概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和6年(不)第39号
不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X組合(組合) |
| 被申立人 |
Y会社(会社) |
| 命令年月日 |
令和8年2月13日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、①団体交渉におけるA1分会長の発言に対する工場長の対応、②B1課長によるA1に対する発言、③会社が、A1を出荷検査業務に専従させたこと、④会社が、A1に対して令和6年度の昇給を行わず、夏季一時金においても減額支給したこと、⑤面談における工場長及びB1課長によるA1に対する発言が、それぞれ不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、②及び⑤について労働組合法第7条第3号、④について同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、(ⅰ)A1に対する昇給及び夏季一時金に係る既支払額との差額の支払並びに(ⅱ)文書交付を命じ、その他の申立てを棄却した。
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| 命令主文 |
1 会社は、組合員A1に対して、令和6年度の昇給について、マイナス査定としなかったものとして取り扱い、この場合の昇給額に基づく賃金支給額と既に支給した賃金額との差額を支払わなければならない。
2 会社は、組合員A1に対して、令和6年度夏季一時金について、マイナス査定としなかったものとして取り扱い、既支払額との差額を支払わなければならない。
3 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
記
年 月 日
X組合
中央執行委員会委員長A2 様
Y会社
代表取締役 B2
当社が行った下記の行為は大阪府労働委員会において労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)令和6年3月29日及び同年4月4日に、貴組合員A1氏に対し、貴組合を批判する発言を行ったこと(3号該当)。
(2)当社が、貴組合員A1氏に対して、労働組合の正当な行為をしたことを理由として、令和6年度昇給査定をマイナス査定とし、その査定結果に基づき、同氏の給与を昇給しなかったこと(1号及び3号該当)。
(3)当社が、貴組合員A1氏に対して、労働組合の正当な行為をしたことを理由として、令和6年度夏季一時金査定をマイナス査定とし、その査定結果に基づく金額で支給したこと(1号及び3号該当)。
(4)当社が、貴組合員A1氏に対して、労働組合の正当な行為をしたことを理由として、令和6年度昇給査定及び同年度夏季一時金査定をマイナス査定したことを、面談の場で述べたこと(3号該当)。
4 組合のその他の申立てを棄却する。
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| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和6年3月28日に開催された団体交渉(以下「本件団交」)における、工場長の、A1に対する倉庫の件に係る発言は、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
(2) 令和6年3月29日及び同年4月4日の面談におけるB1課長のA1に対する発言は、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)
(3) 会社による、A1に対する、①令和6年4月に出荷検査業務に専従させたこと、②令和6年度の昇給を行わなかったこと、③マイナスの査定に基づく令和6年度夏季一時金を支払ったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。(争点3)
(4) 令和6年4月25日及び同年7月10日の面談におけるB1課長及び工場長のA1に対する発言は、組合に対する支配介入に当たるか。(争点4)
2 争点1について
本件団交において、工場長は、組合の主張する一連の発言を行ったことが認められるところ、団交の席上とはいえ、組合の発言を一時的に制止したとしても、それが組合の組織、運営に影響を及ぼしたり、その可能性を有するとはいえない。また、工場長の発言は、相互に主張し反論することの可能な団交の場で行われたものであるし、実際、組合は本件団交で、工場長らに対し要求や質問を行っている
したがって、工場長が上記一連の発言を行ったことをもって、組合としての活動や発言を制限する可能性があったとは認められない。
以上より、本件団交における工場長の上記発言は、支配介入に当たるとはいえない。
3 争点2について
(1) B1課長は、形式的にも実質的にも会社の利益代表者である工場長に近接する職制上の地位にあるといえる。
(2) 6.3.29面談及び6.4.4面談におけるB1課長の発言は、同人が参加していない本件団交における使用者の発言と一致もしくは極めて類似しており、その言葉の端々から使用者との意思疎通に基づく強い結びつきが認められる。したがって、B1課長は、本件団交でのやり取りを工場長等から聴取し、組合及びA1に関する認識を使用者と共有したうえ、A1に対して、団交での使用者の発言内容をなぞり、これをA1に伝えたとみるのが相当である。以上のことから、6.3.29面談及び6.4.4面談におけるB1課長の発言は、会社使用者の意を体して行われた行為であるといえる。
(3) そして、B1課長の発言は、組合員及び組合に対し威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼしたといえる。
(4) したがって、6.3.29面談及び6.4.4面談におけるB1課長の発言は、会社による支配介入といえるから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
4 争点3について
(1) 令和6年4月に、A1を出荷検査業務に専従させたことについて
組合は、出荷検査業務は賃金の上がる見通しがない業務であるから、A1を同業務へ配置換えすることは不利益な取扱いであると主張するが、会社における出荷検査業務に関し賃金の上がる見通しがないと認めるに足りる主張及び事実の疎明はないから、組合の主張は認められない。また、支配介入についても該当しない。
(2) 会社がA1の令和6年度の昇給を行わなかったこと、及びA1に対し、マイナスの査定に基づく令和6年度夏季一時金を支払ったことについて
会社は、組合の活動やA1分会長の組合員としての活動を捉えて、これをマイナス査定していることが認められる。したがって、会社がA1の令和6年度の昇給を行わなかったこと及びA1に対し、マイナスの査定に基づく令和6年度夏季一時金を支払ったことは、A1が労働組合の正当な行為をしたことの故をもって行った不利益な取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
また、組合員の組合活動を萎縮させ、他の従業員の組合加入を抑止するなどの効果をもたらすといえるので、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
5 争点4について
6.4.25面談における工場長とB1課長の発言は、組合の活動やA1分会長の組合員としての活動を捉えて、これを理由にマイナス査定する旨の発言である。また、6.7.10会社面談における工場長及びB1課長の発言についても、工場長及びB1課長が会社として行う人事面談において行われたことに鑑みると、これらの発言は、A1が行った正当な組合活動によって、一時金に関する査定をマイナスにすることを正式に告げるものとみることができるから、A1に与える影響は大きく、同人の組合活動に萎縮効果を与えるものといえる。
よって、いずれの発言も、組合活動に対して威嚇的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすものであり、労働組合法第7条第3号の支配介入に該当する。
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| 掲載文献 |
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