労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和4年(不)第17号
日本郵便(郵政非正規ユニオン)不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和8年3月3日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①会社が組合員A1に対して業務指導や訓練を実施しなかったこと、②会社のB1部長によるA1に対する言動、③組合の令和4年3月1日の団体交渉申入れに対して、会社が同月28日以降の日程を提示したこと、④会社が令和4年3月31日付けでA1を雇止めしたこと、⑤組合と会社との第1回から第3回までの団体交渉における会社の対応、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、⑤のうちA1の業務遂行能力に関する説明要求に対する会社の対応について、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、(ⅰ)誠実団交応諾、(ⅱ)文書交付及び掲示等を命じ、その余の申立てを棄却した。
 
命令主文  1 会社は、組合が組合員A1の業務遂行能力に関する説明を求める団体交渉を申し入れたときは、資料に基づき具体的に説明するなどして、誠実に応じなければならない。

2 会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社のS局の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。

年 月 日
X組合
執行委員長 A2 殿
Y会社      
代表取締役 B2
 貴組合との令和4年3月28日、4月19日及び5月26日の団体交渉における、貴組合からの組合員A1の業務遂行能力に関する説明要求に係る当社の対応は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。

3 会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。

4 その余の申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 会社は、A1に対して、業務指導や訓練を実施したか否か。実施しなかったと認められる場合、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか。(争点1)
(2) B1部長は、A1に対して不利益取扱いとなる言動を行ったか否か。行ったと認められる場合、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか。(争点2)
(3) 令和4年3月1日の団体交渉申入れに対して、会社が3月28日以降の日程を提示したことは、正当な理由のない団体交渉の拒否及び不誠実な団体交渉に当たるか。(争点3)
(4) 令和4年3月31日付けで、会社がA1を雇止めしたことは、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか。(争点4)
(5) 組合と会社との第1回から第3回までの団体交渉において、会社は、不誠実な対応を行ったか。行ったとしたら、不誠実な団体交渉に当たるか。(争点5)

2 争点1について
 会社は、A1に対して、新たな業務指導や訓練を行わず、本件雇止め予告通知書の交付前と同じ業務のみを行わせていたと認められるものの、会社のこの行為は、組合員であることを理由とした不利益取扱いには当たらない。

3 争点2について
 組合の主張するB1部長の各行為は、一部は争点とされた事実があったとの疎明がないものであり、また、その他は会社の行為が組合員であることを理由とした不利益取扱いであるとは認められないものである。

4 争点3について
 会社が、団体交渉の開催に向けた日程調整等にある程度の時間を要し
たとしても理由がないとはいえず、また、団体交渉を形骸化させようとする意図で殊更に第1回団体交渉の日程調整を雇止め期日の直前まで遅らせたとは認められない。
 したがって、3月1日の団体交渉申入れに対して、会社が同月28日以降の日程を提示したことは、正当な理由のない団体交渉拒否及び不誠実な団体交渉に当たるとはいえない。

5 争点4について
 A1の組合加入の公然化後に雇止め期日が到来したものの、会社は、A1が組合の組合員であったことを認識していない時点で決定した方針に基づく雇止めを実行したにとどまるといわざるを得ず、会社のA1に対する雇止めが組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるということはできない。

6 争点5について
(1) 会社が、A1がH局を退職した経緯を隠蔽するような意図で本件関係者らを出席させなかったとは認められず、本件関係者らが出席しないことで団体交渉が形骸化したということもできないから、会社が、第1回から第3回までの団体交渉にA1がH局に在籍していた当時の関係者を出席させなかったことは、不誠実な団体交渉に当たるとはいえない。
 また、A1がH局を自己都合退職し、S局で新規採用された旨の発言を会社が繰り返したことが、不誠実な団体交渉に当たるとは言えない。
 さらに、組合からの要求に対して、会社が、団体交渉事項であるA1の雇止めとの関係性を踏まえて要求された資料を特定して、組合に開示することには困難があったといえるから、これらの資料開示要求に応じなかったことをもって、直ちに不誠実な団体交渉に当たるとはいえない。

(2) A1の業務遂行能力に関する資料について
 組合がA1の業務遂行能力に関する資料を要求し、雇止めを決定した当時、会社がA1の業務遂行の状況をどのように把握し、A1の業務遂行能力を会社はどのように評価していたのかと確認を求めたことには合理的な理由があったと認められる一方で、会社は、資料の存在を認めていながらも、社内文書である、人事情報を含むなどと述べるにとどまっており、A1の業務遂行能力に係る会社の認識や判断の理由等について、資料に基づく具体的な説明をしようとする姿勢に欠けていたというべきであるから、組合の要求に適切に対応したとはいい難い。
 したがって、第1回から第3回までの団体交渉において、A1の業務遂行能力に関する組合の質問に対し、資料に基づく十分な説明をしなかった会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるといえる。

(3) 以上のとおり、争点5のうち、A1の業務遂行能力に関する説明要求に対する会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるが、それ以外の資料に係る組合の開示要求に対する会社の対応は、不誠実な団体交渉には当たらない。
 
掲載文献   

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