概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第52号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和7年5月12日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、同僚教員間のハラスメントの申立てがあった従業員A(ハラスメントには該当しないが不適切な言動があったと判断されている)が組合に加入したのち、①組合員Aと同僚教員との接触を避ける措置を維持したこと、②組合員Aに対するハラスメント研修受講要請を維持したこと、③組合員Aの所属学科においてハラスメント研修を実施したこと等が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点
法人の①~④の行為は、組合員Aが組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか
① 学長面談における組合員Aに対するC教授との接触に関する発言及び接触禁止措置を、組合員Aの組合加入通知受領後も撤回せず、維持したこと。
② 組合員Aに対するハラスメント研修受講要請を、組合員Aの組合加入通知受領後も撤回せず、維持したこと。
③ 令和4年10月11日付け、同年11月29日付け及び令和5年1月18日付けで、学長面談等を要請する書面を組合員Aに送付したこと。
④ 令和5年3月1日に組合員Aの所属する学科を対象としたハラスメント研修を実施したこと及び同年5月31日に学科長等が令和5年度も実施する旨を表明したこと。
2 上記①~④の行為は、組合員Aが組合員であるが故の不利益取扱いに当たるかについて、以下判断する。
⑴ 上記①について
組合員AとC教授の接触にかかる措置は、組合員Aの言動がC教授の就労環境を悪化させた可能性があるとの判断のもとに講じられたものとみるのが相当であるから、かかる措置の継続は、組合員Aにとって精神的な不利益等がないとまでは言えない。
本件ハラスメント事案についての判断自体は、組合加入通知前のものであるし、通知前から法人が組合員Aの組合加入を察知していたと認めるに足る疎明もないから、組合員Aが組合員になったことが本件ハラスメント事案の結論を左右したとはいえない。したがって、この措置の継続は、業務上の必要性から行われたものというべきで、組合員Aが組合員であることを理由としたものということはできない。
⑵ 上記②及び③について
本件研修要請は、組合員Aに対し、かかる研修を受講するよう求めるものであり、本件文書送付は、受講に際して、学長から直接に通知するので、来訪するよう求めたものであって、いずれについても、組合員Aに不適切な言動があったとして行われたのであるから、精神的な不利益等がないとまではいえない。
本件研修の実施は、本件組合加入通知前に決定されているところ、通知前から、法人が組合員Aの組合加入の意図を察知していたと認めるに足る疎明はない。したがって、この研修の実施は、組合員であるか否かとは無関係に決定されたものというべきであり、本件研修要請と本件文書送付について、組合員Aが組合員であることを理由としたものということはできない。
⑶ 上記④について
本件4年度研修と本件5年度研修は、使用者が当然に企画・実施できる研修であって、その企画や実施によって組合員Aが不利益を被ったとはいえない。
したがって、その余のことを判断するまでもなく、上記④については、組合員Aが組合員であることを理由とした不利益取扱いということはできない。
⑷ 以上のとおりであるから、本件における4点の法人の行為は、いずれも組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
3 次に、法人の4点の行為が組合に対する支配介入に当たるかについてみる。
本件において、法人の行為により組合活動を弱体化させた等というべき特段の事情は認められないので、いずれも組合活動に対する支配介入とはいえない。
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掲載文献 |
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