障害者差別解消法社会保険労務士の業務を行う事業者向けガイドライン 〜社会保険労務士の業務を行う事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針〜(案) 令和6年3月 厚生労働大臣決定 はじめに  平成28年4月1日から「障害者差別解消法」が施行されています。  この法律は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。  この対応指針は、「障害者差別解消法」の規定に基づき、社会保険労務士の業務を行う事業者が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。  日々の業務の参考にしていただき、障害者差別のない社会を目指しましょう。 ※この対応指針は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第 56 号)の施行の日(令和6年4月1日)から適用します。 目次 第1 趣旨   (1)障害者差別解消法制定の背景及び経過 …………………………… 1  (2)対象となる障害者 …………………………………………………… 2  (3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 ………… 2  (4)社会保険労務士の業務を行う事業者への対応指針………………… 2 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方  (1)不当な差別的取扱い     @不当な差別的取扱いの基本的な考え方 …………………………… 4    A正当な理由の判断の視点 …………………………………………… 4  (2)合理的配慮    @合理的配慮の基本的な考え方 ……………………………………… 5    A過重な負担の基本的な考え方 ……………………………………… 7 第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例  (1)正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例 ……  9 (2)正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例 ……  9 (3)合理的配慮に該当すると考えられる例 …………………………… 9 (4)合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例 ………… 11 (5)合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例 ……………… 12 第4 事業者における相談体制の整備 ……………………………………… 12 第5 事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備 …… 12 第6 国の行政機関における相談窓口 …………………………………… 13 第7 主務大臣による行政措置  …………………………………………… 13 おわりに ………………………………………………………………………… 14 p1 第1 趣旨 (1)障害者差別解消法制定の背景及び経過  障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択されました。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきました。  権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めています。  我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定されました。  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定されました。我が国は、法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結しました。  また、令和3年6月には、事業者による合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、相談体制の充実や情報の収集・提供の確保など障害を理由とする差別を解消するための支援措置を強化する措置を講ずることを内容とする改正法が公布されました(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号。以下「改正法」という。))。 p2 (2)対象となる障害者  対象となる障害者・障害児(以下「障害者」という。)は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものです。  これは、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者の定義と同様であり、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるというモデル(いわゆる「社会モデル」)の考え方を踏まえているものです。  したがって、法が対象とする障害者の該当性は、当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限りません。  また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、さらに複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。 (3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針  法第6条第1項の規定に基づき、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定、令和5年3月14日変更。以下「基本方針」という。)が策定されました。  基本方針は、障害を理由とする差別の解消の推進は、雇用、教育、医療、公共交通等、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる分野に関連し、各府省の所掌に横断的にまたがる施策であるため、政府として、施策の総合的かつ一体的な推進を図るとともに、行政機関間や分野間における取組のばらつきを防ぐため、施策の基本的な方向等を示したものです。 (4)社会保険労務士の業務を行う事業者への対応指針  障害者基本法第1条に規定されるように、障害者施策は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるという理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して講じられる必要があります。 p3  そのうえで、法第11条第1項の規定に基づき、主務大臣は、基本方針に即して、事業者が法第8条に規定する事項に関し、適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めることとされています。  本指針は、上に述べた法の目的を達成するため、特に社会保険労務士の業務を行う事業者の対応指針を定めたものです。  本指針において定める措置については、「望まれます」と記載している内容等法的義務ではないものも含まれますが、法の目的を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟な対応を積極的に行うことが期待されるものです。  なお、事業者は、障害を理由とする差別を解消するための取組を行うに当たり、法、基本方針及び本指針に示す項目のほか、各事業に関連する法令等の規定を遵守しなければなりません。  本指針の対象となる事業者の範囲は、社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第2条及び第2条の2に規定する社会保険労務士の業務を行う事業者です。  なお、基本方針において、「事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となり、また、対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。」と規定されています。 注)事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされており、同法に基づき別途定められた「障害者差別禁止指針(※1)」及び「合理的配慮指針(※2)」を参照してください。 ※1 「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第116号) ※2 「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年厚生労働省告示第117号) p4 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 (1)不当な差別的取扱い  @不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、役務の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付するなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当します。  また、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではないことに留意する必要があります。  したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たりません。  不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことです。  A正当な理由の判断の視点  不当な差別的取扱いであるのかどうかの判断には、その取扱いを行う正当な理由の有無が重要となります。正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、役務の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。  正当な理由に相当するか否かについて、事業者は、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止など)の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。その際、事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められます。  なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものです。 p5  また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定されるといった理由により役務の提供を行わないといったことは適切ではありません。 ※ 後述の「第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例」では、「正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」及び「正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」の具体例を示しています。 (2)合理的配慮  @合理的配慮の基本的な考え方  <合理的配慮とは>  権利条約第2条において、合理的配慮は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。  改正法による改正後の法においては、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を義務付けています。  これまで事業者による合理的配慮の提供は努力義務とされていましたが、改正法により、法的義務へと改められました。事業者におきましては、合理的配慮の提供の義務化を契機として、本指針に基づき、合理的配慮の必要性につき一層認識を深めることが求められます。  合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、その内容は、後述する「環境の整備」に係る状況や技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わりうるものであること、また、障害の状態等が変化することもあるため、特に障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜見直しを行うことが重要です。加えて、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する必要があります。 p6  合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ、「A過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素も考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要があります。  建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要です。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、事業者が対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられます。 ※ 後述の「第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例」では、「合理的配慮に該当すると考えられる例」の具体例を示しています。  <意思の表明>  意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。  また、障害の特性等により本人からの意思の表明が困難な場合には、障害者からの意思の表明のみでなく、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。  なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者等を伴っていないことなどにより、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときには、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提供するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望まれます。 p7  <環境の整備との関係>  法第5条においては、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として事業者の努力義務としています。  環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されています。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、内部規則やマニュアルの整備等のソフト面の対応も含まれることが重要です。  障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)(いわゆるバリアフリー法)等、不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づくこのような環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進められることが重要です。 環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものですが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置です。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなります。  なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことは有効です。また環境の整備は、障害者との関係が長期にわたる場合においても、その都度の合理的配慮の提供が不要となるという点で、中・長期的なコストの削減・効率化にも資することとなります。  A過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、事業者において、具体的な検討をせずに過重な負担の意味を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、過重な負担に当たると判断した場合、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。その際には前述のとおり、事業者と障害者の双方が、お互いに立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められます。 p8 *事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) *実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) *費用・負担の程度 *事務・事業規模 *財務状況 p9 第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例 (1)正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例  社会保険労務士の業務を行う事業者がその役務を提供するに際して、次のような取扱いをすることは「不当な差別的取扱い」となるおそれがあります。  ここに記載する事例はあくまで例示であり、これらに限られるものではありません。また、客観的にみて正当な理由が存在する場合(第2(1)A参照)は、不当な差別的取扱いに該当しない場合があることにご留意ください。 ○役務の提供を拒否すること ・役務提供の場面における障害者本人や第三者の安全性などについて具体的に考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由として事務所の利用を拒否すること ・身体障害者補助犬の同伴を拒否すること、また、身体障害者補助犬の同伴を理由に役務の提供を拒否すること ○役務の内容を制限すること(場所・時間帯などの制限) ・正当な理由なく、対応を後回しにすること ○役務の提供に際し条件を付すこと(障害のない者には付さない条件を付すこと) ・家族や支援者・介助者の同伴を役務の提供の条件とすること ○役務の提供に当たって、他の者とは異なる取扱いをすること ・障害者本人に対して見下したような言葉遣いや、年齢不相応な幼児言葉で接するなど本人の尊厳を軽視した態度で接すること (2)正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例  正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例は以下のとおりです。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意が必要です。   ○車椅子の利用者が畳敷きの個室の利用を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと(事業者の損害発生の防止の観点) ○手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認すること(障害者本人の損害発生防止の観点) (3)合理的配慮に該当すると考えられる例  事業者は、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、合理的配慮を提供することが求められています。合理的配慮を提供する際には、障害者の性別、年齢、状態等に十分に配慮することが必要です。また、障害者と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。 p10  ここに記載する事例はあくまで例示であり、これらに限られるものではなく、記載した例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意してください。また、事業者に強制する性格のものではなく、ここに記載された事例であっても、事業者の事業規模等によっては過重な負担となる可能性があるため、事業者においては、法、基本方針及び本指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待されます。 ■障害特性に応じた具体的対応例 自分のタイミングで移動したい(視覚障害) 全盲の視覚障害者Aさんは、労働相談のため社会保険労務士事務所を訪問する際、案内看板が見えず単独で行くことができませんでした。しかし、労働相談の予約を取る際に、事務所の入り口付近に職員を配置しておいてほしい旨伝えたところ、快く引き受けていただき、職員の方が事務所の外で待ってくれており、声をかけていただいたので、付き添いがいなくとも一人で通うことができました。 講演会等での配慮(聴覚障害) 聴覚障害者(2級)のBさんは、ある社会保険労務士事務所が開催する講演会に参加することとなりました。Bさんは補聴器を付けていましたが、講演会の事務局に聴覚障害があるため配慮してほしいと事前に伝えたところ、当日は、手話通訳者や要約筆記者に対応してもらえるよう配慮していただきました。 建物の段差が障壁に(肢体不自由) 車椅子を使用している身体障害者(1級)Cさんが、外出中、社会保険労務士事務所の建物に入ろうとすると大きな段差があり立ち往生してしまいました。事務所に協力をお願いしてみると、事務所のスタッフが段差を車椅子で乗り越える手伝いを申し出てくれました。介助のお陰で、無事に建物に入ることができました。 苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害@) 発達障害のDさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。そこで、Dさんの相談を受けている社会保険労務士事務所の職員が、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」などを試してくれ、Dさんは書類作成を失敗する回数が少なくなりました。 p11 相談対応での配慮(発達障害A) 発達障害のEさんは吃音症で、会話の際に単語の一部を何度も繰り返したり、つかえてすぐに返事ができないことがあります。本来は電話をかけることは苦手なのですが、職場の悩みについてどうしても相談することが必要になったので、社会保険労務士事務所に電話をかけました。 その際、相談を受けた社会保険労務士事務所の職員は、Eさんの吃音症に気づき、時間がかかっても話を急がせることなく、不快感を示すこともなく、話す内容を丁寧に聞いてくれました。 そして、Eさんは、いろいろな場面で時に言われることのある「性格に問題がある」「それでは仕事にならない」という誤解や無理解からくる言葉をかけられなかったので、安心して相談をすることができました。 トイレへの誘導(視覚障害) 視覚障害者Fさんは、社会保険関係手続の相談に訪れた社会保険労務士事務所で、トイレの個室への案内を求めたところ、希望に沿って同性の職員が同行し、歩行速度を合わせて個室まで案内してくれました。 運用の柔軟な変更(肢体不自由) Gさんは、社会保険労務士法人が開催するセミナーに申し込もうとした際、ウェブサイトからの参加申込手続を案内されました。その際、肢体不自由により手続が困難である旨伝えたところ、電話での申込受付を快く引き受けてもらえ、希望するセミナーに参加することができました。 (4)合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例  社会保険労務士の業務を行う事業者がその役務を提供するに際して、次のような取扱いをすることは、「合理的配慮の提供義務違反」に該当するおそれがあります。  ここに記載する事例はあくまで例示であり、これらに限られるものではありません。また、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについても前述(第2(2)参照)の観点等を踏まえて判断する必要があることにご留意ください。 ○筆記が困難であるためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の活用を認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること ○電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、事務所の規定上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、電子メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断ること p12 (5)合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例  合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例は以下のとおりです。なお、記載されている内容はあくまで例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、合理的配慮の提供義務に反しない場合であっても、過重な負担に当たると判断した場合等、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、建設的対話を通じて理解を得るよう努めることが望まれます。 ○事業者において、事業の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断ること(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) 第4 事業者における相談体制の整備  障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要です。そのためには、法で定められた国や地方公共団体における相談及び紛争の防止等のための体制整備のみならず、障害者に役務の提供を行う事業者において、直接、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に応じるための体制の整備や事業主や管理職を含む全ての職員の研修・啓発を行うことが重要です。  社会保険労務士の業務を行う事業者においても、より充実した相談体制の整備(対面のほか、電話(電話リレーサービスの対応を含む。)・ファックス・電子メール等多様な相談方法を相談者の障害特性に応じて可能な範囲で用意しておくことや、例えば、女性の相談員を配置することも考えられます。)や相談窓口の分かりやすい周知をはじめ、日頃から、障害に関する理解や人権意識の向上・障害者の権利擁護に向けた職員の研修に積極的に取り組むことが重要です。  なお、実際の相談事例や対応については、相談者のプライバシーに配慮しつつ順次蓄積・公表し、その後の合理的配慮の提供等に活かしていくことが望まれます。 第5 事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備  障害者差別は、障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りなどにより引き起こされることが大きいと考えられることから、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重する共生社会を目指すことの意義を職員が理解することが重要です。  また、こうした理念が真に理解されることが、障害者差別や、障害者が時に感じる大人の障害者に対するこども扱い、障害者に対する命令的、威圧的、強制的な発言などの解消にもつながるものと考えられます。 p13  このため、事業者においては、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、事業所の地域の取組のなかで近隣住民への理解を促していくことが重要です。研修等の実施に当たっては、内閣府が障害者の差別解消に向けた理解促進のためのポータルサイトにおいて提供している、事業者が障害者に対応する際に参考となる対応例等、行政機関が作成し提供する周知・啓発資料等を活用することも考えられます。また、障害者から話を聞く機会を設けることも有効です。  加えて、事業者の内部規則やマニュアル等について、障害者への役務の提供等を制限するような内容が含まれていないかについて点検することや、個別の相談事案等への対応を契機として、必要な制度の改正等を検討するなど、障害を理由とする差別の解消の推進に資するよう、制度等を整備することが重要です。  なお、障害者差別の理解には、障害者虐待防止に関する理解も極めて重要になってくることから、併せて研修を行うことが望まれます。 第6 国の行政機関における相談窓口  法第14条において、「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう人材の育成及び確保のための措置その他の必要な体制の整備を図るものとする」と規定されています。  相談に際しては、福祉事務所などの地域の自治体の様々な相談窓口や各都道府県において組織される障害者差別解消支援地域協議会などもご活用ください。 なお、厚生労働省における社会保険労務士関係の担当窓口は、労働基準局監督課社会保険労務士係です。 第7 主務大臣による行政措置  事業者における障害者差別解消に向けた取組は、本指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待されています。しかし、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとされています。(法第12条) p14 おわりに  法の理念を実現していくには、国民一人ひとりの障害に対する理解と適切な配慮が不可欠です。差別と解される事例についても、お互いの意思疎通不足や理解不足に起因していることも見受けられます。法に定められたから義務として行うという姿勢ではなく、事業者や障害者が歩み寄り理解を深めていくことが、差別解消の第一歩につながると考えられます。  本指針は、そうした事業者の取組に資するよう、今後も、より具体的な事例、特に好事例をお示しできるよう随時見直しを図るなど努めてまいります。  事業者のみなさまの法に関する理解を深めつつ、障害者差別解消に向けた取組を積極的に推進していただくようお願いします。 p15 参考ページ ■ 障害者差別解消法関係の経緯 平成 16年 6月 4日    障害者基本法改正 ※ 施策の基本的理念として差別の禁止を規定 平成 18年12月13日   第61回国連総会において障害者権利条約を採択 平成 19年 9月 28日  日本による障害者権利条約への署名 平成 23年 8月 5日  障害者基本法改正 ※ 障害者権利条約の考え方を踏まえ、合理的配慮の概念を規定 平成 25年 4月26日 障害者差別解消法案閣議決定、国会提出 平成 25年 6月26日 障害者差別解消法 公布・一部施行 平成 26年 1月20日 障害者の権利に関する条約締結 平成 27年 2月24日 障害者差別解消法「基本方針」閣議決定 平成 28年 4月 1日 障害者差別解消法施行 令和 3 年 6 月 4日   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律 公布 令和 5 年 3 月14日   障害者差別解消法「基本方針」の変更の閣議決定 p16 参考ページ ■ 障害者権利条約とは     障害者権利条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めた条約です。  2006(平成18)年12月13日に国連総会において採択され、2008(平成20)年5月3日に発効しました。我が国は2007(平成19)年9月28日に条約に署名し、2014(平成26)年1月20日に批准書を寄託しました。また、同年2月19日に同条約は我が国について効力を発生しました。  この条約の主な内容としては、以下のとおりです。 (1)一般原則 障害者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加及び包容等 (2)一般的義務 合理的配慮の実施を怠ることを含め、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進すること等 (3)障害者の権利実現のための措置 身体の自由、拷問の禁止、表現の自由等の自由権的権利及び教育・労働等の社会権的権利について締約国がとるべき措置等を規定。社会権的権利の実現については漸進的に達成することを許容 (4)条約の実施のための仕組み 条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置。障害者の権利に関する委員会における各締約国からの報告の検討 p17 参考ページ ■ 本指針に関する障害者差別解消法の参照条文    障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号) (目的) 第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2〜6 (略) (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者のための対応指針) 第11条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 (略) (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第12条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 p18 参考ページ ■ 国の「基本方針」に定められた「対応指針」に関する規定 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定) 第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成・変更手続  主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成・変更に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成等の後は、対応指針を公表しなければならない。  対応指針は事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。  また、対応指針は事業者に加え、障害者が相談を行う際や、国や地方公共団体における相談機関等が相談対応を行う際等にも、相談事案に係る所管府省庁の確認のため参照され得るものであることから、対応指針においては、各主務大臣が所掌する分野及び当該分野に対応する相談窓口を分かりやすく示すことが求められる。 (2)対応指針の記載事項  対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。なお、具体例を記載する際には、障害特性や年齢、性別、具体的な場面等を考慮したものとなるよう留意することとする。 ○ 趣旨 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ○ 事業者における相談体制の整備 ○ 事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備 ○ 国の行政機関(主務大臣)における所掌する分野ごとの相談窓口 p19 参考ページ ■ 身体障害者補助犬とは                                           「身体障害者補助犬」は、目や手足や耳に障害のある方の生活をお手伝いする、「盲導犬」・「介助犬」・「聴導犬」のことです。  身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。 補助犬の種類 ○盲導犬  目の見えない人、見えにくい人が街なかを安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角を教えたりします。ハーネス(胴輪)をつけています。 ○介助犬  手や足に障害のある人の日常の生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、着脱衣の介助などを行います。“介助犬”と書かれた表示をつけています。 ○聴導犬  音が聞こえない、聞こえにくい人に、生活の中の必要な音を知らせます。玄関のチャイム音・FAX着信音・赤ちゃんの泣き声などを聞き分けて教えます。“聴導犬”と書かれた表示をつけています。  補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできるさまざまな場所で受け入れるよう義務づけられています。「犬だから」という理由で受け入れを拒否しないでください。 補助犬の同伴を受け入れる義務がある場所 ・ 国や地方公共団体などが管理する公共施設・公共交通機関(電車、バス、タクシーなど) ・ 不特定かつ多数の人が利用する民間施設−商業施設、飲食店、病院、ホテルなど ・ 事務所(職場)−国や地方公共団体などの事務所−従業員40人以上、令和8年7月1日以降は37.5人以上の民間企業 補助犬の同伴を受け入れる努力をする必要がある場所 ・ 事務所(職場)−従業員40人未満、令和8年7月1日以降は37.5人未満の民間企業 ・ 民間住宅 補助犬の受け入れ施設の方へ ●補助犬は、ユーザーの指示に従い待機することができるので、特別な設備は必要ありません。 ●補助犬の同伴を受け入れる際に他のお客様から苦情がある場合は、「身体障害者補助犬法」で受け入れ義務があること、補助犬の行動や健康の管理はユーザーが責任をもって行っていることを説明し、理解を求めてください。 ●補助犬が通路をふさいだり、周りのにおいを嗅ぎ回ったり、その他、何か困った行動をしている場合は、そのことを補助犬ユーザーにはっきり伝えてください。 ●補助犬を同伴していても、補助犬ユーザーへの援助が必要な場合があります。補助犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、まずは声をかけたり、筆談をしたりコミュニケーションをとってください。 p20 参考ページ ■ 障害者に関係するマークの一例 「令和5年版 障害者白書」(内閣府)より 【障害者のための国際シンボルマーク】 所管:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 【盲人のための国際シンボルマーク】 所管:社会福祉法人日本盲人福祉委員会 【身体障害者標識(身体障害者マーク)】 所管:警察庁 【聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)】 所管:警察庁 【ほじょ犬マーク】 所管:厚生労働省 【耳マーク】 所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 【ヒアリングループマーク】 所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 【オストメイト用設備/オストメイト】 所管:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 【ハート・プラスマーク】 所管:特定非営利活動法人ハート・プラスの会 【「白杖SOSシグナル」普及啓発シンボルマーク】 所管:岐阜市 【ヘルプマーク】 所管:東京都 【手話マーク】 所管:一般財団法人全日本ろうあ連盟 【筆談マーク】 所管:一般財団法人全日本ろうあ連盟 p21 ■コミュニケーション支援用絵記号の例 「令和5年版 障害者白書」(内閣府)より 【絵記号の例】 わたし あなた 感謝する 助ける 【絵記号による意思伝達の例】 朝起きたら、顔を洗って歯を磨いてください。 p22 参考ページ ■ 障害特性や特性ごとの配慮事項等 ※障害特性や特性ごとの配慮事項等を知るには、例えば、以下のようなホームページがあります。 【内閣府】障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト  https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/ 【国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター】こころの情報サイト  https://kokoro.ncnp.go.jp/ 【青森県】障害を知るためのガイドブック  https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/kyouseishakai.html 【群馬県障害者社会参加推進協議会】障害のある人へのマナーブック  https://www.normanet.ne.jp/~gunmasin/pdf/R5manner06.pdf 【千葉県】障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン  https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/shougai-kurashi/jouhouhoshou/ 【八王子市】みんなちがってみんないい(障害のある人を理解するためのガイドブック)  https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/005/014/009/p021337.html 【武蔵野市】心のバリアフリーハンドブック  https://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/542/handbook_kaitei.pdf 【厚木市】この街でともに…〜障がいのある人を理解するためのガイドブック〜  https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/soshiki/shogaifukushika/9/12/1889.html 【富山県】障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちづくりのためのアドバイス事例集(障害のある人が「困った」事例から)  https://www.pref.toyama.jp/1209/kurashi/kenkou/shougaisha/jigyousha/kj00011743.html 【大阪府】障がい者が必要とする社会的障壁の除去のための配慮や工夫の事例について  https://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/go-hai/ 【島根県・鳥取県】障がいを知り、共に生きる〜まず、知ることからはじめましょう〜  https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/ippan/aisupport/supporter.html  https://www.pref.tottori.lg.jp/155276.htm 【熊本県】障がいのある人もない人も共に生きる熊本づくりのために(パンフレット)  https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/39/1926.html 【沖縄県】心のバリアフリー2(各種冊子)  https://www.pref.okinawa.lg.jp/kyoiku/shogaifukushi/1007759/1007763.html 【名古屋市】こんなときどうする?‐障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック‐  https://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/22-2-0-0-0-0-0-0-0-0.html 【福岡市】ユニバーサルデザインに配慮した印刷物作成の手引き  https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/kankoubutsu-video/ud.html p23 参考ページ ■ 障害者差別解消支援地域協議会とは  障害者差別解消法では、国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する者(以下「関係機関」)は、社会生活を円滑に営む上での困難を有する障害者に対する支援が効果的かつ円滑に実施されるよう、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」)を組織できるとされています。(法第17条第1項) 1 地域協議会とは  <地域協議会の事務>   障害者差別に関する相談等に係る協議や地域における障害者差別を解消するための取組に関する提案に係る協議を行う   ※個別事案ごとに差別か否かの判断を行うことまでは想定されていない   ・事案の情報共有や構成機関への提言   ・地域における障害者差別解消の推進のための取組に関する協議・提案   ・事案の解決を後押しするための協議  など  <対象となる障害者差別に係る事案>   一般私人による事案は地域協議会における情報共有の対象としないが、環境の整備に関する相談、制度等の運用に関する相談については情報共有の対象とする 2 地域協議会の組織   都道府県、市町村、特別区など地方公共団体が主導して組織する   詳細については、内閣府ホームページに掲載されています。  https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/t-b2.html ■ 関連ホームページ  障害者権利条約(外務省)   https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html  障害者差別解消法(内閣府)  https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html  障害者基本法(内閣府)  https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/wakugumi.html  厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進  https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html