概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第30号・第65号
不当労働行為審査事件 |
| 申立人 |
X組合(組合) |
| 被申立人 |
Y1会社、Y2会社(会社ら) |
| 命令年月日 |
令和7年5月23日 |
| 命令区分 |
一部救済 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
本件は、①Y1会社が申立外C法人(以下「C社」)を破産させることによりC社で就労していた組合員A2を解雇したこと、②組合がY1会社に対して当該解雇の撤回等を求める団体交渉を申し入れたところ、Y1会社がこれに応じないこと、③組合がY2会社に対して組合員A2の処分に係る経過の説明や当該解雇の撤回等を求める団体交渉を申し入れたところ、Y2会社がこれに応じないこと、が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、②について労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、Y1会社に対し、(ⅰ)団体交渉応諾、(ⅱ)文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 |
| 命令主文 |
1 Y1会社は、組合が令和5年9月4日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 Y1会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X組合
執行委員長 A1様
Y1会社
代表取締役 B
貴組合から令和5年9月4日付けで申し入れのあった団体交渉に誠実に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
3 組合のY1会社に対するその他の申立てを棄却する。
4 組合のY2会社に対する申立てを棄却する。
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| 判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
⑴ Y1会社が、C社を破産させることにより令和5年8月31日付けで組合員A2を解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
① Y1会社は、組合員A2の解雇に関し、組合員A2の労働組合法上の使用者に当たるか。
② Y1会社は、組合員A2が組合の組合員であることから、C社を破産させたといえるか。
③ Y1会社は、C社を破産させることによって、組合に対する支配介入を行ったと認められるか。
⑵ Y1会社は、令和5年9月4日付け団体交渉申入れに係る団体交渉に関し、組合員A2の労働組合法上の使用者に当たり、団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。(争点2)
⑶ Y2会社は、令和5年7月24日、同年8月3日及び同年9月4日付け団体交渉申入れに係る団体交渉に関し、組合員A2の労働組合法上の使用者に当たり、団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。(争点3)
2 争点1について
⑴ Y1会社は、組合員A2の解雇に関し、組合員A2の労働組合法上の使用者に当たるかについて
Y1会社は、C社をグループ扱いし、同社に経済的な影響力を有していたものであり、同社の事業の存続や廃止について最終的に決定できたと考えられる。したがって、Y1会社は組合員A2を解雇することについて、部分的に雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったといえ、労働組合法上の使用者といえる。
⑵ Y1会社は、組合員A2が組合の組合員であることから、C社を破産させたといえるかについて
C社の経営状況は再建の見込みがないほど悪化していたとみるのが相当であり、本件破産申立てが、組合員A2を解雇する目的で行われたとは認められない。
⑶ Y1会社は、C社を破産させることによって、組合に対する支配介入を行ったと認められるかについて
C社が本件破産申立てを行ったことは不自然とはいえず、組合の消滅を意図したものとはいえないから、組合に対する支配介入には当たらない。
3 争点2について
令和5年9月4日付けの団交申入書の要求事項は、C社の閉鎖や組合員A2の解雇に関することであり、義務的団交事項に該当する。
Y1会社は、組合員A2の労働組合法上の使用者であり、Y1会社が団交に応じていないことは当事者間に争いがないのであるから、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
4 争点3について
Y2会社は、組合員A2に対する解雇の撤回等について、C社と部分的とはいえ同視し得る程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる立場にあったものとはいえず、組合員A2の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。 |
| 掲載文献 |
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