概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和6年(不)第42号・第48号
不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X組合(組合) |
| 被申立人 |
Y会社(会社) |
| 命令年月日 |
令和8年3月13日 |
| 命令区分 |
却下・棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、会社が、①社内の別の労働組合に加入する嘱託職員に対して時間給の賃上げを行ったにもかかわらず、組合のA委員長に対しては賃上げを行わなかったこと、②A委員長を除く65歳未満の嘱託職員を全員正社員に登用したにもかかわらず、A委員長は正社員登用しなかったこと、③A委員長をリスクの高い業務に配置転換したこと、④組合との団体交渉において誠実に対応しないことがそれぞれ不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、②及び③については却下し、その他の申立てを棄却した。
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| 命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
① A委員長に対する会社の次の対応は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
ア 会社が、令和6年2月1日以降、社内別組合の組合員の時給をA委員長の時給より100円高くしたこと。
イ 会社が、令和6年3月、A委員長に正社員登用試験を受けさせなかったこと
② 被申立人が、令和6年3月6日、A委員長に対し、リムジンバス等の運行業務から配置転換を行い、企業の従業員送迎業務に従事させたことは、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)
③ 令和6年8月26日、同年9月10日及び同年10月17日の団体交渉(以下「本件団交」)における会社の対応は、不誠実団交に当たるか。(争点3)
2 争点1について
(1) 会社が、令和6年2月1日以降、社内別組合の組合員の時給をA委員長の時給より100円高くしたことについて
ア A委員長は令和5年7月9日から令和6年4月30日までC組合に加入しているが、会社が、社内別組合の組合員の時給を引き上げた同年2月1日当時において、A委員長が所属していた労働組合は、組合ではなくC組合であることが認められる。
そうすると、会社が令和6年2月1日に社内別組合の組合員の時給をA委員長の時給より100円高くしたことについて、不当労働行為の救済申立てをすることができる労働組合はC組合であって、組合は申立人適格を有するとはいえない。
イ また、雇用契約更新に際して、A委員長に重量物運搬を伴う業務への従事を制限させることとした会社の判断は合理性が認められ、会社がA委員長の時給を他の嘱託乗務員に比べて低額としたことには正当な理由がある。
したがって、会社が、令和6年2月1日以降、社内別組合の組合員の時給をA委員長の時給より100円高くしたことは、組合員であるが故になされたものとはいえず、また、組合に対する支配介入に当たるともいえない。
(2) 会社が、令和6年3月、A委員長に正社員登用試験を受けさせなかったことについて
組合は、会社が、令和6年3月、A委員長に正社員登用試験を受けさせなかったことを不当労働行為として主張している。そして、同月27日に会社が本件登用試験を実施したことが認められる。
会社が本件登用試験を受けさせなかった当時においてA委員長が所属していた労働組合は組合ではなくC組合であるから、前記(1)アの判断と同様、A委員長に正社員登用試験を受けさせなかったことについて、組合が申立人適格を有するとはいえない。
したがって、この点に係る組合の申立ては、却下する。
3 争点2について
会社が、令和6年3月6日、A委員長に対し、リムジンバス運行業務から従業員輸送業務への配置転換をした当時において、A委員長が所属していた労働組合は組合ではなくC組合であるから、前記2(1)アの判断と同様、組合は申立人適格を有するとはいえない。
したがって、この点に係る組合の申立ては、却下する。
4 争点3について
(1) まず、本件団交の議題についてみると、A委員長の「社内別組合との賃金格差」及び「正社員登用」に関する事項であることが認められる。そして、上記2つの要求事項が、組合員の労働条件に関する事項であり、会社に処分可能なものであるから、義務的団交事項に当たるといえる。
(2) 次に、本件団交における会社の対応が不誠実団交に当たるかについてみる。
ア 6.8.26団交において、会社は、賃金格差及び正社員登用についての組合の質問に、主治医の診断書に産業医が加筆した副申等を根拠として具体的に回答し、改めて社内で検討することを約束しているのであるから、組合が挙げる会社の対応が不誠実であったとはいえない。
イ 6.9.10団交において、会社は、賃金格差に係る組合の質問に対し、他の社員との間で賃金の差が生じる理由を、具体的な理由を挙げつつ回答しており、会社の立場としてできる限りの説明を一貫して行っているということができるから、組合が挙げる会社の対応が不誠実であったとはいえない。
また、会社には、組合が提出を求めた書面を全て提出する義務はなく、6.9.10団交に先立って、会社が何らかの書面の提出を約束していたなど、会社に書面の提出を義務付けるべき特段の事情もないのであるから、組合が挙げる会社の対応が不誠実であったとはいえない。
ウ 6.10.17団交において、A委員長の時給を引き上げない理由及び産業医との面談の求めに応じない理由について、産業医の副申という具体的根拠を示して説明している。また、会社は、正社員登用の手続についての組合の質問に回答し、回答できない事項については回答できない理由を述べており、会社の立場としてできる限りの説明を行っているとみることができる。
以上のことからすると、会社に誠実に交渉を進める意思がなかったとはいえないから、組合が挙げる点について、会社の対応が不誠実であったとはいえない。
(3) 以上のとおりであるから、本件団交における会社の対応は、不誠実団交に当たるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
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| 掲載文献 |
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