労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委令和3年(不)第88号
国(国土交通省)不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  国(国土交通省) 
命令年月日  令和7年10月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、国(国土交通省(以下「国交省」))が、(申立外C会社を整理解雇された組合員の解雇問題の解決に向けて同会社の経営陣と協議の上で回答すること及び同社に対して指揮を執ることを要求事項として)組合が申し入れた団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 国(国交省)は、本件において、労働組合法上の使用者に当たるか否か(争点1)。

(1)労働組合法第7条にいう「使用者」とは、通常、労働契約上の雇用主をいうが、雇用主以外の事業主であっても、当該労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、当該事業主は同条の「使用者」に当たる。
 本件では、本件整理解雇〔平成22年12月31日、定期航空輸送事業等を営むC会社の更生管財人が行った、当時、C会社の機長であった組合員Aらを含む運航乗務員81名及び客室乗務員84名の整理解雇〕時点での組合員の雇用主がC会社であり、国(国交省)が組合員の雇用主ではないことに争いはなく、組合は、「C会社の更生手続において、国(国交省)が指導監督権限を行使して、C会社に更生手続を採用する方針を決定し、その実現に向けて具体的な関与を行ったことから、本件整理解雇に国(国交省)は強く関与している」として、令和3年9月15日付け及び10月26日付けで組合が申し入れた団体交渉申入れ(以下「本件団体交渉申入れ」)の要求事項について、国(国交省)に部分的使用者性が認められる旨を主張している。
 これに対し、国(国交省)は、「C会社における雇用管理及び職場環境に関する決定について、国(国交省)は現実的かつ具体的な支配力を有していない」と主張し、「C会社の更生計画案について、国(国交省)は承認ないし決定をしておらず、またその権限も有していない、国交省は、会社更生手続における更生計画案について、行政庁として裁判所から意見を聴取されるものと規定されているにとどまる(会社更生法第187条及び同法第199条第2項第6号)」旨を主張している。

(2)C会社の会社更生法に基づく更生手続における国(国交省)の関与をみると、①手続の開始前から、平成21年4月22日、国交省はC会社に対して経営改善計画の策定を指示し、更生手続の開始申立てまでの間に、関係各大臣の間で、C会社の再建のための方策が確認され、銀行によるつなぎ融資枠についての申合せが行われたこと、②裁判所への更生手続の開始申立て当日(平成22年1月19日)に、国土交通大臣が、「C会社が再生を果たすまでの間、必要な支援を行っていく」との声明を発表していたことが認められ、国(国交省)は、C会社の再生の手法として会社更生法による法的整理が選択されたことや、C会社が航空機の運航を継続するためのつなぎ資金の確保に関与していたことがうかがわれる。
 また、更生手続開始後も、国土交通大臣はコメントを複数回発表しており、C会社による裁判所への更生計画案の提出に際して、「更生計画案の内容について評価できる」旨の見解や、「C会社が人員削減を含む更生計画案を着実に実施することが重要である」との認識を示しつつ、「C会社の確実な再生が図られるよう国交省としてもしっかりと指導監督していく」旨をコメントしている。また、平成22年11月30日に裁判所から更生計画が認可されると、国交省は、C会社に対し、「人員削減の実行を含め更生計画に定められた事項の着実な達成を求める」旨をコメントしている。
 このような経過からすると、国(国交省)が、人員削減を含む更生計画の策定や遂行の過程に一定の影響を及ぼしたであろうことは否定できない。

(3)しかし、国(国交省)が、更生計画の策定や遂行の過程に一定の影響を及ぼしていたとしても、そのことをもって、本件団体交渉申入れの当時、C会社の労働者の雇用や人事管理について支配、決定することができる地位にあったことが疎明されたとはいえない。本件団体交渉申入れの要求事項に関して、国(国交省)が、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとみることは困難であり、そのほかに、国(国交省)が上記の地位にあったと認めるに足りる疎明はない。
 また、組合は、「ILO(国際労働機関)勧告に再雇用に係る一定の優先権について定められており、同勧告に基づく指導を国交省が行うべき」ことを主張するが、国交省が、航空行政を所管する行政庁として安全運航確保を目的とする認可権限や指導監督権限を行使する地位を超えて、C会社の労働者の雇用や人事管理について具体的な権限があるとはいえないから、上記の判断を左右しない。
 したがって、その余の主張を判断するまでもなく、国(国交省)は、本件において、労働組合法上の使用者に当たらない。

2 争点1で国(国土交通省)が労働組合法上の使用者に当たる場合、国(国土交通省)が、本件団体交渉申入れに応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か(争点2)

 上記1のとおり、国(国交省)が労働組合法上の使用者に当たらない以上、争点2については判断を要しない。 

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約327KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。