概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委令和5年(不)第37号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(組合) |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和7年5月12日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、法人が、①職場で春闘行動の一環としてアンケート用紙を配付した組合員A2を雇い止めにしたこと、②これに関して開催された団体交渉に誠実に対応しなかったこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして救済申立てがなされた事案である。
大阪府労働委員会は、①について労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し(ⅰ)雇用契約が6か月間継続していたものとしての取り扱い、(ⅱ)バックペイ、(ⅲ)文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。
|
命令主文 |
1 法人は、申立人組合員A2の雇用契約が、令和5年4月1日付けで期間を6か月間として更新されたものとして取り扱い、同人に対し、この間の賃金相当額を支払わなければならない。
2 法人は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X組合
執行委員長 A1様
Y法人
理事長 B
当法人が、令和5年3月31日をもって貴組合員A2氏を雇止めとしたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
3 組合のその他の申立てを棄却する。
|
判断の要旨 |
1 本件の争点は次のとおりである。
① 法人が、令和5年3月31日をもってA2を雇止めとしたことは、同人が組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
② A2の雇止めを議題とする3回の団体交渉における法人の対応は、不誠実団交に当たるか。(争点2)
2 争点1について
⑴ A2は契約更新を合理的に期待できる状況であったにもかかわらず契約更新されず、雇止めとなったのであるから、同人は、身分上及び経済的な不利益を被ったといえる。
⑵ 法人がA2を雇止めとしたのは、「勤務態度の不良」というより、組合員であることを理由としてなされたものとみるのが相当であり、A2が組合員であるが故になされたものであるといえる。
⑶ 以上のとおりであるから、A2を雇止めしたことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たり、それはまた、従業員が組合に加入し、組合活動を行うことを躊躇させ、組合の運営を阻害するものであるから、組合に対する支配介入にも当たる。
3 争点2について
⑴ 組合は、法人が「録音・録画禁止」を団交開催の条件としたことにより、組合で多くの時間が費やされ、団交妨害であったと主張する。
しかし、一方当事者が団交実施の開催条件等について何らかの提案をすること自体は認められるものであるから、法人が団交の条件を提示したことにより組合内部で多くの時間を費やしたとしても、そのことをもって団交妨害であるということにはならず、この点に関する組合の主張は採用できない。
⑵ 組合は、法人が団交においてA2の雇用契約終了の理由について、具体的な説明をしなかったとも主張する。
しかし、法人は、A2の雇用契約終了の理由については、一定の説明をしているとみるのが相当であり、この点に関する組合の主張は採用できない。
⑶ 組合は、団交において法人の社労士が「団交がパワハラになっている」旨の発言をし、組合に対して圧力をかけた旨を主張する。
しかし、法人社労士のパワハラに関する発言によって、協議に支障があったと認めることはできないので、この点に関する組合の主張は採用できない。
⑷ その他組合の主張はいずれも採用できないので、A2の雇止めを議題とする3回の団体交渉における法人の対応は、不誠実団交に当たらない。
|
掲載文献 |
|