労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委令和6年(不)第2号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和7年11月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、①申立外C会社(会社が統轄する企業グループの一員で、会社が全株式を保有)が、組合委員長Aに健康保険証を交付しなかったこと、②Aの事故に伴うC会社の労災申請に係る対応、③C会社が、Aの事故に伴う労災申請を行わなかったこと、④計5回の組合とC会社との団体交渉の後、協定書が作成されなかったこと、⑤C会社が、Aとの労働契約を終了したこと、⑥その後、組合との団体交渉が開催されなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  ○争点
①会社は、委員長Aとの関係において、労働組合法第7条の使用者に当たるか。
②C会社が、令和5年10月17日まで委員長Aに健康保険証を交付しなかったことは、会社による労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
③令和5年9月29日の委員長Aの事故に伴うC会社の労災申請に係る対応は、会社による労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
④C会社が、令和6年1月9日の委員長Aの事故に伴う労災申請を行わなかったことは、会社による労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
⑤令和5年11月2日、同月17日、同年12月21日、令和6年1月16日及び同年2月27日に開催された組合とC会社との団体交渉の後、協定書が作成されなかったことは、会社による労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
⑥C会社が、令和6年1月16日付け「有期労働契約終了通知」により、同年2月29日をもって委員長Aとの労働契約を終了したことは、会社による労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
⑦令和6年7月31日に団体交渉が開催されなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。

1 争点①(会社は、委員長Aとの関係において、労働組合法第7条の使用者に当たるか)について

(1)労働組合法第7条の「使用者」について

 労働組合法第7条にいう「使用者」は、団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、それ以外の者であっても、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて同条にいう「使用者」に当たると解される。
 以下、上記の観点から、会社とC会社との関係について検討し、会社が同条の「使用者」に当たるかについて判断する。

(2)資本関係及び役員の状況について

 会社は、自ら統括する「Yグループ」の一員であるC会社の株式の100パーセントを所有している。
 また、C会社の代表取締役は、会社の代表取締役であるB1(以下「社長B1」)であり、監査役も会社と同一人物であるほか、5人の取締役のうち、B2を除く4人が会社の取締役を兼務している。これらからすれば、会社は、資本関係及び会社の役員を通じて、親会社としてC会社に対し、その経営について一定の支配力を有しているといえる。

(3)基本的な労働条件等における支配力について

ア C会社の給与体系や就業規則は、会社と同一のものではなく、また、これらを改定する際は、C会社のみで改定の手続を行っている。このことからすれば、会社がC会社の従業員の労働条件に関与していたとみることはできない。

イ C会社は、従業員を採用する際、取締役B2を始め複数名で採用を決定しており、雇用契約書には、B2の記名及び押印がされている。このことからすれば、会社がC会社の従業員の採用に関与していたとみることはできない。

ウ 会社の従業員からC会社の従業員に対し、業務に関する指揮命令を行うことはない。

エ 社会保険関係の書類については、C会社が作成したものを会社に送付し、会社の業務統括部が当該関係書類に不備等がないかを確認した後、社長B1がC会社の代表取締役として決裁を行う。その後、C会社は、会社から返送された当該関係書類を関係各機関に提出している。
 この点、会社は、会社を中核とする「Yグループ」を統括しているが、グループ会社間において、特殊な事務に精通する人材確保の困難さや誤りがある場合の書類のやり取りの煩雑さの解消、コスト削減等のためにシェアードサービスを導入する企業は少なくないことからすれば、前段の事実のみをもって、会社が、C会社の社会保険関係の手続の決定に関与していたとみることはできない。

オ C会社では、従業員に賃金を支給するに当たり、C会社が作成したデータを金融機関に送付した後、関係書類を会社に送付している。
 この点、会社は、C会社の株式の100パーセントを所有しているが、親会社が子会社の経理状況を把握するのは当然であることからすれば、前段の事実のみをもって、会社が、当該賃金の支給内容の決定に関与していたとみることはできない。

カ 本件では、団体交渉における不当労働行為性が問題となっていることから、団体交渉事項との関係においても、検討を加える。
 組合は、(令和6年7月9日から30日までの期間に)会社及びC会社に対し、パワーハラスメント防止や労働条件その他を議題とする複数の団体交渉申入書を送付しているが、会社がC会社の従業員の労働条件に関与していたとみることはできない。また、会社がC会社におけるパワーハラスメント防止その他の議題に係る事項に関与していたと認めるに足る証拠はないことから、会社が当該団体交渉事項における支配力を有していたとみることはできない。
 なお、組合は、C会社に対し、令和5年10月17日から令和6年2月3日までの期間に団体交渉申入書を送付しているが、これらの団体交渉申入書のうち、会社を名宛人としたものは存在しないことから、各申入書の団体交渉事項における会社の支配力について判断する必要はない。

(4)結論

 以上からすれば、会社は、資本関係及び役員の状況において、親会社としてC会社の経営に対し、一定の支配力を有していたとみることはできるが、それは親会社が子会社に対して行う管理・監督の域を超えてのものとはいい難い。そして、会社は、直接の雇用関係にないC会社の従業員の基本的な労働条件等に対し、直接の雇用主であるC会社と同視し得る程度に、現実的かつ具体的な支配力を有しているということはできず、C会社の従業員との関係において、労働組合法第7条の使用者には当たらないと判断される。
 したがって、会社は、委員長Aとの関係において、労働組合法第7条の使用者に当たらない。

2 争点②から⑦までについて

 上記1で判断したとおり、会社は、委員長Aとの関係において、労働組合法第7条の使用者に当たらないことから、争点②から⑦までにおいて、会社を被申立人とした組合の申立てには理由がない。 

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