第9回 障害者文化芸術活動推進有識者会議議事録 日時:令和7年3月3日(月)12:30〜14:50 会場:オンライン開催 議事: (1)障害者による文化芸術活動の推進状況等について (2)施設・団体等からの事例紹介 ・公益財団法人しまね文化振興財団(劇場・音楽堂における共生の取組事例について) ・公益社団法人全国公立文化施設協会(障害者等の鑑賞に配慮した取組や利用しやすい環境づくりに係る人材育成等の取組について) ・一般財団法人たんぽぽの家(障害福祉施設における文化芸術活動の取組状況について) (3)意見交換 (4)その他   概要: 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 本会議はオンラインで開催しております。本日の出席状況でございますが、配布しております出席者名簿のとおりとなります。今中構成員、鈴木構成員、吉野構成員については、本日ご欠席との連絡をいただいております。また、柴田構成員は遅れてご出席と伺っております。 なお、本日の資料につきましては、事務局から事前にお送りしておりますとおり、議事次第、出席者名簿、資料1−1、1−2、2−1、2−2、2−3、参考資料1、2、3となっております。 各構成員の皆様には、後ほどご意見をいただく際に合わせて自己紹介いただく予定としておりますので、よろしくお願いいたします。 続きまして、事務局側の出席者を紹介いたします。文化庁からは、今泉審議官、生活文化創造担当の児玉参事官、厚生労働省からは、障害保健福祉部の川部自立支援振興室長が出席しております。なお、本日出席を予定しておりました障害保健福祉部の野村部長は、急な公務が入りましたため、欠席となります。 また、オブザーバーとして、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省及び国土交通省から担当者に出席いただいております。よろしくお願い申し上げます。 さらに、本日は、公益財団法人しまね文化振興財団より山崎晋志文化事業課課長、公益社団法人全国公立文化施設協会より岸正人事務局長、一般財団法人たんぽぽの家より岡部太郎理事長より、それぞれの事例についてご紹介をいただきます。 始めに、文化庁と厚生労働省から御挨拶申し上げます。まず、文化庁から今泉審議官、よろしくお願いいたします。 【今泉(文化庁審議官)】 文化庁審議官の今泉でございます。障害者文化芸術推進有識者会議の開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。本日はご多忙の中、前回に引き続いて構成員を引き受けていただいた皆様方、そして今回新たに構成員をお引き受けいただいた方々、今回この有識者会議の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。 第2期の障害者文化芸術推進基本計画におきましては、三つのあるべき姿、目指すべき姿というものが示されております。これまでも、この有識者会議においては議論を積み重ねてきておりましたし、その議論をもとに文化庁、厚生労働省をはじめ関係省庁では施策を進めてきたところでございます。 本日は文化庁の方から、この間行いました劇場・音楽堂等の現状についての調査結果を報告させていただきますし、厚生労働省さんからも、施策の進捗状況の報告があると思います。 また先ほどご紹介させていただいた通り、現場の方々でお取組をされている事例も共有させていただく予定にしております。 個人的な話になってしまうかもしれませんが、私は障害者の文化芸術活動が好きで、滋賀県立美術館の保坂館長も構成員に入っていらっしゃいますけれども、先日も保坂さんの美術館の展覧会において障害者芸術の展示がございまして、お邪魔させていただきました。 学芸員の山田さんのお話を伺うにつけ、障害のある方々の作品に対する思いや、そこに込められている熱意を感じたときに、やはり感動を覚えたところでございます。それ以外にも、例えばロームシアター京都で行われる「CONNECT・_」(コネクト)という取組にも参加させていただいて、その時々に障害者文化芸術の素晴らしさを感じているところでございます。ぜひこの素晴らしさを、我々関係者はもちろん多くの方々に知っていただきたいと考えているところでございます。 文化庁といたしましても、引き続きこの障害者の文化芸術の推進を、関係機関の皆様方との連携のもとで進めてまいりたいと考えているところでございます。構成員の皆様におかれましても、引き続き様々な見地から忌憚のないご意見を頂戴できればありがたいと思います。私からの挨拶は以上とさせていただきます。ありがとうございました。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 ありがとうございます。続きまして厚生労働省から川部自立支援振興室長、よろしくお願いいたします。 【川部(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長)】 ご紹介にいただきました川部と申します。本日障害保健福祉部長の野村は急な公務が入りましたので、私の方で簡単に一言ご挨拶申し上げたいと思います。 まずは構成員の皆様、そして事例発表の皆様、関係機関の皆様方におかれましては、ご多用の中ご参集いただきまして誠にありがとうございます。 厚生労働省におきましては、第2期基本計画に基づき、障害のある方々の自立と社会参加を促進するという観点から、障害者芸術文化活動普及支援事業や全国障害者芸術・文化祭の開催等を通じて、文化芸術活動の支援に取り組んでいるところでございます。 特に、身近な地域における支援の拠点となる、障害者芸術文化活動支援センターについては、令和6年度において新たに2箇所の設置が進み、全国で45都道府県となったところであり、第2期基本計画期間においても、全国で更なる設置が進むよう取り組んでまいります。 また、令和7年9月には長崎県にて、「ながさきピース文化祭2025」として、全国障害者芸術・文化祭が国民文化祭と一体的に開催されます。引き続き、こうした全国的なイベント等をハブにして、ますます障害者の文化芸術活動が推進されるよう、取り組んでまいります。 併せて、文化庁とも密接に連絡を取りながら、障害のある方々の文化芸術活動がより一層進みますよう今後も取り組んでまいりたいと思います。簡単ですがご挨拶申し上げます。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 ありがとうございました。 先ほど本会議の座長に日比野構成員を選任いただき、日比野座長より大塚構成員を座長代理にご指名いただいております。ここで日比野座長にご挨拶いただきたいと思います。 【日比野座長】 この会議の一番の特徴は、今ほどご挨拶いただいた文化庁、厚労省と一緒になってやっている会議体であるということが一番の特徴であり、日頃、文化というものと、そして日常という、生活というものが本当は地続きで繋がっているのですけれども、どうしても分けて考えがちな部分がありますけれども、この会議のタイトルにもなっております障害者文化芸術活動という、障害者という活動を通して互いの地続きな部分がしっかりと見えてくる、つまり私達の日常の文化活動というものが繋がっているというところが、人生において一番の重要なところであるということを語り合える場にもなることだと感じております。 引き続き議長の大役を仰せつかって、今日も様々な専門性の高いご意見をいただきながらも、きちんとそれが全ての人々の幸せに繋がるような、道筋を工夫して考えていけるような会議体になっていければなと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 ありがとうございました。それでは、ここから日比野座長に議事の進行をお願いしたいと思います。 【日比野座長】 はい、日比野です。よろしくお願いいたします。では議事次第に沿って進めさせていただきます。 構成員の皆様からのご意見は、議事次第1、2が終わった後にいただく予定としておりますので、よろしくお願いいたします。まずは資料の説明に先立ち、今回の会議の趣旨、そしてどのような観点から構成員の皆様にご意見をいただくのかについて、事務局から説明をお願いします。 【児玉(文化庁参事官(生活文化創造担当)】 今回の会議の趣旨などについてご説明します。 令和4年度の本有識者会議における議論を踏まえ、第2期の基本計画では、新たに「計画期間において目指す姿」として、3つの目標を設定し、推進状況を把握していくこととなりました。具体的には、計画に記載の通り、社会の変化にも着目しながら、定量的・定性的両面から、進捗状況を判断していくこととなったところです。 これを踏まえまして、今回の会議におきましても、昨年度までの議論をもう一歩進め、進捗状況を把握・検証していくという観点から、文化庁より劇場・音楽堂等に関する調査結果、厚生労働省より障害者芸術文化活動支援センターや障害福祉施設のアンケート調査に関する進捗等についてそれぞれ説明いたします。 続けて、事例紹介をいただく皆様より、具体的な取組やご意見等についてもご紹介いただきます。 なお本日、構成員の皆様におかれましては、ご意見は文化庁や厚生労働省からの説明や各事例の内容に限らず、様々な角度から頂戴できればと存じます。 【日比野座長】 ありがとうございました。ただいま趣旨説明のあった観点を含めて構成員の皆様と議論を深めて、最終的には第3期の計画に活かしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 続きまして、議事次第の(1)「障害者による文化芸術活動の進捗状況等について」、事務局から説明をよろしくお願いいたします。 【児玉(文化庁参事官(生活文化創造担当)】 まず資料を手元でご確認ください。資料1−1です。 (資料1ページ)今年度、「劇場や音楽堂に対する取組状況の調査」を実施しておりまして、その結果をまとめたものです。まずは概要で、全国の公立施設・私立施設に対しましてアンケート調査を行い、全国で1400件ほど回答いただいた結果になりまして、ほとんどが公立の施設からの回答になっています。こちらの調査は令和2年度、4年前にも同様の調査を行っておりまして、今回は一部調査項目を修正・追加し、実施しているものです。 次が結果のまとめです。まずは法律や計画の周知状況ということで、各施設の職員間で法律や基本計画について周知されているかどうかご質問した結果になっています。法律については、今回の調査結果としましては、53.5%の施設が職員間で周知されていると回答しております。こちらは令和2年度と比較して十数パーセント伸びている状況です。一方で、第二期基本計画についての周知状況は47.1%の施設で周知が行われています。こちらも令和2年度に比べますと、いくらか進んでいる状況にはなっています。ただ一方で、数字の割合を見ますと、まだまだ周知の状況は充分ではないというところが見て取れます。ここはまだ課題として認識しているところです。 また、資料には掲載しておりませんが、令和6年4月施行の改正障害者差別解消法については、63.5%の施設が「周知している」と回答しております。また令和4年5月施行の障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法については、46.2%の施設が「周知している」と回答しています。 (資料2ページ)いわゆる施設のハード面に関する質問の結果になっておりまして、「障害者が施設を円滑に利用できるようにするための取組」についてお伺いしたものです。何らか設備等を設置していると回答しているのは98.4%の施設に上りましたが、様々な種別の障害のある方々向けの設備は十分進んでいないところもあります。そこのあたりは課題と考えております。 次ですが、「障害者の鑑賞や参加のためのサポートとして、保有している機材、設備」の状況を伺ったもので、こちらは軒並み数値的には低いところになっております。ここはまだこれから、というところは調査結果から見てとれます。 (資料3ページ)施設の中の職員に対する研修の実施状況について伺いました。 「研修を実施したことがある」とお答えいただいた施設は35.9%。数字自体はそれほど高くはないですが、具体的に実施されている研修について、障害者への対応接遇や、障害について理解する研修が上位の回答となっています。 それから次が、障害者に配慮また対象とした事業を企画・実施運営をするにあたって、障害者から意見を聴いたことがあるかをお聞きした質問ですけれども、「聴いている」とお答えいただいている施設が31.5%でした。 (資料4ページ)「障害者に配慮又は対象とした事業」につきまして、具体的な実施場所であるとか、内容についてお聞きしたものがこちらのページです。まず事業を実施している施設自体が全体の30.8%となっておりまして、その中で、実際にどこの場所でこの事業を実施しているかという質問に対して、77.7%の施設が自らの施設の中で事業を実施しており、その他アウトリーチとして他の施設での実施も一定数回答されています。 それから次に移りまして、実際に事業の分類としては、鑑賞が一番高くて75.8%。対象とする障害者種別としましては、比較的大きい割合を占めているのが身体障害のある方向けというものが、多く回答をいただいています。最後に、事業のジャンルとしては、音楽が37.4%と多く回答いただいています。続いて演劇という結果となっています。 (資料6ページ)一方で、1ページ飛びますが、6ページ目「障害者を対象とした事業を実施するにあたっての課題」についてです。事業を実施するにあたり、課題として一番多く挙げられているのが、上の二つ、人材に関しての答えが多く、「事業を実施するために充分な人員が確保されていない」、いわゆる人員不足の問題です。それから「知見のある人材がいない」、専門的な人材がいないというふうにお答えいただいて、人材面に関して課題を感じている施設が多い結果となっています。 それから三番目に多い回答としましては、「具体的に障害者にどういう事業を実施したらいいかわからない」というものが挙げられます。 (資料9ページ)以上のような調査結果を踏まえ、劇場・音楽堂や地方公共団体に対しての取組を促進するための今後の方針をまとめました。 一つ目は、最初にご紹介しました法律・計画の周知に関しまして、昨年5月に我々と厚生労働省と協力し、計画に関して紹介資料・説明動画を作成してホームページに公表しています。 このようなものを地方公共団体だけではなく関係団体の皆様に、一層周知をさせていただくことで、研修などでも活用いただいて、多くの職員の方々に知っていただく取組を進めていきたいと考えております。それから二番目は、我々文化庁としてもノウハウであるとか具体的な取組事例の収集・周知を進めていきたいと考えています。 次に、人材育成に関しましては、三番目の所で育成プログラムの開発・実施を支援するような取組を進めていくであるとか、実際に普及・展開していくことも含めて行っていきたいと考えています。自主的な研修も含めて研修の素材として活用いただけるような取組も合わせて進めて行きたいと考えております。 最後に、先進的な取組の支援ということで、我々のほうで予算事業として持っています「障害者等による文化芸術活動推進事業」ですけれども、こちらは主には先導的・試行的な取組事例の創出であるとか、文化芸術へのアクセス改善もしくは地方公共団体における取組を支援していまして、こちらの予算事業についても引き続き取り組んでまいります。 最後に、劇場・音楽堂等に対するバリアフリーに関する予算支援などを行い、引き続き、劇場・音楽堂等に対するバリアフリー対応も促進をしていきたい、そのように今後の方針としてまとめているところです。 また、資料には記載していませんが、『日本博2.0』においては、大阪・関西万博に向けて、障害者文化芸術を含む日本各地の文化資源を活用した観光コンテンツを磨き上げているところです。大阪・関西万博本番年においても、全国各地で取組を展開するとともに、一部の取組を万博会場内でも実施予定です。 これらの取組を通じて、日本の文化芸術の多様性を世界に示す取組を積極的・戦略的に展開してまいります。また、「障害者等による文化芸術活動推進事業」の取組の中でも、大阪・関西万博の機会をとらえて、全国各地で障害者による文化芸術活動を普及・展開してまいりたいと考えております。 文化庁からのご説明は以上です。ありがとうございました。 【日比野座長】 それでは続きまして資料1−2の説明をよろしくお願いいたします。 【川部(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長)】 厚生労働省から資料の説明を申し上げます。右下にページが振ってありますのでページを見ながら説明を進めていきます。 (資料1ページ)まずは身近な地域で支援をすることが大事だということで、障害者芸術文化活動支援センター(以下「支援センター」)を都道府県に設置し、それから広域センター、全国連携事務局を設置しながら3層構造で進めさせていただいています。令和6年度現在、支援センターの設置はあと2県まで進みました。これは単に支援センターを設置すればいいということではなく、中身がむしろ大事になってくるのですが、とは言っても身近な地域の支援において空白の県があってはならないということですので、あと2県設置をいただくよう働きかけています。 (資料2ページ)設置が進んでいる支援センターが、どのような業務に注力したかを示した資料になります。令和5年度の全国連携事務局のアンケート調査結果から導き出したものですが、左の表を見ていただくと、基本計画に定める11の施策のうち支援センターがどこに注力したかを得点化しています。得点化して高い順に並べたのが中段の右の棒グラフになります。主に「作品等の発表の機会の確保」、「人材の育成」などはポイントが高くなっています。 なぜセンターはここに注力したのかという理由を尋ねたものを、2ページの下の主な理由に簡単に記載しています。まず、発表機会の確保については、発表の場を確保することによって、地域の人たちの協働や連携が自然に生まれてきたということが効果として言われています。それから人材育成のところもそうですが、人材育成と交流の促進の間に相乗効果がみられているという意見などもあります。 (資料3ページ)支援センターでは地域で様々なご相談を受けていただいているのですが、一番上の棒グラフを見ていただくと、令和5年度は着実に相談件数が増えてきている状況です。これをどう見るかですが、単に相談が増えているのか、地域に知られてきたのか、「ここに相談すると前に進むよ」という口コミで広がってきたのか。中身の細かいところまでは不明ですが、着実に足元で相談件数が増えているというのが一番上の棒グラフになっています。 真ん中あたりに相談があった件数と、対応回数を下のグラフで示していますが、左側が令和4年度の相談件数です。右側が令和5年度で、棒グラフが2本、青と赤がありますが、実は1件の相談というのは1回で終わらないのです。ご覧の通り、例えば、令和5年度に障害者から相談件数が1,117件あるのですが、それに対して倍以上の2,400回ほど相談の対応をしています。支援センターはかなり地域に根ざして、丁寧な相談対応を行っていただいているということが、ひとつ導き出せるのかなということです。また、令和4年度と5年度の違いでは、ご覧のように教育関係者や医療関係者などが増えてきています。また、企業などからも徐々に相談が増えてきています。今までは障害者本人や、福祉関係や家族が中心でしたが、こうした新しい人たちの間でも障害者の文化芸術に対する興味が向いてきたのではないかというふうに理解をしています。 (資料4ページ)相談内容の変化をさらにもう少し見ていきますと、最も多かったのが発表に関する相談、次いで「創造」「権利保護」というようなことです。中ほどの棒グラフは左が令和4年度、右側が令和5年度です。特に権利保護のところが増えていますし、人材育成の方も伸びてきています。鑑賞なども相談が増加しています。 一番下に支援センターの相談内容に関する所感を書いたものがあります。例えばコロナ禍が明けて、展示会やワークショップのイベントの企画が増えてきて相談が増えた。文化施設や社会教育施設、企業などからは、令和6年4月から施行されました改正障害者差別解消法による民間事業者への合理的配慮の提供の義務化に伴う相談内容が増えた。あとは、漫画やアニメやデジタルアートという、今までの絵画などからまた一歩踏み込んだ新しい分野に対しても、相談が増えてきているということがあります。こうした支援センターにおける相談対応を行っていただきながら、普及支援に努めていただいていることがわかります。 (資料5ページ)第2期基本計画は今年度で2年度が終わるところですが、ちょうど第2期基本計画期間の中間年に当たる令和7年度に、障害福祉施設を対象とする定量的な調査を行います。調査客体数は46,000件ぐらいで、第1期計画期間のときのような定量的な調査を実施しますので、この場にいらっしゃる関係者の皆様にもぜひご協力いただきたいというふうに思っています。そのご紹介が5ページでございます。 (資料6ページ)最後になりますが、以上説明したところを踏まえて、まだ予算は成立していませんが、今のところ予算案としましては、支援センターなどの推進に2.9億円ほど計上をさせていただいています。それから令和7年度に長崎で行われる障害者芸術・文化祭に0.7億円。それから、今年度は万博にともなう機運醸成と合わせる事業に対し補助をさせていただいています。また5ページで申し上げました調査研究を実施し、第3期基本計画の策定に資するデータを取りたいと考えています。これらを文化庁とも連携して業務を進めていきたいというふうに考えています。説明は以上になります。 【日比野座長】 ありがとうございました。続きまして、議事次第の(2)「施設・団体等からの事例紹介」に入りますが、事務局より事例紹介の進行についての説明をよろしくお願いいたします。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 この後、施設・団体の皆様に取組事例をご発表いただきます。本日の事例紹介では、大きく2つの観点でお招きしております。 劇場・音楽堂等における取組の推進の観点から、公益財団法人しまね文化振興財団、公益社団法人全国公立文化施設協会。障害福祉施設における文化芸術活動の取組状況の観点から、一般財団法人たんぽぽの家にご出席いただいています。 しまね文化振興財団様、全国公立文化施設協会様のご説明は7分ずつ、たんぽぽの家様のご説明は15分程度を想定しています。また、構成員の皆様から施設・団体に対する質疑応答につきましては、この後の議事次第の(3)意見交換の際にお願いいたします。 【日比野座長】 それでは、まずは劇場・音楽堂等における取組の推進の観点から、公益財団法人しまね文化振興財団より発表をお願いいたします。 【山崎(公益財団法人しまね文化振興財団島根県民会館 文化事業課課長)】  しまね文化振興財団の山崎です。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。私の方から資料2−1「地方の劇場が取り組む障害者の文化芸術活動の推進と支援」について発表したいと思います。 (2ページ目)ページ番号を振っていないので2枚目になります。島根県の地図が載っております。 私達しまね文化振興財団は、県全域の文化振興を担う団体で、東西に長い島根県にある二つの県立劇場、東部の島根県民会館と、西部の島根県芸術文化センター「グラントワ」いわみ芸術劇場の指定管理者として、2拠点の施設を中心として、県全体の文化事業を振興しております。 それぞれの劇場のミッションや地域事情、地域課題から障害者の文化芸術活動推進支援事業の特徴や違い、2館の連携を紹介いたします。地図のように、松江市と益田市の距離が大体170km。真ん中に江津市がありまして、ここに活動支援センターがあります。 (3ページ目)島根県民会館の説明です。島根県民会館は島根県の東部、松江市に56年前に設置されました。県の文化芸術の中核施設として県内の市町村文化施設や関係団体と連携しながら、県内の文化振興を牽引しております。 障害者の文化芸術活動推進への取組については、2010年の全国ろうあ者大会や、翌年の全国盲人福祉大会が当館で開催されるにあたり、障害当事者の方々に実際に館に来ていただきまして、「館内バリアフリーモニターツアー」を開催したのがきっかけです。そこで、当事者の方や支援団体など関係の方々と知り合いまして、その後、視覚障害者の方の参加もありました避難訓練コンサートや、映画のバリアフリー上映などを協働で開催いたしました。それらのイベントを通して、「バリアフリーに関する事業企画や実施の際は、必ず当事者の声を聞き関係団体やアーティスト、支援者との協働で進める」という姿勢が身につきました。 島根県民会館インクルーシブシアタープロジェクトという事業で展開しておりますけども、これが2019年にスタートしております。ビッグ・アイとの共催で知的発達障害児(者)の劇場体験「劇場って楽しい!!」などのバリアフリー公演を行っております。他には、特別支援学校へのアウトリーチですとか、バリアフリー事業や鑑賞サポートなどについてのアートマネジメント研修の開催、ほか自主公演での鑑賞サポート等も実施をしております。 中でも特徴的なものを一つご紹介します。 (4ページ目)ダンス事業についてです。視覚障害者の方と一般参加者の方が一緒に、アーティストとダンス作品を制作しまして実際に公演を行っております。またダンサーの田畑真希さんと一緒に体験型のワークショップ、それから事業所へのインリーチ等も行っております。 公演の際には、音声ガイドを実際につけて公演をしておりまして、その関係で音声ガイド解説者の養成講座を、これも公募で行っています。受講者の皆さんは本公演で実際に音声ガイド解説者として音声ガイド解説を体験してもらっております。 (5ページ目)インクルーシブシアタープロジェクトの写真になりますが、左上が「劇場って楽しい!!」で、地域のアーティストとともに行いました。上段の真ん中と右端それから左下がダンス公演になります。実際にタッチツアーなども行っております。 (6ページ目)次にいわみ芸術劇場についての発表です。島根県西部、益田市に所在しますいわみ芸術劇場は開館20年を迎える比較的新しい施設で、ハード面のバリアフリー化は、ある程度進んでいます。一方で鑑賞サポートとその意義が、障害当事者はもちろん、高齢者や子供など広く適応しうる可能性があるということは、地域の中でもほとんどまだ理解されておりません。高齢過疎化が進行する県西部のいわみ芸術劇場は、当事者性の拡張と理解の重要性を、劇場単体の課題ではなく地域課題として捉えまして、ダイバーシティいわみ事業として事業を展開しております。 ダイバーシティいわみ事業の特徴として、地元アーティストや地域人材など分野を超えまして、日常的なコミュニケーションを取り、ネットワークを形成して、地域課題の共有、事業の協働実践、総合支援などを行っております。聾学校への和太鼓のアウトリーチなども2019年から5年継続して行っております。この中で、オープンミーティングという事業について少し述べます。 (7ページ目)地域人材の交流と循環を見据えた分野横断のネットワーク形成の場として、「まちと福祉と芸術文化についてのオープンミーティング」を行いました。このオープンミーティングで生まれたネットワークを通じて、課題共有や、地元人材が主体の実践の場作りを行いました。これが障害者の鑑賞参加機会の場であるユニバーサルな音楽会「にぎやかな日々」という公演に繋がっております。 (7ページ目)にぎやかな日々の様子です。地元のアーティストやNPOの団体、地元の飲食店関係など様々な分野の人が集まって、地域の文化施設や学校などいたるところで開催しております。 ここからは資料にないのですが、活動支援センターとの協働について少し述べさせていただきます。2020年、県西部の江津市に「島根県障がい者文化芸術活動支援センター アートベースしまねいろ」が設置されました。センターの運営には、障害のある方による地域伝統芸能石見神楽のクラブ活動が全国的にも話題の、いわみ福祉会が携わっています。いわみ福祉会さんは、舞台芸術分野の活動支援については経験もノウハウもなかったのですが、私達、東西の劇場両館と連携しながら、舞台芸術分野の事業を協働実施しております。 また島根県民会館といわみ芸術劇場の東西連携について、強みとしましては、「にぎやかな日々」の県東西での開催などの事業企画の共有や、広域での展開が可能です。またそれぞれに実施するオープンミーティングや研修、講演への参加・視察を通じた情報共有も進めています。 今後の展開など個別に見てみますと、オープンミーティングは、いわみ地域から全県的にということを考えております。ネットワークを広げる地域人材についても、関わってくれる人を増やす、それから専門性のある人材を育成していく。「にぎやかな日々」の公演については、劇場主導から参加者が自主的に主導的に開催できるように。他には、私達職員が劇場を飛び出して、市町ホールで関係団体と一緒に実践の場を作って、私達の経験やノウハウを市町ホールや関連団体に移行していこうということを考えております。 (9ページ目)9ページ目以降に関係団体、事業協力関係団体、協働実施者等を載せております。様々な関係者に分野を超えて携わっていただきまして、島根総力といいますか、そういう形で事業に取り組んでいるというのが、私達の劇場の取組の特徴になります。簡単ではございますが、以上になります。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして公益社団法人全国公立文化施設協会より、発表をお願いいたします。 【岸(公益社団法人全国公立文化施設協会事務局長)】 公益社団法人全国公立文化施設協会事務局長の岸です。このような紹介の機会をいただきありがとうございます。資料2−2をご覧ください。 (1ページ目)当協会は全国にある公立の文化施設、いわゆる劇場・音楽堂等1300館を会員とする統括団体です。会員外も含めますと、全国には2000を超える施設がございます。 施設の運営者としては、自治体設置の公益法人や民間企業等の指定管理者、もしくは自治体直営となっており、行っている事業の内容や施設規模も多様で、職員数や予算規模もまちまちとなっております。記載しております協会の設置目的達成に向けて、施設職員に向けた研修や活動状況の調査、情報提供等支援を行っております。 まず劇場・音楽堂等の障害者に対する対応の変化ですが、従来より地域の観客に向けた公演の鑑賞事業等や、地域の文化団体等に向けた施設の貸出等を行っております。先ほどの島根のように障害者に向けた事業に取り組んでいる施設もございましたが、一部にとどまっておりました。そんな中で文化芸術基本法ができ、2012年に制定されました劇場・音楽堂等の活性化に関する法律、いわゆる劇場法において、前文で地域の文化拠点として、個人を取り巻く社会的状況に関わりなく、機能しなくてはならないとされ、また行う事業として、地域社会の絆の維持および強化を図るとともに、共生社会の実現に資するための事業を行うと記されております。 さらに、障害者に対する法律の整備や、社会的要請への対応として、それぞれの施設においても機運も高まってきました。 (2ページ目)公文協で実施しました障害者に関する研修等ですが、文化庁の基盤整備事業である全国アートマネジメント研修の中で、社会包摂に関する講座等を組み入れてきました。合わせて現状の調査として、情報バリアフリー化に向けた最適システムの構築に関する調査等を行いました。また、システム、情報提供のための専用ウェブサイトの開設や、「アクセシビリティ・ガイドブック」を作成し、全国の施設に配布等も行いました。 劇場・音楽堂等による共生社会実現のための人材養成講座、この企画の背景ですが、先ほど来の研修等を行っておりましたが、昨年度調査では、障害者に向けた取組について、意義を認識しているとの意見は9割でしたが、実際に実施している施設が13. 5%と低い数字で、この差をどのように埋めていくかが課題として浮かび上がり、それをどう埋めていくかが重要になりました。そこでこれまでやっていたような一律的な研修ではなく、職員のスキルや施設の状況に合わせた、より細やかな研修が必要と感じ、三つの段階に分けた研修を企画いたしました。 この講座の基本的な考え方ですが、個人や施設の状況に応じた段階別の研修、そして、まず誰でも知っておくべき基礎知識、そして事業に取り組む初心者向けの内容、さらに事業を既に行っている経験者向けとして、それぞれ複数年をかけてステップアップを目指すことといたしました。そして最終的には受講生がそれぞれの地域や施設で、障害者に対する事業の実施を指導し、支援する中核的な人材となり、さらにはネットワーク化により、より広げていくことを目指しています。先ほどの島根のように県域の施設であれば、市町の施設のネットワークというふうなことを想定しております。 研修の体系と実施内容については、マトリックスにまとめておりますので、時間がある時にご覧いただけたらというふうに思っております。 事業の工夫と成果ですが、工夫した点として初心者向けの合理的配慮に関するワークショップでは、障害のある方をアドバイザーとして迎え、対話を通じた理解として、実感や体感を持っていただくこととしました。また初心者向けとして、できることから始めるというイメージで、障害者に対する事業の精神的なハードルを下げて実施を促しました。さらに経験者向けでは、研修生と講師などが相互にディスカッションを通じて視野を広げていくことを重視いたしました。 成果については読者アンケートにある通りです。今後の課題ですが、少しずつ意識されるようになって、広がりは持っておりますが、まだまだ研修等に参加していない層にどのようにアプローチするかというのが、一つございます。さらに先ほど申し上げたように予算等もまちまちで、研修等に参加を希望されていても、出張旅費や時間的制約で参加できない方も一定数おり、施設内でも行えるような研修教材の開発が必要と考えております。 最後に、今そういった実施が困難な施設で、研修以外にどのような支援ができるかが課題というふうに思っております。 質問等ございましたら、いただけたらと思います。どうもありがとうございました。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして、障害者福祉施設における文化芸術活動の取組状況の観点から、一般財団法人たんぽぽの家より発表をお願いいたします。 【岡部(財団法人たんぽぽの家理事長)】 ご紹介いただきました一般財団法人たんぽぽの家の岡部と申します。よろしくお願いいたします。資料2−3をご覧いただきたいと思います。今日は、まず前半は私が務めているたんぽぽの家の活動およびプロジェクトのご紹介、後半がたんぽぽの家が実施をしている厚生労働省の障害者芸術文化活動普及支援事業の取組のご紹介をさせていただきたいと思います。 (1ページ目)まずたんぽぽの家の紹介ですが、障害のある人たちの表現活動を社会に発信する市民団体として1973年から活動を始めています。奈良市を拠点にしております。先ほど島根の山崎さんの発表をお聞きしながら思ったのですが、障害とアートに関する事業は比較的中心・中央ではなく全国の周縁のところから、小さな取組が集まって取組をされてきたんだなと実感をしています。 設立当初より、障害のある人たちの芸術文化活動を通した社会変革をテーマに活動を展開してきました。具体的には展覧会や舞台公演、セミナーや出版、情報発信、国内外のネットワークを通じて教育機関、行政、企業などとの協働したプロジェクトを実施しています。 先ほどからたんぽぽの家と申しておりますが、実はたんぽぽの家はネットワーク組織でありまして、2つの法人の1つの任意団体が集まってできています。まずは、障害者福祉サービスを行っている社会福祉法人わたぼうしの会の取組をご紹介したいと思います。 (2ページ目)障害のある人の総合的なアートセンターHANAを運営しています。ここを拠点に、実際に毎日、障害のある方が通い、創作活動として社会と繋がる活動をしています。アート、ワーク、コミュニケーションをキーワードに、障害のある人がそれぞれの個性を発揮できる環境整備・サポート体制などの仕組み作りを行っております。現在約60人のメンバー(利用者)が通っています。 (3ページ目)2016年には障害のある人と新しい仕事や働き方を提案する、Good Job! Center KASHIBAがオープンしました。これはアートやデザイン、ビジネスをテーマに、障害のある人と、デザイナー、クリエイター、企業と協働する、新しい仕事や働き方の提案を実践しております。「つくる・はたらく・発信する」が一体となった場として運営しております。 余談ですがこのセンターは、お手元の写真2枚は外観と内観の写真ですが、この建築をO+Hという気鋭の建築家に手がけていただきました。この建物には毎年非常に見学者が多くて、若手の建築家の中では、医療福祉施設の一つの見本、参考としてよく見ていただいているようです。 前述したアートセンターHANAとGood Job! Centerを通して、障害のある人が表現活動をする、あるいは創造性を生かして仕事を作っていく、それと社会を繋げるということを二つの拠点を通して活動をしています。 (4ページ目)もう一つの、私が直接所属をしている一般財団法人たんぽぽの家のプロジェクトを中心にご紹介をします。私達財団は、冒頭にも申しましたが、設立当初から障害のある人たちの存在や思いを、芸術文化を通して社会に発信するということをしてきました。その先駆けとなったのが、わたぼうしムーブメントです。 1975年から、詩と音楽を通して、障害のある人の存在や思いを社会に伝えるという取組をしています。今年でちょうど50年目になるのですが、日本における芸術文化による社会運動の先駆けというふうに認識をされています。 最近では日本国内事例の取組が中心ではありますが、90年代はアジア太平洋地域、約13都市とネットワークを作り、アジア太平洋わたぼうし音楽祭というのを実施してきました。当時は日本が障害福祉分野においてバリアフリー化を行ってきましたが、当時のアジアの国々はまだまだの状況でした。こうして文化を通してその社会、地域の中で障害な人の存在を伝えていくという、わたぼうしの思想と仕組みはアジアの方でも大きな共感をもって受け入れられました。 (5ページ目)わたぼうしムーブメントをベースに、1995年からはエイブル・アート・ムーブメントを展開しています。 今回この有識者会議でも議論に上がることが多いですが、障害のある人の芸術文化活動に関する取組は、このエイブル・アート・ムーブメントがたんぽぽの家にとっては非常に大きな起点となっています。このムーブメント活動はNPO法人エイブル・アート・ジャパンと協働で行っていますが、1995年から始まりまして、今年で30年を迎えます。節目となる年ですが、障害のある人の芸術文化を、新しい視座で捉え直す市民芸術運動ということで様々な展開をしてきました。障害とアートに関する緩やかなネットワークを作ったというのが初期の活動の大きな取組だと思っています。それまで日本全国各地で、福祉施設をベースにそれぞれ行ってきた、障害のある人と芸術文化を緩く繋ぐ、情報交換や社会的な発信を行ってきました。このネットワークは、福祉施設だけ、障害のある人だけではなくて企業や行政、教育機関や市民団体、様々な横串を通してきたという実感をしています。 特に初期の活動は、企業のメセナ活動や市民団体と連携した地域の文化的発展に寄与してきました。私達の拠点は奈良ですので、近畿2府4県で障害のある人たちや地域を繋ぐという様々なプロジェクトを、特に企業の方々と取り組んできました。90年代はまだ国・行政では障害のある方々の芸術文化活動の支援はそこまでされていませんでしたので、意識のある企業の皆さんと大きく連携をしてきたことで、現在の芸術文化活動の普及があると思っています。 (6ページ目)エイブル・アート・ムーブメントに取り組む中で、障害のある人たちの大きな課題が見えてきました。それは障害のある人たちが働く状況において、仕事の選択肢が狭く、所得が低いという課題です。これはまだ現在も続いている大きな課題ではありますが、私達はやはり芸術文化、障害のある人が持っている創造性を通して、どうやって解決していくかということを考えてきました。 プロジェクトとしては2013年から取組を始めていますが、障害のある人と働く選択肢を広げ、新しい仕事作りについて考え、実践するというプロジェクトです。具体的には先ほどご紹介しました奈良県香芝市のGood Job! Center KASHIBAにおきまして、デジタル工作機械を使ったものづくりや、企業と協働した仕事づくりに取り組んでいます。この後、具体的にいくつかのプロジェクトをご紹介していきますが、6ページに載っている企業と連携してものづくりをするというのは、例えば、3Dプリンターなどを使って、障害のある人たちが、アートというよりは、工芸的なものづくりに取り組んでいます。 (7ページ目)Good Job!プロジェクトの中でも大きく特徴的なものが、ABLE ART COMPANYという、著作権ビジネスによる仕事づくりを行っています。たんぽぽの家とNPO法人エイブル・アート・ジャパン、もう一つはNPO法人まるという三つの組織で協働運営する、障害のある人と、作品を使いたい企業クリエイターを繋げる中間支援団体です。写真には様々な企業が障害のある人とコラボレーションした商品が掲載してありますのでご覧いただきたいと思います。 (8ページ目)近年ではさらに少し実験的な取組をしております。障害のある人たちのものづくりの中で、その地域の伝統のものづくりとコラボレーションするNEW TRADITIONALという取組をしています。地域に伝わる素材を使い、作り手や使い手の関係を変え、ものづくりを通して新しい生活提案をするプロジェクトです。 この取組はタイミングとしてはコロナ禍によって行われたのですが、地域の中の伝統的なものづくり、あるいは工芸に関係する方々と福祉施設、障害のある方が連携をする事で新しいものづくりに取り組んでいます。 (9ページ目)こちらは最新のテクノロジーを使った表現の可能性を模索するArt for Well-beingという取組を展開しています。たんぽぽの家の活動も50年目を迎えまして、当初の利用者が60代、70代になってきました。描きたくてもアトリエにさえ通えないという方が増え、具体的には二次障害による重度化や障害の変化、あるいは高齢化、加齢による障害の変化というのが見られるようになってきました。そのなかにあって、何歳になっても、体がどんな状況になっても表現を続けたいという方々がたくさんいらっしゃいます。そのため、今あるテクノロジーを使って表現の幅を広げる取り組みを実験的に展開しています。 (10ページ目)また障害のある人たちと、デジタルとリアルを往来するような取組もしています。クリエイターと障害のある人が共同して、NFTアートを作成販売して、さらにオンラインコミュニティにて、リアルとバーチャルで交流を続けています。 こういったアナログなものづくりからデジタルなものづくり、あるいは表現という、様々な可能性に実験的に取り組みながら、社会に発信するという活動をしています。 (11ページ目)取組のWebサイトも記載してありますのでご関心のある方はご覧ください。 なお先ほどご紹介しましたNEW TRADITIONALやArt for Well-beingという実験的な取組は、文化庁の障害者等による文化芸術推進事業の一環として取組をさせていただいています。 (12ページ目)知財、知的財産権と著作権等に関する問い合わせが増えていると先ほどもご報告がありましたが、たんぽぽの家も当初から、作品を社会に伝えるときには必ずついて回る権利の問題ということについて考えてきました。これに関しましても、福祉施設の方々や障害のある人自身が、専門用語を使わずとも権利の基本を学べるような、様々な学習機会を作ってきました。 写真は、書籍やゲームを使って知財を体験できるというものです。こういった教材を通して、学びたいという方々に学習する機会を作っております。 (13ページ目)ここから、厚生労働省の障害者芸術文化活動普及支援事業の障害とアートの相談室についてご紹介をしていきたいと思います。 我々は近畿2府4県の中間支援をする、近畿の広域センターを担っています。資料の14ページ、15ページ、16ページ、17ページなどは、これまで行ってきた障害とアートの相談室の事業です。具体的には、近畿2府4県の障害のある方々の作品を展示したり、15ページにある様々なセミナーの展開、16ページにある舞台活動、特にパフォーミングアーツに関していろんな活動を紹介する実演のショーケースや、17ページにあるオンラインによるショーケース開催などをしてきました。 (19ページ)今日ご紹介したいのは、19ページにあります近畿圏における障害のある人の芸術文化活動に関する調査です。これは、今後国が行う大規模な調査とは比べ物にはならないとは思うのですが、近畿ブロック内の各支援センターが、今後の活動に役立てるという目的で、我々障害とアートの相談室が中心となって、近畿2府4県の障害のある人たちにアンケート調査をしたものです。 実施時期は昨年の6月から8月ですが、近畿圏内の障害者福祉サービスの事業所や特別支援学校、絵画教室などのアトリエにアンケートを出しました。Googleフォームによる記入式で、「活動・参加をしたい方はぜひ」という形でしたので母数は出ていないのですが、回答数としては260点、うち団体223件、個人36件ということで、様々な地域からご回答いただいております。現在も集計や追加の訪問調査が5件ほど残っておりますので、数字的なものは本日はまだ出せないのですが、20ページにこの近畿の中で福祉施設における芸術文化活動で求められていることを少し記載しております。 職員のスキルアップ(組織内でのアート活動の理解や入門編的な勉強会や体験会の機会)が欲しいという方、場所と人の確保(画材や創作後の作品)が、どうしたらいいのかわからないという声がありました。あるいは外部講師やアートサポーターが必要だという声もあります。地域での連携、他団体、企業、文化施設等と、もっと繋がっていきたいというお答えがありました。また効果的な情報発信について、活動自体は始めているのだが活動作品の周知が難しいと感じている団体が多いです。また利用者、支援者の高齢化によるアート活動へのアクセス減、これはたんぽぽの家もそうなのですが、だんだん活動を継続するにつれて見えてくる課題だと思います。最後に、福祉施設ではないのですが、個人で活動するアーティストの支援の強化です。福祉施設に通いつつも休日等にアート活動をしている方がいらっしゃいますので、そういった方々の支援が必要だと思います。 最後にまとめが書いてあります。創作の場合は発表の機会は少しずつ増えていますが、「つくる」「つたえる」の前後にある、「環境や作品をととのえる」「表現や活動をよりひろめる」部分での具体的なノウハウを共有する機会が必要だと思います。地域における異分野連携が活動継続のポイントではないかなというふうに考えています。 たんぽぽの家の活動のご紹介とさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。 【日比野座長】 ありがとうございました。以上で事例報告紹介は終了いたします。ありがとうございました。 ではここで今泉審議官につきましては他の公務等のため退席させていただきます。どうもありがとうございました。 では続きまして議事次第(3)の意見交換に移っていきたいと思います。議事次第(1)の説明、(2)の事例発表を踏まえて、構成員の皆様からは様々なご意見をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。その際事務局、そして事例発表者への質問などがありました場合には、最後にまとめて回答をいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 各構成員からのご意見については、時間の関係上、1人当たり3分を目安に進行していきたいと思います。3分経過したら、口頭で「お時間です」とお声をかけさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 では五十音順で、いつもは上からなのですが、今日は下からいきたいと思います。事前に皆様には伝えてありますので、まず森田構成員からよろしくお願いいたします。 【森田構成員】 改めまして皆様こんにちは。森田かずよと申します。逆からということで、今までいろんな先生のお話を踏まえてコメントしていたのですが、今回そうはいかず失礼をいたします。 平素から障害のある人の芸術活動の推進に関してご支援いただき、感謝申し上げます。また本会議におきましても資料作成および事前説明など手厚くサポートしていただき、ありがとうございます。 今日の文化庁および厚労省の取組、しまね文化振興財団や、公文協、たんぽぽの家など、もっとも先鋭的ながらも魅力的で本当に多岐にわたる興味深い取組をお伺いして、非常に学びの多い時間でした。ありがとうございます。 私自身、今回文化庁の資料1−1で紹介いただいております「みんなでダンスin Ibaraki プロジェクト」に4年間関わらせていただいています。資料にも書かれているのですが、8歳から95歳まで障害のあるなしを超えた事業を今、元々障害あるなしとして関わってきた事業ですが、ダンスを媒介にして、様々な年代属性の人が集まる集団に成長いたしました。これもその文化振興財団さんが年々いろいろ考えながらも巻き込む人をどんどん増やしていってくださったおかげだと思っています。 全体的に今回資料を読ませていただき、もう例年言い続けるお願いに等しいのですけれども、例えば文化庁の資料1−1の「施設を円滑に利用するようにするための取組」は、鑑賞に関しては少なからず増えていっていると思うのですが、創造に関するアクセシビリティというのが非常にまだ欠落している部分かなと思います。特に楽屋周り、車いす用のトイレが全くないとか、楽屋に上がるまでにも階段しかないとか、特に新しい劇場を作られる際に関しましては、そのあたりも配慮いただけるとありがたいです。 また全体的に、障害についての理解などに関する職員の研修、障害者からの意見の聞き取り、元々障害のある人からの意見の聴き取りというのが、31. 5%という元々多くない数字でありながらも、その中でも企画・運営委員会等に構成員として障害者が参加しているのが7. 3%と非常に低いなと思っています。これに対しては改善点というものを考えていければと思います。 障害者に配慮また対象とした事業の取組状況として音楽+鑑賞という取組の組み合わせは非常に多く見られるようになってきました。それはビッグ・アイさんをはじめ劇場鑑賞についての研修の賜物だと思っています。またそこからの一歩というのをどう踏み出していくかというのはこれからの課題なのかなと思います。 資料全体にいえることなのですが言葉の使い方が気になりました。 例えば文章の中で使用されている「交流」という言葉。文化庁の資料では障害者/健常者といった壁を揺らがせるための言葉として使用され、厚労省では同じような事業を扱う人との交流といった意味で使用されています。 加えて、「障害」という言葉の強さ、重さと、解釈の違いを感じることも多いです。障害者という人が誰なのかということで、今この会議においても非常にたくさんの使い方があり、皆さんの解釈がすごく違うと最近感じます。障害者と呼ばれる人は誰であるのでしょうか。そして、芸術活動を行う中で何が障害になっているかを今後も考え続けたいと思います。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして森木構成員、よろしくお願いいたします。 【森木構成員】 今回初めて参加させていただいております高知県の森木と申します。各団体の取組など大変参考になるご意見を拝聴させていただきました。 自治体におきましては、文化庁の資料にもありますように、法に基づく計画の策定というのが、やはり市町村の方ではまだまだ進んでいないというところがありまして、当課においてもなかなか専任で障害者芸術文化の担当を配置するのも難しく、予算の確保もかなり苦労しているのが実情かと思います。その中で、事業で製作された資料や動画を提供いただけるというのは大変ありがたい取組かと思いますので、引き続き、自治体が研修などで活用できるように提供をいただけると大変ありがたいというふうに感じました。 また、たんぽぽの家様の方からお話のあった事業の中で、ABLE ART COMPANYの話があったかと思います。当県でも、障害者美術展というのをこれまで28年間ほどやってきておりましたが、展示して表彰するというこれまでの取組を、今年度から一歩進めて、企業が入選したアート作品作家と繋がって商品化したい場合に、作家にオファーできる取組を開始したところでございます。 ただなかなか障害の特性や、権利、著作権などについて理解して提携していただけるような企業を増やしていくには、やはり専門的な人材を通しての研修活動などが大事になってくるのかなというふうに今年の課題を感じております。来年度そういった著作権についての企業さんに向けた研修なども進めていきたいというふうに考えておりますので、また専門的な知見をお持ちのところに相談させていただく際には、お知恵をお借りしたいと思います。 また厚生労働省様の来年度に向けた資料の中でも、高知県において令和8年度は国民文化祭と一体的に障害者文化芸術祭を開催させていただきます。来年度実施計画を、年度の前半に作成していくというような過程になろうかと思いますが、障害者芸術に県民の方が多く関心を持っていただいて、より共生社会に繋がっていくように機運を高めていくとともに、この8年度に向けて県内で一体的に取組を進めていきたいというふうに考えております。以上になります。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして保坂構成員、よろしくお願いいたします。 【保坂構成員】 滋賀県立美術館ディレクターの保坂です。よろしくお願いします。 まず文化庁の資料で研修についての調査が報告されていたのですが、この実施の割合を100%にしていくことがまず重要だと思います。美術館の世界では国立アートリサーチセンター(NCAR)が中心となって、美術館向けのアクセシビリティについての研修を「ふかふかTV」という親しみやすい形で行っていて、飛躍的に状況は改善していることを情報共有しておきたいと思います。文化施設の現場のスタッフが入れ替わる可能性が高いことを考えると、1回の研修だけではなく継続的に実施されるような仕組みも重要だと思います。 同じく文化庁資料9ページで言及されているバリアフリー字幕、音声ガイドの支援ですが、これは実は美術館においても重要です。というのも映像を使った作品が現代美術には少なくないからなのですが、現実としてはデータもアーティストの映像を編集する人も、まだその存在や必要性を知らない人が少なくありません。事例を増やしていくためには美術館を対象とした補助金の整備というものが考えられると思います。英国では博物館・美術館ともに大きな文字による解説が置かれているのが普通ですし、いわゆる博物館では映像を使うことで手話による解説を提供しているところも多いわけで、これに対して日本の状況は遥かに遅れているので抜本的な改革が必要だと思います。 最後に、たんぽぽの家の岡部さんのプレゼンの中でも地域という言葉が何度も出てきましたが、そのことからもわかりますように、文化施設が障害のある人と関わることは地域とも繋がることであるという意識を持つことが重要だと申し上げたいと思います。 その象徴的事例を一つ紹介しますと、2023年10月にサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)が、クリエイティブ・グロース・アートセンターという障害のある人の創作を制作、展示、販売と幅広い角度からサポートしている団体とパートナーシップを結びました。記者発表ではSFMOMAはこれから2年間に100点以上の作品を収蔵するとともに展覧会を二つ以上開催するという計画を発表したのです。面白いのは彼らが「Art with Disabilities」(障害とともにあるアート)という言葉を使っていることです。決してアール・ブリュット、アウトサイダーと呼ばれることを否定してはいないのですけれども、自分たちから発信する際には障害という言葉を強調することで、障害があるからこそ素晴らしいアートが生まれる可能性もあるということを知ってもらうことを望んでいるようです。 SFMOMAのこのパートナーシップというのは、ベイエリアにおけるアートと障害者の運動の出現をたたえ、この地域の芸術的豊かさの重要かつ見過ごされがちな側面を前面に押し出すためであるというふうに述べていて、自分たちがその地域の、あるいはその世界のリーディングミュージアムであるということの自負心から、地域における障害者の芸術活動を紹介していくのだと。この姿勢から日本の国公立美術館が学ぶことは少なくないですし、美術館・博物館が地域における草の根的な、障害者の芸術文化活動をリサーチしたくなるシステム作りが重要だと思います。 以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして広瀬構成員、よろしくお願いいたします。 【広瀬構成員】 国立民族学博物館の広瀬です。よろしくお願いします。 好き勝手なことを申し上げます。まず資料全体を読んで、さらに今日の発表をお聞きしての素直な印象ですが、まだ支援する側、支援される側という2項対立的な図式がどうしても見え隠れしています。マジョリティである「私たち」健常者が支援する側、マイノリティーである「彼ら」障害者が支援される側という構造です。もちろん文化庁、厚労省の方々もすごく頑張ってくださっています。着実に周知も進んでいるし、素晴らしい取組なのですが、本当の意味での共生、ともに生きるということを考えると、「私たち」と「彼ら」の隔たりというか、壁をどう取り払っていくかということが大きな課題なのだなと思いながら、資料を読ませてもらいました。 これは再三この会議で申し上げていることですが、本会議の主題は「障害者による文化芸術活動」なのですけれども、同時に「障害者による推進」という目標もあると思います。そういう意味で言うと、毎回これもお願いすることですが、音楽堂や劇場の職員に占める障害者の割合というのをきちんと確認してほしい。学校とか図書館とかを見ても、やはり当事者がスタッフとして雇用されることによって大きく変わってくるということがあるので、啓発も兼ねて、ぜひ障害者雇用率を今後確認して数値化していってほしいと思います。 また、人材育成の研修が重要になってくると思うのですが、その職員研修が35.9%、企画・運営委員に障害当事者が入っている割合が7.3%です。森田構成員からも指摘がありましたが、やはりすごく低い。ちょっと意地悪な見方をすると、障害者のことが他人事で、自分事として受け取られていないという証左だと思うのです。その辺も含めて、単なるお客さんとして受け入れるということではなく、働く仲間として、障害者の位置づけをしっかり考えてほしいと思いました。 それから、施設整備のところで、ここは視覚障害者の立場として発言します。いろんな設備、ハードが挙げられていますが、まず点字ブロックには、誘導用のブロックと警告用のブロックの2種類があります。そういうことを理解していない方も少なからずいると思うので、これも啓発という意味で、誘導用、警告用を分けて尋ねていただきたいと思います。 また「その他」の中に点字案内板というのがありましたけど、これも近年はご承知のように、公共交通機関などでは触知案内板、触って知る案内板という呼称が一般的です。ユニバーサル(誰もが使える)の観点で、「見る」と「触る」が一体になっている地図・案内板が多いので、点字案内板というよりも、触知案内板を項目として挙げていただければと思います。 また、宝塚の事例が入っていますね。僕は関西にいながら全く知らなかったのですが、プログラムのテキストデイジーを提供しているようです。デイジーは主に音声で確認するものです。今日の会議もそうですが、音声で演劇などを鑑賞しているときに、別の音声でプログラムを確認するのは物理的に難しいでしょう。こういう場合は、ニーズは少ないかもしれないけれど、点字の資料を準備していただきたい。点字ユーザーは減少傾向にありますが、視覚障害者にとって触覚による情報保障は大切です。 厚労省の支援センターの設置については、未設置県が2県となりました。リストを見れば、どこが未設置なのかはわかるのですけど、未設置県を公表してもいいのではないでしょうか。ちょっと意地悪かもしれませんが、未設置が5県を切っていれば、未設置県を激励するという意味でも名前を挙げてもいいのかなと思いました。 最後に一つだけ、皆さんにお伝えしたいことがあります。この会議では毎回、僕は点字の資料をいただいています。大変助かっておりますし、事務局のご支援に感謝しています。議論を聞きながら点字の資料を確認できるので、皆さんと同じ条件で会議に参加しています。おそらく資料提出期限があって、「点訳をするので、期限までに資料を提出してください」と、皆さんにお願いしているのだと思います。残念ながら今回、一部の資料が間に合わず、テキストデータのみをいただきました。 限られた時間の中で点字資料を作っていると思うので、場合によっては点訳が間に合わないのもやむを得ないでしょう。でも、先述したように、テキストを音声で聞きながら、会議に参加するのは難しいです。資料は指で読みながら、会議における発言は耳で聞く。視覚障害者にとって点字の情報は不可欠です。本会議で点字ユーザーは僕のみですが、「誰ひとり取り残さない」という意味において、ぜひ期限厳守で各種資料を作成・提出していただきますようにお願いいたします。本会議の趣旨を考えて、あえて付言しておきたいと思います。以上です。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして廣川構成員、よろしくお願いいたします。 【廣川構成員】 シアターアクセシビリティネットワークの廣川と申します。 事業者の合理的配慮により、いわゆる商業演劇公演に字幕や手話通訳が付く事例が昨年から今年にかけて増えてきました。そのうちのいくつかはアーツカウンシル東京による鑑賞サポート助成制度を利用したものとなっており、助成があれば取り組む意思があると言えます。一方で、同じ作品なのに東京以外で上演するときは、サポートが消える事例が続出しており、東京以外に住むろう者、難聴者から、失望の声が上がっています。めげずに交渉する人もいますが、厳しい対応をされるなど、地域格差が進んでおり、鑑賞サポートの本質的なところが理解されていないと感じています。 また、鑑賞サポートの質にもばらつきが目立ってきているように思います。鑑賞サポートに取り組むための、いわゆる資格制度がないため、誰でも参入できる。質の保証はないということにも繋がります。同じ作品なら、全国どこでも安心して楽しめる環境を求めています。 かつては、手探りで取り組む団体を応援したいという気持ちから、質に関しては目をつむってきましたが、基本計画が7年目となった今、次の段階に入っていると考えます。 折しも、100年前にパリで始まったデフリンピックが、今年11月、日本で初めて行われ、海外を含め6,000人が参加予定ですが、ちょうど34年前、1991年の夏には、世界ろう者会議が東京で行われ、日本のろう者に大きなインパクトを与えました。手話施策推進法案が今国会で上程されている今、オリンピック、パラリンピック、大阪万博について取り上げるのであればデフリンピックも同列にテレビなどのメディアを含めて取り扱っていただきたいです。 そして、支援センターの未設置県が二つとなりましたが、こういった鑑賞サポートに特化した支援機関を創設することを検討する時期に入ってもいいのではないでしょうか。また、人材育成についてですが、芸術系大学での必須科目として、英語と同様に、手話、字幕制作、音声ガイド、点字など情報アクセシビリティについても、しっかりと学ぶ時間を導入することが重要だと考えます。若い演劇人と接する機会がありますが、彼らは本当に柔軟に考えており、付け足しとして行うのではなく、クリエイティブな活動の一環としてアクセシビリティを捉えています。その結果、全ての観客にとって新たな鑑賞体験となりうる可能性があります。例えば、手話付き公演にろう者が何人来た、という限定的な定量評価をするのではなく、手話付公演であることを承知した上で来場した観客全員が、手話を含めた鑑賞体験者としてカウントされるべきではないでしょうか。障害者自身を専門家として育成することも重要な視点であることも申し上げました。 最後に構成員についてです。今回、20名のうち5名が障害のある構成員となっており、以前は2名だったことを思えば喜ばしいですが、多様性を担保するためにも、更なる異なる背景を持った構成員を増やしていただきたいです。 以上となります。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして服部構成員、よろしくお願いいたします。 【服部構成員】 甲南大学の服部です。皆さん興味深いご報告ありがとうございました。 近年の状況を見ますと、「たんぽぽの家」のように高い問題意識で有意義な取組を継続的に進めておられる団体と、関心はあるけれども進め方も分からなければ資金もないというような団体・個人との格差が、拡大傾向にあるように思います。たとえ小さな金額でも、何か取り組みたいと思っている人たちのスタートアップを支援する仕組みがあることは、この分野のプレイヤーが固定化しないために重要だと思います。 劇場・音楽堂の調査については、来場者・鑑賞者として障害のある方を受け入れる取組はかなり進んできたという印象がありますが、一方でさきほど島根県の取組としてご紹介いただいたような表現者・実践者として障害のある方が舞台に上るための取組は、全体としてはまだ不十分なように思います。それは美術館でも同様です。鑑賞者としてその場所を訪れることと、表現者としてその場所で表現を行うことは、相互に深い関係があると思います。その場所に障害のある人の表現があるということは、自分たちが受け入れられているということの強いメッセージになります。それは、その場所に行ってみようという動機付けにつながると思います。 このような調査で数値化して評価することは、制度を改善していくうえでとても大切なことですが、同時に数値に現れないものや、明確な目標が設定できないものも大切にしてほしいと思います。福祉や芸術には、成果主義とは相容れない部分が必ずあります。自然発生的に始まった非常に面白いアートや福祉の取組が、注目が集まって企業や行政が参加していくことで洗練されて商業化されて、本来の活き活きとしたエネルギーを失ってしまい、そうして当初のコミュニティが崩壊していくというようなジェントリフィケーションの過程は、世界各地で見られることです。たとえば、1940年代半ばに前衛的なアーティストたちによってもたらされたアール・ブリュットという考え方も、いまやパリの国立近代美術館の常設展示室で歴史的に位置づけられて、この6月からはパリ最大の展示場グランパレで大規模な展覧会が開催されます。こういう商業化は芸術の草の根レベルでの面白さやエネルギーを無効化してしまう恐れがあります。この分野の目標設定においても、それは注意すべき点だと思います。 さきほど保坂さんからアメリカの事例をご紹介いただきましたけれども、海外での情報が日本にはあまり伝わってこない傾向がありますので、日本の現在の活動を相対的に理解するためにも、海外の動向にも目を向けて、積極的に日本で紹介してほしいですし、それに付随して支援センターなどで、海外からの問い合わせに対応できるような体制づくりも進めていただきたいと思います。 私からは以上です。ありがとうございます。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして野澤構成員、よろしくお願いいたします。 【野澤構成員】 はい、ありがとうございます。植草学園大学の野澤です。 最初の方の文化庁の資料で、施設職員さんの法律や計画の周知が前回より良くなったのですが、まだ半数ぐらいが周知されてないということで、これはなぜなのかなと思うのです。一般国民の理解や啓発とちょっと違うと思うので、分野が絞られた上での取組なので、やはりもっと改善されてもいいのではないかと思います。 それと関連して、障害者の利用のための取組やサポートのところで見てみると、やはり車いすの方や視覚障害、聴覚障害の方へのサポートがほとんどで、知的障害や発達障害、精神障害の方へのサポートはほとんどなかったような気がします。例えばわかりやすい説明とかストレスのない環境とかがもっとあっても良さそうだし、もっと言えば非常に個別性が高いので、個々の施設の職員さんによく障害を理解してもらうということがとても重要なのですが、職員さんの中にこの法律、計画の周知はまだ半数しかないというアンケートにも繋がって、やはり非常にまだまだ足りないなという気がいたします。 そして厚労省の資料の課題のところの人材不足について、人材不足はずっとあったのですが、文化芸術の専門職の数自体が足りないための人材不足なのか、それともそういう人たちはいるけども、雇用したり活動したりする人件費が足りないために、そういうところに伝わってこないのか、どっちなのかと思うのです。私はどうも後者の方かなという気がしています。芸術系の大学を卒業する人は毎年いるわけですし、今回のこういう取組の中で人材育成も行われているわけですけれども、そういう人たちが継続的に活動していける場がないというか、そういう彼らを雇える人件費がないというか、その辺りに問題があるのではないかなという気がします。このあたりを詰めていただきたいなというふうに思っています。 また、障害者文化芸術については、芸術的・文化的な価値という面で非常に光が当たっているし、あるいは彼らがそういう活動を通して経済的に自立していけるような、あるいは仕事に就けるような、そういう経済的な価値というのはあるのですけれども、もっと裾野の方には福祉とか心理面での価値がもっともっと現実にあると思います。例えば彼らがやっている活動あるいは作ったものが芸術的な価値としてはそれほど評価されなかったとしても、本人のQOLの向上には非常に有用であったりします。最近は強度行動障害の方の改善に向けての取組やトラウマケアなどでも、文化芸術が非常に重要ではないかというふうに言われております。ぜひこの辺りを、もっと裾野の広いところで取り組まれているところで、福祉や心身に与える影響というものを検証することが必要だと思うし、そういうものを元に報酬改定ですとか制度改革の中に、もっともっとこのアートというのも組み込んでいければ、人材がもっと活用でき、継続的に活動できるような素地というものが広がっていく。それがまた文化芸術の方にも良い影響を与えていくという、そのあたりがとても重要ではないのかなというふうに思いましたのでお話させていただきました。 ありがとうございます。 【日比野座長】 ありがとうございました。続きまして長津構成員、お願いいたします。 【長津構成員】 九州大学の長津と申します。出張中の参加につき電波状況が悪くなりましたら申し訳ありません。専門は文化政策やアートマネジメントで、障害のある人の表現活動についてのリサーチや実践的な現場を学生とともに作る仕事をしています。本日話題に上がっている支援センターや文化庁の補助事業にもいくつかお手伝いをしています。本日の発表内容をお伺いして考えたことについて、いくつか意見を述べさせていただきます。 まず、文化庁から紹介がありました調査の内容で、障害のある人に関する事業を実施する劇場が約30%ということで、増加したのですけれどもまだ充分ではないというふうにも感じます。劇場や音楽堂をより開かれた場とする視点が問われていると感じます。公立文化施設協会からのお話にもあった通り、合理的配慮や社会包摂に関する認識が不足している層へのアプローチが課題だと思います。障害者支援だけでなく劇場の社会的役割を広く伝えるための手法が求められると感じました。 また服部構成員も触れられましたが、障害者の文化芸術活動への関心を持つ団体と、義務感から取り組む団体の二極化が進んでいることを感じています。義務感、あるいは助成金の取りやすさから活動を行うのではなく、障害のある人と関わることがクリエイティブな活動と繋がることを体験できる機会が不足しているのではないかと感じました。そのためには、いわば芸術活動のマジョリティ側へのアプローチが不可欠です。たんぽぽの家が進める異分野連携は、マジョリティ側への有効なアプローチだと思いました。 こうした劇場や美術館、博物館と福祉団体を繋ぐ仕組みとして、マッチングのノウハウを共有し、グッドプラクティスを蓄積発信することが重要なのではないでしょうか。さらに、法律や事業の目的を伝える資料を整備するだけでは推進に繋がるとは限りません。重要なのは単なる情報提供ではなく、効果的なコミュニケーションデザインの構築です。障害のある人への配慮だけでなく、様々な理由で文化の現場から排除されている人々への視点も含めて啓発を行っていくような方策を検討していく必要があると感じました。 最後に労働環境についても考える必要があると感じました。現在障害のある人の表現活動の現場では、様々な側面から安全な労働環境について、ケアする人のケアのあり方について、権力構造の不可視化についてなどの問題提起を行う議論が活発化しています。そもそも芸術の現場は過酷になりがちで、権力関係が内面化されやすい構造があります。特に障害のある人が関わる活動では、より繊細な環境整備が求められますが、今回の調査結果を見ても残念ながら、広瀬構成員が問題提起したように障害のある人が事業の現場に参画する状況にまだ充分になっていないことを表していると思います。 結局のところ、マジョリティ側の都合が良い形をベースに事業が進んでいるという側面が否定できず、先ほどよりご指摘があったことに加えると、今日の構成員を考えても、会議出席者の大半になってしまっている健常者、また男性の1人として大きな責任を感じています。インクルーシブで働きやすい環境を保ちながら豊かな芸術活動を展開するためのガイドライン整備も必要であるし、私自身も何ができるか考えていきたいと感じました。 安心して多様な人々が文化芸術活動に関わりを深め、社会を草の根から変えていくための議論を深める機会が増えればと感じました。 私からは以上です。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして津田構成員、お願いいたします。 【津田構成員】 津田と申します。私は社会教育、生涯学習の観点からの発言をさせていただきます。私も健常者男性で肩身が狭いですけれども、お話させていただきます。 今日全体の報告を伺いまして、特に事例報告を伺いながらいろいろなプレイヤーの地道な努力が結実しているんだなということを感じました。その一方でプレイヤーの固定化、これは服部さんがそのような言葉を使われましたけれども、プレイヤーの固定化や地域格差、あるいは小さな取組を育てていくことが相変わらずの課題なのだろうというふうには感じております。 文化庁の調査を拝見して感じたことですが、鑑賞に力点を置くことも大事なことだと思うのですけれども、舞台における表現者の視点というのが少しまだ足りていないのかなというふうなことも感じました。広瀬さんが、お客さんという意味ではなく、という観点をお話しておられましたけれども、お客さんではないような形でどのように、様々な人が主役になっていくかという観点が大事だと思います。しまね文化振興財団さんからの報告にもありましたが、舞台での表現活動を志す取組は実際に増えてきているように感じられるのですが、舞台芸術はやはり規模も大きくてお金もかかるので、いかに小さな取組を育てていくかという観点があるといいというふうに思います。 韓国に文化芸術振興法という法律があり、国や自治体が設置している文化施設は定期的に障害のあるアーティストによる公演を実施しなければならないというふうに書いてあるのです。知り合いの、韓国で舞台芸術をしている人たちに聞くと、微妙にこの条文が効いているというふうにも聞いております。法的にバージョンアップするようなことを考えてもいいのではないかなというふうなことを感じます。 最後に、文科省の障害者学習支援推進室との協働継続を要望させていただきます。私は兵庫県にいて、障害者生涯学習推進の取組で「ミュージアムインクルージョンプロジェクト」というものをやっております。障害当事者が調査隊を編成して協力博物館に派遣するという取組なのですが、これをやっていてすごく気づくことは、博物館もすごく乗り気でどんどん新しいプロジェクトをやっていこうというふうになっていくのですが、何よりも障害のある方たちが博物館に行って魅力を感じるというようなことが次々に出てきております。やはり足を向けて行く、もちろん舞台でもそうですけれども博物館とかアートのあるところに出かけていくという機会が少ない人たちがまだまだたくさんいるのだなと。そういうことを活発化して、出かけていくことができるというところを増やしていくことによって、多くの人たちの生活の質が上がっていくということを目指していく必要があるのではないかというふうに思いました。障害者学習支援推進室と文化庁、加えて厚労省の取組が連携協働すればもっと大きな力になっていくのではないかと感じているところです。以上です。 【日比野座長】 ありがとうございました。続きまして佐久間構成員、よろしくお願いいたします。 【佐久間構成員】 仙台市文化振興課の佐久間と申します。資料のご説明、それから事例紹介を大変ありがとうございました。私からはただいまご説明いただいた中で資料1−1に関連した仙台市の状況についてお話をさせていただきたいと思います。 資料1−1の8ページに、参考として地方公共団体における計画策定状況がございます。先ほど高知県の森木課長さんから、なかなか市町村の計画策定が進まないというお話がございましたけれども、実はこの表には載ってございませんが、仙台市は令和6年の3月に仙台市文化芸術推進基本計画を策定いたしました。この計画は障害者による文化芸術活動の推進に関する地方計画としても位置づけたところでございます。 この計画策定に関していくつかポイントを絞ってお話をさせていただきます。まず計画策定のメリットとして感じたことを一つご紹介いたしますが、計画策定の過程でヒアリングなどを通しまして、地元に数多くの障害者アートに関わる団体があるということを改めて認識できたということがございます。状況が可視化されたことで、今後の施策の方向性が以前より描きやすくなったというふうに感じております。 次に計画策定において工夫をしたこととして、計画の本編や概要版に加えて、わかりやすい版というのを作成いたしました。これは計画策定にあたって組織した有識者会議の委員の方から、文字認識が難しい方が読み込むには内容が非常に難しいというようなご意見がきっかけで、中間案の段階からこのわかりやすい版というのを作成いたしました。このわかりやすい版については、市民有志の方による計画の中間案を読む会というものが開催されるなど大変好意的に受け止めていただきました。 最後に、計画を策定しまして、今後の課題として一つお話をさせていただきますと、障害者に関わる中間支援の民間の団体の方々、特に福祉施設以外の方々については、事業を収益化することが非常に難しく、国や自治体の単年度の助成金によって何とか運営を続けているというような実態がございます。仙台市には、東日本大震災を契機として被災地での復興支援を希望する芸術家の方々と、被災地を繋ぐ中間支援団体が多く活動を始めましたけれども、公的な補助ですとか寄付が少なくなってくるにつれて活動が難しくなっていったという話をよくお聞きします。中間支援に当たるコーディネーターの方々が、専業として、いかに活動を続けられるかということは非常に大きな課題であるというふうに感じております。 以上でございます。 【日比野座長】 はい、ありがとうございました。では続きまして久保構成員、よろしくお願いいたします。 【久保構成員】 ありがとうございます。電波状況が良くないので、ビデオをオフにさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。 私は、この会議に障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワークの代表として、参加をさせていただいております。全国組織を持つ障害者団体が19団体ぐらい集まって、活動を進めております。その中で、いろいろ活動させていただいているわけですけれども、私達の活動の中でも、情報のアクセシビリティだとか合理的配慮みたいなことを含めて、発表の機会の場というものの提供を進めさせていただいているわけです。それは、舞台も含めてですけれども、その中でやはりずっと、私も知的障害の親でございますので、知的障害の方の情報アクセシビリティというのはまだまだできていないというのを皆さんにお伝えしながら、これから進めていきたいなというふうに思っていたところでございます。 事例としてとてもすばらしい取組を発表していただいてありがとうございました。ですが私の感覚では、今、19団体とともに活動していますけれども、やはり2期計画とか支援センターの動きみたいなものが、市町村の地域にまだまだ届いていないような感じがします。 この団体はもうだいぶん前にスタートをしていますけれども、今もあまり大して変わっていないなというような感覚がありますので、ぜひその辺のところを進めていただきたいし、私達もそのことを進めていきたいと思いますし、せっかく19団体集まっていただいておりますので、研修なども含めて、地域の中でみんなが芸術を楽しめるということを、実際に地域を作っていくというようなことも含めて、これからの活動としてやっていきたいなというふうに感じていました。 先ほど保坂さんのお話が終わられてから、チャットでいろいろ文章を書いていただきましてありがとうございました。とても参考になると思って、また具体的なお話を伺いたいなと思ったぐらいです。いろんなところと繋がっていかないと、私達の活動も広がっていかないということを、本当に実感をして感じているところでございますので、皆さんのご協力もいただきながら進めたいと思っております。 ありがとうございます。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして尾上構成員、お願いいたします。 【尾上構成員】 DPIの尾上です。森田さん広瀬さんも言っておられたのですけれども、文化庁のアンケートで障害者に関する研修を実施しているところ、あるいは障害者からの聴き取りをしているところが、いずれも3割台というのは非常に少ないなと思いました。特に研修もあまり進んでいないのに、人材がいないということができない理由に挙がっているのが問題だと思います。取り組んでおられない7割のところが動き出すような働きかけや施策が、この第2期計画を実施していくという意味では必要なのではないかと感じました。 この第2期計画は、ちょうど改正障害者差別解消法の施行時期と重なっているわけですけれども、未だに例えば初めて行く劇場で、私は車いすの立場の者ですが鑑賞しようとすると、車いす席があるのかどうか、同伴者席との位置関係はどうなっているか、あちこちに問い合わせないとわからないのです。合理的配慮やアクセシビリティに関する相談窓口がちゃんと設置されているかどうか、今後こういった調査をするときには、そういった把握もできるようにお願いしたいと思います。 また文化庁の資料に、周知すべき法律として障害者文化芸術推進法のことは書いていただいているのですが、さらに障害者差別解消法や情報アクセシビリティ・コミュニケーション推進法も、これも切り離せない法律だと思いますので、ぜひ周知すべき法律の中に加えていただければというふうに思います。 もう1点は、この第2期計画期間中の大きな出来事ということで言いますと、この4月から開催されます関西万博ですね。この機会を捉えて、障害者文化芸術の取組をぜひ世界に発信をしていく、そういった機会にしていきたいということを第2期計画を作る段階から私は何度も申し上げてきてきましたが、いよいよこの4月から開催されます。文化庁、厚労省の説明の中でも今後の取組ということで触れていただきましたけども、この万博の中でのプログラムはもちろん、万博に向けて各地で盛り上げていく取組が展開できるよう、政府、自治体一丸となって支援をしていただくことをお願いしたいと思います。以上です。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして小川構成員、お願いいたします。 【小川構成員】 今回の資料の中で驚いたのは、劇場・音楽堂等の施設職員における障害者文化芸術活動に関する法律や計画の周知状況です。4年前の調査より10ポイント以上伸びていて、関係者の尽力に頭が下がる思いです。調査の時期がずれますが、令和5年度の全国の美術館等における実態調査の同じ質問項目よりも高い数値になっています。共生社会に向けたこの趣旨の取組は、美術館が先行して劇場・音楽堂等が追いかけることが常だったように私は思ってきましたので、これからはホール系の方々にぜひ全体を牽引してほしいと思っています。 さて、私は今年度、厚生労働省の障害者芸術文化活動普及支援事業で全国の取りまとめを行う連携事務局を担当しました。いくつか意見を申し上げます。 一つは、支援センターと文化施設の連携についてです。今年度は45の都道府県の支援センターが各地で活発な活動を行っており、資料にありました通り、作品等の発表の機会の確保などに注力した取組が行われていました。発表の機会の確保には具体的な場所が必要な場合が多いため、この時点で文化施設との連携が必要になってきます。しかしセンターを運営する団体は、福祉分野に専門性がある団体が多く、芸術に専門性がある団体が3割弱です。このため、文化施設との連携に苦労しているのが実情です。建物の存在を知っていても、連絡先としては代表の電話番号しかわからないという例もありました。その段階から最適な担当者を探し出し、連携の道を探ることは大変なことです。今回紹介がありました公立文化施設協会の研修を終えた方などを念頭に置いてもいいのですが、文化施設側に障害者芸術担当ないしは共生社会担当など、担当者を見える形で置き連携を進めていくことも重要だと感じています。 二つ目です。支援センターの相談支援業務についてです。令和5年度の支援センターの相談支援を対応した件数は5,000件を超えたという資料の報告がありました。多くの支援センターでは、専門の相談員が常駐していることは少なく、別の業務も担当しながら相談対応している実態があります。そういった厳しい状況ではありますが、相談支援を通して現場のニーズを知ることができたり、地域の文化施設やイベントの情報を収集し、文化資源の確認に繋げたり、相談から具体的な事業企画が立ち上がった例もあります。障害福祉分野では障害者総合支援法や児童福祉法に位置づけられた一般相談、計画相談支援がよく知られています。こうした福祉サービスの相談と異なる相談支援の可能性が、障害者の文化芸術の取組では見えているように思います。単純な相談件数の増加を目指すのではなく、相談の質的な部分を重視して、各地の支援センターで相談支援業務が行われていくことに期待したいと思います。 以上です。 【日比野座長】 ありがとうございました。では続きまして岡部構成員、お願いいたします。 【岡部構成員】 私は長く話をさせていただきましたので、一つだけ追加をさせていただきたいと思います。最後の方でアンケートの結果の話をしていましたが、ちょうど先週、兵庫県の支援センターと一緒に出張の相談会を行いました。 1日で12組、フルの定員になっていろんな相談を受けたのですが、たまたま12組中5組が個人で活動されている障害のある人たちの活動を支援されてるご家族の方のご相談でした。5組とは割と多いなというふうに思ったのですが、やはりご家族で障害のあるお子さんのアート活動をマネジメントされているのですが、企業との契約や、様々なアートの展開について、お一人あるいはご家族で、かなり悩みながらやってるとお聞きしました。その中では継続性、ご両親がお年を取っていたときにその作品をどうしていったらいいのかというご不安だったり、あるいは障害者福祉サービスと併用されてる方が、アートによって収入を得たときに、サービスが利用しにくくなるのではないかというようなご不安をお持ちということがわかりました。 実際には各市町村の福祉の窓口に相談すればわかるのですが、なかなかそういったところでご不安があるがゆえに、例えばアートコンペに出しにくいとか、仕事の依頼があっても少し考えてしまうというような、そういった現実が少し見えてくるなというふうに思いました。もちろん障害福祉の現場や障害のある人のアート活動はまだまだという点もありますが、次のステップを考えたりとか、そこで踏みとどまってしまう方もいらっしゃるというのを実感したようなこともありました。 厚労省の事業では各支援センターが非常に細やかにその地域を見ていらっしゃいます。もちろん福祉施設単位でのサポートというのがメインにもなるところもあるのですが、個人でアート活動をされている方、またそこからも見えないような事例というのがここからも見えてくるかもしれないなというふうに思いながら、私も1日、相談に立っていました。今後も広い視野と、本当にポイントにフォーカスをしていく視野を併用しながら、全体的な支援をサポートしていければなというふうに思っております。 どうもありがとうございました。 【日比野座長】 ありがとうございました。続きまして大塚構成員、お願いいたします。 【大塚構成員】 大塚です。よろしくお願いします。 行政による説明あるいは施設団体等からの事例紹介をありがとうございました。状況がよくわかりました。そんな中で、全体としては障害者の文化芸術活動が推進されているという印象は受けましたが、様々なところにおいて課題はまだ残っている、生じているというふうに認識しております。より推進あるいは進展させるために、三つぐらい気がついたことをお話したいと思います。 一つ目は、文化庁からの資料の8ページで、地方公共団体における計画策定状況というのが出ています。これについても、令和4年から令和5年、確実に増えているということで喜ばしいことだと、進展しているというふうに捉えております。願わくばこの計画策定だけではなくて、どのような状況で施策に取り組んだか、あるいはその結果はどうであったかということがよくわかると、まずは都道府県レベルでわかると、より文化芸術活動の課題が全体としてわかるのではないかと。特に市町村はそれによって都道府県の計画を見ていますので、市町村に与える影響も大きいのではないかというふうに思っています。 二つ目は、厚生労働省につきまして、やはり障害者芸術文化活動支援センターというものを、全国どこにおいても、質的な担保、もちろん良い支援をする、質が高いものは求められますけれども、底上げもしてほしいという感じがあります。特に文化庁さんの調査資料によりまして、6ページの障害者に向けた事業を実施している施設の連携先というところの中においては、学校など教育委員会が一番上で、一番下に障害者芸術文化活動支援センターと、非常に下位にあるということは残念であります。これがもう少し上の方に上ってくることを願っております。 三つ目は、事業についてです。普及推進支援事業でありますけれども、きちんとした評価を入れることによって推進事業をより進展させることが必要かと考えています。去年やっていたからまた今年もということで、ずっと続いていた部分もあるかもしれません。そうではなくて、やはり質的担保のために評価を入れることによって、芸術文化活動支援を進めていっていただきたいと思います。 以上です。ありがとうございました。 【日比野座長】 ありがとうございました。なお本日欠席の構成員に関しては、事前にご意見をいただいておりますので、こちらは事務局の方から代読をよろしくお願いいたします。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 はい、私の方からご紹介をさせていただきます。まず今中構成員からのご意見になります。 【今中構成員】(事務局代読) 文化庁の資料のなかで、劇場・音楽堂等の連携先に「学校、教育委員会」が挙げられていますが、特別支援学校や特別支援学級だけではなく、通常学校・学級に対しての取組や周知が必要と考えます。インカーブでは、大阪府内の普通高校に対して研修やワークショップを行っていますが、障害のある人がアート活動を行っているという発想すらない生徒も多く、障害のない学生や生徒たちに、障害のことや障害のある人の活動について知ってもらうことが重要だと思います。 文化庁の調査において、人材育成が課題とのことですが、7、8年前に文化庁の委託事業で東京藝術大学や金沢美術工芸大学など国公立の芸術大学・美術大学と一緒に人材育成の取組を行いました。3カ年の計画でしたが、随分取組が進んだという実感があります。実際に、障害者の文化芸術活動に興味を持った学生が、その後、福祉施設やこの分野に関連する仕事に就くケースもありました。福祉施設の内部にアートの専門家や思いを持つ人がいることが重要です。 また、芸術大学や美術大学のカリキュラムとして1単位でも良いので障害者の文化芸術活動の内容を組み込んだり、学芸員資格の試験のなかに1つでもこの分野に関連する設問があるなど、教育機関の底上げや学芸員の理解を進めるための具体的な対策も必要ではないでしょうか。遠回りかもしれませんが、教育の現場がもっとも重要だと思います。 厚生労働省の資料にある障害者芸術文化活動支援センターにおける相談業務は重要と考えます。活動を広げていくためには、人材を相談支援へ割いていくことも必要ではないでしょうか。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 続きまして鈴木構成員からのご意見を代読します。 【鈴木構成員】(事務局代読) 文化庁の資料のなかで、「障害者に配慮又は対象とした事業の取組状況」のうち実施している施設が30.8%で、数字としては増えているとのことですが、活動内容には差があると思います。共催公演や協力公演として実施するだけではなく、小さなイベントでも良いので、劇場・音楽堂が自ら企画して主催として実施することではじめて活動が地域に根付き、推進されていくと思います。 研修は、座学で学ぶだけではなく、実践研修へ繋げるとよいと思います。座学と実践をセットで行うことで、机上で学ぶこととは違うことを知ったり、経験を積むことで人材が育っていくと思います。職員やスタッフが実践を通して、自己肯定感や達成感を感じることも重要です。 また、多機能型トイレに関する調査内容がありましたが、多機能型トイレでも様々な種類があり、大人用の介助ベッドを設置している所もあります。最近は高齢化とともにニーズが増えていると聞きます。できればどのような多機能型トイレを設置しているかなども把握できると良いと思います。 調査で劇場・音楽堂が保有している舞台鑑賞用のサポートシステムの有無を聞くことも重要ですが、大がかりな機材やシステムがなくてもできるサポートもあります。例えば、地域の自治体での要約筆記派遣の方を呼んで対応するなど、地域のリソースを生かしてできることもあります。システムを設置することだけがマストではないと思うので、できることから始められるサポートがある、ということも周知いただきたいと思います。 それから、ヒアリング調査で好事例を出していただくのは良いことですが、現状では対応できない施設等もあると思うので、どこでも実施できるような事例を出していくことも必要ではないでしょうか。 厚生労働省の資料について、支援センターの未設置県が残り2県まで進んでいるのは良いことですが、自治体によっては活動に大きな差が出てきており、支援センターによっては得手・不得手が分かれているのが現状であり今後の課題だと思います。 また支援センターの取組では、美術分野の活動が多く、舞台芸術分野の取組はまだまだ少ない状況です。相談内容も美術分野より舞台芸術分野の相談は少ないと思いますが、表に出てきていないだけで、潜在的なニーズは必ずあると思います。その辺りの掘り起こしも今後の課題かと思っています。 文化庁の調査では劇場・音楽堂等は人材やノウハウがないということですが、支援センターと連携することで課題解決の手段になり得るのではないでしょうか。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 続きまして、吉野構成員からのご意見を代読します。 【吉野構成員】(事務局代読) まず、第2期基本計画スタートからこれまでに、多少なりとも成果があったことについては事前説明でお伺いし、それについては良かったと思います。 一方で、法律、計画の周知はまだまだ十分ではないとも思います。先日県の文化振興担当部局の方がその後の進捗状況について説明とヒアリングに来ましたが、この法律も基本計画もご存じありませんでした。担当者の異動などもあるとはいえ、まず地方自治体でこうした例もあり、それらの自治体等の予算や計画等によって運営される芸術文化施設職員への周知がされないのも当然のようにも思います。むしろ現場の施設職員の方が、公文協さんなどの研修により認知度は高いのかもしれないですね。 支援センターの設置数が増えても、設置主体となる地方自治体の中でまず福祉と芸術文化との連携があまり進まず、支援センターごとに予算的にも人員的にも支援にもかなりの格差があるとも聞きます。支援センターと芸術文化施設の連携をうまくすることによって、専門人材の不足等を少しでも補い合えるようにするといった働きかけはできないでしょうか。文化庁の資料6ページの連携先を見ると、支援センター等は12.6%にとどまっていますが、これをどうにかする必要はないのでしょうか。文化庁資料の3ページにある意見の聴き取りなどについても、支援センターと共同で行えるように提案などはできないでしょうか。 芸術文化と福祉を横断するような専門人材の育成も必須と思いますが、仕事として働く場所がなければ増えようもありません。さらに、障害のある人が芸術文化施設で働く、運営組織の理事などにもなっていくような働きかけも、支援センターと芸術文化施設の連携を通してできると良いのではと思います。 人員確保のために必要な予算措置、専門人材の雇用機会創出へと具体的な状況改善につながるような、この法律、計画の周知や働きかけ、支援の施策等がもっと必要であると思います。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 以上になります。それから最後に本日欠席となりました柴田構成員からもご意見を頂戴しております。ご紹介いたします。 【柴田構成員】(事務局代読) 今年度は、昨年からの課題を受けて、「当事者の目線に立つ」「障害特性を明確にした支援のあり方を考える」「地域社会における集合的関係、コレクティブインパクトをどのように構築」していく基盤をつくるかということをテーマにおいて考えました。その結果、以下のようなことを感じております。 ・たんぽぽの家のプレゼンや自身が公文協の共生社会研修に講師として関わって感じたことは、今後、障害者の活動の場を拡大することによって、また、障害者を含めた生き辛さを支援する人材を育成することによって、障害者の方々の「キャリア形成」をどのように考えるかという視点が重要ではないか、また、育成した人材を「モデル人材として可視化」していくこと、そのしくみをどうつくっていくのかということを来年度以降意識して取り組む必要があるということを考えました。 ・劇場において共生社会を実践する職員と研修を通じて、事業目的とロジックモデルの組み立てを考えたわけですが、その研修で見えてきたものは、実践をどう理論化するか、そして、その理論化したものをどう次の実践に結び付けるか、ということでした。 上司、施設長、自治体職員、地域住民たちに、共生社会を目指す意義や重要性について、ロジックをもって語れるようになるための思考トレーニングは、今後も必要度を増すと思います。指定管理者制度が導入されている公立劇場であれば、なおさらです。 その研修の中でも、指標化については、課題が残りました。数値化できない定性評価の指標をどのように設定するのか、ということです。特に、信頼やネットワークなどの社会関係資本と、レジリエンスや自己効力感などの心理的資本など、今後、独自指標の開発が必要なのではないかと思っています。 ・文化庁や厚労省のご報告などを拝聴すると、劇場を中心に考えるのではなく、劇場を地域社会の構成員としてどう地域社会に貢献し、コミットメントしていくか、その集合的関係をどう構築するかが、ますます重要になってくると思いました。特に、劇場の館長や施設長の意識啓発は最重要課題であると認識しました。 公文協や島根県のプレゼンからは、障害特性を意識した企画提案が、複数見受けられました。例えば、知的障害や境界知能という、明確な障害とは見えにくい障害特性など、研修における参加者の問題意識が拡大するとともに、多様な障害特性に目を向けることができるようになりつつあると感じています。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 以上になります。 【日比野座長】 ありがとうございました。欠席の構成員からのご意見もいただきました。 時間が大幅に過ぎておりますが、私の方からも手短に。構成員の中から人材育成・人材不足という、人材というキーワードが多く出てきておりました。書面での今中委員のところでもありました大学での人材育成というものが、これからちゃんと社会と接続していくような部分での人材育成というのがとても必要ではないかと考えております。 今日はいろいろご意見をありがとうございました。引き続き皆さんのご意見を踏まえつつ、第3期の基本計画の策定に向けてさらに議論を深めていきたいと考えております。最後にその他について事務局から説明よろしくお願いいたします。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 はい、ありがとうございます。簡単に一言でございますけれども、次回につきましては調整の上ご報告いたします。以上でございます。 【日比野座長】 ではありがとうございました。時間も15分、20分近く過ぎております。それではここまでとしたいと思います。事務局の方に進行をお返しいたします。 【山口(文化庁参事官(生活文化創造担当)付き参事官補佐)】 日比野座長には、本日は円滑に進行いただきまして、また構成員の皆様、事例発表者の皆様には貴重なご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。 1