労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第95号
東邦エンタプライズ不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社・Y2会社・Y3会社 
命令年月日  令和7年10月7日 
命令区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①Y1会社に雇用されていた組合員Aに係る就労、未払一時金の支払、解雇予告の撤回等を要求事項とする平成29年6月20日付け、7月3日付け、10月6日付け及び11月24日付け団体交渉申入れに対するY1会社及びY2会社の対応、②同じく平成29年6月20日付け、7月3日付け、8月4日付け及び8月21日付け団体交渉申入れに対するY3会社の対応、③Y1会社、Y2会社及びY3会社が、aAに平成23年冬季分から29年夏季分までの一時金をそれぞれの支給時期に支払わなかったこと、bAを解雇したこと、cAに分割での支払を確約した平成23年冬季分から27年冬季分までの一時金について平成30年8月31日支払分以降支払わなくなったこと、④Y1会社が同社の清算結了登記を行ったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、Y1会社に対する申立てについて、労働委員会規則第33条第1項第6号の「法令上又は事実上実現することが不可能であることが明らかなとき」に該当するとして却下し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 Y1会社に対する申立てを却下する。

2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 Y1会社に対する申立てについて

①平成29年6月20日付け、7月3日付け、10月6日付け及び11月24日付けで組合が申し入れた団体交渉に対するY1会社の対応が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か(争点1)
②Y1会社が組合員Aに平成23年冬季分から29年夏季分までの一時金をそれぞれの支給時期に支払わなかったことが組合員であるが故の不利益取扱い及び支配介入に当たるか否か(争点2)
③Y1会社が平成29年7月31日付けでAを解雇したことが組合員であるが故の不利益取扱い及び支配介入に当たるか否か(争点3)
④Y1会社がAに分割での支払を確約した平成23年冬季分から27年冬季分までの一時金について平成30年8月31日支払分以降支払わなくなったことが組合員であるが故の不利益取扱い及び支配介入に当たるか否か(争点4)
⑤平成30年12月、Y1会社が同社の清算結了登記を行ったことが組合に対する支配介入に当たるか否か(争点5)

(1)Y1会社は、平成29年6月20日に組合から団体交渉を7月12日に開催することを求められたにもかかわらず、それに対する回答をしないまま、組合員Aに対し、6月30日、解雇予告通知書を送付し、その後の組合からの団体交渉開催の申入れに対しても一切応じておらず、これらのY1会社による団体交渉拒否は正当な理由のないものといわざるを得ない。

(2)しかしながら、

ア Y1会社においては、平成22年冬季分から一時金の遅配が生じ、23年頃には他の企業からY1会社への業務委託契約の打切りや縮小が続き、同じ頃から消費税等の滞納が始まり、28年10月から12月にかけては東京国税局に売掛金を差し押さえられ、28年12月時点のA以外のY1会社の従業員(アルバイト、契約社員)は全員、同月中にY1会社からあっせんされた別会社に就職し、29年7月末には唯一の正社員であったAが解雇され、Y1会社に従業員はいなくなり、Y1会社は、30年8月には、Aに支払を確約した23年冬季分から27年冬季分までの未払一時金を支払わなくなった。

イ Y1会社は、本件申立て後の平成30年10月10日、株主総会の決議により解散し、12月25日に清算を結了、12月27日にその旨の登記を行い、Y1会社の登記記録は閉鎖されている。

ウ 本件申立時にY1会社の代表取締役であったB1は、平成30年10月16日付けで清算人に就任し、令和3年5月13日、当委員会に証人として出頭したが、その後、当委員会が調査期日等への出頭を求めて複数回にわたり電話や郵便で連絡を試みても、電話については呼出音が鳴るだけでつながらなかったり、郵便物については、受取人が不在のため取扱郵便局に保管されたが保管期間を経過したとか、宛て所に尋ね当たらないとしてそれぞれ当委員会に返送されるなど、当委員会からの連絡に一切応答していない。

エ 上記ウのとおり、令和3年5月13日を最後に、B1は音信不通となっている。そして、Y1会社あるいはその代表者であったB1が、その後もY1会社の事業を継続しているとか、Y1会社と同一の事業を別法人によって実質的に承継しているなどの、いわゆる偽装解散をうかがわせる事情は認められない。

(3)これら各事情に照らせば、令和7年6月6日の本件の結審時において、Y1会社は、本件申立てにおいて救済命令が発せられたとしても、法的にも実態的にも、それを実現することは不可能な状況にあるといわざるを得ない。そうすると、組合のY1会社に対する申立てはいずれも、「法令上又は事実上実現することが不可能であることが明らかなとき」(労働委員会規則第33条第1項第6号)に該当し、却下せざるを得ない。

2 Y2会社に対する申立てについて

⑥Y2会社は組合員Aの労働組合法上の使用者に当たるか否か、当たるとすれば、労働組合法上の使用者として上記1の①から④までにおいてそれぞれ不当労働行為を行ったか(争点6)

(1)Y2会社は、Y1会社の従業員である組合員Aとの間で労働契約を締結していない。しかし、労働契約関係になくとも、Y2会社が、Y1会社に雇用される組合員の基本的な労働条件等について、Y1会社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合は、その限りで、Aとの関係で労働組合法上の使用者に当たることがあり得るので、以下検討する。

ア Y2会社は、Y1会社の資本金が3,000万円(発行済株式総数6万株)であるのに対し、Y1会社の株式を、平成22年6月15日時点で、少なくとも100万円分(2,000株相当)保有している。また、Y2会社とY1会社との間では、Y2会社の代表取締役であるB1がY1会社の代表取締役を務め、Y2会社の取締役であるB2及びY2会社の監査役であるB4がY1会社の取締役を務め、B1の親族複数人がY2会社の役員を務め、B1の次男がY2会社に再就職しているなど、人的なつながりがある。
 また、Y2会社とY1会社とは、同じビル管理・清掃を業とし、両社には、Y2会社がY1会社からじゅうたんのクリーニング業務を受注したり、Y2会社の事業である中国茶の輸入販売を行う際にY1会社に協力を依頼するなど、取引関係がある。

イ しかし、Y2会社が上記の株式保有、人的なつながり、取引関係などを通じてY1会社の事業運営を支配しているとか、Y2会社が、Aへの一時金の継続的な支払や、同人の雇用の確保など、Y1会社に雇用される組合員の基本的な労働条件等について、Y1会社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定しているとまで認めるに足りる疎明はない。したがって、上記アの事実が認められるからといって、Y2会社がAとの関係で労働組合法上の使用者に当たると認めることは困難である。

(2)以上のとおり、Y2会社は、Aとの関係で労働組合法上の使用者に当たるとはいえないから、その余の点につき判断するまでもなく、Y2会社がAの使用者として、組合が主張する不当労働行為を行ったとはいえない。

3 Y3会社に対する申立てについて

⑦Y3会社は組合員Aの労働組合法上の使用者に当たるか否か、当たるとすれば、平成29年6月20日付け、7月3日付け、8月4日付け及び8月21日付けで組合が申し入れた団体交渉に対するY3会社の対応が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、また、労働組合法上の使用者として上記1の②から④までにおいてそれぞれ不当労働行為を行ったか否か(争点7)

(1)Y3会社は、Y1会社の従業員である組合員Aとの間で労働契約を締結していない。しかし、労働契約関係になくとも、Y3会社が、Y1会社に雇用される組合員の基本的な労働条件等について、Y1会社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合は、その限りで、Aとの関係で労働組合法上の使用者に当たることがあり得るので、以下検討する。

(2)資金のつながり等

ア 平成26年4月1日、Y1会社とY3会社との間で「支部契約」が締結され、本部であるY3会社は、加盟店全ての洗浄クロス1枚につき6円を、支部であるY1会社の指定口座に振込にて支払うこととされた。

イ また、平成24年6月18日に行われた団体交渉、6月29日付けでY1会社が組合に交付した書面、及び28年11月25日から29年1月11日までに行われた団体交渉において、Y1会社の代表取締役であるB1が、Y3会社の事業利益が組合員へ支払う一時金の原資となっていると受け取れる発言を行っている。

ウ しかし、仮に、Y1会社の経営が上記支部契約に基づくY3会社からの支払に一定程度依存していたとしても、それは、Y3会社がY1会社の主要な取引先であったということを示しているにすぎず、Y3会社が、Aへの一時金の継続的な支払や、同人の雇用の確保など、Y1会社に雇用される組合員の基本的な労働条件等について、Y1会社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定していると認めるに足りる事実の疎明がなされているとまではいえない。したがって、上記ア及びイの事実が認められるからといって、Y3会社がAとの関係で労働組合法上の使用者に当たると認めることは困難である。

(3)団体交渉におけるY3会社社長B3の発言等

 なお、組合は、「平成29年1月27日及び6月9日に行われた団体交渉において、Y3会社社長B3が、Y3会社がAの労働組合法上の使用者であることを自認し、積極的に発言した」と主張するので、以下検討する。
 確かに、29年1月27日にY3会社本社で行われた団体交渉において、組合が、「Aへの一時金の不払はY3会社の収益に左右されることから、直接の雇用関係がなくても、Aの労働条件はY3会社に支配されている」などと述べたのに対し、B3が、「分かった。B3頑張れ、稼げ、ってことか。うちも明日潰れるかもしれないが、相談受けて知らないとは言えない。私なりに考えてみる。」と述べている。
 しかし、①B3の上記発言は、支部契約によりY3会社のモップレンタル事業に係る収益の一部がY1会社の経営に影響を与えることから、Y3会社として、当該事業の収益拡大に努力する旨を述べた趣旨とも解されること、②B3が同じ団体交渉において、上記発言に先立ち、「Y1会社とY3会社とは全く別の会社であり、Y3会社はAに関する問題と無関係である」旨を述べていること、③団体交渉においてB3が発言したのは、おおむね組合から名指しで回答を求められたときであること、④団体交渉がY3会社の本社で開催されたのは、Y1会社が、それまで組合と団体交渉を行っていた新橋にある事務所を引き払う直前であったこと、そして、他の企業と共同で使用する渋谷の事務所に移転したことから、代わりの団体交渉場所が必要であったと考えられることなどに鑑みると、B3は、団体交渉において、Y3会社がAの労働組合法上の使用者に当たることを自認して積極的に発言したというよりも、Y1会社の代表取締役であるB1から相談を受けたために、団体交渉の開催場所としてY3会社の本社を提供し、自らも団体交渉に出席したけれども、Y1会社とY3会社とは全く別の会社であり、Y1会社の代表取締役であるB1から相談を受けて協力しているにすぎないという立場を堅持していたとみるのが相当である。
 よって、団体交渉におけるB3の発言等を併せ考えても、Y3会社がAの労働組合法上の使用者であると認めることは困難である。 

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