労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第75号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和7年11月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①新制度の適用3か月前には事前に協議を行うという団体交渉における合意に反し、新制度を適用すると組合に回答したこと、②新制度に係る団体交渉において、(ⅰ)会社が新制度の評価基準や評価方法の詳細を開示することを拒否したこと、(ⅱ)新制度における組合員各自の点数結果の開示を拒否し、そのことについて合理的な理由の説明を一切行わなかったこと、③団体交渉の経過に反して、令和5年の夏季一時金支給及び昇給を実施したこと、④組合分会長に対して、出頭要請書を交付し、事情聴取を行い、さらに厳重注意書を交付したこと、が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、④について労働組合法第7条第1号及び第3号に該当すると判断し、会社に対して文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。
 
命令主文  1 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
X組合
委員長A1 様
Y会社      
代表取締役B
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 貴組合の組合員1名に対し、令和5年7月5日付けで、出頭要請書を送付し、同月10日に事情聴取を行ったこと(1号及び3号該当)。
(2) 令和5年7月11日付けで、厳重注意書を、貴組合の組合員1名に対して交付したこと(1号及び3号該当)。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和5年3月31日付け回答書をもって、+α制度(昇給及び夏季一時金の支給額に+αを加えて支給する制度)を適用することを、組合に回答したことは、労働組合法第7条第2号及び同条第3号に該当する不当労働行為に当たるか。(争点1)
(2) 令和5年6月6日、同年9月21日、同年10月20日及び同年11月22日の団体交渉における会社の対応は、労働組合法第7条第2号及び同条第3号に該当する不当労働行為に当たるか。(争点2)
(3) 会社は、組合との交渉経過に反して、令和5年の夏季一時金支給及び昇給を実施し、もって組合に対して支配介入したといえるか。(争点3)
(4) 会社の、分会長A2に対する次の対応は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。(争点4)
①令和5年7月5日付け出頭要請書を交付し、同月10日に事情聴取を行ったこと
②令和5年7月11日に、同日付け厳重注意書を交付したこと

2 争点1について
(1) まず、新制度導入3ヵ月前には事前協議を行うという合意が成立していたかについてみる。
(2) 4.11. 21団交において、組合が査定内容等の変更があった場合には、導入の3か月前に事前協議を行いたい旨述べたことに対し、会社は、「わかりました。」と述べ、可能な限り先に示してから導入する旨述べたのみであり、3か月前には事前協議を行うことに合意していたとは到底認められない。また、そのほかに、会社が事前協議に合意していたと認めるに足る事実の疎明はない。
 したがって、会社と組合との間に、事前協議合意が成立したとはいえないので、その余を判断するまでもなく、不誠実団交に当たらず、組合に対する支配介入にも当たらないため、この点に係る組合の申立ては棄却する。

3 争点2について
 会社は、+α制度の評価基準について、団交にて回答できる範囲で、組合の追求の程度に応じた回答をしており、+α制度の評価方法について、本件各団交において、組合の追及の程度に応じて、説明をしていたといえる。
 また、本件各団交において、会社は、会社の立場から点数開示を行わない理由について説明し、フィードバック面談における良い点・改善点の伝達という代替案を提示し、さらに組合の主張を採り入れた対応方針も説明しているといえる。
 したがって、本件各団交における会社の対応は、不誠実団交に当たるとはいえず、また、組合活動に支配介入したものともいえないのであるから、この点に係る組合の申立ては棄却する。

4 争点3について
 会社は、5.6.6団交において、今回は既に示したとおりに支払う旨述べており、仮妥結案を検討した上で支払うとの合意まであったとはいえない。それを措いたとしても、会社は、5.6.13回答書において、5.6.6団交での質疑に対して、点数を開示しないという結果である旨回答しており、これらを踏まえると、会社は、組合との合意は得られなかったものの、団交の経過に反した対応をしたとまではいえず、かかる会社の対応は組合を軽視したとはいえない。
 したがって、会社が、令和5年の夏季一時金支給及び昇給を実施したことは、5.6.6団交の経緯を無視したものとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

5 争点4について
(1) 本件出頭要請書には、A2分会長が嘘の事実を交えて詰め寄り、考課者の不利益となることを述べた旨の記載があり、当事者への事情聴取を前に事実を断定することは、出頭を命じられた従業員に対して、処分を前提とするものとの疑いを抱かせ、強い不安や威圧感を与えるものであるから、不合理なものといえる。
 また、会社の5.7.10事情聴取における発言は、5.7.5面談での聴取内容とは異なった会社見解を述べ、A2分会長へ注意を行ったものであるといえるから、このような会社の対応は、合理性に欠けるものといわざるを得ない。
(2) 本件厳重注意書の交付については、取り立てて本件厳重注意書を交付するほどの必要性があったとまでは認めがたいものである。
(3) よって、本件出頭要請書の送付及び5.7.10事情聴取の実施並びに本件厳重注意書の交付は、組合活動の延長線上に行われたA2分会長の行為に対して行われたものであり、会社の反組織的な姿勢が伺えるとともに、その必要性や合理性も認められないことから、組合員故に行われた不利益取扱いに当たる。
 また、A2分会長に対する一連の会社の行為は、労使関係が悪化している時期に、組合の分会長に対し、組合員であることを理由として行われた対応であり、このような対応によって、組合活動が委縮することは明らかであるから、組合に対する支配介入にも当たる。

 
掲載文献   

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