概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
愛知県労委令和4年(不)第4号
不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X1組合(組合)、X2地本(地本)、X3支部(支部)(組合と地本と支部を併せて「組合ら」) |
| 被申立人 |
Y会社(会社) |
| 命令年月日 |
令和8年3月9日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、①会社が組合支部の分会長であるA1に対し懲戒処分を行ったこと、②会社が分会の組合員であるA2に対し懲戒処分を行ったこと、③6回の団体交渉における会社の対応が不誠実であったこと、④48回の団交に関する申入れに対する会社の対応が団交拒否であったこと、⑤会社が分会の書記長であるA3に対し降格処分等を行ったことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがなされた事案である。
愛知県労働委員会は、①について労働組合法第7条第1号及び第3号、④の一部について同条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、⑴処分の撤回及びバックペイ、⑵団交応諾、⑶文書交付を命じ、③及び④の一部について申立期間を徒過したものとして却下し、その余の申立てを棄却した。
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| 命令主文 |
1 会社は、申立人X3支部A4分会の分会長であるA1に対する令和3年7月21日付け「譴責に加え減給」の懲戒処分を撤回し、同年8月分給与から減額した金2,370円を同人に支払わなければならない。
2 会社は、申立人X2地本、同組合X3支部及び同支部A4分会から「昇給の5年間に及ぶ未実施改善要求」、「各季一時金要求」、「適正な人員配置要求」、「36協定の締結要求」及び「懲戒規定運用に関する協議要求」に係る団体交渉の申入れがあったときには、誠実に応じなければならない。
3 会社は、組合らに対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。
記
当社が、令和3年7月21日にX3支部A4分会の分会長であるA1に対して「譴責に加え減給」の懲戒処分を行ったことが労働組合法第7条第1号及び第3号に、X2地本、X3支部及び同支部A4分会の令和3年1月21日付けから同年3月17日付けまでの団体交渉に関する申入れ及び同年8月16日付けから令和4年2月16日付けまでの団体交渉に関する申入れのうち、「昇給の5年間に及ぶ未実施改善要求」、「各季一時金要求」、「適正な人員配置要求」、「36協定の締結要求」及び「懲戒規定運用に関する協議要求」に係る団体交渉に関する申入れに応じなかったことが同条第2号に、それぞれ該当する不当労働行為であると愛知県労働委員会によって認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
年 月 日
X1組合
中央執行委員長 A4 様
X2地本
執行委員長 A5 様
X3支部
執行委員長 A6 様
Y会社
代表取締役 B
4 令和2年1月9日、同年2月18日、同年6月2日、同年9月8日、同月23日及び同年12月21日に開催された団体交渉並びに令和3年1月7日付けの団体交渉に関する申入れに係る申立てを却下する。
5 その余の申立ては棄却する。
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| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 会社の次の行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか。
ア A1に対する「譴責に加え減給」の懲戒処分
イ A2に対する「出勤停止4日」の懲戒処分
ウ A3に対するTL(チームリーダー)からL(リーダー)への降格処分及び「段取り禁止命令」の処分
⑵ 会社の次の行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。
ア 令和2年1月9日から同年12月21日までの6回の団交における会社の対応
イ 令和3年1月7日から令和4年2月16日までの48回の団交申入れに対する会社の対応
2 上記1⑴アについて
A1は懲戒処分により給与を減額されており、不利益な取扱いを受けているから、当該懲戒処分について会社の不当労働行為意思が認められるかを検討する。
会社は、あえてA1だけに「質問書」を送付し、弁明の機会を設ける等の手続を経て「譴責に加え減給」の懲戒処分を実施したものである。これは、分会長の立場にあるA1個人を殊更に狙って、行為の結果を一人だけに負わせる形で行われたものであって、不当労働行為意思に基づくものと評価せざるを得ない。
また、会社には、分会らの内部事情を詮索する姿勢もうかがわれることを併せ考えれば、A1に対する懲戒処分は、リーダー格の組合員を標的にし、組合弱体化を企図して行われた支配介入と評価できることから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当する。
3 上記1⑴イ及びウについて
上記処分によりA2及びA3にはそれぞれ減給及び降格という不利益が生じているが、そもそも会社のA2及びA3に対する対応は、それぞれA2が傷害事件を引き起こしたこと及びA3が不良品を発生させたことによるものである。
また、会社は処分に当たり、本人らからも事情聴取を行ったうえ、必要な手続を踏んで処分を行っている。
このことからすれば、会社のA2及びA3に対する処分には正当な理由があり、組合員であることを理由に行われたとも、分会の弱体化を図るために行われたとも評価することはできないため、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当しない。
4 上記1⑵アについて
本件申立ては令和4年3月7日になされているから、令和3年3月6日以前の行為にかかる申立ては却下されることとなる。ただし、6回の団交における会社の対応が継続する行為といえ、その終了した日が令和3年3月7日以降であれば、本件審査の対象となる。
これを本件についてみるに、第1回団交から第6回団交まで連続して協議される議題がなく、これら6回の団交における会社の対応は、継続して行われる一括して一個の行為と評価することはできず、各団交における独立した行為として評価すべきである。したがって、当該6回の団交にかかる申立ては申立期間を徒過したものとして却下する。
5 上記1⑵イについて
令和3年1月7日付けの団交に関する申入れに対する会社の対応は、継続する行為といえず、申立期間を徒過したものとして却下する。
令和3年1月21日付けから同年2月24日付けまでの団交に関する申入れに対する会社の対応は、継続する行為といえることから、同年1月21日付けから令和4年2月16日付けまでの47回の団交に関する申入れに対する会社の対応について判断する。
これらの分会からの団交申入れのうち、「昇給の5年間に及ぶ未実施改善要求」、「各季一時金要求」、「適正な人員配置要求」、「36協定の締結要求」及び「懲戒規定運用に関する協議要求」に対して、義務的団交事項に会社が応じておらず、また、応じないことに正当な理由があったとはいえないものがあることから、これらは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
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| 掲載文献 |
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