労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  秋田県労委令和7年(不)第1号
有限会社協伸産業不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和8年3月30日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①団体交渉において「団体交渉は複数人で臨むべき」との持論を展開し、実質的な協議を拒み誠実に対応しなかったこと、②団体交渉の開始にあたり、組合員情報の開示等がなければ団体交渉に応じられないとして、誠実に対応しなかったこと、③組合員の親族に連絡を取り脱退勧奨をしたこと、④代表取締役の攻撃的言動により組合員を孤立させ組合の組織力を弱体化させたことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがなされた事案である。
 秋田県労働委員会は、①及び②について労働組合法第7条第2号、③及び④について同条第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、(ⅰ)誠実団交応諾、(ⅱ)支配介入の禁止、(ⅲ)文書手交及び掲示等を命じた。 
命令主文  1 会社は、令和7年4月2日付けで組合から申入のあった団体交渉に、誠実に応じなければならない。
2 会社は、組合の組合員に対し脱退を働きかけ又は攻撃的言動を行うなどして、組合の組織運営に支配介入してはならない。
3 会社は、本命令書写しの交付を受けた日から7日以内に、日本産業規格A列4番(A4判)の大きさの白紙に下記文書を記載し、これに記名押印の上、組合に対し読み上げて手交しなければならない。
4 会社は、本命令書写しの交付を受けた日から7日以内に、日本産業規格A列3番(A3判)の大きさの白紙に下記文書を記載し、これに記名押印の上、本社事務所の正面玄関の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
5 会社は、前2項の手交及び掲示を履行したときは、速やかに当労働委員会に文書で報告しなければならない。

年 月 日
 X組合
  執行委員長 A1 様
Y会社         
代表取締役 B ㊞
 当社がX組合(以下「組合」という。)に対して行った下記1及び2の行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であり、また、下記3の行為は、同条第3号に該当する不当労働行為であると秋田県労働委員会に認定されました。
1 令和6年6月24日の団体交渉について、組合側の出席者が1名であることを理由に、誠実に対応しなかったこと。
2 令和7年4月9日の団体交渉について、当社代表取締役からの質問事項に対し組合側が回答しないことを理由に、誠実に対応しなかったこと。
3 当社代表取締役が特定の組合員の親族に連絡を取り、組合へ脱退届を提出させたこと、及び別の組合員に対し、組合加入を理由とした攻撃的言動を行ったこと。
 当社は、上記認定を真摯に受け止め、今後、このような行為を繰り返さないよう努めます。
 ここに、関係者の皆様に多大な御迷惑をおかけしたことについて、深くおわび申し上げます。
 
判断の要旨  1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和6年6月24日開催の団体交渉において、会社が組合に対してとった対応は、不誠実といえるか。(争点1)
(2) 令和7年4月9日開催の団体交渉において、会社が組合に対してとった対応は、不誠実といえるか。(争点2)
(3) 会社が、組合員の親族に組合の脱退を強く要請し、結果として脱退届を提出させた事実はあるか。また、組合加入を理由とした攻撃的言動を行った事実はあるか。さらに、上記各行為があったとして、それは組合に対する支配介入に当たるか。(争点3)

2 争点1について
(1) 会社は、組合の出席者が1名では団体交渉として成立しない旨を主張し、それ以上の交渉に応じないまま終了している。
(2) 本件において、代表者が団体交渉に出席している以上、手続上の法的瑕疵は認められない。また、代表者1名のみの出席では、賃上げや定年延長などの義務的団交事項について協議ができない特段の事情も認められない。さらに、会社は、複数名での出席を求める客観的な必要性やそれを裏付ける事情についても十分に説明を尽くしているとは認められず、当事者間において、出席人数に係る特段の合意やルールが確立されていた事実も認められない。
(3) したがって、代表者1名のみの出席であることを理由として団体交渉の成立を否定する会社の主張は、合理性を欠くというほかない。これを理由に実質的な協議に入ることなく交渉を終了させた会社の対応は、不誠実であるといわざるを得ない。

3 争点2について
(1) 団体交渉当日、組合は会社に対し、交渉議題を記載した「要求書」を提出し、当該書面には、全従業員共通の労働条件である賃上げに加え、付帯要求として特定の組合員の当該雇用契約の維持や給与減額措置の撤回といった義務的団交事項が明記されていた。これに対し会社は、団体交渉の冒頭、自らが用意した「質問事項」を配付し、各組合員の氏名や加入年月日を明らかにし、各自の加入申込書を提出しないと団体交渉に応じない旨述べている。
(2) 定期昇給等の賃金改善については、従業員全体の賃金改善を要求しているものであるから、組合員の名簿を提出させる必要はない。また、個別の付帯要求についても、対象となる従業員が組合員である事実を確認できれば足り、組合員全員の名簿まで要するものではない。したがって、組合員の名簿提出が不要な状況下で、組合が名簿を提示しないことは団体交渉を拒否する正当な理由にはならない。
(3) 以上のとおり、団体交渉において、会社が組合に対して取った対応は、合理的な理由を欠いているものであり、不誠実といわざるを得ない。

4 争点3について
(1) 組合員A2の脱退について
 組合加入及び脱退の事実については、A2自らが親族に伝えれば足りるのであって、あえて雇用主を介して親族に連絡する必要性は認めがたい。また、代表取締役があえて従業員の前で公表する必要はない。
 以上のとおり、会社は、支配介入の意思をもって、組合員A2の親族を通じてA2に組合の脱退を余儀なくさせたものと認められ、A2の組合脱退に至るまでの会社の一連の言動は、組合の自主性及び組織力を損なうものであって、労組法第7条第3号の支配介入に該当する。
(2) 組合加入を理由とした攻撃的言動について
 令和6年11月11日、社内ミーティングにおける代表取締役の発言は、組合の正当性を否定し、組合への所属自体を非難した上で、会社への忠誠を求め、これに従わない場合の不利益扱いを示唆するものであるから、組合に対する支配介入に該当する。
 しかしながら、それ以外の組合が主張する各発言については、本件全証拠に照らしてもこれを裏付けるに足りる証拠はなく、令和7年4月2日における代表取締役の発言についても、組合員と非組合員との差別的な取扱い、又は組合活動を牽制する不当な動機が十分に立証されない以上、直ちに支配介入に該当するとまではいえない。
 
掲載文献   

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