労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  高知県労委令和6年(不)第1号・令和7年(不)第2号
高知商工会議所不当労働行為審査事件
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y法人(法人) 
命令年月日  令和7年12月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①法人の部長Bが組合員Aに対して行ったインターネット閲覧に関する業務命令、②法人による、Aに対する当該命令違反等を理由とした出勤停止10日間の懲戒処分、③組合員Aと組合の連名書面の受取拒否や受取拒絶、④組合からの団体交渉申入れ等に係る書面の受取拒否や受取拒絶、⑤団体交渉を経ずに行った賃金改定の通告及び年末一時金の支給、⑥Aに対する懲戒委員会の開催等に係る書面通知、⑦先行事件に係る労働委員会での証人尋問当日における懲戒委員会の開催、⑧当該先行事件の審査手続における組合員と法人職員の補佐人参加に関する(休暇等に係る)異なる取扱い、⑨Aに対する再雇用拒否及び雇止めが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 高知県労働委員会は、申立てを棄却した。

〔注〕上記①は〔判断の要旨〕における争点1(1)、②は争点1(1)及び3(2)、③は争点1(2)及び3(1)、④は争点1(2)、2及び3(1)、⑤は争点1(4)及び3(3)、⑥は争点1(3)、⑦は争点1(3)及び争点4(1)、⑧は争点4(2)、⑨は争点1(5)、3(4)及び4(3)にそれぞれ対応 
命令主文  本件申立てを、いずれも棄却する。 
判断の要旨  1 次の(1)から(5)に掲げる法人の行為が、労働組合の組合員であることや正当な行為をしたことなどの故をもって行われた不利益な取扱い(法第7条第1号)に該当するか(争点1)

(1)本件業務命令〔令和5年11月29日、法人の部長Bが組合員Aに対して行ったインターネット閲覧に関する業務命令(同年9月21日の業務命令も含む)〕及び本件懲戒処分〔法人が、令和6年3月5日に、業務命令違反等を理由に、Aに対して行った出勤停止10日間の懲戒処分〕について(争点1(1))

ア 本件懲戒処分が労働者に不利益をもたらすものであることは明らかであるため、本件処分が組合員であることの故をもってなされたものといえるかが、もっぱら問題となる。懲戒処分の有効性は判断の対象ではないが、法人の行った本件業務命令及び本件懲戒処分が、就業規則の基準に該当しなかったり、他の職員らに対する処分の有無や内容と比較して均衡を欠く等、不合理なものである場合には、その事実から、不当労働行為意思があったことを推認できる。そのため、本件業務命令及び本件懲戒処分の合理性について検討する。

イ 本件懲戒処分は、組合員Aが①業務命令に違反したこと及び②業務中に業務と関係のないインターネット閲覧を行ったことを理由として行われた。
 使用者は、業務の遂行全般について労働者に対して必要な指示・命令を発する業務命令権を有し、この業務命令が就業規則の合理的な規定に基づく相当な命令である限り、労働者はその命令に従う義務を有する。

ウ 本件業務命令は組合員Aが業務中に、業務と関係のないと思われるインターネット閲覧をしていることが発覚したため、就業規程の関係規定に違反する可能性があるとして発せられたものと認められ、その内容は、①閲覧記録を業務か業務外かに分けること、②30分単位で記載した日報を提出すること等であるが、不合理性や不相当性は認められない。

エ 業務命令も基本的には義務的団体交渉事項となるが、当該事項として団体交渉中であるからといって、業務命令に従う義務がなくなるものではない。
 そのため、①業務中に業務と関係のないインターネット閲覧を行ったこと、②団体交渉中であることを理由に組合員Aが本件業務命令に従わなかったこと、③業務上の面談を拒否したこと及び④役付者にもかかわらず長時間業務を怠ったことは、就業規程の関係規定から懲戒処分事由になり得るのであって、本件懲戒処分は不合理であるとは認められず、不当労働行為意思があったことを裏付ける事情があるとはいえない。
 また、その他に組合員であること等の故をもって行われたと判断し得るような事実は認められない。

(2)「組合員Aと組合との連名の計6通の法人に対する書面及び組合からの計2通の法人に対する書面の受取拒否や受取拒絶」について(争点1(2))

 組合からの法人に対する書面の受取拒否等については、再三にわたって法人が代理人弁護士に送付するよう組合に求めたにもかかわらず、組合が法人に直接送付したため受取拒否等をするようになり、それでも組合がかたくなに法人に直接送付し続けたという事情が認められる。また、組合員Aからの法人に対する書面の受取拒否等についても、上記のような経緯があるなかで、書面が組合及び組合員の連名となっており、そもそも封筒の表の差出人部分も同様に連名であったために、組合からの書面と同様に未開封での受取拒否等がされた事情が認められる。法人の求めに応じて代理人弁護士を通じれば書面の受取拒否等はされないのであるから、不利益取扱いには当たらない。

(3)「(懲戒委員会の開催等に係る)書面の手交及び証人尋問当日に懲戒委員会を開催した行為」について(争点1(3))

ア 書面は、懲戒委員会の開催及び組合員に弁明の機会を与える旨を通知するものである。組合は、「法人が懲戒委員会への出席について具体的な説明を行わずに組合員に書面を手交した」と主張するが、就業規程に懲戒委員会開催を通知する際に併せて労働者に対する口頭説明を行う旨は規定されておらず、法人と組合との間にそのような労働協約が締結されたという事情も見受けられない。また、懲戒委員会の開催理由については、手交された書面を読めば理解できる。
 これらから、書面手交時に重ねて口頭での説明をしなかったとしても不利益は生じない。

イ 懲戒委員会の開催日については、一度は日程が決まっていたものの、委員の体調不良等により2名が欠席となったため延期された。再調整の結果、懲戒委員会の開催日が証人尋問と同日となったことについて、組合は、「組合員の証人尋問出頭を意図して決定した」と主張するが、懲戒委員会の開催日の決定には合理的理由が認められる。また、証人尋問の実施時間と懲戒委員会の開催時間は重複しておらず、組合員Aの証人尋問への参加が妨げられた等の事情も認められない。よって、不利益取扱いには当たらない。

(4)「団体交渉を経ずに行った賃金改定の通告及び年末一時金の支給」について(争点1(4))

 法人の賃金改定等は、高知県人事委員会の「職員の給与等に関する報告及び勧告」に準じて行われ、令和5年度の「報告及び勧告」では、若年層が在職する号級に重点を置いて改定し、その他1,000円以上引き上げることを基本に改定されている。
 法人はこの勧告に準じて改定を行い、結果として定年間近の組合員Aのベースアップ額は1,000円であったが、法人にはベースアップ額がAと同額の職員も存在しており、Aに対する不平等な取扱いや、組合の主張する使用者の恣意的要素があるとは認められない。
 また、その他に組合員であること等の故をもって行われたと判断し得るような事実は認められない。

(5)「書面による再雇用拒否及び令和7年3月31日をもって組合員Aに対して雇止めをした行為」について(争点1(5))

ア 再雇用規程第2条に、就業規程に定める解雇事由に該当しない者については再雇用する旨の規定がある。
 法人は、「組合員Aの不正閲覧記録確認等の業務命令違反、インターネット不正閲覧、人事考課及び複数回懲戒処分に処されたことが、就業規程第61条の解雇事由に該当するため、再雇用申請を受諾しない」旨主張している。
 法人の主張する解雇事由が、明らかに不合理なものであれば、不当労働行為意思を推認させるものであるといえるため、この点について検討する。

イ 法人が組合員Aに対して行った業務命令及び懲戒処分については、上記(1)に記載のとおり、一応の合理性を有しており、不当労働行為には該当しない。
 また、人事考課について、組合は「令和5年(不)第1号事件の申立て〔注 組合が、法人を被申立人として、令和5年3月6日付けで、高知県労働委員会に行った不当労働行為救済申立て〕がされたことを認識しつつ5段階評価の内最低評価であるE評価をした」と主張するが、組合員Aが組合に加入する前にも令和元年度にはD評価、2年度にはE評価、3年度にはD評価と低評価が続いていることから、不当労働行為救済申立てをしたことを理由に不当な評価がされたものとは認められない。
 以上から、組合員Aの再雇用を拒否すると法人が決定したことについては、明らかに不合理であるとは認められず、不当労働行為意思があったことを裏付ける事情があるとはいえない。

(6)以上のとおり、法人の各行為は、法第7条第1号の不当労働行為には該当しない。

2 計22通の組合からの団体交渉の申入れに係る書面について、法人が組合に対して、法人の代理人弁護士に送付するよう求め、組合が法人に直接送付したものであることを理由に受取拒否等をした法人の行為が、正当な理由のない団体交渉の拒否(法第7条第2号)に該当するか(争点2)

 組合による令和5年9月15日付け書面での申入れ以降、令和6年7月4日付け書面での申入れまでの間、団体交渉は実施されてこなかったが、同年10月15日及び同年11月19日に団体交渉が行われた。なお、それ以降組合は法人に対して団体交渉の申入れをしていない。
 組合から団体交渉の申入れがない以上、法人が団体交渉を拒否する余地はなく、また、法人が団体交渉申し入れを拒否したことによって生じた組合の団結権侵害の状況は既に是正されており、将来において同種の団体交渉拒否が繰り返されるおそれも認められないから、救済の利益は失われたというべきである。よって、団体交渉応諾を命じる必要性は認められない。

3 以下に掲げる法人の行為が、組合を職場から排除し、弱体化させる行為等であり、使用者との対等な交渉主体であるために必要な労働組合の自主性、独立性、団結力、組織力を損なう行為(法第7条第3号)に該当するか(争点3)

(1)「組合からの計52通の法人に対する団体交渉の申入れ」及び「組合員Aと組合との連名の計7通の法人に対する回答等」に係る書面等の受取拒否や受取拒絶について(争点3(1))

 法人による、組合からの計52通の法人に対する団体交渉申入れに係る書面等の受取拒否及び受取拒絶については、上記1(2)において述べたことと同様の事情が認められる。
 よって、組合からの書面の受取拒否等は団体交渉拒否に当たるとしても、組合及び組合員からの書面の受取拒否等が組合への支配介入を意図したものとは認められない。

(2)本件懲戒処分について(争点3(2))

 懲戒処分や処分の根拠となった業務命令を行うことで組合弱体化や反組合的な結果を生じ、又は生じるおそれがあることの認識や認容が法人にあったと判断し得るような事実は認められず、支配介入は認められない。

(3)団体交渉を経ずに行った賃金改定通告及び年末一時金の支給について(争点3(3))

 これらについて、組合員Aに対する不平等な取扱いや、組合の主張する使用者の恣意的要素があるとは認められない。
 組合は、「法人が団体交渉を行わずに一方的に賃金改定や年末一時金の支払いをした」と主張するが、団体交渉が行われなかったのは、組合に対する法人の再三の求めにもかかわらず、組合がかたくなに法人に団体交渉申入れ書等を直接送付し続けたという事情が認められることから、団体交渉拒否に当たるとしても、組合の無力化等を謀ることを意図したものとは認められない。
 これらから、法人の行為は支配介入には当たらない。

(4)書面による再雇用拒否及び令和7年3月31日をもって組合員Aに対して雇止めをした行為について(争点3(4))

 これらについて、不当労働行為救済申立てをしたことを理由に不当な評価がされたものとは認められない。
 よって、法人が業務命令違反等が解雇事由に当たるため再雇用を拒否するとの決定をしたことについて、組合の弱体化や反組合的な結果を生じ、又は生じるおそれがあることの認識や認容が法人にあったと判断しうるような事実は認められず、支配介入は認められない。

(5)以上のとおり、法人の各行為は、法第7条第3号の不当労働行為には該当しない。

4 次の(1)から(3)までに掲げる法人の行為が、不当労働行為の救済申立事件に関与したこと等を理由とする不利益な取扱い(法第7条第4号)に該当するか(争点4)

(1)(労働委員会における)証人尋問当日に懲戒委員会を開催した行為について(争点4(1))

 懲戒委員会の開催日が証人尋問と同日となったことについて、組合は、「報復的に妨害する意図をもって行っていることは明らか」と主張するが、法人が主張する、「懲戒委員会の開催日が、一度は日程が決まっていたものの、委員の体調不良等により2名が欠席となったため延期となり、委員の都合の合う日で調整した」という決定方法には、一定の合理的理由がある。
 また、証人尋問の実施時間(17時15分から)と懲戒委員会の開催時間(13時5分から)とは重複しておらず、組合員Aの証人尋問への参加が妨げられた等の事情も認められないため、不利益取扱いには当たらない。

(2)補佐人参加に関して組合員と法人の職員との間で(休暇等に係る)異なる取扱いをした行為について(争点4(2))

 法人の職員は、法に基づく不当労働行為救済申立てに対する使用者として当該事件に対応しているものであるから、被申立人として答弁をするために、業務として期日に参加する必要があると認められる。
 一方、組合員Aの期日参加について、就業規程に、職員が組合員として不当労働行為救済申立てに係る労働委員会の調査等への参加を職務免除とする規定はなく、法人の職務免除を義務付けるものはない。また、法人は、組合員Aが年次有給休暇を取得して労働委員会の調査等へ参加することを妨げようとすること等はしていない。
 よって、補佐人参加が、業務として本件手続に関与していることと、組合員の職務免除を認めないことを、「異なる取扱いをした」と評価することはできず、不利益取扱いには当たらない。

(3)書面による再雇用拒否及び令和7年3月31日をもって組合員Aに対して雇止めをした行為について(争点4(3))

 これら行為について、不当労働行為救済申立てをしたことを理由に不当な評価がされたものとは認められない。
 また、その他に法人が業務命令違反等が解雇事由に当たるため再雇用を拒否するとの決定をしたことについて、不当労働行為救済申立てに関与したことを理由とする不利益取扱いがあったと判断し得るような事実は認められない。
(
4)以上のとおり、法人の各行為は、法第7条第4号の不当労働行為には該当しない。 

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