労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和6年(不)第17号・第20号・第51号
不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2支部(併せて「組合ら」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社、Y3会社、Y1会社破産管財人Y4 
命令年月日  令和8年4月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   Y1会社が民事再生手続開始を申し立て(以下「本件民事再生申立て」)、Y2会社はY1会社の事業を承継する意向を表明した。その後、この事業譲渡は延期を経て中止され、再生手続は破産手続に移行した。
 本件は、このような状況下で、①Y1会社が(ア)事前協議・同意約款協定(以下「本件協定」)を締結していながら、協議を行わず、本件民事再生申立てを行ったこと、(イ)X2支部役員4名に対し、解雇予告通知を発したこと、(ウ)事業譲渡が延期になった際、X2支部役員2名をアルバイトとして再雇用しなかったこと、②Y2会社及びY3会社(以下「Y2会社ら」)が(エ)X2支部役員4名を採用の対象から外したこと、(オ)団体交渉申入れに応じなかったこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、(エ)について労働組合法第7条第1号及び第3号、(オ)について同条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、Y2会社及びY3会社に対し、文書交付を命じ、Y1会社及びY4に対する申立てを棄却した。
 
命令主文  1 Y1会社に対する申立てを棄却する。
2 Y1会社破産管財人Y4に対する申立てを棄却する。
3 Y2会社は、組合らに対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
年 月 日
X1組合 
 委員長 A1 様
X2支部
 執行委員長 A2 様
Y2会社       
代表取締役 B1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為をいたしません。
(1)貴組合支部役員4名を採用の対象から外したこと(1号及び3号該当)。
(2)令和6年4月1日付けの団体交渉申入れに応じなかったこと(2号該当)。

4 Y3会社は、組合らに対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
年 月 日
X1組合 
 委員長 A1 様
X2支部
 執行委員長 A2 様
Y3会社       
代表取締役 B1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為をいたしません。
(1)貴組合支部役員4名を採用の対象から外したこと(1号及び3号該当)。
(2)令和6年4月1日付けの団体交渉申入れに応じなかったこと(2号該当)。

 
判断の要旨  1 本件の争点は次のとおりである。
(1) Y1会社が、本件協定をX2支部と締結していながら、組合らと協議することなく、民事再生を申し立てたことは、組合らに対する支配介入に当たるか。(争点1)
(2) Y1会社が、X2支部役員4名に対し、解雇予告通知をしたことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合らに対する支配介入に当たるか。(争点2)
(3) Y1会社が、令和6年5月1日以降、組合支部役員2名をアルバイトとして再雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合らに対する支配介入に当たるか。(争点3)
(4) Y2会社らが、X2支部役員4名を採用の対象から外したことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。(争点4)
(5) Y2会社らは、令和6年4月1日付け団体交渉申入れに係る団体交渉に関し、組合支部役員4名の労働組合法上の使用者に当たり、Y2会社らが同団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。(争点5)

2 争点1について
 本件民事再生申立てが、事業の継続が困難になり得る程度の経営上の危機ではないにもかかわらず行われたと認めるに足る疎明はないことを考慮すると、本件民事再生申立てを行ったことが本件協定に抵触する可能性はあるにしても、Y1会社が、組合らと事前に協議を行わなかったことには特段の事情があったとみるのが相当である。なお、Y1会社が、組合らの弱体化を企図して本件民事再生申立てを行ったと認めるに足る疎明はない。
 したがって、Y1会社が、本件協定をX2支部と締結していながら、協議を行うことなく、本件民事再生申立てを行ったことは、組合らに対する支配介入に当たるということができない。

3 争点2について
(1) 民事再生手続において、従業員の承継を条件としない事業譲渡を行うことも通常、行われ得るものである上、Y2会社らがY1会社の従業員の雇用を承継しないとの方針を選択するにあたって、Y1会社が関与したと認めるに足る疎明はない。
 したがって、Y1会社による従業員の解雇とY2会社らによる採用は、民事再生手続において、それぞれの当事者が行った別の行為というべきであって、この解雇予告通知が、実質的には本件支部役員4名のみを選別して解雇したものであるとする組合らの主張は採用できない。
 以上のとおりであるから、Y1会社が、本件支部役員4名に対し、解雇予告通知をしたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるということはできない。
(2) また、本件は民事再生手続における事業停止を埋由とする解雇であるから、X2支部とY1会社の間に本件協定が締結されていることを考慮しても、この解雇予告通知を組合らに対する支配介入に当たるということはできない。

4 争点3について
(1) 本件のアルバイトとしての再雇用は、民事再生手続中の暫定的な事業継続のためのものであることを考慮すれば、 Y1会社がA1委員長及びA3副委員長を再雇用しなかったことを組合員であるが故のものとみることはできない。
(2) また、組合活動を弱体化させたというべき特段の事情を認めるに足る疎明はなく、組合に対する支配介入に当たるということもできない。

5 争点4について
(1) Y1会社からY2会社への事業譲渡に伴い、その事業に従事する者として、Y1会社の従業員を対象に人員募集を行い、希望者の大多数がY3会社における採用の内定者となったのであるから、Y3会社と本件支部役員4名との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性があったと認められる。
 また、Y1会社の従業員の雇用主をY3会社とすることやその雇用条件等を決定しているのはY2会社であるから、Y2会社についても、上記労働契約関係の成立における人選や雇用条件等に関して、雇用先であるY3会社と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたと認められる。
 したがって、Y2会社らは、事業譲渡を前提としたY1会社の従業員からの人員募集に関しては、本件支部役員4名の労働組合法上の使用者の地位にあると判断される。
(2) Y2会社らは選考を開始した時点から、本件支部役員4名が支部役員であることを知り、支部の組合活動を相当に意識していたということができる。
 以上によれば、Y2会社らが本件支部役員4名を採用の対象から外したことは、組合員であるが故の不利益取扱いであると判断される。
(3) 使用者が労働組合の役員に対し、組合員であるが故の不利益取扱いを行えば、労働組合の指導力に影響を及ぼすとともに、他の組合員の活動を萎縮させるなどし、組合活動を弱体化させるのであるから、労働組合の運営に対する支配介入にも当たるというべきである。本件においても、本件支部役員4名が採用の対象から外されたことにより、かかる影響があったというべきである。
 したがって、Y2会社らが本件支部役員4名を採用の対象から外したことは、組合の運営に対する支配介入であると判断される。

6 争点5について
 Y2会社らが、団交申入れに応じていないことには争いがなく、団交申入れの内容がY1会社の従業員からの人員募集に関する義務的団交事項に該当することは明らかであるため、Y2会社らは、団交申入れに正当な理由なく応じなかったと判断される。
 
掲載文献   

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