概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
石川県労委令和6年(不)第1号
金沢自動車不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X組合(組合) |
| 被申立人 |
Y会社(会社) |
| 命令年月日 |
令和8年3月18日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、会社が、①令和5年及び6年の賃上げを議題とする団体交渉に誠実に対応しなかったこと、②賃上げ交渉において他校と同一水準での妥結を拒否したこと、③新型コロナウイルス感染により組合員が休業した場合の賃金保障から残業代を対象外としたこと、④石川県労委の審査への出席に際して、補佐人の賃金保障を認めなかったこと、⑤うつ病で休職した組合員A1が送迎バス運転手として復職することを拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがなされた事案である。
石川県労働委員会は、①について労働組合法第7条第2号、⑤について同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、(ⅰ)誠実団交応諾、(ⅱ)原職復帰、(ⅲ)文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
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| 命令主文 |
1 会社は、組合が申し入れた令和5年賃上げ及び令和6年賃上げを議題とする団体交渉について、誠実にこれに応じなければならない。
2 会社は、組合員A1が正社員の送迎バス運転手として復職することを拒んではならない。
3 会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を組合に交付しなければならない。
記X組合
執行委員長A2 殿
令和 年 月 日
Y会社
代表取締役B
貴組合が申し入れた令和5年賃上げ及び令和6年賃上げを議題とする団体交渉において当社が誠実にこれに応じなかったこと及び組合員A1の正社員送迎バス運転手としての復職を拒否したことは、石川県労働委員会においていずれも不当労働行為であると認定されました。
今後はこのような行為を繰り返さないように留意します。
4 組合のその余の申立てを棄却する。
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| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和5年及び6年賃上げ交渉において、会社は組合に対し、自らの主張を裏付ける資料の開示及び当該資料に基づく具体的説明を行ったかどうか。仮にこれらを行っていない場合、これらを行わないことは労組法第7条第2号の不当労働行為にあたるか。(争点1・2)
(2) 令和4年以前の賃上げ交渉において、組合と会社は金沢地区の同業他校のなかで最初に妥結した他校の賃上げ額で妥結する取扱いをしていたか。仮にそれが肯定される場合、会社が令和5年及び令和6年賃上げ交渉において、その取扱いに反する対応をしたことは労組法第7条第3号の不当労働行為にあたるか(争点3)
(3) 令和5年10月以前、新型コロナ感染に伴い組合員が休業した際、会社は組合員に残業代相当額も支払っていたか。同年11月以降は会社はその支払をしなかったか。これらがいずれも肯定される場合、会社が残業代相当額を支払わなかったことは労組法第7条第2号及び同第3号の不当労働行為にあたるか。(争点4)
(4) 令和4年以前の不当労働行為救済申立事件について、組合の分会役員が補佐人として労働委員会の調査期日等に出席した場合、会社は出勤扱いとしていたか。令和5年以降、会社は出勤扱いにしなかったか。これらがいずれも肯定される場合、会社が出勤扱いしなかったことは労組法第7条第2号及び同第3号の不当労働行為にあたるか。(争点5)
(5) 労働委員会における「あっせん」は労働協約第14条但書第1号の「団体交渉及びその他会社と組合双方参加して行う諸会議」に該当するか。該当する場合、令和6年以降、会社があっせんに出席した組合分会役員に対して賃金を支払わないことは労組法第7条第3号の不当労働行為にあたるか。(争点6)
(6) 賃上げ交渉に関する団交について、概ね週1回から概ね1ヶ月に1回に会社が開催周期を変更したことは労組法第7条第2号の不当労働行為にあたるか。(争点7)
(7) 会社が団交における組合側の参加人数を7人から4人に制限したことは労組法第7条第2号の不当労働行為にあたるか。(争点8)
(8) 会社は組合員A1が正社員の送迎バス運転手として復職することを拒否したか。これが肯定される場合、会社がこれを拒否したことは労組法第7条第1号及び同3号の不当労働行為に当たるか。(争点9)
2 争点1・2について
令和5年及び6年賃上げ交渉において、会社は組合に対し、自らの主張を裏付ける資料の開示及び当該資料に基づく具体的説明を行ったと認めることはできない。また、会社において「合意達成の可能性を模索する義務」を尽くしたと評価することは困難である。
よって、会社の行為は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 争点3について
組合が主張する「他校の妥結金額を確認する団体交渉」により賃上げ額が決定される慣行があった、または、実質的には「集団交渉」と同様の同額妥結が労使慣行になっていたとは認められないことから、組合が要求する「他校同額妥結」に会社が同意しないことをもって、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するものとはいえない。
4 争点4について
本件における残業代相当額の支給は、コロナ禍という特定の感染症流行期間におけるものにすぎず、期間的にみて、長期間にわたり反復・継続して支給されたものと評価するのは困難であり、組合が主張する「休業時の残業相当額の支給」について労使慣行があったとは認められないことから、会社が残業代相当額を支払わなかったことは労組法第7条第2号及び同第3号の不当労働行為に該当するものとはいえない。
5 争点5・6について
不当労働行為の審査期日・あっせん期日が労働協約第14条但書第1号の「会社と組合双方参加して行う諸会議」に含まれると解することはできない。また、不当労働行為救済申立事件について過去に出勤扱いされたのは1回だけであるから、労働委員会の期日出席にあたり出勤扱いすることが労使慣行になっていたと認めることはできない。
よって、会社が不当労働行為の審査において補佐人として出席した分会役員を出勤扱いしなかったことは、労組法第7条第2号及び同第3号の不当労働行為に該当するものとはいえない。
6 争点7について
会社が団交開催を月1回に変更することと併せて、就業時間外の団交も提案していることも踏まえれば、会社の交渉態度が不誠実であると断言することまではできない。
よって、会社が団交開催周期を変更したことは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとまではいえない。
7 争点8について
代替手段の提案など、会社において一定程度誠実な努力・配慮を行ったものと評価でき、会社の交渉態度が不誠実であるとまではいえない。
よって、会社が分会組合員の団交参加人数を7人から4人に制限したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとはいえない。
8 争点9について
(1) 本件復職拒否は労使間の対立が深刻化するなかで行われたものであり、客観的にみて組合員A1の非組合員化を促す効果を持つものであること、本件復職拒否を正当化できるだけの合理的な理由は見あたらず、その業務上の必要性も認められないこと等を考慮すれば、会社の「不当労働行為意思」が認められるというべきであり、本件復職拒否は労組法第7条第1号の「労働者が労働組合の組合員であることの故をもって」行われたものと解するのが相当である。
(2) 会社は、組合員A1が正社員として復職することを拒否する一方で、嘱託であれば復職が可能であるとしており、客観的にみれば、組合員A1の非組合員化を促す効果があるといえる。本件復職拒否により組合員の減少を招くおそれがあることからすれば、労組法第7条第3号の支配介入にあたると解するのが相当である。 |
| 掲載文献 |
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