労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和6年(不)第37号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y1会社、Y2労組 
命令年月日  令和7年8月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、企業内労働組合であるY2労組の組合員でもある、Aの組合への加入をY1会社に通知したところ、Y2労組が、労働協約に基づき、Y1会社からの承認を得た上で、A組合員を勤務時間中に複数回呼び出し、尋問や組合からの脱退勧奨を行ったこと、が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。
 
命令主文   本件申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 本件の争点は次のとおりである。
(1) 令和5年8月3日、同月4日及び同月31日にY2労組が組合員Aに対して行った行為は、Y1会社による、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)

(2) Y2労組は組合員Aの労働組合法上の使用者に当たるか。当たるとすれば、令和5年8月3日、同月4日及び同月31日にY2労組が同組合員に対して行った行為は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)

2 争点1について
(1) まず、Y2労組の5.8.3面談、5.8.4会話及び5.8.31面談における行為が、Y1会社による行為といえるかについてみる。

(2) Y2労組の行為がY1会社による行為であるという組合の主張はいずれも認めることができず、その他、組合から、Y1会社とY2労組の一体性があると認められ、あるいはY2労組の行為がY1会社の行為であるとみなせるような事実の疎明はない。
 これらのことからすれば、5.8.3面談、5.8.4会話及び5.8.31面談におけるY2労組の行為がY1会社の組合に対する反組合的意思によって行われたY1会社による行為であるという組合の主張を認めることはできない。
 よってその余を判断するまでもなく、この点に係る組合の申立ては棄却する。

3 争点2について
(1) Y2労組がA組合員の直接の雇用主でないことに争いはない。ただし、労働組合法第7条の「使用者」とは、労働契約上の雇用主だけには限らず、労働者の基本的な労働条件に関して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある者については、「使用者」に当たると解するのが相当であるので、A組合員が加入していた労働組合であるY2労組がこのような意味で労働組合法上の使用者に該当するといえるかについてみる。

(2) Y2労組は、本件労働協約に基づき、Y1会社に対し、就業時間内にY2労組の組合員でもあるA組合員に対してヒアリングを行うことについて、工場長と実施時間を調整予定であることを付記した上で、承認を求める5.8.2申請書及び5.8.24申請書を申請し、会社から承認を得たことが認められる。
 しかしながら、就業時間中の面談に際し、本件労働協約に基づくY1会社の承認を得た上で、A組合員の直属の上司である工場長と実施時間の調整がなされたとしても、このことをもって、面談が労働組合と組合員との関係において、組合活動として実施されたものであるという以上に評価することはできない。このほかには組合からの疎明はないのであるから、この状況だけをもって、Y2労組がA組合員の基本的な労働条件を、雇用主と部分的に同一視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえない。

(3) 以上のことから、Y2労組はA組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえず、その余を判断するまでもなく、この点に係る組合の申立ては棄却する。
 
掲載文献   

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