概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和6年(不)第26号・第46号不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X組合(組合) |
| 被申立人 |
Y会社(会社) |
| 命令年月日 |
令和7年12月12日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、①組合が組合員A1に関して団体交渉申入れを行ったところ、会社がA1に対し、要求を止めるか退職するかを返事するよう記載した文書と退職届の用紙を交付したこと、②会社が、A1にのみ、誓約書を書かせようとしたこと、③団体交渉においてA1の賃金を減額する旨回答したこと、④団体交渉において、財務諸表等を提示して説明しないという不誠実な対応を行ったこと、⑤組合が、組合員A2についての団体交渉を申し入れたところ、会社は1度は団体交渉に応じたものの、再度申し入れた団体交渉に応じないことが、それぞれ不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、①及び②について労働組合法第7条第1号及び第3号、④の一部及び⑤について同条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対して誠実団交応諾及び文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。
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| 命令主文 |
1 会社は、組合が令和6年2月20日付け「要求及び申入書」により申し入れた乗務員の基準内賃金の引上げ及び一時金の支給を議題とする団体交渉に、会社の経営状況を示す資料を提示するなどして、誠実に応じなければならない。
2 会社は、組合からの令和6年9月6日付け団体交渉申入れに応じなければならない。
3 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X組合
執行委員長 A3 様
Y会社
代表取締役 B1
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)令和6年2月21日、会社内に設置されている貴組合員A1氏の個人ポストに、回答書、要望書及び退職届を投函したこと。(1号及び3号該当)
(2)令和6年3月17日頃、貴組合に回答書を送付して、貴組合員A1氏に誓約書の記入を求める旨通知したこと。(1号及び3号該当)
(3)令和6年4月10日に開催された団体交渉における春闘要求に関する協議において、財務諸表等の経営状況を示す資料を提示せず、誠実に応じなかったこと。(2号該当)
(4)貴組合からの令和6年9月6日付け団体交渉申入れに応じなかったこと。(2号該当)
4 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和6年2月21日、会社が会社内に設置されているA1の個人ポストに、回答書、要望書及び退職届(以下「6.2.21会社書面3通」)を投函したことは、A1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
(2) 令和6年3月17日頃、会社が組合に回答書を送付して、A1に誓約書の記入を求める旨通知したことは、A1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)
(3) 令和6年4月10日の団体交渉において、会社取締役B2はA1の賃金を減額する旨の発言を行ったか。行ったとすれば、B2が当該発言を行ったことはA1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに組合に対する支配介入に当たるか。(争点3)
(4) 令和6年3月2日、同月27日及び同年4月10日の団体交渉において、会社が組合に財務諸表等を提示しなかったことは、不誠実団体交渉に当たるか。(争点4)
(5) 令和6年9月6日付けの団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。(争点5)
2 争点1について
(1) 6.2.21会社書面3通はA1を精神的に圧迫するものであり、会社が6.2.21会社書面3通をA1の個人ポストに投函したことにより、A1は精神的な不利益を被ったと認められる。
また、会社がポストに投函した日は、賃金の引上げ等を要求した翌日であったことから、組合が賃金の引上げ等を要求したことを理由としてなされたものとみるのが相当である。 したがって、会社が6.2.21会社書面3通をA1の個人ポストに投函したのは、組合員であるが故になされたものとみるのが相当である。
以上から、会社が6.2.21会社書面3通を投函したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たる。
(2) 会社が6.2.21会社書面3通を投函したことは、組合活動を阻害するものであったといえる。したがって、かかる会社の行為は、組合に対する支配介入にも該当する。
(3) 以上のとおり、会社が会社内に設置されているA1組合員の個人ポストに、6.2.21会社書面3通を投函したことは、A1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点2について
(1) 6.3.17会社回答書の記載は、A1組合員に対し、6.3.17誓約書への記入を実質的に強制するものであり、6.3.17誓約書の条項は、A1組合員の従業員たる地位を脅かすものであるから、A1組合員を精神的に圧迫するものであった。よって、会社が組合に6.3.17会社回答書を送付して、A1に6.3.17誓約書の記入を求める旨通知したことにより、A1は精神的な不利益を被ったと認められる。また、これら会社の行為は、組合員であるが故になされたものである。
(2) 使用者が組合員に対し、組合員であることを故として不利益取扱いを行えば、組合員の組合活動を委縮させ、他の従業員の組合加入を抑止するなどの効果をもたらすのであるから、労働組合の運営を妨害するものにも当たるとみるのが相当である。
(3)以上のとおりであるから、会社が組合に6.3.17会社回答書を送付して、A1に6.3.17誓約書の記入を求める旨通知したことは、A1が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。
4 争点3について
令和6年4月10日の団体交渉において、会社取締役はA1の賃金を減額する旨の発言を行ったと認められないのだから、この点に関する組合の申立ては、その余を判断するまでもなく、棄却する。
5 争点4について
6.3.2団交では、組合は、春闘要求の内容を会社に伝えたにすぎず、実質的な協議に至っていないのだから、この時点では、財務諸表等の提示が必要であったと認めることはできない。
6.3.27団交の時点において、春闘要求に対する会社としての回答を明確には示しておらず、かつ、組合も、そのことを是認していることから、このような段階において、財務諸表等の提示が必要であったと認めることはできない。
6.4.10団交における春闘要求に関する協議において、会社は財務諸表等の会社の経営状況を示す資料を提示する必要があったにもかかわらず、 これを提示せず、提示しないことについて合埋的な理由も示していないのであるから、かかる会社の対応は、誠実交渉義務違反であると認められる。
したがって、6.4.10団交において、会社が組合に財務諸表等を提示しなかったことは、不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
6 争点5について
(1) 組合としては、団交の場又は回答書で、会社としての見解を示すよう求めているのは明らかである。そして、6.9.9組合事務所訪問の後、会社が組合に対し、自らの見解を記載した回答書を提出したとの事実は認められないのだから、会社は、 団交に応じて、団交の場で自らの見解を説明すべきであるといえる。
以上のとおりであるから、6.9.9組合事務所訪問における会社と組合とのやり取りからは、団交が開催されていないことについての正当な理由があったとは認められない。
(2)以上のとおりであるから、令和6年9月6日付けの団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
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| 掲載文献 |
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