にあるのかというご質問をいただきました。額面上予算額という意味では横ばいという状況でございますが、各支援センター、広域支援センター、連携事務局、多種多様な新しい取組を行ってくださっている状況でございますので、執行額というか事業費という意味では着実に増えているというような状況でございます。 また同じく今中構成員から、連携事務局が一つになったところでの業務過多についてご質問を頂戴しました。恐縮ながら、本日は連携事務局を日々務めていただいている方も構成員にいらっしゃいますので、厚生労働省からのお答えは差し控えさせていただければと思います。 続きまして広瀬構成員から、「文化芸術/芸術文化」「創造/創作」という文言についてのご指摘、ご質問をいただきました。これまでどちらかというと文化庁の方が「文化芸術」、厚生労働省が「芸術文化」という言葉を使っている傾向があるかと思います。これは法律や計画ができる前から、厚生労働省では「芸術文化」を冠した事業を行っていたということが経緯にあると思います。また「創造」という言葉は法律や計画の名称としてよく使っておりますが、現場の方々は、どちらかというと「創造」という堅い言葉よりも「創作」という言葉を使っていらっしゃる。こういったところが混在しているというのが一つの要因だと思います。今後我々が使う文言や、また第3期の計画策定に向けて、こういったご指摘にも留意しながら取り組んでまいりたいと思っております。 また同じく広瀬構成員から、視覚・聴覚障害者の情報提供施設が調査対象から外れたことの経緯についてご質問いただいております。今回は限られた時間の中で、まず日中活動というものを中心的に行っているところにおいて、文化芸術活動がどのような形で行われているかということを主眼に置いていたことから、日中活動系サービスと言われるような障害福祉サービスの事業所を調査対象の軸として置かせていただきました。調査を実施するにあたって、調査項目等をご検討いただいた調査検討委員会の方でご議論いただいた上で、そのような形をさせていただいたところです。しかし今後、同様の調査等を行う際には、ご指摘のことも踏まえて検討させていただきたいと思います。 またご質問に関連して、今回、支援センターが47都道府県に設置されたことについて多くの言及をいただきました。47できたことを踏まえて「ここからだぞ」というご指摘をいただいたというふうに承知しております。我々も支援センターが47都道府県に設置されたことに満足をせずに、これからは支援センター間の横の連携でしたり、我々が国の方でも厚生労働省と文化庁が連携しながら取り組んでいるのと同様に、自治体における文化担当部署と福祉担当部署との連携、また、そういった公的機関に加えて多くの中間支援団体の皆様、そういった方々にもご参画していただきながら、どういった支援センター活動というのができるかということを検討・相談をしていきたいと思っております。 本日の構成員の中にもいらっしゃいますが、日々連携事務局、広域センターとして、いろいろな知見をお持ちになってご活動していただいている方々もいらっしゃいます。そういった方々のご意見も頂戴しながら、制度運営の話、また第3期に向けてどういったことを検討していくべきかということもご助言をいただきながら検討していきたいというふうに考えております。厚生労働省の方からは以上でございます。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 代わりまして、文化庁生活文化創造担当の参事官補佐をしております山口と申します。私の方から文化庁関係でご質問等をいただいたところにつきましてお答えをさせていただきます。 まず、ご説明させていただきました調査に関するところ、先に尾上構成員の方からいただきました、いわゆる一般の方との比較の関係で、一つの調査を口頭でご紹介させていただきます。一般の方の鑑賞に関するデータの一つの参考としまして、毎年、文化に関する世論調査を実施しておりまして、最新のご紹介できる調査が令和6年度調査になっております。こちらは今回我々が実施しております調査と前提条件が異なる部分があるので一概に比較できるものではないのですけれども、この文化に関する世論調査の中で、文化芸術イベントを外出を伴う形で鑑賞したことがあるかどうか尋ねたところ、「鑑賞したことがある」と回答した人の割合は43.1%と出ております。今回我々がご紹介した調査でも約5割の方が直接鑑賞しているというところなので、少し数字的には高いですけれども、割合的には近いところがある。これは服部構成員の方からもコメントがありましたけれども、そのような数値になっています。 もう一つ、鑑賞以外の文化芸術活動を実践したり支援したことがあるかという質問も、同じ世論調査の中にあります。その質問に関しては、「したことがある」と回答した人の割合は13.6%と、割合的にも大体同じような数値になっているというような状況になっております。 ただこの世論調査は全国の18歳以上の2万5,000人程度に聞いておりまして、障害の有無の区分はないので、この世論調査の中に実は障害のある方のお答えも含まれているので、なかなか比べにくいのですが、参考までの数値としてご紹介させていただきました。もう一つ、今回我々の調査の属性に関することについて広瀬構成員の方からお尋ねがありました。属性に関しましては3月に詳細な報告書を出させていただきますので、そのときに改めて構成員の皆様にはご紹介できるかなと思っております。速報値的なところで口頭でご紹介させていただきますと、今回調査をした2,072名の中で、回答いただいている年齢層としては50歳以上の方が六、七割ぐらいと過半数を超えています。一方で50歳以下の方が3割以下、20歳以下に限定すると6%弱ぐらいというような状況になってございます。 また広瀬構成員の方から、回答者した障害のある方は自立しているかどうかというお話がありましたけれども、今回調査の中でも、障害のある方々のバックグラウンドとして障害福祉サービスの利用状況も聞いております。いわゆる通所系の放課後デイサービスなどの生活介護や、そういった支援を利用しているかどうか、訪問系支援、介護の支援を受けているかどうかなどのいくつかの選択肢で、どういうサービスを利用しているかというところも聞いておりますので、それらのクロス集計でバックグラウンドはある程度わかる部分もあると考えております。 また吉野構成員の方から、地域差、地域によって鑑賞できる機会について格差があるのではないかというところもご示唆がありました。今回は地域の部分については集計をしておりませんので、次回以降の調査の中で地域別のところも含めて分析ができるような調査の仕組みについて今後検討していければと考えております。 またこれもご意見をいただいている中で多かった連携について、先ほど厚生労働省の方からもありましたけれども、厚労省と文化庁との連携をはじめ、中でも文部科学省内の生涯学習と我々文化庁との連携もそうですし、やはり身近なところも含めて連携をしていくというところは今後検討が必要かなとは思っていますし、ご示唆いただいた内容も次回の第3期計画の中でも検討を深めていければなと考えております。 また、やはり皆様から人材育成のところはかなり多くご指摘をいただいたところがあるかなと思っております。我々の中でも人材育成は非常に課題に感じているところもあって、助成金の支援の中でも人材育成をテーマにしたものをいくつか支援はさせていただいているのですけれども、やはり教育段階からの人材育成には、なかなか手をつけられていないというところもあります。そういったところも構成員の皆様からのご指摘も受けながら議論を深めていければいいかなと考えておりますので、いただいたご意見も参考にさせていただきながら、今後議論を進めていければと考えております。私の方からは以上になります。ありがとうございます。 【日比野座長】 はい、厚労省、文化庁の方からの対応ありがとうございました。では最後の議事として、その他、事務局から説明をよろしくお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 はい。本日はお忙しい中ご出席、また、貴重なご意見をいただき誠にありがとうございました。本日いただいたご意見を踏まえつつ、第2期計画の取組を進めてまいります。なお第3期計画については、令和10年度を計画期間の始期とし令和9年度中の策定を予定しております。令和8年度についても必要な準備を行ってまいりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では事務局に進行をお渡しいたします。よろしくお願いいたします。 【増田(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部自立支援振興室長補佐)】 日比野座長、本日は円滑な進行をいただき、また、構成員の皆様、事例発表者の皆様には貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。 以上