障害者が希望する「結婚・出産・子育て」支援 取組事例集 わかりやすい版   <目次>(1ページ)  1 出会いや結婚、子育てなどを支援する取り組みの例(4〜9ページ)  2 結婚、子育てなどの相談にのりながら支援する取り組みの例(10〜15ページ)  3 グループホームで子育てを支援する取り組みの例(16〜21ページ)  4 相談支援とホームヘルプ、役所などが協力する取り組みの例(22〜25ページ)  5 相談支援とホームヘルプなどが協力する取り組みの例(26〜29ページ)  6 障害のある親もその子どもも家族全体を支援する取り組みの例(30〜35ページ)  7 役所がいろいろな福祉施設と協力して支援する取り組みの例(36〜39ページ)   <はじめに>(2〜3ページ)  あなたはどんなふうに暮らしたいですか?  どんなふうに暮らすかは、自分で選ぶことができます。  たとえば、グループホームで暮らす人もいれば、アパートの部屋を借りて暮らしている人もいます。  また、一人暮らしをしている人、好きな人と2人で暮らしている人、子どもを育てている人もいます。  「障害があるとできない」なんてことはありません。  恋人を探したり付き合ったりするとき、いっしょに暮らすときや結婚するとき・結婚した後など、支援者がサポートしてくれることがあります。  子育ても福祉サービスや母子保健サービスで手伝ってもらえる仕組みがあります。  さらに、役所の人たちや地域の人たちが協力してくれることもあります。  どんなふうに暮らすかをいきなり自分で選ぶのはむずかしいかもしれません。  なので、支援者たちは「これを選ぶとこんなふうになるでしょう」といったことを説明したり、あなたがいろんな暮らしかたを試してみるのを手伝ったりします。  そのようにして、あなたが自分で選んでいくことを支援します。  この冊子では、障害のある人の結婚や子どもを産んで育てることなどを支援しているいろいろな法人の取り組みを紹介します。   <1 出会いや結婚、子育てなどを支援する取り組みの例>(4〜9ページ)  関係する福祉サービス:グループホーム、自立生活援助など   ●恋愛や結婚などを専門的に支える  ある法人では、知的障害のある人たちの恋愛や結婚、子育てなどについて独自の支援をしています。  いまこの法人で支援を受けている人は数百人います。  そのうち、カップルは数十組、結婚したりパートナーと生活している人も数十組います。  また、何人かは子どももいます。  この法人には、恋愛や結婚などを専門に支援している職員が何人かいます。   ●こんな取り組みもしています  ・デートするときのマナーや「性」について勉強する講座  ・「恋活」イベントや子育てしている家族の交流会  ・恋愛や結婚などについての悩み相談  この法人では、このようなイベントを1年に30回くらいおこなっています。  支援者は、次のような支援もおこないます。  ・恋愛や結婚などについての相談にのる  ・結婚するときにはお互いの家族に会うときの支援をする  ・子どもを育てる支援をして、子どもの成長をいっしょに見守る     ●支援を受けた人の例  男性(30歳代、知的障害)と女性(20歳代、知的障害)  男性はもともとグループホームで暮らしていました。  女性といっしょに暮らすために、グループホームを出ました。  女性といっしょに暮らしてから、支援者が週に1回家に来て、相談にのったりしています。  ◯男性の話  女性と出会った後にボーリングや食事会、映画など3回くらいイベントに参加して、仲が深まりました。  自分たちだけでは出会いなどは難しいと思います。  最初に出会ってから付き合うまで、支援は大事だと思います。   <2 結婚、子育てなどの相談にのりながら支援する取り組みの例>(10〜15ページ)  関係する福祉サービス:障害者就業・生活支援センター、委託相談支援事業所など   ●望む暮らしができるように支える  ある法人では、望む暮らしについて支援者が相談にのって支援をしています。  結婚や子育てのほか、「一人暮らしをしたい」「ご飯を自分で作って生活したい」などの相談にのっています。  近所には、結婚や子育てをした障害のある人が多くいます。  これから結婚や子育てをしたいと思っている人の参考になっています。  子育てをしている家族の家に支援者と行って、暮らしを見たり、話を聞いたりもしています。   ●こんなことに気をつけています  ・子育てを支援するときには、地域の人たちやいろいろな機関・サービスの人たちと協力します。  ・機関やサービスを使うかどうかは、障害のある本人が決めるようにします。  ・地域のなかで子育てを支える機関・サービスにどんなものがあるかを調べて、お知らせします。見学などに行くときには、支援者が付き添うこともしています。   ●支援を受けた人の例  男性(40歳代、身体障害・知的障害)と女性(40歳代、知的障害)、子ども1人(中学生)  子どもが生まれた後、ホームヘルパーや地域のボランティアの人、地域の保健師が家に行って支援をしました。  ボランティアの人は、初めの2週間は週に5日、そのあと子どもが保育園に入るまでは週に2、3日 家に行きました。  ホームヘルパーも、初めの2週間は週に5日 家に行きました。  そのあと6年間、週に2、3日 家に行って、子育てのしかたを教えたり、子どもをお風呂に入れる手伝いや着替えの準備、離乳食づくりなどを夫婦ができるように支援しました。   <3 グループホームで子育てを支援する取り組みの例>(16〜21ページ)  関係する福祉サービス:グループホーム   ●知的障害のある人の子育てを支援する  ある法人がグループホームとして借りている部屋には、子育てをしている家族が暮らしています。  職員はときどき部屋に行って家族を見守り、暮らしについてアドバイスしたり お金の管理などを支援したりしています。  子育ては、基本的に親たちが自分でしています。  子育てを支援するサービスを使ったりするときには、職員が手助けしています。  グループホームから出たいと思ったら、家を探したりするのを職員が支援します。     ●こんな取り組みもしています  子どもが小学校に入る前くらいまでは、地域の保健師がグループホームに来て、子育てについてのアドバイスをしています。  役所の家庭児童相談室の職員が来ることもあります。  職員たちは次のような支援をおこなっています。  ・家族の部屋を訪れ、アドバイスをする  ・子どもを保育所に入れるときなどに手続きを支援する  ・子どもの学校での保護者面談にいっしょに行く     ●支援を受けた人の例  男性(30歳代、知的障害)と女性(30歳代、知的障害)、子ども1人(小学生)   ●子どもの親2人の話  役所の家庭児童相談室の職員に月に1回来てもらい、相談にのってもらっています。  子どもの学校との面談にも いっしょに来てくれて、担任の先生との話にも加わってくれます。  将来はグループホームを出て暮らしたいです。  不安はありますし、すぐには難しいと思いますが、自立した暮らしをしてみたいです。   <4 相談支援とホームヘルプ、役所などが協力する取り組みの例>(22〜25ページ)  関係する福祉サービス:委託・特定相談支援事業所   ●福祉サービスと役所で協力して支援する  相談支援事業所は、福祉サービスについて相談にのったり、手続きの手伝いをするところです。  ある相談支援事業所では、2組の家族の子育てを支援しています。  子育てを支援するために、ホームヘルプのサービスや役所の児童福祉の部署などと協力しあっています。     ●支援を受けた人の例  男性(視覚障害)と女性(30歳代、視覚障害・精神障害)、子ども2人(小学校に入る前の子)  子どもを保育園に送り迎えするのはホームヘルパーがおこなっています。  子どもの体調が悪かったりしたら、ホームヘルパーが相談支援事業所に連絡することになっています。  また、相談支援事業所は役所の児童福祉の部署に相談して協力を頼んでいます。  たとえば、役所の人が家族の家に行ってアドバイスをしたり、子育て支援サービスなどについて説明したりしました。  役所の人が障害年金について説明するときには、相談支援事業所の人もいっしょに行きました。   <5 相談支援とホームヘルプなどが協力する取り組みの例>(26〜29ページ)  関係する福祉サービス:特定相談支援事業所・自立生活援助   ●いろいろな福祉サービスが協力して支援する  ある法人では、相談支援や暮らしのアドバイスをするほか、ホームヘルプで家事や子育てを支援しています。  障害のある子どもを支援するのには、障害のある子どもの相談支援事業所とも協力しています。   ●支援を受けた人の例  女性(30歳代、精神障害)と子ども3人(小学校に入る前の子1人、小学生1人、中学生1人)  週に1回、法人の職員が家に行ったり、精神科の病院に いっしょに行ったりしています。  電話で相談にのることもあります。  また、週に3回、ホームヘルパーが掃除や料理、子どもをお風呂に入れるのを手伝っています。  障害のある子どもには、子どもの相談支援事業所が中心になって支援しています。  地域の保健師や家庭児童相談所などとも協力して親子を支援しています。  保健師は月に1回くらい、電話で相談にのっています。   <6 障害のある親もその子どもも家族全体を支援する取り組みの例>(30〜35ページ)  関係する福祉サービス:委託・特定相談支援事業所など   ●親と子どもを分けないで支援する  ある法人では、相談支援事業所やグループホームのほかに子どもの支援をする施設や保育所などもあり、親も子どもも家族全体を支援しています。  子育てをしている家族が困ったときに頼れるように、1年中いつでも電話がつながるようにしています。  もしも家などに行って助ける必要があることなら、職員がすぐにかけつけます。  「話を聞いてもらって安心した」という人もいます。     ●こんな取り組みもしています  妊娠した人の相談にものっています。  子どもを産んだあとにどのようなサービスや制度があるかを説明したりしながら、妊娠した人に寄り添っています。  そして、子どもを産むかどうか本人が決めるのを支えています。  子どもを産んだ人の中には、自分の親(子どもにとってのおじいちゃん・おばちゃん)に子どもを預ける日をつくっている人もいます。  ファミリーホームに子どもを預ける人もいます。  ファミリーホームは、何人かの子どもが一緒に暮らす施設です。  また、養子などとして他の人に育ててもらう人もいます。   ●支援を受けた人の例  男性と女性(40歳代、知的障害・精神障害)、子ども2人(小学生)  ホームヘルパーが週に2回来て、掃除や子どもをお風呂に入れるのを手伝っています。  2人の子どものうち、年上の子どもは平日はファミリーホームにいます。  土日は家に帰ってくることもあります。  年下の子どもはふだんは家で過ごしています。  週に2回はショートステイで施設で過ごしています。   <7 役所がいろいろな福祉施設と協力して支援する取り組みの例>(36〜39ページ)  関係する福祉サービス:児童家庭支援センター、基幹相談支援センター  関係する役所の組織:母子保健・児童福祉部署、障害福祉部署   ●月に1回会議を開いて支援を話しあう  ある地域の役所では、毎月第2火曜日の午後1時30分から2時間、子育てを支援するための会議を開いています。  児童家庭支援センターや基幹相談支援センターなどの職員も参加しています。  会議では、支援が必要な家族をどのように支援していくか、役割分担をどうするかなどを話しあいます。  そうして、いろいろな分野の福祉施設が協力しあって支援しているのです。     ●このような役割分担をしています  ・児童家庭支援センター  地域で暮らす子どもや家族の相談にのっています。  公認心理師の資格をもった人がカウンセリングをすることもあります。  ・基幹相談支援センター  センターに来た人の相談にのったり、電話やLINEで相談にのったりしています。  特にたくさんの支援が必要な人に対応しています。  ・役所の障害福祉部署  基幹相談支援センターの取り組みをサポートしたり、どのような支援が進んでいるかを把握したりしています。  ・役所の母子保健・児童福祉部署  地域で暮らす子どもや家族、妊娠している人などの相談にのったり、家に行って支援したりしています。   <奥付>(40ページ)  障害者が希望する「結婚・出産・子育て」支援 取組事例集 わかりやすい版  わかりやすい版編集:一般社団法人スローコミュニケーション  デザイン:DeHAMA  イラスト:たかはしみどり  作成協力:PwCコンサルティング合同会社  ※本冊子は、PwCコンサルティング合同会社「令和5年度障害者総合福祉推進事業 課題番号18 障害者が希望する地域生活を送るための意思決定支援等の取組に関する調査研究」で作成された「障害者が希望する「結婚・出産・子育て」支援 取組事例集」をわかりやすく編集したものです。